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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H10F 10/19 20250101AFI20250219BHJP
   H10F 10/167 20250101ALI20250219BHJP
   H10F 10/14 20250101ALI20250219BHJP
   H10K 30/57 20230101ALI20250219BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20250219BHJP
   H10F 77/14 20250101ALI20250219BHJP
   H10F 10/162 20250101ALI20250219BHJP
【FI】
H10F10/19
H10F10/167
H10F10/14
H10K30/57
H10K30/40
H10F77/14 100
H10F10/162
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023185746
(22)【出願日】2023-10-30
【審査請求日】2023-12-20
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523111201
【氏名又は名称】株式会社PXP
(73)【特許権者】
【識別番号】322009206
【氏名又は名称】株式会社SOLABLE
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 広紀
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-534184(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0052141(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104091849(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0248052(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0087233(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0158189(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10F 10/00-10/19
H10F 19/00-19/90
H10F 77/14
H10K 30/00-30/89
H10K 39/00-39/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光吸収層を有する第1セルと、
第1セルの受光面側に配置され、前記第1光吸収層よりもバンドギャップが広い第2光吸収層を有する第2セルと
を備え、
前記第2光吸収層には、前記第2光吸収層を貫通する開口部が設けられており、
前記開口部は、前記第2セルの全体に分散されており、
前記開口部の開口率は、1%以上55%以下であり、
前記第2光吸収層は、複数の凸部を有し、
前記複数の凸部は、前記開口部によって区画されており、又は、前記開口部の少なくとも一部を区画しており、
隣接する凸部の間隔の幅は、1nm以上980nm以下であり、
平面視における前記複数の凸部のそれぞれの幅は、400nm以上1000nm以下であり、
前記第2光吸収層の厚さは、300nm以上1000nm以下であり、
前記第2光吸収層は、前記開口部によって区画された複数の凸部を有し、
前記複数の凸部は、周期的に設けられており、
前記複数の凸部は、受光面側の面積が前記受光面とは反対側の面積よりも小さく、前記受光面とは反対側の面積に対する前記受光面側の面積の割合として定義される柱状度が25%以上100%未満である、
太陽電池。
【請求項2】
前記開口部の内部には、透明部材が設けられており、
前記透明部材の屈折率は、前記第2光吸収層の屈折率よりも低く、
前記透明部材の抵抗率は、前記第2光吸収層の抵抗率よりも高い、
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1セル及び前記第2セルとは、電気的に直列接続されている、
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1光吸収層の材質は、バンドギャップが1.00eV以上1.15eV以下のカルコパイライト化合物又はシリコンである、
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第2光吸収層の材質は、バンドギャップが1.40eV以上1.70eV以下のペロブスカイト化合物、カルコパイライト化合物又はカドミウムテルル化合物である、
請求項1に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より高い光電変換効率を有する太陽電池が渇望されている。しかしながら、単層の太陽電池を用いた場合、理論限界効率は30%程度であり、現存の太陽電池の変換効率は限界に近付いている。そこで、複数の太陽電池を積層し、理論限界効率を40%以上に引き上げるタンデム化技術が注目を集めている。
【0003】
例えば、特許文献1には、受光面側のトップセルと受光面とは反対側のボトムセルとを直列に接続した二端子タンデム太陽電池であって、トップセルにペロブスカイト太陽電池を用い、ボトムセルに結晶シリコン太陽電池またはカルコパイライト太陽電池を用いた、二端子タンデム太陽電池が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6263186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の太陽電池は、太陽光を充分に利用できておらず、光電変換効率のさらなる向上が求められている。
【0006】
本願発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明は、光電変換効率が向上した太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の一態様に係る太陽電池は、第1光吸収層を有する第1セルと、第1セルの受光面側に配置され、第1光吸収層よりもバンドギャップが広い第2光吸収層を有する第2セルとを備え、第2光吸収層には、第2光吸収層を貫通する開口部が設けられており、開口部は、第2セルの全体に分散されており、開口部の開口率は、1%以上55%以下である。
【0008】
本願発明の一態様に係る太陽電池では、第1光吸収層のバンドギャップに対応する波長の光に関する第2セルの光透過率が向上し、第2光吸収層に吸収される光量が増加する。これにより、第1セルの短絡電流密度すなわち光電流が増大し、太陽電池の全体での光電変換効率が向上する。第2光吸収層における開口部の開口率を1%以上とすることによって、第2セルを通過して第1光吸収層に吸収される光量を効果的に増大させることができる。第2光吸収層における開口部の開口率を55%以下とすることによって、第2光吸収層において吸収される光量の過度な減少を抑制することができる。開口部は第2セルの全体に分散されていることにより、第1光吸収層及び第2光吸収層のそれぞれにおいて受光面の面内方向における光量のムラを低減し、第1セル及び第2セルのそれぞれにおいて受光面の面内方向における光電流のムラを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、光電変換効率が向上した太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る太陽電池の断面構造の一例を示す図である。
図2】第2光吸収層の断面構造の一例を示す図である。
図3】第2光吸収層の平面構造の一例を示す図である。
図4】比較例の性能を示すグラフである。
図5】第1実施例の性能を示すグラフである。
図6】夏至における第1実施例及び比較例の性能を示すグラフである。
図7】冬至における第1実施例及び比較例の性能を示すグラフである。
図8】第2実施形態に係る第2光吸収層の断面構造の一例を示す図である。
図9】第2実施例の性能を示すグラフである。
図10】第3実施形態に係る第2光吸収層の断面構造の一例を示す図である。
図11】第4実施形態に係る太陽電池の断面構造の一例を示す図である。
図12】第5実施形態に係る第2光吸収層の平面構造の一例を示す図である。
図13】開口率と光電変換効率の関係を示すグラフである。
図14】開口率と光電変換効率の関係を示すグラフである。
図15】開口率と光電変換効率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施の形態に限定して解するべきではない。
【0012】
なお、各図には、位置関係及び移動方向等を説明するために、便宜的にX軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標を付すことがある。X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な方向をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向とする。Z軸正方向側を受光面側とする。
【0013】
<第1実施形態>
まず、図1を参照しつつ、本発明第1実施形態に係る太陽電池100の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る太陽電池の断面構造の一例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、太陽電池100は、ボトムセル100Aと、トップセル100Bとが直列接続された二端子タンデム型太陽電池である。ボトムセル100A及びトップセル100Bは、互いに異なる波長の光を電気に変換する太陽電池である。トップセル100Bは、ボトムセル100Aの受光面側に積層され、ボトムセル100A及びトップセル100Bは互いに接合されている。ボトムセル100Aの吸収帯は、トップセル100Bの吸収帯よりも長波長側に位置していることが好ましい。ボトムセル100Aは第1セルの一例に相当し、トップセル100Bは第2セルの一例に相当する。
【0015】
なお、本実施形態においては、本発明の一態様として、二端子タンデム型太陽電池を例に挙げて説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。本発明の一実施形態に係る太陽電池は、後述する四端子タンデム型太陽電池又は三端子タンデム型太陽電池であってもよい。また、本発明の一実施形態に係る太陽電池は、それぞれが異なる吸収帯を有する3つ以上の太陽電池が太陽光の入射方向に積層して接合されている多接合型太陽電池であってもよい。このような多接合型太陽電池の場合、ボトムセルよりも受光面側に設けられる少なくとも一つのセルの光吸収層に、当該光吸収層を貫通する後述の開口部が形成されていればよい。例えば、トップセル、ミドルセル及びトップセルを備える三層型太陽電池の場合、ミドルセル及びトップセルの光吸収層の少なくとも一方に、後述する開口部が形成されていればよい。
【0016】
太陽電池100は、基板101、第1電極層102、第1正孔輸送層103、第1光吸収層110、第1電子輸送層104、第2電極層105、第2正孔輸送層106、第2光吸収層120、第2電子輸送層107、第3電極層108及びグリッド電極109を有している。
【0017】
第1電極層102は基板101の上に設けられ、第1正孔輸送層103は第1電極層102の上に設けられ、第1光吸収層110は第1正孔輸送層103の上に設けられ、第1電子輸送層104は第1光吸収層110の上に設けられ、第2電極層105は、第1電子輸送層104の上に設けられ、第2正孔輸送層106は第2電極層105の上に設けられ、第2光吸収層120は第2正孔輸送層106の上に設けられ、第2電子輸送層107は第2光吸収層120の上に設けられ、第3電極層108は第2電子輸送層107の上に設けられ、グリッド電極109は第3電極層108の上に設けられている。太陽電池100は、グリッド電極109側からの光を受光して発電する。太陽電池100は、第1電極層102及びグリッド電極109の二端子から電流を出力する。
【0018】
第1電極層102はボトムセル100Aの正極であり、第1正孔輸送層103はボトムセル100Aの正孔輸送層であり、第1光吸収層110はボトムセル100Aの光吸収層であり、第1電子輸送層104はボトムセル100Aの電子輸送層であり、第2電極層105はボトムセル100Aの負極且つトップセル100Bの正極であり、第2正孔輸送層106はトップセル100Bの正孔輸送層であり、第2光吸収層120はトップセル100Bの光吸収層であり、第2電子輸送層107はトップセル100Bの電子輸送層であり、第3電極層108はトップセル100Bの負極である。
【0019】
(基板)
基板101は、例えば太陽電池100を支持しハンドリングするために設けられる。基板101は、例えば、ソーダガラス、低アルカリガラス若しくは無アルカリガラス等のガラス基板、ステンレス、アルミニウム若しくはチタン等の金属基板、又は、ポリイミド若しくはエポキシ等の樹脂基板によって設けられている。基板101の厚さは、特に限定されないが、例えば10μm以上500μm以下であり、好ましくは20μm以上250μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上100μm以下である。基板107の厚さが上記範囲内であることにより、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
【0020】
(電極層)
第1電極層102は、第1光吸収層110において生じた正孔による電流を取り出す。第1電極層102の材質は、例えば、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)又はチタン(Ti)などの金属材料である。第1電極層102の厚さは、例えば200nm以上800nm以下であり、好ましくは300nm以上700nm以下である。第1電極層102の厚さを上記の範囲とすることによって、電流をロスなく充分に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる。
【0021】
なお、基板101が金属基板である場合、基板101をボトムセル100Aの下部電極として機能させ、第1電極層102を省略してもよい。
【0022】
なお、第1電極層102の材質は金属材料に限定されるものではない。第1電極層102の材質は、導電性セラミックなどの導電性無機化合物、又は、導電性樹脂などの導電性有機化合物であってもよい。但し、太陽光を反射して反射光を第1光吸収層110及び第2光吸収層120に吸収させ、太陽電池100の変換効率を向上させる観点から、基板101及び第1電極層102のいずれかは、反射率の高い金属材料によって設けられていることが好ましい。
【0023】
第2電極層105は、第1光吸収層110において生じた電子による電流を取り出し、第2光吸収層120において生じた正孔による電流を取り出す。また、第2電極層105は、ボトムセル100Aとトップセル100Bとを電気的に直列接続している。第3電極層108は、第2光吸収層120において生じた電子による電流を取り出す。
【0024】
太陽電池100において、第3電極層108を通過した光を第2光吸収層120が吸収するため、第2光吸収層120において吸収される光量を増大させるために、第3電極層108は透明電極層であることが好ましい。また、第2電極層105を通過した光を第1光吸収層110が吸収するため、第1光吸収層110において吸収される光量を増大させるために、第2電極層105は透明電極であることが好ましい。透明電極とは、高い電気伝導性と高い可視光透過性を兼ね備えた材料を用いた電極である。高い電気伝導性とは、特に限定されないが、例えば、比抵抗率が5.0×10-3Ωcm以下であることを意味する。高い可視光透過性とは、特に限定されないが、例えば、400~1300nmの波長領域での平均透過率が80%以上であることを意味する。透明電極の材料としては、公知の材料を用いることができ、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、水素含有酸化インジウム(IOH)、フッ素含有酸化スズ(FTO)、ホウ素含有酸化亜鉛(ZnO:B)、アルミニウム含有酸化亜鉛(ZnO:Al)等が挙げられる。
【0025】
第2電極層105を透明電極とする場合の、上記材料の含有量は、第2電極層105が透明電極として機能すれば特に限定されない。より具体的には、特に限定されないが、上記材料の含有量は、第2電極層105の総質量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下である。第3電極層108を透明電極とする場合の上記材料の含有量についても同様である。
【0026】
例えば、第2電極層105の厚さは0.1μm以上0.3μm以下であり、第3電極層108の厚さは0.1μm以上1.5μm以下であるが、これに限定されるものではない。第2電極層105の厚さは、好ましくは0.01μm以上3.0μm以下であり、より好ましくは0.02μm以上2.5μm以下であり、より好ましくは0.04μm以上2.0μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上1.5μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上0.5μm以下であり、より好ましくはより好ましくは0.1μm以上0.3μm以下である。第2電極層105の厚さが上記範囲内であることにより、電流をロスなく十分に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。第3電極層108の厚さについても同様である。
【0027】
なお、第2電極層105及び第3電極層108のそれぞれの材質は、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第2電極層105及び第3電極層108のそれぞれの厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
(正孔輸送層)
第1正孔輸送層103は、第1光吸収層110において生じた正孔を第1光吸収層110から効率的に取り出し、第1光吸収層110における電子と正孔との再結合を抑制する。第2正孔輸送層106は、第2光吸収層120において生じた正孔を第2光吸収層120から効率的に取り出し、第2光吸収層120における電子と正孔との再結合を抑制する。
【0029】
第1正孔輸送層103及び第2正孔輸送層106の材質は、p型半導体であることが好ましい。p型半導体に含まれる物質としては、特に限定されないが、例えば、ポリ(3,4-エチレン-ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルフォネート(PEDOT:PSS)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)、及びポリ(3-オクチルチオフェン)(P3OT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’-7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(spiro-MeO-TAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;トリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等の有機化合物、並びに、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化ガリウム銅、酸化アルミニウム銅、セレン化モリブデン、セレン化硫化モリブデン、及びテルル化亜鉛等の無機化合物が挙げられる。第1正孔輸送層103及び第2正孔輸送層106に用いられるp型半導体は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0030】
第1正孔輸送層103及び第2正孔輸送層106は、前述の有機化合物又は無機化合物から実質的に構成されることが好ましく、前述の有機化合物又は無機化合物であることがさらに好ましい。第1正孔輸送層103における前述の有機化合物又は無機化合物の含有量は、第1正孔輸送層103の総量に対して、好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは99質量%以上100質量%以下である。第2正孔輸送層106における前述の有機化合物又は無機化合物の含有量も同様である。
【0031】
例えば、第1正孔輸送層103の厚さは10nm以上50nm以下であり、第2正孔輸送層106の厚さは5nm以上20nm以下であるが、これに限定されるものではない。第1正孔輸送層103の厚さは、好ましくは5nm以上100nm以下であり、さらに好ましくは15nm以上80nm以下であり、さらに好ましくは20nm以上60nm以下である。第1正孔輸送層103の厚さを上記の範囲とすることによって、第1光吸収層110において生じた正孔を第1光吸収層110から効率的に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。第2正孔輸送層106の厚さについても同様である。
【0032】
なお、第1正孔輸送層103及び第2正孔輸送層106のそれぞれの材質は、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第1正孔輸送層103及び第2正孔輸送層106のそれぞれの厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1正孔輸送層103及び第2正孔輸送層106の少なくとも一方が省略されてもよい。
【0033】
(光吸収層)
第1光吸収層110及び第2光吸収層120は、近赤外光、可視光、紫外光等の光を吸収して電子と正孔とを発生させる。第1光吸収層110のバンドギャップは、第2光吸収層120のバンドギャップと異なっている。第1光吸収層110のバンドギャップは、好ましくは第2光吸収層120のバンドギャップよりも小さい。すなわち、第1光吸収層110は、第2光吸収層120が吸収する光よりも長波長の光を吸収する。散乱され易く透過性の低い短波長の光を受光面に近い第2光吸収層120に吸収させ、散乱され難く透過性の高い長波長の光を受光面から遠い第1光吸収層110に吸収させることによって、太陽電池100全体での光の利用効率が向上する。
【0034】
第1光吸収層110及び第2光吸収層120の光電変換材料は特に限定されるものではなく、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン及びアモルファスシリコンなどのシリコン系光電変換材料であってもよく、CIGSなどのカルコパイライト化合物、ガリウムヒ素(GaAs)化合物などのIII-V族化合物及びカドミウムテルル(CTe)化合物などのII-VI族化合物などの化合物系光電変換材料であってもよく、有機半導体、色素増感及びペロブスカイトなどの有機系光電変換材料であってもよい。第1光吸収層110及び第2光吸収層120の光電変換材料は、例えば、ペロブスカイト化合物、カルコパイライト化合物、ケステライト化合物又はカドミウムテルル化合物を含んでいることが好ましい。第1光吸収層110及び第2光吸収層120に用いられる光電変換材料は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0035】
但し、二端子タンデム太陽電池である太陽電池100において、ボトムセル100Aとトップセル100Bとは直列に接続されるため、発生する光電流を揃えて電流ミスマッチを低減する観点から、第1光吸収層110及び第2光吸収層120の材質には好ましい組み合わせが存在する。第1光吸収層110の材質は、バンドギャップが1.00eV以上1.15eV以下程度の材料であることが好ましく、例えばバンドギャップが1.00eV程度のカルコパイライト化合物、又は、バンドギャップが1.13eV程度の結晶シリコンであることが好ましい。第2光吸収層120の材質は、バンドギャップが1.40eV以上1.70eV以下程度のペロブスカイト化合物、カルコパイライト化合物又はカドミウムテルル化合物であることが好ましい。
【0036】
第1光吸収層110として好適なカルコパイライト化合物は、III族元素としてインジウムを、VI族元素としてセレンを多く含む。第2光吸収層120として好適なペロブスカイト化合物は、VII族元素としてヨウ素を多く含む。第2光吸収層120として好適なカルコパイライト化合物は、III族元素としてインジウムを、VI族元素としてイオウを多く含む。
【0037】
第1光吸収層110における光電変換材料の含有量は、第1光吸収層110が、可視光、紫外光等の光を吸収して電子と正孔とを生じる機能を有すれば特に限定されない。より具体的には、特に限定されないが、第1光吸収層110の総質量に対して、50質量%以上100質量%以下であり、60質量%以上100質量%以下であり、70質量%以上100質量%以下であり、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下である。第2光吸収層120における光電変換材料の含有量についても同様である。
【0038】
例えば、第1光吸収層110の厚さは1μm以上3μm以下であり、第2光吸収層120の厚さは0.4μm以上1μm以下であるが、これに限定されるものではない。第1光吸収層110の厚さは、好ましくは0.1μm以上5μm以下であり、さらに好ましくは0.2μm以上4μm以下であり、さらに好ましくは0.3μm以下以上3μm以下であり、さらに好ましくは0.4μm以上2μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上1μm以下である。第1光吸収層110の厚さを上記の範囲とすることによって、第1光吸収層110にける電子と正孔とを効率的に生成しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。第2光吸収層120の厚さについても同様である。
【0039】
なお、第1光吸収層110及び第2光吸収層120のそれぞれの厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0040】
なお、光電変換材料として用いられるペロブスカイト化合物としては、一般式AMX3で表されるもの、及び一般式A2MX4で表されるものが挙げられる。ここで、Mは2価のカチオンを、Aは1価のカチオンを、Xは1価のアニオンを指す。
【0041】
1価のカチオンAとしては、特に限定されず、例えば、周期表第1族元素のカチオン、及び有機カチオンが挙げられる。これらの中でも、セシウムイオン、ルビジウムイオン、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン(アミジニウムイオンを含む)、置換基を有していてもよいホスホニウムイオン、又は置換基を有していてもよいアミジニウムイオンが好ましい。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの例としては、1級アンモニウムイオン、及び2級アンモニウムイオンが挙げられる。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの具体例としては、アルキルアンモニウムイオン、アリールアンモニウムイオン、アミジニウムイオン、及びグアニジウムイオン等が挙げられる。特に、立体障害を避けるために、モノアルキルアンモニウムイオンが好ましく、安定性向上の観点からは、1つ以上のフッ素原子により置換されたアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。また、カチオンAとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。1価のカチオンAとしては、例えば、メチルアンモニウムイオン、モノフッ化メチルアンモニウムイオン、ジフッ化メチルアンモニウムイオン、トリフッ化メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、n-プロピルアンモニウムイオン、イソブチルアンモニウムイオン、n-ブチルアンモニウムイオン、t-ブチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ベンジルアンモニウムイオン、フェネチルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、ホルムアミジニウムイオン、アセトアミジニウムイオン、及びイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
【0042】
2価のカチオンMとしては、特に限定されず、例えば、2価の金属カチオン、及び半金属カチオンが挙げられる。具体的な例としては周期表第14族元素のカチオンが挙げられ、より具体的な例としては、鉛カチオン(Pb2+)、スズカチオン(Sn2+)、及びゲルマニウムカチオン(Ge2+)が挙げられる。また、カチオンMとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。
【0043】
1価のアニオンXとしては、特に限定されず、例えば、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオン、アセチルアセトナートイオン、炭酸イオン、クエン酸イオン、硫黄イオン、テルルイオン、チオシアン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、2,4-ペンタンジオナトイオン、及びケイフッ素イオン等が挙げられる。Xは1種類のアニオンであってもよいし、2種類以上のアニオンの組み合わせであってもよい。Xとしては、ハロゲン化物イオン、又はハロゲン化物イオンとその他のアニオンとの組み合わせを用いることが好ましい。ハロゲン化物イオンXの例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオン等が挙げられる。
【0044】
ペロブスカイト化合物としては、有機-無機ペロブスカイト化合物が挙げられ、特にハライド系有機-無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。ペロブスカイト化合物の具体例としては、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnCl3、CH3NH3PbI(3-x)Clx、CH3NH3PbI(3-x)Brx、CH3NH3PbBr(3-x)Clx、CH3NH3Pb(1-y)Sny3、CH3NH3Pb(1-y)SnyBr3、CH3NH3Pb(1-y)SnyCl3、CH3NH3Pb(1-y)Sny(3-x)Clx、CH3NH3Pb(1-y)Sny(3-x)Brx、及びCH3NH3Pb(1-y)SnyBr(3-x)Clx、並びに、上記の化合物においてCH3NH3の代わりにCFH2NH3、CF2HNH3、CF3NH3、又はNH2CH=NH2を用いたもの等が挙げられる。なお、上記式中、xは0以上3以下、yは0以上1以下の任意の値を示す。
【0045】
なお、光電変換材料として用いられるカルコパイライト化合物としては、好ましくは、I-III-VI2族カルコパイライト化合物が挙げられる。I-III-VI2族カルコパイライト化合物としては、特に限定されないが、例えば、CuAlS2、CuAlSe2、CuAlTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、AgAlS2、AgAlSe2、AgAlTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、及びこれらの組み合わせが挙げられる。「これらの組み合わせ」とは、特に限定されないが、例えば、CuGaS2及びCuInSe2を組み合わせたときのCu(InxGa1-x)(Sey1-y2(0<x<1、0<y<1)が挙げられる。これらのカルコパイライト化合物の中でも、CuGaS2、CuGaSe2、CuInS2、CuInSe2、Cu(InxGa1-x)(Sey1-y2(0<x<1、0<y<1)が好ましく、Cu(InxGa1-x)(Sey1-y2(0<x<1、0<y<1)がより好ましい。なお、本実施形態において、CIS化合物というときは、Cu、In、Seを含むカルコパイライト化合物であり、CIGS化合物というときは、Cu、In、Ga、Seを含むカルコパイライト化合物であり、CIGSS化合物というときは、Cu、In、Ga、Se、Sを含むカルコパイライト化合物である。
【0046】
なお、光電変換材料として用いられるケステライト化合物としては、好ましくは、I2-II-IV-VI4族ケステライト化合物が挙げられる。I2-II-IV-VI4族ケステライト化合物としては、特に限定されないが、例えば、Cu2ZnSnS4、Cu2ZnSnSe4、Cu2ZnGeS4、Cu2ZnGeSe4、Cu2MnSnS4、Cu2MnSnSe4、Cu2MnGeS4、Cu2MnGeSe4、Ag2ZnSnS4、Ag2ZnSnSe4、Ag2ZnGeS4、Ag2ZnGeSe4、Ag2MnSnS4、Ag2MnSnSe4、Ag2MnGeS4、Ag2MnGeSe4、及びこれらの組み合わせが挙げられる。「これらの組み合わせ」とは、特に限定されないが、例えば、Cu2ZnSnS4及びAg2ZnSnSe4を組み合わせたときの(CuxAg1-x2ZnSn(SySe1-y4(0<x<1、0<y<1)、及び、Cu2ZnSnS4及びCu2ZnSnSe4を組み合わせたときのCu2ZnSn(SxSe1-x4(0<x<1)が挙げられる。これらのケステライト化合物の中でも、Cu2ZnSnS4、Cu2ZnSnSe4、Ag2ZnSnS4、Ag2ZnSnSe4、(CuxAg1-x2ZnSn(SySe1-y4(0<x<1、0<y<1)が好ましく、(CuxAg1-x2ZnSn(SySe1-y4(0<x<1、0<y<1)がより好ましい。なお、本実施形態において、CZTS化合物というときは、Cu、Zn、Sn、Sを含むケステライト化合物であり、ACZTS化合物というときは、Ag、Cu、Zn、Sn、Sを含むケステライト化合物であり、ACZTSS化合物というときは、Ag、Cu、Zn、Sn、S、Seを含むケステライト化合物である。
【0047】
なお、光電変換材料として用いられるカドミウムテルル化合物としては、特に限定されないが、例えば、CdTe、CdMgTe、CdZnTe、CdSe、CdMgSe、CdZnSe、CdS、CdMgS、CdZnS、及びこれらの組み合わせが挙げられる。「これらの組み合わせ」とは、特に限定されないが、例えば、CdMgTe及びCdMgSeを組み合わせたときの(CdxMg1-x)(TeySe1-y)(0<x<1、0<y<1)が挙げられる。
【0048】
(電子輸送層)
第1電子輸送層104は、第1光吸収層110において生じた電子を第1光吸収層110から効率的に取り出し、第1光吸収層110における電子と正孔との再結合を抑制する。第2電子輸送層107は、第2光吸収層120において生じた電子を第2光吸収層120から効率的に取り出し、第2光吸収層120における電子と正孔との再結合を抑制する。
【0049】
第1電子輸送層104及び第2電子輸送層107の材質は、n型半導体であることが好ましい。n型半導体に含まれる物質としては、特に限定されないが、例えば、C60フラーレン、2,9-ジメチル‐4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(バソクプロイン:BCP)等のフェナントロリン誘導体、4,6-ビス(3,5-ジ-4-ピリジニルフェニル)-2-メチルピリミジン(B4PymPm)やトリス(2,4,6-トリメチル-3-(ピリジン-3-イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)等のフェニルピリジン誘導体等の有機化合物、並びに、硫化カドミウム(CdS)、硫化インジウム(In23)、酸化硫化インジウム(InOS)、酸化硫化亜鉛(ZnOS)、酸化マグネシウム亜鉛(ZnMgOx)、酸化チタン亜鉛(ZnTiOx)、酸化スズ亜鉛(ZnSnOx)、酸化スズ(SnO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO2)等の無機化合物が挙げられる。第1電子輸送層104及び第2電子輸送層107に用いられるp型半導体は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0050】
第1電子輸送層104及び第2電子輸送層107は、前述のn型半導体から実質的に構成されることが好ましく、前述のn型半導体であることがさらに好ましい。第1電子輸送層104における前述のn型半導体の含有量は、第1電子輸送層104の総量に対して、好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは99質量%以上100質量%以下である。第2電子輸送層107おける前述のn型半導体の含有量も同様である。
【0051】
第1電子輸送層104及び第2電子輸送層107のそれぞれの厚さは、例えば20nm以上140nm以下であるが、これに限定されるものではない。第1電子輸送層104の厚さは、好ましくは5nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは10nm以上180nm以下である、さらに好ましくは15nm以上160nm以下である。第1電子輸送層104の厚さを上記の範囲とすることによって、第1光吸収層110において生じた正孔を第1光吸収層110から効率的に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。第2電子輸送層107の厚さについても同様である。
【0052】
なお、第1電子輸送層104は、単層であってもよく、多層であってもよい。第2電子輸送層107も同様に、単層であってもよく、多層であってもよい。第1電子輸送層104及び第2電子輸送層107のそれぞれの材質は、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第1電子輸送層104及び第2電子輸送層107のそれぞれの厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0053】
(グリッド電極)
グリッド電極109は、第3電極層108から電気を取り出すために設けられる。グリッド電極109の導電性材料は、グリッド電極109が第3電極層108よりも低い抵抗率を示すのであれば特に限定されるものではない。グリッド電極109として用いられる導電性材料は、例えばMo、Cr、Ag、Cu、Ni、Al又はTi等の金属であるが、金属以外の導電性無機化合物又は導電性有機化合物であってもよい。グリッド電極109に用いられる導電性材料は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0054】
グリッド電極109における前述の導電性材料の含有量は、グリッド電極109が第3電極層108よりも低い抵抗率を示すのであれば特に限定されるものではない。グリッド電極109における前述の導電性材料の含有量は、グリッド電極109の総質量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
【0055】
グリッド電極109の厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm以上50μm以下である。グリッド電極109の厚さが上記範囲内であることにより、電流をロスなく十分に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
【0056】
次に、図2及び図3を参照しつつ、第2光吸収層120の構成について説明する。図2は、第2光吸収層の断面構造の一例を示す図である。図3は、第2光吸収層の平面構造の一例を示す図である。以下、図2に示すように受光面と交差する断面を断面視することを、単に「断面視」という。また、図3に示すように受光面側から平面視することを、単に「平面視」という。
【0057】
第2光吸収層120には、開口部122が設けられている。図2に示すように、開口部122は、受光面と交差するZ軸方向において、第2光吸収層120を貫通している。つまり、開口部122は、第2光吸収層120のボトムセル100A側及び受光面側の両側に開口している。また、図3に示すように、開口部122は、受光面と平行なXY面方向において、トップセル100Bの全体に分散されている。ここで、平面視において開口部122が第2光吸収層120に占める割合を「開口率CR」としたとき、「開口部122が全体に分散されている」とは、任意の複数の10μm角内における開口率ORの標準偏差が5%以内であることを意味する。開口部122の開口率ORは、例えば1%以上55%以下であり、好ましくは1%以上70%以下であり、さらに好ましくは5%以上60%以下であり、さらに好ましくは10%以上60%以下であり、さらに好ましくは15%以上50%以下である。
【0058】
開口部122の内部には高抵抗な透明部材が設けられている。当該透明部材は、例えば開口部122に隙間なく充填されている。第1光吸収層110のバンドギャップに対応する波長に関して、当該透明部材の光透過率は、好ましくは、第2光吸収層120の光透過率よりも高い。また、当該透明部材の抵抗率は、第2光吸収層120の抵抗率よりも高く、当該透明部材の材質は、好ましくは絶縁体である。当該透明材料の屈折率は、好ましくは第2光吸収層120の屈折率よりも低く、さらに好ましくは2以下である。当該透明材料の屈折率は、好ましくは、第2光吸収層120の屈折率よりも、第2電子輸送層107の屈折率に近い。
【0059】
開口部122の内部に設けられる透明部材を構成する物質としては、例えば、酸化ジルコニア(ZrO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化イットリウム(Y23)、酸化シリコン(SiOx)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化セリウム(CeO2)、フッ化セリウム(CeF3)、フッ化ランタン(LaF3)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)等及びこれらを組み合わせた無機化合物、並びに、シリコーン、エポキシ、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂が挙げられる。
【0060】
なお、開口部122の内部に設けられた透明部材は、開口部122の外部に延出してもよいが、凸部121の上底121Bが当該透明部材から露出していることが好ましい。また、当該透明部材と第2光吸収層120との間に熱履歴による隙間が生じることを抑制する観点から、当該透明部材の熱膨張係数は、好ましくは、基板101、第2電極層105、第3電極層108又はグリッド電極109の熱膨張係数よりも、第2光吸収層120の熱膨張係数に近い。
【0061】
図3に示すように、開口部122は格子状に設けられており、第2光吸収層120は、開口部122によって区画された複数の凸部121を有する。複数の凸部121のそれぞれは、互いに離間し、開口部122によって囲まれている。図3に示すように平面視したときの凸部121の形状(以下、「平面形状」という。)は正方形状である。図2に示すように断面視したときの凸部121の形状(以下、「断面形状」という。)は台形状である。すなわち、凸部121の形状は平面形状が正方形の四角錐台状である。凸部121がどの程度柱状に近いかを示す指標を「柱状度CR」としたとき、四角錐台状となる凸部121の柱状度CRは特に限定されるものではなく、例えば、1%以上99%以下であり、5%以上90%以下であり、10%以上80%以下であり、15%以上70%以下であり、20%以上60%以下であり、25%以上50%以下である。なお、柱状度CRは、100%のときに柱状となり、0%のとき錘状となるものとする。
【0062】
図3に示す平面図において、複数の凸部121は、X軸方向及びY軸方向に周期的に設けられており、マトリクス状に並んでいる。それぞれの凸部121は、X軸方向に沿って平行に延在する一対の辺と、Y軸方向に沿って平行に延在する一対の辺とを有する。複数の凸部121のそれぞれのX軸方向に延在する辺は互いに平行であり、複数の凸部121のそれぞれのY軸方向に延在する辺は互いに平行である。複数の凸部121のうち互いに最も近くに配置された2つの凸部121は、X軸方向又はY軸方向において隣接する。以下、このような2つの凸部121を、単に「隣接する凸部121」とする。
【0063】
図3に示すように、凸部121は、受光面と平行なXY面方向において、トップセル100Bの全体に分散されている。ここで、「凸部121が全体に分散されている」とは、平面視したときの任意の複数の10μm角内における凸部121の投影面積の標準偏差が5%以内であることを意味する。
【0064】
なお、開口部の数は1つに限定されるものではなく、開口部の形状は格子状に限定されるものではない。開口部が複数設けられている場合、複数の開口部のそれぞれの形状は、例えば、帯状、逆多角錐台状、逆円錐台状、逆楕円錐台状、逆多角錐状、逆円錐状、逆楕円錐状、多角柱状、円柱状、楕円柱状、多面体状、球状、楕円球状又はこれらの組み合わせであってもよい。開口部が複数設けられている場合、凸部の平面形状は特に限定されるものではなく、例えば、正方形状、長方形状、矩形以外の多角形状、円形状、楕円形状又はこれらの組み合わせであってもよい。ここで、逆錐台状とは受光面側の上底の面積が受光面とは反対側の下底の面積よりも大きい錐台形状であり、逆錐状とは受光面側を底面とする錐形状である。複数の開口部は、例えば、X軸方向及びY軸方向に周期的に設けられてマトリクス状に並んでいてもよく、X軸方向及びY軸方向に交互にずらして設けられて千鳥状に並んでいてもよい。
【0065】
なお、平面視において、凸部121の後述する下開口面121A及び上開口面121Bは重なっているが、凸部の形状はこれに限定されるものではない。平面視において、下開口面は、一部が上開口面と重なり且つ一部が上開口面の外側に位置していてもよく、全部が上開口面の外側に位置していてもよい。
【0066】
なお、凸部の形状は、平面形状が正方形の四角錐台状に限定されるものではない。凸部の形状は、例えば、多角錘台状、円錐台状、楕円錐台状、多角錘状、円錐状、楕円錐状、多角柱状、円柱状、楕円柱状、多面体状、球状、楕円球状又はこれらの組み合わせであってもよい。凸部の平面形状は正方形状に限定されるものではなく、例えば、長方形状、矩形以外の多角形状、円形状、楕円形状又はこれらの組み合わせであってもよい。凸部の形状は、例えば、複数の粒子が凝集して形成された多孔質状であってもよい。凸部は、例えば、格子状又は帯状に設けられてもよい。複数の凸部の並び方はマトリクス状に限定されるものではなく、複数の凸部は、例えば、X軸方向及びY軸方向に交互にずらして設けられて千鳥状に並んでいてもよい。
【0067】
凸部121は、ボトムセル100A側に位置する下底121Aと、受光面側に位置する上底121Bとを有している。凸部121の下底121Aの面積をS1とし、凸部121の上底121Bの面積をS2としたとき、S2<S1の関係が成り立つ。
【0068】
開口部122の開口率ORは、平面視したときの単位面積及び凸部121の投影面積を用いて、「(単位面積-凸部121の投影面積)/単位面積」と表すものとする。したがって、単位面積に含まれる凸部121の数をNとし、単位面積をSとしたとき、開口部122の開口率ORは、{(S-S1×N)/S}×100%=(1-S1×N/S)×100(%)と定義される。凸部121の柱状度CRは、「上底121Bの面積/下底121Aの面積」と表すものとする。したがって、凸部121の柱状度CRは、(S2/S1)×100(%)と定義される。
【0069】
開口部122は、ボトムセル100A側に第2光吸収層120を開口する下開口面122Aと、受光面側に第2光吸収層120を開口する上開口面122Bとを有している。隣接する2つの凸部121の間の開口部122における下開口面122A側の幅をG1とし、隣接する2つの凸部121の間の開口部122における上開口面122B側の幅をG2としたとき、G1<G2の関係が成り立つ。
【0070】
互いに最も近くに配置された2つの凸部の間隔の幅は、凸部121の形状が四角錐台状である本実施形態においては幅G1に相当する。隣接する2つの凸部121の間隔の幅、すなわち下開口面122A側の幅G1は、例えば1nm以上980nm以下であり、好ましくは1nm以上2000nm以下であり、さらに好ましくは10nm以上1800nm以下であり、さらに好ましくは20nm以上1600nm以下であり、さらに好ましくは50nm以上1400nm以下であり、さらに好ましくは100nm以上1200nm以下であり、さらに好ましくは150nm以上1000nm以下である。
【0071】
上開口面122B側の幅G2は、例えば、10nm以上3000nm以下であり、50nm以上2500nm以下であり、100nm以上2000nm以下であり、150nm以上1500nm以下である。
【0072】
なお、隣接する2つの凸部の互いに対向する辺又は面が平行に設けられていない場合、隣接する2つの凸部の間隔の幅は、当該2つの凸部の間の最短距離とする。このような場合であっても、隣接する2つの凸部の間隔の幅は、好ましくは1nm以上2000nm以下であり、さらに好ましくは10nm以上1800nm以下であり、さらに好ましくは20nm以上1600nm以下であり、さらに好ましくは50nm以上1400nm以下であり、さらに好ましくは100nm以上1200nm以下であり、さらに好ましくは150nm以上1000nm以下である。
【0073】
凸部121の下底121Aにおける一辺の幅をL1とし、凸部121の上底121Bにおける一辺の幅をL2としたとき、L1>L2の関係が成り立つ。凸部121の形状が四角錐台状である本実施形態においては、凸部121の幅は例えば幅L1である。凸部121の幅、すなわち下底121Aにおける一辺の幅L1は、例えば400nm以上1000nm以下であり、好ましくは200nm以上3000nm以下であり、さらに好ましくは250nm以上2500nm以下であり、さらに好ましくは300nm以上2000nm以下であり、さらに好ましくは350nm以上1500nm以下であり、さらに好ましくは400nm以上1000nm以下であり、さらに好ましくは450nm以上800nm以下である。
【0074】
上底121Bにおける一辺の幅L2は、好ましくは200nm以上3000nm以下であり、さらに好ましくは250nm以上2500nm以下であり、さらに好ましくは300nm以上2000nm以下であり、さらに好ましくは350nm以上1500nm以下であり、さらに好ましくは400nm以上1000nm以下であり、さらに好ましくは450nm以上800nm以下である。
【0075】
なお、凸部の平面形状が正方形状ではない場合、凸部の幅は、平面視したときの凸部の投影面を等面積のまま正方形状に変形したときの一辺の長さとする。このような場合であっても、凸部の幅は、好ましくは200nm以上3000nm以下であり、さらに好ましくは250nm以上2500nm以下であり、さらに好ましくは300nm以上2000nm以下であり、さらに好ましくは350nm以上1500nm以下であり、さらに好ましくは400nm以上1000nm以下であり、さらに好ましくは450nm以上800nm以下である。
【0076】
Z軸方向に沿った凸部121の高さをTとしたとき、凸部121の下底121Aは第2光吸収層120の下面を形成し、凸部121の上底121Bは第2光吸収層120の上面を形成するため、高さTは第2光吸収層120の厚さに相当する。第2光吸収層120の厚さ、すなわち高さTは、例えば400nmであり、好ましくは0.1μm以上5μm以下であり、さらに好ましくは0.2μm以上4μm以下であり、さらに好ましくは0.3μm以下以上3μm以下であり、さらに好ましくは0.4μm以上2μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上1μm以下である。
【0077】
凸部121がX軸方向又はY軸方向に並ぶ周期をPとしたとき、周期Pは、例えば400nm以上1000nm以下であり、好ましくは200nm以上3000nm以下であり、さらに好ましくは250nm以上2500nm以下であり、さらに好ましくは300nm以上2000nm以下であり、さらに好ましくは350nm以上1500nm以下であり、さらに好ましくは400nm以上1000nm以下であり、さらに好ましくは450nm以上800nm以下である。ここで、周期Pは、X軸方向又はY軸方向で隣接する2つの凸部121の平面視における中心間の距離である。
【0078】
次に、図4乃至図7を参照しつつ、本実施形態における作用効果について説明する。図4は、比較例の性能を示すグラフである。図5は、第1実施例の性能を示すグラフである。図6は、夏至における第1実施例及び比較例の性能を示すグラフである。図7は、冬至における第1実施例及び比較例の性能を示すグラフである。図4は、標準状態における比較例の外部量子効率EQE及び光電変換効率Eff(%)を示すグラフである。図5は、標準状態における第1実施例の外部量子効率EQE及び光電変換効率Eff(%)を示すグラフである。図4及び図5において、縦軸は外部量子効率EQEを示し、横軸は光の波長(nm)を示している。図6及び図7は、日照条件の変化による光電変換効率Eff(%)の変化を示すグラフである。図6は、太陽電池を水平面設置したときの、日本の夏至である6月21日における日の出から日の入りまでの光電変換効率Eff(%)の変化を示すグラフである。図7は、太陽電池を水平面設置したときの、日本の冬至である11月22日における日の出から日の入りまでの光電変換効率Eff(%)の変化を示すグラフである。図6及び図7において、横軸は時刻を示し、縦軸は光電変換効率Eff(%)を示している。
【0079】
第1実施例の構成は第1実施形態に基づいており、各層の材質及び厚さは以下の通りである。
第1電極層:モリブデン(Mo)、200~800nm
第1正孔輸送層:セレン化モリブデン(MoSe)、10~50nm
第1光吸収層:カルコパイライト化合物(Cu(In,Ga)(Se,S)2)、1~3μm
第1電子輸送層:酸化チタン亜鉛(ZnTiOx)、20~140nm
第2電極層:水素含有酸化インジウム(IOH)、0.1~0.3μm
第2正孔輸送層:酸化ニッケル(NiOx)、5~20nm
第2光吸収層:ペロブスカイト化合物((Cs,FA)PbI3)、0.4~1.0μm
第2電子輸送層:酸化スズ(SnO2)、20~140nm
第3電極層:水素含有酸化インジウム(IOH)、0.1~0.3μm
グリッド電極:銀(Ag)、5~25μm
【0080】
第1実施例において、第1光吸収層のバンドギャップはEg=1.01eVであり、第2光吸収層のバンドギャップはEg=1.55eVである。前述の通り、開口率ORは{(S-S1×N)/S}×100%=(1-S1×N/S)×100(%)と定義され、柱状度CRは(S2/S1)×100(%)と定義されるが、第2光吸収層の開口率ORは23%であり、柱状度CRは22%である。
【0081】
比較例の構成は、第2光吸収層に開口部が設けられていない点を除いて、実施例と同様である。
【0082】
図4に示すように、比較例において、トップセルの短絡電流密度はJSC=24.2mA/cm2であり、ボトムセルの短絡電流密度はJSC=17.6mA/cm2であり、全体の光電変換効率はEff=27.6%である。図5に示すように、第1実施例において、トップセルの短絡電流密度はJSC=21.7mA/cm2であり、ボトムセルの短絡電流密度はJSC=21.6mA/cm2であり、全体の光電変換効率はEff=32.4%である。
【0083】
比較例においては、トップセルの短絡電流密度JSCがボトムセルの短絡電流密度JSCに対して大きすぎるため、トップセルの光電流とボトムセルの光電流との間に電流ミスマッチが生じている。トップセルとボトムセルは直列接続されているため、全体として取り出し可能な電流はボトムセルがボトルネックとなり、全体の光電変換効率Effは小さくなっている。
【0084】
対して、第1実施例におけるトップセルの短絡電流密度JSCは比較例の短絡電流密度JSCよりも小さいが、第1実施例におけるボトムセルの短絡電流密度JSCは比較例の短絡電流密度JSCよりも大きい。これは、第2光吸収層に開口部を設けたことにより、第2光吸収層において吸収される光量が低下するとともにトップセルを通過してボトムセルに到達する光量が増加し、第1光吸収層において吸収される光量が増加したからである。この結果、第1実施例においては電流ミスマッチが低減され、第1実施例における全体の光電変換効率Effは、比較例における全体の光電変換効率Effよりも大きくなっている。なお、トップセルの短絡電流密度JSCは、第2光吸収層の開口部の形状や寸法によって適宜調整可能である。
【0085】
また、第1実施例において、第2光吸収層の凸部はZ軸方向及びY軸方向に周期的に設けられ、凸部の形状は四角錐台状であり、凸部の寸法はnmオーダーであるため、第2光吸収層は、平均屈折率がZ軸方向において連続的に変化するモスアイ構造となっている。このため、第2光吸収層と第2電子輸送層との界面での界面反射が低減されるため、開口部に起因した第2光吸収層において吸収される光量の低下は抑制され、全体の光電変換効率Effが大きくなっている。
【0086】
第2光吸収層に周期的な凸部を設けたことによる界面反射の低減は、太陽電池への光の入射角度に依らない。図6及び図7に示すように、太陽の高さが変化する日中の全時間帯に亘って、第1実施例の光電変換効率Effは、比較例の光電変換効率Effよりも高くなる。また、太陽の南中高度が最も高い夏至から、南中高度が最も低い冬至まで、第1実施例は比較例よりも高い光電変換効率を維持している。したがって、幅広い太陽光の入射角度に対して、第1実施形態において低い反射率を示すことが、光電変換効率の向上に寄与していることが示されている。
【0087】
以上説明したように、本発明の一態様として、太陽電池100は、第1光吸収層110を有するボトムセル100Aと、第1光吸収層110よりもバンドギャップが広い第2光吸収層120を有するトップセル100Bとを備え、第2光吸収層120には第2光吸収層120をZ軸方向に貫通する開口部122が設けられており、開口部122はトップセル100Bの全体に分散されており、開口部122の開口率ORは1%以上55%以下である。
【0088】
これによれば、第1光吸収層110のバンドギャップに対応する波長の光に関するトップセル100Bの光透過率が向上し、第2光吸収層120に吸収される光量が増加する。これにより、ボトムセル100Aの短絡電流密度すなわち光電流が増大し、太陽電池100の全体での光電変換効率が向上する。第2光吸収層120における開口部122の開口率ORを1%以上とすることによって、トップセル100Bを通過して第1光吸収層110に吸収される光量を効果的に増大させることができる。第2光吸収層120における開口部122の開口率ORを55%以下とすることによって、第2光吸収層120において吸収される光量の過度な減少を抑制することができる。開口部122はトップセル100Bの全体に分散されていることにより、第1光吸収層110及び第2光吸収層120のそれぞれにおいて受光面の面内方向における光量のムラを低減し、ボトムセル100A及びトップセル100Bのそれぞれにおいて受光面の面内方向における光電流のムラを抑制することができる。
【0089】
なお、第2光吸収層120における開口部122の開口率ORは、好ましくは5%以上であり、さらに好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは15%以上である。これによれば、トップセル100Bを通過して第1光吸収層110に吸収される光量をさらに効果的に増大させることができる。また、第2光吸収層120における開口部122の開口率ORは、好ましくは70%以下であり、さらに好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは50%以下である。これによれば、第2光吸収層120において吸収される光量の過度な減少をさらに抑制することができる。
【0090】
上記の一態様として、第2光吸収層120は、開口部122によって区画された複数の凸部121を有し、隣接する凸部121の間隔の幅G1は、1nm以上980nm以下である。
【0091】
これによれば、隣接する凸部121の間隔の幅G1を1nm以上とすることによって、トップセル100Bを通過して第1光吸収層110に吸収される光量を効果的に増大させることができる。また、製造バラツキに起因して開口部122が閉塞される可能性を低下させ、トップセル100Bを通過して第1光吸収層110に吸収される光量が低下する可能性を低下させる。隣接する凸部121の間隔の幅G1を980nm以下とすることによって、第2光吸収層120において吸収される光量の過度な減少を抑制することができる。
【0092】
上記の一態様として、平面視における凸部121の幅L1は、400nm以上1000nm以下である。
【0093】
これによれば、幅L1を400nm以上とすることによって、第2光吸収層120において吸収される光量の過度な減少を抑制することができる。幅L1を1000nm以下とすることによって、第1光吸収層110において吸収される光量を効果的に向上させることができる。また、第1光吸収層110において受光面の面内方向における光量のムラを低減し、ボトムセル100Aにおいて受光面の面内方向における光電流のムラを抑制することができる。
【0094】
上記の一態様として、第2光吸収層120の厚さ、すなわち凸部121の高さTは、300nm以上1000nm以下である。
【0095】
これによれば、高さTを300nm以上とすることによって、第2光吸収層120における光電変換効率の低下を抑制することができる。また、凸部を錐台状又は錘状とする場合に、充分な長さの傾斜面を確保し、モスアイ構造を効果的に形成することができる。高さTを1000nm以下とすることによって、第1光吸収層110のバンドギャップに対応する波長の光に関するトップセル100Bの光透過率の低下を抑制し、第2光吸収層120に吸収される光量の低下を抑制することができる。また、凸部121の損傷を抑制することができる。
【0096】
上記の一態様として、凸部121は周期的に設けられている。また、凸部121の受光面側の上底121Bの面積S2が受光面とは反対側の下底121Aの面積S1よりも大きい。
【0097】
これによれば、第2光吸収層120をモスアイ構造とすることができ、反射率を低下させつつ、光の入射角度に依存した反射率の変化を抑制することができる。したがって、時刻や季節による光電変換効率の変動を抑制することができる。
【0098】
上記の一態様として、開口部122には透明部材が設けられており、当該透明部材の屈折率は第2光吸収層120の屈折率よりも低く、当該透明部材の抵抗率は第2光吸収層120の抵抗率よりも高い。
【0099】
これによれば、開口部122を透明部材で埋めることにより、開口部122を設けることによる機械的強度の低下を抑制することができる。透明部材を第2光吸収層120よりも低屈折率な材料によって設けることにより、透明部材と第2正孔輸送106との界面における界面反射、及び、透明部材と第2電子輸送層107との界面における界面反射を抑制することができる。透明部材を第2光吸収層120よりも高抵抗な材料によって設けることにより、リーク電流を抑制することができる。
【0100】
上記の一態様として、ボトムセル100Aとトップセル100Bとは電気的に直列接続されている。
【0101】
これによれば、太陽電池100は二端子タンデム構造であり、四端子タンデム構造に比べて電極数が少ない分だけ製造プロセスを簡略化することができ、パワーコンディショナーや配線の数も減らすことができる。したがって、製造コスト及びシステムコストを低減することができる。凸部121及び開口部122の形状や寸法によってボトムセル100A及びトップセル100Bの光電流を適宜調整することができる。したがって、二端子タンデム構造において光電変換効率を低下させる要因となるボトムセル100Aとトップセル100Bとの間での電流ミスマッチを低減し、光電変換効率を向上させることができる。
【0102】
上記の一態様として、第1光吸収層110の材質はバンドギャップEgが1.00eV以上1.15eV以下のカルコパイライト化合物又はシリコンであり、第2光吸収層120の材質は、バンドギャップが1.40eV以上1.70eV以下のペロブスカイト化合物、カルコパイライト化合物又はカドミウムテルル化合物である。
【0103】
これによれば、開口部122が省略された状態におけるボトムセル100Aとトップセル100Bとの間での電流ミスマッチが小さいため、凸部121及び開口部122の形状や寸法によるボトムセル100A及びトップセル100Bの光電流の調整をし易くすることができる。
【0104】
以下に、本発明の他の実施形態に係る太陽電池の構成について説明する。なお、下記の実施形態では、上記の第1実施形態と共通の事柄については記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については逐次言及しない。
【0105】
<第2実施形態>
次に、図8及び図9を参照しつつ、第2実施形態に係る太陽電池における第2光吸収層220の構成について説明する。図8は、第2実施形態に係る第2光吸収層の断面構造の一例を示す図である。図9は、第2実施例の性能を示すグラフである。図9は、標準状態における第2実施例の外部量子効率(EQE)及び光電変換効率(Eff)を示すグラフである。図9において、縦軸は外部量子効率(EQE)を示し、横軸は光の波長を示している。
【0106】
第2実施形態に係る第2光吸収層220において、凸部221の平面形状は正方形状であり、凸部221の形状は四角柱状である。つまり、隣接する2つの凸部221の間の開口部222における下開口面222A側の幅G1と、隣接する2つの凸部221の間の開口部222における上開口面222B側の幅G2との間には、G1=G2の関係が成り立。また、凸部221の下底221Aにおける一辺の幅L1と、凸部221の上底221Bにおける一辺の幅L2との間には、L1=L2の関係が成り立つ。また、凸部221の下底221Aの面積S1と、凸部221の上底221Bの面積S2との間には、S2=S1の関係が成り立つ。
【0107】
単位面積に含まれる凸部221の数をNとし、単位面積をSとしたとき、開口部222の開口率ORは、{(S-S1×N)/S}×100%=(1-S1×N/S)×100(%)と定義される。第2実施例の構成は第2実施形態に基づいている。第2実施例において、第2光吸収層の開口率ORは53%である。第2実施例は、第2光吸収層における凸部及び開口部の形状を除して、第1実施例と同様である。
【0108】
図9に示すように、第2実施例において、トップセルの短絡電流密度はJSC=21.3mA/cm2であり、ボトムセルの短絡電流密度はJSC=21.2mA/cm2であり、全体の光電変換効率はEff=31.6%である。第2実施形態に基づく第2実施例においても、第1実施形態に基づく第1実施例と同様、トップセルの短絡電流密度JSCは比較例の短絡電流密度JSCよりも小さく、ボトムセルの短絡電流密度JSCは比較例の短絡電流密度JSCよりも大きい。また、第2実施例における全体の光電変換効率Effは、比較例における全体の光電変換効率Effよりも大きくなっている。
【0109】
<第3実施形態>
次に、図10を参照しつつ、第3実施形態に係る太陽電池における第2光吸収層320の構成について説明する。図10は、第3実施形態に係る第2光吸収層の断面構造の一例を示す図である。
【0110】
第3実施形態において、凸部321の形状は粒状であり、第3光吸収層320の形状は複数の粒状の凸部321が凝集して形成された多孔質状である。複数の凸部321の間には、受光部側とその反対側との両側に開口し、受光部側とその反対側とを繋ぐ連続した間隙が存在する。当該間隙は開口部の一例に相当する。当該隙間の受光面側の上開口面と、当該隙間の受光面とは反対側の下開口面とは、例えばZ軸方向において重なっているが、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方向にずれていてもよい。複数の凸部321は、X軸方向及びY軸方向に整列してもよく、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に入り組んで配置されていてもよい。複数の凸部321が入り組んで配置されている場合であっても、複数の凸部321の間に形成される複数の間隙の少なくとも一部は、受光部側とその反対側との両側に開口し、受光部側とその反対側とを繋いでいる。
【0111】
<第4実施形態>
次に、図11を参照しつつ、第4実施形態に係る太陽電池400の構成について説明する。図11は、第4実施形態に係る太陽電池の断面構造の一例を示す図である。
【0112】
図11に示すように、太陽電池400は、ボトムセル400Aとトップセル400Bとが並列接続された四端子タンデム型太陽電池である。太陽電池400は、第1電子輸送層104と第2正孔輸送層106との間に、第2電極層105の代わりに、電極層451、絶縁層452及び電極層453を備えている。電極層451は第1電子輸送層104の上に設けられ、電極層453は第2正孔輸送層106の下に設けられ、絶縁層452は電極層451と電極層543との間に設けられている。電極層451はボトムセル400Aの負極であり、電極層453はトップセル400Bの正極である。絶縁層452は、ボトムセル400Aとトップセル400Bとを電気的に絶縁するものであれば、その材質や厚さは特に限定されるものではない。電極層451,453は透明電極層であることが好ましく、例えば第1実施形態における第2電極層105と同様に設けられる。絶縁層452は、透明絶縁層であることが好ましい。
【0113】
太陽電池400は、第1電極層102、電極層451,453及びグリッド電極109の四端子から電流を出力する。具体的には、太陽電池400は、第1電極層102及び電極層451の二端子からからボトムセル400Aの電流を出力し、電極層453及びグリッド電極109の二端子からトップセル400Bの電流を出力する。
【0114】
第2光吸収層120に周期的に設けられた開口部及び凸部が、トップセル400Bの内部での界面反射を抑制するため、第2光吸収層120に開口部を設けたことに起因する、トップセル400Bに吸収される光量の低下を抑制することができる。また、第2光吸収層120に設けられた開口部は、トップセル400Bを通過してボトムセル400Aに吸収される光量を増加させる。このため、第2光吸収層120に開口部を設けたとしても、トップセル400Bの光電変換効率の低下は抑制され、ボトムセル400Aの光電変換効率は向上する。したがって、ボトムセル400Aとトップセル400Bとの電流ミスマッチを考慮する必要がない四端子タンデム型太陽電池である太陽電池400においても、全体の光電変換効率を向上させることができる。
【0115】
<第5実施形態>
次に、図12を参照しつつ、第5実施形態に係る太陽電池における第2光吸収層520の構成について説明する。図12は、第5実施形態に係る太陽電池の平面構造の一例を示す図である。
【0116】
第2光吸収層520において、凸部521は格子状に設けられており、複数の開口部522を区画している。開口部522は、凸部521に囲まれている。開口部522の形状は逆四角錐台状であり、開口部522の平面形状は正方形状である。複数の開口部522は、X軸方向及びY軸方向に周期的に設けられており、マトリクス状に並んでいる。それぞれの開口部522の下開口面522A及び上開口面522Bは、X軸方向に沿って平行に延在する一対の辺と、Y軸方向に沿って平行に延在する一対の辺とを有する。複数の下開口面522A及び上開口面522BのそれぞれのX軸方向に延在する辺は互いに平行であり、複数の下開口面522A及び上開口面522BのそれぞれのY軸方向に延在する辺は互いに平行である。
【0117】
<開口率及び柱状度の評価>
次に、図13乃至図15を参照しつつ、二端子タンデム型太陽電池と、四端子タンデム型太陽電池における、開口率OR及び柱状度CRが光電変換効率Eff(%)に与える影響について説明する。図13は、開口率と光電変換効率の関係を示すグラフである。図14は、開口率と光電変換効率の関係を示すグラフである。図15は、開口率と光電変換効率の関係を示すグラフである。図13乃至図15において、横軸は開口率OR(%)を示し、縦軸は光電変換効率Eff(%)を示している。なお、前述の通り、開口率ORは{(S-S1×N)/S}×100%=(1-S1×N/S)×100(%)と定義され、柱状度CRは(S2/S1)×100(%)と定義される。
【0118】
図13は、二端子タンデム型太陽電池及び四端子タンデム型太陽電池において、第2光吸収層の厚さに相当する凸部の高さTを490nm又は980nmとし、柱状度CRを100%に固定し、開口率ORを0%から75%まで変化させたときの光電変換効率Eff(%)を示している。
【0119】
二端子タンデム型太陽電池の場合、開口率ORが0%から大きくなるにつれて光電変換効率Effが増大する。T=490nmの場合、光電変換効率Effが最大となる開口率OR(以下、「最適開口率」とする。)が55%程度である。OR=0%すなわち開口部が設けられない状態の光電変換効率Eff(以下、「従来光電変換効率」とする。)は27.6%程度であり、最適開口率のときの光電変換効率Eff(以下、「最適光電変換効率」とする。)は31.6%程度である。T=980nmの場合、最適開口率は75%よりも大きい。従来光電変換効率は26.9%程度であり、最適光電変換効率は31.7%よりも大きい。Tが大きくなると、従来光電変換効率は小さくなるが、最適開口率及び最適光電変換効率は大きくなる。
【0120】
四端子タンデム型太陽電池の場合も、二端子タンデム型太陽電池の場合と同様に、開口率ORが0%から大きくなるにつれて光電変換効率Effは増大する。T=490nmの場合、最適開口率は10%程度であり、従来光電変換効率は33.1%程度であり、最適光電変換効率は33.2%程度である。T=980nmの場合、最適開口率は45%程度であり、従来光電変換効率は33.4%程度であり、最適光電変換効率は33.9%程度である。Tが大きくなると、二端子タンデム型太陽電池とは異なり従来光電変換効率が大きくなり、二端子タンデム型太陽電池と同様に最適開口率及び最適光電変換効率は大きくなる。四端子タンデム型太陽電池における最適開口率は、二端子タンデム型太陽電池における最適開口率よりも小さい。四端子タンデム型太陽電池における従来光電変換効率から最適光電変換効率までの変化量は、二端子タンデム型太陽電池における従来光電変換効率から最適光電変換効率までの変化量よりも小さい。
【0121】
図14は、二端子タンデム型太陽電池において、第2光吸収層の厚さに相当する凸部の高さTを490nm又は980nmとし、柱状度CR=12.5%、25%、50%,100%とし、開口率ORを0%から75%まで変化させたときの光電変換効率Eff(%)を示している。
【0122】
T=490nmの場合、柱状度CR=100%のときの従来光電変換効率は27.6%程度であり最適開口率は55%程度であり最適光電変換効率は31.6%程度、柱状度CR=50%のときの最適開口率は35%程度であり最適光電変換効率は32.1%程度、柱状度CR=25%のときの最適開口率は20%程度であり最適光電変換効率は32.4%程度、柱状度CR=12.5%のときの最適開口率は8%程度であり最適光電変換効率は32.4%程度である。
【0123】
T=980nmの場合、柱状度CR=100%のときの従来光電変換効率は26.9%程度であり最適開口率は75%以上であり最適光電変換効率は31.7%以上、柱状度CR=50%のときの最適開口率は65%程度であり最適光電変換効率は32.0%程度、柱状度CR=25%のときの最適開口率は57%程度であり最適光電変換効率は32.2%程度、柱状度CR=12.5%のときの最適開口率は50%程度であり最適光電変換効率は32.5%程度である。
【0124】
T=490nm,980nmのいずれの場合においても、柱状度CRの大きさに依らず、開口率ORが0%から大きくなるにつれて光電変換効率Effは大きくなり、光電変換効率Effは最適開口率で最大となる。柱状度CRが小さくなり凸部の形状が錘状に近付くほど、最適開口率は小さくなる。また、柱状度CRが小さくなり凸部の形状が錘状に近付くほど、最適光電変換効率は大きくなる。Tが大きくなると、最適開口率は大きくなるが、最適光電変換効率は略変わらない。
【0125】
図15は、四端子タンデム型太陽電池において、第2光吸収層の厚さに相当する凸部の高さTを490nm又は980nmとし、柱状度CR=12.5%、25%、50%,100%とし、開口率ORを0%から75%まで変化させたときの光電変換効率Eff(%)を示している。
【0126】
T=490nmの場合、柱状度CR=100%のときの従来光電変換効率は33.1%程度であり最適開口率は10%以上であり最適光電変換効率は33.2%程度である。柱状度CR=50%,25%,12.5%のとき、開口率ORが0%から大きくなるほど光電変換効率Effは小さくなり、最適開口率及び最適光電変換効率は存在しない。
【0127】
T=980nmの場合、柱状度CR=100%のときの従来光電変換効率は33.4%程度であり最適開口率は45%以上であり最適光電変換効率は33.9%程度であり、柱状度CR=50%のときの最適開口率は20%以上であり最適光電変換効率は34.5%程度である。柱状度CR=25%,12.5%のとき、開口率ORが0%から大きくなるほど光電変換効率Effは小さくなり、最適開口率及び最適光電変換効率は存在しない。
【0128】
T=490nm,980nmのいずれの場合においても、柱状度CRが大きいと、開口率ORが0%から大きくなるにつれて光電変換効率Effは大きくなり、光電変換効率Effは最適開口率で最大となる。Tが大きくなると、最適開口率は大きくなり、最適光電変換効率も大きくなる。柱状度CRが小さくなり凸部の形状が錘状に近付くほど、最適開口率は小さくなり、最適光電変換効率は大きくなる。柱状度CRが一定値(以下、「最低柱状度」とする。)よりも小さくなると、最適開口率及び最適光電変換効率は存在しなくなる。つまり、柱状度CRが最低柱状度よりも小さい場合、第2光吸収層120に開口部122を設けたとしても、全体の光電変換効率は向上しない。Tが大きくなるほど、最低柱状度は小さくなる。
【0129】
なお、ここまで二端子タンデム型太陽電池及び四端子タンデム型太陽電池を例に挙げて説明したが、本発明は三端子タンデム型太陽電池に適用してもよい。例えば、本発明の一実施形態に係る太陽電池は、第1実施形態に係る太陽電池100の第1電極層102、第2電極層105及びグリッド電極109を三端子として機能させる、中間電極型の三端子タンデム型太陽電池であってもよい。すなわち、第1光吸収層110において発生した電流を、第1電極層102と第2電極層105とから出力し、第2光吸収層120において発生した電流を、第2電極層105とグリッド電極109とから出力してもよい。
【0130】
また、本発明の一実施形態に係る太陽電池は、バックコンタクト型の三端子タンデム型太陽電池であってもよい。例えば、ボトムセルの光吸収層を結晶シリコンによって設け、ボトムセルの光吸収層のトップセルとは反対側にn型シリコン領域(n-Si)及びp型シリコン領域(p-Si)を設け、ボトムセルのn-Si及びp-Si並びにトップセルのグリッド電極を三端子として機能させてもよい。すなわち、ボトムセル及びトップセルの光吸収層において発生した電流を、n-Siとグリッド電極とから出力し、且つ、p-Siとn-Siとから出力してもよい。
【0131】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0132】
[1]
第1光吸収層を有する第1セルと、
第1セルの受光面側に配置され、前記第1光吸収層よりもバンドギャップが広い第2光吸収層を有する第2セルと
を備え、
前記第2光吸収層には、前記第2光吸収層を貫通する開口部が設けられており、
前記開口部は、前記第2セルの全体に分散されており、
前記開口部の開口率は、1%以上55%以下である、
太陽電池。
【0133】
[2]
前記第2光吸収層は、前記開口部によって区画された複数の凸部を有し、
隣接する凸部の間隔の幅は、1nm以上980nm以下である、
[1]に記載の太陽電池。
【0134】
[3]
前記第2光吸収層は、前記開口部によって区画された複数の凸部を有し、
平面視における前記複数の凸部のそれぞれの幅は、400nm以上1000nm以下である、
[1]又は[2]に記載の太陽電池。
【0135】
[4]
前記第2光吸収層は、前記開口部の少なくとも一部を区画する連続した凸部を有する、
[1]から[3]のいずれか一つに記載の太陽電池。
【0136】
[5]
前記第2光吸収層の厚さは、300nm以上1000nm以下である、
[1]から[4]のいずれか一つに記載の太陽電池。
【0137】
[6]
前記第2光吸収層は、前記開口部によって区画された複数の凸部を有し、
前記複数の凸部は、周期的に設けられている、
[1]から[5]のいずれか一つに記載の太陽電池。
【0138】
[7]
前記複数の凸部は、受光面側の面積が前記受光面とは反対側の面積よりも小さい、
[6]に記載の太陽電池。
【0139】
[8]
前記複数の凸部は、柱状を成している、
[6]又は[7]に記載の太陽電池。
【0140】
[9]
前記第2光吸収層は、複数の粒子が凝集して形成された多孔質状を成している、
[1]から[8]のいずれか一つに記載の太陽電池。
【0141】
[10]
前記開口部の内部には、透明部材が設けられており、
前記透明部材の屈折率は、前記第2光吸収層の屈折率よりも低く、
前記透明部材の抵抗率は、前記第2光吸収層の抵抗率よりも高い、
[1]から[9]のいずれか一つに記載の太陽電池。
【0142】
[11]
前記第1セル及び前記第2セルとは、電気的に直列接続されている、
[1]から[10]のいずれか一つに記載の太陽電池。
【0143】
[12]
前記第1光吸収層の材質は、バンドギャップが1.00eV以上1.15eV以下のカルコパイライト化合物又はシリコンである、
[1]から[11]のいずれか一つに記載の太陽電池。
【0144】
[13]
前記第2光吸収層の材質は、バンドギャップが1.40eV以上1.70eV以下のペロブスカイト化合物、カルコパイライト化合物又はカドミウムテルル化合物である、
[1]から[12]のいずれか一つに記載の太陽電池。
【0145】
以上説明したように、本発明に係る一態様によれば、光電変換効率が向上した太陽電池を提供することができる。
【0146】
以上説明した実施形態は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、本願発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0147】
100…太陽電池
100A…ボトルネック
100B…トップセル
101…基板
102…第1電極層
103…第1正孔輸送層
104…第1電子輸送層
105…第2電極層
106…第2正孔輸送層
107…第2電子輸送層
108…第3電極層
109…グリッド電極
110…第1光吸収層
120…第2光吸収層
121…凸部
121A…下底
121B…上底
122…開口部
122A…下開口面
122B…上開口面
【要約】
【課題】光電変換効率が向上した太陽電池を提供する。
【解決手段】太陽電池100は、第1光吸収層110を有する第1セル100Aと、第1セル100Aの受光面側に配置され、第1光吸収層110よりもバンドギャップが広い第2光吸収層120を有する第2セル100Bとを備え、第2光吸収層120には、第2光吸収層120を貫通する開口部122が設けられており、開口部122は、第2セル100Bの全体に分散されており、開口部122の開口率ORは、1%以上55%以下である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15