(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】手足保護具
(51)【国際特許分類】
A41D 13/05 20060101AFI20250219BHJP
【FI】
A41D13/05 143
(21)【出願番号】P 2024065792
(22)【出願日】2024-03-27
【審査請求日】2024-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523260358
【氏名又は名称】株式会社聖
(72)【発明者】
【氏名】玉川 玲子
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-55697(JP,A)
【文献】特許第4009957(JP,B2)
【文献】特開2003-3308(JP,A)
【文献】実開昭58-163513(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0250236(US,A1)
【文献】米国特許第10368594(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形に構成された本体部と、
前記本体部の巻き終り端部に配置される着脱式固定部とから構成される手足保護具であって、
前記本体部は、伸縮性を有する表布と裏布を重ねた状態でその外周部分を縫合し、且つ、裏返した袋体と、前記袋体の内部に収納可能な形状をなし、且つ、前記袋体内部に収納された衝撃吸収部材とからなり、前記本体部の着脱固定範囲に複数の凹面ファスナーをその長手方向を本体部幅方向に伸ばし、且つ、それぞれの間に間隔を保って設置し、各凹面ファスナーを表布、衝撃吸収部材及び裏布と共に縫合して取付けており、
前記着脱式固定部は、低伸縮性の布素材から構成され、その裏面に凸面ファスナーを設置しており、前記本体部の巻き終り端部に前記着脱式固定部を一体に設置した
ことを特徴とする手足保護具。
【請求項2】
長方形に構成された本体部と、
前記本体部の巻き終り端部に配置される着脱式固定部とから構成される手足保護具であって、
前記本体部は、伸縮性を有する表布と裏布を重ねた状態でその外周部分を縫合し、且つ、裏返した袋体と、前記袋体の内部に収納可能な形状をなし、且つ、前記袋体内部に収納された衝撃吸収部材とからなり、前記本体部の着脱固定範囲に複数の凹面ファスナーをその長手方向を本体部幅方向に伸ばし、且つ、それぞれの間に間隔を保って設置し、各凹面ファスナーを表布、衝撃吸収部材及び裏布と共に縫合して取付けており、
前記着脱式固定部は、前記本体部の表布及び裏布により一体に構成されており、その裏面に凸面ファスナーを設置した
ことを特徴とする手足保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要介護者や、上肢又は下肢を負傷した怪我人等の車椅子利用者が、車椅子への乗車時又は降車時に、或いは、日常生活における上肢又は下肢の保護のために、上肢又は下肢に装着する手足保護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車椅子利用者が車椅子に乗車する際、或いは、車椅子から降車する際には、介護者等が同車椅子利用者の介添えを行うのが一般的である。この車椅子への乗車又は降車時においては、車椅子利用者の下肢に相当する膝から足首までの間の所謂、下腿や、上肢に相当する前腕又は上腕を、車椅子を構成する各部材に衝突させることがある。よって、車椅子利用者の前記下肢又は上肢に打ち身等を生じさせ、車椅子利用者自身も相当な痛みを感じることが予想される。
【0003】
車椅子乗降時に、車椅子利用者の下肢又は上肢を車椅子構成部材に衝突させずに介助するには、時間と労力を要する作業となる。したがって、車椅子利用者の下肢又は上肢に介護用プロテクターを装着することが考えられている。その一例として特許文献1には、被介護者の肘から手首間又は膝から足首間の部位に巻き付けて使用する介護用プロテクターであって、合成樹脂等の非透水性素材からなる表布と、柔軟性且つ緩衝性を有し、装着される被介護者の足又は腕の汗を吸収可能な吸汗性素材からなる裏布と、これら表布と裏布との間に配置された中間布とを有した構造が開示されている。
【0004】
前記表布と裏布と中間布は平面略台形状に形成されると共に、これらをキルティング縫いすることによって離間しないよう一体連結し、車椅子の装着部材に当接する被介護者の腕又は足の何れかの部位に、前記平面略台形状の上辺長幅側を上方肘又は膝側とし、下辺短幅側を下方手首又は足首側として巻き付けるとともに、前記表布と裏布に対向配置された雌雄面ファスナーの係着及び解除によって着脱するものが記載されている。
【0005】
前記介護用プロテクターは、表布と裏布と中間布の素材自体及びそれらの縫合構造について、伸縮性を発揮できる構造とはなっていない。また、雌雄面ファスナーの大きさや設置位置についても、複数の異なる被介護者における装着部分の個人差に対応した構造となっていない。したがって、この介護用プロテクターを使用する場合、装着者の装着部分の大きさに合わせてそのサイズを決定し、準備する必要がある。
【0006】
次に、足の保温を目的とした防寒用カバーが特許文献2に示されている。本防寒用カバーのカバー本体は、表面が撥水性若しくは防水性部材よりなり、裏面が中綿を有するキルティング加工を施された2重構造よりなる布片より構成されており、前記布片自体は伸縮性を発揮できない構成となっている。この布片に対して周方向に伸縮性部材を逢着して伸縮部を形成すると記載されているが、その具体構造が開示されていない。よって、カバー本体が伸縮性を発揮できるか不明である。本防寒用カバーにおいては、装着者の足が何らかの硬い物に衝突した際に保護する機能が発揮できるかも不明である。
【0007】
更に、防寒用として作られた足巻で、足の下肢部を衣類の上から巻いて温めるようした防寒用足巻が特許文献3に示されている。本防寒用足巻においては、締めつけて温める点を強調すれば、表地と裏地に、弾力性のある織布を用いることが記載されているものの、その具体的な素材及び構造が示されていない。また、実施例として示された表地の素材としては、パイル状の織布が例示されているが、パイル状の織布は、伸縮性を有した素材とは言えないものである。
【文献】特許第4009957号公報
【文献】実用新案登録第3057664号公報
【文献】実開昭58-163513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、要介護者等の下肢又は上肢に対して、例えば車椅子構成部材等の硬い物が衝突した際の衝撃を和らげることにより、要介護者等の下肢又は上肢の損傷と痛みを防止すること、また、要介護者等の下肢又は上肢への取付け作業が比較的簡単に行えると共に、下肢又は上肢の装着部分の太さに追従して適度な締め付け力により取付けが可能な手足保護具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、長方形に構成された本体部と、前記本体部の巻き終り端部に配置される着脱式固定部とから構成される手足保護具であって、前記本体部は伸縮性を有する表布と裏布を重ねた状態でその外周部分を縫合し、且つ、裏返した袋体と、前記袋体の内部に収納可能な形状をなし、且つ、前記袋体内部に収納された衝撃吸収部材とからなり、前記本体部の着脱固定範囲に複数の凹面ファスナーをその長手方向を本体部幅方向に伸ばし、且つ、それぞれの間に間隔を保って設置し、各凹面ファスナーを表布、衝撃吸収部材及び裏布と共に縫合して取付けており、前記着脱式固定部は低伸縮性の布素材から構成され、その裏面に凸面ファスナーを設置しており、前記本体部の巻き終り端部に前記着脱式固定部を一体に設置したことを特徴とするものである。
また、本発明は、長方形に構成された本体部と、前記本体部の巻き終り端部に配置される着脱式固定部とから構成される手足保護具であって、前記本体部は伸縮性を有する表布と裏布を重ねた状態でその外周部分を縫合し、且つ、裏返した袋体と、前記袋体の内部に収納可能な形状をなし、且つ、前記袋体内部に収納された衝撃吸収部材とからなり、前記本体部の着脱固定範囲に複数の凹面ファスナーをその長手方向を本体部幅方向に伸ばし、且つ、それぞれの間に間隔を保って設置し、各凹面ファスナーを表布、衝撃吸収部材及び裏布と共に縫合して取付けており、前記着脱式固定部は前記本体部の表布及び裏布により一体に構成されており、その裏面に凸面ファスナーを設置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、手足保護具本体を構成する軟質ポリウレタンフォーム(以下、単に「ウレタン」と言う。)からなる衝撃吸収部材によって、装着者の下肢又は上肢が例えば車椅子を構成する部材に衝突した際の衝撃を吸収して当該部分の損傷を防止し、且つ、痛みを軽減することができる。また、手足保護具の本体部がその長辺方向に伸縮可能な構造であり、当該手足保護具を下肢又は上肢に装着した状態でそれぞれの太さに対応した状態で締付け力を前記着脱式固定部により調整可能であり、装着作業が簡単に行える。前記本体部は、それ自体が伸縮性を有しており、装着部分の外周長に追従して装着が可能であり、脱落等の不具合を防止することができる。
なお、前記軟質ウレタンフォームについては、広くマットレス等に使用されており、本手足保護具には、かたさ区分が「かため」或いは「ふつう」のものを使用することが考えられる。本手足保護具の使用状況において、前記軟質ウレタンフォームのかたさを適宜選択することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】 本発明による手足保護具の一実施例における表布側から見た正面図である。
【
図2】
図1に示した手足保護具の一実施例における裏布側から見た正面図である。
【
図3】 本発明による手足保護具の一実施例における手足保護具本体の外周縁部分の拡大断面図である。
【
図4】 本発明による手足保護具の一実施例における結束ベルトの縫合部分の拡大断面図である。
【
図5】 本発明による手足保護具の一実施例における太い物への装着状態を示した斜視図及び結束ベルトの状態を示す模式図であり、(a)は
図5の手足保護具における結束ベルトのみを模式的に示した図である。
【
図6】 本発明による手足保護具の一実施例における細い物への装着状態を示した斜視図及び結束ベルトの状態を示す模式図であり、(b)は
図6の手足保護具における結束ベルトのみを模式的に示した図である。
【
図7】
図5に示した手足保護具を装着者の脹脛部分に装着した状態を示す斜視図である。
【
図8】 本発明による手足保護具の第2実施例の正面図である。
【
図9】
図8に示した手足保護具の裏側を示す正面図である。
【符号の説明】
【0012】
1:手足保護具本体、1S:巻き始め端部、1E:巻き終り端部、2:結束ベルト、2S:他端部、2E:一端部、10:袋体、11:表布、12:裏布、14:ウレタン、15:あて布、手足保護具50、着脱式固定部60、本体部70
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の手足保護具の一実施例を
図1乃至
図7により説明する。手足保護具本体
1は、
図1及び
図2に示すように、長方形に形成されている。長方形の4ヶ所の角部分は、円弧状に形成されている。この手足保護具本体
1を構成する袋体
10は、
図3にその縁部断面形状を示すように、表布11と裏布12とを外周部分に約1cm程度の縫い代を設けてミシンで縫合し、その表布11と裏布12を裏返して、内部にウレタン14を挿入して構成されている。ウレタン14は、袋体
10の内部に収納可能な大きさの長方形に構成されており、その厚さは、約1cmに構成された特注品であり本実施例における衝撃吸収部材の一例である。本実施例で使用したウレタン14は、スポンジ専門店ソフトプレン社製、商品名「やわらかいウレタンスポンジ」、JIS規格密度(kg/35±3)硬さ(N)122.6±29.4であり同社製品中2番目に軟らかい物である。
【0014】
裏返した前記表布11と裏布12の外周部分は表布11の折り返し部および裏布12の折り返し部を重ねた状態で縫合した構成となっている。なお、袋体10を構成して、それを裏返し、且つ、内部にウレタン14を挿入する際には、前記袋体10の外周の一部には、約10cm程度の未縫合部が形成されており、同未縫合部で裏返し作業及びウレタン14の挿入作業を行う。前記未縫合部分は、手縫いにより表布11と裏布12を縫合し、その後、外周全体の縫合作業を行う。
【0015】
このようにして製作された手足保護具本体
1の一例は、
図1及び
図2に示すように、全体が長方形に構成されている。手足保護具本体
1の長辺の長さは、約48cmであり、短辺の長さは、約24.5cmに構成されている。この手足保護具本体
1の大きさは、装着者の臑及び脹脛とからなる下肢の直径が最大で約13cm程度を想定した場合の大きさとなっている。また、手足保護具本体
1の短辺の長さは、装着者の膝から足首までの長さが約24.5cm程度と想定して構成されている。これらの長辺及び短辺の長さ等の寸法、或いは、後述する結束ベルト等の各部の寸法については、利用者の体格によって最適な長さが異なるため、手足保護具本体
1及び結束ベルトのこれらの寸法を大きいサイズ:L、中程度のサイズ:M、小さいサイズ:Sのように、利用者の体格に合わせて選択可能に構成することも考えられる。
【0016】
手足保護具本体1には、2本の結束ベルト2が取付けられている。この各結束ベルト2の取付け位置は、手足保護具本体1の両側長辺部縁から内側に向かって、手足保護具本体1の短辺部長さの1/4に相当する位置に設置されている。手足保護具本体1における短辺方向の中央位置で二分割した範囲のちょうど中間位置にそれぞれ結束ベルト2が配置されることになる。したがって、手足保護具本体1の上半分及び下半分をそれぞれの結束ベルト2により固定することができる。
【0017】
結束ベルト2は、それ自体が伸縮性を有する素材から構成され、内部にゴム紐を内蔵しており、その長手方向に引っ張ると伸びて、収縮する反力を生じる構成となっている。結束ベルト2の全長は、手足保護具本体1の長辺長さよりも僅かに短く、約46cmに構成されている。この結束ベルト2の一端部2Eを手足保護具本体1の巻き終り端部1Eから約9cm程度突出させて取付けている。この結束ベルト2の他端部2Sは、手足保護具本体1の巻き始め端部1Sより約11cm内側の部分に縫合して取付けられている。この11cm幅の部分が最も太い下腿に巻かれた際に、手足保護具本体1の巻き始め端部1Sと巻き終り端部1Eとが重なり会う部分となる。結束ベルト2は、手足保護具本体1の表布11の外表面に配置され、表布11、ウレタン14、裏布12と一体に縫合されている。
【0018】
結束ベルト2には、手足保護具本体1から突出した一端部2Eの裏面に凸面ファスナー21(例えば、開口鉤等を有する面ファスナー)が縫合して取付けられている。この凸面ファスナー21の幅は、結束ベルト2とほぼ同じ幅に構成され、長さは一端部2Eの突出長さ、即ち、約9cmに構成されている。結束ベルト2の他端部2Sには、凹面ファスナー22(例えば、ループ等を有する面ファスナー)がその表面に縫合して取付けられている。この凹面ファスナー22の幅は、結束ベルト2とほぼ同じ幅に構成されている。また、この凹面ファスナー22の長さは、前記凸面ファスナー21の2倍で約18cmとなっている。結束ベルト2における凸面ファスナー21及び凹面ファスナー22を取付けた部分は、凸面ファスナー21と凹面ファスナー22がそれぞれ伸縮しない素材から構成されていることから、伸縮しない構成となっている。一方、結束ベルト2における凸面ファスナー21と凹面ファスナー22との間で、結束ベルト素材のみで構成されている部分であって、凸面ファスナー21の全長の約2倍の範囲については、伸縮性を有した構造となっている。
【0019】
結束ベルト
2の手足保護具本体
1への取付構造について、
図4により説明する。表布11、ウレタン14、裏布12が重なった手足保護具本体
1に、結束ベルト
2を表布11の表面側に重ねた状態で、ミシンによる平縫いによって縫合している。この構造においては、表布11及び裏布12の各表面側は、縫合時の締付け力により、ウレタン14が凹んで縫合線部分が窪み部Xを形成した状態となっている。このような構造においては、平縫いによって
図4に示すように上下の縫い糸の間にウレタン14を挟んで縫合していることから、縫い糸が厚さ方向に蛇行した状態であり、結束ベルト
2及び手足保護具本体
1がその長手方向に伸縮可能に構成されている。即ち、結束ベルト
2及び手足保護具本体
1がその長辺方向に伸縮性を有し、且つ、前記平縫いにより縫合されていることから、縫合された両部材が長辺方向に伸縮可能な構造を形成することができる。更に、結束ベルト
2の収縮力により、手足保護具本体
1の外側から所定の締付け力で締付けることによって装着時の追従性と安定性を確保している。
【0020】
本発明による手足保護具の一実施例の要介護者への使用状況について説明する。要介護者を車椅子に乗車させる際には、まず、手足保護具本体1を下腿に巻き始め端部1Sから巻き始め、巻き終り端部1Eを前記巻き始め端部1Sに重ねた状態で、各結束ベルト2の一端部2Eの凸面ファスナー21を他端部2Sの凹面ファスナー22に取付ける。この時、結束ベルト2の一端部2Eをその長手方向に引っ張って、張力をかけて取付ける。このように結束ベルト2の張力を利用して、手足保護具本体1を下腿或いは上腕にしっかりと装着することができる。また、結束ベルト2の凸面ファスナー21を設置した一端部2Eは、手足保護具本体1から突き出た構造となっていることから、当該一端部2Eを持って凹面ファスナー22へ簡単に取付けることができる。即ち、特許文献1の介護用プロテクターの裏面に面ファスナーを設置した構造に比べて凸面ファスナー21を確実に凹面ファスナー22に取付ける事ができ、作業性を向上させることができる。
【0021】
要介護者に前記手足保護具を装着した後、車椅子に乗車させることになる。この乗車動作時に、要介護者の下腿や上腕が車椅子の構成部材に衝突しても、その衝撃を前記手足保護具が吸収して、要介護者の下肢或いは上腕等の損傷及び痛みを緩和することができる。
また、本発明による手足保護具は、手足保護具本体1の長辺部の長さが装着者の下腿の外周長さよりも長く構成されていることから、確実に下腿を保護することができる。更に、結束ベルト2において、凸面ファスナー21を取付けた一端部2Eと、凹面ファスナー22を取付けた他端部2Sとの間に、結束ベルトのみからなる伸縮可能な部分を構成していることから、手足保護具本体1を太い下腿部又は細い前腕に巻いて取付けることができる。即ち、結束ベルト2自体の伸縮性を確保し、且つ、太さの異なる下腿或いは前腕等に巻き付けた状態で固定可能な構造となっている。
【0022】
次に、本発明による前記手足保護具の装着状態について、
図5乃至
図7により説明する。
図5は、本手足保護具を最も太い下肢等に巻いた状態の手足保護具のみを示した図である。また、
図5の(a)は、
図5に示した手足保護具における結束ベルトの状態を模式的に示した図であり、2本の線で手足保護具を示し、黒太線で凸面ファスナー又は凹面ファスナーの設置部を示している。図示した手足保護具により形成された筒状部分の外周長さは、約47cmであり、内周長さは、約40cm、内径が約13cmである。また、軸方向の長さは、約24.5cmである。この手足保護具の上部中間位置及び下部中間位置に設置された各結束ベルト
2の凸面ファスナー21と凹面ファスナー22の締結状況は、
図5(a)に図示したように、凸面ファスナー21が凹面ファスナー22の他端部2S側に締結されている。この状態において、結束ベルト
2によって形成されたリング状部分の周長は、凸面ファスナー21取付部分、面ファスナーを設置していない部分及び凹面ファスナー取付部分の約半分となっている。このリング状部分の周長は、最終的に凸面ファスナー21と凹面ファスナー22との締結部分の重なり度合いによって微調整されることになる。
図5に示した手足保護具を装着者の下腿に設置された状態が
図7である。
【0023】
本発明による前記手足保護具を肘から手首の間の最も細い部分に巻いた状態を
図6に示している。この状態においては、手足保護具本体
1は、一部において3重に重ねた状態となっている。図示した手足保護具により形成された筒状部分の外周長さは、約35cm、内周長さは、約19cm、内径が約6cmである。各結束ベルト
2の凸面ファスナー21と凹面ファスナー22の締結状況は、
図6(b)に第5図(a)と同様な記載方法により図示したように、凸面ファスナー21が凹面ファスナー22の他端部2Sの反対側に近い位置に締結されている。このように結束ベルト
2によってリング状に形成された部分の周長は、凸面ファスナー21と凹面ファスナー22に相当する長さに構成されている。このように本発明の前記手足保護具によれば、各結束ベルト
2の凸面ファスナー21と凹面ファスナー22との締結位置を、面ファスナーを設けていない部分を利用して広範囲に変化させることにより、巻く対象物の外周長即ち外周部分の長さに対応させて簡単に装着することができる。
【0024】
本発明による手足保護具を利用する際の状況を想定して、市販されている各種商品との対比状況を説明する。要介護者が車椅子に乗車する際に、必要があればすぐに着用しなければならない。レッグウォーマーやサポーターでは、着脱時にズボンや靴を脱ぐ必要があるため、時間が掛かり介護者の負担が増加する。また、要介護者が自力で着脱できる場合もあるが、同様に時間を要することが想定される。また、臥床時にはそれらが肌に密着しているため、時には外していないと下肢や上肢が蒸れる場合があるため常用することが好ましくない。本発明による手足保護具の場合には、直接下肢或いは上肢に装着する或いはズボン等の衣服の上からでも、靴やズボン等を脱ぐことなく即座に、且つ、短時間に装着することができる。さらに、取外しも簡単である。
【0025】
要介護者は、体が弱っている場合が多く、普通に日常生活を過ごす状況において移動時の転倒や転落、又は、打撲などにより負傷する機会が多いことが予想される。予防的に本発明による手足保護具を装着することにより、下腿や上腕の負傷を軽減することができる。体温調整が難しい要介護者の場合は、寒い時期やエアコンがよく効いて冷え切った室内でも、本発明による手足保護具を着用することで保温効果を維持することができる。昔から頭寒足温で健康になると言われている。
【0026】
小児を自転車のリアチャイルドシートに座らせる昇降車時に、本発明による手足保護具を装着しておくことにより、動きの激しい小児の露出した手足の負傷を防止できる。また、寒い時期に自分で訴えることが難しい小児であっても、乗車中に下腿や前腕の保温を行える。前記手足保護具は、着脱が容易であるため、急いでいるときでも即座に利用することができる。
【0027】
寒い時期における屋外での作業時(スポーツ等を含む)にズボンや厚手の靴下の上から着用可能な本発明による手足保護具を靴やズボンを脱ぐことなく容易に、且つ、即座に利用できるため、保温に適している。エアコンで冷えた室内での事務作業や仕事(夜勤等)であっても、必要ないときには、すぐに外すことが可能であるため、人の目を気にすることなく利用することができる。
【0028】
バイクの乗車時に本発明による手足保護具を利用することで、簡易な下腿や前腕の負傷防止と保温が可能である。しかしながら、全ての事故の負傷の予防ができるとは言い難い。従来のこの種のプロテクター等はつなぎの下に着用するため、ブーツやズボンを脱いで着用する必要があり着脱に時間が掛かっていたが、本発明による手足保護具は着脱が即座にできる
【0029】
次に、本発明の手足保護具の第2実施例を
図8及び
図9により説明する。本実施例の手足保護具
50は、その全体形状が前記手足保護具本体
1の巻き終わり端部1Eに、三角形状を成した着脱式固定部
60を設けたことを特徴とするものである。なお、前記着脱式固定部
60を除く手足保護具
50は、その主要部の構造が前記手足保護具本体
1とほぼ同様である。
【0030】
手足保護具
50について、前記一実施例との相違点を中心に説明する。本実施例の手足保護具
50は、
図8及び
図9に示すように、前記一実施例の手足保護具本体
1に相当する本体部
70の巻き終り端部1E側に、略三角形の着脱式固定部
60を一体に形成した構造となっている。
【0031】
この手足保護具50の本体部70は、前記一実施例と同様に表布51と裏布52から成り、その間にウレタンを挿入した構成となっている。着脱式固定部60は、前記本体部70の表布51と裏布52を延長して一体に構成されている。着脱式固定部60の表布51と裏布52の間には、キルト芯が挿入されている。
【0032】
この手足保護具50の製作は、まず、表布51及び裏布52について、前記本体部70と着脱式固定部60の形状に合せ、且つ、外周部分に縫い代を設けた形状の伸縮性素材を準備する。次に、前記表布51及び裏布52の外周部をウレタン及びキルト芯の挿入部を除いて縫合する。その後、前記表布51及び裏布52を裏返し、前記挿入部からウレタンを本体部70に挿入して配置し、更に、前記挿入部からキルト芯を着脱式固定部60に挿入して配置する。この状態で、前記挿入部及び手足保護具50の全周を縫合する。
【0033】
次に、前記着脱式固定部60と本体部70との境界部分に、伸縮性が無く所定の引張強度を有する布テープ81を表布51の表面側に配置し、着脱式固定部60と本体部70の幅方向に向かって縫合する。即ち、前記布テープ81の幅方向両側位置を、その長手方向に、本体部70においては表布51、ウレタン、裏布52を一体に、着脱式固定部60においては、表布51、キルト芯、裏布52を一体に縫合する。最後に、布テープ81の長手方向両端部について、表布51、ウレタン、キルト芯、裏布52を一体に縫合する。
なお、前記布テープ81は、前述の本体部70と着脱式固定部60の各表布51の表面側に加えて、各裏布52の表面の両方に設置することも考えられる。
【0034】
本体部70に設置される複数の凹面ファスナー71は、前記一実施例における凹面ファスナー22の長手方向全長に相当する範囲、即ち、本体部70における巻き始め端部1Sより約11cm内側の位置を始点として、着脱式固定部60側へ約18cmまでの範囲に設置されている。各凹面ファスナー71は、その長さが本体部70の幅方向の長さの7~8割程度の長さであって、それぞれの長さがほぼ同一である。また、各凸面ファスナー71は、その長手方向を本体部70の幅方向に一致させて配置されている。これらの凹面ファスナー71同士の間には、同凹面ファスナー71自体の幅寸法に相当する程度の間隔が設けられている。各凹面ファスナー71は、本体部70の表布51、ウレタン、裏布52と一体に平縫いにより縫合されている。
【0035】
本体部70における巻き始め端部1Sから約11cm内側の範囲が、本手足保護具50における重なり部70aである。この重なり部70aは、本手足保護具50が装着された際に、この部分に本体部70の巻き終り端部、即ち、布テープ81が設置されている部分を重ね合わせることを想定している。なお、本手足保護具50を装着した際に、重なり部70aより外側、即ち、巻き始め端部1Sより外側に、布テープ81が来るような場合には、当該手足保護具50自体のサイズが要介護者等の装着部分の大きさに対応していない状況であり、大きなサイズに変更すると良い。
【0036】
本体部70における複数の凹面ファスナー71が設置されている着脱固定範囲70bは、後述する着脱式固定部60における凸面ファスナー61の本体部70の長手方向に相当する幅寸法の約2倍程度に構成されている。したがって、この着脱固定範囲70bに、着脱式固定部60の凸面ファスナー61が固定され、装着状態が安定していれば、手足保護具50の機能を発揮することができる。
【0037】
前記着脱式固定部60の裏面即ち裏布52の表面には、凸面ファスナー61が取付けられている。この凸面ファスナー61は、着脱式固定部60の山形を成す二つの傾斜辺の全長に亙って設置されている。前記凸面ファスナー61は、その全体形状が山形を成した一体形状、或いは、直線形状の素材を2本組合せた形状のものを用いることが考えられる。この凸面ファスナー61は、着脱式固定部60を構成する表布51、キルト芯、裏布52と一体に縫合されている。また、この凸面ファスナー61の本体部70側の端部は、前記布テープ81を含めて一体に縫合することも考えられる。本実施例においては、凸面ファスナー61は、布テープ81に到達しない長さとなっている。
【0038】
このように構成された手足保護具
50を要介護者の下腿に装着する状況を説明する。本体部
70をその巻き始め端部1Sから下腿に巻き始める。そして、本体部
70における着脱式固定部
60側の端を、本体部
70の重なり部70aに重ね合せた状態で、着脱式固定部
60の凸面ファスナー61を凹面ファスナー71に固定する。この時に、着脱式固定部
60を巻く方向に引っ張ることにより、本体部
70に張力を付与し、手足保護具本体
50を確実に装着することができる。また、着脱固定範囲70bにおいて、凸面ファスナー61が少なくともに二本の凹面ファスナー71に固定されていれば、この手足保護具
50の安定した固定状態を確保することができる。即ち、着脱固定範囲70bにおいて、着脱式固定部
60の凸面ファスナー61が、
図9の左側の二本の凹面ファスナー71に固定される状態、或いは、
図9の右側の二本の凹面ファスナー71に固定される状態であれば、手足保護具
50を安定して固定することができる。この手足保護具
50によれば、前記一実施例の手足保護具とほぼ同様の作用、効果を発揮することができると共に、着脱式固定部
60の固定位置が本体部
70の幅方向に多少ずれても、確実に固定することができる。
【0039】
なお、本実施例においては、着脱式固定部60がその先端において、凸面ファスナー61のファスナー面が狭くなり、固定力が減少することが予想される。このような場合には、装着者の設置部位の大きさに合ったサイズの手足保護具本体50を選定すると良い。
また、本実施例における着脱式固定部60は、その全体形状が三角形を成しているが、台形或いは角部にアールを設けた四角形にすることも考えられる。このような形状においては、それぞれの各着脱式固定部の外周形状に一致した凸面ファスナーをその外周部分に設置した構成とする。このように着脱式固定部を前記台形或いは四角形に構成することにより、凸面ファスナーを固定した際の接合面積を広く確保することができる。
【0040】
前記手足保護具50において、長期間の使用により、本体部70の長手方向の強度が低下することが予想される。この対策として、表布51の裏面に、本体部70の長手方向に沿って伸縮性を有する布製補強テープを予め縫合しておくことも考えられる。この布製補強テープは、本体部70における巻き始め端部1Sから前記布テープ81或いは凸面ファスナー61までの間に設置されるのが有効である。この布製補強テープは、一本でも有効であるが、理想的には複数本設置されるのが望ましい。
【0041】
このような構成の手足保護具50によれば、要介護者等の利用者への装着が、本体部70を巻き付けた後、着脱式固定部60の凸面ファスナー61を凹面ファスナー71に取付けるだけで簡単に行える。
また、手足保護具50の着脱式固定部60は、山形を成した形状に合せて凸面ファスナー61を設置しており、表布51に設置した凹面ファスナー71への固定作業が容易であり、短時間に行える。即ち、前記凸面ファスナー61の面積が広いことに加え、凹面ファスナー71も表布51の比較的広い範囲に設置されており、両者の設置状況から固定作業が容易となる。
【0042】
更に、前記各凹面ファスナー71の設置状態は、本体部70の長手方向に所定の間隔を設けて設置されていることから、本体部70自体の伸縮動作を許容する構成となっている。よって、本体部70が装着者の脹脛等に追従する機能を阻害することが無い。
【0043】
前記第2実施例の手足保護具50においては、着脱式固定部60及び本体部70を構成する表布51と裏布52を一体の布素材を用いた構造としているが、この構造に限定されるものでない。即ち、着脱式固定部を構成する素材を、本体部70とは異なる素材、例えば、デニム等の伸縮性の少ない素材を用いて構成することも考えられる。このような構成の場合、着脱式固定部は、前記第2実施例の布テープ81等を用いて本体部70に接合することが考えられる。
さらに、着脱式固定部を独立して構成し、前記本体部70の巻き終り端部に対して、ファスナー等の着脱式締結部材を用いて設置することも考えられる。このような構成によれば、本体部70が装着者の皮膚に触れやすく、汗或いは皮脂等が付着して汚れた際に、本体部70のみを洗濯することも可能となる。
【要約】 (修正有)
【課題】要介護者等の下腿又は上肢の損傷と痛みを防止、また、下腿又は上肢への取付け作業が比較的簡単に行えると共に、下腿又は上肢の装着部分の太さに追従して適度な締め付け力により取付けが可能な手足保護具を提供する。
【解決手段】長方形に構成された本体部と、本体部の巻き終り端部に配置される着脱式固定部とから構成される手足保護具であって、本体部は伸縮性を有する表布と裏布を重ねた状態でその外周部分を縫合し、裏返した袋体と袋体の内部に収納可能な形状をなし、且つ、袋体内部に収納された衝撃吸収部材とからなり、複数の凹面ファスナーをその長手方向を本体部幅方向に伸ばし、間隔を保って設置し、各凹面ファスナーを表布、衝撃吸収部材及び裏布と共に縫合して取付けており、着脱式固定部は低伸縮性の布素材から構成され、その裏面に凸面ファスナーを設置しており、本体部の巻き終り端部に着脱式固定部を一体に設置したことを特徴とする。
【選択図】
図8