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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】坑口の止水方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20250218BHJP
   E21D 11/38 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
E21D9/06 301E
E21D11/38 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021148518
(22)【出願日】2021-09-13
(65)【公開番号】P2023041256
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】金子 守利
(72)【発明者】
【氏名】三俣 和彦
(72)【発明者】
【氏名】今泉 宏太
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-097850(JP,A)
【文献】特開平07-119381(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1985360(KR,B1)
【文献】米国特許第04209268(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00- 9/14
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドマシンの発進立坑の側壁に設けられた坑口の止水方法であって、
前記発進立坑の中であって、前記坑口の中に位置する前記シールドマシンの後部において、仮設セグメントを組み立てる第一組立工程と、
前記シールドマシンを前進させ、前記坑口の中に、複数のセグメントからなるトンネル壁体を、前記仮設セグメントに接続するように組み立てる第二組立工程と、
前記仮設セグメントに、前記坑口の内周面に沿って設けられたパッキンと前記トンネル壁体の後端部との間にできる空間を閉塞する形状を有する止水部材を、当該仮設セグメントの周囲を囲むように配置する配置工程と、
前記仮設セグメントの周囲に配置された前記止水部材を、前記パッキンと前記後端部との間へ押し込む押込工程と、
前記パッキンと前記後端部との間に押し込まれた前記止水部材を、前記後端部に固着させる固着工程と、
を有することを特徴とする坑口の止水方法。
【請求項2】
前記止水部材として、前記シールドマシン進行方向の幅が、前記パッキンの後端から、前記坑口の内周面であって前記パッキンよりも地山側に設けられた第二パッキンまでの距離を超えないものを用いることを特徴とする請求項1に記載の坑口の止水方法。
【請求項3】
前記シールドマシンとして、
正面視円形の第一機体と、
前記第一機体進行方向と直交する方向に並ぶ正面視円形の第二機体と、
前記第一機体と前記第二機体を連結する機体連結部と、を有するものを用い、
前記止水部材として、
前記第一機体の後部において組み立てられた第一トンネル壁体を囲む第一環状部と、
前記第二機体の後部において組み立てられた第二トンネル壁体を囲む第二環状部と、
前記第一環状部と前記第二環状部とを、前記第一環状部と前記第二環状部との間を閉塞しつつ連結する部材連結部と、を有するものを用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の坑口の止水方法。
【請求項4】
前記止水部材として、前記第一環状部及び前記第二環状部の少なくとも一方が、複数の円弧状部材からなるものを用い、
前記配置工程で、複数の円弧状部材をつなぎ合わせることにより、前記第一環状部及び前記第二環状部の少なくとも一方を、対応する前記仮設セグメントの周囲に配置することを特徴とする請求項3に記載の坑口の止水方法。
【請求項5】
一の前記円弧状部材として、端部に、対応する環状部の内周面と外周面との間に位置し、当該環状部の中心を向く接合面を有するものを用い、
一の前記円弧状部材につなぎ合わせる他の前記円弧状部材として、端部に、前記環状部の内周面と前記外周面との間に位置し、前記接合面と対向する被接合面を有するものを用い、
前記配置工程で、前記接合面と前記被接合面とを接触させ、一の前記円弧状部材と他の前記円弧状部材とを重ね溶接することを特徴とする請求項4に記載の坑口の止水方法。
【請求項6】
前記止水部材として、
前記部材連結部が、前記第一機体及び前記第二機体が並ぶ方向及び前記シールドマシン進行方向と直交する第一方向側に位置する第一部材と、前記第一方向と反対側に位置する第二部材と、に分割可能であり、
前記第一部材と、前記第二部材とが、ボルトで接合可能なものを用いることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の坑口の止水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坑口の止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法の一つであるH&V(Horizontal variation & Vertical variation)工法は、結合された二つのシールドマシンを用いて掘削を行う工法である。各シールドマシンが前進し、その前端部が発進立坑の側壁(改良地盤)を離れ地山に出ると、各シールドマシンの後ろに組み立てられる2本のトンネル壁体の間には、水みちができる。
【0003】
そこで、この水みちから発進立坑内へ出水するのを防ぐため、H&V工法において坑口を止水するための各種技術が従来提案されている。
例えば、特許文献1には、2連の一体化セグメントをシールドマシンの後端に設置し、一体化セグメントをシールドマシンとともに推進させる技術について記載されている。
また、特許文献1には、親エントランスと、子エントランスと、に分割可能に構成され、それぞれにシール部材が設けられた親子エントランスを坑口に押し込み、シールドマシン貫入時は親エントランスで止水し、セグメント貫入時は子エントランスで止水する技術が従来技術として紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-094181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような坑口エントランス及び一体化セグメントを坑口に押し込むには、発進立坑内に大掛かりな(場所をとる)推進設備を設置する必要がある。しかし、発進立坑の幅が小さい場合、こうした推進設備を設置することは困難である。
また、一般に、トンネル壁体の径はシールドマシンの径よりも一回り小さい。このため、特許文献1に記載されたような一体化セグメントを用いる止水方法では、シールドマシンが前進し、坑口のパッキンに接する部材がスキンプレートから一体化セグメントへ移る際に、パッキンと一体化セグメントとの間から出水し易くなってしまう。
【0006】
また、特許文献1で従来技術として紹介された親子エントランスを用いる従来の止水方法では、坑口から発進立坑側に突出している子エントランスを最終的に撤去する際に、坑口のパッキンとトンネル壁体との間から出水してしまう可能性がある。
一方、出水を避けるために子エントランスを残そうとすると、子エントランスは発進立坑内へ突出しているため、発進立坑内の躯体構築に支障が出てしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、正面視形状が特殊なシールドマシンを用いるシールド工法において、発進立坑の幅が小さくても坑口の止水を確実に行えるようにするとともに、シールドマシンが前進したり坑口から発進立坑側に突出する設備を撤去したりした後も坑口が止水された状態を維持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、
シールドマシンの発進立坑の側壁に設けられた坑口の止水方法であって、
前記発進立坑の中であって、前記坑口の中に位置する前記シールドマシンの後部において、仮設セグメントを組み立てる第一組立工程と、
前記シールドマシンを前進させ、前記坑口の中に、複数のセグメントからなるトンネル壁体を、仮設セグメントに接続するように組み立てる第二組立工程と、
前記仮設セグメントに、前記坑口の内周面に沿って設けられたパッキンと前記トンネル壁体の後端部との間にできる空間を閉塞する形状を有する止水部材を、当該仮設セグメントの周囲を囲むように配置する配置工程と、
前記仮設セグメントの周囲に配置された前記止水部材を、前記パッキンと前記後端部との間へ押し込む押込工程と、
前記パッキンと前記後端部との間に押し込まれた前記止水部材を、前記後端部に固着させる固着工程と、
を有することを特徴とする坑口の止水方法。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の坑口の止水方法であって、
前記止水部材として、前記シールドマシン進行方向の幅が、前記パッキンの後端から、前記坑口の内周面であって前記パッキンよりも地山側に設けられた第二パッキンまでの距離を超えないものを用いることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の坑口の止水方法であって、
前記シールドマシンとして、
正面視円形の第一機体と、
前記第一機体進行方向と直交する方向に並ぶ正面視円形の第二機体と、
前記第一機体と前記第二機体を連結する機体連結部と、を有するものを用い、
前記止水部材として、
前記第一機体の後部において組み立てられた第一トンネル壁体を囲む第一環状部と、
前記第二機体の後部において組み立てられた第二トンネル壁体を囲む第二環状部と、
前記第一環状部と前記第二環状部とを、前記第一環状部と前記第二環状部との間を閉塞しつつ連結する部材連結部と、を有するものを用いることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、
請求項3に記載の坑口の止水方法であって、
前記止水部材として、前記第一環状部及び前記第二環状部の少なくとも一方が、複数の円弧状部材からなるものを用い、
前記配置工程で、複数の円弧状部材をつなぎ合わせることにより、前記第一環状部及び前記第二環状部の少なくとも一方を、対応する前記仮設セグメントの周囲に配置することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、
請求項4に記載の坑口の止水方法であって、
一の前記円弧状部材として、端部に、対応する環状部の内周面と外周面との間に位置し、当該環状部の中心を向く接合面を有するものを用い、
一の前記円弧状部材につなぎ合わせる他の前記円弧状部材として、端部に、前記環状部の内周面と前記外周面との間に位置し、前記接合面と対向する被接合面を有するものを用い、
前記配置工程で、前記接合面と前記被接合面とを接触させ、一の前記円弧状部材と他の前記円弧状部材とを重ね溶接することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に係る発明は、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の坑口の止水方法であって、
前記止水部材として、
前記部材連結部が、前記第一機体及び前記第二機体が並ぶ方向及び前記シールドマシン進行方向と直交する第一方向側に位置する第一部材と、前記第一方向と反対側に位置する第二部材と、に分割可能であり、
前記第一部材と、前記第二部材とが、ボルトで接合可能なものを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、正面視形状が特殊なシールドマシンを用いるシールド工法において、発進立坑の幅が小さくても坑口の止水を確実に行うことができるとともに、シールドマシンが前進したり坑口から発進立坑側に突出する設備を撤去したりした後も坑口が止水された状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態に係る坑口の止水方法が適用されたシールド工法に用いられるシールドマシンを示す正面図である。
図2】地山の中に位置するシールドマシン、及び同シールドマシンが組み立てたトンネル壁体を示す側面図である。
図3】(a)は施工初期のシールドマシンを示す側面図であり、(b)は(a)の後の時期のシールドマシン、及び同シールドマシンが組み立てたトンネル壁体を示す側面図である。
図4】同止水方法で用いられる止水部材の正面図である。
図5図4のAで囲んだ部分(接合部)の部分拡大図である。
図6】(a)は図4のBで囲んだ部分(部材連結部)の部分拡大図、(b)は図4のC-C断面図である。
図7図4のD-D断面図である。
図8】第一組立工程におけるシールドトンネルを示す縦断面図である。
図9】第二組立工程におけるシールドトンネルを示す縦断面図である。
図10】配置工程におけるシールドトンネルを示す縦断面図である。
図11】押込工程におけるシールドトンネルを示す縦断面図である。
図12】固着工程におけるシールドトンネルを示す縦断面図である。
図13】止水後の坑口を示す正面図及び縦断面図である。
図14】本発明の第二実施形態に係る坑口の止水方法が適用されたシールド工法に用いられるシールドマシンを示す正面図である。
図15】同止水方法で用いられる止水部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<1.第一実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第一実施形態について詳細に説明する。
ただし、本発明の技術的範囲は、下記実施形態や図面に例示したものに限定されるものではない。
【0017】
〔1-1.シールドマシン〕
まず、本実施形態に係る坑口の止水方法(以下、止水方法)が適用されたシールド工法に用いられるシールドマシン100について説明する。
図1はシールドマシン100を示す正面図、図2は地山の中に位置するシールドマシン100、及びシールドマシン100が組み立ててトンネル壁体を示す側面図、図3(a)は施工初期のシールドマシン100を示す側面図、図3(b)は(a)の後の時期のシールドマシン100、及びシールドマシン100が組み立てたトンネル壁体を示す側面図である。
【0018】
本実施形態に係るシールドマシン100は、H&V(Horizontal variation & Vertical variation)工法に用いられるものである。
また、本実施形態に係るシールドマシン100は、図1に示したように、第一機体1と、第二機体2と、機体連結部3と、を有する。
【0019】
第一機体1は、正面視円形の(円形のカッタを有する)ものである。
また、第一機体1は、図2に示したように、その後部(掘削してできた空間)において、複数のセグメントからなる円筒状の第一トンネル壁体W1を組み立てていく。
【0020】
第二機体2は、図1に示したように、第一機体1と同様、正面視円形のものである。
なお、図1には、第一機体1よりも直径の小さい第二機体2を例示したが、第二機体2の直径は、第一機体1と同じであってもよいし、大きくてもよい。
また、第二機体2は、第一機体1に、当該第一機体1進行方向と直交する方向(例えば、図1,2に示したような上下方向)に並んでいる。
また、第二機体2は、図2に示したように、その後部において、複数のセグメントからなる円筒状の第二トンネル壁体W2を組み立てていく。
【0021】
機体連結部3は、第一機体1と第二機体2との間にあり、第一機体1と第二機体2とを連結している。
シールドマシン100が最初から最後まで平行に延びる2本のトンネルを作り続けるのに用いられる場合、機体連結部3は、第一,第二機体1,2に完全に結合していても(切り離し不能になっていても)よい。
一方、シールドマシン100が途中から分岐するトンネルを作るのに用いられる場合、機体連結部3は、第一,第二機体1,2から切り離し可能に構成されていてもよい。
【0022】
このように構成されたシールドマシン100が地山を掘削しながら前進していくと、第一機体1と第二機体2との間の地山は、第一機体1又は第二機体2のコピーカッターにより掘削され、第一機体1又は第二機体2に取り込まれるため、第一機体1が組み立てる第一トンネル壁体W1と、第二機体2が組み立てる第二トンネル壁体W2と、の間には、地山が残らない。
また、第一トンネル壁体W1、及び第二トンネル壁体W2は、それぞれ独立した円筒状になっている(図2に示したように、第一トンネル壁体W1と第二トンネル壁体W2とは離間している)。
【0023】
図3(a)に示したように、シールドマシン100の前端部が、発進立坑Sの側壁Saに接している間は、地山Gの地下水が側壁Saによって遮られるため、地下水がシールドマシン100の後方に流れ込むことはないが、図3(b)に示したように、シールドマシン100が前進し、その前端部が側壁Saを離れ、その奥の地山Gへ進入すると、地下水が側壁Saとシールドマシン100との間を通ってシールドマシン100の後方に流れ込み、第一トンネル壁体W1と第二トンネル壁体W2との間は水みちPWになる。
【0024】
〔1-2.止水部材〕
次に、本発明の実施形態に係る止水方法で用いられる止水部材200について説明する。
図4は止水部材200の正面図、図5図4のAで囲んだ部分の部分拡大図、図6(a)は図4のBで囲んだ部分の部分拡大図、図6(b)は図4のC-C断面図、図7図4のD-D断面図である。
【0025】
本実施形態に係る止水部材200は、図4に示したように、第一環状部4と、第二環状部5と、部材連結部6と、を有する。
本実施形態に係る止水部材200は、各部4~6が鋼材で形成されている。
【0026】
第一環状部4は、シールドマシン100の第一機体1の後部において組み立てられる第一仮設セグメントS1又は第一トンネル壁体W1を囲むものである。
本実施形態に係る第一環状部4の外径は、第一機体1の外径と略等しくなっている。
また、第一環状部4の内径は、第一トンネル壁体W1の外径よりも、わずか(例えば、5mmの隙間ができる程度)に大きくなっている。
本実施形態に係る第一環状部4は、複数の円弧状部材41からなる。
本実施形態に係る一の円弧状部材41は、図5に示したように、端部に、第一環状部4(対応する環状部)の内周面4aと外周面4bとの間に位置し、第一環状部4の中心を向く接合面41aを有する。
一の円弧状部材41につなぎ合わせる他の円弧状部材41は、端部に、内周面4aと外周面4bとの間に位置し、接合面41aと対向する被接合面41bを有する。
【0027】
第二環状部5は、シールドマシン100の第二機体2の後部において組み立てられる第二仮設セグメントS2又は第二トンネル壁体W2を囲むものである。
本実施形態に係る第二環状部5の外径は、第二機体2の外径と略等しくなっている。
また、第二環状部5の内径は、第二トンネル壁体W2の外径よりも、わずか(例えば、5mmの隙間ができる程度)に大きくなっている。
本実施形態に係る第二環状部5は、図4に示したように、複数の円弧状部材51からなる。
各円弧状部材51は、図5に示したように、端部に、第一環状部4の各円弧状部材41と同様の接合面51a又は被接合面51bを有している。
【0028】
本実施形態に係る第一,第二環状部4,5は、上述したように、複数の円弧状部材41,51からなり、それぞれが接合面41a,51a、又は被接合面41b,51bを有することにより、径の大きな仮設セグメント(詳細後述)の周囲に止水部材200を容易に配置することができる。
また、仮設セグメントに組み立て誤差、変形等が生じていても、第一,第二環状部4,5の径や形状を仮設セグメントの組み立て誤差、変形等に対応させることができる。
また、隣接する円弧状部材41,51が段違いにならないので、第一,第二環状部4,5の内周面4a,5a及び外周面4b,5bが滑らかになる。
【0029】
部材連結部6は、第一環状部4と第二環状部5とを、第一環状部4と第二環状部5との間を閉塞しつつ連結する。
部材連結部6の正面視形状は、図4に示したように、機体連結部3の正面視形状(図1参照)と略等しくなっている。
本実施形態に係る部材連結部6は、図6に示したように、第一機体1及び第二機体2が並ぶ方向(図6(a)における上下方向)及びシールドマシン100進行方向(図6(a)における紙面と直交する方向)と直交する第一方向側(例えば、図6における左側)に位置する第一部材61と、第一方向と反対側(例えば、図6における右側)に位置する第二部材62と、に分割可能になっている。
【0030】
第一,第二部材61,62は、端部に、第一,第二環状部4,5の各円弧状部材41,51と同様の接合面61a,62a又は被接合面61b,62bを有している。
【0031】
また、部材連結部6は、第一部材61と、第二部材62とが、ボルト63で接合可能になっている。
本実施形態に係る部材連結部6は、図6(b)に示したように、第一部材61と、第二部材62とが、複数のボルト63で接合されるようになっている。
また、本実施形態に係る部材連結部6は、ボルト63を第一,第二部材61,62の内部で螺合させるようになっている。
第一,第二部材61,62は、ボルト63の頭部に対応する位置に開口61c,62cを有している。このため、部材連結部6が第一,第二トンネル壁体W1,W2の間に位置する状態であっても、工具を開口61c,62cに通すことで、ボルト63を回すことができる。
【0032】
止水部材200は、シールドマシン100進行方向の幅w(図6(b)参照)が、発進立坑Sの側壁Saにおける坑口Sb周囲に形成された坑口コンクリートScの内周面に沿って設けられたパッキンP1の後端(発進立坑S側の端、≒坑口コンクリートScの内側壁面)から、坑口コンクリートScの内周面であってパッキンP1よりも地山(側壁Saよりもシールドマシン進行方向に存在する図示しない部分)側に設けられた第二パッキンP2までの距離d1図8参照)を超えないようになっている。
本実施形態に係る止水部材200は、更にパッキンP1の後端からパッキンP1の前端(地山側の端)までの距離d2を超えないように(例えば、300mm程度と)なっている。
【0033】
また、本実施形態に係る止水部材200は、図7に示したように、第一環状部4の内周面4aの前端部が面取りされている。
また、本実施形態に係る止水部材200は、第二環状部5の内周面5aの前端部、及び部材連結部6における、第一,第二環状部4,5の内周面4a,5aと連続する面も面取りされている。
【0034】
なお、ここでは、止水部材200として、第一,第二環状部4,5の外径が両方とも第一,第二機体1,2の外径と略等しいものを例示したが、第一環状部4又は第二環状部5の外径は、対応する機体の外径と異なっていてもよい。
また、ここでは、止水部材200として、第一,第二環状部4,5が両方とも円弧状部材41,51からなるものを例示したが、第一環状部4又は第二環状部5は、複数の円弧状部材に分割されないようになっていてもよい。
また、ここでは、組み立て済みの止水部材200を例示したが、本止水方法を実施する前の止水部材200は、通常、複数の部材41,51,61,62に分割されている。
【0035】
〔1-3.坑口の止水方法〕
次に、上記止水部材200を用いた止水方法について説明する。
図8~12は施工途中のシールドトンネルを示す縦断面図、図13は止水後の坑口を示す正面図及び縦断面図である。
なお、図8~12における括弧書きの符号は、後述する第二実施形態のものである。
【0036】
この止水方法は、上記シールドマシン100を用いたシールドトンネルの施工において、シールドマシン100の発進立坑Sの側壁Sa(坑口コンクリートSc)に設けられた坑口Sbの止水を行うためのものである。
この止水方法は、第一組立工程と、第二組立工程と、配置工程と、押込工程と、固着工程と、を有する。
なお、図8~12には、第一機体1と第二機体2が鉛直方向に並ぶシールドマシン100を例示したが、このときのシールドマシン100は、第一機体1と第二機体2が水平方向に並んでいてもよい。
【0037】
(第一組立工程)
初めの第一組立工程では、図8に示したように、シールドマシン100の後部100aが坑口Sbから発進立坑S内に出た状態となっている。このとき、発進立坑Sの中であって、坑口Sbの中に位置するシールドマシン100の後部100aにおいて、仮設セグメントS1,S2を組み立てる。
上述したように、本実施形態に係るシールド工法では、シールドマシン100として、第一機体1と、第二機体2と、を有するものを用いるため、本実施形態に係る第一組立工程では、第一機体1の後部において第一仮設セグメントS1を組み立てるとともに、第二機体2の後部において第二仮設セグメントS2を組み立てる。
また、第一,第二仮設セグメントS1,S2は、シールドマシン100が前進する際の反力を得るためのものであるため、本実施形態に係る第一組立工程では、第一,第二仮設セグメントS1,S2を、その後端部が発進立坑Sにおける坑口Sbの反対側の側壁Saに支持され、坑口Sbへ向かって延びるように組み立てる。
また、第一,第二仮設セグメントS1,S2は、シールドマシン100がこの後に組み立てるトンネル壁体W1,W2に接続される。このため、本実施形態に係る第一組立工程では、複数の第一仮設セグメントS1を、第一トンネル壁体W1と同径の円筒状に組み立てるとともに、複数の第二仮設セグメントS2を、第二トンネル壁体W2と同径の円筒状に組み立てる。
【0038】
(第二組立工程)
仮設セグメントを組み立てた後は、第二組立工程に移る。
この第二組立工程では、図9に示したように、シールドマシン100を前進させ、複数のセグメントからなる第一,第二トンネル壁体W1,W2を、第一,第二仮設セグメントS1,S2に接続するように組み立てる。
また、本実施形態に係る第二組立工程では、第一仮設セグメントS1の先端部に、当該第一仮設セグメントS1と同径の円筒状の第一トンネル壁体W1を、互いの円環状の端面が接するように接続するとともに、第二仮設セグメントS2の先端部に、当該第二仮設セグメントS2と同径の円筒状の第二トンネル壁体W2を、第一トンネル壁体W1を第一仮設セグメントS1に接続する場合と同様に接続する。
【0039】
(配置工程)
第一,第二トンネル壁体W1,W2を組み立て始めた後は、配置工程に移る。
この配置工程では、図10に示したように、第一,第二仮設セグメントS1,S2に、坑口コンクリートScの内周面に沿って設けられたパッキンP1と第一,第二トンネル壁体W1,W2の各後端部W11,W21との間にできる空間を閉塞する形状を有する止水部材200を、第一,第二仮設セグメントS1,S2の周囲を囲むように配置する。
上述したように、第一,第二トンネル壁体W1,W2には、円筒状に組み立てられた複数の第一,二仮設セグメントS1,S2がそれぞれ接続されているため、本実施形態に係る止水方法では、止水部材200として、図4に示したような、第一環状部4と、第二環状部5と、部材連結部6と、を有するもの(正面視8の字状のもの)を用いる。
【0040】
本実施形態に係る止水方法では、上述したように、第一,第二環状部4,5が、複数の円弧状部材41,51からなるものを用いる。
このため、本実施形態に係る配置工程では、複数の円弧状部材をつなぎ合わせることにより、第一,第二環状部4,5を、第一,第二仮設セグメントS1,S2(対応する仮設セグメント)の周囲に配置する。
こうすることで、径の大きな第一,第二仮設セグメントS1,S2の周囲に止水部材200を容易に配置することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る配置工程では、接合面41a,51aと被接合面41b,51bとを接触させ、一の円弧状部材41,51と他の円弧状部材41,51とを重ね溶接する。
また、本実施形態に係る配置工程では、円弧状部材41の被接合面41bと第一,第二部材61,62の接合面61a,62aを接触させ、円弧状部材41と第一,第二部材61,62とを外周面4b側から重ね溶接する。
また、円弧状部材51の接合面51aと第一,第二部材61,62の被接合面61b,62bを接触させ、円弧状部材51と第一,第二部材61,62とを外周面5b側から重ね溶接する。
【0042】
また、本実施形態に係る止水方法では、止水部材200として、部材連結部6が、第一部材61と、第二部材62と、に分割可能であり、第一部材61と、第二部材62とが、ボルト63で接合可能なものを用いる。
また、本実施形態に係る配置工程では、全ての円弧状部材41,51をつなぎ合わせ、第一,第二環状部4,5端部の円弧状部材41,51と第一,第二部材61,62をつなぎ合わせた後、最後に第一部材61と第二部材62とをボルト63で接合させる。
こうすることで、第一,第二仮設セグメントS1,S2に組み立て誤差、変形等が生じていても、第一,第二環状部4,5の径や形状を第一,第二仮設セグメントS1,S2の組み立て誤差、変形等に対応させることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る止水方法では、図5に示したように、一の円弧状部材41として、端部に接合面41aを有するものを用い、一の円弧状部材41につなぎ合わせる他の円弧状部材として、端部に被接合面41bを有するものを用いる。
こうすることで、隣接する円弧状部材41,51が段違いにならないので、第一,第二環状部4,5の内周面4a,5a及び外周面4b,5bが滑らかになる。
【0044】
以上のようにして止水部材200が第一,第二仮設セグメントS1,S2の周囲に設置されると、第一環状部4が第一仮設セグメントS1を囲み、第二環状部5が第二仮設セグメントS2を囲む。
なお、本実施形態に係る配置工程では、複数の円弧状部材41,51及び第一,第二部材61,62を、第一,第二トンネル壁体W1,W2の周囲でつなぎ合わせたが、別の場所でつなぎ合わせた(止水部材200の形にした)ものを、第一,第二トンネル壁体W1,W2に通してもよい。
【0045】
(押込工程)
止水部材200を配置した後は、押込工程に移る。
この押込工程では、図11に示したように、第一,第二仮設セグメントS1,S2の周囲に配置された止水部材200を、パッキンP1と第一,第二トンネル壁体W1,W2の各後端部W11,W21(発進立坑S側の部位)との間へ押し込む。
上述したように、本実施形態に係る止水方法では、止水部材200として、上述したような、第一環状部4と、第二環状部5と、部材連結部6と、を有するものを用いるため、第一環状部4をパッキンP1と第一トンネル壁体W1の後端部W11との間へ押し込み、第二環状部5をパッキンP1と第二トンネル壁体W2の後端部W21との間へ押し込む。
その際、部材連結部6を、第一トンネル壁体W1の後端部W11と第二トンネル壁体W2の後端部W21との間へ押し込むことになる。
【0046】
本実施形態に係る押込工程では、シールドマシン100の後端部が、パッキンP1を離れてから第二パッキンP2を離れるまでの間に、止水部材200を押し込む。
こうすることで、第二パッキンP2が地山からしみ出た地下水を遮っている間に、止水部材200が坑口Sbを閉塞するため、地下水を発進立坑S内に全く出水させることなく坑口Sbを止水することができる。
【0047】
また、ここで用いられる止水部材200は、図7に示したように、各環状部4,5の内周面4a,5aの前端部が面取りされている。
このため、第一,第二仮設セグメントS1,S2の組み立て誤差、変形等により、円筒状に組まれた複数の第一,第二仮設セグメントS1,S2の外周面に凹凸が生じていても、その凹凸に止水部材200の前端が引っ掛かり、止水部材200の押し込みが困難になるのを防ぐことができる。
【0048】
また、ここで用いられる止水部材200は、上述したように、シールドマシン100進行方向の幅w(図6(b)参照)が、パッキンP1の後端から第二パッキンP2までの距離d1図8参照)を超えないようになっている。
このため、シールドマシン100の後端部が第二パッキンP2に接している段階で坑口Sbを閉塞することができる上、坑口Sbを閉塞した後の止水部材200が発進立坑S内に出っ張ることが無くなる。
【0049】
また、ここで用いられる止水部材200は、上述したように、第一環状部4の外径及び第二環状部5の外径が、対応する機体の外径と等しい。
このため、パッキンP1は、シールドマシン100のスキンプレートに接していた時と同じ強さで止水部材200を押圧することになる(段落ちが無い)。その結果、パッキンP1に接する部材がスキンプレートから止水部材200に置き換わるときの出水のリスクを低減することができる。
【0050】
また、上述したように、本実施形態に係る止水部材200の外周面4b,5bは滑らかなので、押込工程の後、止水部材200の外周面4b,5bは、全体に亘ってパッキンP1と密着する。このため、本実施形態に係る止水部材200を用いることで、パッキンP1と止水部材200との間の間隙を塞ぐといった追加工程が不要になる。
【0051】
(固着工程)
止水部材200を押し込んだ後は、固着工程に移る。
この固着工程では、パッキンP1と第一,第二トンネル壁体W1,W2の各後端部W11,W21との間に押し込まれた止水部材200を、各後端部W11,W21に固着させる。
本実施形態に係る止水部材200は、上述したように鋼材で形成されている。このため、本実施形態に係る固着工程では、溶接によって止水部材200を第一,第二トンネル壁体W1,W2の各後端部W11,W21にそれぞれ固着させる。
その際、図12に示したように、各後端部W11,W21と止水部材200の内周面4a,5aとの間にできる隙間を全て、溶加材Mによって全て閉塞する。こうすることで、第一,第二トンネル壁体W1,W2と止水部材200との間の水の通り抜けができなくなる。
上述したように、止水部材200の内周面4a,5aは滑らかなので、施工者は、第一,第二トンネル壁体W1,W2と止水部材200との溶接を容易に行うことができる。
【0052】
(止水後)
止水部材200の固着後は、図13に示したように、坑口コンクリートScのパッキンP1と第一トンネル壁体W1との間が第一環状部4及び溶加材Mによって閉塞され、パッキンP1と第二トンネル壁体W2との間が第二環状部5及び溶加材Mによって閉塞される。
その際、第一トンネル壁体W1と第二トンネル壁体W2との間も、パッキンP1、部材連結部6及び溶加材Mによって閉塞される。
その後、シールドマシン100が前進し、シールドマシン100の後端部が第二パッキンP2から離れると、地山からしみ出してきた地下水が第一,第二トンネル壁体W1,W2の周囲に満たされることになる。しかし、坑口コンクリートScのパッキンP1と第一,第二トンネル壁体W1,W2との間は、パッキンP1、部材連結部6及び溶加材Mによって閉塞されているため、地下水が発進立坑Sに出水することはない。
【0053】
〔1-4.効果〕
以上説明してきたように、本実施形態に係る止水方法は、発進立坑Sの中であって、坑口Sbの中に位置するシールドマシン100の後部において、第一,第二仮設セグメントS1,S2を組み立てる第一組立工程と、シールドマシン100を前進させ、坑口Sbの中に、第一,第二トンネル壁体W1,W2を、第一,第二仮設セグメントS1,S2に接続するように組み立てる第二組立工程と、第一,第二仮設セグメントS1,S2に、坑口コンクリートScの内周面に沿って設けられたパッキンP1と第一,第二トンネル壁体W1,W2の各後端部W11,W21との間にできる空間を閉塞する8の字状を有する止水部材200を、第一,第二仮設セグメントS1,S2の周囲を囲むように配置する配置工程と、第一,第二仮設セグメントS1,S2の周囲に配置された止水部材200を、パッキンP1と第一,第二トンネル壁体W1,W2の後端部W11,W21との間へ押し込む押込工程と、パッキンP1と後端部W11,W21との間に押し込まれた止水部材200を、後端部W11,W21に固着させる固着工程と、を有する。
【0054】
第一,第二仮設セグメントS1,S2は、固着工程の後に撤去することができるため、従来の止水方法で用いられた子エントランスと異なり、発進立坑S内の躯体構築の支障とならない。
また、止水部材200は、従来の止水方法で用いられた一体化セグメントと異なり、立坑内に大掛かりな推進設備を設置することなく(小型の油圧ジャッキを用いて)坑口Sbに押し込むことができる。
このため、本実施形態に係る止水方法によれば、H&V工法のような、正面視形状が特殊なシールドマシン100を用いるシールド工法において、発進立坑Sの幅が小さくても坑口Sbの止水を確実に行うことができるとともに、シールドマシン100が前進したり坑口Sbから発進立坑S側に突出する設備を撤去したりした後も坑口Sbが止水された状態を維持することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る止水方法は、従来の親子エントランスを用いた方法と異なり、止水部材200をシールドマシン100に連結させないため、止水部材200の配置や形状が、シールドマシン100の掘進精度の影響を受けることが無い。
また、本実施形態に係る止水方法は、止水部材200の構造が比較的単純であるため、従来の親子エントランスや一体化セグメントを用いた方法よりも、施工の手間やコストを低減することができる。
【0056】
<2.第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
なお、ここでは、上記第一実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
〔2-1.シールドマシン〕
まず、本実施形態に係る止水方法が適用されたシールド工法に用いられるシールドマシン100Aについて説明する。
図14は、シールドマシン100Aを示す正面図である。
【0058】
本実施形態に係るシールドマシン100Aは、図14に示したように、一つの機体からなる。
また、本実施形態に係るシールドマシン100Aは、正面視略矩形となっている。
すなわち、シールドマシン100Aの上面、下面、及び左右両側面は、略平面になっている。
また、シールドマシン100Aの四隅は、曲面になっている。
また、本実施形態に係るシールドマシン100Aは、スキンプレートPにおける平面部分(上面、下面及び左右両側面をなす部分)の厚さT1が、強度を保つために、曲面部分(四隅をなす部分)の厚さT2よりも大きくなっている(例えば、平面部分の外周面が外側に緩やかに湾曲している)。
また、シールドマシン100Aは、その後部(掘削してできた空間)において、複数のセグメントからなる角筒状の第三トンネル壁体W3を組み立てていく(図9~12参照)。
【0059】
このように構成されたシールドマシン100Aが地山を掘削しながら前進していくと、シールドマシン100Aが組み立てる第三トンネル壁体W3を組み立てていく。
この第三トンネル壁体W3は、上面、下面及び左右両側面と、四隅と、で厚さが等しい(厚さが均一である)のに対し、シールドマシン100Aのスキンプレートは、上述したように、平面部分の厚さT1が、曲面部分の厚さT2よりも大きい。このため、第三トンネル壁体W3の上面、下面及び左右両側面と坑口との間にできる空隙は、第三トンネル壁体W3の四隅と坑口との間の空隙よりも大きくなる。
その結果、第三トンネル壁体W3の上面、下面及び左右両側面とパッキンP1との間は、第三トンネル壁体W3の四隅とパッキンP1との間に比べて出水のリスクが高くなる。
【0060】
〔2-2.止水部材〕
次に、本発明の実施形態に係る止水方法で用いられる止水部材200Aについて説明する。
図15は止水部材200Aを示す正面図である。
【0061】
止水部材200Aは、図15に示したように、矩形枠状となっている。
本実施形態に係る止水部材200Aの幅及び高さは、シールドマシン100Aの幅及び高さと略等しくなっている。
また、止水部材200Aの左右の内側側面間の距離及び上下の内側側面間の距離は、第三トンネル壁体W3の幅及び高さよりも、わずか(例えば、5mmの隙間ができる程度)に大きくなっている。
また、本実施形態に係る止水部材200Aは、直線部7と、曲線部8と、からなる。
直線部7は、第三トンネル壁体W3の平面部分(上面、下面、及び左右両側面)に接する部材である。
曲線部8は、第三トンネル壁体W3の曲面部分(四隅)に接する部材である。
また、本実施形態に係る止水部材200Aは、直線部7が、曲線部8よりも、シールドマシン100AのスキンプレートPにおける平面部分の厚さT1と曲面部分の厚さT2の差の分だけ太くなっている。
【0062】
なお、本実施形態に係る止水部材200Aの他の具体的構成(材質、複数部材からなる、部材端部の接合面・被接合面、内周面前端部の面取り、シールドマシン100A進行方向の幅等)のうちの少なくとも一部は、第一実施形態に係る止水部材200と同様になっていてもよい。
【0063】
〔2-3.坑口の止水方法〕
次に、上記止水部材200Aを用いた止水方法について説明する。
【0064】
この止水方法は、上記シールドマシン100Aを用いたシールドトンネルの施工において、シールドマシン100Aの発進立坑Sの側壁Sa(坑口コンクリートSc)に設けられた坑口Sbの止水を行うためのものである。
本実施形態に係る止水方法は、上記第一実施形態に係る止水方法と同様、第一組立工程と、第二組立工程と、配置工程と、押込工程と、固着工程と、を有する(図8~12参照)。
本実施形態に係る各工程は、坑口Sb内のトンネル壁体が第三トンネル壁体W3のみである点、第三トンネル壁体W3が角筒状である点、止水部材200Aの正面視形状が矩形枠状である点を除き、上記第一実施形態に係る各工程と同様に進められる。
【0065】
(止水後)
止水部材200Aの固着後は、坑口SbのパッキンP1と第三トンネル壁体W3との間が止水部材200A及び溶加材Mによって閉塞される。
その際、パッキンP1は、第三トンネル壁体W3の平面部分(上面、下面、及び左右両側面)を、曲面部分(四隅)と同程度の力で押さえつける。
その後、シールドマシン100Aが前進し、シールドマシン100Aの後端部が第二パッキンP2から離れると、地山からしみ出してきた地下水が第三トンネル壁体W3の周囲に満たされることになる。しかし、坑口SbのパッキンP1と第三トンネル壁体W3との間は、パッキンP1、止水部材200A及び溶加材Mによって閉塞されている上、パッキンP1は第三トンネル壁体W3全周を均等に押さえつけているため、地下水が発進立坑Sに出水することはない。
【0066】
〔2-4.効果〕
以上説明してきた、本実施形態に係る止水方法は、発進立坑Sの側壁に設けられた坑口Sbを止水するためのものであって、発進立坑Sの中であって、坑口Sbの中に位置するシールドマシン100の後部において、第三仮設セグメントS3を組み立てる第一組立工程と、シールドマシン100を前進させ、坑口Sbの中に、複数のセグメントからなる第三トンネル壁体W3を、第三仮設セグメントS3に接続するように組み立てる第二組立工程と、第三仮設セグメントS3に、坑口Sbの内周面に沿って設けられたパッキンP1と第三トンネル壁体W3の後端部W31との間にできる空間を閉塞する矩形枠状を有する止水部材200Aを、当該第三仮設セグメントS3の周囲を囲むように配置する配置工程と、第三仮設セグメントS3の周囲に配置された止水部材200Aを、パッキンP1と後端部W31との間へ押し込む押込工程と、パッキンP1と後端部W31との間に押し込まれた止水部材200Aを、後端部W31に固着させる固着工程と、を有する。
【0067】
このため、本実施形態に係る止水方法によれば、上記第一実施形態に係る止水方法と同様、正面視形状が特殊なシールドマシン100Aを用いるシールド工法において、発進立坑Sの幅が小さくても坑口Sbの止水を確実に行うことができるとともに、シールドマシン100Aが前進したり坑口Sbから発進立坑S側に突出する設備を撤去したりした後も坑口Sbが止水された状態を維持することができる。
【符号の説明】
【0068】
100,100A シールドマシン
100a 後部
1 第一機体
2 第二機体
3 機体連結部
P スキンプレート
1 スキンプレートの平面部分の厚さ
2 スキンプレートの曲面部分の厚さ
200,200A 止水部材
4 第一環状部
4a 内周面
4b 外周面
41 円弧状部材
41a 接合面
41b 被接合面
5 第二環状部
5a 内周面
5b 外周面
51 円弧状部材
51a 接合面
51b 被接合面
6 部材連結部
61 第一部材
61a,61b 接合面、被接合面
61c 開口
62 第二部材
62a 接合面
62b 被接合面
62c 開口
63 ボルト
7 直線部
8 曲線部
G 地山
M 溶加材
S 発進立坑
Sa 側壁
Sb 坑口
1 パッキン
2 第二パッキン
1 第一仮設セグメント
2 第二仮設セグメント
1 第一トンネル壁体
11 後端部
2 第二トンネル壁体
21 後端部
3 第三トンネル壁体
31 後端部
1 パッキンの後端から第二パッキンまでの距離
2 パッキンの後端からパッキンの前端までの距離
w 止水部材のシールドマシン進行方向の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15