(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】スポーツシューズ
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20250218BHJP
A43B 13/22 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
A43B13/14 A
A43B13/22 A
(21)【出願番号】P 2020182055
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390010917
【氏名又は名称】ヨネックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 智和
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0283595(US,A1)
【文献】特開2002-045203(JP,A)
【文献】特開昭57-069802(JP,A)
【文献】実開昭58-195502(JP,U)
【文献】特開2016-093365(JP,A)
【文献】米国特許第07596889(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0252669(US,A1)
【文献】実開昭61-196606(JP,U)
【文献】特開2011-205999(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0067772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/14
A43B 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面に接するアウトソールを備えたスポーツシューズにおいて、
前記アウトソールは、少なくとも下面にて下方に突出しつつ交差する第1方向及び第2方向に複数並んで形成される突部を備え、
複数の前記突部は、中央形成部と、該中央形成部から前記第1方向の両側に突出する一対の第1外側形成部と、前記中央形成部から前記第2方向の両側に突出する一対の第2外側形成部とをそれぞれ備え、
前記第1外側形成部は、
前記第2方向に倒れるように変形した状態で前記第1方向に隣り合う他の前記突部の前記第1外側形成部に支えられるよう、前記第1方向に隣り合う他の前記突部の前記第1外側形成部と前記第2方向にて隣接または近傍配置され、
前記第2外側形成部は、
前記第1方向に倒れるように変形した状態で前記第2方向に隣り合う他の前記突部の前記第2外側形成部に支えられるよう、前記第2方向に隣り合う他の前記突部の前記第2外側形成部と前記第1方向にて隣接または近傍配置されることを特徴とするスポーツシューズ。
【請求項2】
前記第1外側形成部は、前記第2方向にて隣接または近傍配置される前記第1外側形成部同士が相互に接近及び離反する方向に変形する第1変形領域を備え、
前記第2外側形成部は、前記第1方向にて隣接または近傍配置される前記第2外側形成部同士が相互に接近及び離反する方向に変形する第2変形領域を備えていることを特徴とする請求項1に記載のスポーツシューズ。
【請求項3】
前記中央形成部の前記第2方向の幅に対し、前記第1外側形成部の前記第2方向の幅の方が小さく形成され、
前記中央形成部の前記第1方向の幅に対し、前記第2外側形成部の前記第1方向の幅の方が小さく形成される請求項1に記載のスポーツシューズ。
【請求項4】
前記第1外側形成部の一方は、前記第1外側形成部の他方に対して前記第2方向の形成位置がずれて形成され、
前記第2外側形成部の一方は、前記第2外側形成部の他方に対して前記第1方向の形成位置がずれて形成されることを特徴とする請求項1に記載のスポーツシューズ。
【請求項5】
前記第1方向及び前記第2方向は、直交二軸方向に設定されることを特徴とする請求項1に記載のスポーツシューズ。
【請求項6】
複数の前記突部の少なくとも1つにおける前記中央形成部に陥没部が形成されることを特徴とする請求項1に記載のスポーツシューズ。
【請求項7】
一対の前記第2外側形成部は、前記中央形成部の中心位置回りに一対の前記第1外側形成部を90°回転させた位置に形成されることを特徴とする請求項4に記載のスポーツシューズ。
【請求項8】
前記中央形成部は正方形状をなし、
前記第2方向において、前記第1外側形成部の幅は前記中央形成部の半分に形成され、
前記第1方向において、前記第2外側形成部の幅は前記中央形成部の半分に形成され、
前記中央形成部の前記第2方向における両端に一対の前記第1外側形成部が揃って配置され、
前記中央形成部の前記第1方向における両端に一対の前記第2外側形成部が揃って配置されることを特徴とする請求項4に記載のスポーツシューズ。
【請求項9】
前記アウトソールは、前記突部が形成されていない領域となる複数の凹部を備え、
前記凹部は、中央領域と、
前記突部の前記第1外側形成部及び前記第2外側形成部における前記中央形成部と反対側の端部と、該端部の近傍にて隣り合う他の前記突部の前記中央形成部との間にて前記中央領域に連なって形成される4つの隙間とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のスポーツシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトソールに複数の突部を備えたスポーツシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ用のシューズ、特にバドミントンシューズにおいては、バドミントンのプレーの性質上、種々のフットワークにてアウトソールの底面側と床面との滑りを規制するグリップ性能が要求される。かかるグリップ性能は、主として、アウトソールの底面に形成される複数の突出部によって発揮される。このようにアウトソールに複数の突出部を有するバドミントンシューズとしては、特許文献1に開示された構成が知られている。特許文献1では、アウトソールの底面に種々の方向に延びる溝が形成され、該溝によって四角形状や三角形状の突出部が複数並んで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシューズでは、突出部の平面積が大きくなって着地時等に変形し難くなるため、グリップ性能について改善の余地がある。ここで、シューズとしては、底側から見て小さい円形となるピン状の突部を万遍なく並べてアウトソールを形成する構成が考えられる。ところが、かかる構成では、特許文献1のシューズに比べて突部の変形が促進されるものの、該変形が大きくなり過ぎてしまい、グリップ性能を十分に発揮できなくなる、という問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、接地面に対するグリップ性能を良好に発揮することができるスポーツシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における一態様のスポーツシューズは、接地面に接するアウトソールを備えたスポーツシューズにおいて、前記アウトソールは、少なくとも下面にて下方に突出しつつ交差する第1方向及び第2方向に複数並んで形成される突部を備え、複数の前記突部は、中央形成部と、該中央形成部から前記第1方向の両側に突出する一対の第1外側形成部と、前記中央形成部から前記第2方向の両側に突出する一対の第2外側形成部とをそれぞれ備え、前記第1外側形成部は、前記第2方向に倒れるように変形した状態で前記第1方向に隣り合う他の前記突部の前記第1外側形成部に支えられるよう、前記第1方向に隣り合う他の前記突部の前記第1外側形成部と前記第2方向にて隣接または近傍配置され、前記第2外側形成部は、前記第1方向に倒れるように変形した状態で前記第2方向に隣り合う他の前記突部の前記第2外側形成部に支えられるよう、前記第2方向に隣り合う他の前記突部の前記第2外側形成部と前記第1方向にて隣接または近傍配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プレーヤの種々のフットワークにおける接地面への着地時等において、複数の突部の第1外側形成部や第2外側形成部を変形させてグリップ性能を発揮することができる。更に、第1外側形成部や第2外側形成部にあっては、隣り合う突部の第1外側形成部や第2外側形成部が隣接または近傍配置される位置関係となる。このため、かかる位置関係の何れか一方が何れか他方を支えるようになって過大な変形が発生することを抑制できる。言い換えると、着地時等において、第1外側形成部や第2外側形成部を適度に変形させることができ、突部によるグリップ性能を良好に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るバドミントンシューズのアウトソールを示す下面図である。
【
図5】後方からの力で突部が変形した状態を示す
図2と同様の説明図である。
【
図6】外足側からの力で突部が変形した状態を示す
図2と同様の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下においては、本発明のスポーツシューズをバドミントンシューズに適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、多種のいかなるスポーツ種目のシューズ、たとえばテニスシューズ、ゴルフシューズの他、日常のタウンユースのシューズや、ウォーキングシューズ、ジョギングシューズにも適用することができ、その利用範囲は広いものである。
【0010】
図1は、実施の形態に係るバドミントンシューズのアウトソールを示す下面図である。なお、以下の各図では、説明の便宜上、一部の構成を省略する場合がある。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、
図1中矢印にて示すように、シューズの長手方向を前後方向とし、つま先側を前側、かかと側を後側とする。また、シューズのアウトソールを接地させた状態の鉛直方向を上下方向とし、紙面直交方向手前側を下側、奥行側を上側とする。更に、前後及び上下方向に直交する方向(
図1中左右方向)を足幅方向とし、親指側を内足側、小指側を外足側とする。ここにおいて、足幅方向が第1方向、前後方向が第2方向とされ、第1方向及び第2方向は直交二軸方向とされる。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態のバドミントンシューズ1は、その底面(下面)、言い換えると、体育館の床面等の接地面G(
図4A及び
図4B参照)に接するときの接地側にアウトソール10を備えている。このアウトソール10には軟質な合成樹脂材料が使用され、合成樹脂材料としては、ゴム、ウレタンなどを例示できる。アウトソール10の上面には、発泡ポリウレタンやEVA等の衝撃吸収性に優れた軟質弾性体製のミッドソール(不図示)が貼り合わされている。かかるミッドソール及びアウトソール10によって、バドミントンシューズ1の靴底3が形成される。ミッドソールの周縁には、アッパー部材(不図示)の下縁部が一体的に貼り付けられてバドミントンシューズ1が形成される。
【0012】
アウトソール10において、足の土踏まずに対応する領域となる土踏まず対応部12が前足部11と踵部13とに前後方向から挟まれて配置される。言い換えると、土踏まず対応部12の前方に前足部11、後方に踵部13が形成される。
【0013】
アウトソール10は、主として土踏まず対応部12に形成される窪み部15を備えている。窪み部15は、足幅方向にて内足側がアウトソール10の外部に開放され、外足側はアウトソール10で閉塞されている。また、窪み部15は、アウトソール10の足幅方向中央部にて、前足部11の後部から土踏まず対応部12を通過して踵部13の中心部分に亘って形成されている。窪み部15は、アウトソール10の足幅方向中央部から内足側の開放部に向かい窄まった形状を有している。
【0014】
前足部11には、窪み部15の前端から概ね前方に延びるL字状の屈曲溝11aと、屈曲溝11aの前端から前側及び内足側に分岐して延びる分岐溝11bとが形成されている。踵部13の前後方向中央部には、足幅方向に対して若干傾斜する傾斜溝13aが形成されている。踵部13の後方外足側は、格子状に延出する複数本の溝13bが形成されている。
【0015】
アウトソール10は、下方から見て複数並んで形成される突部20を備えている。突部20は、アウトソール10における屈曲溝11a、分岐溝11b、傾斜溝13a、溝13b及び窪み部15の形成領域以外に形成される。
【0016】
突部20の形状や向きは、アウトソール10の場所によって異なって形成される。本実施の形態では、アウトソール10の3つの領域で異なって形成され、かかる3つの領域を第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3とする。
【0017】
第1領域A1は、前足部11において分岐溝11bより前側及び内足側の領域とされる。また、第1領域A1は、前足部11において足幅方向に延びる分岐溝11b、屈曲溝11a及び窪み部15に囲まれる領域も含む。第2領域A2は、足幅方向にて屈曲溝11a、分岐溝11b及び窪み部15より外足側の領域とされる。また、第2領域A2は、前後方向にて前足部11の前端から傾斜溝13aに亘る領域とされる。第3領域A3は、踵部13にて傾斜溝13a、溝13b及び窪み部15が形成されていない領域とされる。
【0018】
先ず、以下において、第1領域A1に形成される突部20について
図1に加えて
図2を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、第1領域A1におけるアウトソール10の複数の突部20は、直交する方向となる足幅方向及び前後方向に並んで形成される。各突部20は、アウトソール10の下面にて下方に突出するように形成されている。
【0020】
第1領域A1の各突部20は、下方から見た形状が同一であり、概ね風車形状に形成されている。なお、アウトソール10にて屈曲溝11a、分岐溝11b、窪み部15及び外足側の外縁に隣接する突部20は、かかる隣接位置付近で切断された形状に設けられる。また、アウトソール10の内足側の外縁に隣接する突部20は、内足側の外縁から立ち上がるアウトソール10の側面(不図示)に回り込むようにして連続して形成される。よって、複数の突部20は、アウトソール10の下面だけでなく側面にも形成される。
【0021】
図2は、突部の拡大説明図である。
図2に示すように、複数の突部20は、下方から見て中央の正方形状の領域をなす中央形成部21と、中央形成部21から足幅方向の両側に突出する一対の第1外側形成部23と、中央形成部21から前後方向の両側に突出する一対の第2外側形成部24とをそれぞれ備えている。なお、各突部20は、
図2の紙面手前側となる下方に向かって平面形状が小さくなる形状に形成されている。よって、各突部20は、
図1及び
図2にて外縁が平行な2本の線によって表されている。
【0022】
各突部20では、前後方向において、各第1外側形成部23の幅が中央形成部21の幅より小さく形成され、具体的には中央形成部21の幅の半分ぐらいに形成されている。また、各突部20において、内足側の第1外側形成部23における後端と中央形成部21の後端とが揃って配置されている。よって、中央形成部21の前後方向後半部分から内足側の第1外側形成部23が内足側に突出して形成されている。
【0023】
更に、各突部20において、外足側の第1外側形成部23における前端と中央形成部21の前端とが揃って配置されている。よって、中央形成部21の前後方向前半部分から外足側の第1外側形成部23が外足側に突出して形成されている。このように、内足側の第1外側形成部23(一対の第1外側形成部23の一方)は、外足側の第1外側形成部23(一対の第1外側形成部23の他方)に対して前後方向の形成位置がずれて形成されている。
【0024】
各突部20において、各第2外側形成部24は、中央形成部21の中心位置回りに各第1外側形成部23を90°回転させた位置に形成される。詳述すると、各突部20では、足幅方向において、各第2外側形成部24の幅が中央形成部21の幅より小さく形成され、具体的には中央形成部21の幅の半分ぐらいに形成されている。また、各突部20において、前側の第2外側形成部24における内足側の端部と中央形成部21における内足側の端部とが揃って配置されている。よって、中央形成部21の足幅方向にて内足側の半分部分から前側の第2外側形成部24が前方に突出して形成されている。
【0025】
更に、各突部20において、後側の第2外側形成部24における外足側の端部と中央形成部21における外足側の端部とが揃って配置されている。よって、中央形成部21の足幅方向にて外足側の半分部分から後側の第2外側形成部24が後方に突出して形成されている。このように、前側の第2外側形成部24(一対の第2外側形成部24の一方)は、後側の第2外側形成部24(一対の第2外側形成部24の他方)に対して足幅方向の形成位置がずれて形成されている。
【0026】
上記のように各第1外側形成部23及び各第2外側形成部24の幅や形成位置を設定することで、各突部20の並び方向にて隣り合う突部20を接近させることができる。これにより、アウトソール10における突部20の形成数を増やす設計を採用可能となる。
【0027】
各突部20は、アウトソール10の下面にて、アウトソール10の外縁や屈曲溝11a、分岐溝11b、窪み部15(何れも
図1参照)に隣接する場合を除き、足幅方向及び前後方向にて他の突部20と隣り合っている。足幅方向に隣り合う突部20同士は、それらの第1外側形成部23が前後方向に隣接して配置される。詳述すると、各突部20において、内足側の第1外側形成部23の前端は、内足側に隣り合う他の突部20の外足側の第1外側形成部23の後端と隣接して配置される。言い換えると、各突部20において、外足側の第1外側形成部23の後端は、外足側に隣り合う他の突部20の内足側の第1外側形成部23の前端と隣接して配置される。
【0028】
第1外側形成部23は第1変形領域23aを備え、かかる第1変形領域23aは前後方向に隣接して配置される第1外側形成部23に対向する領域とされる。
【0029】
前後方向に隣り合う突部20同士は、それらの第2外側形成部24が足幅方向に隣接して配置される。詳述すると、各突部20において、前側の第2外側形成部24の外足側の端部は、前側に隣り合う他の突部20の後側の第2外側形成部24の内足側の端部と隣接して配置される。言い換えると、各突部20において、後側の第2外側形成部24の内足側の端部は、後側に隣り合う他の突部20の前側の第2外側形成部24の外足側の端部と隣接して配置される。
【0030】
第2外側形成部24は第2変形領域24aを備え、かかる第2変形領域24aは足幅方向に隣接して配置される第2外側形成部24に対向する領域とされる。
【0031】
ここで、各突部20において、各第1外側形成部23及び各第2外側形成部24における中央形成部21と反対側の端部と、該端部の近傍にて隣り合う他の突部20の中央形成部21との間には、隙間26が形成される。かかる隙間26は、アウトソール10にて突部20が形成されていない領域となる。本実施の形態において、足幅方向及び前後方向に並ぶ4体の突部20で囲まれる領域は、4つの隙間26を含めて突部20に類似した風車形状に形成される。かかる風車形状の領域によって上方(図中紙面奥行き側)に凹む凹部27が形成され、凹部27における隙間26を除く領域が概ね正方形状の中央領域28として形成される。
【0032】
ここで、第1外側形成部23及び第2外側形成部24について
図3及び
図4を用いて更に説明する。
図3は、
図1の一部を拡大した突部の説明図である。
図4Aは、
図3のA-A線端面図であり、
図4Bは、
図3のB-B線端面図である。
図3及び
図4Aに示すように、各第1外側形成部23は下方に向かって次第に細くなる形状に形成される。よって、相互に隣接する第1外側形成部23の間は、断面視でV字形状の溝が形成され、該溝の上部(底部)にて第1外側形成部23同士が接している。
【0033】
また、
図4Bに示すように、各第2外側形成部24においても下方に向かって次第に細くなる形状に形成される。よって、相互に隣接する第2外側形成部24の間は、断面視でV字形状の溝が形成され、該溝の上部(底部)にて第2外側形成部24同士が接している。なお、本実施の形態のアウトソール10においては、
図4Aに示す形状と
図4Bに示す形状とは同一となる。
【0034】
図1に戻り、第2領域A2の突部20は、上述した第1領域A1の突部20に対し、中央形成部21の中心位置に円形の陥没部21aを形成している。第2領域A2の突部20は、陥没部21aを形成したことを除いては第1領域A1の突部20と同様に形成される。また、第3領域A3の突部20は、第2領域A2の突部20に対して向きを変更しており、
図1にて若干反時計方向に傾いた向きに並んで形成されている。第3領域A3の突部20は、突部20の向き及び並び方向を変更したことを除いては第2領域A2の突部20と同様に形成される。陥没部21aを形成していない突部20は、陥没部21aを形成した突部20より剛性が高くなる。本実施の形態では、親指及び母指球部分に対応する第1領域A1にて突部20に陥没部21aを形成しない構成として剛性を高めている。なお、アウトソール10のそれぞれの突部20における陥没部21aの形成及び非形成は自由に選択することができる。例えば、アウトソール10の全ての突部20に陥没部21aを形成する構成、アウトソール10の全ての突部20に陥没部21aを形成しない構成、或いは複数の突部20の少なくとも1つに陥没部21aを形成する構成を採用してもよい。また、第1~第3領域A1~A3の少なくとも1つの領域の各突部20に陥没部21aを形成し、それ以外の領域の各突部20に陥没部21aを形成しない構成を採用してもよい。
【0035】
続いて、アウトソール10が接地面G(
図4A参照)に着地した際(以下、「着地時」とする)の各突部20の弾性変形について説明する。着地時には、プレーヤの動きに応じ、接地面Gからアウトソール10に種々の方向から力が加わることとなる。凹部27にて、中央領域28は足幅方向及び前後方向の両方のサイズが大きくなるので、該中央領域28から突部20に向かって力が作用し易くなる。以下にて、先ず、バドミントンシューズ1が後方への移動中に接地面Gに着地し、各突部20に対して後から前に向かう力(後方からの力)が加わった場合について
図5を参照して説明する。
【0036】
図5は、後方からの力で突部が変形した状態を示す
図2と同様の拡大図である。なお、
図5の突部の変形は、簡素化して一部分だけ変形した状態を図示している(後述する
図6も同様)。
図5に示すように、各突部20に後方からの力が加わった場合、凹部27の中央領域28にて後から前に向かう力が作用する。これにより、中央領域28の前側に対向する内足側の第1外側形成部23が前方に向かって倒れるように弾性的に変形する。この変形によって、内足側の第1外側形成部23が接地面G(
図4A参照)に恰も引っ掛かるようになる。これにより、着地時にアウトソール10が接地面Gに対し後方に滑ることを規制でき、後方へのグリップ性能を発揮することができる。
【0037】
外足側の第1外側形成部23は、外足側に隣り合う突部20の内足側の第1外側形成部23によって後方から覆われた状態となる。よって、外足側の第1外側形成部23には、内足側の第1外側形成部23に比べて作用する力が小さくなり、変形量も小さくなる。変形量が小さくなる外足側の第1外側形成部23にあっては、前方に倒れるように変形する他の突部20の内足側の第1外側形成部23を支えることによって、過大な変形が発生することを抑制することができる。その結果、内足側の第1外側形成部23を適度に変形させ、後方へのグリップ性能を良好に発揮することができる。
【0038】
内足側の第1外側形成部23は、第1変形領域23aが前方に隣接する外足側の第1外側形成部23に接近する方向に変形する。加わっていた力が解除されると、第1変形領域23aが前方に隣接する外足側の第1外側形成部23から離反する方向に復元(変形)する。
【0039】
中央形成部21は、中央領域28と前後方向に重ならず、第1外側形成部23に比べて前後方向の長さが長くなる。前後両方の第2外側形成部24は、中央領域28と前後方向に重ならずに中央形成部21と前後方向に重なって配置される。これにより、中央形成部21及び各第2外側形成部24は、後方からの力が加わった場合に内足側の第1外側形成部23に比べて変形量が小さくなる。このように小さい変形量となる中央形成部21及び各第2外側形成部24は、内足側の第1外側形成部23と異なるタイミングで変形して所定のグリップ性能を発揮することができる。
【0040】
図5では、後方からの力が各突部20に加わった場合を説明したが、後方から所定角度変位した方向から力が加わった場合も、
図5と類似した形状に各突部20が変形する。具体例を挙げると、
図5中で5時から8時方向から加わる力に対し、
図5と類似した形状に各突部20が変形し、力の加わる方向へのグリップ性能を発揮することができる。
【0041】
また、前方からの力が各突部20に加わった場合、
図5を180°回転した状態となって前方へのグリップ性能を発揮することができる。更に、前方から所定角度変位した方向から力が加わった場合も、
図5を180°回転した状態に対して類似した形状に各突部20が変形する。具体例を挙げると、
図5中で11時から2時方向から加わる力に対し、
図5と類似した形状に各突部20が変形し、力の加わる方向へのグリップ性能を発揮することができる。
【0042】
続いて、バドミントンシューズ1が外足側への移動中に接地面Gに着地し、各突部20に対して外足側から内足側に向かう力(外足側からの力)が加わった場合について
図6を参照して説明する。
【0043】
図6は、外足側からの力で突部が変形した状態を示す
図2と同様の拡大図である。
図6に示すように、各突部20に外足側からの力が加わった場合、凹部27の中央領域28にて外足側から内足側に向かう力が作用する。これにより、中央領域28の内足側に対向する後側の第2外側形成部24が内足側に向かって倒れるように弾性的に変形する。この変形によって、後側の第2外側形成部24が接地面G(
図4A参照)に恰も引っ掛かるようになる。これにより、着地時にアウトソール10が接地面Gに対し外足側に滑ることを規制でき、外足側へのグリップ性能を発揮することができる。
【0044】
前側の第2外側形成部24は、前側に隣り合う突部20の後側の第2外側形成部24によって外足側から覆われた状態となる。よって、前側の第2外側形成部24には、後側の第2外側形成部24に比べて作用する力が小さくなり、変形量も小さくなる。変形量が小さくなる前側の第2外側形成部24にあっては、内足側に倒れるように変形する他の突部20の後側の第2外側形成部24を支えることによって、過大な変形が発生することを抑制することができる。その結果、後側の第2外側形成部24を適度に変形させ、グリップ性能を良好に発揮することができる。
【0045】
後側の第2外側形成部24は、第2変形領域24aが内足側に隣接する前側の第2外側形成部24に接近する方向に変形する。加わっていた力が解除されると、第2変形領域24aが内足側に隣接する前側の第2外側形成部24から離反する方向に復元(変形)する。
【0046】
中央形成部21は、中央領域28と足幅方向に重ならず、第2外側形成部24に比べて足幅方向の長さが長くなる。足幅方向両方の第1外側形成部23は、中央領域28と足幅方向に重ならずに中央形成部21と足幅方向に重なって配置される。これにより、中央形成部21及び各第1外側形成部23は、外足側からの力が加わった場合に後側の第2外側形成部24に比べて変形量が小さくなる。このように小さい変形量となる中央形成部21及び各第1外側形成部23は、後側の第2外側形成部24と異なるタイミングで変形して所定のグリップ性能を発揮することができる。
【0047】
図6では、外足側からの力が各突部20に加わった場合を説明したが、外足側から所定角度変位した方向から力が加わった場合も、
図6と類似した形状に各突部20が変形する。具体例を挙げると、
図6中で2時から5時方向から加わる力に対し、
図5と類似した形状に各突部20が変形し、力の加わる方向へのグリップ性能を発揮することができる。
【0048】
また、内足側からの力が各突部20に加わった場合、
図6を180°回転した状態となって内足側へのグリップ性能を発揮することができる。更に、内足側から所定角度変位した方向から力が加わった場合も、
図6を180°回転した状態に対して類似した形状に各突部20が変形する。具体例を挙げると、
図6中で8時から11時方向から加わる力に対し、
図6と類似した形状に各突部20が変形し、力の加わる方向へのグリップ性能を発揮することができる。
【0049】
以上のように、本実施の形態では、隣接する第1外側形成部23や隣接する第2外側形成部24の変形によって、着地時の360°何れの方向でもグリップ性能を良好に発揮することができる。これにより、力強く踏ん張ることが可能となる。この結果、着地時の反射的な動きや切り返し動作を安定させることができ、素早くスムーズなフットワークを実現することが可能となる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、方向などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0051】
例えば、上記実施の形態では、第1領域A1及び第2領域A2にて、突部20の並び方向となる第1方向を足幅方向、第2方向を前後方向とした直交二軸方向としたが、これに限られるものでない。突部20の並び方向は、第3領域A3のように足幅方向及び前後方向に対して傾いてもよく、湾曲したり曲がったりした方向としてもよい。また、第1方向及び第2方向は、交差する方向であれば、直交に限定されるものでない。
【0052】
また、
図4Aに示すように前後方向にて第1外側形成部23を隣接するように配置したが、上記実施の形態と同様の性能を発揮する限りにおいて、隣り合う第1外側形成部23の間に隙間を設けて第1外側形成部23同士が近傍配置される位置関係としてもよい。
同様に、
図4Bに示すように足幅方向にて第2外側形成部24を隣接するように配置したが、上記実施の形態と同様の性能を発揮する限りにおいて、隣り合う第2外側形成部24の間に隙間を設けて第2外側形成部24同士が近傍配置される位置関係としてもよい。
【0053】
また、突部20の中央形成部21、第1外側形成部23及び第2外側形成部24、並びに凹部27の隙間26及び中央領域28は、図示した形状に限られず、他の長方形や、多角形、円形、楕円形等にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、アウトソールに複数並んで形成される突部のグリップ性能を良好に発揮できるスポーツシューズに関する。
【符号の説明】
【0055】
1 バドミントンシューズ(スポーツシューズ)
10 アウトソール
20 突部
21 中央形成部
23 第1外側形成部
23a 第1変形領域
24 第2外側形成部
24a 第2変形領域
G 接地面