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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】接着性組成物および積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/26 20060101AFI20250218BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20250218BHJP
   C09D 123/26 20060101ALI20250218BHJP
   C08F 255/00 20060101ALI20250218BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20250218BHJP
   C09J 151/06 20060101ALN20250218BHJP
   C09D 151/06 20060101ALN20250218BHJP
【FI】
C09J123/26
C09D5/00 D
C09D123/26
C08F255/00
B32B27/32 101
C09J151/06
C09D151/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023509205
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013216
(87)【国際公開番号】W WO2022202822
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2021053716
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内海 樹
(72)【発明者】
【氏名】廣田 義人
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-114462(JP,A)
【文献】国際公開第2012/060311(WO,A1)
【文献】特開2001-139642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C09D 1/00-10/00,101/00-201/10
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性ポリオレフィン樹脂および溶媒を含む接着性組成物であって、
前記変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂が、不飽和カルボン酸およびラジカル反応性芳香族化合物によって変性されてなり、
前記ポリオレフィン樹脂の、JIS K7122に従って測定される融解熱が10J/g以下であり、
前記変性ポリオレフィン樹脂に対する前記不飽和カルボン酸の変性量が、0.5質量%を超過し、2.0質量%以下であり、
前記変性ポリオレフィン樹脂に対する前記ラジカル反応性芳香族化合物の変性量が、0.1質量%以上1.0質量%以下であり、
前記接着性組成物において、前記変性ポリオレフィン樹脂の固形分濃度が、1.0質量%以上30質量%以下である、接着性組成物。
【請求項2】
前記変性ポリオレフィン樹脂に対する前記ラジカル反応性芳香族化合物の変性量が、0.5質量%以上である、請求項1に記載の接着性組成物。
【請求項3】
前記変性ポリオレフィン樹脂に対する前記不飽和カルボン酸の変性量が、1.1質量%以上である、請求項1に記載の接着性組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂からなる基材と、
請求項1に記載の接着性組成物の乾燥物からなるプライマー層と、
前記ポリオレフィン樹脂よりも極性が高い材料からなる表面層とを厚み方向一方側に向かって順に備える、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性組成物および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材料などの各種分野において、ポリオレフィン樹脂が用いられている。
【0003】
一方、ポリオレフィン樹脂は、極性が低いため、ポリオレフィン樹脂よりも極性が高い材料(高極性材料)に対する接着性が低い。
【0004】
そのため、ポリオレフィン樹脂の接着性を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂と、高極性材料との間に、プライマー層を設けることが知られている。
【0005】
このようなプライマー層を形成するための材料として、例えば、ポリオレフィン樹脂を、α、β-カルボン酸の酸無水物およびベンゼン環を有する化合物で変性させた変性ポリオレフィン樹脂が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2018/037849号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、プライマー層には、より一層、接着性が要求される。
【0008】
本発明は、ポリオレフィン樹脂からなる基材と、ポリオレフィン樹脂よりも極性が高い材料からなる表面層との密着性に優れ、かつ、塗布性に優れる接着性組成物および積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、変性ポリオレフィン樹脂を含む接着性組成物であって、前記変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂が、不飽和カルボン酸およびラジカル反応性芳香族化合物によって変性されてなり、前記ポリオレフィン樹脂の、JIS K7122に従って測定される融解熱が10J/g以下であり、前記変性ポリオレフィン樹脂に対する前記不飽和カルボン酸の変性量が、0.5質量%を超過し、5質量%未満であり、前記変性ポリオレフィン樹脂に対する前記ラジカル反応性芳香族化合物の変性量が、0.1質量%以上3質量%未満である、接着性組成物である。
【0010】
本発明[2]は、前記変性ポリオレフィン樹脂に対する前記ラジカル反応性芳香族化合物の変性量が、0.5質量%以上である、上記[1]に記載の接着性組成物を含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記変性ポリオレフィン樹脂に対する前記不飽和カルボン酸の変性量が、1.1質量%以上である、上記[またはに記載の接着性組成物である。
【0012】
本発明[4]は、ポリオレフィン樹脂からなる基材と、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の接着性組成物からなるプライマー層と、前記ポリオレフィン樹脂よりも極性が高い材料からなる表面層とを厚み方向一方側に向かって順に備える、積層体を含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の接着性組成物における変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂が、不飽和カルボン酸およびラジカル反応性芳香族化合物によって、所定の変性量に基づいて、変性されている。これにより、この接着性組成物を用いて得られるプライマー層は、ポリオレフィン樹脂からなる基材との密着性、および、ポリオレフィン樹脂よりも極性が高い材料からなる表面層との密着性に優れる。
【0014】
また、ポリオレフィン樹脂は、所定範囲の融解熱を有する。これにより、この接着性組成物を用いて得られるプライマー層は、ポリオレフィン樹脂からなる基材との密着性に優れる。
【0015】
本発明の積層体は、本発明の接着性組成物からなるプライマー層を備える。そのため、ポリオレフィン樹脂からなる基材と、ポリオレフィン樹脂よりも極性が高い材料からなる表面層との間の密着性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す概略図である。
図2図2は、本発明の積層体の製造方法の一実施形態を示す概略図である。図2Aは、ポリオレフィン基材を準備する第1工程を示す。図2Bは、ポリオレフィン基材の厚み方向一方面にプライマー層を配置する第2工程を示す。図2Cは、プライマー層の厚み方向一方面に表面層を配置する第3工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
接着性組成物は、変性ポリオレフィン樹脂を含む。
【0018】
変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂を、不飽和カルボン酸およびラジカル反応性芳香族化合物によって変性することにより得られる。
【0019】
<ポリオレフィン樹脂>
ポリオレフィン樹脂は、オレフィン由来の構成単位を含むオレフィン重合体である。
【0020】
オレフィンとしては、例えば、α-オレフィンが挙げられる。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および、1-エイコセンが挙げられる。
【0021】
オレフィンとして、好ましくは、炭素数2以上6以下のα-オレフィン、より好ましくは、エチレン、プロピレン、および、1-ブテンが挙げられる。
【0022】
オレフィンは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、エチレンとプロピレンとの併用、および、エチレンとプロピレンと1-ブテンとの併用が挙げられる。つまり、ポリオレフィン樹脂は、好ましくは、プロピレン/エチレン共重合体、および、プロピレン/1-ブテン/エチレン共重合体である。
【0023】
ポリオレフィン樹脂が、プロピレン/エチレン共重合体である場合には、プロピレン由来の構成単位およびエチレン由来の構成単位の総量100モル%に対して、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、例えば、60モル%以上、好ましくは、70モル%以上、また、例えば、90モル%以下、好ましくは、80モル%以下である。また、エチレン由来の構成単位の含有割合は、例えば、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上、また、例えば、40モル%以下、好ましくは、30モル%以下である。
【0024】
また、ポリオレフィン樹脂が、プロピレン/1-ブテン/エチレン共重合体である場合には、プロピレン由来の構成単位と1-ブテン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位との総量100モル%に対して、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、例えば、50モル%以上、好ましくは、60モル%以上、また、例えば、80モル%以下、好ましくは、70モル%以下である。また、1-ブテン由来の構成単位の含有割合は、例えば、5モル%以上、好ましくは、10モル%以上、また、例えば、30モル%以下、好ましくは、20モル%以下である。また、エチレン由来の構成単位の構成単位の含有割合は、例えば、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上、また、例えば、40モル%以下、好ましくは、30モル%以下である。
【0025】
ポリオレフィン樹脂の、JIS K7122に従って測定される融解熱は、10J/g以下、好ましくは、5J/g以下、より好ましくは、3J/g以下、また、通常、0J/g以上である。
【0026】
また、融解熱が、上記上限以下であれば、この接着性組成物を用いて得られるプライマー層3(後述)は、ポリオレフィン基材2(後述)との密着性に優れる。
【0027】
なお、融解熱の測定方法については、後述する実施例において詳述する。
【0028】
また、ポリオレフィン樹脂の融点は、例えば、50℃以上、好ましくは、60℃以上、より好ましくは、70℃以上、また、例えば、115℃以下、好ましくは、113℃以下、より好ましくは、110℃以下である。
【0029】
また、ポリオレフィン樹脂を有しない非晶質でもよい。
【0030】
なお、融点の測定方法については、後述する実施例において詳述する。
【0031】
また、ポリオレフィン樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量は、例えば、40000以上、好ましくは、50000以上、より好ましくは、55000以上、また、例えば、500000以下、好ましくは、400000以下、より好ましくは、380000以下である。
【0032】
なお、重量平均分子量の測定方法については、後述する実施例において詳述する。
【0033】
ポリオレフィン樹脂は、オレフィンを公知の方法により重合させることにより得られる。また、重合において、必要により、メタロセン触媒を配合することができる。
【0034】
<不飽和カルボン酸>
不飽和カルボン酸としては、例えば、炭素数3~8の不飽和カルボン酸が挙げられる。炭素数3~8の不飽和カルボン酸としては、例えば、一塩基酸、および、二塩基酸が挙げられる。一塩基酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸および/またはメタクリル酸)、クロトン酸、および、イソクロトン酸が挙げられる。二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルコハク酸、ナジック酸、メチルナジック酸、テトラヒドロフマル酸、および、メチルヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。
【0035】
また、不飽和カルボン酸には、上記した不飽和カルボン酸の酸無水物が挙げられる。
【0036】
不飽和カルボン酸として、好ましくは、不飽和カルボン酸の酸無水物、より好ましくは、二塩基酸の酸無水物、さらに好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。
【0037】
不飽和カルボン酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0038】
また、変性ポリオレフィン樹脂に対する不飽和カルボン酸の変性量は、0.5質量%を超過、好ましくは、1.1質量%以上、また、5質量%未満、好ましくは、3質量%以下、より好ましくは、2質量%以下である。
【0039】
上記変性量が、上記下限以上であれば、この接着性組成物を用いて得られるプライマー層3(後述)は、表面層4(後述)との密着性、および、ポリオレフィン基材2(後述)との密着性に優れ、とりわけ、表面層4(後述)との密着性に優れる。また、とりわけ、上記変性量が、1.1質量%以上であれば、より一層、密着性に優れる。
【0040】
また、上記変性量が、上記上限以下であれば、この接着性組成物を用いて得られるプライマー層3(後述)は、表面層4(後述)との密着性、および、ポリオレフィン基材2(後述)との密着性に優れ、とりわけ、ポリオレフィン基材2(後述)との密着性に優れる。
【0041】
なお、上記の変性量は、例えば、変性ポリオレフィン樹脂を調製するときの、各成分の配合割合から求めることができる。また、変性ポリオレフィン樹脂の1H-NMR測定などの公知の手段で確認できる。
【0042】
<ラジカル反応性芳香族化合物>
ラジカル反応性芳香族化合物は、ラジカル付加可能な部位および芳香環を併有する化合物である。
【0043】
ラジカル反応性芳香族化合物としては、例えば、ラジカル重合性二重結合含有芳香族化合物、および、ラジカル反応性芳香族炭化水素が挙げられる。
【0044】
ラジカル重合性二重結合含有芳香族化合物は、ラジカル重合性二重結合および芳香環を併有する化合物である
【0045】
ラジカル重合性二重結合含有芳香族化合物としては、例えば、芳香族ビニル化合物、芳香環含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン(2-フェニルプロピレン)、2-フェニルブテン、3-フェニルプロピレン、ジビニルベンゼン、1-ビニルナフタレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、o-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、3-メチル-5-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-sec-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、p-ビニル安息香酸、p-ビニル安息香酸エステル類、安息香酸ビニルが挙げられる。芳香環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリチルが挙げられる。
【0046】
ラジカル反応性芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン、および、エチルベンゼンが挙げられる。
【0047】
ラジカル反応性芳香族化合物としては、好ましくは、ラジカル重合性二重結合含有芳香族化合物、より好ましくは、芳香族ビニル化合物、さらに好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0048】
また、変性ポリオレフィン樹脂に対するラジカル反応性芳香族化合物の変性量が、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上、また、例えば、3質量%未満、好ましくは、2質量%以下、より好ましくは、1.5質量%以下、さらに好ましくは、1.1質量%以下である。
【0049】
上記変性量が、上記下限以上であれば、この接着性組成物を用いて得られるプライマー層3(後述)は、ポリオレフィン基材2(後述)との密着性に優れる。また、とりわけ、上記変性量が、0.5質量%以上であれば、より一層、密着性に優れる。
【0050】
また、上記変性量が、上記上限以下であれば、接着性組成物の粘度の上昇を抑制でき、塗布性(具体的には、スプレー塗布性)に優れる。
【0051】
なお、上記の変性量は、例えば、変性ポリオレフィン樹脂を調製するときの、各成分の配合割合から求めることができる。また、変性ポリオレフィン樹脂の1H-NMR測定などの公知の手段で確認できる。
【0052】
<変性ポリオレフィン樹脂の調製>
変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂を、不飽和カルボン酸およびラジカル反応性芳香族化合物によって変性することにより得られる。
【0053】
具体的には、不飽和カルボン酸およびラジカル反応性芳香族化合物を、ポリオレフィン樹脂存在下で重合反応させることにより得られる。これにより、ポリオレフィン樹脂が、不飽和カルボン酸およびラジカル反応性芳香族化合物によって、グラフト変性される。
【0054】
反応温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上、また、例えば、250℃以下である。反応時間は、例えば、1分以上、また、10時間以下である。
【0055】
また、上記反応において、必要により、ラジカル重合開始剤を適宜の割合で配合する。
【0056】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルベンゾエート、tert-ブチルペルフェニルアセテート、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペル-sec-オクトエート、tert-ブチルペルピバレート、クミルペルピバレートおよびtert-ブチルペルジエチルアセテートなどの有機ペルオキシド、例えば、アゾビス-イソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチルニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。
【0057】
ラジカル重合開始剤としては、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましい。
【0058】
また、上記反応は、溶媒の存在下、または、無溶媒で実施する。
【0059】
溶媒としては、公知の溶剤が選択できる。
【0060】
これにより、変性ポリオレフィン樹脂が得られる。また、上記反応を溶媒の存在下で実施する場合には、得られた変性ポリオレフィン樹脂は、ワニスとして調製される。
【0061】
また、変性ポリオレフィン樹脂の融点は、例えば、50℃以上、好ましくは、60℃以上、より好ましくは、70℃以上、また、例えば、115℃以下、好ましくは、113℃以下、より好ましくは、110℃以下である。
【0062】
また、変性ポリオレフィン樹脂を有しない非晶質でもよい。
【0063】
なお、融点の測定方法については、後述する実施例において詳述する。
【0064】
また、変性ポリオレフィン樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量は、例えば、40000以上、好ましくは、50000以上、より好ましくは、55000以上、また、例えば、500000以下、好ましくは、400000以下、より好ましくは、380000以下である。
【0065】
なお、重量平均分子量の測定方法については、後述する実施例において詳述する。
【0066】
そして、接着性組成物は、上記した変性ポリオレフィン樹脂、および、必要により配合される溶媒を含む。
【0067】
接着性組成物が、溶媒を含む場合において、変性ポリオレフィン樹脂の固形分濃度は、例えば、1.0質量%以上、好ましくは、3.0質量%以上、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0068】
詳しくは後述するが、接着性組成物を用いて得られるプライマー層3(後述)は、ポリオレフィン基材2(後述)との密着性、および、表面層4(後述)との密着性の両方に優れる。そのため、接着性組成物は、ポリオレフィン基材2(後述)および表面層4(後述)の間に配置されるプライマー層を形成に好適に用いられる。
【0069】
以下、接着性組成物を用いて得られるプライマー層3(後述)を備える積層体1について、詳述する。
【0070】
<積層体>
図1を参照して、本発明の積層体の一実施形態を説明する。
【0071】
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0072】
積層体1は、図1に示すように、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。積層体1は、厚み方向と直交する面方向に延びる。積層体1は、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0073】
積層体1は、ポリオレフィン基材2と、プライマー層3と、表面層4とを厚み方向一方側に向かって順に備える。具体的には、積層体1は、ポリオレフィン基材2と、ポリオレフィン基材2の上面(厚み方向一方面)に直接配置されるプライマー層3と、プライマー層3の上面(厚み方向一方面)に直接配置される表面層4とを備える。
【0074】
<ポリオレフィン基材>
ポリオレフィン基材2は、フィルム形状を有する。ポリオレフィン基材2は、プライマー層3の下面に接触するように、プライマー層3の下面全面に、配置されている。
【0075】
ポリオレフィン基材2は、ポリオレフィン樹脂からなる。
【0076】
ポリオレフィン樹脂としては、上記した接着性組成物において例示したポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0077】
<プライマー層>
プライマー層3は、フィルム形状を有する。プライマー層3は、表面層4の下面に接触するように、表面層4の下面全面に、配置されている。
【0078】
プライマー層3は、接着性組成物から形成される。
【0079】
プライマー層3は、詳しくは後述するが、ポリオレフィン基材2の厚み方向一方面に、接着性組成物を塗布することにより得られる。
【0080】
プライマー層3の厚みは、例えば、1μm以上、また、例えば、5μm以下である。
【0081】
<表面層>
表面層4は、フィルム形状を有する。表面層4は、プライマー層3の上面に接触するように、プライマー層3の上面全面に、配置されている。表面層4は、積層体1の最上層である。
【0082】
表面層4は、ポリオレフィン樹脂よりも極性が高い材料(高極性材料)からなる。
【0083】
このような高極性材料としては、例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミド結合、および、ウレタン結合を有する樹脂が挙げられる。具体的には、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、および、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂が挙げられ、好ましくは、アクリル樹脂、および、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂が挙げられる。
【0084】
表面層4の厚みは、例えば、6μm以上、また、例えば、20μm以下である。
【0085】
<積層体の製造方法>
積層体1の製造方法は、ポリオレフィン基材2を準備する第1工程と、ポリオレフィン基材2の厚み方向一方面にプライマー層3を配置する第2工程と、プライマー層3の厚み方向一方面に表面層4を配置する第3工程とを備える。
【0086】
第1工程では、図2Aに示すように、ポリオレフィン基材2を準備する。
【0087】
第2工程では、図2Bに示すように、ポリオレフィン基材2の厚み方向一方面にプライマー層3を配置する。
【0088】
ポリオレフィン基材2の厚み方向一方面に、プライマー層3を配置するには、上記接着性組成物(変性ポリオレフィン樹脂のワニス)をポリオレフィン基材2の厚み方向一方面に塗布し、必要により、乾燥させる。これにより、ポリオレフィン基材2の厚み方向一方面にプライマー層3を配置(形成)する。
【0089】
塗布方法としては、特に制限されないが、生産性の観点から、好ましくは、スプレー塗布が挙げられる。
【0090】
乾燥条件としては、接着性組成物中に含まれる有機溶媒などの揮発分が揮発する条件である限り特に制限されないが、乾燥温度は、例えば、200℃以下、好ましくは150℃以下で、例えば、10℃以上である。また、乾燥時間は、例えば3秒間以上、好ましくは1分間以上、また、例えば、1時間以下である。
【0091】
第3工程では、図2Cに示すように、プライマー層3の厚み方向一方面に表面層4を配置する。
【0092】
表面層4の材料をプライマー層3の厚み方向一方面に塗布し、必要により、乾燥させる。これにより、プライマー層3の厚み方向一方面に表面層4を配置(形成)する。
【0093】
乾燥条件としては、表面層4の材料中に含まれる有機溶媒などの揮発分が揮発する条件である限り特に制限されないが、乾燥温度は、例えば、200℃以下、好ましくは150℃以下で、例えば、10℃以上である。また、乾燥時間は、例えば3秒間以上、好ましくは1分間以上、また、例えば、1時間以下である。
【0094】
以上により、積層体1が得られる。
【0095】
<作用効果>
接着性組成物における変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂が、不飽和カルボン酸およびラジカル反応性芳香族化合物によって、所定の変性量に基づいて、変性されている。これにより、この接着性組成物を用いて得られるプライマー層3は、ポリオレフィン基材2との密着性、および、表面層4との密着性に優れる。
【0096】
詳しくは、不飽和カルボン酸の変性量を多くすると、プライマー層3の極性が高くなり、相対的に極性が高い表面層4との密着性が向上する一方、相対的に極性が低いポリオレフィン基材2との密着性が低下する傾向がある。
【0097】
また、ラジカル反応性芳香族化合物の変性量を多くすると、ポリオレフィン基材2との密着性が向上する一方、塗布性が低下する傾向がある。
【0098】
接着性組成物では、不飽和カルボン酸の変性量およびラジカル反応性芳香族化合物の変性量の両方が、所定の範囲に調整されている。これにより、接着性組成物の塗布性が向上するとともに、この接着性組成物を用いて得られるプライマー層3は、ポリオレフィン基材2との密着性、および、表面層4との密着性に優れる。その結果、このプライマー層3を介して、相対的に極性が低いポリオレフィン基材2と、相対的に極性が高い表面層4とを接着することができる。
【0099】
また、ポリオレフィン樹脂は、所定範囲の融解熱を有する。これにより、この接着性組成物を用いて得られるプライマー層3は、ポリオレフィン基材2との密着性に優れる。
【0100】
一方、特許文献1の変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂を、α、β-カルボン酸の酸無水物(具体的には、無水マレイン酸)およびベンゼン環を有する化合物(具体的には、ベンジルアミン)で変性させることにより得られる。詳しくは、ポリオレフィン樹脂を、まず、無水マレイン酸で、グラフト変性させる。その後、変性により開環した無水マレイン酸のカルボキシル基を、ベンジルアミンのアミノ基と反応させている。そうすると、ベンジルアミンが、ポリオレフィン基材2との密着性を阻害する。
【0101】
これに対して、本発明の変性ポリオレフィン樹脂では、不飽和カルボン酸およびラジカル反応性芳香族化合物が、ポリオレフィン樹脂に対して、ともにラジカル反応によりグラフト変性している。
【0102】
つまり、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、1分子のポリオレフィン樹脂に対して、不飽和カルボン酸およびラジカル反応性芳香族化合物がともにグラフト変性しているものであり、1分子のポリオレフィン樹脂に対して、不飽和カルボン酸がグラフト変性しているもの、および、1分子のポリオレフィン樹脂に対して、ラジカル反応性芳香族化合物がグラフト変性しているものの混合物とは、区別される。これにより、ラジカル反応性芳香族化合物が、ポリオレフィン樹脂に対して効率的に導入され、ポリオレフィン基材2との密着性が向上する。
【0103】
また、積層体1は、上記の接着性組成物からなるプライマー層3を備える。そのため、ポリオレフィン基材2と、表面層4との間の密着性に優れる。
【0104】
積層体1は、包装材料などの各種分野において、好適に用いられる。
【0105】
上記した説明では、表面層4は、単層である。一方、表面層4は、多層(例えば、2層以上、好ましくは、2層、3層)でもよい。
【0106】
上記した説明では、ポリオレフィン基材2は、フィルム形状であったが、ポリオレフィン基材2の形状はこれに限定されず、例えば、板状でもよい。
【実施例
【0107】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0108】
1.接着性組成物の調製
実施例1
撹拌機が取付られた内容積1.0Lのオートクレーブに、プロピレン単位79モル%およびエチレン単位21モル%のプロピレン・エチレン共重合体(PER)100質量部および酢酸ブチル516質量部を入れ、撹拌下、145℃に昇温し、プロピレン・エチレン共重合体を完全に溶解させた。
【0109】
その後、この溶液を145℃に保ったまま、撹拌下、無水マレイン酸6質量部、スチレン1.5質量部。および、ジ-tert-ブチルパーオキシド3.6質量部を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに145℃で3時間撹拌して、反応を実施した。次いで、得られた溶液を80℃まで降温した後、メチルシクロヘキサン774質量部で希釈した。次いで、この溶液を室温まで冷却し、トルエン1290質量部で固形分4%になるように希釈した。これにより、変性ポリオレフィン樹脂を含む接着性組成物を得た。
【0110】
実施例2~実施例4、および、比較例1~比較例6
実施例1と同様の手順に基づいて、変性ポリオレフィン樹脂を含む接着性組成物を得た。
【0111】
但し、配合処方を表1に従って変更した。
【0112】
また、実施例4では、プロピレン単位66モル%、ブテン単位13モル%およびエチレン単位21モル%のプロピレン・ブテン・エチレン共重合体(PBER)を用いた。
【0113】
また、比較例5では、プロピレン単位63モル%、ブテン単位23モル%およびエチレン単位14モル%のプロピレン・ブテン・エチレン共重合体(PBER)を用いた。
【0114】
また、比較例6では、プロピレン単位85モル%、および、エチレン単位15モル%のプロピレン・エチレン共重合体(PER)を用いた。
【0115】
比較例7
撹拌機が取付られた内容積1.0Lのオートクレーブに、プロピレン単位79モル%およびエチレン単位21モル%のプロピレン・エチレン共重合体50質量部および酢酸ブチル261.6質量部を入れ、撹拌下、145℃に昇温し、プロピレン・エチレン重合体を完全に溶解させた。
【0116】
その後、この溶液を145℃に保ったまま、撹拌下、無水マレイン酸6質量部およびジ-tert-ブチルパーオキシド3.6質量部を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに145℃で3時間撹拌して、反応を実施した。次いで、得られた溶液を80℃まで降温した後、メチルシクロヘキサン392.4質量部で希釈した。これを室温まで冷却し、溶液Xを得た。次いで、無水マレイン酸6質量部をスチレン3質量部へと変更した以外は溶液Xと同様の操作を実施し、溶液Yを得た。
【0117】
溶液Xと溶液Yを室温下混合した後、トルエン1308質量部で固形分4%になるように希釈し、接着性組成物を得た。
【0118】
比較例8
撹拌機が取付られた内容積1.0Lのオートクレーブに、プロピレン単位79モル%およびエチレン単位21モル%のプロピレン・エチレン共重合体100質量部および酢酸ブチル537.6質量部を入れ、撹拌下、145℃に昇温し、プロピレン・エチレン重合体を完全に溶解させた。
【0119】
次いで、この溶液を145℃に保ったまま、撹拌下、無水マレイン酸6質量部およびジ-tert-ブチルパーオキシド3.6質量部を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに145℃で3時間撹拌して、後反応を行った。得られた溶液を135℃まで降温した後、ベンジルアミン6質量部を加え、さらに2時間撹拌した。この溶液を80℃まで降温し、メチルシクロヘキサン806.4質量部で希釈した。これを室温まで冷却し、トルエン1344質量部で固形分4%になるように希釈し、接着性組成物を得た。
【0120】
2.融解熱量の測定
各実施例および各比較例で用いられたポリオレフィン樹脂について、示差走査熱量計(TA Instruments製;DSC-Q1000)を用いて、融解熱量を求めた。
10℃/分で30℃から180℃まで昇温後、10℃/分で0℃まで降温し、再度10℃/分で150℃まで昇温する過程において、2度目の昇温時のサーモグラムより、JIS K 7122に准じて融点と融解熱量を求めた。その結果を表1に示す。
【0121】
3.変性量の測定
ポリオレフィン樹脂に対する不飽和カルボン酸の変性量、および、ポリオレフィン樹脂に対するラジカル反応性芳香族化合物の変性量について、以下の条件に基づき、1H-NMR測定を用いて測定した。その結果を表1に示す。
[測定条件]
装置:日本電子(株)製ECX400型核磁気共鳴装置
溶媒:重水素化オルトジクロロベンゼン
試料濃度:20mg/0.6mL
測定温度:120℃
観測核:1H(400MHz)
シーケンス:シングルパルス
パルス幅:5.12μ秒(45°パルス)
繰り返し時間:7.0秒
積算回数:500回以上
【0122】
なお、基準のケミカルシフトは、テトラメチルシランの水素を0ppmとした(なお、重水素化オルトジクロロベンゼンの残存水素由来のピークを7.10ppmとしてケミカルシフトの基準値とすることでも同様の結果を得ることができる)。官能基含有化合物由来の1Hなどのピークは、常法によりアサインした。
【0123】
4.融点の測定
各実施例で用いられたポリオレフィン樹脂、および、各実施例の変性ポリオレフィン樹脂について、融点を測定した。具体的には、示差走査熱量計(TA Instruments製;DSC-Q1000)を用いて、10℃/minで25℃から200℃まで昇温後、200℃で3分間保持し、10℃/minで0℃まで降温し、再度10℃/minで200℃まで昇温する過程において、2度目の昇温時のサーモグラムより、JIS K7122に准じて融点を求めた。その結果を表1に示す。
【0124】
5.重量平均分子量
各実施例で用いられたポリオレフィン樹脂、および、各実施例の変性ポリオレフィン樹脂について、重量平均分子量を測定した。具体的には、GPC法に基づき、以下の測定条件に基づき、重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
検出器:島津製作所社製;C-R4A
カラム:TSKG 6000H-TSKG 4000H-TSKG 3000H-TSKG 2000H(東ソー社製)
移動:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流量:0.8ml/min
単分散標準ポリスチレンより作成した検量線を用いて、Mwを算出した。
【0125】
6.積層体の製造
[積層体Aの製造]
<第1工程>
ポリプロピレン板を準備した。
【0126】
<第2工程>
ポリプロピレン板の厚み方向一方面に、各実施例および各比較例の接着性組成物をスプレー塗布し、60℃で2分間乾燥させた。これにより、厚み2μm~3μmのプライマー層を得た。
【0127】
<第3工程>
プライマー層の厚み方向一方面に、アクリル系塗料をスプレー塗装し、60℃で3分間乾燥させた。次いで、UV照射によりアクリル系塗料を硬化させた。これにより、厚み10μm~15μmの表面層を形成した。以上により、積層体Aを製造した。
【0128】
[積層体Bの製造]
積層体Aと同様の手順に基づいて、積層体Bを製造した。
【0129】
但し、第3工程を以下のように変更した。
【0130】
プライマー層の厚み方向一方面に、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂からなる塗料をスプレー塗装し、60℃で3分間乾燥させた。これにより、厚み5μm~6μmの第1表面層を形成した。次いで、この表面層の厚み方向一方面に、アクリル系塗料をスプレー塗装し、60℃で3分間乾燥させた。次いで、UV照射によりアクリル系塗料を硬化させた。これにより、厚み10μm~15μmの第2表面層を形成した。以上により、積層体Bを製造した。
【0131】
7.評価
[密着性]
各実施例および各比較例の積層体Aおよび積層体Bにおいて、表面層を碁盤目(2mm間隔、100マス)にカットし、ポリプロピレン板または表面層のセロハン粘着テープによる剥離テストを実施した。付着率(基材に残ったマスの数)により密着性を評価した。
【0132】
詳しくは、ポリプロピレンとプライマー層との密着性(PP密着性)、アクリル系塗料からなる表面層とプライマー層との密着性(アクリル密着性)、および、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂からなる表面層とプライマー層との密着性(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂密着性)について、以下の基準に基づき評価した。なお、比較例4は、接着性組成物をスプレー塗布することができなかったため、密着性の評価を実施しなかった。
【0133】
<PP密着性>
各実施例および各比較例の積層体Aおよび積層体Bについて、碁盤目試験によりプロピレン板とプライマー層間の付着率を評価し、PP密着性を下記基準で判断した。その結果を表1に示す。
〇:付着率の平均が100であった。
△:付着率の平均が100未満、90以上であった。
×:付着率の平均が90未満であった。
【0134】
<アクリル密着性>
各実施例および各比較例の積層体Aについて、碁盤目試験によりプライマー層と表面層(アクリル層)間の付着率を評価し、アクリル密着性を下記基準で判断した。その結果を表1に示す。
〇:付着率が100であった。
△:付着率が100未満、90以上であった。
×:付着率が90未満であった。
【0135】
<塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂密着性>
各実施例および各比較例の積層体Bについて、碁盤目試験によりプライマー層と表面層(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂層)間の付着率を評価し、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂密着性を下記基準で判断した。その結果を表1に示す。
〇:付着率が100であった。
△:付着率が100未満、90以上であった。
×:付着率が90未満であった。
【0136】
[スプレー適性]
各実施例および各比較例の接着性組成物について、B型粘度を測定し、スプレー適性を下記基準で判断した。
〇:粘度が40mPa・s未満であった。スプレー塗装できると判断した。
×:粘度が40mPa・s以上であった。スプレー塗装できないと判断した。
【0137】
【表1】
【0138】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の接着性組成物および積層体は、例えば、包装材料として、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0140】
1 積層体
2 基材
3 プライマー層
4 表面層
図1
図2