(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】操舵装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20250219BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20250219BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20250219BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D119:00
B62D101:00
(21)【出願番号】P 2021145596
(22)【出願日】2021-09-07
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】寺島 和哉
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074874(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0158227(US,A1)
【文献】特表2016-531802(JP,A)
【文献】特開2017-087983(JP,A)
【文献】特開2009-248643(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0082912(KR,A)
【文献】国際公開第2020/169662(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪に操舵部材を介して操舵力を付与する
操舵モータと、
前記
操舵モータの動作位置を検出する位置センサと、
を備える操舵装置を有する前記車両に設けられ、
前記位置センサが検出する前記
操舵モータの動作位置の信号を前記操舵部材の位置に関する信号として用いて前記
操舵モータへ制御信号を出力するコントロール部を備える、
操舵装置の制御装置であって、
前記コントロール部は、
前記操舵部材にかかる負荷に関する物理量を
、前記操舵モータの回転速度から求め、
前記操舵部材の位置指令値と、前記位置センサが検出する前記
操舵モータの動作位置と、前記負荷に関する物理量とに基づいた前記制御信号を、前記
操舵モータへ出力する、
操舵装置の制御装置。
【請求項2】
車両の車輪に操舵部材を介して操舵力を付与する操舵アクチュエータと、
前記操舵アクチュエータの動作位置を検出する位置センサと、
を備える操舵装置を有する前記車両に設けられ、
前記位置センサが検出する前記操舵アクチュエータの動作位置の信号を前記操舵部材の位置に関する信号として用いて前記操舵アクチュエータへ制御信号を出力するコントロール部を備える、
操舵装置の制御装置であって、
前記コントロール部は、
前記操舵部材にかかる負荷に関する物理量を取得し、
前記負荷に関する物理量に基づき前記操舵部材における弾性変形量に関する物理量を求め、
前記弾性変形量に関する物理量が所定値よりも大きいときに、前記操舵部材の位置指令値と、前記位置センサが検出する前記操舵アクチュエータの動作位置と、
前記弾性変形量に関する物理量とに基づいた前記制御信号を、前記操舵アクチュエータへ出力する、
操舵装置の制御装置。
【請求項3】
車両の車輪に操舵部材を介して操舵力を付与する操舵アクチュエータと、
前記操舵アクチュエータの動作位置を検出する位置センサと、
を備える操舵装置を有する前記車両に設けられ、
前記位置センサが検出する前記操舵アクチュエータの動作位置の信号を前記操舵部材の位置に関する信号として用いて前記操舵アクチュエータへ制御信号を出力するコントロール部を備える、
操舵装置の制御装置であって、
前記コントロール部は、
前記操舵部材にかかる負荷に関する物理量を取得し、
前記操舵部材の位置指令値と、前記位置センサが検出する前記操舵アクチュエータの動作位置と、前記負荷に関する物理量とに基づいた前記制御信号を、前記操舵アクチュエータへ出力する
か否かを、前記操舵装置の操舵速度に基づいて切り替える、
操舵装置の制御装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の操舵装置の制御装置であって、
前記コントロール部は、
前記操舵装置の操舵速度が所定値より遅いときに、前記操舵部材の位置指令値と、前記位置センサが検出する前記操舵アクチュエータの動作位置と、前記負荷に関する物理量とに基づいた前記制御信号を出力する、
操舵装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のステアバイワイヤシステムは、ステアリングギアハウジング内のベアリングの位置が、トラックロッドに加えられる力によって変化するときに、係る位置変化を測定するセンサを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、操舵アクチュエータとしての操舵モータの回転運動を、ラックバーなどの操舵部材を介して車輪に伝達する操舵装置において、操舵モータの回転位置の検出値を操舵部材の位置に関する信号として用いて、操舵モータの駆動制御が行われる場合があった。
しかし、上記のような操舵装置では、ラックバーに対して負荷が加わったときに、操舵モータの出力回転を減速する減速機の伝達部などが弾性変形し、この弾性変形分だけ操舵部材の位置と操舵モータの回転位置とにずれが生じることで、操舵角の制御誤差が生じる場合があった。
【0005】
本発明は、従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操舵部材にかかる負荷によって操舵角に制御誤差が生じることを抑止できる、操舵装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、その1つの態様において、操舵装置の制御装置は、操舵モータの動作位置の信号を操舵部材の位置に関する信号として用いて前記操舵モータへ制御信号を出力するコントロール部を備え、前記コントロール部は、前記操舵部材にかかる負荷に関する物理量を、前記操舵モータの回転速度から求め、前記操舵部材の位置指令値と、前記操舵モータの動作位置と、前記負荷に関する物理量とに基づいた制御信号を、前記操舵モータへ出力する。
また、本発明の別の態様において、操舵装置の制御装置は、位置センサが検出する操舵アクチュエータの動作位置の信号を操舵部材の位置に関する信号として用いて前記操舵アクチュエータへ制御信号を出力するコントロール部を備え、前記コントロール部は、前記操舵部材にかかる負荷に関する物理量に基づき前記操舵部材における弾性変形量に関する物理量を求め、前記弾性変形量に関する物理量が所定値よりも大きいときに、前記操舵部材の位置指令値と、前記位置センサが検出する操舵アクチュエータの動作位置と、前記弾性変形量に関する物理量とに基づいた制御信号を、前記操舵アクチュエータへ出力する。
また、本発明のさらに別の態様において、操舵装置の制御装置は、位置センサが検出する操舵アクチュエータの動作位置の信号を操舵部材の位置に関する信号として用いて前記操舵アクチュエータへ制御信号を出力するコントロール部を備え、前記コントロール部は、前記操舵部材にかかる負荷に関する物理量を取得し、前記操舵部材の位置指令値と、前記位置センサが検出する前記操舵アクチュエータの動作位置と、前記負荷に関する物理量とに基づいた前記制御信号を、前記操舵アクチュエータへ出力するか否かを、前記操舵装置の操舵速度に基づいて切り替える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操舵部材にかかる負荷によって操舵角に制御誤差が生じることを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】車両の操舵システムの一態様を示す構成図である。
【
図2】制御装置の制御機能の第1実施形態を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態の制御プロセスを示すフローチャートである。
【
図4】減速機の伝達部の剛性と補償制御との相関を示す図である。
【
図5】制御装置の制御機能の第2実施形態を示すブロック図である。
【
図6】第2実施形態の制御プロセスを示すフローチャートである。
【
図7】制御装置の制御機能の第3実施形態を示すブロック図である。
【
図8】第3実施形態の制御プロセスを示すフローチャートである。
【
図9】第4実施形態の電動パワーステアリング装置の一態様を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る操舵装置の制御装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、車両100に搭載される操舵システム200の一態様を示す構成図である。
操舵システム200は、車両100の運転者が操作する操舵操作部材であるステアリングホイール301を備えた操舵操作入力装置300と、車両100の車輪101,102に操舵力を付与する操舵アクチュエータである操舵モータ401を備えた操舵装置400と、操舵操作入力装置300及び操舵装置400のアクチュエータを制御するための制御装置500とを有する。
【0010】
ここで、操舵システム200は、ステアリングホイール301と、操舵輪である車輪101,102とが機械的に分離していて、ステアリングホイール301の操作角θに対して車輪101,102の操舵角σを独立に制御することが可能なステアバイワイヤ式の操舵システムである。
操舵操作入力装置300は、ステアリングホイール301と、ステアリングホイール301に反力トルクを付与する反力アクチュエータである反力モータ302と、ステアリングホイール301の操作トルクOTを検出する操作トルクセンサ303と、ステアリングホイール301の操作角θを検出する操作角センサ304と、を有する。
【0011】
操舵装置400は、操舵モータ401と、操舵モータ401の出力軸の回転速度を減速して出力する減速機402と、ラック&ピニオンやボールねじなどの回転運動を直線運動に変換する変換機構403と、変換機構403によって軸方向に変位する操舵部材としての操舵軸404(たとえば、ラック&ピニオンにおけるラックバー)と、操舵軸404の端部に一端が連結されるタイロッド405と、タイロッド405の他端に連結されるナックルアーム406と、操舵モータ401の回転位置(換言すれば、角度位置)を検出するモータ角センサ407と、を有する。
【0012】
つまり、操舵装置400は、操舵モータ401の回転運動を操舵軸404の直線運動に変換することで、車輪101,102の操舵角σ(換言すれば、タイヤ角)を変更する操舵機構を有し、操舵モータ401は、車輪101,102に操舵軸404(操舵部材)を介して操舵力を付与する。
なお、モータ角センサ407は、操舵アクチュエータである操舵モータ401の動作位置を検出する位置センサに相当する。
【0013】
制御装置500は、操舵モータ401及び反力モータ302へ制御信号を出力するコントロール部としてのマイクロコンピュータ501を備えた電子制御装置である。
なお、マイクロコンピュータ501は、MCU(Micro Controller Unit)、プロセッサ、処理装置、演算装置などと言い換えることができる。
【0014】
制御装置500のマイクロコンピュータ501は、操作トルクセンサ303、操作角センサ304、及び、モータ角センサ407が出力する検出信号や、車両100の車速などの車両運転状態を検出する外部センサ600が出力する検出信号などを取得する。
そして、マイクロコンピュータ501は、取得した各種の検出信号に基づき演算した結果としての制御信号を操舵モータ401及び反力モータ302に出力して、操舵モータ401及び反力モータ302を駆動制御して、操舵トルク及び反力トルクを調整する。
【0015】
なお、
図1に示す操舵システム200では、1つの制御装置500が、操舵モータ401及び反力モータ302を制御するが、操舵モータ401(換言すれば、操舵装置400)を制御する制御装置と、反力モータ302(換言すれば、操舵操作入力装置300)を制御する制御装置とを個別に備えたシステムとすることができる。
【0016】
「第1実施形態」
図2は、制御装置500のマイクロコンピュータ501における操舵モータ401の制御機能の第1実施形態を示すブロック図である。
マイクロコンピュータ501は、操舵モータ401の制御機能部として、角度制御部502、速度制御部503、電流制御部504、負荷推定部505、負荷補償量演算・判断部506を備える。
ここで、角度制御部502、速度制御部503、及び電流制御部504は、操舵角σの検出値が、目標操舵角σtg(換言すれば、操舵軸404の位置指令値)に近づくように、操舵モータ401のモータ電流を制御するフィードバック制御を実施する。
【0017】
角度制御部502が取得する目標操舵角σtgは、マイクロコンピュータ501または制御装置500以外の制御装置のマイクロコンピュータが、ステアリングホイール301の操作角θに応じて設定した値、若しくは、自動操舵制御(換言すれば、自動運転制御や運転支援制御)などにおいて設定した目標操舵角σtgである。
マイクロコンピュータ501は、制御装置500以外の制御装置のマイクロコンピュータが演算した目標操舵角σtgを、車載ネットワークなどを介して取得する。
【0018】
操舵装置400においては、操舵軸404の軸方向の位置に応じて車輪101,102の操舵角σが変化し、操舵軸404の軸方向の位置は、操舵モータ401の回転位置に応じて変化する。
そこで、マイクロコンピュータ501は、モータ角センサ407が検出した操舵モータ401の回転位置の情報を、操舵軸404の軸方向の位置(実操舵角)に関する信号として用いて、操舵モータ401へ制御信号を出力する。
【0019】
詳細には、角度制御部502は、操舵軸404の位置指令値である目標操舵角σtgの情報と、モータ角センサ407が検出した操舵モータ401の回転位置の情報とを取得し、操舵軸404の位置を指令値(目標値)に近づけるための操舵モータ401の回転速度指令(換言すれば、操舵モータ401の回転速度の目標値)を演算して出力する。
速度制御部503は、角度制御部502が出力する回転速度指令を取得し、また、モータ角センサ407が検出した操舵モータ401の回転位置の情報を操舵モータ401の回転速度に関する情報として取得する。
そして、速度制御部503は、操舵モータ401の回転速度を回転速度指令に近づけるためのモータ電流指令(換言すれば、モータ電流の目標値)を演算して出力する。
【0020】
電流制御部504は、速度制御部503が出力するモータ電流指令を取得し、また、電流検出センサ408が検出した操舵モータ401のモータ電流の情報を取得する。
そして、電流制御部504は、操舵モータ401に流れる電流であるモータ電流がモータ電流指令に近づくように、図示を省略したインバータをPWM制御して、操舵モータ401に流す電流を制御する。
【0021】
ところで、操舵軸404の軸方向に負荷(荷重)が入力されると、操舵軸404と操舵モータ401との間に介在する減速機402の伝達部などが弾性変形することで、操舵モータ401の回転位置から推定される操舵軸404の位置と、実際の操舵軸404の位置とに、弾性変形量に応じた差異が生じる。
ここで、角度制御部502は、前述したように、操舵軸404の位置が操舵モータ401の回転位置に応じた位置に動いていると見做して、操舵モータ401の速度指令を求める。
【0022】
したがって、減速機402の伝達部などが弾性変形すると、角度制御部502は、操舵軸404の位置を弾性変形分だけ誤って判断し、操舵軸404の目標位置への制御精度が低下することになる。
係る減速機402の伝達部などの弾性変形による操舵角の制御精度の低下を抑止するため、マイクロコンピュータ501は、負荷推定部505、負荷補償量演算・判断部506の各機能部を有する。
【0023】
負荷推定部505は、操舵軸404の軸方向にかかる負荷トルクに関する物理量を取得するための機能部である。
負荷推定部505は、電流検出センサ408が検出した操舵モータ401のモータ電流の情報、若しくは、モータ角センサ407が検出した操舵モータ401の回転速度の情報を取得する。
そして、負荷推定部505は、操舵軸404の軸方向にかかる負荷トルクを、操舵モータ401のモータ電流の情報、または、操舵モータ401の回転速度の情報(及び操舵モータ401の印加電圧の情報)に基づき推定する。
【0024】
また、負荷補償量演算・判断部506は、負荷推定部505が推定した負荷トルクに基づき、減速機402の伝達部などの弾性変形によって生じる操舵角誤差を補償するための角度補償量を求め、係る角度補償量の情報を角度補償指令として角度制御部502に出力する。
つまり、減速機402の伝達部などの弾性変形することで、モータ角センサ407が検出した操舵モータ401の回転位置の情報に基づき求められる操舵軸404の位置と、実際の操舵軸404の位置とに差異が生じ、係る差異によって車輪101,102の操舵角の制御精度が低下する。
【0025】
そこで、負荷補償量演算・判断部506は、係る差異を補償するために操舵軸404の推定位置または目標位置を補正するための補正指令(補正値)を求めて、角度制御部502に出力する。
角度制御部502は、目標操舵角σtgの情報、及び、モータ角センサ407が検出した操舵モータ401の回転位置に基づく実操舵角σの情報に加えて、負荷補償量演算・判断部506から取得した角度補償量の情報を用いて回転速度指令を求める。
【0026】
以上のように、マイクロコンピュータ501は、目標操舵角σtgの情報(換言すれば、操舵軸404の位置指令値)と、モータ角センサ407が検出する操舵モータ401の回転位置と、操舵軸404の軸方向にかかる負荷トルク(換言すれば、負荷トルクに応じた弾性変形量に関する物理量)とに基づいた制御信号を、操舵モータ401へ出力する。
そして、マイクロコンピュータ501は、操舵軸404の軸方向にかかる負荷トルクを考慮して操舵モータ401を制御することで、負荷トルクによって減速機402の伝達部などが弾性変形しても、モータ角センサ407が検出した操舵モータ401の回転位置に基づき、車輪101,102の操舵角を高精度に制御することができる。
【0027】
なお、操舵システム200は、操舵軸404にかかる負荷トルクを直接検出する負荷トルクセンサ(荷重センサ)を備えることができ、この場合、負荷補償量演算・判断部506は、負荷トルクセンサが出力した負荷トルクに基づき角度補償量を求める。
負荷トルクセンサを備えれば、操舵軸404にかかる負荷トルクが高精度に求められ、角度補償量の設定精度が向上する。
一方、負荷推定部505が操舵軸404にかかる負荷トルクを、操舵モータ401のモータ電流や回転速度から推定する場合には、負荷トルクセンサが不要となり、操舵システム200を低コストに実現できる。
【0028】
図3のフローチャートは、マイクロコンピュータ501(詳細には、
図2の負荷推定部505、負荷補償量演算・判断部506、及び角度制御部502)によって実行される、負荷トルクに応じた補償制御のプロセスを示す。
マイクロコンピュータ501(負荷推定部505)は、ステップS801で、モータ電流値またはモータ回転速度の情報を取得する。
次いで、マイクロコンピュータ501(負荷推定部505)は、ステップS802で、操舵軸404にかかる負荷トルクTeを、操舵モータ401のモータ電流の情報、または、操舵モータ401の回転速度の情報(及び印加電圧の情報)に基づき推定する。
【0029】
マイクロコンピュータ501(負荷補償量演算・判断部506)は、ステップS803で、負荷トルクTeに基づき補償操舵角Δσを演算する。
たとえば、マイクロコンピュータ501(負荷補償量演算・判断部506)は、負荷トルクTeと、負荷トルクTeによって損失する損失モータ角φとの関係を、数式(1)の3次式で近似する。
φ=a・Te3+b・Te2+c・Te…数式(1)
【0030】
そして、マイクロコンピュータ501(負荷補償量演算・判断部506)は、たとえば変換機構403としてボールねじを用いられる場合、プーリ比Rp、ボールねじリードLb、比ストロークCf、及び、損失モータ角φ(負荷トルクTe)に基づき、数式(2)にしたがって、角度補償指令としての補償操舵角Δσを演算する。
Δσ=φ/Rp*Lb/Cf
=(a・Te3+b・Te2+c・Te)/Rp*Lb/Cf…数式(2)
【0031】
次に、マイクロコンピュータ501(負荷補償量演算・判断部506)は、ステップS804で、補償操舵角Δσの絶対値(換言すれば、負荷トルクに応じた弾性変形量に関する物理量)と所定値Eaとを比較する。
所定値Eaは、補償操舵角Δσに基づく補償制御を実施するか否かを切り替えるための閾値であり、たとえば、モータ角の検出分解能に基づき設定される。
【0032】
ここで、マイクロコンピュータ501(負荷補償量演算・判断部506)は、補償操舵角Δσの絶対値が所定値Eaよりも大きい場合(換言すれば、負荷トルクまたは負荷トルクによる弾性変形量が所定値よりも大きい場合)、補償操舵角Δσに基づく補償制御を実施することで、負荷トルクによる弾性変形によって操舵軸404の位置誤差が発生することを抑制する。
一方、マイクロコンピュータ501(負荷補償量演算・判断部506)は、補償操舵角Δσの絶対値が所定値Ea以下である場合(換言すれば、負荷トルクまたは負荷トルクによる弾性変形量が所定値以下である場合)、補償操舵角Δσに基づく補償制御の中止を判断する。
【0033】
マイクロコンピュータ501が、補償制御を補償操舵角Δσの大きさに関わらずに常に実施する場合、補償制御によって操舵軸404にかかる負荷トルクTeが大きくなって補償制御が再度必要になることで、補償制御が連続して実施され、操舵角制御が収束しなくなることが考えられる。
そこで、マイクロコンピュータ501は、補償操舵角Δσが十分に小さくなった段階で、補償制御を中止することで、操舵角制御を収束させる。
【0034】
マイクロコンピュータ501(負荷補償量演算・判断部506)は、補償操舵角Δσの絶対値が所定値Eaよりも大きい場合、ステップS805に進み、ステップS803で求めた補償操舵角Δσをそのまま最終設定値とする。
換言すれば、負荷補償量演算・判断部506は、補償操舵角Δσの絶対値が所定値Eaよりも大きい場合、負荷トルクTeに基づき演算した補償操舵角Δσの情報をそのまま角度制御部502に出力する。
【0035】
一方、マイクロコンピュータ501(負荷補償量演算・判断部506)は、補償操舵角Δσの絶対値が所定値Ea以下である場合、ステップS806に進み、補償操舵角Δσを零にリセットし、補償操舵角Δσ=0を最終設定値とすることで、補償操舵角Δσに基づく操舵角の補償制御を実質的に停止する。
換言すれば、負荷補償量演算・判断部506は、補償操舵角Δσの絶対値が所定値Ea以下である場合、負荷トルクTeに基づき演算した補償操舵角Δσの情報を角度制御部502に出力せず、角度制御部502に補償操舵角Δσ=0の情報を出力する。
これにより、角度制御部502は、補償操舵角Δσによる補償制御を実施せずに、目標操舵角σtgの情報(操舵軸404の位置指令)と、操舵モータ401の回転位置の情報(モータ回転位置から推定された操舵軸404の位置)とに基づきモータ速度指令を求めることになる。
【0036】
マイクロコンピュータ501(角度制御部502)は、ステップS807で、制御偏差角σcd(換言すれば、制御エラー)を、数式(3)にしたがって算出する。
σcd=σtg-σac+Δσ…数式(3)
σtgは、ステアリングホイール301の操作角θなどに基づき定められた目標操舵角(操舵軸404の位置指令)であり、σacは、操舵モータ401の回転位置の情報から求められた実操舵角(モータ回転位置から推定された操舵軸404の位置)である。
また、補償操舵角Δσが零である場合、マイクロコンピュータ501(角度制御部502)は、制御偏差角σcdを、実質的に数式(4)にしたがって求めることになる。
σcd=σtg-σac…数式(4)
【0037】
数式(3)は、目標操舵角σtgを、負荷トルクによる弾性変形量分だけ増大補正する数式であると見做すことができ、また、制御偏差角σcdを、負荷トルクによる弾性変形量分だけ増大補正する数式であると見なすこともできる。
いずれの場合も、弾性変形による操舵軸404の位置誤差を補償して、操舵軸404の実位置と操舵軸404の位置指令との偏差が数式(3)によって求められることになる。
したがって、マイクロコンピュータ501(角度制御部502)は、補償操舵角Δσを用いた制御偏差角σcdの補正によって、負荷トルクTeによって減速機402の伝達部などに弾性変形が生じても、係る弾性変形による操舵角(操舵軸404の位置)の制御誤差の発生を抑え、車輪101,102の操舵角を高い精度で制御することができる。
【0038】
マイクロコンピュータ501(角度制御部502)は、次いで、ステップS808に進み、ステップS807で求めた制御偏差角σcdに基づき、操舵モータ401の回転速度指令を求める。
そして、マイクロコンピュータ501(角度制御部502)は、次のステップS809で、モータ速度指令を速度制御部503に出力する。
【0039】
図4は、減速機402の伝達部の剛性と補償制御との相関を示す図である。
図4の左側のグラフ(I)は、縦軸を負荷トルク、横軸をモータ回転角として、減速機402の伝達部の剛性を示す剛性線図であって、操舵軸404の変位拘束時における負荷トルクと操舵モータ401の回転角との相関を示す。
【0040】
また、
図4の右側のグラフ(II)は、横軸を操舵角σ(換言すれば、操舵軸404の位置)、縦軸を負荷トルクTeとするグラフであって、撓み損失に対する補償制御を示す。
なお、撓み損失とは、操舵モータ401の回転位置から求まる操舵軸404の軸方向の位置と、実際の操舵軸404の軸方向の位置との間に、減速機402の伝達部の弾性変形によって生じる差異に相当する。
【0041】
ここで、グラフ(I)の縦軸の負荷トルクは、操舵軸404(たとえば、ラックバー)の軸方向負荷に相当し、横軸のモータ回転角は、操舵軸404と操舵モータ401の出力軸との間での撓み損失、換言すれば、操舵軸404と操舵モータ401の出力軸との間での弾性変形量分の操舵角に相当する。
つまり、マイクロコンピュータ501は、グラフ(I)のような特性マップを参照することで、操舵軸404の軸方向負荷に対して発生する撓み損失を求めることができる。
【0042】
たとえば、操舵角σがσ1で負荷トルクTeがTe1であるとき、マイクロコンピュータ501は、グラフ(I)の特性マップを参照することで、減速機402の伝達部の弾性変形による撓み損失が、Δσ1になることを検知、認識する。
次いで、マイクロコンピュータ501は、負荷トルクTe1による撓み損失分を補償操舵角Δσ1とし、この補償操舵角Δσ1の絶対値が所定値Eaよりも大きい場合、目標操舵角σに補償操舵角Δσ1を加算する。
【0043】
そして、マイクロコンピュータ501は、補償操舵角Δσ1による補正後の目標操舵角σtgと、モータ角センサ407によるモータ回転角の検出値に基づく操舵角σとの比較に基づき操舵モータ401を制御する。
係る補償操舵角Δσ1による目標操舵角σtgの補正で撓み損失が補償され、車輪101,102の操舵角(換言すれば、タイヤ角)は、補正前の目標操舵角σtgに制御されることになる。
ここで、補償操舵角Δσ1が目標操舵角σtgに加算されると、操舵軸404の軸方向負荷も増えることになるが、マイクロコンピュータ501は、負荷トルクTeの増加分ΔTeに対する撓み損失の増加分を示す補償操舵角Δσ2が所定値Ea以下であれば、補償制御を停止する。
【0044】
なお、グラフ(I)の剛性特性を減速機402毎にそれぞれ測定し、車両100毎に、マイクロコンピュータ501のメモリに、当該マイクロコンピュータ501と組み合わされる減速機402について測定した剛性特性を記憶させることができる。
この場合、マイクロコンピュータ501は、減速機402の製造ばらつき(換言すれば、製造誤差)による剛性特性の違いに応じて補償制御を実施でき、減速機402の製造ばらつきがあっても操舵角を高い精度で制御できる。
【0045】
また、グラフ(I)の剛性特性を、減速機402における代表的な特性として定め、各車両100のマイクロコンピュータ501のメモリに、共通の剛性特性として記憶させることができる。
この場合、同じ操舵システム200を制御するマイクロコンピュータ501の仕様が1仕様となるため、マイクロコンピュータ501(制御装置500)の製造を短時間かつ効率的に行える。
【0046】
「第2実施形態」
図5は、制御装置500のマイクロコンピュータ501における操舵モータ401の制御機能の第2実施形態を示すブロック図である。
図5のブロック図は、第1実施形態を示す
図2のブロック図に対して、負荷補償制御判断部507を付加してある点のみが異なる。
したがって、負荷補償制御判断部507以外の各機能部についての詳細な説明は省略する。
【0047】
負荷補償制御判断部507は、モータ角センサ407から操舵モータ401の回転速度の情報を取得する。
そして、負荷補償制御判断部507は、操舵モータ401の回転速度(換言すれば、操舵速度)が所定値を下回っているか否かを判別し、判別結果を示す信号を負荷補償量演算・判断部506に出力する。
なお、負荷補償制御判断部507は、ステアリングホイール301の操作角θに応じた操舵軸404の位置指令に基づき操舵モータ401が制御される場合、ステアリングホイール301の操作速度を、操舵速度を示す情報として用いることができる。
【0048】
ここで、負荷補償量演算・判断部506は、操舵速度が所定値を下回っていれば補償制御を実施し、操舵速度が所定値以上であれば補償制御を実施しない。
つまり、負荷補償制御判断部507が出力する、操舵速度が所定値を下回っていることを示す信号は、補償制御の実施を指示する信号であり、負荷補償制御判断部507が出力する、操舵速度が所定値以上であることを示す信号は、補償制御の不実施を指示する信号である。
【0049】
このように、負荷補償制御判断部507は、操舵速度と所定値とを比較して補償制御を実施するか否かを判断する機能部であり、操舵速度の所定値は、補償制御を実施する操舵速度の上限値である。
ここで、操舵速度の所定値(上限値)は、操舵角の制御精度が求められる操舵速度が低い領域と、操舵角の応答性が求められる操舵速度が高い領域とを分ける境界の操舵速度である。
【0050】
操舵速度が速いときは、操舵角の精度よりも応答性が要求されるため、操舵角の応答を遅らせる結果となる補償制御は不要となる。
一方、操舵速度が遅い状態は、操舵角が微修正される状態であるため、補償制御の実施によって操舵角の制御精度を向上させることが求められる。
そこで、負荷補償制御判断部507は、操舵速度が所定値を下回っているときは補償制御を実施させ、操舵速度が所定値以上であるときは補償制御を不実施とすることで、操舵速度が速いときは応答性を確保し、また、操舵速度が遅いときは制御精度を向上させる。
【0051】
図6のフローチャートは、マイクロコンピュータ501(詳細には、
図5の負荷推定部505、負荷補償量演算・判断部506、角度制御部502、及び、負荷補償制御判断部507)によって実施される、補償制御のプロセスを示す。
図6のフローチャートにおけるステップS903-ステップS911においては、
図3のフローチャートのステップS801-809と同様な処理が実施される。
したがって、以下では、負荷補償制御判断部507の機能に相当するステップS901及びステップS902での処理内容を説明し、ステップS903-ステップS911の各ステップにおける処理内容の説明は省略する。
【0052】
マイクロコンピュータ501(負荷補償制御判断部507)は、ステップS901で、操舵速度ωの情報を取得する。
次いで、マイクロコンピュータ501(負荷補償制御判断部507)は、ステップS902で、操舵速度ωの絶対値と所定値ωaとを比較する。
【0053】
そして、マイクロコンピュータ501(負荷補償制御判断部507)は、操舵速度ωの絶対値が所定値ωaを下回る場合(|ω|<ωa)、ステップS903以降に進むことを選択することで、補償制御を実施させる。
一方、マイクロコンピュータ501(負荷補償制御判断部507)は、操舵速度ωの絶対値が所定値ωa以上である場合(|ω|≧ωa)、補償操舵角Δσ=0とするステップS908に進むことを選択することで、補償制御を不実施とする。
【0054】
「第3実施形態」
図7は、制御装置500のマイクロコンピュータ501における操舵モータ401の制御機能の第3実施形態を示すブロック図である。
図7のブロック図に示すマイクロコンピュータ501は、第1実施形態を示す
図2のブロック図に対して、自動操舵制御装置700から自動操舵のオンオフに関する信号を取得する自動操舵判断部508を機能部として付加してある点のみが異なる。
したがって、自動操舵判断部508以外の各機能部についての詳細な説明は省略する。
【0055】
自動操舵判断部508は、自動操舵制御を実施する自動操舵制御装置700から自動操舵状態であるか否かを示す自動操舵のオンオフ信号を取得する。
自動操舵制御装置700は、たとえば、カメラなどを用いて取得した車両100の前方情報に基づいて目標経路を設定し、目標経路に沿って車両100を追従走行させるための目標操舵角σtgを求め、係る目標操舵角σtgの情報を、マイクロコンピュータ501の角度制御部502に出力する機能を備えた装置である。
なお、自動操舵制御装置700の機能を、制御装置500のマイクロコンピュータ501が備えることができる。
【0056】
そして、自動操舵判断部508は、車両100が自動操舵されるとき、つまり、ステアリングホイール301の操作角θが操舵角σに関与しないときは、補償制御の実施を負荷補償量演算・判断部506に指示する。
一方、自動操舵判断部508は、車両100が自動操舵されていないとき、つまり、ステアリングホイール301の操作角θに応じて操舵角σが制御される手動操舵のときは、補償制御の不実施を負荷補償量演算・判断部506に指示する。
【0057】
手動操舵の場合、補償制御が無くても、負荷による弾性変形量分だけ運転者がステアリングホイール301を切り足せば、車輪101,102の操舵角は運転者の要求する操舵角に制御されることになる。
逆に、手動操舵状態のときに補償制御が実施されると、運転者によるステアリングホイール301の操作終了後に遅れて操舵角が補償されることで、運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0058】
これに対して、自動操舵では、負荷による弾性変形量分だけ車輪101,102の操舵角に制御誤差が生じたときに、カメラなどから得られる車両100の前方情報を判断して操舵角指令を修正することになるので、制御の応答遅れ(目標経路への追従性の低下)が懸念される。
そこで、マイクロコンピュータ501は、手動操舵のときは、補償制御を不実施として運転者の違和感を抑止し、自動操舵のときは、補償制御を実施して、制御の応答遅れ(目標経路への追従性の低下)を抑止する。
【0059】
図8のフローチャートは、マイクロコンピュータ501(詳細には、図 の負荷推定部505、負荷補償量演算・判断部506、角度制御部502、及び、自動操舵判断部508)によって実施される、補償制御のプロセスを示す。
図8のフローチャートにおけるステップS1003-ステップS1011においては、
図3のフローチャートのステップS801-809と同様な処理が実施される。
したがって、以下では、自動操舵判断部508の機能に相当するステップS1001及びステップS1002での処理内容を説明し、ステップS1003-ステップS1011の各ステップにおける処理内容の説明は省略する。
【0060】
マイクロコンピュータ501(自動操舵判断部508)は、ステップS1001で、自動操舵のオンオフに関する情報を、自動操舵制御装置700から取得する。
次いで、マイクロコンピュータ501(自動操舵判断部508)は、ステップS1002で、車両100が自動操舵、手動操舵のいずれの操舵状態であるかを、ステップS1001で取得した情報に基づいて判断する。
【0061】
そして、マイクロコンピュータ501(自動操舵判断部508)は、自動操舵状態である場合、ステップS1003以降に進むことを選択して、補償制御を実施する。
一方、マイクロコンピュータ501(自動操舵判断部508)は、手動操作状態である場合、補償操舵角Δσ=0とするステップS1008に進むことを選択して、補償制御を不実施とする。
なお、マイクロコンピュータ501は、自動操舵状態であるか否かに応じて補償制御の実施、不実施を決定し、更に、自動操舵状態であるときに、第2実施形態と同様に、操舵速度が上限値を下回っていれば補償制御を実施し、操舵速度が上限値以上であれば補償制御を不実施とすることができる。
【0062】
「第4実施形態」
上記のように、マイクロコンピュータ501が、自動操舵のときに補償制御を実施し、手動操舵のときに補償制御を不実施とする場合、操舵装置400はステアバイワイヤ式に限定されない。
つまり、
図7及び
図8に示した補償制御は、ステアリングホイール301と操舵軸404とが機械的に連結されるとともに、操舵軸404に操舵力を付与する操舵モータ401を備えた電動パワーステアリング装置に適用することができる。
【0063】
図9は、
図7及び
図8に示した補償制御の適用対象とする電動パワーステアリング装置400Aの一態様を示す図である。
なお、
図9において、
図1と同じ要素には同一符号を付してある。
図9の電動パワーステアリング装置400Aは、ステアリングホイール301のステアリングシャフト301aの端部に、操舵軸404(ラックバー)に設けたラック404aに噛み合うピニオンギヤ305を設けてある。
【0064】
つまり、電動パワーステアリング装置400Aにおいては、ステアリングホイール301と操舵軸404とが機械的に連結され、ステアリングホイール301の操作角に応じて操舵軸404が軸方向に動いて、車輪101,102の操舵角σが変化するよう構成される。
一方、電動パワーステアリング装置400Aは、
図1の操舵装置400と同様に、操舵アクチュエータである操舵モータ401と、操舵モータ401の出力軸の回転速度を減速して出力する減速機402と、ラック&ピニオンやボールねじなどの回転運動を直線運動に変換する変換機構403と、を備える。
そして、操舵モータ401の回転運動を操舵軸404の直線運動に変換して、車輪101,102の操舵角σを変化させることができる。
【0065】
更に、操舵モータ401を駆動制御する制御装置500を、
図1の操舵システム200と同様に備える。
そして、自動操舵においては、制御装置500のマイクロコンピュータ501が、目標操舵角σtgと、モータ角センサ407が検出する操舵モータ401の回転位置とに基づき、操舵モータ401を駆動制御する。
【0066】
ここで、制御装置500のマイクロコンピュータ501は、第3実施形態として説明した
図7のブロック図に示した各機能を有し、
図8のフローチャートに示したプロセスにしたがって操舵モータ401を駆動制御する。
つまり、電動パワーステアリング装置400Aにおいて、自動操舵制御における目標操舵角σtgを、操舵モータ401を駆動制御によって実現するときに、操舵軸404にかかる負荷トルクに基づく補償制御を実施する。
【0067】
一方、電動パワーステアリング装置400Aにおいて、運転者によるステアリングホイール301の操作に連動して操舵軸404が軸方向に動かされる手動操舵状態では、補償制御は中止される。
なお、電動パワーステアリング装置400Aの手動操舵状態において、操舵モータ401によってアシストトルクを発生させる制御は、通常に実施される。
【0068】
上記実施形態で説明した各技術的思想は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合わせて使用することができる。
また、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【0069】
たとえば、ステアバイワイヤ式の操舵装置400は、ステアリングホイール301と車輪101,102とをクラッチなどで機械的に結合するバックアップ機構を備えることができる。
また、ステアバイワイヤ式の操舵装置400を有する操舵システム200は、反力モータ302を制御する制御装置(マイクロコンピュータ)と、操舵モータ401を制御する制御装置(マイクロコンピュータ)とを個別に備えることができる。
また、操舵アクチュエータを操舵モータに限定するものではなく、たとえば、操舵アクチュエータとしてソレノイドを用いる操舵装置とすることができる。
【符号の説明】
【0070】
100…車両、101,102…車輪(操舵輪)、200…操舵システム、300…操舵操作入力装置、400…操舵装置、401…操舵モータ(操舵アクチュエータ)、402…減速機、404…操舵軸(操舵部材)、407…モータ角センサ(位置センサ)、500…制御装置、501…マイクロコンピュータ(コントロール部)