(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】建具およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
E06B 1/56 20060101AFI20250218BHJP
E06B 1/62 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
E06B1/56 A
E06B1/62 Z
(21)【出願番号】P 2021018876
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】砂原 光宏
(72)【発明者】
【氏名】岩田 奈穂
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101472(JP,A)
【文献】実公昭53-051893(JP,Y2)
【文献】実公昭47-039495(JP,Y1)
【文献】特開2019-157537(JP,A)
【文献】特開2011-102520(JP,A)
【文献】実開平06-026524(JP,U)
【文献】特開2001-317271(JP,A)
【文献】特開2018-109309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
C09J 7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設枠の内周に改装用の新設枠を設置することによって構成した建具であって、
前記既設枠の既設枠材に貼られた防水テープと、
前記既設枠材に貼られた前記防水テープに接着され、さらに前記新設枠の新設枠材に亘って配置された防水シートと、
を備え、
前記防水テープの貼り付け面は自己融着性を有し
、該貼り付け面とは反対側の表面は箔材で覆われており、
前記防水シートは前記表面に対して防水性の両面テープで接着されていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記既設枠材は、前記防水テープの貼り付け対象面に凸部を有し、
前記防水テープは、前記凸部を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記既設枠材は既設下枠であり、前記新設枠材は新設下枠であることを特徴とする請求項1又は2に記載の建具。
【請求項4】
前記既設枠材は既設下枠および既設側枠であり、前記新設枠材は新設下枠および新設側枠であり、前記防水テープは、前記既設下枠の長手方向の全長と前記既設側枠の下部に亘って貼られていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建具。
【請求項5】
前記既設枠材と前記新設枠材とはねじ止め固定され、
前記防水テープの一部は、前記ねじ止め固定される部位で前記既設枠材と前記新設枠材とによって挟持されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の建具。
【請求項6】
前記既設枠材と前記新設枠材とはアタッチメントを介して固定され、
前記防水テープは、前記ねじ止め固定される部位で前記アタッチメントを介して挟持されていることを特徴とする請求項5に記載の建具。
【請求項7】
既設枠の内周に改装用の新設枠を設置することによって構成した建具の施工方法であって、
貼り付け面に自己融着性の材質を有し
、該貼り付け面とは反対側の表面は箔材で覆われている防水テープを前記既設枠の既設枠材に貼る工程と、
前記既設枠の内周に前記新設枠を設置する工程と、
前記防水テープおよび前記新設枠の新設枠材に対してそれぞれ防水シートを
防水性の両面テープで接着する工程と、
を有することを特徴とする建具の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設枠の内周に改装用の新設枠を設置することによって構成した建具およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既に建築物に設置された建具を改装する場合には、既設枠を残した状態でその内周に新設枠を設置する方法がある。こうした改装方法によれば、既設枠を取り外す作業が不要となるため、工期を短縮できるとともに改装費用を抑えることが可能となる。既設枠と新設枠との接続部分は防水構造にする必要がある。防水構造とするためには湿式のシーリングを充填する場合もあるが充填量、液垂れ、養生などに留意する必要があり、施工に技量や時間を要する。
【0003】
これに対して、本出願人は特許文献1において防水シートを既設枠及び新設枠に両面テープなどで接着することを提案している。このような防水シートによれば容易な施工が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常の既設枠は新設枠の設置を想定した構造にはなっていないため、既設枠の面の構造および状態によっては防水シートを貼り付けるのに適さない場合もある。また、マンションなどの高層建築ではより高い防水性能が求められる場合もある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、様々な構造および状態の既設枠に適用可能であって、しかも一層高い防水性能が得られる建具およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる建具は、既設枠の内周に改装用の新設枠を設置することによって構成した建具であって、前記既設枠の既設枠材に貼られた防水テープと、前記既設枠材に貼られた前記防水テープに接着され、さらに前記新設枠の新設枠材に亘って配置された防水シートと、を備え、前記防水テープの貼り付け面は自己融着性を有していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる建具の施工方法は、既設枠の内周に改装用の新設枠を設置することによって構成した建具の施工方法であって、貼り付け面に自己融着性の材質を有している防水テープを前記既設枠の既設枠材に貼る工程と、前記既設枠の内周に前記新設枠を設置する工程と、前記防水テープおよび前記新設枠の新設枠材に対してそれぞれ防水シートを接着する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる建具およびその施工方法によれば、既設枠材と新設枠材の間に防水テープが接着して設けられていることから防水性能が得られる。また、既設枠材には自己融着性を有する防水テープが貼られており、その上に防水テープが接着されていることから二重の防水手段が講じられており一層高い防水性能が得られる。さらに、防水テープは自己融着性により隣接する同士が融着するとともに、貼り付け対象面が非平坦であっても高い密着性があることから隙間が埋められる。したがって、本発明にかかる建具およびその施工方法は様々な構造および状態の既設枠に適用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態にかかる建具の縦断面図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる建具の横断面図である。
【
図3】既設下枠、新設下枠およびその周辺部分の拡大縦断面図である。
【
図5】既設側枠、新設側枠およびその周辺部分の拡大縦断面図である。
【
図6】本発明の実施形態にかかる建具の施工方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる建具およびその施工方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態にかかる建具10の縦断面図である。
図2は建具10の横断面図である。まず、建具10について説明する。建具10は既設枠14を残したまま新設枠16が取り付けられたものである。建具10において既設枠14は特に利用されることはないが、撤去しないことにより施工コストを低減することができる。
【0013】
建具10は、躯体12と、既設枠14と、新設枠16と、引き違いの障子18,20と、網戸22とを備える。躯体12は、上縁12a、下縁12b及び左右の側縁12cを有した矩形状を成し、開口部12dを形成するものである。躯体12は、例えば木材やコンクリート材である。既設枠14および新設枠16は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、長手に沿った全長にわたる部分がほぼ一様の断面形状を有するように構成してある。
【0014】
本出願において、見込み方向とは建具10の室内外方向、つまり室内から室外に向かう方向又はその逆方向(図中に矢印Zで示す方向)をいう。見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な側縁12cの場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上縁12a,下縁12bの場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Yで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。
【0015】
上縁12aは主材12aaと、副材である既設額縁12abとを有する。側縁12cは主材12caと、副材である既設額縁12cbとを有する。既設枠14は、既設上枠14a、既設下枠(既設枠材)14bおよび左右の既設側枠14cを有した矩形状を成す。既設上枠14a、既設下枠14bおよび既設側枠14cは、上縁12aの主材12aa,下縁12bおよび主材12caのそれぞれ内周側見込み面に設けられている。既設上枠14aには室内側見付け面を形成するヒレ26aと、2本のレール26b,26cと、室外側見付け面を形成するヒレ26dとが見込み方向に並んで設けられている。ヒレ26aは既設額縁12abの室外側見込み面と当接している。ヒレ26aは既設額縁12abよりも内周側にやや突出している、ヒレ26a,26dはレール26b,26c等が視認されないように覆っている。レール26bとレール26cとは枠内側突出長さが等しくなっている。
【0016】
新設枠16は、新設上枠16a、新設下枠(新設枠材)16bおよび左右の新設側枠16cを有した矩形状を成す。新設枠16は既設枠14の内周側に設けられ、新設上枠16aには室内側見付け面を形成するヒレ28aと、3本のレール28b,28c,28dとが見込み方向に並んで設けられている。ヒレ28aは新設上枠16aにおける最も室内側に設けられて内周側に突出する部分である。ヒレ26dは室外側見付け面を形成している。新設下枠16bには3本のレール30a,30b,30cが見込み方向に並んで設けられている。
【0017】
障子18は外障子であり、上方のレール28cと下方のレール30bとによってスライド可能に設けられている。障子20は内障子であり、上方のレール28bと下方のレール30aとによってスライド可能に設けられている。網戸22は障子18よりも室外側に配置され、上方のレール28dと下方のレール30cとによってスライド可能に設けられている。新設側枠16cのうち一方における見込み面は障子18の戸先部に対する戸当たり部となっており、他方における見込み面は障子20の戸先部に対する戸当たり部となっている。障子18,20の各戸尻側は召合わせ部となっている。
【0018】
このように、建具10は2枚の障子18,20を引違い可能に構成した引違い窓であるが、例えば一方の障子20を新設枠16に嵌め殺した片引き窓で構成されてもよいし、3枚以上の障子をスライド可能に設けた引戸で構成されてもよい。障子の設置枚数は適宜変更可能である。障子18,20はそれぞれ2枚のガラスを備えており、見込み方向に厚くなっている。新設枠16はこのような厚い障子18,20に対応しており、見込み方向寸法が既設枠14よりも大きくなっている。
【0019】
既設枠14の既設上枠14aと新設枠16の新設上枠16aとは、第1上アタッチメント34、第2上アタッチメント36および第3上アタッチメント38を介して固定されている。このうち、第1上アタッチメント34と第2上アタッチメント36とは組み合わせて用いられる。既設下枠14bと新設下枠16bとは下アタッチメント42を介して固定されている。既設側枠14cと新設側枠16cとは第1側アタッチメント44、第2側アタッチメント46および第3側アタッチメント47を介して固定されている。第1上アタッチメント34と第2上アタッチメント36との間にはスペーサ50が設けられている。
【0020】
建具10には、内額縁40,48,49が設けられている。内額縁40は、既設上枠14aおよび新設上枠16aの室内側見付け面の少なくとも一部を覆う。内額縁48は、既設側枠14cおよび新設側枠16cの室内側見付け面の少なくとも一部を覆う。内額縁49は、既設下枠14bおよび新設下枠16bの室内側見付け面の少なくとも一部を覆う。
【0021】
建具10では、既設枠14と新設枠16との間で全周に亘って防水シート52が設けられている。防水シート52は、既設枠14の枠材面と新設枠16の枠材面とに対して防水性を備えた両面テープなどによって接着されている。防水シート52としては、貫通孔等から浸入しようとする水を高分子吸収体が水を吸って膨潤し、貫通孔をふさぐ機能を備えるものが好適に用いられる。防水シート52は高い可撓性を有しており施工性に優れる。
【0022】
また、建具10では、既設下枠14bにおける防水シート52の接着面には、防水テープ54が介在して貼られている。つまり、既設下枠14bに対しては防水テープ54が貼られ、防水シート52は該防水テープ54を介して既設下枠14bに貼られている。防水シート52および防水テープ54は薄いが、各図では識別が容易となるように厚く示している。
【0023】
次に、既設下枠14bと新設下枠16bとの固定部分についてさらに説明する。
図3は、既設下枠14b、新設下枠16bおよびその周辺部分の拡大縦断面図である。
図4は、室内壁部14bb部分の拡大模式縦断面図である。
【0024】
図3に示すように、既設下枠14bにおける室内側部分は既設額縁12baに沿っておっており、内周側見込み面を形成する内周側壁部14baと、該内周側壁部14baの端部から外周側に延在して室内側見付け面を形成する室内壁部14bbとを有している。室内壁部14bbにおける室外側面には付属物を取り付けるための凸形状である部材取付凸部(凸部)14bcが設けられている。付属物とは、例えばパッキンや耐火材などである。付属物は新設枠16を設置する施工時に取り外されている。本実施形態では部材取付凸部14bcを開口部がやや狭まったポケット状凹部として図示しているが、他の凸形状であってもよい。なお、室内壁部14bbは、部材取付凸部14bc等の構造上の凸部がなくとも、経年劣化等の変形により必ずしも平坦でない場合がある。
【0025】
新設下枠16bにおける室内側端は突出しており見込み面を形成する外周側壁部16baを形成している。下アタッチメント42は、見付け面を形成する外周側端片42aと、見込み面を形成する室内側端片42bとを有している。外周側端片42aと室内側端片42bとの間は段付き形状になっている。下アタッチメント42は、外周側端片42aがねじB1によって既設下枠14bと固定され、室内側端片42bがねじB2によって新設下枠16bと固定されている。
【0026】
室内側端片42bは、ねじB2の箇所よりさらに室内側に突出しており、内周側が外周側壁部16baと当接し、外周側が防水シート52および防水テープ54を介して内周側壁部14baと当接している。室内側端片42b、内周側壁部14baおよび既設額縁12baはねじB3によって固定されている。外周側壁部16ba、室内側端片42bおよび既設額縁12baはねじB4によって固定されている。ねじB3およびねじB4は皿ねじでありヘッドが突出しない。
【0027】
防水テープ54の貼り付け面は自己融着性を有している。具体的には、防水テープ54の貼り付け面にはブチルゴムなど経時的に変形をして隙間を埋めることのできる自己融着材が設けられている。自己融着材は重なった部分については互いに融着する性質を有している。自己融着材には、過度に形が崩れてしまうことを防止するためにポリエチレンなどが加えられていてもよい。このような自己融着性を有する防水テープ54は、密着性が高く、耐水性、耐湿性、絶縁性に優れている。防水テープ54における貼り付け面とは反対側の表面は箔材で覆われている。箔材は、例えばアルミニウム箔であって、自己融着材が滲み出ることがなく、しかも表面に防水シート52を接着しやすい。防水テープ54は、所定幅のものがロール状に巻かれている市販品を必要量だけ切り出して用いることができる。
【0028】
防水テープ54は、室内壁部14bbの室外側見付け面から内周側壁部14baの内周側見込み面にわたって設けられている。また、防水テープ54は既設下枠14bの長手方向全長に亘って設けられている。防水テープ54は、室内壁部14bbの室外側見付け面の全面に設けることが望ましいが、少なくとも部材取付凸部14bcを含み、所定の余裕代分を覆うように設ければ、部材取付凸部14bcの形状に基づく防水性の低下を防止することができる。また、防水テープ54が覆う対象は部材取付凸部14bc以外の構造上の凸部であってもよい。
【0029】
なお、室内壁部14bbに部材取付凸部14bc等の構造上の凸部がなくとも、状態によっては室内壁部14bbが平坦でない場合があり、一層の防水性を確保するためには室内壁部14bbと防水シート52との間には防水テープ54を設けることが好ましい。
【0030】
防水シート52は、室内壁部14bbで防水テープ54の表面に対して防水性の両面テープで接着されており、該防水テープ54を覆っている。
図4に示す例では、室内壁部14bbにおいて防水テープ54と防水シート52とは同じ面積(室内壁部14bbの全面を覆う面積)に設定されている。ただし設計条件または施工条件により、防水テープ54の下端は防水シート52から露呈していてもよいし、または逆に防水テープ54の下端は防水シート52の下端よりもやや上方であってもよい。
【0031】
防水シート52は室内壁部14bbの上端部で折り曲げられ、内周側壁部14baに沿って室内側に延在する。防水シート52は、内周側壁部14baに沿う部分では両面テープなどの接着手段を特に設ける必要がない。防水テープ54は、内周側壁部14baに沿う部分で防水シート52および下アタッチメント42の室内側端片42bを介し、外周側壁部16baと内周側壁部14baとによって挟持され、さらにねじB3,B4が螺設されることによって適度に圧縮されている。これにより、防水テープ54は高密度で隙間が一層埋まりやすくなって防水性が向上する。
【0032】
防水シート52は、下アタッチメント42の室内側端片42bおよび新設下枠16bの外周側壁部16baの室内側端部で折り返され、室外側に向かって延在して、外周側壁部16baの内周面のほぼ全面を覆っている。防水シート52は、外周側壁部16baの内周面に対して防水性の両面テープで接着されている。
【0033】
防水テープ54は、上記の範囲を1枚で覆うことができない幅の場合には、
図4に示すように端部同士が重なるようにして複数枚で覆うようにしてもよい。この場合、防水テープ54を既設下枠14bの長手方向に沿って設けると少ない枚数で足り、施工性が向上する。また、仮に、防水テープ54同士が重なる部分に小さい隙間54aが発生した場合であっても、該隙間54aは、防水テープ54の自己融着性により次第に埋められて好適な防水性能が得られる。
【0034】
図5は、既設側枠14c、新設側枠16cおよびその周辺部分の拡大縦断面図である。既設側枠14cおよび新設側枠16cは左右一対設けられているが、対称構造であることから一方についてのみ説明する。
【0035】
図5に示すように、既設側枠14cは見付け面を形成する内周側壁部14caを有している。内周側壁部14caは経年劣化等の変形により平坦でない場合がある。新設側枠16cにおける室内側端部分は室内側に突出して見込み面を形成する外周側壁部16caを有している。
【0036】
第3側アタッチメント47は、見付け面を形成する室外側端片47aと、見込み面を形成する内周側端片47bとを有するL字形状である。第3側アタッチメント47は、室外側端片47aがねじB5によって既設側枠14cの内周側壁部14caと固定され、内周側端片47bがねじB6によって新設側枠16cの外周側壁部16caと固定されている。ねじB6は皿ねじでありヘッドが突出しない。
【0037】
内周側壁部14caの室外側見付け面には防水テープ54が貼られている。ただし、防水テープ54は内周側壁部14caの下部のみに設けられている(
図3の破線参照)。換言すれば、防水テープ54は、既設下枠14bから既設側枠14cの下部に亘って貼られている。これにより、雨水が建具10の下端部分から既設側枠14cの表面を伝って上昇しさらに室内側に浸入することを防止できる。
【0038】
防水テープ54の室外側表面には防水性の両面テープによって防水シート52が接着されており、防水シート52は防水テープ54を覆っている。防水シート52は、防水テープ54の無い箇所では内周側壁部14caに直接接着される。
【0039】
防水シート52は新設側枠16cに当接する箇所で室内側に折り曲げられ、外周側壁部16caに沿って室内側に延在する。防水シート52は、さらに外周側壁部16caの室内側端部で折り返され、室外側に向かって延在して、外周側壁部16caの内周面に対して防水性の両面テープで接着されている。防水シート52は第3側アタッチメント47の内周側端片47bおよび外周側壁部16caで挟持され、さらにねじB6が螺合して締め付けることによって高い防水性が得られる。
【0040】
図6は、既設下枠14bに対して新設下枠16bを取り付ける施工方法のフローチャートである。
図6に示すように、まずステップS1において、防水テープ54を既設下枠14bにおける室内壁部14bbの室外側見付け面および内周側壁部14baの内周側見込み面に貼りつける。防水テープ54は、少なくとも部材取付凸部14bcやその他の非平坦部を覆うように貼り付ける。防水テープ54は所定の用法に応じて貼り付ける。用法とは、例えば、引っ張って伸ばしながら隣接する防水テープ54の幅が半分ずつ重なるようにして貼り付けることである。
【0041】
ステップS2において、防水シート52の一端を防水テープ54の表面および/または室内壁部14bbの室外側見付け面の露呈部分に両面テープで接着する。
【0042】
ステップS3において、下アタッチメント42を既設下枠14bに取り付ける。上記のとおり下アタッチメント42はねじB1およびB3によって既設下枠14bに取り付けられる。また、下アタッチメント42は室内側端片42bの部分で防水テープ54および防水テープ54を内周側壁部14baとの間で挟持し、ねじB3で締めこむ。
【0043】
ステップS4において、新設下枠16bを下アタッチメント42に取り付ける。上記のとおり新設下枠16bはねじB2およびB4によって下アタッチメント42に取り付けられる。
【0044】
ステップS5において、防水シート52を室内側端片42bおよび外周側壁部16baの室内側端部で折り返し、端部を外周側壁部16baの内周側見込み面に対して両面テープで接着する。
【0045】
ステップS6において、防水シート52の端部を外周側壁部16baの見込み寸法に合うように切り取る。これにより、施工現場ごとに異なる外周側壁部16ba見込み方向寸法および室内壁部14bbの見付け方向寸法などに応じて、防水シート52を適切な長さに調整することができる。この後、内額縁49を取り付ける。防水シート52は内額縁49によって視認されなくなる。
【0046】
上記のように本実施の形態にかかる建具10およびその施工方法によれば、既設下枠14bと新設下枠16bとの間に防水テープ54が接着して設けられていることからこの間の防水性能が得られる。また、既設下枠14bには自己融着性を有する防水テープ54が貼られており、その上に防水シート52が接着されていることから二重の防水手段が講じられており一層高い防水性能が得られる。さらに、防水シート52および防水テープ54による施工では、湿式のシーリングを充填する施工と異なり充填量、液垂れ、養生などに留意する必要がなく、短時間かつ容易な施工が可能となる。さらにまた、防水テープ54は自己融着性により隣接する同士が融着するとともに、貼り付け対象面が非平坦であっても高い密着性があることから隙間が埋められる。したがって、建具10およびその施工方法は様々な構造および状態の既設枠に適用可能となる。
【0047】
そして上記の例における既設下枠14bは、防水テープ54の貼り付け対象面である室内壁部14bbに部材取付凸部14bcを有しているが、防水テープ54は該部材取付凸部14bcを覆うように設けられていることから、この部分に対する防水性能が強化される。雨水は建物の下方部分から浸入しやすい傾向があるが、建具10では防水テープ54を既設下枠14bおよび既設側枠14cの下部に貼っていることから適切な防水が可能となる。もちろん、条件によっては、防水テープ54を既設側枠14cの全長にわたって貼ってもよいし、さらに既設上枠14aに貼ってもよい。
【0048】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0049】
本発明にかかる建具は、既設枠の内周に改装用の新設枠を設置することによって構成した建具であって、前記既設枠の既設枠材に貼られた防水テープと、前記既設枠材に貼られた前記防水テープに接着され、さらに前記新設枠の新設枠材に亘って配置された防水シートと、を備え、前記防水テープの貼り付け面は自己融着性を有していることを特徴とする。
【0050】
本発明にかかる建具の施工方法は、既設枠の内周に改装用の新設枠を設置することによって構成した建具の施工方法であって、貼り付け面に自己融着性の材質を有している防水テープを前記既設枠の既設枠材に貼る工程と、前記既設枠の内周に前記新設枠を設置する工程と、前記防水テープおよび前記新設枠の新設枠材に対してそれぞれ防水シートを接着する工程と、を有することを特徴とする。
このような建具およびその施工方法によれば、様々な構造および状態の既設枠に適用可能であって、しかも一層高い防水性能が得られる。
【0051】
本発明にかかる建具は、前記既設枠材は、前記防水テープの貼り付け対象面に凸部を有し、前記防水テープは、前記凸部を覆うように設けられていることを特徴とする。
これにより、凸部の形状に基づく防水性の低下を防止することができる。
【0052】
本発明にかかる建具は、前記既設枠材は既設下枠であり、前記新設枠材は新設下枠であることを特徴とする。
雨水は建物の下方部分から浸入しやすい傾向があるが、防水テープを既設枠材に貼ることによって適切な防水が可能となる。
【0053】
本発明にかかる建具は、前記既設枠材は既設下枠および既設側枠であり、前記新設枠材は新設下枠および新設側枠であり、前記防水テープは、前記既設下枠の長手方向の全長と前記既設側枠の下部に亘って貼られていることを特徴とする。
これにより、雨水が既設側枠の表面を伝って上昇しさらに室内側に浸入することを防止できる。
【0054】
本発明にかかる建具は、前記既設枠材と前記新設枠材とはねじ止め固定され、前記防水テープの一部は、前記ねじ止め固定される部位で前記既設枠材と前記新設枠材とによって挟持されていることを特徴とする。
これにより、防水テープが圧縮されて防水性能が一層向上する。
【0055】
本発明にかかる建具は、前記既設枠材と前記新設枠材とはアタッチメントを介して固定され、前記防水テープは、前記ねじ止め固定される部位で前記アタッチメントを介して挟持されていることを特徴とする。
【符号の説明】
【0056】
10 建具、12 躯体、14 既設枠、14b 既設下枠(既設枠材)、14ba 内周側壁部、14bb 室内壁部、14bc 部材取付凸部(凸部)、14c 既設側枠、16 新設枠、16b 新設下枠(新設枠材)、16ba 外周側壁部、16c 新設側枠、42 下アタッチメント、42a 外周側端片、42b 室内側端片、47 第3側アタッチメント、52 防水シート、54 防水テープ