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  • 特許-ジヒドロキシ化合物およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】ジヒドロキシ化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 333/76 20060101AFI20250218BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250218BHJP
【FI】
C07D333/76 CSP
C07B61/00 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021018858
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022121884
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】布目 和徳
(72)【発明者】
【氏名】大山 達也
【審査官】向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106749095(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101891895(CN,A)
【文献】特開2004-250493(JP,A)
【文献】国際公開第2007/056155(WO,A1)
【文献】特開2002-201262(JP,A)
【文献】特開2009-108152(JP,A)
【文献】特開2015-063519(JP,A)
【文献】特開2007-248849(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157131(WO,A1)
【文献】特表2017-515790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物。
【化1】
(式中、L は炭素原子数1~15のアルキレン基、mは0~5の整数である。)
【請求項2】
前記式中のmが0である請求項1に記載のジヒドロキシ化合物。
【請求項3】
屈折率が1.70以上である請求項1または2に記載のジヒドロキシ化合物。
【請求項4】
下記式(5)で表されるジオール類と下記式(6)で表されるボロン酸類とを反応溶媒中、塩基およびパラジウム系触媒の存在下で反応する、請求項1に記載のジヒドロキシ化合物の製造方法。
【化2】
(式中、Xはハロゲン原子であり、Lは炭素原子数1~15のアルキレン基、mは0~5の整数、nの整数である。)
【化3】
(式中、Yジベンゾチオフェニル基である。)
【請求項5】
前記式(5)で表されるジオール類が下記式(7)である請求項に記載のジヒドロキシ化合物の製造方法。
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジヒドロキシ化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光学材料は、ガラスなどの無機材料に比べて軽量で、割れにくく加工しやすいなどの特長を持ち、メガネレンズ、カメラレンズ、工業用レンズ、液晶ディスプレイ用位相差補償板、光ファイバーなどへの応用が期待されている。しかし、現在のプラスチック光学材料には解決すべき問題点が多い。例えば、レンズ用途においては、高屈折率、などの特性が要求されるが、現在実用化されているプラスチックレンズの屈折率は高屈折率ガラス材料の屈折率には至らず更なる性能向上が求められている。このような背景下、ジナフトチオフェンを含むジヒドロキシ化合物は有機化合物としては稀な高い屈折率を有することが示されている(特許文献1)。しかしながら、当該化合物は実施例に記載のある通り着色しており、レンズの素材となる熱可塑性樹脂の原料として使用するには課題がある。また、当該化合物を得るまでの製造工程が多いこと、発火や爆発の危険性のある原料を使用すること、250℃程度の高温反応が必要であること等の課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-196288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高純度で着色がなく、高屈折率である新規なジヒドロキシ化合物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物。
【0006】
【化1】
(式中、Zは硫黄原子を含む複素環基、Lは炭素原子数1~15のアルキレン基、mは0~5の整数、nは1~4の整数である。)
【0007】
《態様2》
下記式(2)で表される態様1に記載のジヒドロキシ化合物。
【0008】
【化2】
(式中、Z、L、mは前記式(1)と同様である。)
【0009】
《態様3》
下記式(3)で表される態様1または2に記載のジヒドロキシ化合物。
【0010】
【化3】
(式中、Zはジベンゾチオフェニル基であり、L、mは前記式(1)と同様である。)
【0011】
《態様4》
下記式(4)で表される態様1~3のいずれかに記載のジヒドロキシ化合物。
【0012】
【化4】
(式中、L、mは前記式(1)と同様である。)
【0013】
《態様5》
前記式中のmが0である態様1~4のいずれかに記載のジヒドロキシ化合物。
《態様6》
屈折率が1.70以上である態様1~5のいずれかに記載のジヒドロキシ化合物。
《態様7》
下記式(5)で表されるジオール類と下記式(6)で表されるボロン酸類とを反応溶媒中、塩基およびパラジウム系触媒の存在下で反応する、態様1に記載のジヒドロキシ化合物の製造方法。
【0014】
【化5】
(式中、Xはハロゲン原子であり、Lは炭素原子数1~15のアルキレン基、mは0~5の整数、nは1~4の整数である。)
【0015】
【化6】
(式中、Yは硫黄原子を含む複素環基である。)
【0016】
《態様8》
前記式(5)で表されるジオール類が下記式(7)である態様7に記載のジヒドロキシ化合物の製造方法。
【0017】
【化7】
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高純度で着色がなく、高屈折率であるチオフェンを含むジヒドロキシ化合物を提供することができる。また、当該ジヒドロキシ化合物を一つの反応工程で得る製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1で得られたジヒドロキシ化合物のNMRチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<ジヒドロキシ化合物>
本発明における新規なジヒドロキシ化合物は下記式(1)で表される。
【0021】
【化8】
(式中、Zは硫黄原子を含む複素環基、Lは炭素原子数1~15のアルキレン基、mは0~5の整数、nは1~4の整数である。)
【0022】
式(1)中のnは1~4の整数であり、1~2の整数であることが好ましく、2であることが特に好ましい。すなわち、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の中で、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物が特に好ましい。
【0023】
【化9】
(式中、Z、L、mは前記式(1)と同様である。)
【0024】
式(1)および式(2)中のZは硫黄原子を含む複素環基であり、例えば、チエニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基等が挙げられ、ジベンゾチオフェニル基が特に好ましい。すなわち、式(2)で表されるジヒドロキシ化合物の中で、下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物が特に好ましい。
【0025】
【化10】
(式中、Zはジベンゾチオフェニル基であり、L、mは前記式(1)と同様である。)
【0026】
式(3)中のZはジベンゾチオフェニル基であり、ジベンゾチオフェン-1-イル基、ジベンゾチオフェン-2-イル基、ジベンゾチオフェン-3-イル基、ジベンゾチオフェン-4-イル基が挙げられ、ジベンゾチオフェン-2-イル基が特に好ましい。すなわち、式(3)で表されるジヒドロキシ化合物の中で、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物が特に好ましい。
【0027】
【化11】
(式中、L、mは前記式(1)と同様である。)
【0028】
式(1)~(4)中のLは炭素原子数1~15のアルキレン基であり、炭素原子数1~12のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~4のアルキレン基がより好ましく、エチレン基が特に好ましい。
式(1)~(4)中のmは0~5の整数であり、0または1が好ましく、0がより好ましい。
【0029】
本発明のジヒドロキシ化合物は、HPLCで測定したHPLC純度が、90面積%以上が好ましく、95面積%以上がより好ましく、98面積%以上がさらに好ましい。
【0030】
本発明のジヒドロキシ化合物は、その屈折率が、1.70以上が好ましく、1.71以上がより好ましく、1.72以上がさらに好ましい。屈折率は、ジヒドロキシ化合物をジメチルスルホキシドに溶解させ、所定濃度の溶液を作成し、各濃度の溶液の屈折率をATAGO社製DR-M2アッベ屈折計を用い、25℃におけるD線屈折率を測定し、各濃度の測定結果から濃度100%に外挿した値で得られた化合物の屈折率(nD)とした。
【0031】
<ジヒドロキシ化合物の製造方法>
本発明のジヒドロキシ化合物は、下記式(5)で表されるジオール類と下記式(6)で表されるボロン酸類とを反応溶媒中、塩基およびパラジウム系触媒の存在下で反応し、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を製造することができる。
【0032】
【化12】
【0033】
(式中、Xはハロゲン原子であり、Lは炭素原子数1~15のアルキレン基、mは0~5の整数、nは1~4の整数である。)
【0034】
【化13】
(式中、Yは硫黄原子を含む複素環基である。)
【0035】
式(5)中のXはハロゲン原子であり、塩素原子または臭素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
【0036】
式(5)で表されるジオール類の具体例として、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ヨード-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジヨード-4-ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましく、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンがより好ましく、特に、下記式(7)で表される2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。これらのジオール類は単独で使用してもよく、または2種以上を混合してもよく、目的により任意に選ぶことができる。
【0037】
【化14】
【0038】
前記式(6)で表されるボロン酸類の具体例として、2-チオフェンボロン酸、3-チオフェンボロン酸、ベンゾチオフェン-2-ボロン酸、ベンゾチオフェン-3-ボロン酸、ベンゾチオフェン-4-ボロン酸、ベンゾチオフェン-5-ボロン酸、ベンゾチオフェン-6-ボロン酸、ベンゾチオフェン-7-ボロン酸、ジベンゾチオフェン-2-ボロン酸、ジベンゾチオフェン-3-ボロン酸、ジベンゾチオフェン-4-ボロン酸が挙げられ、ジベンゾチオフェン-2-ボロン酸、ジベンゾチオフェン-3-ボロン酸、ジベンゾチオフェン-4-ボロン酸が好ましく、ジベンゾチオフェン-2-ボロン酸が特に好ましい。また、ボロン酸類として、これらの化合物のボロン酸エステルやボロン酸無水物も含まれる。これらのボロン酸類は単独で使用してもよく、または2種以上を混合してもよく、目的により任意に選ぶことができる。
【0039】
原料として用いる前記式(6)で表されるボロン酸類の使用比率は、前記式(5)で表されるジオール化合物1モルに対して好ましくは2.0~6.0モル、より好ましくは、3.0~5.0モル、さらに好ましくは4.0~4.5モルである。
【0040】
本発明の製造方法で使用する塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸セシウム(CsCO)などの炭酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩、リン酸ナトリウム(NaPO)、リン酸カリウム(KPO)などのリン酸塩などの無機塩、トリエチルアミン類、ピリジン、モルホリン、キノリン、ピペリジン、アニリン類、テトラnブチルアンモニウムアセテートなどのアンモニウム塩などの有機塩などが挙げられる。なかでも、炭酸塩が好ましく用いられ、炭酸カリウムおよび/または炭酸ナトリウムが好ましい。このような塩基は、単独で用いてもよく、また、2種類以上併用して用いることもできる。
【0041】
上述した塩基の使用量は特に限定されないが、ボロン酸類1モルに対して好ましくは1~30当量、より好ましくは1~10当量添加される。
【0042】
本発明の製造方法で使用するパラジウム系触媒としては、鈴木カップリングで使用されるパラジウム化合物が好ましく、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィンパラジウムジクロリド、ビス(ジ-tert-ブチルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ-tert-クロチルホスフィン)パラジウムジクロリド、Pd/SiOで表されるパラジウム系触媒などが挙げられる。なかでも、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムが好ましい。これらパラジウム系触媒は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用して用いることもできる。
【0043】
上述した触媒の使用量は特に限定されないが、前記式(5)で表されるジオール化合物1モルに対して、パラジウム金属原子換算で好ましくは0.1~50ミリモルであり、より好ましくは0.5~30ミリモルである。
【0044】
本発明の製造方法で使用する反応溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等のアルコール類を単独または併用して用いることができる。芳香族炭化水素系溶媒は高沸点溶媒であるため反応温度を高く設定できるし、アルコールを用いることで水との親和性がよく反応性が良好になるため好適に用いられる。このような溶媒は単独で用いてもよく、または2種以上を併用して用いることもできる。さらには、N,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルアセトアミド等の非プロトン性溶媒、o-ジクロロベンゼン等のハロベンゼン類も使用できる。このような溶媒も単独で用いても良く、また、2種以上併用して用いることもできる。本発明においては、トルエンとエタノールの混合溶媒がより好ましい。
【0045】
上述した反応溶媒の使用量は、特に限定されないが、前記式(5)で表されるジオール化合物1モルに対して好ましくは0.1重量倍以上、より好ましくは0.5~100重量倍であり、さらに好ましくは1~50重量倍である。
【0046】
反応溶媒として、特に好ましく使用されるトルエンとエタノールの混合溶媒の場合の使用量は、前記式(5)で表されるジオール化合物1モルに対してトルエンの使用量は好ましくは0.1重量倍以上、より好ましくは0.5~100重量倍であり、さらに好ましくは1~50重量倍である。また、前記式(5)で表される化合物1モルに対してエタノールの使用量は好ましくは0.1~50重量倍であり、より好ましくは1~20重量倍である。
【0047】
本発明の製造方法において、反応温度は使用する原料、溶媒の種類により異なるが、好ましくは50~150℃、より好ましくは60~130℃、さらに好ましくは70~120℃である。反応は液体クロマトグラフィーなどの分析手段で追跡することができる。
【0048】
本発明の製造方法において、反応終了後の反応混合物には、通常、生成した前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外に、未反応のボロン酸類、塩基、触媒、副反応生成物などが含まれている。そのため、慣用の方法、例えば、ろ過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、再沈殿、活性炭処理あるいはそれと酷似した金属の除去処理、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。例えば、慣用の方法(アルカリ水溶液を加えて水溶性の複合体を形成させる方法など)によりボロン酸類を除去し、活性炭処理あるいはそれと酷似した金属の除去処理をしてパラジウム化合物を除去したのち、再結晶溶媒を添加して冷却して再結晶化させ、次いでろ過分離することにより精製することが好ましい。
【実施例
【0049】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、各種測定は以下のように行った。
(1)HPLC測定
日立製高速液体クロマトグラフL-2350を用い、表1の測定条件で測定した。実施例中、特に断らない限り%はHPLCにおける溶媒を除いて補正した面積百分率値である。
【0050】
【表1】
【0051】
(2)NMR測定
実施例で得られた化合物を重クロロホルムに溶解させ、日本電子社製JNM-AL400(400MHz)を用い測定した。
(3)屈折率(nD)
実施例で得られたジヒドロキシ化合物をジメチルスルホキシドに溶解させ、所定濃度の溶液を作成し、各濃度の溶液の屈折率をATAGO社製DR-M2アッベ屈折計を用い、25℃におけるD線屈折率を測定した。各濃度の測定結果から濃度100%に外挿した値を実施例で得られた化合物の屈折率(nD)とした。
【0052】
[実施例1]
窒素雰囲気下、撹拌機、冷却器、温度計を備え付けたフラスコにテトラブロモビスフェノールA(以下、TBAと省略することがある)3.00g(6ミリモル)、ジベンゾチオフェン-2-ボロン酸2.77g(12ミリモル)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.06g(0.06ミリモル)、2M炭酸カリウム水溶液12ml、トルエン25ml、エタノール8mlを加え、80℃で4時間反応させた。その後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.06g(0.06ミリモル)、ジベンゾチオフェン-2-ボロン酸2.77g(12ミリモル)を加え、80℃で4時間反応させた。反応終了後、反応液を酢酸エチルで希釈した後、分液ロートに移し、中性になるまで蒸留水で洗浄した。その後、有機層にヘキサンを加え再結晶した。得られた結晶を回収し、減圧乾燥を行い、下記式(8)で表される2,2-ビス(3,5-ジ(ジベンゾチオフェン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、TDBTAと省略することがある)の粗生成物を2.1g得た(純度71%)。粗生成物をカラム精製し(展開溶媒は酢酸エチル:ヘキサン=1:3)、得られた溶離液を濃縮後、再結晶した。得られた結晶を回収し、減圧乾燥を行い、TDBTAの白色結晶を0.6g得た(純度98.21%)。また、TDBTAの屈折率は1.727だった。
【0053】
【化15】
【0054】
[比較例1]
実施例1のジベンゾチオフェン-2-ボロン酸をフェニルボロン酸に変更し、フェニルボロン酸の添加量を2.96g(24ミリモル)とする以外は実施例1と同様の方法で、下記式(9)で表される2,2-ビス(3,5-ジフェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンを得た。当該化合物の屈折率は1.65だった。
【0055】
【化16】
【0056】
実施例1で得られた新規なジヒドロキシ化合物は、高屈折率であるとともに、高純度で色相にも優れる。また、かかるジヒドロキシ化合物は一つの反応工程で製造することができ、工業的に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明で得られる新規なジヒドロキシ化合物は、光学レンズや光学フィルムに代表される光学部材を構成する樹脂を形成するモノマーとして好適である。
図1