(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】エチルセルロースを含む徐放性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/38 20060101AFI20250218BHJP
A61K 9/62 20060101ALI20250218BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250218BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20250218BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20250218BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20250218BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20250218BHJP
A61K 31/616 20060101ALI20250218BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250218BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20250218BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K9/62
A61K9/14
A61K9/22
A61K47/02
A61K31/155
A61K31/167
A61K31/616
A61P3/10
A61P29/02
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2021534763
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 US2019066724
(87)【国際公開番号】W WO2020131792
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-04
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521153216
【氏名又は名称】ニュートリション アンド バイオサイエンシズ ユーエスエー 1,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クナール、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ピーターマン、オリバー
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-352727(JP,A)
【文献】特開平02-218621(JP,A)
【文献】特開2003-040764(JP,A)
【文献】特表2017-533914(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0041189(KR,A)
【文献】特表2017-536404(JP,A)
【文献】セルロース系ブロックコポリマーの精密合成と超分子構造に基づく機能発現,科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書,課題番号:21580205,2012年,https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-21580205/21580205seika.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 9/00
A61K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1.8のDS(エチル)を有する水不溶性エチルセルロースのポリマーマトリックス中に包埋された生理活性成分を含み、前記エチルセルロースの濃度が前記活性成分の乾燥重量を基準として
4.0~10%であり、且つ前記エチルセルロースは前記ポリマーマトリックスの
90~100重量%を構成する、経口投与のための徐放性固体組成物。
【請求項2】
前記エチルセルロースの濃度が、前記活性成分の乾燥重量を基準として
、4.0~5%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エチルセルロースが、2.0~3.0
のDS(エチル)を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エチルセルロースが、ウベローデ粘度計において25℃で重量比80:20のトルエン及びエタノールの混合物中の5重量%溶液として測定された、3~110mPa・秒の粘度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
界面活性剤をさらに含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤の濃度が、前記組成物の0.1~1.5重量%の範囲にある、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
胃液と反応して、ガスを発生させることが可能である添加剤をさらに含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記添加剤が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、例えばCaCO
3又はNa
2CO
3から選択される、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
乾燥粉末の形態である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記活性成分が、メトホルミン、塩酸メトホルミン、アセトアミノフェン及びアセチルサルチル酸からなる群から選択される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物を含む単位剤形。
【請求項12】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物が圧縮乾燥組成物であり、前記圧縮乾燥組成物を含む錠剤である、単位剤形。
【請求項13】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物が乾燥組成物であり、前記乾燥組成物の圧縮顆粒を含む錠剤である、単位剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性成分と、エチルセルロースとを含む、新規徐放性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
徐放性剤形は、パーソナルケア及び農業用途、水処理、並びに特に製薬用途などの様々な技術分野における広範囲の用途が見出された。徐放性剤形は、長期間、水性環境中に有限量の活性成分を放出するように設計されている。徐放性製薬剤形は、過量服用することなく1回の適用で持続的な用量を送達する方法を提供するため、望ましい。既知の徐放性製薬剤形は薬剤又はビタミンを含み、その放出は、例えば1つ又はそれ以上の水溶性セルロースエーテルを含み得るポリマーマトリックスによって制御される。水溶性セルロースエーテルは、錠剤の表面上で水和して、ゲル層を形成する。ゲル層の急速な形成は、内部の湿潤及び錠剤中心部の崩壊を防ぐために重要である。ゲル層が形成されると、それは錠剤中への追加的な水の侵入を制御する。外層は完全に水和し、溶解するため、内部層はそれに代わらなければならず、且つ水の流入を遅らせるため、及び薬剤拡散を制御するために十分に凝集性であり、連続的でなければならない。
【0003】
経口剤形から活性成分の徐放を提供するために一般に使用されるセルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。例えば、米国特許第4,734,285号明細書は、固体錠剤の賦形剤として微粒子サイズのHPMCを利用することによって、活性成分の放出を長期化することができることを開示する。HPMCは、ポリマーマトリックスの成分として市販の経口製薬配合物中で使用され、通常、経口剤形の30重量%~60重量%の濃度で薬剤の徐放をもたらす。
【0004】
欧州特許第1978940B1号明細書は、少なくとも25重量%のエチルセルロース及び少なくとも10重量%のポリエチレンオキシドを含む、活性成分の放出制御のための組成物に関する。組成物は、ホットメルト押出成形によって調製される。
【0005】
患者の中には、特に小児若しくは高齢者、又は嚥下障害のある患者の中には、カプセル又は錠剤などの従来の経口剤形を飲み込むこむことが困難であるものがいることは、製薬技術における周知の課題である。特に、そのような剤形で投与される薬剤が高用量薬剤であり、市販の剤形に含まれる典型的な量の製薬賦形剤と一緒に薬剤が配合される場合、それぞれの剤形を非常に長く製造するか、又は同時に飲み込まれなければならない2つ以上の剤形に用量が分割される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、剤形の全体的なサイズの減少を可能にするため、そしてその徐放性特性を損なうことなく飲み込み性を改善するために、減少された量の賦形剤と一緒に薬剤が配合される徐放性経口剤形を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、水不溶性エチルセルロースが、生理活性成分との混合物中で賦形剤として使用される場合、37℃の温度で安定なヒドロゲルを形成することが可能であり、そして活性成分の徐放がもたらされることが判明した。それが市販の配合物中で使用されるHPMCの濃度よりもはるかに低い濃度、及び欧州特許第1978940B1号明細書に開示される溶融押出成形された組成物よりもはるかに低い濃度で使用される場合でも該当する。
【0008】
したがって、本発明は、少なくとも1.8のDS(エチル)を有する水不溶性エチルセルロースのポリマーマトリックス中に包埋された生理活性成分を含み、エチルセルロースの濃度が活性成分の乾燥重量を基準として0.1~20%であり、且つエチルセルロースはポリマーマトリックスの少なくとも50重量%を構成する、経口投与のための徐放性固体組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】乾燥組成物を含有するHPMCカプセルが900mlの0.1N HCl(pH 1.1)に浸漬された場合の、ETHOCEL Standard 20 Premium(20%溶液、-●-として示される)、並びにETHOCEL Standard 100 Premium(10%及び15%溶液、それぞれ-▲-及び-■-として示される)の溶液を含有する本発明の組成物からのアセトアミノフェン(APAP)の経時的放出を示すグラフである。
【
図2】乾燥組成物を含有する圧縮錠剤が900mlの0.1N HCl(pH 1.1)に浸漬された場合の、ETHOCEL Std.10 FPの10重量%及び20重量%溶液(それぞれ-●-及び-▲-として示される)を含有する本発明の組成物からのAPAPの経時的放出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、エチルセルロースは、エチルセルロースが活性成分と比較して非常に低い濃度で存在する場合であっても、組成物の経口投与時に胃などの水性環境でヒドロゲルを形成するため、及び活性成分の徐放を提供するための組成物の必須成分である。
【0011】
エチルセルロースは、1~4つの結合によって結合されたアンヒドログルコース単位から構成される。各アンヒドログルコース単位は、2位、3位及び6位においてヒドロキシル基を含有する。これらのヒドロキシルの部分的又は完全な置換によって、セルロース誘導体が作成される。例えば、苛性溶液と、それに続くエチル化剤によるセルロース繊維の処理によって、1つ又はそれ以上のエトキシ基によって置換されたセルロースエーテルが得られる。他のアルキルによってさらに置換されない場合、このセルロース誘導体は、エチルセルロースとして知られる。
【0012】
本発明者は、驚くべきことに、1.8より高いDS(エチル)までアンヒドログルコース単位のヒドロキシ基がエチル基によって置換されているエチルセルロースが、活性成分の粒子を包埋するために十分な濃度で組成物中に含まれる場合、約37℃において安定なヒドロゲルを形成することが可能であることを見出した。そのような濃度は広い範囲内で変動し得、そして一般に、エチルセルロースがより高濃度である場合(例えば30~60重量%)により徐放性が得られ得るが、驚くべきことに、低濃度、すなわち、活性成分の乾燥重量を基準として20%以下の濃度のエチルセルロースは、24時間かけての活性成分の徐放を提供する程度に活性成分が包埋されるために十分であり得ることが判明した。本組成物中に含まれるエチルセルロースの濃度は、活性成分の乾燥重量を基準として、典型的に0.2~18%、好ましくは0.5~15%、より好ましくは1~13%、なおより好ましくは1.5~10%、最も好ましくは2.5~5%である。活性成分の乾燥重量を基準として約4.0~4.5%のエチルセルロースを含有する組成物は、22時間の期間で約60%~95%の活性成分の放出を提供することが示された。以下の実施例1~5を参照のこと。錠剤又はカプセルなどの得られた徐放性剤形はサイズがより小さく、したがって、摂取がより容易である。剤形に他の任意の賦形剤を添加することなく、満足な放出速度が得られ得ることがさらに判明したが、任意選択的に消泡剤として界面活性剤が製造プロセスの間に添加されてもよい。
【0013】
エチルセルロースは、好ましくは2.0~3.0、より好ましくは2.2~2.8、なおより好ましくは2.3~2.7、さらにより好ましくは2.4~2.65、最も好ましくは2.5~2.6のDS(エチル)を有する。エチルセルロースの、DS(エトキシ)とも示されるエチル置換度、DS(エチル)は、アンヒドログルコース単位あたりのエチル基によって置換されたOH基の平均数である。
【0014】
エチルセルロース中の%エトキシルの決定は、ASTM D4794-94(2003)に記載のZeiselガスクロマトグラフィ技術によって実行される。これらを、その後、次式に従って、エチル置換基に関する置換度(DS)に変換する。
%セルロース主鎖=100-[%EtO*[[M(OCH2-CH3)-M(OH)]/M(OCH2-CH3)]
DS(エチル)=[[%EtO/M(OCH2-CH3)]/(%セルロース主鎖/M(AGU))]
式中、EtOはエトキシであり、そしてAGUはアンヒドログルコース単位である。
【0015】
塩の残留量は、変換において考慮された。
【0016】
エチルセルロースの粘度は一般に、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計において25℃で重量比80:20のトルエン及びエタノールの混合物中の5重量%溶液として測定された場合、3~110mPa・秒である。上記で示された通りに測定される場合、エチルセルロースの粘度は15~30mPa・秒、より好ましくは18~25mPs・秒であり得る。或いは、上記で示された通りに測定される場合、エチルセルロースの粘度は90~110mPa・秒であり得る。
【0017】
水性環境において、エチルセルロースは非常に低い濃度で、37℃においてゲル化することが可能であり、そして水性環境において安定なヒドロゲルを形成する。「安定なヒドロゲル」という用語は、本明細書で使用される場合、37℃で4時間、0.1N HCl(pH 1.1)中に浸漬した後、それらの形状を保持し、且つ完全に溶解しないか、又は有意に侵食されないヒドロゲルを意味するように意図される。
【0018】
エチルセルロースの例は、ETHOCEL Standard 20 Premiumエチルセルロース、ETHOCEL Standard 100 Premiumエチルセルロース及びETHOCEL Standard 10 FP(DuPontから入手可能)である。
【0019】
エチルセルロースは、徐放性剤形のための賦形剤として有用であり、すなわち、長期間、剤形からの活性成分の放出を調整する機能を有することを意味する。「徐放性」という用語は、本明細書中、「放出制御」という用語と同義的に使用される。徐放は、生理活性化合物などの活性成分を、意図された効果を達成するように設計された速度及び期間で利用可能にさせるアプローチである。エチルセルロースは、活性成分が包埋されるポリマーマトリックスの全部又は一部を形成するために有用である。ポリマーマトリックスは、剤形からの活性成分の徐放をもたらすことができる1つ又はそれ以上の他のポリマーを追加的に含んでもよい。エチルセルロースは、ポリマーマトリックスの少なくとも50重量%、好ましくは60~100重量%、より好ましくは70~100重量%、なおより好ましくは80~100重量%、最も好ましくは90~100重量%を構成する。ポリマーマトリックスは、他のセルロースエーテル、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はカルボキシメチルセルロースなどの1つ又はそれ以上の他のポリマーを含み得るか、或いは、それは、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸カルシウムなどの1つ又はそれ以上の他の多糖類を含み得る。エチルセルロースがポリマーマトリックスの100重量%を構成することが一般に好ましい。
【0020】
エチルセルロースは、徐放性剤形、特に所望の血漿プロファイルを達成するために活性成分の吸収速度を制御するための薬剤又は他の生理活性成分の経口投与、及び消化管中へのその放出が意図される剤形に含まれてよい。剤形中のエチルセルロース及び活性成分の合計量は、剤形の乾燥重量を基準として、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは70%、最も好ましくは少なくとも95%であり、そして剤形の乾燥重量を基準として、好ましくは最高100%まで、より好ましくは最高98%まで、最も好ましくは最高95%までである。剤形は、剤形から全て又はほぼ全ての活性成分を放出するために4~30時間、好ましくは8~24時間などの長期間をかけての活性成分の遅く連続的な放出を介して、変動が減少した状態で、血漿中一定又はほぼ一定濃度の活性成分を提供するように設計されている。
【0021】
ポリマーマトリックスが部分的に、又は完全にエチルセルロースから形成される錠剤及びカプセルなどの徐放性剤形は、少なくとも4時間、好ましくは少なくとも6時間、そして最適化条件下では少なくとも8時間などの長期間にわたって損傷がないままであることが判明した。理論に束縛されることを望まないが、エチルセルロースが水和し、体温において水性液体との接触時に剤形の外側表面上で強膨張層を形成すると考えられる。強膨張層は、剤形の腐食によって引き起こされる活性成分の放出を最小化する。錠剤又はカプセル含有物が分散しない(すなわち、任意の有意な程度まで分離しない)ため、活性成分の放出は、剤形の外側表面上のエチルセルロースの水和によって形成された膨張層からの遅い拡散によって制御される。強膨張層は徐放性剤形中への水の侵入を減少させ、そしてその中に水が拡散し、活性成分を溶解させる剤形の領域における水の量が減少したために、水性環境中への活性成分、特に水溶性活性成分の放出が遅くなる。最も驚くべきことには、水中に可溶性ではないエチルセルロースは、この様式で水和して、ヒドロゲルを形成することができると結論付けられる。
【0022】
一実施形態において、組成物は、摂取時に胃液と反応し、CO2などのガスを生成させる添加剤を含む。発生したガスはヒドロゲル中に捕捉され、その結果として、胃内容物の表面に浮いて、長期の胃保持時間がもたらされる。長期の胃保持時間は、活性成分の生物学的利用能を改善して、放出の期間を増加させて、腸の高pH環境では容易に溶解しない活性成分の溶解度を改善する。胃液との接触時にガスを生成する添加剤の例は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、例えばCaCO3又はNa2CO3である。添加剤の濃度は、組成物の1~5重量%の範囲、好ましくは1.5~3重量%、例えば2重量%であり得る。
【0023】
界面活性剤の添加は、低濃度の液体希釈剤を均質に分布させ、おそらく消泡及び乳化によって、平滑な高粘性半固体ペーストを製造することの補助となる。界面活性剤は、アニオン官能基を有するアニオン界面活性剤、例えば、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びカルボキシレート、例えばアルキル硫酸塩、例えばラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム、SLS又はSDS)、及びアルキルエーテル硫酸塩、例えば、ラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム又はSLES)、及びミレス硫酸ナトリウムなど;カチオン官能基を有するカチオン界面活性剤、例えば、臭化セトリモニウム(CTAB)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAB)など;双性イオン界面活性剤、例えば、コカミドプロピルベタインなど;並びにノニオン界面活性剤、例えば、変性ポリジメチルシロキサンベースの消泡剤などのシロキサン界面活性剤、エトキシレート、グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びサッカロースなどからなる群から選択される従来の消泡剤から選択されてよい。界面活性剤の濃度は、組成物の0.1~1.5重量%の範囲にあってよい。
【0024】
本発明の一実施形態において、活性成分と混合させたエチルセルロースを含む組成物は、乾燥粉末の形態である。乾燥粉末は、当該技術分野において既知の様式で、エタノール、メタノール、イソプロパノール若しくはアセトン、又は水とのそれらの混合物などの有機溶媒中でエチルセルロースの溶液を調製すること、溶液と活性成分と、任意選択的に1つ又はそれ以上の固体賦形剤とを混合すること、そして混合物が10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%、特に2重量%未満、例えば1重量%未満の含水量を有するようになるまで、40~100℃の温度で乾燥させ、続いて、所望の粒径の顆粒になるまで、混合物をミル粉砕又は製粉することによって調製されてよい。乾燥粉末は、典型的に、上記で示したように活性成分の徐放を促進するエチルセルロース中に部分的に又は完全に包埋された活性成分を含む顆粒を含有するであろう。
【0025】
一実施形態において、本発明は、本組成物を含む単位剤形に関する。単位剤形は、経口投与が意図されたものであり、圧縮乾燥組成物を含む錠剤の形態、例えば、乾燥組成物の圧縮顆粒の形態であってよい。或いは、単位剤形は、上記で記載されたように調製される半固体ペーストを押出成形し、押出成形された物体を適切な径に切り分け、続いて乾燥することによって調製される錠剤又はペレットの形態であってもよい。錠剤は、任意選択的に1つ又はそれ以上の他の賦形剤、例えば上記のセルロース誘導体などを含んでもよいが、上記で示されるように界面活性剤も任意選択的に含まれ得ることを除き、好ましくはエチルセルロースが剤形中に含まれる賦形剤を形成する唯一のポリマーマトリックス(polymeric matric)である。単位剤形は、好ましくはメチルセルロース及び活性成分の混合物を含有する乾燥顆粒の形態で、乾燥組成物を含むカプセルでもあり得る。単位剤形は、湿潤混合物であらかじめ充填されたシリンジ又はポーチの形態であってもよく、この剤形は幼児により容易に投与され得る。
【0026】
単位剤形は、1つ又はそれ以上の生理活性成分、好ましくは1つ又はそれ以上の薬剤、1つ又はそれ以上の診断薬、或いは美容目的又は栄養目的のために有用である1つ又はそれ以上の生理活性成分を含有する。「薬剤」という用語は、個体、典型的に哺乳類、特にヒト個体に投与される時に有益な予防及び/又は治療特性を有する化合物を意味する。摂取がより容易となる径で活性成分の必要量を含む単位用量を提供することが可能であるため、この剤形は、高用量薬剤、すなわち、500mg以上の単位用量で投与される薬剤を投与するために特に適切であると考えられる。高用量薬剤の例は、メトホルミン、塩酸メトホルミン、アセトアミノフェン(パラセタモール)又はアセチルサルチル酸である。したがって、各単位剤形は、典型的に500~1000mgの活性成分を含み得る。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態が、以下の実施例においてここで詳細に記載される。
【0028】
特に明記しない限り、全ての部及び百分率は、重量による。本実施例では、以下の試験手順を用いる。
【0029】
ウベローデ測定(エチルセルロース)
典型的な実施形態において、エチルセルロースは、重量比80:20のトルエン及びエタノールの混合物中の5%溶液において3~110mPa・秒の粘度を有する。粘度は、ウベローデ粘度計において25℃で決定される。典型的な粘度分析は、以下の通りに実行される:80:20のトルエン/エタノール混合物57gを乾燥8オンス瓶中に計量し、そして3gのエチルセルロースを添加する。すべてのエチルセルロースが溶解するまで(約20分間)、瓶を機械式振とう機に入れ、振とうする。得られた溶液を調製から24時間以内に分析する。粘度測定に関して、溶液をウベローデ粘度計中に充てんし、これを次いで、溶液が25℃に平衡化するまで、25℃の水浴中に配置する。ウベローデ粘度計に関する指示に従って、溶液を校正流量管によって吸い上げ、次いで流し出す。上下の校正マークの間の流下時間を停止し、そして測定に使用される特定の毛細管を考慮する指示に従って粘度を算出する。
【実施例】
【0030】
実施例1:エチルセルロースを含む乾燥ゼラチンカプセルからのアセトアミノフェンの放出
エチルセルロース(ETHOCEL Std.20 Premium、DuPontから入手可能)のエタノール中の20重量%溶液を調製した。白色の均質で高度に粘性のあるペーストが得られるまで、7.00gの微細製粉アセトアミノフェン(本明細書中、APAPと略される)を3.00gのエチルセルロース溶液と十分混合した。混合物をシリンジ中に即座に充てんし、HPMCカプセル(サイズ00)中に注入し、これをその後、閉鎖及び密封した。混合物を60℃で一晩、慎重に乾燥させた。
【0031】
乾燥させたカプセルを、37℃において900mlの0.1N HCl(pH 1.1)中に配置し、そして0.1mmの経路長さで、243nmの波長で、22時間、100rpm、37℃において、USP II溶解装置において薬物放出を測定した。
【0032】
乾燥カプセルからのAPAPの放出を
図1に示す。この図から、約60%の薬剤が22時間後に放出されたことが明らかである(図中、-●-として示す)。
【0033】
実施例2:エチルセルロースを含む乾燥ゼラチンカプセルからのアセトアミノフェンの放出
エチルセルロース(ETHOCEL Std.100 Premium、DuPontから入手可能)のエタノール中の10重量%溶液を調製した。白色の均質で高度に粘性のあるペーストが得られるまで、7.00gの微細製粉アセトアミノフェン(本明細書中、APAPと略される)を3.00gのエチルセルロース溶液と十分混合した。混合物をシリンジ中に即座に充てんし、HPMCカプセル(サイズ00)中に注入し、これをその後、閉鎖及び密封した。混合物を60℃で一晩、慎重に乾燥させた。
【0034】
乾燥させたカプセルを、37℃において900mlの0.1N HCl(pH 1.1)中に配置し、そして0.1mmの経路長さで、243nmの波長で、22時間、100rpm、37℃において、USP II溶解装置において薬物放出を測定した。
【0035】
乾燥カプセルからのAPAPの放出を
図1に示す。この図から、約60%の薬剤が22時間後に放出されたことが明らかである(図中、-▲-として示す)。
【0036】
実施例3:エチルセルロースを含む乾燥ゼラチンカプセルからのアセトアミノフェンの放出
エチルセルロース(ETHOCEL Std.100 Premium、DuPontから入手可能)のエタノール中の15重量%溶液を調製した。白色の均質で高度に粘性のあるペーストが得られるまで、7.00gの微細製粉アセトアミノフェン(本明細書中、APAPと略される)を3.00gのエチルセルロース溶液と十分混合した。混合物をシリンジ中に即座に充てんし、HPMCカプセル(サイズ00)中に注入し、これをその後、閉鎖及び密封した。混合物を60℃で一晩、慎重に乾燥させた。
【0037】
乾燥させたカプセルを、37℃において900mlの0.1N HCl(pH 1.1)中に配置し、そして0.1mmの経路長さで、243nmの波長で、22時間、100rpm、37℃において、USP II溶解装置において薬物放出を測定した。
【0038】
乾燥カプセルからのAPAPの放出を
図1に示す。この図から、約80%の薬剤が22時間後に放出されたことが明らかである(図中、-■-として示す)。
【0039】
実施例4:エチルセルロースを含有する圧縮錠剤からのアセトアミノフェンの放出
エチルセルロース(ETHOCEL Std.10 FP、DuPontから入手可能)のエタノール中の10重量%溶液を調製した。白色の均質で粘性のあるペーストが得られるまで、7.00gの微細製粉アセトアミノフェン(本明細書中、APAPと略される)を3.00gのエチルセルロース溶液と十分混合した。混合物をプレート上に広げ、60℃で乾燥させた。完全に乾燥したら、ピスチル(pistil)を使用して手で混合物の塊をほぐし、そして2tの圧力で研究室マニュアルIR錠剤成形機を用いて錠剤へと圧縮した。錠剤は500mgの重量を有し、95.89重量%のAPAPを含有した。錠剤は、32Nの錠剤硬度を有した。
【0040】
錠剤を、37℃において900mlの0.1N HCl(pH 1.1)中に配置し、そして0.1mmの経路長さで、243nmの波長で、22時間、100rpm、37℃において、USP II溶解装置において薬物放出を測定した。
【0041】
錠剤からのAPAPの放出を
図2に示す。この図から、約95%の薬剤が22時間後に放出されたことが明らかである(図中、-●-として示す)。
【0042】
実施例5:エチルセルロースを含有する圧縮錠剤からのアセトアミノフェンの放出
エチルセルロース(ETHOCEL Std.10 FP、DuPontから入手可能)のエタノール中の20重量%溶液を調製した。白色の均質で粘性のあるペーストが得られるまで、7.00gの微細製粉アセトアミノフェン(本明細書中、APAPと略される)を3.00gのエチルセルロース溶液と十分混合した。混合物をプレート上に広げ、60℃で乾燥させた。完全に乾燥したら、ピスチルを使用して手で混合物の塊をほぐし、そして2tの圧力で研究室マニュアルIR錠剤成形機を用いて錠剤へと圧縮した。錠剤は505mgの重量を有し、92.11重量%のAPAPを含有した。錠剤は、42Nの錠剤硬度を有した。
【0043】
錠剤を、37℃において900mlの0.1N HCl(pH 1.1)中に配置し、そして0.1mmの経路長さで、243nmの波長で、22時間、100rpm、37℃において、USP II溶解装置において薬物放出を測定した。
【0044】
錠剤からのAPAPの放出を
図2に示す。この図から、約95%の薬剤が22時間後に放出されたことが明らかである(図中、-▲-として示す)。