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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】熱処理装置および熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/324 20060101AFI20250218BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
H01L21/324 T
H01L21/30 567
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021039538
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022139247
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】後藤 茂宏
(72)【発明者】
【氏名】西 幸治
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125335(JP,A)
【文献】特開2018-056205(JP,A)
【文献】特開2019-186498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/324
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される処理面を有する熱処理プレートと、
前記熱処理プレートの前記処理面の複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の熱処理部と、
前記複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の温度センサと、
前記複数の温度センサの出力値をそれぞれ検出温度値に変換する変換部と、
前記複数の温度センサに対応する複数の検出温度値が目標温度値に一致するように前記複数の熱処理部を制御する制御部と、
前記複数の熱処理部による熱処理の終了時点からの前記複数の検出温度値の変化の態様に基づいて前記複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する判定部とを備え
前記複数の検出温度値の変化の態様は、前記複数の検出温度値の変化の勾配を含み、
前記判定部は、前記複数の検出温度値の勾配を比較することにより前記複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する、熱処理装置。
【請求項2】
基板が載置される処理面を有する熱処理プレートと、
前記熱処理プレートの前記処理面の複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の熱処理部と、
前記複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の温度センサと、
前記複数の温度センサの出力値をそれぞれ検出温度値に変換する変換部と、
前記複数の温度センサに対応する複数の検出温度値が目標温度値に一致するように前記複数の熱処理部を制御する制御部と、
前記複数の熱処理部による熱処理の終了時点からの前記複数の検出温度値の変化の態様に基づいて前記複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する判定部とを備え、
前記複数の検出温度値の変化の態様は、前記熱処理の終了時点から予め定められた時間の経過時点の前記複数の検出温度値を含み、
前記判定部は、前記予め定められた時間の経過時点の前記複数の検出温度値を比較することにより前記複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する、熱処理装置。
【請求項3】
基板が載置される処理面を有する熱処理プレートと、
前記熱処理プレートの前記処理面の複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の熱処理部と、
前記複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の温度センサと、
前記複数の温度センサの出力値をそれぞれ検出温度値に変換する変換部と、
前記複数の温度センサに対応する複数の検出温度値が目標温度値に一致するように前記複数の熱処理部を制御する制御部と、
前記複数の熱処理部による熱処理の終了時点からの前記複数の検出温度値の変化の態様に基づいて前記複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する判定部とを備え、
前記複数の検出温度値の変化の態様は、前記熱処理の終了時点からの前記複数の検出温度値の変化の形状を含み、
前記判定部は、前記複数の検出温度値の変化の形状を比較することにより前記複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する、熱処理装置。
【請求項4】
前記判定部により前記一部の領域の実温度が前記他の領域の実温度と異なると判定された場合に、前記一部の領域に対応する検出温度値の変化の態様に基づいて、前記一部の領域の検出温度値の変化の態様と他の領域に対応する検出温度値の変化の態様とが等しくなるように前記変換部における前記一部の領域に対応する温度センサの出力値と検出温度値との関係を補正する補正部をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記判定部により前記一部の領域の実温度が前記他の領域の実温度と異なると判定された場合、警告を報知する報知部とをさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記複数の熱処理部による熱処理の終了および前記判定部による判定は、予め定められた一定期間ごとに行われる、請求項1~のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記複数の熱処理部による熱処理の終了および前記判定部による判定は、基板の熱処理の終了時に行われる、請求項1~のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記複数の熱処理部による熱処理の終了および前記判定部による判定は、前記複数の熱処理部による熱処理が行われない期間に行われる、請求項1~のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項9】
熱処理装置を用いて基板に熱処理を行う熱処理方法であって、
前記熱処理装置は、
基板が載置される処理面を有する熱処理プレートと、
熱処理プレートの処理面の複数の領域にそれぞれ対応して設けられ、対応する領域にそれぞれ熱処理を行う複数の熱処理部と、
前記複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の温度センサとを備え、
前記熱処理方法は、
前記複数の温度センサの出力値をそれぞれ検出温度値に変換するステップと、
前記複数の温度センサに対応する複数の検出温度値が目標温度値に一致するように前記複数の熱処理部を制御するステップと、
前記複数の熱処理部による熱処理の終了時点からの前記複数の検出温度値の変化の態様に基づいて前記複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定するステップとを含み、
前記複数の検出温度値の変化の態様は、前記複数の検出温度値の変化の勾配を含み、
前記判定するステップは、前記複数の検出温度値の勾配を比較することにより前記複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定することを含む、熱処理方法。
【請求項10】
熱処理装置を用いて基板に熱処理を行う熱処理方法であって、
前記熱処理装置は、
基板が載置される処理面を有する熱処理プレートと、
熱処理プレートの処理面の複数の領域にそれぞれ対応して設けられ、対応する領域にそれぞれ熱処理を行う複数の熱処理部と、
前記複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の温度センサとを備え、
前記熱処理方法は、
前記複数の温度センサの出力値をそれぞれ検出温度値に変換するステップと、
前記複数の温度センサに対応する複数の検出温度値が目標温度値に一致するように前記複数の熱処理部を制御するステップと、
前記複数の熱処理部による熱処理の終了時点からの前記複数の検出温度値の変化の態様に基づいて前記複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定するステップとを含み、
前記複数の検出温度値の変化の態様は、前記熱処理の終了時点から予め定められた時間の経過時点の前記複数の検出温度値を含み、
前記判定するステップは、前記予め定められた時間の経過時点の前記複数の検出温度値を比較することにより前記複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定することを含む、熱処理方法。
【請求項11】
熱処理装置を用いて基板に熱処理を行う熱処理方法であって、
前記熱処理装置は、
基板が載置される処理面を有する熱処理プレートと、
熱処理プレートの処理面の複数の領域にそれぞれ対応して設けられ、対応する領域にそれぞれ熱処理を行う複数の熱処理部と、
前記複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の温度センサとを備え、
前記熱処理方法は、
前記複数の温度センサの出力値をそれぞれ検出温度値に変換するステップと、
前記複数の温度センサに対応する複数の検出温度値が目標温度値に一致するように前記複数の熱処理部を制御するステップと、
前記複数の熱処理部による熱処理の終了時点からの前記複数の検出温度値の変化の態様に基づいて前記複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定するステップとを含み、
前記複数の検出温度値の変化の態様は、前記熱処理の終了時点からの前記複数の検出温度値の変化の形状を含み、
前記判定するステップは、前記複数の検出温度値の変化の形状を比較することにより前記複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定することを含む、熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置および熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板(半導体ウエハ)等の基板に熱処理を行うために、熱処理装置が用いられる。例えば特許文献1に記載された熱処理装置は、基板が載置される熱処理プレートを含む。熱処理プレートは、温度センサおよびヒータを含む。温度センサの検出信号に基づいてヒータが制御されることにより熱処理プレートの温度が設定温度に制御される。特許文献2には、複数の領域に分割された加熱プレートを有する基板熱処理装置が記載されている。この基板熱処理装置では、加熱プレートの領域ごとに個別に温度制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-181948号公報
【文献】特開2013-162097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱処理プレートの複数の領域の温度を個別に制御する場合には、各領域にヒータおよび温度センサが設けられる。この場合、各領域において温度センサの検出温度に基づいてヒータが制御される。通常、温度センサの検出温度と熱処理プレートの実際の温度との関係は領域ごとに異なる。そこで、熱処理装置の設置時に、別途用意された温度測定用基板を用いて熱処理プレートの上面の各領域の実際の温度が測定され、熱処理プレートの複数の領域の温度が均一になるように、各領域の温度センサの検出温度が補正される。ここで、温度測定用基板とは、複数の温度センサを備える基板である。
【0005】
しかしながら、各領域の温度センサの経時変化、またはメンテナンス時におけるセンサの配線抵抗の変化等により、一部の領域において温度センサの検出温度と熱処理プレートの温度との間の関係が変化することがある。そのような場合、熱処理プレートの上面全体の温度が均一にならない。そこで、熱処理プレートの温度が均一であるか否かを定期的に確認する必要がある。
【0006】
通常は、定期的に、温度測定用基板を用いて熱処理プレートの複数の領域の温度が測定される。しかし、温度測定用基板を用いて熱処理プレートの温度を測定する作業は、煩雑であり、時間を要する。
【0007】
本発明の目的は、複数の領域を有する熱処理プレート上の温度分布が均一であるか否かをより迅速かつ容易に検出することが可能な熱処理装置および熱処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)熱処理装置は、基板が載置される処理面を有する熱処理プレートと、熱処理プレートの処理面の複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の熱処理部と、複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の温度センサと、複数の温度センサの出力値をそれぞれ検出温度値に変換する変換部と、複数の温度センサに対応する複数の検出温度値が目標温度値に一致するように複数の熱処理部を制御する制御部と、複数の熱処理部による熱処理の終了時点からの複数の検出温度値の変化の態様に基づいて複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する判定部とを備え、複数の検出温度値の変化の態様は、複数の検出温度値の変化の勾配を含み、判定部は、複数の検出温度値の勾配を比較することにより複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する。
【0009】
この熱処理装置においては、熱処理プレートの複数の領域の温度が同じになるように予め変換部において複数の温度センサの出力値とそれぞれの検出温度値との関係が調整される。この状態で、熱処理時に、複数の検出温度値が目標温度値に一致するように複数の熱処理部が制御される。変換部の調整後に、いずれかの温度センサの特性または配線抵抗等が変化することによりいずれかの温度センサの出力値と検出温度値との関係が変化することがある。この場合、複数の領域に対応する検出温度値が同じであっても、一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なることになる。熱は高い温度を有する部分から低い温度を有する部分へ移動するため、熱処理が終了すると、一部の領域と他の領域との間で熱の移動が生じる。そのため、熱処理の終了時点からの一部の領域に対応する検出温度値の変化の態様(manner)が他の領域の検出温度値の変化の態様と異なることになる。それにより、一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なることが検出される。その結果、熱処理プレートの温度分布が均一であるか否かを短時間で容易に検出することが可能になる。
【0011】
また、簡単な方法により複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定することが可能になる。それにより、判定部の処理の複雑化が抑制される。
【0012】
熱処理装置は、基板が載置される処理面を有する熱処理プレートと、熱処理プレートの処理面の複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の熱処理部と、複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の温度センサと、複数の温度センサの出力値をそれぞれ検出温度値に変換する変換部と、複数の温度センサに対応する複数の検出温度値が目標温度値に一致するように複数の熱処理部を制御する制御部と、複数の熱処理部による熱処理の終了時点からの複数の検出温度値の変化の態様に基づいて複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する判定部とを備え、複数の検出温度値の変化の態様は、熱処理の終了時点から予め定められた時間の経過時点の複数の検出温度値を含み、判定部は、予め定められた時間の経過時点の複数の検出温度値を比較することにより複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する
【0013】
この場合、簡単な方法により複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定することが可能になる。それにより、判定部の処理の複雑化が抑制される。
【0014】
熱処理装置は、基板が載置される処理面を有する熱処理プレートと、熱処理プレートの処理面の複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の熱処理部と、複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の温度センサと、複数の温度センサの出力値をそれぞれ検出温度値に変換する変換部と、複数の温度センサに対応する複数の検出温度値が目標温度値に一致するように複数の熱処理部を制御する制御部と、複数の熱処理部による熱処理の終了時点からの複数の検出温度値の変化の態様に基づいて複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する判定部とを備え、複数の検出温度値の変化の態様は、熱処理の終了時点からの複数の検出温度値の変化の形状を含み、判定部は、複数の検出温度値の変化の形状を比較することにより複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する
【0015】
この場合、簡単な方法により複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定することが可能になる。それにより、判定部の処理の複雑化が抑制される。
【0016】
)判定部により一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なると判定された場合に、一部の領域に対応する検出温度値の変化の態様に基づいて、一部の領域の検出温度値の変化の態様と他の領域に対応する検出温度値の変化の態様とが等しくなるように変換部における一部の領域に対応する温度センサの出力値と検出温度値との関係を補正する補正部をさらに備えてもよい。
【0017】
この場合、熱処理プレート上の温度分布が一定であるか否かの検出から温度センサの補正までを自動的に行うことが可能になる。その結果、簡単な構成で熱処理装置のメンテナンスに要する時間を削減することが可能になる。
【0018】
)判定部により一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なると判定された場合、警告を報知する報知部とをさらに備えてもよい。
【0019】
この場合、使用者は、熱処理プレートの温度分布が均一でないことを容易に認識することができる。
【0020】
)複数の熱処理部による熱処理の終了および判定部による判定は、予め定められた一定期間ごとに行われてもよい。
【0021】
この場合、熱処理プレートの温度分布が均一であるか否かの定期的な確認が自動的に行われる。
【0022】
)複数の熱処理部による熱処理の終了および判定部による判定は、基板の熱処理の終了時に行われてもよい。
【0023】
この場合、熱処理プレートの温度分布の均一性の判定のために追加の時間が不要となる。それにより、基板の熱処理におけるダウンタイムが低減される。
【0024】
)複数の熱処理部による熱処理の終了および判定部による判定は、熱処理装置による基板の熱処理が行われない期間に行われてもよい。
【0025】
この場合、熱処理プレートの温度分布の均一性の判定が熱処理装置による基板の熱処理が行われない期間に行われるので、基板の熱処理におけるダウンタイムが低減される。
【0026】
)熱処理方法は、熱処理装置を用いて基板に熱処理を行う熱処理方法であって、熱処理装置は、基板が載置される処理面を有する熱処理プレートと、熱処理プレートの処理面の複数の領域にそれぞれ対応して設けられ、対応する領域にそれぞれ熱処理を行う複数の熱処理部と、複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の温度センサとを備え、熱処理方法は、複数の温度センサの出力値をそれぞれ検出温度値に変換するステップと、複数の温度センサに対応する複数の検出温度値が目標温度値に一致するように複数の熱処理部を制御するステップと、複数の熱処理部による熱処理の終了時点からの複数の検出温度値の変化の態様に基づいて複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定するステップとを含み、複数の検出温度値の変化の態様は、複数の検出温度値の変化の勾配を含み、判定するステップは、複数の検出温度値の勾配を比較することにより複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定することを含む。
(10)熱処理方法は、熱処理装置を用いて基板に熱処理を行う熱処理方法であって、熱処理装置は、基板が載置される処理面を有する熱処理プレートと、熱処理プレートの処理面の複数の領域にそれぞれ対応して設けられ、対応する領域にそれぞれ熱処理を行う複数の熱処理部と、複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の温度センサとを備え、熱処理方法は、複数の温度センサの出力値をそれぞれ検出温度値に変換するステップと、複数の温度センサに対応する複数の検出温度値が目標温度値に一致するように複数の熱処理部を制御するステップと、複数の熱処理部による熱処理の終了時点からの複数の検出温度値の変化の態様に基づいて複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定するステップとを含み、複数の検出温度値の変化の態様は、熱処理の終了時点から予め定められた時間の経過時点の複数の検出温度値を含み、判定するステップは、予め定められた時間の経過時点の複数の検出温度値を比較することにより複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定することを含む。
(11)熱処理方法は、熱処理装置を用いて基板に熱処理を行う熱処理方法であって、熱処理装置は、基板が載置される処理面を有する熱処理プレートと、熱処理プレートの処理面の複数の領域にそれぞれ対応して設けられ、対応する領域にそれぞれ熱処理を行う複数の熱処理部と、複数の領域にそれぞれ対応して設けられた複数の温度センサとを備え、熱処理方法は、複数の温度センサの出力値をそれぞれ検出温度値に変換するステップと、複数の温度センサに対応する複数の検出温度値が目標温度値に一致するように複数の熱処理部を制御するステップと、複数の熱処理部による熱処理の終了時点からの複数の検出温度値の変化の態様に基づいて複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定するステップとを含み、複数の検出温度値の変化の態様は、熱処理の終了時点からの複数の検出温度値の変化の形状を含み、判定するステップは、複数の検出温度値の変化の形状を比較することにより複数の領域のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定することを含む。
【0027】
この熱処理方法によれば、熱処理プレートの温度分布が均一であるか否かを短時間で容易に検出することが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複数の領域を有する熱処理プレート上の温度分布が均一であるか否かを迅速かつ容易に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す模式的側面図である。
図2図1の熱処理プレートの模式的平面図である。
図3図1の制御部の機能的な構成を示すブロック図である。
図4】複数の領域のヒータのオフの時点からの検出温度値の時間的な変化の例を示すグラフである。
図5】複数の領域のヒータのオフの時点からの検出温度値の時間的な変化の例を示すグラフである。
図6】複数の領域のヒータのオフの時点からの検出温度値の時間的な変化の例を示すグラフである。
図7図3の制御部の温度均一性判定動作の一例を示すフローチャートである。
図8図3の制御部の温度均一性判定動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施の形態に係る熱処理装置および熱処理方法について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、基板とは、半導体基板(半導体ウエハ)、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。以下の説明においては、熱処理装置の一例として基板に加熱処理を行う熱処理装置を説明する。
【0031】
(1)熱処理装置の構成
図1は、本実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す模式的側面図である。図2は、図1の熱処理プレートの模式的平面図である。図1に示すように、熱処理装置100は、熱処理プレート10、温度センサ群20、ヒータ群30、制御部40および表示部50を備える。本実施の形態では、熱処理装置100は、加熱装置であり、熱処理プレート10は加熱プレートである。
【0032】
熱処理プレート10は、扁平な円柱形状を有する金属製の伝熱プレートであり、平坦な上面を有する。熱処理プレート10の上面は、加熱処理の対象となる基板Wが載置可能に構成される。熱処理プレート10の上面には、基板Wの下面を支持する複数のプロキシミティボール等が設けられている。本実施の形態では、熱処理プレート10の上面が処理面である。図1では、熱処理プレート10上に載置される基板Wが一点鎖線で示される。
【0033】
熱処理プレート10内には、温度センサ群20およびヒータ群30が設けられている。温度センサ群20は、図2に示される複数の温度センサSeを含む。ヒータ群30は、図2に示される複数のヒータHeを含む。ヒータHeは、例えばマイカヒータまたはペルチェ素子等で構成される。
【0034】
制御部40は、温度センサ群20により検出された温度に基づいてヒータ群30を制御する。それにより、熱処理プレート10の処理面の温度が予め設定された温度(以下、目標温度値と呼ぶ。)で保持される。この状態で、基板Wに熱処理が行われる。制御部40は、例えば、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)および記憶装置等を含む。表示部50は、例えば、液晶表示装置または有機エレクトロルミネッセンス表示装置を含み、種々の画像等を表示するために用いられる。
【0035】
図2に示すように、熱処理プレート10は、平面視において複数の領域R1~R6にそれぞれ区分される。領域R1は熱処理プレート10の中央部に円形状に配置される。領域R2は領域R1を取り囲むように環状に配置される。領域R3~R6は、領域R2を取り囲むようにそれぞれ部分円環状に配置される。
【0036】
複数の領域R1~R6の各々には、複数の温度センサSeおよびヒータHeがそれぞれ設けられる。複数の領域R1~R6に設けられた複数の温度センサSeが図1の温度センサ群20を構成する。また、複数の領域R1~R6に設けられた複数のヒータHeが図1のヒータ群30を構成する。
【0037】
本実施の形態では、熱処理プレート10の処理面の温度が目標温度値に等しくなるように複数のヒータHeが制御される。以下、熱処理プレート10の処理面の実際の温度を実温度と呼ぶ。
【0038】
複数の領域R1~R6の温度センサSeの出力値は、それぞれ温度値に変換される。各温度センサSeの出力値は、例えば電圧値である。各温度センサSeの出力値と温度値との関係は既知である。各温度センサSeの出力値は、温度値に比例していてもよく、比例していなくてもよい。後述する温度換算部430(図3参照)により得られた各領域の温度値を検出温度値と呼ぶ。本実施の形態では、各領域R1~R6における複数の温度センサSeの出力値に対応する複数の温度値の平均値が当該領域R1~R6の検出温度値として用いられる。
【0039】
熱処理プレート10の領域R1~R6の各々において、熱処理プレート10の処理面の実温度と、熱処理プレート10内の温度センサSeが配置されている部分の温度とは等しいとは限らない。また、熱処理プレート10の複数の領域R1~R6の処理面の実温度が同一であっても、熱処理プレート10内で複数の領域R1~R6の温度センサSeが配置されている部分の温度が同一であるとは限らない。そのため、熱処理プレート10の複数の領域R1~R6の処理面の実温度が同一であっても、複数の領域R1~R6の温度センサSeの出力値はそれぞれ異なる場合がある。換言すれば、複数の領域R1~R6の温度センサSeの出力値が同一であっても、熱処理プレート10の複数の領域R1~R6の処理面の実温度が同一であるとは限らない。
【0040】
そこで、各温度センサSeの出力値を検出温度値に変換する際に、各温度センサSeの出力値と検出温度値との関係が温度センサSeごとに調整される。例えば、温度センサSeの出力値が温度値と比例する場合、温度センサSeの出力値Vs[mV]を検出温度値Td[℃]に変換するための変換式をTd=kVs+OFとする。kは変換係数であり、OFはオフセット値である。
【0041】
上記のように、複数の領域R1~R6の処理面の実温度が同一であるにもかかわらず、複数の領域R1~R6の温度センサSeの出力値が異なる場合がある。このような場合、熱処理プレート10の複数の領域R1~R6の処理面の実温度が同一であるときに複数の領域R1~R6の検出温度値が同一になるように各温度センサSeの出力値を検出温度値に変換するときのオフセット値OFが熱処理装置100の製造時または据え付け時等にそれぞれ調整される。それにより、熱処理プレート10の処理面の実温度が均一である場合には、複数の領域R1~R6に対応する検出温度値が同一となる。
【0042】
しかしながら、各領域の温度センサSeの経時変化、またはメンテナンス時における温度センサSeの配線抵抗の変化等により、当該領域の温度センサSeの出力値と検出温度値との関係が変化することがある。このような場合、複数の領域R1~R6の検出温度値が等しくなるように複数のヒータHeが制御されても
複数の領域R1~R6のうち一部の領域の処理面の実温度が他の領域の処理面の実温度と異なることがある。その場合、熱処理プレート10の処理面の実温度が不均一となる。本実施の形態では、後述するように、熱処理プレート10の処理面の実温度が均一であるか否かを判定するための温度均一性判定動作を行うことが可能である。
【0043】
(2)制御部40の機能的な構成
図3は、図1の制御部40の機能的な構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御部40は、ヒータ制御部410、判定開始指令部420、温度換算部430、検出温度値取得部440および温度変化記憶部450を含む。また、制御部40は、温度変化取得部460、判定部470、表示制御部480、補正情報算出部490および補正部500を含む。
【0044】
本実施の形態では、制御部40の各構成要素(410~500)は、ROMまたは記憶装置に記憶される。均一性判定プログラム等のコンピュータプログラムを実行することにより実現される。制御部40の構成要素(410~500)の一部または全てが電子回路等のハードウェアにより構成されてもよい。
【0045】
ヒータ制御部410には、基板Wの処理温度が目標温度値として与えられる。ヒータ制御部410は、複数のヒータHeに供給される電流を制御することにより熱処理プレート10上の基板Wの温度を制御する。
【0046】
温度換算部430は、複数の領域R1~R6の温度センサSeの出力値と検出温度値との関係をテーブルの形式でまたは関数として保持している。温度換算部430は、複数の領域R1~R6の温度センサSeの出力値と検出温度値との関係に基づいて、複数の領域R1~R6の温度センサSeの出力値をそれぞれ検出温度値に変換する。本実施の形態では、上記のように、熱処理装置100の製造時または据え付け時等に、熱処理プレート10の複数の領域R1~R6の処理面の実温度が同一であるときに複数の領域R1~R6の検出温度値が同一になるように各温度センサSeの温度換算部430におけるオフセット値が調整される。
【0047】
検出温度値取得部440は、温度換算部430により得られた複数の領域R1~R6の検出温度値を取得する。ヒータ制御部410は、熱処理時に検出温度値取得部440により取得された複数の領域R1~R6の検出温度値が目標温度値に一致するように、複数の領域R1~R6に設けられた複数のヒータHeに供給される電流をそれぞれ制御する。
【0048】
判定開始指令部420は、使用者の操作または外部からの指令信号に基づいて、温度均一性を判定する温度均一性判定動作の開始をヒータ制御部410に指令する。ヒータ制御部410は、温度均一性判定動作の開始が指令されると、複数の領域R1~R6のヒータHeをオフにする。すなわち、ヒータ制御部410は、複数の領域R1~R6のヒータHeへの電流の供給を停止または低減する。それにより、検出温度値取得部440により取得される複数の領域R1~R6の検出温度値がそれぞれ低下する。
【0049】
複数の領域R1~R6のヒータHeのオフ時に、熱処理プレート10の複数の領域R1~R6の処理面の実温度が等しい場合には、複数の領域R1~R6の検出温度値は同じ傾きで低下する。一方、一部の領域の実温度が他の領域の実温度より高い場合、一部の領域から他の領域へ熱が移動する。それにより、一部の領域の実温度の低下の態様が他の領域の実温度の低下の態様とは異なる。具体的には、一部の領域の実温度の低下速度が他の領域の実温度の低下速度よりも高くなる。この場合、一部の領域の検出温度値の低下の勾配が他の領域の検出温度値の低下の勾配よりも大きくなる。あるいは、一部の領域の検出温度値が他の領域の検出温度値と異なる形状で低下する。詳細については後述する。
【0050】
温度変化記憶部450は、検出温度値取得部440により取得された複数の領域R1~R6の検出温度値の時間的な変化を記憶する。温度変化取得部460は、温度均一性判定動作時に、温度変化記憶部450に記憶された複数の領域R1~R6の検出温度値の時間的な変化を取得する。
【0051】
判定部470は、温度変化取得部460により取得された一部の領域の検出温度値の変化の態様が他の領域の検出温度値の変化の態様と異なるか否かに基づいて、複数の領域R1~R6のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する。本実施の形態では、変化の態様は、複数の領域R1~R6の検出温度値の変化の勾配、ヒータHeのオフの時点から予め定められた時間の経過時点の複数の領域R1~R6の検出温度値、またはヒータHeのオフの時点からの複数の領域R1~R6の検出温度値の変化の形状を含む。
【0052】
例えば、変化の態様が、複数の領域R1~R6の検出温度値の変化の勾配である場合、判定部470は、複数の検出温度値の勾配をそれぞれ比較することにより、複数の領域R1~R6のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する。この場合、判定部470は、例えば、ヒータHeのオフの時点からの各領域の検出温度値の低下の勾配が予め設定された第1の許容範囲内にあるか否かを判定する。一部の領域の検出温度値の低下の勾配が第1の許容範囲内にない場合、判定部470は、当該一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なると判定する。あるいは、判定部470は、例えば、ヒータHeのオフの時点からの各領域の検出温度値の低下の勾配と他の複数の領域の検出温度値の低下の勾配との差の合計を算出する。一部の領域に関する勾配の差の合計が第1の判定しきい値よりも大きい場合、判定部470は、当該一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なると判定する。
【0053】
また、変化の態様が、ヒータHeのオフの時点から予め定められた時間の経過時点の複数の領域R1~R6の検出温度値である場合、判定部470は、予め定められた時間の経過時点の複数の検出温度値をそれぞれ比較することにより、複数の領域R1~R6のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する。この場合、判定部470は、例えば、ヒータHeのオフの時点から予め定められた時間の経過時点の各領域の検出温度値が第2の許容範囲内にあるか否かを判定する。一部の領域の検出温度値が第2の許容範囲内にない場合、判定部470は、当該一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なると判定する。あるいは、判定部470は、例えば、ヒータHeのオフの時点から予め定められた時間の経過時点の各領域の検出温度値と他の複数の領域の検出温度値との差の合計を算出する。一部の領域に関する検出温度値の差の合計が第2の判定しきい値よりも大きい場合、判定部470は、当該一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なると判定する。
【0054】
さらに、変化の態様が、ヒータHeのオフの時点からの複数の領域R1~R6の検出温度値の変化の形状である場合、判定部470は、複数の領域R1~R6の検出温度値の変化の形状を比較することにより、複数の領域R1~R6のうち一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定する。この場合、判定部470は、例えば、ヒータHeのオフの時点からの各領域の検出温度値の低下の形状が第3の許容範囲内にあるか否かを判定する。一部の領域の検出温度値の低下の形状が第3の許容範囲内にない場合、判定部470は、当該一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なると判定する。あるいは、判定部470は、例えば、ヒータHeのオフの時点からの各領域の検出温度値の低下の形状と他の複数の領域の検出温度値の低下の形状と一致度を算出する。一部の領域に関する検出温度値の低下の形状の一致度が第3の判定しきい値よりも小さい場合、判定部470は、当該一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なると判定する。
【0055】
表示制御部480は、表示部50に警告等の種々の情報を表示部に表示させる。補正情報算出部490は、判定部470により一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なっていると判定された場合に、補正情報を算出する。補正情報は、当該一部の領域の検出温度値の変化の態様が他の領域の検出温度値の変化の態様と等しくなるように、当該一部の領域の温度センサSeの出力値と検出温度値との関係を補正するための情報である。例えば、補正情報は、一部の領域の検出温度値の低下の勾配、予め定められた時間の経過時点の検出温度値または検出温度値の低下の形状を他の領域の検出温度値の低下の勾配、予め定められた時間の経過時点の検出温度値または検出温度値の低下の形状に一致または近似させるためのオフセット値の補正量である。
【0056】
補正部500は、補正情報算出部490により算出された補正情報を用いて他の領域と異なる実温度を有する領域の温度センサの出力値と検出温度値との関係を補正する。
【0057】
(3)温度均一性判定方法の例
図4図6は、複数の領域R1~R6のヒータHeのオフの時点からの検出温度値の時間的な変化の例を示すグラフである。図4図6の縦軸は検出温度値であり、横軸は時間である。線r1~r6は、それぞれ領域R1~R6の検出温度値の変化を示す。
【0058】
図4図6において、時点t1~t2までの期間では、領域R1~R6の検出温度値が110.0に維持されている。時点t2で領域R1~R6のヒータHeがオフされる。それにより、領域R1~R6の検出温度値が低下する。
【0059】
図4の例では、時点t2から領域R1~R6の検出温度値がほぼ等しい勾配で直線状に低下する。この場合、領域R1~R6間での熱の移動はほとんど生じていないと考えられる。その結果、領域R1~R6の実温度はほぼ等しいと判定される。
【0060】
図5の例では、時点t2から領域R1,R2,R4~R6の検出温度値がほぼ等しい勾配で直線状に低下する。一方、領域R3の検出温度値は領域R1,R2,R4~R6の検出温度値に比べて高い速度で低下する。それにより、領域R3の検出温度値の勾配は領域R1,R2,R4~R6の検出温度値の勾配よりも大きい。また、ヒータHeのオフの時点から予め定められた時間の経過時点t3での領域R3の検出温度値は領域R1,R2,R4~R6の検出温度値よりも低い。さらに、領域R3の検出温度値は曲線状に低下している。この場合、領域R3から領域R2,R4,R6へ熱が移動していると考えられる。その結果、領域R3の実温度は領域R1,R2,R4~R6の実温度よりも高いと判定される。
【0061】
図6の例では、時点t2から領域R1,R2,R4~R6の検出温度値がほぼ等しい勾配で直線状に低下する。一方、領域R3の検出温度値は領域R1,R2,R4~R6の検出温度値に比べて図5の例よりも高い速度で低下する。それにより、領域R3の検出温度値の勾配は領域R1,R2,R4~R6の検出温度値の勾配よりもさらに大きい。また、ヒータHeのオフの時点から予め定められた時間の経過時点t3での領域R3の検出温度値は領域R1,R2,R4~R6の検出温度値よりもさらに低い。また、領域R3の検出温度値は曲線状に低下している。この場合、領域R3から領域R2,R4,R6へ図5の場合よりも多くの熱が移動していると考えられる。その結果、領域R3の実温度は領域R1,R2,R4~R6の実温度よりもさらに高いと判定される。
【0062】
(4)温度均一性判定動作
図7および図8は、図3の制御部40の温度均一性判定動作の一例を示すフローチャートである。まず、基板Wの熱処理時にヒータ制御部410は、図2の熱処理プレート10の複数の領域R1~R6に設けられた複数のヒータHeに電流を供給する(ステップS1)。温度換算部430は、複数の領域R1~R6に設けられた温度センサSeの出力値をそれぞれ検出温度値に変換する。
【0063】
検出温度値取得部440は、温度換算部430により得られた複数の領域R1~R6の検出温度値を取得する(ステップS2)。ヒータ制御部410は、検出温度値取得部440により取得された複数の領域R1~R6の検出温度値が目標温度値に一致するように、複数の領域R1~R6に設けられた複数のヒータHeに供給される電流を制御する(ステップS3)。
【0064】
ここで、ヒータ制御部410は、熱処理の終了が指示されたか否かを判定する(ステップS4)。熱処理の終了が指示されていない場合、ヒータ制御部410は、ステップS1に戻る。これにより、熱処理が継続される。熱処理の終了が指示された場合、ヒータ制御部410は、温度均一性判定動作の開始が指示されたか否かを判定する(ステップS5)。温度均一性判定動作の開始が指示されていない場合、ヒータ制御部410は、複数の領域R1~R6に設けられたヒータHeへの電流の供給を停止または低減する(ステップS9)。それにより、熱処理が終了する。
【0065】
ステップS5において、温度均一性判定動作の開始が指示された場合、ヒータ制御部410は、複数の領域R1~R6に設けられたヒータHeへの電流の供給を停止または低減する(ステップS6)。検出温度値取得部440は、温度換算部430により得られた複数の領域R1~R6の検出温度値を取得する(ステップS7)。温度変化記憶部450は、検出温度値取得部440により取得された複数の領域R1~R6の検出温度値の時間的な変化を記憶する(ステップS8)。
【0066】
温度変化取得部460は、温度変化記憶部450に記憶された複数の領域R1~R6の検出温度値の変化を取得する(ステップS10)。判定部470は、温度変化取得部460により取得された一部の領域の検出温度値の変化の態様が他の領域の検出温度値の変化の態様と異なるか否かを判定する(ステップS11)。
【0067】
一部の領域の検出温度値の変化の態様が他の領域の検出温度値の変化の態様と異なる場合、表示制御部480は、警告を表示部50に表示させる(ステップS12)。このとき、表示制御部480は、他の領域と異なる実温度を有する領域を示す情報を表示部50に表示させてもよい。
【0068】
補正情報算出部490は、補正情報を算出する(ステップS13)。補正部500は、補正情報算出部490により算出された補正情報を用いて他の領域と異なる実温度を有する領域の温度センサの出力値と検出温度値との関係を補正する(ステップS14)。それにより、温度均一性判定処理が終了する。
【0069】
一部の領域の検出温度値の変化の態様が他の領域の検出温度値の変化の態様と所定の許容範囲内で等しい場合、表示制御部480は、全ての領域R1~R6の実温度が均一であることを表示部50に表示させる(ステップS15)。
【0070】
(5)実施の形態の効果
本実施の形態における熱処理装置100においては、温度均一性判定動作時に、複数の領域R1~R6のヒータHeがオフされ、複数の領域R1~R6の検出温度値の低下の態様に基づいて、一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かが判定される。この場合、熱処理プレート10の複数の領域R1~R6の温度の均一性の判定のために温度測定用基板が不要となる。その結果、熱処理プレート10上の温度分布が均一であるか否かを短時間で容易に検出することが可能になる。
【0071】
本実施の形態では、温度均一性判定動作における検出温度値の変化の態様は、複数の領域R1~R6の検出温度値の変化の勾配、ヒータHeのオフの時点から予め定められた時間の経過時点の複数の領域R1~R6の検出温度値、またはヒータHeのオフの時点からの複数の領域R1~R6の検出温度値の変化の形状を含む。この場合、判定部470は、簡単な方法により複数の領域R1~R6の一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なるか否かを判定することが可能になる。それにより、判定部470の処理の複雑化が抑制される。
【0072】
さらに、本実施の形態では、熱処理プレート10上の温度分布が一定であるか否かの検出から温度センサSeの補正までを自動的に行うことが可能になる。その結果、簡単な構成で熱処理装置100のメンテナンスに要する時間を削減することが可能になる。
【0073】
また、本実施の形態では、一部の領域の検出温度値の変化の態様が他の領域の検出温度値の変化の態様と異なる場合、表示部50に警告が表示されるので、使用者は、熱処理プレート10の温度分布が均一でないことを容易に認識することができる。
【0074】
(6)他の実施の形態
上記実施の形態において、温度均一性判定動作は、使用者の操作または外部からの指令信号に基づいて行われるが定期的な温度均一性判定動作が自動的に行われてもよい。また、温度均一性判定動作は、基板Wの熱処理の終了時に行われてもよく、熱処理装置100による基板Wの熱処理が行われない期間に行われてもよい。この場合、温度均一性判定動作を行うための追加の時間が不要となるので、基板Wの熱処理におけるダウンタイムが低減される。
【0075】
また、上記実施の形態において、温度変化取得部460により取得された一部の領域の検出温度値の変化の態様が他の領域の検出温度値の変化の態様と異なる場合、警告が表示部50に表示されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、警告がランプの点灯等により作業者に報知されてもよく、または警告が音声により作業者に報知されてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態において、熱処理装置100の熱処理プレート10の一部の領域の検出温度値の変化の態様が他の領域の検出温度値の変化の態様と異なる場合、補正部500は、補正情報算出部490により算出された補正情報を用いて他の領域と異なる実温度を有する領域の温度センサの出力値と検出温度値との関係を補正するが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の熱処理装置100を含む基板処理装置において、熱処理装置100の熱処理プレート10の一部の領域の検出温度値の変化の態様が他の領域の検出温度値の変化の態様と異なる場合、当該熱処理装置100の使用を停止してもよい。また、当該熱処理装置100の使用の停止以降においては、当該熱処理装置100とは異なる他の熱処理装置100が使用されてもよい。
【0077】
さらに、上記実施の形態において、熱処理プレート10は、図2の複数の領域R1~R6に区分されるが、熱処理プレート10は、任意の形状および任意の数の複数の領域に区分されてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態において、熱処理装置100は、加熱装置であり、熱処理プレート10は加熱プレートであるが、熱処理装置100は、冷却装置であってもよく、熱処理プレート10は、冷却プレートであってもよい。
【0079】
また、熱処理プレート10の一部の領域の実温度が他の領域の実温度と異なる場合に一部の領域の検出温度値の変化の態様と他の領域における変化の態様とが等しくなるように一部の領域に対応する温度センサSeの出力値と検出温度値との関係が補正されなくてもよい。この場合、使用者は、警告により熱処理プレート10の温度分布の不均一性を認識することができるので、例えば温度測定用基板を用いて各領域の温度センサSeの出力値と検出温度値との関係を補正してもよい。
【0080】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、複数のヒータHeが複数の熱処理部の例であり、温度換算部430が変換部の例であり、ヒータ制御部410が制御部の例であり、表示部50が報知部の例である。
【符号の説明】
【0081】
10…熱処理プレート,20…温度センサ群,20a…温度センサ群,30…ヒータ群,30a…ヒータ群,40…制御部,50…表示部,100…熱処理装置,410…ヒータ制御部,420…判定開始指令部,430…温度換算部,440…検出温度値取得部,450…温度変化記憶部,460…温度変化取得部,470…判定部,480…表示制御部,490…補正情報算出部,500…補正部,He…ヒータ,OF…オフセット値,R1~R6…領域,Se…温度センサ,W…基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8