(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 1/56 20060101AFI20250218BHJP
E06B 1/60 20060101ALI20250218BHJP
E06B 1/62 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
E06B1/56 A
E06B1/60
E06B1/62 B
(21)【出願番号】P 2021018485
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2023-12-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 令和3年1月25日 集会名 株式会社ソーゴーオンライン商品研修 YKK AP株式会社主催、オンライン会議 開催日 令和3年1月27日 集会名 株式会社リブワークスオンライン商品研修 YKK AP株式会社主催、オンライン会議 開催日 令和3年1月28日 集会名 株式会社KG公舎オンライン商品研修 YKK AP株式会社主催、オンライン会議 開催日 令和3年2月1日 集会名 株式会社キタセツ商品研修 YKK AP株式会社主催、株式会社キタセツ本社 開催日 令和3年2月5日 集会名 有限会社中沢硝子建装オンライン商品研修 YKK AP株式会社主催、オンライン会議 開催日 令和3年2月3日 集会名 株式会社ナルイ工業オンライン商品研修 YKK AP株式会社主催、オンライン会議 開催日 令和3年2月4日 集会名 株式会社パックシステムオンライン商品研修 大建工業株式会社主催、オンライン会議 開催日 令和3年2月3日 集会名 株式会社リブワースク商品提案 YKK AP株式会社主催、株式会社リブワークス東神奈川支店 発行日 令和3年1月22日 刊行物 要務連絡(YJE-20-023-1)、 第4頁、第5頁 発行日 令和3年1月25日 刊行物 プレゼンシート、第12頁、第14頁、第16~18頁 ウェブサイトの掲載日 令和3年2月5日 ウェブサイトのアドレス https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=9338730000&pg=1&v=YKKAPDC1&d=pro
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】砂原 光宏
(72)【発明者】
【氏名】岩田 奈穂
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-214386(JP,A)
【文献】実公昭63-013350(JP,Y2)
【文献】特開2004-124436(JP,A)
【文献】特開2018-025053(JP,A)
【文献】特開2019-085805(JP,A)
【文献】特開2011-012405(JP,A)
【文献】特開2015-137532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設枠の内周に改装用の新設枠を設置することによって構成した建具であって、
前記既設枠の既設枠材と前記新設枠の新設枠材とはアタッチメントを介して固定され、
前記アタッチメントの室外側見付け面は、前記既設枠材の室外側見付け面よりも室外側に突出した位置に設けられて
おり、
前記アタッチメントは、第1アタッチメントおよび第2アタッチメントを有し、
前記第1アタッチメントは前記既設枠材と前記第2アタッチメントとを固定するものであり、前記既設枠材および前記新設枠材の長手方向に沿って設置されており、
前記第2アタッチメントは、前記新設枠材と前記第1アタッチメントとを固定するものであり、前記長手方向に沿って形成されており、
前記第2アタッチメントの室外側見付け面が前記既設枠材の室外側見付け面よりも室外側に突出した位置に設けられており、
前記既設枠材はレールを備え、
前記第1アタッチメントは、
前記レールの見付け面に当接して固定される見付け固定片と、
前記見付け固定片に接続されて見込み面を形成し、前記第2アタッチメントと固定される第1見込み固定片と、
を備え、
前記第2アタッチメントは、見込み面を形成する第2見込み固定片を備え、
前記第2見込み固定片から前記第1見込み固定片に第1ネジが螺設されており、
前記新設枠材から前記第2見込み固定片に第2ネジが螺設されており、
前記第1ネジと前記第2ネジとは縦断面視で見込み方向にずれており、
前記第1見込み固定片は、前記第1ネジと前記第2ネジとが見込み方向に並列して挿通することが可能な見込み幅を有する
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記
第1見込み固定片の内周側面のほぼ全面には筋状面が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記既設枠材の室外側見付け面を覆うカバーを備え、
前記カバーは、見込み方向に延在する内周側片を有し、
前記第2アタッチメントは、見込み方向に延在して前記既設枠における枠材の室外側見付け面より室外側に突出する室外突出片を有し、
前記カバーの前記内周側片と前記第2アタッチメント
の前記室外突出片とが当接して固定されていることを特徴とする請求項
1または2に記載の建具。
【請求項4】
前記既設枠が固定される躯体である既設額縁と、
少なくとも前記既設枠材の室内側見付け面の内周側端部と前記新設枠材の室内側見付け面の枠外側端部とを覆う新設額縁と、
を備え、
前記既設額縁の内周側見込み面と前記新設額縁の外周側
端部とが接しまたは対面していることを特徴とする請求項
1~3のいずれか1項に記載の建具。
【請求項5】
前記既設枠材の室内側見付け面と前記新設枠材の外周側見込み面とを固定する第3アタッチメントを備えることを特徴とする請求項
1~
4のいずれか1項に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設枠の内周に改装用の新設枠を設置することによって構成した建具に関する。
【背景技術】
【0002】
既に建築物に設置された建具を改装する場合には、既設枠を残した状態でその内周に新設枠を設置する方法がある。こうした改装方法によれば、既設枠を取り外す作業が不要となるため、工期を短縮できるとともに改装費用を抑えることが可能となる。
【0003】
通常の既設枠は新設枠の設置を想定した構造にはなっていないため、アタッチメントを介して新設枠を設置する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近時の障子は複層ガラスを備えるなどの理由から従来の障子よりも見込み方向に厚い場合がある。新設枠はこのような厚い障子に対応して見込み方向寸法が大きくなる傾向があり、そのままでは既設枠に取り付けることが困難になる。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、見込み方向寸法が既設枠よりも大きい新設枠を該既設枠に対して適切に設置することが可能な建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる建具は、既設枠の内周に改装用の新設枠を設置することによって構成した建具であって、前記既設枠の既設枠材と前記新設枠の新設枠材とはアタッチメントを介して固定され、前記アタッチメントの室外側見付け面は、前記既設枠材の室外側見付け面よりも室外側に突出した位置に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる建具によれば、アタッチメントの一部が既設枠材の室外側見付け面を形成する部分よりも室外側に突出している。したがって、新設枠が見込み方向に厚い障子に対応したものであって、新設枠材もこれに応じて見込み方向寸法が既設枠材よりも大きい場合であっても、新設枠を既設枠に対して適切な位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態にかかる建具の縦断面図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる建具の横断面図である。
【
図3】既設上枠、新設上枠およびその周辺部分の拡大縦断面図である。
【
図4】第1変形例にかかる第1アタッチメントの縦側面図である。
【
図5】第2変形例にかかる第1アタッチメントの縦側面図である。
【
図6】変形例にかかる建具における既設上枠、新設上枠およびその周辺部分の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる建具の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態にかかる建具10の縦断面図である。
図2は建具10の横断面図である。まず、建具10について説明する。建具10は既設枠14を残したまま新設枠16が取り付けられたものである。建具10において既設枠14は特に利用されることはないが、撤去しないことにより施工コストを低減することができる。
【0012】
建具10は、躯体12と、既設枠14と、新設枠16と、引き違いの障子18,20と、網戸22とを備える。躯体12は、上縁12a、下縁12b及び左右の側縁12cを有した矩形状を成し、開口部12dを形成するものである。躯体12は、例えば木材やコンクリート材である。既設枠14および新設枠16は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、長手に沿った全長にわたる部分がほぼ一様の断面形状を有するように構成してある。
【0013】
本出願において、見込み方向とは建具10の室内外方向、つまり室内から室外に向かう方向又はその逆方向(図中に矢印Zで示す方向)をいう。見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な側縁12cの場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上縁12a,下縁12bの場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Yで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。
【0014】
上縁12aは主材12aaと、副材である既設額縁12abとを有する。側縁12cは主材12caと、副材である既設額縁12cbとを有する。既設枠14は、既設上枠(既設枠材)14a、既設下枠14bおよび左右の既設側枠14cを有した矩形状を成す。既設上枠14a、既設下枠14bおよび既設側枠14cは、上縁12aの主材12aa,下縁12bおよび主材12caのそれぞれ内周側見込み面に設けられている。既設上枠14aには室内側見付け面を形成するヒレ26aと、2本のレール26b,26cと、室外側見付け面を形成するヒレ26dとが見込み方向に並んで設けられている。ヒレ26aは既設額縁12abの室外側見込み面と当接している。ヒレ26aは既設額縁12abよりも内周側にやや突出している、ヒレ26a,26dはレール26b,26c等が視認されないように覆っている。レール26bとレール26cとは枠内側突出長さが等しくなっている。
【0015】
新設枠16は、新設上枠(新設枠材)16a、新設下枠16bおよび左右の新設側枠16cを有した矩形状を成す。新設枠16は既設枠14の内周側に設けられ、新設上枠16aには室内側見付け面を形成するヒレ28aと、3本のレール28b,28c,28dとが見込み方向に並んで設けられている。ヒレ28aは新設上枠16aにおける最も室内側に設けられて内周側に突出する部分である。ヒレ26dは室外側見付け面を形成している。新設下枠16bには3本のレール30a,30b,30cが見込み方向に並んで設けられている。
【0016】
障子18は外障子であり、上方のレール28cと下方のレール30bとによってスライド可能に設けられている。障子20は内障子であり、上方のレール28bと下方のレール30aとによってスライド可能に設けられている。網戸22は障子18よりも室外側に配置され、上方のレール28dと下方のレール30cとによってスライド可能に設けられている。新設側枠16cのうち一方における見込み面は障子18の戸先部に対する戸当たり部となっており、他方における見込み面は障子20の戸先部に対する戸当たり部となっている。障子18,20の各戸尻側は召合わせ部となっている。
【0017】
このように、建具10は2枚の障子18,20を引違い可能に構成した引違い窓であるが、例えば一方の障子20を新設枠16に嵌め殺した片引き窓で構成されてもよいし、3枚以上の障子をスライド可能に設けた引戸で構成されてもよい。障子の設置枚数は適宜変更可能である。障子18,20はそれぞれ2枚のガラスを備えており、見込み方向に厚くなっている。新設枠16はこのような厚い障子18,20に対応しており、見込み方向寸法が既設枠14よりも大きくなっている。
【0018】
既設枠14の既設上枠14aと新設枠16の新設上枠16aとは、第1アタッチメント34、第2アタッチメント36および第3アタッチメント38を介して固定されている。このうち、第1アタッチメント34と第2アタッチメント36とは組み合わせて用いられる。既設下枠14bと新設下枠16bとは下アタッチメント42を介して固定されている。既設側枠14cと新設側枠16cとは第1側アタッチメント44、第2側アタッチメント46および第3側アタッチメント47を介して固定されている。第1上アタッチメント34と第2上アタッチメント36との間にはスペーサ50が設けられている。
【0019】
建具10には、内額縁(新設額縁)40,48,49が設けられている。内額縁40は、既設上枠14aおよび新設上枠16aの室内側見付け面の少なくとも一部を覆う。内額縁48は、既設側枠14cおよび新設側枠16cの室内側見付け面の少なくとも一部を覆う。内額縁49は、既設下枠14bおよび新設下枠16bの室内側見付け面の少なくとも一部を覆う。
【0020】
次に、既設上枠14aと新設上枠16aとの固定部分についてさらに説明する。
図3は、既設上枠14a、新設上枠16aおよびその周辺部分の拡大縦断面図である。
【0021】
図3に示すように、既設上枠14aのレール26cと新設上枠16aの外周側見込み面を形成する外周側壁部16aaとは第1アタッチメント34および第2アタッチメント36を介して接続されている。第2アタッチメント36と外周側壁部16aaとの間にはスペーサ50が介在している。
【0022】
第1アタッチメント34は、既設上枠14aと第2アタッチメント36とを固定するものであり、複数個が既設上枠14a,新設上枠16aの長手方向に沿って所定間隔で配列されている。以下の説明で既設上枠14a,新設上枠16aについての長手方向は、X方向と表記する。
【0023】
既設上枠14aおよび新設上枠16aのX方向寸法が比較的短い場合には、第1アタッチメント34は1つでもよい。第1アタッチメント34のX方向寸法はネジB1およびネジB2の径よりも適度に大きく設定されている。
【0024】
第1アタッチメント34は、レール26cの室内側見付け面に当接してネジB2でネジ止めされる第1固定片34aと、第1固定片34aに接続されて見込み面を形成し第2アタッチメント36とネジB1でネジ止めされる第2固定片34bとを有する。第2固定片34bの内周側部分は傾斜面34cを形成しており、この部分がネジB2によってレール26cに螺設される。第1アタッチメント34は、さらに第2固定片34bから傾斜板34eを介して室内方向に突出する第1当接片34fと、傾斜面34cの下端から室外方向にやや突出する第2当接片34dとを有する。
【0025】
第1固定片34aは適度な面積でレール26cの室内側見付け面に当接して安定する。第1アタッチメント34は、第1固定片34aの傾斜面34c、第2固定片34bおよび傾斜板34eの部分が側面視で台形凹部を形成している。ネジB2のヘッドは、この台形凹部内に配置されているが傾斜面34cから螺設されるため、ドライバーを当てやすい。
【0026】
第1当接片34fはレール26bの内周側端に当接する。換言すれば、第1当接片34fは、第1固定片34aがネジ止めされるものと隣接する1本に対してその内周側端に当接している。これにより、第2固定片34bは両持ち梁のような状態となって安定し、高強度となる。第1当接片34fは、レール26bと第2アタッチメント36とによって挟持されて安定する。第1当接片34fは見込み方向に適度な長さを有していることから、第1アタッチメント34はレール26bとレール26cとの距離が多少異なる場合にも適用可能である。
【0027】
第2当接片34dはレール26cの内周側端に当接する。第1当接片34fと第2当接片34dとは見付け方向位置が等しい。既設枠14ではレール26bとレール26cとの突出長さが等しくなっていることから、第1当接片34fおよび第2当接片34dがレール26bおよびレール26cの内周側端に当接することによって第1固定片34aがレール26cに面接触するとともに、第2固定片34bが水平となるように正しくかつ容易に位置決めすることができる。
【0028】
第2固定片34bの内周側面のほぼ全面には筋状面34baが形成されている。筋状面34baは、互いに隣接する細い多数の筋によって構成されている。筋状面34baは側面視でいわゆる三角波形状となっているが、例えばサイン波形状などでもよい。それぞれの筋はX方向に延在しており、第1アタッチメント34を押し出し成形するのに好適である。第1アタッチメント34はX方向に沿って同形状になるためである。ただし、設計条件によっては筋状面34baを構成する筋の向きはX方向以外にしてもよい。
【0029】
第2アタッチメント36の固定片36aと第1アタッチメント34の第2固定片34bとはネジB1によって固定されている。ネジB1は固定片36aを貫通した後、第2固定片34bを貫通する。固定片36aと第2固定片34bとは多少離間していることから、仮に該第2固定片34bの内周側面が平面であるとネジB1の先端が第2固定片34bに当接したとき、回転にともなって不安定に揺れる場合がありネジB1が斜めになってしまう懸念がある。そのため、ネジB2の螺設作業にはある程度の練度が必要である。
【0030】
これに対し、本実施例における第2固定片34bの下面には筋状面34baが形成されていることから、ネジB1の先端が当接したとき該先端は複数の筋の谷間のいずれかに入り込み、揺れが抑制される。つまり概念的には、筋状面34baにおける筋の谷間は、ドリル作業におけるポンチ穴と似た作用を奏する。したがって、筋状面34baが形成されていることにより、該ネジB1を容易かつ正しく螺設することができる。
【0031】
なお、第1アタッチメント34は、突出長さの等しいレール26bおよびレール26cを備える既設上枠14aに対して好適に用いられるが、レールの本数や形状によっては適用が困難な場合もある。そのような場合には、後述する変形例にかかる第1アタッチメント34A,34B(
図4,
図5参照)を用いてもよい。
【0032】
第2アタッチメント36は、固定片36aと、固定片36aの室外側端部から外周側に突出している位置決め当接片36bと、固定片36aの室外側端部から室外側にさらに突出している室外突出片36cと、該室外突出片36cの室外側端部から内方向に突出しているカバー片36dとを備える。第2アタッチメント36は、新設上枠16aと第1アタッチメント34とを固定するものである。第2アタッチメント36は、X方向に沿って形成され、基本的に枠材の全長にわたって設けられている。第2アタッチメント36の数は基本的には1つであるが、長さの都合によっては複数をつなげて用いてもよい。
【0033】
第2アタッチメント36は、ネジB1が固定片36aから第2固定片34bに螺設することによって第1アタッチメント34に固定される。第2アタッチメント36は複数の第1アタッチメント34に対してそれぞれネジB1によって固定される。ネジB1を第2固定片34bにおけるレール26cに近い位置に設けると、第1アタッチメント34が一層安定する。
【0034】
第2アタッチメント36は、ネジB3が外周側壁部16aaからスペーサ50を介し、固定片36aに螺設することによって新設上枠16aに固定される。スペーサ50は1または複数枚が設けられ、外周側壁部16aaと固定片36aとの隙間を埋めるように調整する。スペーサ50は、固定片36aを介して第1当接片34fおよび第2当接片34dに当接するだけの見込み方向寸法を有しており固定片36aを確実に支持する。
【0035】
ネジB3はX方向に沿って所定間隔で複数設けられており、新設上枠16aと第2アタッチメント36とを確実に固定する。ネジB3は、新設上枠16aの内周側壁部16abの孔54を通って外周側壁部16aaに至る。固定片36aは見込み方向に適度に長く、様々なタイプの既設上枠14aに適用可能である。
【0036】
位置決め当接片36bは、既設上枠14aにおける最も室外側のヒレ26dの室内側見付け面に当接して第2アタッチメント36の位置決めを行う。位置決め当接片36bの上端部にはポケットが設けられており、該ポケット内にシール材52を収納している。このシール材52は既設上枠14aと第2アタッチメント36との間の防水機能を奏する。
【0037】
室外突出片36cは見込み方向に沿って室外側に適度に突出している。より具体的には、室外突出片36cは新設上枠16aにおける最も室外側であるレール28dよりもやや室外側にまで突出している。室外突出片36cは水平の見込み面を形成している。本実施例における室外突出片36cは固定片36aに対して、見込み方向にほぼ延長するように形成されているが、上下に多少ずれた位置に形成されていてもよい。本実施例における室外突出片36cはヒレ26dの内周側端に接しているが、多少離れていてもよい。
【0038】
カバー片36dは、室外突出片36cの室外側端部から内周側に向かって適度に突出している。より具体的には、カバー片36dは新設上枠16aにおける最も室外側であるレール28dの外端部よりもやや内周側にまで突出している。カバー片36dは垂直の見付け面を形成している。カバー片36dの内周側端部にはポケットが設けられており、該ポケット内にシール材52を収納している。このシール材52は新設上枠16aと第2アタッチメント36との間の防水機能を奏する。すなわち、カバー片36dは、シール材52による新設上枠16aとの防水機能、および新設上枠16aの外周側端部を覆うカバーとしての機能を有している。
【0039】
第3アタッチメント38はL字形状であり、新設上枠16aにおける外周側壁部16aaの上面に対して当接しネジB4によって固定される第1片38aと、既設上枠14aにおけるヒレ26aの室内側見付け面に対して当接しネジB5によって固定される第2片38bとを有する。ネジB4,B5はX方向に沿って複数設けられている。第3アタッチメント38はアルミニウム合金であり、既設上枠14aおよび新設上枠16aのX方向の中央部を含む箇所に設けられているが、X方向両端部にまでには延在していない。すなわち、第3アタッチメント38は既設上枠14aおよび新設上枠16aよりは短く設定されている。建具10は、風圧を受けると枠材の中央部分が最も撓みやすくなるが、第3アタッチメント38を中央部分に設けることにより適切に補強することができる。
【0040】
また、建具10が防火仕様である場合には、第3アタッチメント38を耐火性の鋼材とし、X方向の全長に亘って設けるとよい。これにより外部からの火炎が室内側にまで入り込むことを防止することができる。
【0041】
既設上枠14aの室内側見付け面の上半分は既設額縁12abで覆われ、下半分は内額縁40で覆われている。内額縁40は新設上枠16aの室内側見付け面も覆っている。内額縁40は、少なくとも既設上枠14aの室内側見付け面の内周側端部と新設上枠16aの室内側見付け面の外周側端部とを覆っていると、既設上枠14aと新設上枠16aとの境界部での色味や質感の違いが目立たなくなり好適である。また、内額縁40は、少なくとも第3アタッチメント38が視認されないように覆うとよい。
【0042】
さらに、内額縁40は外周側端部40aが既設額縁12abの内周側見込み面12abaと接しまたは対面する位置に設けられていて、少なくとも既設額縁12abより室内側にはみ出ることがないため室内スペースを圧迫することがなく、しかも外観上で目立たなく好適である。
【0043】
このような建具10では、上記のとおり既設上枠14aと新設上枠16aとが第1アタッチメント34および第2アタッチメント36を介して固定されている。第2アタッチメント36は見込み方向に延在している固定片36aおよび室外突出片36cと、見付け方向に延在している位置決め当接片36bおよびカバー片36dとからなる単純形状であって既設上枠14aのタイプにかかわらず汎用に適用可能である。また、第1アタッチメント34は、隣接する2本のレール26およびレール26cの長さが等しいタイプの既設上枠14aに対して好適に用いられるが、レールの形状などによっては後述する変形例にかかる第1アタッチメント34A,34Bを用いればよい。
【0044】
建具10では、第2アタッチメント36の室外突出片36cが既設上枠14aの室外側見付け面を形成するヒレ26dよりも室外側に突出しており、これに応じてカバー片36dも適度に室外側に突出した位置に配置されている。したがって、新設枠16が見込み方向に厚い障子18,20に対応したものであって、新設上枠16aもこれに応じて見込み方向寸法が既設上枠14aよりも大きい場合であっても、新設枠16を既設枠14に対して適切な位置に配置することができる。より具体的には、新設上枠16aの室外側見付け面を形成するレール28dが、既設上枠14aの室外側見付け面を形成するヒレ26dよりも適度に室外側にずれた位置に配置され、新設枠16を既設枠14よりも相対的にやや室外側に適切に配置することができる。ため、新設上枠16aが室内側に突出してしまうことがない。
【0045】
また、新設上枠16aの室内側端部16ac(本実施例の場合は、外周側壁部16aaの室内側端部)が既設額縁12abの室内側端面よりも室外側に配置されることになる。これにより、内額縁40の外周側端部40aを既設額縁12abの内周側見込み面12abaと接しまたは対面する位置に設けることが可能になる。
【0046】
次に、第1アタッチメント34の変形例について説明する。
図4は、第1変形例にかかる第1アタッチメント34Aの縦側面図である。
図5は第2変形例にかかる第1アタッチメント34Bの縦側面図である。各変形例において、上記実施例と同様の構成要素については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0047】
図4に示すように、第1変形例にかかる第1アタッチメント34Aは、L字形状であって、レール26cの見付け面に当接してネジB2でネジ止めされる第1固定片34aと、該第1固定片34aの内周側端部に接続されて見込み面を形成する第2固定片34bとを有する。
図4では図示を省略しているが、上記の第1アタッチメント34(
図3参照)と同様に、第2固定片34bはネジB1によって第2アタッチメント36とネジ止めされる。このような第1アタッチメント34Aは、レール26bがなく1本のレール26cのみを有する既設上枠14aAに対して適用が可能である。条件によっては、第1アタッチメント34Aを上記の既設上枠14a(
図3参照)のレール26bまたはレール26cに固定してもよい。
【0048】
図5に示すように、第2変形例にかかる第1アタッチメント34Bは、第1固定片56と、延長片58と、第2固定片34bとを有する。第2固定片34bは延長片58の端部に接続されている。
図5では図示を省略しているが、上記の第1アタッチメント34(
図3参照)と同様に、第2固定片34bはネジB1によって第2アタッチメント36とネジ止めされる。
【0049】
第1固定片56は、ベース部56aに接続されて見付け方向に延在する一対の構成片56bを有する。一対の構成片56bは見込み方向で対面しており、この間にネジB2が配置される。一対の構成片56bが見込み方向に対面していると第1アタッチメント34Bを押し出し成形するのに好適であるが、設計条件によっては異なる向きに対面していてもよい。
【0050】
第1固定片56の構成片56bには、複数の折り取り溝56baが形成されている。それぞれの折り取り溝56baは、見付け方向に並び、X方向に延在している。構成片56bは、いずれかの折り取り溝56baで折り取ることにより長さを調整することができる。
【0051】
延長片58は、第1アタッチメント34Bが適度な長さとなるように、ベース部56aにおける見込み方向両端のいずれか一方から内方向に突出している。施工前の第1アタッチメント34Bには、ベース部56aにおける見込み方向両端のうち他方から仮想線で示すような延長片58Aが設けられていてもよい。延長片58と延長片58Aとは長さが異なり、施工対象の既設上枠14aBの形状に応じていずれか一方を折り取り、残る他方を用いるとよい。
【0052】
このような第1アタッチメント34Bの施工対象となる既設上枠14aBは、例えば2本のレール26b,26cが設けられているが、該レール26b,26cが上記の第1アタッチメント34を固定するのに短く、または固定の際に障害となる付属物26baが存在するものである。このように第1アタッチメント34を固定することが困難である既設上枠14aBであっても、変形例にかかる第1アタッチメント34BはネジB2により、既設上枠14aBの内周側見込み面を形成する壁部14aaに対して固定することができる。
【0053】
また、第1アタッチメント34Bは、第1固定片56における構成片56bの複数の折り取り溝56baのいずれかの箇所で折り取るとともに、2本の延長片58および延長片58Aのいずれか一方を選択的に用いることにより、壁部14aaからの枠内方向への突出長さを多様に調整することができて汎用性が高い。
【0054】
図6は、変形例にかかる建具10Aにおける既設上枠14a、新設上枠16aおよびその周辺部分の拡大縦断面図である。
図6に示すように、建具10Aにはカバー60が設けられている。
【0055】
カバー60は既設枠14における既設上枠14aの室外側見付け面(つまりヒレ26d)を覆うものである。既設上枠14aは新設上枠16aと色味や質感が異なる場合があり、カバー60によって覆うことが外観上好ましい。カバー60は室外壁部60aと、内周側片60bと、ルーフ部60cとを有する。
【0056】
既設上枠14aの室外側見付け面を形成するヒレ26dは、室外壁部60aおよびルーフ部60cによって覆われている。
【0057】
室外壁部60aはヒレ26dよりも室外側であり、さらに第2アタッチメント36のカバー片36dよりもやや室外側の位置にある。室外壁部60aは、ヒレ26dのほぼ全面とカバー片36dの上端部とを覆っている。室外壁部60aは、ヒレ26dおよびカバー片36dと平行な面を形成しているが、非平行であってもよい。ルーフ部60cは、ヒレ26dのうち露呈されている箇所の上端部と室外壁部60aの上端部とを接続する板片であり、ヒレ26dの上部を覆っている。ルーフ部60cは室外側に向かってやや下方に傾斜しており雨水が流れ落ちやすい。
【0058】
内周側片60bは、室外壁部60aの内周側端近傍から見込み方向に沿って室内側に延在しており、第2アタッチメント36の室外突出片36cの上面に当接している。内周側片60bは室外突出片36cに対してネジB6によって固定されている。ネジB6は、室外突出片36cの内周側から外周側に向かって内周側片60bと室外突出片36cとを螺設している。
【0059】
カバー60の取付施工時には、室内の作業員が該カバー60を室内側から室外に出し、そのまま内周側片60bを室外突出片36cに載置することができる。そして、室外突出片36cは内周側見付け面が露呈していることから、作業員はネジB6の螺設作業を室内で行うことできる。このように、カバー60の施工はすべて室内から行うことができる。また、建具10,10Aにおける既設枠14に対して新設枠16を取り付ける施工は、基本的にすべて室内から行うことができる。したがって、施工現場が2階以上である場合にも室外に足場を設ける必要がなく、しかも天候に左右されない施工が可能となる。
【0060】
また、建具10Aでは、室外突出片36cによりカバー片36dが既設上枠14aの室外側見付け面よりも室外側に突出した位置に設けられていることから、構造上、カバー60を室外突出片36cの枠外側にスペースがあり、この部分にカバー60を好適に配置可能となっている。なお、
図6で示す内額縁40Aは上記の内額縁40に相当するものである。内額縁40Aは内額縁40と形状が異なるが、同様の機能を有する。
【0061】
上記の実施例では、第1アタッチメント34および第2アタッチメント36が既設上枠14aと新設上枠16aとの間に設けられる例について説明したが、既設下枠14bと新設下枠16bとの間、および既設側枠14cと新設側枠16cとの間に設けてもよい。各部のネジ止め部は他の固定手段を用いてもよい。
【0062】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0063】
本発明にかかる建具は、既設枠の内周に改装用の新設枠を設置することによって構成した建具であって、前記既設枠の既設枠材と前記新設枠の新設枠材とはアタッチメントを介して固定され、前記アタッチメントの室外側見付け面は、前記既設枠材の室外側見付け面よりも室外側に突出した位置に設けられていることを特徴とする。
このような建具では、アタッチメントの一部が既設枠材の室外側見付け面を形成する部分よりも室外側に突出している。したがって、新設枠が見込み方向に厚い障子に対応したものであって、新設枠材もこれに応じて見込み方向寸法が既設枠材よりも大きい場合であっても、新設枠を既設枠に対して適切な位置に配置することができる。
【0064】
本発明にかかる建具は、前記アタッチメントは、第1アタッチメントおよび第2アタッチメントを有し、前記第1アタッチメントは前記既設枠材と前記第2アタッチメントとを固定するものであり、複数が前記既設枠材および前記新設枠材の長手方向に沿って配列されており、前記第2アタッチメントは、前記新設枠材と前記第1アタッチメントとを固定するものであり、前記長手方向に沿って形成されており、前記第2アタッチメントの室外側見付け面が前記既設枠材の室外側見付け面よりも室外側に突出した位置に設けられていることを特徴とする。
第1アタッチメントをいくつかの種類用意しておくことにより様々な形状の既設枠材に対して新設枠材を設置することが可能になる。また長尺となる第2アタッチメントについては汎用的に適用が可能となる。
【0065】
前記既設枠材の室外側見付け面を覆うカバーを備え、前記カバーは、見込み方向に延在する内周側片を有し、前記第2アタッチメントは、見込み方向に延在して前記既設枠における枠材の室外側見付け面より室外側に突出する室外突出片を有し、前記カバーの前記内周側片と前記第2アタッチメント前記室外突出片とが当接して固定されていることを特徴とする。
このような建具では、第2アタッチメントの室外突出片が既設枠材の室外側見付け面を形成する部分よりも室外側に突出しており、カバーを設けるのに好適である。
【0066】
本発明にかかる建具は、前記既設枠が固定される躯体である既設額縁と、少なくとも前記既設枠材の室内側見付け面の内周側端部と前記新設枠材の室内側見付け面の枠外側端部とを覆う新設額縁と、を備え、前記既設額縁の内周側見込み面と前記新設額縁の外周側見込み面とが接しまたは対面していることを特徴とする。
これにより、新設額縁が室内側に突出することがなくなる。
【0067】
本発明にかかる建具は、前記既設枠材はレールを備え、前記第1アタッチメントは、前記レールの見付け面に当接して固定される第1固定片と、前記第1固定片に接続されて見込み面を形成し、前記第2アタッチメントと固定される第2固定片と、を備えることを特徴とする。
このような第1アタッチメントは既設枠材のレールを有効に利用して固定することができる。
【0068】
本発明にかかる建具は、前記レールは複数あって、前記第1固定片は、前記レールのうち1本の見付け面に当接して固定され、前記第1アタッチメントは、前記レールのうち前記第1固定片が固定されるものと隣接する1本に対して内周側端に当接する第1当接片を備えることを特徴とする。
このような第1アタッチメントは、隣接するレールの突出長さが等しい場合に好適に用いられる。
【0069】
本発明にかかる建具は、前記第1アタッチメントは、前記第1固定片が固定される前記レールに対して内周側端に当接する第2当接片を備えることを特徴とする。
このような第2当接片はレールに対する位置決めに好適に用いられる。
【0070】
本発明にかかる建具は、前記第1アタッチメントは、前記既設枠の内周側見込み面を形成する壁部に固定されて、該内周側見込み面から内周方向に突出する第1固定片と、前記第1固定片から内周方向にさらに突出する延長片と、前記延長片に接続されて見込み面を形成し、前記第2アタッチメントと固定される第2固定片と、を備えることを特徴とする。
このような第1アタッチメントは既設枠材にレールがない場合、または該レールが固定に適さない場合であっても、既設枠の内周側見込み面を形成する壁部に固定することができる。
【0071】
本発明にかかる建具は、前記既設枠材の室内側見付け面と前記新設枠材の外周側見込み面とを固定する第3アタッチメントを備えることを特徴とする。
第3アタッチメントにより、既設枠材と新設枠材とを一層確実に固定することができる。
【0072】
本発明にかかる建具は、前記第3アタッチメントはアルミニウム合金であり、前記既設枠材および前記新設枠材より短く、各枠材の長手方向の中央部を含む箇所に設けられていることを特徴とする。
このような第3アタッチメントは、風圧に対して好適に補強することができる。
【0073】
本発明にかかる建具は、前記第3アタッチメントは鋼材であり、前記既設枠材および前記新設枠材の長手方向の全長に亘って設けられていることを特徴とする。
このような第3アタッチメントは防火構造とすることができる。
【符号の説明】
【0074】
10,10A 建具、12ab 既設額縁、14 既設枠、14a,14aA,14aB 既設上枠、16 新設枠、16a 新設上枠、18,20 障子、26b,26c レール、34,34A,34B 第1アタッチメント、34a 第1固定片、34b 第2固定片、34d 第2当接片、34f 第1当接片、36 第2アタッチメント、36a 固定片、36b 位置決め当接片、36c 室外突出片、36d カバー片、38 第3アタッチメント、38a 第1片、38b 第2片、40,40A 内額縁、40a 枠外側端部、56 第1固定片、58,58A 延長片、60 カバー、60a 室外壁部、60b 内周側片