(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法および推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20250219BHJP
【FI】
G05B23/02 R
(21)【出願番号】P 2021118239
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 和輝
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 知範
(72)【発明者】
【氏名】切通 恵介
(72)【発明者】
【氏名】大川内 智海
(72)【発明者】
【氏名】藤原 大悟
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-288512(JP,A)
【文献】特開平09-198126(JP,A)
【文献】特開2015-153133(JP,A)
【文献】特開2020-166442(JP,A)
【文献】特開2017-204017(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0176957(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0047474(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定部と、
推定された前記因果関係を、前記時間遅れの次元を含む3次元の空間に提示する提示部と、
を有
し、
前記推定部は、前記時系列データの全時間区間に対する所定の割合の時間間隔ごとに、前記因果関係を推定することを特徴とする推定装置。
【請求項2】
複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定部と、
推定された前記因果関係を、前記時間遅れの次元を含む3次元の空間に提示する提示部と、
を有し、
前記推定部が、前記時間間隔ごとの前記因果関係の変化の度合いを算出し、
算出された前記時間間隔ごとの前記因果関係の変化の度合いが所定の閾値以上である場合に、警報を発信する警報部を、さらに備えることを特徴とす
る推定装置。
【請求項3】
複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定部と、
推定された前記因果関係を、前記時間遅れの次元を含む3次元の空間に提示する提示部と、
を有し、
前記提示部は、前記時間遅れごとの前記センサーの間の所定のホップ数の前記因果関係を提示することを特徴とす
る推定装置。
【請求項4】
複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定部と、
推定された前記因果関係を、前記時間遅れの次元を含む3次元の空間に提示する提示部と、
を有し、
前記提示部は、前記因果関係を、前記3次元の空間から前記センサーを示す2次元平面に切り替えて提示することを特徴とす
る推定装置。
【請求項5】
前記提示部は、前記因果関係の強さを表す値が所定の閾値以上の場合に、該値と該因果関係の方向とを提示することを特徴とする請求項1
~4のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記提示部は、提示した前記因果関係に関する詳細情報をさらに提示可能であることを特徴とする請求項1
~5のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項7】
推定装置が実行する推定方法であって、
複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定工程と、
推定された前記因果関係を、前記時間間隔の次元を含む3次元の空間に提示する提示工程と、
を含
み、
前記推定工程は、前記時系列データの全時間区間に対する所定の割合の時間間隔ごとに、前記因果関係を推定することを特徴とする推定方法。
【請求項8】
推定装置が実行する推定方法であって、
複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定工程と、
推定された前記因果関係を、前記時間間隔の次元を含む3次元の空間に提示する提示工程と、
を含み、
前記推定工程が、前記時間間隔ごとの前記因果関係の変化の度合いを算出し、
算出された前記時間間隔ごとの前記因果関係の変化の度合いが所定の閾値以上である場合に、警報を発信する警報工程を、さらに備えることを特徴とする推定方法。
【請求項9】
推定装置が実行する推定方法であって、
複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定工程と、
推定された前記因果関係を、前記時間間隔の次元を含む3次元の空間に提示する提示工程と、
を含み、
前記提示工程は、前記時間遅れごとの前記センサーの間の所定のホップ数の前記因果関係を提示することを特徴とする推定方法。
【請求項10】
推定装置が実行する推定方法であって、
複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定工程と、
推定された前記因果関係を、前記時間間隔の次元を含む3次元の空間に提示する提示工程と、
を含み、
前記提示工程は、前記因果関係を、前記3次元の空間から前記センサーを示す2次元平面に切り替えて提示することを特徴とする推定方法。
【請求項11】
複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定ステップと、
推定された前記因果関係を、前記時間間隔の次元を含む3次元の空間に提示する提示ステップと、
をコンピュータに実行させ
、
前記推定ステップは、前記時系列データの全時間区間に対する所定の割合の時間間隔ごとに、前記因果関係を推定することを特徴とする推定プログラム。
【請求項12】
複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定ステップと、
推定された前記因果関係を、前記時間間隔の次元を含む3次元の空間に提示する提示ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記推定ステップが、前記時間間隔ごとの前記因果関係の変化の度合いを算出し、
算出された前記時間間隔ごとの前記因果関係の変化の度合いが所定の閾値以上である場合に、警報を発信する警報ステップを、さらに備えることを特徴とする推定プログラム。
【請求項13】
複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定ステップと、
推定された前記因果関係を、前記時間間隔の次元を含む3次元の空間に提示する提示ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記提示ステップは、前記時間遅れごとの前記センサーの間の所定のホップ数の前記因果関係を提示することを特徴とする推定プログラム。
【請求項14】
複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定ステップと、
推定された前記因果関係を、前記時間間隔の次元を含む3次元の空間に提示する提示ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記提示ステップは、前記因果関係を、前記3次元の空間から前記センサーを示す2次元平面に切り替えて提示することを特徴とする推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定方法および推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データ分析を行う際に、データに内在するデータ間の因果関係を推定する技術が期待されている(非特許文献1、2参照)。これにより、データ分析の質が向上するだけでなく、お客様の納得感を得られやすく、データ解釈の面での効果も高い。
【0003】
ここで、因果関係は、相関関係とは異なり、因果の方向を決定するこができる。例えば、影響元センサーAと影響先センサーBとにおいて、センサーAの状態に影響を受けてセンサーBの状態が変化する場合を考える。この場合に、相関関係の推定では、センサーAとセンサーBとの間に強い相関関係が認められても、どちらが影響元でありどちらが影響先であるかを同定することができない。
【0004】
一方、因果関係の推定では、因果関係の方向が決定され、「センサーA→センサーB」と「センサーA←センサーB」とは明確に区別される。さらに、第三のセンサーの存在により、センサーAとセンサーBとの間に見かけ上の関係がある場合に、相関関係の推定では識別が困難であるが、因果関係の推定では識別可能な場合がある。
【0005】
また、因果関係の推定では、N本のセンサーが存在する場合には、N本内の組み合わせごとに因果関係が評価される。さらに、時系列性を考慮した因果関係の推定では、各センサーの遅れ時間から現在時間への因果関係が評価される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Hyvarinen, Aapo, et al., “Estimation of a structural vector autoregression model using non-gaussianity”, Journal of Machine Learning Research 11.5 (2010)
【文献】Nicolaou, Nicoletta, and Timothy G. Constandinou, “A nonlinear causality estimator based on non-parametric multiplicative regression”, Frontiers in neuroinformatics 10 (2016): 19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、時系列性を考慮した因果関係の明確な推定が困難であった。例えば、従来は、時系列データが定常であることを仮定して、分析対象のデータの全時間区間での平均的な因果関係が推定される。そのため、データが定常でない場合には、実態に即した情報が取りこぼされてしまうおそれがある。例えば、途中の10%程度の区間でのみ、強さ1の因果関係があっても、データの全時間区間での因果関係としては0.1と平滑されるため、結果が不明確になるおそれがある。
【0008】
また、時系列性を考慮した因果関係の推定結果は、影響元センサー×影響先センサー×時間遅れの3次元での矢印で表現される。3次元の結果を2次元平面で表現する場合には、時間遅れ方向をタブの切り替えで表現し、あるタブの中である特定の時間遅れからの因果関係の矢印のみが表示される。一方、時間遅れを跨った因果関係の繋がりは1枚の絵では得られず、分析者がイメージを補完する必要があるため、直感的に把握することは困難である。特に、センサー数や時間遅れ数が膨大になるほど、混乱を生じる恐れが大きく、分析が困難となる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、時系列性を考慮した因果関係の明確な推定を容易に可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る推定装置は、複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する推定部と、推定された前記因果関係を、前記時間遅れの次元を含む3次元の空間に提示する提示部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、時系列性を考慮した因果関係の明確な推定が容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態の推定装置の概要を説明するための図である。
【
図2】
図2は、推定装置の概略構成を例示する模式図である。
【
図3】
図3は、提示部の処理を説明するための図である。
【
図4】
図4は、提示部の処理を説明するための図である。
【
図5】
図5は、提示部の処理を説明するための図である。
【
図6】
図6は、提示部の処理を説明するための図である。
【
図7】
図7は、提示部の処理を説明するための図である。
【
図8】
図8は、提示部の処理を説明するための図である。
【
図9】
図9は、提示部の処理を説明するための図である。
【
図15】
図15は、推定処理手順を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、推定プログラムを実行するコンピュータを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0014】
[推定装置の概要]
図1は、本実施形態の推定装置の概要を説明するための図である。
図1(A)~(B)に示すように、推定装置は、例えば、プラントのプロセスデータを対象として、時系列性を考慮した因果関係を推定する。具体的には、推定装置は、
図1(B)に示すように、プラント内の装置に設置されているセンサーが出力する多変量時系列データであるセンサーデータのうち、所定の時間幅の分析窓の中のデータを取得する。
【0015】
また、推定装置は、
図1(C)に示すように、取得したデータを用いて、各センサーをノードとした因果関係のグラフを生成する。そして、推定装置は、分析窓を時間方向に所定の時間間隔でスライドさせることにより、
図1(D)に示すように、時間遅れの次元を含む3次元空間に因果関係のグラフを連続的に生成し、分析者に提示する。
【0016】
[推定装置の構成]
図2は、推定装置の概略構成を例示する模式図である。
図2に例示するように、推定装置10は、パソコン等の汎用コンピュータで実現され、入力部11、出力部12、通信制御部13、記憶部14、および制御部15を備える。
【0017】
入力部11は、キーボードやマウス等の入力デバイスを用いて実現され、操作者による入力操作に対応して、制御部15に対して処理開始などの各種指示情報を入力する。出力部12は、液晶ディスプレイなどの推定装置、プリンター等の印刷装置等によって実現される。
【0018】
通信制御部13は、NIC(Network Interface Card)等で実現され、ネットワークを介したサーバ等の外部の装置と制御部15との通信を制御する。例えば、通信制御部13は、後述する推定処理に用いられるセンサーデータを収集し管理する管理装置等と制御部15との通信を制御する。
【0019】
記憶部14は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。本実施形態において、記憶部14には、例えば、後述する推定処理の結果等が記憶される。なお、記憶部14は、通信制御部13を介して制御部15と通信する構成でもよい。
【0020】
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)等を用いて実現され、メモリに記憶された処理プログラムを実行する。これにより、制御部15は、
図2に例示するように、取得部15a、推定部15b、提示部15cおよび警報部15dとして機能する。なお、これらの機能部は、それぞれあるいは一部が異なるハードウェアに実装されてもよい。例えば、提示部15cは、他の機能部とは別の装置に実装されてもよい。また、制御部15は、その他の機能部を備えてもよい。
【0021】
取得部15aは、複数のセンサーの時系列データを取得する。具体的には、取得部15aは、入力部11を介して、あるいはセンサーデータの管理装置等から通信制御部13を介して、後述する推定処理の対象として、複数のセンサーの時系列データを取得する。なお、取得部15aは、取得した時系列データを記憶部14に記憶してもよい。
【0022】
推定部15bは、複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する。具体的には、推定部15bは、
図1(B)に示したように、センサーデータのうち、所定の時間幅の分析窓の中のデータを用いて、
図1(D)に示したような、各センサーとその時間遅れとをノードとした因果関係のグラフを生成する。そして、推定部15bは、分析窓を時間方向にスライドさせて、再度ノード間の因果関係のグラフを生成することにより、分析窓の所定の時間間隔のスライド幅ごとに、ノード間の因果関係のグラフを変化させる。このようにして、推定部15bは、時間遅れを明示的に考慮した因果関係のグラフを生成し、分析窓のスライドに合わせて因果関係のグラフを変化させる。
【0023】
推定部15bは、時系列データの全時間区間に対する所定の割合の時間間隔ごとに、因果関係を推定する。例えば、推定部15bは、時間間隔すなわち分析窓のスライド幅を、時系列データの全区間の時間幅の10%程度とする。これにより、推定部15bは、例えば、瞬間的に強くなる因果関係を、従来のように全時間区間で平均化して不明確してしまうことなく、明確に推定することが可能となる。
【0024】
また、推定部15bは、時間間隔ごとの因果関係の変化の度合いを算出してもよい。具体的には、推定部1bは、各時点でのノード間の因果関係のグラフの時間変化の変化度を算出する。例えば、推定部15bは、変化の前後のグラフの3次元テンソル間のノルム等で変化度を算出する。
【0025】
提示部15cは、推定された因果関係を、所定の時間遅れの次元を含む3次元の空間に提示する。具体的には、提示部15cは、
図1(D)に例示したように、入力データに対応した所定の時間遅れを単位とする時間遅れの軸と、時間遅れの軸上の各時点における各センサーの関係を表す2次元平面とで表現される3次元空間に、センサー間の因果関係を提示する。つまり、提示部15cは、センサーとその時間遅れをノードとしてノード間の因果関係を出力部12に表示する。
【0026】
因果関係は、例えば、因果関係の強さを表す数値と、因果関係の方向を示す矢印とで表現される。因果関係の強さは、矢印の太さで表されてもよい。これにより、推定装置10は、時間遅れを含むノード間の因果関係を分析者が直感的に把握することが容易に可能となる。
【0027】
ここで、
図3~
図14は、提示部の処理を説明するための図である。まず、
図3に示すように、提示部15cは、ノード間の因果関係のグラフの向きを自在に変更して表示することが可能である。例えば、提示部15cは、分析者のマウスドラッグ等の操作入力を受け付けて、任意に動かすことが可能である。
図3に示す例では、時間遅れの軸が、
図3(a)に示す水平方向から、
図3(b)に示す垂直方向に変更されている。これにより、分析者が興味の対象に注目しやすくなり、因果関係のグラフの可読性が向上する。
【0028】
また、
図4に示すように、提示部15cは、分析窓に沿って時間を変化させることにより、ノード間の因果関係のグラフを、リアルタイムに表示したり、リプレイ表示したりすることが可能である。
【0029】
また、提示部15cは、推定部15bが各時点での因果関係のグラフの時間変化の変化度を算出した場合に、変化度を数値で表示することも可能である。この場合に、提示部15cは、変化度を「安定」「普通」「不安定」等のように、適当に離散化して可視化してもよい。これにより、分析者は直感的に因果関係の変化の状況を把握しやすくなり、監視や異常検知を容易に行うことが可能となる。
【0030】
また、
図5に示すように、提示部15cは、因果関係の強さを表す値が所定の閾値以上の場合に、該値と該因果関係の方向とを提示してもよい。
図5に示す例では、提示部15cは、分析者が指定した閾値未満の強度の因果関係の矢印を非表示としている。例えば、
図5(a)に表示されている強度0.1以上0.5未満の細い矢印が、
図5(b)では非表示となっている。
【0031】
また、
図6および
図7に示すように、提示部15cは、提示した因果関係に関する詳細情報をさらに提示可能である。例えば、
図6に示すように、因果関係のグラフのエッジ(ノード間の矢印)がマウスホバー等により指定されることにより、提示部15cは、当該エッジのエッジ名、強度、因果元、因果先等の詳細情報を表示する。あるいは、
図7に示すように、因果関係のグラフのノードがマウスホバー等により指定されることにより、提示部15cは、当該ノードのノード名、入次数(当該ノードを因果先とするノードの数)、出次数(当該ノードを因果元とするノードの数)等の詳細情報を表示する。
【0032】
また、
図8に示すように、提示部15cは、時間遅れごとのセンサーの間の所定のホップ数の因果関係を提示する。例えば、
図8(a)に示す例では、マウスホバー等で指定されたノードからホップ数2のノードとの因果関係が表示されている。また、
図8(b)には、マウスホバー等で指定されたノードからホップ数2以内のノードとの因果関係が表示されている。
【0033】
また、
図9に示すように、提示部15cは、グリッドの表示/非表示を切り替えることが可能である。例えば、
図9(a)には、時間方向(時間遅れ軸方向)のグリッドのみが表示されている。また、
図9(b)には、同一時刻のグリッドのみが表示されている。
【0034】
また、
図10に示すように、提示部15cは、時間遅れ軸の表示/非表示を切り替えることが可能である。例えば、提示部15cは、
図4~
図9に示したように、時間遅れ軸を非表示にすることが可能である。あるいは、提示部15cは、
図10に示すように、時間遅れ軸を表示することも可能である。この場合には、
図3に示したような因果関係のグラフの動きに追随して、時間遅れ軸が動いている。
【0035】
また、
図11に示すように、提示部15cは、因果関係のグラフの各ノードのノード名や時間遅れ軸の各時点の情報等を表示することが可能である。例えば、
図11(a)には、時間遅れ軸の各時点を特定する「同時刻」「1ステップ遅れ」等の情報が表示されている。また、
図11(b)には、さらにグラフの各ノードを識別する「センサーA」「センサーB」等の情報が表示されている。
【0036】
また、
図12に示すように、提示部15cは、分析者の指示により、因果関係のグラフを初期状態にリセットすることが可能である。例えば、
図12(a)に示すように、時間遅れ軸の方向が動かされている状態で、リセットを指示する「リセット」ボタンがクリックされた場合に、
図12(b)に示すように、初期状態すなわち、時間遅れ軸が水平方向に戻される。あるいは、ノード名や時間遅れ軸の各時点の情報、グリッド等が表示されていた場合にも、初期状態には非表示である場合には、非表示にリセットされる。
【0037】
また、
図13に示すように、提示部15cは、指定されたノードを基準として整列した因果関係のグラフを表示することが可能である。例えば、
図13(b)に示す例では、「センサーE」が指定された場合に、センサーEを基準として、センサーEが時間遅れ軸の直上になるように整列したグラフが表示されている。
【0038】
また、
図14に示すように、提示部15cは、因果関係を、3次元の空間からセンサーを示す2次元平面に切り替えて提示することが可能である。すなわち、提示部15cは、因果関係のグラフを3次元空間(3D)、2次元平面(2D)のいずれでも表示が可能であり、相互に切り替えが可能である。
図14(b)に示す例では、2次元平面での表示が指定された場合であり、時間遅れの各時点がタブで表され、分析者が指定したタブの各時点でのノード間の因果関係が表示されている。
【0039】
図2の説明に戻る。警報部15dは、推定部15bが算出した時間間隔ごとの因果関係の変化の度合いが、所定の閾値以上である場合に、警報を発信する。例えば、
図4に示した変化度が所定の閾値以上である場合に、警報部15dは、異常を検知して分析者やデータの管理者に対してアラームを発信する。
【0040】
[推定処理手順]
次に、
図15を参照して、本実施形態に係る推定装置10による推定処理について説明する。
図15は、推定処理手順を示すフローチャートである。
図15のフローチャートは、例えば、推定処理の開始を指示する入力があったタイミングで開始される。
【0041】
まず、取得部15aが、推定処理の対象として、複数のセンサーの時系列データを取得する(ステップS1)。
【0042】
次に、推定部15bは、複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する(ステップS2)。具体的には、推定部15bは、センサーデータのうち、所定の時間幅の分析窓の中のデータを用いて、各センサーとその時間遅れとをノードとした因果関係のグラフを生成する。そして、推定部15bは、分析窓を時間方向にスライドさせて、再度ノード間の因果関係のグラフを生成することにより、分析窓の所定の時間間隔のスライド幅ごとに、ノード間の因果関係のグラフを変化させる。
【0043】
また、提示部15cは、推定された因果関係を、入力データに対応した所定の時間遅れの次元を含む3次元の空間に提示する(ステップS3)。具体的には、提示部15cは、所定の時間遅れの軸と、時間遅れの軸上の各時点における各センサーの関係を表す2次元平面とで表現される3次元空間に、センサー間の因果関係を提示する。これにより、一連の推定処理が終了する。
【0044】
[効果]
以上、説明したように、上記実施形態の推定装置10では、推定部15bが、複数のセンサーの時系列データの所定の時間遅れを含むデータの間の因果関係を、所定の時間間隔ごとに推定する。提示部15cが、推定された因果関係を、所定の時間遅れの次元を含む3次元の空間に提示する。
【0045】
具体的には、推定部15bは、時系列データの全時間区間に対する所定の割合の時間間隔ごとに、因果関係を推定する。
【0046】
これにより、時間遅れを明示的に考慮した因果関係のグラフが複数生成され、それらが分析窓ごとに変化していくので、例えば瞬間的に強くなるような因果関係も明確に推定される。したがって、時系列性を考慮した因果関係の明確な推定と分析者による把握とが容易に可能となる。
【0047】
また、推定部が、時間間隔ごとの因果関係の変化の度合いを算出し、警報部15dが、算出された時間間隔ごとの因果関係の変化の度合いが所定の閾値以上である場合に、警報を発信する。これにより、異常の監視や検知が容易に可能となる。
【0048】
また、提示部15cは、因果関係の強さを表す値が所定の閾値以上の場合に、該値と該因果関係の方向とを提示する。これにより、分析者による因果関係の把握がより容易に可能となる。
【0049】
また、提示部15cは、提示した因果関係に関する詳細情報をさらに提示可能である。これにより、分析者による因果関係の把握がより容易に可能となる。
【0050】
また、提示部15cは、時間遅れごとのセンサーの間の所定のホップ数の因果関係を提示する。これにより、分析者による因果関係の把握がより容易に可能となる。
【0051】
また、提示部15cは、因果関係を、3次元の空間からセンサーを示す2次元平面に切り替えて提示する。これにより、分析者による因果関係の把握がより容易に可能となる。
【0052】
[システム構成等]
図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUやGPUおよび当該CPUやGPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0053】
また、本実施形態において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0054】
[プログラム]
上記実施形態において説明した推定装置が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述したプログラムを作成することもできる。例えば、実施形態に係る推定装置10が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述したプログラムを作成することもできる。この場合、コンピュータがプログラムを実行することにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、かかるプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することにより上記実施形態と同様の処理を実現してもよい。
【0055】
図16は、推定プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。コンピュータ1000は、例えば、メモリ1010と、CPU1020と、ハードディスクドライブインタフェース1030と、ディスクドライブインタフェース1040と、シリアルポートインタフェース1050と、ビデオアダプタ1060と、ネットワークインタフェース1070とを有する。これらの各部は、バス1080によって接続される。
【0056】
メモリ1010は、ROM(Read Only Memory)1011およびRAM1012を含む。ROM1011は、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェース1030は、ハードディスクドライブ1031に接続される。ディスクドライブインタフェース1040は、ディスクドライブ1041に接続される。ディスクドライブ1041には、例えば、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が挿入される。シリアルポートインタフェース1050には、例えば、マウス1051およびキーボード1052が接続される。ビデオアダプタ1060には、例えば、ディスプレイ1061が接続される。
【0057】
ここで、ハードディスクドライブ1031は、例えば、OS1091、アプリケーションプログラム1092、プログラムモジュール1093およびプログラムデータ1094を記憶する。上記実施形態で説明した各情報は、例えばハードディスクドライブ1031やメモリ1010に記憶される。
【0058】
また、推定プログラムは、例えば、コンピュータ1000によって実行される指令が記述されたプログラムモジュール1093として、ハードディスクドライブ1031に記憶される。具体的には、上記実施形態で説明した推定装置10が実行する各処理が記述されたプログラムモジュール1093が、ハードディスクドライブ1031に記憶される。
【0059】
また、推定プログラムによる情報処理に用いられるデータは、プログラムデータ1094として、例えば、ハードディスクドライブ1031に記憶される。そして、CPU1020が、ハードディスクドライブ1031に記憶されたプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094を必要に応じてRAM1012に読み出して、上述した各手順を実行する。
【0060】
なお、推定プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ハードディスクドライブ1031に記憶される場合に限られず、例えば、着脱可能な記憶媒体に記憶されて、ディスクドライブ1041等を介してCPU1020によって読み出されてもよい。あるいは、推定プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等のネットワークを介して接続された他のコンピュータに記憶され、ネットワークインタフェース1070を介してCPU1020によって読み出されてもよい。
【0061】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10 推定装置
11 入力部
12 出力部
13 通信制御部
14 記憶部
15 制御部
15a 取得部
15b 推定部
15c 提示部
15d 警報部