(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】摩擦対
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20250218BHJP
F16D 69/02 20060101ALI20250218BHJP
F16D 65/12 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
C09K3/14 520C
C09K3/14 520M
F16D69/02 C
F16D65/12 E
(21)【出願番号】P 2022531710
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2021021878
(87)【国際公開番号】W WO2021256337
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2020103800
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309014573
【氏名又は名称】日清紡ブレーキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】舩元 聡太
(72)【発明者】
【氏名】栗本 健太
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-265157(JP,A)
【文献】特開2017-002230(JP,A)
【文献】特開2016-132727(JP,A)
【文献】特許第6281755(JP,B2)
【文献】特開2017-193623(JP,A)
【文献】特開2013-076058(JP,A)
【文献】特開2018-135240(JP,A)
【文献】特開2011-241382(JP,A)
【文献】国際公開第2021/010003(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
F16D 65/092、65/12、69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合材を摩擦材組成物全量に対して6~8重量%、
繊維基材を摩擦材組成物全量に対して2~4重量%、
潤滑材を摩擦材組成物全量に対して11~16重量%、
摩擦調整
材として無機摩擦調整材を摩擦材組成物全量に対して65~76重量%、
有機摩擦調整材を摩擦材組成物全量に対して5~7重量%、
含有し、銅成分及び鉄系金属繊維を含有しない摩擦材組成物から成る摩擦材を具備するディスクブレーキパッドと、ステンレス鋼製のディスクロータから成る摩擦対において、該摩擦材組成物は、無機摩擦調整材として層状結晶構造のチタン酸塩を摩擦材組成物全量に対し20~30重量%含有するとともに、無機摩擦調整材として雲母とバーミキュライトを含有しないことを特徴とする摩擦対。
【請求項2】
前記チタン酸塩は、チタン酸リチウムカリウムであることを特徴とする請求項1に記載の摩擦対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦対に関し、特に、乗用車等の乗物に用いられる摩擦対に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車のディスクブレーキの摩擦部材として金属製のベース部材に摩擦材が貼り付けられたディスクブレーキパッドが使用されている。
【0003】
近年、ブレーキの静寂性が求められているので、ブレーキノイズの発生が少ない、NAO材と呼ばれる摩擦材を使用したディスクブレーキパッドが広く使用されるようになってきている。
【0004】
NAO材の摩擦材は、結合材、スチール繊維やステンレス繊維等のスチール系繊維以外の繊維基材、摩擦調整材を含む摩擦材組成物を成形したものであり、繊維基材としてスチール系繊維を含むセミメタリック摩擦材やロースチール摩擦材と並んで分類される摩擦材である。そして、近年では米国での銅成分の含有量に関する法規制もあり、銅を5重量%以下しか含まない、あるいは、銅を全く含まない摩擦材開発が一般化している。
【0005】
特許文献1には、繊維基材、摩擦調整材及び結合材を含有する摩擦材組成物であって、該摩擦材組成物中の銅の含有量が銅元素換算で0.5質量%以下であり、前記摩擦調整材として、チタン酸塩が顆粒状とされた顆粒状チタン酸塩を含有し、該顆粒状チタン酸塩の平均粒子径が100~250μmである摩擦材組成物および、該摩擦材組成物を成形して得られる摩擦材が記載されている。
【0006】
特許文献2には、繊維基材、無機充填材、有機充填材および結合材を含有し、銅量が0.5質量%以下の摩擦材であって、前記無機充填材として、平均粒子径が3~5μmの研削材と、平均粒子径が9~13μmの研削材を含むとともに、前記無機充填材として、平均粒子径が1.5~4.5μmのチタン酸塩と、平均粒子径が15~45μmのチタン酸塩を含む摩擦材組成物が記載されている。
【0007】
このような銅成分をほとんど含有しない摩擦材を具備するディスクブレーキパッドの相手材として、特許文献3のような鋳鉄製のディスクロータが使用されている。このような鋳鉄製のディスクロータは耐食性が低く、使用中に錆が発生するという問題があり、摩擦材側に対策が求められていた。
【0008】
例えば、特許文献4には、結合材、摩擦調整材及び繊維基材を含有する摩擦材であって、銅成分を含有せず、複数の凸部形状を有するチタン酸化合物の少なくとも1種を10~20体積%及び生体溶解性無機繊維を1~20体積%含有することにより、相手材の錆落とし性を向上させた摩擦材が開示されている。
【0009】
しかし、電気自動車やハイブリッド自動車の普及により回生ブレーキの搭載が促進されると、従来の油圧ブレーキの摩擦材にかかる制動負荷は低減されることから、特許文献4のような技術を用いても十分な錆落とし性が得られなくなるという問題がある。
【0010】
そこで、耐錆性に優れたステンレス鋼製のディスクロータが使用されるようになってきている。
【0011】
特許文献5には、マルテンサイト組織、あるいはマルテンサイト相とフェライト相の混合組織からなるステンレス鋼板により製造された4輪用ディスクロータが開示されている。
【0012】
特許文献6には、マルテンサイト及び炭窒化物を含み、フェライトを任意選択的に含む組織である自動車用のディスクロータが記載されている。
【0013】
特許文献7には、質量%で、C:0.005~0.100%、Si:0.01~1.00%、Mn:0.010~3.00%、P:0.040%以下、S:0.0100%以下、Cr:10.0~14.0%、N:0.005~0.100%、V:0.03~0.30%、Al:0.001~0.050%、B:0.0002~0.0050%、Ni:0~2.00%、Cu:0~2.00%、Mo:0~1.00%、W:0~1.00%、Ti:0~0.40%、Nb:0~0.40%、Zr:0~0.40%、Co:0~0.400%、Sn:0~0.40%、REM:0~0.050%以下、Mg:0~0.0100%、Ca:0~0.0100%、Sb:0~0.50%、Ta:0~0.3000%、Hf:0~0.3000%、Ga:0~0.1000%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、金属組織がフェライト相からなり、円相当の直径で0.3μm以上の炭窒化物が任意断面において10~50個/100μm2存在することを特徴とするステンレス鋼板から成る自動車用のディスクロータが記載されている。
【0014】
このような背景から耐錆性に優れるステンレス鋼製のディスクロータに適合する、銅成分を含有しない摩擦材組成物から成る摩擦材が望まれているが、従来の鋳鉄製のディスクロータと組み合わせて使用されていた銅成分を含有しない摩擦材を、ステンレス鋼製のディスクロータを搭載したディスクブレーキに適用すると、低速域の効力安定性が著しく低下することが明らかになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2017-57312号公報
【文献】特開2018-162385号公報
【文献】特開平2-134425号公報
【文献】特開2017-149971号公報
【文献】特開2016-117925号公報
【文献】特開2019-173086号公報
【文献】特開2019-178419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、結合材、繊維基材、摩擦調整材を含有し、銅成分及び鉄系金属繊維を含有しない摩擦材組成物から成る摩擦材を具備するディスクブレーキパッドと、ステンレス鋼製のディスクロータから成る摩擦対において、優れた低速域の効力安定性を有する摩擦対を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、結合材、繊維基材、摩擦調整材を含有し、銅成分及び鉄系金属繊維を含有しない摩擦材組成物から成る摩擦材を具備するディスクブレーキパッドと、ステンレス鋼製のディスクロータから成る摩擦対において、摩擦材組成物は、摩擦調整材としてチタン酸塩を特定量含有するとともに、雲母やバーミキュライトを含有しない摩擦材組成物を使用することにより優れた低速域の効力安定性を有する摩擦対を得られることを知見し、本発明を完成した。
【0018】
本発明は、結合材、繊維基材、摩擦調整材を含有し、銅成分及び鉄系金属繊維を含有しない摩擦材組成物から成る摩擦材を具備するディスクブレーキパッドと、ステンレス鋼製のディスクロータから成る摩擦対であって、以下の技術を基礎とするものである。
【0019】
(1)結合材、繊維基材、摩擦調整材を含有し、銅成分及び鉄系金属繊維を含有しない摩擦材組成物から成る摩擦材を具備するディスクブレーキパッドと、ステンレス鋼製のディスクロータから成る摩擦対であって、該摩擦材組成物は、無機摩擦調整材としてチタン酸塩を摩擦材組成物全量に対し20~30重量%含有するとともに、雲母やバーミキュライトを含有しない摩擦対。
【0020】
(2)前記チタン酸塩は、層状結晶構造をしている(1)の摩擦対。
【0021】
(3)前記チタン酸塩は、チタン酸リチウムカリウムである(1)の摩擦対。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、結合材、繊維基材、摩擦調整材を含有し、銅成分及び鉄系金属繊維を含有しない摩擦材組成物から成る摩擦材を具備するディスクブレーキパッドと、ステンレス鋼製のディスクロータから成る摩擦対において、優れた低速域の効力安定性を有する摩擦対を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
従来使用されている鋳鉄製のディスクロータにおいては、ディスクロータ表面にチタン酸塩の移着被膜を形成するために相対的に多量のチタン酸塩と、被膜厚みを均一にコントロールするために雲母又はバーミキュライトを組み合わせて摩擦材組成物に添加することで低速域の効力の安定化を図っていた。
【0024】
それに対しステンレス鋼製のディスクロータにおいては、鋳鉄製ディスクロータに使用される摩擦材で、チタン酸塩の移着被膜の厚みをコントロールするための必須成分であったモース硬度が4以下であり劈開性を有する雲母やバーミキュライトを添加すると、チタン酸塩の移着被膜の形成が阻害され、低速域において良好な効力安定性を得られなくなることが明らかになった。
【0025】
そこで、本発明では、結合材、繊維基材、摩擦調整材を含有し、銅成分及び鉄系金属繊維を含有しない摩擦材組成物から成る摩擦材を具備するディスクブレーキパッドと、ステンレス鋼製のディスクロータから成る摩擦対において、摩擦材組成物は、無機摩擦調整材としてチタン酸塩を摩擦材組成物全量に対し20~30重量%含有するとともに、雲母やバーミキュライトを含有しない摩擦材組成物を使用する。
【0026】
摩擦調整材としてチタン酸塩を摩擦材組成物全量に対し20~30重量%添加することにより、ステンレス製のディスクロータ表面に適度な厚みの被膜を形成することができる。
【0027】
チタン酸塩としては、6チタン酸カリウム、8チタン酸カリウム、6チタン酸ナトリウム等のトンネル状結晶構造のチタン酸塩、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウム等の層状結晶構造のチタン酸塩を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
これらの中でも、構造に着目すると層状結晶構造のチタン酸塩を使用することが好ましく、組成に着目するとチタン酸マグネシウムカリウムを単独で使用することが好ましい。
【0029】
また、チタン酸塩の形状としては、柱状、板状、粒子状、鱗片状、複数の凸部を有する不定形状のものを使用することができる。
【0030】
更に、従来の鋳鉄製ディスクロータに使用される、銅成分及び鉄系金属を含有しない摩擦材組成物の必須成分であったモース硬度が4以下であり劈開性を有する雲母やバーミキュライトを含有しないことで、チタン酸塩の移着被膜の形成が阻害されることがなくなり、低速域において良好な効力安定性を得ることができる。
【0031】
なお、摩擦材組成物に含有しない雲母としては、金雲母、白雲母、絹雲母等が挙げられる。
【0032】
なお、本発明において、モース硬度は、「1.滑石 2.石膏 3.方解石 4.蛍石 5.リン灰石 6.正長石 7.水晶 8.黄玉 9.鋼玉 10.ダイヤモンド」で表される旧モース硬度を適用する。
【0033】
<摩擦材組成物>
本発明の摩擦対に使用される摩擦材は、上記チタン酸塩の他に、通常摩擦材に使用される結合材、繊維基材、摩擦調整材を含む摩擦材組成物から成る。
【0034】
結合材として、ストレートフェノール樹脂、アクリルゴム変性フェノール樹脂、シリコーンゴム変性フェノール樹脂、ニトリルゴム変性フェノール樹脂、カシューオイル変性フェノール樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂(フェノールアラルキル樹脂)、アクリルゴム分散フェノール樹脂、シリコーンゴム分散フェノール樹脂、フッ素ポリマー分散フェノール樹脂等の摩擦材に通常用いられる結合材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
結合材の含有量は摩擦材組成物全量に対して4~9重量%とすることが好ましく、6~8重量%とすることがより好ましい。
【0036】
繊維基材としては、アラミド繊維、アクリル繊維、セルロース繊維、ポリ-パラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維等の摩擦材に通常使用される有機繊維が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
繊維基材の含有量は、摩擦材組成物全量に対して1~5重量%とすることが好ましく、2~4重量%とすることがより好ましい。
【0038】
摩擦調整材としては、潤滑材、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材を使用することができる。
【0039】
潤滑材としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛シート粉砕粉、石油コークス、石炭コークス、弾性黒鉛化カーボン、酸化ポリアクリロニトリル繊維粉砕粉等の炭素質系潤滑材や、硫化錫、二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化ビスマス、硫化亜鉛、複合金属硫化物等の金属硫化物系潤滑材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0040】
潤滑材の含有量は、摩擦材組成物全量に対して10~18重量%とすることが好ましく、11~16重量%とすることがより好ましい。
【0041】
無機摩擦調整材としては上記チタン酸塩の他、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、ドロマイト、ゼオライト、四三酸化鉄、四三酸化マンガン、ケイ酸カルシウム水和物、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、γ-アルミナ、α-アルミナ、炭化ケイ素、ウォラストナイト、セピオライト、バサルト繊維、ガラス繊維、生体溶解性セラミック繊維、ロックウール等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
無機摩擦調整材の含有量は、上記チタン酸塩と合わせて摩擦材組成物全量に対して60~82重量%とすることが好ましく、65~76重量%とすることがより好ましい。
【0043】
有機摩擦調整材としては、カシューダスト、タイヤトレッドゴム粉砕粉、ポリテトラフルオロエチレン粉末や、アクリルゴム、イソプレンゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム等の加硫ゴム粉末又は未加硫ゴム粉末等の摩擦材に通常使用される有機摩擦調整材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
有機摩擦調整材の含有量は、摩擦材組成物全量に対して3~8重量%とすることが好ましく、5~7重量%とすることがより好ましい。
【0045】
<ディスクブレーキパッドの製造方法>
本発明に係るディスクブレーキパッドは、典型的には、
所定量配合した摩擦材組成物(摩擦材原料)を、混合機を用いて均一に混合し、摩擦材原料混合物を得る混合工程、
得られた摩擦材原料混合物と、別途、予め洗浄、表面処理し、接着材を塗布したバックプレートとを重ねて熱成形型に投入し、加熱加圧して成型する加熱加圧成型工程、
得られた成型品を加熱して結合材の硬化反応を完了させる熱処理工程、
スプレー塗装や静電粉体塗装により塗料を塗装する塗装工程、
塗料を焼き付ける塗装焼き付け工程、
回転砥石により摩擦面を形成する研磨工程、
を経て製造される。
【0046】
なお、加熱加圧成型工程の後、塗装工程、塗料焼き付けを兼ねた熱処理工程、研磨工程の順で製造する場合もある。
【0047】
必要に応じて、加熱加圧成型工程の前に、
摩擦材原料混合物を造粒する造粒工程、
摩擦材原料混合物を混練する混練工程、
摩擦材原料混合物又は造粒工程で得られた造粒物と混練工程で得られた混練物とを予備成型型に投入し、予備成型物を成型する予備成型工程、
が実施され、加熱加圧成型工程の後にスコーチ工程が実施されてもよい。
【0048】
<ステンレス鋼製のディスクロータ>
ステンレス鋼製のディスクロータとしては、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼製、フェライト系ステンレス鋼製のディスクロータを用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0050】
[実施例1~7・比較例1~3の摩擦材の製造方法]
表1に示す組成の摩擦材組成物をレディゲミキサーに投入して5分間混合し、摩擦組成物混合物を得た。この摩擦材組成物混合物を成型金型内で30MPaにて10秒間加圧して摩擦材予備成型物を得た。この摩擦材予備成型物を、予め洗浄、表面処理、接着材を塗布した鋼鉄製のバックプレート上に重ね、熱成型型内で成型温度150℃、成型圧力40MPaの条件下で10分間成型して摩擦材成型物を得た。この摩擦材成型物を200℃で5時間熱処理(後硬化)した後、研磨して摩擦面を形成し、乗用車用ディスクブレーキパッドを作製した。
【0051】
【0052】
更に、ディスクブレーキパッドの摩擦材を25mm×15mm×15mmに切り出し、実施例1~7、比較例1~3のテストピースを得た。
【0053】
表2は、これらのテストピースを用いて「低速域の効力安定性」を検証するにあたり採用した「試験条件」、「相手材の材質」、「評価項目」、「評価基準」を示している。
【0054】
【0055】
表3は、各実施例及び各比較例に対する、表2に示す「低速域の効力安定性」の評価結果を示している。
【0056】
【0057】
表3より、本発明の条件を満足する摩擦材が、低速域の効力安定性が良好であることが見てとれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、結合材、繊維基材、摩擦調整材を含有し、銅成分及び鉄系金属繊維を含有しない摩擦材組成物から成る摩擦材を具備するディスクブレーキパッドと、ステンレス鋼製のディスクロータから成る摩擦対において、優れた低速域の効力安定性を有する摩擦対を提供することができ、きわめて実用的価値の高いものである。