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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】消防用ホース
(51)【国際特許分類】
   A62C 33/00 20060101AFI20250218BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20250218BHJP
   F16L 11/02 20060101ALN20250218BHJP
【FI】
A62C33/00 C
F16L11/12 J
F16L11/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021067744
(22)【出願日】2021-04-13
(65)【公開番号】P2022162761
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】本間 毅
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-150276(JP,A)
【文献】特開2019-193685(JP,A)
【文献】特許第6093893(JP,B2)
【文献】特許第6116732(JP,B2)
【文献】特開2004-132443(JP,A)
【文献】登録実用新案第3091291(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0076229(US,A1)
【文献】中国実用新案第206152147(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 33/00
F16L 11/12
F16L 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸よりなる筒状織布の少なくとも内面にゴムまたは合成樹脂が内張りされた消防用ホースにおいて、
前記筒状織布の織組織は、前記経糸と前記緯糸とにより織成された斜文織であり、
前記筒状織布は、本体部と方向表示部とが周方向において並んでおり、
前記方向表示部では、V字模様が前記筒状織布の長手方向に連続して現れており、
前記方向表示部は、前記V字模様の一方側斜線を構成する正斜線模様部と、前記V字模様の他方側斜線を構成する逆斜線模様部と、からなり、
前記正斜線模様部では、前記斜文織の織組織から経糸を1本以上削除して織成される伸び斜文の織組織を有しており、前記経糸として、前記本体部と色彩の異なる第1糸と、前記第1糸と色彩の異なる第2糸とが用いられ、前記周方向に並ぶ1本の前記第1糸と複数本の前記第2糸とを1組として、各組が前記周方向に並列され、前記各組の前記第1糸と前記第2糸の間または前記第2糸同士の間において前記伸び斜文の織組織を形成しており、
前記逆斜線模様部では、前記経糸として、少なくとも前記本体部と色彩の異なる糸が用いられており、
前記逆斜線模様部では、前記経糸として、前記第1糸と前記第2糸とが用いられ、前記周方向に並ぶ1本の前記第1糸と複数本の前記第2糸とを1組として、各組が前記周方向に並列されており、
前記逆斜線模様部では、前記周方向に並ぶ1本の前記第1糸と、以下の条件1または条件2に合致する本数を除く複数本の前記第2糸とを1組として、各組が前記周方向に並列されたことを特徴とする、消防用ホース。
条件1:織組織が2/1斜文織の場合は、3n+2(nは0以上の整数)
条件2:織組織が3/1斜文織または2/2斜文織の場合は、4n+3(nは0以上の整数)
【請求項2】
前記正斜線模様部及び前記逆斜線模様部において、前記第2糸は前記第1糸よりも細いことを特徴とする、請求項に記載の消防用ホース。
【請求項3】
前記周方向における前記正斜線模様部と前記逆斜線模様部とを対称としたことを特徴とする、請求項に記載の消防用ホース。
【請求項4】
経糸と緯糸よりなる筒状織布の少なくとも内面にゴムまたは合成樹脂が内張りされた消防用ホースにおいて、
前記筒状織布の織組織は、前記経糸と前記緯糸とにより織成された斜文織であり、
前記筒状織布は、本体部と方向表示部とが周方向において並んでおり、
前記方向表示部では、V字模様が前記筒状織布の長手方向に連続して現れており、
前記方向表示部は、前記V字模様の一方側斜線を構成する正斜線模様部と、前記V字模様の他方側斜線を構成する逆斜線模様部と、からなり、
前記正斜線模様部では、前記斜文織の織組織から経糸を1本以上削除して織成される伸び斜文の織組織を有しており、前記経糸として、前記本体部と色彩の異なる第1糸と、前記第1糸と色彩の異なる第2糸とが用いられ、前記周方向に並ぶ1本の前記第1糸と複数本の前記第2糸とを1組として、各組が前記周方向に並列され、前記各組の前記第1糸と前記第2糸の間または前記第2糸同士の間において前記伸び斜文の織組織を形成しており、
前記逆斜線模様部では、前記経糸として、少なくとも前記本体部と色彩の異なる糸が用いられており、
前記逆斜線模様部は、前記正斜線模様部の前記斜文織の織組織とは斜文線の方向が逆となる逆斜文の織組織であり、前記経糸として1本の前記第1糸と1本の前記第2糸とが用いられ、前記周方向に交互に並列されたことを特徴とする、消防用ホース。
【請求項5】
前記逆斜線模様部では、前記経糸における前記第1糸および前記第2糸の代替糸として、前記本体部および前記第1糸と色彩の異なる第3糸と、前記第3糸と色彩の異なる第4糸とが用いられたことを特徴とする、請求項からのいずれかに記載の消防用ホース。
【請求項6】
前記斜文織が2/1斜文織であることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の消防用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸と緯糸よりなる筒状織布の少なくとも内面にゴムまたは合成樹脂が内張りされた消防用ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
消防用ホースは火災の際に消火活動に使用される。火災場所が地上における建物の場合、消火活動において避難が必要なときは、火災場所から離れる方向に避難すれば良いが、建物内での消火活動においては、消防士が煙に巻かれて方向を失うことが少なくない。
【0003】
そのため、展張してきた消防用ホースを道案内にして、火災場所の外へ帰還するようにしており、退路として進むべき方向に延びる消防用ホースには、消防士が退避すべき方向を表示することが提案されている。
【0004】
この提案に関連し、例えば、特開2004-132443号公報(特許文献1)、実用新案登録第3091291号公報(特許文献2)においては、消防用ホースに矢印指標を設けることが提案されている。しかし、この矢印指標は反射材や夜光塗料などの塗布材で表示するものであり、ホースが摩耗されたときなどに消えてしまう可能性があった。
【0005】
また、特許第6093893号公報(特許文献3)、特許第6116732号公報(特許文献4)においては、前記矢印指標を筒状織布の織りにより表現することが提案されている。この場合、矢印指標が摩耗で消えてしまうことはないが、これらのものにおいては矢印指標が不明瞭であって、退避方向が一目で判りにくいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-132443号公報
【文献】実用新案登録第3091291号公報
【文献】特許第6093893号公報
【文献】特許第6116732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、消防用ホースの一部に退避方向を示すV字模様を、筒状織布の織りにより表してなると共に、そのV字模様を明瞭に表すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、経糸と緯糸よりなる筒状織布の少なくとも内面にゴムまたは合成樹脂が内張りされた消防用ホースにおいて、前記筒状織布の織組織は、前記経糸と前記緯糸とにより織成された斜文織であり、前記筒状織布は、本体部と方向表示部とが周方向において並んでおり、前記方向表示部では、V字模様が前記筒状織布の長手方向に連続して現れており、前記方向表示部は、前記V字模様の一方側斜線を構成する正斜線模様部と、前記V字模様の他方側斜線を構成する逆斜線模様部と、からなり、前記正斜線模様部では、前記斜文織の織組織から経糸を1本以上削除して織成される伸び斜文の織組織を有しており、前記経糸として、前記本体部と色彩の異なる第1糸と、前記第1糸と色彩の異なる第2糸とが用いられ、前記周方向に並ぶ1本の前記第1糸と複数本の前記第2糸とを1組として、各組が前記周方向に並列され、前記各組の前記第1糸と前記第2糸の間または前記第2糸同士の間において前記伸び斜文の織組織を形成しており、前記逆斜線模様部では、前記経糸として、少なくとも前記本体部と色彩の異なる糸が用いられたことを特徴とする、消防用ホースである。
【0009】
この構成によれば、正斜線模様部、逆斜線模様部の経糸の配置により、単純な斜文織でV字模様を形成できる。
【0010】
また、前記逆斜線模様部では、前記経糸として、前記第1糸と前記第2糸とが用いられ、前記周方向に並ぶ1本の前記第1糸と複数本の前記第2糸とを1組として、各組が前記周方向に並列されたものとできる。
【0011】
この構成によれば、斜文織で筒状織布の表側に現れる第2糸につき、逆斜線模様部での本数を調整することで、正斜線模様部と逆斜線模様部で周方向に対称に近く現れるようにできる。
【0012】
また、前記逆斜線模様部では、前記周方向に並ぶ1本の前記第1糸と、以下の条件1または条件2に合致する本数を除く複数本の前記第2糸とを1組として、各組が前記周方向に並列されたものとすることもできる。
条件1:織組織が2/1斜文織の場合は、3n+2(nは0以上の整数)
条件2:織組織が3/1斜文織または2/2斜文織の場合は、4n+3(nは0以上の整数)
【0013】
この構成によれば、条件1または条件2に合致する本数を除く複数本の第2糸を用いることで、確実にV字模様を形成できる。
【0014】
また、前記正斜線模様部及び前記逆斜線模様部において、前記第2糸は前記第1糸よりも細いものとできる。
【0015】
この構成によれば、斜文織で筒状織布の表側に現れる第2糸が第1糸よりも細く、第2糸の周方向寸法を調整することで、正斜線模様部と逆斜線模様部で周方向に対称に近く現れるようにできる。
【0016】
また、前記周方向における前記正斜線模様部と前記逆斜線模様部とを対称とすることもできる。
【0017】
この構成によれば、斜文織で筒状織布の表側に現れる第2糸が第1糸よりも細く、第2糸の周方向寸法をより細かく調整することで、正斜線模様部と逆斜線模様部で周方向に対称に現れるようにできる。このため、V字模様を整った形状に形成できる。
【0018】
また、前記逆斜線模様部は、前記正斜線模様部の前記斜文織の織組織とは斜文線の方向が逆となる逆斜文の織組織であり、前記経糸として1本の前記第1糸と1本の前記第2糸とが用いられ、前記周方向に交互に並列されたものとできる。
【0019】
この構成によれば、逆斜線模様部を正斜線模様部に対して織組織自体で対称にできるため、対称なV字模様を容易に形成できる。
【0020】
また、前記逆斜線模様部では、前記経糸における前記第1糸および前記第2糸の代替糸として、前記本体部および前記第1糸と色彩の異なる第3糸と、前記第3糸と色彩の異なる第4糸とが用いられたものとできる。
【0021】
この構成によれば、正斜線模様部の第1糸、第2糸と逆斜線模様部の第3糸、第4糸の配置により、単純な斜文織で、様々な色彩のV字模様を形成できる。
【0022】
また、前記斜文織が2/1斜文織であるものとできる。
【0023】
この構成によれば、一般的な織組織により整った形状のV字模様を形成できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、正斜線模様部、逆斜線模様部の経糸の配置により、単純な斜文織でV字模様を形成できる。よって、消防用ホースの一部に退避方向を示すV字模様を、筒状織布の織りにより表してなると共に、そのV字模様を明瞭に表すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係る消防用ホースを示す斜視図である。
図2】前記消防用ホースの筒状織布の組織図である。
図3図2のA部分の図示横方向断面での糸配置を概略的に示す図である。
図4】前記消防用ホースの実際の例を偏平にし、本体部の一部と方向表示部を示した写真である。
図5】本発明の第2実施形態に係る消防用ホースの筒状織布の組織図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る消防用ホースの筒状織布の組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明につき、実施形態を取り上げて説明を行う。
【0027】
図1に、第1実施形態の消防用ホース1を示す。消防用ホース1は筒状織布2を備える。筒状織布2は、経糸3と緯糸4よりなる。筒状織布2の織組織は、経糸3と緯糸4とにより織成された斜文織である。本実施形態では、経糸3が2本の緯糸4の表側を通った後に、1本の緯糸4の裏側を通ることが繰り返される2/1斜文織である。図2において、ドット模様で表された領域(第1糸31)及び、黒色で表された領域(第2糸32)が、2/1斜文織で筒状織布2の表面に現れる部分に対応している。また、図2において、白色で表された領域が緯糸4の通る部分に対応している。また、図3に、図2のA部分で緯糸4を基準とした経糸3の表裏の位置関係を概略的に示す(図示された各糸の太さの比は正確ではない)。筒状織布2の内面には柔軟なゴム又は合成樹脂からなる内張り5が施されている。
【0028】
筒状織布2の表面に退避方向(図1においては右向き)を示す複数のV字模様6が、筒状織布2の織組織により表示されている。筒状織布2において、筒状織布2の本体部21と、前記複数のV字模様6が長手方向に連続して現れた方向表示部22と、が周方向において並んでいる。
【0029】
本体部21では、経糸3として、本実施形態では無着色(白色)の糸30が用いられている。本実施形態では、本体部21の経糸3として、スパンエステルの20/6(20番手の糸の6本撚り)で2本引き揃えの糸が用いられる。なお、図2においては織組織の説明のため、黒色で表した領域を設けているが、実際には図4に示すように無着色(白色)である。また、緯糸4として、本実施形態では無着色(白色)の糸が用いられている。緯糸4(本体部21、方向表示部22の両方)としては、ポリエステルフィラメントの1100dtex5本が撚られた糸が用いられている。なお、図2は組織図であるため図示の縦横を均等に描いていることから、緯糸4が現れている形になっているが、実際の織組織では経糸3が周方向に詰められることから、筒状織布2の表面には現れない、または、わずかにしか現れない。
【0030】
方向表示部22は、V字模様6の一方側斜線(図1において上側に示された斜線、図4において左側に示された斜線)を構成する正斜線模様部221と、V字模様6の他方側斜線(図1において下側に示された斜線、図4において右側に示された斜線)を構成する逆斜線模様部222と、を備える。
【0031】
正斜線模様部221は、経糸3として、本体部21と色彩の異なる第1糸31と、第1糸31と色彩の異なる第2糸32と、が用いられ、1本の第1糸31と3本の第2糸32とを1組として、各組が筒状織布2の周方向(図2における横方向)に交互に並列されている。正斜線模様部221では、前記斜文織の織組織から経糸を1本以上削除して織成される伸び斜文の織組織を有している。伸び斜文とは、例えば高等学校向けの教科書である、「繊維・繊維製品-日本繊維工業教育研究会」と題する書物(発行:実教出版株式会社、著作者(代表):安達達雄)の第141~142ページに記載されているように、斜文織の経糸または緯糸を数本削除することによって形成される織組織のことで、ここでは経糸を削除して伸び斜文を形成している。本実施形態では、前記各組の第1糸31と第2糸32の間において、経糸を1本削除して織成される伸び斜文の織組織を形成している。このように正斜線模様部221では、図2に示すように、周方向において織組織が断絶している部分を有している。なお本実施形態以外に、前記各組の(第1糸31と第2糸32の間ではなく)第2糸32,32同士の間において伸び斜文の織組織を形成していてもよい。第1糸31の色は、本体部21の色(本実施形態では白色)との差異が明確な色であれば、種々の色を選択できる。また、第2糸32の色は、第1糸31との差異が明確であれば、種々の色を選択できる。よって第2糸32の色は、本体部の糸30と同じ色であってもよいし、別の色であってもよい(本実施形態では白色)。
【0032】
逆斜線模様部222は、経糸3として、少なくとも本体部21と色彩の異なる糸が用いられる。具体的には正斜線模様部221と同じく、経糸3として、第1糸31と第2糸32とが用いられる。周方向に並ぶ1本の第1糸31と複数本(本実施形態では3本)の第2糸32とを1組として、各組が周方向に並列されている。なお、第2糸32の本数は特に限定されない。ただし、以下の条件1または条件2に合致する本数では、逆斜線模様部222に斜線が形成されないことから、当該本数を除く複数本となっていればよい。各条件の2/1斜文織、3/1斜文織、2/2斜文織は、消防用ホースでよく用いられる織組織を例示的に示したものである。

条件1:織組織が2/1斜文織の場合は、3n+2(nは0以上の整数)
条件2:織組織が3/1斜文織または2/2斜文織の場合は、4n+3(nは0以上の整数)

第2糸32の本数は、第1糸31、第2糸32の太さに応じて適宜設定することができる。本実施形態では、織組織が2/1斜文織のため、第2糸の本数は3本としている。
【0033】
本実施形態では、第1糸31として、スパンエステルの20/8(図4の例で、20番手の糸の8本撚り)で2本引き揃えの糸が用いられる。また、第2糸32として、スパンエステルの20/4(図4の例で、20番手の糸の4本撚り)1本の糸が用いられる。このように、第2糸32は第1糸31より細い(つまり、周方向寸法が小さい)。糸の番手から計算した寸法(実寸法ではなく計算上の寸法)では、筒状織布2の周方向寸法で、20/8の2本引き揃えの糸は1.27mmである。また、筒状織布2の周方向寸法で、20/4の1本の糸は0.45mmである。また、緯糸4としては、本体部21で言及したものと同じく、ポリエステルフィラメントの1100dtex5本が撚られた糸が用いられている。
【0034】
正斜線模様部221では、2/1斜文織で筒状織布2の表側に経糸3が現れる区間(図2において黒色やドット模様で示した区間)は、二点鎖線で示した傾斜線L221のように、図2における右方向(方向表示部22の対称中心向きの方向)に向かうにつれ上方に向かうように配置される。
【0035】
一方、逆斜線模様部222では、第1糸31が1本と第2糸32が3本とで1組とされ、各組が周方向に並列されている。つまり、1本の第1糸31の周方向の隣には3本の第2糸32が連続して位置する。
【0036】
2/1斜文織で筒状織布2の表側に経糸3が現れる区間は、二点鎖線で示した傾斜線L222のように、図2における左方向(方向表示部22の対称中心向きの方向)に向かうにつれ上方に向かうように配置される。
【0037】
このように、正斜線模様部221、逆斜線模様部222の第1糸31、第2糸32の配置により、単純な斜文織で、消防用ホース1の一部に退避方向を示すV字模様6を、筒状織布2の織組織により表すことができる。
【0038】
方向表示部22は、図2に示すように、正斜線模様部221の図2における右端部を基準として、正斜線模様部221の図2における左側1番目にある第1糸31の筒状織布2の表側での露出位置と、逆斜線模様部222の右側1番目にある第1糸31の筒状織布2の表側での露出位置とが、筒状織布2の長手方向で略一致する。左右2番目以降の第1糸31の関係も同様である。
【0039】
方向表示部22において第2糸32が第1糸31よりも細いことから、斜文織で筒状織布2の表側に現れる第2糸32につき、本数と1本の太さに対応する周方向寸法を調整することで、第2糸32が正斜線模様部221と逆斜線模様部222で筒状織布2の周方向に対称に現れるようにできる。このため、方向表示部22を構成する個々のV字模様6を整った形状に形成できる。よって、消防用ホース1の一部に退避方向を示すV字模様6を、筒状織布2の織組織により表してなると共に、図4に示すように、視覚上で不自然さを与えにくく、そのV字模様6を明瞭に表すことができる。
【0040】
なお、正斜線模様部221と逆斜線模様部222において、第2糸32Tを第1糸31と同じ太さにしてもよく、この場合(第2実施形態とする)、本実施形態の消防用ホース1における筒状織布2の織組織図は図5のようになる。
【0041】
また、逆斜線模様部222においては、経糸3として、本体部21および第1糸31と色彩の異なる第3糸(第1糸31の代替糸、図示しない)と、第3糸と色彩の異なる第4糸(第2糸32の代替糸、図示しない)とを用い、周方向に並ぶ1本の第3糸と複数本(本実施形態では3本)の第4糸とを1組とし、各組を周方向に並列することもできる。この場合、正斜線模様部221と逆斜線模様部222で色彩の異なるV字模様ができる。
【0042】
さらに、第4糸につき、逆斜線模様部222での本数と1本の太さを調整することで、正斜線模様部221と逆斜線模様部222で色彩の異なるV字模様が、正斜線模様部221と逆斜線模様部222で筒状織布2の周方向に対称に現れるようにできる
【0043】
また、逆斜線模様部222は、図6に示すように、本体部21の斜文織の織組織とは斜文線の方向が逆となる逆斜文の織組織であり、経糸として1本の第1糸31と1本の第2糸32T(第1糸31と同じ太さのもの)とが用いられ、周方向に交互に並列されたものであってもよい(第3実施形態)。このように構成することで、逆斜線模様部222を正斜線模様部221に対して織組織で対称にできる。このため、対称なV字模様を容易に形成できる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0045】
例えば前記第1実施形態では、逆斜線模様部222で、第1糸31が1本、第2糸32が3本で1組とされていた。しかし、第2糸32の本数は、前述した条件1または条件2に合致する本数を除く複数本となっていればよく、第1糸31と第2糸32の太さに応じて適宜設定することができる。なお、V字模様の外観形状に不自然さを与えないためには、2/1斜文織の場合は3n本(n=1、2、3・・・)、3/1斜文織の場合は4n本または4n+1本(いずれもn=1、2、3・・・)、2/2斜文織の場合は4n本(n=1、2、3・・・)に設定しておくのが好ましい。さらに、筒状織布2の製織作業性を考慮すると、各組での第2糸32の本数は、最大で13本に留めておくのが適当である。
【0046】
また、前記第1実施形態では、正斜線模様部221と逆斜線模様部222において、第1糸31が第2糸32に比べて太いほど、または、第2糸32が第1糸31に比べて細いほど、筒状織布2の周方向において第1糸31,31間の間隔が詰まり、第1糸31の有する色がより連続して見えることにより、V字模様がはっきりする。ただし、筒状織布2の長手方向においても第1糸31が連続して見えてくる作用も伴うので、第2糸32が極端に細すぎても好ましくない。例えば前記第1実施形態のように、スパンエステルを使用し、1組を構成する第2糸32の本数を3本としたときでは、適当な糸として以下のものが例示できる(ただし、これらに限られるものではない)。
第1糸31に関しては、20/6が1本、20/6で2本引き揃え、20/8で2本引き揃え、20/10で2本引き揃えである。また、糸の番手から計算した寸法(実寸法ではなく計算上の寸法)で範囲を表すと、0.55mm~1.42mmである。
第2糸32に関しては、20/3が1本、20/4が1本、20/6が1本、20/3で2本引き揃え、20/6で2本引き揃えである。また、糸の番手から計算した寸法で範囲を表すと、0.39mm~1.10mmである。
【0047】
また、1組を構成する第1糸31と第2糸32としては、表1に示す組み合わせが例示できる(ただし、これらの組み合わせに限られるものではない)。
【表1】
【符号の説明】
【0048】
1 消防用ホース
2 筒状織布
21 本体部
22 方向表示部
221 正斜線模様部
222 逆斜線模様部
3 経糸
30 経糸(無着色)
31 本体部と色彩の異なる糸、第1糸
32 第2糸
32T 第2糸(第1糸と同じ太さの糸)
4 緯糸
5 内張り
6 V字模様
図1
図2
図3
図4
図5
図6