(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】電池の充電方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20250218BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20250218BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250218BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250218BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
H01M10/44 Q
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
H02J7/04 A
(21)【出願番号】P 2021156024
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福元 俊吏
(72)【発明者】
【氏名】上井 健太
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-064781(JP,A)
【文献】特開2017-108604(JP,A)
【文献】特開2019-013109(JP,A)
【文献】特開2013-135510(JP,A)
【文献】国際公開第2014/147973(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/092811(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0202299(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
G01R31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の充電方法であって、
前記電池の容量劣化の度合を示す容量劣化係数を推定するステップと、
前記電池の経時劣化の度合いを示す経時劣化係数を算出するステップと、
前記容量劣化係数と前記経時劣化係数とのうち小さい方の係数に基づいて制限電流値を算出し、その算出した制限電流値で前記電池の充電を行うステップとを含む
ことを特徴とする電池の充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池の状態(使用履歴、劣化状態)に基づいて、充電時の最大充電電流値を算出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、電池の劣化状態を考慮して充電時の電流値を算出しているものの、電池の劣化状態を正確に把握することは難しい。そのため、電池容量の推定誤差が大きく、容量劣化状態の推定精度が低い場合には、充電電流値が許容電流値を超過してしまい、あるいは予め必要以上に許容電流値を制限することになるので、適切な充電を行うことができない虞がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、電池容量の推定誤差が大きい場合でも適切な充電を行うことができる電池の充電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電池の充電方法であって、前記電池の容量劣化の度合を示す容量劣化係数を推定するステップと、前記電池の経時劣化の度合いを示す経時劣化係数を算出するステップと、前記容量劣化係数と前記経時劣化係数とのうち小さい方の係数に基づいて制限電流値を算出し、その算出した制限電流値で前記電池の充電を行うステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、容量劣化係数と経時劣化係数とのうち小さい方の係数を用いて充電電流値を設定するので、電池容量の推定誤差が大きい場合でも適切な充電を行うことができる。電池容量の推定誤差が大きく、容量劣化係数が実際の劣化状態よりも大きな値に推定された場合には、小さい方の係数である経時劣化係数を用いて制限電流値を算出するため、電池の劣化状態に応じた適切な充電を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態における充電システムを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、電池温度が25℃の場合の許容電流値マップを示すマップ図である。
【
図3】
図3は、推定誤差がない時の容量維持率と容量劣化係数との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、推定誤差X%時の容量維持率と容量劣化係数との関係を示す図である。
【
図5】
図5は、推定誤差10%時の容量維持率と容量劣化係数との関係を示す図である。
【
図6】
図6は、容量推定の推定誤差を反映した容量維持率と容量劣化係数との関係を示すマップ図である。
【
図7】
図7は、経時劣化係数マップを示すマップ図である。
【
図8】
図8は、電池の充電方法を示すフローチャート図である。
【
図9】
図9は、容量劣化係数と経時劣化係数とを併用した場合を示すマップ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における電池の充電方法について具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0010】
図1は、実施形態における充電システムを模式的に示す図である。充電システム1は、電池2の充電を行う際に、電池2と充電器3とが電気的に接続された状態となる。この充電システム1は、充電制御装置10を備え、充電時に充電制御装置10が充電電流値を制御する。
【0011】
電池2は、二次電池であり、例えばリチウムイオン電池などにより構成されている。この電池2は、複数の電池セルにより構成された組電池である。放電時、電池2に蓄えられた電力がモータなどに供給される。充電時、充電システム1では充電器3を介して外部電源から供給される電力が電池2に蓄えられる。
【0012】
充電器3は、外部電源の電力を電池2に供給することができる装置である。電池2の充電を行う場合、電池2を搭載する装置に充電器3を取り付け、充電器3を介して電池2と外部電源とが電気的に接続される。電池2の充電を行わない場合、電池2を搭載する装置から充電器3を取り外すことが可能である。
【0013】
充電システム1では、
図1に示すように、電池2を搭載する装置に設けられた第1接続部21に、充電器3に設けられた第2接続部31が接続される。第1接続部21は、電池2側の接続部であって、電池2の正極に接続された正極側接続部21aと、電池2の負極に接続された負極側接続部21bとを含む。第2接続部31は、充電器3側の接続部であって、第1接続部21の正極側接続部21aに接続される正極側接続部31aと、第1接続部21の負極側接続部21bに接続される負極側接続部31bとを含む。そして、電池2側の正極側接続部21aと充電器3側の正極側接続部31aとが接続され、かつ電池2側の負極側接続部21bと充電器3側の負極側接続部31bとが接続されることにより、充電時の電気回路が形成される。
【0014】
例えば電池2を搭載した装置が車両である場合、電池2は車載バッテリであり、充電器3が充電スタンドなどの充電設備である。この場合、放電時には電池2に蓄えられた電力を走行用モータに供給することができる。充電時には、充電器3に設けられた充電ケーブルが、車両に設けられた充電ポートに接続されることにより、電池2と外部電源とが電気的に接続されて充電可能状態となる。これにより、外部電源から供給される電力を電池2に充電することができる。
【0015】
充電制御装置10は、電池2の状態に基づいて充電電流値を制御する電子制御装置である。この電子制御装置は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェースを備えたマイクロコンピュータを含んで構成されている。そのため、充電制御装置10はROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。例えば、充電制御装置10は、電池2を搭載した装置に設けられている。
【0016】
また、充電制御装置10には、各種センサからの信号が入力される。例えば、電池2の電圧と温度とを検出する電圧・温度検出装置4や、充電時の電流値を検出する電流検出装置5からの信号が充電制御装置10に入力される。電圧・温度検出装置4は、電池2が複数のセルにより構成されている場合、各セルの電圧と温度とをそれぞれ検出する。電流検出装置5は、電池2と充電器3とが電気的に接続された電気回路を流れる電流の値を検出する。この電流検出装置5は、
図1に示すよう、電池2の負極側に配置されており、充電器3側から電池2に流れ込む電流の値を検出する。
【0017】
そして、充電制御装置10は、電圧・温度検出装置4および電流検出装置5から入力された信号に基づいて充電制御を実行する。すなわち、充電制御装置10は、現在の電池2の状態に応じた充電制御を実行する。充電制御は、充電電流値が電池2の許容電流値Idcを超えない範囲で充電を行うための制御である。充電制御装置10は、充電中に現在の電池2の状態に応じた所望の電流値に充電電流値を制御する。その際、充電制御装置10は、充電電流値を制御するために、充電器3に制御信号を出力する。
【0018】
図1に示すように、充電制御装置10は、演算部11を備えている。
【0019】
演算部11は、電圧・温度検出装置4により検出した電池2の電圧と温度とに基づいて、電池2の充電状態であるSOC(State of charge)を算出する。電圧・温度検出装置4によって充電中の電池2の電圧と温度とを検出できるため、演算部11は充電中の電池2の電圧と温度とに基づいた現在のSOCを算出することができる。
【0020】
また、演算部11は、電池2の容量維持率などの使用履歴に基づいて電池2の劣化量(劣化状態)を推定する。つまり、演算部11は、電池2の容量劣化の度合を示す係数である容量劣化係数Dcapを推定する。
【0021】
また、演算部11は、電池2を使用開始してからの時間経過による劣化係数を算出する。つまり、演算部11は、電池2の経時劣化の度合を示す係数である経時劣化係数Dtimeを算出する。
【0022】
そして、充電制御装置10が充電制御を実行する際、演算部11は現在の電池状態(温度、SOC)に基づいて許容電流値Idcを算出する。さらに、演算部11は、現在の容量推定値に応じた容量劣化係数Dcapと、電池2を使用開始からの経過時間に応じた経時劣化係数Dtimeとのうち、小さい方の係数を許容電流値Idcに掛け合わせた制限電流値Ilimを算出する。そして、充電制御装置10は制限電流値Ilimで電池2の充電を行う。つまり、充電時、充電制御装置10により充電電流値が制限電流値Ilimに制御される。
【0023】
ここで、
図2~
図7を参照して、許容電流値マップと、容量劣化係数Dcapと、経時劣化係数Dtimeとについてより詳細に説明する。
【0024】
まず、
図2を参照して、許容電流値マップについて説明する。
【0025】
許容電流値マップは、電池2の温度およびSOCごとに予め設定されたマップである。実施形態における充電方法では、現在の電池2の状態(温度、SOC)に応じた許容電流値Idcを算出する際、予め設定された許容電流値マップを参照する。すなわち、充電制御装置10は許容電流値Idcを算出する際に許容電流値マップを用いる。
【0026】
例えば、電池2の温度が25℃の場合、SOCごとに充電レートが設定されている。充電レートは、充電のスピードを表すものであり、電流値の大きさを相対的に表現したものである。定電流充放電測定の場合、電池2の理論容量を維持時間で完全に充電させる電流値の大きさを1Cと定義する。充電時の1Cは、1時間で完全に放電した状態から満充電状態になる時の電流値である。
図2に示すように、電池温度が25の場合、SOCが30%程度よりも小さい場合に充電レートは1Cとなり、SOCが30%程度よりも大きい場合に充電レートは1C未満となる。この例では、SOC30%程度を境にして充電レートが1Cとなる場合と1C未満となる場合とに分かれる。SOCが30%程度よりも大きい範囲では、SOCが増加するにつれて充電レートが徐々に小さくなる。
【0027】
許容電流値マップの作成方法について説明すると、劣化してない電池2において、電池2の各温度とSOCごとにリチウム析出が発生しない許容電流値Idcを実験により求める。そして、実験により求められた許容電流値Idcを電池2の各温度とSOCごとにマップ化する。これにより、充電制御装置10は、電池2の各温度とSOCごとに許容電流値マップを予め設定することができる。
【0028】
次に、
図3~
図6を参照して、容量劣化係数Dcapについて説明する。
図3は、推定誤差がない時の容量維持率と容量劣化係数との関係を示す図である。
図4は、推定誤差X%時の容量維持率と容量劣化係数との関係を示す図である。
図5は、推定誤差10%時の容量維持率と容量劣化係数との関係を示す図である。
図6は、容量推定の推定誤差を反映した容量維持率と容量劣化係数との関係を示すマップ図である。
【0029】
容量劣化係数マップは、使用履歴等から算出した電池容量の推定値に基づいて求められる容量維持率と、その劣化係数である容量劣化係数Dcapとの関係を示すマップである。電池2の容量維持率は、容量推定の推定誤差を反映した値に設定される。
【0030】
例えば、容量推定の推定誤差がない場合、
図3に示すように、容量維持率が「100」%の時に容量劣化係数Dcapは「1.00」に設定され、容量維持率が「50」%の時に容量劣化係数Dcapが「0.5」に設定される。
【0031】
容量推定の推定誤差が「X%」の場合、
図4に示すように、容量維持率は推定誤差X%を反映した「50+X」%や「60+X」%のように推定誤差を加算した値により表すことができる。そして、容量維持率が「50+X」の場合には容量劣化係数Dcapは「0.50」に設定され、容量維持率が「60+X」の場合には容量劣化係数Dcapは「0.60」に設定される。
【0032】
そのため、容量推定の推定誤差を「10%」の場合には、
図5に示すように、容量維持率は推定誤差10%を反映した「60」%の場合に容量劣化係数Dcapは「0.50」に設定され、容量維持率は推定誤差10%を反映した「70」%の場合に容量劣化係数Dcapは「0.60」に設定される。ただし、この状態だと、初期状態から、最大の容量劣化係数Dcapが「0.9」になってしまう。
【0033】
そして、容量劣化係数Dcapのマップは、
図6に示すように、電池容量の推定誤差が反映された容量維持率に基づいて容量劣化係数Dcapを決定することができるマップになっている。
【0034】
次に、
図7を参照して、経時劣化係数Dtimeについて説明する。
図7は、経時劣化係数マップを示すマップ図である。
【0035】
経時劣化係数マップは、電池2を使用開始してからの経過時間と、その劣化係数である経時劣化係数Dtimeとの関係を示すマップである。経過時間は、経時情報を用いて求めることが可能である。
【0036】
経時情報として、電池2を使用開始してからの経過日数を用いることができる。経過日数は、充電制御装置10が、電池2の使用開始からの経過時間を算出することにより求めることができる。
【0037】
例えば、電池2を搭載した装置が運用される中で、最も厳しい条件で運用された時の経過日数と、電池2の寿命から計算される劣化係数とを用いて、
図7に示すように、経過日数に応じた経時劣化係数マップを作成する。経時劣化係数マップは、容量推定誤差の影響を受けない。そのため、
図7に示すように、経過日数が「0」日の場合に経時劣化係数Dtimeは「1.00」に設定される。そして、経過日数の増加に伴い経時劣化係数Dtimeは小さくなり続ける。
【0038】
このように構成された充電制御装置10は、予め設定された許容電流値マップと、現在の電池2の状態に応じて設定された容量劣化係数Dcapおよび経時劣化係数Dtimeとを用いて、充電時の制限電流値Ilimを算出する。この制限電流値Ilimに基づいて電池2を充電する充電方法の一例を
図8に示す。
【0039】
図8は、電池の充電方法を示すフローチャート図である。
図8に示す制御は、充電制御装置10により実施される。
【0040】
充電制御装置10は、電池2の温度とSOCとに応じた許容電流値Idcを算出する(ステップS1)。ステップS1では、電圧・温度検出装置4により検出した電圧と温度とに基づいてSOCが算出されるとともに、そのSOCと電池温度とに基づいて許容電流値マップを参照して許容電流値Idcが算出される。この許容電流値マップは、予め設定されたマップである。
【0041】
充電制御装置10は、容量劣化係数Dcapが経時劣化係数Dtimeよりも大きいか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2では、容量推定の推定誤差を反映した容量維持率に基づいて容量劣化係数マップを参照し、容量劣化係数Dcapが決定される。さらに、ステップS2では、経時劣化係数マップを参照し、経過日数に応じた経時劣化係数Dtimeが決定される。このように現在の電池2の状態に応じた容量劣化係数Dcapと経時劣化係数Dtimeとが決定され、その劣化係数の大きさが比較される。
【0042】
容量劣化係数Dcapが経時劣化係数Dtimeよりも大きいと判定された場合(ステップS2:Yes)、充電制御装置10は、相対的に小さい方の係数となる経時劣化係数Dtimeを用いて、経時劣化係数Dtimeと許容電流値Idcとが掛け合わされた制限電流値Ilimを算出する(ステップS3)。ステップS3では、現在の電池2における経時劣化の度合を示す経時劣化係数Dtimeと、ステップS1で算出された許容電流値Idcとが掛け合わされる。
【0043】
容量劣化係数Dcapが経時劣化係数Dtime以下であると判定された場合(ステップS2:No)、充電制御装置10は、相対的に小さい方の係数となる容量劣化係数Dcapを用いて、容量劣化係数Dcapと許容電流値Idcとが掛け合わされた制限電流値Ilimを算出する(ステップS4)。ステップS4では、現在の電池2における容量劣化の度合を示す容量劣化係数Dcapと、ステップS1で算出された許容電流値Idcとが掛け合わされる。
【0044】
ステップS3,S4のいずれかの処理が実施されると、充電制御装置10は、制限電流値Ilimで充電を行う(ステップS5)。ステップS5では、電池2の充電電流値が制限電流値Ilimに制御されることにより、許容電流値Idcを超えない範囲で充電が行われる。
【0045】
そして、充電制御装置10は、電池2の充電量が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6では、現在の電池2の充電量が算出されるとともに、その充電量が予め設定された所定値以上であるか否かが判定される。例えば、充電制御装置10は、現在のSOCに基づいて電池2の充電量を算出することができる。あるいは、充電制御装置10は、電流検出装置5から入力される充電電流の検出値と、電圧・温度検出装置4から入力される電圧および温度の検出値とを用いて、電池2の充電量を算出してもよい。
【0046】
電池2の充電量が所定値以上であると判定された場合(ステップS6:Yes)、この制御ルーチンは終了する。この場合、充電制御装置10は電池2の充電を終了する。
【0047】
電池2の充電量が所定値以上ではないと判定された場合(ステップS6:No)、この制御ルーチンはステップS1にリターンする。
【0048】
以上説明した通り、実施形態によれば、容量劣化係数Dcapと経時劣化係数Dtimeとのうち小さい方の係数を用いて充電電流値を設定するので、電池容量の推定誤差が大きい場合でも適切な充電を行うことができる。
【0049】
つまり、電池容量の推定誤差が大きく、容量劣化係数Dcapが実際の劣化状態よりも大きな値に推定された場合には、小さい方の係数である経時劣化係数Dtimeを用いて制限電流値Ilimを算出するため、電池2の劣化状態に応じた適切な充電を行うことが可能である。これにより、劣化した電池2であっても、電池2の許容電流値Idcを超過しない範囲で充電できるとともに、必要以上に電池2の充電電流値を制限することがなくなるので充電時間を短縮させることができる。
【0050】
なお、変形例として、容量劣化係数Dcapに経時劣化係数Dtimeを併用したマップを用いることが可能である。経時劣化係数Dtimeが推定誤差を含まない係数であるのに対して、容量劣化係数Dcapは電池容量の推定誤差を反映させた係数であるために、電池容量の推定誤差によって初期状態から容量劣化係数Dcapが「1.00」よりも小さい値に設定される。そこで、変形例としてこの併用マップを作成することができる。この併用マップの一例を
図9に示す。
【0051】
図9は、容量劣化係数と経時劣化係数とを併用した場合を示すマップ図である。容量劣化係数マップをそのまま使用すると、推定誤差が10%の場合には容量維持率が「100」%に決定され、容量劣化係数Dcapが「0.90」に設定されるため、初期状態から電池2の能力を使いきることができない場合がある。そこで、
図9に示すように、容量劣化係数Dcapと経時劣化係数Dtimeと併用する劣化係数マップを作成する。
【0052】
例えば、容量推定の推定誤差がX%の場合、推定容量の容量維持率が「100-X」%になる時まで、経時劣化係数Dtimeを持っていれば、推定容量の容量維持率が「100-X」%になるまでは、容量劣化係数マップの推定誤差を無視できる。つまり、容量劣化係数Dcapに経時劣化係数Dtimeを併用することで、初期の劣化係数を必要以上に小さくする必要がなくなる。一方、容量劣化係数Dcapのみの場合には初期状態から劣化係数を必要以上に制限してしまう。反対に、経時劣化係数Dtimeのみで制御すると、想定以上に劣化が進行した際に、許容電流値Idcを超える虞がある。なお、
図9に示すマップは、電池2を搭載した装置が運用される中で、最も厳しい条件で電池2が運用された場合の劣化係数マップに作成されている。
【0053】
また、電池2が車両に搭載される例について説明したが、その車両は電気自動車であってもよく、プラグインハイブリッド車両であってもよい。
【0054】
また、電池2が搭載される装置は車両に限定されず、移動体や、持ち運びが可能な電気機器などであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 充電システム
2 電池
3 充電器
4 電圧・温度検出装置
5 電流検出装置
10 充電制御装置
11 演算部
21 第1接続部
21a 正極側接続部
21b 負極側接続部
31 第2接続部
31a 正極側接続部
31b 負極側接続部