(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】電動式操向システムの制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20250219BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20250219BHJP
H02P 7/06 20060101ALI20250219BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20250219BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20250219BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
H02P7/06 B
B62D101:00
B62D113:00
(21)【出願番号】P 2020143929
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0118587
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 ギョン 燮
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2017/060959(JP,A1)
【文献】特開2006-188183(JP,A)
【文献】特開2009-044846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
H02P 7/06
B62D 101/00
B62D 113/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速又はホイール速度を検出する第1センサと、
運転者のステアリングホイールの操作による操向角を検出する第2センサと、
前記第1センサにより検出される車速又はホイール速度情報から前記車両が停車状態であると判断し、
運転者がステアリングホイールを一定量以上操舵した後、運転者がステアリングホイールを保舵している状態で、前記第2センサにより検出される操向角情報から前記ステアリングホイールが固定状態であると判断した場合に、操向モータに印加されるモータ印加電流に応じて、モータ騒音を低減するためのモータ電流制御
を行うように設定された制御機と、を含み、
前記操向モータが
ブラシ付きDCモータであ
り、
前記制御機は、前記車両が停車状態であり、前記ステアリングホイールが固定状態であり、前記モータ印加電流が、予め設定された基準電流値以上である場合に、前記モータ騒音を低減するためのモータ電流制御を行うように設定されることを特徴とする電動式操向システムの制御装置。
【請求項2】
前記制御機は、前記第2センサにより検出される操向角が、予め設定された基準時間の間に変化しない場合、前記ステアリングホイールが固定状態であると判断することを特徴とする請求項1に記載の電動式操向システムの制御装置。
【請求項3】
前記制御機は、前記モータ騒音を低減するためのモータ電流制御を行う場合に、前記操向モータに印加される電流を、予め設定された制御目標値に減少させることを特徴とする
請求項1に記載の電動式操向システムの制御装置。
【請求項4】
前記制御機は、前記モータ騒音を低減するためのモータ電流制御を行う場合に、前記操向モータに印加される電流を、予め設定された制御目標値に減少させることを特徴とする請求項1に記載の電動式操向システムの制御装置。
【請求項5】
前記制御機は、前記モータ騒音を低減するためのモータ電流制御を行う場合に、前記操向モータに印加される電流を、前記制御目標値に達するまで予め決定された勾配で減少させることを特徴とする
請求項4に記載の電動式操向システムの制御装置。
【請求項6】
前記制御目標値は、前記車両の前記操向モータで騒音が発生しないモータ印加電流値として設定されて前記制御機に入力されることを特徴とする
請求項4に記載の電動式操向システムの制御装置。
【請求項7】
前記制御機は、前記操向モータに印加される電流を前記制御目標値まで減少させて一定値に維持し、次いで、前記第2センサにより検出される操向角情報から運転者操向入力を判断した場合に、前記操向モータに印加される電流を増加させることを特徴とする
請求項4に記載の電動式操向システムの制御装置。
【請求項8】
ステアリングホイールの操作による操向角が検出されるステップと、
制御機が、第1センサにより検出される車速又はホイール速度情報から現在車両が停車状態であると判断するステップと、
車両停車状態で、
かつ運転者がステアリングホイールを一定量以上操舵した後の運転者によるステアリングホイールが補舵された状態で、前記制御機が、第2センサにより検出される操向角情報から前記ステアリングホイールが固定状態であると判断するステップと、
前記車両が停車状態及びステアリングホイール固定状態である時に、前記制御機により、操向モータに印加されるモータ印加電流に応じて、モータ騒音を低減するためのモータ電流制御
が行われるステップと、
を含み、
前記操向モータが
ブラシ付きDCモータであ
り、
前記制御機が、前記車両停車状態及び前記ステアリングホイール固定状態である時に、前記モータ印加電流が、予め設定された基準電流値以上である場合に、前記モータ騒音を低減するためのモータ電流制御を行うことを特徴とする電動式操向システムの制御方法。
【請求項9】
前記制御機が、前記第2センサにより検出される操向角が、予め設定された基準時間の間に変化しない場合、前記ステアリングホイールが固定状態であると判断することを特徴とする
請求項8に記載の電動式操向システムの制御方法。
【請求項10】
前記制御機が、前記モータ騒音を低減するためのモータ電流制御を行う時に、前記操向モータに印加される電流を、予め設定された制御目標値に減少させることを特徴とする
請求項8に記載の電動式操向システムの制御方法。
【請求項11】
前記制御機が、前記モータ騒音を低減するためのモータ電流制御を行う時に、前記操向モータに印加される電流を、予め設定された制御目標値に減少させることを特徴とする
請求項8に記載の電動式操向システムの制御方法。
【請求項12】
前記制御機が、前記モータ騒音を低減するためのモータ電流制御を行う時に、前記操向モータに印加される電流を、前記制御目標値に達するまで予め決定された勾配で減少させることを特徴とする
請求項11に記載の電動式操向システムの制御方法。
【請求項13】
前記制御目標値が、前記車両の前記操向モータで騒音が発生しないモータ印加電流値と設定されて前記制御機に入力されることを特徴とする
請求項11に記載の電動式操向システムの制御方法。
【請求項14】
前記制御機が、
前記操向モータに印加される電流を前記制御目標値まで減少させてから一定に維持させ、
その後前記第2センサにより検出される操向角情報から運転者操向入力があると、前記モータ印加電流を上昇させることを特徴とする
請求項11に記載の電動式操向システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式操向システムの制御装置及び制御方法に係り、より詳しくは、操向モータとしてBLACモータではなくDCモータを適用した車両において、DCモータのブラシと整流子との不安定な接触状態に起因するモータの騒音発生問題を効果的に解決することができる電動式操向システムの制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の操向時に運転者の操舵力を増加させるための動力操向(power steering)システムとしては、油圧ポンプにより形成された油圧を用いて運転者の操舵力を補助(assist)する油圧式操向(HPS:Hydraulic Power Steering)システムと、電動モータの出力トルクを用いて運転者の操舵力を補助する電動式操向システム(MDPS:Motor Driven Power Steering System、以下、「MDPS」という)と、が知られている。
【0003】
中でも、MDPSシステムは、操舵の補助のための電動モータ(操向モータ)の出力トルクを、車両の走行条件によって制御できるため、油圧式操向システムに比べてより向上した操舵性能及び操舵感を提供することができる。
これにより、最近発売されている車両には、モータの出力により生成される操舵補助力を走行条件に応じて変化及び制御できるMDPSシステムが広く適用されている。
【0004】
MDPSシステムは、運転者のステアリングホイールの操作による操向角(コラム入力角)を検出する操向角センサ、ステアリングホイールを介して入力される運転者の操舵トルク(ステアリングホイールトルク、コラムトルク)を検出するトルクセンサ、車速センサ、ホイール速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサ、ヨーレートセンサなどのセンサ類、制御機(MDPS ECU)、及び操向モータ(MDPSモータ)を含んで構成される。
【0005】
このような構成において、制御機は、操向モータの作動及び出力を制御するために、センサの信号から操向角、操向角速度、操舵トルクなどの運転者操向入力情報と、車速、ホイール速度、加速度、エンジン回転数、ヨーレートなどの車両状態情報と、を取得する。
【0006】
ここで、操向角はステアリングホイールの回転位置を表し、操向角速度は、操向角信号の微分などにより得られるステアリングホイール回転速度の値であり、操舵トルクは、運転者がステアリングホイールに加えるトルク、すなわち、操向のための運転者入力トルクである。
【0007】
また、トルクセンサは、運転者がステアリングホイールを介して入力する操舵トルクを検出するためのものであって、トーションバーのねじれの程度を利用して検出することが広く知られており、加速度センサは、車両の前、後、左、右方向の加速度を検出し、車両の走行状況を判断するためのセンサである。
【0008】
また、ホイール速度センサは、車両ホイールの回転速度を検出し、車両の走行状況を判断するためのセンサであって、ホイールの回転速度信号から車速が分かるため、ホイール速度センサを、車速を検出する車速センサとして利用することもできる。
更に、制御機は、運転者操向入力情報と車両状態情報とに基づいて操向モータの出力を制御し、操舵の補助のための調節されたトルクが生成されるようにするが、通常のMDPSシステムにおいて、操向モータの出力制御は、制御機が操向モータに印加されるモータ電流を制御することで行うことができる。
【0009】
この際、制御機は、車両で収集される情報、すなわち、運転者操向入力情報及び車両状態情報に基づいて電流量を決定した後、操向モータに印加し、この時のモータ駆動により、運転者の操舵力を補助するための力である操舵補助トルクを発生させる。
一方、近年、コスト低減を目的として、中小型車では操向モータ(MDPSモータ)としてBLACモータ(Brushless AC Motor)の代わりにDCモータを広く適用する傾向にある。
【0010】
しかし、DCモータは、BLACモータと異なってブラシ(brush)と整流子(commutator)とが接触して作動するため、構造的にNVH(Noise、Vibration&Harshness)が良くないという欠点を有している。
これは運転者に不快感を与えるため、DCモータを操向モータとして利用する車両の商品性を阻害する要因の1つとなっている。したがって、それを改善することが必要となっている。
【0011】
特に、DCモータを操向モータとして用いるMDPSシステムを適用した車両において、車両の停車中にステアリングホイールを特定位置に固定(ホールディング)した時に、すなわち、DCモータに特定数値以上の電流量が印加される位置にステアリングホイールを固定した時に、DCモータで発生する騒音問題を改善する必要がある。
【0012】
車両の停車中にステアリングホイールが特定位置に固定されるようにMDPSシステムのDCモータが操舵を補助した場合は、制御機は、操舵の補助のための力が出るようにDCモータに大きな電流を印加するが、この際、ブラシと整流子とが不安定な接触を引き起こす位置にある場合には、DCモータで「ウーン」という騒音が発生し得る。
【0013】
図4から
図7は、操向モータとしてDCモータを用いる場合における問題を説明するための図であって、
図4は、公知のDCモータにおけるブラシと整流子の接触状態を示す図であり、
図5は、ブラシと整流子の安定した接触状態を示し、
図6は、ブラシと整流子の不安定な接触状態を説明するための図である。
【0014】
図5及び
図6において、図面符号3は、ブラシ1が固定されるブラシホルダを示し、図面符号4は、ブラシ1及びブラシホルダ3を弾力支持するスプリング4を示しており、DCモータにおいて、ブラシ1は、スプリング4により弾力支持され、ロータとともに回転する整流子2に常時接触された状態を維持する。
【0015】
また、
図7は、DCモータにおいて、ブラシ1と整流子2との不安定な接触状態によって電流変動が増大する状態を説明するための図である。
ステアリングホイールを特定位置に固定するための操舵補助時に、DCモータに大きな電流が印加されると、ブラシ1と整流子2との不安定な接触によって整流子の微細な動きが発生し得て、
図6の「a」と「b」との間で電流の流れが、繰り返し瞬間的に変動することになる。
【0016】
この際、瞬間的な抵抗変動が発生し得て、その結果、ブラシ1と整流子2との間の瞬間的な電流変動及び抵抗変動により、電流の大きな揺れが発生し得る。
図7に示すように、ステアリングホイールが固定された後、右側のような電流の揺れが増大する現象が現れることが分かる。
【0017】
このように電流の揺れ現象が増大すると、モータシステムで電流周波数による共振が生じ、その結果、その共振によって「ウーン」という騒音とともに振動が発生する。DCモータを用いるにあたり、上記の騒音及び振動の問題を解決するために、騒音と振動を低減することができるダンピングカプラを用いることもあるが、これは、コストを上昇させる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、操向モータとしてBLACモータではなくDCモータを適用した車両において、DCモータのブラシと整流子との不安定な接触状態に起因するモータの騒音及び振動問題を効果的に解決することができる装置及び方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様によると、車両の車速又はホイール速度を検出する第1センサと、運転者のステアリングホイールの操作による操向角を検出する第2センサと、前記第1センサにより検出される車速又はホイール速度情報から車両が停車状態であると判断し、前記第2センサにより検出される操向角情報からステアリングホイールが固定状態であると判断した場合に、操向モータに印加されるモータ印加電流に応じて、モータ騒音を低減するためのモータ電流制御を選択的に行うように設定された制御機と、を含む電動式操向システムの制御装置を提供する。ここで、前記操向モータがDCモータであることができる。
【0021】
また、前記制御機は、前記第2センサにより検出される操向角が、予め設定された基準時間の間に変化しない場合、ステアリングホイールが固定状態であると判断するように設定されることが好ましい。
【0022】
また、前記制御機は、車両が停車状態であり、ステアリングホイールが固定状態であり、モータ印加電流が予め設定された基準電流値以上である場合の、前記モータ騒音を低減するためのモータ電流制御を行うように設定されることが好ましい。
【0023】
そして、前記制御機は、前記モータ騒音を低減するためのモータ電流制御を行う場合に、前記操向モータに印加される電流を、予め設定された制御目標値に減少させるように設定されることができる。
【0024】
また、前記制御機は、前記モータ騒音を低減するためのモータ電流制御を行う場合に、前記操向モータに印加される電流を、前記制御目標値に達するまで予め決定された勾配で減少させることを特徴とする。そして、前記制御目標値は、車両の操向モータで騒音が発生しないモータ印加電流値と設定されて制御機に入力されたものであることができる。
【0025】
そして、前記制御機は、前記操向モータに印加される電流を前記制御目標値まで減少させて一定価に維持し、次いで第2センサにより検出される操向角情報から運転者操向入力を判断した場合に、操向モータに印加される電流を増加させるように設定することができる。
【0026】
そして、本発明の他の態様において、ステアリングホイールの操作による操向角が検出されるステップと、制御機が、前記第1センサにより検出される車速又はホイール速度情報から車両が停車状態であると判断するステップと、車両停車状態で、制御機が、前記第2センサにより検出される操向角情報からステアリングホイールが固定状態であると判断するステップと、車両が停車状態及びステアリングホイール固定状態である時に、制御機により、操向モータに印加されるモータ印加電流に応じて、モータ騒音を低減するためのモータ電流制御が選択的に行われるステップと、を含む、電動式操向システムの制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
これにより、本発明に係る操向システムの制御装置及び制御方法によると、簡単な制御ロジックの適用だけで、DCモータのブラシと整流子の不安定な接触状態に起因するモータの騒音及び振動問題を効果的に解決することができる。
【0028】
特に、車両停車中にステアリングホイールを特徴位置に固定した時に発生するモータの騒音及び振動を解決することができ、DCモータから、振動及び騒音の低減のためのダンピングカプラを削除することが可能であるため、コスト低減を期待することができる。その結果、操向モータとしてDCモータを用いる電動式操向システムを搭載した車両の商品性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動式操向システムの制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電動式操向システムの制御方法を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態に係る電動式操向システムの制御方法において、電流印加状態の例を示す図である。
【
図4】DCモータを操向モータとして用いる場合の問題を説明するための図である。
【
図5】DCモータを操向モータとして用いる場合の問題を説明するための図である。
【
図6】DCモータを操向モータとして用いる場合の問題を説明するための図である。
【
図7】DCモータを操向モータとして用いる場合の問題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、添付図面を参照し、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されず、他の形態で具体化されることもできる。
【0031】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と記載する時は、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素を更に含み得ることを意味する。
【0032】
本発明は、操舵補助装置の操向モータとしてDCモータを適用した車両において、操向モータのブラシと整流子との不安定な接触状態に起因するモータの騒音発生問題を効果的に解決することができる電動式操向システムの制御装置及び制御方法を提供しようとする。
【0033】
特に、本発明は、車両の停車中にステアリングホイールを特定位置に固定した時に、DCモータの操舵補助装置が作動(一定水準以上の大きい電流量をモータに印加)する場合に発生し得る「ウーン」という騒音問題を解決するための制御装置及び制御方法を提供しようとする。
【0034】
本発明は、上記の目的を達成するために、車両の停車中にステアリングホイールを固定させるために操舵補助装置のDCモータが作動する時にのみ、騒音(又は騒音及び振動)を低減するためのモータ電流の制御を行う制御ロジックが構成される。
【0035】
本発明において、騒音(又は騒音及び振動)を低減するためのモータ電流制御は、車両の停車条件及びステアリングホイールの固定条件などを全て満たす場合に制御機により行われる。ここで、ステアリングホイールの固定条件は、運転者がステアリングホイールを一定水準以上操舵(すなわち、回転させて操作)した状態で、ステアリングホイールを一定時間以上操舵せずに固定した状況を意味するといえる。
【0036】
これに加えて、本発明では、運転者がステアリングホイールを一定水準以上操舵すると、操舵の補助のためのモータ印加電流が大きくなるため、運転者がステアリングホイールを一定量以上操舵(回転操作)した状態で、所定時間の間にステアリングホイールを更に操舵しない場合に、騒音を低減するためのモータ電流制御を行うようにすることができる。
【0037】
ここで、運転者が上記のようにステアリングホイールを一定量以上操舵したということは、操舵の補助のために操向モータに印加される電流量が、騒音が発生しやすい電流量のレベルに達したためであるといえる。
【0038】
図面を参照して説明すると、
図1は、本発明の実施形態に係る電動式操向システムの制御装置の構成を示すブロック図であり、
図2は本発明の実施形態に係る電動式操向システムの制御方法を示すフローチャートである。
また、
図3は本発明の実施形態に係る電動式操向システムの制御方法において、電流印加状態の例を示す図である。
【0039】
先ず、本発明の実施形態に係る制御装置は、DCモータを操向モータとして用いる電動式操向システムに適用されるものであって、
図1に示すように、車速又はホイール速度を検出する第1センサ11と、操向角を検出する第2センサ12と、第1センサ11及び第2センサ12により検出される情報に基づいて操向モータ30に印加される電流を制御する制御機20と、を含むことができる。
【0040】
前記第1センサ11は、車速を検出する公知の車速センサであり、車両において、車速は各ホイールに設けられたホイール速度センサの信号から取得することもできるため、前記第1センサ11は、車両の各ホイールに設けられるホイール速度センサにもなり得る。
通常の車両において、複数のホイールに設けられたホイール速度センサの信号からホイール速度情報を取得し、取得されたホイール速度を車速に換算して車速情報を得ることができる。
【0041】
本発明では、制御機20が、第1センサ11の信号から得られる車速又はホイール速度情報から、車両が停車状態にあるか否かを判断することができる。例えば、第1センサ11が左側ホイールと右側ホイールとにそれぞれ設けられたホイール速度センサである場合には、制御機20は、2つのホイール速度センサの信号から得られる左側ホイール及び右側ホイールのホイール速度値から、車両が走行状態であるか停車状態であるかを確認することができる。
【0042】
このように、制御機20は、第1センサ11により検出される車速を用いるか、又は第1センサ11により検出されるホイール速度から換算した車速を用いて車両の停車状態を判断することができ、又は、第1センサ11により検出されるホイール速度から直ちに車両の停車状態を判断することもできる。
【0043】
本発明では、騒音(又は騒音及び振動)を低減するために制御機20に追加される上記の制御ロジックは、車両の停車中にのみ作動するように設定される。前記第2センサ12は、操向システムで用いられている操向角センサであり、制御機20は、第2センサ12の信号を受信して運転者のステアリングホイールの操作による操向角情報を取得する。
【0044】
本発明において、制御機20は、第2センサ12により検出される操向角から運転者の操舵意図を把握することができ、特に、第2センサ12により検出される操向角情報から、ステアリングホイールが固定されているか否かを判断することができる。
【0045】
本発明において、制御機20は、予め設定された基準時間の間に操向角(ステアリングホイール操舵角)が変化しない場合は、運転者がステアリングホイールを固定していると判断するように設定されることができる。ここで、基準時間は、制御機20に予め入力及び格納されて用いられる時間である。
【0046】
基準時間は、チューニング可能な時間であって、車両条件などによって決定可能であり、本発明は基準時間について特定の時間を限定しないが、運転者が「ウーン」というモータ騒音を感知しないように、1秒未満の時間に設定することが好ましい。
【0047】
また、本発明において、車両が停車しているという条件、及びステアリングホイールが固定されているという条件に加えて、モータ騒音が発生し得るモータ電流条件を満たす場合にも、制御機20が騒音(又は騒音及び振動)の低減のための電流制御を行うように設定することができる。
【0048】
ここで、モータ騒音が発生し得るモータ電流条件は、操向モータ30に印加されている電流量に対する条件であって、上述の理由によって操向モータ30で発生する「ウーン」という騒音及びそれによる振動が発生し得る電流条件であると設定することができる。
【0049】
本発明において、制御機20は、電動式操向システムの制御機(MDPS ECU)20であり、通常の電動式操向システムにおいて制御機20は、運転者操向入力情報及び車両状態情報に応じて電流目標値を決定し、操向モータ30に印加する電流を制御するために、制御機20自体が操向モータ30に印加する電流を記憶している。
【0050】
本発明において、制御機20は、操向モータ30に印加される電流を常時モニタリングするように配備されており、この際、モータに印加されている電流が予め設定された基準電流値以上である条件をモータ電流条件として制御機20に設定することができる。
結局、本発明において、制御機20は、車両が停車状態であるという条件およびステアリングホイールが固定されているという条件を満すとともに、モニタリングされるモータ印加電流が基準電流値以上であるという条件を満たした際に、騒音を低減するためのモータ電流制御を行うことになる。
【0051】
本発明が適用される電動式操向システムにおいて、操向モータ30であるDCモータに一定水準以上の大きさの電流が印加されると、電流の揺れが大きくなりながら「ウーン」という騒音が発生しやすい。
例えば、電動式操向システムにおいて、操向モータ30であるDCモータに印加可能な最大電流が70アンペアであるとすると、50アンペア以上印加された時にDCモータで「ウーン」という騒音が発生しやすい。
【0052】
本発明では、上記のように車両で「ウーン」という騒音が発生しやすい電流値(アンペア)を確認し、制御機20にその電流値を基準電流値として設定し、制御機20が、モータ印加電流をモニタリングして確認し、設定された基準電流値以上の電流が操向モータ30に印加されている際に、前記モータ電流条件を満たすと判断するように制御ロジックが構成される。
【0053】
以下に、
図2を参照して本発明に係る制御過程について説明する。
先ず、制御機20において、第1センサ11の信号から車両の現在車速又はホイール速度情報を取得し、第2センサ12の信号から操向角情報を取得する(S1)。次いで制御機20は、車速又はホイール速度情報から車両が現在停車中であるか否かを判断する(S2)。
【0054】
ここで、制御機20は、車両が停車中であると判断した場合に、第2センサ12の信号から得られる操向角とモニタリングしているモータ印加電流とに基づいて、操向モータ30の騒音(又は騒音及び振動)を低減するためのモータ電流制御条件を満たすか否かを判断する。
【0055】
この際、制御機20は、操向角が基準時間の間に変化しない状態であるのを確認し(S3)、次に、現在のモータ印加電流値を確認する(S4)。その後、モニタリング中のモータ印加電流値が基準電流値以上であるかを確認する(S5)。
ここで、操向角が基準時間の間に変化しない状態である場合には、制御機20は、ステアリングホイールの固定条件を満たすと判断し、モニタリングされるモータ印加電流が基準電流値以上であると、制御機20は、モータ電流条件を満たすと判断する。
【0056】
すなわち、運転者がステアリングホイールを基準時間の間に回転操作せずに特定位置に固定しているステアリングホイール固定状態であると判断し、操向モータ30であるDCモータに騒音が発生し得る基準電流値以上の大きい電流が印加されている状態であると判断する。
【0057】
このように、車両停車条件、ステアリングホイール固定条件、及び所定のモータ電流条件(モータ大電流印加条件)を全て満たす場合に、制御機20は、騒音(又は騒音及び振動)を低減するためのモータ電流制御を行うが、この際、操向モータ30に印加する電流を、予め設定された制御目標値に減少させる(S6)。
【0058】
ここで、制御目標値は、車両において操向モータ30であるDCモータで何の騒音も発生しない電流値と決定され、例えば、50アンペアより低い値と設定可能である。
図3を参照して説明すると、車両が停車中である時に、運転者がステアリングホイールを基準時間(例えば、1秒)以上である▲d▼時間(sec)の間に操舵(回転操作)せずに固定状態で維持しており、モニタリングされているモータ印加電流が基準電流値▲b▼アンペア(例えば、50アンペア)より大きい▲a▼アンペアである場合には、制御機20は、モータ印加電流を、予め設定された制御目標値である▲c▼アンペアに減少させる。
【0059】
この際、制御機20は、モータ印加電流を、現在のモータ印加電流である▲a▼アンペアから制御目標値である▲c▼アンペアまで、予め決定された一定の勾配で素早く減少させるように設定することができる。ここで、電流を変化させる勾配は、運転者が感じる異質感を最小化するように、車両条件などに応じて適宜チューニング可能である。
【0060】
このように、本発明では、車両停車条件及びステアリングホイール固定条件、並びに所定のモータ電流条件を全て満たした場合に、モータ印加電流を設定された制御目標値まで素早く減少させるモータ電流制御が行われる。
【0061】
また、モータ印加電流を制御目標値まで減少させた後、モータ印加電流を制御目標値に維持しているときに、
図3の▲e▼時点で、第2センサ12により検出された操向角情報から運転者操向入力を判断した場合、すなわち、運転者がステアリングホイールを回転操作(操舵)したと判断した場合には、制御機30は、通常の操向制御時に決定される電流値までモータ印加電流を素早く上昇させる。
このように電流値を素早く回復させることで、操向モータ30による通常の操舵補助が行われるようにする。
【0062】
そして、車両停車条件とステアリングホイール固定条件、並びに所定のモータ電流条件(基準電流値以上の大電流印加条件)のうち何れか1つでも満たされない場合には、制御機20は、モータ印加電流を制御目標値まで減少させるというモータ電流制御を行わずに、運転者操向入力情報と車両状態情報とに対応してモータ印加電流及び操向モータ30の出力を制御する通常の操向制御を行う(S7)。
【0063】
このようにして、本発明では、車両停車中にステアリングホイールの固定状態であるとともに、モータ印加電流が騒音発生レベルに増加した状態である場合に、モータ印加電流を素早く減少させることで、騒音及び振動の発生を防止することができる。
上記のようにモータに印加される電流を減少させた場合には、モータの整流子の位置が僅かに移動され、不安定な接触状態から安定した接触状態に変更され、結果として「ウーン」という騒音が発生しなくなる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲がこれに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用する当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
11 第1センサ
12 第2センサ
20 制御機
30 操向モータ