(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】電源装置、電気医療デバイスシステムおよび給電方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20250218BHJP
【FI】
A61B18/12
(21)【出願番号】P 2022050665
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 祐介
(72)【発明者】
【氏名】小磯 智春
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-513622(JP,A)
【文献】特表2008-508946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0114849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 - A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を有する電気医療デバイスに対して電力を供給する電源部と、
前記複数の電極について個別に測定された前記電極の温度に基づいて、前記電極への前記電力の供給を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記複数の電極に含まれる1または複数の第1電極の温度が、第1温度閾値以上となった場合には、前記第1電極のうちの少なくとも1つである停止対象電極に対する前記電力の供給を停止させると共に、
前記第1電極の温度以外の他の情報に基づいて、前記停止対象電極に対する前記電力の供給再開の要否を判定
し、
前記他の情報として、前記複数の電極のうちの前記第1電極とは異なる第2電極の温度の情報が、含まれている
電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第2電極の温度が第2温度閾値以上となった場合に、
前記停止対象電極に対する前記電力の供給を再開させる
請求項
1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2電極の温度が前記第1温度閾値以上となった場合に、
前記停止対象電極に対する前記電力の供給を再開させる
請求項
1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第1電極が、前記複数の電極の配置領域における非端部付近の電極であり、
前記第2電極が、前記複数の電極の配置領域における端部付近の電極である
請求項
1ないし請求項
3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
複数の電極を有する電気医療デバイスに対して電力を供給する電源部と、
前記複数の電極について個別に測定された前記電極の温度に基づいて、前記電極への前記電力の供給を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記複数の電極に含まれる1または複数の第1電極の温度が、第1温度閾値以上となった場合には、前記第1電極のうちの少なくとも1つである停止対象電極に対する前記電力の供給を停止させると共に、
前記第1電極の温度以外の他の情報に基づいて、前記停止対象電極に対する前記電力の供給再開の要否を判定し、
前記複数の電極のうちの前記停止対象電極を除いた他の電極における極性がいずれも、正極性および負極性のうちの一方の極性となっている場合には、
前記他の電極全体として、前記正極性および前記負極性の両方の極性が含まれるように、一時的な極性の切り替えを行う
電源装置。
【請求項6】
前記極性の切り替えが行われた後に、
前記正極性を示す前記他の電極の個数と、前記負極性を示す前記他の電極の個数とが、等しくなっている
請求項
5に記載の電源装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記停止対象電極に対して前記電力の供給を再開させる際に、
前記極性の切り替えが行われた前記他の電極における極性を、元に戻す
請求項
5または請求項
6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記第1温度閾値以上となった全ての前記第1電極が、前記停止対象電極である
請求項1ないし請求項
7のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項9】
前記電気医療デバイスは、前記複数の電極の温度を個別に測定する温度センサを、更に有する
請求項1ないし請求項
8のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項10】
複数の電極を有する電気医療デバイスと、
前記電気医療デバイスに対して電力を供給する電源装置と
を備え、
前記電源装置は、
前記電力を出力する電源部と、
前記複数の電極について個別に測定された前記電極の温度に基づいて、前記電極への前記電力の供給を制御する制御部と
を有しており、
前記制御部は、
前記複数の電極に含まれる1または複数の第1電極の温度が、第1温度閾値以上となった場合には、前記第1電極のうちの少なくとも1つである停止対象電極に対する前記電力の供給を停止させると共に、
前記第1電極の温度以外の他の情報に基づいて、前記停止対象電極に対する前記電力の供給再開の要否を判定
し、
前記他の情報として、前記複数の電極のうちの前記第1電極とは異なる第2電極の温度の情報が、含まれている
電気医療デバイスシステム。
【請求項11】
複数の電極を有する電気医療デバイスに対して電力を供給する給電方法であって、
前記複数の電極について個別に測定された前記電極の温度に基づいて、前記電極への前記電力の供給を制御する際に、
前記複数の電極に含まれる1または複数の第1電極の温度が、第1温度閾値以上となった場合には、前記第1電極のうちの少なくとも1つである停止対象電極に対する前記電力の供給を停止させると共に、
前記第1電極の温度以外の他の情報に基づいて、前記停止対象電極に対する前記電力の供給再開の要否を判定
し、
前記他の情報として、前記複数の電極のうちの前記第1電極とは異なる第2電極の温度の情報が、含まれている
給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置、電気医療デバイスシステムおよび給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アブレーションカテーテル等の電気医療デバイスと、電源装置とを備えた電気医療デバイスシステム(アブレーションシステム)が、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気医療デバイスシステムでは、患部に対する治療の際の利便性を向上させることが求められている。利便性を向上させることが可能な電源装置、電気医療デバイスシステムおよび給電方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る第1の電源装置は、複数の電極を有する電気医療デバイスに対して電力を供給する電源部と、複数の電極について個別に測定された電極の温度に基づいて、電極への電力の供給を制御する制御部と、を備えている。制御部は、複数の電極に含まれる1または複数の第1電極の温度が第1温度閾値以上となった場合には、第1電極のうちの少なくとも1つである停止対象電極に対する電力の供給を停止させると共に、第1電極の温度以外の他の情報に基づいて、停止対象電極に対する電力の供給再開の要否を判定し、他の情報として、複数の電極のうちの第1電極とは異なる第2電極の温度の情報が、含まれている。
本開示の一実施の形態に係る第2の電源装置は、複数の電極を有する電気医療デバイスに対して電力を供給する電源部と、複数の電極について個別に測定された電極の温度に基づいて、電極への電力の供給を制御する制御部と、を備えている。制御部は、複数の電極に含まれる1または複数の第1電極の温度が第1温度閾値以上となった場合には、第1電極のうちの少なくとも1つである停止対象電極に対する電力の供給を停止させると共に、第1電極の温度以外の他の情報に基づいて、停止対象電極に対する電力の供給再開の要否を判定し、複数の電極のうちの停止対象電極を除いた他の電極における極性がいずれも、正極性および負極性のうちの一方の極性となっている場合には、他の電極全体として、正極性および負極性の両方の極性が含まれるように、一時的な極性の切り替えを行う。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る電気医療デバイスシステムは、複数の電極を有する電気医療デバイスと、電気医療デバイスに対して電力を供給する電源装置と、を備えている。電源装置は、上記電力を出力する電源部と、複数の電極について個別に測定された電極の温度に基づいて、電極への電力の供給を制御する制御部と、を有している。制御部は、複数の電極に含まれる1または複数の第1電極の温度が第1温度閾値以上となった場合には、第1電極のうちの少なくとも1つである停止対象電極に対する電力の供給を停止させると共に、第1電極の温度以外の他の情報に基づいて、停止対象電極に対する電力の供給再開の要否を判定し、他の情報として、複数の電極のうちの第1電極とは異なる第2電極の温度の情報が、含まれている。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る給電方法は、複数の電極を有する電気医療デバイスに対して電力を供給する方法であって、複数の電極について個別に測定された電極の温度に基づいて、電極への電力の供給を制御する際に、複数の電極に含まれる1または複数の第1電極の温度が第1温度閾値以上となった場合には、第1電極のうちの少なくとも1つである停止対象電極に対する電力の供給を停止させると共に、第1電極の温度以外の他の情報に基づいて、停止対象電極に対する電力の供給再開の要否を判定し、他の情報として、複数の電極のうちの第1電極とは異なる第2電極の温度の情報が、含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る電気医療デバイスシステムの全体構成例を模式的に表すブロック図である。
【
図2】
図1に示したアブレーションカテーテルの概略構成例を表す模式図である。
【
図3】
図2に示したシャフトの先端付近の詳細構成例を表す模式図である。
【
図4】実施の形態に係る電力供給動作の一例を表す流れ図である。
【
図5】
図4に示した電力供給動作の一例を表すタイミング図である。
【
図6】
図4に示した電力供給動作の一例を表す模式図である。
【
図7A】変形例に係る電力供給動作の一例を表す流れ図である。
【
図7B】
図7Aに続く電力供給動作の一例を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(他電極の温度・他電極との温度差の情報を基に再開要否判定を行う例)
2.変形例(電極の極性の一時的な切り替えを行う場合の例)
3.その他の変形例
【0010】
<1.実施の形態>
[アブレーションシステム5の構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る電気医療デバイスシステムとしてのアブレーションシステム5の全体構成例を、模式的にブロック図で表している。アブレーションシステム5は、患者9の体内における患部90を治療する際に用いられるシステムであり、患部90に対して所定のアブレーション(焼灼)を行う。なお、患部90としては、例えば胆管などであり、その他にも、不整脈等を有する患部、癌(肝癌,肺癌,乳癌,腎臓癌,甲状腺癌など)等の腫瘍を有する患部などが、挙げられる。
【0011】
アブレーションシステム5は、アブレーションカテーテル1および電源装置3を備えている。なお、アブレーションシステム5は、本開示における「電気医療デバイスシステム」の一具体例に対応している。また、本開示における「給電方法」は、本開示の電気医療デバイスシステムにおいて具現化されるため、以下併せて説明する。
【0012】
(アブレーションカテーテル1)
アブレーションカテーテル1は、患者9の体内に挿入され、患部90をアブレーションすることで患部90に対する治療を行うための電極カテーテルである。アブレーションカテーテル1は、アブレーションの際に所定の流体(例えば生理食塩水等の、灌注用の流体(液体))を流し出す(噴射させる)、灌注機構を有していてもよい。
【0013】
なお、アブレーションカテーテル1は、本開示における「電気医療デバイス」の一具体例に対応している。
【0014】
図2は、アブレーションカテーテル1の概略構成例を、模式的に表している。アブレーションカテーテル1は、カテーテル本体としてのシャフト11(カテーテルシャフト)と、シャフト11の基端に装着されたハンドル12とを有している。
【0015】
シャフト11は、可撓性を有する管状構造(管状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延在している。シャフト11は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン等の合成樹脂により構成されている。シャフト11は、1つのルーメン(細孔,貫通孔)が内部に形成された、いわゆるシングルルーメン構造を有している。あるいは、シャフト11は、複数(例えば4つ)のルーメンが内部に形成された、いわゆるマルチルーメン構造を有している。なお、シャフト11の軸方向に沿って、シングルルーメン構造からなる領域と、マルチルーメン構造からなる領域と、の双方が設けられていてもよい。ルーメンには、図示しない各種の細線(後述する導線L1~L4または操作用ワイヤ等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で挿通されている。
【0016】
シャフト11の内部には、各種の細線を挿通させるためのルーメンに加え、ガイドワイヤを挿通させるためのルーメンが、軸方向に沿って形成されている。シャフト11の先端P1付近には、先端P1付近(患部90周辺)の温度を測定するための機構(後述する温度センサ51~54)が、設けられている。測定された先端P1付近(後述する電極111~114)の温度を示す情報(温度情報It)は、アブレーションカテーテル1から電源装置3(後述する制御部33)へと供給される(
図1参照)。
【0017】
シャフト11の先端P1付近には、
図2中の先端P1付近の拡大図に示したように、複数(この例では4つ)の電極111~114と、1つの先端チップ110とが、設けられている。具体的には、1つの先端チップ110と、4つのリング状電極(電極111~114)とが、シャフト11の軸方向(Z軸方向)に沿って、この順序にて所定の間隔をおいて並んで配置されている。
【0018】
図3は、シャフト11における先端P1付近の詳細構成例を、模式的に斜視図で表している。
【0019】
電極111~114はそれぞれ、シャフト11の外周面上に固定配置されている。一方、先端チップ110は、シャフト11の最先端に固定配置されている。電極111~114はそれぞれ、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)、金(Au)、白金(Pt)等の、電気伝導性の良好な金属材料により構成されている。アブレーションカテーテル1の使用時におけるX線に対する造影性を良好にするためには、白金またはステンレス鋼(SUS)により構成されていることが好ましい。
【0020】
図3中に模式的に示したように、シャフト11内の各電極111~114の近傍には、温度センサ51~54が個別に配置されている。すなわち、4つの電極111~114と4つの温度センサ51~54とが、1対1の対応関係にて複数組(この例では4組)設けられている。各温度センサ51~54(後述する熱電対)は、各電極111~114の内面に接合されている。なお、この例では、先端チップ110の近傍には、温度センサは設けられていない。
【0021】
温度センサ51~54はそれぞれ、電極111~114の温度を個別に測定するセンサであり、各電極111~114と個別に電気的接続されている。具体的には、
図3に示したように、温度センサ51は、電極111に対して電気的に接続されており、電極111の温度T1を測定する。同様に、温度センサ52は、電極112に対して電気的に接続されており、電極112の温度T2を測定する。温度センサ53は、電極113に対して電気的に接続されており、電極113の温度T3を測定する。温度センサ54は、電極114に対して電気的に接続されており、電極114の温度T4を測定する。なお、各電極111~114の温度T1~T4の情報はそれぞれ、前述した温度情報Itとして、アブレーションカテーテル1から電源装置3へと供給される。
【0022】
温度センサ51~54はそれぞれ、例えば熱電対(熱電対の測温接点)を用いて構成されている。
図3に示したように、温度センサ51~54に個別に電気的接続された導線L1~L4(リード線)はそれぞれ、例えば、熱電対を構成する異種同士の金属線からなる。なお、導線L1~L4はそれぞれ、前述したように、シャフト11におけるルーメン内に挿通され、ハンドル12内へと引き出されている。
【0023】
ハンドル12は、シャフト11の基端に装着されており、ハンドル本体121(把持部)および回転操作部122を有している。
【0024】
(電源装置3)
電源装置3は、アブレーションカテーテル1の電極111~114に対して、アブレーションを行うための電力Poutを供給する装置である。つまり、電源装置3は、電力Poutをアブレーションカテーテル1に対して供給する。電源装置3は、
図1に示したように、入力部31、電源部32、制御部33および表示部34を有している。
【0025】
入力部31は、各種の設定値や、所定の動作を指示するための指示信号(操作信号)を入力する部分である。各種の設定値としては、例えば、電力Poutの設定電力、および、各種の閾値(後述する温度閾値Tthなど)等が、挙げられる。操作信号は、電源装置3の操作者(例えば技師等)による操作に応じて、入力部31から入力される。ただし、各種の設定値が、操作者による操作に応じて入力されるのではなく、例えば、製品の出荷時等に予め電源装置3内で設定されているようにしてもよい。入力部31により入力された設定値は、制御部33へと供給される。入力部31は、例えば所定のダイヤルおよびボタン、タッチパネル等を用いて構成されている。
【0026】
電源部32は、制御部33から供給される制御信号CTLに従って、電力Poutを出力する。電源部32は、所定の電源回路(例えばスイッチングレギュレータ等)を用いて構成されている。
【0027】
制御部33は、電源装置3全体を制御すると共に所定の演算処理を行い、例えばマイクロコンピュータ等を用いて構成されている。制御部33は、例えば
図1に示したように、制御信号CTLを用いて、電源部32における電力Poutの供給動作を制御する。具体的には、制御部33は、前述した温度センサ51~54にて個別に測定された電極111~114の温度T1~T4(温度情報It)に基づいて、各電極111~114への電力Poutの供給動作を制御する。なお、電力Poutの供給動作の詳細については、後述する(
図4~
図6)。
【0028】
表示部34は、各種の情報を表示して外部へと出力する部分(モニター)である。表示部34は、各種の方式によるディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、または、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなど)を用いて構成されている。
【0029】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
アブレーションシステム5では、患部90に対する治療の際に、アブレーションカテーテル1のシャフト11における先端P1側が、患者9の体内に挿入される。
【0030】
そして、シャフト11における先端P1付近の電極111~114に対して、電源装置3から電力Poutが供給されることで、患者9の体内の患部90に対してアブレーションが行われる。この際の通電によって、患者9における治療対象の部位(処置部分)が選択的にアブレーションされ、患部90に対する治療がなされる。
【0031】
(B.電力供給動作)
続いて、
図1~
図3に加えて
図4~
図6を参照して、アブレーションの際の電力Poutの供給動作(電力供給動作)について、詳細に説明する。
【0032】
図4は、本実施の形態に係る電力供給動作の一例を、流れ図で表している。
図5,
図6は、
図4に示した電力供給動作の一例について、タイミング図および模式図で、それぞれ示している。
図6において、(A)~(G)はそれぞれ、後述するタイミングt0、タイミング(t0~t1)間、タイミングt1、タイミング(t1~t2)間、タイミングt2、タイミング(t2~t3)間、タイミングt3以降における、各電極111~114の温度状態および極性の経時的変化を、模式的に示している。具体的には、便宜上、各電極111~114でのハッチングが濃くなるのに従って、各電極111~114での温度T1~T4が高くなることを意味しており、後述する変形例(
図8)においても同様である。また、各電極111~114の極性については、正極性を「(+)」、負極性を「(-)」にて、それぞれ示しており、後述する変形例(
図8)においても同様である。
【0033】
なお、
図5において、横軸は時間tを示し、縦軸は、各電極111~114の温度T(T1~T4)を示している。
【0034】
図4に示した電力供給動作では、まず、後述する各種の閾値(温度閾値Tth)の情報が、設定される(ステップS11)。次いで、電源装置3(電源部32)は、アブレーションカテーテル1の電極111~114に対して、電力Poutの供給を開始する(ステップS22:
図5,
図6(A)中のタイミングt0参照)。これにより、例えば
図5に示したように、各電極111~114の温度T(T1~T4)が、徐々に上昇していく。
【0035】
続いて、電源装置3内の制御部33は、アブレーションカテーテル1における温度センサ51~54から得られた温度情報It(各電極111~114の温度T1~T4の情報)を、取得する(ステップS13)。そして、制御部33は、温度T1~T4のうちの温度T2または温度T3が、温度閾値Tth(
図5参照:例えばTth=80[℃])以上であるのか否か、つまり、(T2 or T3)≧Tthを満たすのか否かについて、判定する(ステップS14)。言い換えると、電極111~114の配置領域における非端部(中央)付近の電極112,113の温度の少なくとも一方が、温度閾値Tth以上になったのか否かについて、判定が行われる。
【0036】
これは、例えば
図5,
図6(B)に示したタイミング(t0~t1)間のように、非端部(中央)付近の電極112,113では、電力Poutの供給時に電流が集中し易くなることから、端部付近の電極111,114と比べ、温度が上昇し易い傾向にあるためである。なお、
図5,
図6の例では、電極112,113同士での温度変化(上昇および低下)の傾向が互いに等しくなっていると共に、電極111,114同士での温度変化(上昇および低下)の傾向が互いに等しくなっている(
図5参照)。
【0037】
ここで、電極112,113の温度が電極111,114の温度よりも上昇し易いことから、このままでは患部90に対するアブレーションの際に、以下のようになる。すなわち、電極111~114間での温度むらが発生し、電極112,113付近(中央付近)のみで焼灼が促進される(焼灼むらが発生する)結果、効果的な治療が困難となってしまうおそれがある。
【0038】
そこで、上記した(T2 or T3)≧Tthとなった場合(ステップS14:Y)、制御部33は、電極112,113の少なくとも一方(
図5,
図6の例では両方)に対する電力Poutの供給を、一旦停止させる(ステップS15:
図5,
図6(C)中のタイミングt1参照)。つまり、
図5,
図6の例では、電極112,113のうちの、温度閾値Tth以上となった全ての電極が、電力Poutの停止対象電極となっている。なお、例えば、電極112,113の一方の電極の温度(T2 or T3)のみが温度閾値Tth以上となった場合でも、他方の電極も同時に電力Poutの供給を一旦停止させるようにしてもよい。一方、(T2 or T3)<Tthである場合(ステップS14:N)には、前述したステップS13へと戻ることになる。
【0039】
このようにして、電極112,113(停止対象電極)への電力Poutの供給が一旦停止されることで、例えば
図6(D)中のタイミング(t1~t2)間のように、2つの電極111,114のみを用いたアブレーションへと切り替わる。したがって、例えば
図5,
図6(D)中のタイミング(t1~t2)間のように、電極112,113の温度T2,T3はそれぞれ低下していく一方、電極111,114に対して電流が集中するため、電極111,114の温度T1,T4における温度上昇度合いが、増加することになる。
【0040】
続いて、制御部33は、温度センサ51~54から得られた温度情報It(各電極111~114の温度T1~T4の情報)を、再度取得する(ステップS16)。そして制御部33は、電極112,113の温度T2,T3以外の他の情報に基づいて、電極112,113(停止対象電極)に対する電力Poutの供給再開の要否を、判定する(ステップS17)。具体的には、
図5、
図6の例では、上記した「他の情報」として、電極112,113とは異なる電極(電極111,114)の温度(T1,T4)の情報が、用いられている。
【0041】
ここで、通常は、電極112,113における温度T2,T3の下がり具合に応じて、これらの電極112,113に対する電力Poutの供給再開の要否について判断するものと思われるが、本実施の形態では上記したように、電極112,113の温度T2,T3以外の他の情報に基づいて、判断される。
【0042】
なお、本実施の形態では、電極112,113がそれぞれ、本開示における「第1電極」、「停止対象電極」および「非端部付近の電極」の一具体例に対応している。また、電極111,114がそれぞれ、本開示における「第2電極」および「端部付近の電極」の一具体例に対応している。
【0043】
具体的には、制御部33はまず、温度T1または温度T4が、前述した温度閾値Tth(
図5参照)以上であるのか否か、つまり、(T1 or T4)≧Tthを満たすのか否かについて、判定する(ステップS17)。言い換えると、電極111~114の配置領域における端部付近の電極111,114の温度の少なくとも一方が、温度閾値Tth以上になったのか否かについて、判定が行われる。
【0044】
ここで、上記したステップS17において、例えば、上記した温度閾値Tthの代わりに、温度閾値Tthとは別の閾値(温度閾値Tth’)を用いるようにしてもよい。つまり、制御部33が、(T1 or T4)≧Tth’を満たすのか否かについて、判定するようにしてもよい。温度閾値Tth’は、例えば、温度閾値Tthを基準として、±1[℃]以内の値((Tth-1)≦Tth’≦(Tth+1))で設定される。なお、温度閾値Tth’が、温度閾値Tthと同じ値(Tth’=Tth)であってもよい。
【0045】
上記した温度閾値Tthは、本開示における「第1温度閾値」の一具体例に対応している。また、上記した温度閾値Tth’は、本開示における「第2温度閾値」の一具体例に対応している。
【0046】
ここで、(T1 or T4)≧Tthとなった場合(ステップS17:Y)には、後述するステップS18において、電力Poutの供給が再開される。一方、(T1 or T4)<Tthである場合(ステップS17:N)には、前述したステップS16へと戻ることになる。
【0047】
ステップS18では、制御部33は、電極112,113の少なくとも一方(
図5,
図6の例では両方)に対する、電力Poutの供給を再開させる(
図5,
図6(E)中のタイミングt2参照)。これにより、例えば
図6(F)中のタイミング(t2~t3)間のように、4つの電極111,114のみを用いたアブレーションへと、再度切り替わる。したがって、例えば
図5,
図6(F)中のタイミング(t2~t3)間のように、電極112,113の温度T2,T3がそれぞれ、再度上昇していく一方、電極112,113において再度電流が集中するため、電極111,114の温度T1,T4がそれぞれ、低下していくことになる。
【0048】
なお、上記したステップS18の処理が行われた後には、前述したステップS13へと戻り、
図4に示したステップS13~S18の処理が、繰り返されることになる。つまり、例えば、
図5中のタイミングt3(電極112,113への電力Poutの供給の一旦停止)、タイミングt4(電極112,113への電力Poutの供給再開)、…のように、電極112,113に対する電力Poutの供給停止および供給再開が、繰り返される。これにより、例えば
図5,
図6(G)(タイミングt3以降)に示したように、最終的には、複数の電極111~114間での温度むらが抑えられ(温度の略均一化が図られ)、患部90に対する焼灼むらの発生も抑えられる。
【0049】
以上で、
図4~
図6に示した電力供給動作の説明が終了となる。
【0050】
(C.作用・効果)
本実施の形態では、アブレーションカテーテル1における複数の電極111~114のうちの所定の電極(第1電極:電極112,113)の温度Tが、温度閾値Tth以上となった場合には、第1電極のうちの少なくとも1つ(停止対象電極:電極112,113)に対する電力Poutの供給を停止させる。そして、第1電極の温度以外の他の情報に基づいて、停止対象電極に対する電力Poutの供給再開の要否を判定する。これにより上記したように、患部90に対するアブレーションの際に、複数の電極111~114間での温度むら(患部90に対する焼灼むらの発生)が抑えられ、効果的な治療が実現される。その結果、本実施の形態では、患部90に対する治療(アブレーション)の際に、利便性を向上させることが可能となる。
【0051】
特に本実施の形態では、上記した他の情報として、複数の電極111~114のうちの第1電極とは異なる第2電極(電極111,114)の温度の情報が含まれていると共に、第2電極の温度が温度閾値Tth以上となった場合に、停止対象電極に対する電力Poutの供給を再開させる。これにより、電力Poutの供給再開の要否の判定を、容易に行うことができる。その結果、治療の際の利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0052】
また、温度閾値Tthを用いて、電力Poutの供給再開の要否判定を行うようにしたので、例えば、前述した温度閾値Tth’を用いた場合(第2電極の温度が温度閾値Tth’以上となった場合に、停止対象電極に対する電力Poutの供給を再開させる場合)と比べて、以下の効果を得ることが可能となる。すなわち、温度閾値Tthを用いた場合のほうが、温度閾値Tth’を用いた場合と比べて、複数の電極111~114間での温度むらが抑えられるため、より効果的な治療を実現することが可能となる。
【0053】
なお、本実施の形態では、アブレーションカテーテル1に配置された電極の個数が4つ(電極111~114)の場合の例について説明したが、この場合の例には限られない。すなわち、2つ以上の電極が設けられていればよく、偶数個であるのが好ましい。
【0054】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0055】
(電力供給動作)
図7A,
図7Bはそれぞれ、変形例に係る電力供給動作の一例を、流れ図で表している。
図8は、
図7A,
図7Bに示した電力供給動作の一例について、模式図で示している。
図7A,
図7Bに示した変形例の電力供給動作では、
図4に示した実施の形態の電力供給動作において、前述したステップS14,S15の代わりに、以下説明するステップS31~S34がそれぞれ設けられていると共に、前述したステップS17,S18の代わりに、以下説明するステップS35~S38がそれぞれ設けられている。なお、
図7A,
図7Bに示した他の動作(前述したステップS11~S13,S16の動作)については、
図4の場合と同様となっている。
【0056】
ステップS31では、制御部33は、電極111~114のうちのいずれかの温度Tn(n:1~4のいずれか)が、前述した温度閾値Tth以上であるのか否か、つまり、Tn≧Tthを満たすのか否かについて、判定する。そして、Tn≧Tthとなった場合(ステップS31:Y)には、制御部33は、その温度Tnを示す電極11nに対する電力Poutの供給を、一旦停止させる(ステップS32)。一方、Tn<Tnである場合(ステップS31:N)には、前述したステップS13へと戻ることになる。
【0057】
一例として、
図8(A),
図8(B)間の破線の矢印P2で示したように、電極111~114のうちの電極111における温度T1が、温度閾値Tth以上となった場合には、電極111に対する電力Poutの供給が一旦停止される(
図8(C)参照)。これにより、電極111を除いた他の電極(3つの電極112~114)のみに電力Poutが供給され、アブレーションが行われる(
図8(D)参照)。なお、これらの他の電極112~114では、電極113が正極性を示し、電極112,114がそれぞれ負極性を示していることから、両極性(正極性および負極性)が含まれている。
【0058】
この場合、実施の形態にて説明したように、電極111の温度T1が低下していく一方、電極112~114の温度T2~T4における温度上昇度合いが増加していく(
図8(E)参照)。その後、後述する所定の条件(ステップS35)を満たした場合には、後述するステップS38にて、電極111への電力Poutの供給が再開されることになる(
図8(E)参照)。
【0059】
つまり、この例では実施の形態の場合とは異なり、電極111が、本開示における「第1電極」および「停止対象電極」の一具体例に対応しており、電極112~114がそれぞれ、本開示における「第2電極」の一具体例に対応している。
【0060】
一方、
図8(A),
図8(G)間の破線の矢印P3で示したように、電極111~114のうちの電極111,113における温度T1,T3がそれぞれ、温度閾値Tth以上となった場合には、以下のようになる。すなわち、この場合も、これらの電極111,113に対する電力Poutの供給がそれぞれ、一旦停止される(
図8(H)参照)。
【0061】
つまり、この例では、電極111,113がそれぞれ、本開示における「第1電極」および「停止対象電極」の一具体例に対応しており、電極112,114がそれぞれ、本開示における「第2電極」の一具体例に対応している。
【0062】
ところがこの場合、停止対象電極である電極111,113(第1電極)がいずれも、正極性の電極であり、停止対象ではない(非停止対象の)残りの電極112,114(第2電極)がいずれも、負極性(一方の極性のみ)となっている(
図8(G),
図8(H)参照)。したがって、例えば
図8(H)に示した、一方の極性のみが残っている場合、そのままでは、電力Poutの供給によるアブレーションを継続させることができず、患部90の焼灼もできなくなってしまうことになる。
【0063】
そこで本変形例では、このような場合、以下のステップS33~S38にて説明するようにして、電極の極性を一時的に切り替えることで、上記したようなアブレーション(患部90に対する焼灼)の中断を回避するようにしている。
【0064】
具体的には、上記したステップS32の後、制御部33は、非停止対象の他の電極11m(m≠n)が、両極性(正極性および負極性)となっているのか、言い換えると、一方の極性のみとなっていないか、について判定する(ステップS33)。ここで、
図8(C)の例のように、非停止対象の電極11mが、両極性となっている(一方の極性のみとなっていない)場合には(ステップS33:Y)、前述したステップS16へと進む。
【0065】
一方、
図8(H)の例のように、非停止対象の電極11mが、両極性となっていない(一方の極性のみとなっている)場合には(ステップS33:N)、以下のようになる。すなわち、この場合には制御部33は、電極11m全体として両極性が含まれるように、電極11mの極性を一時的に切り替える(ステップS34)。具体的には、
図8(H)の例では、電極114の極性が、一時的に負極性から正極性へと切り替えられる(破線の矢印P4参照)ことで、電極11mとしての電極112,114全体として、両極性(正極性および負極性)が含まれるようになる(
図8(I)参照)。これにより、上記したようなアブレーション(患部90に対する焼灼)の中断が回避され、電力Poutの供給によるアブレーションが、その後も継続される。
【0066】
ここで、上記した電極の極性の切り替えが行われた後に、例えば
図8(I)のように、正極性を示す電極11mの個数(この例では1個)と、負極性を示す電極11mの個数(この例では1個)とが、等しくなっているのが好ましい。なお、上記したステップS34の処理後は、前述したステップS16へと進む。
【0067】
続いて、ステップS16では前述したように、制御部33は、温度センサ51~54から得られた温度情報It(各電極111~114の温度T1~T4の情報)を、再度取得する。
【0068】
次に制御部33は、前述したステップS17と基本的には同様に、上記した電極11mにおける温度Tmが、前述した温度閾値Tth以上であるのか否か、つまり、Tm≧Tthを満たすのか否かについて、判定する(ステップS35)。ここで、Tm≧Tthとなった場合(ステップS35:Y)には、後述するステップS36へと進む。一方、Tm<Tthである場合(ステップS35:N)には、前述したステップS16へと戻ることになる。なお、実施の形態のステップS17(
図4)と同様に、上記したステップS35において、例えば、温度閾値Tthの代わりに、温度閾値Tthとは別の閾値(温度閾値Tth’)を用いるようにしてもよい。
【0069】
上記したステップS36では、制御部33は、上記した他の電極11mの極性が(一時的に)切り替えられているのか否かについて、判定を行う。
図8(C),
図8(D)の例のように、電極11mの極性が切り替えられていない場合には(ステップS36:N)、例えば
図8(E)に示したように、制御部33は、停止対象電極である電極11n(この例では電極111)に対する電力Poutの供給を、再開させる(ステップS38)。
【0070】
一方、
図8(H),
図8(I)の例のように、電極11mの極性が切り替えられている場合には(ステップS36:Y)、制御部33は、極性の切り替えが行われた電極11mの極性を、元に戻す(ステップS37)。具体的には、
図8(I)の例では、破線の矢印P5で示したように、極性の切り替えが行われた電極114の極性を、正極性から負極性へと、元に戻す。そして、次に制御部33は、停止対象電極である電極11n(この例では電極111,113)に対する電力Poutの供給を、再開させる(ステップS38)。つまり、この場合には制御部33は、停止対象電極(電極111,113)に対して電力Poutの供給を再開させる際に、極性の切り替えが行われた電極114における極性を、元に戻すことになる(
図8(J)参照)。
【0071】
なお、上記したステップS38の処理が行われた後には、前述したステップS13へと戻り、
図7A,
図7Bに示したステップS13~S38の処理が、繰り返されることになる。
【0072】
【0073】
(作用・効果)
本変形例においても、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、本変形例においても、患部90に対する治療の際に、利便性を向上させることが可能となる。
【0074】
特に本変形例では、複数の電極111~114のうちの停止対象電極を除いた他の電極における極性がいずれも、正極性および負極性のうちの一方の極性となっている場合には、他の電極全体として正極性および負極性の両方の極性が含まれるように、一時的な極性の切り替えを行う。これにより、例えば上記したように、他の電極が一方の極性のみとなっていることに起因して、アブレーション(患部90に対する焼灼)が継続できなくなってしまうおそれを、回避することができる。その結果、治療の際の利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0075】
なお、本変形例においても、アブレーションカテーテル1に配置された電極の個数が4つ(電極111~114)の場合の例について説明したが、この場合の例には限られない。すなわち、本変形例では、3つ以上の電極が設けられていればよい。
【0076】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態、変形例および実施例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0077】
例えば、上記実施の形態等では、アブレーションシステムの全体構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての装置を備える必要はなく、また、他の装置を更に備えていてもよい。具体的には、例えば上記実施の形態等では、アブレーションカテーテル(シャフト)の構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。また、シャフトにおける電極の構成(リング状電極および先端チップの配置や形状、個数等)は、上記実施の形態等で挙げたものには限られない。
【0078】
上記実施の形態等で説明したアブレーションカテーテルでは、シャフトにおける先端付近の形状が操作部の操作に応じて、片方向または両方向に変化するタイプのアブレーションカテーテルであってもよい。あるいは、例えば、シャフトにおける先端付近の形状が固定となっているタイプのアブレーションカテーテルであってもよく、この場合には、操作用ワイヤや回転板等が不要となる。
【0079】
上記実施の形態等で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
【0080】
上記実施の形態等では、電気医療デバイスの具体例として、アブレーションカテーテルを挙げて説明したが、この例には限られず、他の電気医療デバイスを適用してもよい。
【0081】
上記実施の形態等では、アブレーションカテーテル上における複数の電極間の通電によってアブレーションを行う、バイポーラ型の例を挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、アブレーションカテーテル上の電極と対極板との間の通電によってアブレーションを行う、モノポーラ型であってもよい。
【0082】
上記実施の形態等では、アブレーションの際の電力供給動作(給電方法)について具体的に挙げて説明したが、電力供給動作については、上記実施の形態等で説明した手法には限られず、他の手法を用いて電力供給動作を行うようにしてもよい。具体的には、例えば上記実施の形態等では、本開示における「第1電極の温度以外の他の情報」として、「第1電極とは異なる第2電極の温度の情報」を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば所定の温度差ΔTなどの、他のパラメータから構成される情報を用いるようにしてもよい。なお、温度差ΔTは、上記第2電極の温度から停止対象電極の温度を差し引いて得られる(
図5中に示した例では、ΔT=(T1,T4)-(T2,T3))。また、上記実施の形態等では、温度閾値Tth以上となった全ての第1電極を停止対象電極とした場合の例について説明したが、この場合の例には限られず、例えば、温度閾値Tth以上となった第1電極のうちの少なくとも1つを、停止対象電極としてもよい。
【0083】
上記実施の形態等では、アブレーションの対象が、患者の体内における胆管、不整脈を有する患部、または、腫瘍を有する患部である場合を、例に挙げて説明したが、これらの例には限られない。すなわち、アブレーションの対象が、患者の体内の他の部位(臓器または体組織など)である場合についても、本開示のアブレーションシステムを適用することが可能である。
【0084】
上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、ソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0085】
また、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0086】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0087】
本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
複数の電極を有する電気医療デバイスに対して電力を供給する電源部と、
前記複数の電極について個別に測定された前記電極の温度に基づいて、前記電極への前記電力の供給を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記複数の電極に含まれる1または複数の第1電極の温度が、第1温度閾値以上となった場合には、前記第1電極のうちの少なくとも1つである停止対象電極に対する前記電力の供給を停止させると共に、
前記第1電極の温度以外の他の情報に基づいて、前記停止対象電極に対する前記電力の供給再開の要否を判定する
電源装置。
(2)
前記他の情報として、前記複数の電極のうちの前記第1電極とは異なる第2電極の温度の情報が、含まれている
上記(1)に記載の電源装置。
(3)
前記制御部は、
前記第2電極の温度が第2温度閾値以上となった場合に、
前記停止対象電極に対する前記電力の供給を再開させる
上記(2)に記載の電源装置。
(4)
前記制御部は、
前記第2電極の温度が前記第1温度閾値以上となった場合に、
前記停止対象電極に対する前記電力の供給を再開させる
上記(2)に記載の電源装置。
(5)
前記第1電極が、前記複数の電極の配置領域における非端部付近の電極であり、
前記第2電極が、前記複数の電極の配置領域における端部付近の電極である
上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の電源装置。
(6)
前記制御部は、
前記複数の電極のうちの前記停止対象電極を除いた他の電極における極性がいずれも、正極性および負極性のうちの一方の極性となっている場合には、
前記他の電極全体として、前記正極性および前記負極性の両方の極性が含まれるように、一時的な極性の切り替えを行う
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の電源装置。
(7)
前記極性の切り替えが行われた後に、
前記正極性を示す前記他の電極の個数と、前記負極性を示す前記他の電極の個数とが、等しくなっている
上記(6)に記載の電源装置。
(8)
前記制御部は、
前記停止対象電極に対して前記電力の供給を再開させる際に、
前記極性の切り替えが行われた前記他の電極における極性を、元に戻す
上記(6)または(7)に記載の電源装置。
(9)
前記第1温度閾値以上となった全ての前記第1電極が、前記停止対象電極である
上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の電源装置。
(10)
前記電気医療デバイスは、前記複数の電極の温度を個別に測定する温度センサを、更に有する
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の電源装置。
(11)
複数の電極を有する電気医療デバイスと、
前記電気医療デバイスに対して電力を供給する電源装置と
を備え、
前記電源装置は、
前記電力を出力する電源部と、
前記複数の電極について個別に測定された前記電極の温度に基づいて、前記電極への前記電力の供給を制御する制御部と
を有しており、
前記制御部は、
前記複数の電極に含まれる1または複数の第1電極の温度が、第1温度閾値以上となった場合には、前記第1電極のうちの少なくとも1つである停止対象電極に対する前記電力の供給を停止させると共に、
前記第1電極の温度以外の他の情報に基づいて、前記停止対象電極に対する前記電力の供給再開の要否を判定する
電気医療デバイスシステム。
(12)
複数の電極を有する電気医療デバイスに対して電力を供給する給電方法であって、
前記複数の電極について個別に測定された前記電極の温度に基づいて、前記電極への前記電力の供給を制御する際に、
前記複数の電極に含まれる1または複数の第1電極の温度が、第1温度閾値以上となった場合には、前記第1電極のうちの少なくとも1つである停止対象電極に対する前記電力の供給を停止させると共に、
前記第1電極の温度以外の他の情報に基づいて、前記停止対象電極に対する前記電力の供給再開の要否を判定する
給電方法。
【符号の説明】
【0088】
1…アブレーションカテーテル、11…シャフト、110…先端チップ、111~114,11m,11n…電極(リング状電極)、12…ハンドル、121…ハンドル本体、122…回転操作部、3…電源装置、31…入力部、32…電源部、33…制御部、34…表示部、5…アブレーションシステム、51~54…温度センサ、9…患者、90…患部、Pout…電力、CTL…制御信号、It…温度情報、P1…先端、P2~P5…矢印、t…時間、t0~t4…タイミング、L1~L4…導線、T,T1~T4,Tm,Tn…温度、Tth…温度閾値。