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特許7636816使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法
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  • 特許-使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法 図1
  • 特許-使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20250219BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20250219BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20250219BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20250219BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20250219BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20250219BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20250219BHJP
   C22B 34/12 20060101ALI20250219BHJP
   C22B 25/06 20060101ALI20250219BHJP
   C22B 13/02 20060101ALI20250219BHJP
   C22B 19/30 20060101ALI20250219BHJP
   C22B 26/10 20060101ALI20250219BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B1/02
C22B3/22
C22B23/00
C22B47/00
C22B15/00
C22B21/00
C22B34/12 102
C22B25/06
C22B13/02
C22B19/30
C22B26/10
H01M10/54
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022555807
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 IL2021050299
(87)【国際公開番号】W WO2021186445
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】273457
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】500018608
【氏名又は名称】イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】at the Weizmann Institute of Science,PO Box 95,7610002 Rehovot,Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルボミルスキー、イゴール
(72)【発明者】
【氏名】カプラン、ヴァレリー
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-229481(JP,A)
【文献】特許第6651115(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第109652655(CN,A)
【文献】特表2018-528593(JP,A)
【文献】特開2018-197385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
H01M 10/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法であって、
(a)リチウムイオン二次電池を開封してカバーを取り外すステップと、
(b)粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池を得るべく、残留した前記使用済みリチウムイオン二次電池をある温度で粉砕するステップと、
(c)粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料から、任意のプラスチック及びテフロン(登録商標)マトリックスを分離するステップと、
(d)炭酸リチウムを含む粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るべく、分離された粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料を、CH、または、CH/空気により、リチウムを炭酸化させるある温度で処理するステップと、
(e)炭酸リチウムを含む粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料を、冷水を用いて処理し、任意でCOを用いて処理するステップと、
(f)炭酸リチウム濾液、並びに、コバルト、鉄、その他の有価金属、及び非金属不純物を含む残留物を得るべく、ステップ(e)で得られたスラリーを濾過するステップと、
(g)濾過によって酸リチウム沈殿物及び母液を得るべく、炭酸リチウム沈殿物を沈殿させるために前記炭酸リチウム濾液をある温度で加熱するステップと、
(h)有価金属インゴットを得るべく、ステップ(f)のコバルト、鉄、他の有価金属、及び非金属不純物を含む前記残留物をある温度においてフラックスを用いて処理するステップと、を有する、方法。
【請求項2】
ステップ(b)で得られた粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料が、2~10mm、または2~5mmの粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
残りの前記使用済みリチウムイオン二次電池を粉砕して粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るときのステップ(b)における前記温度が、20~50℃であるように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料からプラスチック及びテフロン(登録商標)マトリックスを分離するステップが、空気分離によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(g)で得られた前記炭酸リチウム沈殿物をさらに乾燥させることにより、乾燥炭酸リチウム粉末を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
CH、または、CH/空気を用いて実施される分離された粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料のステップ(d)の処理が、100~900℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記CH 空気混合物中のCHの分圧が、0.1%~100%v/vであるように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(g)の前記炭酸リチウム濾液のある温度による加熱が、80~120℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記他の有価金属を精錬するための前記フラックスが、シリカ、炭素、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、アルミナ、酸化鉄、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
コバルト、他の有価金属、鉄及び非金属不純物を含む前記残留物をステップ(h)のフラックスで処理するステップが、1200~1500℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(h)の前記有価金属インゴットが、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、スズ、鉛、亜鉛、ナトリウム、カルシウム、及びこれらの組み合わせから選択される非鉄金属または鉄インゴットを含む、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイス、特にリチウムイオン二次電池(LIB)などの充電式電池は、家電製品や電気自動車などにおいて多くの需要がある。LIBは、携帯電子機器の電源として最も一般的なものとなっており、重要である。LIBは、その容量や充電速度の向上に伴い、様々な用途に用いられるようになってきている。
【0003】
このような需要の高まりがLIBの生産を大幅に推し進め、それに伴い、使用済みLIBの量も大幅に増加した。これらの使用済みLIBは、適切なプロセスにより処理する必要がある。したがって、環境汚染を最小限に抑えつつ、バッテリコンポーネントを回収するための取り組みが進められている。
【0004】
通常、LIBから有価金属(コバルト、リチウム、ニッケル、マンガン、銅、アルミニウム、及び鉄など)を高い回収率で回収することは容易ではない。
【0005】
そのため、使用済みLIBから有価金属を効率的に回収する方法が求められている。使用済みLIBのリサイクルは、有価金属成分とその他の生成物とを分けることにより、環境保護を推進し、循環型経済を促進する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施形態において、本発明は、使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法であって、該方法は、
(a)リチウムイオン二次電池(LIB)を開封してカバーを取り外すステップと、
(b)所定の粒径を有する粒子を含む粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池を得るべく、残留した前記使用済みリチウムイオン二次電池を所定の温度で粉砕するステップと、
(c)粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料から、任意のプラスチック及びテフロン(登録商標)マトリックスを分離するステップと、
(d)炭酸リチウムを含む粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るべく、分離された粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料を、CO/CO/HOガス混合物、CH/空気ガス混合物、もしくは固体炭素、またはそれらの組み合わせにより、リチウムを炭化させる所定の温度で処理するステップと、
(e)炭酸リチウムを含む粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料を冷水で処理し、任意選択でさらにCOを用いて処理するステップと、
(f)炭酸リチウム濾液と、コバルト、鉄、その他の有価金属、及び、非金属不純物を含む残留物とを得るべく、ステップ(e)で得られたスラリーを濾過するステップと、
(g)炭酸リチウム沈殿物を沈殿させた後、濾過によって炭酸リチウム沈殿物及び母液を得るべく、前記炭酸リチウム濾液を所定の温度で加熱するステップと、
(h)有価金属インゴットを得るべく、ステップ(f)のコバルト、鉄、他の有価金属、及び、非金属不純物を含む前記残留物を所定の温度においてフラックスを用いて処理するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明とみなされる主題は、明細書の結論部分で特に指摘され、明確に主張されている。しかし、本発明は、構成及び操作方法の両方について、その目的、特徴及び利点とともに、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することにより、最もよく理解されるであろう。
【0008】
図1】使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法を示す模式図である。
図2】本発明のシステム(実験室のセットアップ)の一実施形態を示す模式図である。1.温度コントローラ付き炉、2.反応室(パイレックス(登録商標)社製)、3.試料または固体炭素を含む試料、4.COシリンダ、5.ガス洗浄ボトル、6.GC分析用ガスサンプラー、7.熱電対、8.追加温度モニタ、9.流量計、10.バルブ、11.COシリンダ、12.水蒸気発生装置、13.CHシリンダ。
【0009】
図を簡略化し、明確化するために、図に示された要素は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。例えば、一部の要素の寸法が、明確化のために他の要素に対して誇張して示されている場合がある。さらに、適切な場合には、対応または類似する要素を示すために、図間で同一の参照番号が繰り返し用いられることがある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明では、本発明を十分に理解するために、多数の具体的な説明を記載している。しかしながら、当業者は、本発明について、それらの具体的な説明がなくても実施できることを理解するであろう。他の例では、周知の方法、手順、及び構成要素は、本発明を不明瞭にしないように、詳細には説明していない。
【0011】
一実施形態において、本発明は使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法であって、該方法は、
(a)リチウムイオン二次電池を開封してカバーを取り外すステップと、
(b)所定の粒径を有する粒子を含む粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池を得るべく、残留した前記使用済みリチウムイオン二次電池を所定の温度で粉砕するステップと、
(c)粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料から、任意のプラスチック及びテフロン(登録商標)マトリックスを分離するステップと、
(d)炭酸リチウムを含む粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るべく、分離された粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料を、CO/CO/HOガス混合物、CH/空気ガス混合物、もしくは固体炭素、またはそれらの組み合わせにより、リチウムを炭化させる所定の温度で処理するステップと、
(e)炭酸リチウムを含む粒子状の前記使用済みリチウムイオン二次電池材料を冷水で処理し、任意でさらにCOで処理するステップと、
(f)炭酸リチウム濾液と、コバルト、鉄、その他の有価金属、及び非金属不純物を含む残留物とを得るべく、ステップ(e)で得られたスラリーを濾過するステップと、
(g)炭酸リチウム沈殿物を沈殿させた後、濾過によって炭酸リチウム沈殿物及び母液を得るべく、前記炭酸リチウム濾液を所定の温度で加熱するステップと、
(h)有価金属インゴットを得るべく、ステップ(f)のコバルト、鉄、他の有価金属、及び非金属不純物を含む前記残留物を所定の温度においてフラックスを用いて処理するステップと、を含む。
【0012】
ある実施形態では、「使用済みLIB」は、主に金属シェル、膜セパレータ、正極材(LiCoO、LiMn、LiFePO、LiTi12、LiNi0.3Al0.3Co0.3、もしくは他のリチウム金属酸化物)、アルミニウム箔、負極材(黒鉛)、銅箔及び有機電解質を含む使用済み/廃棄リチウムイオン二次電池を指す。本発明は、リチウムイオン二次電池から有価金属を回収及び/またはリサイクルする方法を提供する。そのような有価金属は、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、アルミニウム、イオン、チタニウム、スズ、鉛、亜鉛、ナトリウム、及びカルシウムを含んでいてもよい。本発明の方法及びシステムによって得られる有価金属の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる。例えば、LiCO、Co、TiO、Cu、アルミナ、酸化鉄、酸化ナトリウム、及び酸化カルシウムなどである。
【0013】
本明細書において、「他の有価金属」とは、ニッケル、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、スズ、鉛、亜鉛、ナトリウムまたはカルシウムのうちの少なくとも1つを指す。
【0014】
有価金属は金属インゴットとして得ることができ、他の製品の材料として用いることができる。
【0015】
一実施形態では、使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法は、リチウムイオン二次電池を開封し、電池のコーティング層又はシェルを除去し、曝露されたガスを除去するステップを含む。残留した使用済みLIBは、さらに本発明の方法において用いられる。
【0016】
LIBの開封は、Zheng X. A Mini-Review on Metal Recycling from Spent Lithium Ion Batteries. Engineering, 2018, 4, 3, 361-370、及び、Meshram P. Extraction of lithium from primary and secondary sources by pre-treatment, leaching and separation, A comprehensive review, Hydrometallurgy, 2014, 150, 12, 192-208に記載されているような当技術分野で公知の任意の公知技術によって行われる。これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
実施形態によっては、本発明の方法は、残留した使用済みリチウムイオン二次電池(LIB)を所定の温度で粉砕して、粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るステップを含む。他の実施形態では、粉砕するステップで採用される所定の温度は20~50℃である。他の実施形態では、粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料は、2~10mmの粒径を有する。他の実施形態では、2~5mmの粒径を有する。他の実施形態では、4~10mmの粒径を有する。
【0018】
実施形態によっては、本発明の方法は粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料から、任意のプラスチック及びテフロン(登録商標)マトリックスを分離するステップを含む。他の実施形態では、分離は空気によって行われ、当該分離は材料の異なる重力に基づいて行われる。他の実施形態では、分離は、Peukert W. Industrial separation of fine particles with difficult dust properties, Powder Technology, 2001, 118, 1-2, 8, 136-148に記載されているような、当技術分野で知られている他の任意の方法によって行われる。これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
ある実施形態において、本発明は、使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法を提供し、この方法は、炭酸リチウムを含む粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るために、リチウムを炭化させる所定の温度でCO/CO/HOガス混合物、CH/空気ガス混合物、固体炭素、またはそれらの組み合わせで分離した粒子状のリチウムイオン二次電池材料を処理するステップを含む。本明細書において、CO/CO/HO混合ガスとは、CO(g)、CO(g)及びHO(g)の混合ガスを指す。CH4/空気ガス混合物とは、CH、及び空気または酸素の存在下での混合ガスを指す。
【0020】
実施形態によっては、本発明の方法は、分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を、炭酸リチウムを含む粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るために、リチウムを炭化させる所定の温度でCO/CO/HOガス混合物、CH/空気ガス混合物、固体炭素、またはそれらの組み合わせで処理するステップを含む。他の実施形態では、100~900℃の温度で処理する。他の実施形態では、100~300℃の温度で処理する。他の実施形態では、100~200℃の温度で処理する。他の実施形態では、150~300℃の温度で処理する。他の実施形態では、150~250℃の温度で処理する。他の実施形態では、100~500℃の温度で処理する。他の実施形態では、600~900℃の温度で処理する。他の実施形態では、200~800℃の温度で処理する。他の実施形態では、100~700℃の温度で処理する。他の実施形態では、650~850℃の温度で処理する。他の実施形態では、700~900℃の温度で処理する。他の実施形態では、600~700℃の温度で処理する。他の実施形態では、700~800℃の温度で処理する。他の実施形態では、800~900℃の温度で処理する。
【0021】
実施形態によっては、本発明の方法は、炭酸リチウムを含む粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るために、リチウムを炭化させる所定の温度でCO/CO/HOガス混合物により分離した粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を処理するステップを含む。他の実施形態では、100~300℃の温度で処理される。他の実施形態では、100~200℃の温度で処理される。他の実施形態では、150~300℃の温度で処理される。他の実施形態では、150~250℃の温度で処理される。
【0022】
実施形態によっては、本発明の方法は、炭酸リチウムを含む粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るために、分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を、リチウムを炭化させる所定の温度でCH/空気ガス混合物を用いて処理するステップを含む。他の実施形態では、100~900℃の温度で処理する。他の実施形態では、100~300℃の温度で処理する。別の実施形態では、100~200℃の温度で処理する。別の実施形態では、150~300℃の温度で処理する。別の実施形態では、150~250℃の温度で処理する。他の実施形態では、100~500℃の温度で処理する。他の実施形態では、600~900℃の温度で処理する。他の実施形態では、200~800℃の温度で処理する。他の実施形態では、100~700℃の温度で処理する。他の実施形態では、650~850℃の温度で処理する。他の実施形態では、700~900℃の温度で処理する。他の実施形態では、600~700℃の温度で処理する。他の実施形態では、700~800℃の温度で処理する。他の実施形態では、800~900℃の温度で処理する。
【0023】
実施形態によっては、この発明の方法は、炭酸リチウムを含む粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るために、リチウムを炭化させる所定の温度で固体炭素を用いて分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を処理するステップを含む。他の実施形態では、600~900℃の温度で処理する。他の実施形態では、650~850℃の温度で処理する。他の実施形態では、700~900℃の温度で処理する。他の実施形態では、600~700℃の温度で処理する。他の実施形態では、700~800℃の温度で処理する。他の実施形態では、800~900℃の温度で処理する。
【0024】
ある実施形態では、この発明の方法及びシステムで使用されるCO/CO/HOガス混合物のCO/COの分圧は0.1~100である。他の実施形態では、CO/COの分圧は0.1~20である。他の実施形態では、CO/COの分圧は0.1~30である。他の実施形態では、CO/COの分圧は10~50である。他の実施形態では、CO/COの分圧は、1~30である。他の実施形態では、CO/COの分圧は50~100である。他の実施形態では、CO/COの分圧は30~100である。
【0025】
実施形態によっては、本発明の方法及びシステムで使用されるCO/CO/HO混合物のHOの分圧は、0.1%~50%v/vである。他の実施形態では、HOの分圧は、10%~50%v/vである。他の実施形態では、HOの分圧は、1%~30%v/vである。他の実施形態では、HOの分圧は、20%~50%v/vである。他の実施形態では、HOの分圧は、0.1%~10%v/vである。
【0026】
実施形態によっては、本発明の方法及びシステムで用いられるCH/空気ガス混合物のCHの分圧は、0.1%~100%v/vである。他の実施形態では、CHの分圧は、0.1%~50%v/vである。他の実施形態では、CHの分圧は、10%~50%v/vである。他の実施形態では、CHの分圧は、1%~30%v/vである。他の実施形態では、CHの分圧は、20%~50%v/vである。他の実施形態では、CHの分圧は、0.1%~10%v/vである。他の実施形態では、CHの分圧は、30%~100%v/vである。他の実施形態では、CHの分圧は、50%~100%v/vである。
【0027】
実施形態によっては、本発明の方法及びシステムで使用される炭素と分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料との重量比は、10:100~200:100である。他の実施形態では、炭素と分離された粒子の状使用済みリチウムイオン二次電池材料との重量比は、50:100~200:100である。他の実施形態では、炭素と分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料との重量比は、100:100~200:100である。他の実施形態では、炭素と分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料との重量比は、150:100~200:100である。他の実施形態では、炭素と分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料との重量比は、10:100~100:100である。他の実施形態では、炭素と分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料との重量比は、50:100~150:100である。他の実施形態では、炭素と分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料との重量比は、50:100~100:100である。他の実施形態では、炭素と分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料との重量比は、70:100~100:100である。他の実施形態では、炭素と分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料との重量比は、50:100~80:100である。
【0028】
実施形態によっては、本発明の方法及びシステムは、リチウム抽出を提供する。他の実施形態では、リチウム抽出の収率は、85~100%である。他の実施形態では、90~100%である。
【0029】
実施形態によっては、本発明の方法及びシステムであって、CH/空気ガス混合物による処理を含む方法は、リチウム抽出を提供する。他の実施形態では、リチウム抽出の収率は、90~100%である。
【0030】
実施形態によっては、本発明の方法及びシステムであって、CO/CO/HO混合物による処理を含む方法は、リチウム抽出を提供する。他の実施形態では、リチウム抽出の収率は、90~100%である。
【0031】
実施形態によっては、固体炭素を用いる本発明の方法及びシステムはリチウム抽出を提供する。他の実施形態では、リチウム抽出の収率は、90~100%である。
【0032】
実施形態によっては、固体炭素を用いる本発明の方法及びシステムは非鉄金属抽出を提供する。他の実施形態では、非鉄金属抽出の収率は99%以上である。他の実施形態では、非鉄金属抽出の収率は99.2%以上である。
【0033】
実施形態によっては、使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収するための本発明の方法及びシステムで用いられる固体炭素は、石炭、コークス、木炭、黒鉛、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0034】
他の実施形態では、固体炭素は石炭である。他の実施形態では、固体炭素はコークスである。他の実施形態では、固体炭素は木炭である。他の実施形態では、固体炭素は黒鉛である。
【0035】
実施形態によっては、CO/CO/HO混合物による処理の後、炭酸リチウムを含む粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料は、冷水を用いて処理され、次いで、さらにCOで処理される。実施形態によっては、CO/CO/HO混合物による処理の後、炭酸リチウムを含む粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料は、冷水のみによって処理される。
【0036】
実施形態によっては、固体炭素による処理の後、炭酸リチウムを含む粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料は、冷水を用いて処理される。
【0037】
冷水に対するLiCOの溶解度は低い。例えば、NiCOの溶解度が0.093gm/Lであるのに対して、25℃におけるLiCOの溶解度は、d金属(d-metals)の溶解度よりもはるかに高く、12.9gm/Lである。その一方で、LiCOの溶解度は、100℃で6.9m/Lまで低下する。
【0038】
実施形態によっては、分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を所定の温度でCO/CO/HO混合物またはCH/空気混合物を用いて処理すると、炭化反応が起こり、炭酸リチウムを含む粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料が得られる。
【0039】
化反応としては、以下のようなものが考えられる。
【0040】
【化1】
【0041】
実施形態によっては、分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を所定の温度で固体炭素を用いて処理することにより、炭化反応が起こり、炭酸リチウムを含む粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料が得られる。
【0042】
固体炭素を用いたときの炭化反応としては、以下のようなものが考えられる。
【0043】
【化2】
【0044】
(CO/CO/HO、CH/空気または固体炭素による処理の後、)冷水での処理によりスラリーが得られ、これを濾過することによって炭酸リチウム濾液と、コバルト、鉄、その他の有価金属、及び非金属不純物を含む残留物とが得られる。実施形態によっては、他の有価金属は、ニッケル、マンガン、銅、アルミニウム(すなわちアルミナ)、鉄(すなわち酸化鉄)、チタン、スズ、鉛、亜鉛、ナトリウム(すなわち酸化ナトリウム)、カルシウム(すなわち酸化カルシウム)またはそれらの組合せを含む。他の実施形態では、アルミニウムはアルミナである。他の実施形態では、鉄は、酸化鉄である。他の実施形態では、ナトリウムは、酸化ナトリウムである。他の実施形態では、カルシウムは酸化カルシウムである。
【0045】
他の実施形態では、非金属不純物は、有機バインダー、ハードカーボン、プラスチックケース、ポリマー箔及び電解質、シリカ、またはそれらの組み合わせを含む。
【0046】
実施形態によっては、炭酸リチウム濾液を所定の温度で加熱して炭酸リチウムの堆積した沈殿物を得た後、濾過することにより、炭酸リチウム沈殿物と母液とが得られる。
【0047】
他の実施形態では、炭酸リチウムの濾液は、80~120℃に加熱される。他の実施形態では、炭酸リチウムの濾液は、80~100℃に加熱される。他の実施形態では、炭酸リチウムの濾液は、80~90℃に加熱される。他の実施形態では、炭酸リチウムの濾液は、90~120℃に加熱される。他の実施形態では、炭酸リチウムの濾液は、100~120℃に加熱される。
【0048】
ある実施形態では、炭酸リチウム沈殿物をさらに乾燥させて、乾燥炭酸リチウム粉末を得る。他の実施形態では、本発明の方法によって調製された炭酸リチウム沈殿物または炭酸リチウム粉末は、セラミック、ガラス及び電池の分野で材料としてさらに使用される。
【0049】
炭酸リチウムは、セラミック、ガラス、及びリチウムイオン二次電池の製造に用いられる。炭酸リチウムは、弱火及び強火の両方のセラミック釉薬に共通する成分である。炭酸リチウムは、シリカ等の材料と低融点フラックスを形成する。炭酸リチウムから得られるガラスは、オーブンウェアに有用である。
【0050】
実施形態によっては、スラリーの濾過の後に得られたコバルト、鉄、他の有価金属、及び非金属不純物を含む残留物について、有価金属を精錬するための所定の温度でフラックスを用いて処理することにより、金属インゴットが得られる。他の実施形態では、フラックスは、シリカ、炭素、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、アルミナ、酸化鉄、またはそれらの組み合わせを含む。
【0051】
フラックスとは、化学的な洗浄剤、流動化剤、または精製剤である。フラックスは、抽出冶金と金属接合の両方において用いられる。
【0052】
精錬工程で、金属から化学的不純物を取り除き、スラグを溶融温度でさらに液体化する目的で、精錬炉またはキュポラの内容物にフラックスが加えられる。スラグは、灰やフラックスなどの不純物が混ざった液体である。
【0053】
フラックスの役割は2つある。1つは、金属表面の酸化物を溶解して金属になじみやすくすることであり、もう1つは、高温の金属表面をコーティングして酸素による酸化を防ぐことである。
【0054】
他の実施形態において、金属インゴットは、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、アルミニウム、チタニウム、チタン、スズ、鉛、亜鉛、ナトリウム、カルシウム、及び、それらの組み合わせを含む非鉄金属または鉄インゴットから構成される。
【0055】
他の実施形態において、アルミニウムはアルミナである。他の実施形態において、ナトリウムは酸化ナトリウムである。他の実施形態において、カルシウムは酸化カルシウムである。
【0056】
他の実施形態において、フラックスを用いた処理は1200~1500℃の温度で実施される。他の実施形態において、フラックスを用いた処理は1200~1300℃の温度で実施される。他の実施形態において、フラックスを用いた処理は1300~1400℃の温度で実施される。他の実施形態において、フラックスを用いた処理は1300~1500℃の温度で実施される。他の実施形態において、フラックスを用いた処理は1400~1500℃の温度で実施される。
【0057】
実施形態によっては、本発明の方法によって調製された金属インゴットは、金属製造の材料及び各種合金のドーパントとして用いられる。
【0058】
本明細書の他の実施形態において、「金属インゴット」は、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、アルミニウム(すなわち、アルミナ)、チタニウム、スズ、鉛、亜鉛、ナトリウム(すなわち、酸化ナトリウム)、カルシウム(酸化カルシウム)、及びこれらの組み合わせから選択される非鉄金属または鉄インゴットを含む/指す。他の実施形態において、アルミニウムはアルミナである。他の実施形態において、ナトリウムは、酸化ナトリウムである。他の実施形態において、カルシウムは、酸化カルシウムである。
【0059】
実施形態によっては、本発明は使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収するシステムを提供し、該システムは以下を含む。試料を含む反応室と、試料を加熱する炉と、COシリンダ、COシリンダ、水蒸気発生装置、及び/またはCHシリンダと、を有し、試料は、本発明の方法に記載される分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を含み、CO、CO、及び水蒸気またはCHが、粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るために、反応室に供給されることを特徴とする。
【0060】
実施形態によっては、本発明は使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収するシステムを提供し、該システムは以下を含む。固体炭素及び試料を含む反応室と、試料を加熱する炉と、を含み、試料は、本発明の方法に記載される分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を含み、固体炭素及び試料が、リチウム炭素を含む粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るために、600~900℃の温度で加熱されることを特徴とする。
【0061】
他の実施形態では、本発明のシステムは試料を含み、試料は粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を含む。他の実施形態では、分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料は、所定の粒径を有する粒子を含み、粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料から任意のプラスチック及びテフロン(登録商標)マトリックスを分離した粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を得るために、所定の温度で使用済みLIBを粉砕することにより調製される。
【0062】
実施形態によっては、該システムは図2に示されている。
【0063】
図2は本発明のいくつかの実施形態によるシステムの模式図である。図2は、使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収するときに用いるシステムの模式図であり、非限定的に、反応室2と接触する温度コントローラ1付き炉を示している。反応室は、試料3(及び任意選択で固体炭素)を含む。試料は、本発明の方法に記載された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を含む。試料はCO/CO/HO混合物によって処理される。ここで、COシリンダ4、COシリンダ11、CHシリンダ14、及び水蒸気発生装置12が反応室に接続されており、試料にCO/CO/HOまたはCH空気混合物が供給される。システムは、反応室に接続されてガスを中和するガス洗浄ボトル5と、ガス洗浄ボトル5に接続され、混合ガスのGC分析用ガスサンプラー6と、試料に取り付けられてその温度を測定する熱電対7と、任意選択により試料に取り付けられてその温度を測定する追加の温度モニタ8と、用いられるCO及びCOシリンダに接続されてその分圧を決定する流量計9と、流量計9の前工程でCO及びCOシリンダに接続されてガスの流れを決定するバルブ10とをさらに含む。
【0064】
反応室2に接触している温度コントローラ1付き炉は、CO/CO/HO混合ガスを用いた処理において、反応室を100~900℃に加熱するように構成されている。他の実施形態では、100~200℃に加熱するように構成されている。他の実施形態では、100~300℃に加熱するように構成されている。他の実施形態では、150~300℃に加熱するように構成されている。他の実施形態では、150~250℃に加熱するように構成されている。他の実施形態では、CH空気混合物及び固体炭素を用いた処理は、600~900℃で行われる。
【0065】
実施形態によっては、本発明は、本発明のシステムを用いることにより、使用済みリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法を提供する。
【0066】
以上、本発明が好ましい形態の観点から説明してきたが、本発明の属する技術分野の当業者においては、本開示の基づいている構想は、本発明のいくつかの目的を遂行するための他の構造システム及びプロセスの設計のための基礎として容易に利用され得ることを理解されたい。
【0067】
【0068】
例1
【0069】
リチウムイオン二次電池のリチウム含有部材に対して、CO/CO/HOまたはCH/空気ガス混合物や固体炭素による炭化試験と、得られた生成物の冷水処理とを実施した。リチウムイオン二次電池のリチウム含有部材の曝露を、100~900℃で実施した。
【0070】
材料
【0071】
実験には、チタン酸ナトリウム(LiTi12)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、リン酸リチウム(LiFePO)、ニッケルマンガンコバルト酸化物リチウムNiMnCo(x+y+z=1)、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物リチウムNiCoAl(x+y+z=1)とリン酸リチウム(LiPO)で構成したモデル混合物を用いた。これらの物質を、正極または負極として、様々な種類のリチウムイオン二次電池に用いた。
【0072】
実験手順
【0073】
CO/CO/HOまたはCH/空気ガス混合物を用いたモデル混合物の炭化を、100~900℃の温度に制御された実験用炉で行った。試験時間は2時間であった。実験室のセットアップを図2に示す。
【0074】
モデル混合物の粉末を炉またはクオーツボートに収容した。加熱の前に、クオーツリアクタを100mL/分の窒素フロー下で洗浄し、次いで、再び100mL/分の窒素フロー下で所定の温度で炉を加熱した。反応室が所定の温度に達した後、CO/CO/HOまたはCH/空気ガス混合物を反応室に供給した。上記の分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を所定の温度で炭化する際に起こり得る化学反応は以下の通りである。
【0075】
【化3】
【0076】
窒素フロー下での冷却の後、パイレックス(登録商標)社製ガラスボートを炉から除去した。最終成果物の重量を量り、冷水で処理した。その後、処理済みのスラリーを濾過した。濾液をICP MSで分析した。各試験でのリチウム収支を計算した。各リチウム収支から、濾液へのリチウム抽出率を評価した。
【0077】
結果
【0078】
表1及び2に結果を示した。
【0079】
表1.CO/CO/HOによる炭化‐冷水処理試験結果
【0080】
【表1】
【0081】
混合物1は25%のLiTi12、25%のLiCoO、25%のLiFePO、25%のLiPOから構成される。
混合物2は20%のLiTi12、40%のLiCoO、20%のLiFePO、20%の LiPOから構成される。
【0082】
表2.CH及び冷水処理による炭化試験結果
【0083】
【表2】
【0084】
例2
【0085】
リチウムイオン二次電池のリチウム含有部材を用いて、得られた生成物の固体炭素及び冷水処理による炭化試験を実施した。リチウムイオン二次電池のリチウム含有部材の曝露を、600~900℃の温度で実施した。600℃以下では、炭素還元能力の低下により、リチウム及び非鉄金属(コバルト、ニッケル)の抽出量が急激に減少する。900℃以上の温度で焼結すると、材料の気孔率が低下するため、リチウム及び非鉄金属(コバルト、ニッケル)の抽出量が急激に減少した。
【0086】
材料
【0087】
実験には、コバルト酸リチウム(LiCoO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、ニッケルマンガンコバルト酸化物LiNiMnCozO(x+y+z=1)、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物LiNiCoAl(x+y+z=1)のモデル混合物を用いた。これらの物質を、正極及び負極として、様々な種類のリチウムイオン二次電池に用いた。
【0088】
実験の手順
【0089】
固体炭素を用いたモデル混合物の炭化を、温度制御された実験室炉で600~900℃で行った。試験時間は2時間であった。実験室のセットアップを図2に示した。
【0090】
固体炭素を含むモデル混合物の粉末をアルミナボート内の炉に配置した。加熱の前に、100mL/分の窒素フロー下でクオーツ反応室を洗浄し、次いで、再び100mL/分の窒素フロー下で炉を所定の温度で加熱した。反応室が所定の温度に達した後、窒素を反応室に供給した。分離された粒子状の使用済みリチウムイオン二次電池材料を所定温度で炭化する際に起こりうる化学反応は以下の通りである。
【0091】
【化4】
【0092】
窒素フロー下での冷却の後、炉からアルミナボートを除去した。最終成果物の重量を量り、冷水処理した。その後、処理後のスラリーを濾過した。濾液及び沈殿物をICP MSを用いて分析した。各試験のリチウム、コバルト、及びニッケルの割合を算出した。各割合から、濾液に対するリチウム抽出率と、沈殿物に対するコバルト及びニッケル抽出率とを評価した。
【0093】
結果
【0094】
結果を表3に示した。
表3、固定炭素を用い、冷水処理を行った炭化試験の結果
【0095】
【表3】
【0096】
本発明のある特徴を本明細書に例示し、説明したが、当業者であれば、多くの修正、置換、変更、及び等価物に想到するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神に含まれるすべてのそのような修正及び変更をカバーすることを意図していることを理解されたい。
図1
図2