(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】炭素ナノチューブの分散液製造システムおよびそれを用いた炭素ナノチューブの分散液製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/174 20170101AFI20250218BHJP
C01B 32/176 20170101ALI20250218BHJP
【FI】
C01B32/174
C01B32/176
(21)【出願番号】P 2020146600
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0026913
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宋 ハン ナ
(72)【発明者】
【氏名】鄭 大 鉉
(72)【発明者】
【氏名】鄭 聖 勳
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-035344(JP,A)
【文献】特表2019-535629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と炭素ナノチューブがそれぞれ供給され、前記溶媒と前記炭素ナノチューブが混合された混合液が貯蔵される混合装置と、
前記混合装置と連結されて前記炭素ナノチューブをロータとステータの
間でデバンドリング(Debundling)させて1次分散した後、
ロータの回転力によってステータ上の複数の貫通穴を介して前記炭素ナノチューブが外部に排出されることにより前記炭素ナノチューブに曲げ区間が形成されるように2次分散する第1分散装置と、
前記混合装置から2次分散した混合液が前記混合装置に再循環するとき、レーザ照射により前記炭素ナノチューブの曲げ区間を選択的に切断させて3次分散する第2分散装置と、
を含む、ことを特徴とする炭素ナノチューブの分散液製造システム。
【請求項2】
前記混合装置は、
前記溶媒が貯蔵される溶媒タンクと、
前記炭素ナノチューブが貯蔵される炭素ナノチューブタンクと、
前記溶媒タンクと前記炭素ナノチューブタンクとそれぞれ連結され、前記溶媒タンクと前記炭素ナノチューブタンクからそれぞれ供給される前記溶媒と前記炭素ナノチューブを内部の攪拌機を介して混合して循環させる混合タンクと、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素ナノチューブの分散液製造システム。
【請求項3】
前記炭素ナノチューブタンクは、
前記炭素ナノチューブが自動フィーダを介して設定量だけ供給されるように構成される、ことを特徴とする請求項2に記載の炭素ナノチューブの分散液製造システム。
【請求項4】
前記第1分散装置は前記混合装置と連結され、前記混合装置から前記混合液が供給される貯蔵タンクを含み、
前記ロータは前記混合液の流入方向と同一に設置される回転軸を有し、前記混合液の流入方向と直角方向に回転するように前記貯蔵タンク内部の中央に配置され、
前記ステータは前記混合液の流入方向側の側面が開放され、閉鎖された他の側面を介して前記ロータの駆動モータとともに前記貯蔵タンクに固定され、前記ロータを囲む周囲面上に複数の貫通穴が形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素ナノチューブの分散液製造システム。
【請求項5】
前記ステータの貫通穴の直径は、20mm以上200mm以下の範囲で設定される、ことを特徴とする請求項4に記載の炭素ナノチューブの分散液製造システム。
【請求項6】
前記ロータと前記ステータの間の間隔は、10mm以上500mm以下の範囲で設定される、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素ナノチューブの分散液製造システム。
【請求項7】
前記第2分散装置は、
前記第1分散装置から前記混合装置に前記混合液が移動する連結管に向かって配置されるレーザビーム装置を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の炭素ナノチューブの分散液製造システム。
【請求項8】
前記連結管は、
光学ガラスからなる、ことを特徴とする、請求項7に記載の炭素ナノチューブの分散液製造システム。
【請求項9】
前記レーザビーム装置で照射されるレーザのエネルギ量は、250mJ/cm
2以上600mJ/cm
2以下の範囲で設定される、ことを特徴とする請求項7に記載の炭素ナノチューブの分散液製造システム。
【請求項10】
炭素ナノチューブの分散液を製造する方法において、
混合装置を介して液体状態の溶媒とパウダ状態の前記炭素ナノチューブをそれぞれ設定量で混合して混合液を形成する第1段階と、
前記混合液が第1分散装置に移動し、前記第1分散装置のロータの回転力によって前記炭素ナノチューブを
ロータとステータの間でデバンドリング(Debundling)させる1次分散する第2段階と、
前記1次分散した
前記炭素ナノチューブを前記ロータの回転力によって
前記ステータ
上の複数の貫通穴を介して
前記炭素ナノチューブが外部に排出されることにより前
記炭素ナノチューブ
に曲げ区間が形成されるように2次分散する第3段階と、
前記2次分散した
前記炭素ナノチューブを第2分散装置を通過しながら
レーザ照射により前記炭素ナノチューブの曲げ区間を選択的に切断させて3次分散する第4段階と、
を含む、ことを特徴とする炭素ナノチューブの分散液製造方法。
【請求項11】
前記第1段階は、
溶媒タンクに貯蔵された前記溶媒をモータの作動によって設定量だけ混合タンクに供給する段階と、
炭素ナノチューブタンクに貯蔵された前記炭素ナノチューブを設定量だけ前記混合タンクに供給する段階と、
前記混合タンク内部の攪拌機によって前記溶媒と前記炭素ナノチューブが混合されて前記混合液を形成する段階と、
を含む、ことを特徴とする請求項10に記載の炭素ナノチューブの分散液製造方法。
【請求項12】
前記第2段階は、
前記第1分散装置のロータの回転力によって前記混合液を前記混合装置から前記第1分散装置の貯蔵タンクに移動する段階と、
前記ロータが回転することによって前記ロータと前記ステータの間で前記炭素ナノチューブをデバンドリング(Debundling)させて1次分散する段階と、
を含む、ことを特徴とする請求項10に記載の炭素ナノチューブの分散液製造方法。
【請求項13】
前記第3段階は、
前記ロータの回転力によって前記ステータ上の複数の貫通穴を介して前記炭素ナノチューブが外部に排出されることにより前記炭素ナノチューブに曲げ区間が形成されるように2次分散する段階である、ことを特徴とする請求項12に記載の炭素ナノチューブの分散液製造方法。
【請求項14】
前記第4段階は、
前記2次分散した混合液が前記混合装置に循環するとき、レーザを照射して前記炭素ナノチューブの曲げ区間を切断して3次分散する段階である、ことを特徴とする請求項13に記載の炭素ナノチューブの分散液製造方法。
【請求項15】
前記第4段階は、
エネルギ量が250mJ/cm
2以上600mJ/cm
2以下の範囲のレーザを利用することを特徴とする、請求項14に記載の炭素ナノチューブの分散液製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素ナノチューブの分散液製造システムおよびそれを用いた炭素ナノチューブの分散液製造方法に係り、より詳しくは、炭素ナノチューブを機械的力で損傷させることなく、かつ分散率を高めることのできる炭素ナノチューブの分散液製造システムおよびそれを用いた炭素ナノチューブの分散液製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に炭素ナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)とは、一つの炭素原子が他の炭素原子と六角形のハチの巣状に結合されてチューブ形態をなしている物質として、その直径は1nm~100nmの範囲で、その長さは数百マイクロメータに達し、異方性が非常に大きい。
【0003】
このような炭素ナノチューブは、単一壁炭素ナノチューブ(single-walled carbon nanotube)、二重壁炭素ナノチューブ(double-walled carbon nanotube)、多重壁炭素ナノチューブ(multi-walled carbon nanotube)、ロープ型炭素ナノチューブ(rope carbon nanotube)等に区分することができ、これらは外壁に存在するπ電子の重畳によって金属に準ずる高い電気伝導性を有する。
【0004】
前記炭素ナノチューブの優れた機械的物性および電気伝導性を利用して多機能のナノ複合材料が開発される。
例えば、前記ナノ複合材料は、非伝導性物質に炭素ナノチューブを添加して伝導性が付与された複合材料、または高分子樹脂の補強材として炭素ナノチューブが添加された複合材料などが知られている。
【0005】
しかし、前記炭素ナノチューブは合成過程でファンデルワールス(van der waals)力により凝集した状態で得られるので、液状あるいはスラリー内で均一に分散させにくいという問題がある。
前記のように凝集した状態に存在する炭素ナノチューブは液状あるいはスラリー内で粘度を高める現象を発生させてハンドリングが難しく、効率的な電子伝導の経路確保が難しいので、後の工程において分散液の活用度が低くなる問題がある。
【0006】
したがって、前記炭素ナノチューブを一つ一つの個体に分散させる作業は優れた物性を有する複合材の開発において重要な過程であるといえる。
【0007】
一方、前記炭素ナノチューブはアーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相蒸着法等により製造することができる。
前記した製造方法のうち、代表的に化学気相蒸着法は高温の流動層反応器(fluidized bed reactor)の中で金属触媒粒子と炭化水素系の原料気体を分散および反応させることによって炭素ナノチューブが生成される。
すなわち、前記金属触媒は原料気体によって流動層反応器の中で浮游しながら前記原料気体と反応して炭素ナノチューブを成長させる。
【0008】
前記炭素ナノチューブの合成過程では個々の炭素ナノチューブ粒子間に凝集現象が発生し、物理的凝集はマイクロ水準でナノチューブの粒子が互いに絡まっていることであり、化学的凝集はナノメートル水準で分子間のファンデルワールス力のような表面引力によってナノチューブ粒子が凝集することである。
【0009】
このような炭素ナノチューブの凝集現象は機械的強度および伝導特性を向上させ得る3次元的ネットワーク構造形成を妨げるので、前記炭素ナノチューブの分散技術は大変重要である。
したがって、前記炭素ナノチューブの物理的、化学的特徴を十分に発揮するためには前記炭素ナノチューブの長さを最小化し、物性低下のない分散法を開発することが切実に求められる。
この背景技術に記載された内容は発明の背景に対する理解を深めるために作成されたものであり、この技術が属する分野における通常の知識を有する者にすでに知られている従来技術でない内容を含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の実施形態は、バッテリ導電材として使用する炭素ナノチューブの分散液の製造時、機械的力による炭素ナノチューブの損傷を防止し、かつ分散度を高めることのできる炭素ナノチューブの分散液製造システムおよびそれを用いた炭素ナノチューブの分散液製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つまたは多数の実施形態では、溶媒と炭素ナノチューブがそれぞれ供給され、前記溶媒と前記炭素ナノチューブが混合された混合液が貯蔵される混合装置と、前記混合装置と連結されて前記炭素ナノチューブをロータとステータの作動によって1次分散した後、前記ステータ上の貫通穴を介して放出させながら前記炭素ナノチューブに曲げ区間が形成されるように2次分散する第1分散装置と、前記混合装置から2次分散した混合液が前記混合装置に再循環するとき、レーザ照射により前記炭素ナノチューブの曲げ区間を選択的に切断させて3次分散する第2分散装置と、を含む炭素ナノチューブの分散液製造システムを提供することができる。
【0013】
また、前記混合装置は、前記溶媒が貯蔵される溶媒タンクと、前記炭素ナノチューブが貯蔵される炭素ナノチューブタンクと、前記溶媒タンクと前記炭素ナノチューブタンクとそれぞれ連結され、前記溶媒タンクと前記炭素ナノチューブタンクからそれぞれ供給される前記溶媒と前記炭素ナノチューブを内部の攪拌機を介して混合する混合タンクと、を含み得る。
【0014】
また、前記炭素ナノチューブタンクは、前記炭素ナノチューブが自動フィーダを介して設定量だけ供給されるように構成され得る。
【0015】
また、前記第1分散装置は前記混合装置と連結され、前記混合装置から前記混合液が供給される貯蔵タンクを含み、前記ロータは前記混合液の流入方向と同一に設置される回転軸を有し、前記混合液の流入方向と直角方向に回転するように前記貯蔵タンク内部の中央に配置され、前記ステータは前記混合液の流入方向側の側面が開放され、閉鎖された他の側面を介して前記ロータの駆動モータとともに前記貯蔵タンクに固定され、前記ロータを囲む周囲面上に複数の貫通穴が形成され得る。
【0016】
また、前記ステータの貫通穴の直径は、20mm以上200mm以下の範囲で設定され得る。
【0017】
また、前記ロータと前記ステータの間の間隔は、10mm以上500mm以下の範囲で設定され得る。
【0018】
また、前記第2分散装置は、前記第1分散装置から前記混合装置に前記混合液が移動する連結管に向かって配置されるレーザビーム装置を含み得る。
【0019】
また、前記連結管は、光学ガラスからなることを特徴とすることができる。
【0020】
また、前記レーザビーム装置で照射されるレーザのエネルギ量は、250mJ/cm2以上600mJ/cm2以下の範囲で設定され得る。
【0021】
本発明の一つまたは多数の実施形態では前記した炭素ナノチューブの分散液製造システムを利用して炭素ナノチューブの分散液を製造する方法において、混合装置を介して液体状態の溶媒とパウダ状態の前記炭素ナノチューブをそれぞれ設定量で混合して混合液を形成する第1段階と、前記混合液が第1分散装置に移動し、前記第1分散装置のロータの回転力によって前記炭素ナノチューブを1次分散する第2段階と、前記1次分散した炭素ナノチューブを前記ロータの回転力によってステータの貫通穴を介して前記ステータの外部に排出して前記炭素ナノチューブを2次分散する第3段階と、前記2次分散した炭素ナノチューブを第2分散装置を通過しながらレーザを利用して3次分散する第4段階と、を含む炭素ナノチューブの分散液製造方法を提供することができる。
【0022】
また、前記第1段階は、溶媒タンクに貯蔵された前記溶媒をモータの作動によって設定量だけ混合タンクに供給する段階と、炭素ナノチューブタンクに貯蔵された前記炭素ナノチューブを設定量だけ前記混合タンクに供給する段階と、前記混合タンク内部の攪拌機によって前記溶媒と前記炭素ナノチューブが混合されて前記混合液を形成する段階と、を含み得る。
【0023】
また、前記第2段階は、前記第1分散装置のロータの回転力によって前記混合液を前記混合装置から前記第1分散装置の貯蔵タンクに移動する段階と、前記ロータが回転することによって前記ロータと前記ステータの間で前記炭素ナノチューブをデバンドリング(Debundling)させて1次分散する段階を含み得る。
【0024】
また、前記第3段階は、前記ロータの回転力によって前記ステータ上の複数の貫通穴を介して前記炭素ナノチューブが外部に排出されることにより前記炭素ナノチューブに曲げ区間が形成されるように2次分散する段階でありうる。
【0025】
また、前記第4段階は、前記2次分散した混合液が前記混合装置に循環するとき、レーザを照射して前記炭素ナノチューブの曲げ区間を切断して3次分散する段階でありうる。
【0026】
また、前記第4段階は、エネルギ量が250mJ/cm2以上600mJ/cm2以下の範囲のレーザを利用することを特徴とし得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明の実施形態による炭素ナノチューブの分散液製造システムおよびそれを用いた炭素ナノチューブの分散液製造方法は、バッテリ導電材として使用する炭素ナノチューブの分散液の製造時、前記炭素ナノチューブを機械的力で損傷させることなく、かつ分散性を高めることができる効果がある。
【0028】
すなわち、前記炭素ナノチューブの分散液製造システムおよびそれを用いた炭素ナノチューブの分散液製造方法は、ロータとステータの間のせん断力と遠心力によって前記炭素ナノチューブのデバンドリング後、ベンディングさせて変形率を高め、レーザを照射して変形率が高い区間のみ選択的に切断することによって、前記炭素ナノチューブの物理的な損傷を最小化して分散することができる。
【0029】
その他に本発明の実施形態によって得られるか、予測される効果については本発明の実施形態についての詳細な説明で直接的または暗示的に開示する。すなわち、本発明の実施形態により予測される多様な効果については後述する詳細な説明で開示する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態による炭素ナノチューブの分散液製造システムの全体的な構成図である。
【
図2】本発明の実施形態による炭素ナノチューブの分散液製造システムに適用される第1分散装置の構成図である。
【
図3】本発明の実施形態による炭素ナノチューブの分散液製造システムおよびそれを用いた炭素ナノチューブの分散液製造方法で分散する炭素ナノチューブの状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による炭素ナノチューブの分散液製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施形態について、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0032】
本発明を明確に説明するために説明と直接関係ない部分は省略し、明細書全体にわたって同一又は類似の構成要素に対しては同じ図面符号を適用して説明する。
【0033】
また、下記の説明で構成の名称を第1、第2などに区分したのはその構成の名称が同一であるためそれを区分するためであり、必ずしもその順序に限定されるものではない。
【0034】
本発明の実施形態による炭素ナノチューブの分散液製造システムおよびそれを用いた炭素ナノチューブの分散液製造方法は、バッテリ導電材として使われる炭素ナノチューブの分散液を作るために適用される。
【0035】
以下で使用する「分散」という用語は、「炭素ナノチューブ凝集体を物理的に切断するか、化学的に処理して凝集体の体積および長さが減少するか、炭素ナノチューブ凝集体のもつれが解けて分散する現象」を通称する意味で使用する。
【0036】
図1は本発明の実施形態による炭素ナノチューブの分散液製造システムの全体的な構成図である。
図1を参照すると、前記炭素ナノチューブの分散液製造システムは、混合装置10、第1分散装置30、および第2分散装置40を含む。
【0037】
前記混合装置10は、液体状態の溶媒が貯蔵される溶媒タンク11を含む。
ここで前記溶媒は、N-Methyl-2-pyrrolidone(NMP)または水溶液(aqueous solution)でありうる。
【0038】
また、前記混合装置10は、パウダ状態の炭素ナノチューブ(1,
図3参照)が貯蔵される炭素ナノチューブタンク13を含む。
【0039】
ここで前記炭素ナノチューブ1は、高い伝導度と機械的剛性によりバッテリの耐久性向上に重要な役割をする。
そこで、前記炭素ナノチューブ1は、伝導度が低くならないように分散時に損傷しないことが有利である。
【0040】
そして、前記溶媒タンク11と炭素ナノチューブタンク13は、混合タンク15とそれぞれ連結される。
より詳細には、前記溶媒タンク11と混合タンク15は、流路管20aを介して互いに連結され、前記流路管20aにはモータM1が構成される。
前記溶媒は、前記モータM1の駆動によって前記混合タンク15に移動することができる。
【0041】
また、前記炭素ナノチューブタンク13は、前記混合タンク15の上部側に配置され、前記炭素ナノチューブタンク13は、自動フィーダ(Feeder、131)を介して炭素ナノチューブ1を設定量だけ前記混合タンク15に供給することができる。
この時、前記自動フィーダ131には対象物を設定量だけ自動供給する一般的な技術が適用されることができる。
【0042】
前記溶媒と炭素ナノチューブ1が前記混合タンク15に設定量だけ供給されると、前記混合タンク15の内部に構成される攪拌機(Stirrer、151)により混合される。
前記攪拌機151は、モータM2の作動によって回転しながら前記溶媒と炭素ナノチューブ1を混ぜて混合液を作る役割をする。
【0043】
図2は本発明の実施形態による炭素ナノチューブの分散液製造システムに適用される第1分散装置の構成図で、
図3は本発明の実施形態による炭素ナノチューブの分散液製造システムおよびそれを用いた炭素ナノチューブの分散液製造方法で分散する炭素ナノチューブの状態を示す図である。
【0044】
図2と
図3を参照すると、前記第1分散装置30は、前記混合タンク15に流路管(fluid pipe)20bを介して連結される貯蔵タンク31を含む。
この時、前記貯蔵タンク31は、前記混合タンク15の下部面に流路管20bを介して連結されることが好ましい。
前記貯蔵タンク31の内部中央にはロータ(Rotor、33)が設置される。
【0045】
前記ロータ33の回転軸331は、前記混合液の流入方向と同じ方向に配置されて前記ロータ33が前記混合液の流入方向と直角方向に回転するように構成される。
前記ロータ33は、前記回転軸331が前記貯蔵タンク31の外部に構成される駆動モータM3と連結されて回転する。
【0046】
このようなロータ33は、回転することによって前記混合タンク15の内部の混合液が前記貯蔵タンク31に自動で流入するようにする。
また、前記貯蔵タンク31の内部には前記ロータ33を囲むステータ(Stator,35)が設置される。
前記ステータ35は、前記貯蔵タンク31の内部で前記流入方向側の側面が開放され、閉鎖された他側面を介して前記ロータ33の駆動モータM3とともに前記貯蔵タンク31に固定される。
すなわち、前記ステータ35の開放された側面を介して前記ロータ33とステータ35との間の空間に混合液が流入する。
【0047】
前記ロータ33が回転することによって、前記ロータ33と前記ステータ35との間で発生するせん断力P1により前記炭素ナノチューブ1はバンドルが解除されるデバンドリング(debundling)を介して1次分散する(
図3の矢印A参照)。
前記デバンドリングとは固まっていた炭素ナノチューブ1が一本一本に分離することを意味する。
【0048】
この時、前記ロータ33とステータ35の間の間隔D1は10mm以上500mm以下の範囲で設定され得る。
これは炭素ナノチューブ1にせん断力を加えて分散し、かつ前記ロータ33とステータ35の摩耗は最小限にするための設定値である。
また、前記ステータ35の周囲面には複数の貫通穴351が形成される。
【0049】
前記ロータ33とステータ35との間で1次分散した混合液は回転する前記ロータ33の遠心力P2により前記ステータ35の各貫通穴351を介して前記ステータ35の外側に抜け出る。
前記貫通穴351は、円形または角形に形成されることができる。
【0050】
この時、前記炭素ナノチューブ1は、前記貫通穴351を通過しながら曲げ区間3が形成されるベンディング(bending)により2次分散する(
図3の矢印B参照)。
前記曲げ区間3の変形率(Strain)は最大となる。
すなわち、前記炭素ナノチューブ1上の曲げ区間3は少ない力でも容易に変形されるようになる。
【0051】
前記貫通穴351は円形または角形と関係なく、その大きさD2は20mm以上200mm以下の範囲で設定されることができる。
これは炭素ナノチューブ1のサイズを考慮した設定値である。
【0052】
一方、前記した第1分散装置30を経た混合液は前記混合タンク15に再循環される。
この時、前記混合タンク15と第1分散装置30との間に第2分散装置40が構成される。
【0053】
前記第2分散装置40は、第1分散装置30から前記混合タンク15に混合液が移動する連結管41に向かって配置されるレーザビーム装置43を含む。
前記連結管41は、前記貯蔵タンク31を経て混合タンク15に循環する混合液が移動する流路管20cの一定領域に形成される。
このような連結管41は、前記流路管20cと一体に形成されることができ、別に製作されて前記流路管20cと組み立てられることもできる。
【0054】
例えば、前記連結管41は光学ガラス(optical glass)からなる。
光学ガラス材質の前記連結管41は、前記レーザビーム43から照射されるレーザLを容易に吸収することができる。
前記のような第2分散装置40により前記炭素ナノチューブ1の曲げ区間3が選択的に切断(cutting)されて3次分散が行われる(
図3の矢印C参照)。
【0055】
この時、前記レーザビーム装置43で照射されるレーザのエネルギ量は250mJ/cm2以上600mJ/cm2以下の範囲で設定されることができる。
これは前記炭素ナノチューブ1の曲げ区間3の変形率より大きい値であり、前記曲げ区間3を除いた残りの領域は変形が無いようにする設定値である。
【0056】
前記のように構成される炭素ナノチューブの分散液製造システムを利用して炭素ナノチューブの分散液を製造する方法は次のとおりである。
図4は本発明の実施形態による炭素ナノチューブの分散液製造方法のフローチャートである。
【0057】
図4を参照すると、溶媒タンク11から設定量の溶媒を混合タンク15に供給し、炭素ナノチューブタンク13から設定量の炭素ナノチューブ1を混合タンク15に供給する(S10)。
【0058】
前記混合タンク15で攪拌機151を介して前記溶媒と炭素ナノチューブ1を混合して設定比率の混合液を製造する(S20)。
【0059】
混合タンク15で混合液が混合される間、前記混合液は前記第1分散装置30と第2分散装置40を経て前記混合装置10に戻ってくるように循環しながら分散するが、これについては後述する。ただし、循環過程、そして、循環する間行われる前記混合過程は混合液の炭素ナノチューブの濃度によって異なるように持続することができる。
【0060】
例えば、前記炭素ナノチューブ1と溶媒が混合されて炭素ナノチューブが0.1wt%の混合液になるようにすることができる。この時、前記混合液中の炭素ナノチューブ1が分散する前記循環過程を最小1時間から最大5時間以下で繰り返すことができる。
【0061】
または、前記炭素ナノチューブ1と溶媒が3wt%の混合液になるようにすることができ、この時、前記炭素ナノチューブ1が前記第1分散装置30と、第2分散装置40を通過する循環過程を最小5時間から最大24時間以下で繰り返すことができる。
【0062】
次に、前記混合液が第1分散装置30側に自動で移動する。
すなわち、前記第1分散装置30のロータ33の回転力によって前記混合装置10で混合された混合液が前記第1分散装置30側に吸い込まれながら移動する。
この時、前記ロータ33が回転することによって前記ロータ33とステータ35との間で前記炭素ナノチューブ1をデバンドリングさせて1次分散する(S30,
図3の矢印A参照)。
【0063】
前述のように1次分散した炭素ナノチューブ1は、前記ロータ33の回転力によって前記ステータ35の貫通穴351を通過して前記ステータ35の外部に排出される。
この時、前記炭素ナノチューブ1は、前記貫通穴351を通過しながら一定領域がベンディング(Bending)されて曲げ区間3が形成される2次分散が行われる(S40,
図3の矢印B参照)。
【0064】
前記曲げ区間3の変形率は最大となる。
すなわち、前記炭素ナノチューブ1の曲げ区間3で炭素と炭素との間の力が最小になる。
【0065】
次いで、2次分散した炭素ナノチューブ1は、前記ロータ33の回転によって第2分散装置40側に押されて移動する。
前記炭素ナノチューブ1は、レーザビーム装置43から照射されるレーザのエネルギによって曲げ区間3が切断(Cutting)される3次分散が行われる(S50,
図3の矢印C参照)。
【0066】
このようなレーザビーム装置43により前記炭素ナノチューブ1上の曲げ区間3のみ選択的に切断される。
すなわち、前記レーザが炭素ナノチューブ1の炭素間ファンデルワールス力を切ることである。
前記のような1次分散、2次分散、および3次分散を必要な時間だけ継続的に繰り返す。
【0067】
したがって、本発明の実施形態による炭素ナノチューブの分散液製造システムおよびそれを用いた炭素ナノチューブの分散液製造方法は、炭素ナノチューブ1を機械的力で損傷させることなく分散することができる。
【0068】
すなわち、前記炭素ナノチューブの分散液製造システムおよびそれを用いた炭素ナノチューブの分散液製造方法は、ロータ33とステータ35との間のせん断力P1によって前記炭素ナノチューブ1をデバンドリング後、遠心力P2によりベンディングさせて曲げ区間3を形成し、レーザを照射して前記炭素ナノチューブ1の炭素間二重結合エネルギ(C=C)に該当するエネルギを加えて前記曲げ区間3のみを選択的に切断することによって、前記炭素ナノチューブ1の物理的な損傷を最小化することができる。
【0069】
また、本発明の実施形態による炭素ナノチューブの分散液製造システムおよびそれを用いた炭素ナノチューブの分散液製造方法は、デバンドリング、ベンディング、および切断工程を一つの装置で同時に行って工程時間および費用を節減することができる。
【0070】
以上本発明の好ましい実施形態を図を参照して説明したが、該当技術分野における通常の知識を有する者であれば以下の特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させ得ることを理解することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 炭素ナノチューブ
3 曲げ区間
10 混合装置
11 溶媒タンク
13 炭素ナノチューブタンク
15 混合タンク
20a、20b、20c 流路管
30 第1分散装置
31 貯蔵タンク
33 ロータ
35 ステータ
40 第2分散装置
41 連結管
43 レーザビーム装置
131 自動フィーダ
151 攪拌機
331 回転軸
351 貫通穴