(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】車両用灯具およびランプコントロールモジュール
(51)【国際特許分類】
H05B 45/14 20200101AFI20250219BHJP
H05B 45/375 20200101ALI20250219BHJP
H05B 45/38 20200101ALI20250219BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20250219BHJP
B60Q 1/34 20060101ALI20250219BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
H05B45/14
H05B45/375
H05B45/38
B60Q1/04 E
B60Q1/34 A
B60Q1/00 C
(21)【出願番号】P 2020155750
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-07-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】宮下 雄一
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-091730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/14
H05B 45/375
H05B 45/38
B60Q 1/04
B60Q 1/34
B60Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具であって、
第1光源と、
第1目標電流I
REF1に安定化された第1駆動電流を前記第1光源に供給する第1駆動回路と、
前記車両用灯具の状態を示す少なくともひとつの電気信号を受け、前記少なくともひとつの電気信号に応じた少なくともひとつの検出値を生成するA/Dコンバータと、
(i)前記第1駆動電流のベース電流値I
BASE1、(ii)前記少なくともひとつの検出値それぞれにもとづく前記第1光源のディレーティング特性を規定する、少なくともひとつのパラメータ群を格納する不揮発性メモリと、
前記少なくともひとつの検出値を受け、ソフトウェアプログラムを実行することにより、前記ベース電流値I
BASE1および前記少なくともひとつのパラメータ群に応じて前記第1目標電流I
REF1を計算する信号処理装置と、
る備え、前記不揮発性メモリに書き込むパラメータ群の値を変更することで、前記ソフトウェアプログラムを変更せずに、前記ディレーティング特性を変更可能となっていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記少なくともひとつの検出値は、
温度センサの出力にもとづく温度検出値Tと、
前記第1駆動回路の入力電圧にもとづく電圧検出値V
DDと、
を含み、
前記温度検出値Tに関するパラメータ群は、ディレーティング開始温度T
S、ディレーティング終了温度T
E、減少率αを含み、
前記電圧検出値V
DDに関するパラメータ群は、ディレーティング開始電圧V
S、ディレーティング終了電圧V
E、減少率βを含み、
前記信号処理装置は、前記温度検出値Tに関するディレーティング後の電流量I
TEMP_DERを、
I
TEMP_DER=I
BASE1 (T<T
S)
I
TEMP_DER=I
BASE1{1-α(T-T
S)} (T
S<T<T
E)
I
TEMP_DER=I
BASE1{1-α(T
E-T
S)} (T
E<T)
にもとづいて計算し、
前記電圧検出値V
DDに関するディレーティング後の電流量I
VOLT_DERを、
I
VOLT_DER=I
BASE1 (V
DD<V
S)
I
VOLT_DER=I
BASE1{1-β(V
DD-V
S)} (V
S<V
DD<V
E)
I
VOLT_DER=I
BASE1{1-β(V
E-V
S)} (V
E<V
DD)
にもとづいて計算し、電流量I
TEMP_DERとI
VOLT_DERの少ない方を前記第1目標電流I
REF1とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記温度検出値Tに関するパラメータ群は、異常判定温度T
MAXをさらに含み、
前記信号処理装置は、T
MAX<Tの範囲において、I
TEMP_DER=0とすることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記少なくともひとつの検出値は、
第1温度センサの出力にもとづく温度検出値T
1と、
第2温度センサの出力にもとづく温度検出値T
2と、
を含み、
前記温度検出値T
1に関するパラメータ群は、ディレーティング開始温度T
S1、ディレーティング終了温度T
E1、減少率α
1を含み、
前記温度検出値T
2に関するパラメータ群は、ディレーティング開始温度T
S2、ディレーティング終了温度T
E2、減少率α
2を含み、
前記信号処理装置は、前記温度検出値T
1に関するディレーティング後の電流量I
TEMP_DER1を、
I
TEMP_DER1=I
BASE1 (T
1<T
S1)
I
TEMP_DER1=I
BASE1{1-α
1(T
1-T
S1)} (T
S1<T
1<T
E1)
I
TEMP_DER1=I
BASE1{1-α
1(T
E1-T
S1)} (T
E1<T
1)
にもとづいて計算し、
前記温度検出値T
2に関するディレーティング後の電流量I
TEMP_DER2を、
I
TEMP_DER2=I
BASE1 (T
2<T
S2)
I
TEMP_DER2=I
BASE1{1-α
2(T
2-T
S2)} (T
S2<T
2<T
E2)
I
TEMP_DER2=I
BASE1{1-α
2(T
E2-T
S2)} (T
E2<T
2)
にもとづいて計算し、電流量I
TEMP_DER1とI
TEMP_DER2の少ない方を前記第1目標電流I
REF1とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記少なくともひとつの検出値は、
第1温度センサの出力にもとづく温度検出値T
1と、
第2温度センサの出力にもとづく温度検出値T
2と、
前記第1駆動回路の入力電圧にもとづく電圧検出値V
DDと、
を含み、
前記温度検出値T
1に関するパラメータ群は、ディレーティング開始温度T
S1、ディレーティング終了温度T
E1、減少率α
1を含み、
前記温度検出値T
2に関するパラメータ群は、ディレーティング開始温度T
S2、ディレーティング終了温度T
E2、減少率α
2を含み、
前記電圧検出値V
DDに関するパラメータ群は、ディレーティング開始電圧V
S、ディレーティング終了電圧V
E、減少率βを含み、
前記信号処理装置は、前記温度検出値T
1に関するディレーティング後の電流量I
TEMP_DER1を、
I
TEMP_DER1=I
BASE1 (T
1<T
S1)
I
TEMP_DER1=I
BASE1{1-α
1(T
1-T
S1)} (T
S1<T
1<T
E1)
I
TEMP_DER1=I
BASE1{1-α
1(T
E1-T
S1)} (T
E1<T
1)
にもとづいて計算し、
前記温度検出値T
2に関するディレーティング後の電流量I
TEMP_DER2を、
I
TEMP_DER2=I
BASE1 (T
2<T
S2)
I
TEMP_DER2=I
BASE1{1-α
2(T
2-T
S2)} (T
S2<T
2<T
E2)
I
TEMP_DER2=I
BASE1{1-α
2(T
E2-T
S2)} (T
E2<T
2)
にもとづいて計算し、
前記電圧検出値V
DDに関するディレーティング後の電流量I
VOLT_DERを、
I
VOLT_DER=I
BASE1 (V
DD<V
S)
I
VOLT_DER=I
BASE1{1-β(V
DD-V
S)} (V
S<V
DD<V
E)
I
VOLT_DER=I
BASE1{1-β(V
E-V
S)} (V
E<V
DD)
にもとづいて計算し、電流量I
TEMP_DER1、I
TEMP_DER2、I
VOLT_DERのうち最も少ないひとつを前記第1目標電流I
REF1とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記温度検出値T
1に関するパラメータ群は、異常判定温度T
MAX1をさらに含み、
前記温度検出値T
2に関するパラメータ群は、異常判定温度T
MAX2をさらに含み、
前記信号処理装置は、T
MAX1<T
1の範囲において、I
TEMP_DER1=0とし、T
MAX2<T
2の範囲において、I
TEMP_DER2=0とすることを特徴とする請求項4または5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記第1駆動回路、前記A/Dコンバータ、前記不揮発性メモリ、前記信号処理装置は同一のモジュールとして構成され、
前記第1温度センサは、前記モジュールの内部に設けられ、
前記第2温度センサは、前記モジュールの外部に設けられることを特徴とする請求項5または6に記載の車両用灯具。
【請求項8】
第2光源と、
第2目標電流I
REF2に安定化された第2駆動電流を前記第2光源に供給する第2駆動回路と、
をさらに備え、
前記不揮発性メモリは、前記第2駆動電流のベース電流値I
BASE2をさらに格納し、
前記信号処理装置は、前記ベース電流値I
BASE2および前記少なくともひとつのパラメータ群に応じて前記第2目標電流I
REF2を計算することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項9】
第1光源を備える車両用灯具に使用されるランプコントロールモジュールであって、
第1目標電流I
REF1に安定化された第1駆動電流を前記第1光源に供給する第1駆動回路と、
前記車両用灯具の状態を示す少なくともひとつの電気信号を受け、前記少なくともひとつの電気信号に応じた少なくともひとつの検出値を生成するA/Dコンバータと、
(i)前記第1駆動電流のベース電流値I
BASE1、(ii)前記少なくともひとつの検出値それぞれにもとづく前記第1光源のディレーティング特性を規定する、少なくともひとつのパラメータ群を格納する不揮発性メモリと、
前記少なくともひとつの検出値を受け、ソフトウェアプログラムを実行することにより、前記ベース電流値I
BASE1および前記少なくともひとつのパラメータ群に応じて前記第1目標電流I
REF1を計算する信号処理装置と、
を備え、前記不揮発性メモリに書き込むパラメータ群の値を変更することで、前記ソフトウェアプログラムを変更せずに、前記ディレーティング特性を変更可能となっていることを特徴とするランプコントロールモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車などの車両に用いられる灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用灯具の高機能化が進められており、ヘッドランプには、ロービーム、ハイビーム、ターンシグナルランプ、ポジションランプ、デイタイムランニングランプなど、役割が異なる複数のランプが設けられ、車両からの制御信号に応じて、複数のランプの光源を適切な輝度で発光させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドランプ内は非常に高温となる。高温状態で、ヘッドランプ内の電気回路を動作させ続けると、部品の寿命が短くなる。このため、ヘッドランプには、温度センサが設けられ、温度が上昇すると、半導体発光素子に供給する駆動電流を減少させる温度ディレーティング機能が実装される。
【0005】
温度ディレーティングの特性は、ヘッドランプに使用する部品や、ヘッドランプを搭載する車両の特性などに応じて、ヘッドランプごとに最適化する必要がある。
【0006】
従来では、ヘッドランプの仕様に適合するように、ソフトウェアプログラムを変更し、あるいはハードウェア(たとえば回路定数)に変更を施すことにより、ヘッドランプを設計する必要があった。
【0007】
本開示はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ディレーティング特性を柔軟に設定可能な車両用灯具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある態様は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、第1光源と、第1目標電流IREF1に安定化された第1駆動電流を第1光源に供給する第1駆動回路と、車両用灯具の状態を示す少なくともひとつの電気信号を受け、少なくともひとつの電気信号に応じた少なくともひとつの検出値を生成するA/Dコンバータと、(i)第1駆動電流のベース電流値IBASE1、(ii)少なくともひとつの検出値それぞれにもとづく第1光源のディレーティング特性を規定する、少なくともひとつのパラメータ群を格納する不揮発性メモリと、少なくともひとつの検出値を受け、ソフトウェアプログラムを実行することにより、ベース電流値IBASE1および少なくともひとつのパラメータ群に応じて第1目標電流IREF1を計算する信号処理装置と、を備える。
【0009】
本開示のある態様は、第1光源を備える車両用灯具に使用されるランプコントロールモジュールに関する。ランプコントロールモジュールは、第1目標電流IREF1に安定化された第1駆動電流を第1光源に供給する第1駆動回路と、車両用灯具の状態を示す少なくともひとつの電気信号を受け、少なくともひとつの電気信号に応じた少なくともひとつの検出値を生成するA/Dコンバータと、(i)第1駆動電流のベース電流値IBASE1、(ii)少なくともひとつの検出値それぞれにもとづく第1光源のディレーティング特性を規定する、少なくともひとつのパラメータ群を格納する不揮発性メモリと、少なくともひとつの検出値を受け、ソフトウェアプログラムを実行することにより、ベース電流値IBASE1および少なくともひとつのパラメータ群に応じて第1目標電流IREF1を計算する信号処理装置と、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本開示のある態様によれば、ディレーティング特性を柔軟に設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係る灯具システムのブロック図である。
【
図2】
図2(a)、(b)は、制御例1におけるディレーティング特性とパラメータ群PRMの関係を示す図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、ディレーティング特性とパラメータ群PRMの関係を示す図である。
【
図4】実施形態2に係る灯具システムのブロック図である。
【
図5】車両用灯具の具体的な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態または複数の実施形態を指すものとして用いる場合がある。
【0014】
一実施形態に係る車両用灯具は、第1光源と、ランプコントロールモジュールと、を備える。ランプコントロールモジュールは、第1目標電流IREF1に安定化された第1駆動電流を第1光源に供給する第1駆動回路と、車両用灯具の状態を示す少なくともひとつの電気信号を受け、少なくともひとつの電気信号に応じた少なくともひとつの検出値を生成するA/Dコンバータと、(i)第1駆動電流のベース電流値IBASE1、(ii)少なくともひとつの検出値それぞれにもとづく第1光源のディレーティング特性を規定する、少なくともひとつのパラメータ群を格納する不揮発性メモリと、少なくともひとつの検出値を受け、ソフトウェアプログラムを実行することにより、ベース電流値IBASE1および少なくともひとつのパラメータ群に応じて第1目標電流IREF1を計算する信号処理装置と、を備える。
【0015】
この構成によると、ソフトウェアプログラムや回路定数等を変更せずに、不揮発性メモリに書き込むパラメータ群の値を変更することで、製品仕様に応じて、ディレーティング特性を変更することができる。これにより、設計期間の短縮、設計コストの削減などの効果が得られる。
【0016】
一実施形態において、少なくともひとつの検出値は、第1温度センサの出力にもとづく温度検出値Tと、第1駆動回路の入力電圧にもとづく電圧検出値VDDと、を含んでもよい。温度検出値Tに関するパラメータ群は、ディレーティング開始温度TS、ディレーティング終了温度TE、減少率αを含んでもよい。電圧検出値VDDに関するパラメータ群は、ディレーティング開始電圧VS、ディレーティング終了電圧VE、減少率βを含んでもよい。信号処理装置は、温度検出値Tに関するディレーティング後の電流量ITEMP_DERを、
ITEMP_DER=IBASE1 (T<TS)
ITEMP_DER=IBASE1{1-α(T-TS)} (TS<T<TE)
ITEMP_DER=IBASE1{1-α(TE-TS)} (TE<T)
にもとづいて計算してもよい。また信号処理装置は、電圧検出値VDDに関するディレーティング後の電流量IVOLT_DERを、
IVOLT_DER=IBASE1 (VDD<VS)
IVOLT_DER=IBASE1{1-β(VDD-VS)} (VS<VDD<VE)
IVOLT_DER=IBASE1{1-β(VE-VS)} (VE<VDD)
にもとづいて計算してもよい。信号処理装置は、電流量ITEMP_DERとIVOLT_DERの少ない方を第1目標電流IREF1としてもよい。
【0017】
温度検出値Tに関するパラメータ群は、異常判定温度TMAXをさらに含んでもよい。信号処理装置は、TMAX<Tの範囲において、ITEMP_DER=0としてもよい。
【0018】
一実施形態において、少なくともひとつの検出値は、第1温度センサの出力にもとづく温度検出値T1と、第2温度センサの出力にもとづく温度検出値T2と、を含んでもよい。温度検出値T1に関するパラメータ群は、ディレーティング開始温度TS1、ディレーティング終了温度TE1、減少率α1を含んでもよい。温度検出値T2に関するパラメータ群は、ディレーティング開始温度TS2、ディレーティング終了温度TE2、減少率α2を含んでもよい。信号処理装置は、温度検出値T1に関するディレーティング後の電流量ITEMP_DER1を、
ITEMP_DER1=IBASE1 (T1<TS1)
ITEMP_DER1=IBASE1{1-α1(T1-TS1)} (TS1<T1<TE1)
ITEMP_DER1=IBASE1{1-α1(TE1-TS1)} (TE1<T1)
にもとづいて計算してもよい。信号処理装置は、温度検出値T2に関するディレーティング後の電流量ITEMP_DER2を、
ITEMP_DER2=IBASE1 (T2<TS2)
ITEMP_DER2=IBASE1{1-α2(T2-TS2)} (TS2<T2<TE2)
ITEMP_DER2=IBASE1{1-α2(TE2-TS2)} (TE2<T2)
にもとづいて計算してもよい。信号処理装置は、電流量ITEMP_DER1とITEMP_DER2の少ない方を第1目標電流IREF1としてもよい。
【0019】
一実施形態において、少なくともひとつの検出値は、第1温度センサの出力にもとづく温度検出値T1と、第2温度センサの出力にもとづく温度検出値T2と、第1駆動回路の入力電圧にもとづく電圧検出値VDDと、を含んでもよい。温度検出値T1に関するパラメータ群は、ディレーティング開始温度TS1、ディレーティング終了温度TE1、減少率α1を含んでもよい。温度検出値T2に関するパラメータ群は、ディレーティング開始温度TS2、ディレーティング終了温度TE2、減少率α2を含んでもよい。電圧検出値VDDに関するパラメータ群として、ディレーティング開始電圧VS、ディレーティング終了電圧VE、減少率βを含んでもよい。信号処理装置は、温度検出値T1に関するディレーティング後の電流量ITEMP_DER1を、
ITEMP_DER1=IBASE1 (T1<TS1)
ITEMP_DER1=IBASE1{1-α1(T1-TS1)} (TS1<T1<TE1)
ITEMP_DER1=IBASE1{1-α1(TE1-TS1)} (TE1<T1)
にもとづいて計算してもよい。信号処理装置は、温度検出値T2に関するディレーティング後の電流量ITEMP_DER2を、
ITEMP_DER2=IBASE1 (T2<TS2)
ITEMP_DER2=IBASE1{1-α2(T2-TS2)} (TS2<T2<TE2)
ITEMP_DER2=IBASE1{1-α2(TE2-TS2)} (TE2<T2)
にもとづいて計算してもよい。信号処理装置は、電圧検出値VDDに関するディレーティング後の電流量IVOLT_DERを、
IVOLT_DER=IBASE1 (VDD<VS)
IVOLT_DER=IBASE1{1-β(VDD-VS)} (VS<VDD<VE)
IVOLT_DER=IBASE1{1-β(VE-VS)} (VE<VDD)
にもとづいて計算してもよい。信号処理装置は、電流量ITEMP_DER1、ITEMP_DER2、IVOLT_DERのうち最も少ないひとつを第1目標電流IREF1としてもよい。
【0020】
温度検出値T1に関するパラメータ群は、異常判定温度TMAX1をさらに含み、温度検出値T2に関するパラメータ群は、異常判定温度TMAX2をさらに含んでもよい。信号処理装置は、TMAX1<T1の範囲において、ITEMP_DER1=0とし、TMAX2<T2の範囲において、ITEMP_DER2=0としてもよい。
【0021】
一実施形態において、第1駆動回路、A/Dコンバータ、不揮発性メモリ、信号処理装置は同一のモジュールとして構成されてもよい。第1温度センサは、モジュールの内部に設けられ、第2温度センサは、モジュールの外部に設けられてもよい。モジュールの内側と外側の両方の温度を監視し、別々のパラメータにもとづいてディレーティング制御を行うことで、ディレーティング特性をさらに柔軟に設計できるようになる。
【0022】
一実施形態において、車両用灯具は第2光源をさらに備えてもよい。ランプコントロールモジュールは、第2目標電流IREF2に安定化された第2駆動電流を第2光源に供給する第2駆動回路をさらに備えてもよい。不揮発性メモリは、第2駆動電流のベース電流値IBASE2をさらに格納し、信号処理装置は、ベース電流値IBASE2および少なくともひとつのパラメータ群に応じて第2目標電流IREF2を計算してもよい。検出値ごとのパラメータ群を、複数の光源で共通化することで、制御を簡素化できる。
【0023】
(実施形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る灯具システム100のブロック図である。灯具システム100は、車両110と、車両用灯具(ヘッドランプ)200とを備える。車両110には、車両側のECU(Electronic Control Unit)やバッテリ、各ランプのスイッチなどが含まれる。
【0027】
車両用灯具200は、ロービーム(Lo)、ハイビーム(Hi)、デイタイムランニングランプ(DRL)、ポジションランプ(POS)、ターンシグナルランプ(TURN)などの機能を備える。
図1には、そのうちの1つに関連する構成のみを示す。
【0028】
車両用灯具200は、第1光源202およびランプコントロールモジュール300を備える。第1光源202は、ロービーム(Lo)、ハイビーム(Hi)、デイタイムランニングランプ(DRL)、ポジションランプ(POS)のひとつである。
【0029】
第1光源202は、ひとつの半導体発光素子で、あるいは直列および/または並列に接続される複数の半導体発光素子で構成することができる。半導体発光素子としては、白色LED(発光ダイオード)や、レーザダイオード、有機EL(Electro Luminescence)素子などが例示される。
図1では、第1光源202は複数のLEDを直列接続してなるLEDバー(LEDストリング)である。第1光源202を構成するLEDの個数は、必要とされる明るさや、意匠を考慮して定めればよく、特に限定されない。
【0030】
車両用灯具200には、車両110から電源ライン102を介して電源電圧+Bが供給される。
【0031】
また車両用灯具200には、車両110から、第1光源202の点消灯を指示する第1点灯要求REQ1が、ビークルバス106を介して供給される。ビークルバスの種類は特に限定されず、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などを用いることができる。
【0032】
ランプコントロールモジュール300は、A/Dコンバータ306、不揮発性メモリ308、バスインタフェース回路320、第1駆動回路330を備える。ランプコントロールモジュール300の主要な構成部品は、ひとつの筐体内に収容され、モジュール化されている。
【0033】
バスインタフェース回路320は、ビークルバス106を介して、車両110と双方向通信可能なトランシーバである。バスインタフェース回路320が受信するデータには、第1点灯要求REQ1が含まれる。
【0034】
第1駆動回路330は、第1目標電流IREF1に安定化された駆動電流ILED1を生成し、第1光源202に供給する。第1駆動回路330は、制御信号CNT1に応じて第1目標電流IREF1を設定可能に構成される。
【0035】
信号処理装置400は、ソフトウェアプログラムを実行可能なプロセッサを含む。信号処理装置400は、マイクロコントローラやCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などで構成することができる。
【0036】
A/Dコンバータ306は、車両用灯具200の状態を示す少なくともひとつ(n≧1)の電気信号Vs1~Vsnを受け、少なくともひとつの電気信号Vs1~Vsnに応じた少なくともひとつの検出値Ds1~Dsnを生成する。後述のように、ある電気信号はサーミスタなどの温度センサの出力であってもよいし、第1駆動回路330の入力電圧(電源電圧)であってもよい。
【0037】
不揮発性メモリ308は、第1駆動電流ILED1のベース電流値IBASE1、少なくともひとつの検出値Ds1~Dsnそれぞれにもとづく第1光源202のディレーティング特性を規定する、少なくともひとつのパラメータ群PRM1~PRMnを格納する。i番目(1≦i≦n)のパラメータ群PRMiは、対応するi番目の検出値Dsiにもとづくディレーティング特性を規定する。不揮発性メモリ308は信号処理装置400と同じパッケージに内蔵されていてもよい。
【0038】
信号処理装置400は、少なくともひとつの検出値Ds1~Dsnを受け、ソフトウェアプログラムを実行することにより、ベース電流値IBASE1および少なくともひとつのパラメータ群PRM1~PRMnに応じて第1目標電流IREF1を計算する。
【0039】
たとえば信号処理装置400は、各検出値Dsi(i=1~n)ついて、ディレーティング後の電流量IDERiを計算する。そして、ディレーティング後の電流量IDER1~IDERnのうち、最も小さい電流量を、第1目標電流IREF1としてもよい。
IREF1=min(IDER1,IDER2,…,IDERn)
min()は、複数の要素の最小値を選択する関数である。
【0040】
信号処理装置400は、点灯要求REQ1に応答して第1駆動回路330をイネーブル化する。そして、上述のソフトウェア処理によって計算した第1目標電流IREF1を含む制御信号CNT1を、第1駆動回路330に与える。
【0041】
以上が車両用灯具200の構成である。この車両用灯具200によれば、ソフトウェアプログラムや回路定数等を変更せずに、不揮発性メモリ308に書き込むパラメータ群PRMの値を変更することで、製品仕様に応じて、ディレーティング特性を変更することができる。これにより、設計期間の短縮、設計コストの削減などの効果が得られる。
【0042】
続いて、ディレーティング制御の具体例を説明する。
【0043】
<制御例1>
制御例1において、信号処理装置400はn=2個の検出値Ds1,Ds2にもとづいてディレーティングを行う。検出値Ds1は、温度センサの出力にもとづく温度検出値Tであり、検出値Ds2は、第1駆動回路330の入力電圧にもとづく電圧検出値VDDである。
【0044】
ディレーティング特性を記述するパラメータ群について説明する。
図2(a)、(b)は、制御例1におけるディレーティング特性とパラメータ群PRMの関係を示す図である。
図2(a)は、温度Tを表す検出値Ds
1にもとづく温度ディレーティング特性を示す。横軸は温度センサ(たとえばサーミスタ)の出力にもとづく検出値(すなわち温度T)を、縦軸は検出値Ds
1に対する温度ディレーティング後の電流量I
TEMP_DERの大きさを表す。この例において、パラメータ群PRM
1は、4個のパラメータ、すなわち
ディレーティング開始温度T
S
ディレーティング終了温度T
E
減少率α
異常判定温度T
MAX
を含み、4個のパラメータによって、温度ディレーティング特性が規定される。ディレーティング後の電流量I
TEMP_DERは、以下の式で表される。
I
TEMP_DER=I
BASE1 (T<T
S)
I
TEMP_DER=I
BASE1{1-α(T-T
S)} (T
S<T<T
E)
I
TEMP_DER=I
BASE1{1-α(T
E-T
S)} (T
E<T<T
MAX)
I
TEMP_DER=0 (T
MAX<T)
【0045】
図2(b)は、電圧を表す検出値Ds
2にもとづく電圧ディレーティング特性を示す。横軸は、電圧にもとづく検出値V
DDを、縦軸は検出値Ds
2に対する電圧ディレーティング後の電流量I
VOLT_DERの大きさを表す。パラメータ群PRM
2は、4個のパラメータ、すなわち、
ディレーティング開始電圧V
S
ディレーティング終了電圧V
E
減少率β
異常判定温度V
MAX
を含み、4個のパラメータによって、電圧ディレーティング特性が規定される。ディレーティング後の電流量I
VOLT_DERは、以下の式で表される。
I
VOLT_DER=I
BASE1 (V
DD<V
S)
I
VOLT_DER=I
BASE1{1-β(V
DD-V
S)} (V
S<V
DD<V
E)
I
VOLT_DER=I
BASE1{1-β(V
E-V
S)} (V
E<V
DD<V
MAX)
I
VOLT_DER=0 (V
MAX<V
DD)
【0046】
温度と電圧の両方を考慮した後の目標電流IREF1は、
IREF1=min(ITEMP_DER,IVOLT_DER)
となる。
【0047】
<制御例2>
制御例2において、信号処理装置400はn=2個の検出値Ds1,Ds2にもとづいてディレーティングを行う。検出値Ds1は、第1温度センサの出力にもとづく温度検出値T1であり、検出値Ds2は、第2温度センサの出力にもとづく温度検出値T2である。
【0048】
ディレーティング特性を記述するパラメータ群について説明する。
図3(a)、(b)は、ディレーティング特性とパラメータ群PRMの関係を示す図である。
図3(a)は、温度T
1を表す検出値Ds
1にもとづく温度ディレーティング特性を示す。パラメータ群PRM
1は、4個のパラメータ、すなわち
ディレーティング開始温度T
S1
ディレーティング終了温度T
E1
減少率α
1
異常判定温度T
MAX1
を含み、4個のパラメータによって、温度ディレーティング特性が規定される。ディレーティング後の電流量I
TEMP_DER1は、以下の式で表される。
I
TEMP_DER1=I
BASE1 (T
1<T
S1)
I
TEMP_DER1=I
BASE1{1-α
1(T
1-T
S1)} (T
S1<T
1<T
E1)
I
TEMP_DER1=I
BASE1{1-α
1(T
E1-T
S1)} (T
E1<T
1<T
MAX1)
I
TEMP_DER1=0 (T
MAX1<T
1)
【0049】
図3(b)は、温度T
2を表す検出値Ds
2にもとづく温度ディレーティング特性を示す。パラメータ群PRM
2は、4個のパラメータ、すなわち、
ディレーティング開始温度T
S2
ディレーティング終了温度T
E2
減少率α
2
異常判定温度T
MAX2
を含み、4個のパラメータによって、温度ディレーティング特性が規定される。ディレーティング後の電流量I
TEMP_DER2は、以下の式で表される。
I
TEMP_DER2=I
BASE1 (T
2<T
S2)
I
TEMP_DER2=I
BASE1{1-α(T
2-T
S2)} (T
S2<T
2<T
E2)
I
TEMP_DER2=I
BASE1{1-α
2(T
E2-T
S2)} (T
E2<T
2<T
MAX2)
I
TEMP_DER2=0 (T
MAX2<T
2)
【0050】
2つの温度T1,T2の両方を考慮した後の目標電流IREF1は、
IREF1=min(ITEMP_DER1,ITEMP_DER2)
となる。
【0051】
<制御例3>
制御例3において、信号処理装置400はn=3個の検出値Ds1~Ds3にもとづいてディレーティングを行う。検出値Ds1は、第1温度センサの出力にもとづく温度検出値T1であり、検出値Ds2は、第2温度センサの出力にもとづく温度検出値T2であり、検出値Ds3は、電圧を表す電圧検出値VDDである。3個の検出値T1,T2,VDDに対応して、3個のパラメータ群が規定される。各パラメータ群については、制御例1,2で説明した通りである。信号処理装置400は、3個の電流量ITEMP_DER1,ITEMP_DER2,IVOLT_DERを計算し、それらの最小値min(ITEMP_DER1,ITEMP_DER2,IVOLT_DER)を、第1目標電流IREF1とする。
【0052】
(実施形態2)
実施形態1では、1個の光源を対象とするディレーティング制御を説明したがその限りでなく、2個以上のディレーティング制御にも本技術は適用可能である。
【0053】
図4は、実施形態2に係る灯具システム100のブロック図である。車両用灯具200の構成について、実施形態1との相違点を中心に説明する。車両用灯具200は、第1光源202、第2光源204およびランプコントロールモジュール300を備える。第1光源202は、ロービーム(Lo)、ハイビーム(Hi)、デイタイムランニングランプ(DRL)、ポジションランプ(POS)のひとつであり、第2光源204は、別のひとつ、あるいはターンシグナルランプでありうる。
【0054】
車両用灯具200には、車両110から、第1光源202の点消灯を指示する第1点灯要求REQ1および第2光源204の点消灯を指示する第1点灯要求REQ2が、ビークルバス106を介して供給される。
【0055】
ランプコントロールモジュール300は、A/Dコンバータ306、不揮発性メモリ308、バスインタフェース回路320、第1駆動回路330、第2駆動回路340を備える。
【0056】
バスインタフェース回路320は、ビークルバス106を介して、車両110と双方向通信可能なトランシーバである。バスインタフェース回路320が受信するデータには、第1点灯要求REQ1、第2点灯要求REQ2が含まれる。
【0057】
第1駆動回路330は、第1目標電流IREF1に安定化された駆動電流ILED1を生成し、第1光源202に供給する。第1駆動回路330は、第1制御信号CNT1に応じて第1目標電流IREF1を設定可能に構成される。
【0058】
第2駆動回路340は、第2目標電流IREF2に安定化された駆動電流ILED2を生成し、第2光源204に供給する。第2駆動回路340は、第2制御信号CNT2に応じて第2目標電流IREF2を設定可能に構成される。
【0059】
信号処理装置400は、点灯要求REQ1に応答して第1駆動回路330をイネーブル化する。そして、上述のソフトウェア処理によって計算した第1目標電流IREF1を含む制御信号CNT1を、第1駆動回路330に与える。また点灯要求REQ2に応答して第2駆動回路340をイネーブル化する。そして、上述のソフトウェア処理によって計算した第2目標電流IREF2を含む制御信号CNT2を、第2駆動回路340に与える。
【0060】
不揮発性メモリ308は、第1駆動電流ILED1のベース電流値IBASE1、第2駆動電流ILED2のベース電流値IBASE2、少なくともひとつの検出値Ds1~Dsnそれぞれにもとづくディレーティング特性を規定する、少なくともひとつのパラメータ群PRM1~PRMnを格納する。i番目(1≦i≦n)のパラメータ群PRMiは、対応するi番目の検出値Dsiにもとづくディレーティング特性を規定する。
【0061】
本実施形態において複数のパラメータ群PRM1~PRMnは、2つの光源(駆動電流)のディレーティング制御で共通化される。信号処理装置400は、少なくともひとつの検出値Ds1~Dsnを受け、ソフトウェアプログラムを実行することにより、ベース電流値IBASE1および少なくともひとつのパラメータ群PRM1~PRMnに応じて第1目標電流IREF1を計算する。また信号処理装置400は、少なくともひとつの検出値Ds1~Dsnを受け、ソフトウェアプログラムを実行することにより、ベース電流値IBASE2および少なくともひとつのパラメータ群PRM1~PRMnに応じて第2目標電流IREF2を計算する。
【0062】
実施形態2におけるディレーティング制御の例を説明する。
【0063】
<制御例4>
制御例4において、信号処理装置400はn=2個の検出値Ds1,Ds2にもとづいてディレーティングを行う。検出値Ds1は、温度センサの出力にもとづく温度検出値Tであり、検出値Ds2は電圧検出値VDDである。
【0064】
ディレーティング特性を記述するパラメータ群は、制御例1で説明した通りである。ディレーティング後の第1駆動電流ILED1の電流量I1_TEMP_DERは、以下の式で表される。
I1_TEMP_DER=IBASE1 (T<TS)
I1_TEMP_DER=IBASE1{1-α(T-TS)} (TS<T<TE)
I1_TEMP_DER=IBASE1{1-α(TE-TS)} (TE<T<TMAX)
I1_TEMP_DER=0 (TMAX<T)
【0065】
ディレーティング後の電流量I1_VOLT_DERは、以下の式で表される。
I1_VOLT_DER=IBASE1 (VDD<VS)
I1_VOLT_DER=IBASE1{1-β(VDD-VS)} (VS<VDD<VE)
I1_VOLT_DER=IBASE1{1-β(VE-VS)} (VE<VDD<VMAX)
I1_VOLT_DER=0 (VMAX<VDD)
【0066】
温度と電源電圧の両方を考慮した後の第1目標電流IREF1は、
IREF1=min(I1_TEMP_DER,I1_VOLT_DER)
となる。
【0067】
温度ディレーティング後の第2駆動電流ILED2の電流量I2_TEMP_DERは、以下の式で表される。
I2_TEMP_DER=IBASE2 (T<TS)
I2_TEMP_DER=IBASE2{1-α(T-TS)} (TS<T<TE)
I2_TEMP_DER=IBASE2{1-α(TE-TS)} (TE<T<TMAX)
I2_TEMP_DER=0 (TMAX<T)
【0068】
電圧ディレーティング後の電流量I2_VOLT_DERは、以下の式で表される。
I2_VOLT_DER=IBASE2 (VDD<VS)
I2_VOLT_DER=IBASE2{1-β(VDD-VS)} (VS<VDD<VE)
I2_VOLT_DER=IBASE2{1-β(VE-VS)} (VE<VDD<VMAX)
I2_VOLT_DER=0 (VMAX<VDD)
【0069】
温度と電源電圧の両方を考慮した後の第2目標電流IREF2は、
IREF2=min(I2_TEMP_DER,I2_VOLT_DER)
となる。
【0070】
<制御例5>
制御例5において、信号処理装置400はn=2個の検出値Ds1,Ds2にもとづいてディレーティングを行う。検出値Ds1は、第1温度センサの出力にもとづく温度検出値T1であり、検出値Ds2は、第2温度センサの出力にもとづく温度検出値T2である。
【0071】
信号処理装置400は、第1光源202のディレーティングに関連して以下の値を計算する。
I1_TEMP_DER1=IBASE1 (T1<TS1)
I1_TEMP_DER1=IBASE1{1-α1(T1-TS1)} (TS1<T1<TE1)
I1_TEMP_DER1=IBASE1{1-α1(TE1-TS1)} (TE1<T1<TMAX1)
I1_TEMP_DER1=0 (TMAX1<T1)
I1_TEMP_DER2=IBASE1 (T2<TS2)
I1_TEMP_DER2=IBASE1{1-α(T2-TS2)} (TS2<T2<TE2)
I1_TEMP_DER2=IBASE1{1-α2(TE2-TS2)} (TE2<T2<TMAX2)
I1_TEMP_DER2=0 (TMAX2<T2)
【0072】
2つの温度T1,T2の両方を考慮した後の目標電流IREF1は、
IREF1=min(I1_TEMP_DER1,I1_TEMP_DER2)
となる。
【0073】
同様に信号処理装置400は、第2光源204のディレーティングに関連して以下の値を計算する。
I2_TEMP_DER1=IBASE2 (T1<TS1)
I2_TEMP_DER1=IBASE2{1-α1(T1-TS1)} (TS1<T1<TE1)
I2_TEMP_DER1=IBASE2{1-α1(TE1-TS1)} (TE1<T1<TMAX1)
I2_TEMP_DER1=0 (TMAX1<T1)
I2_TEMP_DER2=IBASE2 (T2<TS2)
I2_TEMP_DER2=IBASE2{1-α(T2-TS2)} (TS2<T2<TE2)
I2_TEMP_DER2=IBASE2{1-α2(TE2-TS2)} (TE2<T2<TMAX2)
I2_TEMP_DER2=0 (TMAX2<T2)
【0074】
2つの温度T1,T2の両方を考慮した後の目標電流IREF2は、
IREF2=min(I2_TEMP_DER1,I2_TEMP_DER2)
となる。
【0075】
<制御例6>
制御例6では、制御例3と同様に、信号処理装置400はn=3個の検出値Ds1~Ds3にもとづいてディレーティングを行う。検出値Ds1は、第1温度センサの出力にもとづく温度検出値T1であり、検出値Ds2は、第2温度センサの出力にもとづく温度検出値T2であり、検出値Ds3は、電源電圧を表す電圧検出値VDDである。
【0076】
信号処理装置400は、第1光源202に関連して、3個の電流量I1_TEMP_DER1,I1_TEMP_DER2,I1_VOLT_DERを計算し、それらの最小値min(I1_TEMP_DER1,I1_TEMP_DER2,I1_VOLT_DER)を、第1目標電流IREF1とする。また信号処理装置400Aは、第2光源204に関連して、3個の電流量I2_TEMP_DER1,I2_TEMP_DER2,I2_VOLT_DERを計算し、それらの最小値min(I2_TEMP_DER1,I2_TEMP_DER2,I2_VOLT_DER)を、第2目標電流IREF2とする。
【0077】
続いて、車両用灯具200のより具体的な構成例を説明する。
【0078】
図5は、車両用灯具200Aの具体的な構成例を示すブロック図である。車両用灯具200Aは、ランプコントロールモジュール300Aと、第1光源202~第5光源210を備える。上述のように、第1光源202はターンシグナルランプ用、第2光源204はDRL/ポジションランプ兼用である。第3光源206はロービーム用、第4光源208はハイビーム用、第5光源210は
SM用の光源である。
【0079】
車両用灯具200Aに与えられる電圧や信号について説明する。
+BLCM: 車両用灯具200Aの主電源 (12Vor24V)
+VBU:
CAN-H,CAN-L: ビークルバス
IG1: イグニッションの状態
HL_BU:
TURN_SYNC:ターン同期信号
【0080】
電源回路302は、電圧VBUを受け、5V程度の電源電圧VDDを生成する。電源電圧VDDは、マイクロコントローラ390やその他の回路に供給される。
【0081】
保護回路305は、逆接防止用のダイオードや、サージ対策用のツェナーダイオードなどを含み、主電源電圧+BLCMから、車両用灯具200Aを保護する。
【0082】
電源回路304は、昇圧型DC/DCコンバータであり、車両からの電源電圧+BLCMを昇圧し、たとえば40V程度の高電源電圧VDDHを発生する。
【0083】
サーミスタ220,222は、第3光源206および第2光源204の温度を監視するために設けられる。また、ランプコントロールモジュール300Aの回路基板上には、サーミスタ224が設けられる。
【0084】
A/Dコンバータ306は、ランプコントロールモジュール300Aの複数のノードの電圧や電流、サーミスタの電圧を、デジタル信号に変換する。この例では、A/Dコンバータ306の入力のひとつは、電源回路304の出力電圧、すなわち第1駆動回路330および第2駆動回路340の入力電圧である。A/Dコンバータ306の出力ADC_OUTは、マイクロコントローラ390に供給される。マイクロコントローラ390は、上述の信号処理装置400と不揮発性メモリ308を内蔵する。マイクロコントローラ390は、A/Dコンバータ306を内蔵してもよい。
【0085】
入力インタフェース回路310は、車両110からジカ線104を介して、ターン同期信号TURN_SYNCを受信する。ターン同期信号TURN_SYNCは、ターンシグナルランプの点滅を指示する信号であり、ターンシグナルランプの点滅時には、ハイレベルとローレベルを所定の周期で交互に繰り返すパルス信号となり、ハイ区間が点灯、ロー区間が消灯に対応付けられる。ターンシグナルランプの非点滅状態(消灯状態)において、ターン同期信号TURN_SYNCはローに固定される。入力インタフェース回路310は、単なるバッファであってもよく、ターン同期信号TURN_SYNCを整形する。
【0086】
(ターンシグナルランプ)
第1駆動回路330は、定電流出力の降圧DC/DCコンバータ332を含み、駆動電流ILED1を生成する。降圧DC/DCコンバータ332には、制御信号CNT1として、イネーブル信号EN_BUCK1および調光信号CURRENT_PWM1が供給される。降圧DC/DCコンバータ332は、イネーブル信号EN_BUCK1がアサート(たとえばハイ)のときに動作状態となり、調光信号CURRENT_PWM1に応じた電流量の駆動電流ILED1を生成する。調光信号CURRENT_PWM1は、PWM信号であり、降圧DC/DCコンバータ332のコントローラICは、調光信号CURRENT_PWM1のデューティサイクルを検出し、デューティサイクルに応じて駆動電流ILED1の電流量を変化させる(アナログ調光)。つまり駆動電流ILED1の目標値IREF1は、調光信号CURRENT_PWM1のデューティサイクルに応じて設定される。上述のように第1光源202を点滅させるために、信号処理装置400は、ターン同期信号TURN_SYNCに応じて、イネーブル信号EN_BUCK1をスイッチングする。
【0087】
DC/DCコンバータ332は、フェイル情報や診断情報DC1_Diagを、信号処理装置400に送信する。
【0088】
(DRLおよびポジションランプ)
本実施形態において、第2光源204と第3光源206は直列に接続される。光源204,206は、共通の降圧DC/DCコンバータ342および2個のバイパススイッチ344,354により駆動される。第2光源204は、降圧DC/DCコンバータ342およびバイパススイッチ344の組み合わせである第2駆動回路340により駆動される。
【0089】
降圧DC/DCコンバータ342に供給されるイネーブル信号EN_BUCK2、調光信号CURRENT_PWM2と、バイパススイッチ344に供給されるPWM信号DRL_PWMが、上述の制御信号CNT2に対応する。
【0090】
降圧DC/DCコンバータ342は、イネーブル信号EN_BUCK2がアサート(たとえばハイ)のときに動作状態となり、調光信号CURRENT_PWM2に応じた電流量の駆動電流IDRVを生成する。調光信号CURRENT_PWM2は、PWM信号であり、降圧DC/DCコンバータ342のコントローラICは、調光信号CURRENT_PWM2のデューティサイクルに応じて駆動電流IDRVの電流量を変化させる(アナログ調光)。
【0091】
バイパススイッチ344のオン、オフは、PWM信号DRL_PWMによって制御される。バイパススイッチ344がオフの期間、駆動電流IDRVは、第2光源204に供給され、バイパススイッチ344がオンの期間、駆動電流IDRVは第2光源204には供給されない。信号処理装置400は、PWM信号DRL_PWMを変化させることにより、第2光源204に供給される駆動電流ILED2の平均値を変化させ、第2光源204の実効的な輝度を変化させることができる。
【0092】
たとえば信号処理装置400は、テーブルの値VALに応じて、PWM信号DRL_PWMのデューティサイクルを変化させることにより、第2光源204の輝度を変化させ、DRLとポジションランプの機能を切りかえる。
【0093】
(ロービーム)
降圧DC/DCコンバータ342とバイパススイッチ354の組み合わせは、第3光源206を駆動する第3駆動回路350と把握される。バイパススイッチ354は、Lo_PWM信号に応じて、オンオフが制御される。
【0094】
DC/DCコンバータ342は、フェイル情報や診断情報DC2_Diagを、信号処理装置400に送信する。
【0095】
(ハイビーム)
第4光源208を駆動する第4駆動回路360は、降圧DC/DCコンバータ362を含む。降圧DC/DCコンバータ362は、イネーブル信号EN_BUCK3がアサート(たとえばハイ)のときに動作状態となり、調光信号CURRENT_PWM4に応じた電流量の駆動電流ILED4を生成する。調光信号CURRENT_PWM4は、PWM信号であり、降圧DC/DCコンバータ362のコントローラICは、調光信号CURRENT_PWM4のデューティサイクルに応じて駆動電流ILED4の電流量を変化させる(アナログ調光)。
【0096】
ハイビームは、ADB(Adaptive Driving Beam)ランプであってもよい。この場合、ハイビーム用の第4光源208を構成する複数のLEDは、オン、オフを個別制御可能に構成すればよい。具体的には、LEDチップ毎に、バイパススイッチを設け、遮光領域に対応するLEDと並列なバイパススイッチをオンするように制御すればよい。
【0097】
(SM)
第5駆動回路370は、制御信号IPD1_Onに応じてオン、オフが制御され、オン状態において、第5光源210に駆動電流ILED5を供給し、第5光源210を点灯させる。
【0098】
図5の車両用灯具200Aにおけるディレーティング制御を説明する。マイクロコントローラ390は、サーミスタ220,222,224の出力(つまり温度情報)や、電圧V
DDHを示す検出値にもとづいて、ディレーティング制御を行う。
【0099】
たとえば、DRL/POS用の第2光源204に関して、第2駆動回路340の入力電圧VDDH、サーミスタ222の出力およびサーミスタ224の出力にもとづく3個の検出値にもとづいて、駆動電流ILED2をディレーティング制御してもよい。
【0100】
また、ロービーム用の第3光源206に関して、駆動回路350の入力電圧VDDH、サーミスタ220の出力およびサーミスタ224の出力にもとづく3個の検出値にもとづいて、駆動電流ILED3をディレーティング制御してもよい。
【0101】
また、ターンシグナルランプ用の第1光源202に関して、駆動回路330の入力電圧VDDHおよびサーミスタ224の出力にもとづく2個の検出値にもとづいて、駆動電流ILED1をディレーティング制御してもよい。
【0102】
また、ハイビーム用の第4光源208に関して、駆動回路360の入力電圧VDDHおよびサーミスタ224の出力にもとづく2個の検出値にもとづいて、駆動電流ILED4をディレーティング制御してもよい。
【0103】
この場合、不揮発性メモリ308には、電圧VDDHに関するディレーティングを規定するパラメータ群、サーミスタ220に関するディレーティングを規定するパラメータ群、サーミスタ222に関するディレーティングを規定するパラメータ群、サーミスタ224に関するディレーティングを規定するパラメータ群を書き込めばよい。
【0104】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0105】
図5の車両用灯具200Aにおいて、電源回路304を省略して、DC/DCコンバータ342,332,352を昇圧コンバータで構成してもよい。
【0106】
図5の車両用灯具200Aにおいて、第2光源204と第3光源206を共通のコンバータで駆動したがそれに限定されず、第2光源204と第3光源206を別々のコンバータによって駆動してもよい。
【0107】
ディレーティングの特性を規定するパラメータは、上述したそれに限定されず、ディレーティング特性が一意に定まるように定義すればよい。またディレーティング特性の形状は上述したそれに限定されず、2次関数やその他の関数を用いて表してもよい。
【0108】
実施形態では、ランプコントロールモジュール300の構成要素を同一筐体に収容してモジュール化したが、それに限定されず、複数の筐体、パッケージ、モジュール、基板に分割して構成されてもよい。
【0109】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0110】
100…灯具システム、102…電源ライン、104…ジカ線、106…ビークルバス、110…車両、200…車両用灯具、202…第1光源、204…第2光源、206…第3光源、208…第4光源、210…第5光源、300…ランプコントロールモジュール、302,304…電源回路、305…保護回路、306…A/Dコンバータ、310…入力インタフェース回路、320…バスインタフェース回路、330…第1駆動回路、340…第2駆動回路、350…第3駆動回路、360…第4駆動回路、370…第5駆動回路、390…マイクロコントローラ、400…信号処理装置。