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  • 特許-誘導的に電気的に励磁される同期機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-17
(45)【発行日】2025-02-26
(54)【発明の名称】誘導的に電気的に励磁される同期機
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/03 20160101AFI20250218BHJP
【FI】
H02P25/03
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024526480
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2022078934
(87)【国際公開番号】W WO2023078667
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】102021212547.6
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレル トルステン
(72)【発明者】
【氏名】コズロウスキー ペーター
(72)【発明者】
【氏名】トパロフ ペンヨ
(72)【発明者】
【氏名】ズィマーシート フィリップ
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-030009(JP,A)
【文献】特開昭54-126919(JP,A)
【文献】特開平11-215900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導的に電気的に励磁される同期機(1)であって、
前記同期機は、回転子磁界を発生する少なくとも1つの回転子コイル(5)を有する回転子(2)を備え、
前記同期機は、固定子(3)を備え、前記固定子(3)には、前記回転子(2)が回転軸(8)の周りに回転可能に取り付けられ、前記固定子(3)は、固定子磁界を発生する少なくとも1つの固定子コイル(9)を有し、
前記同期機は、電気エネルギーを前記回転子コイル(5)のそれぞれに誘導的に伝送するための回転変圧器(25)を備え、前記回転変圧器(25)は、少なくとも1つの、固定子に固定された変圧器1次コイル(10)及び少なくとも1つの、回転子に固定された
変圧器2次コイル(6)を有し、前記変圧器1次コイル(10)のそれぞれは、前記変圧器2次コイル(6)のそれぞれに誘導的に電気エネルギーを伝送する機能を有し、前記変圧器2次コイル(6)のそれぞれは、前記回転子コイル(5)のそれぞれに電気エネルギーを供給する機能を有し、
前記同期機は、前記同期機(1)を電動機として及び/又は発電機として動作させるように、前記固定子コイル(9)のそれぞれと、前記変圧器1次コイル(10)のそれぞれとに結合された同期機制御器(4)を備え、
前記同期機(1)は、前記同期機(1)の故障時に前記回転子コイル(5)の減磁を誘導的に実行するために、前記固定子(3)に配置された少なくとも1つのダイナモ巻線(16,16’)を有する減磁回路(15,15’)をさらに有し、
前記減磁回路(15,15’)は、前記減磁回路(15,15’)を作動させたり停止させたりするための、少なくとも1つのスイッチング手段(17,17’)を有し、
前記減磁回路(15,15’)は、前記スイッチング手段(17,17’)のそれぞれを介して前記ダイナモ巻線(16,16’)のそれぞれに接続された、少なくとも1つの電気エネルギー負荷(18,18’)及び/又は少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵器(19,19’)を有し、前記減磁回路(15,15’)が作動する場合に、前記ダイナモ巻線(16,16’)のそれぞれに誘導によって供給される電力は、前記電気エネルギー負荷(18,18’)のそれぞれ及び/又は前記電気エネルギー貯蔵器(19,19’)のそれぞれに供給され、
前記同期機制御器(4)は、前記スイッチング手段(17,17’)のそれぞれに結合され、前記同期機制御器(4)は、
前記同期機(1)の通常運転時には、前記減磁回路(15,15’)を停止させるように、前記同期機制御器(4)が前記スイッチング手段(17,17’)を制御し、
前記同期機(1)の故障時には、前記減磁回路(15,15’)を作動させるように、前記同期機制御器(4)が前記スイッチング手段(17,17’)を制御するように
構成され、
前記電気エネルギー負荷(18,18’)のそれぞれ及び/又は前記電気エネルギー貯蔵器(19,19’)のそれぞれは、前記固定子(3)の外側又は前記固定子(3)の外部に配置されている、
同期機(1)。
【請求項2】
前記減磁回路(15,15’)は、前記固定子(3)の円周方向(24)に分散して配置された前記ダイナモ巻線(16,16’)を複数個、有する、
請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項3】
前記減磁回路(15,15’)は、前記固定子(3)の円周方向(24)に分散して配置された前記ダイナモ巻線(16,16’)を複数個、有し、前記ダイナモ巻線(16,16’)は、前記固定子コイル(9)のそれぞれについて1つずつ設けられている、
請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項4】
前記減磁回路(15,15’)は、前記固定子コイル(9)のそれぞれに1つずつ配置された、前記ダイナモ巻線(16,16’)を有する、
請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項5】
前記ダイナモ巻線(16)のそれぞれは、前記固定子コイル(9)のそれぞれの半径方向内側に配置されている、
請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項6】
前記ダイナモ巻線(16’)のそれぞれは、前記固定子コイル(9)のそれぞれの半径方向外側に配置されている、
請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項7】
前記同期機(1)は、3相構成として設計され、
前記固定子コイル(9)のうちの少なくとも1つがそれぞれの相(U,V,W)に対応する、
請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項8】
前記同期機(1)は、単相構成又は多相構成として設計され、
前記固定子コイル(9)の複数個からなるコイルグループ、又は互いに反対側に位置する前記固定子コイル(9)の2つからなるコイルペアは、それぞれの相(U,V,W)に対応する、
請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項9】
前記電気エネルギー負荷(18,18’)のそれぞれは、電気エネルギーを熱に変換する少なくとも1つの熱電素子を有する、
請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項10】
前記同期機制御器(4)は、前記同期機(1)の故障時には、前記固定子コイル(9)のそれぞれへの、及び/又は前記変圧器1次コイル(10)のそれぞれへの電力の供給を停止する、
請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項11】
前記同期機制御器(4)は、前記固定子コイル(9)のそれぞれへの、及び/又は前記変圧器1次コイル(10)のそれぞれへの電力の供給を停止する時には、
前記固定子コイル(9)のそれぞれ及び/又は前記変圧器1次コイル(10)のそれぞれを短絡する、
請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項12】
前記固定子(3)は、前記ダイナモ巻線(16,16’)が割り当てられている前記固定子コイル(9)を複数個、有し、
前記電気エネルギー負荷(18,18’)のそれぞれ及び/又は前記電気エネルギー貯蔵器(19,19’)のそれぞれは、前記ダイナモ巻線(16,16’)のうちの一部又は全てに共通して割り当てられている、
請求項1に記載の同期機(1)。
【請求項13】
前記固定子(3)は、前記ダイナモ巻線(16,16’)が割り当てられている前記固定子コイル(9)を複数個、有し、
前記スイッチング手段(17,17’)は、前記ダイナモ巻線(16,16’)のうちの一部又は全てに共通して割り当てられている、
請求項1に記載の同期機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導的に電気的に励磁される同期機に関する。
【背景技術】
【0002】
同期機は、回転電気機器であり、ここで回転子は、動作中に、固定子の回転磁界に同期して回転、つまり動作する。同期機は、電動機として又は発電機として一般に運転され得る。電気的に励磁される、つまり他励式同期機の場合、磁界は、回転子において付加的に電気的に発生させられる。回転子側の磁界を発生させるためには、電力、特に直流が供給されなければならないので、少なくとも1つの回転子コイルが他励式同期機によって用いられる。誘導的に電気的に励磁される同期機の場合、それぞれの回転子コイルへの電力の供給は、ブラシレスで行われ、つまり誘導によって行われ得る。よって、誘導的に電気的に励磁される同期機は、ブラシレス他励式電気同期機に対応する。
【0003】
例えばDE 10 2016 207 392 A1から従来の誘導的に電気的に励磁される同期機が知られている。この同期機は、回転子磁界を発生する少なくとも1つの回転子コイルを有する回転子を備える。この同期機は、加えて固定子を有し、回転子は、回転軸の周りに回転可能なように固定子に取り付けられており、固定子は、固定子磁界を発生する少なくとも1つの固定子コイルを有する。この同期機には、加えて回転変圧器が設けられており、これにより電力が少なくとも1つの回転子コイルに誘導的に伝送される。この目的のために、回転変圧器は、固定子に固定された変圧器1次コイルと、回転子に固定された変圧器2次コイルとを有する。変圧器2次コイルは、好ましくは整流器を介して、それぞれの回転子コイルに電気的に接続されている。さらに同期機には、同期機制御器が設けられており、この同期機制御器は、同期機を電動機として及び/又は発電機として運転させるために、それぞれの固定子コイル及びそれぞれの変圧器1次コイルに結合されている。
【0004】
機器が故障の場合、これは、同期機の部品のうちの1つ、例えば回転子及び固定子のコイル内の、又はインバータを含む機器の制御器の電子回路内の故障の場合でも起こり得るが、その場合、同期機はオフされ、つまり停止されなければならない。これは例えば、それぞれの変圧器1次コイルへの電力供給だけでなく、それぞれの固定子コイルへの電力供給を終えることによって実現できる。固定子の中で回転子が急に阻止されることを防止したり、又はコイル中の臨界超過の電流及び電圧を防止したりするためには、機器が故障の場合には、それぞれの回転子コイルを減磁する必要がある。
【0005】
上述の既知のDE 10 2016 207 392 A1の場合は、スイッチング素子、制御回路、及び負荷要素を備える回転子側にブレーキ回路を提供することが提案されている。機器の故障、例えば固定子コイルの動作停止によって、電圧が所定の閾値を超えるとすぐに、スイッチング素子は開放になり、負荷要素を介して電気エネルギーを放散し、ここで電気エネルギーは、熱に変換される。この種の回転子側ブレーキ回路の反応時間は、比較的大きいが、それは、電圧が閾値まで上昇することが最初に起きなければならないからである。高性能同期機は、そうでなくとも既に高温のストレスに曝されている結果、負荷要素に追加で発生される熱は、放散され得ないか、又は放散されるとしても非効率にしか放散されないので、ブレーキ回路の電子部品の、よって同期機の回転子の熱的過負荷が結果として起こり得る。
【0006】
別の誘導的に電気的に励磁される同期機は、例えばWO 2012/123847 A1から知られている。
【0007】
電気的に励磁される同期機は、EP 3 672 065 A1から知られており、この同期機は、2つの独立した固定子コイルを有し、これらは、回転する固定子磁界を発生するために別個に動作させられ得る。通常動作の間、両方の固定子コイルは、2つの固定子磁界が同じ回転方向に回転するように制御される。放散動作の時は、対照的に、2つの固定子コイルが動作し、2つの固定子磁界は逆方向に回転し、互いが打ち消し合う。このようにして同期機の運動エネルギー及び電気エネルギーは、低減され、インバータに電流が還流することもない。よって永久磁石は、過剰な電磁界による減磁から有利に保護され得る。
【0008】
WO 2019/157626 A1は、2つの固定子コイルを備える風力発電所のダイナモを開示するが、これらコイルは、通常動作の間は、永久磁石によって発生させられた回転する磁界を電気エネルギーに変換する。1つの固定子コイルで故障が起きた場合は、もう一方の固定子コイルは、これが磁束を発生するように制御され、この磁束が故障した固定子コイルの磁束と相互作用をする。これにより強い電磁界が防止され、永久磁石の減磁に結びつき得る。
【0009】
多相電気機器は、CN 112 928 956 Aから知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、誘導的に電気的に励磁される同期機についての改善された又は少なくとも別の実施形態を特定する問題に対応し、この場合、特に、それぞれの回転子コイルの減磁が迅速に実行され得て、機器故障の場合も過熱しない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この問題は、独立請求項の主題による本発明によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の手段である。
【0012】
本発明は、機器の障害の場合にそれぞれの回転子コイルの減磁を誘導的に実行するという大まかな考えに基づいている。この目的のために、少なくとも1つのダイナモ巻線が固定子に配置され、このダイナモ巻線は、それぞれの固定子コイルに加えて、及びそれぞれの変圧器1次コイルに加えて固定子に提供される。よって回転子の回転子磁界は、電気エネルギーのかたちで回転子から誘導的に放散され得る。よって例えば、少なくとも1つの回転子コイルの減磁によって放散されたエネルギーは、回転子の外部への熱として放散したり、それを貯蔵したりすることが可能である。よって回転子の電子部品へのさらなる熱入力が回避され得る。この機能は、モーター制御器によって、同期機をオフにすることとほぼ同時に、系統的に導入することがさらに可能である。その結果、この減磁は、より迅速に応答でき、全体的な減磁もより迅速に実行できる。換言すれば、本発明によって同期機制御器は、同期機の機器故障の場合に、それぞれの回転子コイルを減磁するように設計されている。
【0013】
詳細には、本発明は、同期機に固定子側減磁回路を設けることを提案し、これは、少なくとも1つのダイナモ巻線を固定子に有する。よってそれぞれのダイナモ巻線は、それぞれの固定子コイルに加えて、かつそれぞれの変圧器1次コイルに加えて、固定子に存在する。それぞれのダイナモ巻線は、回転子磁界が電圧をそれぞれのダイナモ巻線に誘起し、それによって回転子が究極的に減磁され得るように、設計され構成される。好適には、いくつかのダイナモ巻線が提供され得て、これらは、円周方向において、特に均等に、分散されるように固定子に配置される。よってそれぞれのダイナモ巻線は、固定子の半径方向に内側に、又は半径方向に外側に配置され得る。円周方向は、回転軸の周りを走る向きである。回転軸は、長手方向を規定し、これは、回転軸と平行に走る。半径方向は、回転軸と垂直である。
【0014】
本発明によれば、それぞれの負荷及び/又はそれぞれの貯蔵器は、固定子の外側又は固定子の外部にそれぞれ配置されている。同期機の過熱は、これにより効果的に防止され得る。
【0015】
この同期機は、自動車のための走行用電動機又は走行モーターとして好ましくは設計されており、これは具体的には100kW-240kWの電力、好ましくは120kW-160kWの電力、特に好ましくは約140kWの電力を消費し得る。
【0016】
それぞれのダイナモ巻線は、それぞれの固定子コイルについて特に提供され得て、これらは、円周方向において、特に均等に、分散されるように固定子に配置される。よって、それぞれの固定子コイルについて提供されるそれぞれのダイナモ巻線であって、それがそれぞれの固定子コイルに配置される場合、実施形態は特に好適である。そしてそれぞれのダイナモ巻線は、エネルギー伝送、具体的にはそれぞれの固定子巻線へのエネルギー伝送が回避されるべき場所に正確に配置される。よって1,2,3又はn個の固定子コイルの場合、1,2,3又はn個のダイナモ巻線が提供される。よってダイナモ巻線の個数は、固定子コイルの個数に対応する。
【0017】
減磁回路は、少なくとも1つの電気エネルギー負荷が、及び/又は少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵器がさらに設けられている。ここで提案される減磁回路は、減磁回路又はそれぞれのダイナモ巻線をそれぞれ作動させたり停止させたりするための少なくとも1つのスイッチング手段がさらに設けられている。この文脈では、それぞれのダイナモ巻線を「作動させること(Aktivieren)」とは、それぞれのダイナモ巻線をそれぞれの負荷又は貯蔵器にそれぞれ接続する回路が閉じられ、それによってそこに電流が流れるようにすることを意味し、一方、それぞれのダイナモ巻線を「停止させること(Deaktivieren)」とは、それぞれのダイナモ巻線をそれぞれの負荷又は貯蔵器にそれぞれ接続する回路が開かれ、それによってそこに電流が流れないようにすることを意味する。この点で、これは、減磁回路を作動させたり、停止させたりするよう設計されているスイッチング手段と等価である。減磁回路の中では、それぞれの負荷又はそれぞれの貯蔵器は、それぞれのスイッチング手段を介してそれぞれのダイナモ巻線に接続されており、それにより、作動させられたそれぞれのダイナモ巻線を介して誘導によって減磁回路に供給される電気エネルギーがそれぞれの負荷又はそれぞれの貯蔵器にそれぞれ供給される。よって作動させられたダイナモ巻線の場合、誘導によってそこに供給された電気エネルギーは、それぞれの負荷又は貯蔵器でそれぞれ放散され得る。モーター制御器は、それぞれのスイッチング手段に結合され、同期機の通常運転の間は、それがそれぞれのスイッチング手段を制御することによって減磁回路又はそれぞれのダイナモ巻線をそれぞれ停止させ、一方で、同期機の故障の場合は、それがそれぞれのスイッチング手段を制御することによって減磁回路又はそれぞれのダイナモ巻線をそれぞれ作動させる。よって同期機の故障が発生する時、同期機制御器は、例えば、電流供給を止めることによって、それぞれの固定子コイル及び/又はそれぞれの変圧器1次コイルを停止させ、同時に、それぞれのダイナモ巻線を作動させることによって、故障の場合には、減磁回路が即時にオンになり、回転子からエネルギーを放散させることができる。
【0018】
固定子は、ふつう固定子巻線を数個、有するので、ダイナモ巻線も数個、提供される。ダイナモ巻線は、好適には、互いに減磁回路内で接続されるので、それらは、それぞれの負荷又はそれぞれの貯蔵器に電気エネルギーをそれぞれ共同して供給できる。このことは、減磁回路の構成を簡略化する。
【0019】
それぞれのダイナモ巻線について、別個のスイッチング手段がふつう提供され得る。同様に、1つのスイッチング手段が複数のダイナモ巻線に割り当てられてもよい。好適には、共通のスイッチング手段が全てのダイナモ巻線について提供され得る。
【0020】
有利な実施形態においては、それぞれのダイナモ巻線は、それぞれの固定子コイルの半径方向の内側に配置され得る。半径方向は、回転軸に直角に走る。それぞれのダイナモ巻線がそれぞれの固定子コイルの半径方向の内側に配置されるので、それぞれのダイナモ巻線は、半径方向に固定子及び回転子の間に配置され、回転子磁界に直接に曝される。よってそれぞれのダイナモ巻線に対する誘導は、特に効率的になる。
【0021】
他の実施形態においては、それぞれのダイナモ巻線がそれぞれの固定子コイルの半径方向の外側に配置されるようにしてもよい。よってそれぞれのダイナモ巻線は、固定子の外側に配置されることによって、それぞれのダイナモ巻線からそれぞれの負荷又は貯蔵器への電気エネルギーの放散を簡略化できる。
【0022】
他の有利な実施形態においては、同期機は、多相構成で設計され得て、特に3相構成で設計され得て、ここで少なくとも1つの固定子コイルがそれぞれの相に割り当てられる。したがって同期機は、いくつかの固定子コイルを有する。その結果、減磁回路は、いくつかのダイナモ巻線を有し、具体的にはそれぞれの固定子コイルについて1つのダイナモ巻線を油有する。
【0023】
他の実施形態においては、同期機は、単相構成又は多相構成で設計され得て、ここで2以上の固定子コイルを備える1つのコイルグループがそれぞれの相に割り当てられる。同じ相のちょうど2つの固定子コイルがコイルグループを形成する、特別な場合においては、このコイルグループは、コイルペアを形成し、この場合、この2つの対応する固定子コイルは、互いに直径方向で反対側に位置するように、それは特に構成され得る。1つのダイナモ巻線は、それぞれの固定子コイルにそれぞれ割り当てられる。よって2つのダイナモ巻線は、それぞれのコイルペアに割り当てられ、具体的には1つのダイナモ巻線がコイルペアのそれぞれの固定子コイルについて割り当てられる。
【0024】
好適には、2つの上述の実施形態は、組み合わせられ得て、その結果、同期機は、多相構成で設計され、好ましくは3相構成であり、ここで直径方向で互いに反対側に位置する2つの固定子コイルのうちの少なくとも1つがそれぞれの相に割り当てられる。ここで、固定子コイルの個数は、ダイナモ巻線の個数に対応する。したがって例えば、3相同期機は、合計6個の固定子コイルを備える3個のコイルペアを有し、この同期機は、6個のダイナモ巻線を有する。
【0025】
の実施形態においては、それぞれの負荷は、熱電素子であり得て、これは、電気エネルギーを熱に変換する。例えばそれぞれの負荷は、少なくとも1つの電気的負荷要素を有し得る。好適には、それぞれの負荷は、この種の、いくつかの負荷要素を有する。この種の負荷要素は、例えば、電気抵抗器、サプレッサーダイオードつまりツェナーダイオードであり得る。
【0026】
好ましい実施形態においては、同期機制御器は、機器故障の場合には、それぞれの固定子コイル及び/又はそれぞれの変圧器1次コイルへの電気エネルギーの供給を停止することができる。よって同期機をオフにするために、固定子側コイルへの電気エネルギーの供給がほぼオフにされる。
【0027】
故障時に迅速に固定子磁界を低減することができるようにするためには、有利な実施形態によれば、同期機制御器は、それぞれの固定子コイルへの電力の供給を停止するために、それぞれの固定子コイルを短絡するように構成され得る。そのような固定子コイル短絡によってエネルギー的に中立な状態であると、固定子磁界は、迅速に減少する。オプションとして、同期機制御器は、それぞれの変圧器1次コイルへの電力の供給を停止するために、それぞれの変圧器1次コイルも短絡し得る。
【0028】
本発明のさらなる重要な特徴及び優位性は、従属請求項、図面、図面に基づく対応する図面の説明から明らかになろう。
【0029】
上述の特徴及び後述の特徴は、それぞれ特定された組合せにおいてだけしか用いられないものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組合せでも、又は単独でも用いられ得ることはいうまでもない。別個に特定される、例えば手段、装置、又は組立品のような、上述の、及び以下に具体的に述べられるべき、より上位のユニットの要素部品は、図面において異なるように図示されていても、このユニットの別個の要素部品又は要素を形成し得て、このユニットの統合された領域又は部分であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の好ましい例示的実施形態は、図面に示され、以下の説明で詳細に記載され、ここで同一の参照番号は、同一の又は類似の又は機能的に同一の要素を示す。
図1】唯一の図1は、誘導的に電気的に励磁される同期機の高度に簡略化された回路図的な概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1によれば、誘導的に電気的に励磁される同期機1は、回転子2、固定子3、及び同期機制御器4を備える。回転子2は、回転子磁界を生成するための少なくとも1つの回転子コイル5を有する。加えて回転子2は、回転子コイル5に電気エネルギーを供給するための少なくとも1つの変圧器2次コイル6を有する。この目的のために、加えて回転子3は、整流器7が設けられ得て、この整流器7は、変圧器2次コイル6から来る交流を直流に変換し、この直流を回転子コイル5に供給する。回転子2は、回転の軸8の周りに回転可能なように固定子3に取り付けられている。示されている例では、回転子2は、内部回転子として構成されている。しかし外部回転子として構成される回転子2を備える実施形態も一般的に想定可能である。
【0032】
固定子3は、固定子磁界を発生させるための少なくとも1つの固定子コイル9を有する。加えて固定子3は、電気エネルギーをそれぞれの変圧器2次コイル6に誘導的に伝送するための、少なくとも1つの変圧器1次コイル10を有する。それぞれの変圧器1次コイル10及びそれぞれの変圧器2次コイル6は、回転子磁界の誘導的電気外部励磁のための、回転変圧器25を形成する。図1の図示とは異なるが、回転変圧器25は、ふつうは、同期機1の軸方向に配置されている。その場合、変圧器1次コイル10は、同期機1の軸の前面側において固定子3に位置し、一方で、変圧器2次コイル6は、同期機1の同じ軸の前面側において回転子2に位置し、変圧器1次コイル10に直接に対向するように位置する。
【0033】
同期機制御器4は、同期機1を電動機及び/又は発電機として動作させる目的を果たす。この目的のために、同期機制御器4には、インバータ手段11が設けられ得て、これは、例えばバッテリーのような、ここでは不図示の電気貯蔵器に接続され、インバータ手段11は、ここでは不図示の特にインバータを含み得る。同期機制御器4は、対応するコイル線12を介して、それぞれの固定子コイル9に結合されている。図示されている例において、コイル線12は、インバータ手段11に結合されている。同期機制御器4は、少なくとも1つの変圧器線13を介してそれぞれの変圧器1次コイル10に結合されている。それぞれの変圧器線13は、それによって変圧器制御器に接続され得て、この変圧器制御器は、同期機制御器4の一部を形成する。
【0034】
ここで同期機制御器4は、同期機1の機器故障の場合に、それがそれぞれの回転子コイル5を減磁するように設計されている。この目的のために、同期機制御器4には、減磁回路15が設けられており、その2つの代替の設計が図1に同時に示されており、ここで一方の変形例は15で示され、他方の変形例は15’で示されている。それぞれの減磁回路15又は15’の部品にも同じことが当てはまる。
【0035】
減磁回路15又は15’は、少なくとも1つのダイナモ巻線16,16’をそれぞれ有している。いくつかのダイナモ巻線16,16’が好ましくは設けられ、両矢印によって示される円周方向24において分散されるように、これらは固定子3に配置される。ここで示される好ましい実施形態の例においては、減磁回路15,15’は、それぞれの固定子コイル9について、1つのダイナモ巻線16,16’をそれぞれ有している。図1の例では、固定子3は、いくつかの固定子コイル9を有する。いずれの場合も、これら固定子コイル9のそれぞれは、1つのそのようなダイナモ巻線16又は16’をそれぞれ有している。しかし図1では、1つの固定子コイル9について対応するダイナモ巻線16,16’しか示されておらず、これらは、全ての固定子コイル9を代表するものである。減磁回路15,15’は、少なくとも1つのスイッチング手段17又は17’をそれぞれ有し、これらは、減磁回路15,15’又はそれぞれのダイナモ巻線16,16’を作動させたり停止させたりする目的をそれぞれ果たす。全てのダイナモ巻線16,16’を作動させたり停止させたりするために、共通のスイッチング手段17,17’が好ましくは提供される。減磁回路15,15’には、少なくとも1つの電気エネルギー負荷18,18’及び/又は少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵器19,19’がさらに設けられている。それぞれの負荷18,18’又はそれぞれの貯蔵器19,19’は、減磁回路15,15’内でそれぞれのスイッチング手段17,17’を介してそれぞれのダイナモ巻線16,16’にそれぞれ接続されている。それによってこの接続は、ダイナモ巻線16,16’が作動させられている時には、それぞれの作動させられているダイナモ巻線16,16’に誘起された電力が、それぞれの負荷18,18’又はそれぞれの貯蔵器19,19’にそれぞれ供給されるよう構成されている。このような貯蔵器19,19’が用いられ、かつ負荷18,18’の性質に依存する限り、ここでは不図示の変換回路は、好適には、貯蔵器19,19’又は負荷18,18’の上流にそれぞれ接続され得る。
【0036】
ここでモーター制御器4は、それぞれのスイッチング手段17,17’に結合される。この目的のために、対応する制御線20又は20’がそれぞれ提供され得て、これらは、それぞれのスイッチング手段17,17’を、同期機制御器4の対応する制御手段21に接続する。よって変圧器制御器14は、インバータ手段11に統合され得る。よって制御手段21は、インバータ手段11に統合され得る。制御手段21は、対応する制御線22を介してインバータ手段11を制御するように特に構成され得る。制御手段21は、同期機1の適切な機能をさらにモニタし得る。制御手段21は、同期機1の停止を引き起こす、好ましくは定義された、機器の故障の発生を特に検出し得る。機器の故障とは、例えば、固定子コイル9のうちの1つの短絡であり得る。
【0037】
ここで同期機制御器4又はその制御手段21は、機器の故障が発生する時に、一方で、それぞれの固定子コイル9への及びそれぞれの変圧器1次コイル10への電気エネルギーの供給が停止されるように、それと同時に、他方では、それぞれのスイッチング手段17,17’を制御し、減磁回路15,15’又はそれぞれのダイナモ巻線16,16’をそれぞれ作動させるように、それぞれ構成される。作動させられた減磁回路15,15’の場合、回転子磁界は、それぞれのダイナモ巻線16,16’に電圧を誘起し、よってこれは、それぞれの負荷18,18’又はそれぞれの貯蔵器19,19’に減磁回路15,15’内の電気エネルギーとしてそれぞれ供給される。それによって回転子2又はそれぞれの回転子コイル5は、それぞれ減磁される。同期機1内での超臨界電圧及び電流は、それによって防止され得る。電子部品の過熱もそれによって防止され得る。同期機1の通常運転の間、モーター制御器4又は制御手段21は、減磁回路15,15’又はそれぞれのダイナモ巻線16,16’をそれぞれ停止させるように、スイッチング手段17,17’をそれぞれ制御する。
【0038】
図1に示される減磁回路15の1つの変形例の場合、それぞれのダイナモ巻線16は、それぞれの固定子コイル9の半径方向に内側に配置される。よってそれぞれのダイナモ巻線16は、ほぼ半径方向に沿って回転子2及び固定子3の間に配置される。図1に示される減磁回路15’の他の変形例の場合、ダイナモ巻線16’は、それぞれの固定子コイル9の半径方向に沿って外側に配置される。よってそれぞれのダイナモ巻線16,16’は、回転子コイル9の巻線とともに巻かれ得て、及び/又はそれぞれの固定子コイル9も巻かれている同一の磁極片に巻かれ得る。
【0039】
図1の例において、同期機1は、多相構造で、具体的には3相構造で設計されている。よって、これら3相は、U,V及びWで特定されている。少なくとも1つの固定子コイル9は、これらU,V,W相のうちのそれぞれに割り当てられている。図1の例では、互いに直径の反対側に位置する2つの固定子コイル9のコイルペアは、U,V,W相のうちのそれぞれの相に割り当てられている。よってここでは6個の固定子コイル9が設けられている。よってこの場合は、6個のダイナモ巻線16又は16’もそれぞれ設けられる。好適には、全てのダイナモ巻線16又は16’は、共通の減磁回路15,15’に接続されている。よって共通のスイッチング手段17,17’は、ダイナモ巻線16,16’を作動させたり停止させたりするために提供され得る。同様に数個のスイッチング手段17,17’を提供することも想定できる。具体的には、別個のスイッチング手段17,17’をそれぞれのダイナモ巻線16,16’に割り当てることが想定できる。好適には、全てのダイナモ巻線16,16’は、それぞれの負荷18,18’又はそれぞれの貯蔵器19,19’にそれぞれ共同して割り当てられる。よって好ましくは、全てのダイナモ巻線16,16’が割り当てられている共通の負荷18,18’又は共通の貯蔵器19,19’が、それぞれ用いられる。
【0040】
好適には、それぞれの負荷18,18’又はそれぞれの貯蔵器19,19’は、固定子3の外側に、又は固定子3の外部にそれぞれ配置される。固定子巻線9が配置されている固定子ハウジング23が図1で示されている。よってそれぞれの負荷18,18’又はそれぞれの貯蔵器19,19’は、この固定子ハウジング23の外側に配置されてもよい。
【0041】
機器の障害が発生した時、モーター制御器4又は制御手段21は、それぞれ、それぞれの固定子コイル9への電力の供給を、加えて特にそれぞれの変圧器1次コイル10への電力の供給も停止することができる。同期機の障害が発生した時、同期機制御器4又は制御手段21は、それぞれ、それぞれのダイナモ巻線16,16’又はそれぞれの減磁回路15,15’をそれぞれ作動させるように、それぞれのスイッチング手段17,17’を同時に実質的に制御できる。オプションとして、同期機制御器4又は制御手段21は、それぞれ、少なくとも1つの固定子コイル9を短絡させることによって、それぞれの固定子コイル9への又はそれぞれの変圧器1次コイル10への電力の供給をそれぞれ停止できる。それぞれの変圧器1次コイル10の短絡も想定できる。
図1