(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20250218BHJP
【FI】
B60R21/264
(21)【出願番号】P 2021056203
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大空
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-151069(JP,A)
【文献】特許第5455932(JP,B2)
【文献】国際公開第2011/043314(WO,A1)
【文献】特開2010-260387(JP,A)
【文献】特開2015-189454(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102023101614(DE,A1)
【文献】特開2002-337655(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19813708(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のハウジングと、
前記ハウジングの一端に設けられ、ガス発生剤を点火する点火器と、
前記ハウジングの他端側に設けられたフィルタと、
前記ハウジングの内部において前記点火器と前記フィルタとの間に設けられ、前記ガス発生剤を内包する筒状部材と、
前記ハウジングの内部において前記筒状部材と前記フィルタとの間に設けられ、前記点火器側の端部に開口部が形成されている第1筒状部と、前記第1筒状部の前記フィルタ側に設けられ、前記フィルタの前記点火器側の端部に当接する環状の当接部と、
前記第1筒状部および前記当接部によって、前記筒状部材と前記フィルタとの間に形成された内部空間と、を有した仕切り部材と、
を備え、
前記第1筒状部は、内径が前記フィルタの内径よりも大きく、前記開口部が前記筒状部材の前記フィルタ側の端部に当接しており、
前記当接部の中央部には、孔部が形成されていることを特徴とするガス発生器。
【請求項2】
前記仕切り部材は、前記孔部の内周縁から延設され、外径が前記フィルタの内径以下である第2筒状部をさらに備え、
前記第2筒状部は、前記フィルタの内部に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記当接部は、前記第1筒状部から延設され、断面が前記第1筒状部側から前記フィルタ側にかけて縮径するテーパー形状のものであって、少なくとも一部が前記フィルタの内部に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関し、より特定的には、長尺円筒状の形状を有するいわゆるシリンダ型のガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガス発生剤を内包し、薄い厚みの仕切り板(中心部に穴が設けられている)を介してフィルタの一端部に接している密閉容器を、長尺円筒状のハウジング内に備えたガス発生器が公知となっている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1などのガス発生器においては、密閉容器のフィルタ側の端部の開裂強度(破裂圧)と、発生したガスのフィルタ内の流路の大きさ(以下、流路サイズ)とは、いずれもフィルタの内径又は仕切り板の中心部の穴の内径に依存することになる。すなわち、従来では、密閉容器のフィルタ側の端部の開裂強度と、流路サイズとは、別個に設計することができないものとなっていた。したがって、従来では、フィルタによる残渣捕集を含めたガス発生器の性能の微調整は容易ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、密閉容器のフィルタ側の端部の開裂強度と、流路サイズとの設計が別個にでき、従来よりも性能の微調整が容易なガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明のガス発生器は、長尺状のハウジングと、前記ハウジングの一端に設けられ、ガス発生剤を点火する点火器と、前記ハウジングの他端側に設けられたフィルタと、前記ハウジングの内部において前記点火器と前記フィルタとの間に設けられ、前記ガス発生剤を内包する筒状部材と、前記ハウジングの内部において前記筒状部材と前記フィルタとの間に設けられ、前記点火器側の端部に開口部が形成されている第1筒状部と、前記第1筒状部の前記フィルタ側に設けられ、前記フィルタの前記点火器側の端部に当接する環状の当接部と、を有した仕切り部材と、前記第1筒状部および前記当接部によって、前記筒状部材と前記フィルタとの間に形成された内部空間と、を備え、前記第1筒状部は、内径が前記フィルタの内径よりも大きく、前記開口部が前記筒状部材の前記フィルタ側の端部に当接しており、前記当接部の中央部には、孔部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
(2) 上記(1)のガス発生器において、前記仕切り部材は、前記孔部の内周縁から延設され、外径が前記フィルタの内径以下である第2筒状部をさらに備え、前記第2筒状部は、前記フィルタの内部に挿入されていることが好ましい。
【0008】
(3) 別の観点として、上記(1)のガス発生器において、前記当接部は、前記第1筒状部から延設され、断面が前記第1筒状部側から前記フィルタ側にかけて縮径するテーパー形状のものであって、少なくとも一部が前記フィルタの内部に挿入されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、密閉容器のフィルタ側の端部の開裂強度と、流路サイズとの設計が別個にでき、性能の調整が容易なガス発生器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】断面で表した本発明の実施形態に係るガス発生器の内部構造を示す模式図(一部省略)である。
【
図2】
図1の仕切り部材付近を拡大して示した模式図である。
【
図3】変形例に係るガス発生器の仕切り部材付近を拡大して示した模式図である。
【
図4】他の変形例に係るガス発生器に用いられるハウジングを示した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1を参照して、本発明の実施形態に係るシリンダ型のガス発生器の内部構造について説明する。
【0012】
(ガス発生器100の構成)
ガス発生器100は、長尺略円柱状の外形を有しており、ハウジング10と、ハウジング10の一方の開口端に取付けられているホルダ20と、ハウジング10の他方の開口端を閉塞するようにハウジング10の他端部に取付けられている閉塞部材12と、ガス発生剤31を内包する筒状の密閉容器34(筒状部材)と、発生したガスの残渣を捕集するフィルタ41と、フィルタ41と密閉容器34との間に設けられている仕切り部材36と、を含んでいる。
【0013】
ハウジング10は、周壁10a、10eを有し、軸方向の両端に開口を有する長尺の円筒状の部材からなる。閉塞部材12は、閉塞部材12の周面に周方向に向かって延びるように形成された環状溝部13を有している。また、ハウジング10の閉塞部材12が取付けられた側の端部近傍の周壁には、ガス噴出口11が設けられている。このガス噴出口11は、ガス発生器100の内部において発生したガスを外部に噴出するための孔であり、ハウジング10の周方向及び軸方向に沿って複数個設けられている。
【0014】
また、閉塞部材12は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等の金属製のものである。そして、
図1に示したように、ハウジング10の一方の開口端に閉塞部材12の一部が内挿された状態で、閉塞部材12の周面の環状溝部13に対応する部分のハウジング10の周壁10aを径方向内側に縮径させて(かしめて)、当該環状溝部13に係合させることにより、ハウジング10に対する閉塞部材12のかしめ固定が行なわれている。
【0015】
ホルダ20は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等の金属製であって、点火器50が嵌合するテーパー形状の嵌合部23と、外周面に周方向に向かって延びるように形成されたかしめ固定のための環状溝部22と、点火器50の保持位置と反対側において、点火器50に通電するための雌型コネクタ(不図示)が嵌合可能な嵌合部21と、を有している。なお、ホルダ20の外周面に設けられた環状溝部22に対応する部分のハウジング10の周壁10eを径方向内側に縮径させて(かしめて)当該環状溝部22に係合させることにより、ハウジング10に対するホルダ20のかしめ固定が行なわれている。
【0016】
なお、上述した通り、ホルダ20の嵌合部21には、雌型コネクタが形成される。この雌型コネクタは、ガス発生器100とは別途設けられる衝突検知手段からの信号を伝達するハーネスの雄型コネクタが接続される部位である。雌型コネクタには、リテーナ(不図示)が取付けられる。このリテーナは、ガス発生器100の搬送時等において静電放電等によってシリンダ型のガス発生器100が誤動作することを防止するために取付けられるものであり、エアバッグ装置への組付け段階においてハーネスの雄型コネクタが雌型コネクタに挿し込まれることによってその端子ピン52への接触が解除されるものである。
【0017】
図1に示すように、ハウジング10の軸方向の一端部(すなわち、ホルダ20寄りの部分)には、ガス発生剤31の点火手段としての点火器50が配置されている。なお、点火器50及び点火器50を固定するホルダ20は、後述する粒状のガス発生剤31を燃焼させるための火炎を発生させる点火手段としての機能を有している。
【0018】
図1に示すように、点火器50は、ホルダ20の嵌合部23に内挿された状態で、後述する略筒状部材53とともに保持されている。点火器50は、より具体的には、一対の端子ピン52を挿通かつ保持する基枠と、基枠上に取付けられたスクイブカップ51(カップ状部材)とを備えており、スクイブカップ51内に挿入された端子ピン52の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むように又はこの抵抗体に接するようにスクイブカップ51内に点火薬が充填されている。抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、スクイブカップ51内には、点火薬だけでなくさらに伝火薬を充填してもよいが、点火薬と同時に配置され得る伝火薬としては、ホウ素/硝酸カリウム等に代表される金属/酸化剤からなる組成物、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、又は、ホウ素/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。
【0019】
衝突を検知した際には、端子ピン52を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、この熱を受けて点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップ51を破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器50が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には2ミリ秒以下である。
【0020】
また、スクイブカップ51は、一般に金属製又は樹脂製である。なお、スクイブカップ51の周壁部のうち先端部付近以外を覆う略筒状部材53が、点火器50とともに、かしめ部24によってホルダ20にかしめ固定されている。ここで、略筒状部材53は、作動時に点火器50において発生する火炎の方向を密閉容器34側に向ける指向性部材である。また、スクイブカップ51及び略筒状部材53の周囲には、ハウジング10の内壁に沿って、巻きバネ54が設けられている。この巻きバネ54は、一端部が後述する密閉容器34の蓋部34bの端部に当接し、他端部がホルダ20の内部側の端部に当接している。
【0021】
図1に示すように、ハウジング10の内部空間には、ガス発生剤31などが密封された筒状の密閉容器34と、フィルタ41とが、ハウジング10の軸方向に並列して装填されている。密閉容器34は、アルミニウムなどの金属製であることが好ましい。
【0022】
密閉容器34は、有底筒状部34aと蓋部34bとを有し、内部には、ガス発生剤31と、巻きバネ35と、AI剤32と、カバー部材33と、仕切り部材36と、が配設されている。また、有底筒状部34aは、底部となる端部34cを有している。なお、蓋部34bと点火器50の先端部とは、所定距離を有するように離間して配設されている。これにより、点火器50が作動する場合において、スクイブカップ51が開裂しやすくなっている。また、端部34cは、厚み又は/及び材質を変化させることによって、作動時に破裂又は開裂のいずれかが発生するように調整することも可能である。
【0023】
ガス発生剤31は、点火器50によって点火されることによって生じた火炎によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる一体成型物である。また、ガス発生剤31は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成型体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等又はこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジン、硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば、塩基性硝酸銅や塩基性炭酸銅等の塩基性金属水酸化物、過塩素酸アンモニウム又は過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダ、スラグ形成剤、又は燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばヒドロキシプロピレンメチルセルロース等のセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダ、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0024】
巻きバネ35は、
図1に示したように、外観全体として円錐台形状に相似するように、らせん状に巻き回して形成されている。また、巻きバネ35は、一端部が蓋部34bに当接しているとともに、渦巻状に形成されている他端部がガス発生剤31に当接して、ガス発生剤31に弾性力を付勢するように設けられている。この付勢により、ガス発生剤31は、密閉容器34内において、巻きバネ35と、フィルタ41の巻きバネ35側の端部及び有底筒状部34aの底部とに挟まれるようにして固定される。また、巻きバネ35は、全体として点火器50側からガス発生剤31側にかけて円錐台形状となっていることで、点火器50から放出された火炎の方向をガス発生剤31側に向けやすくすることができる。
【0025】
AI剤32は、点火器50の作動によらずに自動発火するオートイグニッション(AI)機能を有しているものである。より詳細に説明すると、AI剤32は、ガス発生剤31よりも低い温度で自動発火するので、ガス発生器100が組み込まれたエアバッグ装置などが装備された車両等において万が一火災等が発生した場合、外部から加熱されることによるガス発生器100の異常動作の誘発を防ぐことができるものである。また、密閉容器34の閉塞部材12側の底部には、AI剤32を保持するカバー部材33が密封収容されている。なお、カバー部材33には、複数の穴が設けられている。
【0026】
仕切り部材36は、
図2に示したように、第1筒状部36aと、当接部36bと、第2筒状部36cと、を備えている。第1筒状部36aは、内径がフィルタ41の内径よりも大きく、点火器50側の端部に開口部が形成されている。また、第1筒状部36aの開口部が端部34cに面するように、第1筒状部36aの点火器50側の端部が、密閉容器34の端部34cに当接している。当接部36bは、第1筒状部36aのフィルタ41側に設けられ、フィルタ41の点火器50側の端部に当接する環状のものである。また、当接部36bには、中央部に孔部を形成するための湾曲部36b1が周方向に連続して設けられている。第1筒状部36aと当接部36bとにより、フィルタ41と密閉容器34との間に、ガス発生器100の作動時における密閉容器34の端部34cの破裂時又は開裂時の作動空間を十分に確保できる。また、ガス発生器100の作動時には、位置34c1に応力が集中した状態で、密閉容器34の端部34cが破裂又は開裂するようになっている。したがって、ガス発生器100の作動時における密閉容器34の端部34cの破裂又は開裂をスムーズに行うことができる。
【0027】
第2筒状部36cは、当接部36bの湾曲部36b1からフィルタ41内部に挿入されるように延設されている。また、第2筒状部36cの外径は、フィルタ41の内径以下となっている。これにより、第2筒状部36cをフィルタ41の内部に嵌合させやすいので、ガス発生器100の製造時の仕切り部材36の位置決めが容易となる。したがって、製造が比較的簡便なガス発生器100を提供できる。また、第2筒状部36cによって、作動時における密閉容器34の端部34cの破断又は/及び破裂から、フィルタ41の端部を保護することができる。
【0028】
また、仕切り部材36の第1筒状部36aの外周壁部は、ハウジング10の内壁に当接するように配設され、当接部36bはフィルタ41の端部を覆うように配設されている。これにより、発生したガスがハウジング10の内壁とフィルタ41の外周部との間からバイパスして、ガス噴出口11に漏れ出ないようにすることができる。すなわち、仕切り部材36は、密閉容器34側で発生したガスを、第2筒状部36cを介してフィルタ41側へ流入させることができる。
【0029】
フィルタ41は、中心に略円柱状の中空部41aを有した円筒状の部材からなるものである。なお、上述の円筒状の部材からなるフィルタ41を利用することで、作動時において流動する作動ガスの流動抵抗が低く抑えられ、効率的なガスの流動が可能である。フィルタ41は、たとえばステンレス鋼或いは鉄鋼等の金属からなる線材、又は、網材を巻き回したもの或いはプレス加工することによって押し固めたもの等が利用される。具体的には、メリヤス編みの金網、平織りの金網、又はクリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。フィルタ41は、密閉容器34内にて発生したガスがこのフィルタ41中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ等を除去する除去手段としても機能する。ここで、フィルタ41の一変形例として、金属からなる略円筒状又はすり鉢状の部品を組み合わせて形成した迷路状流路を有したフィルタを使用してもよい。これにより、作動ガスの進路を様々な方向に変更させることができるので、ガスの冷却及びスラグの除去を行うことが可能である。
【0030】
また、上述した本発明の実施形態においては、フィルタとして、いわゆるメリヤス編みの金網で製作されたものを利用した場合を例示したが、これに代えてパンチングメタルを巻き回すことで製作されたものを利用することや、エキスパンドメタルを巻き回すことで製作されものを利用することも可能である。ここで、パンチングメタルとは、板状金属部材に開口部のみを設けた(すなわち開口部の周縁に突起部を設けない)金属板のことであり、エキスパンドメタルとは、板状金属部材にたとえば千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げることにより、当該板状金属部材に開口部を設けて網目状にした金属板のことである。このようなパンチングメタルやエキスパンドメタルを上述したメリヤス編みの金網に代えて使用した場合にも、上述した本発明の実施形態において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0031】
また、上述したパンチングメタルやエキスパンドメタルにおいては、単一の金属製の板状部材を巻き回すことで積層体からなるフィルタが構成されているが、フィルタの構成は、当該構成に限定されるものではない。すなわち、それぞれの層が別々の金属製の板状部材にて構成されてこれを組み合わせることで積層体からなるフィルタが構成されていてもよいし、複数の層の一部が単一の金属製の板状部材巻き回すことで形成されるとともに、残る層が別の単一の金属製の板状部材巻き回すことで形成され、これらが組み合わされることで積層体からなるフィルタが構成されていてもよい。
【0032】
次に、以上において説明したガス発生器100の作動時における動作について説明する。本実施形態におけるガス発生器100が組み込まれたエアバッグ装置が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器50が作動する。点火器50が作動すると、点火薬の燃焼によって点火器50内の圧力が上昇し、これによって点火器50のスクイブカップ51先端が破裂し、火炎が点火器50のスクイブカップ51先端からハウジング10内部の密閉容器34側へと流出する。
【0033】
このようにして流れ込んだ火炎により、密閉容器34の蓋部34bを開裂させて、さらに密閉容器34内におけるガス発生剤31を着火して燃焼させ、多量のガスを発生させる。このガス発生剤31の燃焼により、密閉容器34内の圧力が上昇し、発生したガスによって、位置34c1に応力が集中した状態となる。そして、密閉容器34内の圧力が所定以上になると、密閉容器34内で発生したガスは、密閉容器34の閉塞部材12側の端部34cを破裂又は開裂させ、仕切り部材36の内部を介して中空部41aに流入する。その後、発生したガスは、フィルタ41を経由してガス噴出口11からガス発生器100の外部へと噴出されることになるが、フィルタ41を経由するので、発生したガスは所定の温度にまで冷却される。そして、ガス噴出口11から噴出されたガスは、エアバッグの内部に導かれてエアバッグを膨張・展開させる。
【0034】
(ガス発生器100の主な特徴)
本実施形態によれば、仕切り部材36の第1筒状部36aによる内部空間の形成と、フィルタ41の内径とを別個に設計することができることから、密閉容器34のフィルタ側の端部34cの開裂強度と、流路サイズ(フィルタ41の内径)とが別個に設計できる。すなわち、密閉容器34の端部34cのうち応力集中する部位を、仕切り部材36の第1筒状部36aの厚み及び内径のサイズによって容易に調整できるとともに、これとは別個に、フィルタ41の内径のサイズを容易に調整できる。また、密閉容器34の端部34cの厚みを適宜変更することで、端部34cの開裂強度の設計についても従来よりも容易に調整できる。したがって、従来よりも性能の微調整が容易なガス発生器100を提供できる。すなわち、たとえば、作動時の密閉容器34内の内圧を従来よりも容易に調整(たとえば、従来よりも容易に低減)することができる。また、ハウジング10の長さを変えずに、フィルタ41内径を従来よりも小さくすることもできる(フィルタ41の径方向の厚みを従来よりも厚くできる)ので、従来と同じ大きさのまま、従来よりもフィルタ41の残渣捕集性を高めることができるガス発生器100を提供できる。
【0035】
また、端部34cについて、厚み又は/及び材質を変化させることによって、作動時に破裂又は開裂のいずれかが発生するように調整することも可能である。
【0036】
また、第2筒状部36cをフィルタ41の内部に嵌合させやすいので、ガス発生器100の製造時の仕切り部材36の位置決めが容易となる。したがって、製造が比較的簡便なガス発生器100を提供できる。
【0037】
また、仕切り部材36によって、作動時における密閉容器34の端部34cの破断又は/及び破裂から、フィルタ41の端部を保護することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0039】
たとえば、上記実施形態の変形例として、
図3に示した構成を有したガス発生器が挙げられる。以下、具体的に説明するが、上記実施形態と同様の箇所には下二桁が同じ符号を付し、説明を省略することがある。また、本変形例において、特に説明していない部位は、上記実施形態と同様である。
【0040】
本変形例のガス発生器は、上記実施形態の仕切り部材36及びフィルタ41の代わりに、仕切り部材136及びフィルタ141を用いている点で異なっている。
【0041】
仕切り部材136は、
図3に示したように、第1筒状部136aと、当接部136bと、第2筒状部136cと、を備えている。第1筒状部136aは、内径がフィルタ141の内径よりも大きく、点火器側の端部に開口部が形成されている。また、第1筒状部136aの開口部が端部134cに面するように、第1筒状部136aの点火器側の端部が、密閉容器134の端部134cに当接している。当接部136bは、第1筒状部136aのフィルタ141側に設けられ、フィルタ141の点火器側の端部に当接する、断面が第1筒状部136a側からフィルタ141側にかけて縮径するテーパー形状(環状)のものである。これら第1筒状部136aと当接部136bとにより、フィルタ141と密閉容器134との間に、本変形例のガス発生器の作動時における密閉容器134の端部134cの破裂時又は開裂時の作動空間を十分に確保できる。また、本変形例のガス発生器の作動時には、位置134c1に応力が集中した状態で、密閉容器134の端部134cが破裂又は開裂するようになっている。したがって、本変形例のガス発生器の作動時における密閉容器134の端部134cの破裂又は開裂をスムーズに行うことができる。
【0042】
第2筒状部136cは、当接部136bから連続的かつ一体的に形成されているものであり、フィルタ141の中空部141aの内部に位置するように設けられている。
【0043】
本変形例のガス発生器によれば、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0044】
また、別の変形例として、上記実施形態における仕切り部材36について、第1筒状部36a及び当接部36bだけとし、第2筒状部36cを設けないものとしてもよい。
【0045】
また、他の変形例として、上記実施形態又は変形例におけるハウジングの代わりに、
図4に示したハウジング210(ホルダなどをかしめ固定する前のハウジング前駆体)を用いてもよい。このハウジング210は、口径の異なる2種類のガス噴出口211a、211bをそれぞれ複数有しており、上記実施形態又は変形例と同様、フィルタ(図示せず)に対向した位置に設けられる。また、ハウジング210は、複数のガス噴出口211aが設けられている領域Aと、複数のガス噴出口211bが設けられている領域Bと、を有している。また、点火器側(
図4紙面下側)のガス噴出口211bをガス噴出口211aの口径よりも小さな口径とすることで、ガス噴出口211a、211bの内部側に設けられる上記実施形態又は変形例と同様のフィルタ(図示せず)を満遍なく有効活用することができるようになっている。
【0046】
また、上記実施形態及び変形例において、ハウジングの縮径方法については、かしめ加工を例に説明したが、ハウジングを縮径できる加工方法ならどのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10、110、210 ハウジング
10a 周壁
10e 周壁
11、211a、211b ガス噴出口
12 閉塞部材
13 環状溝部
20 ホルダ
21 嵌合部
22 環状溝部
23 嵌合部
24 かしめ部
31、131 ガス発生剤
32、132 AI剤
33、133 カバー部材
34、134 密閉容器
34a、134a 有底筒状部
34b 蓋部
34c、134c 端部
35 巻きバネ
36、136 仕切り部材
36a、136a 第1筒状部
36b、136b 当接部
36b1 湾曲部
36c、136c 第2筒状部
41、141 フィルタ
41a、141a 中空部
50 点火器
51 スクイブカップ
52 端子ピン
53 筒状部材
54 巻きバネ
100 ガス発生器