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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】歩行車
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20250219BHJP
   B62B 3/02 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
A61H3/04
B62B3/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021156108
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023047157
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2024-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】内野 雄市郎
(72)【発明者】
【氏名】滝藤 良樹
(72)【発明者】
【氏名】村田 和正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴大
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-131822(JP,U)
【文献】特開平10-121819(JP,A)
【文献】特開2014-226412(JP,A)
【文献】特開2002-126023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/04
B62B 3/00-7/10
A61G 5/08-5/12
A47B 3/083
A47B 3/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる左右一対のフレーム部と、
前記各フレーム部が左右に離間する状態と左右に接近する状態とに移行可能となるように、前記各フレーム部を互いに連結する第1連結部と、
前記各フレーム部の上端側にそれぞれ支持され、互いに近づく側に延びるように設けられている左右一対の肘置き部と、
前記各肘置き部を互いに連結するとともに、前記各肘置き部の境界部において上方に凸となるように折り曲げ可能とされた第2連結部と、を備え、
前記各肘置き部は、前記各フレーム部が前記離間する状態にある場合には、前記第2連結部が前記折り曲げ状態に対して展開されることで左右に展開された展開状態とされ、前記各フレーム部が前記接近する状態にある場合には、前記第2連結部が前記折り曲げ状態とされることで全体として上方に凸となるよう折り曲げられた形状をなす非展開状態とされる歩行車であって、
前記第2連結部の上方において前記各肘置き部に跨って設けられるカバー部を備え、
前記カバー部は、前記各肘置き部が前記展開状態及び前記非展開状態に移行するのに追従して変形可能とされている、歩行車。
【請求項2】
上下方向に延びる左右一対のフレーム部と、
前記各フレーム部が左右に離間する状態と左右に接近する状態とに移行可能となるように、前記各フレーム部を互いに連結する第1連結部と、
前記各フレーム部の上端側にそれぞれ支持され、互いに近づく側に延びるように設けられている左右一対の肘置き部と、
前記各肘置き部を互いに連結するとともに、前記各肘置き部の境界部において上方に凸となるように折り曲げ可能とされた第2連結部と、を備え、
前記各肘置き部は、前記各フレーム部が前記離間する状態にある場合には、前記第2連結部が前記折り曲げ状態に対して展開されることで左右に展開された展開状態とされ、前記各フレーム部が前記接近する状態にある場合には、前記第2連結部が前記折り曲げ状態とされることで全体として上方に凸となるよう折り曲げられた形状をなす非展開状態とされる歩行車であって、
前記第2連結部の上方において前記各肘置き部に跨って設けられるカバー部を備え、
前記肘置き部は、前記フレーム部に設けられたベース部と、前記ベース部の上に重ねて設けられユーザの肘が置かれるクッション部とを有し、
前記カバー部は、前記各肘置き部の前記ベース部に跨って設けられ、
前記カバー部において前記各肘置き部の間の部分は、前記各肘置き部が前記展開状態とされた場合には、前記各肘置き部の前記クッション部の間で挟まれて上方に凸となるよう折り返された形状となり、前記各肘置き部が前記非展開状態とされた場合には、前記折り返された形状に対して展開された形状となる、歩行車。
【請求項3】
上下方向に延びる左右一対のフレーム部と、
前記各フレーム部が左右に離間する状態と左右に接近する状態とに移行可能となるように、前記各フレーム部を互いに連結する第1連結部と、
前記各フレーム部の上端側にそれぞれ支持され、互いに近づく側に延びるように設けられている左右一対の肘置き部と、
前記各肘置き部を互いに連結するとともに、前記各肘置き部の境界部において上方に凸となるように折り曲げ可能とされた第2連結部と、を備え、
前記各肘置き部は、前記各フレーム部が前記離間する状態にある場合には、前記第2連結部が前記折り曲げ状態に対して展開されることで左右に展開された展開状態とされ、前記各フレーム部が前記接近する状態にある場合には、前記第2連結部が前記折り曲げ状態とされることで全体として上方に凸となるよう折り曲げられた形状をなす非展開状態とされる歩行車であって、
前記第2連結部の上方において前記各肘置き部に跨って設けられるカバー部を備え、
前記カバー部は、前記各肘置き部に跨って設けられたシート材と、前記シート材の左右方向の両側にそれぞれ取り付けられ前記肘置き部に固定された一対の固定板とを有しており、
前記固定板は、硬質の薄板からなり、前記シート材に縫製により取り付けられている、歩行車。
【請求項4】
前記カバー部は、前記各肘置き部に跨って設けられたシート材と、前記シート材の裏面に取り付けられ前記シート材よりも硬質の保護板とを有し、
前記シート材は、前記各肘置き部が前記展開状態及び前記非展開状態に移行するのに追従して変形可能とされ、
前記保護板は、その少なくとも一部が、前記シート材における前記各肘置き部の間の部分に配置されている、請求項に記載の歩行車。
【請求項5】
前記肘置き部は、前記フレーム部に設けられたベース部と、前記ベース部の上に重ねて設けられユーザの肘が置かれるクッション部とを有し、
前記カバー部は、前記各肘置き部の前記ベース部に跨って設けられている、請求項1、3又は4に記載の歩行車。
【請求項6】
前記カバー部において前記各肘置き部の間の部分は、前記各肘置き部が前記展開状態とされた場合には、前記各肘置き部の前記クッション部の間で挟まれて上方に凸となるよう折り返された形状となり、前記各肘置き部が前記非展開状態とされた場合には、前記折り返された形状に対して展開された形状となる、請求項に記載の歩行車。
【請求項7】
前記カバー部は、前記各肘置き部に跨って設けられたシート材と、前記シート材の裏面に取り付けられ前記シート材よりも硬質の保護板とを有しており、
前記シート材は、前記各肘置き部が前記展開状態とされた場合に前記折り返された形状となり、
前記保護板は、前記シート材における前記各肘置き部の間の部分のうち、前記折り返された際に上端部となる折り返しの頂部を挟んだ両側にそれぞれ配置されている、請求項2又は6に記載の歩行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高齢者等が歩行する際の補助を行う歩行車が知られている。歩行車は、上下方向に延びる左右一対のフレーム部を備え、それら各フレーム部の下端部には車輪が取り付けられている。また、特許文献1に示されているように、歩行車には、各フレーム部の上端部に肘置き部が設けられているものがある。かかる歩行車では、ユーザが肘置き部に肘を置いた状態で自身の体重の一部を歩行車に預けながら歩行することが可能となっている。
【0003】
特許文献1の歩行車は、各フレーム部を連結する下側連結部材と、各肘置き部を連結する上側連結部材とを備えている。下側連結部材は、各フレーム部が左右に離間する状態と左右に接近する状態とに移行可能となるように、各フレーム部を互いに連結するものである。また、上側連結部材は、各肘置き部の境界部において上方に凸となるように折り曲げ可能な折り曲げ機構を有している。かかる歩行車では、各フレーム部が左右に離間する状態とされた場合には、折り曲げ機構が展開されて各肘置き部が左右に展開される。この場合、歩行車は全体として展開状態とされる。一方、各フレーム部が左右に接近する状態とされた場合には、折り曲げ機構が折り曲げられ、各肘置き部が上方に凸となるよう折り畳まれる。この場合、歩行車は全体として折り畳み状態とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5793533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述した特許文献1の歩行車では、ユーザの手が各肘置き部の間を通じて上側連結部材に触れてしまう場合が想定される。その場合、ユーザの手が汚れてしまう等の不都合が生じるおそれがある。そのため、各肘置き部の間を通じて上側連結部材には手が触れられないようにするのが望ましい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、各肘置き部を連結する連結部に各肘置き部の間を通じて手が触れるのを防止することができる歩行車を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の歩行車は、上下方向に延びる左右一対のフレーム部と、前記各フレーム部が左右に離間する状態と左右に接近する状態とに移行可能となるように、前記各フレーム部を互いに連結する第1連結部と、前記各フレーム部の上端側にそれぞれ支持され、互いに近づく側に延びるように設けられている左右一対の肘置き部と、前記各肘置き部を互いに連結するとともに、前記各肘置き部の境界部において上方に凸となるように折り曲げ可能とされた第2連結部と、を備え、前記各肘置き部は、前記各フレーム部が前記離間する状態にある場合には、前記第2連結部が前記折り曲げ状態に対して展開されることで左右に展開された展開状態とされ、前記各フレーム部が前記接近する状態にある場合には、前記第2連結部が前記折り曲げ状態とされることで全体として上方に凸となるよう折り曲げられた形状をなす非展開状態とされる歩行車であって、前記第2連結部の上方において前記各肘置き部に跨って設けられるカバー部を備える。
【0008】
第1の発明によれば、各肘置き部を連結する第2連結部の上方においてそれら各肘置き部に跨ってカバー部が設けられている。これにより、ユーザの手が各肘置き部の間を通じて第2連結部に触れるのを防止することができる。
【0009】
第2の発明の歩行車は、第1の発明において、前記カバー部は、前記各肘置き部が前記展開状態及び前記非展開状態に移行するのに追従して変形可能とされている。
【0010】
第2の発明によれば、カバー部が肘置き部の展開状態及び非展開状態の移行に追従して変形可能となっているため、カバー部により肘置き部の各状態への移行がしづらくなるのを抑制することができる。
【0011】
第3の発明の歩行車は、第2の発明において、前記カバー部は、前記各肘置き部に跨って設けられたシート材と、前記シート材の裏面に取り付けられ前記シート材よりも硬質の保護板とを有し、前記シート材は、前記各肘置き部が前記展開状態及び前記非展開状態に移行するのに追従して変形可能とされ、前記保護板は、その少なくとも一部が、前記シート材における前記各肘置き部の間の部分に配置されている。
【0012】
第3の発明によれば、カバー部が各肘置き部に跨って設けられたシート材を有し、そのシート材が各肘置き部の展開状態及び非展開状態への移行に追従して変形可能とされている。また、カバー部は、シート材に加え、シート材の裏面に硬質の保護板を有しており、その保護板は、少なくとも一部がシート材における各肘置き部の間の部分に配置されている。この場合、各肘置き部が展開状態及び非展開状態に移行する際に、その移行に伴い展開及び折り曲げ変形する第2連結部にシート材が噛み込むのを防止することができる。
【0013】
第4の発明の歩行車は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記肘置き部は、前記フレーム部に設けられたベース部と、前記ベース部の上に重ねて設けられユーザの肘が置かれるクッション部とを有し、前記カバー部は、前記各肘置き部の前記ベース部に跨って設けられている。
【0014】
第4の発明によれば、カバー部が肘置き部を使用するユーザの邪魔になるのを抑制することができる。
【0015】
第5の発明の歩行車は、第4の発明において、前記カバー部において前記各肘置き部の間の部分は、前記各肘置き部が前記展開状態とされた場合には、前記各肘置き部の前記クッション部の間で挟まれて上方に凸となるよう折り返された形状となり、前記各肘置き部が前記非展開状態とされた場合には、前記折り返された形状に対して展開された形状となる。
【0016】
第5の発明によれば、カバー部において各肘置き部の間の部分(以下、中間部分という)が、各肘置き部が展開状態とされた場合には上方に凸となるよう折り返された形状となり、各肘置き部が非展開状態とされた場合には展開された形状となる。このため、カバー部が設けられていることにより、肘置き部の各状態への移行がしづらくなるのを抑制することができる。また、カバー部の中間部分は、各肘置き部が展開状態とされた場合に各肘置き部のクッション部の間で挟まれるため、カバー部が肘置き部を利用するユーザの邪魔になるのを抑制することができる。
【0017】
第6の発明の歩行車は、第5の発明において、前記カバー部は、前記各肘置き部に跨って設けられたシート材と、前記シート材の裏面に取り付けられ前記シート材よりも硬質の保護板とを有しており、前記シート材は、前記各肘置き部が前記展開状態とされた場合に前記折り返された形状となり、前記保護板は、前記シート材における前記各肘置き部の間の部分のうち、前記折り返された際に上端部となる折り返しの頂部を挟んだ両側にそれぞれ配置されている。
【0018】
第6の発明によれば、シート材の裏面に保護板が取り付けられ、その保護板がシート材における肘置き部の間の部分のうち、折り返しの頂部を挟んだ両側にそれぞれ配置されている。これにより、シート材の折り返しを妨げることなく、シート材が第2連結部に噛み込むのを防止することができる。
【0019】
第7の発明の歩行車は、第1乃至第6のいずれかの発明において、前記カバー部は、前記各肘置き部に跨って設けられたシート材と、前記シート材の左右方向の両側にそれぞれ取り付けられ前記肘置き部に固定された一対の固定板とを有しており、前記固定板は、硬質の薄板からなり、前記シート材に縫製により取り付けられている。
【0020】
第7の発明によれば、シート材の左右方向の両側にそれぞれ肘置き部に固定される固定板が取り付けられている。固定板は硬質の薄板からなり、シート材に縫製により取り付けられている。この場合、シート材を直接、肘置き部に固定する場合と比べ、シート材を固定板を介して安定した状態で肘置き部に取り付けることができる。これにより、肘置き部の展開状態及び非展開状態への移行に伴い、シート材が肘置き部から外れてしまうのを好適に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】展開状態における歩行車を斜め前方から見た斜視図。
図2】折り畳み状態における歩行車を斜め前方から見た斜視図。
図3】(a)がアームレスト及びハンドルを斜め上方から見た斜視図であり、(b)が斜め下方から見た斜視図である。
図4】各アームレストのベース部を示す平面図。
図5図4においてプレート部材を取り外した状態を示す平面図。
図6】各アームレストのベース部上に跨ってカバー部が設けられた構成を示す平面図。
図7】カバー部を拡大して示す側面図。
図8】各アームレストの境界部を示す側面図であり、(a)が各アームレストの展開状態を示しており、(b)が各アームレストの非展開状態を示している。
図9】上側連結部を斜め上方から見た斜視図であり、(a)が上側連結部が展開された状態を示し、(b)が上側連結部が折り曲げられた状態を示している。
図10】上側連結部を第1回動部と第2回動部とに分解した状態で示す分解斜視図。
図11】(a)が上側連結部の第1回動部を分解した状態で示す分解斜視図であり、(b)が第2回動部を分解した状態で示す分解斜視図。
図12】上側連結部の内部構成を示す断面図であり、(a)が規制ピンが挿入孔に挿入された状態を示し、(b)が規制ピンが挿入孔から退避された状態を示している。
図13】規制ピンが挿入孔に係合されることにより各回動部の回動が規制された状態を示す断面図であり、(a)が各回動部が第1回動状態から第2回動状態側に回動することが規制された状態を示し、(b)が各回動部が第1回動状態から反第2回動状態側に回動することが規制された状態を示している。
図14】上側連結部を斜め下方から見た斜視図。
図15】上側連結部から変位部を離間させた状態で示す斜視図。
図16】変位部の周辺を示す側面図であり、(a)が変位部が解除位置にある場合を示し、(b)が係合位置にある場合を示している。
図17】変位部の周辺を示す断面図であり、(a)が変位部が解除位置にある場合を示し、(b)が係合位置にある場合を示している。
図18】他の実施形態における各アームレストのベース部上に跨ってカバー部が設けられた構成を示す平面図。
図19】非展開状態における各アームレストの境界部を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、歩行車10が左右方向に展開及び折り畳みが可能となっている。図1は、展開状態における歩行車10を斜め前方から見た斜視図であり、図2は、折り畳み状態における歩行車10を斜め前方から見た斜視図である。なお、以下の説明では、歩行車10を移動させる際の移動方向を前後方向とし、その前後方向に対して直交する方向を左右方向として説明を行う。
【0023】
図1に示すように、歩行車10は、上下方向に延びる左右一対のフレーム部11と、各フレーム部11の下端側に設けられた前輪12及び後輪13とを備える。各フレーム部11は、アルミニウム等の軽金属により形成されている。各フレーム部11は、その下部に設けられ前後方向に延びる下部フレーム15と、下部フレーム15の中間部から上方に延びる縦フレーム16とを有する。各下部フレーム15の前端部に前輪12が取り付けられ、後端部に後輪13が取り付けられている。
【0024】
各縦フレーム16の上端側には、ハンドル21とアームレスト22とが設けられている。ハンドル21は、ユーザが歩行車10を走行させる際に把持する部分であり、縦フレーム16よりも前方に突出して設けられている。また、アームレスト22は、ユーザが歩行車10を走行させる際に肘を置く部分であり、縦フレーム16よりも後方に突出して設けられている。なお、アームレスト22が肘置き部に相当する。
【0025】
各縦フレーム16の上端側には、取付部23を介して前方レバー24及び後方レバー25が取り付けられている。前方レバー24及び後方レバー25は、歩行車10にブレーキをかけるためのレバーである。前方レバー24はハンドル21の下方に設けられ、後方レバー25はアームレスト22の下方に設けられている。前方レバー24又は後方レバー25が操作されると、下部フレーム15に設けられたブレーキ作動部26が作動し、後輪13に制動力(ブレーキ力)が付与される。
【0026】
各縦フレーム16の間には、腰掛け可能な座部27が設けられている。座部27の下面側には物を収容可能な収容かご28が設けられている。また、ハンドル21の下方には物を載せ置くことが可能なトレイ29が設けられている。
【0027】
続いて、歩行車10の折り畳みに関する構成について説明する。歩行車10は、各フレーム部11を連結する下側連結部31と、各アームレスト22を連結する上側連結部41とを備える。本歩行車10は、下側連結部31及び上側連結部41が変形可能とされており、その変形により、左右に展開する展開状態と、左右に折り畳まれる折り畳み状態とに移行可能となっている。そこで、まず、下側連結部31により連結されるフレーム部11側の構成について説明する。なお、下側連結部31が第1連結部に相当し、上側連結部41が第2連結部に相当する。
【0028】
図1及び図2に示すように、下側連結部31は、互いに交差する一対のリンク部32を有している。各リンク部32は直線状に延びており、互いの交差部において前後に延びる回動軸33を介して連結されている。これにより、各リンク部32は回動軸33を中心として互いに回動可能とされ、その回動により、下側連結部31が左右に展開及び折り畳み変形可能となっている。
【0029】
各リンク部32はいずれも各フレーム部11に斜めに架け渡されている。各リンク部32の一端部(下端部)は、フレーム部11の下端側に前後に延びる回動軸35を介して連結されている。また、各リンク部32の他端部(上端部)は、フレーム部11の縦フレーム16に設けられたスライダ36に前後に延びる回動軸37を介して連結されている。スライダ36は、縦フレーム16に沿って上下にスライド可能となっている。スライダ36のスライドに伴い、リンク部32の他端部が上下に変位するようになっている。また、縦フレーム16には、スライダ36の下方にストッパ38が設けられている。
【0030】
上記の構成において、下側連結部31が左右に展開されると、各フレーム部11が左右に離間した離間状態(図1の状態)とされる。この状態では、スライダ36がストッパ38に上方から当接し、それ以上下方へスライドすることが規制される。そのため、下側連結部31がそれ以上展開されることが規制され、ひいては各フレーム部11がそれ以上離間することが規制される。一方、下側連結部31が左右に折り畳まれると、各フレーム部11が左右に接近した接近状態(図2の状態)とされる。下側連結部31が折り畳まれる際には、スライダ36が縦フレーム16に沿って上方にスライドしながら折り畳まれる。このように、各フレーム部11は、下側連結部31の展開及び折り畳みにより、左右に離間する状態と左右に接近する状態とに移行することが可能となっている。
【0031】
なお、各フレーム部11が接近状態にある場合には、座部27と収容かご28とがそれぞれ折り畳まれた状態となる。また、歩行車10からトレイ29が取り外される。
【0032】
続いて、上側連結部41により連結されるアームレスト22側の構成について図1及び図2に加え、図3を用いながら説明する。図3は、(a)がアームレスト22及びハンドル21を斜め上方から見た斜視図であり、(b)が斜め下方から見た斜視図である。なお、図3(a)では、一方のアームレスト22についてクッション部52をベース部51から上方に離間させた状態で示している。
【0033】
図1図3に示すように、各縦フレーム16の上端部には、ハンドル21を構成するハンドルフレーム43が設けられている。ハンドルフレーム43は、パイプ材により形成され、その後側部分が前後方向に延びている一方、前側部分が前後方向に対して左右方向の内側に傾斜している。ハンドルフレーム43の後側部分はフレーム挿入部44に挿入されている。フレーム挿入部44は、円管状に形成され、縦フレーム16の上端部に固定されている。ハンドルフレーム43は、フレーム挿入部44に挿入された後側部分を回動軸として回動可能とされている。また、ハンドルフレーム43の前側部分にはハンドルカバー45が被せられている。ハンドルカバー45と上記前側部分とによりハンドル21が構成されている。
【0034】
各ハンドルフレーム43には、取付部47を介してアームレスト22が取り付けられている。取付部47は、ハンドルフレーム43の前側部分と後側部分との境界付近に取り付けられており、その取付部47にアームレスト22が取り付けられている。アームレスト22は、かかる取付状態で、ハンドルフレーム43とともに回動可能とされている。また、この場合、アームレスト22は、ハンドルフレーム43とフレーム挿入部44とを介して縦フレーム16の上端側に回動可能に支持されていることになる。
【0035】
各アームレスト22は、互いに近づく側に延びるように設けられ、左右に近接した状態で配置されている。各アームレスト22には、それら各アームレスト22を連結する上側連結部41が設けられている。上側連結部41は、各アームレスト22の境界部において上方に凸となるよう折り曲げ可能に形成されている。これにより、上側連結部41は、折り曲げ状態(図9(b)参照)と、折り曲げ状態に対して左右に展開された状態(図9(a)参照)とに変形可能となっている。
【0036】
各アームレスト22は、各フレーム部11が離間する状態にある場合には、上側連結部41が展開されることで左右に展開された展開状態(図1の状態)とされる。これにより、歩行車10は全体として左右に展開された状態とされる。また、各アームレスト22は、各フレーム部11が接近する状態にある場合には、上側連結部41が折り曲げ状態とされることで、全体として上方に凸となるよう折り曲げられた形状をなす非展開状態(図2の状態)とされる。この場合、各アームレスト22は、ハンドルフレーム43とともに回動しながら非展開状態とされる。これにより、歩行車10は全体として左右に折り畳まれた状態(図2の状態)とされる。
【0037】
続いて、アームレスト22の構成について図3に加え図4及び図5を用いながら詳しく説明する。図4は、各アームレスト22のベース部51を示す平面図である。図5は、図4においてプレート部材54,55を取り外した状態を示す平面図である。なお、各アームレスト22は左右対称の構成を有している。
【0038】
図3及び図4に示すように、各アームレスト22は、ベース部51と、ベース部51の上に重ねて設けられたクッション部52とを有する。ベース部51は、樹脂製のベース本体53と、ベース本体53の上に設けられた金属製のプレート部材54,55とを有する。ベース本体53は、水平方向に拡がるように形成され、その上面に多数のリブを有している。また、ベース本体53は、左右方向に延びており、左右方向の外側部分が後方に張り出した形状とされている。
【0039】
プレート部材54,55は、ベース本体53を補強するための部材である。各プレート部材54,55のうち、プレート部材54は、ベース本体53における左右方向の外側に配置され、前後方向に延びている。プレート部材54は、取付部47を介してハンドルフレーム43に固定されている。また、プレート部材55は、プレート部材54の左右方向内側に配置され、左右方向に延びている。各プレート部材54,55はいずれも、ボルト57によりベース本体53に固定されている。
【0040】
クッション部52は、クッション材により所定の厚みを有して形成されている。このクッション部52の上にユーザの肘が置かれるようになっている。クッション部52は、その平面視の形状がベース部51と略同じ形状とされ、ベース部51の全域に亘って配置されている。クッション部52の左右方向の外側縁部には、上方に突出する突部52aが設けられている。この突部52aには、ユーザの肘を掛けることが可能となっている。また、ベース部51上には、突部52aに対応する位置に上方に突出する突出部58が設けられている。この突出部58は、突部52aにおいて下方に開口するように形成された溝状の挿込部(図示略)に挿し込まれている。これにより、クッション部52はベース部51上に着脱可能に取り付けられている。
【0041】
図3(b)及び図5に示すように、各アームレスト22のベース部51には、それらベース部51に跨って上述の上側連結部41が設けられている。上側連結部41は、互いに回動可能に連結された第1回動部71及び第2回動部72を有している(図9も参照)。第1回動部71は、各ベース部51のうち一方に固定された固定板部73と、第2回動部72と連結される連結部74とを有している。第2回動部72は、各ベース部51のうち他方に固定された固定板部75と、第1回動部71と連結される連結部76とを有している。
【0042】
第1回動部71の固定板部73と第2回動部72の固定板部75とはいずれも、ベース本体53とプレート部材55との間に挟まれた状態で配置され、その配置状態でボルト78(図4参照)によりプレート部材55に固定されている。なお、ボルト78は、プレート部材55の上方からプレート部材55を介して固定板部73,75に形成されたねじ孔79にねじ込まれている。
【0043】
第1回動部71の連結部74と第2回動部72の連結部76とはいずれも各アームレスト22の境界部においてアームレスト22のベース部51よりも下方に突出するように配置されている。各連結部74,76は互いに回動可能に連結されている。これら各連結部74,76の回動により、上側連結部41は、上述のように、展開された状態(図9(a)の状態)と、折り曲げられた状態(図9(b)の状態)とに変形可能となっている。
【0044】
ところで、本歩行車10には、ユーザの手が各アームレスト22の間を通じて上側連結部41に触れるのを防止するための構成が設けられている。そこで、以下では、かかる構成について図6図8に基づいて説明する。図6は、各アームレスト22のベース部51上に跨ってカバー部60が設けられた構成を示す平面図である。図7は、カバー部60を拡大して示す側面図である。図8は、各アームレスト22の境界部を示す側面図であり、(a)が各アームレスト22の展開状態を示しており、(b)が各アームレスト22の非展開状態を示している。
【0045】
図6及び図7に示すように、歩行車10には、各アームレスト22に跨ってカバー部60が設けられている。カバー部60は、上側連結部41の上方において、各アームレスト22のベース部51上に跨って設けられている。カバー部60は、シート状のベルト材61と、ベルト材61の裏面に取り付けられた保護板62及び固定板63とを有する。ベルト材61は、矩形形状をなしており、例えばナイロン製又はポリエステル製である。ベルト材61は、曲げ変形可能とされ、各アームレスト22のベース部51上に跨がって設けられている。なお、ベルト材61がシート材に相当する。
【0046】
固定板63は、硬質樹脂により薄板状に形成され、例えばPP(ポリプロピレン)により形成されている。固定板63は、矩形形状をなしており、その前後方向の長さがベルト材61と同じ長さとなっている。固定板63は、ベルト材61の左右方向の両側にそれぞれ縫製されることにより取り付けられている。詳しくは、ベルト材61は、固定板63と重なる重なり部において、その周縁部に沿って環状に縫製されることにより取り付けられている。なお、図6では、縫製された縫製部66を点線で示している。
【0047】
固定板63は、ベルト材61よりも左右方向の外側に延出しており、その延出した部分がプレート部材55上にボルト57により固定されている。すなわち、固定板63は、プレート部材55をベース本体53に固定するボルト57を用いてプレート部材55に固定されている。なお、固定板63には、ボルト78との干渉を回避する逃がし孔64が設けられている。
【0048】
図8(a)に示すように、各アームレスト22が展開状態とされた場合には、ベルト材61における各アームレスト22の間の中間部分61aが、各アームレスト22のクッション部52の間に挟まれて上方に凸となるように折り返された形状とされる(図7も参照)。この場合、中間部分61aにおいて上端部に位置する折り返しの頂部68は、各アームレスト22の上面よりも下方に位置するか、又は各アームレスト22の上面と同じ高さに位置する。これにより、中間部分61aが各アームレスト22の上面から上方にはみ出さないようにされている。
【0049】
中間部分61aにおいて頂部68を挟んだ両側にはそれぞれ保護板62が配置されている。各保護板62は、薄板状とされ、ベルト材61よりも硬い材料により形成されている。具体的には、各保護板62は硬質樹脂により形成され、例えばPP(ポリプロピレン)により形成されている。また、各保護板62は、前後方向の長さが中間部分61aと同じ長さとなっている。各保護板62は、中間部分61aにおいて折り返しの内側に配置され、互いに対向している。また、各保護板62は、例えば中間部分61aに縫製されることにより取り付けられている。
【0050】
図8(b)に示すように、各アームレスト22が非展開状態とされた場合には、ベルト材61の中間部分61aが左右に展開された形状とされる。これにより、ベルト材61ひいてはカバー部60により、上側連結部41が各アームレスト22の間において上方から覆われた状態となる。そのため、ユーザが各アームレスト22の間を通じて上側連結部41に手を触れるのを防止することが可能となる。また、この場合、各保護板62が、ベルト材61の中間部分61aと上側連結部41との間に介在することになる。
【0051】
続いて、上側連結部41の構成について、図9図11に基づき詳しく説明する。図9は、上側連結部41を斜め上方から見た斜視図であり、(a)が上側連結部41が展開された状態を示し、(b)が上側連結部41が折り曲げられた状態を示している。図10は、上側連結部41を第1回動部71と第2回動部72とに分解した状態で示す分解斜視図である。図11は、(a)が上側連結部41の第1回動部71を分解した状態で示す分解斜視図であり、(b)が第2回動部72を分解した状態で示す分解斜視図である。図12は、上側連結部41の内部構成を示す断面図であり、(a)が規制ピン96が挿入孔98に挿入された状態を示し、(b)が規制ピン96が挿入孔98から退避された状態を示している。
【0052】
上述したように、上側連結部41は、第1回動部71と第2回動部72とを有している。図9図11に示すように、第1回動部71は、上述した固定板部73及び連結部74を構成する回動本体部81と、その回動本体部81に取り付けられたカバー82とを有する。一方、第2回動部72は、上述した固定板部75及び連結部76を構成する回動本体部83と、その回動本体部83に取り付けられた操作部材84とを有する。
【0053】
第1回動部71(回動本体部81)の連結部74と、第2回動部72(回動本体部83)の連結部76とは前後に並んで配置されており、連結部74が前側、連結部76が後側に位置している。各連結部74,76は、かかる配置状態で、全体として前後に延びる円柱状をなしている。第1回動部71においては、連結部74の前面側にカバー82が取り付けられ、第2回動部72においては、連結部76の後面側に操作部材84が取り付けられている。
【0054】
各連結部74,76には、他方の連結部に向けて開放された円柱状の凹状部85,86が形成されている。これらの凹状部85,86は、各連結部74,76の中心部に形成され、互いに連通している。第1回動部71の連結部74において、凹状部85の底部はカバー82と前後に重なっており、それら重なり合う底部とカバー82とには互いに連通する孔部87,88が形成されている。孔部87は上記底部の中心部に位置し、孔部88はカバー82の中心部に位置している。
【0055】
一方、第2回動部72の連結部76には、凹状部86の底部から前方、すなわち連結部74側に向けて延びる回動軸89が設けられている。回動軸89は、連結部76の中心部に位置し、第1回動部71(連結部74)の凹状部85を通じて連結部74及びカバー82の各孔部87,88に挿入されている。これにより、各連結部74,76は、回動軸89を中心として互いに回動可能とされ、ひいては第1回動部71及び第2回動部72が回動軸89を中心として互いに回動可能とされている。
【0056】
回動軸89は、前後方向に延びる円筒状をなしており、その内側にはボルト91が後方から挿入されている。ボルト91の先端部は、カバー82の前面側に設けられた袋ナット92に締結されている。これにより、各連結部74,76が回動可能に連結され、ひいては各回動部71,72が回動可能に連結されている。
【0057】
ここで、各回動部71,72の回動により、上側連結部41は、上述したように、左右に展開された状態(図9(a)の状態)と、左右に折り曲げられた状態(図9(b)の状態)とに変形可能となっている。そこで、以下の説明では、上側連結部41が展開された状態における各回動部71,72の回動状態を「第1回動状態」といい、上側連結部41が折り曲げられた状態における各回動部71,72の回動状態を「第2回動状態」という。したがって、各回動部71,72が第1回動状態にある場合には、各アームレスト22が展開状態(図1の状態)とされ、各回動部71,72が第2回動状態にある場合には、各アームレスト22が非展開状態(図2の状態)とされる。
【0058】
第1回動部71の連結部74には、凹状部85を挟んだ両側にそれぞれ前後方向に延びる一対の収容孔95が設けられている。これらの収容孔95は、後方すなわち連結部76側にのみ開放された有底の孔部とされている。各収容孔95には、規制ピン96と、コイルばね97とが収容されている。規制ピン96は、有底円筒状をなしており、その開放側を収容孔95の底部側に向けて収容孔95に収容されている。コイルばね97は、その一部が規制ピン96の内部に挿入され、その挿入状態で規制ピン96の底部と収容孔95の底部とに跨って配置されている。これにより、規制ピン96は、コイルばね97の弾性力(付勢力)により連結部76側に常時付勢された状態となっている。
【0059】
第2回動部72の連結部76には、規制ピン96を挿入可能な挿入孔98が設けられている。挿入孔98は、各規制ピン96に対応する位置にそれぞれ設けられ、連結部76を前後方向に貫通している。各回動部71,72が第1回動状態にある場合には、各挿入孔98が第1回動部71の収容孔95とそれぞれ前後方向に連通する。そのため、この場合、各規制ピン96がコイルばね97により付勢されることで挿入孔98に挿入される(図12(a)参照)。具体的には、この場合、規制ピン96の一部が挿入孔98に挿入され、それにより、規制ピン96が収容孔95と挿入孔98とに跨って配置される。
【0060】
かかる規制ピン96の配置状態では、規制ピン96が挿入孔98に係合されることにより、各回動部71,72の回動が規制される。詳しくは、各回動部71,72が第1回動状態から第2回動状態側に回動することが規制されるとともに、第1回動状態から第2回動状態側とは反対側(以下、反第2回動状態側という)に回動することが規制される。これにより、各回動部71,72を第1回動状態において保持することが可能となっており、ひいては各アームレスト22を展開状態(図1の状態)において保持することが可能となっている。なお、規制ピン96が規制部に相当する。
【0061】
規制ピン96による各回動部71,72の回動規制は、操作部材84の解除操作によって解除されるようになっている。操作部材84は、第2回動部72の連結部76の後面側に配置された円板状の操作部101と、操作部101から前方に突出する一対の突出部102とを有する。各突出部102は、連結部76の挿入孔98にそれぞれ挿入されている。各挿入孔98は、前側の一部が拡径され、その拡径部分に円筒状の押しピン103が配設されている。押しピン103は、突出部102の先端部に外挿されることにより取り付けられ、その後端部が拡径により生じている挿入孔98の内面の段差部に係合可能とされている。これにより、操作部材84は、連結部76に対して離脱不能に取り付けられ、その取付状態で前後方向に変位可能となっている。
【0062】
各回動部71,72が第1回動状態にある場合には、上述したように、第1回動部71の規制ピン96がコイルばね97により付勢されて挿入孔98に挿入されている(図12(a)参照)。この場合、規制ピン96は挿入孔98に挿入される挿入位置に位置している。規制ピン96が挿入孔98に挿入されている場合には、規制ピン96の先端が押しピン103の先端に当接しており、その当接状態で押しピン103ひいては操作部材84が、規制ピン96を介してコイルばね97により後方に付勢されている。これにより、操作部材84の操作部101は、通常、連結部76の後面から後方に離間した待機位置に位置している。
【0063】
操作部101が待機位置から前方に向けて押し操作されると、押しピン103により規制ピン96が前方に押され、規制ピン96がコイルばね97の付勢力に抗しながら前方に変位する。そして、操作部101が所定の解除位置まで押し操作されると、規制ピン96が挿入孔98から抜け出て(退避して)、規制ピン96全体が収容孔95に収容される(図12(b)参照)。この場合、規制ピン96は挿入孔98から退避された退避位置に位置する。これにより、規制ピン96による各回動部71,72の回動規制が解除される。そのため、各回動部71,72を第2回動状態に回動させ、各アームレスト22を非展開状態に移行することが可能となる。
【0064】
各回動部71,72(連結部74,76)の凹状部85,86には、それら凹状部85,86に跨ってねじりばね104が配設されている。ねじりばね104は、各凹状部85,86において回動軸89の周囲に配置され、その両端部がそれぞれ各回動部71,72に係合している。このねじりばね104により、各回動部71,72は第2回動状態側に回動するよう常時付勢されている。このため、各回動部71,72を第1回動状態から第2回動状態に回動させて各アームレスト22を展開状態から非展開状態に移行させる際には、その移行がアシストされるようになっている。なお、ねじりばね104が付勢部材に相当する。
【0065】
ところで、第2回動部72の挿入孔98の孔径は、第1回動部71の規制ピン96の外径よりも大きくなっている。そのため、規制ピン96が挿入孔98に挿入された状態では、規制ピン96の外面と挿入孔98の内面との間に所定の隙間が生じるようになっている。したがって、規制ピン96は、挿入孔98に対して各回動部71,72の回動方向に遊びのある状態で設けられるようになっている。
【0066】
ここで、規制ピン96が挿入孔98に対して遊びのある状態で設けられる場合、その遊びの範囲内で各回動部71,72の回動が許容されることになるため、各回動部71,72にがたつきが生じるおそれがある。そこで、以下では、その点について図13に基づき説明する。なお、図13は、規制ピン96が挿入孔98に係合されることにより各回動部71,72の回動が規制された状態を示す断面図であり、(a)が各回動部71,72が第1回動状態から第2回動状態側に回動することが規制された状態を示し、(b)が各回動部71,72が第1回動状態から反第2回動状態側に回動することが規制された状態を示している。なお、図13(a)及び(b)では、説明の便宜上、規制ピン96と挿入孔98との間の隙間を実際の隙間よりも大きくして示している。
【0067】
上述したように、各回動部71,72は、ねじりばね104により、第2回動状態側に回動するよう常時付勢されている。そのため、第1回動部71の規制ピン96が第2回動部72の挿入孔98に挿入された状態では、各回動部71,72が第2回動状態側に付勢されているにもかかわらず、図13(a)に示すように、規制ピン96が挿入孔98に係合されることにより、各回動部71,72が第2回動状態側へ回動することが規制される。以下、この場合における各回動部71,72の回動位置を第1規制位置という。
【0068】
一方、ユーザがアームレスト22に肘を置いて使用する際には、アームレスト22に作用する下向きの荷重により、各回動部71,72がねじりばね104の付勢力に抗しながら反第2回動状態側に回動する。そして、図13(b)に示すように、規制ピン96が挿入孔98に係合されることにより、各回動部71,72が反第2回動状態側に回動することが規制される。以下、この場合における各回動部71,72の回動位置を第2規制位置という。
【0069】
このように、ユーザがアームレスト22を使用する際には、各回動部71,72が第1規制位置から第2規制位置に回動することになるため、各回動部71,72にがたつきが生じるおそれがあり、ひいては各アームレスト22にがたつきが生じるおそれがある。そこで、本歩行車10では、このような点に鑑み、アームレスト22のがたつきを抑制するための構成を設けている。以下においては、そのがたつきを抑制するための構成について図14図17を用いて説明する。図14は上側連結部41を斜め下方から見た斜視図であり、図15は上側連結部41から変位部106を離間させた状態で示す斜視図である。また、図16は変位部106の周辺を示す側面図であり、図17は変位部106の周辺を示す断面図である。なお、図16及び図17ではいずれも、(a)が変位部106が解除位置にある場合を示し、(b)が変位部106が係合位置にある場合を示している。
【0070】
図14図17に示すように、第2回動部72の連結部76の外周部には、ユーザの操作により変位可能とされた変位部106が設けられている。変位部106は、連結部76の外周部に設けられた案内通路107に沿ってスライド可能とされている。変位部106は、そのスライドによって、第1回動部71に係合可能な位置(図16(b)及び17(b)の位置)と、その係合が解除される位置(図16(a)及び17(a)の位置)との間で変位可能とされている。
【0071】
第2回動部72の連結部76は、その外周面を形成する円環状の外周板部76aを有する。その外周板部76aには、厚み方向に貫通し前後方向に延びるスリット孔が形成されている。このスリット孔により案内通路107が形成されている。
【0072】
変位部106は、外周板部76aの表面側に設けられる操作板部111と、裏面側に設けられる裏板部112と、それら各板部111,112を接続し案内通路107に挿通される挿通部113とを有する。変位部106において、挿通部113は案内通路107に沿って変位可能となっており、これにより、変位部106が案内通路107に沿ってスライド可能となっている。なお、変位部106のスライド方向は前後方向であり、各回動部71,72の回動方向と直交する方向となっている。
【0073】
操作板部111は前後方向に延びており、その後端部が外周板部76aとは反対側に立ち上がってつまみ部114となっている。変位部106を変位操作する際には、このつまみ部114をつまんで操作することが可能となっている。また、操作板部111の中間部には、その上面に凹凸部115が形成されている。変位部106を変位操作する際には、この凹凸部115に指を置いて操作することも可能となっている。
【0074】
操作板部111は、その前端側に変位部106のスライド方向(つまり前後方向)に対して傾斜した傾斜面118を有している。この傾斜面118は、変位部106を前方に向けてスライド操作する際に、第1回動部71の連結部74に設けられた傾斜面119と当接する面となっている。各傾斜面118,119は互いに平行な面となっている。操作板部111の傾斜面118が連結部74の傾斜面119と当接することにより、変位部106は、連結部74ひいては第1回動部71に係合する。そして、その係合により、各回動部71,72が第2回動状態側に回動することが規制される。
【0075】
操作板部111の前端側には、その裏面に第1回動部71のカバー82に対して係止可能な係止部121が設けられている。係止部121は、操作板部111の裏面から突出する山形状とされ、変位部106のスライド方向に並んで複数配置されている。第1回動部71において、連結部74の前面側に配置されたカバー82は、その一部が後方に延出した延出部82aとされており、その延出部82aに係止部121が係止される被係止部122が設けられている。被係止部122は、延出部82aの表面から突出する山形状とされている。
【0076】
続いて、変位部106の作用について説明する。ここでは、各回動部71,72が第1回動状態とされて、各アームレスト22が展開状態とされた場合に、変位部106を操作して各アームレスト22のがたつきを抑制する際の作用について説明する。なお、変位部106は、あらかじめ第1回動部71に対する係合が解除される解除位置(図16(a)及び図17(a)に示す位置)に位置しているものとする。
【0077】
各回動部71,72が第1回動状態とされている場合には、上述したように、第1回動部71の規制ピン96が第2回動部72の挿入孔98に挿入されて挿入孔98に係合されている。具体的には、この場合、ねじりばね104により各回動部71,72が第2回動状態側に付勢されていることで、各回動部71,72は、規制ピン96が挿入孔98に係合されることにより、第2回動状態側に回動することが規制されている。そのため、各回動部71,72は、図13(a)に示す第1規制位置に位置している。
【0078】
このような状態の下、変位部106を操作してアームレスト22のがたつきを抑制する際にはまず、変位部106を解除位置から前方にスライドさせることにより、変位部106の傾斜面118を第1回動部71の傾斜面119に当接させる。そして、その当接状態のまま、変位部106をさらに前方にスライドさせる。すると、各回動部71,72が各傾斜面118,119を介して反第2回動状態側に押され、その結果、各回動部71,72が反第2回動状態側に回動する(図16(b)参照)。そして、その回動により、各回動部71,72は最終的に、規制ピン96が挿入孔98に係合されることにより、反第2回動状態側への回動が規制される第2規制位置(図13(b)に示す位置)に到達する。なお、第2規制位置が「規制位置」に相当する。
【0079】
各回動部71,72が第2規制位置に到達すると、各回動部71,72は、挿入孔98に対する規制ピン96の係合により反第2回動状態側への回動が規制されるとともに、第1回動部71(詳しくは連結部74の傾斜面119)に対する変位部106の係合(当接)により第2回動状態側への回動が規制される。これにより、各回動部71,72にがたつきが生じるのを抑制することができ、ひいては各アームレスト22にがたつきが生じるのを抑制することができる。
【0080】
また、このときの変位部106の位置(図16(b)及び図17(b)に示す位置)が「係合位置」に相当する。つまり、変位部106の係合位置とは、各回動部71,72が反第2回動状態側への回動が規制される第2規制位置にある場合において、変位部106が第1回動部71(の傾斜面119)に対して係合する位置のことである。
【0081】
上記のように、変位部106を解除位置から前方にスライドさせることにより、各回動部71,72が反第2回動状態側に回動し第2規制位置に到達すると、そのとき変位部106は係合位置に到達することになる。変位部106が係合位置に到達すると、変位部106はそれ以上前方へスライドさせることが不可となる。そのため、変位部106を解除位置から係合位置へスライドさせる際には、変位部106をスライドが不可となる位置までスライドさせればよい。
【0082】
変位部106が係合位置に到達すると、変位部106の係止部121が第1回動部71の被係止部122に係止される(図17(b)参照)。これにより、変位部106を係合位置において確実に保持することが可能となる。
【0083】
続いて、各回動部71,72を第1回動状態から第2回動状態に回動して、各アームレスト22を展開状態から非展開状態に移行させる際には、まず変位部106を係合位置から解除位置にスライドさせる。その後、操作部材84の操作部101を押し操作して、挿入孔98に対する規制ピン96の係合を解除する。これにより、各回動部71,72の回動規制が解除される。その後、各回動部71,72を第2回動状態として、各アームレスト22を非展開状態とする。
【0084】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0085】
各アームレスト22を連結する上側連結部41の上方においてそれら各アームレスト22に跨ってカバー部60が設けられている。これにより、ユーザの手が各アームレスト22の間を通じて上側連結部41に触れるのを防止することができる。
【0086】
カバー部60が、ベルト材61に加え、ベルト材61の裏面にベルト材61よりも硬質の保護板62を有している。保護板62は、ベルト材61における各アームレスト22の間の中間部分61aに配置されている。この場合、各アームレスト22が展開状態及び非展開状態に移行する際に、その移行に伴い展開及び折り曲げ変形する上側連結部41にベルト材61が噛み込むのを防止することができる。
【0087】
カバー部60が各アームレスト22のベース部51に跨がって設けられているため、カバー部60がアームレスト22を使用するユーザの邪魔になるのを抑制することができる。
【0088】
ベルト材61において各アームレスト22の間の中間部分61aが、各アームレスト22が展開状態とされた場合には上方に凸となるよう折り返された形状となり、各アームレスト22が非展開状態とされた場合には展開された形状となる。要するに、ベルト材61(ひいてはカバー部60)は各アームレスト22の展開状態及び非展開状態の移行に追従して変形可能となっているため、カバー部60により、アームレスト22の各状態への移行がしづらくなるのを抑制することができる。
【0089】
また、ベルト材61の中間部分61aは、各アームレスト22が展開状態とされた場合に各アームレスト22のクッション部52の間で挟まれるため、カバー部60がアームレスト22を利用するユーザの邪魔になるのを抑制することができる。
【0090】
詳しくは、ベルト材61において各クッション部52の間に挟まれる中間部分61aは、クッション部52の上面から上方にはみ出さないようになっている。そのため、カバー部60がユーザの邪魔になるのを大いに抑制することができる。
【0091】
保護板62がベルト材61における各アームレスト22の間の中間部分61aのうち、折り返しの頂部68を挟んだ両側にそれぞれ配置されている。これにより、ベルト材61の折り返しを妨げることなく、ベルト材61が上側連結部41に噛み込むのを防止することができる。
【0092】
ベルト材61の左右方向の両側にそれぞれアームレスト22に固定される固定板63が取り付けられている。固定板63は薄板状とされ、ベルト材61に縫製により取り付けられている。この場合、ベルト材61を直接、アームレスト22に固定する場合と比べ、ベルト材61を固定板63を介して安定した状態でアームレスト22に取り付けることができる。これにより、ベルト材61がアームレスト22の展開状態及び非展開状態への移行に伴い、アームレスト22から外れるのを好適に防止することができる。
【0093】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0094】
(1)図18には、カバー部60の別形態を示す。図18に示すカバー部130は、左右方向に延びる帯状のゴムシート131と、ゴムシート131の裏面に取り付けられた硬質樹脂製の保護板132及び固定板133とを有する。ゴムシート131は、各アームレスト22のベース部51上に跨がって設けられ、各ベース部51のプレート部材55上に配置されている。また、ゴムシート131は、例えばポリエステル繊維を含んだポリウレタン製のゴムからなる。
【0095】
保護板132は、左右方向に延びる長方形状をなしており、その幅がゴムシート131の幅と略同じとされている。保護板132は、例えばPP(ポリプロピレン)により形成されている。保護板132は、ゴムシート131における左右方向の中央部に位置し、各アームレスト22のベース部51上に跨がるように配置されている。また、保護板132は、ゴムシート131の裏面に重ねられた状態で、その周縁部がゴムシート131に縫製されている。図18では、その縫製された縫製部135を点線で示している。
【0096】
固定板133は、ゴムシート131の左右方向の両端部にそれぞれ取り付けられている固定板133は、矩形の薄板状とされ、例えばPP(ポリプロピレン)により形成されている。固定板133は、ゴムシート131の裏面に重ねられた状態で、その周縁部がゴムシート131に縫製されている。なお、図18では、その縫製された縫製部136を点線で示している。また、各固定板133は、ベース部51のプレート部材55上にボルト137により固定されている。
【0097】
ゴムシート131において保護板132と固定板133とは左右に離間されて配置されている。この場合、ゴムシート131における保護板132と固定板133との間の部分は、左右方向に伸縮可能とされた伸縮部138となっている。したがって、カバー部130には、保護板132を挟んだ左右両側にそれぞれ伸縮部138が設けられている。
【0098】
上述の構成では、各アームレスト22が展開状態とされている場合には、ゴムシート131の各伸縮部138が自然状態(非伸長状態)とされている。それに対して、図19に示すように、各アームレスト22が非展開状態とされた場合には、ゴムシート131の各伸縮部138が左右方向に伸長し、上側連結部41がゴムシート131により上方から覆われた状態となる。そのため、かかる構成によっても、ユーザの手が各アームレスト22の間を通じて上側連結部41に触れるのを防止することができる。また、この場合、各アームレスト22が展開状態から非展開状態に移行する際に各伸縮部138が伸長することにより、その移行がしづらくなるのを抑制することができる。
【0099】
また、各アームレスト22の非展開状態では、ゴムシート131における各アームレスト22の間の部分の全域に亘って保護板132が配置される。そのため、各アームレスト22の展開状態及び非展開状態に移行する際に、ゴムシート131が上側連結部41に噛み込むのをより確実に防止することができる。
【0100】
(2)上記実施形態では、シート材として樹脂製のベルト材61を用いたが、シート材は必ずしも樹脂製である必要はなく、例えば布製や革製であってもよい。また、シート材として、伸縮可能なゴムシートを用いてもよい。
【0101】
(3)上記実施形態では、ベルト材61を固定板63を介して縫製によりベース部51に固定したが、ベルト材61をベース部51上に接着剤等を用いて直接固定してもよい。但し、ベルト材61は各アームレスト22の展開状態及び非展開状態への移行に伴い伸縮するものであることを考えると、上記実施形態のように、ベルト材61を固定板63を介した縫製により安定した状態でベース部51に取り付けるのが望ましい。
【0102】
(4)上記実施形態では、カバー部60を各アームレスト22のベース部51に跨がって設けたが、例えばカバー部60を各アームレスト22のクッション部52に跨がって設けてもよい。その場合、カバー部60を各クッション部52の下面に跨がって設け、それら各下面に接着等で固定することが考えられる。
【符号の説明】
【0103】
10…歩行車、11…フレーム部、22…肘置き部としてのアームレスト、31…第1連結部としての下側連結部、41…第2連結部としての上側連結部、51…ベース部、52…クッション部、60…カバー部、61…シート材としてのベルト材、62…保護板、63…固定板。
図1
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