(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】携帯端末の外観検査の方法と装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20250219BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
G01N21/84 C
G01N21/84 E
G01N21/88 Z
(21)【出願番号】P 2023148959
(22)【出願日】2023-09-14
【審査請求日】2024-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】519280025
【氏名又は名称】株式会社CDRエコムーブメント
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】関口 利宏
(72)【発明者】
【氏名】石坂 正宏
(72)【発明者】
【氏名】原田 望
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205808952(CN,U)
【文献】特表2022-525855(JP,A)
【文献】国際公開第2021/056274(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0295494(US,A1)
【文献】特開2017-040510(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111833303(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G01B 11/00-11/30
G06T 7/00- 7/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像のため配置される端末の表面又は裏面に対面させて配置されるカメラによって、当該端末の左右両側面と、上面と、上位の左右の角部の夫々の面に対応させ且つ前記カメラの撮影レンズの光軸に対し反射面を外側に傾斜させて配置したミラーに写った当該端末の左右両側面と、上面と、上位の左右の角部の各写像を撮像すると同時に当該端末の表面又は裏面を撮像し、この端末の表面又は裏面と、この端末の左右両側面、上面、及び上位の左右の角部との撮像データを前記カメラで取得すること、及び前記撮像の後、配置されている前記端末を、その上下方向に関して反転させ、この姿勢の端末を前記カメラで撮像することにより、前記端末の裏面又は表面、及びこの端末の下面と下位の左右の角部の撮像データを取得することを特徴とする端末の外観検査の方法。
【請求項2】
前記ミラーの傾斜角は、前記カメラのレンズの光軸に関して外側に向けた略40度から60度の間で調整し設定した角度である請求項1の外観検査方法。
【請求項3】
前記端末は、前記カメラの周囲に設けた照明装置により照明して撮像する請求項1又は2の外観検査方法。
【請求項4】
前記端末の配置、及び反転は人手によって行う請求項1又は2の外観検査方法。
【請求項5】
端末を水平姿勢で配置できる載置台を備えるベース盤と、該ベース盤に前記載置台を囲むように立上げて設けた架設枠部と、該架設枠部の上部にレンズを前記端末に正対させて配置したカメラと、照明光を前記端末に向けて照射するように前記カメラの周囲に配置した照明装置と、前記載置台に水平姿勢で配置される端末に対し、左右両側面、上面、上位の左右の角部の各面の夫々に対応する部位に、前記カメラのレンズの光軸に関し反射面を外向きに傾斜させて前記
ベース盤に夫々に設けたミラーと、前記架設枠部に配設して当該架設枠部を暗室状に囲む遮光幕部材とを備え、前記載置台に水平姿勢で配置した端末に対し、前記照明装置を起動して照明光を制御しつつ前記カメラで当該端末の表面又は裏面と、左右両側面、上面、及び上位の左右角部の前記ミラーに写った夫々の像とを撮像し、前記載置台上で上下方向に関し反転させた前記端末を前記カメラで撮像することを特徴とする端末の外観検査装置。
【請求項6】
前記ミラーの傾斜角は、前記カメラのレンズの光軸に関して外側に向けた略40度から60度の間で調整し設定した角度である請求項5の外観検査装置。
【請求項7】
前記ベース盤の上面と前記
遮光幕部材の内面は、光乱反射面に形成している請求項5又は6の外観検査装置。
【請求項8】
前記
架設枠部の前面には、モニタ機能を備えるタッチパネルを前記カメラと前記照明装置の制御部の入出力装置として設けた請求項5又は6の外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やタブレットなどの携帯端末(以下、「端末」という)の外観検査に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みのスマートフォン等の端末は、販売店などで下取りや買取りにより回収された後、データ消去や機能検査、外観検査や必要なパーツ交換などの再生工程を経ていわゆる中古スマホ等と称される商品として市場に供給されている。
【0003】
再生される端末の市場価格は、メーカー、年式や型式、性能などによる価格要素のほか、機能の良否や外観の状態が価格の決定に大きな割合を占めることが知られている。
【0004】
このため中古端末の再生工程においては、機能検査や外観検査が重要視されており、専用の自動検査装置などが提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1,2などで提案されている専用の自動検査装置は、再生工場で使用される自動式であるため、装置の構造が複雑で大型になり、設備も大がかりになるため、販売店等の店頭に置いて利用できるものではなかった。
【0006】
特に、従来の中古端末の外観検査では、端末の外観をカメラで撮像し、その撮像データをグレード判定のための基準データに参照して外観グレードを判定している。
【0007】
グレード判定のためにカメラで撮像する端末の外観は、当該端末の表面、裏面、左側面、右側面、上面、下面、4つの角部の合計10箇所(10面)に及ぶため、撮像システムが備えるカメラが一台であると、端末をロボットハンドなどの把持手段に保持させて、当該端末を水平姿勢から、180度反転、正、逆方向に90度半回転、上下方向で倒立回転といった具合に姿勢を変更させる必要があった。このような姿勢変更の必要性は、新規に製造された端末の外観検査においても同様である。
【0008】
しかし、端末の姿勢を変更するための機構や、姿勢を変更させる操作や動作にはそれなりの時間を要するため、端末の10面の撮像データを取得するには、結果的に時間が掛かり過ぎ、端末の外観検査のための撮像データの取得が効率的、経済的になし得ていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2022-539909号公報
【文献】特表2022-539912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、中古の端末は勿論のこと新規に製造された端末の外観検査のための撮像データを合理的に取得する方法とそのための装置を提供することを課題とする。
なお、本明細書では、継長矩形の端末を水平に置いた状態において、当該端末の左右方向を左右、上下方向を前後、垂直方向を上下とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明方法の構成は、撮像のため配置される端末の表面又は裏面に対面させて配置されるカメラによって、当該端末の左右両側面と、上面と、上位の左右の角部の夫々の面に対応させ且つ前記カメラの撮影レンズの光軸に対し反射面を外側に傾斜させて配置したミラーに写った当該端末の左右両側面と、上面と、上位の左右の角部との、各写像を撮像すると同時に、当該端末の表面又は裏面を撮像し、この端末の表面又は裏面と、この端末の左右両側面、上面、及び上位の左右の角部との撮像データを前記カメラで取得すること、及び前記撮像の後、配置されている前記端末を、その上下方向に関して反転させ、この姿勢の端末を前記カメラで撮像することにより、前記端末の裏面又は表面、及びこの端末の下面と下位の左右の角部の撮像データを取得することを特徴とする。
【0012】
上記方法において、撮像のために配置される端末の姿勢は、水平、又は垂直、或はこれらの2つの姿勢の中間の姿勢を選択することができる。以下に述べる本発明装置では、端末を水平姿勢で配置する装置について説明する。
【0013】
すなわち、上記の本発明方法を実施する本発明装置の構成は、端末を水平姿勢で配置できる載置台を備えるベース盤と、該ベース盤に前記載置台を囲むように立上げて設けた架設枠部と、該架設枠部の上部にレンズを前記端末に正対させて配置したカメラと、照明光を前記端末に向けて照射するように前記カメラの周囲に配置した照明装置と、前記載置台に水平姿勢で配置される端末に対し、左右両側面、上面、上位の左右の角部の各面の夫々に対応する部位に、前記カメラのレンズの光軸に関し反射面を外向きに傾斜させて前記ベース台に夫々に設けたミラーと、前記架設枠部に配設して当該架設枠部を暗室状に囲む遮光幕部材とを備え、前記載置台に水平姿勢で配置した端末に対し、前記照明装置を起動して照明光を制御しつつ前記カメラで当該端末の表面又は裏面と、左右両側面、上面、及び上位の左右角部の前記ミラーに写った夫々の像とを撮像し、前記載置台上で上下方向に関し反転させた前記端末を前記カメラで撮像することを特徴とする。
【0014】
ここで、前記カメラは、通常フィルム用のカメラでもよいが、広角レンズを装着したデジタルカメラが、撮像データの取扱いや処理の上で好適である。また、ミラーのカメラ光軸(垂直)に対する外向きの傾きは、前記光軸から略45度傾いた角度が好ましい。さらに、端末の表面を上向きにした姿勢での撮像、及び端末の裏面を上向きにした姿勢での撮像は、いずれの面に関しても少なくとも2回の撮像を実行して端末各面の撮像データを取得することが判定精度を確保する上で望ましい。なお、以下の説明においては、カメラはデジタルカメラとして説明する。
【0015】
上記の本発明装置において、端末のカメラによる撮像では、例えば、載置台に液晶等による画面(表面)を上向きにして置かれた端末を撮像すると、前記載置台の左右両側と上方と上位の左右角部を囲むように配置したミラーの作用で、当該端末の左右両側面と上面と上位の左右角部の撮像データが得られると共に、端末表面の撮像データが得られる。この端末の裏面と下面と下位の左右角部については、未だ前記カメラによる撮像はなされていない。
【0016】
そこで、前記端末の裏面と下面と下位の左右の角部を前記カメラで撮像するために、当該端末を載置台から手で持ち上げ、端末の上下方向に関して180度回転させ、この姿勢で再度載置台の上に置く。こうすると、端末が裏返されて裏面を上向きにした端末が載置台の上に置かれるから、未撮像であったこの端末の下面が上位のミラーに対面すると共に、下位の左右の角部が上位の左右の角部のミラーに対面することになる。よって、前記カメラでこの向きの端末を撮像すると、端末の裏面と、下面と、下位の左右の角部との撮像データが得られる。なお、この端末裏面の撮像においても、この端末の左右両側面の撮像データが得られるが、この左右両側面の撮像データを利用するか否かは任意である。
【0017】
デジタルカメラによる撮像では、端末各面の画像が当該デジタルカメラの受光面(CCD等)によって電気信号に変換されてLSI等の処理回路で処理され、デジタル画像ファイルとして記録媒体に保存される。この場合、端末各面の夫々の画像データは、受光面上での場所がデジタルデータで特定されているから、1回目の撮像で端末の表面又は裏面、左右の両側面、上面、上位の左右角部の6面の画像データが得られる。
【0018】
上記のようにして1回目の撮像で表側に関する撮像データが取得された端末は、載置台上で端末の上下方向に関して反転させると、裏面が上向きになり、かつ下面が元の上面の位置に来るから、この裏返し姿勢で前記カメラにより撮像すると、この撮像で、端末の裏面と、下面と、下位の左右角部の4面即ち、端末の裏側に関する撮像データを取得できる。
【0019】
このように本発明方法を実行する装置によれば、載置台にセットした端末を、2回の撮像操作で、この端末の10面(表面、裏面、左右の両側面、上、下両面、上下4箇所の角部)の撮像データを取得することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、撮像のため配置される端末の表面又は裏面に対面させて配置されるカメラによって、当該端末の左右両側面と、上面と、上位の左右の角部の夫々の面に対応させ且つ前記カメラの撮影レンズの光軸に対し反射面を外側に傾斜させて配置したミラーに写った当該端末の左右両側面と、上面と、上位の左右の角部の各写像を撮像すると同時に当該端末の表面又は裏面を撮像し、この端末の表面又は裏面と、この端末の左右両側面、上面、上位の左右の角部との撮像データを前記カメラで取得すること、及び前記撮像の後、配置されている前記端末を、その上下方向に関して反転させ、この姿勢の端末を前記カメラで撮像して、前記端末の裏面又は表面、及びこの端末の下面と下位の左右の角部の撮像データを取得することにより、カメラによる少なくとも2回の端末の撮像操作と、その向きでの当該端末の上下方向での反転操作だけで、この端末の表面、裏面、左右両側面、上下両面、4つの角部の10面(10箇所)の撮像データを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明装置の一例の構成を説明するための透視的斜視図。
【
図2】
図1の本発明装置の仮設枠体の上半側の構成(カメラと照明装置の配置)を説明するための平面図。
【
図3】
図1の本発明装置におけるベース盤上の構成(載置台とミラーの配置)を説明するための平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図を参照して本発明の実施の形態例について説明する。
図において、1は平面から見て正方形に近い横長の長方形状のベース盤である。ベース盤1の略中心位置には、端末Tを載せる載置台2が設けられている。
【0023】
ここで、載置台2は、その下面がベース盤1の上面から少しの距離a(一例として20~30mm程度)浮いた高さで、一般的な端末Tの外形よりも一回り程度小さい形状を有するものである。また、前記ベース盤1においては、左右方向が左、右、前後方向が前、後、上下方向が上、下になる。
【0024】
本発明において、上記ベース盤1と載置台2の平面形状は、四角形に限られるものではなく、それ以外の平面多角形状、或いは円形、長円形、楕円形などの形状であってもよい。
【0025】
3は、ベース盤1の四隅に立設した4本の柱状体で、隣接する各柱状体3は、上端において梁部材4で結合されると共に、各柱状体3の中間部がベース盤1正面の手前側を除いて、互いに中間梁5によって結合されて仮設枠体Fbを構成している。なお、仮設枠体Fbの正面側であっても上半側には中間梁5が設けられている。また、仮設枠体Fbは、平面から見て4本の柱状体3に関し、前面を除いて隣り合う柱状体3,3の間に張ったパネル体(図示せず)と、仮設枠体Fb正面の左右の柱状体3,3の上半側に張設したパネル体(図示せず)を設けたものもある。パネルタイプの場合、カメラ6と照明装置7~10を配置する上部ステージUs用の中間梁5を除き他の中間梁5は不要である。
【0026】
上記仮設枠体Fbにおいて、上半側の中間梁5で囲まれた部位に形成した上部ステージUsには、広角レンズ6Lを備えるカメラ(デジタルカメラ)6と、このカメラ6を囲む左右側と前後側に、複数LEDを光源とする4個の照明装置7,8と同9,10とが配置されている。
【0027】
ここで、カメラ6は広角レンズ6Lを備えた市販のデジタルカメラであり、また左右の照明装置7,8は、前後の照明装置9,10よりも長い形状で、光源のLED数が多い形に構成されている。これは、照明する端末Tの平面形状(縦長長方形)に沿うためである。
【0028】
本発明における上記のカメラ6、及び照明装置7~10の性能、大きさ、配置形態などは一例であって、これらに限定されるものではない。ここで、カメラ6は、そのオン、オフ、絞り、ピント、シャッタ速度の夫々が自動設定可能であって遠隔操作できるものであり、照明装置7~10も、そのオン、オフ、調光なども自動設定可能であって遠隔操作できるものである。図示しないが、カメラ6と照明装置7~10が配置されている上部ステージUsには、カメラ6と照明装置7~10の夫々の機能に関する制御部が配置されることもある。本発明では、カメラ6と照明装置7~10の動作制御や載置台2に置かれる端末Tの位置の指示などを、パーソナルコンピュータ(以下、PCという。)を含む別設の制御部で行うようにしてもよい。前記制御部への入力、制御状態の表示などを行うモニタ機能を備えるタッチパネルTPが、制御部(又はPC)の入出力部として仮設枠体Fbの正面上半側に配置されている。
【0029】
一方、下部ステージBsを形成するベース盤1の載置台2の周囲には、載置台2に置かれた端末Tの左右の側面と、上面と、上位の左右の角部とに、夫々に対応させて、左右のミラー11,12、上位のミラー13、左右の角部のミラー14,15が設置されている。
【0030】
左右のミラー11,12は、載置台2に置かれた端末Tの左右の側面に対応する位置で、当該ミラー11,12の反射面(鏡面)が、夫々に、前記カメラ6のレンズ6Lの光軸に対し略40度から60度の間で調整し設定した角度で、左右の外側に傾いた姿勢で配置されている。
【0031】
上面のミラー13は、載置台2に置かれた端末Tの上面に対応する位置で、当該ミラー13の反射面(鏡面)が、カメラ6のレンズ6Lの光軸に対して略40度から60度の間で調整し設定した角度で、上方の外側に傾いた姿勢で配置されている。
【0032】
上位の左右の角部に対するミラー14,15は、載置台2に置かれた端末Tの上位の左右の角部に対応する位置で、当該ミラー14,15の反射面(鏡面)が、カメラ6のレンズ6Lの光軸に対して略40度から60度の間で調整し設定した角度で、上位角部の外側に傾いた姿勢で配置されている。
ここで前記ミラー11~15の傾斜角は、一例として端末Tの各部と対応する各ミラーの水平距離やカメラ6の広角レンズ6Lの画角の大きさ等を考慮して設定する。
図1に示したミラー11~15の配置は、平面視略逆U字状であったが、ミラー11~15の配置は、横向き略U字状や正立略U字状であってもよい。この場合照明装置7~10の配置と載置台2の向きをミラー11~15の配置の向きに沿って変更する。
【0033】
上部ステージUsにカメラ6と照明装置7~10を備え、下部ステージBsに載置台2とミラー11~15を備えた架設枠体Fbには、前面の下半を除く3側面と天井に遮光部材Bclを設けると共に、前面上半に、ここでは上下方向での開閉式の遮光部材Bc2を設けて、架設枠体Fbの内部を前面下半を開口して略閉鎖された撮像空間に形成している。遮光部材Bc2開閉方向は任意である。なお、遮光部材Bc2の前面に、前記タッチパネルTPを設ける。タッチパネルTPを遮光部材Bc2として設けることもできる。また、遮光部材Bc1,Bc2の材質もパネル状の硬質材から布状の軟質材まで任意に選べる。ここで、撮像区間の内部は、光乱反射面であることが望ましい。照明対象の端末Tをムラなく照明するためである。
端末Tの載置台2への載置、反転、取出しなどの操作は、開閉式の遮光部材Bc2がある場合には、これを開けて行い、撮像時にはこの遮光部材Bc2を閉じて撮像を行う。撮像空間の前面下半側が開口されたタイプでは、遮光部材Bc2の開閉はない。撮像空間内の撮像状態は、カメラ6の動画機能で外部モニタとしてのタッチパネルTPに写し出される。
【0034】
本発明では、前記の各ミラー11,12、同13、同14,15を、上記の各傾斜角を与えて載置台2の周囲に配置したから、載置台2に水平姿勢で表面を上向きにして端末Tが置かれたとき、この端末Tを上部ステージUsのカメラ6で狙って(ピントを合わせ)てシャッタを切ると、このカメラ6の受光面の画角には、画角のセンターに当該端末Tの表面の撮像(表面画像)が受光されると同時に、この表面画像の左側と右側に、端末Tの左側面と右側面の夫々の画像が受光され、前記表面画像の上方に端末Tの上面の画像が受光され、前記表面画像の上位の左右に端末Tの上位の左右角部の画像が受光される。
【0035】
即ち、本発明装置では、カメラ6のワン・ショットで端末Tの表面 (又は裏面)と、左右両側面と、上面と、上位の左右の角部との撮像データ、同時に取得することができる。
【0036】
次に、上記のようにして端末Tの表側に関する撮像データが得られたら、当該端末Tを載置台2の上で端末の上下方向に関して反転させ、この姿勢でカメラ6で撮像すると、この端末Tの裏面と、下面と、下位の左右の角部の撮像データを得ることができる。
【0037】
本発明では、上記の2ショットで、端末Tの表面、裏面、左右の両側面、上下両面、4隅の角部の合計10面の撮像データを取得することができる。よって端末の外観検査に必要な撮像データを容易かつ簡単な操作で得ることができる。
【0038】
実際には、照明装置7~10の照度を適宜変更して、端末Tの表側に関して少なくとも2ショットの撮像を行い、これに続けてこの端末Tを反転させ端末Tの裏側に関して少なくとも2ショットの撮像を行うことが望ましい。端末Tの外観についての判定精度を上げるためである。
【0039】
上記撮像によって得られる端末Tの10面の撮像データは、図示しないグレード判定部に送られ、そこで各撮像データの取扱いマニュアルに従ってグレード判定用の基準データに参照されこの端末Tの外観グレード判定に用いられる。
【0040】
以上に説明した本発明装置により実際に行う端末T外観検査の手順と形態の例について、ステップS1~ステップS9により説明する。
S1;端末Tは表面に付いた指紋をクリーニングペーパ等で払拭する。指紋が微細キズのように撮像されるのを防ぐためである。
S2;当該端末Tの管理番号(又はスキャンしたQRコード(登録商標)等)をタッチパネルTP(又はPCのキーボード)から制御部に入力する。
S3;端末の外見上の形式(ベゼルの有無、有る場合の色が白か黒か)とサイズの大小により照明装置の出力の制御、タッチパネル画面上の載置台に表示する載置位置の赤枠マーカの大きさ選択をする。
S4;カメラ6を起動。タッチパネルTPにチェック項目(クリーニング済か、電源オフか)を表示。該当項目を確認してチェック済を押す。
S5;チェックが済むとタッチパネルTPに表示された載置台上に赤枠マーカが表示され、カメラ6のシャッタ動作がカウントダウンされる(5秒間、設定変更自在)。
S6;ここで端末Tの表(画面側)を上にしてモニタを見ながら載置台2の赤枠マーカの上に端末Tを置く。
そうするとカメラ6のシャッタが切れて撮像が実行される。この撮像で端末Tの表面、左右の側面、上面、上位の左右角部の撮像が完了する。
S7;端末Tの裏面に関しても上記S4,S5を実行して端末Tの裏面を上にして載置台に載せ撮像すると、裏面、左右の側面、下部面、下位の左右の角部の撮像が完了する。
S8;上記のようにして取得される端末Tの表面、裏面、左右側面、上下両面、四隅の角面の合計10面の撮像データが、前記PC内の又は別設のグレーディング判定部に送られてグレーディングが判定され、判定結果が保存されると共にタッチパネルTPのモニタに表示される。
S9;ここで端末Tは載置台2から取り出されて外観検査を終了する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は以上の通りであって、端末の外観検査のための撮像データを、簡潔な構造の装置で簡単な操作によって容易かつ短時間で取得することができるから、端末の外観検査の合理化、自動化に大きく寄与することができる。
【符号の説明】
【0042】
T 端末
Bs 下部ステージ
1 ベース盤
2 載置台
Fb 架設枠体
3 柱状体
4 梁部材
5 中間梁
Us 上部ステージ
6 カメラ
6L 広角レンズ
7~10 照明装置
11~15 ミラー
Bcl,Bc2 遮光部材
TP タッチパネル
【要約】
【課題】
端末の外観検査のための撮像データを合理的に取得する方法とそのための装置を提供する。
【解決手段】
端末Tの表面又は裏面に対面させて配置されるカメラ6によって、当該端末Tの左右両側面と、上面と、上位の左右の角部の夫々の面に対応させ且つ前記カメラ6の撮影レンズ6Lの光軸に対し反射面を外側に傾斜させて配置したミラー11~15に写った当該端末Tの左右両側面と、上面と、上位の左右の角部の各写像を撮像すると同時に当該端末Tの表面又は裏面を撮像し、この端末Tの表面又は裏面と、この端末Tの左右両側面、上面、及び上位の左右の角部との撮像データを前記カメラ6で取得すること、及び前記撮像の後、配置されている前記端末Tを、その上下方向に関して反転させ、この姿勢の端末Tを前記カメラで撮像する。
【選択図】
図1