(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】操船支援システム、操船支援方法、情報処理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 3/02 20060101AFI20250219BHJP
G01S 13/937 20200101ALI20250219BHJP
【FI】
G08G3/02 A
G01S13/937
(21)【出願番号】P 2021075838
(22)【出願日】2021-04-28
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】500370230
【氏名又は名称】株式会社日本海洋科学
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】横山 聡
(72)【発明者】
【氏名】竹林 優一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠太
(72)【発明者】
【氏名】中川 和也
(72)【発明者】
【氏名】魚下 成一
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196103(JP,A)
【文献】特開平09-022500(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003856(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01S 13/937
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の位置及び速度を表す船舶データを生成するデータ生成部と、
前記船舶データ及び指定された旋回条件に基づいて、前記船舶が前記旋回条件に従って旋回すると仮定したときの予測旋回航路を算出する旋回航路算出部と、
前記船舶の位置及び前記予測旋回航路を示す画像を表示する表示部と、
を備え
、
前記旋回条件は、ROT(Rate of Turn)であり、
前記旋回航路算出部は、段階的に変化する複数の前記ROTにそれぞれ対応する、旋回開始位置が共通する複数の前記予測旋回航路を算出し、
前記表示部は、複数の前記予測旋回航路を示す画像を表示する、
操船支援システム。
【請求項2】
前記旋回条件として、指定された目標位置に到達するために必要な旋回条件を算出する旋回条件算出部をさらに備える、
請求項1に記載の操船支援システム。
【請求項3】
前記表示部に表示される前記船舶の位置を示す画像において前記目標位置の指定を受付ける指定受付部をさらに備える、
請求項2に記載の操船支援システム。
【請求項4】
前記旋回条件として、指定された旋回開始位置から指定された目標位置に到達するために必要な旋回条件を算出する旋回条件算出部をさらに備える、
請求項1に記載の操船支援システム。
【請求項5】
前記表示部に表示される前記船舶の位置を示す画像において前記旋回開始位置及び前記目標位置の指定を受付ける指定受付部をさらに備える、
請求項4に記載の操船支援システム。
【請求項6】
前記旋回条件は、前記船舶の旋回性能の上限に対応する条件である、
請求項1に記載の操船支援システム。
【請求項7】
前記旋回条件算出部は、前記旋回条件とともに、前記目標位置に到達するまでの時間を算出する、
請求項2に記載の操船支援システム。
【請求項8】
他船の位置及び速度を表す他船データを生成する他船データ生成部と、
前記船舶データ及び前記他船データに基づいて、前記他船の予測針路上の各点について、前記船舶が変針して前記各点に到達すると仮定したときに、前記船舶と前記他船とが衝突するリスクを表すリスク値を算出し、前記リスク値が閾値以上の点をOZT(Obstacle Zone by Target)を表示するためのOZT表示点とするリスク値算出部と、
前記予測旋回航路上に所定時間内に到達できる前記OZTが存在する場合に、警報を発報する警報部と、
をさらに備える、
請求項1ないし
7の何れかに記載の操船支援システム。
【請求項9】
前記データ生成部は、前記船舶に搭載され、GNSS(Global Navigation Satellite System)から受信した電波に基づいて前記船舶の位置を検出するGNSS受信機を含む、
請求項1ないし
8の何れかに記載の操船支援システム。
【請求項10】
前記他船データ生成部は、前記船舶に搭載され、前記船舶の周囲に発せられた電波の反射波を受信して生成されたエコーデータから前記他船の位置及び速度を検出するレーダーを含む、
請求項
8に記載の操船支援システム。
【請求項11】
データ生成部により、船舶の位置及び速度を表す船舶データを生成し、
前記船舶データ及び指定された旋回条件に基づいて、前記船舶が前記旋回条件に従って旋回すると仮定したときの予測旋回航路を算出し、
前記船舶の位置及び前記予測旋回航路を示す画像を表示する、
操船支援方法であって、
前記旋回条件は、ROT(Rate of Turn)であり、
前記算出は、段階的に変化する複数の前記ROTにそれぞれ対応する、旋回開始位置が共通する複数の前記予測旋回航路を算出し、
前記表示は、複数の前記予測旋回航路を示す画像を表示する、
操船支援方法。
【請求項12】
船舶の位置及び速度を表す船舶データ並びに指定された旋回条件に基づいて、前記船舶が前記旋回条件に従って旋回すると仮定したときの予測旋回航路を算出する旋回航路算出部と、
前記船舶の位置及び前記予測旋回航路を示す表示用画像を生成する表示制御部と、
を備え
、
前記旋回条件は、ROT(Rate of Turn)であり、
前記旋回航路算出部は、段階的に変化する複数の前記ROTにそれぞれ対応する、旋回開始位置が共通する複数の前記予測旋回航路を算出し、
前記表示制御部は、複数の前記予測旋回航路を示す表示用画像を生成する
、
情報処理装置。
【請求項13】
船舶の位置及び速度を表す船舶データ並びに指定された旋回条件に基づいて、前記船舶が前記旋回条件に従って旋回すると仮定したときの予測旋回航路を算出すること、
前記船舶の位置及び前記予測旋回航路を示す表示用画像を生成すること、
をコンピュータに実行させ
、
前記旋回条件は、ROT(Rate of Turn)であり、
前記算出は、段階的に変化する複数の前記ROTにそれぞれ対応する、旋回開始位置が共通する複数の前記予測旋回航路を算出し、
前記生成は、複数の前記予測旋回航路を示す表示用画像を生成する
、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操船支援システム、操船支援方法、情報処理装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ECDIS(Electronic Chart Display and Information System)等の、電子海図上に自船の位置を表示する装置が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、実際に旋回する前に、自船がどのような航路で旋回するか予測することができたら便利である。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、予測旋回航路を把握することが容易な操船支援システム、操船支援方法、情報処理装置、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の操船支援システムは、船舶の位置及び速度を表す船舶データを生成するデータ生成部と、前記船舶データ及び指定された旋回条件に基づいて、前記船舶が前記旋回条件に従って旋回すると仮定したときの予測旋回航路を算出する旋回航路算出部と、前記船舶の位置及び前記予測旋回航路を示す画像を表示する表示部と、を備える。
【0006】
また、本発明の他の態様の操船支援方法は、データ生成部により、船舶の位置及び速度を表す船舶データを生成し、前記船舶データ及び指定された旋回条件に基づいて、前記船舶が前記旋回条件に従って旋回すると仮定したときの予測旋回航路を算出し、前記船舶の位置及び前記予測旋回航路を示す画像を表示する。
【0007】
また、本発明の他の態様の情報処理装置は、船舶の位置及び速度を表す船舶データ並びに指定された旋回条件に基づいて、前記船舶が前記旋回条件に従って旋回すると仮定したときの予測旋回航路を算出する旋回航路算出部と、前記船舶の位置及び前記予測旋回航路を示す表示用画像を生成する表示制御部と、を備える。
【0008】
また、本発明の他の態様のプログラムは、船舶の位置及び速度を表す船舶データ並びに指定された旋回条件に基づいて、前記船舶が前記旋回条件に従って旋回すると仮定したときの予測旋回航路を算出すること、前記船舶の位置及び前記予測旋回航路を示す表示用画像を生成すること、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、予測旋回航路を把握することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る操船支援システムの構成例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る操船支援方法の手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る操船支援システム100の構成例を示すブロック図である。操船支援システム100は、船舶に搭載され、周囲に存在する船舶を監視するためのシステムである。
【0013】
操船支援システム100が搭載された船舶は、以下の説明では「自船」という。また、自船の周囲に存在する船舶は、以下の説明では「他船」という。
【0014】
また、以下の説明において、「速度」は速さと方位を表すベクトル量(いわゆる、船速ベクトル)であるとし、「速さ」はスカラー量であるとする。
【0015】
操船支援システム100は、情報処理装置1、表示部2、レーダー3、AIS4、GNSS受信機5、ジャイロコンパス6、ECDIS7、及び警報部8を備えている。これらの機器は、例えばLAN等のネットワークNに接続されており、相互にネットワーク通信が可能である。
【0016】
情報処理装置1は、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリ、及び入出力インターフェース等を含むコンピュータである。情報処理装置1のCPUは、ROM又は不揮発性メモリからRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行する。
【0017】
プログラムは、例えば光ディスク又はメモリカード等の情報記憶媒体を介して供給されてもよいし、例えばインターネット又はLAN等の通信ネットワークを介して供給されてもよい。
【0018】
表示部2は、例えばタッチセンサ付き表示装置である。タッチセンサは、指等による画面内の指示位置を検出する。タッチセンサに限らず、マウス等により指示位置が入力されてもよい。
【0019】
レーダー3は、自船の周囲に電波を発するとともにその反射波を受信し、受信信号に基づいてエコーデータを生成する。また、レーダー3は、エコーデータから物標を識別し、物標の位置及び速度を表す物標追跡データ(TTデータ)を生成する。
【0020】
AIS(Automatic Identification System)4は、自船の周囲に存在する他船又は陸上の管制からAISデータを受信する。AISに限らず、VDES(VHF Data Exchange System)が用いられてもよい。AISデータは、他船の位置及び速度等を含んでいる。
【0021】
GNSS受信機5は、GNSS(Global Navigation Satellite System)から受信した電波に基づいて自船の位置を検出する。ジャイロコンパス6は、自船の方位を検出する。ジャイロコンパスに限らず、GPSコンパス又は磁気コンパスが用いられてもよい。
【0022】
ECDIS(Electronic Chart Display and Information System)7は、GNSS受信機5から自船の位置を取得し、電子海図上に自船の位置を表示する。また、ECDIS7は、電子海図上に自船の予定航路も表示する。ECDISに限らず、GNSSプロッタが用いられてもよい。
【0023】
警報部8は、自船が他船と衝突するリスクがある場合に警報を発報する。警報部8は、例えば表示による警報であってもよいし、音又は光による警報であってもよい。表示による警報は、表示部2において行われてもよい。すなわち、表示部2が警報部8を兼ねてもよい。
【0024】
本実施形態において、情報処理装置1は独立した装置であるが、これに限らず、ECDIS7等の他の装置と一体であってもよい。すなわち、情報処理装置1の機能部がECDIS7等の他の装置で実現されてもよい。
【0025】
また、表示部2も独立した装置であるが、これに限らず、ECDIS7等の他の装置の表示部が、情報処理装置1により生成された画像を表示する表示部2として用いられてもよい。
【0026】
本実施形態において、GNSS受信機5とECDIS7の組は、データ生成部の例であり、自船の位置及び速度を表す自船データを生成する。具体的には、GNSS受信機5が自船の位置を検出するとともに、ECDIS7が自船の位置の時間変化から自船の速度を検出する。
【0027】
これに限らず、自船の速度は、ジャイロコンパス6により検出される自船の方位と、不図示の船速計により検出される自船の速さとに基づいて検出されてもよい。
【0028】
また、レーダー3又はAIS4は、他船データ生成部の例であり、他船の位置及び速度を表す他船データを生成する。具体的には、レーダー3により生成されるTTデータが他船データに相当する。また、AIS4により生成されるAISデータも他船データに相当する。
【0029】
図2は、情報処理装置1のメモリに構築される他船管理データベースの例を示す図である。他船管理データベースには、レーダー3又はAIS4により生成された他船データが登録される。
【0030】
他船管理データベースは、「他船識別子」、「位置」、「速さ」、及び「方位」等のフィールドを含んでいる。なお、レーダー3により検出される他船の位置及び方位は、GNSSと同じ座標系に変換される。
【0031】
図3は、実施形態に係る情報処理装置1の構成例を示す図である。情報処理装置1は、指定受付部11、旋回条件算出部12、旋回航路算出部13、リスク値算出部14、発報判定部15、及び表示制御部16を備えている。これらの機能部は、情報処理装置1のCPUがプログラムに従って情報処理を実行することにより実現される。
【0032】
指定受付部11は、表示部2に表示される自船の位置を示す画像において目標位置等の位置の指定を受付ける。画像内の位置の指定は、表示部2に設けられたタッチセンサ又はマウス等によって行われる。
【0033】
旋回条件算出部12は、指定受付部11により受付けた目標位置に到達するために必要な旋回条件を算出する。旋回条件は、例えばROT(Rate of Turn)である。これに限らず、旋回条件は舵角であってもよい。また、旋回条件算出部12は、旋回条件とともに、目標位置に到達するまでの到達時間も算出する。
【0034】
旋回航路算出部13は、旋回条件算出部12により算出された旋回条件に従って船舶が旋回すると仮定したときの予測旋回航路を算出する。予測旋回航路は、例えば算出されたROTに対応する円弧で表される。これに限らず、予測旋回航路は、自船の船体特性を考慮したK-Tモデルに基づく曲線であってもよい。
【0035】
リスク値算出部14は、自船データ及び他船データに基づいて、自船と他船とが衝突するリスクを表すリスク値を算出する。リスク値の算出には、OZT(Obstacle Zone by Target)を表示するための公知の手法が用いられる。
【0036】
具体的には、リスク値算出部14は、他船の予測針路上の各判定点について、自船が変針して各判定点に到達すると仮定したときに、自船と他船が衝突するリスクを表すリスク値を算出し、リスク値が閾値以上の点を、OZTを表示するためのOZT表示点とする。
【0037】
発報判定部15は、リスク値算出部14により算出されたリスク値が閾値以上である場合に、警報部8に発報指令を出力する。また、発報判定部15は、旋回航路算出部13により算出された予測旋回航路上にOZTが存在する場合にも、警報部8に発報指令を出力する。
【0038】
表示制御部16は、自船データ及び他船データに基づいて、自船及び他船の位置を示す画像を生成し、表示部2に出力する。また、表示制御部16は、リスク値算出部14により算出されたリスク値に基づいて他船の予測針路上にOZTを表示する。さらに、表示制御部16は、旋回航路算出部13により算出された予測旋回航路も表示する。
【0039】
図4は、操船支援システム100において実現される、実施形態に係る操船支援方法の手順例を示すフロー図である。情報処理装置1は、同図に示す情報処理をプログラムに従って実行する。
図5~
図7は、予測旋回航路の表示例を示す図である。
【0040】
まず、情報処理装置1は、自船、他船及びOZT等の位置を示す画像を生成し、表示部2に出力する(S11:表示制御部16としての処理)。
【0041】
次に、情報処理装置1は、表示部2に表示された画像において目標位置が指定されたか否かを判定する(S12:指定受付部11としての処理)。目標位置の指定は、例えばマウスのクリック等によって実現される。
【0042】
次に、情報処理装置1は、表示部2に表示された画像において指定された目標位置に到達するために必要なROT及び到達時間を算出する(S13:旋回条件算出部12としての処理)。ROT及び到達時間は、自船の位置、自船の速度、及び指定された目標位置に基づいて算出される。
【0043】
次に、情報処理装置1は、S13で算出されたROTに従って自船が現在の位置から目標位置まで旋回すると仮定したときの予測旋回航路を算出し、自船の位置等とともに画像に表示する(S14:旋回航路算出部13及び表示制御部16としての処理)。
【0044】
図5に示すように、予測旋回航路は、自船の位置から船首方位に向けて延び出して目標位置に至る円弧で表される。画像には、自船の位置及び予測旋回航路とともに、旋回に必要なROT及び到達時間等の旋回条件が数値で示される。また、目標位置に到達したときの自船の船首方位が破線等で示されてもよい。
【0045】
次に、情報処理装置1は、表示部2に表示された画像において旋回開始位置が指定されたか否かを判定する(S15:指定受付部11としての処理)。旋回開始位置は、自船の船首線上に指定される。
【0046】
旋回開始位置の指定は、例えばマウスのホイール操作等によって実現される。例えば、マウスのクリックによって目標位置が指定された状態で、マウスのホイール操作が行われると、旋回開始位置が指定される。
【0047】
次に、情報処理装置1は、表示部2に表示された画像において指定された旋回開始位置から目標位置に到達するために必要なROT及び到達時間を算出する(S16:旋回条件算出部12としての処理)。ROT及び到達時間は、自船の位置、自船の速度、旋回開始位置、及び目標位置に基づいて算出される。
【0048】
次に、情報処理装置1は、S16で算出されたROTに従って自船が旋回開始位置から目標位置まで旋回すると仮定したときの予測旋回航路を算出し、自船の位置等とともに画像に表示する(S17:旋回航路算出部13及び表示制御部16としての処理)。
【0049】
図6に示すように、予測旋回航路は、旋回開始位置から船首方位に向けて延び出して目標位置に至る円弧で表される。画像には、旋回に必要なROT及び到達時間等の旋回条件に加えて、旋回を開始するまでの時間も数値で示される。到達時間は、現在の位置から旋回開始位置に到達する時間と、旋回開始位置から目標位置に到達する時間との合計である。
【0050】
次に、情報処理装置1は、予測航路上に所定時間内に到達できるOZTが存在するか否か判定し、そのようなOZTが存在する場合に、警報部8に発報指令を出力する(S18,S19:発報判定部15としての処理)。警報部8は、発報指令を受けると、警報を発報する。
【0051】
具体的には、情報処理装置1は、目標位置の指定を受付けていない場合には(S12:NO)、自船の船首線上に所定時間内に到達できるOZTが存在するか否か判定する。一方、情報処理装置1は、目標位置等の指定を受付けて予測旋回航路を算出している場合は、予測旋回航路上に所定時間内に到達できるOZTが存在するか否か判定する(
図7参照)。
【0052】
警報の発報は、例えば
図7に示すように、警報部8を兼ねる表示部2において、他船のシンボルに警報の対象であることを表す枠を付加する等の強調表示を行うことによって実現される。発報指令は、強調表示を行うための表示指令である。これに限らず、予測旋回航路の色等を変更したり、点滅させてもよい。
【0053】
以上に説明した実施形態によれば、目標位置を指定すると、そこに到達するための予測旋回航路、ROT、及び到達時間などが表示されるので、避航操船時の判断を支援することが可能となる。
【0054】
以下、変形例について説明する。
【0055】
図8は、変形例に係る表示例を示す図である。本例では、自船を基準として船首方向に向かうに従って左右舷方向に広がる航過可能領域が表示される。具体的には、ROTの上限を表す左右一組の円弧が表示され、その間の領域が航過可能領域とされる。航過可能領域は、色等を付すことで他の領域と識別表示されてもよい。
【0056】
ROTの上限を表す円弧は、ROTが上限の場合の予測旋回航路に相当する。具体的には、旋回条件算出部12がROTの上限を指定し、旋回航路算出部13がROTの上限に従って自船が旋回すると仮定したときの予測旋回航路を、ROTの上限を表す円弧として算出する。
【0057】
ROTの上限は、自船の旋回性能の上限に対応する。すなわち、ROTの上限は、実際に自船が旋回し得るROTの上限であってもよいし、それに達しないように予め設定された人為的なROTの上限であってもよい。
【0058】
図9は、他の変形例に係る表示例を示す図である。本例では、段階的に変化する複数のROTにそれぞれ対応する複数の予測旋回航路が表示される。各ROTに対応する左右一組の予測旋回航路は、自船を基準として船首方向に向かうに従って左右舷方向に広がっており、ROTが大きくなるほど幅が広がっている。
【0059】
具体的には、旋回条件算出部12が段階的に変化する複数のROTを指定し、旋回航路算出部13が、複数のROTのそれぞれについて、指定されたROTに従って自船が旋回すると仮定したときの予測旋回航路を算出する。
【0060】
複数のROTにそれぞれ対応する複数の予測旋回航路は、色又は破線等で分けて表示してもよい。また、それぞれの予測旋回航路には、到達時間又は航過距離に応じた目盛りを付加してもよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0062】
1 情報処理装置、2 表示部、3 レーダー、4 AIS、5 GNSS受信機、6 ジャイロコンパス、7 ECDIS、8 警報部、11 指定受付部、12 旋回条件算出部、13 旋回航路算出部、14 リスク値算出部、15 発報判定部、16 表示制御部、100 操船支援システム