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特許7636812創傷治癒を促進するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】創傷治癒を促進するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/00 20060101AFI20250219BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20250219BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
C07K7/00 ZNA
A61K38/08
A61K38/10
A61P3/10
A61P17/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022506461
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 US2020043813
(87)【国際公開番号】W WO2021021774
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】62/879,717
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513016884
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ イリノイ
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE UNIVERSITY OF ILLINOIS
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ミンシャル,リチャード,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジェンロン
【審査官】中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-537251(JP,A)
【文献】国際公開第2009/012435(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/062155(WO,A1)
【文献】特表2009-538915(JP,A)
【文献】PIAZZA, M. et al,Solution Structure of Calmodulin Bound to the Target Peptide of Endothelial Nitric Oxide Synthase Phosphorylated at Thr495,Biochemistry,2014年,Vol.53,pp.1241-1249
【文献】PIAZZA, M. et al,Structual Studies of a Complex Between Endothelial Nitric Oxide Synthase and Calmodulin at Physiological Calcium Concentration,Biochemistry,2016年,Vol.55,pp.5962-5971
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
A61K 38/00-38/58
A61P 1/00-43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のキャリア部分に作動可能に連結された、アミノ酸配列Lys-Ile-Ser-Ala-Ser-Leu-Met(配列番号1)を含む7~20アミノ酸のペプチドを含む、コンストラクトを含む、対象における創傷治癒を促進または加速させるための医薬組成物
【請求項2】
コンストラクトの1以上のキャリア部分が、細胞透過ペプチド、脂質、またはその組み合わせを含む、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
コンストラクトのペプチドが、置換、カルボキシル化、グリコシル化、スルホン化、アミド化、PEG化、ビオチン化、ジスルフィド形成、および荷電アミノ酸残基の付加から選択される1以上の修飾をさらに含み、かつ、CCR10-eNOS相互作用をモジュレートする機能を有する、請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項4】
コンストラクトのペプチドが、TRKKTFKEVANAVKISASLM(配列番号2)、FKEVANAVKISASLM(配列番号3)、VANAVKISASLM(配列番号4)およびKISASLM(配列番号1)の群から選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項5】
コンストラクトが、myr-TRKKTFKEVANAVKISASLM(配列番号61)、myr-FKEVANAVKISASLM(配列番号62)、myr-VANAVKISASLM(配列番号63)およびmyr-KISASLM(配列番号64)から選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項6】
学的に許容し得るビヒクルをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
創傷が糖尿病性の創傷である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
創傷が糖尿病性足潰瘍である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
対象が、創傷治癒を改善または加速させるための少なくとも1の追加の治療剤を共投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
医薬組成物が局所投与用である、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
緒言
この出願は、2019年7月29日に出願された米国仮出願第62/879,717号からの優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
この発明は、国立衛生研究所によって授与された認可番号HL125356、HL083298、およびRR029879の下での政府支援によってなされた。政府はこの発明に所定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
2型糖尿病(T2DM)の心血管合併症は、今や米国で3番目に多い死因であり、これは生活の質を大幅に低減させ、および、糖尿病性切断者の最大90%において切断に先行する非治癒性糖尿病性足潰瘍(DFU)を発症する25%の生涯リスクの基礎を形成する可能性がある。DFUは、米国だけで年間100億ドル/年よりも上であると推定されるかなりの医療費に関連がある。
【0004】
現在のDFUを処置するための介入は、生物工学によって作られた皮膚同等物の使用、成長因子、顆粒球コロニー刺激因子、高圧酸素療法、および陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy)を包含する。しかしながら、ランダム化比較試験のメタ分析において、証拠は、DFU患者のために有益であるものとして成長因子(Marti-Carvajal, et al. (2015) Cochrane Database Syst. Rev. 10:CD008548)などの上記介入を支持せず、よって、依然として莫大な満たされていないニーズが残っている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の概要
この発明は、1以上のキャリア部分、例として、細胞透過ペプチド、脂質、またはその組み合わせ、に作動可能に連結された(operably linked)、アミノ酸配列Lys-Ile-Ser-Ala-Ser-Leu-Met(配列番号1)を有する7~20アミノ酸ペプチドから構成されるコンストラクトを提供する。いくつかの態様において、ペプチドは、置換、カルボキシル化、グリコシル化、スルホン化、アミド化、PEG化、ビオチン化、ジスルフィド形成、および荷電アミノ酸残基の付加から選択される1以上の修飾(modifications)をさらに含む。いくつかの態様において、ペプチドは、TRKKTFKEVANAVKISASLM(配列番号2)、FKEVANAVKISASLM(配列番号3)、VANAVKISASLM(配列番号4)およびKISASLM(配列番号1)の群から選択される。特定の態様において、コンストラクトは、myr-TRKKTFKEVANAVKISASLM(配列番号61)、myr-FKEVANAVKISASLM(配列番号62)、myr-VANAVKISASLM(配列番号63)およびmyr-KISASLM(配列番号64)から選択される。本発明は、コンストラクトを含む医薬組成物、ならびに、対象における、例として糖尿病の対象における、創傷治癒を促進もしくは加速させるための方法をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、Myr-CBD7コンストラクトで処置されたWT C57BL/6マウスにおける創傷治癒の時間的経過を示す。マウス背部皮膚上に、4つの5mmの全層切除創傷を作った。創傷ごとに30μl(50μM)のMyr-CBD7(CBD7)コンストラクトまたはMyr-対照コンストラクト(Ctl-P)で創傷を処置した。留意すべきは、Myr-CBD7コンストラクト処置が、第5日目および第7日目に創傷サイズを有意に低減させたことである。*P<0.05(n=8)。
【0007】
図2図2は、第7日目における、対照コンストラクトと比較したMyr-CBD7処置有りのWTマウスの皮膚創傷の再上皮化を示す。夫々の条件で、創傷閉鎖を測定および定量化した。*P<0.05(n=5)。
【0008】
図3図3は、第7日目における、マウス創傷において対照コンストラクトと比較してMyr-CBD7コンストラクトによって向上したeNOS発現を示す。*P<0.05;**P<0.005(n=3~4)。
【0009】
図4図4は、共IP実験において、7日間の50μM Myr-CBD7コンストラクトでの処置の後に、マウス創傷においてCCR10-eNOS相互作用が低減するということを示す。
【0010】
図5図5は、Myr-CBD7がdb/dbマウスにおいて創傷治癒を改善するということを示す。db/dbマウス背部皮膚上に、4つの5mmの全層切除創傷を作った。パンチ切除後すぐに、30μl(50μM)のMyr-対照コンストラクト(Ctl-P)またはMyr-CBD7(CBD7)コンストラクトを創傷へ局所的に適用した。正規化された創傷サイズ(第0日を100%として設定した)値が示されている。*P<0.05;**P<0.005;***P<0.001 対Ctl-P(n=10~12)。留意すべきは、対象コンストラクトと比較して、Myr-CBD7コンストラクト処置が、第4日から創傷サイズを有意に低減させたということである。
【0011】
図6図6は、eNOS-CCR10相互作用の破壊が、Myr-CBD7の局所適用後第12日目にdb/dbマウス創傷におけるeNOS発現の上昇をもたらすということを示す。eNOSとCCR10との間の正規化された値が示されている。**P<0.005 対Ctl-P(n=5)。留意すべきは、第12日目にdb/dbマウス創傷において、Ctl-Pと比較して、Myr-CBD7によってeNOS-CCR10が破壊されたということである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
2型糖尿病(T2DM)の心血管合併症は、生活の質を大幅に低減させ、および、症例の最大90%において切断に先行する非治癒性糖尿病性足潰瘍(DFU)を発症する25%の生涯リスクの基礎を形成する可能性がある。DFUの患者において、持続性の高血糖は、内皮細胞(EC)の機能不全につながり、欠陥のある内皮型一酸化窒素シンターゼ(eNOS)活性および減少した一酸化窒素(NO)産生をもたらす。eNOSは、血管内皮細胞中で構成的に発現し、血管緊張および血管新生の調節に重要な役割を果たす。肥満マウスにおける創傷治癒反応の不足は、eNOSの過剰発現を介してNO産生を増加させることによって克服できることが報告されている。
【0013】
T2DMのヒト対象からのパンチ生検、およびマウスにおける肥満に誘発される糖尿病はまた、ケモカイン受容体CCR10の発現の増加、CCR10によるeNOS封鎖および不活化、ならびにeNOS発現およびNOバイオアベイラビリティの低減も呈するということが今般見出された。したがって、CCR10-eNOS結合を標的とし、それによってeNOS/NOレベルを増大させて肥満および糖尿病のマウスにおける皮膚創傷治癒を改善する細胞浸透性コンストラクトが、今般開発された。Myr-CBD7(ミリストイル化CCR10結合ドメイン)と名付けられた新規なコンストラクトは、CCR10-eNOS相互作用を防止することができ、およびまた機能不全の内皮細胞においてeNOS発現および活性を上方制御することもできる。Myr-CBD7は、細胞生存性に悪影響を与えることなく最大100μMまでの濃度で提供されることができる。コンストラクトは、血管内皮細胞に効率的に進入し、正常な内皮細胞機能のレスキューを結果としてもたらし、肥満および糖尿病のマウスにおける皮膚創傷治癒を改善する。ゆえに、このコンストラクトには、特に糖尿病の患者において、皮膚創傷治癒を改善するための、新規な治療法としての使用が見出される。
【0014】
したがって、本発明は、キャリア部分に融合している、アミノ酸配列KISASLM(配列番号1)を少なくとも有するペプチドを含むコンストラクト、および、CCR10-eNOS相互作用をモジュレートして創傷治癒を促進するための組成物および方法におけるその使用を提供する。理想的には、本発明のコンストラクトは、カルモジュリンとeNOSとの結合に干渉せずまたはこれを破壊しない。本発明の目的のために、用語「コンストラクト」は、本明細書において、CCR10-eNOS結合を標的とするペプチドであって、該ペプチドの取り込みを向上させる1以上のキャリア部分を含むように、組換え、化学的および/または酵素的技術によって修飾されているものを指すために使用される。特に、1以上のキャリア部分の少なくとも1つは、ペプチドと自然には関連付けられていない。理想的には、本発明のコンストラクトは、1、2、3、4またはそれ以上のキャリア部分に作動可能に連結された、配列番号1で表されるアミノ酸配列を少なくとも有するペプチドである。
【0015】
用語「ペプチド」は、本明細書に使用されるとき、ペプチド結合により繋ぎ合わせられた2以上のアミノ酸の配列を広義に指す。この用語は、アミノ酸のポリマーの特定の長さを含意するものではなく、ペプチドが組換え技術、化学的または酵素的合成を使用して生成されるか、または天然に存在するかを暗示または区別することを意図するものでもないということが理解されるべきである。本発明のコンストラクトのペプチド(または、より具体的に言うとCCR10結合ドメインまたはCBDペプチド)は、少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、までのアミノ酸残基から構成され、その中で導出可能なすべての範囲を包含する。理想的には、CBDペプチドは、CCR10-eNOS相互作用を破壊するための最低限の結合部位を提供する。特に、ペプチドは、アミノ酸配列Lys-Ile-Ser-Ala-Ser-Leu-Met(配列番号1)を含むかまたはこれからなる。本発明の例示のペプチドは、配列KISASLM(配列番号1)、TRKKTFKEVANAVKISASLM(配列番号2)、FKEVANAVKISASLM(配列番号3)およびVANAVKISASLM(配列番号4)を包含する。
【0016】
本明細書に使用されるとき、「キャリア部分」は、脂質二重層、ミセル、細胞膜、細胞小器官膜、またはベシクル膜を横切ることを円滑化させる、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、または有機もしくは無機分子を指す。他の分子に付着したキャリア部分は、分子が膜を横切ることを、例えば、細胞外の空間から細胞内の空間へ、または、細胞質ゾルから細胞小器官内へ行くことを円滑化させる。いくつかの態様において、キャリア部分は、CBDペプチドのアミノ末端に共有結合的に連結している。他の態様において、キャリア部分は、CBDペプチドのカルボキシル末端に共有結合的に連結している。理想的には、キャリア部分は、細胞透過ペプチド、脂質、またはその組み合わせである。
【0017】
ペプチドトランスダクションドメイン(PTD)としてもまた知られている細胞透過ペプチド(CPP)は、細胞膜を横切ることが報告されている多様なクラスのペプチドである。転写のトランスアクチベーター(Trans-Activator of Transcription)(TAT)ペプチドおよびペネトラチンなどの、このファミリーの代表的なメンバーは当初、提案された膜浸透性を持つ天然に存在するタンパク質内のセグメントとして同定された。いくつかの場合において、キャリア部分は、CBDペプチドに共有結合的に連結または融合している細胞透過ペプチドである。いくつかの態様において、共有結合な連結は、ペプチド結合である。例えば、細胞透過ペプチドは、約5~約50アミノ酸、例として、約5~約10アミノ酸、約10~約15アミノ酸、約15~約20アミノ酸、約20~約25アミノ酸、約25~約30アミノ酸、約30~約40アミノ酸、または約40~約50アミノ酸の長さを有するペプチドであり得る。
【0018】
細胞透過ペプチドは、当該技術分野においてよく知られており、および、例として、Bechara & Sagan (2013) FEBS Lett. 587:1693-1702;Copolovici, et al. (2014) ACS Nano 8(3):1972-94;およびGuidotti, et al. (2017) Trends Pharmacol. Sci. 38(4):406-24によって記載されている。この発明においての使用の例示の細胞透過ペプチドは、表1に列記されるペプチドを包含するが、これらに限定されない。
【表1-1】
【表1-2】
【0019】
代替的に、または加えて、CBDペプチドは、細胞透過を円滑化させるために脂質を含むことができる。本明細書に使用されるとき、脂質は一般的に、有機溶媒中に可溶性である水に不溶性の分子を指す。いくつかの態様において、脂質は、脂肪酸であって、アシル基を持つ脂肪族炭化水素鎖を含み、ここで脂肪族鎖が、1以上の二重結合を持つ飽和または不飽和アルキルのいずれかであるものである。典型的な脂肪酸は、限定なしに、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、バレロイン酸(valeroic acid)、オクタン酸、デカン酸、およびリノレン酸を包含する。脂肪酸は、グリセロール、スフィンゴシン、コレステロール、およびその他のものなどの、アシル基キャリアに結合しているか、または結合できるものである。親油性基は、直接または連結基を介してペプチドに付着し得る。例えば、5-アミノバレロイン酸、8-アミノオクタン酸または2-アミノデカン酸が、ペプチドのNおよび/またはC末端に付着し得る。
【0020】
脂質はまた、それらの極性に基づいて種々異なる脂質クラスへと分類されることもできる。脂質は、非極性または極性脂質であり得る。かかる非極性脂質の例は、モノ-、ジ-、またはトリアシルグリセロール(グリセリド)、脂肪酸のアルキルエステル、および脂肪アルコールである。極性脂質は、極性頭部基を有して表面活性を呈し、脂肪アミン、ホスファチジン酸(例として、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、等々)、リン脂質、糖脂質グリコシルホスファチジルイノシトール等といったものである。ある形態において、脂質は、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、アミノ酸、タンパク質、または糖に付着または連結している。CBDペプチドに付着することができる例示の脂質は、N-ミリストイル、パルミトイル、およびグリコホスファチジルイノシトールを包含する(例として、Thompson & Okuyama (2000) Prog. Lipid Res. 39:19-39;Bauman & Menon (2002):Biochemistry of lipids, lipoproteins and membranes, 第4版, pp. 37-54, Nance & Vance Ed., Elsevier, Amsterdamにおける、を参照)。好ましくは、CBDペプチドは、N末端アミノ酸残基において、ミリストイル化、ステアリル化またはパルミトイル化されている。より好ましくは、CBDペプチドは、N末端アミノ酸残基においてミリストイル化されている。この修飾は、例として、ミリスチン酸付加を触媒するN-ミリストイルトランスフェラーゼ(NMT)とともに、翻訳と同時または翻訳後のいずれかにおいて加えられることができる。ある態様において、ペプチドは、細胞内へのペプチドの進入を円滑化させるために、N末端アミノ酸残基においてミリストイル化されている。
【0021】
本明細書に使用されるとき、脂質はまた、テルペン、脂溶性ビタミン、フィトステロール、テルペノイド、ステロイド、水素化1,2シクロペンテノフェナントレンに基づく四環化合物であってC-10、C-13およびC-17炭素原子に置換基を有するもの、とすることもできる。典型的なステロイドは、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、エストロン、プロゲステロン、テストステロン、アンドロステロン、ノルエチンドロン、コレステロール、ジゴキシン等を包含するが、これらに限定されない。本明細書に記載のとおりのステロイドまたはステロールは、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、アミノ酸、タンパク質、糖、オリゴ糖、多糖、およびその他の脂質に付着し得るかまたはこれで修飾され得る。
【0022】
そのうえ、脂質は、イソプレン単位Cから構成されるイソプレノイドをもまた包含し得る。イソプレノイドは、線状の、またはより典型的には二環式、三環式および多環式を包含する環状の、いずれかであり得る、様々な天然および合成テルペンを包含する。例示のイソプレノイドは、一例として、ゲラニオール、シトロネラール、ジンギベレン、β-サンタノール、β-カジネン、マトリカリン、コパエン、カンフェン、タキソール、カロテノイド、ステロイド等を包含する。イソプレノイドは、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、アミノ酸、タンパク質、糖、オリゴ糖、および多糖を包含するがこれらに限定されない他の分子へ付着され得る。一実例として、プレニル化ペプチドは、CBDペプチドのカルボキシル末端でのまたはその近くでのシステインチオエーテル結合を介して、イソプレノイド脂質単位、ファルネシル(C15)またはゲラニルゲラニル(C20)の付着によって調製できる。可逆的水性脂質化技術(Reversible Aqueous Lipidization Technology)(REAL)の使用もまた企図される。Mahajan, et al. (2014) Indian J. Pharmaceut. Ed. Res. 48:34-47を参照。
【0023】
代替的に、CBDペプチドは、細胞取り込みを円滑化させるために他の修飾を含むこともできる。例えば、所与のペプチドを環化することおよび/または選択のアミド結合窒素をメチル化することは、その膜浸透性および/またはバイオアベイラビリティを改善し得る。かかる修飾は、慎重になされると、膜内部の低誘電環境に応じて分子内水素結合の形成を円滑化させると考えられている(Bockus, et al. (2013) Curr. Top. Med. Chem. 13:821-836;Rezai, et al. (2006) J. Am. Chem. Soc. 128:14073-14080;White, et al. (2011) Nat. Chem. Biol. 7:810-817)。浸透性に加えて、環化は、安定性を増大させることができる。したがって、ある態様において、この発明のCBDペプチドは、環化されている。CBDペプチドは、頭部から尾部へ、頭部/尾部から側鎖へ、または側鎖から側鎖へ環化させられることができる。環化は、ラクタム化、ラクトン化、および硫化物ベースの架橋を通して一般に成し遂げられる。
【0024】
様々な無機材料もまたタンパク質カーゴを移動させるものとして提案されており、シリカ、カーボンナノチューブ、量子ドット、および金ナノ粒子を包含する(Du, et al. (2012) Curr. Drug Metab. 13:82-92;Malmsten (2013) Curr. Opin. Colloid Interface Sci. 18:468-480)。加えて、N-メチル化を、水素結合ポテンシャルを低減させるために使用することができる。
【0025】
キャリア部分に加えて、CBDペプチドは、安定性(例として、半減期)および/または可溶性を向上させる、ナノ粒子への自動的なアセンブリを円滑化させる、貯蔵寿命を増大させる、バイオアベイラビリティを増大させる、毒性を低減させる、膜内への挿入を円滑化させる、および/またはCBDのタンパク質分解を低減させる、1以上の他の修飾を含んでもよい。具体的に言うと、CBDペプチドは、置換、脂質化、カルボキシル化、グリコシル化、スルホン化、アミド化、PEG化、ビオチン化、ジスルフィド形成、および荷電アミノ酸残基の付加から選択される1以上の修飾を含んでもよい。
【0026】
カルボキシル化は、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化を指し、および、グリコシル化は、1以上の糖(例として、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、マンノース、GlcNAc、グルコース、フコースまたはキシロース)の、ペプチドへの、N-またはO-連結を介した付着を指す。
【0027】
スルホン化は、3’-ホスホアデノシン-5’-ホスホ硫酸からのスルホン酸基(SO -1)の転移を指す。スルホン化は、複数のタイプの連結、エステル(O-スルホン化)、アミド(N-スルホン化)およびチオエステル(S-スルホン化)、を介して起こることができる。
【0028】
数々のタンパク質分解酵素は、Nおよび/またはC末端からペプチド配列を分解する。Nおよび/またはC末端の翻訳後修飾は、しばしば、ペプチド安定性を改善させることができる。例えば、N-アセチル化およびC-アミド化は、タンパク質分解に対する抵抗性を増大させることができる。例えば、N末端アセチル化ソマトスタチン類似体は、ネイティブなペプチドよりもはるかにより安定であることが報告された(Adessi & Soto (2002) Curr. Med. Chem. 9(9):963-78)。類似的に、GLP-1のN-アセチル化7-34型は、保護されていないペプチドよりもはるかにより安定であることが示されている(John, et al. (2008) Eur. J. Med. Res. 13(2):73-8)。加えて、N-アセチル化およびC-アミド化は、アミノ酸置換と一緒に適用されたときには、EFK17ペプチドのエンドペプチダーゼ消化に対する抵抗性を改善させる(Stroemstedt, et al. (2009) Antimicrob. Agents Chemother. 53(2):593-602)。そのうえ、N末端のチロシン残基に付着したヘキセノイル基を有するテサモレリンは、天然の成長ホルモン放出ホルモンよりもはるかに長い半減期を有する(Ferdinandi, et al. (2007) Basic Clin. Pharmacol. Toxicol. 100(1):49-58)。ある態様において、CBDペプチドは、安定化部分として、N-アセチル化および/またはC-アミド化を含む。
【0029】
アミド化は、ポリペプチドの末端へのアミド基の付加を指す。タンパク質をアミド化するための複数の方法が記載されており、α-アミド化酵素の使用(Beaudry, et al. (1990) J. Biol. Chem. 265(29):17694-17699;US4,708,934);プロテアーゼ(US4,709,014;US5,580,751);カルボジイミド化合物、トラッピング剤およびアミン源(US 5,503,989);および組換え法(WO1998/050563)を包含する。特定の態様において、CBDタンパク質は、C末端アミド化を含む。
【0030】
天然のアミノ酸残基を非天然の残基で置換することは、タンパク質分解酵素の基質認識および結合親和性を減少させて安定性を増大させることができ。例えば、バソプレシンのL-ArgをD-Argに置き換える例は、ヒトにおけるこのペプチドの半減期を10~35分間から、健康なボランティアにおいて3.7時間まで増大させた(Agerso et al. (2004) Br. J. Clin. Pharmacol. 58(4):352-8)。類似的に、L-アミノ酸のD-アミノ酸での置換は、ソマトスタチンのin vivo半減期を数分間から、1.5時間にまでさせた(Harris (1994) Gut 35(3):S1-4)。天然アミノ酸の修飾はまた、立体障害を導入することによってもペプチドの安定性を改善することができる。例えば、ゴナドトロピン放出ホルモンは、極めて短い半減期(数分)を有するのに対し、1つのGlyがt-ブチル-d-Serに置き換えられ、別のGlyがエチルアミドによって置換されたブセレリンは、ヒトにおいてはるかに長い半減期を有する。ペンタペプチドであるイパモレリンは、2’-ナフチルアラニンおよびフェニルアラニンをD立体配置において有し、かつC末端のL-アラニンが2-アミノイソ酪酸によって置き換えられており、ヒトにおいて約2時間の改善された終末相半減期を結果としてもたらす(Raun, et al. (1998) Eur. J. Endocrinol. 139(5):552-61;Gobburu, et al. (1999) Pharm. Res. 16(9):1412-6)。
【0031】
高分子(例として、ポリエチレングリコール(PEG)またはアルブミン)へのコンジュゲーションは、ペプチドの安定性を改善するための効果的な戦略である。例えば、アルブミン結合小分子をペプチドに共有結合的に付着させることは、高度に結合した小分子を通じてアルブミンと間接的に相互作用することにより、タンパク質分解安定性を改善し、半減期を延長させる。リラグルチドは、γ-1-グルタミルスペーサーを介して16炭素の脂肪酸残基に連結しているGLP-1アナログである。リポペプチドはアルブミンに結合し、それによってタンパク質分解を減少させて半減期を数分間から8時間にまで増大させる(Hou, et al. (2012) J. Cereb. Blood Flow Metab. 32(12):2201-10;Levy Odile, et al. (2014) PLoS One 9(2):e87704;Lindgren, et al. (2014) Biopolymers 102(3):252-9)。
【0032】
大きな合成または天然ポリマーまたは炭水化物へのペプチドのコンジュゲーションは、それらの分子量および流体力学的体積を増大させることができる。ペプチドコンジュゲーションのために使用される一般的なポリマーは、PEG、ポリシアル酸(PSA)、およびヒドロキシエチルデンプン(HES)である。一例は、PEG化された合成ペプチドであるペギネサチド(peginesatide)であり、これは健康なボランティアにおいて18.9時間の排出半減期を有する(Bronson, et al. (2013) Annu. Rep. Med. Chem. 48:471-546)。本明細書に使用されるとき、「ポリエチレングリコール」または「PEG」は、一般式H-(O-CH-CH-OHのポリエーテル化合物である。PEGは、ポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)としてもまた知られており、それらの分子量に依存してPEO、PEE、またはPOGは、本明細書に使用されるとき、エチレンオキシドのオリゴマーまたはポリマーを指す。3つの名前は化学的に同義であるが、しかし、PEGはモノマーおよび20,000Da未満の分子量を持つポリマーを、PEOは20,000Daを上回る分子量を有するポリマーを、およびPOEはあらゆる分子量のポリマーを指している傾向がある。ポリマー部分は、好ましくは、水溶性(両親媒性または親水性)、非毒性、および薬学的に不活性である。安定化部分としての使用に好適なポリマー分子は、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGのホモもしくはコポリマー、PEGのモノメチル置換ポリマー、またはポリオキシエチレングリセロール(POG)を包含する。半減期延長の目的のために調製されたPEGもまた網羅され、例えば、モノメトキシ末端ポリエチレングリコール(mPEG)などのモノ活性化されたアルコキシ末端ポリアルキレンオキシド(POA);ビス活性化されたポリエチレンオキシド(グリコール)または他のPEG誘導体もまた企図される。好適なポリマーは、実質的に約200Da~約40,000Da、または約200Da~約60,000Daの範囲にわたって重量により多様であり、これが大抵本発明の目的のために選択される。ある態様において、200~2,000または200~500の分子量を有するPEGが使用される。
【0033】
PEGはまた、種々異なる幾何学形状でも利用可能である:分岐PEGは、中央のコア基から出ている3~10のPEG鎖を有する;星状PEGは、中央のコア基から出ている10~100のPEG鎖を有する;および櫛状PEGは、通常はポリマー骨格上へとグラフトされている複数のPEG鎖を有する。PEGはまた、線状でもあり得る。PEGの名前にしばしば含まれる数字は、それらの平均分子量を示す(例として、n=9を持つPEGは、およそ400ダルトンの平均分子量を有することになり、PEG 400とラベル付けされることになる)。本明細書に使用されるとき、「PEG化」は、PEG構造を本発明のCBDペプチド(これは次いで、「PEG化CBDペプチド」と称される)に共有結合的にカップリングさせる作用である。ある態様において、PEG化された側鎖のPEGは、約200~約40,000の分子量のPEGである。
【0034】
本発明に従うと、短い線状PEGが、CBDペプチドのCおよび/またはN末端に付着する。特定の態様において、CBDペプチドのPEG構成成分は、5~50単位のPEGモノマー、すなわち、nが5~50である(-CHCHO-)を含有する。他の態様において、CBDペプチドは、最大50、45、40、35、30、25、20、15、10または5までのPEG単位を含む。ある態様において、CBDペプチドは、20~30の間のPEG単位を有する。ある特定の態様において、CBDペプチドは、最大30までのPEG単位を有する。PEGは、固相合成法を介して、例として、EMD Biosciences(La Jolla, CA)などの商業的供給源から入手可能なO-(N-Fmoc-2-アミノエチル)-O’-(2-カルボキシエチル)-ウンデカエチレングリコールなどのPEG構築ブロックを採用することにより、CBDペプチドのCおよび/またはN末端アミノ酸残基に連結または付着し得る。
【0035】
アルブミンおよび免疫グロブリン(IgG)フラグメントなどの血漿タンパク質は、ヒトにおける19~21日間の長い半減期を有する(Pollaro & Heinis (2010) Med. Chem. Comm. 1(5):319-24)。高い分子量(67~150kDa)のため、これらのタンパク質は、低い腎クリアランスを有し、および、それらの新生児Fc受容体(FcRn)への結合は、血管上皮による飲作用による排泄を減少させる。CBDペプチドのアルブミンまたはIgGフラグメントへの共有結合的な連結は、腎クリアランスを低減させ半減期を長引かせることができる。一実例として、アルブミン-エキセンジン-4コンジュゲート(CJC-1134-PC)は、ヒトにおいておよそ8日間の半減期を有し、および、FDA承認済み薬物であるアルビグルチド(albiglutide)は、DPPIV抵抗性のあるGLP-1ダイマーがヒトアルブミンに融合したものであり、これは6~7日間の半減期を有し、それによって2型糖尿病の処置のための週1回の投薬を可能にする(Pratley, et al. (2014) Lancet Diabetes Endocrinol. 2(4):289-97)。
【0036】
ペプチドは、C末端の端部への1~10の間の荷電アミノ酸残基の付加を含んでもよい。荷電アミノ酸残基は、生物学的条件下でプロトン化された-NH型のα-アミノ基を含有するアスパラギン酸(AspまたはD)またはグルタミン酸(GluまたはE)を含むことを意図する。特定の態様において、ペプチドは、1~7の、1~5の、1~4の、または1~3の間の荷電アミノ酸残基を、C末端の端部に含んでもよい。より具体的には、CBDペプチドが、1~7の、1~5の、1~4の、または1~3の間のアスパラギン酸残基を、C末端の端部に含んでもよい。
【0037】
キャリア部分および/または安定化部分がペプチドであるとき、当該ペプチドは、ペプチド結合を介してCBDペプチドへ直接的に、容易に付着またはコンジュゲートさせることができる。しかしながら、キャリア部分および/または安定化部分がペプチドではない場合には、当該キャリア部分および/または安定化部分を、ジスルフィド、アミド、オキシム、チアゾリジン、尿素およびカルボニル結合などの他の常用の結合、あるいは、Diels-AlderまたはHueisgen 1,3-dipolar cycloaddition reactions(Lu, et al. (2010) Bioconjug. Chem. 21:187-202;Roberts, et al. (2002) Adv. Drug Deliv. Rev. 54:459-76;WO 2008/101017)によって、CBDペプチドに付着させることができる。
【0038】
代替的に、本発明のコンストラクトは、CBDペプチドへキャリア部分および/または安定化部分を繋ぎ合わせまたは連結させるためのリンカーを含むことができる。この発明の目的のために、リンカーは、様々なアミノ酸配列のいずれかのものを有するペクチドである。スペーサーペプチドであるリンカーは、フレキシブルな性質を持つことができるが、他の化学結合を除外するものではない。リンカーペプチドは、長さ約1~約40アミノ酸、例として、約1~約5アミノ酸、約5~約10アミノ酸、約10~約20アミノ酸、約20~約30アミノ酸、または約30~約 アミノ酸、の長さを有し得る。これらのリンカーは、タンパク質をカップリングするための、合成の、リンカーをコードするオリゴヌクレオチドを使用して生産することができる。ある程度の柔軟性を持ったペプチドリンカーを使用することができる。連結ペプチドは、事実上あらゆるアミノ酸配列を有してもよく、ここでいくつかの態様において、リンカーペプチドは、一般的にフレキシブルなペプチドを結果としてもたらす配列を有する。グリシンおよびアラニンなどの小さなアミノ酸の使用は、フレキシブルなペプチドの作製において使用される。かかる配列の作製は、当業者にとっては日常的なことである。様々なリンカーが市販されており、および、使用に好適であるとみなされる。
【0039】
CBDペプチドへキャリア部分および/または安定化部分を繋ぎ合わせまたは連結させるために使用することができる例示のフレキシブルなリンカーは、グリシンポリマー(G)(例として、nは1~約20の整数);グリシン-セリンポリマー(例えば、nが少なくとも1の整数である(GS)を包含する)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および当該技術分野において知られている他のフレキシブルなリンカーを包含する。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーは、それらの両方のアミノ酸が比較的構造化されておらず、およびゆえに、構成成分間の中性テザーとして働き得ることから、関心の対象である。グリシンポリマーが、いくつかの態様において使用される。Scheraga (1992) Rev. Computational Chem. 11173-142を参照。例示のフレキシブルなリンカーは、GG、GGG、GGS、GGSG(配列番号70)、GGSGG(配列番号71)、GSGSG(配列番号72)、GSGGG(配列番号73)、GGGSG(配列番号74)、GSSSG(配列番号75)等を包含するが、これらに限定されない。
【0040】
非ペプチドリンカー部分もまた、CBDペプチドへキャリア部分および/または安定化部分を繋ぎ合わせまたは連結させるために使用することができる。リンカー分子は、一般的に、約6~50原子の長さである。リンカー分子はまた、例えば、アリールアセチレン、2~10のモノマー単位を含有するエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二酸、アミノ酸、またはそれらの組み合わせであってもよい。ペプチドに結合することができる他のリンカー分子を、本開示に照らして使用してもよい。
【0041】
この発明の範囲から逸脱すること無しに、コンストラクトは、配列番号1、2、3、または4のCBDペプチドにおける、1以上の欠失、付加、および/または保存的置換であってペプチドの機能的特性の少なくとも1つを保つもの、を有するCBDペプチドバリアントをもまた網羅する。アミノ酸の保存的置換、すなわち、アミノ酸を、類似した特性(例として、親水性、荷電された領域の度合いおよび分布)を持つ異なるアミノ酸で置き換えることは、当該技術分野において典型的にはマイナーな変更が関与するものとして認識される。当該技術分野において理解されているとおり、これらのマイナーな変更は、ある程度は、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することによって、同定することができる(Kyte, et al. (1982) J. Mol. Biol. 157:105-132)。アミノ酸のハイドロパシー指数は、その疎水性度および電荷の考慮に基づく。類似するハイドロパシー指数のアミノ酸は、置換してかつタンパク質機能を保つことができることが、当該技術分野において知られている。ある1の側面において、±0.2のハイドロパシー指数を有するアミノ酸が置換される。アミノ酸の親水性はまた、タンパク質が生物学的機能を保つことを結果としてもたらすような置換を明らかにするためにも使用できる。ペプチドの文脈においてアミノ酸の親水性を考慮することは、そのペプチドの最大の局所平均親水性の算出を許容し、これは、抗原性および免疫原性とよく相関することが報告されている有用な手段である。本明細書に参照によりに完全に組み込まれるUS4,554,101を参照。当該技術分野において理解されているとおり、類似する親水性値を有するアミノ酸の置換は、生物学的活性を保ったペプチドを結果としてもたらすことができる。置換は、互いの±0.2以内の親水性値を有するアミノ酸と行われ得る。アミノ酸の疎水性指数および親水性値の両方は、そのアミノ酸の特定の側鎖に影響を及ぼされる。その観察と一致して、疎水性、親水性、電荷、サイズ、および他の特性によって明らかにされるとおり、生体機能に適合性であるアミノ酸置換は、アミノ酸の相対的な類似度に、および特にそれらのアミノ酸の側鎖に依存するものと理解される。
【0042】
ある態様において、当業者は、活性にとって重要ではないと考えられる領域を標的とすることによって活性を壊すことなく変更され得るCBDペプチドの好適なエリアを同定し得る。さらなる態様において、生物学的活性にとってまたは構造にとって重要なアミノ酸でさえも、その生物学的活性を壊すことなく、またはペプチド構造に悪影響を与えることなく、保存的アミノ酸置換を受け得る。例えば、1以上の生起にて、LysがArgによって置き換えられ得、および/またはSerがThrによって置き換えられ得る。ある1の態様において、バリアントCBDペプチドは、配列番号1、2、3または4のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%のアミノ酸配列同一性を有する。一般的に、バリアントCBDペプチドは、配列番号1、2、3または4のCBDペプチドと実質的に同じかそれよりも大きい結合親和性、例として、少なくとも0.75×、0.8×、0.9×、1.0×、1.25×または1.5×の結合親和性を呈する。ある態様において、CBDペプチドまたはそのバリアントは、約10pM~約1μM、またはより好ましくは約10pM~約100nM、または最も好ましくは約10pM~約10nMの範囲にあるK値を有する。
【0043】
ある態様において、ペプチドは、グリコシル化、リン酸化、硫酸化、アミノ化(animated)カルボキシル化、またはアセチル化されている。例えば、C末端は、アミド化、ペプチドアルコールまたはアルデヒドの付加、エステルの付加、p-ニトロアニリンおよびチオエステルの付加で修飾され得る。N末端およびアミノ酸側鎖は、PEG化、アセチル化、ホルミル化、脂肪酸の付加、ベンゾイルの付加、ブロモアセチルの付加、ピログルタミルの付加、スクシニル化、テトラブチオキシカルボニルの付加および3-メルカプトプロピルの付加、アシル化、ビオチン化、リン酸化、硫酸化、グリコシル化、マレイミド基の導入、キレート部分、発色団およびフルオロフォアによって修飾され得る。
【0044】
ある側面において、本発明のコンストラクトは、表2に提示されたものから選択される。
【表2】
【0045】
いくつかの態様において、CBDペプチドまたはコンストラクトは、検出および/または精製を円滑化させるために、キチン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、6xHis、FLAG§(登録商標)、またはHA、などのタンパク質または精製タグに融合している。一実例として、Cys残基がCBDタンパク質中へと組み込まれることができ、ここで、Cys残基のN末端側はチオエステル化され、およびタグはC末端側に付着されている。精製されると、タグは切り落とされ、およびペプチドチオエステルが効率よく得られる。
【0046】
CBDペプチドおよびコンストラクトは、組換えDNA技術を使用して組換えにより合成することができる。よって、別の側面において、本発明は、本発明のCBDペプチドまたはコンストラクトをコードするポリヌクレオチドを提供する。関連する側面において、本発明は、ベクター、特に、CBDペプチドまたはコンストラクトをコードするポリヌクレオチドを抱える発現ベクターを提供する。ある態様において、ベクターは、真核細胞または原核細胞におけるCBDペプチドまたはコンストラクトの組換え合成を円滑化させる複製、転写、および/または翻訳調節配列を提供する。したがって、本発明はまた、CBDペプチドまたはコンストラクトの組換え発現のための宿主細胞、および、宿主細胞により産生されたCBDペプチドまたはコンストラクトを収穫しおよび精製する方法も提供する。組換えポリペプチドの生産および精製は、当業者にとっては日常業務である。CBDペプチドまたはコンストラクトは、限定なしに、ゲル濾過およびアフィニティー精製を包含する、当該技術分野において知られているあらゆる好適な方法によって精製することができる。本発明のCBDペプチドまたはコンストラクトが融合タンパク質の形態で生産される場合、融合された部分(またはエピトープタグ)は、任意には、さらなる分析の前にプロテアーゼを使用して切断されることができる。
【0047】
代替的に、本発明のCBDペプチドまたはコンストラクトは、当該技術分野において知られている化学合成技術のあらゆるものによって、特に、例えば市販の自動ペプチド合成装置を使用する固相合成法によって、有利に合成することができる。例えば、StewartおよびYoung, 1984, Solid Phase Peptide Synthesis, 第2版., Pierce Chemical Co.;Tarn, et al. (1983) J. Am. Chem. Soc. 105:6442;Merrifield (1986) Science 232:341-347;およびUS5,424,398を参照。そのうえ、組換えと化学合成の技術の組み合わせもまた企図される。
【0048】
本発明のコンストラクトは、例として、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、フィルター、限外ろ過、ゲルろ過、電気泳動、塩析、透析等を包含する、当該技術分野において知られているあらゆる好適な方法によって精製されることができる。ある1の態様において、コンストラクトは、逆相クロマトグラフィーによって精製される。
【0049】
本明細書で実証されているとおり、この発明のコンストラクトは、eNOS-CCR10相互作用を破壊し、eNOS/NOレベルを増大させ、皮膚創傷の再上皮化を増大させ、肥満および糖尿病のマウスにおける皮膚創傷治癒を改善する。したがって、この発明は、CCR10-eNOS相互作用をモジュレートし、および対象における創傷治癒を促進、加速または改善するための、方法を提供する。本発明の方法には、処置を必要とする対象(例として、慢性的な創傷または感染した創傷を有する対象)へ、CBDペプチドコンストラクトの有効量を投与することが関与する。創傷治癒を測定するためには様々なやり方がある。しばしば、直線寸法、周囲長および面積を計算するために画像が撮られる。NIHは、画像から創傷エリアの測定ができるようにするImage Jというフリープログラムを有する。最終的な治癒の予後は、周辺の中心への移動に基づく初期の治癒率から推定することができる。これは、数々の数式を使用してなされ、その中で最も一般的なものは、修正されたギルマンの方程式である。外観検査に加えて、創傷治癒の測定はまた、分光法またはMRIによって補助することもできる。例として、Dargaville, et al. (2013) Biosensors Bioelect. 41:30-42;Tan, et al. (2007) Br. J. Radiol. 80:939-48を参照。治癒が遅い/不十分な場合、感染症および悪性腫瘍を除外または決定するために創傷縁の生検が行われ得る。ある態様において、創傷治癒の加速または改善は、処置されたおよび対照の創傷における創傷閉鎖を比較することによって評価することができる。ある態様において、創傷治癒の加速または改善は、対照よりも少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%、より速いかまたはより良い。
【0050】
ある側面において、本発明は、創傷の中に活動性感染、微生物汚染またはコロニー形成を持つかまたは持たない創傷の治癒を促進/加速/改善するための方法を提供する。本願のCDBペプチドまたはコンストラクトは、感染した創傷を処置するために、または感染した創傷の治癒を促進/加速/改善するために使用することができる。ある態様において、CDBペプチドまたはコンストラクトは、感染の存在下で、創傷を処置するためにまたは創傷治癒を促進/加速/改善するために使用することができる。いくつかの態様において、CDBペプチドまたはコンストラクトは、感染のリスクのある微生物汚染もしくはコロニー形成の存在下で、創傷を処置するためにまたは創傷治癒を促進/加速/改善するために使用することができる。さらなる態様において、創傷治癒処置を必要とする患者は、糖尿病の患者である。したがって、いくつかの態様において、創傷は、糖尿病性の創傷、例えば、糖尿病性足潰瘍である。いくつかのさらなる態様において、創傷は、感染した糖尿病性の創傷、例えば、感染した糖尿病性足潰瘍である。
【0051】
糖尿病性足潰瘍の処置のためなどの慢性的な創傷の治癒を加速させるために、CDBペプチドまたはコンストラクトの投与を、1以上の追加の創傷治癒剤と組み合わせることができる。好適な追加の創傷治癒剤は、限定なしに、成長因子(例として、EGF、FGF、IGF、PDGF、TGF、およびVEGF)、神経成長因子(NGF)、血管新生因子(例として、HGF、TNF-α、アンギオジェニン、IL-8、アンジオポエチン1および2、Tie-2、インテグリンα5、マトリックスメタロプロテイナーゼ、一酸化窒素、COX-2)、血小板由来成長因子(PDGF)ファミリーのメンバー(例として、PDGF-A、PDGF-B、PDGF-C、およびPDGF-D)、インスリン成長因子(IGF)ファミリーのメンバー(例として、IGF-I、IGF-II)、形質転換成長因子(TGF)ファミリーのメンバー(例として、TGF-α、TGF-β)および同化酸素(真空療法)を包含する。ある態様において、CDBペプチドまたはコンストラクトは、本明細書に記載の1以上の追加の創傷治癒剤および/または局所投与における使用に好適な1以上の抗菌剤もしくは抗生物質とともに共投与することができる。WO2006/138468を参照。かかる態様において、抗菌剤は、限定なしに、スルファジアジン銀すなわちシルバデン(silvadeen)を包含する、硫黄抗生物質であり得る。共投与される1以上の追加の剤は、CDBペプチドまたはコンストラクトと同時に、交互にまたは順次投与されることができる。
【0052】
他の側面において、本開示は、本発明のCDBペプチドまたはコンストラクトの治療有効量、および、1以上の薬学的に許容し得る希釈剤、保存料、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、賦形剤、またはキャリア、を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、例えば、それを必要とする哺乳動物において創傷治癒を促進させるために使用することができる。医薬組成物は、糖尿病性創傷治癒を促進するために特に有用である。
【0053】
ある態様において、本開示は、本開示の化合物を、1以上の薬学的に許容し得る賦形剤またはビヒクルとともに、および任意に他の治療および/または予防用成分とともに含む、医薬組成物を提供する。かかる賦形剤は、水、生理食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノール等といった液体を包含する。
【0054】
用語「薬学的に許容し得るビヒクル」は、本開示の化合物とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはキャリアを指す。用語「有効量」または「薬学的に有効な量」は、非毒性であるが所望の生物学的結果を提供するのに十分である量を指す。その結果とは、疾患の兆候、症候、もしくは原因の低減および/または軽減、または生物学的システムのあらゆる他の望ましい変化であり得る。あらゆる個々の事例における適切な「有効」量は、日常的な実験を使用して当業者が決定することができる。
【0055】
治療的使用のための「薬学的に許容し得るキャリア」は、医薬の技術分野においてよく知られており、および、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版(Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990)において記載されている。例えば、生理学的pHでの滅菌生理食塩水およびリン酸緩衝生理食塩水を使用することができる。保存料、安定剤、染料、および香味料さえも、医薬組成物中において提供することができる。例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびp-ヒドロキシ安息香酸のエステルを、保存料として添加することができる。同上、1449にて。加えて、抗酸化剤および懸濁剤を使用することができる。同上。
【0056】
非液体の処方物のための好適な賦形剤もまた、当業者に知られている。薬学的に許容し得る賦形剤および塩の詳しい議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版(Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990)において利用可能である。
【0057】
加えて、湿潤剤または乳化剤、生物学的バッファー、界面活性剤等といった補助物質が、かかるビヒクル中に存在することができる。生物学的バッファーは、薬理学的に許容し得、かつ、処方物に所望のpH、すなわち、生理学的に許容し得る範囲にあるpHを提供する、あらゆる溶液であり得る。バッファー溶液の例は、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、ハンクス緩衝生理食塩水等を包含する。
【0058】
ある態様において、本発明のペプチドは、一般的には約0.01~約20重量%、いくつかの態様において約0.1~約20重量%、いくつかの態様において約0.1~約10重量%、およびいくつかの態様において約0.5~約15重量%、の範囲にわたる量の活性成分(単数または複数)を含有する局所軟膏またはクリームとして処方されてもよい。軟膏として処方されるとき、活性成分は、典型的にはパラフィン系または水混和性の軟膏ベースのいずれかと組み合わされる。代替的に、活性成分は、例えば、水中油型クリームベースとともに、クリーム中に処方されてもよい。かかる処方物は、当該技術分野において知られており、および、活性成分または処方物の皮膚透過性または安定性を向上させるための追加の成分を一般的に含む。かかる知られている局所処方物および成分は本発明の範囲内に包含される。
【0059】
様々な態様において、本明細書における処方物は、水性ゲル、無水ゲル、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョンまたは懸濁剤の形態とすることができる。DHEAのためのゲル形成手順の例は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれるUS5,709,878およびUS4,978,532において見出される。ゲルは、懸濁した小さな無機粒子(二相ゲル)または液体が相互に浸透した有機高分子(単相ゲル)を含有するいずれかの半固体系である。ワセリン、パラフィンワックス、ミツロウ、パルミチン酸セチル、およびラノリンなどの皮膚軟化剤を本明細書の処方物中に含めることができる。ゲルとしての提示のために処方される場合、本発明の組成物は、細かく分割された固体および/または増粘剤などのゲル化剤を、液体成分の自由な動きを阻害する緩い分子ネットワークを生じる濃度で含み得る。よって、本発明の典型的なゲル組成物は、組成物100グラム当たり約0.1~約20グラムの、いくつかの態様において100グラム当たり約0.25~約5グラムの範囲にあるペプチドの濃度;組成物100グラム当たり約2~約50グラムの、いくつかの態様において100ミリリットルあたり約3~約25グラムの範囲にあるリン脂質の濃度;組成物100グラム当たり約0~約15グラムの細かく分割された固体の濃度、および、組成物100グラム当たり約0~約15グラムの増粘剤の濃度を含む。
【0060】
ゲル化剤もまた、処方物中に含まれていてもよい。これらの剤は、典型的には、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロースおよびカチオン性セルロース誘導体(cellulosics)などの、非イオン性またはカチオン性ポリマーである。ある特定の例は、SEPIGEL(商標)である。ある1の態様において、本発明のペプチドを含むゲルは、低級アルキルアルコール、ポリソルベート、水およびペプチドを混合し、および、任意に増粘剤を添加および混合し、これに続けて、ゲル形成に至るまで成分をインキュベートすることによって、作ることができる。ゲル形成をさせるためのインキュベーションには様々な温度が使用され得る。
【0061】
本明細書に記載のゲルまたは溶液処方物に添加することができる増粘剤の例は、以下を包含する:セルロース系増粘剤、例えば、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース;ならびにアクリル増粘剤。アクリル増粘剤の例は、カルボマー、例えば、ポリアルケニルポリエーテルと架橋されたアクリル酸の非線形ポリマーである。本発明において使用され得るカルボマーの例は、カルボキシポリメチレン、カルボキシビニルポリマー、およびアクリル酸アルキル、例えば、アクリル酸/メタクリル酸アルキルコポリマー、を包含する。上記の全ては、Noveonから入手可能であり、商標名CARBOPOL(登録商標)980のもとで販売されているカルボキシポリメチレン、CARBOPOL(登録商標)940として販売されているカルボキシビニルポリマー、およびPEMULEN(商標)TR-1として販売されているアクリル酸/メタクリル酸アルキルコポリマーがある。
【0062】
いくつかの態様において、本発明の処方物は、処方物を皮膚上へ計量式用量デバイスを介してまたは単位用量容器からのいずれかでミスト化または噴霧することによって適用することができる。この方法において、処方物はより大きな面積にわたって均一に分布させられることができ、それによって吸収のための素早い手段を提供する。代替的に、処方物は、ロールオンアプリケーター、計量式ポンプディスペンサーまたはスポンジなどのアプリケーターを介して適用することができる。
【0063】
局所用水中油型エマルジョン組成物は、本発明のペプチドを含む溶液を作ること、および、非混和性の相(例として、生体適合性の油相)および任意での乳化剤を添加することによって調製することができる。C12~15アルキル安息香酸塩、メトキシケイ皮酸オクチル、オクチルジメチルPABA、オクトクリレン、アントラニル酸メンチル、およびサリチル酸ホモメンチルなどの刺激軽減剤もまた含まれ得る。
【0064】
ある態様においては、本願の化合物を含む泡を調製することができる。泡形成手順の一例は、US7,141,237において見出すことができる。事例として、本明細書に記載のとおりの溶液中の活性な剤、および、エタノール溶液中に溶解したセチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物を含む速効性発泡剤を使用することができる。この組成物は、ポリアミドイミドで裏打ちされたアルミ缶中にパッケージングされ、および推進剤としてプロパン/ブタン混合物で加圧することができる。パッケージングされた圧力下で、炭化水素推進剤は液化し、および水/エタノール溶液と混和性になる。
【0065】
本明細書における処方物は、乳化剤および/または界面活性剤を含んでもよい。多種多様なかかる剤を採用することができる。ある1の態様において、本発明の組成物は、約0.05%~約95%、いくつかの態様において約10%~約80%、およびいくつかの態様において約3.5%~約60%の、少なくとも1の界面活性剤を含む。界面活性剤は、最低限、エタノールまたは他の溶媒系に分散するのに十分に親水性でなければならない。本明細書において有用な界面活性剤は、先行特許および他の参考文献において開示されている多種多様なカチオン性、アニオン性、双性イオン性、および両性の界面活性剤のいずれかのものを包含することができる。厳密な選ばれる界面活性剤は、組成物のpHおよび存在する他の構成成分に依存する。
【0066】
ある1の態様において、組成物は、親水性の乳化剤または界面活性剤を含む。いくつかの態様において本発明の組成物は、約0.05%~約5%の、いくつかの態様において約0.05%~約3.5%の、少なくとも1の親水性の界面活性剤を含む。理論によって限定されることを意図するものではないが、親水性の界面活性剤は疎水性材料を分散させることを助けると考えられる。
【0067】
親水性の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤から選択される。非イオン性界面活性剤の中でも本明細書において有用なものは、長鎖アルコール、例としてC8~30アルコールと、糖またはデンプンポリマーとの縮合生成物、すなわちグリコシドとして広く定義することができるものである。代表的な糖は、グルコース、フルクトース、マンノース、およびガラクトースを包含する。アルキル基がそこから誘導されることができる長鎖アルコールの例は、デシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール等を包含する。これらの界面活性剤の市販の例は、デシルポリグルコシドおよびラウリルポリグルコシドを包含する。
【0068】
他の有用な非イオン性界面活性剤は、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(すなわち、脂肪酸のアルキレンオキシドエステル);アルキレンオキシドと2モルの脂肪酸との縮合生成物(すなわち、脂肪酸のアルキレンオキシドジエステル);アルキレンオキシドと脂肪アルコールとの縮合生成物(すなわち脂肪アルコールのアルキレンオキシドエーテル);および、アルキレンオキシドと脂肪酸および脂肪アルコールとの両方との縮合生成物を包含する。これらのアルキレンオキシド由来の非イオン性界面活性剤の非限定例は、セテス-6、セテス-10、セテス-12、セテアレス-6、セテアレス-10、セテアレス-12、ステアレス-6、ステアレス-10、ステアレス-12、PEG-6ステアリン酸塩、PEG-10ステアリン酸塩、PEG-100ステアリン酸塩、PEG-12ステアリン酸塩、PEG-20ステアリン酸グリセリル、PEG-80牛脂脂肪酸グリセリル、PEG-10ステアリン酸グリセリル、PEG-30ヤシ脂肪酸グリセリル、PEG-80ヤシ脂肪酸グリセリル、PEG-200牛脂脂肪酸グリセリル、PEG-8ジラウリン酸塩、PEG-10ジステアリン酸塩、およびそれらの混合物を包含する。
【0069】
本明細書における使用のために好適な他の非イオン性界面活性剤は、糖エステルおよびポリエステル、アルコキシル化糖エステルおよびポリエステル、C~C30脂肪アルコールのC~C30脂肪酸エステル、C~C30脂肪アルコールのC~C30脂肪酸エステルのアルコキシル化誘導体、C~C30脂肪アルコールのアルコキシル化エーテル、C~C30脂肪酸のポリグリセリルエステル、ポリオールのC~C30エステル、ポリオールのC~C30エーテル、リン酸アルキル、リン酸ポリオキシアルキレン脂肪エーテル、脂肪酸アミド、乳酸アシル、およびそれらの混合物を包含する。これらの非シリコン含有乳化剤の非限定例は、以下を包含する:ポリエチレングリコール20モノラウリン酸ソルビタン(ポリソルベート20)、ポリエチレングリコール5大豆ステロール、ステアレス-20、セテアレス-20、ジステアリン酸PPG-20メチルグルコースエーテル、セテス-10、ポリソルベート80、リン酸セチル、リン酸セチルカリウム、リン酸セチルジエタノアミン、ポリソルベート60、ステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレン20トリオレイン酸ソルビタン(ポリソルベート85)、モノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン4ラウリルエーテルステアリン酸ナトリウム、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、ラウリン酸ヘキシル、ジステアリン酸PPG-20メチルグルコースエーテル、PEG-100ステアリン酸塩、およびそれらの混合物。市販の界面活性剤は、ポリソルベート80(商標名TWEEN(登録商標)80のもとで販売されている)、ポリソルベート20(商標名TWEEN(登録商標)20のもとで販売されている)、ポリソルベート40(商標名TWEEN(登録商標)40のもとで販売されている)およびポリソルベート60(商標名TWEEN(登録商標)60のもとで販売されている)を包含する。いくつかの態様において、界面活性剤は、ポリソルベートを包含し、および、いくつかの態様において、界面活性剤は、商標名TWEEN(登録商標)のもとで販売されている。
【0070】
この発明のCDBペプチドまたはコンストラクトは、デバイスによってもまた投与することができる。したがって、投与は、リザーバーまたは多孔質膜タイプの、または各種固体マトリックスの、いずれかのパッチを使用して成し遂げることができる。
【0071】
本発明のデバイス、または個々の投薬単位は、当業者に知られているあらゆる様式で生産することができる。皮膚用組成物が形成された後で、それは当業者に知られているあらゆる方法にて裏当て層に接触させられ得る。かかる技術は、カレンダーコーティング、ホットメルトコーティング、溶液コーティング、等々を包含する。裏当て材は、当該技術分野においてよく知られており、および、ポリエチレン、酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等のプラスチックフィルム、金属箔、不織布、布および市販のラミネートを含むことができる。裏当て材は、一般的に、2~1000マイクロメートルの範囲にある厚さを有し、および、皮膚用組成物は、一般的に、厚さ約12~250マイクロメートルの範囲にわたる厚さで裏当て材の上に配置される。
【0072】
好適な放出ライナーもまた当該技術分野においてよく知られており、および、BIO-RELEASE(商標)ライナーおよびSyl-off7 7610ライナーと名付けられたDow Corning Corporationの市販製品を包含する。ポリシロキサンが複数のポリマー接着剤キャリアの一部である態様については、放出ライナーはシリコーン接着剤と相溶性がなければならない。好適な市販のライナーの一例は、3M's 1022 SCOTCH PAK(商標)である。本発明の経皮送達システムの構成は、必要なまたは望ましいあらゆる形状またはサイズとすることができる。実例として、単一投薬単位は、1~200cmの範囲にある表面積を有し得る。いくつかの態様において、サイズは、5~60cmである。
【0073】
いくつかの態様において、キャリアが柔軟で有限のポリマーである場合には、1以上のポリマーが、任意には感圧接着剤組成物を結果としてもたらすためのPVPと、または、組み込まれた親薬物の表皮を通しての送達をコントロールするための薬物送達系接着系と(組み込まれた親薬物とともに)、ブレンドされる。本発明のいくつかの態様において、好適な薬物送達系は、適当な揮発性溶媒(単数または複数)中で可溶性PVP、ポリアクリル酸塩、ポリシロキサン、親薬物/プロドラッグを、必要であれば任意であるエンハンサー(単数または複数)、共溶媒(単数または複数)、および粘着剤を混合し、次いで混合物を型取りし、および溶媒(単数または複数)を蒸発により除去することでフィルムを形成することによって調製される。好適な揮発性溶媒は、イソプロパノールおよびエタノールなどのアルコール;キシレンおよびトルエンなどの芳香族;ヘキサン、シクロヘキサンおよびヘプタンなどの脂肪族;および、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのアルカン酸エステルを包含するが、これらに限定されない。
【0074】
以下による投与のための送達系もまた包含される:パッシブパッチ、加熱パッシブパッチ、RF処置された皮膚上に適用されるパッシブパッチ、およびスプレーオンスキンシステムであって、ここで適用される総量は固定され、および送達は共形成された浸透性エンハンサーによって改善される。
【0075】
いくつかの態様において、組成物は、レシピエントへ送達系またはパッチの手段によって投与される。送達は、長期間、レシピエントの皮膚へ投与される物質の供給源を曝露することによって成し遂げられる。典型的には、処方物は、それがそこからレシピエントの皮膚上へと放出されるマトリックスまたは容器の中に組み込まれるかまたはそれの上に吸着される。放出の速度は、容器と皮膚との間に位置させられる膜によって、容器からの直接の拡散によって、または皮膚自体が速度制御バリアとして働くことによって、コントロールすることができる。ゆえに、数多くの好適な局所送達系および容器が知られており、それらは、投与される物質が含浸され、絆創膏で皮膚に固定される単純なガーゼパッドから、多層および多成分構造までの複雑さの範囲にわたる。系のいくつかは、投与される物質とともに用いられる、レシピエントの皮膚にぴったりとフィットするのに十分な柔軟性のある造形品であって、それによって物質がレシピエントの皮膚に送達される容器としておよび物質が送達される皮膚のエリアからの物質の損失または漏出を防止するためのバリアとしての両方として働くもの、の使用によって特徴付けられる。局所送達系またはパッチは、皮膚を通しての活性成分の透過を助ける添加された物質、たいていは皮膚エンハンサーまたは透過性エンハンサーと言われるもの、もまた含有してもよい。送達系は、エトキシル化ヒマシ油、エトキシル化ホホバ油、エトキシル化コーン油、およびエトキシル化エミュー油などのエトキシ化油を含有し得る。エトキシ化油と混合されたアルコールは、透過性エンハンサーを形成し得る。
【0076】
本発明はまた、CBDペプチドまたはコンストラクトのための投薬量も提供する。局所的な創傷治癒のために、約0.001mg/cm~約10mg/cm創傷面積、約0.05mg/cm~約5mg/cm創傷面積、約0.01mg/cm~約1mg/cm創傷面積、約0.05mg/cm~約0.5mg/cm創傷面積、約0.01mg/cm~約0.5mg/cm創傷面積、約0.05mg/cm~約0.2mg/cm創傷面積、または約0.1mg/cm~約0.5mg/cm創傷面積(またはそれらのあらゆる組み合わせ)の1以上の用量が患者へ投与され得る。ある態様において、約0.01mg/cm、0.02mg/cm、0.03mg/cm、0.04mg/cm、0.05mg/cm、0.06mg/cm、0.07mg/cm、0.08mg/cm、0.09mg/cm、0.1mg/cm、0.15mg/cm、0.2mg/cm、0.25mg/cm、0.3mg/cm、0.4mg/cm、または0.5mg/cm創傷面積の1以上の用量が患者へ投与され得る。かかる用量は、断続的に、例として、週1回または3週間毎に(例として、約2~約20の、または約6回のCBDペプチドまたはコンストラクトの用量を患者が受けるように)、投与されてもよい。初期のより高い負荷用量、これに続いて1以上のより低い用量が、投与されてもよい。しかしながら、他の投薬レジメンも有用であり得る。この治療の進捗は、常用の技術およびアッセイによって簡単にモニタリングされる。
【実施例
【0077】
以下の非限定例は、本発明をさらに解説するために提供される。
【0078】
例1:材料および方法
試薬。PP2(4-アミノ-5-(4-クロロフェニル)-7-(t-ブチル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン)、カルシウムイオノフォアA23187、N-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル(L-NAME)、ウォルトマンニンSTO-609、U0126、BSA、およびRIPAバッファー、および、商標名PLURONIC(登録商標)のもとで販売されているF-127ゲルは、Sigma(St. Louis, MO)からのものであった。n-オクチル-β-D-グルコピラノシド(ODG)は、RPI Corp.(Mt Prospect, IL)からのものであった。eNOS、CCR10に対するsiRNA、および、商標名DHARMAFECT(登録商標)1のもとで販売されているトランスフェクション試薬は、Dharmacon(Lafayette, CO)からのものであった。商標名TRANSIT(登録商標)のもとで販売されているトランスフェクション試薬は、Mirus Bio(Madison, WI)からのものであった。対照siRNA、マウス抗CCR10およびマウスeNOS抗体は、Santa Cruz Biotechnologies(Dallas, TX)から購入した。4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、蛍光標識された二次抗体は、Invitrogen(Carlsbad, CA)から購入した。マウス抗eNOS、マウス抗β-カテニン、ウサギおよびマウスおよびマウス抗アクチン抗体、ヒト組換えCCL28、および、商標名MATRIGEL(登録商標)のもとで販売されている細胞外マトリックスは、BD Biosciences(San Diego, CA)からのものであった。ウサギ抗EEA1、マウス抗LAMP1抗体、マウス抗Bcl-2、ウサギ抗CD31、ウサギ抗ホスホeNOS(pSer1177)、ウサギ抗ホスホp85(pTyr458)、ウサギ抗ホスホSrc(pTyr416)、ウサギ抗ホスホERK(pT202/Y204)および対応する総抗体、およびGriess試薬キットは、Cell Signaling Technology(Danvers, MA)からのものであった。皮膚パンチ生検ツールは、Acuderm Inc.(Fort Lauderdale, FL)からのものであった。ヘマトキシリン、エオシン、High-DefおよびBluingは、StatLab(McKinney, TX)からのものであった。商標名LIPOFECTAMINE(登録商標)2000のもとで販売されているトランスフェクション試薬、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、蛍光標識された二次抗体、DAF-FM二酢酸、商標名TRIZOL(登録商標)のもとで販売されている核酸単離反応薬、およびSYBR Green PCRミックスは、ThermoFisher Scientific(Waltham, MA)からのものであった。マウスELISAキットは、R&D Systems(Minneapolis, MN)から購入した。ニトロセルロース膜は、Bio-Rad Laboratories(Hercules, CA)からのものであった。商標名SUPERSIGNAL(登録商標)West Femtoのもとで販売されている化学発光基質、および、RESTORE(商標)ウェスタンストリッピングバッファーは、Pierce(Rockford, IL)からのものであった。
【0079】
細胞培養およびトランスフェクション。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC;Lonza, Walkersville, MD)およびヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMVEC;Cell Biologics, Chicago, IL)を、10%(v/v)FBSが補充されたEGM-2(EGM(商標)-2プラスBULLETKIT(商標); Lonza, Walkersville, MD)中で培養した。内皮細胞におけるcDNAおよびsiRNAトランスフェクションを、知られている方法に従って行った(Chen, et al. (2018) Mol. Biol. Cell 29(10):1190-1202;Chen, et al. (2020) FASEB J. 34(4):5838-5850)。HEK293細胞(ATCC, Rockville, MD)およびHEK/eNOS細胞を、10% FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンが補充されたDMEM培地中で培養した。内皮細胞およびHEK細胞におけるcDNAトランスフェクションは、夫々、確立された方法に従い、商標名TRANSIT(登録商標)およびLIPOFECTAMINE(登録商標)2000のもとで販売されているトランスフェクション試薬を用いて実施した(Chen, et al. (2018) Mol. Biol. Cell 29(10):1190-1202;Chen, et al. (2020) FASEB J. 34(4):5838-5850;Chen, et al. (2015) Ann. Rheum. Dis. 74:1898‐1906)。蛍光タグ付けされたタンパク質で形質導入された細胞を、蛍光顕微鏡およびイムノブロット分析によって検証した。
【0080】
CCR10-GFPプラスミドの構築。野生型の、C末端の、GFPタグ付けされたC-CモチーフCCR10の、完全長Homo sapiens CCR10 cDNA(Addgene, Cambridge, MA)を、PCR反応においてDNAテンプレートとして、DNA PHUSION(登録商標)ハイフィデリティーポリメラーゼ(New England BioLabs, Ipswich, MA)とともに使用し、ストップコドンを欠いた以下のプライマーを使用した:
【化1】
(配列番号76)および
【化2】
(配列番号77)。結果としてもたらされたPCRフラグメントを、制限酵素5’-EcoRIおよび3’-KpnIで消化し、および、同じ制限酵素で消化されたpEGFP-N1ベクター(Clontech, Mountain View, CA)中へとT4 DNAリガーゼ(New England BioLabs, Ipswich, MA)を使用してライゲーションした。ライゲーションされた反応を、Subcloning Efficiency DH5αコンピテントセル(ThermoFisher, Waltham, MA)中へと移した。
【0081】
DAF-FM二酢酸を用いた一酸化窒素(NO)測定。96ウェルプレート上のコンフルエントなHUVEC単層を2.5μM DAF-FMで負荷し、および37℃にて45分間インキュベートした。当該技術分野において記載されたとおり、SpectraMax Microplate Reader(Molecular Devices, San Jose, CA)を使用してNO濃度を測定した(Chen, et al. (2020) FASEB J. 34(4):5838-5850)。
【0082】
Griess試薬を用いた亜硝酸塩測定。37℃での刺激有りまたは無しでの10cm皿上のコンフルエントな内皮細胞からの上清を、Griess試薬キットを使用して製造者の説明書に従って亜硝酸塩レベルについて分析した。当該技術分野において記載されたとおり、亜硝酸塩レベルは、細胞内におけるeNOS発現レベルまで正規化される(Chen, et al. (2020) FASEB J. 34(4):5838-5850)。
【0083】
イムノブロットおよび共免疫沈降(共IP)。血清飢餓後に、37℃での指示された時間の刺激の45分前にインヒビターを添加し、および細胞を次いで収集してウェスタンブロット分析のために溶解させた。p-eNOS(Ser1177)、p-p85(Tyr458)、p-Src(Tyr416)、およびp-ERK(T202/Y204)についてプローブした後、同じブロットを剥がし、上述の総タンパク質を再プローブした。β-カテニンおよびBcl-2の、CCL28に誘発されるタンパク質レベルの検出のために、コンフルエントに近い内皮細胞を、1%FBSを含有するEGM-2培地中で500ng/ml CCL28とともに24時間インキュベートした。
【0084】
共IP実験。細胞またはマウス創傷を処置後に収集し、および、トリスバッファー中の2% ODG中に溶解させた。当該技術分野において記載されたとおり、共IP実験のためにホモジネートをさらに調製した(Chen, et al. (2018) Mol. Biol. Cell 29(10):1190-1202;Chen, et al. (2020) FASEB J. 34(4):5838-5850;Chen, et al. (2015) Ann. Rheum. Dis. 74:1898‐1906)。
【0085】
内皮細胞管形成。HUVECを、eNOS(50nM)、CCR10(100nM)、またはスクランブル対照(100nM)のsiRNAでトランスフェクトし、および、48時間後、細胞は、商標名MATRIGEL(登録商標)のもとで販売されている細胞外マトリックスを事前にロードされた96ウェルプレートへと移した。CCL28シグナリング経路を調べるために、HUVECをビヒクルまたは特異的なインヒビターとともに事前にインキュベートし、および、次いで、以前記載されたとおりにCCL28有りまたは無しで刺激した(Chen, et al. (2015) Ann. Rheum. Dis. 74:1898-1906)。
【0086】
共焦点顕微鏡法。細胞免疫染色のために、カバースリップ上で成長させた細胞のコンフルエントな単層を、以前記載されたとおりに調製した(Chen, et al. (2012) Mol. Biol. Cell 23(7):1388-1398)。Zeiss LSM 880共焦点顕微鏡を使用して蛍光像を得た。特定された関心領域(ROI)における共局在係数を、Zeiss Zenソフトウェアを使用して決定した。手短に言うと、所望のROIを、Overlayツールを使用して細胞縁に沿って描き、およびROIについての値を集計した。種々異なる処置群からのデータを収集し、および、以前記載されたとおりに統計的有意性について分析した(Chen, et al. (2020) FASEB J. 34(4):5838-5850)。
【0087】
ミリストイル化ペプチドの合成。ミリストイル化ペプチドは、12チャネルマルチプレックスペプチド合成装置(Protein Technologies, Tucson, AZ)を用いてWang樹脂(AnaSpec, Fremont, CA)上で9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)化学を使用した段階的固相法を使用して、以前記載されたとおりに合成した(Chen, et al. (2020) FASEB J. 34(4):5838-5850;Jayathilaka, et al. (2007) J. Biomol. Tech. 18:46)。
【0088】
マウス治癒モデル。全ての動物実験手順は、実験用動物のケア・利用ガイド(国立衛生研究所)に従って行った。WT C57BL/6、eNOS-/-およびdb/dbマウスを、Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入した。CCR10-/-マウスは当該技術分野において記載されている、例として、Jin, et al. (2011) J. Immunol. 185(10):5723-31を参照。ケタミン(100mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)麻酔下で標準皮膚生検パンチを使用して、マウス(雄、9週齢)の背部皮膚上に4つの5mmまたは8mmの全層切除創傷を作った。創傷の後、スクランブルのミリストイル化(Myr-)対照、またはMyr-CBD7ペプチドを、商標名PLURONIC(登録商標)のもとで販売されているF-127ゲル中で創傷へ局所的に適用した(Mirza, et al. (2009) Am. J. Pathol. 175:2454-2462)。創傷サイズを、以前記載されたとおりに決定し(Chen, et al. (2020) FASEB J. 34(4):5838-5850;Zhao, et al. (2016) PLoS ONE. 11:e0146451)、および、指示された測定のために、指示された時間に、創傷を収集した。
【0089】
ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色。H&E染色を、以前記載されたとおりに行った(Chignalia, et al. (2015) Am. J. Pathol. 185:1251‐1263)。5μm組織切片を有するスライドを30分間60℃で焼き、および、プリセットのプロトコルを使用してAutostainer XL(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)で染色した。手短に言うと、スライドをキシレンの3回の交換で脱パラフィンし、100%および95%エタノールで再水和し、1.5分間インキュベートし、これに続いてHigh-DefおよびBluingに短時間浸漬したことで、鮮明な核の詳細を得た。スライドを、次いでエオシン中で2分間インキュベートし、脱水しおよびMicromount media(Leica Biosystems)でマウントした。全体のスライド画像を、Aperio AT2明視野スキャナー(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)を使用して得た。
【0090】
マウス創傷組織におけるCD31染色。ホルマリン固定したマウス皮膚試料を、ASP300 S自動組織プロセッサー(Leica Biosystems, Buffalo Grove, IL)上で標準的なオーバーナイトプロセッシングプロトコルを使用してプロセッシングし、および、パラフィンブロック中へと包埋した。組織を5μmで切片化し、ウサギ抗CD31抗体で染色した。切片を脱パラフィンし、再水和し、および、プリセットのプロトコルを使用してBOND(商標)RX自動染色装置(Leica Biosystems, Buffalo Grove, IL)上で染色した。手短には、切片をBOND(商標)ER2溶液(Leica Biosystems, Buffalo Grove, IL)で20分間100℃にて、EDTAベースの抗原賦活化(antigen retrieval)に供した。Background Sniper(Biocare Medical, Pacheco, CA)を用いて試料をペルオキシダーゼブロックおよびタンパク質ブロックで、夫々室温で15分間および30分間処置することにより、内因性ペルオキシダーゼ活性および非特異的結合をブロックした。切片を、次いで、1:200で希釈された一次抗体とともに30分間室温にてインキュベートした。BOND(商標)Polymer Refine Detectionキット(Leica Biosystems, Buffalo Grove, IL)を検出に使用した。全ての切片を次いでヘマトキシリンで10分間対比染色し、およびMicromount media(Leica Biosystems, Buffalo Grove, IL)でマウントした。全体のスライド画像を、Aperio AT2デジタル自動スキャナー(Leica Biosystems, Buffalo Grove, IL)を使用して倍率20×で取得した。
【0091】
リアルタイムRT-PCR。商標名TRIZOL(登録商標)のもとで販売されている核酸抽出試薬を使用して、マウス皮膚創傷から全細胞RNAを抽出した。SYBR Green PCRミックスを採用したリアルタイムRT-PCRによって、種々の遺伝子のmRNA発現を調べた。相対的な遺伝子発現を、以前記載されたとおりにGAPDHレベルに基づくΔΔC法によって決定した(Chen, et al. (2013) J. Immunol. 190:5256-5266)。
【0092】
ELISA測定。マウス皮膚創傷を収集し、溶解し、および、製造者の説明書に従ってマウスCCL28およびIL-6のELISA測定のために調製した。
【0093】
血液灌流測定。db/dbマウスへの8mmパンチを使用した背部皮膚創傷の作製の直後に、50μlの、商標名PLURONIC(登録商標)のもとで販売されているF-127ゲル中の50μM Myr-スクランブル対照またはMyr-CBD7ペプチドを、db/dbマウスの創傷へ局所的に適用した。以前記載されたとおりに近赤外線レーザーベースのPeriCam PSIレーザースペックルコントラスト分析システム(LASCA)を使用して創傷の表面の下で検出される動きに基づいて血液灌流を分析した(Elgharably, et al. (2013) Wound Repair Regen. 21(3):473-481;Das, et al. (2016) J. Immunol. 196(12):5089-5100)。
【0094】
統計分析。データは、少なくとも3の独立した実験からの平均±SEMとして表現される。GraphPad InStatソフトウェア(San Diego, CA)を使用したスチューデントのt検定または一元ANOVAによって統計分析を行った。統計的有意性は、P<0.05として定義した。
【0095】
例2:CCL28は、ヒト内皮細胞におけるeNOS依存性のSrc、PI3KおよびMAPKシグナリング経路を活性化させた
CCR10レベルは、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)およびヒト内皮前駆細胞(EPC)において高く発現することが見出された。NO産生もまた、HUVECにおいて、CCR10に対するリガンドである500ng/mlのヒト組換えCCL28での処置に続いて観察された。内皮細胞におけるCCR10へのCCL28の結合によって活性化されるシグナリング経路をさらに調査した。eNOS(Ser1177)、p85(Tyr458;PI3K)、Srcキナーゼ(Tyr418)、およびERK(T202/Y204;MAPK)のリン酸化は、全て、最大60分間までCCL28処置に続いて有意に増大した。しかしながら、eNOSをsiRNAで枯渇させたとき、p85、Src、およびMAPKのリン酸化は起こらなくなっており、これはCCL28が内皮細胞においてeNOS依存性のSrc、PI3KおよびMAPKシグナリング経路を促進させるということを示唆する。
【0096】
血管新生においてCCL28/CCR10シグナリング経路の役割をさらに調査した。10μM ウォルトマンニン(PI3Kインヒビター)、5μM U0126(MAPK/ERKインヒビター)、1μM L-NAME(eNOSインヒビター)、10μM PP2(Srcキナーゼインヒビター)、および10μM STO-609(CaMKIIインヒビター)での細胞の前処置は、500ng/ml CCL28によって誘導される内皮細胞管形成を低減させた。これらの結果は、eNOS/NO、Src、PI3KおよびMAPKが、少なくとも部分的には、CCL28依存性血管新生を媒介するということを示唆する。加えて、24時間の内皮細胞のCCL28刺激は、細胞接着タンパク質β-カテニンおよび抗アポトーシスタンパク質B細胞白血病/リンパ腫-2(Bcl-2)の発現レベルを向上させており、CCL28での刺激に応答した内皮細胞の増殖能を支持する。
【0097】
例3:HUVECにおけるeNOS依存性血管新生のCCR10での調節
内皮細胞管形成におけるCCR10およびeNOSの役割をさらに調査するために、CCR10(100nM)またはeNOS(50nM)を標的とするSiRNAを使用し、および管形成をHUVEC中において測定した。この分析は、CCR10またはeNOSのいずれかのノックダウンが内皮細胞管形成を起こらなくさせたということを示唆し、これはCCR10およびeNOSタンパク質の両方が血管新生において重大な役割を果たすということを示す。ウェスタンブロット分析により、eNOSノックダウンはCCR10発現に影響を与えなかったが、しかしながらCCR10ノックダウンはeNOS発現レベルを60%低減させたということが示された。内皮細胞におけるCCR10によるeNOSの調節は、共焦点顕微鏡法によって、対照siRNAで処置された細胞においてeNOSがCCR10と共局在化したという点でさらに実証された。ウェスタンブロットの結果と一致して、CCR10蛍光強度は、eNOSが枯渇した細胞において影響を受けなかったが、しかしながら、eNOSの蛍光強度は、CCR10が枯渇した細胞において劇的に減少した。これらの結果は、CCR10 siRNAで処理された内皮細胞のeNOS枯渇が、CCR10と共局在するeNOSのプールの安定化を反映しているということを示唆し得る。総合すると、これらの結果は、CCR10が、eNOSの発現および活性化の調節を介して、血管新生において重要な役割を果たしているということを示唆する。
【0098】
例4:CCR10によるeNOS発現および機能の調節
eNOS発現が初代培養ヒト内皮細胞においてCCR10によって調節され得ることから、ヒト内皮細胞におけるeNOS活性に対するCCR10発現の影響をさらに調査した。72時間の100nM CCR10 siRNAでの処置の後、内皮細胞を5μM カルシウムイオノフォアA23187で刺激し、および、細胞を収集してウェスタンブロット分析のために調製した。CCR10およびeNOS発現レベルの両方が低減した。しかしながら、eNOSのリン酸化は、0分においてさえも、対照siRNAと比較して有意に増大しており、これはCCR10結合が基本的にeNOS活性を抑制するということを示唆する。細胞上清中の亜硝酸塩濃度もまた測定し、およびeNOS活性を総eNOS発現と比較して計算した。増大したeNOSリン酸化と一致して、CCR10ノックダウン後の内皮細胞におけるeNOS分子あたりのNO産生は有意により高くなっており、これはCCR10が内皮細胞におけるeNOS発現および活性を負の方向に調節するということを示唆する。
【0099】
例5:CCR10とeNOSとの間のリガンド誘導性相互作用
CCR10がeNOSと直接的に相互作用するかどうかを調査するために、初代培養HUVECを収集し、および、5μM A23187での刺激に続いてのCCR10-eNOS相互作用を評価するための共免疫沈降(共IP)のために調製した。抗CCR10抗体または抗eNOS抗体を用いた共IPに基づき、A23187で刺激された内皮細胞においてCCR10のeNOSへの向上した結合が観察され、最大の結合はA23187の添加の5分後に観察された。類似した結果が、500ng/mlヒト組み換えCCL28での刺激に続いて内皮細胞において得られた。CCR10-eNOS相互作用は、共焦点顕微鏡法および高解像度イメージングによってさらに支持された。A23187またはCCL28で5分間刺激したところ、CCR10は、原形質膜上に、eNOSとともに、より大きな程度で共局在化した。原形質膜中の関心領域(ROI)における共局在化係数を、Zeiss LSM 880共焦点顕微鏡画像から、Zeiss Zenソフトウェアを使用して定量化した。CCR10とeNOSとの共局在化係数は、A23187(81%)およびCCL28(78%)刺激に続くと、未処置の対照細胞(43%)と比較して有意により大きかった。これらの結果は、活性化された内皮細胞の原形質膜でまたはその近くでの、CCR10とeNOSとの間の増大した相互作用を示唆する。
【0100】
例6:ミリストイル化CCR10結合ドメイン(Myr-CBD)ペプチドでのeNOS-CCR10の遮断はeNOS活性を向上させる
結果は、内皮細胞においてCCR10がeNOSと直接的に相互作用し得るということ、CCR10がeNOS発現および血管新生を調節しおよびeNOS活性を阻害するということを示唆した。ゆえに、CCR10-eNOS相互作用の阻害の影響を、eNOS上の予測された相互作用ドメインの配列に基づいて細胞浸透性ペプチドのパネルを使用して調査した。類似したペプチドが、eNOSの標的ペプチドへ結合したカルモジュリンの溶液構造を決定することにおいて記載されている(Piazza, et al. (2014) Biochemistry 53(8):1241-9;Piazza, et al. (2016) Biochemistry 55(42):5962-71))。まず、ミリストイル化された20アミノ酸のペプチド(491-TRKKTFKEVANAVKISASLM-510(P1);配列番号61)を、ヒトeNOSの配列(これはマウスeNOSにおいて保存される)に基づいて合成した。HUVECにおける共IP実験は、50μMの細胞浸透性の20アミノ酸のミリストイル化CCR10結合ドメインペプチド(Myr-CBD20)での前処置が、5μM A23187で5分間刺激された内皮細胞におけるCCR10-eNOS相互作用を対照ペプチドと比較して有意に低減させたということを示唆した。これに後続して、CBD由来のペプチドのトランケーションされたバージョンが同じ効果を有することとなるかどうかを決定した。したがって、表3に列記されたトランケーションされたペプチドを合成した。
【表3】
【0101】
50μM P1、P2、P3またはP4での前処置は、5分間の5μM A23187での刺激に続いて内皮細胞におけるCCR10-eNOS相互作用を完全にブロックした。Myr-CBD7ペプチドが有意な阻害を呈したとして、eNOS活性に対するMyr-CBD7ペプチドの効果を評価した。共IP実験は、スクランブル対照ペプチド(Myr-MSIALKS;配列番号5)と比較して、Myr-CBD7で処置された細胞におけるCCR10-eNOS相互作用の有意な低減を示した。CCR10依存性結合による負の調節の低減と一致して、eNOSリン酸化(Ser1177)はMyr-CBD7の存在下で有意に向上した。
【0102】
ウシeNOSへのカルモジュリン(CaM)結合は、残基493-TRKKTFKEVANAVKISASLM-512(配列番号2)で起こることが報告されている(Venema, et al. (1996) J. Biol. Chem. 271(11):6435-6440;Venema, et al. (1995) J. Biol. Chem. 270:14705-14711)。ゆえに、共IPを使用して、Myr-CBD7がeNOS-CaM結合に影響を与えるかどうかを評価した。この分析は、Myr-CBD7ペプチドでの内皮細胞の前処置が、500ng/ml CCL28での5分間の処置により誘導されるCaM-eNOS結合に何ら影響を有しなかったということを示唆した。よって、これらのデータは、ヒトeNOSにおける504-KISASLM-510(配列番号1)ドメインがCCR10に対する特異的な結合領域であるということを示唆する。
【0103】
例7:Myr-CBD7ペプチドの局所投与は、マウスにおける真皮創傷治癒を改善させた
CCL28(粘膜関連上皮ケモカインともまた呼ばれる)は、CCR10ならびにCCR3を介してシグナルを送るCCケモカインである(Pan, et al. (2000) J. Immunol. 165:2943)。CCR10は、上皮免疫に関与する2の機能性リガンドCCL27およびCCL28を有することが報告されている(Xiong, et al. (2012) Protein Cell 3:571-580)。CCL28およびCCR10レベルは、WT C57BL/6マウスの皮膚においてCCL27およびCCR3と比較して高く発現していたことが観察された。IL-6に類似して、ELISAによって決定されたCCL28のタンパク質レベルは、マウス創傷において第3日目および第7日目に有意に上昇した。ゆえに、後続して、Myr-CBD7ペプチドとのCCR10-eNOS相互作用の遮断がWT C57BL/6マウスにおける創傷治癒に対して影響を有するかどうかを調査した。マウス背部皮膚上に4つの5mm径の全層切除創傷を作り、および、300μl Myr-CBD7ペプチド(50μM)を、パンチ創傷を作製した直後に創傷上へと局所的に投与した。対照ペプチドで処置された創傷と比較して、Myr-CBD7ペプチドは、第5日目に20%にておよび第7日目に35%にて、創傷サイズを有意に低減させた(図1)。Myr-CBD7処置での創傷サイズ低減は、H&E染色された創傷切片において観察された皮膚創傷の再上皮化と関連した(図2)。
【0104】
Myr-CBD7ペプチド処置はまた、第7日目に創傷におけるeNOSタンパク質レベルも対照ペプチドと比較して向上させており(図3)、および共IPは、Myr-CBD7ペプチド処置が第7日目に創傷におけるCCR10-eNOS相互作用を低減させたということを示した(図4)。eNOS以外にも、別の内皮細胞マーカーであるCD31のRNAレベルもまた上昇した;CCR10 mRNAレベルは、しかしながら、変わらなかった。加えて、Myr-CBD7ペプチド処置は、炎症促進性サイトカインIL-6のmRNAレベルの低減を結果としてもたらした一方で、抗炎症性サイトカインIL-4 mRNAをマウス創傷において第7日目に向上させた。肝細胞成長因子(HGF)のmRNAレベルは、Myr-CBD7処置された創傷において35%、非有意性ではあったが増大した。総合すると、これらの結果は、Myr-CBD7ペプチドでのマウス皮膚創傷の局所処置は、CCR10-eNOS相互作用をブロックすることによりeNOS/NOレベルを向上させ、それによって創傷血管新生および創傷治癒を促進する抗炎症性環境を円滑化させるということを示す。
【0105】
例8:2型糖尿病(T2DM)患者および遺伝的糖尿病マウスにおける低減されたeNOS発現および上昇したCCR10レベル
血漿一酸化窒素(NO)濃度は、基礎状態のT2DM患者よりも痩せた健康な対照(LHC)においてより高いことが示されている(37.4±10.1μmol/L対21.6±3.9μmol/L;Mahmoud, et al. (2016) Physiol. Rep. 4:pii:e12895)。本分析において、重要な内皮マーカータンパク質であるeNOSの発現レベルを、ヒト骨格筋生検においてさらに評価した。eNOSのタンパク質レベルは、T2DM患者においてLHCと比較して有意により低かった。これに後続して、これらのヒト生検におけるケモカイン受容体CCR10のレベルを測定した。CCR10のmRNAレベルもまたリアルタイムRT-PCRを使用して決定し、および、それはT2DMからの生検においてLHCに対して相対的に有意に上昇したことが観察された。eNOSおよびCCR10の発現レベルもまた糖尿病db/dbマウスにおいて測定し、遺伝的にレプチン受容体db突然変異(LEPRdb)のマウスを2型糖尿病の自然発生モデルとして使用した。db/dbマウスにおいてWT C57BL/6マウスと比較して、より重い体重、上昇した血糖、および背部皮膚における炎症促進性サイトカインの増大した発現が観察された。db/dbマウスの背部皮膚において、eNOS発現はWTマウスと比較して有意に低減し、およびCCR10 mRNAはWTと比較して有意に上昇した。総合すると、ヒトT2DM患者および遺伝的に肥満かつ糖尿病のdb/dbマウスにおいて観察された低減したeNOSおよび上昇したCCR10レベルは、CCR10が、eNOS発現を調節することにおいて重要な役割を果たし得、および、2型糖尿病における心血管機能不全の病理学的病因に関連するということを示唆する。
【0106】
例9:マウス背部皮膚およびヒト内皮細胞におけるCCR10過剰発現によるeNOSの下方制御
リアルタイムRT-PCRによって決定されたとおり、CCL28に対する別の受容体であるCCR3の発現は、WTおよびdb/dbマウスの両方の背部皮膚において、CCR10と比較してはるかに低かった。よって、CCR10は、さらなる研究において、一次CCL28受容体であるとみなされた。4の異なるマウス系統、eNOS-/-、db/db、WT、およびCCR10-/-からの背部皮膚を収集して、eNOSおよびCCR10発現の決定のために調製した。ウェスタンブロット分析は、db/dbマウスにおいて低減したeNOS発現を示した。興味深いことに、eNOS発現はCCR10-/-マウスにおいて上昇していた。そのうえ、リアルタイムRT-PCRにより決定されたマウス皮膚におけるCCR10 mRNAレベルは、eNOS-/-マウスにおいて驚くほど上昇していた。よって、eNOS発現が低減すると、eNOS-/-およびdb/dbにおけるように、CCR10レベルが増大し、および、CCR10が低減すると、CCR10-/-マウスにおけるように、eNOSタンパク質レベルが増大する。これらのデータは、eNOSとCCR10の発現の間には相互関係があるということを示唆する。
【0107】
db/dbおよびWTマウスにおける創傷治癒時間もまた、eNOS-/-およびCCR10-/-マウスと比較した。背部皮膚上に創傷を生じさせ、および、画像を48時間毎に収集して分析した。eNOS-/-、db/dbおよびCCR10-/-マウスにおいては、WTと比較して、第3日目から始まって、遅延した創傷治癒が観察された。重要なことに、糖尿病db/dbマウスにおける遅延した治癒(85%;第0日目に対して相対的に)は、第7日目にeNOS-/-マウス(70%)において観察されたそれと極めて類似しており、一方CCR10-/-マウス(26%)はWTマウス(16%)よりも比較的大きい創傷を示した。
【0108】
CCR10は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)およびヒト内皮前駆細胞(EPC)において高く発現することが示されている(Chen, et al. (2020) FASEB J. 34(4):5838-5850)。皮膚毛細血管においてCCL28/CCR10シグナリング軸が創傷治癒における役割を果たすかどうかを理解するために、500ng/mlのCCL28をヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMVEC)へ投与した。eNOS-CCR10相互作用は増大し、5分で最大結合が観察され、それはHUVECにおいて観察されたことと類似していた(Chen, et al. (2020) FASEB J. 34(4):5838-5850)。共焦点顕微鏡を使用してCCR10-eNOS相互作用をさらに実証した。5分間のCCL28での刺激をすると、原形質膜上にeNOSがある状態でCCR10がより高い程度まで共局在化した。
【0109】
真皮内皮細胞においてCCR10によってeNOSが調節されるかどうかを理解するために、CCR10-GFP cDNAを初代培養のHDMVEC中へとトランスフェクトさせた。トランスフェクトされたCCR10-GFP cDNAの量の増大とともに、eNOS発現レベルは有意に減少し、および、eNOS発現の低減と一致して、CCR10の過剰発現はまたHDMVECの管形成も低減させた。低減したeNOS発現およびNO産生はまた、安定的にトランスフェクトされたHEK/eNOS細胞がさらにCCR10-GFP cDNAで形質導入されたものにおいても観察された。しかしながら、eNOSの過剰発現は、安定なHEK/CCR10-GFP細胞におけるCCR10レベルに何ら影響を有しなかった。総合すると、これらの結果は、CCR10の過剰発現がeNOSの下方制御につながること、およびこれがin vitroでの低減された血管新生と結び付けられるということを示唆する。
【0110】
例10:CCR10によるeNOSの内在化は、CCL28で刺激されたHDMVECにおいてMyr-CBD7ペプチドによって防止することができる
持続的な刺激で、GPCRは、Gタンパク質受容体キナーゼ(GRKs)によってリン酸化され、それは受容体脱感作/下方制御を媒介するβ-アレスチンの動員につながる。GPCRは、クラスリンまたはカベオラに媒介されるエンドサイトーシスを介して内在化され、および分解のためにリソソームを標的とするかまたは脱リン酸化されて新たな活性化のラウンドを可能にするために細胞表面へとリサイクルされる。予備分析において、500ng/ml CCL28での90分間の処置に続いて、eNOSはHDMVECにおいてEEA1(初期エンドソーム抗原1)との共局在をより示しており、内皮細胞においてCCL28で活性化されたCCR10がeNOSの内在化につながるということを示唆した。CCL28でのより長い処置時間(3時間)に続いて、共IP実験は、eNOSおよびCCR10の両方がLAMP1(リソソーム関連膜タンパク質1)と関連したということを示唆した。これらの結果は、変化しなかった総細胞タンパク質レベルと比較して、両方のタンパク質が分解を経たということを示唆した。
【0111】
ミリストイル化された7アミノ酸のCCR10結合ドメイン(Myr-CBD7)ペプチドがCCR10とのeNOS相互作用をブロックしてHUVECにおけるeNOS活性を増大することができることから、Myr-CBD7がCCL28刺激に続いてeNOS内在化およびHDMVECにおける分解を防止することができるかどうかを評価した。Myr-CBD7での前処置は、LAMP1との相互作用を、スクランブル対照ペプチドと比較して、eNOSについては防止したがCCR10についてはそうせず、一方、全タンパク質レベルは変わらなかった。共焦点顕微鏡法では、CCL28での3時間の刺激に先立つMyr-CBD7での前処理に続いて、eNOS局在化は内皮細胞の原形質膜上に残り、一方eNOSは、対照ペプチドで前処理した細胞において核周辺領域でLAMP1と共局在したということをさらに確認した。加えて、CCR10-GFPの共発現有り/無しのHEK/eNOS細胞において、Myr-CBD7での前処置によってNO産生は対照ペプチドと比較して有意に上昇した。これらのデータは、eNOSが、そのCCR10との相互作用に起因して、CCL28での内皮細胞の活性化に続いて内在化および分解を経るということを示唆する。しかしながら、Myr-CBD7ペプチドでのeNOS-CCR10相互作用の遮断は、細胞表面上のeNOSの、およびeNOSを活性化させる能力の維持につながり、およびNO産生を増大させる。
【0112】
例11:糖尿病db/dbマウスの背部皮膚創傷上へのMyr-CBD7の局所投与はeNOS/NOレベルおよび微小血管密度を向上させたことにより創傷治癒を改善した
WT C57BL/6マウスの真皮創傷上へのMyr-CBD7ペプチドの局所投与は、創傷治癒時間を減少させた。さらにまた、Myr-CBD7での処置は、eNOS、CD31、およびIL-4の発現を向上させただけでなく、それはまた創傷におけるCCL28およびIL-6レベルを低減させた。したがって、肥満および高血糖を呈したdb/dbマウスの、eNOS/NOレベルの回復および背部皮膚創傷治癒に対する、Myr-CBD7ペプチドの効果をさらに調査した。
【0113】
糖尿病db/dbマウスの背部皮膚上に2つの8mmの全層切除創傷を作り、および次いで、500μlの50μM Myr-CBD7ペプチドを局所的に適用した。図5に示されているとおり、Myr-CBD7ペプチド処置は、創傷治癒時間を有意に4日減少させた(第8、10および12日目の対照ペプチドで処置された創傷は第4、6、および8日目のMyr-CBD7で処置された創傷と夫々同等であった)。よって、Myr-CBD7は、第4日目(19%にて)から始まって第12日目(46%にて)まで継続して、対照ペプチドと比較して創傷サイズを有意に低減させた(図5)。ウェスタンブロット分析および亜硝酸塩測定によって夫々決定されたとおり、eNOS発現およびNO産生は、創傷において、Myr-CBD7ペプチドでの処置に続いて第12日目に有意に上昇した。共IPによって決定されたとおり、低減したCCR10-eNOS相互作用もまた、Myr-CBD7ペプチドでの処置に続いてマウス創傷において観察された(図6)。さらに、免疫組織化学は、向上した微小血管密度(CD31染色)を、Myr-CBD7処置に続いて第12日目におけるマウス創傷において示した。これらのデータは、Myr-CBD7ペプチド処置は、CCR10によるeNOS阻害および内在化を防止し、それによって糖尿病db/dbマウスにおける改善された創傷治癒に関連するNO産生および血管新生を円滑化させるということを示唆した。
【0114】
例12:Myr-CBD7ペプチドの局所投与に続いてのdb/dbマウスにおける炎症促進性(M1)から抗炎症性(M2)への創傷微小環境の変化
ELISA測定は、db/dbマウスの背部皮膚においてWTマウスと比較して、炎症促進性サイトカインIL-6、TNF-α、IL-1βの、ならびにVEGFのより高いレベルを示した。治癒プロセスにおける重要な役割を果たすことが知られている、db/dbマウスにおけるそれらの因子に、Myr-CBD7の局所投与が影響を与えるかどうかを調査した。第3日目(炎症フェーズ)および第12日目(増殖フェーズ)のマウス創傷を収集し、および、炎症性因子レベルをELISAおよびリアルタイムRT-PCRによって決定した。
【0115】
ELISA測定は、Myr-CBD7での処置に続いての第3日目のdb/dbマウス創傷において、有意に低減したCCL28および炎症促進性サイトカインIL-6、TNF-α、IL-1βのタンパク質レベルを実証した。タンパク質レベルと一致して、IL-6のmRNAレベルもまた低減した。加えて、db/db背部皮膚においてWTと比較して高かったCCR10のレベルもまた、Myr-CBDでの処置に続いて、第3日目に、対照ペプチドと比較して低減した。
【0116】
Myr-CBD7処置後の第12日目に、上昇したeNOS/NOのレベルが、向上した血管新生と同様にマウス創傷において観察された。さらにまた、Myr-CBD7処置は、VEGF、抗炎症性サイトカインIL-13およびIL-4(M2マーカー)の、ならびに、ECマーカーeNOS、CD31、Flk-1およびVE-カドヘリンの、マウス創傷における上昇したレベルにつながった。
【0117】
Myr-CBD7が、血管新生を刺激することによってdb/dbマウス上の背部皮膚創傷の治癒を促進させるかをさらに調査するために、レーザースペックルコントラスト分析(LASCA)によって検出されたとおりの血液灌流をモニタリングした。上のとおり、50μM Myr-CBD7または対照ペプチドを創傷へ投与し、および、第7日目に、創傷サイズが有意に低減したときには同じ創傷における血液灌流が有意に増大したことが観察された。これらの結果は、db/dbマウス皮膚創傷におけるeNOSに結合するCCR10の阻害が、創傷灌流を刺激して治癒を促進させるということを示唆する。
【0118】
総合すると、これらのデータは、CCR10-eNOS相互作用をMyr-CBD7ペプチドで遮断することが、炎症促進性(M1)から、血管新生、血液灌流、および創傷治癒改善を促進する抗炎症性(M2)への、創傷微小環境の切り替えにつながるeNOS/NOバイオアベイラビリティを上方制御したということを示唆する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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