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特許7636508リプル値補正装置、コンピュータプログラム、リプル値補正方法及びリプル値補正システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】リプル値補正装置、コンピュータプログラム、リプル値補正方法及びリプル値補正システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20250218BHJP
【FI】
G01R31/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023214826
(22)【出願日】2023-12-20
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】福井 道
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-092521(JP,A)
【文献】特開2021-018171(JP,A)
【文献】特開2020-171100(JP,A)
【文献】特開平11-069834(JP,A)
【文献】特開2020-162238(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103675533(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備え、
前記制御部は、
電源機構に含まれる電解コンデンサのリプル値及び周辺温度を取得し、
取得したリプル値及び周辺温度、並びに複数の温度で画定される温度帯の任意の基準温度でのリプル値に対する前記基準温度以外の他の温度でのリプル値の比率である補正係数を温度毎に定めた補正情報に基づいて、前記周辺温度でのリプル値を前記基準温度でのリプル値に補正し、
経年変化後の前記電解コンデンサの複数の周辺温度でのリプル値を取得し、
取得した周辺温度で画定される温度帯での前記周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記温度帯での前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記経年変化後の前記補正情報を更新する、
リプル値補正装置。
【請求項2】
前記制御部は、
複数の周辺温度毎に電解コンデンサの異なる時点でのリプル値を収集し、
収集したリプル値に基づいてリプル値の統計値を算出し、
複数の周辺温度で画定される温度帯の任意の周辺温度でのリプル値の統計値に対する前記周辺温度以外の他の周辺温度でのリプル値の統計値の比率を算出し、
算出した比率に基づいて前記補正情報を生成する、
請求項1に記載のリプル値補正装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電解コンデンサの複数の周辺温度でのリプル値を取得し、
取得した周辺温度で画定される温度帯が前記補正情報に含まれていない場合、取得した周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記温度帯を含む補正情報を生成する、
請求項1に記載のリプル値補正装置。
【請求項4】
前記制御部は、
取得した周辺温度で画定される温度帯での前記周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記温度帯での前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記補正情報に含まれる前記温度帯での補正係数を更新する、
請求項に記載のリプル値補正装置。
【請求項5】
前記制御部は、
取得した周辺温度で画定される温度帯での前記周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記温度帯以外の他の温度帯での前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記補正情報に含まれる前記他の温度帯での補正係数を更新する、
請求項に記載のリプル値補正装置。
【請求項6】
前記制御部は、
取得した周辺温度で画定される温度帯よりも低い低温度帯が前記補正情報に含まれる場合、前記温度帯で最も低い複数の周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記低温度帯での前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記補正情報に含まれる前記低温度帯での補正係数を更新する、
請求項に記載のリプル値補正装置。
【請求項7】
前記制御部は、
取得した周辺温度で画定される温度帯よりも高い高温度帯が前記補正情報に含まれる場合、前記温度帯で最も高い複数の周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記高温度帯での前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記補正情報に含まれる前記高温度帯での補正係数を更新する、
請求項に記載のリプル値補正装置。
【請求項8】
前記制御部は、
取得した周辺温度で画定される温度帯が前記補正情報に含まれない場合、前記補正情報に含まれる補正係数及び前記周辺温度でのリプル値の比率である補正係数に基づいて、前記温度帯を含むように前記補正情報に含まれる補正係数を更新する、
請求項に記載のリプル値補正装置。
【請求項9】
前記制御部は、
補正されたリプル値に基づいて前記電解コンデンサ又は前記電源機構の劣化を判定する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリプル値補正装置。
【請求項10】
電源機構に含まれる電解コンデンサのリプル値及び周辺温度を取得し、
取得したリプル値及び周辺温度、並びに複数の温度で画定される温度帯の任意の基準温度でのリプル値に対する前記基準温度以外の他の温度でのリプル値の比率である補正係数を温度毎に定めた補正情報に基づいて、前記周辺温度でのリプル値を前記基準温度でのリプル値に補正し、
経年変化後の前記電解コンデンサの複数の周辺温度でのリプル値を取得し、
取得した周辺温度で画定される温度帯での前記周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記温度帯での前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記経年変化後の前記補正情報を更新する、
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項11】
電源機構に含まれる電解コンデンサのリプル値及び周辺温度を取得し、
取得したリプル値及び周辺温度、並びに複数の温度で画定される温度帯の任意の基準温度でのリプル値に対する前記基準温度以外の他の温度でのリプル値の比率である補正係数を温度毎に定めた補正情報に基づいて、前記周辺温度でのリプル値を前記基準温度でのリプル値に補正し、
経年変化後の前記電解コンデンサの複数の周辺温度でのリプル値を取得し、
取得した周辺温度で画定される温度帯での前記周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記温度帯での前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記経年変化後の前記補正情報を更新する、
リプル値補正方法。
【請求項12】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリプル値補正装置と、
電解コンデンサを含む電源機構と
を備える、
リプル値補正システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リプル値補正装置、コンピュータプログラム、リプル値補正方法及びリプル値補正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器や電子機器、システム機器など様々な機器は電源機構(電源装置も含む)を備えている。これらの電源機構は、一般的に小型軽量化のためスイッチング回路で構成されるとともに、スイッチング回路の動作で生じるノイズやリプル電圧(リプル電流)を低減するため電解コンデンサを備える。
【0003】
しかし、電解コンデンサの特性劣化によるリプル値の増大は、電源機構や電源機構を備える機器の不具合の原因となるため、電解コンデンサの劣化状態を把握することは重要である。また、電解コンデンサの特性は電解コンデンサの周辺温度の影響を受ける。特許文献1には、電解コンデンサのリプル値を検出するとともに、電解コンデンサの周辺温度を検出し、検出したリプル値に温度補正値を取り込むことによりリアルタイムで寿命を判定する判定信号を出力する寿命検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-193627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の装置にあっては、検出したリプル値に算出された温度補正値を結合するため、劣化判定のためのリプル値は電解コンデンサの温度に依存する。このため、同じ温度での劣化判定を行うことができない。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、電解コンデンサの周辺温度に関わらず同じ温度でのリプル値を得ることができるリプル値補正装置、コンピュータプログラム、リプル値補正方法及びリプル値補正システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、リプル値補正装置は、制御部を備え、前記制御部は、電源機構に含まれる電解コンデンサのリプル値及び周辺温度を取得し、取得したリプル値及び周辺温度、並びに複数の温度で画定される温度帯の任意の基準温度でのリプル値に対する前記基準温度以外の他の温度でのリプル値の比率である補正係数を温度毎に定めた補正情報に基づいて、前記周辺温度でのリプル値を前記基準温度でのリプル値に補正する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電解コンデンサの周辺温度に関わらず同じ温度でのリプル値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のリプル値補正システムの構成の一例を示す図である。
図2】補正テーブルの一例を示す図である。
図3】補正テーブルの生成方法の一例を示す図である。
図4】補正テーブルの拡張方法の一例を示す図である。
図5】電解コンデンサのリプル値の経年変化の一例を示す図である。
図6】補正テーブルの更新方法の第1例を示す図である。
図7】補正テーブルの更新方法の第2例を示す図である。
図8】補正テーブルの更新方法の第3例を示す図である。
図9】補填処理の一例を示す図である。
図10】電源機構又は電解コンデンサの劣化判定の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本実施形態のリプル値補正システムの構成の一例を示す図である。リプル値補正システムは、リプル値補正装置50及び電源機構100を備える。電源機構100は、いわゆる電源装置でもよく、電気機器や電子機器、システム機器など様々な機器に組み込まれる電源機構でもよく、あるいは当該機器とは別個に構成されて使用される電源機構でもよい。電源機構100は、電解コンデンサ110を備える。電源機構100が備える電解コンデンサ110の数や場所については特段の限定はない。電源機構100は、不図示の温度デンサにより電解コンデンサ110の周辺温度を検出し、検出した周辺温度をリプル値補正装置50へ出力する。リプル値補正装置50は、電源機構100の電解コンデンサ110のリプル値(リプル電圧)をリアルタイムで取得することができる。リプル値補正装置50は、電源機構100の内部に組み込む構成でもよい。
【0011】
リプル値補正装置50は、装置全体を制御する制御部51、取得部52、メモリ53、通信部54、及び記憶部55を備える。
【0012】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)等が所要数組み込まれて構成されてもよい。また、制御部51は、DSP(Digital Signal Processors)、FPGA(Field-Programmable Gate Arrays)等を組み合わせて構成してもよい。
【0013】
取得部52は、電源機構100から電解コンデンサ110のリプル値及び周辺温度を取得することができる。
【0014】
通信部54は、通信モジュールを備え、外部の装置との間で通信を行う機能を有する。
【0015】
記憶部55は、ハードディスク又は半導体メモリ等で構成することができ、コンピュータプログラム56(プログラム製品)、補正テーブル57、及び所要の情報を記憶する。
【0016】
コンピュータプログラム56は、リプル値補正装置50上で動作するアプリケーションプログラムであり、具体的には、リプル値補正装置50の各機能を実現する。コンピュータプログラム56は、通信部54を介して外部の装置からダウンロードして記憶部55に記憶してもよい。また、記録媒体(例えば、CD-ROM等の光学可読ディスク記憶媒体)に記録されたコンピュータプログラム56を記録媒体読取部で読み取って記憶部55に記憶してもよい。コンピュータプログラム56は、単一のコンピュータ上で、または1つのサイトにおいて配置されるか、もしくは複数のサイトに亘って分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。補正テーブル57の詳細は後述する。
【0017】
メモリ53は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリで構成することができる。コンピュータプログラム56をメモリ53に展開して、制御部51がコンピュータプログラム56を実行することができる。制御部51は、コンピュータプログラム56で定められた処理を実行することができる。すなわち、制御部51による処理は、コンピュータプログラム56による処理でもある。
【0018】
図2は補正テーブル57の一例を示す図である。補正テーブル57は、電解コンデンサ110のリプル値を基準温度のリプル値に補正(変換)するためのものである。測定又は検出した電解コンデンサ110の周辺温度での電解コンデンサ110のリプル値を基準温度でのリプル値に補正する補正部は、補正テーブル57でもよく、あるいは補正のための補正演算式でもよい。以下、本明細書では、補正部を補正テーブル57として説明する。
【0019】
図2に示すように、補正テーブル57は、温度の欄と、当該温度に対応する補正係数の欄とで構成される。図2の例では、温度が40℃、30℃、20℃、10℃、0℃、-10℃に対してそれぞれ補正係数が0.80、0.83、0.86、0.90、0.95、1.00となっている。補正係数1が基準温度における補正係数であり、図2の例では、基準温度が-10℃である。補正テーブル57は、複数の温度で画定される温度帯(図2の例では、-10℃~40℃の温度範囲)の任意の基準温度でのリプル値に対する基準温度以外の他の温度でのリプル値の比率である補正係数を温度毎に定めた補正情報である。基準温度は、任意の温度を設定できる。
【0020】
補正係数は、基準温度でのリプル値に対する基準温度以外の他の温度でのリプル値の比率である。例えば、40℃での補正係数は、0.80であるので、基準温度(0℃)でのリプル値に対する40℃でもリプル値の比率は0.80である。逆に言えば、40℃でのリプル値に、1/0.80を乗算すると、基準温度(0℃)でのリプル値を得ることができる。40℃のリプル値を0.020(V)とすると、基準温度(0℃)でのリプル値は、0.020×(1/0.8)=0.025(V)となる。
【0021】
上述のように、制御部51は、電源機構100に含まれる電解コンデンサ110のリプル値及び周辺温度を取得し、取得したリプル値及び周辺温度、並びに補正テーブル57(補正情報)に基づいて、当該周辺温度でのリプル値を基準温度でのリプル値に補正することができる。
【0022】
上述の構成により、電源機構100の電解コンデンサ110の周辺温度が如何なる温度であっても、測定又は検出した電解コンデンサ110のリプル値を所要の基準温度でもリプル値に補正することができる。これにより、電解コンデンサ110の周辺温度に関わらず同じ温度(基準温度)でのリプル値を得ることができる。また、電解コンデンサ110のリプル値を用いて電源機構100や電解コンデンサ110の劣化特性や寿命を判定する場合でも同じ基準温度で劣化診断や劣化予測を行うことができる。
【0023】
すなわち、リプルはコンデンサのESR(等価直列抵抗)によって影響を受ける。またコンデンサは周辺温度だけでなく、劣化によってもESRの特性が変わるためリプルに影響する。予め温度と劣化によるESRの関係を準備すればよいが、コンデンサを劣化させた事前情報を入手することは困難である。また、電源機構や電源機構で使用されるコンデンサの種類が異なる場合が多いため、温度や劣化によるESRの関係情報を事前に準備することは実用的ではなく、また固定のESRの関係情報を準備しても、様々な運用形態で使用される電源機構やコンデンサには適用することができない。
【0024】
しかし、本実施形態では、上述のように、制御部51は、電源機構100に含まれる電解コンデンサ110のリプル値及び周辺温度を取得し、取得したリプル値及び周辺温度、並びに補正テーブル57(補正情報)に基づいて、当該周辺温度でのリプル値を基準温度でのリプル値に補正するので、温度や劣化に影響するリプルそのものを補正係数として使うことで事前情報の入手を省くことができ、電源機構を運用していきながら補正係数の情報を更新することで、補正テーブル57の適用温度範囲を広げ、過去に渡って生成してきた補正係数のアップデートが可能となり、任意の温度における劣化予測ができる。
【0025】
次に、補正テーブル57の生成方法について説明する。
【0026】
図3は補正テーブル57の生成方法の一例を示す図である。電源機構100の運用時や試験時などのタイミングで電解コンデンサ110の周辺温度と当該周辺温度でもリプル値を収集する。図3に示すように、温度毎に収集したリプル値(Vr)が、例えば、周辺温度0℃でのリプル値を、0.0252、0.0228、…とし、周辺温度10℃でのリプル値を、0.0236、0.0220、…とし、周辺温度20℃でのリプル値を、0.0228、0.0208、…とする。
【0027】
次に、周辺温度毎に、収集したリプル値の統計値を算出する。統計値は、平均値でもよく、中央値でもよく、あるいは最頻値でもよい。図3の例では、統計値を平均値としている。周辺温度が0℃での平均リプル値を0.0252とし、周辺温度が10℃での平均リプル値を0.0228とし、周辺温度が20℃での平均リプル値を0.0216とする。
【0028】
次に、基準温度での補正係数を1とし、基準温度以外の温度の補正係数を算出する。図3の例では、周辺温度0℃を基準温度としている。なお、基準温度は任意の温度を設定できる。周辺温度10℃での補正係数は、基準温度でのリプル値に対する周辺温度10℃でのリプル値の比率であるから、0.905(=0.0228/0.0252)となる。同様に、周辺温度20℃での補正係数は、基準温度でのリプル値に対する周辺温度20℃でのリプル値の比率であるから、0.857(=0.0216/0.0252)となる。
【0029】
上述のように、制御部51は、複数の周辺温度毎に電解コンデンサ110の異なる時点でのリプル値を収集し、収集したリプル値に基づいてリプル値の統計値を算出する。制御部51は、複数の周辺温度で画定される温度帯の任意の周辺温度でのリプル値の統計値に対する周辺温度以外の他の周辺温度でのリプル値の統計値の比率を算出し、算出した比率に基づいて補正テーブル57を生成することができる。
【0030】
上述の構成により、電源機構100の運用時や試験時を利用して電解コンデンサ110の周辺温度と当該周辺温度でのリプル値を収集しておくだけで、補正テーブル57を生成することができる。また、取集した周辺温度のうちの所要の温度を基準温度に設定できる。電源機構100の動作環境や用途に応じて、劣化診断や劣化予測に最適な温度を基準温度に設定することができる。
【0031】
次に、補正テーブル57の拡張性について説明する。
【0032】
図4は補正テーブル57の拡張方法の一例を示す図である。補正テーブル57の拡張方法は、現在の補正テーブル57に対して、新たな温度帯の補正係数を拡張するものである。図4に示すように、現在の補正テーブルの温度帯が0℃~20℃であり、当該温度帯での補正係数は既知であるとする。電源機構100の運用等により、新たに-10℃、0℃でのリプル値を収集できたとすると、温度帯が-10℃~0℃での補正係数を算出することができる。図4の例では、-10℃を基準温度として補正係数を1とし、0℃での補正係数は0.87となっている。
【0033】
現在までの既知の補正テーブルと、新たな温度帯での補正係数(データ)とに基づいて、温度帯が0℃~20℃から-10℃~20℃に拡張された新たな補正テーブルを生成することができる。具体的には、基準温度である-10℃での補正係数1に対して0℃での補正係数が0.87であるので、0℃の対する10℃の補正係数を0.87倍、10℃に対する20℃の補正係数を0.87倍することで、新しい補正テーブルの補正係数は、-10℃、0℃、10℃、20℃それぞれの補正係数は、1、0.87、0.78735、0.74559となる。なお、補正係数の桁数は統一すればよい。
【0034】
上述のように、制御部51は、電解コンデンサ110の複数の周辺温度でのリプル値を取得し、取得した周辺温度で画定される新たな温度帯が補正テーブル57に含まれていない場合、取得した周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び補正テーブル57に含まれる補正係数に基づいて、新たな温度帯を含む補正テーブル57を生成することができる。
【0035】
上述の構成により、電源機構100の運用中に取得したリプル値を用いて、運用中の温度帯の範囲のみで補正テーブル57を生成するので、予めすべての温度(例えば、電源機構100の使用温度範囲)のリプルを取得して補正テーブル57を生成する必要がない。別言すれば、運用中に取得できた温度でのリプル値を用いて補正テーブル57の温度帯を随時拡張することが可能となる。
【0036】
次に、電源機構100(電解コンデンサ110)の経年変化について説明する。
【0037】
図5は電解コンデンサ110のリプル値の経年変化の一例を示す図である。電解コンデンサ110を使用し続けると、電解コンデンサ110の特性劣化によりリプル値が増大する。図5に示すように、初期、劣化1、劣化2、劣化3と劣化が進むにつれて、リプル値(Vr)は増加する。また、電解コンデンサ110の劣化が進むにつれて、リプル値は温度の変位の影響を大きく受ける。図5に示すように、電解コンデンサ110の劣化に伴って、温度変化に対するリプル値の変動が大きくなり、結果として補正係数の変化の割合(傾き)が大きくなることが分かる。
【0038】
すなわち、電解コンデンサ110のリプル値は、電解コンデンサ110が劣化するほど温度変動の影響を大きく受けるため、電解コンデンサ110の初期状態において生成した補正テーブル57(補正係数)を固定的に使用し続けることができない。電解コンデンサ110の劣化に伴った補正係数の更新が必要である。以下では、補正テーブル57(補正係数)の更新方法について説明する。
【0039】
図6は補正テーブル57の更新方法の第1例を示す図である。更新前の補正テーブル57の温度-10℃、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃それぞれの補正係数を1.000、0.856、0.774、0.712、0.692、0.658、0.644、0.630とする。補正テーブル57の直近の更新から所定の更新期間が経過したとし、補正テーブル57を更新するために収集した実測データを、温度0℃、10℃それぞれでのリプル値0.0352、0.0296とする。更新期間は適宜設定することができるが、例えば、1か月、2か月、3か月、6か月等とすることができる。
【0040】
更新時、すなわち電解コンデンサ110の最新の劣化状態では、0℃でのリプル値と10℃でのリプル値の関係は、0.0352:0.0296=1:0.841であることが分かる。ここで、0.841=0.0296/0.0352である。また、直近の更新時での電解コンデンサ110の劣化状態では、0℃でのリプル値と10℃でのリプル値の関係は、補正係数同士の関係と同等であるから、0.856:0.774=1:0.904であることが分かる。つまり、電解コンデンサ110の劣化状態が進んだことにより、0℃と10℃との間の補正係数の比率が、0.841/0.904倍となり小さくなっている。
【0041】
そこで、更新前の補正テーブル57の隣り合う温度間での補正係数の比率を0.841/0.904倍にすることで更新後の補正テーブル57の補正係数を算出することができる。例えば、図6に示すように、更新前の補正テーブル57の-10℃に対する0℃の補正係数の比率は0.856であるから、更新後の補正テーブル57の-10℃に対する0℃の補正係数は、1.000×0.856×(0.841/0.904)=0.796となる。
【0042】
更新前の補正テーブル57の0℃に対する10℃の補正係数の比率は0.904であるから、更新後の補正テーブル57の0℃に対する10℃の補正係数は、0.796×0.904×(0.841/0.904)=0.670となる。
【0043】
更新前の補正テーブル57の10℃に対する20℃の補正係数の比率は0.919であるから、更新後の補正テーブル57の10℃に対する20℃の補正係数は、0.670×0.919×(0.841/0.904)=0.573となる。以下、同様である。
【0044】
上述のように、制御部51は、経年変化後の電解コンデンサ110の複数の周辺温度でのリプル値を取得する。図6の例では、温度0℃、10℃でのリプル値を取得している。制御部51は、取得した周辺温度で画定される温度帯(図6の例では0℃~10℃)での周辺温度でのリプル値(図6の例では、0.0352、0.0296)の比率である補正係数(図6の例では、0.841)及び当該温度帯での更新前の補正テーブル57に含まれる補正係数(図6の例では、0.904)に基づいて、経年変化後の補正テーブル57を更新することができる。
【0045】
より具体的には、制御部51は、取得した周辺温度で画定される温度帯(図6の例では0℃~10℃)での周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び当該温度帯での更新前の補正テーブル57に含まれる補正係数に基づいて、補正テーブル57に含まれる当該温度帯(図6の例では0℃~10℃)での補正係数を更新することができる。
【0046】
また、制御部51は、取得した周辺温度で画定される温度帯(図6の例では0℃~10℃)での周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び当該温度帯以外の他の温度帯(図6の例では、-10℃~0℃、10℃~60℃)での更新前の補正テーブル57に含まれる補正係数に基づいて、補正テーブル57に含まれる当該他の温度帯(図6の例では、-10℃~0℃、10℃~60℃)での補正係数を更新することができる。
【0047】
上述の構成により、電源機構100の運用上、補正テーブル57の全ての温度でのリプル値を収集することが困難である場合でも、運用時に収集できた温度でのリプル値を用いて、電解コンデンサ110の劣化状態を反映した最新の補正テーブル57に更新することができる。
【0048】
図7は補正テーブル57の更新方法の第2例を示す図である。図6に示す第1例では、運用時に収集できた温度が2点(0℃及び10℃)であったが、第2例では、3点以上の温度でのリプル値を収集できた場合の補正テーブル57の更新方法について説明する。
【0049】
更新前の補正テーブル57は、図6の場合と同様であるとする。補正テーブル57を更新するために収集した実測データを、温度0℃、10℃、20℃、30℃それぞれでのリプル値0.0352、0.0296、0.0260、0.0232とする。
【0050】
更新時、すなわち電解コンデンサ110の最新の劣化状態では、0℃でのリプル値と10℃でのリプル値の関係は、0.0352:0.0296=1:0.841であることが分かる。ここで、0.841=0.0296/0.0352である。また、10℃でのリプル値と20℃でのリプル値の関係は、0.0296:0.0260=1:0.878であることが分かる。ここで、0.878=0.0260/0.0296である。同様に、20℃でのリプル値と30℃でのリプル値の関係は、0.0260:0.0232=1:0.892であることが分かる。ここで、0.892=0.0232/0.0260である。
【0051】
図6に例示した更新方法では、更新前の補正テーブル57の全ての温度に亘って補正係数に同じ比率(0.841/0.904倍)を乗算したが、第2例では、温度範囲によって比率を変える。具体的には、更新前の補正テーブル57の補正係数のうち、収集した実測データの温度範囲よりも低温(-10℃~0℃)の補正係数は、収集した実測データの内で最も低温側の2点の温度でのリプル値を用いる。また、更新前の補正テーブル57の補正係数のうち、収集した実測データの温度範囲よりも高温(30℃~60℃)の補正係数は、収集した実測データの内で最も高温側の2点の温度でのリプル値を用いる。
【0052】
まず、低温側について説明する。更新時、すなわち電解コンデンサ110の最新の劣化状態では、0℃でのリプル値と10℃でのリプル値の関係は、0.0352:0.0296=1:0.841であることが分かる。ここで、0.841=0.0296/0.0352である。また、直近の更新時での電解コンデンサ110の劣化状態では、0℃でのリプル値と10℃でのリプル値の関係は、補正係数同士の関係と同等であるから、0.856:0.774=1:0.904であることが分かる。つまり、電解コンデンサ110の劣化状態が進んだことにより、0℃と10℃との間の補正係数の比率が、0.841/0.904倍となり小さくなっている。
【0053】
そこで、更新前の補正テーブル57の隣り合う温度間での補正係数の比率を0.841/0.904倍にすることで更新後の補正テーブル57の補正係数を算出することができる。例えば、図6に示すように、更新前の補正テーブル57の-10℃に対する0℃の補正係数の比率は0.856であるから、更新後の補正テーブル57の-10℃に対する0℃の補正係数は、1.000×0.856×(0.841/0.904)=0.796となる。
【0054】
同様に、更新前の補正テーブル57の0℃に対する10℃の補正係数の比率は0.904であるから、更新後の補正テーブル57の0℃に対する10℃の補正係数は、0.796×0.904×(0.841/0.904)=0.670となる。
【0055】
次に、高温側について説明する。更新時、すなわち電解コンデンサ110の最新の劣化状態では、20℃でのリプル値と30℃でのリプル値の関係は、0.0260:0.0232=1:0.892であることが分かる。ここで、0.892=0.0232/0.0260である。また、直近の更新時での電解コンデンサ110の劣化状態では、20℃でのリプル値と30℃でのリプル値の関係は、補正係数同士の関係と同等であるから、0.712:0.692=1:0.972であることが分かる。つまり、電解コンデンサ110の劣化状態が進んだことにより、20℃と30℃との間の補正係数の比率が、0.892/0.972倍となり小さくなっている。
【0056】
そこで、更新前の補正テーブル57の隣り合う温度間での補正係数の比率を0.892/0.972倍にすることで更新後の補正テーブル57の補正係数を算出することができる。例えば、図6に示すように、更新前の補正テーブル57の30℃に対する40℃の補正係数の比率は0.951であるから、更新後の補正テーブル57の30℃に対する40℃の補正係数は、0.525×0.951×(0.892/0.972)=0.458となる。他の温度についても同様である。
【0057】
上述のように、制御部51は、取得した周辺温度で画定される温度帯(図7の例では、0℃~30℃)よりも低い低温度帯(図7の例では、-10℃~10℃)が補正テーブル57に含まれる場合、当該温度帯で最も低い複数の周辺温度(図7の例では、0℃と10℃)でのリプル値の比率である補正係数及び低温度帯での補正テーブル57に含まれる補正係数に基づいて、補正テーブル57に含まれる低温度帯での補正係数を更新することができる。
【0058】
また、制御部51は、取得した周辺温度で画定される温度帯(図7の例では、0℃~30℃)よりも高い高温度帯(図7の例では、20℃~60℃)が補正テーブル57に含まれる場合、当該温度帯で最も高い複数の周辺温度(図7の例では、20℃と30℃)でのリプル値の比率である補正係数及び高温度帯での補正テーブル57に含まれる補正係数に基づいて、補正テーブル57に含まれる高温度帯での補正係数を更新することができる。
【0059】
低温度帯及び高温度帯以外の温度帯(図7の例では、10℃~20℃)については、収集した実測データの温度間のリプル値の比率をそのまま用いればよい。
【0060】
上述の構成により、収集した実測データに基づくリプル値の比率である補正係数を異なる温度帯で適切な値にすることができ、適切な補正係数を含む補正テーブル57に更新することができる。
【0061】
図8は補正テーブル57の更新方法の第3例を示す図である。前述の第1例及び第2例の更新方法は、収集した実測データの温度範囲は、更新前の補正テーブル57の温度帯に含まれる。図8に示す第3例は、収集した実測データの温度範囲が更新前の補正テーブル57の温度帯に含まれていない場合である。
【0062】
図8に示すように、過去の補正テーブル57に含まれる温度帯を0℃~30℃とする。収集した実測データの温度は、30℃と40℃であるとする。このような場合には、収集した実測データの30℃でのリプル値に対する40℃でのリプル値の比率を用いて、過去の補正テーブルの30℃での補正係数0.90にリプル値の比率を乗算して、過去の補正テーブルにおける40℃での補正係数を算出する。更新後の補正テーブル57は、過去の補正テーブル57の補正係数と収集した実測データでのリプル値の比率を用いて、図6で説明した方法と同様の方法を用いて計算すればよい。
【0063】
上述のように、制御部51は、取得した周辺温度で画定される温度帯が補正テーブル57に含まれない場合、補正テーブル57に含まれる補正係数及び周辺温度でのリプル値の比率である補正係数に基づいて、当該温度帯を含むように補正テーブル57に含まれる補正係数を更新することができる。
【0064】
上述の構成により、更新前の補正テーブル57に含まれない新たな温度帯でのリプル値を収集することで、補正テーブル57の温度帯を拡張しながら補正テーブル57を更新することができる。
【0065】
補正テーブル57を更新する実測データに誤差が含まれると正しく補正係数を算出することができず、リプル値の補正を正しく行うことができない。そこで、実測データとしてのリプル値は、所要期間のリプル値を収集し、収集したリプル値の統計値を用いることで一時的又は過渡的な不適切なリプル値による影響を低減することができる。統計値としては、平均値でもよく、中央値でもよく、最頻値でもよい。補正テーブル57の更新頻度は、例えば、1か月、2か月、3か月、6か月などとすることができるが、好ましくは1か月毎に更新するのが良い。
【0066】
電源機構100の運用状態では、電解コンデンサ110の周辺温度が継続的に変化するため、電源機構100の稼動期間中、常時リプル値や周辺温度を収集すると、更新前の補正テーブル57に含まれる温度でのリプル値を収集することができると考えられる。しかし、更新前の補正テーブル57に含まれない温度でのリプル値が収集された場合、補正係数の更新ができない場合もあり、補填処理が必要となる。
【0067】
図9は補填処理の一例を示す図である。図9に示すように、更新前の補正テーブルの温度を10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃とする。収集した実測データは、-10℃と0℃でのリプル値しかないとする。収集した実測データの温度は、更新前の補正テーブル57の温度に含まれない。このような場合には、更新前の補正テーブル57の温度と最も近い実測データの温度を用いる。具体的には、更新前の直近の補正テーブル57の10℃のリプル値と、実測データの0℃でのリプル値を用いて補正テーブル57を更新することができる。
【0068】
図10は電源機構100又は電解コンデンサ110の劣化判定の一例を示す図である。図10において、横軸は時間を示し、縦軸はリプル電圧(リプル値)を示す。制御部51は、補正されたリプル値に基づいて電解コンデンサ110又は電源機構100の劣化を判定することができる。図10に示すように、リプル電圧が閾値以上となった時点で寿命になるとする。一般的に温度が低いほどリプル電圧は大きくなり、温度が高いほどリプル電圧は小さくなる。このため、周辺温度が比較的低い条件でリプル電圧と閾値とを比較した場合、本来寿命に至っていないにも関わらす寿命になったと判定される場合がある。逆に、周辺温度が比較的高い条件でリプル電圧と閾値とを比較した場合、本来寿命に至っているにも関わらす寿命になっていないと判定される場合がある。
【0069】
本実施形態によれば、基準温度でのリプル値に補正するので、常に同じ温度での劣化診断や劣化予測を行うことができる。
【0070】
(付記1)リプル値補正装置は、制御部を備え、前記制御部は、電源機構に含まれる電解コンデンサのリプル値及び周辺温度を取得し、取得したリプル値及び周辺温度、並びに複数の温度で画定される温度帯の任意の基準温度でのリプル値に対する前記基準温度以外の他の温度でのリプル値の比率である補正係数を温度毎に定めた補正情報に基づいて、前記周辺温度でのリプル値を前記基準温度でのリプル値に補正する。
【0071】
(付記2)リプル値補正装置は、付記1において、前記制御部は、複数の周辺温度毎に電解コンデンサの異なる時点でのリプル値を収集し、収集したリプル値に基づいてリプル値の統計値を算出し、複数の周辺温度で画定される温度帯の任意の周辺温度でのリプル値の統計値に対する前記周辺温度以外の他の周辺温度でのリプル値の統計値の比率を算出し、算出した比率に基づいて前記補正情報を生成する。
【0072】
(付記3)リプル値補正装置は、付記1又は付記2において、前記制御部は、前記電解コンデンサの複数の周辺温度でのリプル値を取得し、取得した周辺温度で画定される温度帯が前記補正情報に含まれていない場合、取得した周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記温度帯を含む補正情報を生成する。
【0073】
(付記4)リプル値補正装置は、付記1から付記3のいずれか一つにおいて、前記制御部は、経年変化後の前記電解コンデンサの複数の周辺温度でのリプル値を取得し、取得した周辺温度で画定される温度帯での前記周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記温度帯での前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記経年変化後の前記補正情報を更新する。
【0074】
(付記5)リプル値補正装置は、付記1から付記4のいずれか一つにおいて、前記制御部は、取得した周辺温度で画定される温度帯での前記周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記温度帯での前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記補正情報に含まれる前記温度帯での補正係数を更新する。
【0075】
(付記6)リプル値補正装置は、付記1から付記5のいずれか一つにおいて、前記制御部は、取得した周辺温度で画定される温度帯での前記周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記温度帯以外の他の温度帯での前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記補正情報に含まれる前記他の温度帯での補正係数を更新する。
【0076】
(付記7)リプル値補正装置は、付記1から付記6のいずれか一つにおいて、前記制御部は、取得した周辺温度で画定される温度帯よりも低い低温度帯が前記補正情報に含まれる場合、前記温度帯で最も低い複数の周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記低温度帯での前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記補正情報に含まれる前記低温度帯での補正係数を更新する。
【0077】
(付記8)リプル値補正装置は、付記1から付記7のいずれか一つにおいて、前記制御部は、取得した周辺温度で画定される温度帯よりも高い高温度帯が前記補正情報に含まれる場合、前記温度帯で最も高い複数の周辺温度でのリプル値の比率である補正係数及び前記高温度帯での前記補正情報に含まれる補正係数に基づいて、前記補正情報に含まれる前記高温度帯での補正係数を更新する。
【0078】
(付記9)リプル値補正装置は、付記1から付記8のいずれか一つにおいて、前記制御部は、取得した周辺温度で画定される温度帯が前記補正情報に含まれない場合、前記補正情報に含まれる補正係数及び前記周辺温度でのリプル値の比率である補正係数に基づいて、前記温度帯を含むように前記補正情報に含まれる補正係数を更新する。
【0079】
(付記10)リプル値補正装置は、付記1から付記9のいずれか一つにおいて、前記制御部は、補正されたリプル値に基づいて前記電解コンデンサ又は前記電源機構の劣化を判定する。
【0080】
(付記11)コンピュータプログラムは、電源機構に含まれる電解コンデンサのリプル値及び周辺温度を取得し、取得したリプル値及び周辺温度、並びに複数の温度で画定される温度帯の任意の基準温度でのリプル値に対する前記基準温度以外の他の温度でのリプル値の比率である補正係数を温度毎に定めた補正情報に基づいて、前記周辺温度でのリプル値を前記基準温度でのリプル値に補正する、処理をコンピュータに実行させる。
【0081】
(付記12)リプル値補正方法は、電源機構に含まれる電解コンデンサのリプル値及び周辺温度を取得し、取得したリプル値及び周辺温度、並びに複数の温度で画定される温度帯の任意の基準温度でのリプル値に対する前記基準温度以外の他の温度でのリプル値の比率である補正係数を温度毎に定めた補正情報に基づいて、前記周辺温度でのリプル値を前記基準温度でのリプル値に補正する。
【0082】
(付記13)リプル値補正システムは、前述のリプル値補正装置と、電解コンデンサを含む電源機構とを備える。
【0083】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0084】
50 リプル値補正装置
51 制御部
52 取得部
53 メモリ
54 通信部
55 記憶部
56 コンピュータプログラム
57 補正テーブル
100 電源機構
110 電解コンデンサ
【要約】
【課題】電解コンデンサの周辺温度に関わらず同じ温度でのリプル値を得ることができるリプル値補正装置、コンピュータプログラム、リプル値補正方法及びリプル値補正システムを提供する。
【解決手段】リプル値補正装置は、制御部を備え、制御部は、電源機構に含まれる電解コンデンサのリプル値及び周辺温度を取得し、取得したリプル値及び周辺温度、並びに複数の温度で画定される温度帯の任意の基準温度でのリプル値に対する基準温度以外の他の温度でのリプル値の比率である補正係数を温度毎に定めた補正情報に基づいて、周辺温度でのリプル値を基準温度でのリプル値に補正する。
【選択図】図1
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