(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】導電性粒子、導電材料及び接続構造体
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20250219BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20250219BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20250219BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20250219BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
H01B5/00 C
H01B5/00 G
H01B5/00 M
H01B1/00 C
H01B1/00 G
H01B1/00 M
H01B1/22 A
H01B5/16
H01R11/01 501C
(21)【出願番号】P 2020538861
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012462
(87)【国際公開番号】W WO2020189776
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019051020
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】笹平 昌男
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-241280(JP,A)
【文献】特開2016-006764(JP,A)
【文献】特開2017-009702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
H01B 1/00
H01B 1/22
H01B 5/16
H01R 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と、
前記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部と、
前記第1の導電部の表面上に配置された第2の導電部とを備え、
前記第1の導電部が、ニッケルとホウ素とを含み、かつ、リンを含まず、
前記第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、前記第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値が、1.0重量%以上
5重量%以下であり、
前記第1の導電部における主金属の標準電極電位が、前記第2の導電部における主金属の標準電極電位よりも小さい、導電性粒子。
【請求項2】
前記第1の導電部における主金属の標準電極電位と、前記第2の導電部における主金属の標準電極電位との差の絶対値が、0.05V以上3V以下である、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項3】
前記第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量が、0重量%以上10重量%以下であり、
前記第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量が、0重量%以上10重量%以下である、請求項1又は2に記載の導電性粒子。
【請求項4】
前記第1の導電部の全体100重量%中におけるニッケルの平均含有量が、50重量%以上99.9重量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項5】
前記第1の導電部の全体100重量%中におけるホウ素の平均含有量が、0.001重量%以上10重量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項6】
前記第2の導電部における主金属が、錫、銅、パラジウム、ルテニウム、白金、銀、ロジウム、イリジウム又は金である、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項7】
前記第2の導電部の外表面が防錆処理されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項8】
前記第2の導電部の外表面が、炭素数6~22のアルキル基を有する化合物により防錆処理されている、請求項7に記載の導電性粒子。
【請求項9】
前記基材粒子の粒子径が、0.1μm以上100μm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項10】
前記第1の導電部又は前記第2の導電部の外表面に複数の突起を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項11】
前記第1の導電部又は前記第2の導電部の内部又は内側において、複数の前記突起を形成するように、前記第1の導電部又は前記第2の導電部の表面を隆起させている複数の芯物質を備える、請求項10に記載の導電性粒子。
【請求項12】
前記第1の導電部又は前記第2の導電部の内部又は内側において、複数の前記突起を形成するように、前記第1の導電部又は前記第2の導電部の表面を隆起させている複数の芯物質を備えていない、請求項10に記載の導電性粒子。
【請求項13】
前記第2の導電部の外表面上に配置された絶縁性物質を備える、請求項1~12のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項14】
電極と、上記電極の表面上に配置された保護層とを備える保護層付き電極の導電接続用途に用いられる、請求項1~13のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項15】
フレキシブル部材の電極の導電接続用途に用いられる、請求項1~13のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、導電材料。
【請求項17】
第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、
第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1~13のいずれか1項に記載の導電性粒子により形成されているか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されており、
前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記導電性粒子により電気的に接続されている、接続構造体。
【請求項18】
前記第1の導電部における主金属の標準電極電位が、前記第1の電極又は前記第2の電極の外表面の主金属の標準電極電位よりも小さい、請求項17に記載の接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材粒子の表面上に導電部が配置されている導電性粒子に関する。また、本発明は、上記導電性粒子を用いた導電材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂中に導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために用いられている。上記異方性導電材料を用いる接続としては、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等が挙げられる。
【0004】
上記異方性導電材料により、例えば、半導体チップの電極とガラス基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラス基板上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を配置する。次に、半導体チップを積層して、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、導電性粒子を介して電極間を電気的に接続して接続構造体を得る。
【0005】
上記導電性粒子の一例として、下記の特許文献1には、コア粒子と、Niめっき層と、貴金属めっき層と、防錆膜とを備える導電粒子が開示されている。上記Niめっき層は、上記コア粒子を被覆し、Niを含む。上記貴金属めっき層は、上記Niめっき層の少なくとも一部を被覆し、Au及びPdのうち少なくともいずれかを含む。上記防錆膜は、上記めっき層及び上記貴金属めっき層のうち少なくともいずれかを被覆し、有機化合物を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、異方性導電材料を用いて接続構造体を得る際に、電極の接続工程において、従来よりも低圧力での接続、いわゆる低圧実装が行われている。例えば、柔軟なフレキシブルプリント基板上に、半導体チップを直接実装する場合には、フレキシブルプリント基板の変形を抑えるために、低圧での実装を行う必要がある。
【0008】
しかしながら、低圧での実装では、異方性導電材料中の導電性粒子に付与される圧力が低く、十分な導通信頼性が得られないことがある。このため、導電部の最表面には、抵抗値の低い貴金属が用いられ、貴金属部が形成されることがある。
【0009】
また、導電部と電極との間に電位差が存在したり、電極の表面を保護するために保護層が存在したりする場合には、ニッケルを含む導電部が腐食され、十分な導通信頼性が得られないことがある。このため、導電部の最表面には、腐食防止のために貴金属が用いられ、貴金属部が形成されることがある。
【0010】
導電部の最表面に貴金属部が形成されると、貴金属部と下地金属部(一般的にはニッケル-リン合金)との間で金属拡散が起こり、貴金属部と下地金属部との間に非晶質部(リンリッチ部)が形成される場合がある。貴金属部と下地金属部との間に非晶質部(リンリッチ層)が形成されると、実装時に導電部の割れが発生することがある。結果として、電極間の導通信頼性を十分に高めることが困難な場合がある。
【0011】
また、下地金属に用いられるニッケル-リン合金は、ニッケル-ボロン合金や純ニッケル等と比較して、抵抗値が高くなることがある。結果として、電極間の接続抵抗を十分に低くすることが困難な場合がある。
【0012】
本発明の目的は、実装時に導電部の割れの発生を効果的に抑制することができ、電極間の接続抵抗を効果的に低くすることができる導電性粒子を提供することである。また、本発明の目的は、上記導電性粒子を用いた導電材料及び接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広い局面によれば、基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部と、前記第1の導電部の表面上に配置された第2の導電部とを備え、前記第1の導電部が、ニッケルとホウ素とを含み、かつ、リンを含まず、前記第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、前記第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値が、0重量%以上10重量%以下であり、前記第1の導電部における主金属の標準電極電位が、前記第2の導電部における主金属の標準電極電位よりも小さい、導電性粒子が提供される。
【0014】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第1の導電部における主金属の標準電極電位と、前記第2の導電部における主金属の標準電極電位との差の絶対値が、0.05V以上3V以下である。
【0015】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量が、0重量%以上10重量%以下であり、前記第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量が、0重量%以上10重量%以下である。
【0016】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第1の導電部の全体100重量%中におけるニッケルの平均含有量が、50重量%以上99.9重量%以下である。
【0017】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第1の導電部の全体100重量%中におけるホウ素の平均含有量が、0.001重量%以上10重量%以下である。
【0018】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第2の導電部における主金属が、錫、銅、パラジウム、ルテニウム、白金、銀、ロジウム、イリジウム又は金である。
【0019】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第2の導電部の外表面が防錆処理されている。
【0020】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第2の導電部の外表面が、炭素数6~22のアルキル基を有する化合物により防錆処理されている。
【0021】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記基材粒子の粒子径が、0.1μm以上100μm以下である。
【0022】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第1の導電部又は前記第2の導電部の外表面に複数の突起を有する。
【0023】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第1の導電部又は前記第2の導電部の内部又は内側において、複数の前記突起を形成するように、前記第1の導電部又は前記第2の導電部の表面を隆起させている複数の芯物質を備える。
【0024】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第1の導電部又は前記第2の導電部の内部又は内側において、複数の前記突起を形成するように、前記第1の導電部又は前記第2の導電部の表面を隆起させている複数の芯物質を備えていない。
【0025】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記第2の導電部の外表面上に配置された絶縁性物質を備える。
【0026】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記導電性粒子が、電極と、上記電極の表面上に配置された保護層とを備える保護層付き電極の導電接続用途に用いられる。
【0027】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記導電性粒子が、フレキシブル部材の電極の導電接続用途に用いられる。
【0028】
本発明の広い局面によれば、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、導電材料が提供される。
【0029】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、前記接続部が、上述した導電性粒子により形成されているか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されており、前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記導電性粒子により電気的に接続されている、接続構造体が提供される。
【0030】
本発明に係る接続構造体のある特定の局面では、前記第1の導電部における主金属の標準電極電位が、前記第1の電極又は前記第2の電極の外表面の主金属の標準電極電位よりも小さい。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部と、上記第1の導電部の表面上に配置された第2の導電部とを備える。本発明に係る導電性粒子では、上記第1の導電部が、ニッケルとホウ素とを含み、かつ、リンを含まない。本発明に係る導電性粒子では、上記第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、上記第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値が、0重量%以上10重量%以下である。本発明に係る導電性粒子では、上記第1の導電部における主金属の標準電極電位が、上記第2の導電部における主金属の標準電極電位よりも小さい。本発明に係る導電性粒子では、上記の構成が備えられているので、実装時に導電部の割れの発生を効果的に抑制することができ、電極間の接続抵抗を効果的に低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子における第1の導電部において、ホウ素の平均含有量を求める各領域を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子における第1の導電部において、ホウ素の平均含有量を求める各領域を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0034】
(導電性粒子)
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された第1の導電部と、上記第1の導電部の表面上に配置された第2の導電部とを備える。本発明に係る導電性粒子では、上記第1の導電部が、ニッケルとホウ素とを含み、かつ、リンを含まない。本発明に係る導電性粒子では、上記第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、上記第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値が、0重量%以上10重量%以下である。本発明に係る導電性粒子では、上記第1の導電部における主金属の標準電極電位が、上記第2の導電部における主金属の標準電極電位よりも小さい。
【0035】
本発明に係る導電性粒子では、上記の構成が備えられているので、実装時に導電部の割れの発生を効果的に抑制することができ、電極間の接続抵抗を効果的に低くすることができる。
【0036】
一般的に、無電解めっきによりニッケルとホウ素とを含む導電層を形成する場合に、めっきの進行とともにめっき浴中のホウ素の含有量が変わる。このため、上記第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、上記第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値とに差異が生じる。本発明では、反応中の温度、ニッケルイオン濃度、還元剤滴下速度、及び撹拌条件等を適切に管理することで、ニッケルめっき膜形成時にニッケルめっき膜中のホウ素の含有量を高精度に均一に保つ方法等を採用することで、上記の絶対値を小さくすることを実現している。
【0037】
低圧実装において、十分な導通信頼性を確保するために、また、導電部の腐食を防止するために、導電部の最表面に貴金属が用いられ、貴金属部が形成されることがある。
【0038】
導電部の最表面に貴金属部が形成されると、貴金属部と下地金属部(一般的にはニッケル-リン合金)との間で金属拡散が起こり、貴金属部と下地金属部との間に非晶質部(リンリッチ部)が形成される場合がある。貴金属部と下地金属部との間に非晶質部(リンリッチ部)が形成されると、実装時に導電部の割れが発生することがある。結果として、従来の導電性粒子では、電極間の導通信頼性を十分に高めることが困難な場合がある。
【0039】
また、下地金属に用いられるニッケル-リン合金は、ニッケル-ボロン合金や純ニッケル等と比較して、抵抗値が高くなることがある。結果として、電極間の接続抵抗を十分に低くすることが困難な場合がある。
【0040】
本発明に係る導電性粒子では、上記の構成が採用されているので、導電部に貴金属が用いられても、貴金属部と下地金属部との間で金属拡散が起こることがなく、貴金属部と下地金属部との間に非晶質部(リンリッチ部)が形成されることもない。従って、実装時に導電部の割れの発生を効果的に抑制することができ、電極間の接続抵抗を効果的に低くすることができる。
【0041】
本発明に係る導電性粒子では、上記第1の導電部における主金属の標準電極電位が、上記第2の導電部における主金属の標準電極電位よりも小さい。実装時に導電部の割れの発生をより一層効果的に抑制する観点、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記第1の導電部における主金属の標準電極電位と、上記第2の導電部における主金属の標準電極電位との差の絶対値は、好ましくは0.05V以上、より好ましくは0.1V以上、さらに好ましくは0.5V以上である。実装時に導電部の割れの発生をより一層効果的に抑制する観点、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記第1の導電部における主金属の標準電極電位と、上記第2の導電部における主金属の標準電極電位との差の絶対値は、好ましくは3V以下、より好ましくは2.1V以下、さらに好ましくは1.3V以下である。導電部における主金属とは、導電部に含まれる金属種のうち、最も含有量の多い金属種を意味する。
【0042】
以下、図面を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
【0043】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0044】
図1に示す導電性粒子1は、基材粒子2と、第1の導電部3と、第2の導電部4とを備える。第1の導電部3は、基材粒子2の表面上に配置されている。第2の導電部4は、第1の導電部3の表面上に配置されている。導電性粒子1は、基材粒子2の表面上に第1の導電部3が配置されており、第1の導電部3の表面上に第2の導電部4が配置されている。本実施形態では、導電性粒子1は、基材粒子2の表面が第1の導電部3により被覆された被覆粒子であり、第1の導電部3の表面が第2の導電部4により被覆された被覆粒子である。上記導電性粒子は、上記基材粒子の表面の全てが上記第1の導電部により覆われていてもよく、上記基材粒子の表面の一部が上記第1の導電部により覆われていてもよい。上記導電性粒子は、上記第1の導電部の表面の全てが上記第2の導電部により覆われていてもよく、上記第1の導電部の表面の一部が上記第2の導電部により覆われていてもよい。
【0045】
導電性粒子1では、第1の導電部3が、ニッケルとホウ素とを含み、かつ、リンを含まない。第1の導電部3の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、第1の導電部3の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値は、0重量%以上10重量%以下である。該絶対値が0重量%であるときに、2つの領域(R1),(R2)におけるホウ素の平均含有量は同じである。上記領域(R1)は、
図5において、第1の導電部3の内表面(基材粒子2の外表面)と、破線L1との間の領域である。上記領域(R2)は、
図5において、第1の導電部3の外表面(第2の導電部4の内表面)と、破線L2との間の領域である。
【0046】
導電性粒子1は、後述する導電性粒子21とは異なり、芯物質を有しない。導電性粒子1は後述する導電性粒子21,31とは異なり、突起を有しない。導電性粒子1は球状である。第1の導電部3及び第2の導電部4は外表面に突起を有しない。このように、本発明に係る導電性粒子は導電性の表面に突起を有していなくてもよく、球状であってもよい。また、導電性粒子1は、後述する導電性粒子21,31とは異なり、絶縁性物質を有しない。但し、導電性粒子1は、第2の導電部4の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。
【0047】
導電性粒子1では、基材粒子2と第1の導電部3とが接している。導電性粒子1では、第1の導電部3と第2の導電部4とが接している。
【0048】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0049】
図2に示す導電性粒子11は、基材粒子2と、第1の導電部13と、第2の導電部4とを備える。
【0050】
導電性粒子1と導電性粒子11とでは、第1の導電部3と第1の導電部13とが異なる。第1の導電部13は全体で、基材粒子2側に配置された導電部13Aと、基材粒子2側とは反対側に配置された導電部13Bとを有する。導電性粒子1では、1層構造の第1の導電部3が形成されているのに対して、導電性粒子11では、導電部13Aと導電部13Bとを有する2層構造の第1の導電部13が形成されている。導電部13Aと導電部13Bとは、異なる導電部として形成されていてもよく、同一の導電層として形成されていてもよい。上記第1の導電部は、1層構造であってもよく、2層以上の複層構造であってもよい。
【0051】
導電部13Aは、基材粒子2の表面上に配置されている。基材粒子2と導電部13Bとの間に、導電部13Aが配置されている。導電部13Aは、基材粒子2に接している。導電部13Bは、導電部13Aに接している。基材粒子2の表面上に導電部13Aが配置されており、導電部13Aの外表面上に導電部13Bが配置されている。
【0052】
導電性粒子11では、第1の導電部13が、ニッケルとホウ素とを含み、かつ、リンを含まない。例えば、導電部13Aがニッケル-ボロンめっき層であり、導電部13Bが純ニッケル層又はニッケル-錫合金層であってもよい。第1の導電部13の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、第1の導電部13の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値は、0重量%以上10重量%以下である。上記領域(R1)は、
図6において、第1の導電部13の内表面(導電部13Aの内表面、基材粒子2の外表面)と、破線L1との間の領域である。上記領域(R2)は、
図6において、第1の導電部13の外表面(導電部13Bの外表面、第2の導電部4の内表面)と、破線L2との間の領域である。上記第1の導電部が2層以上の複層構造である場合には、上記領域(R1)及び上記領域(R2)は、上記第1の導電部全体の厚みから算出されることが好ましい。
【0053】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0054】
図3に示す導電性粒子21は、基材粒子2と、第1の導電部23と、第2の導電部24と、複数の芯物質25と、複数の絶縁性物質26とを備える。第1の導電部23は、基材粒子2の表面上に配置されている。第2の導電部24は、第1の導電部23の表面上に配置されている。導電性粒子21は、基材粒子2の表面上に第1の導電部23が配置されており、第1の導電部23の表面上に第2の導電部24が配置されている。
【0055】
導電性粒子21では、第1の導電部23が、ニッケルとホウ素とを含み、かつ、リンを含まない。第1の導電部23の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、第1の導電部3Aの外表面から内側に向かって厚み1/5の領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値は、0重量%以上10重量%以下である。
【0056】
導電性粒子21は、導電性の表面に複数の突起21Aを有する。第1の導電部23は、外表面に複数の突起23Aを有する。第2の導電部24は、外表面に複数の突起24Aを有する。複数の芯物質25が、基材粒子2の表面上に配置されている。複数の芯物質25は第1の導電部23内に埋め込まれている。複数の芯物質25は第2の導電部24の内側に埋め込まれている。芯物質25は、突起21A,23A,24Aの内側に配置されている。第1の導電部23は、複数の芯物質25を被覆している。複数の芯物質25により第1の導電部23及び第2の導電部24の外表面が隆起されており、突起21A,23A,24Aが形成されている。
【0057】
導電性粒子21は、第2の導電部24の外表面上に配置された絶縁性物質26を有する。第2の導電部24の外表面の少なくとも一部の領域が、絶縁性物質26により被覆されている。絶縁性物質26は絶縁性を有する材料により形成されている。本実施形態では、絶縁性物質26は、絶縁性粒子である。このように、本発明に係る導電性粒子は、上記第2の導電部の外表面上に配置された上記絶縁性物質を有していてもよい。但し、本発明に係る導電性粒子は、上記絶縁性物質を必ずしも有していなくてもよい。
【0058】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0059】
図4に示す導電性粒子31は、基材粒子2と、第1の導電部33と、第2の導電部34と、複数の絶縁性物質26とを備える。第1の導電部33は、基材粒子2の表面上に配置されている。第2の導電部34は、第1の導電部33の表面上に配置されている。導電性粒子31は、基材粒子2の表面上に第1の導電部33が配置されており、第1の導電部33の表面上に第2の導電部34が配置されている。
【0060】
導電性粒子31では、第1の導電部33が、ニッケルとホウ素とを含み、かつ、リンを含まない。第1の導電部33の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、第1の導電部3Bの外表面から内側に向かって厚み1/5の領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値は、0重量%以上10重量%以下である。
【0061】
導電性粒子31は、導電性粒子21とは異なり、芯物質を備えていない。導電性粒子31は芯物質を備えていないが、導電性の表面に複数の突起31Aを有する。第1の導電部33は、外表面に複数の突起33Aを有する。第2の導電部34は、外表面に複数の突起34Aを有する。
【0062】
第1の導電部33は、第1の部分と、該第1の部分よりも厚みが厚い第2の部分とを有する。複数の突起を除く部分が、第1の導電部33の上記第1の部分である。複数の突起は、第1の導電部33の厚みが厚い上記第2の部分である。
【0063】
導電性粒子31は、第2の導電部34の外表面上に配置された絶縁性物質26を有する。第2の導電部34の外表面の少なくとも一部の領域が、絶縁性物質26により被覆されている。絶縁性物質26は絶縁性を有する材料により形成されている。本実施形態では、絶縁性物質26は、絶縁性粒子である。このように、本発明に係る導電性粒子は、上記第2の導電部の外表面上に配置された上記絶縁性物質を有していてもよい。但し、本発明に係る導電性粒子は、上記絶縁性物質を必ずしも有していなくてもよい。
【0064】
以下、導電性粒子の他の詳細について説明する。
【0065】
(基材粒子)
上記基材粒子としては、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。上記基材粒子は、金属粒子を除く基材粒子であることが好ましく、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であることがより好ましい。上記基材粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを有していてもよく、コアシェル粒子であってもよい。上記コアが有機コアであってもよく、上記シェルが無機シェルであってもよい。
【0066】
上記基材粒子は、樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であることがさらに好ましく、樹脂粒子であってもよく、有機無機ハイブリッド粒子であってもよい。上記導電性粒子を用いて電極間を接続する際には、上記導電性粒子を電極間に配置した後、圧着することにより上記導電性粒子を圧縮させる。上記基材粒子が樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であると、上記圧着の際に上記導電性粒子が変形しやすく、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなる。このため、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。
【0067】
上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、種々の有機物が好適に用いられる。上記樹脂粒子を形成するための樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ジビニルベンゼン重合体、並びにジビニルベンゼン系共重合体等が挙げられる。上記ジビニルベンゼン系共重合体等としては、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体及びジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記樹脂粒子の硬度を好適な範囲に容易に制御できるので、上記樹脂粒子を形成するための樹脂は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
【0068】
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を重合させて得る場合、上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
【0069】
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート化合物;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル化合物;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
【0070】
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
【0071】
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
【0072】
上記樹脂粒子の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2μm以上、最も好ましくは3μm以上である。上記樹脂粒子の粒子径は、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下である。上記樹脂粒子の粒子径が、上記下限以上であると、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなるため、電極間の導通信頼性をより一層高めることができ、導電性粒子を介して接続された電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。さらに樹脂粒子の表面に導電部を無電解めっきにより形成する際に、凝集した導電性粒子を形成され難くすることができる。上記樹脂粒子の粒子径が、上記上限以下であると、導電性粒子が充分に圧縮されやすく、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができ、さらに電極間の間隔をより小さくすることができる。
【0073】
上記基材粒子が金属を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である場合には、基材粒子を形成するための無機物としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム、ジルコニア及びカーボンブラック等が挙げられる。上記無機物は金属ではないことが好ましい。上記シリカにより形成された粒子としては特に限定されないが、例えば、加水分解性のアルコキシシリル基を2つ以上有するケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
【0074】
上記有機無機ハイブリッド粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを有するコアシェル型の有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。上記コアが有機コアであることが好ましい。上記シェルが無機シェルであることが好ましい。電極間の接続抵抗を効果的に低くする観点からは、上記基材粒子は、有機コアと上記有機コアの表面上に配置された無機シェルとを有する有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。
【0075】
上記有機コアを形成するための材料としては、上述した樹脂粒子を形成するための樹脂等が挙げられる。
【0076】
上記無機シェルを形成するための材料としては、上述した基材粒子を形成するための無機物が挙げられる。上記無機シェルを形成するための材料は、シリカであることが好ましい。上記無機シェルは、上記コアの表面上で、金属アルコキシドをゾルゲル法によりシェル状物とした後、該シェル状物を焼結させることにより形成されていることが好ましい。上記金属アルコキシドはシランアルコキシドであることが好ましい。上記無機シェルはシランアルコキシドにより形成されていることが好ましい。
【0077】
上記コアの粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2μm以上、最も好ましくは3μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下である。上記コアの粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の電気的な接続により一層適した導電性粒子が得られ、基材粒子を導電性粒子の用途に好適に使用可能になる。例えば、上記コアの粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積が十分に大きくなり、かつ導電部を形成する際に凝集した導電性粒子を形成され難くすることができる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電部を基材粒子の表面から剥離し難くすることができる。
【0078】
上記コアの粒子径は、上記コアが真球状である場合には直径を意味し、上記コアが真球状以外の形状である場合には、円相当径を意味する。また、コアの粒子径は、コアを任意の粒子径測定装置により測定した平均粒子径を意味する。上記平均粒子径は、数平均粒子径であることが好ましい。例えば、レーザー光散乱、電気抵抗値変化、撮像後の画像解析等の原理を用いた粒度分布測定装置が利用できる。
【0079】
上記シェルの厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。上記シェルの厚みが、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の電気的な接続により一層適した導電性粒子が得られ、基材粒子を導電性粒子の用途に好適に使用可能になる。上記シェルの厚みは、基材粒子1個あたりの平均厚みである。ゾルゲル法の制御によって、上記シェルの厚みを制御可能である。
【0080】
上記金属粒子を除く無機粒子及び上記有機無機ハイブリッド粒子の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2μm以上、最も好ましくは3μm以上である。上記金属粒子を除く無機粒子及び上記有機無機ハイブリッド粒子の粒子径は、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下である。上記金属粒子を除く無機粒子及び上記有機無機ハイブリッド粒子の粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなるため、電極間の導通信頼性をより一層高めることができ、導電性粒子を介して接続された電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。さらに金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子の表面に導電部を無電解めっきにより形成する際に、凝集した導電性粒子を形成され難くすることができる。上記有機無機ハイブリッド粒子の粒子径が、上記上限以下であると、導電性粒子が充分に圧縮されやすく、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができ、さらに電極間の間隔をより小さくすることができる。
【0081】
上記基材粒子が金属粒子である場合に、該金属粒子の材料である金属としては、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金及びチタン等が挙げられる。
【0082】
上記金属粒子の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2μm以上、最も好ましくは3μm以上である。上記金属粒子の粒子径は、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下である。上記金属粒子の粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなるため、電極間の導通信頼性をより一層高めることができ、導電性粒子を介して接続された電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。さらに樹脂粒子の表面に導電部を無電解めっきにより形成する際に、凝集した導電性粒子を形成され難くすることができる。
【0083】
上記基材粒子の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2μm以上、最も好ましくは3μm以上である。上記基材粒子の粒子径は、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下である。上記基材粒子の粒子径が、上記下限以上であると、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなるため、電極間の導通信頼性をより一層高めることができ、導電性粒子を介して接続された電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。さらに基材粒子の表面に導電部を無電解めっきにより形成する際に、凝集した導電性粒子を形成され難くすることができる。上記基材粒子の粒子径が、上記上限以下であると、導電性粒子が充分に圧縮されやすく、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができ、さらに電極間の間隔をより小さくすることができる。
【0084】
上記基材粒子の粒子径は、基材粒子が真球状である場合には、直径を示し、基材粒子が真球状ではない場合には、円相当径を示す。また、上記基材粒子の粒子径は、基材粒子を任意の粒子径測定装置により測定した平均粒子径を意味する。上記平均粒子径は、数平均粒子径であることが好ましい。例えば、レーザー光散乱、電気抵抗値変化、撮像後の画像解析等の原理を用いた粒度分布測定装置が利用できる。
【0085】
上記基材粒子の粒子径は、2μm以上20μm以下であることが特に好ましい。上記基材粒子の粒子径が2μm以上20μm以下の範囲内であると、電極間の間隔をより小さくすることができ、かつ導電部の厚みを厚くしても、小さい導電性粒子を得ることができる。
【0086】
(第1の導電部及び第2の導電部)
本発明に係る導電性粒子では、上記第1の導電部が、ニッケルとホウ素とを含み、かつ、リンを含まない。本発明に係る導電性粒子では、上記第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、上記第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値は、0重量%以上10重量%以下である。上記第1の導電部が1層構造である場合には、上記領域(R1)は、
図5において、第1の導電部3の内表面(基材粒子2の外表面)と、破線L1との間の領域である。上記第1の導電部が1層構造である場合には、上記領域(R2)は、
図5において、第1の導電部3の外表面(第2の導電部4の内表面)と、破線L2との間の領域である。上記第1の導電部が2層構造である場合には、上記領域(R1)は、
図6において、第1の導電部13の内表面(導電部13Aの内表面、基材粒子2の外表面)と、破線L1との間の領域である。上記第1の導電部が2層構造である場合には、上記領域(R2)は、
図6において、第1の導電部13の外表面(導電部13Bの外表面、第2の導電部4の内表面)と、破線L2との間の領域である。上記第1の導電部が2層以上の複層構造である場合には、上記領域(R1)及び上記領域(R2)は、上記第1の導電部全体の厚みから算出されることが好ましい。
【0087】
上記第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、上記第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値は、0重量%を超えていてもよく、0.5重量%以上であってもよい。上記領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、上記領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値は、1.0重量%以上であることが好ましい。上記領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、上記領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値が上記下限以上であると、実装時に導電部の割れの発生をより一層効果的に抑制することができる。上記第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、上記第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値は、好ましくは5重量%以下である。上記領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、上記領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値が上記上限以下であると、実装時に導電部の割れの発生をより一層効果的に抑制することができ、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができる。
【0088】
上記第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量は、好ましくは0重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、さらに好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。上記第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。上記領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、実装時に導電部の割れの発生をより一層効果的に抑制することができ、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができる。ホウ素の平均含有量が0重量%である領域は、ホウ素を含まない。
【0089】
上記第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量は、好ましくは0重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、さらに好ましくは0.01重量%以上、特に好ましく0.1重量%以上である。上記第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。上記領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、実装時に導電部の割れの発生をより一層効果的に抑制することができ、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができる。
【0090】
実装時に導電部の割れの発生をより一層効果的に抑制する観点、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記第1の導電部において、ホウ素は均一に分布していることが好ましい。
【0091】
上記第1の導電部の全体100重量%中におけるニッケルの平均含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは65重量%以上であり、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。上記第1の導電部の全体100重量%中におけるニッケルの平均含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、実装時に導電部の割れの発生をより一層効果的に抑制することができ、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができる。
【0092】
上記第1の導電部の全体100重量%中におけるホウ素の平均含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。上記第1の導電部の全体100重量%中におけるホウ素の平均含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、実装時に導電部の割れの発生をより一層効果的に抑制することができ、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができる。
【0093】
上記第1の導電部におけるニッケル及びホウ素の各平均含有量の測定方法は、既知の種々の分析法を用いることができ、特に限定されない。この測定方法として、吸光分析法又はスペクトル分析法等が挙げられる。上記吸光分析法では、フレーム吸光光度計及び電気加熱炉吸光光度計等を用いることができる。上記スペクトル分析法としては、プラズマ発光分析法及びプラズマイオン源質量分析法等が挙げられる。
【0094】
上記第1の導電部におけるニッケル及びホウ素の各平均含有量を測定する際には、ICP発光分析装置を用いることが好ましい。ICP発光分析装置の市販品としては、HORIBA社製のICP発光分析装置、日立ハイテクサイエンス社製「ICP-MS」等が挙げられる。なお、上記第2の導電部を形成した後に上記第1の導電部におけるニッケル及びホウ素の平均含有量を測定する場合に、電界放射型透過電子顕微鏡(日本電子社製「JEM-2010FEF」)等を用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により測定することができる。
【0095】
上記第1の導電部の厚み方向の各領域におけるニッケル及びホウ素の各含有量及び各平均含有量を測定する際には、電界放射型透過電子顕微鏡(日本電子社製「JEM-2010FEF」)等を用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により測定することができる。
【0096】
上記第1の導電部の厚みは、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.3μm以下である。上記第1の導電部の厚みが、上記下限以上及び上記上限以下であると、十分な導電性を得ることができ、かつ導電性粒子が硬くなりすぎず、電極間の接続の際に導電性粒子が十分に変形できる。上記第1の導電部が2層以上の複層構造である場合には、上記第1の導電部の厚みは、すべての層の合計の厚みであることが好ましい。
【0097】
上記第1の導電部の厚みは、0.05μm以上0.3μm以下であることが特に好ましい。さらに、上記基材粒子の粒子径が2μm以上20μm以下であり、かつ、上記第1の導電部の厚みが0.05μm以上0.3μm以下であることが特に好ましい。この場合には、導電性粒子を大きな電流が流れる用途により好適に用いることができる。さらに、導電性粒子を圧縮して電極間を接続した場合に、電極が損傷するのをより一層抑制することができる。
【0098】
上記第2の導電部の厚みは、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.02μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.3μm以下である。上記第2の導電部の厚みが、上記下限以上及び上記上限以下であると、十分な導電性を得ることができ、かつ導電性粒子が硬くなりすぎず、電極間の接続の際に導電性粒子が十分に変形できる。
【0099】
上記第2の導電部の厚みは、0.02μm以上0.3μm以下であることが特に好ましい。さらに、上記基材粒子の粒子径が2μm以上20μm以下であり、かつ、上記第2の導電部の厚みが0.02μm以上0.3μm以下であることが特に好ましい。この場合には、導電性粒子を大きな電流が流れる用途により好適に用いることができる。さらに、導電性粒子を圧縮して電極間を接続した場合に、電極が損傷するのをより一層抑制することができる。
【0100】
上記第1の導電部の厚み及び第2の導電部の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(日本電子社製「JEM-2100」)等を用いて、導電性粒子の断面観察により測定することができる。
【0101】
上記第1の導電部は、ニッケルを主金属として含むことが好ましい。上記第1の導電部は、ニッケル以外の金属を含んでいてもよい。上記第1の導電部におけるニッケル以外の金属としては、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、パラジウム、クロム、シーボーギウム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、タングステン、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素、モリブデン、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。これらの金属は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記第1の導電部において、複数の金属が含まれる場合に、複数の金属は合金化していてもよい。
【0102】
上記第2の導電部を形成するための金属は特に限定されない。上記金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、パラジウム、クロム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ビスマス、タリウム、タングステン、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素及びモリブデン等が挙げられる。電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記金属は、上記第1の導電部の主金属であるニッケルよりも電位が大きいことが好ましい。上記金属は、錫、銅、パラジウム、ルテニウム、白金、銀、ロジウム、イリジウム又は金であることが好ましく、金、銀、銅又はパラジウムであることがより好ましい。電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記第2の導電部における主金属は、錫、銅、パラジウム、ルテニウム、白金、銀、ロジウム、イリジウム又は金であることが好ましく、金又はパラジウムであることがより好ましい。また、実装時に導電部の割れの発生をより一層効果的に抑制する観点からは、上記第2の導電部における主金属は、パラジウム又はルテニウムであることが好ましく、パラジウムであることがより好ましい。
【0103】
なお、上記第1の導電部における主金属及び上記第2の導電部における主金属とは、上記第1の導電部及び上記第2の導電部に含まれる金属のうち、最も含有量が多い金属を意味する。上記第1の導電部及び上記第2の導電部に含まれる全ての金属100重量%中、上記主金属の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。上記第1の導電部及び上記第2の導電部には、1種のみの金属が含まれていてもよく、2種以上の金属が含まれていてもよい。
【0104】
上記第1の導電部及び上記第2の導電部を形成する方法は特に限定されない。上記第1の導電部及び上記第2の導電部を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子又は他の導電部の表面にコーティングする方法等が挙げられる。導電部の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
【0105】
上記導電性粒子の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2μm以上、最も好ましくは3μm以上である。上記導電性粒子の粒子径は、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下である。導電性粒子の粒子径が、上記下限以上及び上限以下であると、上記導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積を十分に大きくすることができ、かつ導電部を形成する際に凝集した導電性粒子を形成され難くすることができる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電部を基材粒子の表面から剥離し難くすることができる。
【0106】
上記導電性粒子の粒子径は、導電性粒子が真球状である場合には、直径を示し、導電性粒子が真球状ではない場合には、円相当径を示す。上記導電性粒子の粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることがより好ましい。上記導電性粒子の粒子径は、例えば、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各導電性粒子の粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりの導電性粒子の粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個の導電性粒子の円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定では、1個当たりの導電性粒子の粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記導電性粒子の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定により算出することが好ましい。
【0107】
上記第1の導電部の各領域におけるニッケル及びホウ素の各含有量及び各平均含有量を制御する方法としては、例えば、無電解ニッケルめっきにより第1の導電部を形成する際に、ニッケルめっき液のpHを制御する方法、ニッケルめっき液中のホウ素濃度を調整する方法並びにニッケルめっき液中のニッケル濃度を調整する方法等が挙げられる。
【0108】
無電解めっきにより形成する方法では、一般的に、触媒化工程と、無電解めっき工程とが行われる。以下、無電解めっきにより、基材粒子の表面に、ニッケルとホウ素とを含む第1の導電部を形成する方法の一例を説明する。
【0109】
上記触媒化工程では、無電解めっきによりめっき層を形成するための起点となる触媒を、基材粒子の表面に形成させる。
【0110】
上記触媒を基材粒子の表面に形成させる方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。塩化パラジウムと塩化錫とを含む溶液に、基材粒子を添加した後、酸溶液又はアルカリ溶液により基材粒子の表面を活性化させて、基材粒子の表面にパラジウムを析出させる方法。硫酸パラジウムとアミノピリジンとを含有する溶液に、基材粒子を添加した後、還元剤を含む溶液により基材粒子の表面を活性化させて、基材粒子の表面にパラジウムを析出させる方法。上記還元剤として、ホウ素含有還元剤が用いられる。また、上記還元剤として、ホウ素含有還元剤を用いることで、ホウ素を含む第1の導電部を形成できる。
【0111】
上記無電解めっき工程では、ニッケル含有化合物、ホウ素含有還元剤、必要に応じて、錯化剤、及び安定剤を含むニッケルめっき浴が好適に用いられる。
【0112】
ニッケルめっき浴中に基材粒子を浸漬することにより、触媒が表面に形成された基材粒子の表面に、ニッケルを析出させることができ、ニッケルとホウ素とを含む第1の導電部を形成できる。
【0113】
上記ニッケル含有化合物としては、硫酸ニッケル及び塩化ニッケル等が挙げられる。上記ニッケル含有化合物は、ニッケル塩であることが好ましい。
【0114】
上記ホウ素含有還元剤としては、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウム等が挙げられる。
【0115】
上記錯化剤としては、酢酸ナトリウム及びプロピオン酸ナトリウム等のモノカルボン酸系錯化剤;マロン酸ニナトリウム等のジカルボン酸系錯化剤;コハク酸ニナトリウム等のトリカルボン酸系錯化剤;乳酸、DL-リンゴ酸、ロシェル塩、クエン酸ナトリウム及びグルコン酸ナトリウム等のヒドロキシ酸系錯化剤;グリシン及びEDTA等のアミノ酸系錯化剤;エチレンジアミン等のアミン系錯化剤;マレイン酸等の有機酸系錯化剤;並びに、これらの塩等が挙げられる。上記錯化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0116】
上記安定剤として、鉛化合物、ビスマス化合物又はタリウム化合物を添加してもよい。これらの化合物の具体例としては、化合物を構成する金属(鉛、ビスマス、タリウム)の硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、及び塩酸塩等が挙げられる。環境への影響を考慮すると、ビスマス化合物又はタリウム化合物であることが好ましい。
【0117】
上記第1の導電部中のホウ素含有量を増加させる方法の好ましい例としては、めっき液のpHを低くしニッケルめっき液の反応の速度を遅くする方法、ニッケルめっき液の温度を下げる方法、ニッケルめっき液中のホウ素含有還元剤の濃度を高くする方法、ニッケルめっき液中の錯化剤濃度を高くする方法等が挙げられる。これらの方法は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。上記の好ましい方法により、上記領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量及び、上記領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量を、調整することができる。結果として、上記領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、上記領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値を、0重量%以上10重量%以下とすることが容易となる。
【0118】
(芯物質)
上記導電性粒子は導電性の表面に突起を有することが好ましい。上記第1の導電部又は上記第2の導電部は外表面に突起を有することが好ましい。上記第1の導電部及び上記第2の導電部は外表面に突起を有することが好ましい。上記突起は複数であることが好ましい。上記導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。さらに、上記導電性粒子の導電部の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。上記突起を有する導電性粒子の使用により、電極間に導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、上記導電性粒子が表面に絶縁性物質を有する場合、又は導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されて導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の絶縁性物質又はバインダー樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0119】
また、上記導電性粒子が第1の導電部又は第2の導電部の外表面に突起を有していると、上記導電性粒子同士が接触する面積を小さくすることができる。そのため、複数の上記導電性粒子の凝集を抑制することができる。したがって、接続されてはならない電極間の電気的な接続を防ぐことができ、絶縁信頼性をより一層高めることができる。
【0120】
上記芯物質が第1の導電部又は第2の導電部中に埋め込まれていることによって、上記第1の導電部又は上記第2の導電部が外表面に複数の突起を有するようにすることが容易である。複数の突起を容易に形成する観点からは、上記第1の導電部又は上記第2の導電部の内部又は内側において、複数の上記突起を形成するように、上記第1の導電部又は上記第2の導電部の表面を隆起させている複数の芯物質を備えることが好ましい。但し、上記導電性粒子、上記第1の導電部及び上記第2の導電部の外表面に突起を形成するために、芯物質を必ずしも用いなくてもよく、芯物質を用いないことが好ましい。上記導電性粒子は、上記第1の導電部及び上記第2の導電部の外表面を隆起させるための芯物質を有しないことが好ましい。上記導電性粒子では、上記第1の導電部又は上記第2の導電部の内部又は内側において、複数の上記突起を形成するように、上記第1の導電部又は上記第2の導電部の表面を隆起させている複数の芯物質を備えていないことが好ましい。上記芯物質が用いられる場合に、上記芯物質は、上記第1の導電部の内側又は内部に配置されることが好ましい。上記芯物質が用いられる場合に、上記芯物質は、上記第2の導電部の内側又は内部に配置されていてもよい。
【0121】
上記突起を形成する方法としては、以下の方法等が挙げられる。基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電部を形成する方法。基材粒子の表面に無電解めっきにより導電部を形成した後、芯物質を付着させ、さらに無電解めっきにより導電部を形成する方法。基材粒子の表面に無電解めっきにより導電部を形成する途中段階で芯物質を添加する方法。
【0122】
上記基材粒子の表面上に芯物質を配置させる方法としては、以下の方法等が挙げられる。基材粒子の分散液中に、芯物質を添加し、基材粒子の表面に芯物質を、ファンデルワールス力等により集積させ、付着させる方法。基材粒子を入れた容器に、芯物質を添加し、容器の回転等による機械的な作用により基材粒子の表面に芯物質を付着させる方法。付着させる芯物質の量を制御しやすいため、上記基材粒子の表面上に芯物質を配置させる方法は、分散液中の基材粒子の表面に芯物質を集積させ、付着させる方法であることが好ましい。
【0123】
上記芯物質の材料としては、導電性物質及び非導電性物質が挙げられる。上記導電性物質としては、例えば、金属、金属の酸化物、黒鉛等の導電性非金属及び導電性ポリマー等が挙げられる。上記導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン等が挙げられる。上記非導電性物質としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム及びジルコニア等が挙げられる。酸化被膜を効果的に排除するために、芯物質は硬い方が好ましい。導電性を高めることができ、さらに接続抵抗を効果的に低くすることができるので、金属が好ましい。上記芯物質は金属粒子であることが好ましい。上記芯物質の材料である金属としては、上記第1の導電部及び上記第2の導電部の材料として挙げた金属を適宜使用可能である。
【0124】
上記芯物質の材料としては、例えば、チタン酸バリウム(モース硬度4.5)、ニッケル(モース硬度5)、シリカ(二酸化珪素、モース硬度6~7)、酸化チタン(モース硬度7)、ジルコニア(モース硬度8~9)、アルミナ(モース硬度9)、炭化タングステン(モース硬度9)及びダイヤモンド(モース硬度10)等が挙げられる。導電性をより一層効果的に高める観点、及び接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記芯物質は、ニッケル、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが好ましく、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることがより好ましい。導電性をより一層効果的に高める観点、及び接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記芯物質は、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることがさらに好ましく、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが特に好ましい。導電性をより一層効果的に高める観点、及び接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記芯物質の材料のモース硬度は、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上、特に好ましくは7.5以上である。
【0125】
上記芯物質の形状は特に限定されない。上記芯物質の形状は塊状であることが好ましい。芯物質としては、例えば、粒子状の塊、複数の微小粒子が凝集した凝集塊及び不定形の塊等が挙げられる。
【0126】
上記芯物質の粒子径は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。上記芯物質の粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗を効果的に低くすることができる。
【0127】
上記芯物質の粒子径は、芯物質が真球状である場合には、直径を示し、芯物質が真球状ではない場合には、円相当径を示す。上記芯物質の粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることがより好ましい。上記芯物質の粒子径は、例えば、任意の芯物質50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各芯物質の粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりの芯物質の粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個の芯物質の円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定では、1個当たりの芯物質の粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記芯物質の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定により算出することが好ましい。
【0128】
上記導電性粒子1個当たりの上記突起の数は、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上である。上記突起の数の上限は特に限定されない。上記突起の数の上限は導電性粒子の粒子径等を考慮して適宜選択できる。上記突起の平均高さが、上記下限以上であると、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができる。
【0129】
複数の上記突起の平均高さは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。上記突起の平均高さが、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができる。
【0130】
(絶縁性物質)
上記導電性粒子は、上記第2の導電部の外表面上に配置された絶縁性物質を備えることが好ましい。この場合には、上記導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡をより一層防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁性物質が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、上記第2の導電部と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。上記導電性粒子が上記第2の導電部の外表面に複数の突起を有する場合には、上記第2の導電部と電極との間の絶縁性物質をより一層容易に排除できる。
【0131】
電極間の圧着時に上記絶縁性物質をより一層容易に排除できることから、上記絶縁性物質は、絶縁性粒子であることが好ましい。上記絶縁性物質は、絶縁層であってもよい。
【0132】
上記絶縁性物質の材料としては、上述した樹脂粒子の材料、及び上述した基材粒子の材料として挙げた無機物等が挙げられる。上記絶縁性物質の材料は、上述した樹脂粒子の材料であることが好ましい。上記絶縁性物質は、上述した樹脂粒子又は上述した有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましく、樹脂粒子であってもよく、有機無機ハイブリッド粒子であってもよい。
【0133】
上記絶縁性物質の他の材料としては、ポリオレフィン化合物、(メタ)アクリレート重合体、(メタ)アクリレート共重合体、ブロックポリマー、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の架橋物、熱硬化性樹脂及び水溶性樹脂等が挙げられる。上記絶縁性物質の材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0134】
上記ポリオレフィン化合物としては、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート重合体としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリドデシル(メタ)アクリレート及びポリステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ブロックポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、SB型スチレン-ブタジエンブロック共重合体、及びSBS型スチレン-ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ビニル重合体及びビニル共重合体等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂の架橋物としては、ポリエチレングリコールメタクリレート、アルコキシ化トリメチロールプロパンメタクリレートやアルコキシ化ペンタエリスリトールメタクリレート等の導入が挙げられる。上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及びメチルセルロース等が挙げられる。また、重合度の調整に、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、チオールや四塩化炭素等が挙げられる。
【0135】
上記第2の導電部の外表面上に絶縁性物質を配置する方法としては、化学的方法、及び物理的もしくは機械的方法等が挙げられる。上記化学的方法としては、例えば、界面重合法、粒子存在下での懸濁重合法及び乳化重合法等が挙げられる。上記物理的もしくは機械的方法としては、スプレードライ、ハイブリダイゼーション、静電付着法、噴霧法、ディッピング及び真空蒸着による方法等が挙げられる。絶縁性物質が脱離し難いことから、上記第2の導電部の表面に、化学結合を介して上記絶縁性物質を配置する方法が好ましい。
【0136】
上記絶縁性物質の表面には、水酸基等の極性基が存在することが好ましい。上記極性基が存在することで、後述する連続膜が、上記絶縁性物質の表面をより一層均一に被覆することができる。
【0137】
上記第2の導電部の外表面及び上記絶縁性粒子の表面はそれぞれ、反応性官能基を有する化合物によって被覆されていてもよい。上記第2の導電部の外表面と上記絶縁性粒子の表面とは、直接化学結合していなくてもよく、反応性官能基を有する化合物によって間接的に化学結合していてもよい。上記第2の導電部の外表面にカルボキシル基を導入した後、該カルボキシル基がポリエチレンイミン等の高分子電解質を介して絶縁性粒子の表面の官能基と化学結合していても構わない。
【0138】
上記絶縁性物質が絶縁性粒子である場合に、上記絶縁性粒子の粒子径は、上記導電性粒子の粒子径及び用途等によって適宜選択できる。上記絶縁性粒子の粒子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは100nm以上であり、好ましくは4000nm以下、より好ましくは2000nm以下である。上記絶縁性粒子の粒子径が、上記下限以上であると、導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されたときに、複数の導電性粒子における導電部同士が接触し難くなる。上記絶縁性粒子の粒子径が、上記上限以下であると、電極間の接続の際に、電極と導電性粒子との間の絶縁性粒子を排除するために、圧力を高くしすぎる必要がなくなり、高温に加熱する必要もなくなる。
【0139】
上記絶縁性粒子の粒子径は、絶縁性粒子が真球状である場合には、直径を示し、絶縁性粒子が真球状ではない場合には、円相当径を示す。上記絶縁性粒子の粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることがより好ましい。上記絶縁性粒子の粒子径は、例えば、任意の絶縁性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各絶縁性粒子の粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりの絶縁性粒子の粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個の絶縁性粒子の円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定では、1個当たりの絶縁性粒子の粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記絶縁性粒子の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定により算出することが好ましい。また、導電性粒子において、絶縁性粒子の粒子径を測定する場合には、例えば、以下のようにして測定できる。
【0140】
導電性粒子を含有量が30重量%となるように、Kulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、導電性粒子検査用埋め込み樹脂体を作製する。その検査用埋め込み樹脂体中の分散した導電性粒子の中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製「IM4000」)を用いて、導電性粒子の断面を切り出す。そして、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、画像倍率5万倍に設定し、50個の導電性粒子を無作為に選択し、各導電性粒子における絶縁性粒子を観察する。各導電性粒子における絶縁性粒子の粒子径を計測し、それらを算術平均して絶縁性粒子の粒子径とする。
【0141】
上記絶縁性物質が絶縁性粒子である場合に、上記導電性粒子の粒子径の上記絶縁性粒子の粒子径に対する比(導電性粒子の粒子径/絶縁性粒子の粒子径)は、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、より一層好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは12以上である。上記絶縁性物質が絶縁性粒子である場合に、上記導電性粒子の粒子径の上記絶縁性粒子の粒子径に対する比(導電性粒子の粒子径/絶縁性粒子の粒子径)は、好ましくは1000以下、より好ましくは100以下、より一層好ましくは75以下、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは30以下である。上記比(導電性粒子の粒子径/絶縁性粒子の粒子径)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記第2の導電部の外表面上に絶縁性粒子をより一層均一に配置することができ、電極間の絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0142】
(連続膜)
上記導電性粒子が上記絶縁性物質を備える場合に、上記導電性粒子は、無機材料を含む連続膜を備えることが好ましい。上記連続膜は、上記第2の導電部の表面を覆っている部分と、上記絶縁性物質の表面を覆っている部分とを有することが好ましい。上記導電性粒子では、上記第2の導電部の表面と上記絶縁性物質の表面とが上記連続膜により被覆されていることが好ましく、上記第2の導電部の表面を被覆している上記連続膜と上記絶縁性物質を被覆している上記連続膜とが連なっていることが好ましい。この場合には、導電性粒子をバインダー樹脂中に分散させる等の導電接続前に導電性粒子の表面から絶縁性物質が意図せずに脱離することをより一層効果的に防止できる。結果として、隣接する電極間の絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0143】
電極間の絶縁信頼性をより一層効果的に高める観点、及び電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記連続膜は、無機酸化物膜であることが好ましい。上記連続膜は無機材料により形成されていることが好ましい。この場合には、導電性粒子を用いて電極間を電気的に接続する際に、導電性粒子の表面から絶縁性物質がより一層容易に脱離できる。結果として、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0144】
上記無機材料及び上記無機酸化物膜の材料としては、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム、及びアルミニウム等の酸化物、並びに、これらの酸化物の複合物等が挙げられる。
【0145】
電極間の絶縁信頼性をより一層効果的に高める観点、及び電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記連続膜の厚みは、好ましくは1nm以上、より好ましくは10nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下である。上記連続膜が2層以上の多層構造である場合には、上記連続膜の厚みは、全ての層の合計の厚みであることが好ましい。
【0146】
上記連続膜の厚みは、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。導電性粒子において、連続膜の厚みを測定する場合には、例えば、以下のように測定できる。
【0147】
導電性粒子を含有量が30重量%となるように、Kulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、導電性粒子検査用埋め込み樹脂体を作製する。その検査用埋め込み樹脂体中の分散した導電性粒子の中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製「IM4000」)を用いて、導電性粒子の断面を切り出す。そして、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、画像倍率5万倍に設定し、50個の導電性粒子を無作為に選択し、各導電性粒子における連続膜を観察する。各導電性粒子における連続膜の厚みを計測し、それらを算術平均して連続膜の厚みとする。
【0148】
上記絶縁性物質が絶縁性粒子である場合に、上記連続膜の厚みの上記絶縁性粒子の粒子径に対する比(連続膜の厚み/絶縁性粒子の粒子径)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.1以下である。上記比(連続膜の厚み/絶縁性粒子の粒子径)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができ、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0149】
上記第2の導電部の表面及び上記絶縁性物質の表面を上記連続膜で被覆する方法としては、アルコキシドの加水分解反応を用いて、上記第2の導電部の表面及び上記絶縁性物質の表面に絶縁性組成物(金属アルコキシドを含む組成物)をコーティングする方法等が挙げられる。
【0150】
(防錆処理)
導電性粒子の腐食を抑え、電極間の接続抵抗をより一層低くする観点からは、上記第2の導電部の外表面は防錆処理されていることが好ましい。
【0151】
導通信頼性をより一層高める観点からは、上記第2の導電部の外表面は、炭素数6~22のアルキル基を有する化合物により、防錆処理されていることが好ましい。上記第2の導電部の外表面は、リンを含まない化合物により防錆処理されていてもよく、炭素数6~22のアルキル基を有しかつリンを含まない化合物により防錆処理されていてもよい。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記第2の導電部の外表面は、アルキルリン酸化合物又はアルキルチオールにより、防錆処理されていることが好ましい。防錆処理により、第2の導電部の外表面に、防錆膜を形成できる。
【0152】
上記防錆膜は、炭素数6~22のアルキル基を有する化合物(以下、化合物Aともいう)により形成されていることが好ましい。上記第2の導電部の外表面は、上記化合物Aにより表面処理されていることが好ましい。上記アルキル基の炭素数が6以上であると、第2の導電部全体で錆がより一層生じ難くなる。上記アルキル基の炭素数が22以下であると、導電性粒子の導電性が高くなる。導電性粒子の導電性をより一層高める観点からは、上記化合物Aにおける上記アルキル基の炭素数は16以下であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖構造を有していてもよく、分岐構造を有していてもよい。上記アルキル基は、直鎖構造を有することが好ましい。
【0153】
上記化合物Aは、炭素数6~22のアルキル基を有していれば特に限定されない。上記化合物Aは、炭素数6~22のアルキル基を有するリン酸エステル若しくはその塩、炭素数6~22のアルキル基を有する亜リン酸エステル若しくはその塩、又は炭素数6~22のアルキル基を有するアルコキシシランであることが好ましい。上記化合物Aは、炭素数6~22のアルキル基を有するアルキルチオール、又は、炭素数6~22のアルキル基を有するジアルキルジスルフィドであることが好ましい。上記炭素数6~22のアルキル基を有する化合物Aは、リン酸エステル若しくはその塩、亜リン酸エステル若しくはその塩、アルコキシシラン、アルキルチオール又はジアルキルジスルフィドであることが好ましい。これらの好ましい化合物Aの使用により、上記第2の導電部に錆をより一層生じ難くすることができる。錆をより一層生じ難くする観点からは、上記化合物Aは、上記リン酸エステル若しくはその塩、亜リン酸エステル若しくはその塩、又は、アルキルチオールであることが好ましく、上記リン酸エステル若しくはその塩、又は、亜リン酸エステル若しくはその塩であることがより好ましい。上記化合物Aは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0154】
上記化合物Aは、第2の導電部の外表面と反応可能な反応性官能基を有することが好ましい。上記化合物Aは、上記絶縁性物質と反応可能な反応性官能基を有することが好ましい。上記防錆膜は、第2の導電部と化学結合していることが好ましい。上記防錆膜は、上記絶縁性物質と化学結合していることが好ましい。上記防錆膜は、上記第2の導電部及び上記絶縁性物質の双方と化学結合していることがより好ましい。上記反応性官能基の存在により、及び上記化学結合により、上記防錆膜の剥離が生じ難くなり、この結果、第2の導電部に錆がより一層生じ難くなり、かつ導電性粒子の表面から絶縁性物質が意図せずにより一層脱離し難くなる。
【0155】
上記炭素数6~22のアルキル基を有するリン酸エステル又はその塩としては、例えば、リン酸ヘキシルエステル、リン酸ヘプチルエステル、リン酸モノオクチルエステル、リン酸モノノニルエステル、リン酸モノデシルエステル、リン酸モノウンデシルエステル、リン酸モノドデシルエステル、リン酸モノトリデシルエステル、リン酸モノテトラデシルエステル、リン酸モノペンタデシルエステル、リン酸モノヘキシルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノヘプチルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノオクチルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノノニルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノデシルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノウンデシルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノドデシルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノトリデシルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノテトラデシルエステルモノナトリウム塩及びリン酸モノペンタデシルエステルモノナトリウム塩等が挙げられる。上記リン酸エステルのカリウム塩を用いてもよい。
【0156】
上記炭素数6~22のアルキル基を有する亜リン酸エステル又はその塩としては、例えば、亜リン酸ヘキシルエステル、亜リン酸ヘプチルエステル、亜リン酸モノオクチルエステル、亜リン酸モノノニルエステル、亜リン酸モノデシルエステル、亜リン酸モノウンデシルエステル、亜リン酸モノドデシルエステル、亜リン酸モノトリデシルエステル、亜リン酸モノテトラデシルエステル、亜リン酸モノペンタデシルエステル、亜リン酸モノヘキシルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノヘプチルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノオクチルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノノニルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノデシルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノウンデシルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノドデシルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノトリデシルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノテトラデシルエステルモノナトリウム塩及び亜リン酸モノペンタデシルエステルモノナトリウム塩等が挙げられる。上記亜リン酸エステルのカリウム塩を用いてもよい。
【0157】
上記炭素数6~22のアルキル基を有するアルコキシシランとしては、例えば、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン及びペンタデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0158】
上記炭素数6~22のアルキル基を有するアルキルチオールとしては、例えば、ヘキシルチオール、ヘプチルチオール、オクチルチオール、ノニルチオール、デシルチオール、ウンデシルチオール、ドデシルチオール、トリデシルチオール、テトラデシルチオール、ペンタデシルチオール及びヘキサデシルチオール等が挙げられる。上記アルキルチオールは、アルキル鎖の末端にチオール基を有することが好ましい。
【0159】
上記炭素数6~22のアルキル基を有するジアルキルジスルフィドとしては、例えば、ジヘキシルジスルフィド、ジヘプチルジスルフィド、ジオクチルジスルフィド、ジノニルジスルフィド、ジデシルジスルフィド、ジウンデシルジスルフィド、ジドデシルジスルフィド、ジトリデシルジスルフィド、ジテトラデシルジスルフィド、ジペンタデシルジスルフィド及びジヘキサデシルジスルフィド等が挙げられる。
【0160】
(用途)
上記導電性粒子は、電極と、上記電極の表面上に配置された保護層とを備える保護層付き電極の導電接続用途に好適に用いることができる。上記導電性粒子は、配線と、上記配線の表面上に配置された保護層とを備える保護層付き配線の導電接続用途に好適に用いることができる。上記電極及び上記配線の材料としては、金、銀又は銅等の貴金属が挙げられる。電極の防錆性をより一層向上させる観点からは、上記保護層は、メルカプト基を有するトリアゾール化合物、メルカプト基を有するテトラゾール化合物、メルカプト基を有するチアジアゾール化合物、アミノ基を有するトリアゾール化合物又はアミノ基を有するテトラゾール化合物を含有することが好ましい。上記保護層付き電極又は上記保護層付き配線の導電接続用途に上記導電性粒子を用いた場合には、電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くすることができ、導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0161】
また、上記導電性粒子は、フレキシブル部材の電極の導電接続用途に好適に用いることができる。上記フレキシブル部材を用いた接続構造体としては、フレキシブルパネル等が挙げられる。フレキブルパネルは、曲面パネルとして用いることが可能である。上記導電性粒子は、フレキシブルパネルの接続部を形成するために用いられることが好ましく、曲面パネルの接続部を形成するために用いられることが好ましい。
【0162】
(導電材料)
本発明に係る導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。上記導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散され、導電材料として用いられることが好ましい。上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。上記導電性粒子及び上記導電材料はそれぞれ、電極間の電気的な接続に用いられることが好ましい。上記導電材料は、回路接続用材料であることが好ましい。
【0163】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。
【0164】
上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0165】
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル-スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0166】
上記導電材料及び上記バインダー樹脂は、熱可塑性成分又は熱硬化性成分を含むことが好ましい。上記導電材料及び上記バインダー樹脂は、熱可塑性成分を含んでいてもよく、熱硬化性成分を含んでいてもよい。上記導電材料及び上記バインダー樹脂は、熱硬化性成分を含むことが好ましい。上記熱硬化性成分は、加熱により硬化可能な硬化性化合物と熱硬化剤とを含むことが好ましい。上記熱硬化剤は、熱カチオン硬化開始剤であることが好ましい。上記加熱により硬化可能な硬化性化合物と上記熱硬化剤とは、上記バインダー樹脂が硬化するように適宜の配合比で用いられる。
【0167】
上記導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0168】
上記バインダー中に上記導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ、特に限定されない。上記バインダー中に上記導電性粒子を分散させる方法としては、上記バインダー中に上記導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、上記導電性粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、上記バインダー中に添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法が挙げられる。さらに、上記バインダー中に上記導電性粒子を分散させる方法としては、上記バインダーを水又は有機溶剤等で希釈した後、上記導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
【0169】
上記導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。上記導電材料が、導電フィルムである場合には、導電性粒子を含む導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。上記導電ペーストは、異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電フィルムは、異方性導電フィルムであることが好ましい。
【0170】
上記導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上であり、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性をより一層高くすることができる。
【0171】
上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性をより一層高くすることができる。
【0172】
(接続構造体)
上記導電性粒子を用いて、又は上記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む上記導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
【0173】
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備える。上記接続構造体では、上記接続部の材料が、上述した導電性粒子であるか、又は上記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料であることが好ましい。上記接続部が、上述した導電性粒子により形成されているか、又は上記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されていることが好ましい。上記接続構造体では、上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記導電性粒子により電気的に接続されている。上記接続部の材料として導電性粒子が用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。すなわち、第1,第2の接続対象部材が上記導電性粒子により接続される。
【0174】
電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記接続構造体では、上記第1の導電部における主金属の標準電極電位が、上記第1の電極又は上記第2の電極の外表面の主金属の標準電極電位よりも小さいことが好ましい。
【0175】
図7に、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に正面断面図で示す。
【0176】
図7に示す接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1,第2の接続対象部材52,53を接続している接続部54とを備える。接続部54は、導電性粒子1を含む導電材料を硬化させることにより形成されている。なお、
図7では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。導電性粒子1にかえて、導電性粒子11,21及び31等を用いてもよい。
【0177】
第1の接続対象部材52は表面(上面)に、複数の第1の電極52aを有する。第2の接続対象部材53は表面(下面)に、複数の第2の電極53aを有する。第1の電極52aと第2の電極53aとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材52,53が導電性粒子1により電気的に接続されている。
【0178】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。上記接続構造体の製造方法の一例としては、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材との間に上記導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧の圧力は9.8×104Pa~4.9×106Pa程度である。上記加熱の温度は、50℃~220℃程度である。フレキシブルプリント基板の電極、樹脂フィルム上に配置された電極及びタッチパネルの電極を接続するための上記加圧の圧力は9.8×104Pa~1.0×106Pa程度である。
【0179】
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板が挙げられる。上記接続対象部材は電子部品であることが好ましい。上記導電性粒子は、電子部品における電極の電気的な接続に用いられることが好ましい。
【0180】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、銀電極、SUS電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Al及びGa等が挙げられる。
【0181】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0182】
(標準電極電位)
実施例、参考例及び比較例で使用する第1の導電部、第2の導電部、第1の電極及び第2の電極に用いられる金属に関して、該金属の標準電極電位は、次の通りである。
【0183】
アルミニウム:-1.662(V)
鉄:-0.440(V)
コバルト:-0.280(V)
ニッケル:-0.257(V)
錫:-0.138(V)
ルテニウム:+0.300(V)
銅:+0.337(V)
ロジウム:+0.758(V)
銀:+0.799(V)
パラジウム:+0.990(V)
白金:+1.188(V)
金:+1.830(V)
【0184】
(参考例1)
(1)導電性粒子の作製(第1の導電部の形成)
ジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子(基材粒子A、積水化学工業社製「ミクロパールSP-203」、粒子径3μm)を用意した。パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、上記基材粒子A10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、基材粒子Aを取り出した。次いで、基材粒子Aをジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、基材粒子Aの表面を活性化させた。表面が活性化された基材粒子Aを十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
【0185】
また、ニッケルめっき液として、硫酸ニッケル0.14mol/L、ジメチルアミンボラン0.46mol/L及びクエン酸ナトリウム0.2mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。
【0186】
得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に、滴下速度30mL/分の条件で10分間滴下した。その後、滴下速度10mL/分の条件で40分間滴下し、さらにその後、滴下速度4mL/分の条件で80分間滴下することで、めっき膜中に取り込まれるボロンの含有量を制御しながら、無電解ニッケル-ボロン合金めっきを行った。
【0187】
その後、上記懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、基材粒子Aの表面上に第1の導電部(ニッケルを含む導電層、厚み0.1μm)が配置された粒子を得た。
【0188】
(2)導電性粒子の作製(第2の導電部の形成)
得られた粒子10gを、超音波処理機により、イオン交換水500mLに分散させて、懸濁液を得た。硫酸パラジウム0.02mol/L、錯化剤としてエチレンジアミン0.04mol/L、還元剤として蟻酸アンモニウム0.06mol/L及び結晶調整剤を含むpH10.0のめっき液を用意した。得られた懸濁液を50℃で攪拌しながら、得られためっき液を徐々に添加し、無電解パラジウムめっきを行い、第2の導電部を形成した。第2の導電部の厚みが20nmになった時点で無電解パラジウムめっきを終了した。上記第1の導電部の表面上に第2の導電部(パラジウム層、厚み0.02μm)が形成された導電性粒子(粒子径3.24μm)を得た。
【0189】
(3)導電フィルム(異方性導電フィルム)の作製
熱硬化性化合物であるフェノキシ化合物(Inchem社製「PKHC」)30重量部をPGMEA35重量部とメチルエチルケトン35重量部との混合溶媒に入れ、24時間常温で撹拌してフェノキシ化合物の30重量%分散液を得た。次に、上記分散液30重量部と、熱硬化性化合物であるエポキシ化合物(DIC社製「EPICLON HP-4032D」)30重量部と、潜在型熱硬化剤であるイミダゾールのマイクロカプセル硬化剤(旭化成社製「ノバキュアHXA3922」)30重量部とを配合した配合物を得た。得られた配合物に、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-403」)1重量部を配合し、さらに得られた導電性粒子を、得られる導電フィルム100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した。その後、固形分量が50%となるようにメチルエチルケトンを添加し、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、混合物を得た。得られた混合物を剥離処理されたポリエチレンテレフタレート上に塗布し、溶媒を乾燥させて、厚みが20μmである異方性導電フィルムを得た。
【0190】
(4)接続構造体の作製
第1の接続対象部材として、L/Sが10μm/10μmの銅電極パターン(第1の電極)を上面に有するプラスチック基板を用意した。また、第2の接続対象部材として、L/Sが10μm/10μmの銅電極パターン(第2の電極)を下面に有するフレキシブル基板を用意した。
【0191】
上記プラスチック基板の上面に、作製直後の導電フィルム(異方性導電フィルム)を配置し、導電フィルム層(異方性導電フィルム層)を形成した。次に、導電フィルム層(異方性導電フィルム層)の上面に上記フレキシブル基板を、電極同士が対向するように積層した。その後、導電フィルム層(異方性導電フィルム層)の温度が100℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、フレキシブル基板の上面に加圧加熱ヘッドを載せ、電極面積に対して60MPaの圧力をかけて導電フィルムを100℃で硬化させ、接続構造体を得た。
【0192】
(参考例2)
第1の導電部を形成する際に、基材粒子Aの懸濁液に、ニッケル粒子スラリー(平均粒子径150nm)1gを添加した。基材粒子Aの代わりに、基材粒子Aの表面に芯物質を付着させた粒子を用いたこと以外は、参考例1と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0193】
(参考例3)
第1の導電部を形成する際に、ニッケル粒子スラリー(平均粒子径150nm)の代わりに、アルミナ粒子スラリー(平均粒子径150nm)を用いたこと以外は、参考例2と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0194】
(参考例4)
第1の導電部を形成する際に、ニッケル粒子スラリー(平均粒子径150nm)の代わりに、チタニア粒子スラリー(平均粒子径150nm)を用いたこと以外は、参考例2と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0195】
(参考例5)
第1の導電部を形成する際に、基材粒子Aの粒子径を3μmから1.5μmに変更したこと以外は、参考例3と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0196】
(参考例6)
第1の導電部を形成する際に、基材粒子Aの粒子径を3μmから20μmに変更したこと以外は、参考例3と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0197】
(参考例7)
炭素数6のアルキル基を有する化合物を用いて、得られた導電性粒子を分散させることにより、導電性粒子の外表面を防錆処理したこと以外は、参考例3と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0198】
(参考例8)
4つ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブが取り付けられた1000mLのセパラブルフラスコに、以下のモノマー組成物を入れ、モノマー組成物の固形分率が5重量%となるようにイオン交換水を秤取した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下70℃で24時間重合を行った。上記モノマー組成物は、メタクリル酸メチル100mmolと、N,N,N-トリメチル-N-2-メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド1mmolと、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩1mmolとを含む。反応終了後、凍結乾燥して、表面にアンモニウム基を有し、平均粒子径220nm及びCV値10%の絶縁性粒子を得た。
【0199】
絶縁性粒子を超音波照射下でイオン交換水に分散させ、絶縁性粒子の10重量%水分散液を得た。
【0200】
参考例3で得られた導電性粒子10gをイオン交換水500mLに分散させ、絶縁性粒子の水分散液4gを添加し、室温で6時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターでろ過した後、更にメタノールで洗浄し、乾燥し、絶縁性粒子が付着した導電性粒子(絶縁性粒子付き導電性粒子)を得た。
【0201】
走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、導電性粒子の表面に絶縁性粒子による被覆層が1層のみ形成されていた。画像解析により導電性粒子の中心より2.5μmの面積に対する絶縁性粒子の被覆面積(即ち絶縁性粒子の粒子径の投影面積)を算出したところ、被覆率は40%であった。
【0202】
導電フィルム(異方性導電フィルム)を作製する際に、導電性粒子の代わりに、絶縁性粒子付き導電性粒子を用いたこと以外は、参考例3と同様にして、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0203】
(参考例9)
第2の導電部を形成する際に、無電解パラジウムめっきの代わりに、無電解金めっきを施したこと以外は、参考例3と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0204】
(参考例10)
第2の導電部を形成する際に、無電解パラジウムめっきの代わりに、無電解ルテニウムめっきを施したこと以外は、参考例3と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0205】
(参考例11)
第2の接続対象部材として、第2の接続対象部材における電極の外表面の主金属が金である電極パターン(第2の電極)を下面に有するフレキシブル基板を用意した。接続構造体を作製する際に、L/Sが10μm/10μmの銅電極パターン(第2の電極)を下面に有するフレキシブル基板の代わりに、用意したフレキシブル基板を用いたこと以外は、参考例3と同様にして、接続構造体を得た。
【0206】
(参考例12)
第2の接続対象部材として、第2の接続対象部材における電極の外表面の主金属が銀である電極パターン(第2の電極)を下面に有するフレキシブル基板を用意した。接続構造体を作製する際に、L/Sが10μm/10μmの銅電極パターン(第2の電極)を下面に有するフレキシブル基板の代わりに、用意したフレキシブル基板を用いたこと以外は、参考例3と同様にして、接続構造体を得た。
【0207】
(参考例13)
第1の接続対象部材として、第1の接続対象部材における電極の外表面の主金属が金である電極パターン(第1の電極)を上面に有するプラスチック基板を用意した。また、第2の接続対象部材として、第2の接続対象部材における電極の外表面の主金属が金である電極パターン(第2の電極)を下面に有するフレキシブル基板を用意した。接続構造体を作製する際に、L/Sが10μm/10μmの銅電極パターン(第1の電極)を上面に有するプラスチック基板とL/Sが10μm/10μmの銅電極パターン(第2の電極)を下面に有するフレキシブル基板との代わりに、用意した基板を用いたこと以外は、参考例3と同様にして、接続構造体を得た。
【0208】
(参考例14)
攪拌機及び温度計が取り付けられた500mLの反応容器内に、0.13重量%のアンモニア水溶液300gを入れた。次に、反応容器内のアンモニア水溶液中に、メチルトリメトキシシラン1.9gと、ビニルトリメトキシシラン12.7gと、シリコーンアルコキシオリゴマーA(信越化学工業社製「KR-517」)0.4gとの混合物をゆっくりと添加した。撹拌しながら、加水分解及び縮合反応を進行させた後、25重量%アンモニア水溶液1.6mL添加した後、アンモニア水溶液中から粒子を単離して、得られた粒子を酸素分圧10-10atm、380℃(焼成温度)で2時間(焼成時間)焼成して、有機無機ハイブリッド粒子(基材粒子B)を得た。得られた有機無機ハイブリッド粒子(基材粒子B)の粒子径は3μmであった。
【0209】
導電性粒子を作製する際に、基材粒子Aの代わりに、基材粒子Bを用いたこと以外は、参考例3と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0210】
(実施例15)
ニッケルめっき液(1)として、硫酸ニッケル0.14mol/L、ジメチルアミンボラン0.46mol/L及びクエン酸ナトリウム0.2mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。また、ニッケルめっき液(2)として、硫酸ニッケル0.14mol/L、塩化チタン(III)0.60mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.0)を用意した。
【0211】
第1の導電部を形成する際に、得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液(1)を懸濁液に、滴下速度6mL/分の条件で10分間滴下した。その後、滴下速度2mL/分の条件で40分間滴下し、さらにその後、滴下速度0.8mL/分の条件で80分間滴下することで、めっき膜中に取り込まれるボロンの含有量を制御しながら、基材粒子Aの表面に無電解ニッケル-ボロン合金めっきを行った(厚み0.02μm)。続いて、液温を70℃に設定して、上記ニッケルめっき液(2)を徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行い、懸濁液(2)を得た。
【0212】
その後、懸濁液(2)をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、基材粒子Aの表面にニッケル-ボロン合金の導電層(厚み0.02μm)と純ニッケル導電層(厚み0.08μm)が配置されたニッケルを主金属とする第1の導電部(厚み0.1μm)が形成された粒子を得た。得られた粒子を用いたこと以外は、参考例3と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0213】
(参考例16)
第1の接続対象部材における電極の外表面及び第2の接続対象部材における電極の外表面に、3-メルカプト-トリアゾールを含む保護層を形成したプラスチック基板及びフレキシブル基板を用意した。接続構造体を作製する際に、L/Sが10μm/10μmの銅電極パターン(第1の電極)を上面に有するプラスチック基板とL/Sが10μm/10μmの銅電極パターン(第2の電極)を下面に有するフレキシブル基板との代わりに、用意した基板を用いたこと以外は、参考例3と同様にして、接続構造体を得た。
【0214】
(実施例17)
ニッケルめっき液として、硫酸ニッケル0.14mol/L、ジメチルアミンボラン0.46mol/L及びクエン酸ナトリウム0.2mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。
【0215】
第1の導電部を形成する際に、得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に、滴下速度30mL/分の条件で10分間滴下し、その後、滴下速度10mL/分の条件で40分間滴下した。さらにその後、上記ニッケルめっき液を硫酸でpH6.8に調整し、反応温度を30℃以下にしてから上記ニッケルめっき液を滴下速度4mL/分の条件で80分間滴下することで、めっき膜中に取り込まれるボロンの含有量を制御しながら、無電解ニッケル-ボロン合金めっきを行い、懸濁液(2)を得た。
【0216】
その後、懸濁液(2)をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、基材粒子Aの表面にニッケルを主金属とする第1の導電部(厚み0.1μm)が形成された粒子を得た。得られた粒子における第1の導電部では、第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量が1.0重量%であり、かつ第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量が6.0重量%であった。得られた粒子を用いたこと以外は、参考例3と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0217】
(比較例1)
ニッケルめっき液(1)として、硫酸ニッケル0.14mol/L、ジメチルアミンボラン0.46mol/L及びクエン酸ナトリウム0.4mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.0)を用意した。また、ニッケルめっき液(2)として、硫酸ニッケル0.05mol/L、ジメチルアミンボラン0.95mol/L及びクエン酸ナトリウム0.8mol/Lを含むニッケルめっき液(pH6.0)を用意した。
【0218】
第1の導電部を形成する際に、得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液(1)を懸濁液に、滴下速度5mL/分の条件で40分間滴下した。その後、液温を20℃に設定して、上記ニッケルめっき液(2)(pH6.0)を徐々に滴下し、無電解ニッケル-ボロン合金めっきを行い、懸濁液(2)を得た。
【0219】
その後、懸濁液(2)をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、基材粒子Aの表面上に第1の導電部(ニッケルを含む導電層、厚み0.1μm)が配置された粒子を得た。得られた粒子における第1の導電部では、第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量が0.05重量%であり、かつ第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5の領域の100重量%中におけるホウ素の平均含有量が15.0重量%であった。得られた粒子を用いたこと以外は、参考例3と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0220】
(比較例2)
ニッケルめっき液として、硫酸ニッケル0.25mol/L、次亜リン酸ナトリウム0.25mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.15mol/Lを含むニッケルめっき液(pH9.0)を用意した。
【0221】
第1の導電部を形成する際に、得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルーリン合金めっきを行った。その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、基材粒子Aの表面にニッケル-リン層(厚み0.1μm)が配置された粒子を得た。導電層100重量%中のニッケルの含有量は97.0重量%、リンの含有量は3.0重量%であった。得られた粒子を用いたこと以外は、参考例3と同様にして、導電性粒子、導電材料及び接続構造体を得た。
【0222】
(比較例3)
ニッケルめっき液として、硫酸ニッケル0.40mol/L、次亜リン酸ナトリウム0.15mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.15mol/Lを含むニッケルめっき液(pH10.0)を用意した。
【0223】
第1の導電部を形成する際に、得られた懸濁液を80℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルーリン合金めっきを行った。その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、基材粒子Aの表面にニッケル-リン層(厚み0.1μm)が配置された粒子を得た。導電層100重量%中のニッケルの含有量は99.5重量%、リンの含有量は0.5重量%であった。得られた粒子を用いたこと以外は、参考例3と同様にして、導電性粒子、導電材料及び接続構造体を得た。
【0224】
(比較例4)
第1の接続対象部材として、第1の接続対象部材における電極の外表面の主金属が金である電極パターン(第1の電極)を上面に有するプラスチック基板を用意した。また、第2の接続対象部材として、第2の接続対象部材における電極の外表面の主金属が金である電極パターン(第2の電極)を下面に有するフレキシブル基板を用意した。接続構造体を作製する際に、L/Sが10μm/10μmの銅電極パターン(第1の電極)を上面に有するプラスチック基板とL/Sが10μm/10μmの銅電極パターン(第2の電極)を下面に有するフレキシブル基板との代わりに、用意した基板を用いたこと以外は、比較例3と同様にして、接続構造体を得た。
【0225】
(比較例5)
導電性粒子を作製する際に、第2の導電部を形成しなかったこと以外は、参考例16と同様にして、導電性粒子、導電材料及び接続構造体を得た。
【0226】
(比較例6)
第2の導電部を形成する際に、無電解コバルトめっきを施したこと以外は、参考例3と同様にして、導電性粒子、導電フィルム及び接続構造体を得た。
【0227】
(導電性粒子の粒子径)
導電性粒子の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製「LA-920」)を用いて測定した。
【0228】
(評価)
(1)第1の導電部の全体100重量%中におけるニッケル及びホウ素の平均含有量
導電性粒子の作製の際に、第1の導電部のみを形成することで、第1の導電部のみが形成された粒子を用意した。60%硝酸5mLと37%塩酸10mLとの混合液に、用意した粒子5gを加え、第1の導電部を完全に溶解させ、溶液を得た。得られた溶液を用いて、ニッケル及びホウ素の含有量を高周波誘導結合プラズマイオン源質量分析装置(日立ハイテクサイエンス社製「ICP-MS」)により分析した。なお、上記粒子を5g用意することが困難な場合は、測定に用いる粒子は、5g未満であってもよい。
【0229】
(2)第1の導電部の厚み方向におけるニッケル及びホウ素の平均含有量
第1の導電部の厚み方向における、ニッケル及びホウ素の含有量の分布を測定した。
【0230】
集束イオンビームを用いて、得られた導電性粒子の薄膜切片を作製した。電界放射型透過電子顕微鏡(日本電子社製「JEM-2010FEF」)を用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により、第1の導電部の厚み方向におけるニッケル及びホウ素の各含有量を測定した。この結果から、第1の導電部の内表面から外側に向かって厚み1/5までの上記領域(R1)(内表面側の厚み20%の領域)、及び第1の導電部の外表面から内側に向かって厚み1/5までの上記領域(R2)(外表面側の厚み20%の領域)の100重量%中におけるニッケル(Ni)及びホウ素(B)の平均含有量を求めた。得られた結果から、上記領域(R1)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量と、上記領域(R2)の100重量%中におけるホウ素の平均含有量との差の絶対値(ホウ素の平均含有量の差の絶対値)を算出した。
【0231】
(3)接続抵抗A(初期)
得られた接続構造体の対向する電極間の接続抵抗Aを4端子法により測定した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。また、接続抵抗Aを下記の基準で判定した。
【0232】
[接続抵抗Aの評価基準]
○○○:接続抵抗Aが2.0Ω以下
○○:接続抵抗Aが2.0Ωを超え3.0Ω以下
○:接続抵抗Aが3.0Ωを超え5.0Ω以下
△:接続抵抗Aが5.0Ωを超え10Ω以下
×:接続抵抗Aが10Ωを超える
【0233】
(4)接続抵抗B(信頼性試験後)
上記(1)初期の接続抵抗の評価で得られた接続構造体を、85℃及び相対湿度85%の条件で放置した。放置開始から1000時間後に、上記(3)接続抵抗Aの評価と同様に電極間の接続抵抗Bを4端子法により測定した。また、接続抵抗Bを下記の基準で判定した。
【0234】
[接続抵抗Bの判定基準]
○○○:接続抵抗Bが、接続抵抗Aの1.25倍未満
○○:接続抵抗Bが、接続抵抗Aの1.25倍以上1.5倍未満
○:接続抵抗Bが、接続抵抗Aの1.5倍以上2倍未満
△:接続抵抗Bが、接続抵抗Aの2倍以上3倍未満
×:接続抵抗Bが、接続抵抗Aの3倍以上
【0235】
(5)導電部の割れ(初期)
得られた導電性粒子1gと、トルエン20gと、直径0.5mmのジルコニアボール45gとを混合し、直径3cmの攪拌羽根で400rpmの条件で2分間撹拌した。固液分離した粒子を乾燥した後、SEM観察を行った。導電性粒子1000個中、導電部に割れが生じた導電性粒子の個数をカウントして、導電部の割れを下記の基準で判定した。なお、導電部の割れの評価に用いる上記導電性粒子の使用量は、1000個観察できるのであれば1g未満であってもよい。
【0236】
[導電部の割れ(初期)の判定基準]
○○○:導電部に割れが生じた導電性粒子の個数の割合が、3%未満
○○:導電部に割れが生じた導電性粒子の個数の割合が、3%以上10%未満
○:導電部に割れが生じた導電性粒子の個数の割合が、10%以上20%未満
△:導電部に割れが生じた導電性粒子の個数の割合が、20%以上30%未満
×:導電部に割れが生じた導電性粒子の個数の割合が、30%以上
【0237】
(6)導電部の割れ(信頼性試験後)
得られた導電性粒子を、85℃及び相対湿度85%の条件で放置した。放置開始から1000時間後に、放置した導電性粒子1gと、トルエン20gと、直径0.5mmのジルコニアボール45gとを混合し、直径3cmの攪拌羽根で400rpmの条件で2分間撹拌した。固液分離した粒子を乾燥した後、SEM観察を行った。導電性粒子1000個中、導電部に割れが生じた導電性粒子の個数をカウントして、導電部の割れを下記の基準で判定した。なお、導電部の割れの評価に用いる上記導電性粒子の使用量は、1000個観察できるのであれば1g未満であってもよい。
【0238】
[導電部の割れ(信頼性試験後)の判定基準]
○○○:導電部に割れが生じた導電性粒子の個数の割合が、5%未満
○○:導電部に割れが生じた導電性粒子の個数の割合が、5%以上15%未満
○:導電部に割れが生じた導電性粒子の個数の割合が、15%以上25%未満
△:導電部に割れが生じた導電性粒子の個数の割合が、25%以上35%未満
×:導電部に割れが生じた導電性粒子の個数の割合が、35%以上
【0239】
導電性粒子の詳細及び結果を下記の表1~4に示す。
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
【符号の説明】
【0244】
1,11,21,31…導電性粒子
2…基材粒子
3,13,23,33…第1の導電部
4,24,34…第2の導電部
13A,13B…導電部
25…芯物質
26…絶縁性物質
21A,23A,24A…突起
31A,33A,34A…突起
51…接続構造体
52…第1の接続対象部材
52a…第1の電極
53…第2の接続対象部材
53a…第2の電極
54…接続部