(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】乾燥装置、印刷システムおよび乾燥方法
(51)【国際特許分類】
F26B 13/12 20060101AFI20250218BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20250218BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
F26B13/12 Z
F26B25/00 J
B41J2/01 125
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2021022530
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】平松 賢太
(72)【発明者】
【氏名】植村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】竹市 芳邦
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-148383(JP,A)
【文献】特開2016-175375(JP,A)
【文献】特開2015-107572(JP,A)
【文献】特開2017-126095(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0138266(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 13/12
F26B 25/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが付着した印刷面および前記印刷面と逆側の非印刷面とを有する長尺帯状の印刷媒体を、前記印刷面が上側を向いた状態で、水平方向の一方側へ搬送する上段搬送部と、
前記印刷媒体の前記非印刷面に接触しつつ回転する前段回転体を有し、前記上段搬送部から搬送されてきた前記印刷媒体を前記前段回転体によって下側に折り返してから前記一方側の逆側の他方側へ折り返す前段折り返し部と、
前記前段折り返し部によって前記他方側へ折り返された前記印刷媒体を、前記印刷面が下側を向いた状態で、前記他方側へ搬送する中段搬送部と、
前記印刷媒体の前記印刷面に気体を噴射することで前記印刷媒体を支持する非接触支持部材を有し、前記中段搬送部から搬送されてきた前記印刷媒体を前記非接触支持部材によって下側に折り返してから前記一方側へ折り返す後段折り返し部と、
前記後段折り返し部によって前記一方側へ折り返された前記印刷媒体を、前記印刷面が上側を向いた状態で、前記一方側へ搬送する下段搬送部と、
前記印刷媒体の幅方向における位置を検出する第1の位置センサと、
前記下段搬送部から搬送されてきた前記印刷媒体に接触しつつ回転する後段回転体と、前記後段回転体を駆動する回転体駆動部とを有し、前記第1の位置センサが検出した前記印刷媒体の位置に応じて前記回転体駆動部により前記後段回転体を変位させることで、前記印刷媒体の幅方向の位置を調整する位置調整部と
を備え、
前記上段搬送部は、前記印刷媒体の上側に配列された複数の上段印刷面ノズルを有し、前記上段印刷面ノズルから前記印刷面に気体を噴射し、
前記中段搬送部は、前記印刷媒体の下側に配列された複数の中段印刷面ノズルと、前記印刷媒体の上側に配列された複数の中段非印刷面ノズルとを有し、前記中段印刷面ノズルから前記印刷媒体の前記印刷面に気体を噴射するとともに前記中段非印刷面ノズルから前記非印刷面に気体を噴射することで、前記印刷媒体に接触せずに前記印刷媒体を搬送し、
前記下段搬送部は、前記印刷媒体の上側に配列された複数の下段印刷面ノズルと、前記印刷媒体の下側に配列された複数の下段非印刷面ノズルとを有し、前記下段印刷面ノズルから前記印刷媒体の前記印刷面に気体を噴射するとともに前記下段非印刷面ノズルから前記非印刷面に気体を噴射することで、前記印刷媒体に接触せずに前記印刷媒体を搬送し、
前記後段折り返し部は、前記非接触支持部材を変位させる支持部材駆動部をさらに有し、前記支持部材駆動部により前記非接触支持部材を変位させることで、前記印刷媒体の幅方向の位置を調整
し、
前記第1の位置センサは、前記印刷媒体が搬送される方向において、前記後段折り返し部よりも下流側で前記印刷媒体の位置を検出する乾燥装置。
【請求項2】
前記印刷媒体の幅方向における位置を検出する第2の位置センサをさらに備え、
前記印刷媒体が搬送される方向において、前記第1の位置センサは、前記後段折り返し部より下流側で前記印刷媒体の位置を検出し、前記第2の位置センサは、前記第1の位置センサより上流側で前記印刷媒体の位置を検出し、
前記後段折り返し部は、前記第2の位置センサが検出した前記印刷媒体の位置に応じて前記支持部材駆動部により前記非接触支持部材を変位させることで、前記印刷媒体の幅方向の位置を調整する請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記後段折り返し部は、前記第2の位置センサが検出した前記印刷媒体の位置と前記印刷媒体の目標位置との差を減少させるように、前記支持部材駆動部により前記非接触支持部材を変位させるフィードバック制御を実行し、前記フィードバック制御における前記目標位置を、前記回転体駆動部によって変位された前記後段回転体の変位量に応じて設定する請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記後段折り返し部では、上側非接触支持部材と、当該上側非接触支持部材の下側に配置された下側非接触支持部材とのそれぞれが、前記非接触支持部材として設けられ、前記印刷媒体を前記上側非接触支持部材によって下側に折り返してから、前記下側非接触支持部材によって前記一方側に折り返し、
前記第2の位置センサは、前記上側非接触支持部材と前記下側非接触支持部材との間で前記印刷媒体の位置を検出する請求項2または3に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記後段回転体の変位量である回転体変位量と、前記回転体変位量だけ前記後段回転体が変位した際に求められる前記非接触支持部材の変位量である支持部材変位量との対応関係を示す変位量情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記後段折り返し部は、前記回転体駆動部によって変位された前記後段回転体の前記回転体変位量に対して、前記変位量情報により対応付けられた前記支持部材変位量だけ、前記支持部材駆動部により前記非接触支持部材を変位させる請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記第1の位置センサによる検出位置と、前記第1の位置センサが前記検出位置を示す際に求められる前記非接触支持部材の変位量である支持部材変位量との対応関係を示す変位量情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記後段折り返し部は、前記第1の位置センサが示す前記検出位置に対して、前記変位量情報により対応付けられた前記支持部材変位量だけ、前記支持部材駆動部により前記非接触支持部材を変位させる請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記印刷媒体に沿った前記第1の位置センサと前記後段回転体までの距離は、前記印刷媒体に沿った前記第1の位置センサと前記後段折り返し部までの距離より短い請求項5または6に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記第1の位置センサは、前記印刷媒体が搬送される方向において前記後段回転体より下流側で前記印刷媒体の位置を検出する請求項1ないし7のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記印刷媒体の種類と、当該種類の前記印刷媒体の搬送に求められる前記非接触支持部材の変位量との対応関係を示す変位量情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記後段折り返し部は、搬送される前記印刷媒体の前記種類に対して、前記変位量情報により対応付けられた変位量だけ、前記支持部材駆動部により前記非接触支持部材を変位させる請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記印刷媒体の前記印刷面にインクを吐出することで画像を印刷する印刷装置と、
前記印刷装置によって吐出されて前記印刷面に付着したインクを乾燥させる請求項1ないし9のいずれか一項に記載の乾燥装置と
を備えた印刷システム。
【請求項11】
インクが付着した印刷面および前記印刷面と逆側の非印刷面とを有する長尺帯状の印刷媒体を、前記印刷面が上側を向いた状態で、水平方向の一方側へ搬送しつつ、前記印刷媒体の上側に配列された複数の上段印刷面ノズルから前記印刷面に気体を噴射する工程と、
前記一方側へ搬送されてきた前記印刷媒体を、前記印刷媒体の前記非印刷面に接触しつつ回転する前段回転体によって下側に折り返してから前記一方側の逆側の他方側へ折り返す工程と、
前記他方側へ折り返された前記印刷媒体を、前記印刷面が下側を向いた状態で、前記他方側へ搬送するとともに、前記印刷媒体の下側に配列された複数の中段印刷面ノズルから前記印刷媒体の前記印刷面に気体を噴射し、前記印刷媒体の上側に配列された複数の中段非印刷面ノズルから前記非印刷面に気体を噴射することで、前記印刷媒体に接触せずに前記印刷媒体を支持する工程と、
前記他方側へ搬送されてきた前記印刷媒体を、前記印刷媒体の前記印刷面に気体を噴射することで前記印刷媒体を支持する非接触支持部材によって下側に折り返してから前記一方側へ折り返す工程と、
前記一方側へ折り返された前記印刷媒体を、前記印刷面が上側を向いた状態で、前記一方側へ搬送するとともに、前記印刷媒体の上側に配列された複数の下段印刷面ノズルから前記印刷媒体の前記印刷面に気体を噴射し、前記印刷媒体の下側に配列された複数の下段非印刷面ノズルから前記非印刷面に気体を噴射することで、前記印刷媒体に接触せずに前記印刷媒体を支持する工程と、
前記一方側へ搬送されてきた前記印刷媒体を、前記印刷媒体に接触しつつ回転する後段回転体によって搬送する工程と
を備え、
前記非接触支持部材を変位させることで前記印刷媒体の幅方向の位置を調整するとともに、前記印刷媒体の幅方向における位置を検出した結果に応じて前記後段回転体を変位させることで前記印刷媒体の幅方向の位置を調整
し、
前記印刷媒体の幅方向における位置の検出は、前記印刷媒体が搬送される方向において、前記非接触支持部材よりも下流側で行われる乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクが付着した印刷媒体を気体の噴射により乾燥させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクが付着した印刷媒体にノズルから気体を噴射することで印刷媒体を乾燥させる乾燥装置が特許文献1に示されている。特にこの乾燥装置は、3段の搬送部が鉛直方向に配列されており、各搬送部が印刷媒体を水平方向に搬送することで、上段搬送部、中段搬送部および下段搬送部の順に印刷媒体が通過する。具体的には、上段搬送部は一方側へ印刷媒体を搬送し、上段搬送部の下側に位置する中段搬送部は他方側へ印刷媒体を搬送し、中段搬送部の下側に位置する下段搬送部は一方側へ印刷媒体を搬送する。各搬送部は、印刷媒体に沿って配列された複数のノズルを、印刷媒体の上側および下側のそれぞれに有し、これらのノズルから気体を噴射する。これによって、印刷媒体に接触することなく印刷媒体を搬送しつつ、印刷媒体を乾燥させることができる。
【0003】
また、上段搬送部と中段搬送部との間には2本のローラが上下に配列され、上段搬送部から一方側へ搬送された印刷媒体は上側のローラによって下側へ折り返されてから下側のローラによって他方側へ折り返されて、中段搬送部へと進む。中段搬送部と下段搬送部との間には2本のエアターンバーが上下に配列され、中段搬送部から他方側へ搬送された印刷媒体は上側のエアターンバーによって下側へ折り返されてから下側のエアターンバーによって一方側へ折り返されて、下段搬送部へと進む。さらに、下段搬送部の後段(換言すれば、印刷媒体の搬送方向の下流側)にはローラが配置されており、下段搬送部から一方側へ搬送された印刷媒体はローラによって支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる乾燥装置では、上段搬送部と中段搬送部との間に設けられた前段回転体(ローラ)と、下段搬送部の後に設けられた後段回転体(ローラ)との間では、印刷媒体は浮上搬送により搬送されるため、印刷媒体に接触する部材が存在しない。そのため、この区間において印刷媒体がまっすぐに搬送されず、印刷媒体が幅方向へ偏ったり、ノズルから脱落したりする場合があった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、上段・中段および下段搬送部を順に通過するように印刷媒体を搬送しつつ印刷媒体を乾燥させるにあたり、上段・中段搬送部の間の前段回転体から下段搬送部の後の後段回転体までの浮上搬送区間において印刷媒体を安定的に搬送することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乾燥装置は、インクが付着した印刷面および印刷面と逆側の非印刷面とを有する長尺帯状の印刷媒体を、印刷面が上側を向いた状態で、水平方向の一方側へ搬送する上段搬送部と、印刷媒体の非印刷面に接触しつつ回転する前段回転体を有し、上段搬送部から搬送されてきた印刷媒体を前段回転体によって下側に折り返してから一方側の逆側の他方側へ折り返す前段折り返し部と、前段折り返し部によって他方側へ折り返された印刷媒体を、印刷面が下側を向いた状態で、他方側へ搬送する中段搬送部と、印刷媒体の印刷面に気体を噴射することで印刷媒体を支持する非接触支持部材を有し、中段搬送部から搬送されてきた印刷媒体を非接触支持部材によって下側に折り返してから一方側へ折り返す後段折り返し部と、後段折り返し部によって一方側へ折り返された印刷媒体を、印刷面が上側を向いた状態で、一方側へ搬送する下段搬送部と、印刷媒体の幅方向における位置を検出する第1の位置センサと、下段搬送部から搬送されてきた印刷媒体に接触しつつ回転する後段回転体と、後段回転体を駆動する回転体駆動部とを有し、第1の位置センサが検出した印刷媒体の位置に応じて回転体駆動部により後段回転体を変位させることで、印刷媒体の幅方向の位置を調整する位置調整部とを備え、上段搬送部は、印刷媒体の上側に配列された複数の上段印刷面ノズルを有し、上段印刷面ノズルから印刷面に気体を噴射し、中段搬送部は、印刷媒体の下側に配列された複数の中段印刷面ノズルと、印刷媒体の上側に配列された複数の中段非印刷面ノズルとを有し、中段印刷面ノズルから印刷媒体の印刷面に気体を噴射するとともに中段非印刷面ノズルから非印刷面に気体を噴射することで、印刷媒体に接触せずに印刷媒体を搬送し、下段搬送部は、印刷媒体の上側に配列された複数の下段印刷面ノズルと、印刷媒体の下側に配列された複数の下段非印刷面ノズルとを有し、下段印刷面ノズルから印刷媒体の印刷面に気体を噴射するとともに下段非印刷面ノズルから非印刷面に気体を噴射することで、印刷媒体に接触せずに印刷媒体を搬送し、後段折り返し部は、非接触支持部材を変位させる支持部材駆動部をさらに有し、支持部材駆動部により非接触支持部材を変位させることで、印刷媒体の幅方向の位置を調整する。
【0008】
本発明に係る乾燥方法は、インクが付着した印刷面および印刷面と逆側の非印刷面とを有する長尺帯状の印刷媒体を、印刷面が上側を向いた状態で、水平方向の一方側へ搬送しつつ、印刷媒体の上側に配列された複数の上段印刷面ノズルから印刷面に気体を噴射する工程と、一方側へ搬送されてきた印刷媒体を、印刷媒体の非印刷面に接触しつつ回転する前段回転体によって下側に折り返してから一方側の逆側の他方側へ折り返す工程と、他方側へ折り返された印刷媒体を、印刷面が下側を向いた状態で、他方側へ搬送するとともに、印刷媒体の下側に配列された複数の中段印刷面ノズルから印刷媒体の印刷面に気体を噴射し、印刷媒体の上側に配列された複数の中段非印刷面ノズルから非印刷面に気体を噴射することで、印刷媒体に接触せずに印刷媒体を支持する工程と、他方側へ搬送されてきた印刷媒体を、印刷媒体の印刷面に気体を噴射することで印刷媒体を支持する非接触支持部材によって下側に折り返してから一方側へ折り返す工程と、一方側へ折り返された印刷媒体を、印刷面が上側を向いた状態で、一方側へ搬送するとともに、印刷媒体の上側に配列された複数の下段印刷面ノズルから印刷媒体の印刷面に気体を噴射し、印刷媒体の下側に配列された複数の下段非印刷面ノズルから非印刷面に気体を噴射することで、印刷媒体に接触せずに印刷媒体を支持する工程と、一方側へ搬送されてきた印刷媒体を、印刷媒体に接触しつつ回転する後段回転体によって搬送する工程とを備え、非接触支持部材を変位させることで印刷媒体の幅方向の位置を調整するとともに、印刷媒体の幅方向における位置を検出した結果に応じて後段回転体を変位させることで印刷媒体の幅方向の位置を調整する。
【0009】
このように構成された本発明(乾燥装置および乾燥方法)では、前段回転体から他方側へ印刷媒体を搬送してから、非接触支持部材により印刷媒体を一方側へ折り返して、さらに印刷媒体を後段回転体まで搬送するといった長い区間において、印刷媒体が浮上搬送により搬送される。そこで、印刷媒体の幅方向の位置を検出した結果に応じて後段回転体を変位させることで印刷媒体の幅方向の位置を調整して、印刷媒体の搬送の安定化を図っている。ただし、このように長い区間に渡る印刷媒体の搬送を後段回転体の変位のみによっては調整するとなると、後段回転体に求められる変位量が過大となって、印刷媒体の搬送を安定化させることが困難となる場合がある。これに対して、本発明では、前段回転体と後段回転体との間で印刷媒体を折り返す非接触支持部材を変位させることで印刷媒体の幅方向の位置を調整する。これによって、後段回転体に求められる変位量を抑えることができる。その結果、前段回転体から後段回転体までの浮上搬送区間において印刷媒体を安定的に搬送することが可能となっている。
【0010】
また、印刷媒体の幅方向における位置を検出する第2の位置センサをさらに備え、印刷媒体が搬送される方向において、第1の位置センサは、後段折り返し部より下流側で印刷媒体の位置を検出し、第2の位置センサは、第1の位置センサより上流側で印刷媒体の位置を検出し、後段折り返し部は、第2の位置センサが検出した印刷媒体の位置に応じて支持部材駆動部により非接触支持部材を変位させることで、印刷媒体の幅方向の位置を調整するように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、第2の位置センサが検出した印刷媒体の位置に基づき非接触支持部材を変位させて、印刷媒体の搬送位置を最適化しつつ、第1の位置センサが検出した印刷媒体の位置に基づき後段回転体を変位させて、印刷媒体の搬送位置を最適化することができる。したがって、前段回転体から後段回転体までの浮上搬送区間において印刷媒体を安定的に搬送することが可能となる。
【0011】
また、後段折り返し部は、第2の位置センサが検出した印刷媒体の位置と印刷媒体の目標位置との差を減少させるように、支持部材駆動部により非接触支持部材を変位させるフィードバック制御を実行し、フィードバック制御における目標位置を、回転体駆動部によって変位された後段回転体の変位量に応じて設定するように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、第2の位置センサの検出した印刷媒体の位置に基づき非接触支持部材を変位させるフィードバック制御における目標位置(目標値)が、後段回転体の変位量に応じて設定される。したがって、後段回転体の変位方向にフィードバック制御の目標位置をシフトさせることで後段回転体の変位量を抑えるといった制御を実行できる。したがって、前段回転体から後段回転体までの浮上搬送区間において印刷媒体を安定的に搬送することが可能となる。
【0012】
また、後段折り返し部では、上側非接触支持部材と、当該上側非接触支持部材の下側に配置された下側非接触支持部材とのそれぞれが、非接触支持部材として設けられ、印刷媒体を上側非接触支持部材によって下側に折り返してから、下側非接触支持部材によって一方側に折り返し、第2の位置センサは、上側非接触支持部材と下側非接触支持部材との間で印刷媒体の位置を検出するように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、第2の位置センサにより検出される印刷媒体の位置を、上側・下側非接触支持部材の変位量により的確に調整することができる。
【0013】
また、後段回転体の変位量である回転体変位量と、回転体変位量だけ後段回転体が変位した際に求められる非接触支持部材の変位量である支持部材変位量との対応関係を示す変位量情報を記憶する記憶部をさらに備え、後段折り返し部は、回転体駆動部によって変位された後段回転体の回転体変位量に対して、変位量情報により対応付けられた支持部材変位量だけ、支持部材駆動部により非接触支持部材を変位させるように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、後段回転体の変位量は第1の位置センサが検出した印刷媒体の位置に応じて調整され、非接触支持部材の変位量は後段回転体の変位量に応じて調整される。したがって、非接触支持部材の変位量の調整のために、第1の位置センサとは別に位置センサを設ける必要がない。したがって、構成の簡素化を図ってコストを低減することができる。
【0014】
また、第1の位置センサによる検出位置と、第1の位置センサが検出位置を示す際に求められる非接触支持部材の変位量である支持部材変位量との対応関係を示す変位量情報を記憶する記憶部をさらに備え、後段折り返し部は、第1の位置センサが示す検出位置に対して、変位量情報により対応付けられた支持部材変位量だけ、支持部材駆動部により非接触支持部材を変位させるように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、後段回転体の変位量は第1の位置センサが検出した印刷媒体の位置に応じて調整され、非接触支持部材の変位量も第1の位置センサが検出した印刷媒体の位置に応じて調整される。したがって、非接触支持部材の変位量の調整のために、第1の位置センサとは別に位置センサを設ける必要がない。したがって、構成の簡素化を図ってコストを低減することができる。
【0015】
また、印刷媒体に沿った第1の位置センサと後段回転体までの距離は、印刷媒体に沿った第1の位置センサと後段折り返し部までの距離より短いように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、第1の位置センサは後段回転体に近接して配置される。したがって、第1の位置センサにより検出される印刷媒体の位置を、後段回転体の変位量により的確に調整することができる。その結果、前段回転体から後段回転体までの浮上搬送区間の全体に渡って印刷媒体の位置を最適化できる。
【0016】
また、第1の位置センサは、印刷媒体が搬送される方向において後段回転体より下流側で印刷媒体の位置を検出するように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、前段回転体から後段回転体までの浮上搬送区間の後に設けられた第1の位置センサが検出する印刷媒体の位置に基づき、後段回転体の変位量が調整される。その結果、前段回転体から後段回転体までの浮上搬送区間の全体に渡って印刷媒体の位置を最適化できる。
【0017】
また、印刷媒体の種類と、当該種類の印刷媒体の搬送に求められる非接触支持部材の変位量との対応関係を示す変位量情報を記憶する記憶部をさらに備え、後段折り返し部は、搬送される印刷媒体の種類に対して、変位量情報により対応付けられた変位量だけ、支持部材駆動部により非接触支持部材を変位させるように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、印刷媒体の種類に応じて非接触支持部材を変位させることで印刷媒体の幅方向の位置を調整する。これによって、後段回転体に求められる変位量を抑えることができる。その結果、前段回転体から後段回転体までの浮上搬送区間において印刷媒体を安定的に搬送することが可能となっている。
【0018】
本発明に係る印刷システムは、印刷媒体の印刷面にインクを吐出することで画像を印刷する印刷装置と、印刷装置によって吐出されて印刷面に付着したインクを乾燥させる上記の乾燥装置とを備える。したがって、上段・中段および下段搬送部を順に通過するように印刷媒体を搬送しつつ印刷媒体を乾燥させるにあたり、上段・中段搬送部の間の前段回転体から下段搬送部の後の後段回転体までの浮上搬送区間において印刷媒体を安定的に搬送することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、上段・中段および下段搬送部を順に通過するように印刷媒体を搬送しつつ印刷媒体を乾燥させるにあたり、上段・中段搬送部の間の前段回転体から下段搬送部の後の後段回転体までの浮上搬送区間において印刷媒体を安定的に搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る印刷システムの一例を模式的に示す正面図。
【
図2】
図1の印刷システムが備える乾燥装置を模式的に示す正面図。
【
図3】上段搬送部の送風乾燥機を部分的に拡大して示す模式図。
【
図4】中段搬送部および下段搬送部それぞれの送風乾燥機を部分的に拡大して示す模式図。
【
図5】後段折り返し部の構成を模式的に示す側面図。
【
図6】後段折り返し部の構成を模式的に示す平面図。
【
図9】第1実施形態に係る乾燥装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【
図10】第2実施形態に係る乾燥装置で使用される目標位置制御情報をテーブル形式で模式的に示す図。
【
図11】第3実施形態に係る乾燥装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【
図12】第3実施形態で使用される回転角度情報をテーブル形式で模式的に示す図。
【
図13】
図12の回転角度情報の取得方法の一例を示すフローチャート。
【
図14】第5実施形態で使用される回転角度情報をテーブル形式で模式的に示す図。
【
図15】噴射量および排気量を制御する構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明に係る印刷システムの一例を模式的に示す正面図である。
図1および以下に示す図では、水平方向X、水平方向Xに直交する水平方向Yおよび鉛直方向Zを適宜示す。
図1に示すように、印刷システム1は、塗布装置2、印刷装置3および乾燥装置5がこの順で水平方向X(配列方向)に並んだ構成を具備する。この印刷システム1は、繰出ロール11から巻取ロール12へロール・トゥ・ロールで長尺帯状の印刷媒体Mを搬送しつつ、塗布装置2で塗布液を塗布した印刷媒体Mに対して印刷装置3がインクジェット方式で画像を印刷し、乾燥装置5は画像が印刷された印刷媒体Mを乾燥させる。なお、印刷媒体Mの素材は、OPP(oriented polypropylene)あるいはPET(polyethylene terephthalate)等のフィルムである。ただし、印刷媒体Mの素材はフィルムに限られず、紙等でもよい。かかる印刷媒体Mは、可撓性を有する。また、以下では、印刷媒体Mの両面のうち、画像が印刷される面を表面M1と、表面M1の反対側の面を裏面M2と適宜称する。
【0022】
塗布装置2は、液状のプライマー(塗布液)を貯留するパン21と、パン21に貯留されたプライマーに部分的に浸かるグラビアローラ22と、印刷媒体Mを搬送する搬送部23とを有する。塗布装置2では、搬送部23により搬送される印刷媒体Mにグラビアローラ22が下方から接触する塗布領域が設けられており、搬送部23は、印刷媒体Mの表面M1を下方に向けつつ塗布領域に沿って印刷媒体Mを搬送する。一方、グラビアローラ22は、その周面にプライマーを保持しつつ回転することで塗布領域にプライマーを供給する。こうして、グラビアローラ22により供給されたプライマーが塗布領域において印刷媒体Mの表面M1に塗布される。また、塗布領域では、印刷媒体Mの進行方向と、グラビアローラ22の周面の回転方向とが逆である。つまり、いわゆるリバースキス方式でプライマーが印刷媒体Mに塗布される。そして、搬送部23は、プライマーが塗布された印刷媒体Mの表面M1を上方へ向けつつ、塗布装置2から印刷装置3へ印刷媒体Mを搬出する。
【0023】
印刷装置3は、筐体31と、筐体31内に配置されたカラー印刷部32と、筐体31内においてカラー印刷部32の上方に配置された白印刷部33と、筐体31内に配置された複数のローラによって印刷媒体Mを搬送する搬送部34とを備える。
【0024】
カラー印刷部32は、搬送部34によって搬送される印刷媒体Mの上方において、印刷媒体Mの進行方向に配列された複数(6個)の吐出ヘッド321を有する。複数の吐出ヘッド321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、互いに異なる色のカラーインクをインクジェット方式でノズルから吐出する。ここで、カラーインクとは、白色以外のインクを意味し、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック等のインクを含む。こうして、カラー印刷部32の複数の吐出ヘッド321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方からカラーインクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1にカラー画像を印刷する。
【0025】
また、白印刷部33は、搬送部34によって搬送される印刷媒体Mの上方に配置された単一の吐出ヘッド331を有する。吐出ヘッド331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、白インクをインクジェット方式でノズルから吐出する。こうして、白印刷部33の吐出ヘッド331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から白インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に白画像を印刷する。
【0026】
塗布装置2から印刷装置3の筐体31には、表面M1が上方を向いた状態で印刷媒体Mが搬入される。一方、搬送部34は、筐体31に搬入されてきた印刷媒体Mに対して2回の上下反転を行ってから、カラー印刷部32に印刷媒体Mを搬送する。これによって、上方を向く印刷媒体Mの表面M1に対して、カラー印刷部32の各吐出ヘッド321がカラーインクを吐出できる。さらに、搬送部34は、カラーインクが付着した印刷媒体Mに対して2回の上下反転を行ってから、白印刷部33に印刷媒体Mを搬送する。これによって、上方を向く印刷媒体Mの表面M1に対して、白印刷部33の吐出ヘッド331が白インクを吐出できる。こうして、カラーインクおよび白インクが表面M1に付着した印刷媒体Mが、搬送部34によって印刷装置3から乾燥装置5へと搬送される。
【0027】
図2は
図1の印刷システムが備える乾燥装置を模式的に示す正面図である。同図では、水平方向Xの一方側X1および他方側X2が示され、一方側X1と他方側X2とは互いに逆側を向く。乾燥装置5は、水平方向Xに印刷媒体Mを適宜折り返して搬送しながら印刷媒体Mを乾燥させる。この乾燥装置5は、印刷装置3の筐体31の一方側X1に配置された筐体6(乾燥炉)を備える。この筐体6は、水平方向Xに延設された直方体形状を有し、水平方向Xにおける筐体6の両側壁6a、6bは、鉛直方向Zに平行であるとともに水平方向Xに垂直であり、水平方向Xに間隔を空けて互いに対向する。
【0028】
側壁6a、6bのうち、水平方向Xの他方側X2(印刷装置3側)の側壁6aには、搬入口61が水平方向Xに貫通しており、水平方向Xの一方側X1(印刷装置3の反対側)の筐体6bには、搬出口66が水平方向Xに貫通している。そして、印刷装置3から搬出された印刷媒体Mは、搬入口61から筐体6内に搬入されてから、搬出口66から筐体6外に搬出される。
【0029】
つまり、乾燥装置5は、印刷媒体Mを搬送する搬送部51を筐体6内に備え、搬送部51は、搬入口61から搬出口66へ印刷媒体Mを搬送する。この搬送部51は、他方側X2から一方側X1へ向けて印刷媒体Mを搬送する上段搬送部51uと、一方側X1から他方側X2へ向けて印刷媒体Mを搬送する中段搬送部51mと、他方側X2から一方側X1へ向けて印刷媒体Mを搬送する下段搬送部51lとを有する。中段搬送部51mは上段搬送部51uの下方に配置され、下段搬送部51lは中段搬送部51mの下方に配置されている。したがって、上段搬送部51uにより搬送される印刷媒体Mと、中段搬送部51mにより搬送される印刷媒体Mと、下段搬送部51lにより搬送される印刷媒体Mとは、鉛直方向Zに並び、換言すれば鉛直方向Zから見て互いに重複する。具体的には、上段搬送部51uは、搬入口61と同じ高さで印刷媒体Mを搬送し、印刷媒体Mは、表面M1が上方を向くとともに裏面M2が下方を向いた状態で、上段搬送部51uによって水平方向Xに搬送される。中段搬送部51mは、上段搬送部51uの下方で印刷媒体Mを搬送し、印刷媒体Mは、表面M1が下方を向くとともに裏面M2が上方を向いた状態で、中段搬送部51mによって水平方向Xに搬送される。下段搬送部51lは、中段搬送部51mの下方で印刷媒体Mを搬送し、印刷媒体Mは、表面M1が上方を向くとともに裏面M2が下方を向いた状態で、下段搬送部51lによって水平方向Xに搬送される。
【0030】
また、搬送部51は、上段搬送部51uから中段搬送部51mへ印刷媒体Mを折り返す前段折り返し部52を有する。この前段折り返し部52は、筐体6の一方側X1において鉛直方向Zに配列された2個のローラ521、522を有する。ローラ521、522のそれぞれは、水平方向Yに平行に配置されて、水平方向Yに平行な回転軸を中心に筐体6により支持されている。ローラ521、522のうち、上側のローラ521は、上段搬送部51uによって一方側X1に搬送されてきた印刷媒体Mの裏面M2を巻き掛けて、印刷媒体Mを下側へ折り返し、下側のローラ522は、ローラ521によって下側へ折り返された印刷媒体Mの裏面M2を巻き掛けて、印刷媒体Mを他方側へ折り返す。
【0031】
こうして、前段折り返し部52によって一方側X1から他方側X2へ印刷媒体Mを折り返すことで、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とが上下に反転する。前段折り返し部52によって他方側X2へ折り返された印刷媒体Mは、中段搬送部51mによって他方側X2へ搬送される。
【0032】
また、搬送部51は、中段搬送部51mから下段搬送部51lへ印刷媒体Mを折り返す後段折り返し部54を有する。この後段折り返し部54は、筐体6の他方側X2において鉛直方向Zに配列された2個のエアターンバー541、542を有する。エアターンバー541、542のそれぞれは、水平方向Yに平行に配置されて筐体6により支持されている。エアターンバー541、542のうち、上側のエアターンバー541は、中段搬送部51mから他方側X2へ向けて搬送されてきた印刷媒体Mの表面M1にエアを噴射する。これによって、エアターンバー541は、印刷媒体Mの表面M1との間に隙間を空けた状態で、印刷媒体Mを下側に折り曲げる。また、エアターンバー541、542のうち、下側のエアターンバー542は、エアターンバー541から下側に向けて搬送されてきた印刷媒体Mの表面M1にエアを噴射する。これによって、エアターンバー542は、印刷媒体Mの表面M1との間に隙間を空けた状態で、印刷媒体Mを一方側X1へ折り曲げる。
【0033】
こうして、後段折り返し部54によって他方側X2から一方側X1へ印刷媒体Mを折り返すことで、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とが上下に反転する。後段折り返し部54によって一方側X1へ折り返された印刷媒体Mは、下段搬送部51lによって一方側X1へ搬送される。
【0034】
また、搬送部51は、下段搬送部51lから一方側X1へ搬送されてきた印刷媒体Mを支持するローラ561を有する。このローラ561は、筐体6の一方側X1において水平方向Yに平行に配置され、水平方向Yに平行な回転軸を中心に回転可能に筐体6によって支持される。そして、ローラ561は、下段搬送部51lから一方側X1へ搬送されてきた印刷媒体Mの裏面M2に接触しつつ回転することで、印刷媒体Mを支持する。なお、ローラ561は、後述するように、印刷媒体Mの位置を水平方向Yに調整する位置調整機構56の一部を構成する。
【0035】
かかる乾燥装置5は、6個の送風乾燥機7a~7fを筐体6内に備える。これらのうち、2個の送風乾燥機7a、7bは、上段搬送部51uに設けられ、搬入口61とローラ521との間に配列される。そして、送風乾燥機7a、7bは、搬入口61からローラ521へ向けて搬送される印刷媒体Mを乾燥させる。2個の送風乾燥機7c、7dは、中段搬送部51mに設けられ、ローラ522とエアターンバー541との間に配列される。そして、送風乾燥機7c、7dは、ローラ522からエアターンバー541へ向けて搬送される印刷媒体Mを乾燥させる。2個の送風乾燥機7e、7fは、下段搬送部51lに設けられ、エアターンバー542とローラ561との間に配列される。そして、送風乾燥機7e、7fは、エアターンバー542からローラ561へ向けて搬送される印刷媒体Mを乾燥させる。
【0036】
図3は上段搬送部の送風乾燥機を部分的に拡大して示す模式図であり、
図4は中段搬送部および下段搬送部それぞれの送風乾燥機を部分的に拡大して示す模式図である。続いては、送風乾燥機7a~7fについて、
図3および
図4を併用して説明する。
【0037】
送風乾燥機7aは、搬入口61からローラ521へ向けて搬送される印刷媒体Mの上方に配置された送風ユニット71uを有する。送風ユニット71uは、印刷媒体Mの上方において水平方向Xに延設された送風チャンバ72uを有する。送風チャンバ72uの水平方向Xの両端面は、水平方向Xに垂直であって鉛直方向Zに平行な平面である。送風チャンバ72uには、印刷システム1の外部に設けられたヒータによってエアを加熱することで生成された熱風(60度以上のエアの風)が供給される。送風チャンバ72uの下面は、上方を向く印刷媒体Mの表面M1(上面)に上方から対向するノズル配置平面73uである。このノズル配置平面73uは、水平方向Xに平行であるとともに鉛直方向Zに垂直な平面である。さらに、送風ユニット71uは、このノズル配置平面73uにおいて水平方向Xに所定ピッチで配列された複数のノズル76uを有する。こうして複数のノズル76uがノズル配置平面73uと印刷媒体Mの表面M1との間に並んで、印刷媒体Mの表面M1に対向する。各ノズル76uは、送風チャンバ72uと連通しており、送風チャンバ72uに供給された熱風は、ノズル76uから印刷媒体Mの表面M1に噴射され、印刷媒体Mを乾燥させる。このように、複数の送風乾燥機7a~7fのうち、送風乾燥機7aは、筐体6に搬入された印刷媒体Mを最初に乾燥させる。
【0038】
さらに、送風乾燥機7aは、搬入口61からローラ521へ向けて搬送される印刷媒体Mの下方に配置された複数(ノズル76uと同数)のローラ74を有する。複数のローラ74は、印刷媒体Mの進行方向(水平方向X)に所定ピッチで配列され、各ローラ74の周面は、印刷媒体Mの裏面M2(下面)に下方から接触する。そして、各ローラ74は、水平方向Yに平行な回転軸を中心に印刷媒体Mに従動して回転しつつ、印刷媒体Mを下方から支持する。また、ローラ74には微細な溝が螺旋状に設けられており、印刷媒体Mとローラ74の周面との間からエアが抜けやすくなっている。
【0039】
ちなみに、ノズル76uは、水平方向Xに隣り合う2個のローラ74の間の範囲に上側から対向し、ローラ74は、水平方向Xに隣り合う上側の2個のノズル76uの間の範囲に下側から対向する。つまり、水平方向Xにおいて、ノズル76uとローラ74とは、所定ピッチの半分のピッチで交互に並んでおり、鉛直方向Zからの平面視において水平方向Xに1個ずつ交互に並ぶ。換言すれば、ノズル76uとローラ74とは千鳥状に配列されている。
【0040】
かかる構成では、
図3に示すように、印刷媒体Mは、ノズル76uに対向する部分ではこのノズル76uからの熱風により下側へ押されることでローラ74の上端より下方に偏り、ローラ74に対向する部分ではこのローラ74により支持される。したがって、印刷媒体Mは、ローラ74の上端と当該上端の下方との間で波打ちながら、他方側X2から一方側X1へ向かって水平方向Xに搬送される。
【0041】
送風乾燥機7bは、搬入口61からローラ521へ向けて搬送される印刷媒体Mの進行方向において送風乾燥機7aの下流側に配置される。この送風乾燥機7bは、送風乾燥機7aと同様に、搬入口61からローラ521へ向けて搬送される印刷媒体Mに対して、上方に配置された送風ユニット71uと、下方に配置された複数のローラ74とを有する。かかる送風乾燥機7bでは、複数のローラ74が印刷媒体Mの裏面M2を下方から支持しつつ、送風ユニット71uの複数(ローラ74と同数)のノズル76uが印刷媒体Mの表面M1に上方から熱風を噴射し、印刷媒体Mが乾燥される。
【0042】
送風乾燥機7cは、ローラ522からエアターンバー541へ向けて搬送される印刷媒体Mの上方および下方それぞれに配置された送風ユニット71u、71lを有する。上側の送風ユニット71uは、印刷媒体Mの上方において水平方向Xに延設された送風チャンバ72uを有する。送風チャンバ72uの水平方向Xの両端面は、水平方向Xに垂直であって鉛直方向Zに平行な平面である。送風チャンバ72uには、上記の熱風が供給される。送風チャンバ72uの下面は、上方を向く印刷媒体Mの裏面M2(上面)に上方から対向するノズル配置平面73uである。このノズル配置平面73uは、水平方向Xに平行であるとともに鉛直方向Zに垂直な平面である。さらに、送風ユニット71uは、このノズル配置平面73uにおいて水平方向Xに所定ピッチで配列された複数のノズル76uを有する。こうして複数のノズル76uがノズル配置平面73uと印刷媒体Mの裏面M2との間に並んで、印刷媒体Mの裏面M2に対向する。各ノズル76uは、送風チャンバ72uと連通しており、送風チャンバ72uに供給された熱風は、ノズル76uから印刷媒体Mの裏面M2に噴射される。
【0043】
下側の送風ユニット71lは、印刷媒体Mの下方において水平方向Xに延設された送風チャンバ72lを有する。送風チャンバ72lの水平方向Xの両端面は、水平方向Xに垂直であって鉛直方向Zに垂直な平面である。送風チャンバ72lには、上記の熱風が供給される。送風チャンバ72lの上面は、下方を向く印刷媒体Mの表面M1(下面)に下方から対向するノズル配置平面73lである。このノズル配置平面73lは、水平方向Xに平行であるとともに鉛直方向Zに垂直な平面である。さらに、送風ユニット71lは、このノズル配置平面73lにおいて水平方向Xに所定ピッチで配列された複数のノズル76lを有する。こうして複数のノズル76lがノズル配置平面73lと印刷媒体Mの表面M1との間に並んで、印刷媒体Mの表面M1に対向する。各ノズル76lは、送風チャンバ72lと連通しており、送風チャンバ72lに供給された熱風は、ノズル76lから印刷媒体Mの表面M1に噴射される。
【0044】
このように、送風ユニット71uと送風ユニット71lとは印刷媒体Mを挟む。換言すれば、中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mは、送風ユニット71uと送風ユニット71lとの間を通過する。このように、送風乾燥機7cは、中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mに対して、上下両側の送風ユニット71u、71lから熱風を噴射することで、印刷媒体Mを乾燥させる。
【0045】
ちなみに、上側のノズル76uは、水平方向Xに隣り合う下側の2個のノズル76lの間の範囲に上側から対向し、下側のノズル76lは、水平方向Xに隣り合う上側の2個のノズル76uの間の範囲に下方から対向する。つまり、水平方向Xにおいて、上側のノズル76uと下側のノズル76lとは、所定ピッチの半分のピッチで交互に並んでおり、鉛直方向Zからの平面視において水平方向Xに1個ずつ交互に並ぶ。換言すれば、ノズル76u、76lは千鳥状に配列されている。このようなノズル76u、76lの千鳥配列は、送風チャンバ72u、72lの位置を水平方向Xに相互にずらすことで実現される。
【0046】
かかる構成では、
図4に示すように、印刷媒体Mは、上側のノズル76uに対向する部分ではこのノズル76uからの熱風により下方へ押されることで搬送中心線Lより下方に偏り、下側のノズル76lに対向する部分ではこのノズル76lからの熱風により上方へ押されることで搬送中心線Lより上方に偏る。ここで、搬送中心線Lは、ノズル76uおよびノズル76lそれぞれからの鉛直方向Zにおける距離が等しい水平な仮想直線である。したがって、印刷媒体Mは、搬送中心線Lの上方と下方との間で波打ちながら、一方側X1から他方側X2へ向かって水平方向Xに搬送される。
【0047】
送風乾燥機7dは、ローラ522からエアターンバー541へ向けて搬送される印刷媒体Mの進行方向において送風乾燥機7cの下流側に配置される。この送風乾燥機7dは、送風乾燥機7cと同様に印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む送風ユニット71u、71lを有する。かかる送風乾燥機7dでは、送風ユニット71uが印刷媒体Mの裏面M2に上方から熱風を噴射し、送風ユニット71lが印刷媒体Mの表面M1に下方から熱風を噴射することで、印刷媒体Mが乾燥される。
【0048】
送風乾燥機7eは、送風乾燥機7cと同様に、印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む送風ユニット71u、71lを有する。ただし、送風乾燥機7eは、エアターンバー542からローラ561へ向けて搬送される印刷媒体Mに対して配置されているため、送風乾燥機7eの送風ユニット71u、71lは、エアターンバー542からローラ561へ向けて搬送される印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む。かかる送風乾燥機7eでは、送風ユニット71uが印刷媒体Mの表面M1に上方から熱風を噴射し、送風ユニット71lが印刷媒体Mの裏面M2に下方から熱風を噴射することで、印刷媒体Mが乾燥される。
【0049】
送風乾燥機7fは、エアターンバー542からローラ561へ向けて搬送される印刷媒体Mの進行方向において送風乾燥機7eの下流側に配置される。この送風乾燥機7fは、送風乾燥機7eと同様に印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む送風ユニット71u、71lを有する。かかる送風乾燥機7fでは、送風ユニット71uが印刷媒体Mの表面M1に上方から熱風を噴射し、送風ユニット71lが印刷媒体Mの裏面M2に下方から熱風を噴射することで、印刷媒体Mが乾燥される。
【0050】
ちなみに、上述の各ノズル76u、76lは、水平方向Yに平行に延設されている。水平方向Yにおいて、各ノズル76u、76lの幅は印刷媒体Mの幅よりも広く、印刷媒体Mの両端がノズル76u、76lの両端の間に位置するように、印刷媒体Mは搬送される。同様に、各ローラ74は、水平方向Yに平行に延設されている。水平方向Yにおいて、各ローラ74の幅は印刷媒体Mの幅よりも広く、印刷媒体Mの両端がローラ74の両端の間に位置するように、印刷媒体Mは搬送される。
【0051】
上述のように、上段搬送部51uの送風乾燥機7a、7bは、水平方向Xに配列された複数のローラ74によって印刷媒体Mを水平方向Xに搬送する。一方、中段搬送部51mの送風乾燥機7c、7dおよび下段搬送部51lの送風乾燥機7e、7fは、鉛直方向Zから印刷媒体Mを挟む一対の送風ユニット71u、71lによって印刷媒体Mにエアを噴射することで印刷媒体Mを搬送する浮上搬送を実行する。また、中段搬送部51mと下段搬送部51lとの間の後段折り返し部54は、同じくエアターンバー541、542による浮上搬送によって、印刷媒体Mを搬送する。したがって、ローラ522とローラ561との間で搬送される印刷媒体Mにはローラ等の部材が接触しない。すなわち、ローラ522からローラ561までの区間は、印刷媒体Mに接触する部材(ローラ等)が存在しない浮上搬送区間となっている。
【0052】
また、乾燥装置5は、筐体6内のエアを筐体6外に排出する排気部8a、8bを、筐体6内に備える。排気部8aは、筐体6内の他方側X2の端部に配置され、送風乾燥機7a、7d、7eと側壁6aとの間に位置する。排気部8bは、筐体6内の一方側X1の端部に配置され、送風乾燥機7b、7c、7fと側壁6bとの間に位置する。これら排気部8a、8bは共通する構成を備える。排気部8a、8bは、鉛直方向Zに配列された4個の排気チャンバ81~84を有する。排気チャンバ81は、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mの上方に配置され、排気チャンバ82は、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mと中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mとの間に配置され、排気チャンバ83は、中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mと下段搬送部51lによって搬送される印刷媒体Mとの間に配置され、排気チャンバ84は、下段搬送部51lによって搬送される印刷媒体Mの下方に配置される。排気チャンバ81~84のそれぞれは、筐体6の内部から吸引したエアを筐体6の外部に排出する。
【0053】
これら排気チャンバ81~84の排気によって筐体6内には、水平方向Yの一方側から他方側(
図2の手前から奥)へ向かう気流が発生する。この排気チャンバ81~84が排気する単位時間当たりのエアの総量(排気量)は、送風乾燥機7a~7eが噴射する単位時間当たりのエアの総量(噴射量)に応じて設定される。つまり、送風乾燥機7a~7eの噴射量の増減に応じて、排気チャンバ81~84はそれぞれの排気量を増減させる。
【0054】
図5は後段折り返し部の構成を模式的に示す側面図であり、
図6は後段折り返し部の構成を模式的に示す平面図である。上述の通り、後段折り返し部54は、鉛直方向Zに配列された2個のエアターンバー541、542を有する。エアターンバー541、542それぞれの周面541a、542aは、水平方向Yから見て扇形を有する曲面であり、複数の穴を有する。そして、エアターンバー541、542は、それぞれの周面541a、542aの穴から印刷媒体Mへエアを噴射することで、印刷媒体Mを周面541a、542aから浮上させつつ印刷媒体Mを支持する。こうして、エアターンバー541、542それぞれの周面541a、542aに隙間を介して巻き掛けられた印刷媒体Mは、エアターンバー541の周面541aからエアターンバー542の周面542aに搬送される。
【0055】
また、後段折り返し部54は、エアターンバー541およびエアターンバー542を回転可能に支持する回転支持機構543を有する。この回転支持機構543は、鉛直方向Zに平行な円柱形状の回転軸543aと、筐体6に固定されたステー543bとを有し、回転軸543aはステー543bによって回転可能に支持される。さらに、回転支持機構543は、回転軸543aの両端に取り付けられた2個の取付部材543cを有し、2個の取付部材543cがエアターンバー541、542の端面にそれぞれ取り付けられている。したがって、エアターンバー541、542は、回転軸543aに伴って、鉛直方向Zに平行な直線を中心とする回転方向Ruに回転可能である。
【0056】
さらに、後段折り返し部54は、回転方向Ruにエアターンバー541、542を駆動する駆動機構544を有する。この駆動機構544は、水平方向Xに平行にロッドを移動させるアクチュエータ544aと、アクチュエータ544aのロッドとエアターンバー542の端面(取付部材543cが取り付けられた端面と逆の端面)とを接続する接続部材544bとを有する。したがって、アクチュエータ544aによって接続部材544bを駆動することで、回転方向Ruにエアターンバー541、542を回転させることができる。ここで、エアターンバー541、542の回転角度は微小であるため、アクチュエータ544aによる水平方向Xへの駆動によりエアターンバー541、542を回転させることができる。
【0057】
また、エアターンバー541とエアターンバー542との間には、エッジセンサSuが設けられている。このエッジセンサSuは光学式のセンサであり、エアターンバー541とエアターンバー542との間を搬送される印刷媒体Mの水平方向Yにおける端の位置を検出する。そして、後述するように、アクチュエータ544aによるエアターンバー541、542の回転角度は、エッジセンサSuが検出した印刷媒体Mの端の位置に基づきフィードバック制御される。
【0058】
図7は位置調整部の構成を模式的に示す側面図であり、
図8は位置調整部の構成を模式的に示す平面図である。位置調整部56は、上述の通りローラ561を有する。また、位置調整部56は、ローラ561を回転可能に支持する回転支持機構563を有する。この回転支持機構563は、鉛直方向Zに平行な円柱形状の回転軸563aと、筐体6に固定されたステー563bとを有し、回転支持機構563は、ステー563bによって回転可能に支持される。一方、ローラ561は、水平方向Yに平行な支持部材561aによって回転可能に支持されており、水平方向Yにおいて支持部材561aの両端がローラ561から突出している。そして、この支持部材561aの端部が回転軸563aの先端に取り付けられている。したがって、ローラ561は、回転軸563aに伴って、鉛直方向Zに平行な直線を中心とする回転方向Rdに回転可能である。
【0059】
さらに、位置調整部56は、回転方向Rdにローラ561を駆動する駆動機構564を有する。この駆動機構564は、水平方向Xに平行にロッドを移動させるアクチュエータ564aを有し、アクチュエータ564aのロッドが支持部材561aの端部(回転軸563aが取り付けられた端面と逆の端部)に接続されている。したがって、アクチュエータ564aによって支持部材561aを駆動することで、回転方向Rdにローラ561を回転させることができる。ここで、ローラ561の回転角度は微小であるため、アクチュエータ564aによる水平方向Xへの駆動によりローラ561を回転させることができる。
【0060】
また、ローラ561よりも印刷媒体Mの搬送方向の下流側には、エッジセンサSdが設けられている。このエッジセンサSdは光学式のセンサであり、ローラ561から搬送されてきた印刷媒体Mの水平方向Yにおける端の位置を検出する。そして、後述するように、アクチュエータ564aによるローラ561の回転角度は、エッジセンサSdが検出した印刷媒体Mの端の位置に基づきフィードバック制御される。
【0061】
また、
図7に示すように、位置調整部56は、巻取ロール12とローラ561との間にローラ568を有し、ローラ568は、ローラ561と巻取ロール12との間で印刷媒体Mを支持する。つまり、印刷媒体Mは、ローラ561から、ローラ568を経由して巻取ロール12に巻き取られる。また、エッジセンサSdは、ローラ561とローラ568との間を搬送される印刷媒体Mの端の位置を検出する。
【0062】
図9は第1実施形態に係る乾燥装置が備える電気的構成を示すブロック図である。同図が示すように、乾燥装置5は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである制御部100と、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置である記憶部110とを備える。記憶部110は、水平方向Y(換言すれば、印刷媒体Mの幅方向)における印刷媒体Mの目標位置Ptu、Ptdを記憶する。ここで、目標位置Ptuは、エッジセンサSuが検出する印刷媒体Mの端の位置の目標位置であり、目標位置Ptdは、エッジセンサSdが検出する印刷媒体Mの端の位置の目標位置である。そして、制御部100は、これら目標位置Ptuおよび目標位置Ptdに基づき、エアターンバー541、542およびローラ561のそれぞれに対してフィードバック制御を実行する。
【0063】
例えば、目標位置Ptuは、エアターンバー541、542それぞれの水平方向Yにおける中心を通る水平方向Xに平行な中心線と、水平方向Yにおける印刷媒体Mの中心とが一致するように設定される。また、目標位置Ptdは、ローラ561の水平方向Yにおける中心を通る水平方向Xに平行な中心線と、水平方向Yにおける印刷媒体Mの中心とが一致するように設定される。ただし、目標位置Ptu、Ptdの具体的な設定値はここの例に限られない。
【0064】
制御部100は、エッジセンサSuにより検出された印刷媒体Mの端の位置と、目標位置Ptuとの差に応じた操作量をアクチュエータ544aに入力する。アクチュエータ544aは、当該操作量に応じた回転角度θu(変位量)だけエアターンバー541、542を回転方向Ruに回転させる。これによって、エッジセンサSuによって検出された印刷媒体Mの端の位置と目標位置Ptuとの差を減少させるようにフィードバック制御が実行される。その結果、エッジセンサSuにより検出される印刷媒体Mの端の位置を、目標位置Ptuから所定範囲(換言すれば、定常偏差の範囲)に収めることができる。
【0065】
また、制御部100は、エッジセンサSdにより検出された印刷媒体Mの端の位置と、目標位置Ptdとの差に応じた操作量をアクチュエータ564aに入力する。アクチュエータ564aは、当該操作量に応じた回転角度θd(変位量)だけローラ561を回転方向Rdに回転させる。これによって、エッジセンサSdによって検出された印刷媒体Mの端の位置と目標位置Ptdとの差を減少させるようにフィードバック制御が実行される。その結果、エッジセンサSdにより検出される印刷媒体Mの端の位置を、目標位置Ptdから所定範囲(換言すれば、定常偏差の範囲)に収めることができる。
【0066】
なお、回転角度θu、θdの取り方は種々の態様がある。例えば、エアターンバー541、542が水平方向Yに平行であるときの回転角度θuをゼロ度とし、平面視において時計回りを回転角度θuの正側とし、反時計回りを回転角度θuの負側としてもよい。同様に、ローラ561が水平方向Yに平行であるときの回転角度θdをゼロ度とし、平面視において時計回りを回転角度θdの正側とし、反時計回りを回転角度θdの負側としてもよい。
【0067】
このように、上記実施形態では、ローラ522(前段回転体)から他方側X2へ印刷媒体Mを搬送してから、エアターンバー541、542(非接触支持部材)により印刷媒体Mを一方側X1へ折り返して、さらに印刷媒体Mをローラ561(後段回転体)まで搬送するといった長い区間において、印刷媒体Mが浮上搬送により搬送される。そこで、印刷媒体Mの水平方向Y(幅方向)の位置をエッジセンサSdにより検出した結果に応じてローラ561を回転(変位)させることで印刷媒体Mの水平方向Yの位置を調整して、印刷媒体Mの搬送の安定化を図っている。ただし、このように長い浮上搬送区間に渡って印刷媒体Mの搬送をローラ561の回転のみによっては調整するとなると、ローラ561に求められる回転角度が過大となって、印刷媒体Mの搬送を安定化させることが困難となる場合がある。これに対して、上記実施形態では、ローラ522とローラ561との間で印刷媒体Mを折り返すエアターンバー541、542を回転させることで印刷媒体Mの水平方向Yの位置を調整する。これによって、ローラ561に求められる回転角度を抑えることができる。その結果、ローラ522からローラ561までの浮上搬送区間において印刷媒体Mを安定的に搬送することが可能となっている。
【0068】
また、水平方向Yにおける印刷媒体Mの端の位置を検出するエッジセンサSuが具備されており、印刷媒体Mが搬送される方向において、エッジセンサSd(第1の位置センサ)は、後段折り返し部54より下流側で印刷媒体Mの位置を検出し、エッジセンサSu(第2の位置センサ)は、エッジセンサSdより上流側で印刷媒体Mの位置を検出する。そして、後段折り返し部54は、エッジセンサSuが検出した印刷媒体Mの位置に応じてアクチュエータ544a(支持部材駆動部)によりエアターンバー541、542を変位させることで、印刷媒体Mの水平方向Yの位置を調整する。かかる構成では、エッジセンサSuが検出した印刷媒体Mの位置に基づきエアターンバー541、542を回転させて、印刷媒体Mの搬送位置を最適化しつつ、エッジセンサSdが検出した印刷媒体Mの位置に基づきローラ561を回転させて、印刷媒体Mの搬送位置を最適化することができる。したがって、ローラ522からローラ561までの浮上搬送区間において印刷媒体Mを安定的に搬送することが可能となる。
【0069】
また、後段折り返し部54では、エアターンバー541(上側非接触支持部材)と、当該エアターンバー541の下側に配置されたエアターンバー542(下側非接触支持部材)とのそれぞれが設けられ、印刷媒体Mをエアターンバー541によって下側に折り返してから、エアターンバー542によって一方側X1に折り返す。これに対して、エッジセンサSuは、エアターンバー541とエアターンバー542との間で印刷媒体Mの位置を検出する。かかる構成では、エッジセンサSuにより検出される印刷媒体Mの位置を、エアターンバー541、542の回転角度により的確に調整することができる。
【0070】
また、
図2および
図7から分かるように、印刷媒体Mに沿ったエッジセンサSdとローラ561との距離は、印刷媒体Mに沿ったエッジセンサSdと後段折り返し部54との距離より短い。ここで、エッジセンサSdとローラ561との距離は、エッジセンサSdが印刷媒体Mを検出する範囲と、ローラ561が印刷媒体Mを巻き掛ける範囲との間の距離であり、エッジセンサSdと後段折り返し部54との距離は、エッジセンサSdが印刷媒体Mを検出する範囲と、エアターンバー542が印刷媒体Mを巻き掛ける範囲(換言すれば、エアターンバー542の周面542a)との間の距離である。かかる構成では、エッジセンサSdはローラ561に近接して配置される。したがって、エッジセンサSdにより検出される印刷媒体Mの位置を、ローラ561の回転角度により的確に調整することができる。その結果、ローラ522からローラ561までの浮上搬送区間の全体に渡って印刷媒体Mの位置を最適化できる。
【0071】
また、エッジセンサSdは、印刷媒体Mが搬送される方向においてローラ561より下流側で印刷媒体Mの位置を検出する。かかる構成では、ローラ522からローラ561までの浮上搬送区間の後に設けられたエッジセンサSdが検出する印刷媒体Mの位置に基づき、ローラ561の変位量が調整される。その結果、ローラ522からローラ561までの浮上搬送区間の全体に渡って印刷媒体Mの位置を最適化できる。
【0072】
続いては、上記実施形態の変形例について説明する。なお、上記実施形態との差異部分を中心に説明することとし、上記実施形態との共通部分については相当符号を付して説明を適宜省略する。
【0073】
図10は第2実施形態に係る乾燥装置で使用される目標位置制御情報をテーブル形式で模式的に示す図である。第2実施形態の乾燥装置5も、第1実施形態と同様に、
図9のブロック図に示す電気的構成によりフィードバック制御を実行する。ただし、第2実施形態では、記憶部110は、目標位置Ptuに代えて、
図10の目標位置制御情報Ipを記憶する。この目標位置制御情報Ipは、ローラ561の回転角度θdと、エアターンバー541、542をフィードバック制御する際の目標位置Ptuとを対応付けて示す。
【0074】
つまり、制御部100は、エッジセンサSdにより検出された印刷媒体Mの端の位置と目標位置Ptdとの比較に基づきアクチュエータ564aを操作することで、印刷媒体Mの位置に対してフィードバック制御を実行する。例えば、目標位置Ptdは、ローラ561の水平方向Yにおける中心を通る水平方向Xに平行な中心線と、水平方向Yにおける印刷媒体Mの中心とが一致するように設定される。制御部100は、フィードバック制御が実行されたローラ561の回転角度θdを、例えばアクチュエータ564aへの操作量に基づき算出し、目標位置制御情報Ipにより当該回転角度θdに対応付けられた目標位置Ptuを求める。そして、制御部100は、目標位置制御情報Ipにより求めた目標位置Ptuと、エッジセンサSuにより検出された印刷媒体Mの位置との比較に基づき、エアターンバー541、542の回転角度θuに対してフィードバック制御を実行する。
【0075】
このように第2実施形態では、エアターンバー541、542により支持される印刷媒体Mの位置に対するフィードバック制御における目標位置Ptuが、アクチュエータ564a(回転体駆動部)によって回転されたローラ561の回転角度θdに応じて設定される。つまり、エッジセンサSuの検出した印刷媒体Mの位置に基づきエアターンバー541、542を回転させるフィードバック制御における目標位置Ptu(目標値)が、ローラ561の回転角度θdに応じて設定される。したがって、ローラ561の回転方向(時計回り/反時計回り)にフィードバック制御の目標位置Ptuをシフトさせることでローラ561の回転角度θdを抑えるといった制御を実行できる。したがって、ローラ522からローラ561までの浮上搬送区間において印刷媒体Mを安定的に搬送することが可能となる。
【0076】
なお、目標位置制御情報Ipにおける回転角度θdと目標位置Ptuとの関係は、予め行った実験に基づき決定してもよいし、理論モデルに基づき決定してもよい。要するに、ローラ561の回転角度θdによる印刷媒体Mの位置の調整をアシストするように(換言すれば、ローラ561に求められる回転角度θdを抑制するように)、目標位置Ptuを決定すればよい。
【0077】
図11は第3実施形態に係る乾燥装置が備える電気的構成を示すブロック図である。第3実施形態では、第1実施形態と異なり、エッジセンサSuの検出結果に基づきエアターンバー541、542へのフィードバック制御は実行されず、エッジセンサSuは不要となっている。その代わりに、エアターンバー541、542の回転角度θuは、ローラ561の回転角度θdに基づき決定される。具体的には、記憶部110は、目標位置Ptuに代えて、回転角度θdと回転角度θuとの対応関係を示す回転角度情報Irを記憶する。
【0078】
図12は第3実施形態で使用される回転角度情報をテーブル形式で模式的に示す図であり、
図13は
図12の回転角度情報の取得方法の一例を示すフローチャートである。つまり、乾燥装置5による乾燥のために印刷媒体Mの搬送が開始される前に、制御部100が
図13のフローチャートを実行することで回転角度情報Irを予め実験的に求める。なお、
図13のフローチャートの実行時は、エッジセンサSuが乾燥装置5に取り付けられる一方、このフローチャートの終了後は、エッジセンサSuは乾燥装置5から取り外される。
【0079】
ステップS101では、ローラ561の回転角度θdがリセットされる。これによって、回転角度θdは例えばゼロ度に設定される。ステップS102では、ローラ561の回転角度θdが微小角度だけ変更される。こうしてローラ561の回転角度θdが変更された状態で、制御部100は、
図9のブロック図を用いて説明した要領で、エアターンバー(ATB)541、542の回転角度θuに対してフィードバック制御を実行する(ステップS103)。そして、制御部100は、ステップS103のフィードバック制御によって調整されたエアターンバー541、542の回転角度θuと、ステップS102で設定されたローラ561の回転角度θdとを対応付けて記録する。
【0080】
ステップS105では、ローラ561の回転角度θdの可動範囲の全体について、回転角度θdと回転角度θuとの対応関係を取得したかが判断される。なお、回転角度θdの可動範囲は、ゼロ度を中心にして正側および負側に渡って設けることができる。そして、可動範囲の全体について取得が完了すると、
図13のフローチャートが終了して、
図12の回転角度情報Irが完成する。
【0081】
乾燥装置5による印刷媒体Mの乾燥の実行時は、制御部100は、上述の第1・第2実施形態と同じ要領で、エッジセンサSdにより検出された印刷媒体Mの端の位置と目標位置Ptdとの比較に基づきアクチュエータ564aを操作することで、印刷媒体Mの位置に対してフィードバック制御を実行する。また、制御部100は、フィードバック制御が実行されたローラ561の回転角度θdを、例えばアクチュエータ564aへの操作量に基づき算出し、回転角度情報Irにより当該回転角度θdに対応付けられた回転角度θuを求める。そして、制御部100は、アクチュエータ544aを制御することで、回転角度情報Irにより求めた回転角度θuだけエアターンバー541、542を回転させる。
【0082】
このように第3実施形態では、ローラ561の回転角度θd(回転体変位量)と、回転角度θdだけローラ561が回転した際に必要となるエアターンバー541、542の回転角度θu(支持部材変位量)との対応関係を示す回転角度情報Ir(変位量情報)が記憶部110に記憶される。そして、後段折り返し部54は、アクチュエータ564a(回転体駆動部)によって回転されたローラ561の回転角度θdに対して、回転角度情報Irにより対応付けられた回転角度θuだけ、アクチュエータ544aによりエアターンバー541、542を回転させる。かかる構成では、ローラ561の回転角度θdはエッジセンサSdが検出した印刷媒体Mの位置に応じて調整され、エアターンバー541、542の回転角度θuはローラ561の回転角度θdに応じて調整される。したがって、エアターンバー541、542の回転角度θuの調整のために、エッジセンサSdとは別にエッジセンサを設ける必要がない。したがって、構成の簡素化を図ってコストを低減することができる。
【0083】
なお、
図12に示す回転角度情報Irは、ローラ561の回転角度θdと、エアターンバー541、542の回転角度θuとを対応付けている。しかしながら、エッジセンサSdが検出する印刷媒体Mの端の位置と、エアターンバー541、542の回転角度θuとを対応付けて示すように、回転角度情報Irを構成してもよい(第4実施形態)。この場合には、
図13のフローチャートにおいて、ローラ561の回転角度θdを変更した際のエッジセンサSdの検出位置を確認しておき(ステップS102)、このエッジセンサSdの検出位置とエアターンバー541、542の回転角度θuとを対応付けて記録するとよい(ステップS104)。
【0084】
つまり、第4実施形態では、エッジセンサSdによる検出位置と、エッジセンサSdが検出位置を示す際に必要となるエアターンバー541、542の回転角度θu(支持部材変位量)との対応関係を示す回転角度情報Ir(変位量情報)が記憶部110に記憶される。そして、後段折り返し部54は、エッジセンサSdが示す検出位置に対して、回転角度情報Irにより対応付けられた回転角度θuだけ、アクチュエータ544aによりエアターンバー541、542を回転させる。かかる構成では、ローラ561の回転角度θdはエッジセンサSdが検出した印刷媒体Mの位置に応じて調整され、エアターンバー541、542の回転角度θuもエッジセンサSdが検出した印刷媒体Mの位置に応じて調整される。したがって、エアターンバー541、542の回転角度θuの調整のために、エッジセンサSdとは別にエッジセンサを設ける必要がない。したがって、構成の簡素化を図ってコストを低減することができる。
【0085】
ところで、印刷媒体Mの搬送状態は、印刷媒体Mの種類による影響を受ける。つまり、印刷媒体Mの種類によって、印刷媒体Mが蛇行しやすい場合がある。ここで、印刷媒体Mの種類は、印刷媒体Mの材質、厚みあるいは幅によって区別される。そこで、
図14に示すように、印刷媒体Mの種類と、エアターンバー541、542の回転角度θuとを対応付けて示すように、回転角度情報Irを構成してもよい(第5実施形態)。ここで、
図14は第5実施形態で使用される回転角度情報をテーブル形式で模式的に示す図である。
【0086】
この第5実施形態では、印刷媒体Mの乾燥のために印刷媒体Mの搬送が開始される前に、制御部100は、印刷媒体Mの種類を確認する。この印刷媒体Mの種類は、例えば作業者によって予め記憶部110に設定されている。また、制御部100は、確認した印刷媒体Mの種類に対して回転角度情報Irによって対応付けられた回転角度θuを求める。そして、制御部100は、回転角度情報Irによって求めた回転角度θuだけ、エアターンバー541、542を回転させる。
【0087】
つまり、第5実施形態では、印刷媒体Mの種類と、当該種類の印刷媒体Mの搬送に必要となるエアターンバー541、542の回転角度θuとの対応関係を示す回転角度情報Ir(変位量情報)が記憶部110に記憶される。そして、後段折り返し部54は、搬送される印刷媒体Mの種類に対して、回転角度情報Irにより対応付けられた回転角度θuだけ、アクチュエータ544aによりエアターンバー541、542を回転させる。かかる構成では、印刷媒体Mの種類に応じてエアターンバー541、542を回転させることで印刷媒体Mの水平方向Yの位置を調整する。これによって、ローラ561に求められる回転角度θdを抑えることができる。その結果、ローラ522からローラ561までの浮上搬送区間において印刷媒体Mを安定的に搬送することが可能となっている。
【0088】
以上に説明した実施形態では、印刷システム1が本発明の「印刷システム」の一例に相当し、印刷装置3が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、乾燥装置5が本発明の「乾燥装置」の一例に相当し、前段折り返し部52が本発明の「前段折り返し部」の一例に相当し、ローラ521、522のそれぞれが本発明の「前段回転体」の一例に相当し、後段折り返し部54が本発明の「後段折り返し部」の一例に相当し、エアターンバー541、542が本発明の「非接触支持部材」の一例に相当し、エアターンバー541が本発明の「上側非接触支持部材」の一例に相当し、エアターンバー542が本発明の「下側非接触支持部材」の一例に相当し、アクチュエータ544aが本発明の「支持部材駆動部」の一例に相当し、ローラ561が本発明の「後段回転体」の一例に相当し、アクチュエータ564aが本発明の「回転体駆動部」の一例に相当し、上段搬送部51uが本発明の「上段搬送部」の一例に相当し、中段搬送部51mが本発明の「中段搬送部」の一例に相当し、下段搬送部51lが本発明の「下段搬送部」の一例に相当し、上段搬送部51uのノズル76uが本発明の「上段印刷面ノズル」の一例に相当し、中段搬送部51mのノズル76lが本発明の「中段印刷面ノズル」の一例に相当し、中段搬送部51mのノズル76uが本発明の「中段非印刷面ノズル」の一例に相当し、下段搬送部51lのノズル76uが本発明の「下段印刷面ノズル」の一例に相当し、下段搬送部51lのノズル76lが本発明の「下段非印刷面ノズル」の一例に相当し、制御部100が本発明の「位置調整部」の一例に相当し、記憶部110が本発明の「記憶部」の一例に相当し、回転角度情報Irが本発明の「変位量情報」の一例に相当し、印刷媒体Mが本発明の「印刷媒体」の一例に相当し、表面M1が本発明の「印刷面」の一例に相当し、裏面M2が本発明の「非印刷面」の一例に相当し、エッジセンサSdが本発明の「第1の位置センサ」の一例に相当し、エッジセンサSuが本発明の「第2の位置センサ」の一例に相当し、水平方向Xが本発明の「水平方向」の一例に相当し、一方側X1が本発明の「一方側」の一例に相当し、他方側X2が本発明の「他方側」の一例に相当し、回転角度θdが本発明の「回転体変位量」の一例に相当し、回転角度θuが本発明の「支持部材変位量」の一例に相当する。
【0089】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、前段折り返し部52を2本のローラ521、522で構成する必要はなく、1本の大きなローラによって印刷媒体Mを一方側X1から他方側X2へ折り返すように構成してもよい。同様に、後段折り返し部54を2本のエアターンバー541、542で構成する必要も必ずしもない。
【0090】
また、エアターンバー541、542を変位させる回転支持機構543の構成は、上記の例に限られない。つまり、アクチュエータではなく、モータによってエアターンバー541、542を変位させるように回転支持機構543を構成してもよい。ローラ561を変位させる回転支持機構563についても同様である。
【0091】
また、エアターンバー541、542やローラ561の回転中心の位置は上記の例に限られず、適宜変更できる。また、ローラ561の変位方向は、回転方向Rdに限られず、水平方向Yでも構わない。
【0092】
また、エッジセンサSdあるいはエッジセンサSuの位置も適宜変更することができる。
【0093】
また、上では詳述しなかったが、送風乾燥機7a~7eからの噴射量および排気部8a、8bからの排気量の制御を、例えば
図15に示す構成で実行することができる。
図15は噴射量および排気量を制御する構成を示すブロック図である。送風乾燥機7a~7eの送風チャンバ72u、72lに対しては送風ポンプPsが設けられており、メインヒータHmにより外気を加熱することで生成された熱風が送風ポンプPsによって送風チャンバ72u、72lに供給されて、ノズル76u、76lから噴射される。また、排気部8a、8bに対しては排気ポンプPeが設けられており、排気ポンプPeの動作に応じて、排気部8a、8bは筐体6内からエアを排気する。そして、制御部100が送風ポンプPsおよび排気ポンプPeを制御することで、噴射量と排気量とを上述のように調整する。これによって、噴射量の増大に応じて排気量が増大する一方、噴射量の減少に応じて排気量が減少する。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、インクが付着した印刷媒体を気体の噴射により乾燥させる技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1…印刷システム
3…印刷装置
5…乾燥装置
52…前段折り返し部
521…ローラ(前段回転体)
522…ローラ(前段回転体)
54…後段折り返し部
541…エアターンバー(非接触支持部材、上側非接触支持部材)
542…エアターンバー(非接触支持部材、下側非接触支持部材)
544a…アクチュエータ(支持部材駆動部)
561…ローラ(後段回転体)
564a…アクチュエータ(回転体駆動部)
51u…上段搬送部
51m…中段搬送部
51l…下段搬送部
76u…ノズル
76l…ノズル
100…制御部(位置調整部)
110…記憶部
Ir…回転角度情報(変位量情報)
M…印刷媒体
M1…表面(印刷面)
M2…裏面(非印刷面)
Sd…エッジセンサ(第1の位置センサ)
Su…エッジセンサ(第2の位置センサ)
X…水平方向
X1…一方側
X2…他方側
θd…回転角度(回転体変位量)
θu…回転角度(支持部材変位量)