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特許7636837飛翔体用機器取り付け治具、飛翔体および飛翔体用機器取り付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】飛翔体用機器取り付け治具、飛翔体および飛翔体用機器取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 47/00 20060101AFI20250219BHJP
   B64B 1/40 20060101ALI20250219BHJP
   B64B 1/06 20060101ALI20250219BHJP
   B64G 1/10 20060101ALI20250219BHJP
   F42B 15/00 20060101ALI20250219BHJP
   B64G 1/00 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
B64D47/00
B64B1/40
B64B1/06
B64G1/10
F42B15/00
B64G1/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024112255
(22)【出願日】2024-07-12
【審査請求日】2024-07-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520365229
【氏名又は名称】株式会社岩谷技研
(74)【代理人】
【識別番号】110004392
【氏名又は名称】弁理士法人佐川国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】家弓 国広
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-152091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0006349(US,A1)
【文献】米国特許第03269600(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 47/00
B64B 1/40
B64B 1/06
B64G 1/10
F42B 15/00
B64G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体の内部に飛翔体用機器を取り付けるための飛翔体用機器取り付け治具であって、
前記飛翔体の内部に固定され、一又は複数の前記飛翔体用機器を挿入させる開口部を備えたベース部材と、
前記一又は複数の飛翔体用機器の外周面に装着されるとともに、前記開口部に取り付け可能な環状ブラケットと、
から構成されており、
前記飛翔体用機器に装着した前記環状ブラケットを前記開口部に取り付けた際、前記環状ブラケットが前記開口部の周方向に沿う第1方向に移動するのを規制する第1方向規制手段と、前記環状ブラケットが前記開口部の開口面に直交する第2方向に移動するのを規制する第2方向規制手段とを有しており、
前記第1方向規制手段は、
前記開口部の内周縁部に設けられた第1段差部および第2段差部と、
前記環状ブラケットの背面側に設けられ、先端部側が前記周方向に沿って延びる係止爪と、
前記環状ブラケットの背面側に設けられたストッパ部と、
を有し、
前記第1方向規制手段は、前記環状ブラケットが前記ベース部材に取り付けられるために回転される際に、前記係止爪が弾性変形して前記第1段差部に接触しながら前記第1段差部を乗り越えて前記先端部が前記第1段差部の立ち上がり面と接触するとともに、前記ストッパ部が前記第2段差部の立ち上がり面と接触することにより、前記環状ブラケットの前記第1方向への移動を規制し、
前記第2方向規制手段は、
前記開口部の内径よりも大きな外径を有し、前記ベース部材の前面に接触して前記第2方向奥側への移動を規制する環状ブラケットの奥側移動規制面と、
前記環状ブラケットの背面側に設けられ、前記環状ブラケットの取り付けのための回転動作に伴って前記ベース部材の背面と接触する位置に移動して前記第2方向手前側への移動を規制する手前側移動規制面と、
を有する、飛翔体用機器取り付け治具。
【請求項2】
前記係止爪から前記第2方向手前側に延出され、前記係止爪を前記ベース部材から離間する方向に弾性変形させる操作により、前記環状ブラケットの前記第1方向への移動規制を解除するための移動規制解除用操作部を有している、請求項に記載の飛翔体用機器取り付け治具。
【請求項3】
前記環状ブラケットには、前記飛翔体用機器を装着する際の周方向位置を位置決めするための位置決めマークが設けられている、請求項1に記載の飛翔体用機器取り付け治具。
【請求項4】
前記環状ブラケットには、周方向に隔てた位置に、複数の前記手前側移動規制面が設けられている、請求項に記載の飛翔体用機器取り付け治具。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれかに記載の飛翔体用機器取り付け治具によって前記飛翔体用機器が取り付けられた飛翔体。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれかに記載の飛翔体用機器取り付け治具を用いて、前記飛翔体の内部に前記飛翔体用機器を取り付ける飛翔体用機器取り付け方法であって、
前記一又は複数の飛翔体用機器の外周面に前記環状ブラケットを装着する環状ブラケット装着工程と、
前記環状ブラケットを装着した前記一又は複数の飛翔体用機器を前記ベース部材の開口部に挿入させる飛翔体用機器挿入工程と、
前記一又は複数の飛翔体用機器を回転させることにより前記環状ブラケットを前記ベース部材に取り付ける飛翔体用機器取り付け工程と、
を有する、飛翔体用機器取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体の内部に飛翔体用機器を取り付けるための飛翔体用機器取り付け治具、飛翔体および飛翔体用機器取り付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明において、「飛翔体」とは、気球、飛行船、航空機、人工衛星、ロケット、宇宙船、ミサイル等のように、地球表層から宇宙空間において飛翔する全ての人工物を指す。従来、飛翔体の一例である有人用気球には、人が乗り込むキャビンの内部に酸素ボンベなどの様々な飛翔体用機器が搭載される。
【0003】
なお、ボンベを固定する技術として、例えば、特開2018-040466号公報には、地震があってもガスボンベが転倒することがなく、ガスボンベの交換作業が行いやすいガスボンベ固定具が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-040466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飛翔体の内部のように、限られた空間内に飛翔体用機器を適切に搭載するには、飛翔体用機器の動きを規制した状態で取り付ける必要がある。しかしながら、飛翔体の内部は狭いため作業性が悪く、工具類等を思うように使えないことが多い。このため、上記特許文献1のようにボルトやナットを用いた取り付け構造は、飛翔体には不向きである。また、飛翔体の容積や積載量を考慮すると、取り付け構造はできる限りコンパクトで軽量であることが求められる。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、コンパクトで軽量な構造でありながら、簡単に飛翔体用機器を飛翔体の内部に取り付けられ、飛翔体用機器の動きを規制することができる飛翔体用機器取り付け治具、飛翔体および飛翔体用機器取り付け方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る飛翔体用機器取り付け治具は、コンパクトで簡易な構造でありながら、簡単に飛翔体用機器を飛翔体の内部に取り付けられ、飛翔体用機器の動きを規制するという課題を解決するために、飛翔体の内部に飛翔体用機器を取り付けるための飛翔体用機器取り付け治具であって、前記飛翔体の内部に固定され、一又は複数の前記飛翔体用機器を挿入させる開口部を備えたベース部材と、前記一又は複数の飛翔体用機器の外周面に装着されるとともに、前記開口部に取り付け可能な環状ブラケットと、から構成されており、前記飛翔体用機器に装着した前記環状ブラケットを前記開口部に取り付けた際、前記環状ブラケットが前記開口部の周方向に沿う第1方向に移動するのを規制する第1方向規制手段と、前記環状ブラケットが前記開口部の開口面に直交する第2方向に移動するのを規制する第2方向規制手段とを有している。
【0008】
本発明に係る飛翔体は、簡単に飛翔体用機器を飛翔体の内部に取り付けられ、飛翔体用機器の動きを規制するという課題を解決するために、後述するいずれかの態様の飛翔体用機器取り付け治具によって前記飛翔体用機器が取り付けられたものである。
【0009】
本発明に係る飛翔体用機器取り付け方法は、コンパクトで簡易な構造でありながら、簡単に飛翔体用機器を飛翔体の内部に取り付けられ、飛翔体用機器の動きを規制するという課題を解決するために、上述したいずれかの態様の飛翔体用機器取り付け治具を用いて、前記飛翔体の内部に前記飛翔体用機器を取り付ける飛翔体用機器取り付け方法であって、前記一又は複数の飛翔体用機器の外周面に前記環状ブラケットを装着する環状ブラケット装着工程と、前記環状ブラケットを装着した前記一又は複数の飛翔体用機器を前記ベース部材の開口部に挿入させる飛翔体用機器挿入工程と、前記一又は複数の飛翔体用機器を回転させることにより前記環状ブラケットを前記ベース部材に取り付ける飛翔体用機器取り付け工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンパクトで簡易な構造でありながら、簡単に飛翔体用機器を飛翔体の内部に取り付けられ、飛翔体用機器の動きを規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る飛翔体用機器取り付け治具の一実施形態を示す図である。
図2】本実施形態の飛翔体用機器取り付け治具によって取り付けられた状態の飛翔体用機器を示す図である。
図3】本実施形態のベース部材を示す正面図である。
図4】本実施形態の環状ブラケットを示す(a)正面図、(b)左側面図、(c)右側面図および(d)背面図である、
図5】本発明に係る飛翔体用機器取り付け方法の環状ブラケット装着工程を示す図である。
図6】本発明に係る飛翔体用機器取り付け方法の飛翔体用機器挿入工程を示す図である。
図7】本発明に係る飛翔体用機器取り付け方法の飛翔体用機器取り付け工程において、環状ブラケットを回転させる前の状態を示す図である。
図8】本発明に係る飛翔体用機器取り付け方法の飛翔体用機器取り付け工程において、環状ブラケットを回転させた後の状態を示す図である。
図9図8の矢印方向から見た拡大図である。
図10】複数の飛翔体用機器に環状ブラケットを装着した状態を示す図である。
図11】本発明に係る飛翔体用機器取り付け治具の他の実施形態における(a)ベース部材および(b)環状ブラケットを示す図である。
図12】本発明に係るベース部材の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る飛翔体用機器取り付け治具、飛翔体および飛翔体用機器取り付け方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0013】
本実施形態の飛翔体用機器取り付け治具1は、飛翔体(図示せず)の内部に飛翔体用機器11を取り付けるためのものであり、図1に示すように、開口部21を備えたベース部材2と、開口部21に取り付け可能な環状ブラケット3とから構成されている。そして、飛翔体用機器11に装着した環状ブラケット3を開口部21に対してわずかに回転させるだけで、図2に示すように、ワンタッチで飛翔体の内部に取り付けられるようになっている。
【0014】
また、本実施形態の飛翔体用機器取り付け治具1は、環状ブラケット3を開口部21に取り付けた際、環状ブラケット3が開口部21の周方向に沿う第1方向に移動するのを規制する第1方向規制手段4と、環状ブラケット3が開口部21の開口面に直交する第2方向に移動するのを規制する第2方向規制手段5とを有している。以下、各構成部材について詳細に説明する。
【0015】
なお、本発明において、飛翔体とは、上述したとおり、気球、飛行船、航空機、人工衛星、ロケット、宇宙船、ミサイル等のように、地球表層から宇宙空間において飛翔する全ての人工物を指す。また、本発明において、飛翔体用機器11とは、酸素ボンベ、各種センサ、制御装置、荷物等のように、飛翔体の内部において、動きを規制する場合がある全ての対象物を指す。
【0016】
ベース部材2は、飛翔体の内部に固定され、飛翔体用機器11を取り付けるためのものである。本実施形態において、ベース部材2は、板状の高強度な素材によって構成されており、図1および図2に示すように、飛翔体用機器11を挿入させるための開口部21を有している。なお、本実施形態において、ベース部材2には、開口部21が一つだけ設けられているが、この構成に限定されるものではなく、複数の開口部21が設けられていてもよい。
【0017】
環状ブラケット3は、飛翔体用機器11の外周面に装着されて、ベース部材2に取り付け可能なものである。本実施形態において、環状ブラケット3は、図1から図3に示すように、開口部21にほぼ嵌まり合うように全体として環状に形成されている。また、本実施形態において、環状ブラケット3の内周面には、摩擦抵抗の高いゴム板31が張り付けられており、装着後の飛翔体用機器11が滑って動かないようになっている。しかしながら、環状ブラケット3自体が摩擦抵抗の高い素材や内周面に滑り止め加工が施されていれば、ゴム板31は必須ではない。
【0018】
なお、本実施形態において、環状ブラケット3は、半周分ずつ別部材として分割されており、両端部同士をネジ32で締め付けることで飛翔体用機器11に装着するように構成されている。しかしながら、環状ブラケット3は、この構成に限定されるものではなく、飛翔体用機器11に装着しうるのであれば、一体成形されていてもよく、一端側をヒンジ構造とし他端側をネジ32等で固定するようにしてもよい。
【0019】
第1方向規制手段4は、開口部21に取り付けた環状ブラケット3が第1方向に移動するのを規制するものである。本実施形態において、第1方向規制手段4は、図3に示すように、ベース部材2の開口部21の内周縁部に設けられた第1段差部41(図3では、第1方向規制手段4のための第1段差部41であることを明示するために、41(4)と表示)および第2段差部42(図3では、42(4)と表示)と、図4に示すように、環状ブラケット3の背面側に設けられた係止爪43(図4では、43(4)と表示)およびストッパ部44(図4では、44(4)と表示)と、を有している。
【0020】
第1段差部41は、係止爪43を係止させるためのものである。本実施形態において、開口部21の内周縁部には、図3に示すように、係止爪43およびストッパ部44を挿入させる挿入凹部22が形成されている。そして、挿入凹部22から開口部21の中心に向けて第1段差部41が突出されている。第1段差部41は、取り付ける際の回転方向後方側に設けられた緩やかな傾斜面411と、取り付ける際の回転方向前方側に設けられた急峻な立ち上がり面412とを有している。
【0021】
第2段差部42は、ストッパ部44を係止させるためのものである。本実施形態において、第2段差部42は、図3に示すように、第1段差部41に対して、取り付ける際の回転方向前方側に設けられている。そして、第1段差部41の立ち上がり面412と向かい合う位置に、第2段差部42の立ち上がり面421が略径方向に沿って設けられている。
【0022】
係止爪43は、第1段差部41に係止して、環状ブラケット3の第1方向における移動を規制するものである。本実施形態において、係止爪43は、図4に示すように、環状ブラケット3の背面側に基端部が設けられているとともに、先端部側が周方向に沿って円弧状に延びており、弾性変形し易い片持ち梁構造を有している。また、係止爪43の先端部には、第1段差部41の傾斜面411と摺動する摺動面431と、第1段差部41の立ち上がり面412と係止する係止面432とが設けられている。
【0023】
また、本実施形態において、係止爪43は、環状ブラケット3の第1方向への移動規制を解除するための移動規制解除用操作部433を有している。この移動規制解除用操作部433は、図1および図4(c)に示すように、係止爪43から第2方向手前側に延出されており、係止爪43をベース部材2から離間する方向に弾性変形させる操作がし易くなっている。なお、移動規制解除用操作部433は必須の構成ではなく、係止爪43自体を指先等で押し下げてもよい。
【0024】
ストッパ部44は、第2段差部42に係止して、環状ブラケット3の第1方向における移動を規制するものである。本実施形態において、ストッパ部44は、図4に示すように、環状ブラケット3の背面に設けられており、略径方向に沿う係止面441を有している。
【0025】
以上の構成において、環状ブラケット3を開口部21に取り付けた際、係止爪43の外縁端部は、第1段差部41の内縁端部よりも外方に突出されている。また、ストッパ部44の係止面441は、第2段差部42の立ち上がり面421と接触する程度に外方に延出されている。さらに、係止爪43の係止面432とストッパ部44の係止面441との間隔は、第1段差部41の立ち上がり面412と第2段差部42の立ち上がり面421との間の間隔とほぼ同一寸法に形成されている。
【0026】
このため、係止爪43の先端部は、第1段差部41の立ち上がり面412と接触することにより、第1方向において、取り付ける際の回転方向とは反対方向(逆回転)の移動を規制する。また、ストッパ部44の係止面441は、第2段差部42の立ち上がり面421と接触することにより、第1方向において、取り付ける際の回転方向(正回転)の移動を規制する。
【0027】
第2方向規制手段5は、開口部21に取り付けた環状ブラケット3が第2方向に移動するのを規制するものである。本実施形態において、第2方向規制手段5は、図4に示すように、環状ブラケット3の背面によって構成されており、第2方向奥側への移動を規制する奥側移動規制面51(図4では、51(5)と表示)と、環状ブラケット3の背面側に設けられ、第2方向手前側への移動を規制する手前側移動規制面52(図4では、52(5)と表示)と、を有している。
【0028】
奥側移動規制面51は、環状ブラケット3が第2方向奥側へ移動するのを規制するものである。本実施形態において、奥側移動規制面51は、開口部21の内径よりも大きな外径を有する環状ブラケット3の背面によって構成されている。このため、環状ブラケット3を開口部21に取り付けた際、奥側移動規制面51は、ベース部材2の前面に接触して第2方向奥側への移動を規制する。なお、環状ブラケット3の背面は、環状ブラケット3の周方向に連続的な面であってもよく、断続的な面であってもよい。
【0029】
手前側移動規制面52は、環状ブラケット3が第2方向手前側へ移動するのを規制するものである。本実施形態において、手前側移動規制面52は、図4に示すように、環状ブラケット3の背面側に設けられたストッパ部44の後端部から周方向に沿って、取り付ける際の回転方向前方側に延出された板状部材の前面によって構成されている。このため、手前側移動規制面52は、環状ブラケット3の取り付けのための回転動作に伴ってベース部材2の背面と接触する位置に移動し、第2方向手前側への移動を規制する。
【0030】
なお、本実施形態において、環状ブラケット3には、図4(b),(c)に示すように、飛翔体用機器11を装着する際の周方向位置を位置決めするための位置決めマーク33が設けられている。この位置決めマーク33を飛翔体用機器11側の目印となるものに一致させた状態で環状ブラケット3を装着すると、飛翔体用機器11はベース部材2に対して常に所定の周方向位置で取り付けられる。
【0031】
例えば、飛翔体用機器11として酸素ボンベを取り付ける場合には、嵩張るレギュレータや計器類等が邪魔にならないように所望の向きで設置することが好ましい。そこで、所望の向きで取り付けられた酸素ボンベの目印(図1の取付部111等)に合わせて、位置決めマーク33を環状ブラケット3に付しておく。これにより、位置決めマーク33を酸素ボンベの目印に一致させた状態で装着すると、酸素ボンベはベース部材2に対して常に所望の周方向位置で取り付けられる。
【0032】
なお、本実施形態のように、予め定めた複数の向きに合わせて複数の位置決めマーク33を環状ブラケット3に設けておけば、複数の飛翔体用機器11をそれぞれ異なる向きで取り付けることが可能となる。
【0033】
また、本実施形態において、環状ブラケット3には、図1および図4に示すように、周方向に沿って約180度隔てた位置に、ストッパ部44とともに手前側移動規制面52が一対で設けられている。一方、ベース部材2には、図3に示すように、手前側移動規制面52に合わせた挿入凹部22が、第2段差部42とともに開口部21の内周縁部に設けられている。
【0034】
これにより、飛翔体用機器11が第2方向手前側へ移動しようとする力が2箇所で支持されるため、第2方向手前側への規制力が向上する。なお、手前側移動規制面52の配置や数は、上記構成に限定されるものではなく、一つだけ配置してもよく、周方向に所定の間隔を隔てて三つ以上の複数を配置してもよい。
【0035】
つぎに、本実施形態の飛翔体用機器取り付け方法とともに、飛翔体用機器取り付け治具1および飛翔体の作用について説明する。なお、以下の説明では、有人用気球において人が乗り込むキャビンの内部に、飛翔体用機器11として酸素ボンベを取り付けた場合について説明する。
【0036】
本実施形態の飛翔体用機器取り付け治具1を用いて、飛翔体の内部に飛翔体用機器11を取り付ける場合、図5に示すように、まず、飛翔体用機器11の外周面に環状ブラケット3を装着する(環状ブラケット装着工程)。これにより、環状ブラケット3の内周面が、飛翔体用機器11の外周面に密着してしっかりと固定されるため、環状ブラケット3に対する飛翔体用機器11の相対移動を完全に規制する。また、環状ブラケット3の装着作業は、飛翔体の外部で事前に行えるため、工具類等の使用にも支障がない。さらに、環状ブラケット3は、飛翔体の内部形状等に応じて、飛翔体用機器11における所望の位置に装着可能である。
【0037】
また、環状ブラケット装着工程においては、位置決めマーク33を飛翔体用機器11側の目印となるものに一致させた状態で環状ブラケット3を装着する。これにより、環状ブラケット3をベース部材2に取り付けた後の飛翔体用機器11は、所望の周方向位置に向いた状態で取り付けられる。
【0038】
つぎに、図6に示すように、環状ブラケット3を装着した飛翔体用機器11をベース部材2の開口部21に挿入させる(飛翔体用機器挿入工程)。このとき、飛翔体用機器11の手前側(酸素ボンベの上端部)を把持し、飛翔体用機器11の奥側(酸素ボンベの底部)を第2方向奥側へ押し込むだけでよい。このため、作業者はベース部材2の奥側における作業が一切不要であり、手前側のみから1人で簡単に取り付け作業が行える。
【0039】
また、上記挿入動作により、環状ブラケット3の背面側に設けられた係止爪43、ストッパ部44および手前側移動規制面52が、開口部21に設けられた挿入凹部22に挿入される。そして、環状ブラケット3の背面(奥側移動規制面51)が、ベース部材2の前面に接触したところで、それ以上の挿入動作が規制されて停止する。この状態を図7に示す。
【0040】
最後に、飛翔体用機器11を回転させることにより環状ブラケット3をベース部材2に取り付ける(飛翔体用機器取り付け工程)。本実施形態では、環状ブラケット3をベース部材2に取り付ける際、図7の状態から飛翔体用機器11を時計回りに回転させることにより、図8の取り付け状態となる。
【0041】
このとき、第1方向規制手段4としての係止爪43が、弾性変形して第1段差部41に接触しながら第1段差部41を乗り越えて先端部が第1段差部41の立ち上がり面412と接触する。これにより、環状ブラケット3の第1方向における反時計回りの移動が規制される。また、係止爪43は、周方向に沿って第1段差部41側に延びているため座屈し難く、第1方向における移動規制力が向上する。さらに、第1方向規制手段4としてのストッパ部44が、第2段差部42の立ち上がり面421と接触する。これにより、環状ブラケット3の第1方向における時計回りの移動が規制される。
【0042】
環状ブラケット3がベース部材2に取り付けられると、図9に示すように、第2方向規制手段5としての奥側移動規制面51が、ベース部材2の前面に接触して第2方向奥側への移動を規制する。一方、第2方向規制手段5としての手前側移動規制面52は、環状ブラケット3の取り付けのための回転動作に伴ってベース部材2の背面と接触する位置に移動する。このため、手前側移動規制面52は、ベース部材2の背面と接触して第2方向手前側への移動を規制する。
【0043】
以上の工程により、飛翔体の内部に固定されたベース部材2に、飛翔体用機器11に装着された環状ブラケット3が工具などを使わずに簡単に取り付けられる。また、この取り付け状態では、環状ブラケット3が、ベース部材2に対して第1方向および第2方向への移動が規制される。したがって、環状ブラケット3に対する相対移動が規制された飛翔体用機器11の動きも同様に規制される。
【0044】
一方、図8に示すように、環状ブラケット3をベース部材2に取り付けた状態において、移動規制解除用操作部433を下方に押し下げると、係止爪43がベース部材2から離間する方向に弾性変形する。これにより、係止爪43が第1段差部41の立ち上がり面412と接触しなくなるため、環状ブラケット3の第1方向への移動規制が解除される。そして、環状ブラケット3を反時計回りに回転させると、手前側移動規制面52がベース部材2の背面と接触しない位置まで移動するため、環状ブラケット3の第2方向への移動規制も解除される。したがって、ベース部材2に取り付けた環状ブラケット3を工具などを使わずに簡単に取り外すこともできる。
【0045】
以上の通り、本発明の一態様としては、飛翔体用機器11に装着した環状ブラケット3を開口部21に対して回転させるだけでベース部材2に取り付けるという課題を解決するために、前記第1方向規制手段4は、前記開口部21の内周縁部に設けられた第1段差部41および第2段差部42と、前記環状ブラケット3の背面側に設けられ、先端部側が前記周方向に沿って延びる係止爪43と、前記環状ブラケット3の背面側に設けられたストッパ部44と、を有し、前記第1方向規制手段4は、前記環状ブラケット3が前記ベース部材2に取り付けられるために回転される際に、前記係止爪43が弾性変形して前記第1段差部41に接触しながら前記第1段差部41を乗り越えて前記先端部が前記第1段差部41の立ち上がり面412と接触するとともに、前記ストッパ部44が前記第2段差部の立ち上がり面421と接触することにより、前記環状ブラケット3の前記第1方向への移動を規制し、前記第2方向規制手段5は、前記開口部21の内径よりも大きな外径を有し、前記ベース部材2の前面に接触して前記第2方向奥側への移動を規制する環状ブラケット3の奥側移動規制面51と、前記環状ブラケット3の背面側に設けられ、前記環状ブラケット3の取り付けのための回転動作に伴って前記ベース部材2の背面と接触する位置に移動して前記第2方向手前側への移動を規制する手前側移動規制面52と、を有していてもよい。
【0046】
また、本発明の一態様として、ベース部材2に取り付けられた環状ブラケット3を簡単に取り外すという課題を解決するために、前記係止爪43から前記第2方向手前側に延出され、前記係止爪43を前記ベース部材2から離間する方向に弾性変形させる操作により、前記環状ブラケット3の前記第1方向への移動規制を解除するための移動規制解除用操作部433を有していてもよい。
【0047】
さらに、本発明の一態様として、飛翔体用機器11を簡単に所望の向きで取り付けるという課題を解決するために、前記環状ブラケット3には、前記飛翔体用機器11を装着する際の周方向位置を位置決めするための位置決めマーク33が設けられていてもよい。
【0048】
また、本発明の一態様として、第2方向手前側への規制力を向上するという課題を解決するために、前記環状ブラケット3には、周方向に隔てた位置に、複数の前記手前側移動規制面52が設けられていてもよい。
【0049】
以上のような本実施形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
1.コンパクトで簡易な構造でありながら、簡単に飛翔体用機器11を飛翔体の内部に取り付けられ、飛翔体用機器11の動きを規制することができる。
2.第1方向規制手段4と第2方向規制手段5を上記のように構成することで、飛翔体用機器11に装着した環状ブラケット3を開口部21に対して回転させるだけでベース部材2に簡単に取り付けることができる。
3.移動規制解除用操作部433によって、ベース部材2に取り付けられた環状ブラケット3を簡単に取り外すことができる。
4.位置決めマーク33を用いて環状ブラケット3を装着することにより、飛翔体用機器11を簡単に所望の向きで取り付けることができる。
5.複数の手前側移動規制面52によって、第2方向手前側への規制力を向上することができる。
6.飛翔体においては、簡単に飛翔体用機器11を飛翔体の内部に取り付けられ、飛翔体用機器11の動きを規制することができる。
7.飛翔体用機器取り付け治具1を用いた飛翔体用機器11取り付け方法によれば、簡単に飛翔体用機器11を飛翔体の内部に取り付けられ、飛翔体用機器11の動きを規制することができる。
【0050】
なお、本発明に係る飛翔体用機器取り付け治具1、飛翔体および飛翔体用機器11取り付け方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0051】
例えば、上述した本実施形態では、一つの飛翔体用機器11に一つの環状ブラケット3を装着していたがこの構成に限定されるものではない。図10に示すように、複数の飛翔体用機器11をまとめてクラスター化し、この状態で環状ブラケット3を装着するようにしてもよい。これにより、一つの開口部21に対して複数の飛翔体用機器11を一度に取り付けることが可能となる。また、この場合、環状ブラケット3と飛翔体用機器11の余白部分には、別途、異なる飛翔体用機器11を詰め込んで固定するようにしてもよい。さらに、飛翔体用機器11は、円形の断面を有するものに限定されるものではなく、環状ブラケット3を摺動不能に装着しうるものであればよい。
【0052】
また、上述した本実施形態では、第1方向規制手段4として、ベース部材2側に第1段差部41が設けられ、環状ブラケット3側に係止爪43が設けられている。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、第1方向規制手段4は、ベース部材2および環状ブラケット3のいずれかに設けられていればよい。例えば、図11(a)に示すように、ベース部材2側に係止爪43を設けるとともに、図11(b)に示すように、環状ブラケット3側に第1段差部41を設けてもよい。
【0053】
さらに、上述した本実施形態では、第2方向規制手段5として、手前側移動規制面52をベース部材2の背面と接触させている。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、図12に示すように、ベース部材2の第2段差部42の立ち上がり面に凹溝53を設け、この凹溝53に手前側移動規制面52を有する部材を嵌め入れて接触させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 飛翔体用機器取り付け治具
2 ベース部材
21 開口部
22 挿入凹部
3 環状ブラケット
31 ゴム板
32 ネジ
33 位置決めマーク
4 第1方向規制手段
41 第1段差部
411 傾斜面
412 第1段差部の立ち上がり面
42 第2段差部
421 第2段差部の立ち上がり面
43 係止爪
431 摺動面
432 係止爪の係止面
433 移動規制解除用操作部
44 ストッパ部
441 ストッパ部の係止面
5 第2方向規制手段
51 奥側移動規制面
52 手前側移動規制面
53 凹溝
11 飛翔体用機器
111 取付部
【要約】
【課題】コンパクトで軽量な構造でありながら、簡単に飛翔体用機器を飛翔体の内部に取り付けられ、飛翔体用機器の動きを規制することができる飛翔体用機器取り付け治具、飛翔体および飛翔体用機器取り付け方法を提供する。
【解決手段】飛翔体の内部に飛翔体用機器11を取り付けるための飛翔体用機器取り付け治具1であって、飛翔体の内部に固定され、開口部21を備えたベース部材2と、飛翔体用機器11の外周面に装着され、開口部21に取り付け可能な環状ブラケット3とから構成され、環状ブラケット3が開口部21の周方向に沿う第1方向に移動するのを規制する第1方向規制手段4と、環状ブラケット3が開口部21の開口面に直交する第2方向に移動するのを規制する第2方向規制手段5とを有する。
【選択図】 図1
図1
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図6
図7
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図9
図10
図11
図12