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7636694取引方法および取引システムならびに取引プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】取引方法および取引システムならびに取引プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20250219BHJP
【FI】
G06Q50/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023526726
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2021021920
(87)【国際公開番号】W WO2022259421
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】久住 嘉和
(72)【発明者】
【氏名】吉武 寛司
【審査官】青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-056839(JP,A)
【文献】特開2020-024702(JP,A)
【文献】特開2021-012468(JP,A)
【文献】特開2018-005563(JP,A)
【文献】特開2001-195513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農産物を取引する取引システムが行う取引方法であって、
前記取引システムは、生産量受信部と、需要受信部と、取引制御部と、通知部と、を備え、
前記生産量受信部が、機械学習により農産物の生産量を予測する生産量予測部から、未来の所定日における、複数の出荷元でそれぞれ生産される農産物の予測生産量を示す予測生産量情報を受信する生産量受信工程と、
前記需要受信部が、機械学習により農産物の需要を予測する需要予測部から、未来の所定日における、複数の購入先でそれぞれ発生する農産物の予測需要量を示す予測需要情報を受信する需要受信工程と、
前記取引制御部が、前記所定日における、各出荷元の予測生産量と各購入先の予測需要量とを比較し、予測生産量と予測需要量とが一致する出荷元と購入先とを対応付けるマッチング工程と、
前記通知部が、前記対応付けた出荷元に、対応する購入先の配送先及び前記所定日を送信する送信工程と、を備え、
前記マッチング工程において、前記取引制御部は、
予測生産量と予測需要量とが一致しない各出荷元と各購入先に対して、いずれかの第1の購入先に、いずれかの第1の出荷元の予測生産量と一致する予測需要量となるように前記通知部を用いて変更要求を送付し、前記第1の購入先から前記変更要求に対する承認を受信した場合に、前記第1の出荷元と前記第1の購入先とを対応付ける
取引方法。
【請求項2】
前記取引制御部が、前記購入先にて提示された前記農産物の購入価格を前記出荷元に提示する価格提示工程、を更に備え、
前記取引制御部は、一の出荷元の予測生産量に対して、複数の購入先における予測需要一致したとき、前記複数の購入先のうち、最も高い購入価格を提示した購入先を、農産物の出荷先に対応付ける
請求項1に記載の取引方法。
【請求項3】
前記取引制御部は、
一の出荷元の予測生産量に対して、複数の購入先における予測需要量が一致したとき、前記一の出荷元からの配送距離が最小となる購入先を、農産物の出荷先に対応付ける
請求項1に記載の取引方法。
【請求項4】
前記取引制御部が、前記出荷元による農産物の加工処理が可能であるか否かを示す加工可否情報を受信する加工可否情報受信工程と、
前記取引制御部が、前記購入先にて農産物の加工を希望するか否かを示す加工希望情報が入力されているか否かの結果を受信する加工希望情報受信工程と、を更に備え、
前記取引制御部は、前記マッチング工程において、
記所定日における予測生産量と予測需要量とが一致する出荷元と購入先であって、前記出荷元の加工可否情報が可能で、前記購入先の加工希望情報が希望の場合、前記出荷元を前記出荷先に対応付ける
請求項1に記載の取引方法。
【請求項5】
前記出荷元の加工可否情報が可能で、前記購入先の加工希望情報が希望の場合、前記通知部が、農産物の加工を行う加工工場に対して、加工処理を希望していることを示す情報を送信する
請求項4に記載の取引方法。
【請求項6】
農産物を取引する取引システムが行う取引方法であって、
前記取引システムは、生産量受信部と、需要受信部と、取引制御部と、通知部と、を備え、
前記生産量受信部が、機械学習により農産物の生産量を予測する生産量予測部から、未来の所定日における、複数の出荷元でそれぞれ生産される農産物の予測生産量を示す予測生産量情報を受信する生産量受信工程と、
前記需要受信部が、機械学習により農産物の需要を予測する需要予測部から、未来の所定日における、複数の購入先でそれぞれ発生する農産物の予測需要量を示す予測需要情報を受信する需要受信工程と、
前記取引制御部が、前記所定日における、各出荷元の予測生産量と各購入先の予測需要量とを比較し、一の購入先の予測需要量と、前記一の購入先にて指定された特定の出荷元の予測生産量とが一致したときに、前記特定の出荷元の農産物の出荷先を、前記一の購入先に対応付けるマッチング工程と、
前記通知部が、前記特定の出荷元に、前記一の購入先及び前記所定日を送信する送信工程と、
を備えた取引方法。
【請求項7】
産物を取引する取引システムであって、
機械学習により農産物の生産量を予測する生産量予測部から、未来の所定日における、複数の出荷元でそれぞれ生産される農産物の予測生産量を示す予測生産量情報を受信する生産量受信部と、
機械学習により農産物の需要を予測する需要予測部から、未来の所定日における、複数の購入先でそれぞれ発生する農産物の予測需要量を示す予測需要情報を受信する需要受信部と、
前記所定日における、各出荷元の予測生産量と各購入先の予測需要量とを比較し、予測生産量と予測需要量とが一致する出荷元と購入先とを対応付ける取引制御部と、
前記対応付けた出荷元に、対応する購入先の配送先及び前記所定日を送信する通知部と、を備え、
前記取引制御部は、
予測生産量と予測需要量とが一致しない各出荷元と各購入先に対して、いずれかの第1の購入先に、いずれかの第1の出荷元の予測生産量と一致する予測需要量となるように前記通知部を用いて変更要求を送付し、前記第1の購入先から前記変更要求に対する承認を受信した場合に、前記第1の出荷元と前記第1の購入先とを対応付ける
取引システム。
【請求項8】
請求項7に記載の取引システムとしてコンピュータを機能させる取引プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取引方法および取引システムならびに取引プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
農産物を取引する方法として非特許文献1に開示された技術が知られている。非特許文献1では、生産者と、仲買人及び小売業者などの購入者との間で農産物を取引する際に、各地で生産された農産物を中央卸売市場などの大都市にある卸売市場に集約する。その後、卸売市場において、卸売会社と購入者との間での売買を行い、購入者が購入した農作物を、店舗などに搬送し、一般の顧客に販売することが開示されている。
【0003】
農産物を卸売市場に集約する理由は、大都市にある卸売市場は大きな需要を有するので、売買の取引が成立しやすいためである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】第43回 産業競争力会議実行実現点検会合 資料1 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/jjkaigou/dai43/siryou1.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1に開示された技術では、生産地で生産された農作物を、集積場所、卸売市場、小売店へ配送する流通経路を移動させる必要があり、農産物を長距離、かつ長時間に亘って移動させる必要がある。更に、ある地方から大規模都市付近の市場に農産物を配送し、ある地方に再度配送する場合もある。このため、配送コストが増加し、且つ農産物の鮮度が低下するという問題が発生していた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、農産物の移動させるための流通経路を短縮化することが可能な取引方法および取引システムならびに取引プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の取引方法は、生産者と購入者との間で農産物を取引する取引方法であって、未来の所定日における農産物の予測生産量を、生産者毎に取得する生産量取得工程と、前記所定日における前記農産物の予測需要を、購入者毎に取得する需要取得工程と、前記所定日における、各生産者の予測生産量と各購入者の予測需要とのマッチングを行うマッチング工程と、前記マッチングが成立した購入者が希望する配送先、配送する農産物の情報、及び前記所定日を、前記マッチングが成立した生産者に通知する通知工程と、を備える。
【0008】
本発明の一態様の取引システムは、生産者と購入者との間で農産物を取引する取引システムであって、未来の所定日における農産物の予測生産量を取得する予測生産量取得部と、前記所定日における前記農産物の需要を、購入者毎に取得する需要取得部と、前記所定日における、前記予測生産量と、前記予測需要をマッチングする取引制御部と、前記マッチングが成立した購入者が希望する配送先、配送する農産物の情報、及び前記所定日を、前記マッチングが成立した生産者に通知する通知部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様は、上記取引システムとしてコンピュータを機能させるための取引プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、農産物の移動させるための流通経路を短縮化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る取引システム、演算装置、及びその周辺機器の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係る取引システムの処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、予測生産量情報、予測品質情報、予測出品情報、及び予測需要情報に含まれるラベルの例を示す説明図である。
図4図4は、第2実施形態に係る取引システム、演算装置、及びその周辺機器の構成を示すブロック図である。
図5A図5Aは、第2実施形態に係る取引システムの処理手順を示すフローチャートの第1の分図である。
図5B図5Bは、第2実施形態に係る取引システムの処理手順を示すフローチャートの第2の分図である。
図6図6は、第3実施形態に係る取引システム、演算装置、及びその周辺機器の構成を示すブロック図である。
図7図7は、第3実施形態に係る取引システムの処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、本実施形態のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態の構成]
図1は、第1実施形態に係る取引システム1を含む演算装置100及びその周辺機器の構成を示すブロック図である。取引システム1は、生産者P1と、仲買人及び小売業者などの購入者P2との間で農産物の取引を、通信網で接続される仮想的な空間で実施する。
【0013】
まず、本実施形態について概要を説明する。本実施形態に係る取引システム1では、未来の日にちにおける農産物の生産量を予測する。あわせて取引システム1は、未来の日にちにおける農産物の需要を取得する。取引システム1は、未来の所定日における農産物の生産量と需要を、生産量がいずれかの需要に割り当てられるようマッチングを行う。
【0014】
取引システム1は、マッチングを行った後に、生産者(所定の単位)に対して予測された生産量に応じて、マッチングされた購入者と購入量を割り振る。取引システム1は、取引を行う未来の所定日、マッチングされた農産物、需要量、購入者、取引金額などの情報を生産者に通知する。生産者は通知された情報に基づき、未来の所定日に当該購入者に直接農産物を発送する。つまり、未来の所定日における取引を自動的に完了するとともに、生産者は通知された情報に応じて購入者に農産物を発送するだけでよい。更に、既存の市場を用いた売買と比較し農産物を集約する必要がなくなることから運送コストが削減できるとともに、収穫されてから購入者の元に農産物が到着するまでの時間も短縮することができる。
【0015】
なお、本実施形態では、農産物の配送元を生産者P1とし、生産者単位で購入者P2との間での取引を実施する例について説明する。生産者単位以外にも、複数の生産者からなる出荷団体単位、生産者が属する地域単位、市場単位、事業者単位を配送元として取引を行ってもよい。
【0016】
なお、本実施形態で示す「農産物」とは、畑、田圃、農園、果樹園、山林、海洋で生産、或いは採取される植物を指す。農産物は、青果、米、果物、キノコ、生花、観葉植物、海藻、家畜の飼料を含む。
【0017】
図1に示すように、演算装置100は、取引システム1の各構成要素と、生産量予測部21と、品質予測部22と、需要予測部23を備えている。
【0018】
生産量予測部21は、生産者P1が生産する農産物の、未来の生産量を未来の日にち毎に予測する。生産量予測部21は、例えば機械学習を用いたAI(artificial intelligence)システムを搭載している。機械学習として、一般的に用いられている教師有り学習を採用することができる。
【0019】
生産量予測部21は、未来の天候・気象情報、過去の天候・気象情報と生産量の関係を示す情報、農産物の生育度合いを左右する土地の情報(例えば、pH)、などを教師データとする学習モデルを用いて、未来の所定日における農産物の生産量を予測する。以下では、生産量予測部21が予測した未来の生産量の情報を、「予測生産量情報」という。
【0020】
なお、本実施形態では未来の所定日における農産物の生産量を予測する例について示すが、例えば、未来の二日間、三日間、或いは一週間などの所定期間における農産物の生産量を予測するようにしてもよい。また、機械学習に代えて有効積算気温法のようなヒューリスティックなモデルを用いてもよい。
【0021】
品質予測部22は、生産者P1が生産する農産物の、未来の日にち毎の農産物の品質を予測する。農産物の品質とは、農産物の機能性成分、糖度、酸度などである。品質予測部22は、前述した生産量予測部21と同様に、AIシステムを用いて未来の所定日における農産物の品質を予測する。
【0022】
例えば、糖度を例として説明すると、農産物の生産地における過去の気象データと当該気象データを取得した際に収穫された農作物の糖度を学習したモデルを用いることができる。なお、品質を予測することができれば主観評価であっても構わない。以下では、品質予測部22が予測した未来の品質情報を、「予測品質情報」という。予測生産量情報と同様にヒューリスティックなモデルを用いてもよい。また、予測生産量情報と予測品質情報を同時に推定するよう学習された学習済みモデルを用いてもよい。
【0023】
需要予測部23は、購入者P2が希望する農産物の、未来の日にち毎の需要を予測する。需要予測部23は、例えば機械学習を用いたAIシステムであり、未来の天候・気象情報、過去の天候・気象情報と需要との関係を示す情報、曜日、季節、祭事、催事など日にちに関する情報、を用いて未来の所定日における農産物の需要を予測する。以下では需要予測部23が予測した未来の需要情報を、「予測需要情報」という。
【0024】
なお、図1では、一人の生産者P1、一人の購入者P2を図示しているが、生産者P1、及び購入者P2は複数人存在する。従って、生産量予測部21及び品質予測部22は、各生産者P1毎に、生産量及び品質を予測する。また、需要予測部23は各購入者P2毎に需要を予測する。本実施形態では予測需要情報を用いるが、予測需要情報に代えて未来の所定日の需要情報を外部から取得してもよい。例えば、仲卸や小売店の担当者から入力された需要情報を用いてもよい。
【0025】
取引システム1は、生産量取得部11と、品質取得部12と、生産集計部13と、需要取得部14と、取引情報収集部15と、取引制御部16と、配送先設定部17と、通知部18、を備えている。
【0026】
生産量取得部11は、生産量予測部21から出力される未来の日にちにおける農産物の予測生産量を取得する。
【0027】
品質取得部12は、品質予測部22から出力される未来の日にちにおける農産物の予測品質を取得する。農産物の品質は、品種を含むものである。「品種」とは、例えば「愛媛県産〇〇みかん」、「長野県産〇〇キャベツ」などのように、形態、性質が特化されている農産物の種類を指す。なお、品質取得部12が生産者P1から取得する農産物の品質が上記「品種」である場合には、品質予測部22を経由せずに、生産者P1から直接品種の情報を取得することができる。また、品種の情報を予測生産量情報に付加することにより、農産物の品種を特定するようにしてもよい。また、予測品質情報を用いず、予測生産量情報のみを用いてもよい。
【0028】
生産集計部13は、未来の日にちにおける、農産物の生産者、予測生産量、及び予測品質を関連付けて記憶する。以下、上記の関連付けた情報を、「予測出品情報」という。
【0029】
需要取得部14は、需要予測部23から出力される未来の日にちにおける農産物の予測需要情報を取得する。
【0030】
なお、上述した生産集計部13により、各生産者P1による予測出品情報を仲買人、小売業者などの購入者P2に開示し、購入者P2が、開示された情報を閲覧して未来の所定日における需要情報を設定するようにしてもよい。
【0031】
取引情報収集部15は、生産集計部13から出力される予測出品情報、及び需要取得部14から出力される予測需要情報に基づいて、未来の日にち毎の予測出品情報と予測需要を関連付けた関連付け情報を生成する。取引情報収集部15は、生成した関連付け情報を取引制御部16に出力する。
【0032】
関連付け情報は、例えば未来の○年○月○日のように日にちを特定し、この日にちにおける予測出品情報と予測需要とを関連付けることにより生成することができる。また、他の例として、現在の日にちを基準として、10日後、来週の木曜日、のように相対的に日にちを特定してもよい。相対的な日にちが設定された場合には、現在の日にちを基準として年月日の情報に変換すればよい。
【0033】
取引制御部16は、未来の任意の日にちにおける予測生産量情報と予測需要情報との間でのマッチングを行う。マッチングは未来の生産量全体に対して、先に未来の需要単位でマッチングを行い、差分が出た場合は後述するように個々での調整を行う。例えば、ある購入者P2がりんごの品質Y1(例えば、品種)を需要として挙げていたが、品質Y1のリンゴの生産量が需要よりも小さい場合に、この購入者P2に対して品質Y2のりんごへの変更を提案する。或いは、品質Y3のパイナップルへの変更を提案する。この例における品質Y2のりんご、品質Y3のパイナップルはそれぞれ予測されている生産量より需要が少ないものを提示すればよい。
【0034】
全体をマッチングした後、生産者P1毎の予測生産量情報と、購入者P2毎の予測需要情報をマッチングしていけばよい。例えば、全体としてリンゴ5000kgのマッチングが行われた場合を想定する。この段階では、未来の任意の日にちにリンゴ5000kgの取引が行われることのみが確定している。この後、5000kgのりんごを各生産者P1に配分する。生産者P1Aは小売K1に500kg、小売りK2に400kg・・、のように生産量の5000kgのすべてが配分されるまで繰り返す。この際、生産者P1と小売りなどの購入者P2との間の配送距離の合計、配送に係る金額、エネルギーの総量が小さくなるような制約を設けてもよい。具体的な配分方法については後述する。
【0035】
また、取引制御部16は、マッチングを行うことにより、生産者P1と購入者P2との間で取引を成立させてもよい。言い換えると、前述した例では、各生産者P1による生産予定の農産物の総量のマッチングを終えてから各生産者P1への配分を行う例を示したが、直接個々の生産者P1と購入者P2をマッチングしてもよい。取引制御部16は、例えば、生産者P1が未来の所定日に出荷する予測生産量情報と、購入者が未来の所定日に購入を希望する予測需要情報が一致する場合に、この生産者P1と購入者P2をマッチングさせてもよい。
【0036】
図3は、予測生産量情報、予測品質情報、予測出品情報、及び予測需要情報に含まれるラベルを示す説明図であり、以下、図3を参照して具体的な配分方法について説明する。取引制御部16は、予測出品情報(予測生産量情報、予測品質情報)、及び、予測需要情報にラベルを設定する。予測生産量情報に設定するラベルは、図3の符号11aに示すように、未来の所定日、生産者、農産物、予測された生産量、の少なくとも2つを対応させた情報である。予測品質情報に設定するラベルは、図3の符号12aに示すように、未来の所定日、生産者、農産物、予測された品質、の少なくとも2つを対応させた情報である。
【0037】
予測出品情報に設定するラベルは、図3の符号13aに示すように、上記した符号11a、12aに含まれる情報である。予測需要情報は、図3の符号14aに示すように、未来の所定日、購入者(小売など)、農産物、需要量、品質、の少なくとも2つを対応させた情報である。
【0038】
取引制御部16は、生産集計部13から取得した予測出品情報のラベルと、需要取得部14から取得した予測需要情報のラベルをマッチングする。具体的に、生産集計部13から、予測出品情報として「1月30日、キャベツ、500kg、品質B1」のラベルが与えられたものとする。また、需要取得部14から3つの予測需要情報のラベル「1月30日、小売K1、キャベツ、100kg、品質B1」、「1月30日、小売K2、キャベツ、500kg、品質指定なし」、「1月30日、小売K2、みかん、500kg、品質B2」が与えられた場合に、これらのラベルをマッチングする例について説明する。
【0039】
1月30日の品質B1及び品質指定なしのキャベツの需要の合計は600kgであることから、生産量が合計600kgとなるキャベツをマッチングする。また、1月30日の品質B2のみかんの需要は500kgであることから、生産量500kg、品質B2のみかんをマッチングする。
【0040】
次に、予測出品情報のラベルと予測需要情報のラベルが一致しない場合について説明する。例えば、生産集計部13から、予測出品情報として「1月30日、キャベツ、500kg、品質B1」のラベルが与えられたものとする。また、需要取得部14から3つの予測需要情報のラベル「1月30日、小売K1、キャベツ、100kg、品質B1」、「1月30日、小売K2、キャベツ、300kg、品質B1」、「1月30日、小売K2、キャベツ、100kg、品質B3」が与えられたものとする。
【0041】
1月30日の品質B1のキャベツの需要は400kgであることから、生産量500kgのうち400kgをマッチングする。ここで、生産される品質B1のキャベツ100kgと、品質B3のキャベツ100kgの需要がそれぞれマッチングされていない。取引システム1を提供する事業者は、小売K2に対して、品質B3のキャベツ100kgを品質B1のキャベツ100kgに変更することを提案する。
【0042】
小売K2が上記提案に合意した場合には、「1月30日、小売K2、キャベツ、100kg、品質B3」のラベルの「品質B3」を「品質B1」に変更して、再度マッチングを行う。その結果、マッチングする確率を高めることができる。変更したラベルの数量以外の要素が共通する、予めマッチングが完了している他のラベルと統合してもよい。即ち、日にち、農産物、品質が一致していれば優先してマッチングを行う。生産集計部13から取得した予測出品情報のラベルに記述されている数量と、マッチングした数量の合計が一致すればそこで終了してもよい。一致しない場合は、ラベルに記述されている農産物、品質、数量のいずれかに変更を加えて再度マッチングすればよい。変更を加える候補を小売などの購入者P2、或いは生産者P1に提示し合意を取ればよい。
【0043】
マッチングが完了した場合には、前述したデータベースからマッチングが完了した日にちの情報を有する全てのラベルを取得し、マッチングが完了した需要に係るラベルと対応付けを行えばよい。例えば、「1月30日、生産者P11、キャベツ、500kg、品質B1」という予測出品情報のラベルに、「1月30日、小売K1、キャベツ、100kg、品質B1」と、「1月30日、小売K2、キャベツ、400kg、品質B1」という予測需要情報のラベルが関連付けられる。後述する配送先設定部17に関連付けられたラベル情報を出力すればよい。なおここでは、予測生産量情報、予測品質情報を同時に予測する場合について記載したが、日にち、農産物、生産量、品種のみを用いてマッチングしてもよい。
【0044】
なお、本実施形態では、農産物の予測生産量情報と予測需要情報とをマッチングさせる例について示すが、予測生産量情報及び予測品質情報を含む予測出品情報と、予測需要情報とマッチングさせることも可能である。予測品質情報を含めることにより、農産物の生産量に品質を加えた条件でマッチングを行うことができる。
【0045】
また、取引制御部16で農産物の取引のマッチングを行う際に、購入者P2が複数の生産者P1の中から特定の生産者を指定してマッチングを行うことも可能である。生産者を指定することにより、購入者P2は例えば信用度の高い生産者を指定して、農産物を購入することが可能になる。
【0046】
取引制御部16は、各生産者P1から提供される予測生産量情報と、各購入者P2が希望する予測需要情報との間でマッチングされない場合には、前述したように予測生産量情報、及び予測需要情報の少なくとも一方を調整する機能を備える。
【0047】
例えば、未来の所定日における農産物の生産量が需要よりも多いことにより、マッチングされない場合には、所定日における農産物の需要を高くするか、或いは、農産物の生産量を低くするように調整する。具体的に、取引制御部16は、マッチングの対象とされている農作物の単価を下げることで、購入者P2に対して、農産物をより多く購入できるか否かを提案する。提案の結果、購入者P2が農産物をより多く購入できる場合には、マッチングが成立する。
【0048】
また、未来の任意の日にちにおける所定の農産物の需要が生産量よりも多いことにより、マッチングされない場合には、所定の農産物の需要を低くするか、或いは、農産物の生産量を高くするように調整する。具体的に、取引制御部16は、マッチングの対象とされている所定の農産物の、代替となる農作物の出荷を購入可能であるか否かを購入者P2に提案する。前述した異なる品種のリンゴを提案することはこの一例である。こうすることにより、マッチングする確率を高めることができる。
【0049】
取引制御部16は、マッチングが完了した農作物の種類、数量、出荷日、生産者P1、購入者P2の情報を関連付けた取引情報を通知部18に出力する。
【0050】
取引制御部16は、マッチングが完了した後に、購入者P2が購入対象となる農産物の対価を支払ったことが確認された場合に、上記取引情報を通知部18に出力することもできる。こうすることにより、農産物に対する対価が未納になることを防止できる。
【0051】
また、取引制御部16は、対象となる農産物が購入者P2が指定した配送先に納入されたことを示す通知を受けた際に、購入者P2に対して農産物の対価を支払うように通知してもよい。こうすることにより、購入者P2は農産物が納入されたことを確認した上で、対価を支払うことができる。この場合、取引システムを提供する事業者が予め購入者より代金を受領しておき、マッチングされた農産物が納入されなかった場合や数量が異なる場合は納入された数量分のみ生産者に支払うよう構成してもよい。
【0052】
配送先設定部17は、マッチングが完了した農作物の配送先の情報を設定する。例えば、農産物の購入者が、自身が管理する倉庫などの所望する場所を配送先として設定することができる。
【0053】
通知部18は、マッチングが完了した生産者P1、及び購入者P2に対して、出荷対象となる農産物の取引情報、即ち、農産物の種類、数量、出荷日、取引金額を通知する。更に、農産物の配送先の情報を通知する。
【0054】
生産者P1は、通知部18から通知された出荷日(未来の所定日)に、出荷対象となる農作物を配送先に出荷する。配送が完了した際、農産物の運送業者、及び購入者P2が、受領を完了した旨を通知するよう設定してもよい。通知部18は、農産物の受領を完了したことを示す通知を受信したことを受けて、購入者P2に対価の支払いを促すようにしてもよい。
【0055】
[第1実施形態の動作]
次に、第1実施形態の動作を図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0056】
初めに、図2に示すステップS11において、生産量取得部11は、各生産者P1毎の、各種の農産物の未来の所定日における予測生産量を取得する。具体的には、生産量予測部21において機械学習などにより予測される未来の所定日における農産物の予測生産量を取得する。即ち、ステップS11の処理は、未来の所定日における農産物の予測生産量を、生産者毎に取得する生産量取得工程の一例である。
【0057】
このとき、予測生産量情報が「未来の所定日、生産者、農産物、予測された生産量」を記述したラベルを保持するように構成してもよい。例えば、「1月30日、生産者P11、キャベツ、500kg」をラベルとすることができる。ラベルにかえてレコードとしてもよい。即ち、多数のカラムをもつ構造体であり、後に集計と配分を行うことができればどのような手段を用いてもよい。作成したラベルは図示しないデータベースに保存してもよい。後述するラベルについてはいずれも同様である。
【0058】
ステップS12において、品質取得部12は、各生産者P1毎の、各種の農産物の未来の所定日において出荷する農産物の予測品質を取得する。具体的には、品質予測部22において機械学習などにより予測される未来の所定日に出荷可能な農産物の予測品質を取得する。農産物の品質とは、前述したように、農産物の機能性成分、糖度、酸度、を含む。
【0059】
このとき、「未来の所定日、生産者、農産物、予測された品質」をラベルとして保持するよう構成してもよい。前述したように予測生産量情報と予測品質情報を同時に推論した場合、「未来の所定日、生産者、農産物、予測された生産量、予測された品質」をラベルとして保持すればよい。例えば、「1月30日、生産者P11、トマト、リコピン含有量」をラベルとすればよい。前述したように品質の一例として品種としてもよい。品種とする場合は予測を行わず、単に品種を入力すればよい。また、図1に示す品質取得部12を省略して、生産量取得部11で作成するラベルに品種情報を追加してもよい。
【0060】
ステップS13において、生産集計部13は、各生産者P1毎の予測生産量、及び予測品質を、未来の日にち毎に集計する。集計した結果をラベルとして保存してもよい。例えば、「1月30日、キャベツ、500kg、品質B1」、「1月30日、トマト200kg、品質B2」というように農産物の品質毎に予測生産量情報を集計した結果をラベルとすればよい。前述したように、品質の一例として品種を用いてもよい。
【0061】
ステップS14において、需要取得部14は、需要予測部23により各購入者P2毎の、未来の所定日における予測需要情報を取得する。具体的には、需要予測部23において機械学習などにより予測される未来の所定日における予測需要情報を取得する。即ち、ステップS14の処理は、未来の所定日における農産物の予測需要を、購入者毎に取得する需要取得工程の一例である。このとき、取得した需要をラベルとして保持するよう構成してもよい。例えば、「1月30日、小売K2、トマト、100kg、品質B2」をラベルとすればよい。
【0062】
なお、予測需要情報は、需要予測部23で予測される情報に限らず、購入者自身が未来の日にちにおける予測需要情報を入力してもよい。例えば、一週間後に〇〇イベントがあり、〇〇野菜の需要が高まることが予め判っているような場合に、購入者自身により予測需要情報を入力することができる。
【0063】
ステップS15において、取引情報収集部15は、生産集計部13で集計された予測出品情報(予測生産量情報、予測品質情報)と、需要取得部14で取得された予測需要情報を集計する。
【0064】
ステップS16において、取引制御部16は、未来の日にち毎に、予測生産量情報と予測需要情報とのマッチングを行う。即ち、ステップS16の処理は、所定日における、各生産者の予測生産量と各購入者の予測需要とのマッチングを行うマッチング工程の一例である。なお、予測生産量情報に予測品質情報を加えた予測出品情報と、予測需要情報とのマッチングを行ってもよい。
【0065】
ステップS17において、取引制御部16は、ステップS16の処理でマッチングされない農産物が有るか否かを判定する。例えば、ある生産者P1により、○年○月○日に、農産物〇〇を数量〇〇だけ出荷可能であるという予測生産量情報が入力されており、この予測生産量情報にマッチングする予測需要情報が存在しない場合には、マッチングされないものと判定される。
【0066】
マッチングされない農産物が有る場合には(S17;YES)、ステップS18に処理を進め、そうでなければ(S17;NO)、ステップS19に処理を進める。
【0067】
ステップS18において、取引制御部16は、予測需要情報の変更が可能であるかなどの、条件変更の可否判断を購入者P2に通知する。例えば、農産物〇〇を納入する数量を減らす、或いは増やすなどの提案を購入者P2に問い合わせる。
【0068】
購入者P2により、予測需要情報が変更された場合には、再度ステップS16の処理において、予測生産量情報と、変更後の予測需要情報とのマッチングを繰り返す。
【0069】
例えば、前述したように、予測出品情報として「1月30日、キャベツ、500kg、品質B1」のラベルが与えられ、予測需要情報として「1月30日、小売K1、キャベツ、100kg、品質B1」、「1月30日、小売K2、キャベツ、300kg、品質B1」、「1月30日、小売K2、キャベツ、100kg、品質B2」の3つのラベルが与えられた場合を想定する。この場合、キャベツの生産量は500kgであり、キャベツの需要も合計500kgである。
【0070】
しかし、生産されるキャベツは全て品質B1であるのに対して、小売K2が購入希望のキャベツのうち100kgは品質B2のキャベツである。従って、予測出品情報のラベルと予測需要情報のラベルはマッチングしない。このような場合に、取引制御部16の事業者は、小売K2に品質の変更を提案する。具体的に、品質B2のキャベツ100kgを、品質B1のキャベツに変更できるかどうかを提案する。小売K2がこの提案に承諾した場合には、マッチングしたものと判定する。
【0071】
ステップS19において、取引制御部16は、マッチングが完了した生産者P1と、購入者P2が希望する配送先とを対応付ける。具体的には、取引制御部16は購入者P2に対して、農産物の配送先の情報入力を促し、購入者P2により配送先が入力された場合に、配送先設定部17は、生産者P1が農産物を納入する配送先を設定する。
【0072】
ステップS20において、通知部18は、取引制御部16でマッチングされた農産物の種類、数量、取引金額、出荷日、生産者P1、購入者P2の情報を関連付けた取引情報を、生産者P1及び購入者P2に通知する。即ち、ステップS20の処理は、マッチングが成立した購入者が希望する配送先、配送する農産物の情報(農産物の種類、数量を含む情報)、及び所定日を、マッチングが成立した生産者に通知する通知工程の一例である。例えば、前述した「1月30日、小売K1、キャベツ、100kg、品質B1」と、「1月30日、「小売K2、キャベツ、400kg、品質B1」というラベル情報から小売K1、小売K2の配送先情報を取得し、上述した生産者に渡してもよい。
【0073】
マッチングが完了した生産者P1は、取引情報を参照して、購入者P2が指定する配送先及び配送希望日に、所定の農産物の種類を所定の数量だけ配送する。その結果、購入者P2は希望する農産物を入荷することができる。
【0074】
[第1実施形態の効果]
このようにして、第1実施形態に係る取引システム1は、生産者と購入者との間で農産物を取引する取引システム1であって、未来の所定日における農産物の予測生産量を取得する生産量取得部11と、所定日における農産物の予測需要を、購入者毎に取得する需要取得部14と、所定日における、予測生産量と、予測需要をマッチングする取引制御部16と、マッチングが成立した購入者が希望する配送先、配送する農産物の情報、及び所定日を、マッチングが成立した生産者に通知する通知部18と、を備える。
【0075】
上述した第1実施形態に係る取引システム1では、生産者P1は、未来の所定日に農産物の取引が成立する購入者P2を事前に認識することができる。このため、生産者P1は、出荷する農産物を一旦中央卸市場などに集約させることなく、購入者P2が指定する配送先に直接に配送することができる。そのため、農産物を配送する際の流通経路を短縮化することができる。また、配送に要する時間を短縮化し、消費するエネルギーを削減することができる。また、農産物が経時変化により劣化するなどの問題の発生を回避することができる。
【0076】
つまり、本実施形態に係る取引システム1は、販売と購入の合意形成がなされる市場などに農作物を送付することなく、生産者P1と購入者P2との間の取引を成立させることができる。
【0077】
更に、本実施形態に係る取引システム1は、未来に生産が予定されている農作物を対象として、購入者P2との間の取引を成立させる。その結果、購入者P2は所定の取引先となる生産者が特定されていなくても、安定して農作物の供給を受けることができる。
【0078】
なお、上述した実施形態では、農産物の予測生産量情報と予測需要情報との間でマッチングを行う例について示したが、予測生産量情報に予測品質情報を加えてマッチングを行うようにしてもよい。上述したように、農産物の品質とは、農産物の機能性成分、糖度、酸度などであり、これらの品質を条件に加えた上でのマッチングを行うことが可能になる。
【0079】
[第1変形例の説明]
次に、第1実施形態の第1変形例について説明する。前述した第1実施形態では、ステップS19の処理において、生産者P1と購入者P2が希望する配送先を対応付ける例について示した。
【0080】
第1変形例では、取引制御部16が、購入者P2が希望する配送先の情報を含めてマッチングを行う。即ち、第1変形例では、図2に示したステップS19の処理が、前述した第1実施形態と相違する。以下、詳細に説明する。
【0081】
取引制御部16は、ステップS16の処理で、生産者P1が提供する農産物の予測生産量情報と、購入者P2の予測需要情報とのマッチングが完了した後において、生産者P1と購入者P2が希望する配送先を対応付ける処理を実施する。例えば、需要取得部14で作成するラベルに購入者P2が希望する配送先を追加するよう構成してもよい。例えば、「1月30日、小売K2、キャベツ、100kg、品質B1、配送先Z1」、「1月30日、小売K2、キャベツ、50kg、品質B1、配送先Z2」のようにすればよい。
【0082】
この処理では、複数の生産者P1と1つの配送先、1つの生産者P1と1つの配送先、1つの生産者P1と複数の配送先、複数の生産者と複数の配送先、のいずれに決定されてもよい。
【0083】
取引制御部16は、生産者から配送先までの配送距離、配送に要する費用、配送により消費するエネルギーのいずれか一つが最小となる生産者を選択し、この生産者をマッチングさせ、この生産者が配送先に農産物を配送するように設定する。以下に、配送距離が最小になる生産者を選択する例について説明する。
【0084】
未来の所定日において、ある購入者に対して、品種Xのトマト10箱がマッチングしている場合を想定する。また、上記所定日において第1の生産者Paは6箱のトマトを生産し、第2の生産者Pbは5箱のトマトを生産し、第3の生産者Pcは15箱のトマトを生産するものとする。
【0085】
更に、第1の生産者Paから配送先までの距離は100km、第2の生産者Pbから配送先までの距離は150km、第3の生産者Pcから配送先までの距離は400kmであるとする。第3の生産者Pcが10箱のトマトを配送したときの配送距離は400kmである。一方、第1の生産者Paと第2の生産者Pbにより、合計10箱のトマトを配送したときの配送距離の合計は、250km(<400km)である。従って、このような場合には、第1の生産者Pa及び第2の生産者Pbから合計10箱のトマトを配送するように決定する。
【0086】
なお、上記した例では、配送元が生産者P1でる例について示したが、配送元を出荷団体単位、地域単位としてもよい。また、上記した例では配送距離を最小にする例について示したが、同様の基準を採用して、搬送に要する費用、或いは消費エネルギーを最小にするように設定することも可能である。
【0087】
このように、第1変形例では、配送距離、配送に要する費用、配送に要する消費エネルギーのいずれか一つが最小となるように、生産者P1が設定されるので、配送時間及び配送コストの低減を図ることが可能になる。
【0088】
[第2変形例の説明]
次に、第2変形例について説明する。前述した第1実施形態では、予測生産量情報と予測需要情報との間でマッチングを行い、マッチングが成立した生産者P1と購入者P2との間で農産物の取引を行う例について説明した。
【0089】
第2変形例では、予測生産量情報、及び予測品質情報を予め複数の購入者P2に提示し、各購入者P2が未来の所定日における農産物の予測生産量情報、予測品質情報を参照した上で、農産物の購入希望金額を取引情報収集部15に入力(入札)する。取引情報収集部15は、予測生産量情報、予測需要情報、及び各購入者P2により入力された購入希望金額を、取引制御部16に出力する。
【0090】
取引制御部16は、農産物の購入希望金額を参照し、任意の日にちにおいて最も高い購入金額を提示した購入者P2との間でマッチングを行う。その結果、農産物の生産者P1は、より高い金額を提示した購入者P2に農産物を販売することが可能になる。例えば、需要取得部14で作成するラベルに購入希望額を追加するよう構成してもよい。例えば、「1月30日、小売K2、キャベツ、100kg、品質B1、購入希望額〇円」のように構成すればよい。
【0091】
また、一度の入札でマッチングを決定することに以外に、予め定められた日時に複数の購入者P2が取引情報収集部15にアクセスし、取引システム1上に提示された予測生産量情報、予測品質情報を参照して競りを行ってもよい。各購入者P2は、希望する農産物の購入価格を提示する(価格提示工程)、取引制御部16は、最も高い購入価格を提示した購入者と生産者とのマッチングを行う。例えば、日にち、農産物、品質が一致するラベルの購入希望額のカラムが最も高いラベルを優先してマッチングしていけばよい。
【0092】
また、オンラインオークションのように、予め設定した期間において複数の購入者による入札を受け付け、予測生産量情報、予測品質情報毎に、他の購入者が入札した価格を参照しながら繰り返し入札できるようにしてもよい。こうすることにより、生産者P1は、より高い金額で農産物を販売することができる。
【0093】
[第2実施形態の構成]
次に、第2実施形態について説明する。図3は、第2実施形態に係る取引システム1a、演算装置100a、及びその周辺機器の構成を示すブロック図である。第2実施形態に係る取引システム1aは、複数の生産者P1で組織される出荷団体30と、仲買人、小売業者などの購入者P2との間で農産物の取引を実施する。なお、前述した第1実施形態と同様に、生産者単位としてもよい。また、地域単位、市場単位、事業者単位での取引としてもよい。
【0094】
図3に示す取引システム1aは、出荷団体30毎に未来の生産量及び品質を予測する点、及び、加工処理部19を備えている点で、前述した第1実施形態と相違している。また、取引情報収集部15、取引制御部16、通知部18による処理内容が相違する。以下、詳細に説明する。
【0095】
加工処理部19は、例えば農産物を加工、包装する加工工場であり、出荷団体30から出荷される農産物を加工し、加工後の農産物を購入者P2が希望する配送先に配送する。「加工処理」とは、農産物を任意のサイズに裁断する処理、農産物を所定数毎に束ねる処理、農産物を包装する処理など、購入者P2に納入する農産物に何らかの操作を加える処理を指す。
【0096】
取引情報収集部15は、前述した第1実施形態で示した機能に加え、出荷団体30と加工処理部19の対応情報を取得する。更に、取引情報収集部15は、購入者P2が購入する農産物の加工処理を希望しているか否かの情報を取得する。
【0097】
取引制御部16は、マッチングの結果として得られる取引情報に、加工処理に関連する情報を付加して通知部18に出力する。加工処理に関連する情報は、出荷団体30と加工処理部19の対応情報、及び、購入者P2が農産物の加工処理を希望しているか否かの情報を含む。
【0098】
なお、取引制御部16は、加工処理部19が配置される地理的な条件に応じて、対応可能な加工処理を制約条件としてマッチングを行うようにしてもよい。例えば、第一のエリアに配置されている加工処理部19では農産物の裁断が可能であるという制約を設定し、第一のエリアを用いる生産者は、購入者P2が包装を希望する場合はマッチングの対象外とすればよい。
【0099】
通知部18は、取引情報に加工処理に関連する情報が含まれている場合に、所望する加工処理部19(例えば、加工工場)を配送先に指定する。
【0100】
加工処理部19は、生産者P1から配送された農作物の加工情報及び配送先を通知部18から取得し、加工処理の内容及び配送先を特定する。ここでの配送先は小売店などの購入者P2が希望した配送先である。農作物毎に、加工処理の内容、配送先を示すラベルを新たに付与して識別してもよい。加工処理部19は、特定した結果に基づき農作物を加工して、特定した配送先に配送する。
【0101】
[第2実施形態の動作]
次に、第2実施形態に係る取引システム1aの処理手順を、図5A図5Bに示すフローチャートを参照して説明する。
【0102】
初めに、図5Aに示すステップS31において、生産量取得部11は、各出荷団体30毎の、各種の農産物の未来の所定日における予測生産量を取得する。具体的には、生産量予測部21において機械学習などにより予測される未来の所定日における農産物の予測生産量を取得する。
【0103】
ステップS32において、品質取得部12は、各出荷団体30毎の、各種の農産物の未来の所定日において出荷する農産物の予測品質を取得する。具体的には、品質予測部22において機械学習などにより予測される未来の所定日に出荷可能な農産物の予測品質を取得する。
【0104】
ステップS33において、取引制御部16は、各出荷団体30毎に設定されている加工処理部19の情報を取得する。具体的には、各出荷団体30に対して、専属の加工処理部19が設定されている場合に、この加工処理部19の地理的な条件、及び実行可能な加工処理(例えば、裁断、袋詰め、包装など)を示す加工可否情報を取得する。即ち、ステップS33の処理は、生産者による農産物の加工処理が可能であるか否かを示す加工可否情報を取得する加工可否情報取得工程の一例である。
【0105】
ステップS34において、生産集計部13は、各出荷団体30毎の予測生産量、及び予測品質を、未来の日にち毎に集計する。
【0106】
ステップS35において、需要取得部14は、需要予測部23により各購入者P2毎の、未来の所定日における予測需要を取得する。具体的には、需要予測部23において機械学習などにより予測される未来の所定日における予測需要情報を取得する。なお、予測需要情報は、需要予測部23で予測される情報に限らず、購入者自身が未来の日にちにおける予測需要情報を入力してもよい。
【0107】
更に、ステップS35において、取引情報収集部15は、購入者P2が農産物の加工を希望するか否かを示す加工希望情報を取得する。即ち、ステップS35の処理は、加工希望情報取得工程の一例である。
【0108】
ステップS36において、取引情報収集部15は、生産集計部13で集計された予測出品情報(予測生産量情報、予測品質情報)と、需要取得部14で取得された予測需要情報を集計する。
【0109】
ステップS37において、取引制御部16は、未来の日にち毎に、予測生産量情報と予測需要情報とのマッチングを行う。なお、予測生産量情報に予測品質情報を加えた予測出品情報と、予測需要情報とのマッチングを行ってもよい。
【0110】
ステップS38において、取引制御部16は、ステップS37の処理でマッチングされない農産物が有るか否かを判定する。
【0111】
マッチングされない農産物が有る場合には(S38;YES)、ステップS39に処理を進め、そうでなければ(S38;NO)、ステップS40に処理を進める。
【0112】
ステップS39において、取引制御部16は、予測需要情報の変更が可能であるかなどの、条件変更の可否判断を購入者P2に通知する。例えば、農産物〇〇を納入する数量を減らす、或いは増やすなどの提案を購入者P2に問い合わせる。
【0113】
購入者P2により、予測需要情報が変更された場合には、再度ステップS37の処理において、予測生産量と、変更後の予測需要情報とのマッチングを繰り返す。
【0114】
ステップS40において、取引制御部16は、マッチングが完了した生産者P1と、購入者P2が希望する配送先とを対応付ける。具体的には、取引制御部16は購入者P2に対して、農産物の配送先の情報入力を促し、購入者P2により配送先が入力された場合に、配送先設定部17は、生産者P1が農産物を納入する配送先を設定する。
【0115】
ステップS41において、通知部18は、取引制御部16でマッチングされた農産物の種類、数量、取引金額、出荷日、生産者P1、購入者P2の情報を関連付けた取引情報を、生産者P1及び購入者P2に通知する。
【0116】
図5BのステップS42において、取引制御部16は、購入者P2が農産物の加工を希望しているか否かを判定する。加工処理を希望している場合には(S42;YES)、ステップS43に処理を進め、そうでなければ(S42;NO)、本処理を終了する。
【0117】
ステップS43において、通知部18は、出荷団体30に加工処理を行う農産物の加工情報を通知する。加工情報は、農産物の裁断、袋詰め、包装などの加工の種類の情報、及び、加工の対象となる農産物の品質、数量、種類の情報を含む。更に、通知部18は、出荷団体30に加工処理後の農産物の配送先を通知する。即ち、ステップS43の処理は、購入者が、マッチングが成立した生産者から納入される農産物の加工を希望する場合に、加工処理部19に加工処理の情報を通知する加工処理通知工程の一例である。
【0118】
ステップS44において、通知部18は、加工処理部19に加工処理を行う農産物の加工情報を通知する。
【0119】
加工処理部19は、上述した加工情報に基づいて、対象となる農産物の加工処理を行う。加工処理部19は、加工処理後の農産物を、購入者P2により指定された配送先に配送する。その結果、購入者P2は、出荷団体30から配送された農産物に所定の加工処理を加えた状態で取得することができる。
【0120】
これまでの実施形態で例示したように、ラベルを用いた場合について記載する。例えば、需要取得部14で作成するラベルに購入者が希望する加工希望情報を追加するよう構成してもよい。例えば、「1月30日、小売K2、キャベツ、100kg、品質B1、加工希望情報)のように構成すればよい。
【0121】
配送先設定部17は、このラベルの情報に基づいて生産者P1に送るラベルと加工処理部に送るラベルを生成してもよい。例えば、生産者向けに「11月30日、加工工場Q1、キャベツ、100kg、品質B1」というラベルを、加工処理部19向けに「1月30日、キャベツ、100kg、品質B1、加工希望情報、希望配送先」というラベルを生成し、それぞれ生産者P1と加工処理部19に通知すればよい。このように構成することで生産者P1、加工処理部19はラベルに記載された情報に基づいて配送、加工を行うだけでよく管理を行う必要がない。
【0122】
[第2実施形態の効果]
このように、第2実施形態に係る取引システム1aは、購入者P2が購入する農産物の加工を希望しているか否かを示す加工可否情報を取得し、加工を希望している場合には、この情報を出荷団体30、及び加工処理部19に通知する。マッチングが完了した場合において、出荷団体30の生産者P1は、購入者P2に納入する農産物を加工処理部19に配送する。加工処理部19は、農産物に裁断、袋詰め、包装などの加工処理を加えた上で、購入者P2が指定する配送先に加工後の農産物を配送する。
【0123】
従って、購入者P2が加工処理を希望する場合において、出荷団体30は生産した農産物をそのまま加工処理部19(例えば、加工工場)に配送すればよい。このため、出荷団体30が裁断、袋詰め、包装などの加工処理を行う必要はなく、出荷団体30の負担を軽減することができる。また、購入者P2に納入する農産物は、出荷団体30から加工処理部、更に配送先へと搬送されるので、最短距離での配送が可能になる。
【0124】
また、加工処理部19には、事前に加工情報が通知されるので、農産物の加工処理を行う人員を予め配置することができ、効率良く作業を進めることが可能になる。
【0125】
[第3実施形態の構成]
次に、第3実施形態について説明する。図6は、第3実施形態に係る取引システム1b、演算装置100b、及びその周辺機器の構成を示すブロック図である。
【0126】
図3に示す取引システム1bは、棚つくり提案部31を備えている点で前述した第1実施形態と相違している。それ以外の構成は、図1に示した第1実施形態と同様であるので、同一符号を付して構成説明を省略する。
【0127】
本実施形態で示す「棚つくり」とは、小売店などが通常よりも安価で野菜などの農産物を販売すること、所謂「特売」を指す。即ち、「棚つくり提案」では、取引システム1bが小売業者などの購入者P2に対して特売などの通常よりも安い価格での販売の実施を提案する。
【0128】
棚つくり提案部31は、未来の所定日における農産物の予測生産量情報を取得する。未来の所定日における一の農産物の生産量が、それ以前の生産量(例えば、数日前の生産量)に対して増加している場合には、所定日における一の農産物の生産量が、需要を上回ることが想定される。即ち、一の農産物に対して(未来の生産量)>(未来の需要)となることが想定される。
【0129】
棚つくり提案部31は、上記した一の農作物について、小売業者などの購入者P2に対して、特売の実施、或いは、需要の増加などの棚つくり提案を行う。取引制御部16は、この提案に購入者P2が同意した場合に、一の農産物についてのマッチングが完了したものと判定する。
【0130】
[第3実施形態の動作]
次に、第3実施形態に係る取引システム1bの処理手順を、図7に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図7に示すステップS51~S55の処理は、図2に示したステップS11~S15の処理と同一であるので、説明を省略する。
【0131】
ステップS56において、取引制御部16は、未来の日にち毎に、予測生産量情報と予測需要情報とのマッチングを行う。この際、予測生産量が予測需要よりも多い場合でも、これらの情報をマッチングさせる。
【0132】
ステップS57において、取引制御部16は、ステップS56の処理でマッチングされない農産物が有るか否かを判定する。
【0133】
マッチングされない農産物が有る場合には(S57;YES)、ステップS58に処理を進め、そうでなければ(S57;NO)、ステップS59に処理を進める。
【0134】
ステップS58において、取引制御部16は、予測需要情報の変更が可能であるかなどの、条件変更の可否判断を購入者P2に通知する。
【0135】
購入者P2により、予測需要情報が変更された場合には、再度ステップS56の処理において、予測生産量と、変更後の予測需要情報とのマッチングを繰り返す。
【0136】
ステップS59において、取引制御部16は、マッチングした結果を購入者P2に提示する。マッチングが完了した予測生産量が、予測需要よりも多い場合において、棚つくり提案部31は、購入者P2に対して棚つくりを提案する。即ち、ステップS59の処理は、予測需要に対して、予測生産量が大きい場合に、購入者P2に棚つくり提案を行う棚つくり提案工程の一例である。
【0137】
即ち、マッチングが成立した所定日における予測生産量情報が、予測需要情報よりも大きい場合には、納入する農作物を販売しきれない可能性が高まる。従って、取引制御部16は、マッチング結果を購入者P2に提示し、かつ、棚つくり提案部31が、購入者P2に対して棚つくりを提案する。
【0138】
ステップS60において、取引制御部16は、購入者P2が上記したマッチング結果及び棚つくり提案を閲覧し、マッチング結果に同意したか否かを判断する。同意した場合には(S60;YES)、ステップS61に処理を進め、そうでなければ(S60;NO)、ステップS56に処理を戻す。
【0139】
ステップS61において、取引制御部16は、マッチングが完了した生産者P1と、購入者P2が希望する配送先との情報を対応付ける。具体的には、取引制御部16は、購入者P2に対して、農産物の配送先の情報入力を促す。購入者P2により配送先が入力された場合に、配送先設定部17は、生産者P1が農産物を納入する配送先を設定する。
【0140】
ステップS62において、通知部18は、取引制御部16でマッチングされた農産物の種類、数量、取引金額、出荷日、生産者P1、購入者P2の情報を関連付けた取引情報を、生産者P1及び購入者P2に通知する。
【0141】
マッチングが完了した生産者P1は、取引情報を参照して、購入者P2が指定する配送先及び配送希望日に、所定の農産物の種類を所定の数量だけ配送する。その結果、購入者P2は希望する農産物を入荷することができる。また、棚つくり提案部31により特売の実施を提案された購入者P2は、特売を実施するための陳列棚を準備するなどの作業を事前に行うことができる。
【0142】
[第3実施形態の効果]
このように、第3実施形態に係る取引システム1bでは、前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。更に、第3実施形態に係る取引システム1bでは、棚つくり提案部31が購入者P2に対して、特売の実施などの棚つくりを提案する。従って、予測生産量情報が予測需要情報よりも多い場合であっても、これらの情報をマッチングさせることが可能となり、取引が成立する確率を高めることができる。
【0143】
また、棚つくり提案部31は、購入者P2に対して特売の実施を提案するので、購入者P2は特売の実施の準備を事前に行うことができ、予測される需要よりも多い農産物が納入された場合であっても、この農産物を販売し易くなる。
【0144】
なお、上述したステップS60では、マッチングに同意するか否かを購入者P2自身が判断する例について示したが、(未来の生産量)>(未来の需要)となった農作物について、自動的にマッチングに同意するか否かを設定することも可能である。
【0145】
例えば購入者P2毎に所望の日時における販売量を予測し、当該販売量を購入するように、取引制御部16が自動的にマッチングすることができる。
【0146】
購入者P2は、日にち毎、一週間毎のように、所望の期間毎に最大購入金額、最小購入量、最大購入量を設定してもよい。このような設定条件に応じて自動的にマッチングを行うことにより、購入者P2が仕入れを行わなくても、予測された販売量、及び条件に応じて購入者P2が希望する配送先に農作物が配送される。このため、購入者P2は、農産物を安定的に入荷することができ、且つ、農産物のロスを低減することができる。
【0147】
また、取引制御部16により実施されたマッチングの結果をそのまま用いる以外にも、マッチングの結果に対して購入者P2の判断を介入させてもよい。例えば、取引制御部16によるマッチングの結果に対して購入者P2が承認するようにしてもよい。この場合には、取引制御部16によるマッチングの結果を購入者P2に提示し、承認するか否認するかを提示するための提示部(図示省略)を設ければよい。
【0148】
購入者が承認しなかった場合には、この購入者から追加の情報を取得し、取得した情報を考慮して再度マッチングを行ってもよい。追加の情報は、例えば、農作物の種類や数量などの制約、提示された未来の日における需要をゼロにする制約、などであってもよい。
【0149】
また、購入者が、いずれの条件でも同意することを指定した場合には、上記の承認の手続きを省略し、マッチングした結果をそのまま利用してもよい。
【0150】
更に、購入者P2が、農産物の種類及び数量を調整できるようにしてもよい。この場合には、取引制御部16によるマッチングの結果を上記提示部に提示すると共に、農作物の種類及び数量を調整できる提示調整部(図示省略)を設ければよい。
【0151】
また、上記提示部、或いは上記提示調整部において、購入者P2が所定の期限内に入力しなかった場合には、入力しなかった購入者P2を除いて、再度マッチングを行ってもよい。
【0152】
従来においては、需要に対して生産量が大きくなった場合には、農作物を極めて安い価格に設定して取引を成立させていた。第3実施形態に係る取引システム1bでは、未来の生産量に応じて予め未来の需要を大きくすることができるため、農産物の価格を低下させなくても取引を成立させることができる。
【0153】
また、購入者P2毎の販売量の予測を伴う場合には、購入者P2は予測される販売量に応じて農作物を購入することができるため、エンドユーザの需要を満たしつつ農産物の廃棄などのロスを最小化することができる。
【0154】
なお、上述した各実施形態に示した取引システム1、1a、1bでは、生産者P1が生産する農産物を取引する例について説明したが、農産物以外にも、例えば魚介類、家畜を取引する場合において採用することができる。
【0155】
また、上述した各実施形態では、未来の所定日における予測生産量情報と予測需要情報をマッチングする例について説明したが、所定日以外にも、所定期間(例えば、二日間、三日間、一週間)を区切りとして予測生産量情報と予測需要情報をマッチングすることも可能である。
【0156】
また、予測需要情報は、機械学習などによる予測に限定されるものではなく、購入者P2などが予測需要情報を入力する構成としてもよい。
【0157】
上記説明した本実施形態の取引システム1には、図8に示すように例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:HardDisk Drive、SSD:SolidState Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。メモリ902およびストレージ903は、記憶装置である。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、取引システム1の各機能が実現される。
【0158】
なお、取引システム1は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また、取引システム1は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0159】
なお、取引システム1用のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0160】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0161】
1、1a、1b 取引システム
11 生産量取得部
12 品質取得部
13 生産集計部
14 需要取得部
15 取引情報収集部
16 取引制御部
17 配送先設定部
18 通知部
19 加工処理部
21 生産量予測部
22 品質予測部
23 需要予測部
30 出荷団体
31 棚つくり提案部
100、100a、100b 演算装置
P1 生産者
P2 購入者
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8