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特許7636633フェライトコア用粉体及びフェライトコア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】フェライトコア用粉体及びフェライトコア
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/255 20060101AFI20250218BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20250218BHJP
   H01F 17/06 20060101ALI20250218BHJP
   H01F 1/375 20060101ALI20250218BHJP
   H01F 3/08 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
H01F27/255
H01F27/24 E
H01F17/06 F
H01F1/375
H01F3/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024516736
(86)(22)【出願日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2024009751
(87)【国際公開番号】W WO2024195649
(87)【国際公開日】2024-09-26
【審査請求日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2023042679
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596139122
【氏名又は名称】株式会社パワーサポート
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 克史
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-250603(JP,A)
【文献】特開平05-254561(JP,A)
【文献】国際公開第2004/054892(WO,A1)
【文献】特開平05-327265(JP,A)
【文献】特開2000-294974(JP,A)
【文献】特開平04-139797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/255
H01F 27/24
H01F 17/06
H01F 1/375
H01F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライトコア用粉体と、前記フェライトコア用粉体のバインダとなる可撓性を有する樹脂とが、40wt%:60wt%~60wt%:40wt%の割合で含まれる、帯状をしたフェライトコアであって、
前記フェライトコア用粉体は、フェライトと、少なくとも珪素成分を主成分の一つとして含む鉱石の粉砕物とが、85wt%:15wt%~99wt%:1wt%の割合で混合されていて、
貫通孔を有する第1端部と、
付対象に対して巻き付けながら前記貫通孔に通される第2端部と、
記巻付対象に対して巻き付けた状態を保持する保持部を有する胴部と、
を備え、
前記貫通孔は、前記第2端部が複数回通される大きさであるフェライトコア
【請求項2】
前記フェライト及び前記粉砕物は、いずれも一次粒径が10μm以下である、請求項1記載のフェライトコア。
【請求項3】
前記保持部は、いずれかが前記貫通孔の縁部に係止する複数の凸部を有し、
前記各凸部のピッチpは、前記胴部の厚さTに対応する、請求項1記載のフェライトコア。
【請求項4】
前記保持部は、いずれかが前記貫通孔の縁部に係止する複数の凸部を有し、
前記各凸部のピッチpは、前記胴部の厚さTを基準とする、請求項1記載のフェライトコア。
【請求項5】
前記貫通孔は、先端側空洞と一以上の基端側空洞とが相互に隣接しており、
前記保持部は、前記胴部から突出したいずれかが前記貫通孔の縁部に係止する複数の凸部を有し、
前記先端側空洞の長手方向の長さx1は、前記胴部の幅X1に対応しており、
前記基端側空洞の長手方向の長さx2は、前記胴部の幅X1に各側の凸部の総高さ2hを加えた幅X2に対応しており、
前記先端側空洞及び前記基端側空洞のそれぞれの短手方向の長さyは前記胴部の厚さTに対応している、
請求項1記載のフェライトコア。
【請求項6】
記巻付対象に対して巻き付けた後に、テープで覆われる、請求項1記載のフェライトコア。
【請求項7】
前記巻付対象は、電気配線ケーブルである、請求項1記載のフェライトコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライトコア用粉体及びフェライトコアに関し、特に、可撓性を有する樹脂に混合される、フェライトコア用粉体及びフェライトコアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電磁気特性に優れ、しかも電磁導電性能を向上させたフェライトコアが開示されている。このフェライトコアは、フェライト原料を準備する工程と、前記フェライト原料に炭素材料を添加する工程と、前記炭素材料が添加されたフェライト原料を焼成してフェライトコアを製造する工程と、を備えたことを要旨とする、と記載されている。なお、このフェライトコアは、硬性を有する円筒形状をしており、したがって、その内径は一意に決定される定型的なものであると推測される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、フェライトコアのインピーダンスは、磁束が通る実効断面積Aeに比例し、磁束が流れる実効磁路長Leに反比例することが知られている。このため、フェライトコアは、実効断面積Aeが大きくなるように円筒状の外径を大きくするほど、また、実効磁路長Leが小さくなるように円筒状の内径を小さくするほど、効果的にノイズ除去をできるということになる。
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたフェライトコアは、既述のように、硬性を有する円筒形状をしており、その内径は一意に決定される定型的なものであると推測されるので、円筒状の内径を小さくすることは物理的に困難である。
【0005】
そうすると、効果的にノイズ除去をしようとすると、実効断面積Aeが大きくなるように円筒状の外径を大きくすることになろうが、それではフェライトコアが大型化してしまうという難点がある。
【0006】
そこで、本発明は、フェライトコア本体が硬性を有していないフェライトコア及びそのようなフェライトコアに好適なフェライトコア用粉体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
フェライトコア用粉体と、前記フェライトコア用粉体のバインダとなる可撓性を有する樹脂とが、40wt%:60wt%~55wt%:5wt%の割合で含まれるフェライトコアであって、
前記フェライトコア用粉体は、フェライトと、少なくとも珪素成分を主成分の一つとして含む鉱石の粉砕物とが、85wt%:15wt%~99wt%:1wt%の割合で混合されている。
【0008】
前記フェライト及び前記粉砕物は、いずれも一次粒径が10μm以下であるとよい。
【0009】
前記フェライトコア本体は帯状をしており、
貫通孔を有する第1端部と、
前記フェライトコア本体を巻付対象に対して巻き付けながら前記貫通孔に複数回通される第2端部と、
前記フェライトコア本体を巻付対象に対して巻き付けた状態を保持する保持部を有する胴部と、
を備えることもできる。
【0010】
前記保持部は、いずれかが前記貫通孔の縁部に係止する複数の凸部を有し、
前記各凸部のピッチpは、前記胴部の厚さTに対応するとよい。
【0011】
前記保持部は、いずれかが前記貫通孔の縁部に係止する複数の凸部を有し、
前記各凸部のピッチpは、前記胴部の厚さTを基準とするとよい。
【0012】
前記貫通孔は、先端側空洞と一以上の基端側空洞とが相互に隣接しており、
前記保持部は、前記胴部から突出したいずれかが前記貫通孔の縁部に係止する複数の凸部を有し、
前記先端側空洞の長手方向の長さx1は、前記胴部の幅X1に対応しており、
前記基端側空洞の長手方向の長さx2は、前記胴部の幅X1に各側の凸部の総高さ2hを加えた幅X2に対応しており、
前記先端側空洞及び前記基端側空洞のそれぞれの短手方向の長さyは前記胴部の厚さTに対応しているとよい。
【0013】
前記フェライトコア本体は、前記巻付対象に対して巻き付けた後に、テープで覆われてもよい。
【0014】
前記巻付対象は、電気配線ケーブルとすることができる。
【0015】
前記フェライトコア本体は板状をしており、貼付対象に対して貼付した状態で、テープで覆われるものであってもよい。
【0016】
さらに、本発明のフェライトコア用粉体は、
上記フェライトコアに用いられる、
フェライトと、少なくとも珪素成分を主成分の一つとして含む鉱石の粉砕物とが、85wt%:15wt%~99wt%:1wt%の割合で混合されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図において同様の部分には、同一符号を付している。なお、本明細書における、上・下・左・右、表・裏などの表現は、相対的なものであり、絶対的なものではない点に留意されたい。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1のフェライトコア100の説明図である。図1(a)には平面図、図1(b)には左側面図、図1(c)には右側面図、図1(d)には正面図、図1(e)には背面図、図1(f)には底側面図、図1(g)には寸法入りの斜視図、をそれぞれ示している。
【0019】
フェライトコア100本体は、図1(a)~図1(g)に示すように帯状をしている。フェライトコア100は、これらの用途に限定されるものではないが、フェライトの種別に応じた周波数帯のノイズフィルタや電磁波遮蔽体に好適に用いられる。
【0020】
フェライトコア100本体は、フェライトと、少なくとも珪素成分を主成分の一つとして含む鉱石の粉砕物とが、85wt%:15wt%~99wt%:1wt%の割合で混合されたフェライトコア用粉体を含む。
【0021】
フェライトコアがノイズフィルタ等として主流となる以前には、珪素鋼板が利用されていたという背景があるが、珪素鋼板は発熱があるなどの理由で、その利用が限定的であった。とはいえ、珪素成分は、ノイズ除去機能や電磁波遮蔽機能を有しており、フェライトに対して相対的に微量の混合をすることによって、フェライト単体でコアを製造する場合に比してノイズ除去や電磁波遮蔽の性能を向上させることができることを見出した。
【0022】
フェライトコア100本体は、例えば、樹脂の前駆体(例えば、シリコン)に対して、フェライトコア用粉体及び加硫剤などを投入してから混錬機を用いて十分に混錬し、その混錬物をフェライトコア00の原型となる平板の金型に仕込み、プレス成形機にて加圧及び加熱をすることで加硫をして平板を作成し、フェライトコア00に対応する抜型によって当該平板をプレス抜き加工したものを高温排気炉にて再度加硫することによって製造すればよい。
【0023】
フェライトコア用粉体と樹脂の前駆体との割合は、例えば、60wt%:40wt%~40wt%:60wt%とすることができる。そして、フェライトコア100本体は、典型的には、樹脂:フェライト:鉱石は、例えば、50wt%:45wt%:5wt%とすることができる。
【0024】
樹脂は、フェライトコア用粉体のバインダとして機能するものである。フェライトコア100の使用環境に応じて、耐火性、耐油性などを有するものを採用すればよい。樹脂は、これらに限定されるものではないが、例えば、シリコン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などを用いることができる。
【0025】
樹脂は、特段必要な特性などがあるわけではなく特性などは限定的ではないが、所要の可撓性を得るためには硬度30~70(例えば50)の汎用的なものを用いることができる。ただし、塩化ビニール樹脂のような塩化系樹脂は、鉱石のミネラル成分と反応して劣化することがあるため、フェライトコア100の製造に当たって積極的に用いることは好ましくない。
【0026】
フェライトは、軟磁性を示すソフトフェライトであればよい。したがって、フェライトは、磁性の種別(異方性/等方性)も不問であるし、結晶構造も不問である。強いていえば、本実施形態において用いるフェライトは、ストロンチウムフェライト、バリウムフェライト等の六方晶フェライトが好ましいが、マンガン/ニッケル亜鉛フェライト等のスピネルフェライト、イットリウム鉄ガーネットフェライト等のガーネットフェライトも用いることができる。
【0027】
また、フェライトは、平均一次粒径(レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、日機装社製、Microtrack)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径)が10μm以下である。
【0028】
鉱石は、既述のように、少なくとも珪素成分を主成分の一つとして含んでいるが、本実施形態で用いたものは、その他にも、カルシウム成分、マグネシウム成分、アルミニウム成分、鉄成分などを含んでいた。なお、鉱石の平均一次粒径も、上記測定方法で計測して10μm以下とした。
【0029】
表1には、本実施形態のフェライトコア用粉体の蛍光X線分析法による化学分析結果を示している。表1には、1wt%を下回る成分は記載していないが、そのようなものとしては、例えば、ナトリウム、チタン、マンガン、リンなどがある。
【0030】
【表1】
【0031】
フェライトコア100は、以下説明する、第1端部10と、第2端部20と、胴部30と、に大別される構成としている。フェライトコア100は、既述の製造方法などによって一体成形されている。
【0032】
第1端部10は、貫通孔12を有しており、そのため第2端部20及び胴部30よりも幅広(例えば約1.5倍~約2倍)をしている。貫通孔12は、その長手方向の長さxが胴部30の幅Xに対応し(例えば、0.9X≦x≦1.1X、好ましくは、0.95X≦x≦1.05X)、その短手方向の長さyが胴部30の厚さTの例えば2倍に対応している(例えば、0.9T≦y/2≦1.1T、好ましくは0.95T≦y/2≦1.05T)。
【0033】
なお、貫通孔12は、図1に示す形態のものに限定されるものではなく、例えば、四隅の角部は丸みを帯びた形状とすることもできる。こうすると、角部に対して外力が加わることで、フェライトコア100が裂けてしまうといったことを回避することができる。また、後述する図6に示すような形態の貫通孔12とすることもでき、係る場合にも角部を有しない丸みを帯びた形状とすることができる。
【0034】
ちなみに、フェライトコア100の各部の具体的な寸法例については、図6に示すものを対象として後述するが、本明細書における寸法の説明での「対応」という意味合いは、概ね、各数値の±15%程度まで変更することが可能であるものとする。
【0035】
第2端部20は、電気配線ケーブルなどの図示しない巻付対象に対して、フェライトコア100本体を巻き付けながら、貫通孔12に複数回(例えば2回)通される部分である。第2端部20は、貫通孔12に通しやすいように角部を面取りしているが、第2端部20自体を例えば半円状にしてもよい。
【0036】
胴部30は、第1端部10と第2端部20との間に位置する部分である。胴部30は、フェライトコア100本体を巻付対象に対して巻き付けた状態を保持する保持部40を有する。本実施形態では、保持部40は、胴部30の表面から突出した複数の凸部42から構成されている。各凸部42は、短手方向の断面が略直角三角形状としており、相互に隣接する凸部42が相対的に小さな隙間(例えば、胴部30の厚さTに対応する隙間)を空けて配列されている。
【0037】
各凸部42は、それらのうちいずれか1つが貫通孔12の縁部に係止することで、フェライトコア100本体を巻付対象に対して巻き付けた状態を保持する。各凸部42のピッチp及び高さhは、胴部30の厚さTを踏まえて決定すればよい。
【0038】
フェライトコア100は、巻付対象である例えば電気配線ケーブルに巻き付けることによって、フェライトコア100本体の概形は円筒状となる。フェライトコア100のインピーダンスの観点からは、既述のように、円筒状の外径を大きくするほど、また、円筒状の内径を小さくするほどよい。本実施形態では、フェライトコア100が、可撓性を有する帯状であるから、電気配線ケーブル等の巻付対象に対して自由度をもって巻き付けることが可能である。
【0039】
したがって、フェライトコア100と巻付対象との隙間が極力生じない態様で巻付対象に巻き付ければ円筒状の内径を小さくすることができるし、巻付対象に対して2重以上に巻き付ければ円筒状の外径は大きくすることができる。このため、フェライトコア100は、効果的にノイズ除去をすることができる。
【0040】
(実施形態2)
図2は、本発明の実施形態2のフェライトコア100の説明図であり、図2(a)~図2(g)がそれぞれ図1(a)~図1(g)に対応している。図2に示すものは、胴部30の表面のみならず裏面にも保持部40を形成している点が、図1に示したものとは異なる。
【0041】
図2に示す構成とすると、フェライトコア100の1巻目の表面の凸部42と2巻目の裏面の凸部42とが凹凸を埋める態様で巻き付けることも可能となり、円筒状となったときのフェライトコア100を、高密度のものとすることができる。
【0042】
(実施形態3)
図3は、本発明の実施形態3のフェライトコア100の説明図であり、図3(a)~図3(g)がそれぞれ図1(a)~図1(g)に対応している。図3に示すものは、相互に隣接する凸部42が相対的に大きな隙間(例えば、胴部30の厚さTの2倍に対応する隙間)を空けて配列された保持部40としている点が、図1に示したものとは異なる。
【0043】
図3に示す保持部40を適用した場合には、相互に隣接する凸部42間の大きな隙間(いわば胴部30自体の表面)でも、貫通孔12の縁部を受けることになるので、凸部42の高さを抑えることに寄与する。この場合にも、図2に示したフェライトコア100と同じく、円筒状となったときのフェライトコア100を高密度のものとすることができる。
【0044】
なお、図3に示すフェライトコア100は、各凸部42の両端の位置が、胴部30の端面よりも内側にあるが(各凸部42の長手方向の長さは例えば胴部30の端面間の80%~90%とすることができる。)、図1に示したように、各凸部42の両端の位置が胴部30の端面まで延びた位置としてもよい。反対に、図1及び図2に示したフェライトコア100の各凸部42の両端位置を図3に示すようにしてもよい。
【0045】
(実施形態4)
図4は、本発明の実施形態4のフェライトコア100の説明図であり、図4(a)~図4(g)がそれぞれ図1(a)~図1(g)に対応している。図4に示すフェライトコア100は、図2及び図3に示した技術思想をハイブリッドしたものである。
【0046】
すなわち、図4に示すフェライトコア100は、胴部30の表面及び裏面の双方に、図3に示した形態の保持部40を形成している。したがって、図4に示すフェライトコア100は、これまで説明したフェライトコア100の中では、円筒状となったときに最も高密度となる。
【0047】
加えて、図4に示すフェライトコア100は、相互に隣接する凸部42が相対的に大きな隙間を空けて配列されているから、フェライトコア100の1巻目の表面の凸部42と2巻目の裏面の凸部42とが凹凸を埋める態様で巻き付けた場合に、凹凸が噛み合って滑りにくくなる。このような効果は図2に示したフェライトコア100でも得られるが、図4に示すフェライトコア100の方がより形状的に強固な噛み合わせが実現できる。
【0048】
(実施形態5)
図5は、本発明の実施形態5のフェライトコア100の説明図であり、図5(a)~図5(g)がそれぞれ図1(a)~図1(g)に対応している。図5に示すものは、各凸部42の短手方向の断面形状が略半円状として、各凸部42間を相対的に大きな隙間を空けた保持部40としている点が、図1に示したものとは異なる。
【0049】
フェライトコア100本体に採用する樹脂として粘性の高いものを採用する場合、製造時における金型内での流動性が十分でなく、凸部42の先端部分までに回り込まない場合がある。図5に示すフェライトコア100は、このことに鑑みて、各凸部42の形状を変更して、製品のばらつきが生じることを回避している。
【0050】
なお、図2図4に示したフェライトコア100に対して、図5に示すような各凸部42の短手方向の断面形状が略半円状である保持部40を適用することもできる。
【0051】
(実施形態6)
図6は、本発明の実施形態6のフェライトコア100の説明図であり、図6(a)~図6(g)がそれぞれ図1(a)~図1(g)に対応している。図6に示すものは、胴部30の表面に代えて両側面に保持部40を形成している点、及び、これに付帯して貫通孔12の形状を工夫した点が、図1に示したものとは異なる。
【0052】
図6に示す貫通孔12は、先端側空洞12aと基端側空洞12bとが相互に隣接した凸形状をしている。先端側空洞12aの長手方向の長さx1は、胴部13の幅X1に対応している。基端側空洞12bの長手方向の長さx2は、胴部13の幅X1に各側の凸部42の総高さ2hを加えた幅X2に対応している。なお、先端側空洞12a及び基端側空洞12bのそれぞれの短手方向の長さyは、胴部13の厚さTに対応している。
【0053】
このような寸法とすることで、フェライトコア100本体を巻付対象に対して巻き付けながら貫通孔12に第2端部20を複数回通す場合、1回目には、第2端部20及び胴部30が基端側空洞12bを無理なく通る。また、2回目には、第2端部20が先端側空洞12aを無理なく通る一方で、胴部30は凸部42が先端側空洞12aの短辺を若干押し広げながら通り、最終的には凸部42が先端側空洞12aの短辺の縁部で係止することになる。
【0054】
なお、図6に示す貫通孔12は、フェライトコア100本体を巻付対象に対して巻き付けながら、第2端部20が2回通される例を示しているが、仮に、第2端部20が3回通されるように設計する場合には、基端側空洞12bの短手方向の長さyを胴部13の厚さTの2倍に対応させればよい。
【0055】
図6に示すフェライトコア100は、相対的に凸部42の体積を減らすことができるので、フェライトコア100本体を軽量にすることができ、かつ、その分材料費を抑えることもできる。
【0056】
なお、図6に示すフェライトコア100の実際の寸法を例示すると、以下のとおりとなる。
・フェライトコア100本体は、全長が110mm、全幅(最大幅となる第1端部10の幅)が35mm、厚さTが2mm、
・第1端部10は、全長が25mm、その端を基準として、先端側空洞12aまでの長さが9.8mm、胴部30に向けて細くなる位置までの長さが20mm、長さx1が20mm、長さx2が24mm、yが2.3mm、全幅が35mm、端部の各角部が6-R5、
・第2端部20は、長さ(その端から1つ目の凸部42の傾斜が始まる位置までの長さ)が8mm、幅が20mm、端幅が18mm、端部の各角部が2-R3、
・胴部30は、長さが85mm、幅(長さX1)が20mm、厚さTが2mm、
・保持部40は、凸部42では高さhが2mm、長さ(斜面長)が4mm、ピッチpが6.25mm、
である。
【0057】
付言すると、凸部42のピッチpの6.25mmは、フェライトコア100を巻き付けて使用する際に、1巻目と2巻目とに隙間が理論的に生じなければ、胴部30の厚さTが2mmであることを踏まえて、ピッチpは概ね2πTである約12.56mmを基準として、当該隙間が生じないように細かい係止を可能とするために、例えばその半分である約6.28mmに対応するものとしている。
【0058】
他の実施形態のフェライトコア100の寸法も、ここに例示した寸法と同様とすることができる。もっとも、フェライトコア100の寸法は、巻付対象の太細によって異なるから、上記の寸本は単なる一例でしかないことに留意されたい。
【0059】
図7は、図6に示すフェライトコア100の使用例を示す図である。図7には、電気配線ケーブル200に対して、フェライトコア100本体を巻き付けながら貫通孔12に第2端部20を2回通し、保持部40によって保持した状態を示している。
【0060】
なお、フェライトコア100は、電気配線ケーブル200のように線状の巻付対象に巻き付けるのみならず、ブレーカ自体やそれを内部に有する分電盤に貼付することによって、ノイズを除去することもできる。係る場合には、フェライトコア100を板状として、それを分電盤等の所定位置に対し、テープで貼付しても効果がある。
【0061】
ちなみに、図7に示すフェライトコア100の外周を覆うように、テープを巻き付けると、電気配線ケーブル200に巻き付けられたフェライトコア100の離脱防止や緩み防止に寄与するため好ましい。
【0062】
当該テープは、例えばアルミニウムなどのように、ノイズを含む電磁波を遮蔽する機能があるとよい。テープが電磁波遮蔽機能を有すると、電気配線ケーブル200から生じるフェライトコア100に対してノイズを向かわせることが可能となり、ノイズ除去効果が高まるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明の実施形態1のフェライトコア100の説明図である。
図2】本発明の実施形態2のフェライトコア100の説明図である。
図3】本発明の実施形態3のフェライトコア100の説明図である。
図4】本発明の実施形態4のフェライトコア100の説明図である。
図5】本発明の実施形態5のフェライトコア100の説明図である。
図6】本発明の実施形態6のフェライトコア100の説明図である。
図7図6に示すフェライトコア100の使用例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10 第1端部
12 貫通孔
12a 先端側空洞
12b 基端側空洞
20 第2端部
30 胴部
40 保持部
42 凸部
100 フェライトコア
200 電気配線ケーブル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7