(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】空気清浄装置、空気清浄方法及び空気清浄プログラム
(51)【国際特許分類】
A61L 9/00 20060101AFI20250218BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20250218BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20250218BHJP
【FI】
A61L9/00 Z
F24F7/007 B
F24F11/56
(21)【出願番号】P 2021040523
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 雄介
(72)【発明者】
【氏名】恒次 創
(72)【発明者】
【氏名】塚本 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】高長 晶
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/170289(WO,A1)
【文献】特開2020-200998(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199295(WO,A1)
【文献】特開平09-048565(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2115880(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00-12/14
F24F 7/00-7/10
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の空気を浄化する空気清浄機構と、
近距離無線通信機能を備えた周囲の電子機器との間で近距離無線通信を行う近距離無線部と、
前記近距離無線部を通信制御する通信制御部と、
周囲の各電子機器との間における前記近距離無線通信の受信電波強度に基づいて、各前記電子機器との間の離間距離を検出する距離検出部と、
前記受信電波強度に基づいて、各前記電子機器の移動方向を検出する移動方向検出部と、
前記距離検出部で前記離間距離が検出された各前記電子機器のうち、前記離間距離が所定の距離内の電子機器の数が所定数以上となった際に、前記空気清浄機構を駆動制御し、前記離間距離が前記所定の距離内の前記電子機器の数が所定数未満となった際に、前記空気清浄機構を停止制御する駆動制御部と、
を有
し、
前記駆動制御部は、前記移動方向検出部で検出された各前記電子機器の移動方向に基づいて、所定時間内に前記離間距離が所定の距離内となる電子機器を予測し、予測した電子機器を、前記離間距離が所定の距離内の電子機器の数に計上する
空気清浄装置。
【請求項2】
周囲の空気を浄化する空気清浄機構と、
近距離無線通信機能を備えた周囲の電子機器との間で近距離無線通信を行う近距離無線部と、
前記近距離無線部を通信制御する通信制御部と、
周囲の各電子機器との間における前記近距離無線通信の受信電波強度に基づいて、各前記電子機器との間の離間距離を検出する距離検出部と、
前記距離検出部で前記離間距離が検出された各前記電子機器のうち、前記離間距離が所定の距離内の電子機器の数が所定数以上となった際に、前記空気清浄機構を駆動制御し、前記離間距離が前記所定の距離内の前記電子機器の数が所定数未満となった際に、前記空気清浄機構を停止制御する駆動制御部と、
を有し、
前記駆動制御部は、前記離間距離が所定の第1の距離内の電子機器が所定数以上となった際に、前記空気清浄機構を駆動制御し、また、前記第1の距離内の電子機器が所定数未満であった場合でも、前記離間距離が前記第1の距離よりも短い第2の距離内に少なくとも一つの電子機器が位置している場合は、前記空気清浄機構を駆動制御する
空気清浄装置。
【請求項3】
前記受信電波強度に基づいて、各前記電子機器の移動方向を検出する移動方向検出部を、さらに備え、
前記駆動制御部は、前記移動方向検出部で検出された各前記電子機器の移動方向に基づいて、所定時間内に前記離間距離が所定の距離内となる電子機器を予測し、予測した電子機器を、前記離間距離が所定の距離内の電子機器の数に計上すること
を特徴とする請求項
2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記距離検出部で前記距離が検出された各前記電子機器のうち、前記離間距離が所定の距離内の電子機器が所定数以上となった際に、所定の報知動作を行うように報知部を報知制御し、前記離間距離が前記所定の距離内の前記電子機器の数が所定数未満となった際に、前記報知部の報知動作を停止制御する報知制御部を、さらに備えること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気清浄装置。
【請求項5】
空気清浄装置で実行される空気清浄方法であって、
通信制御部が、近距離無線通信機能を備えた周囲の電子機器との間で近距離無線通信を行うように近距離無線部を通信制御する通信制御ステップと、
距離検出部が、周囲の各電子機器との間における前記近距離無線通信の受信電波強度に基づいて、各前記電子機器との間の離間距離を検出する距離検出ステップと、
移動方向検出部が、前記受信電波強度に基づいて、各前記電子機器の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、
駆動制御部が、前記距離検出部で前記離間距離が検出された各前記電子機器のうち、前記離間距離が所定の距離内の電子機器の数が所定数以上となった際に、周囲の空気を浄化する空気清浄機構を駆動制御し、前記離間距離が前記所定の距離内の前記電子機器の数が所定数未満となった際に、前記空気清浄機構を停止制御する駆動制御ステップと、
を
含み、
前記駆動制御ステップは、前記移動方向検出ステップで検出された各前記電子機器の移動方向に基づいて、所定時間内に前記離間距離が所定の距離内となる電子機器を予測し、予測した電子機器を、前記離間距離が所定の距離内の電子機器の数に計上する
空気清浄方法。
【請求項6】
空気清浄装置で実行される空気清浄方法であって、
通信制御部が、近距離無線通信機能を備えた周囲の電子機器との間で近距離無線通信を行うように近距離無線部を通信制御する通信制御ステップと、
距離検出部が、周囲の各電子機器との間における前記近距離無線通信の受信電波強度に基づいて、各前記電子機器との間の離間距離を検出する距離検出ステップと、
駆動制御部が、前記距離検出部で前記離間距離が検出された各前記電子機器のうち、前記離間距離が所定の距離内の電子機器の数が所定数以上となった際に、周囲の空気を浄化する空気清浄機構を駆動制御し、前記離間距離が前記所定の距離内の前記電子機器の数が所定数未満となった際に、前記空気清浄機構を停止制御する駆動制御ステップと、
を含み、
前記駆動制御ステップは、前記離間距離が所定の第1の距離内の電子機器が所定数以上となった際に、前記空気清浄機構を駆動制御し、また、前記第1の距離内の電子機器が所定数未満であった場合でも、前記離間距離が前記第1の距離よりも短い第2の距離内に少なくとも一つの電子機器が位置している場合は、前記空気清浄機構を駆動制御する
空気清浄方法。
【請求項7】
コンピュータを、
近距離無線通信機能を備えた周囲の電子機器との間で近距離無線通信を行うように近距離無線部を通信制御する通信制御部と、
周囲の各電子機器との間における前記近距離無線通信の受信電波強度に基づいて、各前記電子機器との間の離間距離を検出する距離検出部と、
前記受信電波強度に基づいて、各前記電子機器の移動方向を検出する移動方向検出部と、
前記距離検出部で前記離間距離が検出された各前記電子機器のうち、前記離間距離が所定の距離内の電子機器の数が所定数以上となった際に、周囲の空気を浄化する空気清浄機構を駆動制御し、前記離間距離が前記所定の距離内の前記電子機器の数が所定数未満となった際に、前記空気清浄機構を停止制御する駆動制御部
と、
として機能さ
せ、
前記駆動制御部は、前記移動方向検出部で検出された各前記電子機器の移動方向に基づいて、所定時間内に前記離間距離が所定の距離内となる電子機器を予測し、予測した電子機器を、前記離間距離が所定の距離内の電子機器の数に計上すること
を特徴とする空気清浄プログラム。
【請求項8】
コンピュータを、
近距離無線通信機能を備えた周囲の電子機器との間で近距離無線通信を行うように近距離無線部を通信制御する通信制御部と、
周囲の各電子機器との間における前記近距離無線通信の受信電波強度に基づいて、各前記電子機器との間の離間距離を検出する距離検出部と、
前記距離検出部で前記離間距離が検出された各前記電子機器のうち、前記離間距離が所定の距離内の電子機器の数が所定数以上となった際に、周囲の空気を浄化する空気清浄機構を駆動制御し、前記離間距離が前記所定の距離内の前記電子機器の数が所定数未満となった際に、前記空気清浄機構を停止制御する駆動制御部と、
として機能させ、
前記駆動制御部は、前記離間距離が所定の第1の距離内の電子機器が所定数以上となった際に、前記空気清浄機構を駆動制御し、また、前記第1の距離内の電子機器が所定数未満であった場合でも、前記離間距離が前記第1の距離よりも短い第2の距離内に少なくとも一つの電子機器が位置している場合は、前記空気清浄機構を駆動制御すること
を特徴とする空気清浄プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄装置、空気清浄方法及び空気清浄プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日において、空気中の汚染物質である、例えばカビ、浮遊菌、ウイルス、花粉及びアレルゲン成分となるダニ等を除去又は不活化した空間を提供する空気清浄装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2005-261713号公報)に開示されている空気浄化装置は、正イオン及び負イオンを放出する空気浄化装置を、ユーザの帽子に取り付ける。この帽子に取り付けられた空気浄化装置は、ユーザの体に取り付けられた歩数計と通信する。そして、空気浄化装置は、歩数計と通信することで検出した、停止状態、歩行状態又は走行状態等のユーザの動作状態に基づいて、正イオン及び負イオンの放出制御を行う。
【0004】
これにより、例えばウォーキング中又はジョギング中において、ユーザの顔面近傍の空気中に存在するカビ、浮遊菌、ウイルス、花粉及びダニ等のアレルゲン成分を除去又は不活化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、近年において、ウイルスによる感染拡大防止のために、「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」の確保が求められている。
【0007】
しかし、例えば電車の中又は商業施設の中等のように、人が多く集まる場所では、社会的距離の確保が困難な場合がある。また、ユーザが気づかないうちに、他のユーザとの間の距離が接近している場合もある。このような場合でも、空気が浄化された空間を提供可能な空気清浄装置の開発が望まれている。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、他のユーザ間の距離に応じて動作して、空気を浄化した空間を提供可能とした空気清浄装置、空気清浄方法及び空気清浄プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、周囲の空気を浄化する空気清浄機構と、近距離無線通信機能を備えた周囲の電子機器との間で近距離無線通信を行う近距離無線部と、近距離無線部を通信制御する通信制御部と、周囲の各電子機器との間における近距離無線通信の受信電波強度に基づいて、各電子機器との間の離間距離を検出する距離検出部と、受信電波強度に基づいて、各電子機器の移動方向を検出する移動方向検出部と、距離検出部で離間距離が検出された各電子機器のうち、離間距離が所定の距離内の電子機器の数が所定数以上となった際に、空気清浄機構を駆動制御し、離間距離が所定の距離内の電子機器の数が所定数未満となった際に、空気清浄機構を停止制御する駆動制御部と、を有し、駆動制御部は、移動方向検出部で検出された各電子機器の移動方向に基づいて、所定時間内に離間距離が所定の距離内となる電子機器を予測し、予測した電子機器を、離間距離が所定の距離内の電子機器の数に計上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、他のユーザ間の距離に応じて動作して、空気を浄化した空間を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態となる空気清浄システムのシステム構成図である。
【
図2】
図2は、実施の形態となる空気清浄システムに設けられている空気清浄装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、空気清浄装置に設けられている空気清浄機構のブロック図である。
【
図4】
図4は、空気清浄装置の機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、空気清浄装置の空気清浄動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の空気清浄装置、空気清浄システム、空気清浄方法及び空気清浄プログラムを適用した実施の形態の空気清浄システムの説明をする。
【0013】
(システム構成)
図1は、実施の形態の空気清浄システムのシステム構成を示す図である。この
図1に示すように、実施の形態の空気清浄システムは、近接する他のユーザが所持する空気清浄装置2、携帯端末装置3及び電子機器4等との間の距離(離間距離)に応じて動作することによって、他のユーザとの間の距離(離間距離)に応じて空気を浄化した空間を形成する空気清浄装置1を備えている。また、実施の形態の空気清浄システムは、例えば他のユーザの空気清浄装置2、携帯端末装置3及び電子機器4等を備えている。他のユーザの空気清浄装置2、携帯端末装置3及び電子機器4は、それぞれ近距離無線通信機能を備えており、空気清浄装置1との間で近距離無線通信を行う。
【0014】
(空気清浄装置の構成)
空気清浄装置1は、据え置き型又は携帯型となっている。携帯型とする場合は、例えば首にかける紐で、空気清浄装置1をユーザの顔の付近に位置させて携帯させることが好ましい。据え置き型とする場合は、部屋の所望の場所に載置してもよいし、粘着テープ又は螺子等で壁、天井又は床等に固定してもよい。以下、一例として、空気清浄装置1は、携帯型の空気清浄装置であることとして説明を進める。
【0015】
図2は、空気清浄装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。この
図2に示すように、空気清浄装置1は、空気清浄機構11、制御部12、記憶部13、表示部14、電源部15、近距離無線部16、電源操作部17及びスピーカ部18を備えている。表示部14及びスピーカ部18は、報知部の一例である。
【0016】
一例ではあるが、空気清浄機構11としては、いわゆる光触媒方式の空気清浄機構が設けられている。空気清浄機構11は、発光ダイオード等の光源から光が照射される光触媒シートの表面に吸着した空気中の酸素と水分とを光反応によって分解し、反応性の高いスーパーオキサイドアニオン(O2-)及びOHラジカル(・OH)とを生成する。そして、空気清浄機構11は、このスーパーオキサイドアニオン(O2-)及びOHラジカル(・OH)により、臭気成分の分解、雑菌の除去等を行う。
【0017】
なお、空気清浄機構11としては、例えばコロナ放電方式、イオン又はオゾンの発生装置等の、光触媒装置以外の空気清浄機構を用いてもよい。
【0018】
制御部12は、記憶部13に記憶されている空気清浄プログラムに基づいて動作することで、他のユーザとの間の距離に応じて空気清浄機構11を駆動する。表示部14は、他のユーザ間の距離が所定以下の距離となったことを示すメッセージ等を表示する。電源部15は、例えばボタン型の電池となっており、空気清浄装置1の各部に電力を供給する。
【0019】
近距離無線部16は、他のユーザの空気清浄装置2~電子機器4との間で、例えばブルートゥース(登録商標)又はWi-Fi(登録商標)等の近距離無線通信を行う。なお、以下、一例として、近距離無線部16は、低消費電力での通信が可能なBLE通信方式(BLE:Bluetooth(登録商標) Low Energy)で近距離無線通信を行うこととして説明を進める。
【0020】
電源操作部17は、手動操作を行う電源オンオフスイッチとなっている。制御部12が、この電源操作部17のオン操作を検出することで、空気清浄装置1が空気清浄動作を可能な状態に制御される。そして、空気清浄装置1に対する所定の離間距離内に所定数以上の他のユーザの電子機器が検出された際に、制御部12により、空気清浄機構11が駆動制御され、空気清浄動作が行われる。また、空気清浄装置1に対する所定の離間距離内に位置する他のユーザの電子機器が、所定数未満となった際に、制御部12により、空気清浄機構11の空気清浄動作が停止制御される。スピーカ部18は、他のユーザとの間の距離が所定以下の距離となったことを示す音声メッセージ又は警告音等を出力する。
【0021】
(空気清浄機構の構成及び動作)
図3は、空気清浄機構11の構成を示すブロック図である。この
図3に示すように、空気清浄機構11は、吸気口21、送気ファン22、光触媒シート23、脱臭フィルタ24、吹き出し口25及び光源26を備える。
【0022】
このような空気清浄機構11は、送気ファン22が回転駆動されることで、ユーザの周辺の空気が、吸気口21を介して吸気される。光触媒シート23としては、例えば酸化亜鉛(ZnO)、硫化カドミウム(CdS)、三酸化タングステン(WO3)、二酸化チタン(TiO2)等で形成されたものを用いることができる。
【0023】
光触媒シート23は、メッシュ状に形成されており、送気ファン22により送気された空気を通過させる。光触媒シート23は、光源26から照射される光により機能し、表面に吸着した空気中の酸素及び水分を光反応で分解し、反応性の高いスーパーオキサイドアニオン(O2-)及びOHラジカル(・OH)を生成する。このスーパーオキサイドアニオン(O2-)及びOHラジカル(・OH)は、例えば酸化触媒、低温触媒又は活性炭等で形成された脱臭フィルタ24により脱臭され、吹き出し口25を介してユーザの顔近辺に送出される。これにより、ユーザの周囲の空気の除菌及び脱臭等を行うことができる。
【0024】
(空気清浄装置の機能構成)
次に、
図4に、空気清浄装置1の制御部12が、記憶部13に記憶されている空気清浄プログラムを実行することで実現される各機能の機能ブロック図を示す。この
図4に示すように、制御部12は、空気清浄プログラムを実行することで通信制御部31、距離検出部32、移動方向検出部33、電源制御部34、駆動判定部35、空気清浄駆動制御部36及び報知制御部37の各機能を実現する。駆動判定部35及び空気清浄駆動制御部36は、駆動制御部の一例である。
【0025】
通信制御部31は、空気清浄装置1の電源操作部17がオン操作されている間、近距離無線通信機能を備えた周囲の電子機器との間の近距離無線通信における受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を検出するように、近距離無線部16を通信制御する。距離検出部32は、通信制御部31により検出された周囲の電子機器との間の近距離無線通信における受信信号強度に基づいて、各電子機器との間の距離(=他のユーザとの間の離間距離)を検出する。
【0026】
移動方向検出部33は、各電子機器の移動に伴う受信信号強度の変動に基づいて、各電子機器の移動方向を検出する。電源制御部34は、電源操作部17がオン操作されている間において、駆動判定部35で空気清浄機構11を駆動状態とする判定結果が得られた際に、電源部15の電力を各部に供給して空気清浄機構11を駆動状態とする。また、電源制御部34は、駆動判定部35で空気清浄機構11を非駆動状態とする判定結果が得られた際、及び、電源操作部17がオフ操作された際に、各部に対する電力の供給を停止して、空気清浄機構11を非駆動状態とする。
【0027】
駆動判定部35は、距離検出部32が検出した各電子機器との間の距離、及び、移動方向検出部33が検出した各電子機器の移動方向(向き)に基づいて、他のユーザとの間の距離が所定以下の距離となったことを検出するとともに、空気清浄機構11を動作状態とするか否かの判定を行う。空気清浄駆動制御部36は、駆動判定部35の判定結果に基づいて、空気清浄機構11の駆動制御及び停止制御を行う。報知制御部37は、駆動判定部35が他のユーザとの間の距離が所定以下の距離となったことを検出した際に、表示部14を介して所定のメッセージ等を表示制御する。また、報知制御部37は、駆動判定部35が他のユーザ間の距離が所定以下の距離となったことを検出した際に、スピーカ部18を介して所定の音声メッセージ等を出力制御する。
【0028】
なお、
図4に示した通信制御部31~報知制御部37は、それぞれ空気清浄プログラムにより、ソフトウェアで実現することとした。しかし、これらのうち全部又は一部を、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアで実現してもよい。
【0029】
また、空気清浄プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイル情報でCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。また、空気清浄プログラムは、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、半導体メモリ等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。また、空気清浄プログラムは、インターネット等のネットワーク経由でインストールするかたちで提供してもよい。また、空気清浄プログラムは、機器内のROM等に予め組み込んで提供してもよい。
【0030】
(空気清浄動作)
図5は、空気清浄装置1の制御部12が、記憶部13に記憶されている空気清浄プログラムに基づいて動作することで実行される空気清浄動作のフローチャートである。このフローチャートは、電源操作部17がオン操作されることでスタートなり、ステップS1から処理が開始される。ステップS1では、通信制御部31が、周囲の電子機器とBLE通信を行う。ステップS2では、距離検出部32が、周囲の各電子機器とのBLE通信における受信信号強度(RSSI値)をそれぞれ検出する。
【0031】
各電子機器から送出された電波は距離に伴い減衰する。このため,各電子機器のRSSI値及び距離との間には、負の相関関係がある。距離検出部32は、
RSSI:計測したRSSI値(dBm)
RSSI0:単位RSSI値(dBm)
N:RSSI減衰定数(理想的には20)
として、以下の数式に基づいて、各電子機器との間の距離D(m)を算出する。なお,RSSI減衰定数Nは、場所毎に適した値を用いることが好ましい。
【0032】
D=10-(RSSI-RSSI0)/N
【0033】
次に、ステップS3において、移動方向検出部33は、移動により各電子機器のRSSI値の変化に基づいて、各電子機器の移動方向(向き)を検出する。具体的には、空気清浄装置1から電子機器が遠ざかる方向に移動した場合、移動した方向に応じてRSSI値が異なる減衰の仕方を示す。反対に、空気清浄装置1に対して電子機器が近づく方向に移動した場合、移動した方向に応じてRSSI値が異なる増加の仕方を示す。移動方向検出部33は、このような各電子機器のRSSI値の増減に基づいて、各電子機器の移動方向を検出する。
【0034】
或いは、移動方向検出部33は、受信角度(AoA:Angle of Arrival)又は放射角度(AoD:Angle of Departure)に基づいて、各電子機器の移動方向(向き)を検知してもよい。
【0035】
受信角度(AoA)による方向検知手法においては、方向が特定される側の各電子機器が、リアルタイム位置情報システム(RTLS)ソリューションにおけるタグのように、単一のアンテナから特殊な方向検知信号を発信する。移動方向検出部33は、RTLSソリューションにおけるロケータのように、複数のアンテナを備えている。各電子機器側と移動方向検出部33側のアンテナ間の距離はそれぞれ異なる。このため、各電子機器から発信された信号が、移動方向検出部33の複数のアンテナに到達すると、移動方向検出部33は、アンテナ毎に異なる位相の信号を検知する。移動方向検出部33は、アクティブなアンテナを切り替えながら、信号の同相及び直交位相(IQ)サンプルを取得する。そして、移動方向検出部33は、取得したIQサンプルに基づき、各電子機器の相対的な方向を計算する。
【0036】
これに対して、放射角度(AoD)による方向検知手法では、方向を特定される側の電子機器が、屋内測位システム(IPS)ソリューションにおけるロケータビーコンのように、複数のアンテナが配置されたアレイアンテナから特殊な信号を発信する。移動方向検出部33は、IPSソリューションにおける携帯電話のように、単一のアンテナで、各電子機器から発信された複数の信号を受信し、上述のIQサンプルを取得する。移動方向検出部33は、このIQサンプルに基づき、各電子機器との間の相対的な方向を計算する。
【0037】
以上、移動方向検出部33における、いくつかの移動方向検知手法を説明したが、周囲の各電子機器の移動方向が検出できれば、移動方向検出部33は、どのような手法を用いて各電子機器の移動方向を検出してもよい。
【0038】
次に、ステップS4において、駆動判定部35は、距離検出部32が検出した各電子機器との間の離間距離に基づいて、例えば空気清浄装置1との間の離間距離が2m以内等の所定の距離内(第1の距離の一例)に位置する電子機器の数を検出する。そして、駆動判定部35は、所定の距離内に位置する電子機器の数が、例えば3つ等の所定数以上であるか否かを判別する。
【0039】
すなわち、実施の形態の空気清浄システムでは、空気清浄装置1の周囲の電子機器の数を、ユーザの数として認識している。このため、空気清浄装置1との間の距離が2m以内に位置する電子機器の数を3つと検出した場合、空気清浄装置1を所有するユーザの半径2m以内に3人の他のユーザが存在するとして認識する。
【0040】
ここで、現在、空気清浄装置1との間の距離が所定以上離れている電子機器であっても、例えば空気清浄装置1の方向に向かって移動している電子機器は、短時間のうちに、空気清浄装置1との間の距離が2m以内の位置まで移動する可能性がある。このため、駆動判定部35は、一定時間に対するRSSI値の変動量に基づいて移動速度及び移動距離を算出し、その電子機器が空気清浄装置1から2mの距離内に位置する時間を予測する。この予測した時間が、例えば10秒等の所定時間以内であった場合、駆動判定部35は、その電子機器を、空気清浄装置1との間の距離が2m以内等の所定の距離内に位置する電子機器の数として計上する。
【0041】
このような予測を含めた周囲の電子機器の数の検出を行うことで、将来的に増加する電子機器も数に含めて、周囲の電子機器の正確な数を事前に算出でき、空気清浄機構11を必要なタイミングでの駆動制御が可能となる。
【0042】
次に、駆動判定部35で、空気清浄装置1から所定の範囲内に所定数以上の電子機器(他のユーザ)が存在すると判別された場合(ステップS4:Yes)、ステップS5に進む。一方、空気清浄装置1の周囲の電子機器の数が所定数未満であると判別された場合(ステップS4:No)、処理がステップS11に進む。ステップS11では、駆動判定部35が、空気清浄装置1の周囲の電子機器の数が所定数未満であるが、空気清浄装置1からの距離が例えば90cm以下等の極近距離(第2の距離の一例:第1の距離>第2の距離)の電子機器が、一つでも存在するか否かを判別する(ステップS11)。極近距離の電子機器が存在しないと判別した場合は(ステップS11:No)、ステップS1に処理が戻り、再度、上述した周囲の電子機器の数の検出動作が行われる。
【0043】
これに対して、駆動判定部35が、空気清浄装置1の周囲の電子機器の数が所定数未満であるが、空気清浄装置1から極近距離に位置する電子機器が一つでも存在すると判別した場合(ステップS11:Yes)、処理がステップS5に進む。すなわち、この場合は、空気清浄装置1を所有するユーザから半径90cm以内の極近接した位置に、他のユーザが存在することを示している。このため、空気清浄装置1を所有するユーザの周囲の空気を浄化することが好ましい。このようなことから、処理がステップS5に進む。
【0044】
このように、空気清浄装置1から所定の範囲内に所定数以上の電子機器(他のユーザ)が存在すると判別した場合(ステップS4:Yes)、及び、空気清浄装置1から極近距離に一つでも電子機器(他のユーザ)が存在すると判別した場合(ステップS11:Yes)、処理がステップS5に進む。ステップS5では、報知制御部37が、例えば「周囲に多数のユーザ又は少数の極近接しているユーザを確認しました。社会的距離の確保をお願いします。空気清浄動作を開始します。」等の空気清浄動作に関連するメッセージを表示部14に表示制御する。また、これと共に報知制御部37は、「周囲に多数のユーザ又は少数の極近接しているユーザを確認しました。社会的距離の確保をお願いします。空気清浄動作を開始します。」等の空気清浄動作に関連する音声メッセージ又は電子音等を、スピーカ部18を介して出力制御する。
【0045】
これにより、ユーザは、自分の周囲に他のユーザが位置していることで、空気清浄動作が開始されることを認識することができる。また、空気清浄装置1を所有するユーザの周囲の他のユーザに対して、社会的距離の確保を意識させることができる。
【0046】
さらに、空気清浄装置1にバイブレータを設け、周囲に多数のユーザが存在する場合、及び、周囲に少数の極近接しているユーザが存在する場合に、バイブレータを振動駆動してもよい。この場合、周囲のユーザの存在を、バイブレータの振動により体感的に認識できる。このため、例えば目が不自由なユーザであっても、周囲のユーザの存在に気付くことができ、その場から距離を取る、又は、その場から移動するための補助を介護者等にお願いする等の、適切な対処を行うことができる。
【0047】
なお、このような表示制御、音声出力制御及び振動制御のうち、いずれか一つ又は二つを行ってもよい。また、発光ダイオード等の点灯制御又は点滅制御を単独で行い又は上述の表示制御及び(又は)音声出力制御等と併用することで、周囲の他のユーザの存在及び空気清浄動作が開始されることを、空気清浄装置1のユーザに認識させることができる。
【0048】
さらに、上述の表示制御及び音声出力制御の両方の制御を行わないようにしてもよい。この場合、空気清浄装置1を所有するユーザは、空気清浄動作が開始されることで、近くに多数のユーザが存在することを認識できる。このため、空気清浄装置1を所有するユーザは、自らの判断により、人気の少ない場所に移動することができる。
【0049】
次に、このような報知制御(ステップS5)が行われると、空気清浄駆動制御部36は、空気清浄機構11を駆動制御する(ステップS6)。これにより、光触媒シート23により反応性の高いスーパーオキサイドアニオン(O2-)及びOHラジカル(・OH)が生成されてユーザの顔近辺に送出される。そして、ユーザの周囲の空気の除菌及び脱臭等が行われ、空気清浄装置1のユーザの周囲の空間の空気が清浄化される。
【0050】
次に、駆動判定部35は、距離検出部32及び移動方向検出部33の各検出出力に基づいて、空気清浄装置1の周囲の電子機器の数が、所定数未満となったか否かを判別する(ステップS7)。空気清浄装置1の周囲の電子機器の数が所定数以上の場合は(ステップS7:No)、ステップS12で電源操作部17のオフ操作が検出されないことを確認して(ステップS12:No)、ステップS5に処理を戻す。これにより、上述の報知制御及び空気清浄動作が継続して行われる。なお、ステップS12で、制御部12により電源操作部17のオフ操作が検出された場合は(ステップS12:Yes)、そのまま
図5のフローチャートに示す空気清浄動作が終了する。
【0051】
これに対して、空気清浄装置1の周囲の電子機器の数が、所定数未満となったものと判定すると(ステップS7:Yes)、駆動判定部35は、さらに、空気清浄装置1から所定の距離以下の極近距離に電子機器(他のユーザ)が存在するか否かを判別する(ステップS8)。空気清浄装置1の極近距離に他のユーザが存在する場合は(ステップS8:Yes)、ステップS5に処理が戻り、上述の報知制御及び空気清浄動作が継続して行われる。
【0052】
一方、空気清浄装置1の極近距離に他のユーザが存在しない場合は(ステップS8:No)、ステップS9において、報知制御部37が上述の報知制御を停止し、また、空気清浄駆動制御部36が、空気清浄機構11の駆動制御を停止する。そして、ステップS10で制御部12が、電源操作部17のオフ操作の有無を判別し、電源操作部17のオフ操作が検出された場合は(ステップS10:Yes)、そのまま
図5のフローチャートに示す空気清浄動作が終了となる。
【0053】
これに対して、電源操作部17のオフ操作が検出されない場合(ステップS10:No)、ステップS1に処理が戻り、電源操作部17のオフ操作が検出されるまでの間、上述の周囲のユーザ(電子機器)の数に応じた空気清浄動作が繰り返し行われる。
【0054】
なお、空気清浄駆動制御部36は、周囲の他のユーザの数に応じて、空気清浄機構11の送気ファン22の回転数を制御して、空気清浄機構11から送出される空気の風量を変更制御してもよい。この場合、空気清浄駆動制御部36は、周囲の他のユーザの数が多くなるに連れ、風量を多くするように、空気清浄機構11の送気ファン22の回転数を制御する。また、空気清浄駆動制御部36は、周囲の他のユーザの数が所定以下であっても、そのユーザとの間の距離が短くなるに連れ、風量を多くするように、空気清浄機構11の送気ファン22の回転数を制御する。これにより、周囲のユーザ数及び他のユーザとの間の距離に応じた風量で空気清浄化動作を行うことができる。
【0055】
(実施の形態の効果)
以上の説明から明らかなように実施の形態の空気清浄システムは、以下の効果を得ることができる。
【0056】
1.周囲のユーザの距離に応じて、自動的に稼働して空気清浄を行うことができる。このため、例えば電車の中又は商業施設の中等のように、社会的距離の確保が困難な場合でも。空気清浄装置1を所有するユーザの周囲の空気を浄化して、空気清浄装置1を所有するユーザがウイルス等に感染する不都合を防止できる。
【0057】
2.報知制御部37により、空気清浄装置1を所有するユーザに対して、周囲における他のユーザの存在、及び、空気清浄動作の開始を認識させることができる。また、周囲の他のユーザに対して、社会的距離の確保を意識させることができる。このため、例えば、自ら他のユーザとの社会的距離を確保することが難しい、身体的な障害があるユーザ又は子供の周囲において、報知制御部37が出力した音声メッセージ等を聞いた他のユーザが自主的に社会的距離を確保するように動いてくれることが期待できるため、身体的な障害があるユーザ又は子供でも、社会的距離の確保を容易とすることができる。
【0058】
3.周囲のユーザの距離が近くなった場合に空気清浄動作を行い、周囲のユーザの距離が離れた場合には、空気清浄動作を停止する。これにより、必要なときのみ空気清浄動作を行うことができ、電源部15の電力の消費を抑えることができる。また、近距離無線通信方式として、BLE通信方式の近距離無線通信を用いているため、近距離無線通信の電力消費も抑えることができる。このため、電力部15として小型軽量のボタン電池で十分な電力を確保でき、空気清浄装置1の小型軽量化を図ることができる。従って、空気清浄装置1の携帯性の向上を図ることができる。
【0059】
4.空気清浄機構11として、光触媒方式の空気清浄機構を用いることで、ユーザに対して安全性の高い空気清浄装置1を提供できる。
【0060】
最後に、上述の実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。
【0061】
例えば、上述の実施の形態の説明では、空気清浄装置1からの離間距離が第1の距離内において複数の電子機器(他のユーザ)が検出された際に空気清浄機構11を駆動制御することとした。しかし、空気清浄装置1からの離間距離が第1の距離内となる電子機器(他のユーザ)が、一つでも検出された場合は、空気清浄機構11を駆動制御してもよい。
【0062】
また、実施の形態及び実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1 空気清浄装置
2 他のユーザの空気清浄装置
3 携帯端末装置
4 近距離無線通信機能付き電子機器
11 空気清浄機構
12 制御部
13 記憶部
14 表示部
15 電源部
16 近距離無線部
17 電源操作部
18 スピーカ部
21 吸気口
22 送気ファン
23 光触媒シート
24 脱臭フィルタ
25 吹き出し口
26 光源
31 通信制御部
32 距離検出部
33 移動方向検出部
34 電源制御部
35 駆動判定部
36 空気清浄駆動制御部
37 報知制御部