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特許7636447ボーリングバー、並びに、そのようなボーリングバーを含む非回転式ボーリングツール及びボーリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】ボーリングバー、並びに、そのようなボーリングバーを含む非回転式ボーリングツール及びボーリング装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/02 20060101AFI20250218BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20250218BHJP
   B23B 27/00 20060101ALI20250218BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
B23B29/02 A
B23Q11/00 A
B23B27/00 C
B23B27/00 D
F16F15/02 C
F16F15/02 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022580925
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2021065437
(87)【国際公開番号】W WO2022002545
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】20315332.5
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522501487
【氏名又は名称】セコ ツールズ ツーリング システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グロル, ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】クルムホルン, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】オステルマン, マチュー
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-531202(JP,A)
【文献】特表2002-528281(JP,A)
【文献】特開2005-177973(JP,A)
【文献】特表平06-503042(JP,A)
【文献】米国特許第5913955(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0093329(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0299349(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/02
B23Q 11/00
B23B 27/00
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非回転式ボーリングツール用のボーリングバー(2)であって、
金属切削機械の支持構造への取り付けのために構成されている細長ボディ(6)であって、後端(6b)と、反対側の前端(6a)と、を有して、前記前端(6a)が、切削エレメント(5)が備えられているツール部(4)を支えるよう配置されている、細長ボディ(6)と、
前記ボーリングバー(2)のアクティブな振動減衰のための、少なくとも2つの電気的に制御される振動アクチュエータ(16)であって、それらの前記少なくとも2つのアクチュエータ(16)の各1つは、運動可能に配置された減衰マス(16a)を含み、前記減衰マスの運動により、前記減衰マス(16a)の中心軸(15)に鉛直な前記アクチュエータの作動軸(17)と平行又は少なくとも実質的に平行な起振力を生成するよう構成されており、それらの前記少なくとも2つのアクチュエータ(16)の各1つは、単一の前記作動軸(17)を有する単軸アクチュエータであり、それらの前記少なくとも2つのアクチュエータ(16)は、それらの前記作動軸(17)が角度的に互いにオフセットして配置される、振動アクチュエータ(16)と、
を含むボーリングバー(2)であって、
前記少なくとも2つのアクチュエータ(16)は、前記細長ボディ(6)において縦方向に直列に、それらの前記アクチュエータ(16)の各1つの前記減衰マス(16a)の前記中心軸(15)が、前記細長ボディ(6)の縦方向軸(7)と一致又は実質的に一致して配置されることを特徴とする、
ボーリングバー(2)。
【請求項2】
前記少なくとも2つのアクチュエータ(16)はn個であり、n≧2であり、前記細長ボディ(6)において、それらの前記n個のアクチュエータの各1つは、その前記作動軸(17)が、それらの前記n個のアクチュエータの別の1つに対して180°/nの角度にて向けられるよう配置されており、それらの前記n個のアクチュエータでは、それらの前記作動軸(17)がそれぞれ、角度的に均一に分配されており、それらの前記n個のアクチュエータ(16)の各1つの前記作動軸(17)では、個別の角度の向きが、それらの前記n個のアクチュエータの他のものの前記作動軸の前記角度の向きとは異なっていることを特徴とする、請求項1に記載のボーリングバー。
【請求項3】
隣り合う前記アクチュエータ(16)の各組は、それらの前記作動軸(17)が、互いに対して180°/nの角度にて向けられるよう配置されていることを特徴とする、請求項2に記載のボーリングバー。
【請求項4】
前記細長ボディ(6)は、
金属切削機械の支持構造への取り付けのために構成されている細長主部(10)であって、後端(10b)と、反対側の前端(10a)と、を有する主部(10)と、
前記主部(10)の前記前端(10a)に向かい合う後端(12b)と、反対側の前端(12a)と、を有する前部(12)であって、前記前部(12)の前記前端(12a)は、前記ツール部(4)を支えるよう配置されている、前部(12)と、
前記主部(10)の前記前端(10a)と前記前部(12)の前記後端(12b)との間に配置されており、前記少なくとも2つのアクチュエータ(16)の一又は複数を収容する少なくとも1つの減衰モジュール(14)と、
を含み、
前記細長ボディ(6)の前記前部(12)は、その前記主部(10)に、前記少なくとも1つの減衰モジュール(14)を介して接続されており、前記少なくとも1つの減衰モジュール(14)は、前記細長ボディ(6)の長さセクションを構成することを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載のボーリングバー。
【請求項5】
前記少なくとも1つの減衰モジュール(14)は、前記主部(10)及び/又は前記前部(12)のそれと同じ断面の外周形状を有することを特徴とする、請求項4に記載のボーリングバー。
【請求項6】
前記主部(10)及び/又は前記前部(12)及び/又は前記少なくとも1つの減衰モジュール(14)は、円柱状、好ましくは、円筒状であることを特徴とする、請求項4又は5に記載のボーリングバー。
【請求項7】
前記主部(10)の外周(18)と前記少なくとも1つの減衰モジュール(14)の外周(19)とは、互いに同一平面又は実質的に互いに同一平面にあることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載のボーリングバー。
【請求項8】
前記少なくとも1つの減衰モジュール(14)は、前記主部(10)と前記前部(12)との間に、好ましくは、前記少なくとも1つの減衰モジュール(14)における通路(23)を通って伸長するタイロッド(22)を用いてクランプされることを特徴とする、請求項4から7のいずれか一項に記載のボーリングバー。
【請求項9】
前記細長ボディの前記前部(12)は、その回転位置において、前記少なくとも1つの減衰モジュール(14)に対して調整可能であることを特徴とする、請求項4から8のいずれか一項に記載のボーリングバー。
【請求項10】
前記少なくとも2つのアクチュエータ(16)は、同じ前記減衰モジュール(14)に収容されることを特徴とする、請求項4から9のいずれか一項に記載のボーリングバー。
【請求項11】
前記細長ボディ(6)は、前記主部(10)の前記前端(10a)と前記前部(12)の前記後端(12b)との間に互いに直列に配置された前記少なくとも2つのそのような減衰モジュール(14)を含み、前記少なくとも2つのアクチュエータ(16)は、それらの前記減衰モジュール(14)の別々のものそれぞれに配置されていることを特徴とする、請求項4から9のいずれか一項に記載のボーリングバー。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のボーリングバー(2)と、
切削エレメント(5)が備えられているツール部(4)であって、前記細長ボディの前記前端(6a)に取り外し可能に取り付けられる、又は、これと一体的に形成されるツール部(4)と、
を含むことを特徴とする、非回転式ボーリングツール。
【請求項13】
前記ツール部(4)は、その回転位置において、前記細長ボディ(6)に対して調整可能であることを特徴とする、請求項12に記載の非回転式ボーリングツール。
【請求項14】
前記切削エレメント(5)は、すくい側(30)と、逃げ面(32)と、前記すくい側と前記逃げ面との間の交差部に形成される切削エッジ(33)と、を含み、前記細長ボディ(6)の前記縦方向軸(7)に鉛直であり、前記切削エッジ(33)と、半径方向に最外のポイント(39)にて交差する断面に見た際に、真っ直ぐかつ仮想的な基準線Lが、前記切削エッジ(33)と、前記半径方向に最外のポイント(39)にて交差して、この前記断面において、前記切削エレメント(5)の外側において、前記逃げ面(32)に対して6°の角度(β)にて伸長して、この前記断面に見た際に、前記細長ボディの前記前端(6a)に最も近い前記アクチュエータ(16)の前記作動軸(17)は、
前記基準線Lに対して、90°±10°の角度、好ましくは、90°±5°の角度、より好ましくは、90°±1°の角度を形成する、又は、
前記基準線Lに対して、0°±10°の角度、好ましくは、0°±5°の角度、より好ましくは、0°±1°の角度を形成することを特徴とする、
請求項12又は13に記載の非回転式ボーリングツール。
【請求項15】
前記ボーリングツール(1)は、前記細長ボディ(6)にその前記前端(6a)にて、又は、前記ツール部(4)に、載置された少なくとも1つの振動センサ(43)を含むことを特徴とする、請求項12から14のいずれか一項に記載の非回転式ボーリングツール。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか一項に記載のボーリングバー(2)と、
前記少なくとも2つのアクチュエータ(16)への電流を、それらの前記アクチュエータにおける起振力の生成を制御するために制御するよう構成されている電子制御ユニット(41)と、
を含むことを特徴とする、ボーリング装置。
【請求項17】
前記ボーリング装置(40)は、前記ボーリングバー(2)の振動に関する測定信号を生成して、前記測定信号を前記電子制御ユニット(41)に送信するよう構成されている少なくとも1つの振動センサ(43)を含み、
前記電子制御ユニット(41)は、前記測定信号を前記少なくとも1つの振動センサ(43)から受信するよう構成されており、前記電子制御ユニット(41)は、前記少なくとも2つのアクチュエータ(16)への前記電流を、前記少なくとも1つの振動センサ(43)からの前記測定信号に依存して、それらの前記アクチュエータ(16)における起振力の前記生成を、それらの前記測定信号に依存して制御するために制御するよう構成されていることを特徴とする、
請求項16に記載のボーリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1のプリアンブルに係るボーリングバーに関する。本発明はまた、そのようなボーリングバーを含む非回転式ボーリングツール及びボーリング装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
切削エレメントがその自由端にあるカンチレバー式ボーリングバーが、例えば、金属材料の回転しているワークピース上での内部又は外部旋削などの様々なタイプの加工作業を行うために使用されてよい。加工作業中、切削エレメントは、ワークピースの回転の軸に鉛直に伸長して、その回転の軸と、切削エレメントとワークピースとの間の接触のポイントと、に交差する線に沿って向けられた半径方向力と、その半径方向力に鉛直に、その切削エレメントとワークピースとの間の接触のポイントにて、ワークピースの表面の接線方向に向けられた接線力と、を含む、回転しているワークピースからの切削力にさらされる。それらの相互に鉛直な切削力は、ボーリングバーにおける振動を誘発することとなり、これはその後、ノイズを引き起こし、ワークピースの表面仕上げを不完全なものとして、ツールを破損させ、他の望まない影響をもたらす場合がある。
【0003】
ワークピースの加工中にボーリングバーの外側端にある切削エレメント上の切削力により引き起こされるボーリングバーの振動を減らすために、様々なタイプのアクティブな減衰システムが開発されてきた。そのようなアクティブな減衰システムは、ボーリングバーの振動を感知するための少なくとも1つの振動センサと、ボーリングバーにおいて起振力を生成するための少なくとも1つの電気的に制御される振動アクチュエータと、を含んでよく、振動アクチュエータは、電子制御ユニットにより、単一又は複数の振動センサからの測定信号に依存して、切削力によりボーリングバーにおいて誘発された振動に干渉して、これによりこれらを打ち消す、ボーリングバーにおける反対振動を導くために、制御される。
【0004】
上記のタイプのアクティブな減衰システムが、US5170103Aに開示されており、ここでは、振動アクチュエータが、ボーリングバーの内側のキャビティに収容される。
【0005】
アクティブな減衰システムは、EP3511112A1に開示するような、そのラムの外側にある工作機械に載置された、そのラムにおける振動を減衰するための、一又は複数の振動アクチュエータを含んでよい。
【0006】
本発明の目的は、新たに好適に設計された上記のタイプのボーリングバーを提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明によると、本目的は、請求項1に規定される特徴を有するボーリングバーを用いて達成される。
【0008】
本発明に係るボーリングバーは、非回転式ボーリングツールでの使用のために構成されており、
金属切削機械の支持構造への取り付けのために構成されている細長ボディであって、後端と、反対側の前端と、を有して、前端が、切削エレメントが備えられているツール部を支えるよう配置されている、細長ボディと、
ボーリングバーのアクティブな振動減衰のための、少なくとも2つの電気的に制御される振動アクチュエータと、
を含む。
【0009】
当該少なくとも2つのアクチュエータの各1つは、運動可能に配置された減衰マスを含み、その減衰マスの運動により、減衰マスの中心軸に鉛直なアクチュエータの作動軸と平行又は少なくとも実質的に平行な起振力を生成するよう構成されており、それらの少なくとも2つのアクチュエータの各1つは、単一の作動軸を有する単軸アクチュエータであり、それらの少なくとも2つのアクチュエータは、それらの作動軸が角度的に互いにオフセットして配置される。さらに、当該少なくとも2つのアクチュエータは、細長ボディにおいて縦方向に直列に、それらのアクチュエータの各1つの減衰マスの中心軸が、細長ボディの縦方向軸と一致又は実質的に一致して配置される。したがって、少なくとも2つのアクチュエータの減衰マスは、細長ボディにおいて、その細長ボディの縦方向軸上にその中心を置いて配置されており、これは、アクチュエータの制御において使用される計算を簡素化することとなり、これにより、ボーリングバーにおける振動に正確かつ迅速に、良好に応答してこれらを減衰できる減衰システムを実現できる。
【0010】
さらに、当該少なくとも2つのアクチュエータの上記の配置では、それらのアクチュエータは、細長ボディにおいて、それらの作動軸が、細長ボディの縦方向軸に対して鉛直に、互いに異なる方向に向けられて置かれている。これにより、対象となるアクチュエータは、ボーリングバーの縦方向軸に対して異なる角度方向にある振動を打ち消すために最適化されてよく、これは、効率的な振動減衰の実現を促進する。この場合では、第1のアクチュエータは、例えば、切削エレメント上の上記の半径方向力により引き起こされる振動を打ち消すために最適化されてよく、別のアクチュエータは、切削エレメント上の上記の接線力により引き起こされる振動を打ち消すために最適化されてよい。後者の場合では、それらの作動軸が互いに鉛直に伸長して配置された2つのアクチュエータを使用することが好適であり、これは、当該半径方向力が、当該接線力に対して鉛直であるという事実によるものである。
【0011】
先に画定するように細長ボディに配置された2つ又はそれ以上のアクチュエータに加えて、つまり、上記の少なくとも2つのアクチュエータに加えて、ボーリングバーはまた、そのように望まれているのであれば、いずれの他の好適な方法で配置された一又は複数の追加的なアクチュエータをも含んでよい。
【0012】
本発明の1つの実施形態によると、当該少なくとも2つのアクチュエータはn個であり、n≧2であり、細長ボディにおいて、それらのn個のアクチュエータの各1つは、その作動軸が、それらのn個のアクチュエータの別の1つに対して180°/nの角度にて向けられるよう配置されており、それらのn個のアクチュエータでは、それらの作動軸がそれぞれ、角度的に均一に分配されており、それらのn個のアクチュエータの各1つの作動軸では、個別の角度の向きが、それらのn個のアクチュエータの他のものの作動軸の角度の向きとは異なっている。したがって、対象となるアクチュエータの数が2つであれば、それらは、それらの作動軸が、互いに対して90°の角度にて向けられており、それらの数が3つであれば、それらは、それらの作動軸が、互いに対して60°の角度にて向けられており、それを超える数についても同様である。さらに、隣り合うアクチュエータの各組は、この場合では、好ましくは、それらの作動軸が、互いに対して180°/nの角度にて向けられているよう配置されており、これは、n個のアクチュエータの前のものの後に連続して隣に配置された当該n個のアクチュエータの各1つでは、その作動軸が、前のアクチュエータの作動軸に対して180°/nの角度にて向けられることを暗示する。
【0013】
本発明の別の実施形態によると、細長ボディは、
金属切削機械の支持構造への取り付けのために構成されている細長主部であって、後端と、反対側の前端と、を有する主部と、
主部の前端に向かい合う後端と、反対側の前端と、を有する前部であって、前部の前端は、当該ツール部を支えるよう配置されている、前部と、
主部の前端と前部の後端との間に配置されており、当該少なくとも2つのアクチュエータの一又は複数を収容する少なくとも1つの減衰モジュールと、
を含む。
【0014】
細長ボディの上記の前部は、細長ボディの主部に、少なくとも1つの減衰モジュールを介して接続されており、少なくとも1つの減衰モジュールは、細長ボディの長さセクションを構成する。したがって、主部と、少なくとも1つの減衰モジュールと、前部と、は、細長ボディの縦方向に見られるように、細長ボディの、別個の、連続して配置された長さセクションをなす。これにより、振動アクチュエータは、ボーリングバーの細長ボディに、アクチュエータをまず、関連付けられている減衰モジュールのケーシング内に載置して、続いて、減衰モジュールを、細長ボディの主部と前部との間に固定することにより統合されてよく、これは、ボーリングバーの組み立てを促進することとなる。この場合では、切削エレメントとワークピースとの間の接触のポイントに対するアクチュエータの作動方向は、必要な場合に、関連付けられている減衰モジュールの回転位置を、細長ボディの前部に対して調整することにより調整されてよい。さらに、1つのアクチュエータを別個の減衰モジュールに収容することにより、減衰特性が、容易に、特定の必要性に、減衰モジュールの変更により、ボーリングバーの他の部分を変える必要なく、適合されてよい。ボーリングバーにおけるアクチュエータの数が、容易に、特定の必要性に依存して、細長ボディの主部と前部との間に配置される減衰モジュールの数を変えることにより、変更されてよい。細長ボディの主部と前部との間に配置される別個になっている減衰モジュールにおける1つのアクチュエータの配置はまた、アクチュエータを細長ボディの前端近くに置くことをも容易にして、これは、ボーリングバーの振動が生成される切削エレメントに近接するため、アクチュエータにとって好ましい位置である。さらに、別個の減衰モジュールの使用は、ボーリングバーのこの部分を、アクチュエータの減衰マスとストロークとを最大化する目的のためのアクチュエータの要件に適合させることを容易にする。
【0015】
しかし、ボーリングバーの細長ボディは、代替として、上記のタイプの別個の減衰モジュールが無くともよく、当該少なくとも2つのアクチュエータは、細長ボディの内側の同じキャビティに共に収容される、又は、細長ボディの内側の別個のキャビティに個々に収容される。
【0016】
少なくとも1つの減衰モジュールは、好ましくは、主部及び/又は前部のそれと同じ断面の外周形状を有する。さらに、主部及び/又は前部及び/又は少なくとも1つの減衰モジュールは、好適には、円柱状、好ましくは、円筒状である。
【0017】
本発明の1つの実施形態によると、主部の外周と少なくとも1つの減衰モジュールの外周とは、互いに同一平面又は実質的に互いに同一平面にある。ボーリングバーの細長ボディには、これにより、滑らかな外周面が設計されてよい。
【0018】
本発明の別の実施形態によると、少なくとも1つの減衰モジュールは、主部と前部との間に、好ましくは、少なくとも1つの減衰モジュールにおける通路を通って伸長するタイロッドを用いてクランプされる。これにより、単一又は複数の減衰モジュールが、細長ボディの主部と前部との間にシンプルかつ確実に固定されてよい。タイロッドの各1つは、主部に固定される第1の端と、前部に固定される反対側の第2の端と、を有してよい。
【0019】
本発明の別の実施形態によると、細長ボディは、主部の前端と前部の後端との間に互いに直列に配置された上記のタイプの少なくとも2つの減衰モジュールを含み、当該少なくとも2つのアクチュエータは、それらの減衰モジュールの別々のものそれぞれに配置されている。これにより、対象となるアクチュエータが、ボーリングバーの細長ボディにシンプルに統合されてよい。代替として、当該少なくとも2つのアクチュエータは、1つの同じ減衰モジュールに収容されてよい。少なくとも2つの減衰モジュールは、好適には、互いに当接して配置される。しかし、ある種類の中間エレメントが、代替として、少なくとも2つの減衰モジュール間に配置されてよい。ボーリングバーの前部は、好ましくは、その後端が、少なくとも2つの減衰モジュールの最も前のものの前端と当接して配置される。しかし、ある種類の中間エレメントが、代替として、前部と最も前の減衰モジュールとの間に配置されてよい。少なくとも2つの減衰モジュールの最も後ろのものは、好ましくは、その後端が主部の前端と当接して配置される。しかし、ある種類の中間エレメントが、代替として、主部と最も後ろの減衰モジュールとの間に配置されてよい。
【0020】
細長ボディの製造を促進するために、当該少なくとも2つの減衰モジュールは、好適には、その設計とサイズとが同じである。
【0021】
本発明に係るボーリングバーのさらに好適な特徴が、以下の説明からわかるであろう。
【0022】
本発明はまた、上記のタイプのボーリングバーと、切削エレメントが備えられているツール部と、を含む非回転式ボーリングツールにも関して、このツール部は、細長ボディの前端に取り外し可能に取り付けられる、又は、これと一体的に形成される。
【0023】
本発明の1つの実施形態によると、当該ツール部は、その回転位置において、細長ボディに対して調整可能である。これにより、減衰特性を最適化するために、当該少なくとも2つのアクチュエータの作動軸に対する切削エレメントの角度位置が調整できるようになる。
【0024】
本発明の別の実施形態によると、切削エレメントは、すくい側と、逃げ面と、すくい側と逃げ面との間の交差部に形成される切削エッジと、を含み、細長ボディの縦方向軸に鉛直であり、切削エッジと、半径方向に最外のポイントにて交差する断面に見た際に、真っ直ぐかつ仮想的な基準線Lが、切削エッジと、半径方向に最外のポイントにおいて交差して、この断面において、切削エレメントの外側において、逃げ面に対して6°の角度にて伸長して、この断面に見た際に、細長ボディの前端に最も近いアクチュエータの作動軸は、
当該基準線Lに対して、90°±10°の角度、好ましくは、90°±5°の角度、より好ましくは、90°±1°の角度を形成する、又は、
当該基準線Lに対して、0°±10°の角度、好ましくは、0°±5°の角度、より好ましくは、0°±1°の角度を形成する。
【0025】
非回転式ボーリングツールの切削エレメントの逃げ角は一般的に6°にある、又は、6°に近く、これは、切削エレメント上の上記の接線力が、実質的に先に画定される基準線Lに沿って向けられて、一方で、切削エレメント上の上記の半径方向力が、実質的にこの基準線Lに鉛直に向けられることを暗示する。非回転式ボーリングツールのボーリングバーの効率的な振動減衰を実現するために、ボーリングバーの前端に最も近いアクチュエータの作動軸を、切削エレメント上の半径方向力と実質的に平行に配置して、このアクチュエータが、この半径方向力により引き起こされる振動を効率的に減衰できるようにする、又は、この作動軸を、切削エレメント上の接線力と実質的に平行に配置して、このアクチュエータが、この接線力により引き起こされる振動を効率的に減衰できるようにすることが好ましい。ボーリングバーの前端に最も近いアクチュエータの作動軸が、上記の基準線Lに対して90°±10°の角度を形成するよう配置されていれば、このアクチュエータは、その結果として、切削エレメント上の半径方向力により引き起こされるボーリングバーにおける振動を減衰することに注力することとなる。ボーリングバーの前端に最も近い減衰モジュールにおけるアクチュエータの作動軸が、上記の基準線Lに対して0°±10°の角度を形成するよう配置されていれば、このアクチュエータは、その代わりに、切削エレメント上の接線力により引き起こされるボーリングバーにおける振動を減衰することに注力することとなる。
【0026】
本発明の別の実施形態によると、ボーリングツールは、細長ボディにその前端にて、又は、当該ツール部に載置された少なくとも1つの振動センサを含む。これにより、切削エレメントに近い位置にて振動が検出されることとなり、これにより、切削エレメント上に作用する切削力により誘発される振動を効率的に打ち消すことができる。
【0027】
本発明に係るボーリングツールのさらに好適な特徴が、以下の説明からわかるであろう。
【0028】
本発明はまた、上記のタイプのボーリングバーと、当該少なくとも2つのアクチュエータへの電流を、それらのアクチュエータにおける起振力の生成を制御するために制御するよう構成されている電子制御ユニットと、を含むボーリング装置にも関する。ボーリング装置はまた、好ましくは、ボーリングバーの振動に関する測定信号を生成して、それらの測定信号を電子制御ユニットに送信するよう構成されている少なくとも1つの振動センサをも含み、電子制御ユニットは、それらの測定信号を少なくとも1つの振動センサから受信して、当該少なくとも2つのアクチュエータへの電流を、少なくとも1つの振動センサからのそれらの測定信号に依存して、それらのアクチュエータにおける起振力の生成を、それらの測定信号に依存して制御するために制御するよう構成されている。
【0029】
本発明に係るボーリング装置のさらに好適な特徴が、以下の説明からわかるであろう。
【0030】
以下の添付の図面を参照して、例として示す、本発明の実施形態の具体的な説明が以下に続く。添付の図面において:
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の1つの実施形態に係る非回転式ボーリングツールの側面図である。
図2図1の線II-IIに係る縦方向の断面図である。
図3図1のボーリングツールの分解組立図である。
図4図1のボーリングツールの別の方向からの分解組立図である。
図5図1のボーリングツールの前端の斜視図である。
図6a-6b】図1のボーリングツールの前面図である。
図7a図1のボーリングツールに含まれる切削エレメントの上からの斜視図である。
図7b図7aの切削エレメントの下からの斜視図である。
図7c図7aの切削エレメントの側面図である。
図8a】代替的な切削エレメントの上からの斜視図である。
図8b図8aの切削エレメントの下からの斜視図である。
図8c図8aの切削エレメントの側面図である。
図9】本発明の1つの実施形態に係るボーリング装置の概略図である。
図10】本発明の代替的な実施形態に係るボーリング装置の概略図である。
図11】本発明の別の代替的な実施形態に係るボーリング装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の1つの実施形態に係る非回転式ボーリングツール1を、図1から図5に示す。ボーリングツール1は、例えば、金属材料の回転しているワークピース上での内部又は外部旋削などの様々なタイプの加工作業を行うために使用される。ボーリングツール1は、金属切削機械(図9から図11に極めて模式的に示す)の支持構造3に、この支持構造3からカンチレバー状に突出させるために固定されるボーリングバー2を含む。ボーリングバー2は、金属切削機械の支持構造3への取り付けのために構成されている細長ボディ6を含む。細長ボディ6は、後端6bと、反対側の前端6aと、を有する。細長ボディの縦方向軸7は、細長ボディの後端6bと前端6aとの間を伸長する。
【0033】
ボーリングツール1はまた、切削エレメント5が備えられているツール部4をも含み、このツール部4は、細長ボディ6により支えられており、細長ボディにその前端6aにて載置されている。代替として、ツール部4は、細長ボディの前端6aと共に一体的に形成されてよく、これは、ツール部4と細長ボディ6とが、1つの共通コンポーネントとして組み合わされることを暗示する。
【0034】
ボーリングバー2は、ボーリングバー2のアクティブな振動減衰のための、少なくとも2つの電気的に制御される振動アクチュエータ16を含む。それらのアクチュエータ16の各1つは、運動可能に配置された減衰マス16aを含み、その減衰マスの運動により、減衰マス16aの中心軸15に鉛直なアクチュエータの作動軸17と平行又は少なくとも実質的に平行な起振力を生成するよう構成されている。少なくとも2つのアクチュエータ16の各1つは、単一の作動軸17を有する単軸アクチュエータであって、それらのアクチュエータ16は、それらの作動軸17が角度的に互いにオフセットして配置される。したがって、アクチュエータ16は、細長ボディ6において互いに異なる回転位置に配置される。
【0035】
当該アクチュエータ16は、回転しているワークピースの加工中に切削エレメント5上に作用する切削力により、ボーリングバー2において誘発された振動を打ち消すために、起振力を生成するよう構成されている。アクチュエータ16により生成される起振力はまた、切削エレメント5によりワークピースから切削された大きい金属チップを小片に細かくするために、切削エレメント5を断続的に振動させるために使用されてもよい。
【0036】
当該アクチュエータ16は、細長ボディ6において縦方向に直列に配置されている、つまり、細長ボディの縦方向に連続して、それらのアクチュエータ16の各1つの減衰マス16aの中心軸15が、細長ボディ6の縦方向軸7と一致又は少なくとも実質的に一致して配置される。したがって、アクチュエータ16の各1つの作動軸17は、細長ボディ6の縦方向軸7に鉛直な断面において伸長する。
【0037】
図1から図5に示す実施形態では、当該アクチュエータ16の数は2つであるが、ボーリングバー2は、代替として、細長ボディ6に配置された2つを超えるそのようなアクチュエータ16を含み、それらすべてのアクチュエータの作動軸17が、好ましくは、互いに異なる方向に向けられるようになっていてよい。それらのアクチュエータ16の作動軸17は、好ましくは、角度的に均一に分配されており、それらのアクチュエータ16の各1つは、その作動軸17が、アクチュエータの別の1つに対して180°/nの角度にて向けられており、ここで、nは、アクチュエータ16の数に対応する整数である。したがって、当該アクチュエータ16の数が2つであれば、それらは、好ましくは、細長ボディ6において、それらでは、それらの作動軸17が、互いに90°の角度にて、つまり、図1及び図2に示すように、互いに鉛直に向けられるよう配置される。当該アクチュエータ16の数が3つであれば、それらは、好ましくは、細長ボディ6において、それらでは、それらの作動軸17が、互いに対して60°の角度にて向けられるよう配置され、それらの数が4つであれば、それらは、好ましくは、細長ボディ6において、それらでは、それらの作動軸17が、互いに対して45°の角度にて向けられるよう配置され、それを超える数についても同様である。さらに、隣り合うアクチュエータの各組におけるアクチュエータ16は、この場合では、好ましくは、それらの作動軸が、互いに対して180°/nの角度にて向けられるよう配置される。
【0038】
図1から図5に示す実施形態では、ボーリングバー2の細長ボディ6は、別個の部分10、12、14からなり、これらは互いに接続されており、細長ボディ6を共に形成して、それらの部分10、12、14は、細長ボディ6の別個の長さセクション、つまり、別個のセグメントをなす。したがって、それらの部分10、12、14は、その縦方向に見られるように、ボーリングバーの細長ボディ6の連続するセクションをなす。この場合では、細長ボディ6は、金属切削機械の支持構造3への取り付けのために構成されている細長主部10を含む。この主部10は、後端10bと、反対側の前端10aと、を有する。主部10は、好ましくは、チューブ形状であり、それは、当該支持構造3にその後端10bにて取り付けられる。ここに示す実施形態では、主部10は円柱状であり、円形の断面形状を有する。しかし、主部10はまた、いずれの他の好適な断面形状、例えば、楕円形又は多角形の断面形状をも有してよい。
【0039】
図1から図5に示す細長ボディ6は、前部12をさらに含む。この前部12は、主部10の前端10aに向かい合う後端12bと、反対側の前端12aと、を有する。前部の前端12aは、上記のツール部4を支えるよう配置される。したがって、このツール部4は、ボーリングバーの前部12にその前端12aにて取り付けられる。代替として、ツール部4は、前部12と共に一体的に形成されてよく、これは、ツール部4と前部12とが、1つの共通コンポーネントとして組み合わされることを暗示する。ここに示す実施形態では、前部12は円柱状であり、円形の断面形状を有する。しかし、前部12はまた、いずれの他の好適な断面形状、例えば、楕円形又は多角形の断面形状をも有してよい。
【0040】
細長ボディ6はまた、主部10の前端10aと前部12の後端12bとの間に配置された少なくとも1つの減衰モジュール14をも含んでよく、この減衰モジュール14は、主部10に向かい合う後端14bと、前部12に向かい合う反対側の前端14aと、を有する。ここに示す実施形態では、細長ボディ6は、主部10の前端10aと前部12の後端12bとの間に互いに直列に配置された2つのそのような減衰モジュール14を含む。したがって、それらの2つの減衰モジュール14は、細長ボディ6の縦方向に互いに直列に配置される。細長ボディ6は、代替として、細長ボディの縦方向に互いに直列に配置された2つを超える減衰モジュール14、又は、単一の減衰モジュール14を含んでよい。前部12は、主部10に、減衰モジュール14を介して接続される。
【0041】
ここに示す実施形態では、減衰モジュール14は円柱状であり、円形の断面形状を有する。しかし、減衰モジュール14はまた、いずれの他の好適な断面形状、例えば、楕円形又は多角形の断面形状をも有してよい。
【0042】
減衰モジュール14の各1つには、上記のアクチュエータ16の少なくとも1つが備えられて、このアクチュエータ16は、関連付けられている減衰モジュールのハウジング14cに配置されており、アクチュエータ16の減衰マス16aは、このハウジング14cに対して運動可能である。ここに示す実施形態では、減衰マス16aは、減衰モジュール14のハウジング14cに対して、減衰マス16aの向かい合う両側に配置されたリターンスプリング16bの作用に抗して運動可能である。アクチュエータ16は電磁タイプであってよく、ここでは、起振力が電磁的に生成される。しかし、いずれの他の好適なタイプの振動アクチュエータが使用されてもよい。
【0043】
ここに示す実施形態では、各減衰モジュール14には、単一のアクチュエータ16が備えられている。しかし、個々の減衰モジュール14には、代替として、2つ又はそれ以上のアクチュエータ16が備えられてよい。
【0044】
ここに示す実施形態では、減衰モジュール14は互いに直接当接して、減衰モジュールの最も前のものの後端14bは、他の減衰モジュール、つまり、最も後ろの減衰モジュールの前端14aに当接する。図1から図5に示すように、前部12は、その後端12bが最も前の減衰モジュールの前端14aに直接当接して配置されてよく、最も後ろの減衰モジュールは、その後端14bが主部10の前端10aと直接当接して配置されてよい。
【0045】
主部10の外周18と各減衰モジュール14の外周19とは、好適には、図1図2、及び図5に示すように、互いに同一平面又は実質的に互いに同一平面にある。さらに、前部12の外周20は、好適には、最も前の減衰モジュール14の外周19と同一平面又は実質的に同一平面にある。
【0046】
ボーリングバー2のメンテナンス及び補修を促進するために、主部10と、減衰モジュール14と、前部12と、は、好ましくは、互いに取り外し可能に載置される。ここに示す実施形態では、減衰モジュール14は、主部10と前部12との間に、タイロッド22を用いてクランプされる。各タイロッド22は、主部10に固定される第1の端22aと、前部12に固定される反対側の第2の端22bと、を有する。さらに、各タイロッド22は、減衰モジュール14において互いに整列されている通路23を通って伸長する。細長ボディ6の別々の部分10、12、14は、代替として、いずれの他の好適な方法で互いに載置されてよい。
【0047】
ここに示す実施形態では、減衰モジュール14の各1つにおけるアクチュエータ16には、その減衰モジュールの向かい合う両側にある2つの開口を通してアクセス可能であり、各開口は、取り外し可能に載置されたカバー24により覆われており、これは、減衰モジュールの外周19の一部を形成して、関連付けられている開口において、スクリュの形態の固定エレメント25を用いて固定される。上記のタイロッド22のいくつかのための通路23が、カバー24に提供されてよい。
【0048】
ここに示す実施形態では、冷却液が、ツール部4に、細長ボディ6の主部10を通して軸方向に伸長する第1のフィードパイプ26と、細長ボディの主部10と前部12との間を、タイロッド22と平行に伸長する少なくとも1つの第2のフィードパイプ27と、を通して供給される。ここに示す例では、ボーリングバー2には、2つのそのような第2のフィードパイプ27が備えられる。第1のフィードパイプ26は、細長ボディの主部10に、主部10にその前端10aにて固定された第1の端片28aと、主部10にその後端10bにて固定された第2の端片28bと、を用いて固定される。第2のフィードパイプ27の各1つは、第1のフィードパイプ26に、第1の端片28aにおける内部チャネルを介して接続される。さらに、第2のフィードパイプ27の各1つは、減衰モジュール14において互いに整列されている通路29を通って伸長するよう配置されてよい。
【0049】
アクチュエータ16の作動軸17の角度位置を、切削エレメント5に対して調整できるようにするために、細長ボディ6の前部12は、その回転位置において、減衰モジュール14に対して調整可能であってよく、これは、前部12が、最も前の減衰モジュール14に、この減衰モジュールに対して異なる選択可能な回転位置において取り付け可能であることを暗示する。減衰モジュール14に対しての前部12のそのような回転調整可能性の代替として、又は、それと組み合わせて、切削エレメント5が備えられているツール部4は、その回転位置において、細長ボディの前部12に対して調整可能であってよく、これは、ツール部4が、前部12に、この前部に対して異なる選択可能な回転位置において取り付け可能であることを暗示する。減衰モジュール14はまた、そのアクチュエータ16が、その回転位置において、減衰モジュールのケーシングに対して調整可能であってよいよう配置されてもよい。減衰モジュール14の数が2つ又はそれ以上であれば、それらは、それらそれぞれの回転位置が、互いに対して調整可能であってよいよう配置されてよい。
【0050】
ツール部4に固定された切削エレメント5は、図7aから図7cに示すように、ポジティブな切削エレメント、又は、図8aから図8cに示すように、ネガティブな切削エレメントであってよい。切削エレメント5は、上部すくい側30と、すくい側30と平行又は実質的に平行に伸長する底側31と、すくい側30と底側31との間を伸長する周囲逃げ面32と、を含む。切削エッジ33が、すくい側30と逃げ面32との間の交差部に形成される。ここに示す例では、切削エッジ33は、すくい側30の周りすべてに、その周囲に沿って伸長する。ポジティブな切削エレメント5の場合では、逃げ面32は、図7cに示すように、すくい側30に対して鋭角αに伸長する。ネガティブな切削エレメント5の場合では、逃げ面32は、図8cに示すように、すくい側30に対して直角に伸長する。
【0051】
孔34が、切削エレメント5にわたって、すくい側30と底側31との間を伸長する。切削エレメント5は、ツール部4に解放可能に載置されて、切削エレメント5の底側31が、ツール部4において切削エレメントのために提供されるシート上の支持面35(図6aを参照されたい)に置かれるよう構成されている。切削エレメント5は、ツール部4における当該シートに、切削エレメント5における孔34を通して伸長して、シート上の支持面35におけるねじ孔にかみ合うスクリュ(図5を参照されたい)の形態の固定エレメント36を用いて固定される。
【0052】
ここに示す例では、切削エレメント5は、切削エレメントの向かい合う両側に互いに向かい合って置かれる2つの切削コーナー37を含む。切削エレメント5は、ツール部4に固定されて、切削コーナー37の1つが、ボーリングバー2の縦方向軸7の外に向き、切削エレメント5が、回転しているワークピースと、この外に向く切削コーナー37を介して接触することが意図されている。回転しているワークピースの加工中に、ボーリングツール1は、一般的に、切削エレメント5上の上記の接線力Fが、図7c及び図8cに示すように、逃げ面32に対して約6°の角度θにて向けられるよう、ワークピースに対して置かれる。
【0053】
真っ直ぐかつ仮想的な基準線L(図6a及び図6bを参照されたい)が、細長ボディ6の縦方向軸7に鉛直であり、切削エッジ33と、半径方向に最外のポイント39において交差する断面において画定されて、この基準線Lは、切削エッジ33と、半径方向に最外のポイント39において交差して、切削エレメント5の外側において、逃げ面32に対して6°の角度βの、つまり、切削エレメント5の外側で測定されるこの角度βのこの断面において伸長する。したがって、図7aから図7cに示すタイプのポジティブな切削エレメント5が、6°の逃げ角にてツール部4に固定されていれば、基準線Lは、図6a及び図6bに示すように、切削エレメントのすくい側30に鉛直に伸長してよい。
【0054】
細長ボディ6の前端6aに最も近いアクチュエータ16は、好適には、細長ボディ6における回転位置に、その作動軸17が、上記の断面に見た際に、当該基準線L(図6aに示すように)に対して、90°±10°の角度、好ましくは、90°±5°の角度、より好ましくは、90°±1°の角度を形成するよう配置される。この場合では、このアクチュエータの作動軸17は、切削エレメント5上の半径方向力Fと実質的に平行に配置される。細長ボディの前端6aに最も近いアクチュエータ16のそのような配置では、このアクチュエータは、切削エレメント5上の半径方向力Fにより引き起こされる振動を打ち消すために最適化されることとなる。
【0055】
好適な代替例によると、細長ボディ6の前端6aに最も近いアクチュエータ16は、細長ボディ6における回転位置に、その作動軸17が、上記の断面に見た際に、当該基準線L(図6bに示すように)に対して、0°±10°の角度、好ましくは、0°±5°の角度、より好ましくは、0°±1°の角度を形成するよう配置される。この場合では、このアクチュエータの作動軸17は、切削エレメント5上の接線力Fと実質的に平行に配置される。細長ボディの前端6aに最も近いアクチュエータ16のそのような配置では、このアクチュエータは、切削エレメント5上の接線力Fにより引き起こされる振動を打ち消すために最適化されることとなる。
【0056】
上記のタイプのボーリングバー2を含むボーリング装置40の異なる実施形態を、図9から図11に極めて模式的に示す。ボーリング装置40は、電子制御ユニット41をさらに含み、これは、細長ボディ6におけるアクチュエータ16への電流の供給を、それらのアクチュエータにおける起振力の生成を制御するために制御するよう構成されている。この電流は、アクチュエータ16に、電源から供給されて、この電源は、図9に示すように、外部電源42、又は、図11に示すように、細長ボディ6に、又は、図10に示すように、金属切削機械の支持構造3又はいずれの他の部分に載置された電力供給ユニット42’であってよい。電力供給ユニット42’は、電気エネルギを保存するための、例えば、バッテリの形態の、少なくとも1つのエネルギストレージ部材を含む。電子制御ユニット41は、図10及び図11に示すように、細長ボディ6の前部12、又は、細長ボディのいずれの他の部分に載置されてよい。さらなる代替として、電子制御ユニット41は、図9に示すように、金属切削機械の支持構造3又はいずれの他の部分に載置されてよい。
【0057】
ボーリング装置40は、例えば、加速度計の形態の少なくとも1つの振動センサ43をさらに含み、このセンサは、ボーリングバー2の振動に関する測定信号を生成して、それらの測定信号を電子制御ユニット41にワイヤレス接続又はケーブル接続を通して送信するよう構成されている。当該少なくとも1つの振動センサ43は、好ましくは、細長ボディ6の前部12に、又は、ツール部4に載置されるが、それは、代替として、細長ボディ6のいずれの他の好適な部分に載置されてよい。
【0058】
電子制御ユニット41は、それらの測定信号を少なくとも1つの振動センサ43から受信して、アクチュエータ16への電流の供給を、それらの測定信号に依存して、各アクチュエータ16における起振力の生成を、それらの測定信号に依存して制御するために制御するよう構成されており、これにより、ワークピースの加工中に切削エレメント5上に作用する切削力F、Fによりボーリングバー2において誘発された振動を打ち消す。
【0059】
本発明はもちろん、いかなる方法によっても上記の実施形態に制限されない。それどころか、その変形例に対する多くの可能性が、添付の特許請求の範囲に規定されるような、本発明の基本的な概念から逸脱することなく、当業者には明白となるであろう。いくつかのアプリケーションでは、半径方向の切削力の方向での減衰は、接線方向でのそれの2倍のエネルギを要する。したがって、ボーリングバーは、3つ減衰アクチュエータを含んでよく、それらの内の2つでは、それらの作動軸がそれぞれ、同じように、好ましくは、当該基準線Lに鉛直に向けられて、つまり、半径方向の切削力の方向に向けられて、3つ目のものでは、その作動軸が、基準線Lと平行に、他の2つのアクチュエータの作動軸に鉛直に向けられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図9
図10
図11