(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】ロールトレインで圧延材(rolling stock)断面を変化させるための操作変数の周波数に依存した分配
(51)【国際特許分類】
B21B 37/28 20060101AFI20250218BHJP
B21B 37/20 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
B21B37/28 130
B21B37/20 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021008723
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-12-04
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516128728
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ローヘ
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-303611(JP,A)
【文献】特開平5-119806(JP,A)
【文献】特開2015-131337(JP,A)
【文献】特開2015-166093(JP,A)
【文献】特開2003-305509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/31776(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00 - 37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属から構成された圧延材(2)を圧延するためのロールトレイン(1)のための動作方法であって、
- 前記ロールトレイン(1)が、複数の圧延スタンド(3a~3f)を有しており、前記圧延材(2)が、前記
複数の圧延スタンド(3a~3f)に関して一定の移送方向(x)に、前記複数の圧延スタンド(3a~3f)を連続的に通過し、前記圧延材(2)が前記
複数の圧延スタンド(3a~3f)で連続的に圧延されるという結果を伴い、
- 前記圧延材(2)が前記ロールトレイン(1)の特定の圧延スタンド(3e)から出ることが想定される断面の変化に特有である
特有変数(δQ)に基づいて、前記ロールトレイン(1)の制御デバイス(4)が、前記
特定の圧延スタンド(3e)、および、前記移送方向(x)に見たときに前記
特定の圧延スタンド(3e)の上流に配置されている前記ロールトレイン(1)のいくつかの圧延スタンド(3b~3d)に関して、それぞれの暫定的な操作変数(Sb~Se)を最初に決定し、また、前記それぞれの暫定的な操作変数(Sb~Se)を使用して、それぞれの最終的な操作変数(Sb’~Se’)を決定し、
- 前記それぞれの最終的な操作変数(Sb’~Se’)が、前記圧延材(2)が前記ロールトレイン(1)
のそれぞれの
前記圧延スタンド(3b~3e)から出るときの前記断面に影響を与え、
- 前記制御デバイス(4)が、前記それぞれの最終的な操作変数(Sb’~Se’)にしたがって前記圧延スタンド(3b~3e)を作動させる、動作方法において、
- 前記制御デバイス(4)が、前記特有変数(δQ)のまたは前記特有変数(δQ)から決定される中間変数(Zb~Zd)のそれぞれの周波数フィルタリングによって、
前記特定の圧延スタンド(3e)の上流に配置されている前記
いくつかの圧延スタンド(3b~3d)に関する前記それぞれの暫定的な操作変数(Sb~Sd)を決定し、
- 前記周波数フィルタリングの動作が、
前記特定の圧延スタンド(3e)の上流に配置されている前記
いくつかの圧延スタンド(3b~3d)に関する前記それぞれの暫定的な操作変数(Sb~Sd)の決定が、それぞれ、それぞれの制限周波数(fb~fd)を下回る前記特有変数(δQ)の周波数成分のみを含むように構成されており、
- 前記移送方向(x)に見たときに前記特定の圧延スタンド(3e)の上流にある前記ロールトレイン(1)の前記いくつかの圧延スタンド(3b~3d)に関して、前記制限周波数(fb~fd)が、それぞれ、同じままになっているか、または、圧延スタンド(3b~3d)ごとに増加しており、
- 前記制御デバイス(4)が、前記特定の圧延スタンド(3e)に関する前記暫定的な操作変数(Se)を決定し、前記特定の圧延スタンド(3e)に関する前記暫定的な操作変数(Se)の前記決定が、前記移送方向(x)に見たときに前記特定の圧延スタンド(3e)の直ぐ上流にある前記圧延スタンド(3d)の前記制限周波数(fd)を上回る前記特有変数(δQ)の少なくとも
前記周波数成分を含むようになっていることを特徴とする、動作方法。
【請求項2】
- 前記制御デバイス(4)が
、前記特有変数(δQ)に基づいて、前記ロールトレイン(1)の前記特定の圧延スタンド(3e)に関する前記暫定的な操作変数(Se)を決定し、
- 前記制御デバイス(4)が
、それぞれの
前記中間変数(Zb~Zd)の周波数フィルタリングによって、
前記特定の圧延スタンド(3e)の上流に配置されている前記
いくつかの圧延スタンド(3b~3d)に関する前記暫定的な操作変数(Sb~Sd)を決定し、
- 前記制御デバイス(4)が、前記移送方向(x)に見たときに直ぐ下流に配置されてい
るそれぞれの
前記圧延スタンド(3c~3e)に関する前記最終的な操作変数(Sc’~Se’)に基づいて
、それぞれの
前記中間変数(Zb~Zd)を決定することを特徴とする、請求項1に記載の動作方法。
【請求項3】
- 前記制御デバイス(4)が
、それぞれの圧延スタンド(3c~3e)に関する前記暫定的な操作変数(Sc~Se)に基づいて、および、それぞれの補正変数(Sc”~Se”)に基づいて、
前記それぞれの圧延スタンド(3c~3e)に関する前記それぞれの最終的な操作変数(Sc’~Se’)を決定し、
- 前記制御デバイス(4)が、前記移送方向(x)に見たときに直ぐ上流に配置されてい
るそれぞれの
前記圧延スタンド(3b~3d)の前記暫定的な操作変数(Sb~Sd)に基づいて、前記それぞれの補正変数(Sc”~Se”)を決定することを特徴とする、請求項1または2に記載の動作方法。
【請求項4】
前記制御デバイス(4)が、前記移送方向(x)に見たときに直ぐ上流に配置されている前記圧延スタンド(3b~3d)の前記暫定的な操作変数(Sb~Sd)に関して、それぞれの遅延時間(Tc~Te)だけ、前記それぞれの補正変数(Sc”~Se”)を遅延させることを特徴とする、請求項3に記載の動作方法。
【請求項5】
前記制御デバイス(4)が、それぞれの制限エレメント(18)によって、前記最終的な操作変数(Sb’~Se’)を制限することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項6】
プログラムコード(6)を含む制御プログラムであって、前記プログラムコード(6)が、複数の圧延スタンド(3a~3f)を有するロールトレイン(1)のための制御デバイス(4)によって実行され得、前記プログラムコード(6)の実行が、請求項1から5のいずれか一項に記載の動作方法にしたがって前記制御デバイス(4)が前記ロールトレイン(1)を制御するという効果を有する、制御プログラム。
【請求項7】
金属から構成された圧延材(2)を圧延するためのロールトレイン(1)のための制御デバイスであって、前記ロールトレイン(1)が、複数の圧延スタンド(3a~3f)を有しており、前記圧延材(2)が、前記
複数の圧延スタンド(3a~3f)に関して一定の移送方向(x)に、前記複数の圧延スタンド(3a~3f)を連続的に通過し、前記圧延材(2)が前記
複数の圧延スタンド(3a~3f)で連続的に圧延されるという結果を伴い、
- 前記制御デバイスが、決定経路(9b~9e)を有しており、前記決定経路(9b~9e)によって、前記圧延材(2)が前記ロールトレイン(1)の特定の圧延スタンド(3e)から出ることが想定される断面の変化に特有である
特有変数(δQ)に基づいて、前記制御デバイス(4)が、前記
特定の圧延スタンド(3e)、および、前記移送方向(x)に見たときに前記
特定の圧延スタンド(3e)の上流に配置されている前記ロールトレイン(1)のいくつかの圧延スタンド(3b~3d)に関して、それぞれの暫定的な操作変数(Sb~Se)を最初に決定し、また、前記それぞれの暫定的な操作変数(Sb~Se)を使用して、それぞれの最終的な操作変数(Sb’~Se’)を決定し、
- 前記それぞれの最終的な操作変数(Sb’~Se’)が、前記圧延材(2)が前記ロールトレイン(1)
のそれぞれの
前記圧延スタンド(3b~3e)から出るときの前記断面に影響を与え、
- 前記制御デバイスが、前記それぞれの最終的な操作変数(Sb’~Se’)にしたがって前記圧延スタンド(3b~3e)を作動させる、制御デバイスにおいて、
-
前記特定の圧延スタンド(3e)の上流に配置されている前記
いくつかの圧延スタンド(3b~3d)の前記決定経路(9b~9d)が、周波数フィルター(11b~11d)を有しており、前記周波数フィルター(11b~11d)によって、前記制御デバイスが、前記特有変数(δQ)のまたは前記特有変数(δQ)から決定される中間変数(Zb~Zd)のそれぞれの周波数フィルタリングによって、
前記特定の圧延スタンド(3e)の上流に配置されている前記
いくつかの圧延スタンド(3b~3d)に関する前記それぞれの暫定的な操作変数(Sb~Sd)を決定し、
- 前記周波数フィルター(11b~11d)が、
前記特定の圧延スタンド(3e)の上流に配置されている前記
いくつかの圧延スタンド(3b~3d)に関する前記それぞれの暫定的な操作変数(Sb~Sd)の決定が、それぞれ、それぞれの制限周波数(fb~fd)を下回る前記特有変数(δQ)の周波数成分のみを含むように設計されており、
- 前記移送方向(x)に見たときに前記特定の圧延スタンド(3e)の上流にある前記ロールトレイン(1)の前記いくつかの圧延スタンド(3b~3d)に関して、前記制限周波数(fb~fd)が、それぞれ、同じままになっているか、または、圧延スタンド(3b~3d)ごとに増加しており、
- 前記特定の圧延スタンド(3e)のための前記決定経路(9e)が、前記特定の圧延スタンド(3e)に関する前記暫定的な操作変数(Se)の決定が、前記移送方向(x)に見たときに前記特定の圧延スタンド(3e)の直ぐ上流にある前記圧延スタンド(3d)の前記制限周波数(fd)を上回る前記特有変数(δQ)の少なくとも
前記周波数成分を含むように設計されていることを特徴とする、制御デバイス。
【請求項8】
- 前記制御デバイスが、前記ロールトレイン(1)の前記特定の圧延スタンド(3e)のための前記決定経路(9e)に前記特有変数(δQ)を給送し、
- 前記制御デバイスが、
前記特定の圧延スタンド(3e)の上流に配置されている前記
いくつかの圧延スタンド(3b~3d)のための前記決定経路(9b~9d)
にそれぞれの
前記中間変数(Zb~Zd)を給送し、
- 前記制御デバイスが、中間ブロック(13c~13e)を有しており、前記中間ブロック(13c~13e)によって、前記移送方向(x)に見たときに直ぐ下流に配置されてい
るそれぞれの
前記圧延スタンド(3c~3e)に関する前記最終的な操作変数(Sc’~Se’)に基づいて、
前記特定の圧延スタンド(3e)の上流に配置されている前記
いくつかの圧延スタンド(3b~3d)のため
のそれぞれの
前記中間変数(Zb~Zd)を決定することを特徴とする、請求項7に記載の制御デバイス。
【請求項9】
- 前記決定経路(9c~9e)が、ノード(14c~14e)を有しており、前記ノード(14c~14e)において、前記制御デバイスが
、それぞれの
前記圧延スタンド(3c~3e)に関する前記それぞれの暫定的な操作変数(Sc~Se)の付加によって、および、それぞれの補正変数(Sc”~Se”)の付加によって、前記それぞれの最終的な操作変数(Sc’~Se’)を決定し、
- 前記制御デバイスが、ブリッジエレメント(15c~15e)を有しており、前記ブリッジエレメント(15c~15e)によって、前記制御デバイスが、前記移送方向(x)に見たときに直ぐ上流に配置されてい
るそれぞれの
前記圧延スタンド(3b~3d)の前記暫定的な操作変数(Sb~Sd)に基づいて、前記それぞれの補正変数(Sc”~Se”)を決定することを特徴とする、請求項7または8に記載の制御デバイス。
【請求項10】
前記ブリッジエレメント(15c~15e)が、遅延エレメント(17c~17e)を有しており、前記遅延エレメント(17c~17e)によって、前記制御デバイスが、前記移送方向(x)に見たときに直ぐ上流に配置されている前記圧延スタンド(3b~3d)の前記暫定的な操作変数(Sb~Sd)に関して、それぞれの遅延時間(Tc~Te)だけ、前記それぞれの補正変数(Sc”~Se”)を遅延させることを特徴とする、請求項9に記載の制御デバイス。
【請求項11】
前記決定経路(9b~9e)が、それぞれの制限エレメント(18)を有しており、前記それぞれの制限エレメント(18)によって、前記制御デバイスが、前記それぞれの最終的な操作変数(Sb’~Se’)を制限することを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の制御デバイス。
【請求項12】
ソフトウェアプログラマブルデバイスとして設計されていることを特徴とする、請求項7から11のいずれか一項に記載の制御デバイス。
【請求項13】
平坦な圧延材(2)のためのロールトレインであって、
- 前記ロールトレインが、複数の圧延スタンド(3a~3f)を有しており、前記圧延材(2)が、前記
複数の圧延スタンド(3a~3f)に関して一定の移送方向(x)に、前記複数の圧延スタンド(3a~3f)を連続的に通過し、前記圧延材(2)が前記
複数の圧延スタンド(3a~3f)で連続的に圧延されるという結果を伴い、
- 前記ロールトレインが、制御デバイス(4)を有しており、前記制御デバイス(4)によって、前記ロールトレインの前記
複数の圧延スタンド(3a~3f)が制御される、ロールトレインにおいて、
前記制御デバイス(4)が、請求項7から12のいずれか一項に記載の制御デバイスとして設計されていることを特徴とする、ロールトレイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属から構成された圧延材を圧延するためのロールトレインのための動作方法であって、
- ロールトレインは、複数の圧延スタンドを有しており、圧延材は、圧延スタンドに関して一定の移送方向に、複数の圧延スタンドを連続的に通過し、圧延材が圧延スタンドで連続的に圧延されるという結果を伴い、
- 圧延材がロールトレインの特定の圧延スタンドから出ることが想定される断面の変化に特有である変数に基づいて、ロールトレインの制御デバイスは、この圧延スタンド、および、移送方向に見たときに前記圧延スタンドの上流に配置されているロールトレインのいくつかの圧延スタンドに関して、それぞれの暫定的な操作変数を最初に決定し、また、それぞれの暫定的な操作変数を使用して、それぞれの最終的な操作変数を決定し、
- それぞれの最終的な操作変数は、圧延材がロールトレインのそれぞれの圧延スタンドから出る断面に影響を与え、
- 制御デバイスは、それぞれの最終的な操作変数にしたがって圧延スタンドを作動させる、動作方法から開始する。
【0002】
そのうえ、本発明は、プログラムコードを含む制御プログラムであって、プログラムコードは、複数の圧延スタンドを有するロールトレインのための制御デバイスによって実行され得、プログラムコードの実行は、この種類の動作方法にしたがって制御デバイスがロールトレインを制御するという効果を有する、制御プログラムから開始する。
【0003】
そのうえ、本発明は、金属から構成された圧延材を圧延するためのロールトレインのための制御デバイスであって、ロールトレインは、複数の圧延スタンドを有しており、圧延材は、圧延スタンドに関して一定の移送方向に、複数の圧延スタンドを連続的に通過し、圧延材が圧延スタンドで連続的に圧延されるという結果を伴い、
- 制御デバイスは、決定経路を有しており、決定経路によって、圧延材がロールトレインの特定の圧延スタンドから出ることが想定される断面の変化に特有である変数に基づいて、制御デバイスは、この圧延スタンド、および、移送方向に見たときに前記圧延スタンドの上流に配置されているロールトレインのいくつかの圧延スタンドに関して、それぞれの暫定的な操作変数を最初に決定し、また、それぞれの暫定的な操作変数を使用して、それぞれの最終的な操作変数を決定し、
- それぞれの最終的な操作変数は、圧延材がロールトレインのそれぞれの圧延スタンドから出る断面に影響を与え、
- 制御デバイスは、それぞれの最終的な操作変数にしたがって圧延スタンドを作動させる、制御デバイスから開始する。
【0004】
そのうえ、本発明は、平坦な圧延材のためのロールトレインであって、
- ロールトレインは、複数の圧延スタンドを有しており、圧延材は、圧延スタンドに関して一定の移送方向に、複数の圧延スタンドを連続的に通過し、圧延材がロールトレインの圧延スタンドで連続的に圧延されるという結果を伴い、
- ロールトレインは、制御デバイスを有しており、制御デバイスによって、ロールトレインの圧延スタンドが制御される、ロールトレインから開始する。
【背景技術】
【0005】
金属から構成された圧延材(とりわけ、金属ストリップ)は、マルチスタンドロールトレインで圧延されることが多い。とりわけ、金属ストリップを圧延するときに、特定の輪郭を維持すること、および、特定の平坦度を維持することは、非常に重要である。一般的に、互いに独立して輪郭および平坦度に影響を与えることは可能ではない。とりわけ、それらは、測定場所の前方の圧延ギャップの形状によって決定的に決定される。
【0006】
輪郭および平坦度を維持するために、輪郭および平坦度(または、プロファイルおよび平坦度)のための対応する閉ループ制御システムが知られている。閉ループ制御システムは、たとえば、特定の圧延スタンドのロールベンディング(roll bending)、ロール枢動、ロール変位、および/またはロール冷却に作用することが可能である。
【0007】
制御介入がこれらの閉ループ制御システムによって実施される場合には(すなわち、圧延ギャップ特性の変化)、金属ストリップが特定の圧延スタンドから出るときの輪郭が変化する。同時に、金属ストリップが特定の圧延スタンドから出るときの輪郭は、また、金属ストリップが後続の圧延スタンドに進入するときの輪郭でもある。したがって、金属ストリップの平坦度は、後続の圧延スタンドの圧延ギャップ特性も対応する様式で変化させられない限り、後続の圧延スタンドの下流で変化する。
【0008】
同様の状況が、他の方向にも当てはまる。特定の圧延スタンドの下流の金属ストリップの輪郭が、この圧延スタンドの圧延ギャップの対応する調節によって変化させられる場合には、先行する圧延スタンドも対応する様式で適合されない限り、この圧延スタンドの下流の平坦度も変化する。
【0009】
したがって、ロールトレインの特定の圧延スタンドの下流の圧延材の輪郭サイズが調節されることとなる場合には(たとえば、ロールトレインの最後の圧延スタンドの下流)、少なくともこの圧延スタンドは調節されなければならない。以前の欧州特許出願第18198437.8号(出願日2018年10月3日)(それは、本発明の出願日においてまだ公開されていない)は、複数の圧延スタンドを有するロールトレインのための動作方法を説明しており、そこでは、加えて、特定の圧延スタンドの前方の圧延スタンドも調節され、したがって、金属ストリップの輪郭および金属ストリップのプロファイルの両方が可能な限り最大のダイナミズムによってそれらのそれぞれの目標値に調節されることを可能にする。結果として、平坦度誤差は、特定の圧延スタンドとその上流の圧延スタンドとの間のスタンド間領域へとシフトされる。
【0010】
このスタンド間領域における平坦度誤差を回避するために、さらに上流に配置されている圧延スタンドにおいて輪郭を調節すること、および、それにしたがってスタンドを適合させることも可能である。平坦度誤差は、それによって、ロールトレインの前部領域へとますますシフトされる。しかし、ロールトレインの前部圧延スタンドでの圧延の間に、金属ストリップは、依然として非常に厚いままであるので、材料の横断方向の流れが圧延の間に起こり、結果的に、平坦度誤差が生じないことが多い。しかし、閉ループ制御システムのダイナミクスは、関与する第1の圧延スタンドから測定場所へ金属ストリップを移送するのにかかる時間に依存する。大きい距離および関連の長い移送時間に起因して、輪郭は、たとえば、先行技術における7つの圧延スタンドを有する比較的大きいロールトレインでのターゲットに対して、迅速かつ正確に設定され得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、圧延材の輪郭が高度に動的な方式で設定され得、同時に、スタンド間領域での平坦度誤差が可能な限り回避される可能性を生じさせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本目的は、請求項1の特徴を有するロールトレインのための動作方法によって実現される。動作方法の有利な改良例は、従属請求項2から5の主題を形成する。
【0014】
本発明によれば、冒頭で述べられているタイプのロールトレインのための動作方法は、以下のように実現される。
- 制御デバイスは、特有変数のまたは特有変数から決定される中間変数のそれぞれの周波数フィルタリングによって、上流の圧延スタンドに関するそれぞれの暫定的な操作変数を決定し、
- 周波数フィルタリングの動作は、上流の圧延スタンドに関するそれぞれの暫定的な操作変数の決定が、それぞれ、それぞれの制限周波数を下回る特有変数の周波数成分のみを含むように構成されており、
- 移送方向に見たときに特定の圧延スタンドの上流にあるロールトレインのいくつかの圧延スタンドに関して、制限周波数は、それぞれ、同じままになっているか、または、圧延スタンドごとに増加している。
【0015】
したがって、本発明に関連して、輪郭の変化の周波数分配が存在している。輪郭の急激な変化は、ロールトレインの後部圧延スタンドで高度に動的な方式で補償され、一方、輪郭のゆっくりとした変化は、ロールトレインの前部圧延スタンドにシフトされる。この場合には、シフトはさらに前方になり、輪郭の変化はさらに遅くなる。最終的には、高度に動的な閉ループ制御システムは、それによって実現され、一方、同時に、ロールトレインの圧延スタンド間のスタンド間領域における平坦度誤差が、小さく維持される。そのうえ、後部圧延スタンドは、負荷が軽減される。
【0016】
制御デバイスは、一般的に、とりわけ、特有変数の周波数フィルタリングによって、特有変数に基づいて、ロールトレインの特定の圧延スタンドに関する暫定的な操作変数を決定する。上流の圧延スタンドに関して、決定プロセスは、常に、周波数フィルタリングの動作である。このプロセスの間に、特有変数の周波数フィルタリングによって、制御デバイスが上流の圧延スタンドに関する暫定的な操作変数を決定することが可能である。しかし、制御デバイスは、好ましくは、それぞれの中間変数の周波数フィルタリングによって、上流の圧延スタンドに関する暫定的な操作変数を決定する。この場合には、制御デバイスは、好ましくは、移送方向に見たときに直ぐ下流に配置されているそれぞれの圧延スタンドに関する最終的な操作変数に基づいて、それぞれの中間変数を決定する。それぞれの中間変数に基づく決定は、とりわけ、フィルタリングの動作がより容易にパラメーター化され得るという利点を有している。そのうえ、スタンド間領域における金属ストリップの残留不可避な平坦度誤差は、一般的に、特有変数自身に基づく決定の場合におけるものよりも小さい。
【0017】
制御デバイスは、好ましくは、それぞれの圧延スタンドに関する暫定的な操作変数に基づいて、および、それぞれの補正変数に基づいて、それぞれの圧延スタンドに関するそれぞれの最終的な操作変数を決定する。このプロセスの間に、制御デバイスは、移送方向に見たときに直ぐ上流に配置されているそれぞれの圧延スタンドの暫定的な操作変数に基づいて、それぞれの補正変数を決定する。それによって、それぞれの圧延スタンドを作動させる際に、上流の圧延スタンドまたは複数の上流の圧延スタンドによってすでに引き起こされた輪郭の変化を考慮に入れることが可能である。
【0018】
制御デバイスは、好ましくは、移送方向に見たときに直ぐ上流に配置されている圧延スタンドの暫定的な操作変数に関して、それぞれの遅延時間だけ、それぞれの補正変数を遅延させる。それによって、対応する暫定的な操作変数へのそれぞれの補正変数の時間調整された適用を達成することが可能である。
【0019】
制御デバイスは、好ましくは、それぞれの制限エレメントによって、最終的な操作変数を制限する。それによって、とりわけ、アクチュエーターの作動限界を考慮に入れることが可能である。
【0020】
そのうえ、本目的は、請求項6の特徴を有する制御プログラムによって実現される。本発明によれば、プログラムコードの実行は、本発明による動作方法にしたがって制御デバイスがロールトレインを制御するという効果を有する。
【0021】
本目的は、請求項7の特徴を有するロールトレインのための制御デバイスによって実現される。制御デバイスの有利な改良例は、従属請求項8から12の主題を形成する。
【0022】
本発明によれば、冒頭で述べられているタイプのロールトレインのための制御デバイスは、以下のように実現される。
- 上流の圧延スタンドの決定経路は、周波数フィルターを有しており、周波数フィルターによって、制御デバイスは、特有変数のまたは特有変数から決定される中間変数のそれぞれの周波数フィルタリングによって、上流の圧延スタンドに関するそれぞれの暫定的な操作変数を決定し、
- 周波数フィルターは、上流の圧延スタンドに関するそれぞれの暫定的な操作変数の決定が、それぞれ、それぞれの制限周波数を下回る特有変数の周波数成分のみを含むように設計されており、
- 移送方向に見たときに特定の圧延スタンドの上流にあるロールトレインのいくつかの圧延スタンドに関して、制限周波数は、それぞれ、同じままになっているか、または、圧延スタンドごとに増加しており、
- 特定の圧延スタンドのための決定経路は、特定の圧延スタンドに関する暫定的な操作変数の決定が、移送方向に見たときに特定の圧延スタンドの直ぐ上流にある圧延スタンドの制限周波数を上回る特有変数の少なくともそれらの周波数成分を含むように設計されている。
【0023】
したがって、動作方法と同様に、輪郭の変化の周波数分配が存在しており、ロールトレインの後部圧延スタンドでの輪郭の急激な変化が高度に動的な方式で補償され、一方、輪郭のゆっくりとした変化は、ロールトレインの前部圧延スタンドにシフトされるという結果を伴う。
【0024】
制御デバイスは、好ましくは、ロールトレインの特定の圧延スタンドのための決定経路に特有変数を給送する。そのうえ、制御デバイスは、好ましくは、中間ブロックを有しており、中間ブロックによって、制御デバイスは、移送方向に見たときに直ぐ下流に配置されているそれぞれの圧延スタンドに関する最終的な操作変数に基づいて、上流の圧延スタンドのためのそれぞれの中間変数を決定する。それによって、高度に動的な閉ループ制御が実現される。そのうえ、ロールトレインの圧延スタンド間のスタンド間領域における平坦度誤差が、小さく維持される。最後に、後部圧延スタンドは、負荷が軽減される。
【0025】
決定経路は、好ましくは、ノードを有しており、ノードにおいて、制御デバイスは、それぞれの圧延スタンドに関するそれぞれの暫定的な操作変数の付加によって、および、それぞれの補正変数の付加によって、それぞれの最終的な操作変数を決定する。この場合には、制御デバイスは、そのうえ、ブリッジエレメントを有しており、ブリッジエレメントによって、制御デバイスは、移送方向に見たときに直ぐ上流に配置されているそれぞれの圧延スタンドの最終的な操作変数に基づいて、それぞれの補正変数を決定する。それによって、それぞれの圧延スタンドを作動させる際に、上流の圧延スタンドまたは複数の上流の圧延スタンドによってすでに引き起こされた輪郭の変化を考慮に入れることが可能である。
【0026】
ブリッジエレメントは、好ましくは、遅延エレメントを有しており、遅延エレメントによって、制御デバイスは、移送方向に見たときに直ぐ上流に配置されている圧延スタンドの最終的な操作変数に関して、それぞれの遅延時間だけ、それぞれの補正変数を遅延させる。それによって、対応する暫定的な操作変数へのそれぞれの補正変数の時間調整された適用を達成することが可能である。
【0027】
決定経路は、好ましくは、それぞれの制限エレメントを有しており、それぞれの制限エレメントによって、制御デバイスは、それぞれの最終的な操作変数を制限する。それによって、とりわけ、アクチュエーターの作動限界を考慮に入れることが可能である。
【0028】
制御プログラムによる本発明の実装形態によれば、制御デバイスは、好ましくは、ソフトウェアプログラマブルデバイスとして設計されている。
【0029】
そのうえ、本目的は、請求項13の特徴を有するロールトレインによって実現される。本発明によれば、冒頭で述べられているタイプのロールトレインの制御デバイスは、本発明による制御デバイスとして設計されている。
【0030】
上記に説明されている本発明の特性、特徴、および利点、ならびに、これらが実現される様式は、例示目的の実施形態の以下の説明に関連して、より明確におよび明瞭に理解しやすくなることとなり、それらは、図面と組み合わせてより詳細に説明されている。ここで、図面は、概略的な説明図で以下の通りに示している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】平坦な圧延材を圧延するためのロールトレインを示す図である。
【
図2】ロールトレインの後部圧延スタンドを示す図である。
【
図3】ロールトレインの複数の圧延スタンドおよび関連の制御システムを示す図である。
【
図4】ロールトレインの複数の圧延スタンドおよび代替的な関連の制御システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1によれば、細長い圧延材2が、ロールトレイン1で圧延されている。一般的に、圧延材2は、平坦な圧延材、とりわけ、ストリップである。しかし、個々の場合において、それは、いくつかの他の種類の細長い圧延材、たとえば、プロファイルであることも可能である。プロファイルは、I形断面プロファイル、H形断面プロファイル、T形断面プロファイルなどであることが可能である。圧延材2の材料は、一般的に、鋼であり、または、いくつかの場合には、アルミニウムである。しかし、個々の場合において、それは、いくつかの他の金属(たとえば、銅)から構成された圧延材2であることも可能である。
【0033】
圧延材2は、一般的に、ロールトレイン1で熱間圧延される。たとえば、ロールトレイン1は、金属ストリップを熱間圧延するための仕上げ用トレインであることが可能である。しかし、冷間圧延は除外されない。しかし、そのさらなる構成に関係なく、ロールトレイン1は、複数の圧延スタンド3a~3fを有している。合計で6つの圧延スタンド3a~3fが、
図1に図示されている。しかし、ロールトレイン1は、より大きい数の圧延スタンド3a~3f、たとえば、7つのまたは8つの圧延スタンド3a~3fを有することが可能である。また、同様に、ロールトレイン1がより少ない数の圧延スタンド3a~3f、たとえば、3つの、4つの、または5つの圧延スタンド3a~3fを有することも可能である。決定的な要因は、少なくとも2つの圧延スタンド3a~3fが存在しているということ、および、圧延材2が圧延スタンド3a~3fを連続的に通過しているということである。関連の移送方向xは、圧延スタンド3a~3fに関して一定になっている。圧延材2がそれぞれの圧延スタンド3a~3fを通過するときに、それは圧延され、したがって、その断面が低減される。
【0034】
「連続的に通過する」という用語は、圧延材2が最初に圧延スタンド3a~3fのうちの1つで完全に圧延され、それに続いてのみ、圧延スタンド3a~3fのうちの次の1つで完全に圧延されることなどを意味することを意図していない。対照的に、その用語は、圧延材2が複数の圧延スタンド3a~3fで全体として同時に圧延されるが、圧延材2のそれぞれの個々のセクションは、圧延スタンド3a~3fを順番に連続的に通過するということを意味している。そのうえ、圧延スタンド3a~3fの作業ロールのみが、
図1および
図2に図示されている。しかし、一般的に、圧延スタンド3a~3fは、4ハイスタンド(four-high stands)のような構成の場合には、さらなるロール、とりわけ、バックアップロールを有しており、6ハイスタンド(six-high stands)のような構成の場合には、バックアップロールおよび中間ロールを有している。
【0035】
「上流」および「下流」という用語が下記で使用される場合、それらは、例外なく、圧延材2が圧延スタンド3a~3fを通過する順番に関する。たとえば、圧延スタンド3aおよび3bは、圧延スタンド3cの上流にあり、一方、圧延スタンド3bは、圧延スタンド3cの直ぐ上流にあり、圧延スタンド3aは、圧延スタンド3cの直ぐ上流にはない。同様の方式で、圧延スタンド3d、3e、および3fは、圧延スタンド3cの下流にあり、一方、圧延スタンド3dは、圧延スタンド3cの直ぐ下流にあり、圧延スタンド3eおよび3fは、圧延スタンド3cの直ぐ下流にはない。同様の記述が、他の圧延スタンド3a~3fの間の関係に適用される。
【0036】
ロールトレイン1、また、ひいては、圧延スタンド3a~3fは、制御デバイス4によって制御される。一般的に、制御デバイス4は、ソフトウェアプログラマブル制御デバイスとして設計されている。制御デバイス4は、制御プログラム5によってプログラムされている。制御プログラム5は、プログラムコード6を含み、プログラムコード6は、制御デバイス4によって実行され得る。動作時に、制御デバイス4は、プログラムコード6を実行する。制御デバイス4によるプログラムコード6の実行は、より詳細に下記に説明されている動作方法にしたがって制御デバイス4がロールトレイン1を制御するという効果を有する。
【0037】
変数δQは、圧延材2がロールトレイン1の特定の圧延スタンド3a~3fから出ることが想定される断面の変化に特有であり、変数δQは、制御デバイス4にとって既知である。特定の圧延スタンド3a~3fは、ロールトレイン1の最後の圧延スタンド3fであることが可能である。しかし、下記では、それがロールトレイン1の最後から2番目の圧延スタンド3eであると仮定される。圧延材2がストリップである場合には、変数δQは、一般的に、輪郭変化に特有である。特有変数δQは、そのような所望の断面変化であることが可能である。代替的に、それは、断面変化がそれから決定され得る変数であることが可能である。そのような変数の1つの例は、平坦度であり、そして、平坦度を変化させるために、輪郭が変化させられなければならない。別の代替例として、それは、圧延スタンド3a~3fの作動を決定することに関連して所与の断面変化の場合において生じる変数であることが可能である。下記では、特有変数δQは、特定の変化自体であるということが仮定される。したがって、特有変数δQは、特定の変化と直接的に称される。しかし、いくつかの他の値(それは、所望の断面変化へと変換され得る)が特有変数δQとして特定される場合にも、すべての記述が適用される。
【0038】
特定の変化δQが、対応する制御コマンドによって、オペレーター(図示せず)によって制御デバイス4へ入力されることが可能である。代替的に、たとえば、
図2の説明図によれば、測定デバイス7が測定場所に配置されることが可能であり、測定デバイス7によって、圧延材2の実際の変数Mが取得され、それは、たとえば、平坦な圧延材2の場合において、輪郭および/または平坦度である。実際の変数Mが取得されると、取得された実際の変数Mおよび、そのうえ、関連の設定変数M*が、閉ループ制御デバイス8に給送され得る。この場合には、閉ループ制御デバイス8は、実際の変数Mおよび設定変数M*を使用し、とりわけ、設定変数M*からの実際の変数Mの偏差から、特定の変化δQを決定することが可能である。閉ループ制御デバイス8は、制御デバイス4の一部であることが可能である。
【0039】
すでに述べられているように、例示目的の実施形態に関連して、特定の変化δQは、ロールトレイン1の最後から2番目の圧延スタンド3eに作用するということが仮定される。この構成は、とりわけ、すでに述べられている2018年10月3日付けの欧州特許出願第18198437.8号に関連して都合がよく、その文献は、先行文献ではない。しかし、ロールトレイン1の最後から2番目の圧延スタンド3eに対する作用は、絶対的に必須であるというわけではない。ロールトレイン1の第1の圧延スタンド3aを除いて、特定の変化δQは、ロールトレイン1のいくつかの他の圧延スタンド3a~3fに作用することも可能である。
【0040】
図3の説明図によれば、制御デバイス4は、いくつかの決定経路9b~9eを有している。決定経路9b~9eのうちの1つ(具体的には、決定経路9e)は、圧延スタンド3eに割り当てられ、特定の変化δQは、圧延スタンド3eに作用する。そのうえ、それぞれの決定経路9b~9dは、同様に、いくつかの圧延スタンド3b~3dに割り当てられており、いくつかの圧延スタンド3b~3dは、前記圧延スタンド3eの上流に配置されている。本発明による手順に関連してそれぞれの決定経路9b~9dが存在している上流の圧延スタンド3b~3dの数は、要求される通りであることが可能である。最小数は、1である。しかし、一般的に、その数は、1よりも大きい。その数は、ロールトレイン1の前部における圧延スタンド3aのための決定経路も存在するようになっていることが可能である。しかし、下記では、移送方向xに見たときに、第1の決定経路9bが、ロールトレイン1の第2の圧延スタンド3bのためのものであるということが仮定される。
【0041】
以下の実施形態は、例外なく、特定の圧延スタンド3eに関し、また、特定の圧延スタンド3eの上流に配置されている圧延スタンド3b~3dに関し、それらのために、決定経路9b~9eが存在しており、この場合には、したがって、圧延スタンド3b~3eが存在している。ロールトレイン1の第1のおよび最後の圧延スタンド3a、3fは考慮されていない。本発明に関連して、これは、一般的に、特定の圧延スタンド3eの下流に配置されている圧延スタンド3a~3fのすべてに適用され、また、任意の決定経路がもはや存在していない第1の圧延スタンド3aの後のすべての圧延スタンド3a~3fに適用される。この状況は、
図3に適用されるだけでなく、
図4から
図7にも適用される。そのうえ、形式の問題として、操作変数は、制御デバイス4によってこれらの圧延スタンド3a、3fに関しても決定されるということが述べられるべきである。しかし、これらの圧延スタンド3a、3f(すなわち、この場合には、ロールトレイン1の第1のおよび最後の圧延スタンド3a、3f)は、本発明に含まれていない。
【0042】
特定の変化δQ(それは、特定の圧延スタンド3eのためのそのようなものとして意図されている)に基づいて、制御デバイス4は、決定経路9b~9eにおいて特定の圧延スタンド3eのために、また、上流の圧延スタンド3b~3dのために、それぞれの暫定的な操作変数Sb~Seを決定する。決定は、たとえば、決定ブロック10b~10eで行われ得る。
【0043】
制御デバイス4は、それぞれの最終的な操作変数Sb’~Se’にしたがって、圧延スタンド3b~3eを作動させる。最終的な操作変数Sb’~Se’は、圧延材2がロールトレイン1のそれぞれの圧延スタンド3b~3eから出る断面に影響を与える。最終的な操作変数Sb’~Se’は、必要に応じて、それぞれの圧延スタンド3b~3eに作用することが可能である。たとえば、平坦な圧延材2の場合において、それらは、ロールベンディング、ロール冷却、ロール潤滑、軸線方向のロール変位、ウェッジ設定などに作用することが可能である。
【0044】
制御デバイス4は、それぞれの暫定的な操作変数Sb~Seを使用して、最終的な操作変数Sb’~Se’を決定する。
図3の構成に関連して、最終的な操作変数Sb’~Sd’は、暫定的な操作変数Sb~Sdに直接的におよび即座に対応している。しかし、数値の変化が依然として起こっている場合でも、暫定的な操作変数Sb~Seおよび最終的な操作変数Sb’~Se’は、少なくとも一般的に類似している。すなわち、純粋に例として、ロールベンディングが暫定的な操作変数Sdとして決定される場合には、このロールベンディングは、依然として、最終的な操作変数Sd’の決定の一部として増加または低減され得る。しかし、それは、依然として、同じタイプの操作変数(すなわち、たとえば、ロールベンディング)である。
【0045】
決定ブロック10b~10dは、周波数フィルター11b~11dをそれぞれ有している。変化変数δQは、それぞれの周波数フィルター11b~11dへ給送される。周波数フィルター11b~11dによって、制御デバイス4は、特定の変化δQのそれぞれの周波数フィルタリングによって、それぞれの暫定的な操作変数Sb~Sdを決定する。
【0046】
周波数フィルター11b~11dは、ローパスフィルタリングを実施するために使用される。したがって、それぞれの制限周波数fb~fdより低いと、それぞれの周波数フィルター11b~11dに給送される信号は、変化させられないかまたは事実上変化させられないままになっており、一方、それぞれの制限周波数fb~fdより高いと、それぞれの周波数フィルター11b~11dに給送される信号は、フィルタリングして取り除かれ、それがもはやそれぞれの周波数フィルター11b~11dの出力信号に含有されないという結果を伴う。それらの構築に関して、周波数フィルター11b~11dは、要件にしたがって設計され得る。それらは、たとえば、Cauerフィルターとして、または、Butterworthフィルターとして設計され得る。たとえば、PT1フィルターなど、他の構成も可能である。
【0047】
必要とされる場合には、それぞれの乗算器12b~12dが、それぞれの周波数フィルター11b~11dの上流に配置され得る。この場合には、変化変数δQは、それぞれの周波数フィルター11b~11dに給送される前に、それぞれの乗算器12b~12dにおいて、それぞれのスケーリング係数Kb~Kdを掛けられ得る。代替的に、乗算器12b~12dは、それらのそれぞれの周波数フィルター11b~11dの下流に配置され得る。この場合には、それぞれのスケーリング係数Kb~Kdによって掛けられるものは、それぞれの周波数フィルター11b~11dの入力信号(すなわち、変化変数δQ)ではなく、それぞれの周波数フィルター11b~11dの出力信号である。この場合には、暫定的な操作変数Sb~Sdは、それぞれのスケーリング係数Kb~Kdを掛けた後の周波数フィルター11b~11dの出力信号に対応している。とりわけ、スケーリング係数Kb~Kdは、圧延スタンド3b~3dの感度によって決定され得る。
【0048】
周波数フィルタリングは、線形または非線形のいずれかであることが可能である。線形の周波数フィルタリングの場合には、周波数フィルター11b~11dの上流への乗算器12b~12dの配置は、周波数フィルター11b~11dの下流への配置と同等である。しかし、非線形の周波数フィルタリングの場合には、異なる効果が得られる。
【0049】
周波数フィルタリングは、特定の圧延スタンド3eの上流に配置されている圧延スタンド3b~3dに関して常に実施される。完全に同様の手順が、決定経路9eに関しても可能である。
図3の説明図によれば、それも採用される。したがって、周波数フィルター11eも存在しており、また、場合によっては、決定経路9eおよび関連の決定ブロック10eのための乗算器12eも存在している。この場合には、決定ブロック10eの周波数フィルタリングは、特定の圧延スタンド3eに関する暫定的な操作変数Seの決定が、圧延スタンド3dの制限周波数fdを上回る特定の変化δQの少なくともそれらの周波数成分を含むように構成されている。
【0050】
しかし、周波数フィルタリングは、決定経路9eに関して絶対的に必須であるわけではない。代替的に、したがって同様に、周波数フィルタリングが存在していないこと、および、したがって、特定の変化δQ(場合によっては、関連のスケーリング係数Keを掛けた後の)が暫定的な操作変数Seとしてそのまま使用されることも可能である。この場合には、暫定的な操作変数Se自身は、圧延スタンド3dの制限周波数fdを上回る特定の変化δQの周波数成分を含有する。
【0051】
周波数フィルター11b~11d(および、適用可能な場合、11eも)は、それぞれ、それぞれの制限周波数fb~fdまたはfeを下回る特定の変化δQの周波数成分だけが、それぞれの暫定的な操作変数Sb~Seの決定において含まれるように構成されている。それぞれの上流の圧延スタンド3b~3dのそれぞれの制限周波数fb~fdは、好ましくは、それぞれの上流の圧延スタンド3b~3dから特定の圧延スタンド3eへの移送時間によって決定される。特定の圧延スタンド3eの制限周波数feは、(フィルタリングが全く存在しない場合には)事実上無限になっているかまたは(フィルタリングが存在する場合には)非常に高くなっているかのいずれかであり、それは、事実上効果を有しておらず、すなわち、暫定的なセンサー信号Seが、実際に使用され得る最高周波数を備えた信号成分を含有している。
【0052】
ここで、他方では、圧延スタンド3bの制限周波数fbが圧延スタンド3eの制限周波数feよりも低いということが事実である。たとえば、制限周波数fbは、1Hzであることが可能であり、一方、圧延スタンド3eに関して、それは、20Hzである。一般的に、制限周波数fb~feは、それぞれ、圧延スタンド3b~3eごとに増加する。しかし、少なくとも、制限周波数fb~feは、圧延スタンド3b~3eごとに減少しない。たった今与えられた例によれば、圧延スタンド3bの制限周波数fbが1Hzであり、圧延スタンド3eに関する制限周波数feが20Hzである場合には、たとえば、圧延スタンド3cの制限周波数fcは、3Hzであることが可能であり、圧延スタンド3dの制限周波数fdは、8Hzであることが可能である。上述の数値は、たとえば、限定的なものとして解釈されるべきではない。それらは、単に、原理のより良好な説明を提供する役割を果たしているに過ぎない。
【0053】
図4は、
図3の手順の代替例を示している。したがって、
図3に関する本質的な違いのみが、下記に説明されることとなる。
【0054】
図4の手順に関連して(
図3と同様に)、暫定的な操作変数Sb~Se、および、これらからの最終的な操作変数Sb’~Se’が決定される。
図3の手順とは対照的に(
図3の手順では、関与するすべての圧延スタンド3b~3eに関する暫定的な操作変数Sb~Seが、特定の変化δQに基づいて直接的に決定される)、これは、
図4の手順の場合における特定の圧延スタンド3eに関する暫定的な操作変数Seに関してのみ当てはまる。したがって、特定の変化δQは、決定経路9eにのみ直接的に給送される。それぞれの中間変数Zb~Zdが、他の決定経路9b~9dに給送される。したがって、制御デバイス4は、それぞれの中間変数Zb~Zdの周波数フィルタリングによって、上流の圧延スタンド3b~3dに関して暫定的な操作変数Sb~Sdを決定する。そして、制御デバイス4は、直ぐ下流に配置されているそれぞれの圧延スタンド3c~3eに関する最終的な操作変数Sc’~Se’に基づいて、それぞれの中間変数Zb~Zdを決定する。決定は、中間ブロック13c~13eで実施され、中間ブロック13c~13eは、決定経路9c~9eの一部である。最も簡単な場合には、中間ブロック13c~13eは、簡単なピックオフとして設計されている。
【0055】
図3および
図4の説明図によれば、それぞれ排他的に、それぞれの最終的な操作変数Sc’~Se’を決定する際に、制御デバイス4がそれぞれの暫定的な操作変数Sc~Seを考慮に入れることが可能である。しかし、
図3および
図4の構成は、好ましくは、
図5および
図6の説明図にしたがって修正される。
図5および
図6の修正の一部として、制御デバイス4は、それぞれの圧延スタンド3c~3eに関する暫定的な操作変数Sc~Seに基づいて、および、それぞれの補正変数Sc”~Se”に基づいて、それぞれの圧延スタンド3c~3eに関するそれぞれの最終的な操作変数Sc’~Se’を決定する。とりわけ、決定経路9c~9eは、ノード14c~14eを有しており、ノード14c~14eにおいて、制御デバイス4は、それぞれの圧延スタンド3c~3eに関するそれぞれの暫定的な操作変数Sc~Seの付加によって、および、それぞれの補正変数Sc”~Se”の付加によって、それぞれの最終的な操作変数Sc’~Se’を決定する。
【0056】
制御デバイス4は、直ぐ上流に配置されているそれぞれの圧延スタンド3b~3dの暫定的な操作変数Sb~Sdに基づいて、それぞれの補正変数Sc”~Se”を決定する。とりわけ、制御デバイス4は、ブリッジエレメント15c~15eを有しており、直ぐ上流に配置されているそれぞれの圧延スタンド3b~3dの暫定的な操作変数Sb~Sdは、ブリッジエレメント15c~15eに給送され、制御デバイス4は、ブリッジエレメント15c~15eによって、それぞれの補正変数Sc”~Se”を決定する。とりわけ、制御デバイス4は、たとえば、ブリッジエレメント15c~15eの乗算器16c~16eで、対応するスケーリング係数Kc’~Ke’によってスケーリングを実施することが可能である。とりわけ、スケーリング係数Kc’~Ki’と同様に、スケーリング係数Kb~Kdは、圧延スタンド3b~3eの感度によって決定され得る。
【0057】
決定経路9b~9dを有する、最も前方の圧延スタンド3bの場合におけるこの手順に対して例外が存在している。その暫定的な操作変数Sbは、関連の最終的な操作変数Sb’を決定するプロセスにおいて、補正変数によってもはや補正されない。それが本発明に適用される限りにおいて、これは、ロールトレイン1の少なくとも1つの圧延スタンド3a(ここでは、圧延スタンド3a)が対応する圧延スタンド3bの上流に追加的に配置されている場合にも適用される。
【0058】
図5および
図6に図示されているように、ブリッジエレメント15c~15eは、さらにより好ましくは、遅延エレメント17c~17eを有している。遅延エレメント17c~17eによって、制御デバイス4は、直ぐ上流に配置されている圧延スタンド3b~3dの暫定的な操作変数Sb~Sdに関して、それぞれの遅延時間Tc~Teだけ、それぞれの補正変数Sc”~Se”を遅延させる。一般的に、それぞれの遅延時間Tc~Teは、それぞれの上流の圧延スタンド3b~3dからそれぞれの圧延スタンド3c~3eへの距離を移動するために圧延材2が必要とするそれぞれの移送時間によって、実質的に決定される。したがって、それぞれの遅延時間Tc~Teは、一般的に、それぞれの圧延スタンド3c~3eと直ぐ上流に配置されているそれぞれの圧延スタンド3b~3dとの間の距離によって、および、圧延材2が直ぐ上流に配置されているそれぞれの圧延スタンド3b~3dから出るかまたはそれぞれの圧延スタンド3c~3eの中へ入るそれぞれの圧延速度vc~veによって決定される。オプションとして、それぞれの移送時間から開始して、それぞれの遅延時間Tc~Teは、それぞれのスケーリング係数によって追加的にスケーリングされ得る。一般的に、それぞれのスケーリング係数は、0.5から2.0の間にあり、ほとんどの場合、0.8から1.25の間にある。遅延エレメント17c~17eのスケーリング係数は、均一にまたは個別に決定され得る。
【0059】
図3から
図6による実施形態に関連して、周波数フィルタリングは、それぞれの周波数フィルター11b~11eで実施される。
図7は、決定経路9cの可能な構成を示している。同様の記述は、決定経路9b、9d、および9eに適用される。
【0060】
図7の説明図によれば、制限エレメント18が、決定ブロック10cの下流に配置され得る。この場合には、制御デバイス4は、制限エレメント18によって、決定ブロック10cの出力信号を制限する。ノード14cが存在している場合には、制限エレメント18は、信号フローの中のノード14cの下流に配置されている。中間ブロック13cが存在している場合には、制限エレメント18は、信号フローの中の中間ブロック13cの上流に配置されている。
【0061】
すでに述べられているように、制御デバイス4は、一般的に、ソフトウェアプログラマブル制御デバイスとして設計されている。したがって、制御デバイス4の動作は、制御プログラム5によって実現される。制御プログラム5、および、制御デバイス4によるそのプログラムコード6の実行は、したがって、制御デバイス4がソフトウェアブロックとして上述の機能的ユニット(たとえば、決定経路9b~9eまたは中間ブロック13c~13eまたはブリッジエレメント15c~15e)を実装するという効果を有する。
【0062】
本発明は、多くの利点を有している。とりわけ、特定の変化δQを補償するための作動介入が、いくつかの圧延スタンド3b~3eの間に分配されており、したがって、個々の圧延スタンド3b~3eは、小さい程度にだけ作動させられなければならない。それにもかかわらず、特定の変化δQの補償における高度に動的なプロセスが実現され得る。
【0063】
本発明は、好適な例示目的の実施形態によって、より具体的に詳細に図示および説明されてきたが、本発明は、開示されている例に制限されず、他の変形例は、本発明の保護の範囲を超えることなく、当業者によってそれから導出され得る。
【符号の説明】
【0064】
1 ロールトレイン
2 圧延材
3a~3f 圧延スタンド
4 制御デバイス
5 制御プログラム
6 プログラムコード
7 測定デバイス
8 閉ループ制御デバイス
9b~9e 決定経路
10b~10e 決定ブロック
11b~11e 周波数フィルター
12b~12e 乗算器
13c~13e 中間ブロック
14c~14e ノード
15c~15e ブリッジエレメント
16c~16e 乗算器
17c~17e 遅延エレメント
18 制限エレメント
fb~fe 制限周波数
Kb~Ke スケーリング係数
Kc’~Ki’ スケーリング係数
M 実際の変数
M* 設定変数
Sb~Se 暫定的な操作変数
Sb’~Se’ 最終的な操作変数
Sc”~Se” 補正変数
Tc~Te 遅延時間
vc~ve 圧延速度
x 移送方向
Zb~Zd 中間変数
δQ 特定の変化/特有変数