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7636693検出システム、検出装置、検出方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】検出システム、検出装置、検出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/08 20060101AFI20250219BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
G06K7/08 060
G06K7/10 176
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023522002
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2021018598
(87)【国際公開番号】W WO2022244053
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 達哉
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 豪
(72)【発明者】
【氏名】小阪 尚子
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雅人
(72)【発明者】
【氏名】田中 憲光
(72)【発明者】
【氏名】加藤 潤
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0184161(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0363662(US,A1)
【文献】特開2012-163440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/08
G06K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タグと、
前記タグに送信電波を送信し、前記送信電波が前記タグで反射された受信電波を取得するレーダ装置と、
前記レーダ装置に接続する検出装置を備え、
前記タグは、
前記レーダ装置から受信した電波を、反射または散乱させる複数の材料で形成されたパターンを備え、前記パターンは、前記検出装置に既知の既知パターンと、前記検出装置に未知の未知パターンを備え、
前記検出装置は、
前記受信電波から前記既知パターンを検出できる、前記レーダ装置と前記タグの相対速度を算出し、算出した相対速度から、前記未知パターンを推定するための送信電波を前記レーダ装置が送信する条件を特定する特定部と、
特定した条件を前記レーダ装置に通知する通知部を備え、
前記レーダ装置は、前記条件で、前記タグに送信電波を送信する
検出システム。
【請求項2】
前記検出装置は、
前記条件で送信された送信電波に対する受信電波から、前記未知パターンを推定する推定部
をさらに備える請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記タグが固定されている場合、
前記特定部が算出する前記相対速度は、前記レーダ装置の速度である
請求項1に記載の検出システム。
【請求項4】
前記タグが移動する場合、
前記特定部は、さらに前記レーダ装置の速度を取得し、取得した前記レーダ装置の速度と前記相対速度から、前記タグの速度を算出する
請求項1に記載の検出システム。
【請求項5】
前記タグが、環境で浮遊する場合、前記タグの速度は、前記タグが位置する環境の移動速度である
請求項4に記載の検出システム。
【請求項6】
受信した電波を反射または散乱させる複数の材料で形成されるパターンであって検出装置に既知パターンと検出装置に未知パターンを備えるタグで、レーダ装置からの送信電波が反射または散乱された受信電波から、前記既知パターンを検出できる、前記レーダ装置と前記タグの相対速度を算出し、算出した相対速度から、前記未知パターンを推定するための送信電波を前記レーダ装置が送信する条件を特定する特定部と、
特定した条件を前記レーダ装置に通知する通知部
を備える検出装置。
【請求項7】
タグと、
前記タグに送信電波を送信し、前記送信電波が前記タグで反射された受信電波を取得するレーダ装置と、
前記レーダ装置に接続する検出装置を備える検出システムにおいて、
前記タグは、
前記レーダ装置から受信した電波を、反射または散乱させる複数の材料で形成されたパターンを備え、前記パターンは、前記検出装置に既知の既知パターンと、前記検出装置に未知の未知パターンを備え、
前記検出装置が、前記受信電波から前記既知パターンを検出できる、前記レーダ装置と前記タグの相対速度を算出し、算出した相対速度から、前記未知パターンを推定するための送信電波を前記レーダ装置が送信する条件を特定し、
前記検出装置が、特定した条件を前記レーダ装置に通知し、
前記レーダ装置が、前記条件で、前記タグに送信電波を送信する
検出方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項6に記載の検出装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出システム、検出装置、検出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、チップレスRFIDが注目されている(非特許文献1)。チップレスRFIDは、IC(Integrated Circuit)レスで実現可能なRFID(Radio Frequency IDentifier)である。チップレスRFIDは、環境に優しく、電波でセンシングできる技術として期待されている。
【0003】
チップレスRFIDのセンシングは、SAR(Synthetic Aperture Radar)イメージング技術が応用されて実現される。SARイメージング技術は、衛星マイクロ波センシング技術などに利用される。チップレスRFIDタグは、タグの物体形状および電波反射特性を、高い分解能で識別させることを可能とする。
【0004】
チップレスRFIDタグに、タグのID等を特定可能なパターンが設けられる。パターンは、レーダ装置が発した送信電波を、反射または散乱させる複数の材料で、形成される。チップレスRFIDタグから得た受信電波から、チップレスRFIDタグに設けられたパターンが推定され、推定されたパターンから、チップレスRFIDのIDが推定される。チップレスRFIDが備えるパターンの推定に際し、チップレスRFIDタグとレーダ装置の相対速度が参照される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】H, Cristian, et al., "Chipless-RFID: a review and recent developments." Sensors 2019, 19, 3385
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、チップレスRFIDタグとレーダ装置の相対速度が未知の場合、SARイメージング技術を用いて、チップレスRFIDタグに設けられたパターンを推定できない問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、チップレスRFIDタグとレーダ装置の相対速度が未知の場合でも、チップレスRFIDタグに設けられたパターンを推定可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の検出システムは、タグと、前記タグに送信電波を送信し、前記送信電波が前記タグで反射された受信電波を取得するレーダ装置と、前記レーダ装置に接続する検出装置を備え、前記タグは、前記レーダ装置から受信した電波を、反射または散乱させる複数の材料で形成されたパターンを備え、前記パターンは、前記検出装置に既知の既知パターンと、前記検出装置に未知の未知パターンを備え、前記検出装置は、前記受信電波から前記既知パターンを検出できる、前記レーダ装置と前記タグの相対速度を算出し、算出した相対速度から、前記未知パターンを推定するための送信電波を前記レーダ装置が送信する条件を特定する特定部と、特定した条件を前記レーダ装置に通知する通知部を備え、前記レーダ装置は、前記条件で、前記タグに送信電波を送信する。
【0009】
本発明の一態様の検出装置は、受信した電波を反射または散乱させる複数の材料で形成されるパターンであって検出装置に既知パターンと検出装置に未知パターンを備えるタグで、レーダ装置からの送信電波が反射または散乱された受信電波から、前記既知パターンを検出できる、前記レーダ装置と前記タグの相対速度を算出し、算出した相対速度から、前記未知パターンを推定するための送信電波を前記レーダ装置が送信する条件を特定する特定部と、特定した条件を前記レーダ装置に通知する通知部を備える。
【0010】
本発明の一態様の検出方法は、タグと、前記タグに送信電波を送信し、前記送信電波が前記タグで反射された受信電波を取得するレーダ装置と、前記レーダ装置に接続する検出装置を備える検出システムにおいて、前記タグは、前記レーダ装置から受信した電波を、反射または散乱させる複数の材料で形成されたパターンを備え、前記パターンは、前記検出装置に既知の既知パターンと、前記検出装置に未知の未知パターンを備え、前記検出装置が、前記受信電波から前記既知パターンを検出できる、前記レーダ装置と前記タグの相対速度を算出し、算出した相対速度から、前記未知パターンを推定するための送信電波を前記レーダ装置が送信する条件を特定し、前記検出装置が、特定した条件を前記レーダ装置に通知し、前記レーダ装置が、前記条件で、前記タグに送信電波を送信する。
【0011】
本発明の一態様は、上記検出装置として、コンピュータを機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、チップレスRFIDタグとレーダ装置の相対速度が未知の場合でも、チップレスRFIDタグに設けられたパターンを推定可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る検出システムのシステム構成を説明する図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る検出装置の機能ブロックを説明する図である。
図3図3は、検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、レーダ装置が送信電波を照射して速度を算出する処理の一例を説明する図である。
図5図5は、海面に浮遊するタグを検出する例を説明する図である。
図6図6は、タグが二次元方向にパターンを有する例を説明する図である。
図7図7は、タグの三次元方向の速度を特定する例を説明する図である。
図8図8は、検出装置に用いられるコンピュータのハードウエア構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0015】
(検出システム)
本発明の実施の形態にかかる検出システム10は、タグT、レーダ装置Rおよび検出装置1を備える。
【0016】
タグTは、いわゆるチップレスRFIDタグである。検出システム10は、複数のタグTを備えても良い。タグTは、レーダ装置Rから受信した電波を、反射または散乱させる複数の材料で形成されたパターンを備える。電波を反射または散乱する特性は、各材料によって異なる。複数の材料がタグTの表面に設けられる位置によって、パターンが形成される。
【0017】
パターンは、タグTの基材に、所定の材料を設けることによって形成されても良い。所定の材料は、印刷、貼付等の任意の方法で、基材に形成される。基材の材料と、基材に設けられる材料の材料は、ともに電波を反射または散乱させることが可能である。基材に設けられる材料は、基材とは異なる反射特性または散乱特性を有する。タグTの基材の一部に、基材とは異なる反射特性または散乱特性を有する材料を設けることにより、検出システム10は、タグTで反射または散乱された電波から、基材とは異なる材料が設けられた位置を推定することができる。検出システム10は、材料が設けられた位置から、タグTに形成されたパターンを推定することができる。
【0018】
タグTに形成されるパターンは、基材に設けられた材料の位置により、様々なデータを表現することができる。例えば材料が設けられた部分を「1」、材料が設けられず基材が露出する部分を「0」と定義する場合、パターンは、「1」および「0」の2値により様々なデータを表現することができる。
【0019】
レーダ装置Rは、タグTに送信電波を送信し、送信電波がタグTで反射された受信電波を取得する。レーダ装置Rは、アンテナからタグTに電波を照射する。タグTは、照射された電波を反射または散乱する。レーダ装置Rは、タグTで送信電波が反射または散乱された受信電波を、受信する。この受信電波から、タグTに設けられたパターンが推定される。パターンの推定において、SARイメージング技術が用いられる。
【0020】
レーダ装置Rは、タグTとの間に所定距離を維持して、タグTの周囲を相対的に移動する。レーダ装置Rは、移動中に所定距離間隔で、垂直偏波(送信電波)をタグTに照射する。所定距離間隔は、SARイメージング技術によりレーダ装置Rが送信する垂直偏波の波長の1/2となる。レーダ装置Rは、タグTとレーダ装置Rとの相対速度を考慮して、所定距離間隔でタグTに垂直偏波を照射する。
【0021】
タグTは、垂直偏波を反射または散乱して、水平偏波をレーダ装置Rに返す。レーダ装置Rは、タグTから返された水平偏波(受信電波)を検出する。検出された水平偏波は、信号にデータ化される。水平偏波の信号は、SARイメージング技術により、タグTに設けられたパターンの推定に用いられる。
【0022】
検出装置1は、レーダ装置Rに接続する。検出装置1は、レーダ装置Rが受信した受信電波をデータ化した受信信号を処理する。検出装置1は、レーダ装置Rが受信した受信電波の受信信号を参照できればよく、その手段は問わない。本発明の実施の形態において、検出装置1がレーダ装置Rから受信信号を取得する場合を説明するが、検出装置1が受信電波を参照して、受信信号を生成しても良い。
【0023】
本発明の実施の形態において検出装置1は、レーダ装置Rとは異なる筐体で実装され、通信によりレーダ装置Rとデータを送受信する場合を説明するが、これに限らない。検出装置1は、例えば、レーダ装置R内に実装され、レーダ装置Rから内部バス等を介してレーダ装置Rとデータを送受信しても良い。
【0024】
本発明の実施の形態においてタグTに設けられるパターンは、検出装置1に既知の既知パターンT1と、検出装置1に未知の未知パターンT2を備える。
【0025】
既知パターンT1は、タグTにそのパターンが設けられていることを検出装置1が予め把握しているパターンである。検出装置1は、タグTの既知パターンT1を特定するデータを保持する。検出システム10で用いられる既知パターンT1は1つであっても良いし、複数であっても良い。
【0026】
未知パターンT2は、タグTにそのパターンが設けられていることを検出装置1が予め把握していないパターンである。検出装置1は、タグTからの受信電波から未知パターンT2を推定する。未知パターンT2は、例えば、そのタグTの識別子を表現する。未知パターンT2は、一般的なチップレスRFIDタグが備えるパターンであっても良い。
【0027】
(検出装置)
図2を参照して本発明の実施の形態に係る検出装置1を説明する。検出装置1は、既知パターンT1を検出するための受信信号11から、レーダ装置Rが未知パターンT2を検出するための送信電波を送信する条件を特定し、レーダ装置Rに通知する。検出装置1は、レーダ装置Rに通知した条件で送信された送信電波に対する受信信号13から、未知パターンT2を推定し、出力する。
【0028】
検出装置1は、受信信号11および13、条件データ12および推定データ14の各データと、特定部22、通知部23および推定部24の各機能を備える。各データは、メモリ902またはストレージ903に記憶される。各機能は、CPU901に実装される。
【0029】
受信信号11および13は、レーダ装置RがタグTに送信電波を照射して、レーダ装置RがタグTから受信した受信電波の信号である。受信信号11および13は、検出装置1が処理可能なデータ形式を有する。
【0030】
受信信号11は、既知パターンT1を検出するためにレーダ装置Rから送信された送信電波に対する受信電波の信号である。レーダ装置Rは、既知パターンT1を検出するために、所定の頻度でタグTを照射して、受信電波を得る。受信信号11は、そのように得られた受信電波の信号である。所定の頻度は、例えば、レーダ装置Rまたは検出装置1が指定する任意のあるいはデフォルトの頻度である。所定の頻度が、送信電波の波長の1/2以下の距離間隔であることにより、SARイメージング技術による解析が可能になる。既知パターンT1を得るための照射頻度が、未知パターンT2を得るための照射頻度よりも高いことにより、既知パターンT1を検出可能な位置で照射する可能性を高め、既知パターンT1を効率的に検出することができる。
【0031】
受信信号13は、未知パターンT2を検出するためにレーダ装置Rから送信された送信電波に対する受信電波の信号である。検出装置1からレーダ装置Rに、未知パターンT2を検出するための条件が通知される。レーダ装置Rは、検出装置1から通知された条件に従って、タグTに送信電波を照射する。受信信号13は、検出装置1が通知した条件に従って送信された送信電波に対する受信電波の信号である。
【0032】
条件データ12は、未知パターンT2を推定するための送信電波をレーダ装置Rが送信する条件を特定するデータである。条件データ12は、特定部22によって特定され、通知部23によってレーダ装置Rに通知される。
【0033】
条件データ12で特定される条件は、未知パターンT2を検出するために、レーダ装置RがタグTに対して、所定距離を維持しつつ、所定距離間隔でタグTに送信電波を照射する条件である。所定距離間隔は、送信電波の波長の1/2である。条件は、レーダ装置Rが送信電波を照射する位置であっても良いし、送信電波を照射する時間であっても良い。また条件は、位置、時間などの複数のパラメータで表現されても良い。
【0034】
推定データ14は、未知パターンT2を検出するための受信信号13から推定されたパターンを特定するデータである。推定データ14は、推定部24によって生成される。
【0035】
取得部21は、レーダ装置Rから、受信信号11および13を取得する。取得部21は、レーダ装置Rの受信電波を参照して、受信信号11および13を生成しても良い。
【0036】
特定部22は、受信電波の受信信号11から既知パターンT1を検出できる、レーダ装置RとタグTの相対速度を算出する。特定部22は、算出した相対速度から、未知パターンT2を推定するための送信電波をレーダ装置Rが送信する条件を特定する。
【0037】
特定部22は、受信信号11において、既知パターンT1を検出可能な、レーダ装置RとタグTの相対速度を算出する。特定部22は、受信信号11から合成されるパターンが、既知パターンT1になるように、レーダ装置RとタグTの相対速度を逆算する。
【0038】
レーダ装置RとタグTの相対速度が算出されると、特定部22は、算出された相対速度を用いて、レーダ装置Rが未知パターンT2を推定するための送信電波を照射する条件を特定する。レーダ装置Rは、SARイメージング技術を用いるため、レーダ装置Rが照射する垂直偏波の波長の1/2の距離間隔で、タグTに垂直偏波を照射する必要がある。特定部22は、レーダ装置Rが、垂直偏波の波長の1/2の距離間隔で垂直偏波を照射できるように、レーダ装置RとタグTの相対速度から、垂直偏波を照射する位置、時間など、照射のタイミングに関する条件を特定する。
【0039】
特定部22は、特定した条件を、条件データ12として記憶する。
【0040】
通知部23は、特定部22が特定した条件をレーダ装置Rに通知する。通知部23は、条件データ12をレーダ装置Rに入力する。レーダ装置Rは、条件データ12が特定する条件で、タグTに送信電波を照射する。これによりレーダ装置RとタグTの相対距離が不明な場合でも、レーダ装置Rは、タグTに垂直偏波の波長の1/2の距離間隔で垂直偏波を照射することができる。
【0041】
推定部24は、条件データ12が特定する条件で送信された送信電波に対する受信電波の受信信号13から、未知パターンT2を推定する。推定部24は、受信信号13を参照して、SARイメージング処理により、未知パターンT2を推定する。推定部24は、推定したパターンを、推定データ14として出力する。
【0042】
図3および図4を参照して、本発明の実施の形態に係る検出方法を説明する。図4において「丸印」は、レーダ装置Rが送信電波を送信するレーダ装置Rの位置を示す。「四角印」は、未知パターンT2を検出するためにレーダ装置Rが送信電波を送信するレーダ装置Rの位置を示す。
【0043】
ステップS1において検出装置1は、既知パターンT1を検出するための受信信号11を取得する。受信信号11は、レーダ装置RがタグTに送信電波を照射することで、得られる。
【0044】
ステップS2において検出装置1は、受信信号11から、既知パターンT1を再現できる相対速度vを逆算する。図4に示すようにレーダ装置Rは、既知パターンT1を検出するために高頻度でセンシングして、受信電波を得る。検出装置1は、受信電波の受信信号11から既知パターンを合成できるように、相対速度vを逆算する。
【0045】
ステップS3において検出装置1は、逆算して得られる相対速度vを用いて、レーダ装置Rが未知パターンT2を検出するための送信電波を送信する条件を特定する。ここで、図4に示す「四角印」の位置が、送信電波を送信する条件として特定される場合を説明する。ステップS4において検出装置1は、ステップS3で特定した条件を、レーダ装置Rに通知する。レーダ装置Rは、通知された条件に従って、図4に示す「四角印」の位置で、未知パターンT2をセンシングするための送信電波を照射し、受信電波を得る。図4に示す2つの「四角印」間の距離は、λ/2(λ=送信電波の波長)となる。
【0046】
ステップS5において検出装置1は、ステップS3で特定した条件で照射された送信電波に対する受信電波の受信信号13を取得する。ステップS6において検出装置1は、SARイメージング技術を用いて、ステップS5で取得した受信信号13から未知パターンT2を推定して、推定データ14を出力する。
【0047】
本発明の実施の形態に係る検出システム10は、タグTの未知パターンT2の推定に先だって、既知パターンT1から、タグTとレーダ装置Rとの相対速度を推定する。検出システム10は、所定の頻度でタグTに送信電波を照射して得られた受信電波から、既知パターンT1を再現できる相対速度を算出する。検出システム10は、算出された相対速度から、未知パターンT2に送信電波を送信する条件を特定する。特定された条件に従って、レーダ装置Rは、タグTに送信電波を照射する。
【0048】
このような検出システム10は、タグTとレーダ装置Rの相対速度が未知の場合でも、タグTに設けられた未知パターンT2を推定することができる。
【0049】
(第1の適用例)
本発明の実施の形態において、検出装置1は、タグTとレーダ装置Rの相対速度を算出する。ここで、タグTが固定されている場合、特定部22が算出する相対速度は、レーダ装置Rの速度である。
【0050】
第1の適用例において、タグTは、所定位置に固定され、既知パターンT1と未知パターンT2を備える。レーダ装置Rは、タグTの周囲を移動しながらタグTに送信電波を照射し、受信電波を得る。検出システム10は、得られた受信電波から、既知パターンT1を得られる相対速度を算出する。タグTは固定されるので、算出される相対速度は、レーダ装置Rの速度となる。
【0051】
また検出システム10は、レーダ装置Rの速度を参照して、レーダ装置RがタグTに照射する条件を特定する。検出システム10は、レーダ装置Rが送信する垂直偏波の波長の1/2の間隔で、タグTに垂直偏波を照射できる条件を、特定する。このような条件で照射された垂直偏波に対する水平偏波から、検出システム10は、SARイメージング解析により、タグTに設けられた未知パターンT2を再現することができる。
【0052】
第1の適用例に示すように、検出システム10は、タグTが固定されている状況において、タグTに既知パターンT1を設けることにより、レーダ装置Rの速度を算出する速度計などを用いることなく、レーダ装置Rの速度の算出に適用することができる。
【0053】
(第2の適用例)
第1の適用例において、タグTが固定されている場合を説明したが、第2の適用例において、タグTが固定されず移動する場合を説明する。
【0054】
タグTが移動する場合、特定部22は、さらにレーダ装置Rの速度を取得し、取得したレーダ装置Rの速度と相対速度から、タグTの速度を算出しても良い。
【0055】
第2の適用例において、タグTは、所定位置に固定されることなく移動し、既知パターンT1と未知パターンT2を備える。レーダ装置Rは、タグTの周囲を相対的に移動しながらタグTに送信電波を照射し、受信電波を得る。検出システム10は、得られた受信電波から、既知パターンT1を得られる相対速度を算出する。レーダ装置Rの速度が既知の場合、ここで算出される相対速度から、タグTの移動速度を算出することができる。
【0056】
検出システム10は、既知パターンT1を再現できる相対速度を参照して、レーダ装置RがタグTに照射する条件を特定する。検出システム10は、レーダ装置Rが送信する垂直偏波の波長の1/2の間隔でタグTに垂直偏波を照射できる条件を、特定する。このような条件で照射された垂直偏波に対する水平偏波から、検出システム10は、SARイメージング解析により、タグTに設けられた未知パターンT2を再現することができる。
【0057】
第2の適用例は、例えばタグTが設けられた環境の速度の算出に適用することができる。タグTが、環境で浮遊する場合、第2の適用例で算出されるタグTの速度は、タグTが位置する環境の移動速度となる。
【0058】
例えば図5に示すように、タグAおよびタグBは、海面に浮遊する。タグAおよびタグBはそれぞれ、既知パターンT1(図示せず)と、タグを識別する未知パターンT2を備える。タグAの未知パターンT2は、「101」を示す。タグBの未知パターンT2は、「010」を示す。
【0059】
ドローンにレーダ装置Rを搭載し、レーダ装置Rが、各タグに送信電波を照射することにより、検出システム10は、レーダ装置Rと各タグTの各相対速度を算出することができる。また他のシステムによりレーダ装置Rの速度が測定されると、検出システム10は、各タグの速度を算出することができる。
【0060】
図5に示すタグTは、海面上に浮遊して移動する。検出システム10が算出するタグTの速度は、海流の速度となる。
【0061】
図5を参照して海面の速度を計測する場合について説明したが、これに限らない。タグTを川の水面に設けることにより、検出システム10は、川の速度を計測することができる。またタグTを流氷上などに設けることにより、検出システム10は、流氷の流れる速度を計測することができる。
【0062】
このように、既知パターンT1を備えるタグTを、環境に設置することは、低コスト、低環境負荷、視認性の向上などの複数の観点から好適である。本発明の実施の形態においてタグTは、レーダ装置Rから受信した電波を、反射または散乱させる複数の材料で形成されたパターンを備えれば良い。タグTは、アンテナなどの導電性物質を必要とせず、低コストで実現することができる。タグTの材料の自由度が高く、低環境負荷を実現できる。従って、図5に示すように、タグTを、海などの環境に設置することで、海流などの海の環境を低コストかつ低環境負荷で測定することが可能になる。また、タグTを設置する環境に応じて視認性の高い色をタグTに与える、あるいは視認性の低い色をタグTに与えることにより、タグTの視認性を制御することもできる。またSARイメージング技術を用いることにより、従来のレーダセンシングよりも分解能が高く、また読み取り距離の向上が期待できるので、環境の状態を精度良く精度良く測定することができる。
【0063】
(第3の適用例)
上記の実施例等において、パターンが一次元の場合を説明したが、図6を参照して、第3の適用例において、パターンが二次元の場合を説明する。
【0064】
図6(a)および(b)に示す例において、x方向は角度方向(レーダ搭載ドローンの移動方向)で、y方向は、グランドレンジ方向である。タグTは、レーダ搭載ドローンの斜め下方向に位置し、二次元上を移動する。レーダは、例えば、77-81GHzのミリ波FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダである。
【0065】
図6(a)に示すようにタグTは、既知パターンT1と未知パターンT2を備える。既知パターンT1と未知パターンT2は、レーダ装置Rからの電波を反射または散乱させる複数の材料により、所定のパターンを形成する。図1に示す例において、各材料は一方向に設けられるが、図6(a)に示す例において、各材料は、x方向とy方向の二次元方向に設けられる。複数の材料のうちの一つは、タグTの基材である。基材は、例えば電波吸収シートである。複数の材料のうちの一つは、タグTの基材に設けられる材料であって、例えばカーボンである。
【0066】
個々の材料が設けられる部分の大きさは、SARイメージングの分解能に依存する。
【0067】
x方向において、SARイメージングによりパターンが測定される。x方向における分解能Δxは、λ/2(λ=送信電波の波長)となる。y方向において、測距FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダによりパターンが測定される。y方向における分解能Δyは、c/2B(c=光速、B=測距FMCWレーダが使用する帯域幅)となる。
【0068】
ここで、Δx=2mmで、Δy=37.5mmの場合、未知パターンT2の1ビットの情報は、75mmで表現される。従って、タグTが、10cm四方(1000mm)の大きさを有する場合、133ビットのデータを表現することができる。133ビットのうちの30ビット程度で既知パターンT1を表現したとしても、10cm四方のタグTは、100ビット程度の未知パターンT2を表現することができる。
【0069】
図6(a)および(b)に示す例において、検出システム10は、二次元方向に動くタグTの移動速度を計測することができる。
【0070】
x方向において、SARイメージングによりタグTのパターンが測定されるので、検出システム10は、既知パターンT1を再現可能な速度を、x方向におけるレーダ装置RとタグTの相対速度とすることができる。またレーダ装置Rのx方向の速度を別途取得することにより、検出システム10は、タグTのx方向の速度を算出することができる。y方向において、検出システム10は、ドップラーレーダ解析によってy方向の相対速度を推定することができる。またレーダ装置Rのy方向の速度を別途取得することにより、検出システム10は、タグTのy方向の速度を算出することができる。
【0071】
また検出システム10は、既知パターンT1を検出した箇所を、タグTの位置として特定することができる。
【0072】
なおレーダ装置Rは、タグTを包含する範囲に送信電波を照射する。レーダ装置Rは、照射範囲から反射された受信電波を受信する。検出システム10は、受信電波をSARイメージングで解析することにより、x方向の距離に対する反射強度を求める。検出システム10は、受信電波の周波数解析することで、y方向の距離に対する反射強度を求める。
【0073】
レーダ装置Rはx方向の位置を細かく移動しながら送信電波を照射し、タグTから受信電波を取得する。これにより検出システム10は、x方向の受信電波の変化から、x方向のパターンを特定することができる。
【0074】
(第4の適用例)
レーダ装置Rがビームフォーミング技術を用いることで、検出システム10は、1つのレーダ装置Rが得た受信電波から、複数のタグTを効率的に検出することができる。
【0075】
例えば、レーダ装置Rが送信電波を照射する方向をソフトウェア等により制御する。レーダ装置Rは、様々な方向にビームを照射し、各方向から受信電波を取得する。検出システム10は、取得した受信電波から、既知パターンT1を検出可能な相対速度と、既知パターンT1を検出できた際の既知パターンT1の位置を特定することができる。
【0076】
(第5の適用例)
第3の適用例において、タグTが二次元で移動する場合、検出システム10は、角度方向およびグランドレンジ方向のそれぞれの速度を計測できることを示した。これに対し第5の適用例において、タグTが三次元を移動する場合、検出システム10が三次元の速度ベクトル特定する方法を説明する。
【0077】
図7に示すように、タグTの上空を移動する3台のドローンのそれぞれにレーダ装置Rが搭載される。3台のドローンは、それぞれ異なる位置を移動する。各レーダ装置Rが、タグTのグランドレンジ方向および角度方向のそれぞれの速度を測定する。検出システム10は、測定された各速度をベクトル合成することで、タグTの三次元の速度(Vx、Vy、Vz)を求めることができる。
【0078】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る検出システム10は、タグTに既知パターンT1を設けることにより、受信電波から既知パターンT1を再現可能な相対速度を特定することができる。従って、レーダ装置RとタグTの相対速度が不明な場合でも、検出システム10は、SARイメージング技術を用いて、チップレスRFIDの未知パターンT2を推定することができる。
【0079】
またレーダ装置Rの速度が既知の場合、検出システム10は、タグTの移動速度を算出することができる。逆にタグTの移動速度が既知の場合、検出システム10は、レーダ装置Rの速度を算出することができる。
【0080】
タグTに設けられるパターンは、レーダ装置Rからの電波を反射または散乱する複数の材料で形成されればよく、パターンを形成する材料に対する制限が少ない。タグTが設置される環境にあわせてタグTを形成する材料を選択できるので、このようなタグTは、広い用途に使用可能である。またタグTの材質に対する制限が少ないので、タグTの形状、デザイン、色なども、環境に合わせて適宜選択可能である。またタグTを環境に戻る材質で形成することにより、タグTの回収コストも軽減可能である。
【0081】
上記説明した本実施形態の検出装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える汎用的なコンピュータシステムが用いられる。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされたプログラムを実行することにより、検出装置1の各機能が実現される。
【0082】
なお、検出装置1は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また検出装置1は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0083】
検出装置1のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0084】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 検出装置
10 検出システム
11、13 受信信号
12 条件データ
14 推定データ
21 取得部
22 特定部
23 通知部
24 推定部
901 CPU
902 メモリ
903 ストレージ
904 通信装置
905 入力装置
906 出力装置
T タグ
T1 既知パターン
T2 未知パターン
R レーダ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8