(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】面材移動装置および建具
(51)【国際特許分類】
E05F 13/02 20060101AFI20250219BHJP
【FI】
E05F13/02
(21)【出願番号】P 2021185545
(22)【出願日】2021-11-15
【審査請求日】2024-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 政志
(72)【発明者】
【氏名】溝口 麻美
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-084938(JP,A)
【文献】実開昭63-064876(JP,U)
【文献】実開平03-040473(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0263287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 13/00 - 13/04
E05F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物にスライド移動可能に設置される面材をスライド移動する面材移動装置であって、
前記面材に固定される従動体と、前記従動体をスライド移動する駆動体とを備え、
前記駆動体は、往復動可能な操作体と、前記操作体の往動および復動のうち一方の移動力をスライド移動力として前記従動体に伝達する一方、前記操作体の往動および復動のうち他方の移動力を前記従動体に対して非伝達とする伝達切換装置とを備え
、
前記伝達切換装置は、前記操作体に連結されると共に前記操作体の往復動によって直線的に往復動する往復動部材と、前記往復動部材に当接されると共に前記往復動部材の往復動が伝達されて正回転または逆回転する第一回転部材と、前記第一回転部材に連結されると共に前記第一回転部材から回転伝達される第二回転部材と、前記第一回転部材または前記第二回転部材に取り付けられると共に前記第一回転部材の正回転および逆回転のうち一方向の回転を前記第二回転部材に対して伝達する一方、前記第一回転部材の正回転および逆回転のうち他方向の回転を前記第二回転部材に対して非伝達とする一方向クラッチとを備え、
前記第二回転部材は、前記一方向の回転を前記スライド移動力として伝達可能に前記従動体に連結される
ことを特徴とする面材移動装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の面材移動装置において、
前記第一回転部材および前記第二回転部材は共通の軸部材を有し、
前記一方向クラッチは、前記第一回転部材または前記第二回転部材に装着され且つ前記軸部材を受ける一方向ベアリングで構成される
ことを特徴とする面材移動装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の面材移動装置において、
前記駆動体は、前記伝達切換装置を収容するケースを備え、
前記往復動部材は、前記操作体の往動によって往動可能に且つ前記操作体の復動によって復動可能に前記ケースに保持され、
前記軸部材は、前記ケースに保持され、
前記伝達切換装置は、前記往復動部材に対して前記軸部材を挟む位置に配置され且つ前記操作体に連結されるダミー部材を備え、
前記ケースは、前記ダミー部材を前記操作体の往動によって往動可能に且つ前記操作体の復動によって復動可能に保持し、
前記ケースには、前記往復動部材と前記ダミー部材とを置換配置可能な空間が形成される
ことを特徴とする面材移動装置。
【請求項4】
請求項
1から請求項
3のいずれか一項に記載の面材移動装置において、
前記操作体は、操作開始位置から操作終了位置まで往動する一方、前記操作終了位置から前記操作開始位置まで復動する構成とされ、
前記操作体は、前記操作終了位置から前記操作開始位置へ付勢する付勢部材を有し、
前記往復動部材は、少なくとも前記操作体が前記操作開始位置に配置された状態で前記第一回転部材に対して往復動伝達不能に非当接とされる非当接領域を有する
ことを特徴とする面材移動装置。
【請求項5】
請求項
1から請求項
4のいずれか一項に記載の面材移動装置において、
前記往復動部材および前記従動体はラック部材で構成され、
前記第一回転部材および前記第二回転部材は歯車で構成され、
前記往復動部材および前記第一回転部材同士が噛合され、
前記第二回転部材および前記従動体同士が噛合される
ことを特徴とする面材移動装置。
【請求項6】
建物にスライド移動可能に設置される面材をスライド移動する面材移動装置であって、
前記面材に固定される従動体と、前記従動体をスライド移動する駆動体とを備え、
前記駆動体は、往復動可能な操作体と、前記操作体の往動および復動のうち一方の移動力をスライド移動力として前記従動体に伝達する一方、前記操作体の往動および復動のうち他方の移動力を前記従動体に対して非伝達とする伝達切換装置とを備え、
前記操作体は、ベース部材と、前記ベース部材に対して軸体を介して回動可能に連結される操作部材とを備え、
前記軸体は、前記面材のスライド移動方向に沿って配置される
ことを特徴とする面材移動装置。
【請求項7】
建物の開口に設置される枠体と、枠体内にスライド移動可能に配置されて前記開口を開閉する面材と、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の面材移動装置とを備える
ことを特徴とする建具。
【請求項8】
請求項
7に記載の建具において、
前記面材移動装置の従動体は、前記面材の戸先部分を除いて、当該面材のスライド移動方向に延びて設置される
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面材をスライド移動させる面材移動装置および建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、面材移動装置として、組立式冷蔵庫の引戸における戸体(面材)に対し、そのスライド方向に沿って水平状に取り付けられるラックと、ラックにかみ合う径大歯車と、径大歯車に対してペダル操作が回転として伝達されるペダル付きレバー(操作体)と、ペダル付きレバーのペダル操作を回転として径大歯車に伝達する回転伝達機構とを備える足踏式引戸移動装置が知られている(特許文献1参照)。この回転伝達機構は、径大歯車と同軸の径小歯車や、ペダル付きレバーに取り付けられ且つ径小歯車とかみ合う扇歯車などが組み合わされ、ペダル付きレバーの一回分のペダル操作に応じて面材を完全に開けるように回転伝達する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の足踏式引戸移動装置では、回転伝達機構がペダル付きレバーの一回分のペダル操作に応じて面材を完全に開けるように回転伝達する構成とされているので、ペダル付きレバーの一回分の操作量が多くなってしまうおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、操作体の一回分の操作量を少なくしても、面材を所定位置までスライド移動できる面材移動装置および建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の面材移動装置は、建物にスライド移動可能に設置される面材をスライド移動する面材移動装置であって、前記面材に固定される従動体と、前記従動体をスライド移動する駆動体とを備え、前記駆動体は、往復動可能な操作体と、前記操作体の往動および復動のうち一方の移動力をスライド移動力として前記従動体に伝達する一方、前記操作体の往動および復動のうち他方の移動力を前記従動体に対して非伝達とする伝達切換装置とを備えることを特徴とする。
本発明の建具は、建物の開口に設置される枠体と、枠体内にスライド移動可能に配置されて前記開口を開閉する面材と、前述した本発明の面材移動装置とを備える建具。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作体の一回分の操作量を少なくしても、面材を所定位置までスライド移動できる面材移動装置および建具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る片引き戸を示す内観姿図。
【
図2】前記実施形態に係る片引き戸の面材移動装置を示す斜視図。
【
図3】前記面材移動装置の主に伝達切替装置を示す斜視図。
【
図4】前記面材移動装置の伝達切替装置を示す説明図。
【
図6】前記実施形態に係る片引き戸の動作を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、本実施形態に係る建具としての片引き戸1は、建物の開口2(
図6参照)に設置される枠体3(戸枠)と、枠体3内に左右にスライド移動可能に配置されて開口2を開閉する面材4(戸体)と、面材4を左右にスライド移動する面材移動装置10とを備えている。枠体3は、上枠31、下枠32および左右の縦枠33を備えている。枠体3内には、前述した面材4のほか、
図1に示す枠体3内の左側に固定配置された固定面材5が設置されている。
以下の説明において、片引き戸1の左右方向をX軸方向とし、片引き戸1の上下方向をY軸方向とし、片引き戸1の見込み方向をZ軸方向とする。X,Y,Z軸方向は互いに直交する。
【0010】
面材移動装置10は、
図2の(A)および(B)に示すように、面材4に固定される従動体としてのラック部材20と、ラック部材20をX軸方向にスライド移動する駆動体30を備えている。ラック部材20は、X軸方向に延びており、面材4のX軸方向における左右寸法に対して4分の3程度の長さ寸法とされている。このラック部材20は、面材4の戸尻4B側に配置されており、ラック部材20の戸先側の先端21と面材4の戸先4Aとの間は、ラック部材20が配置されない戸先部分4Cを形成している。すなわち、ラック部材20は、面材4の戸先部分4Cを除いて、X軸方向に延びて設置されている。なお、ラック部材20のギヤ部22はX軸方向に沿って並んで下向きに配置されている。
【0011】
駆動体30は、
図1に示すように、片引き戸1の閉鎖状態において面材4の戸尻4B部分に位置するように配置されており、足踏み操作によって面材4を戸尻に向かってX軸方向にスライド移動するスライド移動力をラック部材20に伝達する構成とされている。駆動体30は、ケース40と、Y軸方向に往復動可能な操作体50と、操作体50の往動をスライド移動力としてラック部材20に伝達する一方、操作体50の復動をラック部材20に対して非伝達とする伝達切換装置60(
図3参照)とを備えており、ケース40は伝達切換装置60を収容している。
ケース40は、前面部42、後面部(図示省略)および一対の側面部43を有したケース本体41と、ケース本体41の上部開口における前側部分に配置される蓋体44とを備えており、ケース本体41の上部開口における後側部分には、後述する第二回転部材64がラック部材20と噛合可能に配置されている。前面部42には、後述する往復動部材61およびダミー部材66がY軸方向に直線的に往復動可能に案内する案内溝45,46が形成されている。
操作体50は、略矩形板状のベース部材51と、ベース部材51に対して軸体52を介してR1およびR2方向に回動可能に連結される略矩形状の足踏み用の操作部材53(ペダル)と、操作部材53がベース部材51にR1方向に接近した操作終了位置P2から、操作部材53がベース部材51からR2方向に離間した操作開始位置P1へ付勢する付勢部材としてのコイルバネ54とを備えている。ベース部材51は、ケース40の下部からZ軸方向において前方側に張り出して配置されており、そのX軸方向に沿った前縁部には、軸体52がX軸方向に沿って配置されている。このため、
図2(A)に示す操作部材53の操作開始位置P1では、操作部材53のケース40側の縁部はベース部材51から上方に離間した位置に配置される一方、
図2(B)に示す操作部材53の操作終了位置P2では、操作部材53のケース40側の縁部はベース部材51に接近した位置に配置される。また、操作部材53は、操作開始位置P1では、操作部材53のケース40側の縁部の位置が軸体52の位置よりも上方に配置されるように、Z軸方向に対して斜めに傾斜している。このため、面材4に対面する操作者が足の踵を地面につけたまま操作部材53を踏み込みやすい配置構成にできる。この操作体50は、操作部材53を足で踏み込むことで操作開始位置P1から操作終了位置P2までR1方向に往動する一方、操作部材53から足を離すことで操作終了位置P2から操作開始位置P1までコイルバネ54の付勢力によって自動的に復動する構成とされている。
【0012】
伝達切換装置60は、
図3および
図4に示すように、操作体50に連結軸55を介して連結されるY軸方向に沿ったラック部材である往復動部材61と、往復動部材61に噛合する歯車である第一回転部材62と、第一回転部材62と共通の軸部材63によって連結され且つラック部材20に噛合する歯車である第二回転部材64と、第二回転部材64に装着され且つ軸部材63を受ける一方向クラッチとしての一方向ベアリング65と、往復動部材61に対して軸部材63を挟む位置に配置され且つ操作体50に連結軸55を介して連結されると共に往復動部材61に対して軸部材63を挟む位置に配置されるY軸方向に沿ったダミー部材66とを備えている。軸部材63は、本実施形態ではケース40に固定される軸本体631と、軸本体631の周囲に回転可能に配置される回転軸体632とを有している。回転軸体632は、第一回転部材62に嵌合されるブロック状の嵌合軸部632Aと、一方向ベアリング65に軸支される回転軸部632Bとを有している。この軸部材63では、具体的には、回転軸部632Bが第一回転部材62とともに軸本体631の周りで回転し、一方向ベアリング65を介して第二回転部材64に回転伝達する構成となっている。ダミー部材66は、往復動部材61からそのギヤ部611を省いた構成と同様に構成されている。このため、往復動部材61とダミー部材66は互いに置換可能である。なお、ケース40内には、往復動部材61とダミー部材66とを置換配置可能な空間が形成されている。
【0013】
往復動部材61およびダミー部材66には、ケース40の案内溝45,46にY軸方向に案内されるように当該案内溝45,46にそれぞれ通されるネジ67が螺合している。また、往復動部材61およびダミー部材66は、ネジ67および連結板68によって互いに連結されており、このため、往復動部材61およびダミー部材66は互いに同様にY軸方向に往復動する。なお、連結板68には、連結軸55が通される孔や軸本体6631の端部が配置される長孔が形成されている。この往復動部材61およびダミー部材66は、操作体50のR1方向の往動によって往動可能に且つ操作体50のR2方向の復動によって復動可能にケース40に保持されている。軸本体631の両端部は、ケースの前面部42および後面部に保持されている。
【0014】
往復動部材61は、第一回転部材62と噛合および分離する前述したギヤ部611と、操作体50が操作開始位置P1に配置された状態で第一回転部材62に対して往復動伝達不能に非当接とされる非当接領域612を有している。非当接領域612は、ギヤ部611に対する下方領域であり、この領域にギヤは形成されずに平坦に形成されており、第一回転部材62の周面に対して間隔を隔てて配置されている。
操作開始位置P1では、第一回転部材62の側方には非当接領域612が配置され、ギヤ部611は第一回転部材62と分離された状態とされている。このため、小さな力で面材4をX軸方向に手動開閉できる。また、操作部材53が踏まれてR1方向に所定距離回動すると、往復動部材61もY軸方向において下方に直線的に所定距離移動し、ギヤ部611が第一回転部材と噛合する。このため、往復動部材61の直線的な移動力が回転力として第一回転部材62に伝達される。
【0015】
往復動部材61、ダミー部材66および第一回転部材62は、本実施形態では第二回転部材64に対して前面部42側に配置されており、第二回転部材64の径寸法は第一回転部材62の径寸法よりも大きくされている。このため、例えば第一回転部材62の回転をラック部材20のスライド移動として伝達する場合よりも、操作体50の一回の操作量に対して、ラック部材20をX軸方向にスライド移動できる移動量を増すことができる。また、第二回転部材64の側方ではなく前方に往復動部材61、ダミー部材66および第一回転部材62が配置されているので、第二回転部材64の径寸法を大きくしても駆動体30をコンパクトに構成できる。
【0016】
以下、本実施形態に係る面材移動装置10の動作について説明する。
まず、操作者が操作部材53を足で踏み込むことで、操作部材53が操作開始位置P1からR1方向に回動(往動)すると、この回動が往復動部材61の下方への直線移動力として伝達され、往復動部材61が下方へ直線移動(往動)する。このとき、ダミー部材66も下方へ直線移動する。往復動部材61が下方へ直線移動すると、ギヤ部611が第一回転部材62に噛合し、更に下方へ直線移動すると第一回転部材62が軸部材63を中心(軸本体631の軸心)として正回転する。この第一回転部材62の正回転により軸部材63の回転軸体632も正回転し、この正回転が一方向ベアリング65を介して第二回転部材64に回転伝達され、第二回転部材64が正回転する。そして、第二回転部材64の正回転が、当該第二回転部材64に噛合するラック部材20に対して、戸尻に向かうX軸方向のスライド移動力として伝達され、ラック部材20がスライド移動し、
図6(A)に示すように面材4が開放移動する。本実施形態では、操作部材53を操作開始位置P1から操作終了位置P2までの一回の往動量で、第一回転部材62および第二回転部材64が四半周回転し、この四半周回転に対応したスライド移動量をラック部材20がスライド移動し、面材4が開口2に対して4分の1程度を開く関係となっている。
次に、
図5に示すように、操作部材53を操作開始位置P1から操作終了位置P2まで踏み込んだ後、操作者が操作部材53の踏み込みをやめて足を上げると、操作部材53がコイルバネ54の付勢力によって操作終了位置P2から操作開始位置P1に自動的にR2方向に回動(復動)して当該操作開始位置P1に復帰し、再び、操作開始位置P1にある操作部材53を踏み込み操作可能な状態となる。ここで、操作部材53が操作終了位置P2から操作開始位置P1に復動する際、往復動部材61が上方に直線移動し、この直線移動により第一回転部材62および軸部材63の回転軸体632が逆回転するが、一方向ベアリング65はこの逆回転を第二回転部材64に対して非伝達とするので、第二回転部材64が逆回転することはなく、ラック部材20が戸先側にスライド移動することもない。このため、操作者は操作体50を繰り返し操作することで、面材4を所定距離スライド移動させることができる。
次に、面材4が
図6(B)に示す位置までスライド移動されると、第二回転部材64のうちラック部材20と噛合していた部分が戸先部分4Cに配置され、第二回転部材64とラック部材20との噛合が外れる。このため、
図6(C)に示すように面材4が全開位置に配置される前に、駆動体30からラック部材20にスライド移動力が加わらない状態にでき、操作体の操作によって面材移動装置10に過度な負荷がかかることを抑制でき、面材4が戸尻側の縦枠33に衝突することなどを抑制し得る。
このように面材移動装置10は動作し、面材4は
図1に示す全閉位置から
図6(C)に示す全開位置までスライド移動される。
【0017】
[変形例]
前記実施形態では、駆動体30を片引き戸1の全閉状態時における面材4の戸尻4Bに対応する部分(片引き戸1の召合せ部)に配置されているが、ラック部材20と噛合可能であれば他の部位に配置されてもよい。
前記実施形態では、ラック部材20は、面材4の戸先部分4Cを除いてX軸方向に延びて面材4に設置されているが、面材4の戸先部分4CもX軸方向に延びて面材4に設置されていてもよい。
前記実施形態では、操作体の往動の移動力をスライド移動力としてラック部材20に伝達する構成とされているが、これに限らず、操作体の復動の移動力をスライド移動力としてラック部材20に伝達する構成とされていてもよい。また、一方向ベアリング65を逆向きに取り付け直して、第一回転部材62の逆回転を第二回転部材64に伝達して逆回転する一方、第一回転部材62の正回転を第二回転部材64に非伝達とする構成としてもよい。
前記実施形態では、第二回転部材64に一方向ベアリング65が装着されているが、これに限らず、第二回転部材64ではなく第一回転部材62に一方向ベアリング65が装着され且つ第二回転部材64が軸部材63に固定されていてもよい。また、第一回転部材62および第二回転部材64が共通の軸部材63を有してZ軸方向に隣り合って配置されているが、これに限らず、第一回転部材62と第二回転部材64とを別々の軸としてこれらを噛合してもよい。この場合、例えば第一回転部材62および第二回転部材64自体に一方向クラッチを機械的に構成してもよい。
前記実施形態では、ケース40内にダミー部材66が配置されているが、これと往復動部材61とを置換して建具の左右勝手に対応させてもよい。また、ダミー部材66がなくても動作可能であれば、ダミー部材66の構成を省略してもよい。
前記実施形態では、駆動体30はダミー部材66を有し、ケース40は往復動部材61とダミー部材66とを置換配置可能な空間が形成されているが、建具の左右勝手に対応可能とする必要がない場合には、ダミー部材66や前記空間を形成する構成を省略してもよい。
前記実施形態では、往復動部材61は非当接領域612を有しているが、面材を手動開閉可能とする必要がない場合には、非当接領域612を設けずギヤ部611を設けてもよい。
前記実施形態では、往復動部材61、第一回転部材62、第二回転部材64およびラック部材20は、互いに噛合して構成されているが、各構成同士に滑りなどが生じても面材移動装置10として動作し得る場合には、各構成は噛合せずに各移動力が摩擦伝達される構成とされていてもよい。
前記実施形態では、操作体50の軸体52はX軸方向に沿って配置されているが、これに限らず、例えばZ軸方向に沿って配置されていてもよい。
前記実施形態では、面材移動装置10は面材オープナーとして用いられているが、ラック部材20を開口閉鎖方向にスライド移動させる面材クローザーとして用いられてもよい。
前記実施形態では、建具として片引き戸1を説明したが、このほか、両引き戸であってもよく、テラス窓や上げ下げ窓の各種建具であってもよい。
【0018】
[発明のまとめ]
本発明の面材移動装置は、建物にスライド移動可能に設置される面材をスライド移動する面材移動装置であって、前記面材に固定される従動体と、前記従動体をスライド移動する駆動体とを備え、前記駆動体は、往復動可能な操作体と、前記操作体の往動および復動のうち一方の移動力をスライド移動力として前記従動体に伝達する一方、前記操作体の往動および復動のうち他方の移動力を前記従動体に対して非伝達とする伝達切換装置とを備えることを特徴とする。
本発明の面材移動装置によれば、伝達切換装置によって操作体の往動および復動に応じた移動力の従動体に対する伝達および非伝達を切り換えるので、操作体を繰り返し操作して従動体をスライド移動できる。このため、操作体の一回分の操作量を少なくしても、操作体を繰り返し操作して従動体をスライド移動することで、面材を所定位置までスライド移動できる。
また、操作体を繰り返し操作することで面材をスライド移動させるので、例えば操作体を一回操作して面材を所定位置までスライド移動させる構成と比べて、従動体に対する駆動体の配置の制約を軽減できる。
【0019】
本発明の面材移動装置では、前記伝達切換装置は、前記操作体に連結されると共に前記操作体の往復動によって直線的に往復動する往復動部材と、前記往復動部材に当接されると共に前記往復動部材の往復動が伝達されて正回転または逆回転する第一回転部材と、前記第一回転部材に連結されると共に前記第一回転部材から回転伝達される第二回転部材と、前記第二回転部材に取り付けられると共に前記第一回転部材の正回転および逆回転のうち一方向の回転を前記第二回転部材に対して伝達する一方、前記第一回転部材の正回転および逆回転のうち他方向の回転を前記第二回転部材に対して非伝達とする一方向クラッチとを備え、前記第二回転部材は、前記一方向の回転を前記スライド移動力として伝達可能に前記従動体に連結されていてもよい。
このような構成によれば、往復動部材の往動や復動に応じて第一回転部材が正回転や逆回転しても、一方向クラッチによって第一回転部材の正回転および逆回転のうち一方向の回転だけを、第二回転部材を介して従動体に回転伝達できる。これにより、操作体を繰り返し操作しても、前述したように一方向の回転だけをスライド移動力として従動体に繰り返し伝達でき、従動体が設置される面材を所定位置までスライド移動できる。
【0020】
本発明の面材移動装置では、前記第一回転部材および前記第二回転部材は共通の軸部材を有し、前記一方向クラッチは、前記第一回転部材または前記第二回転部材に装着され且つ前記軸部材を受ける一方向ベアリングで構成されていてもよい。
このような構成によれば、第一回転部材および第二回転部材を隣り合わせて配置し、加えて、前記軸部材を受ける一方向ベアリングで一方向クラッチを構成することで、軸部材を受ける軸受部以外の箇所に一方向クラッチを機械的に構成する場合と比べて、駆動体の小型化を図り得る。
【0021】
本発明の面材移動装置では、前記駆動体は、前記伝達切換装置を収容するケースを備え、前記往復動部材は、前記操作体の往動によって往動可能に且つ前記操作体の復動によって復動可能に前記ケースに保持され、前記軸部材は、前記ケースに保持され、前記伝達切換装置は、前記往復動部材に対して前記軸部材を挟む位置に配置され且つ前記操作体に連結されるダミー部材を備え、前記ケースは、前記ダミー部材を前記操作体の往動によって往動可能に且つ前記操作体の復動によって復動可能に保持し、前記ケースには、前記往復動部材と前記ダミー部材とを置換配置可能な空間が形成されていてもよい。
このような構成によれば、例えば往復動部材の往動で第一回転部材が正回転し且つ往復動部材の復動で第一回転部材が逆回転していた場合に、往復動部材とダミー部材とを置き換えることで、往復動部材の往動で第一回転部材が逆回転し且つ往復動部材の復動で第一回転部材が正回転することとなる。この置換状態で一方向ベアリングを逆向きに設置しなおすことで、伝達切換装置による従動体への駆動伝達が可能となる。このため、建具の左右勝手などに応じて面材移動装置を用いることができる。
【0022】
本発明の面材移動装置では、前記操作体は、操作開始位置から操作終了位置まで往動する一方、前記操作終了位置から前記操作開始位置まで復動する構成とされ、前記操作体は、前記操作終了位置から前記操作開始位置へ付勢する付勢部材を有し、前記往復動部材は、少なくとも前記操作体が前記操作開始位置に配置された状態で前記第一回転部材に対して往復動伝達不能に非当接とされる非当接領域を有していてもよい。
このような構成によれば、操作体を操作することによる往復動部材の往復動が第一回転部材に伝達されて前述したように一方向の回転がスライド移動力として従動体に伝達される一方、操作体が付勢部材に付勢されて復動し、操作終了位置から操作開始位置に復帰すると、往復動部材と第一回転部材とが非当接となるので、従動体が固定された面材は、駆動体によって移動規制されることなく手動によって所定位置までスライド移動できる。
【0023】
本発明の面材移動装置では、前記往復動部材および前記従動体はラック部材で構成され、前記第一回転部材および前記第二回転部材は歯車で構成され、前記往復動部材および前記第一回転部材同士が噛合され、前記第二回転部材および前記従動体同士が噛合されていてもよい。
このような構成によれば、例えば平坦な摩擦面同士が当接して各部材同士の移動力を摩擦伝達する場合と比べて、各部材同士の移動力を噛合伝達することで、より大きな移動力を伝達でき、各部材の小型化を図り得て駆動体をコンパクトに構成し得る。
また、各部材同士の滑りによる位置ズレを軽減でき、面材を操作体の操作に応じて精度よくスライド移動できる。
【0024】
本発明の面材移動装置では、前記操作体は、ベース部材と、前記ベース部材に対して軸体を介して回動可能に連結される操作部材とを備え、前記軸体は、前記面材のスライド移動方向に沿って配置されていてもよい。
このような構成によれば、操作体を回動させる方向が、面材のスライド移動方向に沿った軸回りの回動方向となるので、例えば面材の面外方向に沿った軸回りに操作体が回動する場合と比べて、面材に対面する操作者が足踏みなどによって操作体を操作し易い配置にできる。
【0025】
本発明の建具は、建物の開口に設置される枠体と、枠体内にスライド移動可能に配置されて前記開口を開閉する面材と、前述した本発明の面材移動装置とを備える。
本発明の建具によれば、前述した本発明の面材移動装置と同様の作用効果を発揮可能な建具を構成できる。
【0026】
本発明の建具では、前記面材移動装置の従動体は、前記面材の戸先部分を除いて、当該面材のスライド移動方向に延びて設置されていてもよい。
このような構成によれば、面材が戸尻側にスライド移動して建物の開口が全開状態となった際に面材の戸先部分に駆動体が配置されていると、駆動体は従動体から外れて駆動体の駆動は従動体に伝達されない状態となる。このため、操作体の操作によって面材移動装置に過度な負荷がかかることを抑制できる。
【符号の説明】
【0027】
1…片引き戸(建具)、10…面材移動装置、2…開口、20…ラック部材(従動体)、21…先端、22,611…ギヤ部、3…枠体、30…駆動体、31…上枠、32…下枠、33…縦枠、4…面材、40…ケース、41…ケース本体、42…前面部、43…側面部、44…蓋体、45,46…案内溝、4A…戸先、4B…戸尻、4C…戸先部分、5…固定面材、50…操作体、51…ベース部材、52…軸体、53…操作部材、54…コイルバネ(付勢部材)、55…連結軸、60…伝達切換装置、61…往復動部材、612…非当接領域、62…第一回転部材、63…軸部材、631…軸本体、632…回転軸体、632A…嵌合軸部、632B…回転軸部、64…第二回転部材、65…一方向ベアリング、66…ダミー部材、67…ネジ、68…連結板、P1…操作開始位置、P2…操作終了位置。