(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】有害節足動物防除用組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/00 20060101AFI20250219BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20250219BHJP
A01N 25/34 20060101ALI20250219BHJP
A01N 43/76 20060101ALI20250219BHJP
A01P 7/02 20060101ALI20250219BHJP
A01P 7/00 20060101ALI20250219BHJP
D06M 13/352 20060101ALI20250219BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20250219BHJP
D06M 13/322 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01N25/10
A01N25/34 B
A01N43/76
A01P7/02
A01P7/00
D06M13/352
D06M15/564
D06M13/322
(21)【出願番号】P 2020035900
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】相奈良 賢治
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-214778(JP,A)
【文献】特開2009-292793(JP,A)
【文献】特開2007-191844(JP,A)
【文献】特開2018-104831(JP,A)
【文献】特開2013-067901(JP,A)
【文献】特開2015-034366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
D06M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-(2,6-ジフルオロフェニル)-4-(2-エトキシ-4-tert-ブチルフェニル)-2-オキサゾリンおよびウレタン系樹脂バインダーを含有し、
2-(2,6-ジフルオロフェニル)-4-(2-エトキシ-4-tert-ブチルフェニル)-2-オキサゾリン1重量部に対し、ウレタン樹脂バインダーの樹脂固形分が10.35~30重量部であることを特徴とする
水に希釈されて使用されてなる有害節足動物防除用組成物であって、
さらに溶剤を含有し、前記溶剤はセバシン酸エステル類およびアジピン酸エステル類からなる群より選択される1種以上を含む有害節足動物防除用組成物。
【請求項2】
前記溶剤は、セバシン酸ジブチルおよびアジピン酸ジイソブチルからなる群より選択される1種以上を含む請求項1に記載の有害節足動物防除用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有害節足動物防除用組成物を担持してなる有害節足動物防除用繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害節足動物防除用組成物及び有害節足動物防除用組成物を担持してなる有害節足動物防除用繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バインダー樹脂と有害節足動物防除化合物とを含有する水乳濁液に繊維を浸漬し、乾燥させることにより得られる有害節足動物防除性繊維が開示されているが、耐洗濯性のさらなる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、繊維に優れた耐洗濯性を付与することができる有害節足動物防除用組成物および有害節足動物防除用組成物を担持してなる有害生物防除用繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、
〔1〕2-(2,6-ジフルオロフェニル)-4-(2-エトキシ-4-tert-ブチルフェニル)-2-オキサゾリンおよびウレタン系樹脂バインダーを含有し、2-(2,6-ジフルオロフェニル)-4-(2-エトキシ-4-tert-ブチルフェニル)-2-オキサゾリン1重量部に対し、前記ウレタン樹脂バインダーの樹脂固形分が10~30重量部であることを特徴とする有害節足動物防除用組成物。
〔2〕〔1〕に記載の有害節足動物防除用組成物を担持してなる有害節足動物防除用繊維。
を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の有害節足動物防除用組成物を繊維に担持すれば、優れた耐洗濯性を有する有害節足動物防除用繊維が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の有害節足動物防除用組成物に用いられる防虫成分は、2-(2,6-ジフルオロフェニル)-4-(2-エトキシ-4-tert-ブチルフェニル)-2-オキサゾリン(一般名:エトキサゾール、以下エトキサゾールと記すこともある)である。
【0008】
前記防虫成分の含有量は、有害節足動物防除用組成物全体量に対し0.2重量%~10重量%の範囲が好ましく、0.5重量%~5重量%の範囲がさらに好ましい。
【0009】
本発明の有害節足動物防除用組成物に用いられるウレタン系樹脂バインダーとしては、パーマリン(登録商標)UA-368(三洋化成工業株式会社製)やユーコート(登録商標)UX-390(三洋化成工業株式会社製)、ハイドラン(登録商標)AP-201(DIC株式会社製)などが挙げられる。これらの樹脂バインダーは、単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
【0010】
前記樹脂バインダーはその樹脂固形分が、2-(2,6-ジフルオロフェニル)-4-(2-エトキシ-4-tert-ブチルフェニル)-2-オキサゾリン1重量部に対し10~30重量部の範囲が適切である。10重量部未満であると十分な耐洗濯性が得られず、30重量部より多くても耐洗濯性への影響がなく経済性が悪くなるため適切ではない。
【0011】
本発明有害節足動物防除用組成物は、必要に応じ界面活性剤やその他溶剤を含有させても良い。前記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤を用いることができる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーアルキルフェニルエーテル、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレートなどのソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンひまし油エーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンベンジル(又はスチリル)フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノ-又はジ-アルキルナフタレン酸スルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン、モノ-又はジ-アルキルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(又はスチリル)フェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(又はスチリル)フェニルエーテルホスフェート又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーホスフェートなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
前記溶剤としては、有効成分である2-(2,6-ジフルオロフェニル)-4-(2-エトキシ-4-tert-ブチルフェニル)-2-オキサゾリンを溶解しうるものであれば特に制限はないが、例えば芳香族または脂肪族炭化水素(アルキルベンゼン、フェニルキシリルエタンなど)、アルコール類(プロピレングリコール、シクロヘキサノール、2-メチル-1-ブタノールなど)、エーテル類(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなど)、エステル類(セバシン酸ジブチル、プロピオン酸エチル、アジピン酸ジイソブチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジオクチル、クエン酸アセチルトリブチルなど)、ケトン類(メチル-n-ブチルケトン、イソホロンなど)、アミン類(トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンなど)が挙げられ、中でもセバシン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチルなどのエステル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル等のエーテル類が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0013】
本発明の有害節足動物防除用組成物には、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤、防腐剤、酸化防止剤、誤食防止剤、色素、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、紫外線吸収剤などを含有させても良い。
【0014】
本発明の有害節足動物防除用組成物を担持してなる有害節足動物防除用繊維は、例えば、本発明の有害節足動物防除用組成物を適宜水で希釈した後、繊維に当該有害節足動物防除用組成物を噴霧、塗布、または繊維を当該有害節足動物用組成物に浸漬するなどした後、乾燥することで得られる。前記乾燥は、100℃~180℃で所定時間乾燥することにより、有害節足動物防除用繊維の耐洗濯性をより高めることができる。
【0015】
前記繊維としては、例えば、ベッドパットや布団など寝具類の中綿、カーペット、カーマット、カーシートなどのマット類、カーテン、衣服などが挙げられる。
【0016】
本発明の有害節足動物防除用組成物が防除対象とする有害節足動物としては、例えば以下の害虫が挙げられる。
ダニ目害虫:コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ等のヒョウヒダニ類、ケナガコナダニ、ムギコナダニ等のコナダニ類、チリニクダニ、イエニクダニ等のニクダニ類、クワガタツメダニ、フトツメダニ等のツメダニ類、ホコリダニ類、マルニクダニ類、イエササラダニ類、イエダニ、トリサシダニ等のサシダニ類、ワクモ等のワクモ類、ナミハダニ、ミカンハダニ等のハダニ類等;
隠翅目害虫:ネコノミ、ヒトノミ等;
これらの中でも、ヒョウヒダニやコナダニなどの屋内塵性ダニやワクモ類に、特に効果がある。
【実施例】
【0017】
以下に実施例および比較例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
〔使用原料〕
(防虫成分)
エトキサゾール含有乳剤の調製
エトキサゾール5重量%、アジピン酸ジイソブチル20重量%、ジエチレングリコールモノメチルエーテル25重量%、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル34重量%、トリエタノールアミン1重量%、プロピレングリコール0.3重量%、ポリオキシエチレン化硬化ひまし油エーテル2重量%、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル8重量%、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩1.4重量%、水3.3重量%を混合し、エトキサゾール含有乳剤(以下、エトキサゾール乳剤と記す)を調整し、当該乳剤を防虫成分として用いた。
(樹脂バインダー)
ウレタン系樹脂バインダー
パーマリンUA-368(三洋化成工業株式会社製 樹脂固形分50重量%)
ユーコートUX-390(三洋化成工業株式会社製 樹脂固形分38重量%)
ユーコートUX-2150(三洋化成工業株式会社製 樹脂固形分50重量%)
ハイドランAP-201(DIC株式会社製、樹脂固形分23重量%)
アクリル系樹脂バインダー
ボンコートAC-501(DIC株式会社製、樹脂固形分60重量%)
メラミン系樹脂バインダー
アミディアM-3(DIC北日本ポリマ株式会社製、樹脂固形分78重量%)
シリコン系樹脂バインダー
KM-9771(信越化学工業株式会社製、樹脂固形分33重量%)
KM-860A(信越化学工業株式会社製、樹脂固形分60重量%)
【0019】
〔組成物の作成〕
(実施例1)
エトキサゾール乳剤30重量%、ウレタン系樹脂バインダーとしてパーマリンUA-368を60重量%および水を10重量%混合し、本発明の有害節足動物防除用組成物を得た。
【0020】
実施例1におけるウレタン系樹脂バインダーを、表1および表2に従い適宜変更して各種有害節足動物防除用組成物を得た。
【0021】
【0022】
【0023】
各種有害節足動物防除用組成物中のエトキサゾール濃度が0.1重量%となるように水で希釈し、希釈液を調製した。ポリエチレンテレフタレート製わた状繊維1gに前記希釈液1gを担持、25℃で1晩乾燥後、各種有害節足動物防除用繊維を得た。前記有害節足動物防除用繊維について、以下の方法で耐洗濯性試験を実施した。
【0024】
(耐洗濯性試験)
1.JAFET標準配合洗剤40mLおよび水30Lを混合し洗浄液を調製した。
2.500mLビーカーに、前記有害節足動物防除用繊維と前記洗浄液300mLを加え、バタフライ型の撹拌翼を用いて30分間撹拌した。
3.有害節足動物防除用繊維を取り出し、紙ウエスで挟み込むことにより脱水した。
4.別の500mLビーカーに脱水後の有害節足動物防除用繊維および水300mLを入れ、バタフライ型の撹拌翼で30分間撹拌した。
5.前記1~4の操作を2回繰り返した後風乾した。
【0025】
各種有害節足動物防除用繊維について、耐洗濯性試験前後の繊維中の防虫成分含有量を測定し、以下式(1)に従い残存率を求めた。結果を表3に示す。
[式]
残存率(%)=(洗濯後の有害節足動物防除用繊維重量あたりの防虫成分含有量/洗濯前の有害節足動物防除用繊維重量当たりの防虫成分含有量)×100 ・・・(1)
【0026】
【0027】
(参考例)
エトキサゾール1重量%、セバシン酸ジブチル9重量%、パーマリンUA-368(三洋化成工業株式会社製)50重量%および界面活性剤としてニューカルゲン(登録商標)CP-50(竹本油脂株式会社製)12重量%、ニューカルゲンD-220K(竹本油脂株式会社製)3重量%、ニューカルゲンSF-72PG(竹本油脂株式会社製)1重量%、水24重量%、を混合し、本発明の有害節足動物防除用組成物を得た。ポリエチレンテレフタレート製わた状繊維1g(以下、無処理繊維と称すこともある。)に前記有害節足動物防除用組成物を、エトキサゾールの濃度として0.1%、0.01%、0.001%となるように水で希釈した希釈液1gを担持し、25℃で1晩乾燥させ、本発明の有害節足動物防除用繊維を得た。当該繊維について、上記耐洗濯性試験1~4の操作を2回繰り返した後風乾した繊維について、増殖抑制試験B法(JIS L 1920)に準じダニの増殖抑制試験を実施し、以下の式(2)によってダニの増殖抑制率を算出した。試験結果を表4に示す。
[式]
増殖抑制率(%)={(無処理繊維の試験区における生存ダニ数-有害節足動物防除用繊維の試験区における生存ダニ数)/無処理繊維の試験区における生存ダニ数}×100
・・・(2)
【0028】
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の有害節足動物防除用組成物を担持してなる有害節足動物防除用繊維は、すぐれた耐洗濯性を有するので、布団の中綿、ベッドパット、シーツ類、毛布などの寝具や、クッション、カーペット、ソファーなどにも幅広く適応可能できる。