(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】下半身用衣類
(51)【国際特許分類】
A41B 9/04 20060101AFI20250218BHJP
A41C 1/00 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
A41B9/04 E
A41C1/00 F
(21)【出願番号】P 2024091087
(22)【出願日】2024-06-05
【審査請求日】2024-06-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523211176
【氏名又は名称】松村 瑞恵
(72)【発明者】
【氏名】松村 瑞恵
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-001875(JP,Y1)
【文献】特許第7190776(JP,B2)
【文献】実開昭61-125105(JP,U)
【文献】特開2016-003420(JP,A)
【文献】特開平11-350206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/04
A41C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面視で、左右対称の下半身用衣類であって、
左脇部および、右脇部は、下方に向かい外側に広がる形状であって、
臀部生地の面積は、下腹部生地の面積よりも大きく、
前記脇部に対する前面部の脚繰り角度は、90度より大きく、
背面部の脚繰りは、前記脇部の下端から背部側に継続しており、
前記脇部に対する背面部の脚繰り角度は、
前記前面部の脚繰り角度よりも大きく備える
前記下半身用衣類において、
左パンツおよび、右パンツで構成され、
左右対象であり、
直線状の左右ウエストラインの夫々端から、
下方に向け、外側に広がる形状の
左下腹部ラインと左臀部ライン、および、
右下腹部ラインと右臀部ラインを備えることを
特徴とする下半身用衣類。
【請求項2】
前記左右臀部ラインの長さは、
前記左右下腹部ラインの長さよりも長く備え、
前記左右ウエストラインに対する臀部ライン傾斜角度βは、
前記左右ウエストラインに対する下腹部ライン傾斜角度αよりも大きい
ことを特徴とする請求項
1に記載の下半身用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰痛予防のための下半身用衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の下半身用衣類においては、
図13のように腰部の凹みに収まる構成を採用しているようなものがある。 また、
図14のように、
図13の構成に併せて、全体に用いる生地面積が、人体の原寸法よりも小さいようなものがある。
【0003】
また、前述の構成に併せて、脚繰りは、窄まる形状のようなものがある。更には、脚繰り周囲には、伸縮性のある紐を採用しているようなものがある。
【0004】
公知における下半身用衣類(特許文献1)においては、臀部の丸みを潰さずにヒップアップ補整し、メリハリのあるヒップラインを形成できるパンツやガードル等の下半身衣類を提供するものがある。
【0005】
図2に示すように、背面側本体14の内面側に、一対の三角形状の左右布21、22を臀裂に沿う垂下縁21b、22bで連結してなる当て布20を備え、該当て布20と本体14とは、 左右布21、22のウエスト側の上縁21a、22aと、臀裂に沿う垂下縁21b、22bとで縫着する一方、上縁21a、22aと垂下縁21b、22bの先端を連結する傾斜縁21c、22cは本体14と縫着せずに浮かせ、かつ、該当て布20は傾斜縁21c、22cが左右臀部の頂点T、Tに至らない大きさとすると共に、該当て布 20は伸縮性素材から形成して、垂下縁21b、22bに沿う部分を緊締力部23とする と共に傾斜縁21c、22c側の部分を弱緊締力部24としている。
【0006】
公知における下半身用衣類(特許文献2)においては、女性用下着の裾部が肉厚となって表着等に響くことがなく、且つ着用感に優れ、しかも 製造が容易な女性用下着を提供するものがある。
【0007】
図1に示すように 、身頃を構成する布片を縫着することにより構成される女性用下着、前記身頃の端部に相当する従来パターン上曲線としなければならない部分を直換えることのできるパターンの創造により二重構造とし、当該身頃の端部に相当以外の部分を縫着することによって構成 している。
【0008】
公知における下半身用衣類(特許文献3)においては、運動機能性と快適性を向上させた婦人用ショーツを提供するものがある。
【0009】
図1に示すように、下腹部と対応する前身頃を横方向に伸縮性を有する織物によって形成するとともに、臀部と対応する後身頃を縦方向に伸縮性を有する織物によって形成する。胴体の捻りや呼吸によって下腹部が大きく運動したときには、前身頃が横方向に伸びて下腹部の人体運動の無理な拘束が緩和されるとともに、着座ないし前屈によって臀部が大きく運動したときには、後身頃が縦方向に伸びて臀部の人体運動の無理な拘束が緩和され、疲労感の軽減と運動機能性の向上が図れるとともに、過度のゆとりを排除できるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【0011】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の下半身用衣類では、上述した特許文献1から3のように、ヒップアップや着用感、運動機能と快適性を備える下半身用衣類が発明、考案されている。
【0014】
従来の下半身用衣類では、上述した特許文献1から3のように、臀部の丸みを潰さずにヒップアップ補整し、メリハリのあるヒップラインを形成できるパンツやガードル等の下半身衣類が発明、考案されている。
【0015】
しかし、従来の下半身用衣類は、前傾姿勢を招く要因となる問題点を有しており、 腰痛などの不調に繋がる問題点を有している。
【0016】
このような要因が、人体の骨格や筋肉および、血液循環に関わる影響に繋がる問題点を有している。
【0017】
また、従来の下半身用衣類において、脚繰りを備えているズボンやショーツなどがあるが、人体に与える不都合を有している。
例えば、歩行などで、常に脚を動かし、骨盤や臀筋群(大臀筋、中臀筋、小臀筋など)が活動している時、従来の下半身用衣類の前後の生地は、股部へ引き寄せられる状態になることが多い。
【0018】
前後の生地が股部へ引き寄せられる連動から、ウエストライン位置も下方へ引っ張られる。
その影響から、骨盤である仙骨、腸骨に圧力や負担が掛かっている。
【0019】
前後の生地重量は、人体の左右の動きによって、骨盤である腸骨に圧し掛かっている。その圧し掛かる重量と共に圧迫や負担が、腸骨を通し、背部側から腹部側へ下りる不都合を有している。
【0020】
本来、腰部は、人体の中心部であり、上半身と下半身に係る影響が、最も大きい。
【0021】
しかし、従来の下半身用衣類が、腰部に負担や圧迫を加える構成のものがあり、その影響は、上半身および、下半身の骨格や筋肉にも不都合を有している。
【0022】
従来の下半身用衣類には、伸縮性のある紐をウエストライン全周囲に採用しているものがある。人体の動作や姿勢の傾きによって、伸縮性のある紐は、上下に傾いた両側の骨盤に負担を掛けている。その負荷は、高く上がった側が、大きいと考えられる。
【0023】
更に、従来の下半身用衣類の脚繰りは、窄まる形状であったり、伸縮性の紐を採用しているものがあり、それにより、大腿部への血流に係る問題点を有する。
【0024】
本発明は、このような問題点を踏まえ、人体に与える影響を最小限に止めることを目的とした下半身用衣類の構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、本発明に係る下半身用衣類の実施形態の一つには、正面視で、左右対称の下半身用衣類であって、左脇部および、右脇部は、下方に向かい外側に広がる形状であって、臀部生地の面積は、下腹部生地の面積よりも大きく、前記脇部に対する前面部の脚繰り角度は、90度より大きく、背面部の脚繰りは、前記脇部の下端から背部側に継続しており、前記脇部に対する背面部の脚繰り角度は、前記前面部の脚繰り角度よりも大きく備える構成である。
【0026】
本発明に係る実施形態の一つには、 前記下腹部生地および、前記臀部生地は、夫々の上端の下腹部生地ウエストおよび、臀部生地ウエストの中央部が、下方に下がる形状の構成である。
【0027】
本発明に係る実施形態の一つには、前記左右脇部の上方のウエストライン脇部および、下方の前記脚繰りは、伸縮性のある編物生地のみの構成である。
【0028】
本発明に係る実施形態の一つには、前記下半身用衣類は、左パンツおよび、右パンツで構成され、左右対象であり、直線状の左右ウエストラインの夫々端から、下方に向け外側に広がる形状の左下腹部ラインと左臀部ラインおよび、右下腹部ラインと右臀部ラインを備える構成である。
【0029】
本発明に係る実施形態の一つには、前記左右臀部ラインの長さは、前記左右下腹部ラインの長さよりも長く備え、前記左右ウエストラインに対する臀部ライン傾斜角度βは、前記左右ウエストラインに対する下腹部ライン傾斜角度αよりも大きい構成である。
【0030】
本発明に係る実施形態の一つには、前記下腹部生地の下端には、中央から下方へ広がる台形状の股部を備えており、前記臀部生地の下端中央と縫合しており、前記股部の両脇と前記脚繰りは、継続されている構成である。
【0031】
本発明に係る実施形態の一つには、前記下腹部生地および、前記臀部生地の上方の下腹部生地ウエストおよび、臀部生地ウエストの中央から、左右ウエストラインに沿って、異なる長さの伸縮性のある紐を備える構成である。
【0032】
本発明に係る実施形態の一つには、前記伸縮性のある紐の長さの範囲は、前記下腹部ウエストの長さよりも、前記臀部ウエストの長さを長く備える構成である。
【発明の効果】
【0033】
本発明のV形状のウエストラインと生地重量の移動の構成によって、腰部が上方から抑え込まれたり、側面から圧え付けられることを軽減できる。これにより、骨盤である腸骨の自然な動きを遮ることが無くなる。「V形状」のウエストラインが、人体に与える良い影響は、座位姿勢や前屈姿勢であっても、腰椎や骨盤を圧迫する負担を軽減することを達成している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係る下半身用衣類の左パンツ内側の平面図である。
【
図2】本発明に係る下半身用衣類の右パンツ内側の平面図である。
【
図3】本発明に係る下半身用衣類の身体前面から見た 正面図である。
【
図4】本発明に係る下半身用衣類の身体背中側から見た 背面図である。
【
図5】左右パンツを縫合した立体イメージ図である。
【
図8】上から見た立体イメージ図 (完成後)である。
【
図9】上から見た立体イメージ図 (正中線 左右パンツ縫合図)である。
【
図10】本発明の効果を説明するための骨格図である。
【
図11】本発明に係る下半身用衣類の縫合されたイメージ図と人体図との合成図である。
【
図12】下腹部生地および、臀部生地の面積を狭めたイメージ図である。
【
図13】従来の下半身用衣類のウエストライン形状イメージ図である。
【
図14】従来の下半身用衣類(人体原寸よりも生地の範囲が小さいショーツ)である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図3、4は、本発明に係る下半身用衣類の実施形態によって、製作された正面図と背面図である。夫々の図で現すように、本発明のウエストラインは、「V形状」(以下、「V形状」と称す)の構成で成されたものである。
【0036】
本発明である「腰痛予防のための下半身用衣類」の考案は、「人体の日常動作を検証し、導きだした構成」であるから、検証に基づく本実施形態を以下に説明する。
【0037】
《着眼点》
本発明は、前傾姿勢や腰痛の要因に着目し、「腰部」から現れる不調を軽減するための下半身用衣類を考案する。ウエストラインの形状および、生地重量の移動に基づいた構成である。
【0038】
下半身用衣類を製作する上で、重要視すべき点は、人体の中心部である「腰部」への影響であると考える。
下半身用衣類のウエストラインと、「腰部」との係りは、常に密接しており、避けることができない関係であると考えられる。
【0039】
これらのことから、腰痛を予防するための下半身用衣類は、「腰部」の動きに対応でき、また、「腰部」への負担を緩和できる構成を提供することにある。
【0040】
つまり、本実施形態の一つでは、日常の作業や動作において、どのような姿勢であったとしても、腰部への負担が軽減される生地を選ぶ必要があり、あらゆる姿勢に対応できる伸縮性のある編物生地などを採用することが相応しいと考える。
【0041】
また、後述する「人体の動作と骨盤との係り」の検証から、従来の下半身用衣類の構成が、下半身だけではなく、上半身にも影響を及ぼしていると考えられる。
【0042】
そのため、従来の下半身用衣類の構成を踏まえ、本発明は、腰部に係る影響を回避し、骨格や筋肉への圧迫や負担を軽減できる、構成の考案に至る。更には、人体に負荷の掛からない、下半身用衣類の生地面積に、ゆとりのある構成を考案する。
【0043】
《検証》
(1)人体の筋線維とウエストラインの形状について検証してみる。
腰部は、人体の中心部であり、上半身と下半身に係わる影響が、最も大きいと考えられる。
【0044】
人体の筋肉は、筋繊維の構造から創造されている。その多くは、縦に流れる(縦方向)筋繊維である。人体の動作により、その動きは、活発であると考えられる。
【0045】
この人体構造を踏まえて考えると、人体の中心部である腰部に、水平形状(横方向)であるウエストラインよりも、人体構造に沿う形状を考案する必要があった。
【0046】
何故なら、水平形状のウエストラインは、その横の動きが、筋繊維の縦の動きを遮ることとなるため、筋肉の働きに負担を掛ける不都合がある。
【0047】
従って、本実施形態では、縦に流れる筋繊維に沿う「V形状」のウエストラインを採用しており、縦方向への抵抗を軽減することが期待できる。
図11参照。
【0048】
本実施形態の一つである「V形状のウエストライン」は、広背筋への圧迫や負担を軽減できるため、上半身および、下半身への良好な血流維持が期待できる。
【0049】
(2)人体の動作による骨盤の動きを検証する。
図10の人体イメージ図で現すように、矢印で示した方向が、骨盤の自然な動きの構造である。
【0050】
例えば、人体が、直立姿勢から座位姿勢へと移り変わる時、通常は、仙骨が徐々にアーチを描きながら、下方前方へ下がる動きを始める。
図10人体イメージ図参照。
その仙骨の動きに連動し、腸骨も仙骨同様にアーチを描きながら、下方へ下がる動きとなる。
【0051】
腸骨の動きは、仙骨の形状である逆三角形の形状の動きに連動するため、尾骨に向かうように、外側から内側下方に向かう動きとなる。
図10「背面側」参照。
【0052】
また、腸骨は、上下の動きだけではなく、左右の動き(丸み)も同時に行われる。
図11参照。
【0053】
更に、左右の膝を合わせるような、大腿部を人体の内側に向ける座位姿勢の場合は、骨盤の下方が左右に広がる(ㇵの字)状態となる。
この状態の左右に広がった臀部や大腿部の面積は、直立姿勢の面積よりも、大きく横に広がっていることが理解できる。
図11参照。
【0054】
また、骨盤の構造は、後方からの圧力や圧迫が掛かると、前方へ倒れる構造であると考えられ、その連動で仙骨や尾骨は、上方へ上がる構造となっている。
これらを踏まえると、骨盤を矢印と逆方向に動かすイメージでは、大腿部から大きく前に一歩踏み出すことは、困難と言えるかも知れない。
図10人体イメージ図参照。
歩行の歩幅が、大股ではなく、小股になる要因であると考えられる。
【0055】
これらのことから、本発明は、大きく広い可動域となる骨盤の動きに沿い、連動する臀筋群(大臀筋、中臀筋、小臀筋など)の動きを遮らない生地面積を重要視し、考案する。
図11「座位姿勢」参照。
本実施形態では、前後の生地面積のゆとりを考えた構成である。
【0056】
本発明は、このような腸骨および、臀部の上下左右の動きを考慮し、臀部生地の面積を主とし、定めた構成である。
【0057】
その定めた面積は、人体構造である骨格や筋肉に負担を掛けず、「V形状」のウエストラインと併せ持つことで、関節腔(骨間の隙間)を回復し、維持することにも期待できる。
更には、腰痛予防にも期待できる構成である。
【0058】
更に、従来の下半身用衣類の構成のような、面積の小さな臀部生地や水平形状のウエストラインによって、背部後方から圧されるようなことも軽減できる。
図11参照。
よって、前傾姿勢予防にも期待できる構成である。
【0059】
(3) 脚繰りに係る形状などについて検証してみる。
大腿骨の可動域は、骨盤の動きに連動する動きとなる。
上述している骨盤に連動した大腿骨および、大腿部の動く範囲は、左右に大きく広がり、上下にも動く広い可動域と考えなければならない。
図11参照。
【0060】
そのため、脚繰りの形状は、窄める形状よりも範囲を広げ、開脚しやすい大きく広い形状であることが、圧迫や負担を軽減すると考える。
【0061】
これらを踏まえ、本実施形態では、左右パンツの縫合と股部の縫合で、脚繰りが形成される「広がる形状」の構成である。
【0062】
それにより、股関節を狭めず、大腿骨および、大腿部の可動域を遮らず、自由に動かせ、関節腔を維持できる構成である。
例えば、開脚であるが、従来の下半身用衣類を着用して、開脚をすると、大腿部を大きく外側に広げようとしても、内側に引き寄せられてしまうものがある。
これに対し、本実施形態では、大腿部を大きく外側に向けることができる「広がる形状」の構成である。
【0063】
また、脚繰りに伸縮性のある紐に限らず、脚の周囲を締めるような物を採用すると、それらの強度から、下腹部生地および臀部生地が、下方に引っ張られることになる。
下半身用衣類の前後の生地が、脚繰りや股部に引っ張られる状態では、ウエストラインも同様に下方に下がり、ウエストラインの位置が下方へ、ズレることになる。
【0064】
着用時のウエストラインの位置が、大幅に下方にズレると、腸骨の動きを上から圧えつけることになり、骨盤のズレを生じる恐れがある。
脚繰りを周囲から圧迫することは、大腿部の筋肉にも影響し、少なからず、血流にも障害が現れると考える。
【0065】
これらを踏まえ、本実施形態では、脚繰りを開放するため、「伸縮性のある紐に限らず、脚部の周囲を締め付けない」構成であるから、静脈瘤予防にも期待できる。
図11は着用時のイメージである。
【0066】
更に、臀部から大腿部に負担を掛けない構成は、
図12のような形成も成りえる。
【0067】
(4) 伸縮性のある紐の特性と、人体に関わる影響について検証してみる。
伸縮性のある紐の特性として、カットされた範囲の中心部へ縮む(戻る)という働きがある。
【0068】
更に、このカットされた伸縮性のある紐の両端を繋ぐと、円(輪)となる。
伸縮性のある紐の特性は、円(輪)の中心部へ向けて(外側から内側に向かう)縮む働きに変化する。
【0069】
このような特性のある伸縮性のある紐を、ウエストライン全周囲に採用する場合の人体への影響を、深く考える必要がある。
【0070】
何故なら、このような特性を持つ、伸縮性のある紐が与える、人体への影響は、肉体の中心部へ向けて、縮む働きに変化してしまう。
【0071】
例えば、伸縮性が強力であればある程、直立姿勢であっても、腰部への負担が大きくなる。
また、上述した従来の下半身用衣類の小さな面積の構成と併せ持つと、この負担が更に大きく腰部に圧し掛かってしまうこととなる。
【0072】
何故なら、人体構造の動きとして、前述しているように、骨盤の動きは下方に下がる、丸みを帯びた動きであることがわかる。
【0073】
たとえ、直立姿勢であっても、腰部は、背部側を反らす動きではなく、丸みを帯びながら下方に下がる動きが、人体の自然な状態である。
【0074】
しかし、ウエストライン全周囲に採用された円(輪)の形状となる伸縮性のある紐は、人体の自然な状態に圧力を掛け、中心部となる腰部に大きな負担を与えていることになる。
【0075】
これらを踏まえ、本実施形態では、腸骨に直接触れるウエストライン脇部30には、伸縮性のある紐に限らず紐などを備えない構成である。
また、ウエストラインに、伸縮性のある紐の採用する位置は、FとBにて示している。
図3、4 (縦縞の部分)参照。
【0076】
本発明は、ウエストラインに「V形状」と併せ、ウエストライン30に、伸縮性のある紐を採用しないことで、椎間板ヘルニア予防にも期待できる。
【0077】
更には、動作や姿勢の傾きによって、傾いた両側の骨盤に及ぶ、腸骨や大腿骨に係わる影響も軽減できる構成である。
【0078】
(5) 人体中心部の腰部に圧し掛かる構成や生地の重量について検証してみる。
例えば、従来の下半身用衣類の水平形状のウエストラインは、骨盤が背部側下方へ下がろうとする動きの時に、どのような影響を人体に与えているのかを考えてみる。
【0079】
水平形状のウエストラインでは、腹部側腸骨が、脇部側に向けて上がる動きを上方から抑え込むように遮ってしまう。
【0080】
従って、動作や姿勢による骨盤の傾きから水平形状のウエストラインは、腸骨に圧し掛かる負荷が大きいといえる。
【0081】
また、水平形状のウエストラインに併せて、下半身用生地の前後の重量が、負荷の掛かった腸骨に重く圧し掛かっていることになる。
【0082】
本実施形態では、下腹部生地の面積よりも、臀部生地の面積が広い(大きく)構成である。
その理由として、臀部股部横幅31L、31Rを下腹部股部横幅3L、3Rと縫合し、牽引することにより、臀部生地の重量が、臀部側下方から前方へ牽引(移動)する構成である。
図5参照。
【0083】
本発明は、下半身用衣類の前後の生地重量の移動と「V形状」の併用により、腰部 への負担が軽減されるので、人体の動作に対応できる構成である。
従って、腰椎に圧し掛かる圧迫や負担のような不快な着用感が軽減される。
【0084】
本実施形態における下半身用衣類の構成を以下に説明する。
本実施形態では、伸縮性のある編物生地を採用している。
(以下「左右」を省き、符号で表す)
【0085】
〈概要〉
本発明の「腰痛予防のための下半身用衣類」の正面視である前面
図3、背面
図4の外形は、下方に広がる裾広がりの形状である。
前面部の脚繰り角度1θおよび、背面部の脚繰り角度2θは、下腹部ライン傾斜角度αおよび、臀部ライン傾斜角度βと股部の横幅の長さによって定まるものである。
(股部の横幅については、後述する。)
従って、左右パンツを作成する上で、計測は不要である。
本実施形態の通常角度は、およそ1θが100 度程となり、2θが135度程となる。
【0086】
図1、2は、本発明に係る下半身用衣類の左右対称とした左パンツL(
図1)、および、右パンツR(
図2)の平面図である。この図面を参照して、以下に左右パンツの形状を説明する。
【0087】
〈ウエストライン〉
夫々の左右パンツL、Rには、上部に直線状の左右ウエストライン1L、1Rを備えている。
本実施形態では、「V形状」とするため、実寸のウエストの凹よりも大きなサイズの人体ヒップサイズを基本とし、ウエストライン1L、1Rのサイズを設定している。
ヒップサイズを目安にすることで、着用した時の腰部の締め付けを避けることができる。また、臀部のトップサイズを基本にすることで、ぬぎはきも不都合なく可能である。
【0088】
また、ウエストライン1L、1Rの縦幅は、後に取り付ける伸縮性のある紐などの縦幅に合った寸法に設定するのが好ましい。
【0089】
〈脇部〉
脇部5L、5Rは、ウエストライン1L、1Rの中央部から垂直に下りるラインである。
本実施形態では、脇部5L、5Rの長さを骨盤の縦幅(大腿骨付け根までの長さ)とするのが好ましい。(大腿骨の可動域を考慮している。)
【0090】
〈下腹部側、臀部側、傾斜角度〉
腹部や臀部の丸みに沿う
図1、2で示している傾斜角度α、βを設定することで、骨盤の動きの変化による人体への圧迫を軽減できる働きが生まれる。
【0091】
下腹部ライン2L、2Rおよび、臀部ライン4L、4Rは、直線状のウエストライン1L、1Rに対して、夫々に傾斜角度を設けて、下方外側に伸びるラインである。
【0092】
ウエストライン1L、1Rの夫々両端から下方外側に広がる傾斜角度は、下腹部ライン傾斜角度αおよび、臀部ライン傾斜角度βを設定する。
【0093】
本実施形態では、下腹部ライン傾斜角度αを100度程に、設定するのが好ましく、臀部ライン傾斜角度βを110度程に、設定するのが好ましい。
下腹部ライン傾斜角度αは、臀部ライン傾斜角度βよりも小さい角度であるのが好ましい。
しかし、特定の体型の場合は、この限りではない。 (例えば、妊婦など。)
【0094】
〈臀部ライン〉
臀部ライン4L、4Rは、ウエストライン1L、1Rに対して、臀部ライン傾斜角度βを取り、臀部ウエストライン11L、11Rの下端部から股部位置までの長さを設定する。
本実施形態では、臀部ライン4L、4Rの長さは、臀部を大きく囲み股部を覆う長さが好ましい。(臀部の上下左右の動きを考慮している。)
【0095】
〈下腹部ライン〉
下腹部ライン2L、2Rは、ウエストライン1L、1Rに対して、下腹部ライン傾斜角度αを取り、下腹部ウエストライン12L、12Rの下端部から股部位置までの長さを設定する。
本実施形態では、下腹部ライン2L、2Rの長さは、股部までの長さが好ましい。
(下腹部の上下左右の動きを考慮している。)
【0096】
臀部ライン4L、4Rの長さは、下腹部ライン2L、2Rの長さよりも長く設定する。
【0097】
その理由として、
図10の人体イメージ図で現すように、通常、人体の自然な臀部(ヒップ)の膨らみは、腹部の膨らみよりも大きいことを考慮している。
この角度によって、下腹部の膨らみや臀部の膨らみに沿うアーチを設定できる。
しかし、特定の体型の場合は、この限りではない。 (例えば、妊婦など。)
【0098】
〈股部〉
図1、2で示している下腹部ライン2L、2Rの下方に広がる台形状の股部LL、RRと、臀部ライン4L、4Rの下方に含まれている股部LL1、RR1の形状について説明する。
股部の形状は、左右パンツL、Rに含んでおり、その形状を図面中の下方に配置している。
【0099】
本実施形態では、下腹部股部LL、RRおよび、臀部股部LL1、RR1の横幅は、臀部ライン4L、4Rの下端の股部横幅31L、31Rの長さを基準としている。
股部横幅の長さは、股関節間の横幅を目安にするのが好ましい。
【0100】
本実施形態では、
図1、2で示している下腹部股部LL、RRおよび、臀部股部LL1、RR1の縦幅は、臀部の股部縦幅(正中線)LX1、RX1の長さを基準としている。
【0101】
また、臀部の股部縦幅LX1、RX1は、後述する、脚繰り(背面部)61L、61Rを予め設定する必要がある。
そのため、以下の作業を予め行っておくと、臀部の股部縦幅LX1、RX1は、設定が容易になる。
【0102】
臀部ライン4L、4Rの下端の股部横幅31L、31Rと、脚繰り(大腿部)62L、62Rを繋ぎ、脚繰り(背面部)61L、61Rの長さが定まる。(脚繰りについては、後述する。)
【0103】
この時点で、臀部ライン4L、4Rに臀部の股部横幅31L、31Rおよび、臀部の股部縦幅LX1、RX1が備えられたこととなる。
【0104】
ここで、臀部股部LL1、RR1と下腹部股部LL、RRを、重なり合う同形状にするための作業を加える。
【0105】
下腹部ライン2L、2Rの下端に、股部LL、RRの形状を備えるには、
1、股部正中線となるラインを揃える。
臀部の股部横幅31L、31Rを下腹部ライン2L、2Rの下端に当てがい、臀部ライン
4L、4Rと、下腹部ライン2L、2Rのラインを線で繋ぐようにラインを揃える。
(
図9で示す台形状の中心線となるラインLX、RX)
2、股部正中線LX、RXを設定する。
前作業で備えられている、臀部の股部縦幅LX1、RX1と同じ長さを下腹部ライン2L、2Rの下方に下腹部の股部縦幅LX、RXとして設定する。
3、股部横幅3L、3Rを設定する。
下腹部ライン2L、2Rの下端に当てがっている臀部の股部横幅31L、31Rと同じ長さを下腹部の股部横幅3L、3Rとして設定しておく。
【0106】
ここまでの作業で、左股部LLと、左股部LL1および、右股部RRと、右股部RR1の台形状の2辺が備えられている。
よって、この段階で、下腹部の股部縫合部LP、RPと下腹部の股部脚繰りLZ、RZの長さが定まる。
同時に臀部の股部縫合部LP1、RP1と臀部の股部脚繰りLZ1、RZ1の長さが定まる。
【0107】
上記までの作業で、左股部LLと、左股部LL1および、右股部RRと、右股部RR1の台形状の4辺が完成し、左右パンツL、Rに備わる。
【0108】
これらの作業で定まった下腹部側の股部横幅3L、3Rと脇部5L、5Rの下端を繋ぎ、脚繰り前面部6L、6Rが設定される。同時に1θも備わっている。
(脚繰りについては、後述する。)
【0109】
〈脚繰り〉
本実施形態では、脇部5L、5R下端位置と股部横幅31L、31Rの長さによって、図面中の傾斜角度が、定まるものであるから、脇部に対する夫々の脚繰り角度1、2θの計測は不要である。
【0110】
上述した腰部5L、5Rの下端を基準とし、脚繰りは、下腹部生地側と臀部生地側に設定している。
下腹部生地側は、大腿骨および、股関節の可動域を考慮し、長さを定めるのが好ましい。
また、臀部生地側は、大腿部や臀部の可動域を考慮し、長さを調整するのが好ましい。
【0111】
本実施形態では、脚繰り(大腿部)62L、62Rは、大腿部の可動域を考慮した長さが好ましい。
【0112】
脚繰り(背面部)61L、61Rの長さは、脚繰り(大腿部)62L、62Rと、股部横幅31L、31Rに繋ぐことで定まる。
また、脚繰り(前面部)6L、6Rは、脚繰り(大腿部)62L、62Rと、股部横幅3L、3Rに繋ぐことで定まる。
【0113】
本実施形態では、脚繰り(大腿部)62L、62Rの長さは、必ずしも限定するものではない。この長さは、大腿部の可動域を考慮して設定するものであるが、臀部を覆う生地面積のサイズを調整することもできる。
図12参照。
【0114】
〈製作法〉
本実施形態では、
図1および、
図2で示す左パンツLと、右パンツRを縫合し、下腹部の股部LL、RRと臀部の股部LL1、RR1を縫合することで、外形が整う構成である。
【0115】
股部の縫合は、下腹部の股部LL、RRを内側とし、臀部の股部LL1、RR1を外側に重ね合わせる二重構成である。
【0116】
ウエストラインに取り付ける伸縮性のある紐などは、
図3、4の示した範囲の下腹部ウエストF、臀部ウエストBに縫い付けることも可能である。
【0117】
また、袋縫いにて、伸縮性のある紐を通すことも可能である。
図1、
図2で示す左右ウエストライン1L、1Rの縦幅を広げて、ウエストライン全周の袋縫いを施す。
袋縫いを施した、
図3、4で示している下腹部生地ウエスト8の上方の下腹部ウエストFおよび、臀部生地ウエスト9の上方の臀部ウエストBに紐を通し、下腹部ウエストFおよび、臀部ウエストBの夫々の両端で、結ぶことも可能である。
この場合は、その両端に、カットされた紐を結ぶためのホール(穴)が、2箇所必要となる。
【0118】
〈伸縮性のある紐について〉
伸縮性のある紐には、ゴム紐、平ゴム、織ゴム、網ゴム、ストレッチレース紐などが存在している。(全ての強度は、一定では無い。)
本実施形態では、普通の強度(中位)が好ましい。
また、下腹部ウエストFおよび、臀部ウエストBの範囲は、
図10で示している腹部側および、背部側の腸骨の横幅で、定めるのが好ましい。
但し、腸骨の可動域を考慮することが、最も最適な範囲である。
伸縮性のある紐の下腹部ウエストFは、臀部ウエストBよりも短い範囲である。
【0119】
本実施形態の製作方法を、以下に説明する。
【0120】
図1、2で示している左パンツLと、右パンツRを縫合する。本実施形態である下半身用衣類の正中線となる。
〈下腹部側、臀部側縫合〉
【0121】
図2で示している右パンツRの右臀部ウエストライン11Rおよび、右臀部ライン4Rと、
図1で示している左パンツLの左臀部ウエストライン11Lおよび、左臀部ライン4Lとの縫合。
【0122】
図2で示している右パンツRの右下腹部ライン12Rおよび右下腹部ライン2Rと、
図1で示している左パンツLの左下腹部ライン12Lおよび、
図1の左下腹部ライン2Lとの縫合。
【0123】
前作業の縫合で、
図5と
図9で現す立体図のようになる。
この構成は、
図3、4で示している下腹部生地ウエスト8および、臀部生地ウエスト9の夫々中央部が下方に下がる「V形状」となり、その作用は、腰部への負担を軽減できるように働く。
【0124】
連続して、
図8で示している股部正中線の下腹部側の左股部縦幅LXと下腹部側の右股部縦幅RXを縫合する。
参照図。
図5、9の構成が縫合され、
図8の構成になる。
【0125】
〈股部の縫合〉
図5で現している構成が、股部の縫合によって、
図6で現すように、前述した生地重量の移動ができるようになり、「V形状」のウエストラインも安定する。
【0126】
図1、2で示している台形状の股部を重ね合わせ、下腹部側の左股部LL、下腹部側の右股部RRを内側にし、臀部側の左股部LL1、臀部側の右股部RR1を外側に重ねる。
(
図6で現す形成になる)
【0127】
図9で示している臀部側の左股部横幅31L、臀部側の右股部横幅31Rを外側に重ね、下腹部側の左股部横幅3L、下腹部側の右股部横幅3Rを内側に牽引し、縫合する。
股部31L、31Rと3L、3Rの縫合は、臀部生地20の重量を下方前方へ牽引する作用が働く。
図9と
図3を参照。
【0128】
連続して、二重に重ね合った夫々の端を縫合する。
脚繰り側の下腹部の左股部脚繰りLZと、臀部の左股部脚繰りLZ1の縫合。
脚繰り側の下腹部の右股部脚繰りRZと、臀部の右股部脚繰りRZ1の縫合。
臀部側の下腹部の左股部縫合部LPと、臀部の左股部縫合部LP1の縫合。
臀部側の下腹部の右股部縫合部RPと、臀部の右股部縫合部RP1の縫合。
上記の縫合によって、二重構成の股部が完成する。
図6、8参照。
【0129】
上記作業によって、
図3、4で現している本実施形態の下半身用衣類の外形が完成し、同時に、左右脚繰りが完成する。
図3、4で示している下腹部生地10および、臀部生地20の夫々の下端中央を重ね合わせ股部を縫合する構成は、臀部生地20が下腹部生地10に牽引する作用が働き、生地重量の移動ができるようになる。
【0130】
図3で示している、縫合された下腹部生地10には、上端に下腹部生地ウエスト8が備えており、その範囲は、左脇部5Lと右脇部5Rの範囲内である。
および、
図4で示している臀部生地20と上端に臀部生地ウエスト9が備えており、その範囲は、左脇部5Lと右脇部5Rの範囲内である。
【0131】
本実施形態では、
図6で示している、完成した左脚繰り周囲6L、62L、61Lおよび、右脚繰り周囲6R、62R、61Rは、広がる形状であり、伸縮性のある編物生地のみの構成である。
併せて、
図3、4で示している、ウエストライン脇部30も、伸縮性のある編物生地のみの構成である。
これにより、前述した脇部への負担も軽減する。
【0132】
また、伸縮性のある紐などを採用しない構成は、脚繰りの形状や紐などによってウエストラインの位置が大幅に下方にズレることを軽減する作用が働き、上方から腰部に圧し掛かる負担の軽減にも期待できる。
【0133】
〈伸縮性のある紐などを取り付ける〉
左右パンツの縫合が、完了した後に、
図3、4で示している、下腹部ウエストFと臀部ウエストBに、伸縮性のある紐を取り付ける。
ウエストラインを袋縫いにし、それらの紐を通すことも可能であり、下腹部ウエストFと臀部ウエストBの位置に、縫い付けても構わない。
【0134】
本実施形態では、伸縮性のある紐の強度によって、取付ける紐の長さを考慮し、伸縮性の強度は、中位が好ましい。
【0135】
この構成は、取付ける位置と範囲を定めることで、
図3、4で示しているウエストライン脇部30に負荷が掛からない作用が働き、下腹部ウエストFおよび、臀部ウエストBのみで、ウエストサイズの調整ができるようになり、ぬぎはきも自由になる。
また、
図6で現すように、腰部の凹よりも大きなサイズのウエストライン1L、1Rであるが、着用時のズレ落ちを防ぐことができる。
【0136】
<本発明の実施例>
人体に直接触れる下着などの衣類に、最も相応しい。
【0137】
本発明は、良好な血流維持を考慮し構成されたものであるから、無意識の時間を過ごすリラックスタイム衣類として、活用することが好ましい。
主に、パジャマやスウェットスーツなど。
【0138】
別実施形態で製作したサボパンツを着用して、上述同様に開脚をしてみる。
従来の下半身用衣類の構成で製作された、ズボンなどを着用して、開脚した時に現れる生地の寄れなどがなく、鼠径部や股関節への圧迫感も感じない。
【0139】
また、脚を外側に広げようとしているのに、膝が内側に向くような生地による矯正感も感じることなく、大きく開脚できることを達成できた。
【0140】
これらを踏まえると、ロングスカートなどを製作するときには、大腿部の動きを考慮し、スリットを左右の位置に採用することも好ましい。
【0141】
本発明で製作した衣類を発明者が継続して着用した結果を以下に報告する。
【0142】
《実施例1》
本発明を長期間継続して着用したことで、股関節の狭まりが軽減できている。
【0143】
《実施例2》
本発明を長期間継続して着用することで、胴部のクビレ(ウエストのクビレ)が、本発明を着用する以前よりも上方に位置している。(みぞおちに近い位置である)
【0144】
また、日本の伝統的衣装である「着物(和服)」の帯を締める位置は、みぞおちを覆う胴部の位置である。(女性着物の着付け)
【0145】
この2点について、検証すると、人体の自然位置である胴部のクビレは、みぞおち部位の周囲であることに落ち着く。
【0146】
更に、無意識の状態である赤ちゃんの胴部のクビレについて、観察してみる。
上述、検証に続き、胴部のクビレは、みぞおちの位置であることが確認できる。
【0147】
これらのことから、本発明を長期着用で現れた、胴部のクビレが上方に位置した理由として、上述している「提供する効果」が、達成できたものであることがわかる。
【0148】
本発明の特徴により、腰部に繋がる骨格および、広背筋、臀筋、内筋および、外筋などの筋肉の位置が整い、胴部のクビレが上部に位置したと考えられる。
【0149】
《別実施形態》
(1)本発明は、「V形状」のウエストラインを採用しているので、腰部の動きが多い作業などに好ましい。腰部の動きが激しく、負担の掛かりやすい作業を伴う動作や姿勢などに対応できる。
例えば、トレーニング衣類や作業着などである。
【0150】
(2)本発明の股部の二重構成を一重構成に変え、脚繰りから脚部の長さを調整することで、脚部の丈が長いサボパンツ(全体的に丸い形状)や、脚部の丈が短いショートパンツにも採用できる。
【0151】
生地重量によって、ウエストラインの位置ズレが気になる場合は、下腹部側にウエストの寸法を調整できるアジャスターを採用しても良い。
但し、腸骨の動きを遮らない位置を定めることを勧める。
図10参照。
【0152】
(3)
図12のように、生地全体の面積を減らすデザインも製作可能である。
脇部5L、5Rのサイズを短くして、脚繰り(大腿部)62L、62Rの長さを広く取ることで、可能となる構成である。
注意すべき点として、下腹部側の生地重量が、臀部側の重量よりも重くならないように考慮することを勧める。
例えば、下腹部側の股部を削り、一重構成の股部にするなどである。
【0153】
(4)本発明をスカートに採用する場合は、ショーツの形成の上にスカートを取り付けるなどもできる。その場合は、股部に開閉できる箇所を設置することを勧める。
【0154】
(5)サイズの割合を変更すれば、幼児、子供用衣類や男女問わずの大人用衣類にも対応できる。
【0155】
また、新生児用および、ベビー用の衣類には、活用することも好ましい。
【0156】
何故なら、赤ちゃんの動きは、無意識の状態を現し、人体の自然な動きを表現している。
その自然な動きとは、股関節を閉じ両脚を揃えるのではなく、常に開脚している。
【0157】
赤ちゃんは、無意識の動作で股関節を広げ、その連動で、脚は外側に向き、続いて、膝が曲がっている状態であると受け止められる。
自然体の状態である新生児や赤ちゃんの身体に、従来の下半身用衣類の構成であるベビー用衣類を着用すると、上述したように、人体の自然な動きを遮ることとなる。
【0158】
このような点から、赤ちゃんの頃から与えられる、衣類による影響は、健康面に係る 意味で、とても重要であると考えている。
【0159】
(6) 本発明の構成から、サボパンツを製作する。
本実施形態の二重構成の股部を一重にする。
脚部の長さを足首辺りまで長く構成する。
(
図1で示している 62L、62Rを削除し、6L、6Rおよび、61L、61Rの長さを伸ばす)
本実施形態の左右下腹部側のLLおよび、RRを削除し、脚繰りから脚部の長さを足首の長さまで伸ばす。
縫合する股部の位置から左右の脚部生地を縫合するため、左右夫々の脚部生地の縫合位置は、やや前側になる。
(脚部生地の縫合位置が前側になることは、後側の生地重量および面積が大きいと確認できる)
【符号の説明】
【0160】
8 下腹部生地ウエスト(下腹部生地の範囲内の幅)
9 臀部生地ウエスト(臀部生地の範囲内の幅)
L 左パンツ
1L 左ウエストライン
11L 左臀部ウエストライン (右パンツとの縫合部)
12L 左下腹部ウエストライン (右パンツとの縫合部)
2L 左下腹部ライン (右パンツとの縫合部)
3L 左股部横幅(下腹部)
(下腹部 LL、臀部LL1を重ね合わせ、31Lと縫合)
31L 左股部横幅(臀部)
(下腹部 LL、臀部LL1を重ね合わせ、3Lと縫合)
4L 左臀部ライン (左股部LL1を含む、右パンツとの縫合部)
5L 左脇部 (側面部)
6L 左脚繰り (前面部)
61L 左脚繰り (背面部)
62L 左脚繰り (大腿部)
LL 左股部
LX 左股部縦幅(RXとの縫合部 、左右股部の正中線)
LZ 左股部、脚繰り
LP 左、股部縫合部、臀部
(下腹部 LL、臀部LL1を重ね合わせ、縫合)
R 右パンツ
1R 右ウエストライン
11R 右臀部ウエストライン (左パンツとの縫合部)
12R 右下腹部ウエストライン (左パンツとの縫合部)
2R 右下腹部ライン (左パンツとの縫合部)
3R 右股部横幅(下腹部)
(下腹部RR、臀部RR1を重ね合わせ、31Rと縫合)
31R 右股部横幅(臀部)
(下腹部RR、臀部RR1を重ね合わせ、3Rと縫合)
4R 右臀部ライン (右股部RR1を含む、左パンツとの縫合部)
5R 右脇部 (側面部)
6R 右脚繰り (前面部)
61R 右脚繰り (背面部)
62R 右脚繰り (大腿部)
RR 右股部
RX 右股部縦幅(LXとの縫合部 、左右股部の正中線)
RZ 右股部、脚繰り
RP 右股部縫合部、臀部
(下腹部RR、臀部RRR重ね合わせ、縫合)
α 下腹部ライン傾斜角度
β 臀部ライン傾斜角度
F 下腹部ウエスト(伸縮性のある紐を取付ける範囲 図面中の縦縞)
B 臀部ウエスト(伸縮性のある紐を取付ける範囲 図面中の縦縞)
10 下腹部生地 (5Lから5Rの範囲)
20 臀部生地 (5Lから5Rの範囲)
30 ウエストライン脇部 (紐を取付けない範囲) 縦縞以外
1θ 前面部の脚繰り角度
2θ 背面部の脚繰り角度
【要約】 (修正有)
【課題】腰痛や人体の骨格や筋肉および、血液循環への影響を最小限に止めることを目的とした下半身用衣類の構成を提供する。
【解決手段】正面視で、左右対称の下半身用衣類であって、左脇部5Lおよび、右脇部5Rは、下方に向かい外側に広がる形状であり、臀部生地の面積は、下腹部生地10の面積よりも大きく、前記脇部5L、5Rに対する前面部の脚繰り角度1θは、90度より大きく、背面部の脚繰りは、前記脇部5L、5Rの下端から背部側に継続しており、前記脇部5L、5Rに対する背面部の脚繰り角度は、前記前面部の脚繰り角度1θよりも大きく備える下半身用衣類を製作する。
【選択図】
図3