(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】新規化合物及びその製造方法、並びに医薬組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 213/30 20060101AFI20250219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250219BHJP
A61K 31/421 20060101ALI20250219BHJP
A61K 31/426 20060101ALI20250219BHJP
A61K 31/4406 20060101ALI20250219BHJP
C07D 213/40 20060101ALI20250219BHJP
C07D 263/32 20060101ALI20250219BHJP
C07D 277/28 20060101ALI20250219BHJP
C07F 7/08 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
C07D213/30
A61P35/00
A61K31/421
A61K31/426
A61K31/4406
C07D213/40 CSP
C07D263/32
C07D277/28
C07F7/08 A
(21)【出願番号】P 2022580557
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2022003317
(87)【国際公開番号】W WO2022172786
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2021020207
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、次世代がん医療創生研究事業、「細胞内タンパク質輸送ブロッカーM-COPAをリードとする分子標的薬の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100136939
【氏名又は名称】岸武 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】椎名 勇
(72)【発明者】
【氏名】下仲 基之
(72)【発明者】
【氏名】村田 貴嗣
(72)【発明者】
【氏名】小幡 裕希
(72)【発明者】
【氏名】西田 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】岡本 康司
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/070856(WO,A1)
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2013年,56,150-159
【文献】Journal of Organic Chemistry,2000年,65,7075-7082
【文献】Tetrahedron Letters,2000年,41,2953-2955
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K 31/
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
[式中、R
1、R
3~R
8は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す。R
2は、水素原子、又は-OR
a若しくは-NR
bR
cで表される基を示す。R
9は、-CH
2OR
d、-C(O)OR
d、-C(O)R
d、-CH
2NR
eR
f、又は-C(O)NR
eR
fで表される基を示す。R
a~R
fは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示す。]
【請求項2】
前記式(1)中、R
1、R
6がそれぞれ独立にアルキル基であり、R
2がヒドロキシ基であり、R
4、R
5、R
7、R
8が水素原子であり、R
9が-C(O)OR
d又は-C(O)NR
eR
fで表される基であり、R
dがアリールアルキル基又はヘテロアリールアルキル基であり、R
eが水素原子であり、R
fがアリールアルキル基又はヘテロアリールアルキル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記式(3)で表される、請求項1又は2に記載の化合物の合成中間体。
【化2】
[式中、R
1、R
3~R
8は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、Zは、ヒドロキシ基の保護基
であり、トリアルキルシリル基を示す。]
【請求項4】
下記式(1)で表される化合物を製造する製造方法であって、下記式(3)で表される化合物から下記式(1)で表される化合物を製造することを含む製造方法。
【化3】
[式中、R
1、R
3~R
8は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す。R
2は、水素原子、又は-OR
a若しくは-NR
bR
cで表される基を示す。R
9は、-CH
2OR
d、-C(O)OR
d、-C(O)R
d、-CH
2NR
eR
f、又は-C(O)NR
eR
fで表される基を示す。R
a~R
fは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示す。]
【化4】
[式中、R
1、R
3~R
8は、前記と同義である。Zは、ヒドロキシ基の保護基を示す。]
【請求項5】
下記式(6)で表される化合物と下記式(5)で表される化合物とをホーナー・ワズワース・エモンス反応に付した後、加水分解を経て前記式(3)で表される化合物を製造することを含む請求項4に記載の製造方法。
【化5】
[式中、R
1、R
3~R
8、Zは、前記と同義である。]
【化6】
[式中、R
10、R
11は、それぞれ独立にアルキル基を示す。]
【請求項6】
下記式(7)で表される化合物を分子内ディールス・アルダー反応により環化して前記式(6)で表される化合物を製造することを含む請求項5に記載の製造方法。
【化7】
[式中、R
1、R
3~R
8、Zは、前記と同義である。]
【請求項7】
請求項1又は2に記載の化合物と、薬学的に許容される担体と含有する医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物及びその製造方法、並びに医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
M-COPA(2-メチルコプロフィリンアミド[AMF-26])は、以下の構造を有する化合物であり、抗がん作用を示すことが知られている。
【0003】
【0004】
近年、M-COPAは、受容体型チロシンキナーゼ(MET、EGFR、KIT等)の小胞体-ゴルジ体間の輸送抑制を介して、ゴルジ体又は細胞膜への移行等を阻害することにより、抗がん作用を示すことが明らかとなっており(例えば、非特許文献1~5参照)、ゴルジ体を標的とする次世代の分子標的抗がん剤としての利用が期待されている。
【0005】
M-COPAは元来、子嚢菌トリコデルマ由来の天然化合物を原料に合成されており、大量合成が困難であった。そこで、特許文献1では、天然物を使用せずにM-COPA及びその類縁体を合成する方法が提案されている。
【0006】
特許文献1に記載されているM-COPAの合成方法の一部を抜粋すると以下のとおりである。まず、化合物aを分子内ディールス・アルダー反応により環化し、還元することにより化合物bを得た後、化合物bを酸化して化合物cを得る。次いで、化合物cをホーナー・ワズワース・エモンス反応に付して化合物dを得た後、加水分解することにより化合物eを得る。そして、化合物eと3-アミノメチルピリジンとを反応させてアミド化した後、脱保護することによりM-COPAを得る。
【0007】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Y.Ohashi et al.,Cancer Res.,2016;76(13):3895-3903
【文献】Y.Hara et al.,PLOS ONE,2017;12(4):e0175514
【文献】Y.Ohashi et al.,Oncotarget,2018;9(2):1641-1655
【文献】Y.Obata et al.,Cancer Lett.,2018;415(1):1-10
【文献】Y.Obata et al.,Cell Commun. Signal.,2019;17(1):114
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のとおり、M-COPAは、次世代の分子標的抗がん剤としての利用が期待されているものであるが、M-COPAをリード化合物とした新たな類縁体の開発も望まれる。
【0011】
また、特許文献1に記載されている合成方法では、合成中間体である化合物cが有するアルデヒド基のα位に嵩高い基が存在するため、α位の水素原子が反転してエピマー化し、目的物質の収率が低下するという課題があった。このため、新しい合成方法の開発もまた望まれる。
【0012】
本発明は、上記に鑑みて提案されたものであり、がん治療等に有用な新規化合物、その新規化合物を高効率に製造することが可能な製造方法、並びにその新規化合物を有効成分として含有する医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 下記式(1)で表される化合物。
【化3】
[式中、R
1、R
3~R
8は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す。R
2は、水素原子、又は-OR
a若しくは-NR
bR
cで表される基を示す。R
9は、-CH
2OR
d、-C(O)OR
d、-C(O)R
d、-CH
2NR
eR
f、又は-C(O)NR
eR
fで表される基を示す。R
a~R
fは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示す。]
【0014】
<2> 前記式(1)中、R1、R6がそれぞれ独立にアルキル基であり、R2がヒドロキシ基であり、R4、R5、R7、R8が水素原子であり、R9が-C(O)ORd又は-C(O)NReRfで表される基であり、Rdがアリールアルキル基又はヘテロアリールアルキル基であり、Reが水素原子であり、Rfがアリールアルキル基又はヘテロアリールアルキル基である<1>に記載の化合物。
【0015】
<3> 下記式(3)で表される、<1>又は<2>に記載の化合物の合成中間体。
【化4】
[式中、R
1、R
3~R
8は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す。Zは、ヒドロキシ基の保護基
であり、トリアルキルシリル基を示す。]
【0016】
<4> 下記式(1)で表される化合物を製造する製造方法であって、下記式(3)で表される化合物から下記式(1)で表される化合物を製造することを含む製造方法。
【化5】
[式中、R
1、R
3~R
8は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す。R
2は、水素原子、又は-OR
a若しくは-NR
bR
cで表される基を示す。R
9は、-CH
2OR
d、-C(O)OR
d、-C(O)R
d、-CH
2NR
eR
f、又は-C(O)NR
eR
fで表される基を示す。R
a~R
fは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示す。]
【化6】
[式中、R
1、R
3~R
8は、前記と同義である。Zは、ヒドロキシ基の保護基を示す。]
【0017】
<5> 下記式(6)で表される化合物と下記式(5)で表される化合物とをホーナー・ワズワース・エモンス反応に付した後、加水分解を経て前記式(3)で表される化合物を製造することを含む<4>に記載の製造方法。
【化7】
[式中、R
1、R
3~R
8、Zは、前記と同義である。]
【化8】
[式中、R
10、R
11は、それぞれ独立にアルキル基を示す。]
【0018】
<6> 下記式(7)で表される化合物を分子内ディールス・アルダー反応により環化して前記式(6)で表される化合物を製造することを含む<5>に記載の製造方法。
【化9】
[式中、R
1、R
3~R
8、Zは、前記と同義である。]
【0019】
<7> <1>又は<2>に記載の化合物と、薬学的に許容される担体と含有する医薬組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、がん治療等に有用な新規化合物、その新規化合物を高効率に製造することが可能な製造方法、並びにその新規化合物を有効成分として含有する医薬組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】各種濃度の化合物(RS1、RS2、RS5、又はM-COPA)の存在下でGIST-T1細胞を培養したときの細胞培養曲線を示す図である。
【
図2】各種濃度の化合物(RS1、RS2、RS5、又はM-COPA)の存在下でGIST-R9細胞を培養したときの細胞培養曲線を示す図である。
【
図3】各種濃度の化合物(RS1、RS2、RS5、又はM-COPA)の存在下でHMC-1.2細胞を培養したときの細胞培養曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<式(1)で表される化合物>
本実施形態に係る化合物は、下記式(1)で表される。
【0023】
【0024】
上記式(1)中、R1、R3~R8は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す。R2は、水素原子、又は-ORa若しくは-NRbRcで表される基を示す。R9は、-CH2ORd、-C(O)ORd、-C(O)Rd、-CH2NReRf、又は-C(O)NReRfで表される基を示す。Ra~Rfは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリールアルキル基を示す。
【0025】
R1、R3~R8のアルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体的としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0026】
R1、R6としては、それぞれ独立にアルキル基(特には炭素数1~6のアルキル基)が好ましく、R3としては、水素原子又はアルキル基(特には炭素数1~6のアルキル基)が好ましく、R4、R5、R7、R8としては、水素原子が好ましい。
【0027】
Ra~Rfのアルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体的としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0028】
Ra~Rfのアリール基としては、炭素数6~20の単環式又は多環式芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6~12の単環式又は多環式芳香族炭化水素基がより好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0029】
Ra~Rfのヘテロアリール基としては、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1~4個含む、環構成炭素数2~9の単環式又は多環式芳香族複素環基が好ましく、環構成炭素数3~5の単環式芳香族複素環基がより好ましい。ヘテロアリール基の具体例としては、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、フラニル基、チエニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラヒドロキノリル基、キノリル基、テトラヒドロイソキノリル基、イソキノリル基、キノリジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、ピロロピリジル基、イミダゾピリジル基、ピラゾロピリジル基、ピリドピラジル基、プリニル基、プテリジニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、チアゾロピリジル基等が挙げられる。
【0030】
Ra~Rfのアリールアルキル基としては、上記のアリール基で置換された炭素数1~6のアルキル基が好ましく、上記のアリール基で置換された炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。アリールアルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルプロパン-2-イル基等が挙げられる。
【0031】
Ra~Rfのヘテロアリールアルキル基としては、上記のヘテロアリール基で置換された炭素数1~6のアルキル基が好ましく、上記のヘテロアリール基で置換された炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。ヘテロアリールアルキル基の具体例としては、ピリジルメチル基、ピリジルエチル基、イミダゾリルメチル基、イミダゾリルエチル基、ピラゾリルメチル基、ピラゾリルエチル基、ピラジニルメチル基、ピラジニルエチル基、ピリダジニルメチル基、ピリダジニルエチル基、ピリミジニルメチル基、ピリミジニルエチル基、オキサゾリルメチル基、オキサゾリルエチル基、チアゾリルメチル基、チアゾリルエチル基等が挙げられる。
【0032】
上記のアリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基、アミノ基、炭素数1~4のアルキル基を有するモノ又はジアルキルアミノ基、炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基の具体例としては、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0033】
R2としては、-ORaで表される基が好ましく、このときのRaとしては、水素原子、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。好ましいR2としては、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0034】
R9としては、-CH2ORd、-C(O)ORd、又は-C(O)NReRfで表される基が好ましく、-C(O)ORd又は-C(O)NReRfで表される基がより好ましい。R9が-CH2ORdで表される基である場合、Rdとしては、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基が好ましい。この場合のRdの具体例としては、水素原子、メチル基等が挙げられる。R9が-C(O)ORdで表される基である場合、Rdとしては、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、アリールアルキル基、又はヘテロアリールアルキル基が好ましい。この場合のRdの具体例としては、水素原子、メチル基、ピリジン-3-イルメチル基、ピリジン-4-イルメチル基、オキサゾール-4-イルメチル基、オキサゾール-5-イルメチル基、チアゾール-2-イルメチル基、チアゾール-5-イルメチル基等が挙げられる。R9が-C(O)NReRfで表される基である場合、Reとしては、水素原子が好ましく、Rfとしては、アリールアルキル基又はヘテロアリールアルキル基が好ましい。この場合のRfの具体例としては、ピリジン-3-イルメチル基、ピリジン-4-イルメチル基、オキサゾール-4-イルメチル基、オキサゾール-5-イルメチル基、チアゾール-2-イルメチル基、チアゾール-5-イルメチル基等が挙げられる。
【0035】
上記式(1)で表される化合物のうち好ましいものとしては、例えば、R1、R6がそれぞれ独立にアルキル基であり、R2がヒドロキシ基であり、R4、R5、R7、R8が水素原子であり、R9が-C(O)ORd又は-C(O)NReRfで表される基であり、Rdがアリールアルキル基又はヘテロアリールアルキル基であり、Reが水素原子であり、Rfがアリールアルキル基又はヘテロアリールアルキル基であるものが挙げられる。アルキル基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基の好ましい例示は上記のとおりである。
【0036】
上記式(1)で表される化合物が酸性官能基又は塩基性官能基を有する場合、当該化合物は、塩の形態であってもよい。例えば、上記式(1)で表される化合物が酸性官能基を有する場合、当該化合物は、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩などの形態であってもよい。また、上記式(1)で表される化合物が塩基性官能基を有する場合、当該化合物は、塩酸、リン酸等の無機酸との塩の形態であってもよく、酢酸、フマル酸、メタンスルホン酸等の有機酸との塩の形態であってもよい。
【0037】
<式(1)で表される化合物の製造方法>
上記式(1)で表される化合物は、例えば、以下の(A)~(L)の各工程を経て製造することができる。
(A)不斉アルキル化による式(20)で表される化合物の製造
(B)還元による式(19)で表される化合物の製造
(C)酸化、及びエヴァンス不斉補助基を用いた向山アルドール反応による式(16)で表される化合物の製造
(D)式(16)で表される化合物から式(15)で表される化合物(ワインレブアミド)の製造
(E)ヒドロキシ基保護による式(14)で表される化合物の製造
(F)還元及びウィティッヒ反応による式(11)で表される化合物の製造
(G)還元による式(10)で表される化合物の製造
(H)ウィティッヒ反応による式(8)で表される化合物の製造
(I)還元による式(7)で表される化合物の製造
(J)分子内ディールス・アルダー反応による式(6)で表される化合物の製造
(K)ホーナー・ワズワース・エモンス反応及び加水分解による式(3)で表される化合物の製造
(L)式(3)で表される化合物から式(1)で表される化合物の製造
【0038】
以下、本実施形態に係る製造方法の各工程について詳細に説明する。なお、式中のR1~R9、Ra~Rfは、上記と同義である。
【0039】
[(A)不斉アルキル化による式(20)で表される化合物の製造]
【化11】
【0040】
上記式(22)中、R12は、アルキル基、アリール基、又はアリールアルキル基を示す。R12のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、R12のアリール基としては、炭素数6~20の単環式又は多環式芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6~12の単環式又は多環式芳香族炭化水素基がより好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基等が挙げられる。また、R12のアリールアルキル基としては、上記のアリール基で置換された炭素数1~6のアルキル基が好ましく、上記のアリール基で置換された炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。アリールアルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルプロパン-2-イル基等が挙げられる。これらの中でも、R12としては、特にベンジル基、フェニル基、イソプロピル基が好ましい。
【0041】
上記式(21)中、Xは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)を示す。
【0042】
上記式(22)で表される化合物に塩基を作用させてエノラートを生成し、これに式(21)で表される化合物(ハロゲン化物)をアルキル化剤として反応させると、上記式(20)で表される化合物(光学活性イソオキサゾリジン誘導体)を製造することができる。塩基としては、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド等を用いることができる。さらに、触媒としてテトラブチルアンモニウムヨージドを添加してもよい。反応は、テトラヒドロフラン、エーテル等の有機溶媒中で行われる。反応温度は、-78℃~室温程度が好ましい。反応後、目的物を回収し、カラムクロマトグラフィ等で精製する。
【0043】
なお、上記式(20)で表される化合物中のR3の立体配置は、上記式(22)で表される化合物中のR12の立体配置によって決定される。
【0044】
[(B)還元による式(19)で表される化合物の製造]
【化12】
【0045】
上記式(20)で表される化合物(光学活性イソオキサゾリジン誘導体)は、還元剤で処理することにより、光学純度を損なうことなく上記式(19)で表される化合物(アルコール)に変換することができる。還元剤としては、LiAlH4、LiBH4-EtOH、NaH2Al(OCH2CH2OMe)2等を用いることができる。反応は、テトラヒドロフラン、エーテル等の有機溶媒中で行われる。反応温度は、0℃~室温程度が好ましい。反応後、目的物を回収し、カラムクロマトグラフィ等で精製する。
【0046】
[(C)酸化、及びエヴァンス不斉補助基を用いた向山アルドール反応による式(16)で表される化合物の製造]
【化13】
【0047】
まず、上記式(19)で表される化合物(アルコール)を酸化して上記式(18)で表される化合物(アルデヒド)を製造する。酸化反応には、ジメチルスルホキシド、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム、デス・マーチン・ペルヨージナン等の弱い酸化剤を用いることができる。反応は、塩化メチレン等の有機溶媒中で行われる。反応温度は、0℃~室温程度が好ましい。得られた上記式(18)で表される化合物は、単離せずにそのまま次の反応に用いてもよい。
【0048】
次いで、ボロントリフラート及びアミンの存在下で、上記式(18)で表される化合物と上記式(17)で表される化合物を向山アルドール反応に付すことにより、上記式(16)で表される化合物を製造することができる。上記式(17)中、R12は、上記式(22)と同義である。アミンとしては、トリエチルアミン、2,6-ルチジン等を用いることができる。反応は、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン等の有機溶媒中で行われる。反応温度は、-78℃~0℃程度が好ましい。反応後、目的物を回収し、カラムクロマトグラフィ等で精製する。
【0049】
[(D)式(16)で表される化合物から式(15)で表される化合物(ワインレブアミド)の製造]
【化14】
【0050】
上記式(16)で表される化合物をN,O-ジメチルヒドロキシルアミンと反応させることにより、上記式(15)で表される化合物(ワインレブアミド)へと容易に変換することができる。上記式(15)中、Meは、メチル基を示す。反応は、テトラヒドロフラン等の有機溶媒中で行われる。反応温度は、0℃程度が好ましい。反応後、目的物を回収し、カラムクロマトグラフィ等で精製する。
【0051】
[(E)ヒドロキシ基保護による式(14)で表される化合物の製造]
【化15】
【0052】
上記式(14)中、Zは、ヒドロキシ基の保護基を示す。Zとしては、温和な条件でヒドロキシ基を保護することができ、且つ、アルカリ条件下で安定な保護基が好ましい。好ましい保護基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等のトリアルキルシリル基が挙げられる。
【0053】
ヒドロキシ基の保護は、塩化メチレン等の有機溶媒中、弱塩基である2,6-ルチジン等を触媒として用い、トリアルキルシリルトリフラート等を反応させることにより行うことが好ましい。反応温度は、0℃程度が好ましい。反応後、目的物を回収し、カラムクロマトグラフィ等で精製する。
【0054】
[(F)還元及びウィティッヒ反応による式(11)で表される化合物の製造]
【化16】
【0055】
まず、上記式(14)で表される化合物(アミド)を還元して上記式(13)で表される化合物(アルデヒド)を製造する。その際、水素化ジイソブチルアルミニウムを還元剤として用いることが、アルデヒドで還元を止めることができる点から好ましい。反応は、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、塩化メチレン等の有機溶媒中で行われる。反応温度は、-78℃~0℃程度が好ましい。反応後、目的物を回収する。
【0056】
次いで、上記式(13)で表される化合物(アルデヒド)と上記式(12)で表される化合物(ウィティッヒ試薬)とをウィティッヒ反応に付すことにより、上記式(11)で表される化合物を製造することができる。反応は、塩化メチレン等の有機溶媒中で行われる。反応温度は、35℃程度が好ましい。反応後、目的物を回収し、カラムクロマトグラフィ等で精製する。
【0057】
[(G)還元による式(10)で表される化合物の製造]
【化17】
【0058】
上記工程(F)と同様に、上記式(11)で表される化合物(アミド)を還元することにより、上記式(10)で表される化合物(アルデヒド)を製造することができる。反応条件等は上記工程(F)と同様でよい。
【0059】
[(H)ウィティッヒ反応による式(8)で表される化合物の製造]
【化18】
【0060】
上記工程(F)と同様に、上記式(10)で表される化合物(アルデヒド)と上記式(9)で表される化合物(ウィティッヒ試薬)とをウィティッヒ反応に付すことにより、上記式(8)で表される化合物を製造することができる。反応条件等は上記工程(F)と同様でよい。
【0061】
[(I)還元による式(7)で表される化合物の製造]
【化19】
【0062】
上記工程(F)と同様に、上記式(8)で表される化合物(アミド)を還元することにより、上記式(7)で表される化合物(アルデヒド)を製造することができる。反応条件等は上記工程(F)と同様でよい。
【0063】
[(J)分子内ディールス・アルダー反応による式(6)で表される化合物の製造]
【化20】
【0064】
分子内ディールス・アルダー反応は、鎖状構造分子中の8π系が、より安定な環状構造分子中の4π+4σ系に変換される駆動力によって促進される。反応には、ジエチルアルミニウムクロリド等の触媒を用いることが好ましい。反応は、塩化メチレン等の有機溶媒中で行われる。反応温度は、-78℃~室温程度が好ましい。粗生成物には上記式(6)で表される化合物のほかに立体構造の異なる化合物が含まれるため、粗生成物を薄層クロマトグラフィ等で精製し、目的物を回収する。
【0065】
[(K)ホーナー・ワズワース・エモンス反応及び加水分解による式(3)で表される化合物の製造]
【化21】
【0066】
上記式(5)中、R10、R11は、それぞれ独立にアルキル基を示す。R10、R11のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0067】
まず、上記式(6)で表される化合物と上記式(5)で表される化合物とをホーナー・ワズワース・エモンス反応に付し、上記式(4)で表される化合物を製造する。具体的には、上記式(5)で表される化合物(アルキルホスホン酸エステル)に塩基を作用させてカルボアニオンを発生させ、これを上記式(6)で表される化合物(アルデヒド)と反応させ、上記式(4)で表される化合物(アルケン)を製造する。塩基としては、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムジイソプロピルアミド等を用いることが好ましい。反応は、テトラヒドロフラン、塩化メチレン等の有機溶媒中で行われる。反応温度は、-78℃~室温程度が好ましい。粗生成物には上記式(4)で表される化合物のほかに立体構造の異なる化合物が含まれるため、粗生成物を薄層クロマトグラフィ等で精製し、目的物を回収する。
【0068】
次いで、上記式(4)で表される化合物を加水分解することにより、上記式(3)で表される化合物を製造することができる。ヒドロキシ基を保護したまま加水分解を行うには、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の塩基触媒下で加水分解を行えばよい。
【0069】
[(L)式(3)で表される化合物から式(1)で表される化合物の製造]
【化22】
【0070】
上記式(3)で表される化合物のカルボキシ基をR9へと変換して上記式(2)で表される化合物を製造した後、上記式(2)で表される化合物の-OZをR2へと変換することにより、上記式(1)で表される化合物を製造することができる。
【0071】
上記式(3)で表される化合物から上記式(2)で表される化合物への変換は、通常の有機合成で用いられる方法により行えばよく、例えば、エステル化、アミド化、ハロゲン化、酸無水物化、エーテル化、アミノ化、酸化、還元、カップリング反応、保護、脱保護等を種々組み合わせて行えばよい。反応例を以下に示す。
【0072】
【0073】
上記式(3)で表される化合物のカルボキシ基を水素化アルミニウムリチウム等の還元剤を用いて還元し、RdXで表されるハロゲン化アルキルと反応させるウィリアムソン合成を行えば、R9が-CH2ORdである化合物を得ることができる。また、上記式(3)で表される化合物のカルボキシ基をNHReRfで表されるアミンと脱水縮合反応させれば、R9が-C(O)NReRfである化合物を得ることができる。また、R9が-C(O)NReRfである化合物を水素化アルミニウムリチウム等の還元剤を用いて還元すれば、R9が-CH2NReRfである化合物を得ることができる。また、上記式(3)で表される化合物のカルボキシ基をRdOHで表されるアルコールと脱水縮合反応させれば、R9が-C(O)ORdである化合物を得ることができる。また、上記式(3)で表される化合物のカルボキシ基を還元してヒドロキシメチル基にした後、酸化してホルミル基とし、RdMgXで表されるグリニャール試薬と反応させれば、R9が-CH(OH)Rdである化合物を得ることができる。そして、R9が-CH(OH)Rdである化合物を酸化すれば、R9が-CORdである化合物を得ることができる。
【0074】
上記式(2)で表される化合物から上記式(1)で表される化合物への変換は、通常の有機合成で用いられる方法により行えばよく、例えば、エステル化、エーテル化、ハロゲン化、アミノ化、酸化、還元、保護、脱保護等を種々組み合わせて行えばよい。変換する中間体として、R9にヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基等が導入された場合、その後に行う反応において必要があれば、これらの基の保護、脱保護を行えばよい。反応例を以下に示す。
【0075】
【0076】
まず、上記式(2)で表される化合物の-OZから保護基Zを脱離させ、ヒドロキシ基とした後、種々の基へと変換する。例えば、ヒドロキシ基をRaXで表されるハロゲン化アルキルと反応させるウィリアムソン合成を行えば、R2が-ORaである化合物を得ることができる。また、ヒドロキシ基をRaCOOHで表されるカルボン酸と脱水縮合反応させれば、R2が-O(CO)Raである化合物を得ることができる。また、ヒドロキシ基を有するアルコールを酸化してケトンとし、これを水素化ジイソブチルアルミニウム等の還元剤を用いて還元すると、R1及びR3の置換基の向きの反対側からヒドリド攻撃が進行するため、立体が反転したアルコールが得られる。このアルコールのヒドロキシ基を、アゾジカルボン酸ジエチル及びトリフェニルホスフィンで活性化させ、RbRcNHと反応させる光延反応を行えば、再度立体が反転したアミノ基が導入され、R2が-NRcRdである化合物を得ることができる。また、ヒドロキシ基を1,1’-チオカルボニルジイミダゾールと反応させてチオカルバマートとした後、水素化トリブチルスズ及びアゾビスイソブチロニトリルを用いてラジカル還元を行うと、R2が水素原子である化合物を得ることができる。
【0077】
<医薬組成物>
本実施形態に係る医薬組成物は、上記式(1)で表される化合物と、薬学的に許容される担体と含有する。
【0078】
上記式(1)で表される化合物は、類縁体であるM-COPAと同様に、種々のがんに対して細胞増殖抑制作用を示す。このため、本実施形態に係る医薬組成物は、種々のがんの治療用の医薬組成物として使用し得る。なお、「治療」には、疾患の症状を消失又は軽減させることのほか、症状の進行の度合いを抑制することも含まれる。
【0079】
特に、上記式(1)で表される化合物は、類縁体であるM-COPAと同様に、受容体型チロシンキナーゼ(KIT、FLT3、FGFR3、EGFR、MET等)の小胞体-ゴルジ体間の輸送抑制を介して、ゴルジ体又は細胞膜への移行等を阻害することが可能である。このため、本実施形態に係る医薬組成物は、KITの活性化変異を有するがん(例えば、消化管間質腫瘍、マスト細胞白血病、急性骨髄性白血病);FLT3、FGFR3、EGFR、MET等を高発現しているチロシンキナーゼ受容体高発現がん(例えば、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、肺腺がん、胃がん等);チロシンキナーゼ受容体阻害剤耐性がん(例えば、イマチニブ耐性急性骨髄性白血病、イマチニブ耐性消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、ゲフィチニブ耐性及びオシメルチニブ耐性非小肺腺がん);などの治療にも有効である。
【0080】
薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の有機又は無機の担体が挙げられる。この担体は、固形製剤においては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等として、液状製剤においては、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤等として配合される。また、医薬組成物は、防腐剤、抗酸化剤、着色剤等の製剤添加物を含有していてもよい。
【0081】
医薬組成物の剤形は特に制限されない。医薬組成物の剤形としては、錠剤、カプセル剤、乳剤、懸濁剤等の経口剤;注射剤、点滴剤、外用剤等の非経口剤;などが挙げられる。
【0082】
医薬組成物の投与量は、投与対象、投与経路、対象疾患、症状等に応じて適宜決定される。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
以下の実施例では、上記式(1)で表される化合物として下記の化合物RS1~RS10を製造した。また、比較のため、M-COPAも準備した。
【0085】
【0086】
<合成例1:(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(オキサゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS1)の合成>
【0087】
【0088】
[(2E,4E)-1-ブロモヘキサ-2,4-ジエン(化合物1-2)の調製]
2,4-ヘキサジエン-1-オール(10.0g,102mmol)を含む塩化メチレン溶液(51mL)に対し、0℃で三臭化リン(9.7mL,102mmol)を滴下し、1時間撹拌した。反応系に水を0℃で加えて希釈した後、反応混合液から有機層を分取した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。予め冷却したシリカゲルを用いて、ゲル濾過(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1、事前に0℃に冷却したものを使用)による粗精製を行った。濾過及び減圧濃縮し、化合物1-2の粗生成物を得た。この粗生成物を精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0089】
【0090】
[不斉アルキル化]
(S)-4-ベンジル-3-プロピオニルオキサゾリジン-2-オン(化合物1-3a)(9.0g,38.7mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(39mL)に対し、-78℃でナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドのテトラヒドロフラン溶液(1.0M,43mL,43.0mmol)を滴下した。反応混合液を15分間撹拌した後、(2E,4E)-1-ブロモヘキサ-2,4-ジエン(化合物1-2)(12.5g,77.4mmol)とテトラブチルアンモニウムヨージド(1.48g,4.0mmol)とを加え、室温まで昇温し1.5時間撹拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液を0℃で加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて有機層を分取した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=7/1)で精製し、(S)-4-ベンジル-3-((R,4’E,6’E)-2’-メチルオクタ-4’,6’-ジエノイル)オキサゾリジン-2-オン(化合物1-4)(8.8g,72%)を得た。
【0091】
【0092】
[還元]
水素化アルミニウムリチウム(3.4g,89.6mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(133mL)に対し、0℃で(S)-4-ベンジル-3-((R,4’E,6’E)-2’-メチルオクタ-4’,6’-ジエノイル)オキサゾリジン-2-オン(化合物1-4)(18.7g,59.7mmol)のテトラヒドロフラン溶液(66mL)を滴下し、反応混合液を室温で2.5時間撹拌した。反応系にメタノール及び1.0M 塩酸を0℃で加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて有機層を分取した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製し、(R,4E,6E)-2-メチルオクタ-4,6-ジエン-1-オール(化合物1-5)(7.2g,86%)を得た。
【0093】
【0094】
[酸化]
(R,4E,6E)-2-メチルオクタ-4,6-ジエン-1-オール(化合物1-5)(6.9g,49.3mmol)を含む塩化メチレン溶液(131mL)に対し、室温でジメチルスルホキシド(32.8mL,462mmol)とトリエチルアミン(54.6mL,394mmol)とを加えた。反応混合液を0℃にした後、三酸化硫黄-ピリジン錯体(31.4g,197mmol)を加えて室温で反応混合物を1時間撹拌した。化合物1-6の粗生成物を含む反応混合液を、精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0095】
[エヴァンス不斉補助基を用いた向山アルドール反応]
(R)-4-ベンジル-3-プロピオニルオキサゾリジン-2-オン(化合物1-3b)(11.5g,49.3mmol)を含む塩化メチレン溶液(164mL)に対し、0℃でトリフルオロメタンスルホン酸ジブチルボロンの塩化メチレン溶液(49.3mL,49.3mmol)とトリエチルアミン(6.8mL,49.3mmol)とを加え、10分間撹拌した。反応混合液を-78℃にした後、化合物1-6の粗生成物を含む反応混合液をカニュレーションで加えて30分間撹拌し、0℃に昇温しさらに1時間撹拌した。反応系にリン酸緩衝溶液(pH7)を0℃で加えて反応を停止し、塩化メチレンを加えて有機層を分取した後、水層を塩化メチレンで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1→3/1)で精製し、(R)-4-ベンジル-3-((2’R,3’S,4’R,6’E,8’E)-3’-ヒドロキシ-2’,4’-ジメチルデカ-6’,8’-ジエノイル)オキサゾリジン-2-オン(化合物1-7)(14.6g,2工程収率80%)を得た。
【0096】
【0097】
[ワインレブアミドへの変換]
N,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(6.83g,70.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液(230mL)に対し、0℃でトリメチルアルミニウムのn-ヘキサン溶液(1.0M,70mL,70.0mmol)を加え、反応液を0℃で15分間撹拌した後、室温まで昇温して15分間撹拌した。反応混合液に0℃で(R)-4-ベンジル-3-((2’R,3’S,4’R,6’E,8’E)-3’-ヒドロキシ-2’,4’-ジメチルデカ-6’,8’-ジエノイル)オキサゾリジン-2-オン(化合物1-7)(13.0g,35.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液(120mL)を加えて15分間撹拌した。反応系に飽和酒石酸ナトリウムカリウム水溶液を0℃で加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて有機層を分取した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=3/1→1/1)で精製し、(2R,3S,4R,6E,8E)-3-ヒドロキシ-N-メトキシ-N,2,4-トリメチルデカ-6,8-ジエナミド(化合物1-8)(8.5g,95%)を得た。
【0098】
【0099】
[ヒドロキシ基保護]
(2R,3S,4R,6E,8E)-3-ヒドロキシ-N-メトキシ-N,2,4-トリメチルデカ-6,8-ジエナミド(化合物1-8)(8.63g,33.8mmol)を含む塩化メチレン溶液(170mL)に対し、0℃で2,6-ルチジン(15.8mL,135mmol)とt-ブチルジメチルシリルトリフラート(15.5mL,67.6mmol)とを加え、反応混合液を0℃で15分間撹拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液を0℃で加えて反応を停止し、塩化メチレンを加えて有機層を分取した後、水層を塩化メチレンで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=20/1→5/1)で精製し、(2R,3S,4R,6E,8E)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-N-メトキシ-N,2,4-トリメチルデカ-6,8-ジエナミド(化合物1-9)(12.4g,99%)を得た。
【0100】
【0101】
[還元]
(2R,3S,4R,6E,8E)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-N-メトキシ-N,2,4-トリメチルデカ-6,8-ジエナミド(化合物1-9)(211mg,0.570mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(5.7mL)に対し、-78℃で水素化ジイソブチルアルミニウムのn-ヘキサン溶液(1.03M,0.72mL,0.74mmol)を加え、0℃まで昇温して1.5時間撹拌した。反応系にメタノール及び飽和酒石酸ナトリウムカリウム水溶液を0℃で加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて有機層を分取した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して化合物1-10の粗生成物を得た。この粗生成物を精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0102】
[ウィティッヒ反応]
化合物1-10の粗生成物を含む塩化メチレン溶液(5.7mL)に対し、室温でN-メトキシ-N-メチル2-(トリフェニル-λ5-ホスファンイリデン)アセトアミド(414mg,1.140mmol)を加え、35℃まで昇温して16時間撹拌した。反応混合液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、(2E,4S,5S,6R,8E,10E)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-N-メトキシ-N,4,6-トリメチルドデカ-2,8,10-トリエナミド(化合物1-11)(132mg,2工程収率56%)を得た。この際、化合物1-10を59.4mg(28%)回収した。化合物1-10及び化合物1-11の物性値は以下のとおりである。
【0103】
(2R,3S,4R,6E,8E)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2,4-ジメチルデカ-6,8-ジエナール(化合物1-10):
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 9.81(d,J=0.8Hz,1H,CHO),6.07-5.93(m,2H,H-7,H-8),6.07-5.93(m,1H,H-9),5.50-5.40(m,1H,H-6),4.00(dd,J=4.8,4.0Hz,1H,H-3),2.58-2.47(m,1H,H-2),2.27-2.16(m,1H,H-5),1.94-1.83(m,1H,H-5),1.07(d,J=7.2Hz,1H,2-Me),0.89(s,9H,TBS),0.84(d,J=6.8Hz,3H,4-Me),0.08(s,3H,TBS),0.03(s,3H,TBS).
【0104】
(2E,4S,5S,6R,8E,10E)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-N-メトキシ-N,4,6-トリメチルドデカ-2,8,10-トリエナミド(化合物1-11):
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 6.94(dd,J=15.6,8.8Hz,1H,H-3),6.34(d,J=15.6Hz,1H,H-2),6.04-5.90(m,2H,H-9,H-10),5.61-5.50(m,1H,H-11),5.50-5.40(m,1H,H-8),3.67(s,3H,NMe),3.50(dd,J=6.4,3.2Hz,1H,H-5),3.22(s,3H,OMe),2.61-2.47(m,1H,H-4),1.94-1.84(m,1H,H-7),1.71(d,J=6.8Hz,3H,H-12),1.66-1.56(m,1H,H-6),1.05(d,J=5.6Hz,3H,4-Me),0.90(s,9H,TBS),0.81(d,J=6.8Hz,3H,6-Me),0.04(s,3H,TBS),0.04(s,3H,TBS).
【0105】
【0106】
[還元]
(2E,4S,5S,6R,8E,10E)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-N-メトキシ-N,4,6-トリメチルドデカ-2,8,10-トリエナミド(化合物1-11)(132mg,0.332mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(6.6mL)に対し、-78℃で水素化ジイソブチルアルミニウムのn-ヘキサン溶液(1.03M,0.42mL,0.43mmol)を加え、0℃まで昇温して10分間撹拌した。反応系にメタノール及び飽和酒石酸ナトリウムカリウム水溶液を0℃で加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて有機層を分取した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、(2E,4S,5S,6R,8E,10E)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-4,6-ジメチルドデカ-2,8,10-トリエナール(化合物1-12)(82.8mg,74%)を得た。この際、化合物1-11を7.5mg(6%)回収した。化合物1-12の物性値は以下のとおりである。
【0107】
(2E,4S,5S,6R,8E,10E)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-4,6-ジメチルドデカ-2,8,10-トリエナール(化合物1-12):
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 9.51(d,J=7.6Hz,1H,CHO),6.94(dd,J=16.0,6.8Hz,1H,H-3),6.08(ddd,J=16.0,7.6,1.6Hz,1H,H-2),6.03-5.93(m,2H,H-9,H-10),5.64-5.52(m,1H,H-11),5.49-5.40(m,1H,H-8),3.63(dd,J=6.0,2.8Hz,1H,H-5),2.66(dqd,J=6.8,6.8,6.4Hz,1H,H-4),2.17-2.08(m,1H,H-7),1.97-1.85(m,1H,H-7),1.72(d,J=6.4Hz,3H,H-12),1.64-1.55(m,1H,H-6),1.09(d,J=6.8Hz,3H,4-Me),0.92(s,9H,TBS),0.79(d,J=7.6Hz,3H,4-Me),0.07(s,3H,TBS),0.05(s,3H,TBS).
【0108】
【0109】
[ウィティッヒ反応]
(2E,4S,5S,6R,8E,10E)-5-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-4,6-ジメチルドデカ-2,8,10-トリエナール(化合物1-12)を含む塩化メチレン溶液(2.5mL)に対し、室温でN-メトキシ-N-メチル2-(トリフェニル-λ5-ホスファンイリデン)アセトアミド(179mg,0.492mmol)を加え、35℃まで昇温して16時間撹拌した。反応混合液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、(2E,4E,6S,7S,8R,10E,12E)-7-(tert-ブチルジメチルシロキシ)-N-メトキシ-N,6,8-トリメチルテトラデカ-2,4,10,12-テトラエナミド(化合物1-13)(73.5mg,71%)を得た。この際、化合物1-12を59.4mg(10%)回収した。化合物1-13の物性値は以下のとおりである。
【0110】
(2E,4E,6S,7S,8R,10E,12E)-7-(tert-ブチルジメチルシロキシ)-N-メトキシ-N,6,8-トリメチルテトラデカ-2,4,10,12-テトラエナミド(化合物1-13):
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.31(d,J=15.6,10.0Hz,1H,3-H),6.22-6.06(m,2H,H-4,H-5),6.06-5.90(m,2H,H-11,H-12),5.62-5.51(m,1H,H-11),5.49-5.40(m,1H,H-10),3.70(s,3H,NMe),3.46(dd,J=6.4,3.2Hz,1H,H-7),3.24(s,3H,OMe),2.53-2.40(m,1H,H-6),2.30-2.18(m,1H,H-9),1.94-1.82(m,1H,H-9),1.72(d,J=6.4Hz,3H,H-14),1.63-1.58(m,1H,H-8),1.02(d,J=6.8Hz,3H,6-Me),0.90(s,9H,TBS),0.80(d,J=6.4Hz,3H,8-Me),0.04(s,3H,TBS),0.03(s,3H,TBS).
【0111】
【0112】
[還元]
(2E,4E,6S,7S,8R,10E,12E)-7-(tert-ブチルジメチルシロキシ)-N-メトキシ-N,6,8-トリメチルドデカ-2,4,10,12-テトラエナミド(化合物1-13)(73.5mg,0.174mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(1.7mL)に対し、-78℃で水素化ジイソブチルアルミニウムのn-ヘキサン溶液(1.03M,0.22mL,0.23mmol)を加え、0℃まで昇温して20分間撹拌した。反応系にメタノール及び飽和酒石酸ナトリウムカリウム水溶液を0℃で加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて有機層を分取した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、(2E,4E,6S,7S,8R,10E,12E)-7-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-6,8-ジメチルテトラデカ-2,4,10,12-テトラエナール(化合物1-14)(82.8mg,74%)を得た。化合物1-14の物性値は以下のとおりである。
【0113】
(2E,4E,6S,7S,8R,10E,12E)-7-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-6,8-ジメチルテトラデカ-2,4,10,12-テトラエナール(化合物1-14):
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 9.51(d,J=8.4Hz,1H,CHO),7.08(dd,J=15.2,9.6Hz,1H,H-3),6.34-6.24(m,2H,H-4,H-6),6.09(dd,J=15.2,8.4,1H,H-2),6.04-5.94(m,2H,H-11,H-12),5.64-5.52(m,1H,H-13),5.52-5.40(m,1H,H-10),3.51(dd,J=6.0,3.2Hz,1H,H-7),2.58-2.50(m,1H,H-6),2.18-2.08(m,1H,H-9),1.96-1.86(m,1H,H-9),1.73(d,J=6.8Hz,3H,H-14),1.69-1.56(m,1H,H-8),1.06(d,J=7.2Hz,3H,6-Me),0.92(s,9H,TBS),0.82(d,J=7.6Hz,3H,8-Me),0.06(s,3H,TBS),0.04(s,3H,TBS).
【0114】
【0115】
[分子内ディールス・アルダー反応]
(2E,4E,6S,7S,8R,10E,12E)-7-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-6,8-ジメチルテトラデカ-2,4,10,12-テトラエナール(化合物1-14)(21.2mg,0.0585mmol)を含む塩化メチレン溶液(2.0mL)に対し、-78℃でジエチルアルミニウムクロリドのn-ヘキサン溶液(1.0M,0.06mL,0.06mmol)を加えた。反応系を-45℃に昇温して20分撹拌した後、室温に昇温して1.5時間撹拌した。反応系にメタノール及び飽和酒石酸ナトリウムカリウム水溶液を0℃で加えて反応を停止し、塩化メチレンを加えて有機層を分取した後、水層を塩化メチレンで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、(E)-3-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)アクリルアルデヒド(化合物1-15)(10.5mg,50%)、及び(E)-3-((1’R,2’R,4’aS,6’R,7’S,8’S,8’aR)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)アクリルアルデヒド(化合物1-16)(3.7mg,17%)を得た。化合物1-15の物性値は以下のとおりである。
【0116】
(E)-3-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)アクリルアルデヒド(化合物1-15):
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 9.52(d,J=8.0Hz,1H,CHO),6.82(dd,J=15.6,10.8Hz,1H,H-3),6.04(dd,J=15.6,8.0Hz,1H,H-2),5.64-5.52(m,2H,H-3’,H-4’),2.86(dd,J=9.6,9.6Hz,1H,H-7),2.63(ddd,J=10.4,7.6,6.0Hz,1H,H-1’),2.38-2.22(m,1H,H-2’),1.92-1.83(m,1H,H-4’a),1.80(ddd,J=13.2,7.2,3.6Hz,1H,H-5’),1.64-1.48(m,3H,H-5’,H-6’,H-8’),1.48-1.36(m,1H,8’a-H),0.98(d,J=7.6Hz,3H,2’-Me),0.97(d,J=6.4Hz,3H,6’-Me),0.97(d,J=6.4Hz,3H,8’-Me),0.90(s,9H,TBS),0.06(s,3H,TBS),0.06(s,3H,TBS).
【0117】
【0118】
[ホーナー・ワズワース・エモンス反応]
ジエチルホスホノブロモ酢酸エチル(化合物2-0)(26.3mg,0.0869mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(0.7mL)に対し、-78℃でリチウムビス(トリメチルシリル)アミドのテトラヒドロフラン溶液(1.0M,0.08mL,0.946mmol)を滴下した。反応混合液を-78℃で30分間撹拌した後、化合物1-15(10.5mg,0.0290mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(0.3mL)を加え、室温まで昇温して10分間撹拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液を0℃で加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて有機層を分取した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、エチル(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)ペンタ-2,4-ジエノエート(化合物2-1)(8.8mg,2工程収率59%)、及びエチル(2E,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)ペンタ-2,4-ジエノエート(化合物2-2)(4.0mg,2工程収率27%)を得た。化合物2-1の物性値は以下のとおりである。
【0119】
エチル(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)ペンタ-2,4-ジエノエート(化合物2-1):
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ 7.65(d,J=9.0Hz,1H,H-3),6.47-6.30(m,2H,H-4,H-5),5.58(ddd,J=9.5,3.0,2.5Hz,1H,H-4’),5.49(ddd,J=9.5,2.0,2.0Hz,1H,H-3’),4.29(q,J=7.5Hz,2H,OEt),2.86(dd,J=9.5,9.5Hz,1H,H-7’),2.54(ddd,J=9.0,9.0,5.0Hz,1H,H-1’),2.30-2.18(m,1H,H-2’),1.91-1.82(m,1H,H-4’a),1.76(ddd,J=13.0,3.5,3.5Hz,1H,H-5’),1.60-1.49(m,3H,H-5’,H-6’,H-8’),1.46-1.36(m,1H,H-8’a),1.35(t,J=7.5Hz,3H,OEt),1.00(d,J=6.5Hz,3H,2’-Me),0.98(d,J=7.0Hz,3H,8’-Me),0.96(d,J=6.5Hz,3H,6’-Me),0.91(s,9H,TBS),0.07(s,6H,TBS).
【0120】
【0121】
[加水分解]
エチル(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)ペンタ-2,4-ジエノエート(化合物2-1)(84.7mg,0.166mmol)を含むメタノール(1.0mL)及びテトラヒドロフラン(2.0mL)の混合溶液に対し、0℃で4.0M 水酸化リチウム水溶液(1.0mL,4.00mmol)を加え、室温まで昇温して12時間撹拌した。反応系に1.0M 塩酸を0℃で加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて有機層を分取した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して、化合物2-3の粗生成物を得た。この粗生成物を精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0122】
[アミド化]
化合物2-3の粗生成物を含む塩化メチレン溶液(5.5mL)に対し、室温で2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物(85.5mg,0.248mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(60.7mg,0.497mmol)とを加えた。反応混合液を10分間撹拌した後、5-アミノメチル-1,3-オキサゾール(アミンA-1)(162.4mg,1.66mmol)を加え、室温で10分間撹拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液を0℃で加えて反応を停止し、塩化メチレンを加えて有機層を分取した後、水層を塩化メチレンで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=20/1)で精製し、(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(オキサゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物2-4)(75.6mg,2工程収率81%)を得た。化合物2-1の物性値は以下のとおりである。
【0123】
(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(オキサゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物2-4):
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ 7.85(s,1H,H-2’’),7.77(d,J=10.5Hz,1H,H-3),7.04(s,1H,H-4’’),6.94(brt,J=5.5Hz,1H,NH),6.36(dd,J=15.0,10.5Hz,1H,H-4),6.28(dd,J=15.0,10.0Hz,1H,H-5),5.57(ddd,J=9.5,4.0,3.0Hz,1H,H-4’),5.47(ddd,J=9.5,2.0,2.0Hz,1H,H-3’),4.60(d,J=5.5Hz,2H,CH2Ar),2.85(dd,J=9.5,9.5Hz,1H,H-7’),2.51(ddd,J=10.0,8.5,6.0Hz,1H,H-1’),2.27-2.17(m,1H,H-2’),1.91-1.78(m,1H,H-4’a),1.88-1.71(m,2H,H-6’,H-8’),1.58-1.47(m,1H,H-5’),1.44-1.30(m,1H,H-8’a),0.98(d,J=7.0Hz,3H,2’-Me),0.97(d,J=7.0Hz,3H,8’-Me),0.94(d,J=6.5Hz,3H,6’-Me),0.89(s,9H,TBS),0.06(s,6H,TBS).
【0124】
【0125】
[脱保護]
(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(オキサゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物2-4)(75.6mg,0.134mmol)を含むメタノール(2.0mL)及びテトラヒドロフラン(2.0mL)の混合溶液に対し、0℃で12M 塩酸(0.40mL,4.80mmol)を加え、室温まで昇温して12時間撹拌した。反応系に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を0℃で加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて有機層を分取した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=20/1)で精製し、(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(オキサゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS1)(57.3mg,95%)を得た。化合物RS1の物性値は以下のとおりである。
【0126】
(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(オキサゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS1):
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ 7.85(s,1H,H-2’’),7.78(d,J=10.5Hz,1H,H-3),7.04(s,1H,H-4’’),6.95(brt,J=5.5Hz,1H,NH),6.41(dd,J=15.0,10.5Hz,1H,H-4),6.30(dd,J=15.0,10.0Hz,1H,H-5),5.58(ddd,J=9.5,4.0,3.0Hz,1H,H-4’),5.45(ddd,J=9.5,2.0,2.0Hz,1H,H-3’),4.61(d,J=5.5Hz,2H,CH2Ar),2.73(dd,J=9.5,9.5Hz,1H,H-7’),2.54(ddd,J=10.0,10.0,5.0Hz,1H,H-1’),2.27-2.17(m,1H,H-2’),1.92-1.82(m,1H,H-4’a),1.80-1.71(m,2H,H-5’),1.76-1.64(m,2H,H-6’,H-8’),1.54-1.44(m,1H,H-5’),1.36-1.22(m,1H,H-8’a),1.07(d,J=6.5Hz,3H,2’-Me),1.04(d,J=7.0Hz,3H,8’-Me),0.95(d,J=6.5Hz,3H,6’-Me).
【0127】
<合成例2:(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(チアゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS2)の合成>
【0128】
【0129】
[加水分解]
エチル(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)ペンタ-2,4-ジエノエート(化合物2-1)(45.7mg,0.089mmol)を含むメタノール(0.45mL)及びテトラヒドロフラン(0.90mL)の混合溶液に対し、0℃で4.0M 水酸化リチウム水溶液(0.45mL,1.80mmol)を加え、室温まで昇温して14時間撹拌した。反応系に1.0M 塩酸を0℃で加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて有機層を分取した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して化合物2-3の粗生成物を得た。この粗生成物を精製すること無く、そのまま次の反応に用いた。
【0130】
[アミド化]
化合物2-3の粗生成物を含む塩化メチレン溶液(3.0mL)に対し、室温で2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物(46.1mg,0.134mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(32.7mg,0.268mmol)とを加えた。反応混合液を10分間撹拌した後、5-アミノメチル-1,3-チアゾール(アミンB-1)(102.0mg,0.893mmol)を加えて室温で1時間撹拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液を0℃で加えて反応を停止し、塩化メチレンを加えて有機層を分取した後、水層を塩化メチレンで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=20/1)で精製し、(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(チアゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物2-5)(50.6mg,2工程収率98%)を得た。化合物2-5の物性値は以下のとおりである。
【0131】
(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(チアゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物2-5):
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ 8.80(s,1H,H-2’’),7.84(s,1H,H-4’’),7.78(d,J=10.5Hz,1H,H-3),7.05(brt,J=5.5Hz,1H,NH),6.38(dd,J=15.0,10.5Hz,1H,H-4),6.28(dd,J=15.0,10.0Hz,1H,H-5),5.60-5.54(m,1H,H-4’),5.50-5.45(m,1H,H-3’),4.75(d,J=5.5Hz,2H,CH2Ar),2.86(dd,J=9.0,9.0Hz,1H,H-7’),2.52(ddd,J=10.0,10.0,5.5Hz,1H,H-1’),2.27-2.18(m,1H,H-2’),1.92-1.60(m,4H,H-4’a,H-5’,H-6’,H-8’),1.60-1.44(m,1H,H-5’),1.44-1.34(m,1H,H-8’a),0.98(d,J=6.0Hz,3H,2’-Me),0.97(d,J=6.0Hz,3H,8’-Me),0.96(d,J=7.0Hz,3H,6’-Me),0.90(s,9H,TBS),0.07(s,6H,TBS).
【0132】
【0133】
[脱保護]
(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(チアゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物2-5)(50.6mg,0.087mmol)を含むメタノール(1.6mL)及びテトラヒドロフラン(1.6mL)の混合溶液に対し、0℃で12M 塩酸(0.32mL,3.84mmol)を加え、室温まで昇温して14時間撹拌した。反応系に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を0℃で加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて有機層を分取した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=20/1)で精製し、(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(チアゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS2)(37.0mg,91%)を得た。化合物RS2の物性値は以下のとおりである。
【0134】
(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(チアゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS2):
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ 8.92(s,1H,H-2’’),7.91(s,1H,H-4’’),7.80(d,J=10.5Hz,1H,H-3),7.14-7.11(brm,1H,NH),6.44(dd,J=15.5,10.5Hz,1H,H-4),6.31(dd,J=15.0,10.0Hz,1H,H-5),5.61-5.55(m,1H,H-4’),5.48-5.42(m,1H,H-3’),4.76(d,J=6.0Hz,2H,CH2Ar),2.74(dd,J=10.0,10.0Hz,1H,H-7’),2.55(ddd,J=10.0,10.0,5.5Hz,1H,H-1’),2.30-2.17(m,1H,H-2’),1.97-1.70(m,4H,H-4’a,H-5’,H-6’,H-8’),1.56-1.43(m,1H,H-5’),1.37-1.28(m,1H,H-8’a),1.07(d,J=6.0Hz,3H,2’-Me),1.05(d,J=6.0Hz,3H,8’-Me),0.96(d,J=7.0Hz,3H,6’-Me).
【0135】
<合成例3:(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(オキサゾール-4’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS3)の合成>
化合物2-3のアミド化に際して、5-アミノメチル-1,3-オキサゾールの代わりに4-アミノメチル-1,3-オキサゾールを用いたほかは合成例1と同様にして、化合物RS3を合成した。化合物RS3の物性値は以下のとおりである。
【0136】
【0137】
(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(オキサゾール-4’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS3):
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ 7.87(s,1H,H-2’’),7.75(s,1H,H-3),7.65(s,1H,H-5’’),7.18-7.09(brm,1H,NH),6.44-6.25(m,2H,H-4,H-5),5.62-5.53(m,1H,H-3’),4.47(d,J=5.0Hz,2H,CH2Ar),2.78-2.68(m,1H,H-7’),2.53(ddd,J=9.5,9.5,5.0Hz,1H,H-1’),2.28-2.16(m,1H,H-2’),1.94-1.82(m,1H,H-6’),1.80-1.71(m,1H,H-5’),1.71-1.56(m,1H,H-8’),1.56-1.42(m,1H,H-5’),1.38-1.22(m,1H,H-8’a),1.06(d,J=6.0Hz,3H,2’-Me),1.04(d,J=6.0Hz,3H,8’-Me),0.95(d,J=7.0Hz,3H,6’-Me).
【0138】
<合成例4:(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(チアゾール-2’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS4)の合成>
化合物2-3のアミド化に際して、5-アミノメチル-1,3-オキサゾールの代わりに2-アミノメチル-1,3-チアゾールを用いたほかは合成例1と同様にして、化合物RS4を合成した。化合物RS4の物性値は以下のとおりである。
【0139】
【0140】
(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(チアゾール-2’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS4):
1H NMR(400MHz,CD3OD):δ 7.72(s,1H,H-4’’),7.63(s,1H,H-3),7.52(d,J=3.2Hz,1H,H-5’’),6.54-6.36(m,2H,H-4,H-5),5.61(ddd,J=9.2,4.4,2.8Hz,1H,H-4’),5.49(ddd,J=9.2,1.6,1.6Hz,1H,H-3’),4.77(s,2H,CH2Ar),2.63(dd,J=9.6,9.6Hz,1H,H-7’),2.57(ddd,J=8.4,8.4,2.8Hz,1H,H-1’),2.30-2.14(m,1H,H-2’),1.95-1.82(m,1H,H-4’a),1.77(ddd,J=13.2,3.6,3.6Hz,1H,H-5’),1.54-1.40(m,1H,H-6’),1.37-1.21(m,3H,H-5’,H-8’,H-8’a),1.08(d,J=6.4Hz,3H,2’-Me),1.03(d,J=6.0Hz,3H,8’-Me),0.99(d,J=7.2Hz,3H,6’-Me).
【0141】
<合成例5:(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(ピリジン-3’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS5)の合成>
化合物2-3のアミド化に際して、5-アミノメチル-1,3-オキサゾールの代わりに3-アミノメチルピリジンを用いたほかは合成例1と同様にして、化合物RS5を合成した。化合物RS5の物性値は以下のとおりである。
【0142】
【0143】
(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(ピリジン-3’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS5):
1H NMR(500MHz,C6D6):δ 8.40(s,1H,H-2’’),8.37(d,J=3.0Hz,1H,H-6’’),8.08(d,J=11.0Hz,1H,H-3),7.16-7.09(m,1H,H-4’’),6.59(dd,J=7.5,4.5Hz,1H,H-5’’),6.46(brt,J=6.5Hz,1H,NH),6.37(dd,J=15.5,10.5Hz,1H,H-4),6.05(dd,J=15.5,10.0Hz,1H,H-5),5.44(ddd,J=9.5,4.0,3.0Hz,1H,H-4’),5.33(ddd,J=9.5,2.0,2,0Hz,1H,H-3’),3.96(d,J=5.5Hz,2H,CH2Ar),2.35(dd,J=10.0,10.0Hz,1H,H-7’),2.22(ddd,J=9.5,9.5,5.5Hz,1H,H-1’),2.00-1.90(m,1H,H-2’),1.59-1.51(m,1H,H-4’a),1.43(ddd,J=13.0,3.5,3.5Hz,1H,H-5’),1.39-1.19(m,2H,H-6’,H-8’),1.24-1.12(m,1H,H-5’),1.04-0.88(m,1H,H-8’a),0.92(d,J=6.5Hz,3H,2’-Me),0.91(d,J=6.5Hz,3H,8’-Me),0.73(d,J=7.5Hz,3H,6’-Me).
【0144】
<合成例6:(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,8’-ジメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(チアゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS6)の合成>
酸化及びエヴァンス不斉補助基を用いた向山アルドール反応に際して、化合物1-5の代わりに(4E,6E)-オクタ-4,6-ジエン-1-オールを用いたほかは合成例2と同様にして、化合物RS6を合成した。化合物RS6の物性値は以下のとおりである。
【0145】
【0146】
(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,8’-ジメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(チアゾール-5’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS6):
1H NMR(300MHz,CD3OD):δ 8.89(s,1H,H-2’’),7.79(d,J=3.0Hz,1H,H-4’’),7.59(d,J=9.6Hz,1H,H-3),6.53-6.30(m,2H,H-4,H-5),5.60(ddd,J=9.3,3.6,3.0Hz,1H,H-4’),5.48(ddd,J=9.3,1.8,1.8Hz,1H,H-3’),4.67(s,2H,CH2Ar),3.08(ddd,J=10.8,10.8,4.5Hz,1H,H-7’),2.56(ddd,J=9.3,9.3,5.4Hz,1H,H-1’),2.30-2.12(m,1H,H-2’),2.04-1.90(m,1H,H-4’a),1.90-1.70(m,1H,H-5’),1.48-1.27(m,1H,H-8’),1.37-1.12(m,2H,H-6’,H-8’a),1.15-1.10(m,1H,H-6’),1.06(d,J=6.3Hz,3H,2’-Me),0.97(d,J=7.2Hz,3H,8’-Me).
【0147】
<合成例7:(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,8’-ジメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(ピリジン-3’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS7)の合成>
酸化及びエヴァンス不斉補助基を用いた向山アルドール反応に際して、化合物1-5の代わりに(4E,6E)-オクタ-4,6-ジエン-1-オールを用いたほかは合成例5と同様にして、化合物RS7を合成した。化合物RS7の物性値は以下のとおりである。
【0148】
【0149】
(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,8’-ジメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(ピリジン-3’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS7):
1H NMR(500MHz,CD3OD):δ 8.50(s,1H,H-2’’),8.42(d,J=4.5Hz,1H,H-6’’),7.81-7.74(m,1H,H-4’’),7.59(d,J=9.5Hz,1H,H-3),7.40(dd,J=7.5,4.5Hz,1H,H-5’’),6.49-6.35(m,2H,H-4,H-5),5.60(ddd,J=9.0,4.0,2.5Hz,1H,H-4’),5.49(ddd,J=9.0,3.0,3.0Hz,1H,H-3’),4.50(s,2H,CH2Ar),3.07(ddd,J=11.0,11.0,5.0Hz,1H,H-7’),2.70-2.16(m,1H,H-2’),2.05-1.93(m,1H,H-4’a),1.86-1.75(m,1H,H-5’),1.45-1.31(m,1H,H-8’),1.37-1.19(m,2H,H-6’,H-8’a),1.26-1.14(m,1H,H-6’),1.06(d,J=6.0Hz,3H,2’-Me),0.97(d,J=7.0Hz,3H,8’-Me).
【0150】
<合成例8:(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(ピリジン-2’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS8)の合成>
化合物2-3のアミド化に際して、5-アミノメチル-1,3-オキサゾールの代わりに2-アミノメチルピリジンを用いたほかは合成例1と同様にして、化合物RS8を合成した。化合物RS8の物性値は以下のとおりである。
【0151】
【0152】
(2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)-N-(ピリジン-2’’-イルメチル)ペンタ-2,4-ジエナミド(化合物RS8):
1H NMR(400MHz,acetone-d6):δ 8.56-8.50(m,1H,H-6’’),8.23(brt,J=5.2Hz,1H,NH),7.76(ddd,J=7.6,7.6,1.6Hz,1H,H-4’’),7.75(d,J=10.8Hz,1H,H-3),7.38-7.33(m,1H,H-3’’),7.29-7.23(m,1H,H-5’’),6.56(dd,J=15.2,10.4Hz,1H,H-4),6.41(dd,J=15.2,10.4Hz,1H,H-5),5.61(ddd,J=9.2,4.4,2.8Hz,1H,H-4’),5.48(ddd,J=9.2,2.0,2.0Hz,1H,H-5’),4.60(d,J=5.2Hz,2H,CH2Ar),3.50(d,J=6.8Hz,1H,H-7’),2.67-2.57(m,1H,H-8’),2.60(ddd,J=10.4,9.2,5.2Hz,1H,H-1’),2.30-2.18(m,1H,H-2’),1.96-1.84(m,1H,H-4’a),1.74(ddd,J=13.2,3.6,3.6Hz,1H,H-5’),1.54-1.39(m,1H,H-5’),1.38-1.25(m,1H,H-8’a),1.11(d,J=6.0Hz,3H,8’-Me),1.02(d,J=6.0Hz,3H,2’-Me),1.00(d,J=7.6Hz,3H,6’-Me).
HRMS(ESI):m/z calcd for C24H31BrN2O2Na 481.1461 [M+Na]+;found 481.1444.
【0153】
<合成例9:ピリジン-3’’-イルメチル (2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)ペンタ-2,4-ジエノエート(化合物RS9)の合成>
化合物2-3の脱水縮合反応に際して、5-アミノメチル-1,3-オキサゾールの代わりに3-ピリジンメタノールを用いたほかは合成例1と同様にして、化合物RS9を合成した。化合物RS9の物性値は以下のとおりである。
【0154】
【0155】
ピリジン-3’’-イルメチル (2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)ペンタ-2,4-ジエノエート(化合物RS9):
1H NMR(500MHz,acetone-d6):δ 8.69(s,1H,H-2’’),8.57(d,J=3.5Hz,1H,H-6’’),7.88-7.85(m,1H,H-4’’),7.85(d,J=10.5Hz,1H,H-3),7.43-7.38(m,1H,H-5’’),6.68(dd,J=15.0,10.5Hz,1H,H-4),6.46(dd,J=15.0,10.0Hz,1H,H-5),5.60(ddd,J=9.0,3.0,3.0Hz,1H,H-4’),5.48(ddd,J=9.0,2.5,1.5Hz,1H,H-3’),5.33(s,2H,CH2Ar),3.49(d,J=7.0Hz,1H,H-7’),2.66-2.56(m,2H,H-8’,H-1’),2.30-2.14(m,1H,H-2’),1.94-1.84(m,1H,H-4’a),1.75(ddd,J=13.0,3.0,3.0Hz,1H,H-5’),1.55-1.40(m,1H,H-5’),1.39-1.25(m,1H,H-8’a),1.08(d,J=6.0Hz,3H,8’-Me),1.01(d,J=6.0Hz,3H,2’-Me),0.97(d,J=7.5Hz,3H,6’-Me).
HRMS(ESI):m/z calcd for C24H31BrNO3 460.1482 [M+H]+;found 460.1483.
【0156】
<合成例10:ピリジン-2’’-イルメチル (2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)ペンタ-2,4-ジエノエート(化合物RS10)の合成>
化合物2-3の脱水縮合反応に際して、5-アミノメチル-1,3-オキサゾールの代わりに2-ピリジンメタノールを用いたほかは合成例1と同様にして、化合物RS10を合成した。化合物RS10の物性値は以下のとおりである。
【0157】
【0158】
ピリジン-2’’-イルメチル (2Z,4E)-2-ブロモ-5-((1’S,2’S,4’aR,6’R,7’S,8’S,8’aS)-7’-ヒドロキシ-2’,6’,8’-トリメチル-1’,2’,4’a,5’,6’,7’,8’,8’a-オクタヒドロナフタレン-1’-イル)ペンタ-2,4-ジエノエート(化合物RS10):
1H NMR(500MHz,acetone-d6):δ 8.56(d,J=4.5Hz,1H,H-6’’),7.89(d,J=10.5Hz,1H,H-3),7.82(ddd,J=8.0,7.5,1.5Hz,1H,H-4’’),7.49(d,J=8.0Hz,1H,H-3’’),7.32(dd,J=7.5,4.5Hz,1H,H-5’’),6.70(dd,J=15.0,11.0Hz,1H,H-4),6.49(dd,J=15.0,10.0Hz,1H,H-5),5.60(ddd,J=9.0,4.0,3.0Hz,1H,H-4’),5.48(ddd,J=10.0,2.0,1.5Hz,1H,H-3’),5.34(d,J=1.5Hz,2H,CH2Ar),3.49(d,J=6.5Hz,1H,H-7’),2.67-2.58(m,2H,H-8’,H-1’),2.31-2.19(m,1H,H-2’),1.95-1.85(m,1H,H-4’a),1.75(ddd,J=13.5,3.5,3.5Hz,1H,H-5’),1.57-1.40(m,1H,H-5’),1.38-1.25(m,1H,H-8’a),1.09(d,J=6.0Hz,3H,8’-Me),1.02(d,J=7.0Hz,3H,2’-Me),0.99(d,J=6.5Hz,3H,6’-Me).
HRMS(ESI):m/z calcd for C24H30BrNO3Na 482.1301 [M+Na]+;found 482.1318.
【0159】
<試験例1>
合成例1、2、5で得られた化合物RS1、RS2、RS5、及び特許文献1の合成例1と同様にして合成したM-COPAについて、KITチロシンキナーゼに変異を有するヒト培養がん細胞に対する細胞増殖抑制活性を調べた。ヒト培養がん細胞としては、消化管間質腫瘍細胞株であるGIST-T1細胞(KIT
Δ560-578、イマチニブ感受性)及びGIST-R9細胞(KIT
Δ560-578/D820V、イマチニブ耐性)、並びにマスト細胞白血病細胞株であるHMC-1.2細胞(KIT
V560G/D816V、イマチニブ耐性)を使用した。各がん細胞を96ウェルプレートに播いて一晩培養し、段階希釈した各化合物を添加して2日間培養した後、ATP産生を定量することより細胞増殖を測定した(n=3)。GIST-T1細胞、GIST-R9細胞、HMC-1.2細胞の細胞増殖曲線を
図1~
図3に示す。また、各化合物のIC
50を表1に示す。
【0160】
【0161】
図1~
図3、表1に示すとおり、化合物RS1、RS2、RS5は濃度依存的にGIST-T1細胞、GIST-R9細胞、HMC-1.2細胞の細胞増殖を抑制し、そのIC
50はM-COPAよりも低かった。特に、化合物RS5とM-COPAとを対比して分かるように、M-COPAの構造中のメチル基を臭素原子に置き換えることで、抗がん活性が顕著に向上することが示された。
【0162】
<試験例2>
合成例1~7で得られた化合物RS1~RS7、及び特許文献1の合成例1と同様にして合成したM-COPAについて、ヒト培養がん細胞に対する細胞増殖抑制活性を調べた。がん細胞としては、ヒトがん細胞株8系(皮膚がん1系、卵巣がん1系、前立腺がん1系、肺腺がん2系、大腸がん1系、乳腺がん2系)を使用した。各がん細胞を96ウェルプレートに播いて2日間培養し、段階希釈した各化合物を添加して2日間培養した後、細胞増殖を水溶性テトラゾリウム塩(WST-8)を用いた比色定量で測定した。そして、細胞増殖曲線から50%細胞増殖抑制濃度(GI50)を算出した。各化合物のGI50を表2に示す。
【0163】
【0164】
表2に示すとおり、化合物RS1~RS7は、M-COPAに比べて、多くのがん細胞株について顕著に優れた細胞増殖抑制活性を示した。
【0165】
<試験例3>
合成例8~10で得られた化合物RS8~RS10について、ヒト培養がん細胞に対する細胞増殖抑制活性を調べた。がん細胞としては、ヒト肺腺がん細胞株2系及びヒト肺扁平上皮がん細胞株1系を使用した。各がん細胞を96ウェルプレートに播いて2日間培養し、段階希釈した各化合物を添加して2日間培養した後、細胞増殖を水溶性テトラゾリウム塩(WST-8)を用いた比色定量で測定した。そして、細胞増殖曲線から50%細胞増殖抑制濃度(GI50)を算出した。各化合物のGI50を表3に示す。
【0166】
【0167】
表3に示すとおり、化合物RS8~RS10は、各がん細胞株、特に肺扁平上皮がん細胞株H226に対して、優れた細胞増殖抑制活性を示した。