(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】イオン注入装置及びイオン注入方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20250219BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20250219BHJP
H01J 37/147 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
H01J37/317 B
H01J37/20 A
H01J37/147 D
(21)【出願番号】P 2024033788
(22)【出願日】2024-03-06
【審査請求日】2024-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2023089053
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】趙 維江
(72)【発明者】
【氏名】大村 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】中西 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 琢己
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-139909(JP,A)
【文献】特開2021-120944(JP,A)
【文献】特開2022-122112(JP,A)
【文献】特開2023-066254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/317
H01J 37/20
H01J 37/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームの進行方向に対して、互いに直交する第1方向と第2方向で、前記イオンビームの角度を計測する角度計測器と、
ビームラインに配置され、前記角度計測器での計測結果に基づいて、前記第1方向における前記イオンビームの角度を補正する角度補正器と、
処理室でウェーハを保持するウェーハ保持装置と、
前記ウェーハ保持装置に連結し、前記第1方向と平行な回転軸周りに前記ウェーハを回転するチルト機構と、
前記第2方向における前記イオンビームの角度情報と前記ウェーハの結晶軸情報と注入レシピ情報に基づいて、前記チルト機構を制御する制御装置とを備える、イオン注入装置。
【請求項2】
前記制御装置により前記チルト機構を制御することで、前記ウェーハの結晶方位と前記ウェーハに照射される前記イオンビームの進行方向とを平行にする、請求項1記載のイオン注入装置。
【請求項3】
前記イオンビームは、前記第1方向に走査されるスポットビームであり、前記角度補正器は、走査された前記スポットビームを偏向する平行化器である、請求項1記載のイオン注入装置。
【請求項4】
前記ウェーハ保持装置は、前記ウェーハの裏面を保持する静電チャックを有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のイオン注入装置。
【請求項5】
前記ウェーハの裏面を支持する測定台と、
前記測定台上の前記ウェーハの表面にエネルギー線を照射するエネルギー線源とを備える結晶軸測定装置を有し、
前記測定台には、前記ウェーハの裏面を支持する吸着部材が設けられている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のイオン注入装置。
【請求項6】
前記吸着部材は、静電チャックである請求項5記載のイオン注入装置。
【請求項7】
イオンビームの進行方向に対して、互いに直交する第1方向と第2方向で、前記イオンビームの角度を計測することと、
前記イオンビームの角度の計測結果に基づいて、前記第1方向における前記イオンビームの角度を補正することと、
前記第2方向における前記イオンビームの角度情報とウェーハの結晶軸情報と注入レシピ情報に基づいて、前記第1方向を回転軸として前記ウェーハを回転することと、
前記ウェーハに対するイオン注入処理を実施することとを、含む、イオン注入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体デバイスの製造に使用されるイオン注入装置とイオン注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入処理において、ウェーハ面に照射されるイオンビームの照射角度は、所望の角度に設定されている。
例えば、チャネリング現象を利用して、ウェーハ表面から深い領域にイオンを注入する場合には、イオンビームの照射方向が単結晶ウェーハの結晶軸に一致するように、イオンビームの照射角度を設定している。
反対に、ウェーハ表面から浅い領域にイオンを注入する場合には、イオンビームの照射方向が単結晶ウェーハの結晶軸に一致しないように、イオンビームの照射角度を設定している。
【0003】
ウェーハの製造工程であるスライシング工程や研磨工程において、製造誤差や製造不良が発生すると、ウェーハの平面度が低下する。
一般に、単結晶ウェーハの結晶軸は、ウェーハ面に対して垂直な方向にある。しかしながら、ウェーハの平面度が低下することで、結晶軸とウェーハ面との関係にズレが生じる。両者の関係がズレることから、ウェーハ面に対して垂直方向にイオンビームを照射しても、イオンビームの照射方向と結晶軸とが不一致になりうる。
【0004】
炭化珪素のエピタキシャルウェーハは、ベースとなるウェーハ(ベースウェーハ)上にエピタキシャル層が成膜されたウェーハである。
エピタキシャル層は、層内での欠陥の発生を抑制するために、ベースウェーハのウェーハ面に対して約4度傾斜した状態で成膜されている。エピタキシャル層の傾斜により、ウェーハの結晶軸の方向(結晶方位)は、ベースウェーハのウェーハ面より約4度傾斜する。
このことから、スライシング工程や研磨工程での製造誤差や製造不良がなかったとしても、炭化珪素のエピタキシャルウェーハでは、結晶方位はベースウェーハのウェーハ面に対して垂直にはならない。
【0005】
ウェーハの結晶方位とイオンビームの照射方向との関係を調整するために、種々の技術が提案されている。
特許文献1には、チャネリング現象を利用したイオン注入処理が開示されている。結晶軸測定装置は、エンドステーションまたはロードロック室に配置されている。イオン注入処理の前段階でのウェーハの姿勢調整において、結晶軸測定装置での測定結果に基づいて、処理室内でウェーハを保持する保持装置の駆動部を制御している。
特許文献2には、ウェーハの切断誤差を計算することでウェーハの結晶方位を特定する技術が開示されている。イオン注入処理の前段階でのウェーハの姿勢調整において、特定したウェーハの結晶方位をもとに、チャネリングの影響を考慮して、機械的スキャン駆動部、ビームラインアセンブリ等の1つ以上の構成要素を選択的に制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-120944
【文献】特表2007-520885
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウェーハに照射される実際のイオンビームは、理想軌道を通り、ウェーハに照射されるとは限らない。
ウェーハに照射されるイオンビームの実際の軌道と理想軌道との間には多少の誤差が生じる場合がある。例えば、ビームラインに残留しているガスとイオンビームとの衝突により、荷電変換が起こり、イオンビームを理想軌道に沿って輸送することが困難となる。また、ビーム光学素子の配置や製造誤差が要因となり、イオンビームの軌道が理想軌道から外れうる。
【0008】
特許文献1では、ウェーハに照射されるイオンビームの実際の軌道と理想軌道とのズレについては考慮されていない。また、特許文献1では、処理室内のウェーハ駆動部で結晶方位とイオンビームの照射角度との位置関係を調整している。
仮に、特許文献1がイオンビームの軌道のズレを測定する手段を備えていたとしても、結晶方位とイオンビームの照射角度との位置関係を調整する手段が、ウェーハ駆動部のみであれば、ウェーハ駆動部の構成や制御が複雑となることが懸念される。
特許文献2では、イオンビームの方向データを取得することについて開示されている。機械的スキャン駆動部やビームラインアセンブリの1つ又は複数を制御して、ウェーハ面に照射されるイオンビームの照射角度の合わせ込みを実施することが開示されているが、複雑となる制御を如何にして実現するのかは具体的に開示されていない。
【0009】
特許文献2のビームラインアセンブリは、イオンビームの輸送を目的として使用されている。ウェーハの切断誤差を考慮し、イオンビームの方向データをもとにビームラインアセンブリでイオンビームの進行方向を調整する際に、所望する進行方向となるようにイオンビームを様々な方向へ移動させてしまうと、本来の目的であるイオンビームの輸送が困難になる。
【0010】
本発明では、装置各部の制御を最適化し、ウェーハに対して所望する角度で高精度にイオン注入処理が実現できる、イオン注入装置とイオン注入方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
イオン注入装置は、
イオンビームの進行方向に対して、互いに直交する第1方向と第2方向で、前記イオンビームの角度を計測する角度計測器と、
ビームラインに配置され、前記角度計測器での計測結果に基づいて、前記第1方向における前記イオンビームの角度を補正する角度補正器と、
処理室でウェーハを保持するウェーハ保持装置と、
前記ウェーハ保持装置に連結し、前記第1方向と平行な回転軸周りに前記ウェーハを回転するチルト機構と、
前記第2方向における前記イオンビームの角度情報と前記ウェーハの結晶軸情報と注入レシピ情報に基づいて、前記チルト機構を制御する制御装置とを備える。
【0012】
チャネリングイオン注入を実施する上では、
前記制御装置により前記チルト機構を制御することで、前記ウェーハの結晶方位と前記ウェーハに照射される前記イオンビームの進行方向とを平行にする。
【0013】
部材の兼用によるコスト低減を図るため、
前記イオンビームは、前記第1方向に走査されるスポットビームであり、前記角度補正器は、走査された前記スポットビームを偏向する平行化器であることが望ましい。
【0014】
イオン注入時、ウェーハの姿勢を固定し、ウェーハの反りを緩和するために、
前記ウェーハ保持装置は、前記ウェーハの裏面を保持する静電チャックを有することが望ましい。
【0015】
結晶方位の測定を正確に実施するために、
前記ウェーハの裏面を支持する測定台と、
前記測定台上の前記ウェーハの表面にエネルギー線を照射するエネルギー線源とを備える結晶軸測定装置を有し、
前記測定台には、前記ウェーハの裏面を支持する吸着部材が設けられていることが望ましい。
【0016】
より望ましくは、前記吸着部材は、静電チャックである。
【0017】
イオン注入方法は、
イオンビームの進行方向に対して、互いに直交する第1方向と第2方向で、前記イオンビームの角度を計測することと、
前記イオンビームの角度の計測結果に基づいて、前記第1方向における前記イオンビームの角度を補正することと、
前記第2方向における前記イオンビームの角度情報とウェーハの結晶軸情報と注入レシピ情報に基づいて、前記第1方向と平行な回転軸周りに前記ウェーハを回転することと、を含む。
【発明の効果】
【0018】
直交する2方向でイオンビームの角度計測を実施し、一方の角度成分をビームラインで補正する。残りの角度成分の補正は、結晶軸情報と注入レシピ情報とを考慮して、ウェーハ保持装置で実施する。これにより、ウェーハに対して所望する角度で高精度にイオン注入処理が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図6】ウェーハに照射されるイオンビームの軌道についての説明図
【
図10】ウェーハの姿勢を調整する機構についての模式的断面図
【
図12】結晶軸測定装置の配置場所についての説明図
【
図13】イオン注入処理に至る一連の処理を示すフローチャート
【
図15】角度計測器の他の変形例を示す模式的断面図
【
図16】角度計測器の他の変形例を示す模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、イオン注入装置IMの構成例を示す模式的平面図である。プラズマチェンバ1では、イオンビームIBのもとになるプラズマが生成される。引出電極2が、プラズマチェンバ1で生成されたプラズマからビームラインへイオンビームIBを引出す。
ビームラインは、引出電極2から後述する処理室8までのイオンビームIBの輸送経路である。
【0021】
引出電極2から引き出されたイオンビームIBには、複数のイオンが含まれている。質量分析電磁石3は、イオンビームIBから所望するイオンを取り出すため、質量に応じてイオンを選別する。加速管4は、質量分析電磁石3で選別されたイオンビームIBを加減速して、所望するエネルギーのイオンビームIBに変換する。
【0022】
加速管4の後段には、エネルギー分析電磁石5が配置されている。エネルギー分析電磁石5は、質量分析電磁石3と加速管4との間や加速管4内での荷電変換によって発生した不要なエネルギー成分のイオンを除去する。
【0023】
イオンビームの進行方向に垂直な平面でイオンビームIBを切断した際、引出電極2から引き出されたイオンビームIBの切断面は楕円形である。このようなイオンビームは、スポットビームと呼ばれている。
エネルギー分析電磁石5を通過後、イオンビームIBは、走査器6で一方向に沿って周期的に走査される。この走査によって、見かけ上、走査方向に幅の広いイオンビームに変換される。
【0024】
走査されたイオンビームIBは、平行化器7に入射し、平行化器7での磁気的な偏向を経て、イオンビームIBの走査方向での各場所を通過するイオンビームIBの進行方向が揃った平行なイオンビームIBに変換される。平行化器7を通過した後のイオンビームIBの走査方向での幅は、同方向におけるウェーハWの幅よりも広い。図のY軸方向にウェーハWを移動することで、ウェーハWの全面へのイオン注入処理が実施される。
【0025】
処理室8には、ウェーハ保持装置9に保持されたウェーハWが配置されている。ウェーハ保持装置9には、駆動機構13が連結されている。駆動機構13は、イオンビームIBに対するウェーハ保持装置9の姿勢を調整し、ウェーハWへのイオンビームIBの照射角度を調整する。
【0026】
図示されるXYZの各軸は、処理室8に入射する理想的なイオンビームIBの軌道を基準にして描かれている。Z軸は、イオンビームIBの進行方向と平行な軸である。X軸とY軸は、Z軸と互いに直交している。XYZの各軸の方向は、ビームラインを輸送されるイオンビームの位置に応じて変化する。イオン注入装置IMでは、走査器6でのイオンビームIBの走査方向はX軸と平行な関係にある。
【0027】
イオン注入装置IMは、X軸とY軸に平行な2つの方向で、イオンビームIBの角度を計測する角度計測器を備えている。角度計測器は、平行化器7と処理室8との間に配置された前段多点ファラデー11と処理室8に配置された後段多点ファラデー12である。
イオンビームIBの照射角度とは、理想的なイオンビームと実際のイオンビームとの角度的な隔たりのことである。
【0028】
制御装置C1と制御装置C2は、データを記憶する記憶機能、データを演算する演算機能、演算結果や入力データをもとに各部を制御する制御機能とを備えている。
制御装置C1は、前段多点ファラデー11と後段多点ファラデー12を制御して、データの読出しを行い、角度情報Vを制御装置C2に出力する。また、制御装置C1は、角度情報Vにもとづいて、平行化器7の磁場強度を調整する。
【0029】
制御装置C2は、角度情報V、注入レシピ情報R、結晶軸情報Mをもとに、駆動機構13を制御する。
図1に示すイオン注入装置IMは、制御装置C1と制御装置C2を別々に備えているが、これらの制御装置を1つの制御装置としてまとめてもよい。
【0030】
注入レシピ情報Rは、イオン注入処理が実施される際のウェーハの設定角度情報を含んでいる。結晶軸情報Mは、ウェーハWの表面に垂直な方向に対する結晶軸の傾斜角度の情報である。
結晶軸情報Mは、種々の方法により制御装置C2に送信される。例えば、イオン注入装置IMに設けられた結晶軸測定装置で結晶軸情報Mを実測し、実測データを制御装置C2に送信する。また、半導体製造工程において、イオン注入工程よりも上流の工程で測定された結晶軸情報Mを制御装置C2に送信してもよい。さらに、ウェーハカセットに貼り付けられているバーコードに結晶軸情報Mを含めておき、イオン注入装置IMでバーコードを読み取ることで結晶軸情報Mを取得し、取得した情報を制御装置C2に送信するようにしてもよい。
【0031】
バーコードからの情報取得については、手動または自動によって実施される。手動の場合、イオン注入装置IMのオペレーターがスキャナーでバーコードの読み取りを実施する。自動の場合、カセットをイオン注入装置に取り付けた際に、取付位置にあるセンサーでバーコードの読み取りを実施する。
自動読み取りについては、次に示す構成でもよい。ウェーハカセットやウェーハごとの結晶軸情報Mをイオン注入装置IMに予め記憶しておく。記憶場所は、制御装置C1もしくは制御装置C2の記憶装置とする。
バーコードから読み取ったカセットやウェーハの情報をもとにして、制御装置C1または制御装置C2が記憶装置から結晶軸情報Mを読み出し、各部の制御を実施する。
【0032】
図2-
図4で、X軸方向でのイオンビームIBの角度計測について説明する。前段多点ファラデー11は、駆動軸22に連結されている。駆動軸22は、不図示の駆動源でY軸方向に上下動する。前段多点ファラデー11は、Y軸方向の上側と下側の各領域で異なる構成を備えている。上側領域には、開孔21が形成されている。下側領域には、ファラデーカップFCがX軸方向に複数配置されている。
【0033】
図2は、前段多点ファラデー11での測定を示す。駆動軸22が前段多点ファラデー11を移動することで、イオンビームIBが前段多点ファラデー11のファラデーカップFCに照射する。
図3は、後段多点ファラデー12での測定を示す。
図2の状態から駆動軸22が前段多点ファラデー11を下方へ移動する。駆動軸22の移動により、イオンビームIBが前段多点ファラデー11の開孔21を通過する。開孔21を通過したイオンビームIBは、後段多点ファラデー12のファラデーカップFCに照射する。
【0034】
イオンビームIBの照射角度の算出例としては、次に示す手法を用いる。
前段多点ファラデー11と後段多点ファラデー12での測定結果から、X軸方向でのイオンビームIBの移動距離Lxを算出する。この算出結果とZ軸の方向での前段多点ファラデー11と後段多点ファラデー12との離間距離Lzとを用いて、X軸方向でのイオンビームIBの照射角度θxを算出する。
図4に、X軸方向でのイオンビームIBの移動距離Lx、Z軸の方向での前段多点ファラデー11と後段多点ファラデー12との離間距離Lz、イオンビームIBの照射角度θxの関係を示す。図中、破線がイオンビームIBの実際の軌道を示し、実線がイオンビームIBの理想軌道を示す。
この算出方法は、一例であって、これとは異なる算出方法を用いてもよい。
【0035】
X軸方向でのイオンビームIBの照射角度は、ビームラインに配置されている角度補正器で補正される。このイオン注入装置IMでは、平行化器7が角度補正器を兼用している。
平行化器7は、電磁石で構成されている。コイルに流す電流量を増減することで、電磁石内に発生する磁場Bの強さが調整できる。磁界内をイオンビームIBが通過する際、
図5に示すように、イオンビームIBはローレンツ力により偏向される。ここでは、イオンビームIBは正の電荷を有している。
【0036】
図5において、実線はイオンビームIBの理想軌道を示す。平行化器7の磁場Bの強さを弱くした場合、一点鎖線で示すように、イオンビームIBは図の下側に向けて弱く偏向される。平行化器7の磁場Bの強さを強くした場合、破線で示すように、イオンビームIBは図の上側に向けて強く偏向される。
角度計測器である前段多点ファラデー11と後段多点ファラデー12での測定結果をもとに、平行化器7の磁場を調整して、イオンビームIBの軌道を理想軌道に近づける。
【0037】
図6には、ウェーハWに照射されるイオンビームIBの軌道が描かれている。実線はイオンビームIBの理想軌道を示す。破線は実際のイオンビームの軌道(イオンビームIBrの軌道)である。また、一点鎖線は、θy成分をゼロと仮定してイオンビームIBrの軌道をX軸上に描いたときのイオンビームの軌道である。
図示されるXYZ軸の方向は、理想的なイオンビームIBの軌道(基準軌道)に対して描かれている。
イオンビームIBrは、基準軌道に対して角度成分(θx、θy)を有している。この角度成分は、X軸方向とY軸方向に分解することができる。ウェーハWに照射される実際のイオンビームIBの軌道を理想的な軌道に補正する場合、X軸方向での角度補正以外に、Y軸方向での角度補正も必要となる。
【0038】
Y軸方向における実際のイオンビームIBrの照射角度を補正するためには、同方向におけるイオンビームIBrの角度計測が必要となる。
図7-
図9で、Y軸方向での角度計測について説明する。
【0039】
図7、
図8には、
図2、
図3と同様の前段多点ファラデー11と後段多点ファラデー12が描かれている。相違点として、
図7、
図8では、後段多点ファラデー12の前方に、Y軸方向に移動可能なシャッター23が設けられている。シャッター23には、不図示の駆動源で上下方向に移動するシャッター駆動軸24が連結されている。
【0040】
図7、
図8に基づいて、Y軸方向での角度計測についての一例を説明する。
図7において、前段多点ファラデー11を図の下方向へ移動させつつ、前段多点ファラデー11に設けられた全てのファラデーカップFCでビーム電流を計測する。
つぎに、
図8に示すように、前段多点ファラデー11を図の下方へ移動させて、後段多点ファラデー12のファラデーカップFCにイオンビームIBを照射する。その後、シャッター23を図の下方向へ移動させつつ、後段多点ファラデー12に設けられた全てのファラデーカップFCでビーム電流を計測する。
【0041】
各多点ファラデーでの計測結果から、測定位置ごとのビーム電流の変化量をグラフ化し、ビーム電流の変化量のグラフから重心位置を算出する。前段多点ファラデー11と後段多点ファラデー12での計測結果から得られた重心位置間の距離Lyと、Z軸の方向での前段多点ファラデー11と後段多点ファラデー12との離間距離Lzとから、Y軸方向でのイオンビームの照射角度θyを算出する。
図9に、前段多点ファラデー11と後段多点ファラデー12での計測結果から得られた重心位置間の距離Ly、Z軸方向での前段多点ファラデー11と後段多点ファラデー12との離間距離Lz、イオンビームIBの照射角度θyの関係を示す。図中、破線がイオンビームIBの実際の軌道を示し、実線がイオンビームIBの理想軌道を示す。
【0042】
図7、
図8で算出されたY軸方向でのイオンビームの照射角度を、
図10に例示のチルト機構Lで補正する。
図10において、実線が理想的なイオンビームIBの軌道を示し、破線が実際のイオンビームIBrの軌道を示す。図示されるXYZ軸の方向は、理想的なイオンビームIBの軌道に対して描かれている。ウェーハ保持装置9は、ベース32とウェーハWの下面(裏面)を保持する静電チャック31から構成されている。
静電チャック31によるウェーハWの支持は、ウェーハWの支持される面を平坦に保つうえで有利となる。
なお、
図10には描かれていないが、静電チャック31と併用して、ウェーハWを機械的に保持するメカニカルクランプ機構を使用してもよい。
【0043】
ウェーハWの中心Oと一致するベース32の中心には、回転軸33が取り付けられている。この回転軸33は、駆動源34に連結されている。駆動源34によって回転軸33が回転すると、回転軸33に連結されているベース32が回転する。このベース32が回転することで、円形のウェーハWがその周方向(矢印Pの方向)に回転する。これにより、ウェーハWの周方向での位置が調整される。ウェーハWの周方向での位置調整のための回転機構をなす、回転軸33と駆動源34をツイスト機構Kと呼んでいる。
なお、ツイスト機構KによるウェーハWの回転方向は、図示される矢印Pと反対方向にしてもよい。駆動源34での回転方向を適宜切り替えることで、ウェーハWを双方向に回転する構成としてもよい。
【0044】
駆動源34は、半円形の部材39に対して固定されている。半円形の部材39は、その外周部分に永久磁石35を複数備えている。
また、半円形の部材39との対向位置には、半円形の部材39の形状に沿って湾曲した湾曲部位をもつ台座38が配置されている。台座38の湾曲部位には、複数の電磁石36が並べられている。
【0045】
台座38の電磁石36に流す電流の向きや大きさを調整することで、半円形の部材39を矢印Qの方向のいずれかに摺動する。この半円形の部材39の摺動によって、X軸周りにウェーハWが回転し、ウェーハWに対するイオンビームIBrの照射角度が調整される。
【0046】
半円形の部材39、永久磁石35、電磁石36、台座38からなるウェーハWの回転機構をチルト機構Lと呼んでいる。このチルト機構Lで、X軸周りにウェーハWを回転することで、Y軸方向でのイオンビームIBの照射角度を補正する。
なお、台座38は、ウェーハ駆動軸37に連結されており、ウェーハ駆動軸37を不図示の駆動源により上下動させることで、ウェーハWに対するイオン注入処理が実施される。
【0047】
結晶軸測定装置については、従来から知られているX線回析装置を使用する。検出器は、ウェーハからの反射光や透過光を検出するものであればよい。また、アクチュエータを用いて検出位置を逐次的に変更する構成や2次元に配列された検出領域を有する構成を使用してもよい。
【0048】
図11は、背面反射ラウエ法を利用した結晶軸測定装置Cの模式的平面図である。測定台43に配置されたウェーハWに対してエネルギー線源41からX線を照射する。検出器42は、X線が通過する開孔が形成されたイメージングプレートである。検出器42は、ウェーハWからの反射光を受光して、X線回折像を検出する。検出器42での検出にあたっては、不図示のレーザー光を検出器42の受光面に照射して、検出される信号強度を調整してもよい。
【0049】
撮像装置44は、結像レンズを有し、検出器42上の回折像を撮影する。結晶軸測定装置Cは演算装置を有し、演算装置が撮影された画像データを解析することで、結晶方位を特定する。
破線で囲まれる各部を1つのユニットで構成してもよい。また、ウェーハWとユニットのいずれか一方の位置を変更するアクチュエータを設け、両者の相対位置を調整可能にしてもよい。
なお、イメージングプレートで回折画像が得られる場合には、撮像装置44を省略してもよい。
また、ベースウェーハ上に数度傾斜したエピタキシャル層が形成されているウェーハWに対して、エネルギー線源41からX線を照射する場合、エピタキシャル層の傾きに応じてエネルギー線源41と検出器42を同程度傾けてもよい。
具体的には、エピタキシャル層の傾斜角度が4度とすると、エネルギー線源41と検出器42とを4度傾けて、エネルギー線源41から射出されるX線が、エピタキシャル層に対して垂直に照射されるように配置する。この構成により、検出器42の中央付近で回折像を撮影することができる。
【0050】
半導体製造処理がウェーハWに施されると、ウェーハWには多少の反りが発生する。ウェーハWが反っている場所に対して結晶方位測定を行った場合、結晶方位を正確に測定することが不可能となる。
ウェーハWは、中心付近が比較的反りの影響を受けにくいとされている。このことから、結晶方位測定を正確に行う上では、ウェーハWの中心付近にエネルギー線を照射して、結晶方位測定を実施することが望ましい。
【0051】
ウェーハ中心付近での測定に関わらず、結晶方位をより正確に測定するという点では、結晶軸測定装置Cでウェーハを配置する測定台43に吸着部材45を設けておくことが望ましい。
この吸着部材45で、ウェーハWを吸着することで、ウェーハWの平面度が改善する。平面度が改善されたウェーハWに対して結晶方位測定を実施することで、測定の正確性が改善する。
吸着部材45の具体例としては、静電チャックや真空吸着部材が挙げられる。静電チャックを使用する場合、その吸着力は、イオン注入時でのウェーハ保持装置9の静電チャック31による吸着力と同程度とすることが望ましい。
【0052】
結晶軸測定装置の他の例としては、水銀ランプやハロゲンランプ、ヘリウム-ネオンレーザー等のエネルギー線源からの自然光やレーザー光をウェーハWに照射し、ウェーハWからの透過光や反射光をモニターすることで、結晶方位を特定する装置が挙げられる。
また、イオンビームを利用したラザフォード後方散乱分析法により結晶方位を特定してもよい。さらに、イオンビームの照射角度を変更しつつ、ウェーハへのイオン注入処理を実施した後に、イオンビームの照射角度とウェーハの特性(シート抵抗や残留欠陥等)との関係をグラフ化したものから、結晶方位を特定してもよい。
【0053】
結晶方位の特定にあたっては、試験用のウェーハを用意する。ただし、特別に試験用のウェーハを用意すると、その分の費用が発生する。
費用低減の点から、イオン注入処理が施されるウェーハと同一ロット内のウェーハを使用してもよい。ウェーハの特性は、同一ロット内では類似している。同一ロット内のウェーハを使用する場合、最初にイオン注入処理が施される、1枚目のウェーハに対して結晶方位を特定することが望ましい。
1枚目のウェーハを処理する際に特定された結晶方位の情報を、1枚目以降のウェーハを処理する際に再利用することで、1枚目以降のウェーハについての結晶方位測定が省略できる。これにより、イオン注入装置の生産性が向上する。
結晶方位の情報は、結晶軸情報Mとして、制御装置C1または制御装置C2に記憶する。他のウェーハに対するイオン注入処理時に、制御装置C1または制御装置C2に記憶した結晶軸情報Mを読み出して利用する。
【0054】
図12には、処理室8周辺の装置構成が描かれている。結晶軸測定装置Cをイオン注入装置IMに搭載する場合、結晶軸測定装置Cのメンテナンスを考慮しない場合には、結晶軸測定装置Cを処理室8に配置してもよい。その場合、ウェーハ保持装置9を測定台43として利用することができる。
【0055】
処理室8以外に、ロードロック室51、あるいはアライナー54の配置場所に結晶軸測定装置Cを配置してもよい。これらの場所に結晶軸測定装置Cを配置する場合、処理室8と同様に、これらの場所に元々存在しているウェーハWの支持台を測定台43として利用することができる。
また、結晶方位測定を行う特別な部屋として、結晶軸測定室52を設けてもよい。
図12では、結晶軸測定室52の位置は、処理室8に隣接しているが、この位置に限られるものではない。結晶軸測定室52は、アライナー54が配置される場所の隣や上方あるいは下方に設けられてもよい。
【0056】
さらには、ウェーハWが収納されるカセット53の配置場所に、結晶軸測定装置Cを配置してもよい。具体的には、図示される4つのカセット53のうち、1つを排除する。カセット53を排除した場所に、結晶軸測定装置Cを配置する。
【0057】
図13のフローチャートは、イオン注入処理に至るまでの一連の処理を示している。
イオンビームの進行方向に対して互いに直交する2方向(X軸方向、Y軸方向)で、イオンビームの照射角度を角度計測器で測定する(S1)。
ビームラインに配置された角度補正器で、角度測定器で測定されたイオンビームの照射角度のうち、いずれか一方の角度を補正する(S2)。
結晶軸測定装置でウェーハWの結晶軸の方向を測定する(S3)。イオン注入装置IMでの結晶方位測定は必須ではなく、イオン注入装置IM以外の装置で測定された結晶軸情報をイオン注入装置IMへ送信することやカセットに貼り付けられたバーコードからの結晶軸情報を取得すること等を実施してもよい。また、S3の処理は、装置構成に応じて、S1の処理の前やS1とS2で示す処理の間に実施されてもよい。
【0058】
S2の処理で補正されていないイオンビームの角度情報と結晶軸情報と注入レシピ情報をもとに、目標とするウェーハWの姿勢を算出し、算出結果をもとに、チルト機構Lを用いてウェーハWの姿勢を調整する(S4)。
ウェーハWの姿勢を調整した後、ウェーハWへのイオン注入処理を実施する(S5)。
【0059】
実際のイオンビームの進行方向と理想的なイオンビームの進行方向とのズレを、直交する2方向の角度成分に分解する。一方の角度成分の補正をビームラインで実施し、他方の角度成分の補正を、結晶軸情報及び注入レシピ情報を考慮して、ウェーハ保持装置9で実施する。
【0060】
ビームライン側での角度補正は、一方向だけの補正であるため、光学素子の構成や制御が単純化でき、ビームラインでの角度補正がイオンビームの輸送に与える影響は小さく、限定的となる。
残りの角度補正は、結晶軸情報と注入レシピ情報とを考慮して、ウェーハ保持装置9で実施する。残りの角度補正は、特定の方向だけの補正で済むため、全ての補正をウェーハ保持装置9で行う場合に比べて、格段にウェーハ保持装置9の構造や制御を簡単にすることができる。
こうした構成のもと、イオン注入を実施することで、イオンビームの輸送に支障なく、ウェーハ駆動部側での負担を減らし、ウェーハに対して所望する角度で高精度にイオン注入処理が実現できる。
ウェーハWの結晶方位とウェーハWに照射されるイオンビームIBの進行方向とを一致させる、チャネル現象を利用したチャネリングイオン注入を実施するにあたっては、特に有用である。
なお、ウェーハWの結晶方位とウェーハWに照射されるイオンビームIBの進行方向とを一致させるとは、ウェーハWの結晶方位とウェーハWに照射されるイオンビームIBの進行方向とを平行にすることである。
【0061】
図13のフローチャートでは、処理S4のウェーハWの姿勢調整にあたり、本実実施形態での角度補正に直接かかわりがないツイスト機構Kによる調整を省略している。実際のイオン注入処理においては、ツイスト角度の設定が必要であれば、処理S4でのチルト機構Lを用いたウェーハWの姿勢を調整時にツイスト機構Kを用いたウェーハWの姿勢調整も実施すればよい。
【0062】
上記実施形態では、イオン注入装置IMは、スポットビームを使用する枚葉式のイオン注入装置が想定されていたが、複数枚のウェーハを保持するディスクを備えたバッチ式のイオン注入装置にも適用できる。また、イオンビームは、スポットビームに代えて、非走査のリボンビームであってもよい。
また、イオン注入装置IMの構成としては、X軸とY軸とを入れ替えた構成でもよい。この場合、Y軸方向にイオンビームを走査し、X軸方向にウェーハ保持装置9を駆動させて、ウェーハWへのイオン注入処理を実施する。また、チルト機構LによるウェーハWの回転軸は、Y軸と平行な方向とする。
【0063】
上記実施形態では、角度計測器として、前段多点ファラデー11と後段多点ファラデー12を使用する構成について説明したが、直交する2方向(X軸方向とY軸方向)でイオンビームの角度測定を実施できるものであれば、他の構成を使用してもよい。また、直交する2方向を別々の角度計測器を用いて計測してもよく、角度計測に用いる角度計測器の個数についての制限はない。
【0064】
図14-
図16は、角度計測器の変形例を示す。
図14は、角度計測器60の模式的断面図である。角度計測器60は、複数のファラデーカップからなる多点ファラデー61とその前方にスリット62が形成された平板とが一体化された箱63で構成されている。スリット62は、Y軸方向に長い。箱63は、駆動軸64に連結している。不図示の駆動源で駆動軸64を矢印方向へ移動することで、駆動軸64に連結された箱63をイオンビームIBの照射領域に出し入れする。
【0065】
多点ファラデー61で、スリット62を通して箱63内に照射されるイオンビームIBrのビーム電流を検出する。検出されたビーム電流が最大となるファラデーカップの位置を特定し、特定したファラデーカップとスリット62との距離a1と多点ファラデー61とスリット62との距離a2から、X軸方向でのイオンビームIBrの照射角度θxを算出する。
【0066】
図14で、X軸とY軸の方向を入れ替えて、Y軸方向でのイオンビームIBrの照射角度を算出してもよい。この場合、角度計測器60の移動方向と多点ファラデー61でのファラデーの並びは、Y軸方向となる。また、スリット62の長手方向は、X軸方向となる。
なお、後述する他の角度計測器の変形例を含め、スリットに代えて、ピンホールを使用してもよい。
【0067】
図15は、角度計測器70の模式的断面図である。角度計測器70は、スリット72を有する平板73とファラデーカップ71で構成されている。平板73は駆動軸75に連結している。ファラデーカップ71も同様に、駆動軸74に連結している。2つの駆動軸74、75は、図の矢印のごとく、平板73とファラデーカップ71とを移動する。イオンビームIBrの照射領域で所定の位置に平板73を配置する。その後、ファラデーカップ71を平板73と平行な方向(X軸方向)に移動する。この際、スリット72を通過する実際のイオンビームIBrのビーム電流を検出し、検出したビーム電流が最大となる位置を特定する。特定された位置から、X軸方向におけるスリット72の中心位置までの距離b1を算出する。ここで算出した距離b1とスリット72とファラデーカップ71との間の距離b2から、スリット72を通過するイオンビームIBrの照射角度θxを算出する。
【0068】
図14の実施形態と同じく、
図15の実施形態においてX軸とY軸の関係を反対にすれば、Y軸方向でのイオンビームIBrの照射角度を算出することができる。
【0069】
図16は、角度計測器80の模式的断面図である。角度計測器80は、駆動機構82と駆動機構82の一端に配置されたファラデーカップ81から構成されている。駆動機構82は、X軸と平行な回転軸周りに回転する。
駆動機構82を回転しつつ、ファラデーカップ81で実際のイオンビームIBrのビーム電流が最大となるときの駆動機構82の回転角度を特定する。
ファラデーカップ81とウェーハ保持装置9は、駆動機構82に対して所定角度で取り付けられている。ビーム電流が最大となるときの駆動機構82の回転角度を特定することで、ウェーハに照射されるイオンビームの照射角度を求めることができる。
【0070】
イオン注入処理にあたっては、ウェーハ保持装置9に不図示のウェーハを保持した後、駆動機構82を回転し、ウェーハ保持装置9とファラデーカップ81との位置を図示のものから入れ替える。
駆動機構82の回転角度は、望ましくは360度であるが、これに限定されない。ファラデーカップ81での計測、ウェーハWへのイオン注入処理、ファラデーカップ81とウェーハ保持装置9との位置の入れ替え、といった各処理が可能であれば、駆動機構82の回転角度は360度を下回る角度でも構わない。
【0071】
上記実施形態では、角度補正器として平行化器7を利用する構成について説明したが、ビームラインに角度補正用の光学素子を配置してもよい。また、
図1のイオン注入装置IMにおいて、加速管4は、加速管4内を通過するイオンビーム径を補正するフォーカスレンズを有している。フォーカスレンズは、四重極レンズとして知られる光学素子であり、このレンズを角度補正器として利用してもよい。
さらには、一対の電極からなるエネルギーフィルターを角度度補正器として、利用してもよい。ここに挙げた光学素子は、いずれもX軸もしくはY軸方向でのイオンビームIBの角度調整が可能な光学素子である。同様の機能を有する光学素子であれば、他の光学素子を利用してもよい。
【0072】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
IM イオン注入装置
W ウェーハ
11、12、60、70、80 角度計測器
7 角度補正器
8 処理室
9 ウェーハ保持装置
K ツイスト機構
L チルト機構
V 角度情報
R 注入レシピ情報
M 結晶軸情報
C1、C2 制御装置