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特許7636389自動搾乳システム、および動物の健康状態を判定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】自動搾乳システム、および動物の健康状態を判定する方法
(51)【国際特許分類】
   A01J 5/007 20060101AFI20250218BHJP
   A01K 1/12 20060101ALI20250218BHJP
   A01J 5/013 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
A01J5/007
A01K1/12
A01J5/013
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022509069
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 SE2020050913
(87)【国際公開番号】W WO2021066712
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】1951106-2
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】521499848
【氏名又は名称】デラバル ホールディング アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボネストロー、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クラース、イルカ
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-291129(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0118236(US,A1)
【文献】国際公開第2019/182497(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01J
A01K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動搾乳システムであって、
-電子制御ユニット(1)を含む制御システムと、
-動物を搾乳するように構成された少なくとも1つの搾乳ステーション(2)と、
-前記搾乳ステーション(2)から乳汁を受容するための生産乳汁タンク(3)と、
-前記搾乳ステーション(2)から迂回させられ、前記生産乳汁タンク(3)に送られなかった乳汁を受容するように構成された第2の乳汁タンク(4)と、
-前記制御ユニット(1)に接続され、前記自動搾乳システムで搾乳される動物の個々の識別情報を前記制御ユニット(1)に提供するように構成された動物識別システムと、
-動物の病気の少なくとも1つのインジケータを測定するように構成された少なくとも1つの第1のセンサ(7)であって、前記センサは前記制御ユニット(1)に接続されている、第1のセンサ(7)と、
-前記識別システムによって識別された個々の動物からの乳汁に対して前記第1のセンサ(7)によって実行された測定値が収集されるデータメモリ(8)であって、各測定の時間も前記メモリ(8)に登録および保存される、データメモリ(8)と、を含み、前記制御ユニット(1)が、
-動物からの乳汁が前記生産乳汁タンク(3)に送られるのではなく、前記第2のタンクに迂回させられる第1の時点(t1)を登録し、
-前記動物の乳汁が、前記第1の時点(t1)の後、複数の連続した搾乳セッションのために搾乳ステーション(2)から前記第2の乳汁タンク(4)に迂回させられた場合、前記動物からの乳汁が前記第2のタンクへ送られることから前記生産乳汁タンク(3)へ送られることに移行する第2の時点(t2)を登録するように構成されており、
-前記第1の時点(t1)と前記第2の時点(t2)との間の期間が所定の日数以内である場合、前記制御ユニット(1)は、前記動物が前記第1の時点(t1)と前記第2の時点(t2)との間、病気状態にあったと判定するように構成されていて、前記制御ユニット(1)は、前記第2の時点(t2)から所定の第3の時点(t3)まで前記第1のセンサ(7)による繰り返し測定に基づいて前記動物の健康状態を判定するように構成されていて、前記制御ユニット(1)は、前記第3の時点(t3)での前記動物の病気状態からの回復の状態を判定するように構成されていて、前記制御ユニット(1)は、前記第1のセンサ(7)からの測定値が、前記第2の時点(t2)と前記第3の時点(t3)との間の所定の範囲内で安定したとき、病気状態からの回復の状態を判定するように構成されていることを特徴とする、自動搾乳システム。
【請求項2】
前記第1のセンサ(7)は、乳汁の導電率を測定するように構成されたセンサ、または前記動物の乳汁中の体細胞の数を直接的または間接的に判定するように構成されたセンサであることを特徴とする、請求項1記載の自動搾乳システム。
【請求項3】
前記制御ユニット(1)は、以前に記憶されたデータを前記第1のセンサ(7)から受信した測定値と比較するように構成されており、前記制御ユニット(1)は、前記比較に基づき前記動物の健康状態を判定するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の自動搾乳システム。
【請求項4】
前記第1のセンサ(7)によって測定された前記病気インジケータ以外に、またはそれに加えて、複数のパラメータを測定するための複数のさらなるセンサ(9、10、11)を含み、前記さらなるセンサ(9、10、11)は、前記制御ユニット(1)に接続され、前記制御ユニット(1)は、測定されたパラメータの数学的分析を実行し、それに基づいて、前記さらなるセンサ(9、10、11)および前記第1のセンサ(7)からの入力に基づいて、病気を示す病気指示インデックスを判定し、前記インデックスが閾値を超えた場合にアラートを生成するように構成されており、
-前記制御ユニット(1)は、第1の時点(t1)が、前記動物に対する前記アラートの生成の時点から所定の期間内にある場合、前記第2の時点(t2)から所定の第3の時点(t3)までの前記第1のセンサ(7)による反復測定に基づいて前記動物の健康状態を判定するように構成されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の自動搾乳システム。
【請求項5】
前記制御ユニット(1)は、前記アラートの生成時点に基づいて前記第1の時点(t1)を設定するように構成されていることを特徴とする、請求項に記載の自動搾乳システム。
【請求項6】
前記制御ユニット(1)は、前記アラートの生成時点に基づいて前記第1の時点(t1)を設定するように構成され、前記制御ユニット(1)は、前記アラートの生成時点に基づいて前記第2の時点(t2)を設定するように構成されていることを特徴とする、請求項に記載の自動搾乳システム。
【請求項7】
動物に抗生物質を投与するためのデバイス(12)を含み、前記デバイス(12)は、前記制御ユニット(1)に接続され、前記制御ユニット(1)は、動物に対するアラートの生成時間から所定の時間内に前記動物への前記抗生物質の投与を命令するように構成されていることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の自動搾乳システム。
【請求項8】
前記病気のインジケータが乳房炎のインジケータであることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の自動搾乳システム。
【請求項9】
前記病気のインジケータが臨床型乳房炎のインジケータであることを特徴とする、請求項に記載の自動搾乳システム。
【請求項10】
前記第1の時点(t1)と前記第2の時点(t2)との間の期間が、病気状態が判定される第1の所定の日数以内である場合に、前記制御ユニット(1)は、前記動物への抗生物質の投与が行われたことを判定するように構成されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の自動搾乳システム。
【請求項11】
前記第1の時点(t1)と前記第2の時点(t2)との間の期間が、病気状態が判定される第2の所定の日数以内である場合に、前記制御ユニット(1)は、前記動物への抗生物質の投与が行われていないことを判定するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の自動搾乳システム。
【請求項12】
自動搾乳システムにおいて動物の健康状態を判定する方法であって、前記自動搾乳システムは、
-電子制御ユニット(1)を含む制御システムと、
-動物を搾乳するように構成された少なくとも1つの搾乳ステーション(2)と、
-前記搾乳ステーション(2)から乳汁を受容するための生産乳汁タンク(3)と、
-前記搾乳ステーション(2)から迂回させられ、前記生産乳汁タンク(3)に送られなかった乳汁を受容するように構成された第2の乳汁タンク(4)と、
-前記自動搾乳システムで搾乳された動物の個々の識別情報を前記制御ユニット(1)に提供するように構成された、前記制御ユニット(1)に接続された動物識別システムと、
-動物の病気の少なくとも1つのインジケータを測定するように構成された少なくとも1つの第1のセンサ(7)であって、前記センサは前記制御ユニット(1)に接続されている、第1のセンサ(7)と、
-前記識別システムによって識別された個々の動物からの乳汁に対して前記第1のセンサ(7)によって実行される測定値が収集されるデータメモリ(8)であって、各測定の時間もまた前記メモリ(8)に登録および保存される、データメモリ(8)と、を含み、前記方法は、
-動物からの乳汁が前記生産乳汁タンク(3)に送られるのではなく、前記第2のタンクに迂回させられる第1の時点(t1)を登録するステップと、
-前記動物の乳汁が、前記第1の時点(t1)の後、複数の連続した搾乳セッションのために搾乳ステーション(2)から前記第2の乳汁タンク(4)に迂回させられた場合、前記動物からの乳汁が前記第2のタンクへ送られることから前記生産乳汁タンク(3)へ送られることに移行する第2の時点(t2)を登録するステップと、
-前記第1の時点(t1)と前記第2の時点(t2)との間の期間が所定の日数以内である場合、前記制御ユニット(1)によって、前記動物が前記第1の時点(t1)と前記第2の時点(t2)との間で病気状態にあると判定するステップと、を含み、
前記第3の時点(t3)での前記動物の前記病気状態からの回復の状態を判定するために、前記電気制御ユニット(1)によって数学的分析を実行するステップを含み、前記第1のセンサ(7)からの測定値が前記第2の時点(t2)と前記第3の時点(t3)との間の所定の範囲内で安定した場合に、前記病気状態からの回復の状態を判定するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記第1のセンサ(7)が、乳汁の導電率を測定するように構成されたセンサ、または前記動物の前記乳汁中の体細胞の数を直接的または間接的に決定するように構成されたセンサであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
-前記センサから受信したデータを前記メモリ(8)に記憶させるステップと、
-以前に記憶されたそのようなデータを、前記センサから受信した測定値と比較し、前記制御ユニット(1)によって前記比較に基づいて前記動物の健康状態を判定するステップと、を含むことを特徴とする、請求項12又は13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のセンサ(7)によって測定された病気インジケータ以外の、またはそれに加えて複数のパラメータを測定し、前記測定されたパラメータの数学的分析を実行し、それに基づいて、前記測定値に基づいて動物の病気を示す病気指示インデックスを判定し、前記インデックスが閾値を超えた場合にアラートを生成することと、
-前記第1の時点(t1)が、前記動物のための前記アラートの生成のある時点から所定の期間内にある場合、前記第2の時点(t2)から所定の第3の時点(t3)までの前記第1のセンサ(7)による反復測定に基づいて前記動物の健康状態を判定することと、を含むことを特徴とする、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記アラートの生成時間に基づいて前記第1の時点(t1)を設定するステップを含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アラートの生成時間に基づいて前記第1の時点(t1)を設定するステップを含み、
前記アラートの生成時間に基づいて前記第2の時点(t2)を設定するステップを含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記動物に対するアラートが生成された時間から所定の時間内に動物に抗生物質を投与するステップを含むことを特徴とする、請求項1517のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御ユニットを含む制御システムと、動物を搾乳するように構成された少なくとも1つの搾乳ステーションと、搾乳ステーションから乳汁を受容するための生産乳汁タンクと、搾乳ステーションから迂回させられ、生産乳汁タンクへ送られない乳汁を受容するように構成された第2の乳汁タンクと、制御ユニットに接続され、自動搾乳システムにおいて搾乳される動物の個々の識別情報を制御ユニットに提供するように構成された動物識別システムと、動物の病気の少なくとも1つのインジケータを測定するように構成された少なくとも1つの第1のセンサと、を含む、自動搾乳システムに関する。
【0002】
自動搾乳システムは、搾乳される動物の乳頭に乳頭カップを手動で取り付けることを含む従来のシステム、またはロボットが搾乳される動物の乳頭に乳頭カップを自動的に取り付けるロボットシステムであり得る。病気のインジケータを測定するための1つ以上のセンサは、搾乳ステーションから生産タンクまでの乳汁ラインに配置され得る。特にロボットシステムの場合、各乳頭カップに関連して別個のセンサが提供され得る。
【0003】
本発明はまた、自動搾乳システムで搾乳された動物の健康状態を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
酪農場での乳牛の産業搾乳に関連して、乳牛が臨床型または潜在型のいずれかで乳房炎にかかることが頻繁に発生する。動物の病気、特に乳房炎の早期発見は、異なる乳汁特性の測定値の単変量または多変量解析によって達成され得る。乳房炎の兆候が検出されると、農家は、乳房炎であるかどうか、および臨床型または潜在型の乳房炎であるかどうかを判定するために、当該の乳汁または動物をさらに調査しなければならないことがよくある。乳房炎が臨床型乳房炎である場合、抗生物質を動物に投与する必要があり、抗生物質の投与日から数えて数日間、動物の乳汁は生産乳汁から迂回させられなければならない。
【0005】
動物を抗生物質で治療した後、動物が回復したか、またはしていないか(慢性乳房炎)を知ることに関心が持たれる。制御システムは、群れの中の個々の動物が乳房炎、特に臨床型乳房炎などの病気を患っているかどうか、または患っていたかどうかを確認し、乳房炎または他の病気が検出された後の特定の時間に動物の健康状態を判断するために使用され得る。そのような制御システムを提案することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、自動搾乳システムであって、
-電子制御ユニットを含む制御システムと、
-動物を搾乳するように構成された少なくとも1つの搾乳ステーションと、
-搾乳ステーションから乳汁を受容するための生産乳汁タンクと、
-搾乳ステーションから迂回させられかつ生産乳汁タンクに送られなかった乳汁を受容するように構成された第2の乳汁タンクと、
-自動搾乳システムで搾乳された動物の個別識別情報を制御ユニットに提供するように構成された、制御ユニットに接続された動物識別システムと、
-動物の病気の少なくとも1つのインジケータを測定するように構成された少なくとも1つの第1のセンサであって、該センサは制御ユニットに接続されている、第1のセンサと、
-識別システムによって識別された個々の動物からの乳汁に対して第1のセンサによって実行された測定値が収集されるデータメモリであって、各測定の時間も登録されてメモリに保存される、データメモリと、を含み、自動搾乳システムは、制御ユニットが、
-動物からの乳汁が生産乳汁タンクに送られるのではなく、第2のタンクに迂回させられる第1の時点を登録し、
-動物の乳汁が、第1の時点の後、複数の連続した搾乳セッションにわたって搾乳ステーションから第2の乳汁タンクに迂回させられた場合、動物からの乳汁が、第2のタンクへ送られることから生産乳汁タンクへ送られることに移行された第2の時点を登録するように構成されており、
-第1の時点と第2の時点との間の期間が所定の日数以内である場合、制御ユニットは、動物が第1の時点と第2の時点との間で病気の状態にあると判定するように構成されていることを特徴とする、自動搾乳システムによって達成される。
【0007】
第1の時点は、動物への抗生物質の投与の登録によってトリガされ得る。投与は、人間によって決定および実行されるか、または電子制御ユニットによって決定され、人間によって、もしくは動物への抗生物質の自動投与のためのデバイスによってのいずれかで実行され得、該デバイスは、電子制御デバイスによって制御される。識別システムは、通常、各動物に配置されたタグと、搾乳ステーションに配置され、電気制御ユニットに接続されたタグリーダと、を含む。
【0008】
第2のタンクは広く解釈されるべきであり、搾乳ステーションに直接接続されているタンク、または別のバケツ、または迂回させられた乳汁の排出ラインであり得る。
【0009】
一実施形態によれば、第1の時点と第2の時点との間の期間は、2~10日である。別の実施形態によれば、該期間は、5~10日である。期間が短いほど重症度が低いことを示し得、期間が長いほど重症度が高いことを示し得る。制御ユニットは、該期間の長さに応じて異なる病気状態を判定するように構成され得る。
【0010】
一実施形態によれば、制御ユニットは、該第2の時点から所定の第3の時点までの第1のセンサによる反復測定に基づいて動物の健康状態を判定するように構成される。好ましくは、測定は、別々の搾乳セッションごとに実行される。結果は、データメモリに収集される。
【0011】
一実施形態によれば、制御ユニットは、第3の時点での動物の病気状態からの回復の状態を判定するように構成される。
【0012】
一実施形態によれば、制御ユニットは、第1のセンサからの測定値が第2の時点と第3の時点との間の所定の範囲内で安定したときに、病気状態からの回復の状態を判定するように構成される。体細胞数が第1のセンサによって判定される場合、範囲の上限は、病気の兆候が確立される前の、当該動物の「正常な」体細胞数よりも25%高くなり得る。「正常な」体細胞数は、データメモリに保存された、動物の体細胞数の1つ以上の以前の過去の測定値によって与えられた細胞数である。本発明者らは、回復の兆候として安定化が生じるはずである第3の時点が、第1の時点から3~4週間であることを発見した。
【0013】
一実施形態によれば、第1のセンサは、乳汁の導電率を測定するように構成されたセンサ、または動物の乳汁中の体細胞の数を直接的または間接的に判定するように構成されたセンサである。
【0014】
一実施形態によれば、制御ユニットは、以前に記憶されたデータを第1のセンサから受信した測定値と比較するように構成され、制御ユニットは、該比較に基づいて動物の健康状態を判定するように構成される。以前に記憶されたデータは、例えば、その動物の以前の病気状態に関連した、当該動物に関する以前の対応する測定の結果、または群れの他の動物に関する以前の対応する測定の結果であり得る。データは、制御システムのメモリに記憶される。
【0015】
一実施形態によれば、自動搾乳システムは、第1のセンサによって測定された病気インジケータ以外に、またはそれに加えて、複数のパラメータを測定するための複数のさらなるセンサを含み、さらなるセンサは、制御ユニットに接続され、制御ユニットは、測定されたパラメータの数学的分析を実行し、それに基づいて、該さらなるセンサおよび第1のセンサからの入力に基づいて、病気を示す病気指示インデックスを判定し、該インデックスが閾値を超えた場合にアラートを生成するように構成され、
-制御ユニットは、第1の時点が、動物のための該アラートの生成のある時点から所定の期間内にある場合、該第2の時点から所定の第3の時点までの第1のセンサによる反復測定に基づいて動物の健康状態を判定するように構成されることを特徴とする。さらなるセンサは、以下のパラメータのうちの1つ以上を測定するように構成され得る:乳汁量、血中乳酸、デヒドロゲナーゼ(LDH)、活動、または体調スコア。制御ユニット1によって実行される数学的分析は、さらなるセンサからの測定結果に対する多変量解析であり得る。
【0016】
一実施形態によれば、制御ユニットは、アラートの生成の時点に基づいて第1の時点を設定するように構成される。
【0017】
一実施形態によれば、制御ユニットは、アラートの生成の時点に基づいて第2の時点を設定するように構成される。第3の時点はまた、アラートに基づいて設定され得、一実施形態によれば、それはアラートの3~4週間後である。
【0018】
一実施形態によれば、第1の時点は、アラートの生成の時点と一致する。
【0019】
一実施形態によれば、搾乳システムは、動物に抗生物質を投与するためのデバイスを含み、デバイスは、制御ユニットに接続され、制御ユニットは、動物に対するアラートの生成時から所定の時間内に動物への抗生物質の投与を命令するように構成されることを特徴とする。投与のためのデバイスは、US2019/000817に開示されているものと同様のデバイスであり得る。
【0020】
一実施形態によれば、病気のインジケータは、乳房炎のインジケータである。
【0021】
一実施形態によれば、病気のインジケータは、臨床型乳房炎のインジケータである。
【0022】
一実施形態によれば、搾乳システムは、第1の時点と第2の時点との間の期間が第1の所定の日数、好ましくは5~10日以内であり、その間、病気状態が判定され、制御ユニットは、動物への抗生物質の投与が行われたことを判定するように構成されることを特徴とする。
【0023】
一実施形態によれば、搾乳システムは、第1の時点と第2の時点との間の期間が第2の所定の日数、好ましくは2~4日以内であり、その間、病気時状態が判定され、制御ユニットは、動物への抗生物質の投与が行われなかったことを判定するように構成されることを特徴とする。
【0024】
本発明の目的はまた、自動搾乳システムにおいて動物の健康状態を判定する方法であって、自動搾乳システムは、
-電子制御ユニットを含む制御システムと、
-動物を搾乳するように構成された少なくとも1つの搾乳ステーションと、
-搾乳ステーションから乳汁を受容するための生産乳汁タンクと、
-搾乳ステーションから迂回させられかつ生産乳汁タンクに送られなかった乳汁を受容するように構成された第2の乳汁タンクと、
-自動搾乳システムで搾乳された動物の個別識別情報を制御ユニットに提供するように構成された、制御ユニットに接続された動物識別システムと、
-動物の病気の少なくとも1つのインジケータを測定するように構成された少なくとも1つの第1のセンサであって、該センサは制御ユニットに接続されている、第1のセンサと、
-識別システムによって識別された個々の動物からの乳汁に対して第1のセンサによって実行される測定が収集されるデータメモリであって、各測定の時間もまたメモリに登録および保存される、データメモリと、を含み、この方法は、
-動物からの乳汁が生産乳汁タンクに送られるのではなく、第2のタンクに迂回させられる第1の時点を登録するステップと、
-動物の乳汁が、第1の時点の後、複数の連続した搾乳セッションにわたって搾乳ステーションから第2の乳汁タンクに迂回させられた場合、動物からの乳汁が、第2のタンクへ送られることから生産乳汁タンクへ送られることに移行された第2の時点を登録するステップと、
-第1の時点と第2の時点との間の期間が所定の日数以内である場合、制御ユニットを使用して、動物が第1の時点と第2の時点の間で病気状態にあると判定するステップと、を含むことを特徴とする、方法によって達成される。
【0025】
一実施形態によれば、この方法は、第3の時点での動物の病気状態からの回復の状態を判定するために、電気制御ユニットによって数学的分析を実行するステップを含む。
【0026】
一実施形態によれば、この方法は、第1のセンサからの測定値が第2の時点と第3の時点との間の所定の範囲内で安定した場合に、病気状態からの回復の状態を判定するステップを含む。
【0027】
一実施形態によれば、この方法は、
-センサから受信したデータをメモリに記憶させるステップと、
-以前に記憶されたそのようなデータをセンサから受信した測定値と比較し、制御ユニットによって、該比較に基づいて動物の健康状態を判定するステップと、を含む。
【0028】
一実施形態によれば、この方法は、第1のセンサによって測定された病気インジケータ以外の、またはそれに加えて複数のパラメータを測定し、測定されたパラメータの数学的分析を実行し、それに基づいて、該測定値に基づいて動物の病気を示す病気指示インデックスを判定し、該インデックスが閾値を超えた場合にアラートを生成することと、
-第1の時点が、動物のための該アラートの生成のある時点から所定の期間内にある場合、該第2の時点から所定の第3の時点までの第1のセンサによる反復測定に基づいて動物の健康状態を判定することと、を含む。
【0029】
一実施形態によれば、この方法は、アラートの生成時間に基づいて第1の時点を設定するステップを含む。
【0030】
一実施形態によれば、この方法は、アラートの生成時間に基づいて第2の時点を設定するステップを含む。
【0031】
一実施形態によれば、この方法は、動物に対するアラートの生成時間から所定の時間内に動物に抗生物質を投与するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明による自動搾乳システムの概略図である。
図2】本発明の方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。
図3】本発明の方法の第2の実施形態を示すフローチャートである。
図4】回復していないと判定された場合の体細胞数/ml対時間を示す図である。
図5】回復したと判定された場合の体細胞数/ml対時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、電子制御ユニット1を含む制御システムと、動物を搾乳するように構成された搾乳ステーション2と、搾乳ステーションから乳汁を受容するための生産乳汁タンク3と、搾乳ステーション2から迂回させられかつ生産乳汁タンク3へ送られなかった乳汁を受容するように構成された第2の乳汁タンク4と、を含む、自動搾乳システムを示す。生産乳汁タンク3は、生産乳汁ライン5を介して搾乳ステーション2に接続され、第2の乳汁タンク4は、第2の乳汁ライン6を介して搾乳ステーションに接続されている。
【0034】
このシステムはまた、自動搾乳システムで搾乳される動物の個々の識別情報を制御ユニット1に提供するように構成された、制御ユニット1に接続された動物識別システム(図示せず)を含む。識別システムは、通常、それぞれの動物に取り付けられた識別タグを含む。
【0035】
搾乳システムはまた、動物の病気の少なくとも1つのインジケータを測定するように構成された少なくとも1つの第1のセンサ7を含み、該センサ7は、制御ユニット1に接続されている。第1のセンサ7は、生産乳汁ライン5に配置されている。代替的に、第1のセンサ7は、乳汁生産ライン5からのバイパスラインに配置されている。一実施形態によれば、第1のセンサ7は、乳汁の導電率を測定することができるセンサである。別の実施形態によれば、第1のセンサ7は、乳汁中の体細胞の数を検出することができるセンサである。搾乳システムはまた、識別システムによって識別された個々の動物からの乳汁に対して第1のセンサ7によって実行された測定値が収集されるデータメモリ8を含む。各測定の時刻も登録されてメモリに保存されるため、メモリにタイムログが作成される。
【0036】
搾乳システムはまた、第1のセンサ7によって測定される病気インジケータ以外の、またはそれに加えて、複数のパラメータを測定するための、9、10、11で示される複数のさらなるセンサを含む。さらなるセンサ9、10、11は、制御ユニット1に接続され、制御ユニット1は、さらなるセンサ9、10、11の測定されたパラメータの数学的分析を実行し、それに基づいて、該さらなるセンサおよび該第1のセンサからの入力に基づいて病気を示す病気指示インデックスを判定し、該インデックスが閾値を超えた場合アラートを生成するように構成されている。さらなるセンサは、以下のパラメータのうちの1つ以上を測定するように構成され得る:乳汁量、血中乳酸、デヒドロゲナーゼ(LDH)。さらなるセンサはまた、代替的に、活動または体調スコアを測定するためのセンサを含み得る。制御ユニット1によって実行される数学的分析は、さらなるセンサ9、10、11からの測定結果に対する多変量解析であり得る。
【0037】
搾乳システムはまた、動物に抗生物質を投与するためのデバイス12を含み、このデバイスは、制御ユニット1に接続され、制御ユニット1は、投与デバイス12の動作を制御するように構成される。
【0038】
図2は、本発明の自動搾乳システムの動作を通じて実行される方法ステップが実行されるフローチャートを示す。以下のステップが実行される。
S1:第1の時点t1を登録し、第1の時点t1から開始して、動物の乳汁を搾乳ステーション2から生産乳汁タンクではなく第2の乳汁タンク4に迂回させる。
S2:動物からの乳汁が、第2のタンクへ送られることから生産乳汁タンクへ送られることに移行された第2の時点t2を登録する。第2の時点t2は、第1の時点t1の後に複数の連続した搾乳セッションにわたって動物の乳汁が搾乳ステーションから迂回された場合に登録される。
S3:動物が病気状態にあったかまたは病気状態にあるかを判定する:第1の時点t1と第2の時点t2との間の期間が所定の日数以内である場合、制御ユニットは、動物が病気状態にある、または病気状態にあったということを判定するように構成される。
S4:第3の時点t3における動物の病気状態からの回復の状態を判定するために、電気制御ユニットを用いて数学的分析を実行する。このステップは、病気状態からの回復の状態を判定することを含む。第1のセンサからの測定値が第2の時点と第3の時点の間の所定の範囲内で安定した場合、回復したと見なされる。第1のセンサは、乳汁の導電率を測定するように構成されたセンサ、または動物の乳汁中の体細胞の数を直接的または間接的に決定するように構成されたセンサである。図5は、回復したと判定された場合の体細胞数/ml対時間を示す図である。
【0039】
図3は、以下のステップを含む、方法の別の実施形態を示している。
S101:制御ユニット1によって、さらなるセンサ9、10、11の測定に基づいて、かつ得られた値に多変量解析を適用することによって、所定の動物が臨床型乳房炎を有することを判定する。
S102:制御ユニット1からの命令に応じて、投与デバイス12によって動物に抗生物質を投与する。
S103:制御ユニット1からの命令で、動物の乳汁が、生産乳汁タンク3に送られるのではなく、搾乳ステーション2から第2の乳汁タンク4に迂回させられる第1の時点t1を登録する。制御ユニット1は、例えば、第2の乳汁ライン6が生産乳汁ライン5からそれを介して迂回する、弁13を制御することによって、第2の乳汁タンク4への乳汁の迂回を制御するように構成される(図1を参照)。
S104:動物からの乳汁が第2のタンク4へ送られることから生産乳汁タンク3へ送られることに移行する第2の時点t2を判定および登録する。第2の時点t2は、第1の時点t1の後に複数の連続した搾乳セッションにわたって動物の乳汁が搾乳ステーションから迂回された場合に登録される。
S105:動物が病気状態にあったかまたは病気状態にあるかを判定する:第1の時点と第2の時点との間の期間が所定の日数、好ましくは5~10日以内である場合、制御ユニット1は、動物が病気状態にある、または病気状態にあったということを判定するように構成される。
S106:第3の時点t3における動物の病気状態からの回復の状態を判定するために、電気制御ユニットを用いて数学的分析を実行する。このステップは、病気状態からの回復の状態を判定することを含む。第1のセンサからの測定値が第2の時点と第3の時点の間の所定の範囲内で安定した場合、回復したと見なされる。第1のセンサは、乳汁の導電率を測定するように構成されたセンサ、または動物の乳汁中の体細胞の数を直接的または間接的に決定するように構成されたセンサである。図5は、回復したと判定された場合の体細胞数/ml対時間を示す図である。回復後の体細胞数は、アラート前よりも最大で約20~25%高くなり得る。
【0040】
乳汁の体細胞数または導電率が所定の範囲内で安定していない場合、回復しなかったと見なされる。図4は、第3の時点t3での体細胞数が第1の時点t1での体細胞数と同じ高レベルにある例を示している。仮に回復するならば、抗生物質の投与または他の治療に関係なく、乳牛がかかる病気、特に乳房炎のような病気について、第1の時点から3~4週間以内に回復することが発明者らによって観察された。3~4週間経っても回復が見られない場合は、病気が慢性的である可能性が高い。
図1
図2
図3
図4
図5