(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】家具
(51)【国際特許分類】
A47C 7/50 20060101AFI20250219BHJP
【FI】
A47C7/50 Z
(21)【出願番号】P 2019195420
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】片山 康司
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-033293(JP,A)
【文献】登録実用新案第3113201(JP,U)
【文献】実開昭58-022139(JP,U)
【文献】登録実用新案第3131607(JP,U)
【文献】登録実用新案第3058124(JP,U)
【文献】特開2004-321672(JP,A)
【文献】特開2019-083883(JP,A)
【文献】特開2018-143317(JP,A)
【文献】特開2006-158794(JP,A)
【文献】実開平01-114857(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0226925(US,A1)
【文献】特開2013-017709(JP,A)
【文献】特開平10-295448(JP,A)
【文献】特開2017-099826(JP,A)
【文献】特開平11-294688(JP,A)
【文献】特開2004-358205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00 - A47C 16/04
A47C 3/00 - A47C 3/40
B60N 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が直立して作業を行うことが可能となるよう900mm程度かそれ以上の高さになっているハイテーブルと、前記ハイテーブルを腰掛けた状態で使用し得る椅子とから成っており、
前記椅子は、キャスタ付き脚ベースの中央部から脚支柱を立設した脚装置と、前記脚支柱の上端部で支持された座と、着座した人が足を載せるために前記脚支柱の中途高さ部位に固定された足載せ台とを備えて
いる一方、
前記ハイテーブルは、前記椅子を内部に向けて移動させたときに前記足載せ台の下方に位置する水平姿勢の横架材を備えており、
前記椅子における足載せ台の直下部に、前記ハイテーブルの横架材と衝突したときに互いの損傷を抑止する緩衝リングが前記脚支柱と同心に配置されており、前記緩衝リングと前記脚ベースとの間で前記脚支柱の外面が露出している、
家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が立って使用可能な高さのハイテーブルやハイカウンターに使用するのに好適な椅子及びこれを有する家具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスでは、ワーキングスタイルの多様化の一つとして、ハイテーブルを使用した執務スタイルが広がっている。ハイテーブルは高さが例えば900~1200mmになっており、人が床に立って執務を使用する場合と、座の高さを高くしたハイチェアに腰掛けて使用する場合とがある。
【0003】
床に立ってハイテーブルを使用するのは、血行を良くした姿勢の悪化を防止したりしてワーカーの健康改善を通じて作業能率を向上させる意味があるが、立って作業を行うにしてもハイチェアに腰掛けて作業を行うにしても、ハイテーブルを使用すると、頭の位置が高くなって視界が広がることによる刺激効果があり、これによって作業性を向上できる利点も有している。
【0004】
そして、通常のテーブル(机)は高さが700mm前後であって、人は椅子に腰掛けた状態で足が床に着くが、ハイテーブル用に使用されるハイチェアは、通常の椅子に比べて座が高くなっていて着座した人の足が床に届かないため、脚支柱にリング状や円板状等の足載せ台を設けている。
【0005】
その例が特許文献1に開示されており、特許文献1では、運搬中等において足載せ台の外周が傷付いたり、椅子の移動時に足載せ台が人に当たって怪我したりすることを防止するため、足載せ台の外周に緩衝材を装着している。
【0006】
他方、児童用の椅子においては従来から足載せ台を設けることが行われており、その例として特許文献2には、足載せ台を脚支柱に高さ調節可能に装着した椅子において,脚支柱に複数のリング体を装着して、リング体の群を脚ベースで支持することにより、足載せ台の高さを維持することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実用新案登録第3125837号公報
【文献】特開2010-279413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、ハイテーブルにおいて、その下部に水平姿勢の横架材を配置して、この横架材を、人が立って作業を行う場合に片足を載せる足置きとして機能させたり、補強として機能させたりすることが行われている。
【0009】
そして、従来、横架材と椅子との関係に特段の注意は払われておらず、従って、椅子をハイテーブルの内部に収納したときに、足載せ台が横架材に当たったり、脚支柱が横架材に当たったりおそれがあり、このため、横架材が傷付いたり、足載せ台や脚支柱が傷ついたりすることが懸念される。
【0010】
この点、横架材と足載せ台との高さが同じである場合は,特許文献1のように、足載せ台の外周に緩衝材を設けることで対応できるが、この場合は、椅子をハイテーブルの内部に深く収納できないという問題がある。
【0011】
他方、横架材が足載せ台よりも上に配置されていると、座をハイテーブルの内部に部分的に収納して使用する場合、着座した人の足が横架材に載って足載せ台に体重を掛けることができないため、椅子の安定性が損なわれるおそれがある。
【0012】
これに対して、横架材が足載せ台の下方に位置していると、椅子をハイテーブルの内部に深く収納できると共に、椅子の使用状態において平面視で足載せ台と横架材とが重なっていても、人は足載せ台に足を載せて使用できるため、体重を足載せ台に掛けることができて椅子の安定性を維持できる利点がある。
【0013】
そして、横架材が足載せ台の下方に位置している場合、特許文献2のリング体を緩衝材として利用することが考えられるが、特許文献2ではリングの群が足載せ台の下方において脚支柱の全体に嵌まっているため、美観を損なうおそれがある。
【0014】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願発明は、
「人が直立して作業を行うことが可能となるよう900mm程度かそれ以上の高さになっているハイテーブルと、前記ハイテーブルを腰掛けた状態で使用し得る椅子(ハイチェア)とから成っている」
という組み合わせ家具に関するものであり、この家具は、
「前記椅子は、キャスタ付き脚ベースの中央部から脚支柱を立設した脚装置と、前記脚支柱の上端部で支持された座と、着座した人が足を載せるために前記脚支柱の中途高さ部位に固定された足載せ台とを備えている一方、
前記ハイテーブルは、前記椅子を内部に向けて移動させたときに前記足載せ台の下方に位置する水平姿勢の横架材を備えており、
前記椅子における足載せ台の直下部に、前記ハイテーブルの横架材と衝突したときに互いの損傷を抑止する緩衝リングが前記脚支柱と同心に配置されており、前記緩衝リングと前記脚ベースとの間で前記脚支柱の外面が露出している」
という特徴を有している。横架材は、ステー状であってもよいし板状であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本願発明では、椅子をハイテーブルの横架材に向けて勢い良く移動させても脚支柱が横架材に直接当たることはなく、緩衝リングが横架材に当たる。従って、横架材及び脚支柱が傷付いたり塗装が剥げたりする不具合を防止できると共に、衝撃音も緩和できる。また、足載せ台と横架材とは上下に離れているため、椅子をハイテーブルの奥に深く収納することについて支障はない。更に、緩衝リングは足載せ台の直下部に配置されていて外部から視認し難い状態になっているため、美観の悪化も生じない。
【0022】
更に、足載せ台は横架材の上に位置しているため、椅子の使用状態において足載せ台が横架材と上下に重なった状態であっても、足を足載せ台に載せることができるため、体重を足載せ台に掛けることができて椅子を安定させることができる。
【0023】
請求項1では、緩衝リングを脚支柱に取り付けることも可能であるが、緩衝リングを介して脚支柱に衝撃が掛かることは好ましくない。特に、脚支柱がガスシリンダである場合は、作動の正確性を期する上で、脚支柱に衝撃が使用することは避けるのが得策である。
【0024】
足載せ台の筒部に緩衝リングを設けると、衝撃が脚支柱に直接作用することを防止できるため、脚支柱の保護の点で好適である。また、緩衝リングを脚支柱に取り付けると、脚支柱は一般に市販品であることから、緩衝リングを取り付けるためには支持部材を溶接するなどせねばならず加工に手間が掛かるが、足載せ台は専用品であって各種の加工を行えるため、部材の加工性においても優れている。
【0025】
緩衝リングを足載せ台の筒部に取り付ける場合、例えばビスによって固定することも可能であるが、係合爪を使用した取り付け方法を採用すると、緩衝リングをワンタッチ的に簡単に取り付けることができる。
【0026】
足載せ台が脚支柱に対して回転すると着座者の身体が不安定になって好ましくないが、実施形態の構成を採用すると、足載せ台は頭無しボルトによって脚支柱に回転不能に固定されているため、着座者の身体の安定性を確保できる。そして、実施形態では、足載せ台を脚支柱に支持するためのタップ穴を利用して緩衝リングを取り付けているため、構造を簡単化できる。また、頭無しボルトが緩んでも、頭無しボルトが外れることを係合爪によって阻止できる利点もある。
【0027】
そして、本願発明では、ハイテーブルの横架材を椅子における足載せ台よりも低い高さにしつつ緩衝リングを設けて互いの損傷を防止できるため、ハイテーブルと椅子との両方の商品価値を向上できる。この場合、横架材の前面に樹脂エッジのような緩衝材を設けることも可能である。また、ハイテーブル及び椅子に関する課題を解決する手段として、横架材のみに緩衝材を設けることも可能であり、この構成は独立した発明たり得る。この場合、横架材の緩衝材は、人が足を掛けるに際して緩衝作用も発揮し得るし、靴のずり下がりを防止できる効果も発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態の椅子を示す図で、(A)は上方から見た斜視図、(B)は下方から見た斜視図、(C)は側面図である。
【
図2】(A)は要部を下方から見た斜視図、(B)は分離正面図である。
【
図3】分離正面図、(B)は緩衝リングを上方から見た斜視図、(C)は緩衝リングを下方から見た斜視図である。
【
図4】
図3(B)のIV-IV視方向から見た要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(1).基本構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、椅子は、キャスタ付の脚装置1と、脚装置1を構成する脚支柱2の上端に設けた枠状の座受け3と、座受け3で支持された座4及び背もたれ5とを備えている。
【0030】
脚装置1は、放射状に延びる複数本の枝杆を有する脚ベース6を備えており、各枝杆の先端にキャスタを設け、脚ベース6の中央部に脚支柱2を立設している。脚支柱2は、外筒7と内筒8とが伸縮自在に嵌合したガスシリンダで構成されており、外筒7が脚ベース6に固定されて、内筒8の上端に座受け3が嵌着している。
【0031】
そして、椅子は、人が立って作業を行えるハイテーブル9に使用するものであるが、ハイテーブル9の天板10は高さが900~1200mm程度あって着座者の足は床に届かないため、ガスシリンダの外筒7に、着座者の足を載せる円板状の足載せ台11が取り付けられている。敢えて述べるまでもないが、座4は、
図1(B)に示すレバー8aを操作してガスシリンダのロックを解除することにより、高さを調節できる。
【0032】
また、ハイテーブル9には、人が立って作業を行うに際して片足を載せることができると共に補強材として機能する板状の横架材12が間口方向に長い姿勢で配置されている。横架材12は、椅子の足載せ台11よりも僅かに低い高さになっており、また、横架材12は、天板10よりも少し奥に配置されている。なお、天板10は左右の脚体で支持されており、横架材12も左右の脚体に装架されている。また、ハイテーブル9には天板10を高さ調節できるタイプもあるが、この場合でも、横架材12の高さは一定になっている。
【0033】
既述のとおり、足載せ台11は円板状に形成されており、上面には十字状の補強突条13が形成されているが、補強突条13は、脚支柱2から離れるに従って低くなるように、緩く傾斜しているため、足載せ台11は、側面視で下辺が水平な略三角形状となっている。このため、円板状の足載せ台11は薄くても補強突条13により強度確保が可能となる。また、このことにより、ハイテーブル9の横架材12の上面と、足載せ台11の足載せ部の上面とを近い高さに設定することが可能となり、横架材12と足載せ台11の足載せ部とを、着座者にとって最適な高さの範囲内に設けることが可能となる。また、足載せ台11の中部には、隣り合った補強突条13で挟まれた4つの窓穴14が空いている。
【0034】
図4に明瞭に示すように、足載せ台11には下向きに突出した筒部15が形成されており、筒部15が合成樹脂製のブッシュ16を介してガスシリンダの外筒7に嵌まっている。筒部15とブッシュ16は、ガスシリンダの外筒7に溶接によって固定された支持リング17によって下降不能に支持されている。また、ブッシュ16の上端に外向きのフランジ18が形成されており、このフランジ18は、足載せ台11に形成されて段部19に嵌まっている。
【0035】
足載せ台11の筒部15のうちその下部に、周方向に90°隔てた4つのタップ穴20を形成して、タップ穴20にねじ込んだ頭無しボルト(虫ねじ)21を外筒7に突っ張らせている。従って、ブッシュ16には、頭無しボルト21が貫通する4つの逃がし穴22が空いている。なお、タップ穴20及び頭無しボルト21の個数は4つには限らないのであり、周方向に180°隔てた2か所に設けたり、120°間隔で3か所に設けるなど、個数と配置位置は任意に設定できる。
【0036】
(2).緩衝リング
足載せ台11における筒部15のうち、ハイテーブル9における横架材12の前面に対応した高さ位置に、合成樹脂製の緩衝リング23を下方から嵌め込み装着している。緩衝リング23の外径は足載せ台11の外径よりも小径であり、筒部15に形成した段落ち状小径部24に外嵌状態に嵌まっており、従って、緩衝リング23の外周面は筒部15と一体に連続した状態になっていて、外周面の全体が露出している。また、緩衝リング23が上向きに移動して外れることもない。
【0037】
また、緩衝リング23は筒部15よりも下方にはみ出しており、下部に、脚装置1に設けた支持リング17の外周面に当接又は近接する内向きフランジ25を形成し、内向きフランジ25の下方に、当該内向きフランジ25に繋がった多数の補強リブ26を形成している。
【0038】
そして、緩衝リング23には、足載せ台11における筒部15のタップ穴20に係合する4つの係合爪27を形成している。係合爪27は、緩衝リング23にスリットを形成することによって刳り抜かれた状態に形成されており、上端に内向きの鉤部27aが形成されている。鉤部27aの上面は下向きの傾斜面になっている一方、足載せ台11における筒部15の下面のうち各タップ穴20の下方部位に、係合爪27を誘い込むための切り欠き28を形成している。
図4に示すように、切り欠き28には、係合爪27の上向き移動を安定する傾斜ガイド面28aが形成されている。
【0039】
椅子の組み立てにおいては、緩衝リング23は脚支柱2の外筒7に予め嵌め込まれており、足載せ台11とブッシュ16とが、互いに嵌まり合った状態又は分離した状態で脚装置1の外筒7に上から嵌め込まれる。足載せ台11とブッシュ16とを別々に嵌め込む場合は、先に足載せ台11を嵌め込んで、後からブッシュ16を嵌め込む。
【0040】
そして、足載せ台11とブッシュ16とが支持リング17で落下不能に支持された状態で、頭無しボルト21を各タップ穴20に外からねじ込むことにより、足載せ台11を脚支柱2の外筒7に回転不能に固定し、次いで、緩衝リング23を上方に移動させて足載せ台11の筒部15に嵌め込んで、各係合爪27を各タップ穴20に係合させる。すなわち、各係合爪27は、いったん外側に逃げ変形してから弾性力によって戻り変形して鉤部がタップ穴20に嵌入し、これにより、緩衝リング23は落下不能に保持される。
【0041】
そして、緩衝リング23はハイテーブル9の横架材12と同じ高さになっているため、
図4及び
図5に示すように、椅子をハイテーブル9の内部に勢い良く収納しても、脚支柱2が横架材12に直接当たることはなく、合成樹脂製の緩衝リング23によって衝撃が緩衝される。従って、横架材12が傷付くことを防止できると共に、衝撃音も緩和できる。なお、横架材12の前面にはラバー等の保護材を接着等で装着しておくのが好ましい(保護材は、横架材12の上面まで覆う構成であってもよい。)。
【0042】
上記の実施形態では、緩衝リング23は係合爪27を利用して緩衝リング23を筒部15に係止したが、内向きフランジ25をビスで筒部15の下面に固定することも可能である。或いは、緩衝リング23をゴム製として、弾力を利用して筒部15や脚支柱2に装着することも可能である。
【0043】
また、緩衝リング23は、足載せ台11の筒部15又は脚支柱2の外筒7に高さ調節可能に取り付けることも可能である。更に、緩衝リング23を2つ割方式に構成して、2つのパーツを重ね合わせてリング体と成すことも可能であり、この場合は、緩衝リング23は予め脚支柱に嵌め込んでおく必要はない。また、実施形態のように脚支柱2に支持リング17が固定されている場合、緩衝リング23を支持リング17に係止することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本願発明は、ハイテーブル用の椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 脚装置
2 脚支柱(ガスシリンダ)
4 座
7 脚支柱の外筒
8 脚支柱の内筒
9 ハイテーブル
10 天板
11 足載せ台
12 ハイテーブルの横架材
15 筒部
16 ブッシュ
20 タップ穴
21 頭無しボルト(虫ねじ)
22 逃がし穴
23 緩衝リング
27 係合爪