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特許7637052二重特異性抗CD28X抗CD22抗体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】二重特異性抗CD28X抗CD22抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20250219BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20250219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250219BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250219BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250219BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250219BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P35/02
A61K39/395 T
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021531128
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 US2019067173
(87)【国際公開番号】W WO2020132066
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】62/781,689
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー, アンドリュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スココス, ディミトリス
(72)【発明者】
【氏名】ウェイト, ジャネール
(72)【発明者】
【氏名】ウルマン, エリカ
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン, アイヌール
(72)【発明者】
【氏名】スミス, エリック
(72)【発明者】
【氏名】オルソン, カラ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ, ジョイス
(72)【発明者】
【氏名】ヤンコポーロス, ジョージ ディー.
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0079353(US,A1)
【文献】国際公開第2014/044793(WO,A2)
【文献】国際公開第2008/038587(WO,A1)
【文献】CANCER RESEARCH,1993年, 53,4310-4314
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-16/46
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
a)ヒトCD28と結合する第一抗原結合ドメイン(D1)であって、
前記第一抗原結合ドメイン(D1)が、重鎖可変領域(HCVR)と軽鎖可変領域(LCVR)とを含み、
前記HCVRが、配列番号28を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号30を含むHCDR2、及び、配列番号32を含むHCDR3を含み、
前記LCVRが、配列番号12を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号14を含むLCDR2、及び、配列番号16を含むLCDR3を含む、第一抗原結合ドメイン(D1)と、
b)標的腫瘍細胞上のヒトCD22と特異的に結合する第二抗原結合ドメイン(D2)であって、
前記第二抗原結合ドメイン(D2)が、重鎖可変領域(HCVR)と軽鎖可変領域(LCVR)とを含み、
前記HCVRが、配列番号4を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号6を含むHCDR2、及び、配列番号8を含むHCDR3を含み、
前記LCVRが、配列番号12を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号14を含むLCDR2、及び、配列番号16を含むLCDR3を含む、第二抗原結合ドメイン(D2)と
を含む、単離されたヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記第二抗原結合ドメイン(D2)が、配列番号57及び/又は配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むヒトCD22上のエピトープと結合する、請求項1に記載の単離されたヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメントが、25℃にて表面プラズモン共鳴によって測定して15nM未満のKでヒトCD22と結合する、請求項1又は2に記載の単離されたヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメントが、25℃にて表面プラズモン共鳴によって測定して60μM未満のKでMacaca fascicularis CD22と結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の単離されたヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメントが、25℃にて表面プラズモン共鳴によって測定して45μM未満のKでヒトCD28と結合する、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離されたヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメントが、インビトロFACS結合アッセイによって測定して、2.1×10-8M未満のEC50でヒトCD28を発現する細胞の表面と結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離されたヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメントが、インビトロFACS結合アッセイによって測定して、1.3×10-8M未満のEC50でヒトCD22を発現する細胞の表面と結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離されたヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメントが、抗CD20xCD3二重特異性抗体と併用した場合に共刺激効果を示す、請求項1~7のいずれか一項に記載の単離されたヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記共刺激効果が:T細胞を活性化すること、IL-2放出を誘導すること、ヒトPBMCにおいてCD25+上方調節を誘導すること、及びCD22発現細胞株にするヒトT細胞媒介性細胞傷害を増大させること、の一つ以上である、請求項8に記載の単離されたヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
a)配列番号26/10のアミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を含む第一抗原結合ドメインと、
b)配列番号2/10のアミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を含む第二抗原結合ドメインと、
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の単離されたヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメントと、薬剤的に許容される担体又は希釈剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載のヒト二重特異性抗体又はその抗原結合フラグメントをコード化するヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年12月19日に出願された米国特許仮出願第62/781,689号の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書中に組み込まれる。
配列表
【0002】
本願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる、配列表を含む。2019年12月16日に作成された前記ASCIIコピーは、118003_49220_SL.txtという名称で、104,353バイトのサイズである。
【0003】
本発明は、CD28及び標的分子、例えばCD22と結合する二重特異性抗原結合分子、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
CD28は、T細胞の表面上に発現されたI型膜貫通タンパク質であって、ホモ二量体として構築された単一の細胞外Ig-V様ドメインを有する。CD28は、CD80(B7.1)及びCD86(B7.2)タンパク質の受容体であり、抗原提示細胞(APC)上に発現されたCD80又はCD86によって活性化される。CD28のCD80又はCD86に対する結合によって、T細胞活性化及び生存にとって重要な刺激シグナルが提供される。T細胞受容体(TCR)に加えて、CD28によるT細胞刺激によって、様々なインターロイキンの産生のための強力なシグナルが提供される。CD28はまた、TCR活性化後にNFκB転写因子によって制御される経路などの細胞シグナルを増強する。CD28共シグナル(co-signal)は、T細胞分化、増殖、サイトカイン放出及び細胞死などの有効なT細胞活性化にとって重要である。
【0005】
抗CD28抗体は、T細胞の活性化に関連する治療目的について提案されてきた。抗CD28抗体の一つであるTGN1412(抗CD28スーパーアゴニスト)は2006年に臨床試験で使用された。6人の健常なボランティアにTGN1412(抗CD28スーパーアゴニスト)を0.1mg/kgの用量で静脈内投与した。2時間以内に、6人の患者すべてで著しい炎症反応(サイトカインストーム)があり、すべての患者が16時間以内に多臓器不全となった。対象をコルチコステロイドで治療し、サイトカインレベルは2~3日以内に正常レベルに戻った。第1相研究(CRSに関連する)における0.1mg/kgの開始用量は、カニクイザル「NOAEL」の50mg/kgの500倍に基づいていた(Suntharalingam,et al.,Cytokine Storm in a Phase 1 Trial of the anti-CD28 Monoclonal Antibody TGN1412,NEJM 355:1018-1028(2006))。残念なことに、TGN1412はサイトカインストームを誘導し、これは、カニクイザルにおける毒性研究又はエクスビボヒトPBMC研究によって予想されなかった。
【0006】
CD22(Siglec-2とも呼ばれる)は、Siglecファミリーのメンバーであり、α2,6シアル酸を特異的に認識し、Bリンパ球(B細胞)上で選択的に発現される膜貫通タンパク質である。
【0007】
CD22は、例えば、B細胞ホメオスタシス、B細胞生存及び遊走、TLR及びCD40シグナリングの減衰、及び細胞質領域における免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)のリン酸化によるSH2ドメイン含有ホスファターゼの動員を介してB細胞受容体(BCR)シグナリングを阻害すること、並びにB細胞と他の細胞型との間の接着の促進をはじめとする多くの本来の機能を有する。
【0008】
CD22は、発生の初期段階ではB細胞の表面で見いだされず、幹細胞でも発現されない。しかしながら、すべてのB細胞リンパ腫及び白血病の60~70%はCD22を発現する。
【0009】
B細胞リンパ腫及び白血病を治療するために抗CD22抗体が調査されてきた。しかしながら、モノクローナル抗体であるEpratuzumabは限られた成果しか上げられなかった。(Grant,et al.(2013)がん 119(21):10.1002/cncr.28299)
したがって、当該技術分野では改善された抗CD22-抗体が必要とされる。医薬組成物における使用について安全な抗CD28抗体も必要とされている。さらに、CD28及び標的抗原(例えば、CD22)の両方と結合する二重特異性抗原結合分子は、標的抗原を発現する細胞の、特異的標的化及びT細胞媒介性殺滅が望ましい治療状況において有用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Suntharalingam,et al.,Cytokine Storm in a Phase 1 Trial of the anti-CD28 Monoclonal Antibody TGN1412,NEJM 355:1018-1028(2006)
【文献】Grant,et al.(2013)がん 119(21):10.1002/cncr.28299
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の態様において、本発明は、CD28及び標的抗原と結合する二重特異性抗原結合分子を提供する。ある例示的実施形態によると、二重特異性抗原結合分子はCD28及びCD22と結合する;そのような二重特異性抗原結合分子は、本明細書中では「抗CD28/抗CD22二重特異性分子」とも称する。抗CD28/抗CD22二重特異性分子の抗CD22部分は、CD22(例えば、がん性B細胞)を発現するがん細胞の標的化に有用であり、二重特異性分子の抗CD28部分は、T細胞の活性化に有用である。がん細胞上のCD22及びT細胞上のCD28の同時結合は、例えば、T細胞のTCR活性化後、活性化されたT細胞による標的化がん細胞の選択性殺滅(細胞溶解)を促進する。したがって、本発明の抗CD28/抗CD22二重特異性分子は、とりわけ、CD22発現腫瘍によって引き起こされる疾患及び障害(例えば、B細胞増殖性障害、例えば、B細胞リンパ腫、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、辺縁帯リンパ腫)の治療に有用である。
【0012】
本発明のこの態様に係る二重特異性抗原結合分子は、ヒトCD28に特異的に結合する第一抗原結合ドメインと、CD22と特異的に結合する第二抗原結合ドメインとを含む。本発明は、各抗原結合ドメインが軽鎖可変領域(LCVR)と対になった重鎖可変領域(HCVR)を含む、抗CD28/抗CD22二重特異性分子(例えば、二重特異性抗体)を含む。本発明のある特定の例示的実施形態において、抗CD28抗原結合ドメイン及び抗CD22抗原結合ドメインは、各々、共通のLCVRと対になった、異なる別個のHCVRを含む。
【0013】
本発明は、CD28に特異的に結合する第一抗原結合ドメインが、表6に記載するようなHCVRアミノ酸配列のいずれかを含む、抗CD28/抗CD22二重特異性分子を提供する。CD28に特異的に結合する第一抗原結合ドメインは、表6に記載するようなLCVRアミノ酸配列のいずれかも含み得る。ある特定の実施形態によると、CD28に特異的に結合する第一抗原結合ドメインは、表6に記載するようなHCVR/LCVRアミノ酸配列対のいずれかを含む。本発明はまた、抗CD28/抗CD22二重特異性分子も提供し、ここで、CD28に特異的に結合する第一抗原結合ドメインは、表6に記載するような重鎖CDR1-CDR2-CDR3アミノ酸配列のいずれか、及び/又は表6に記載するような軽鎖CDR1-CDR2-CDR3アミノ酸配列のいずれかを含む。
【0014】
ある特定の実施形態によると、本発明は、CD28に特異的に結合する第一抗原結合ドメインが、配列番号28及び26からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、抗CD28/抗CD22二重特異性分子を提供する。
【0015】
本発明はまた、CD28に特異的に結合する第一抗原結合ドメインが、配列番号10のアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似した配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、抗CD28/抗CD22二重特異性分子も提供する。
【0016】
本発明はまた、CD28に特異的に結合する第一抗原結合が、配列番号28/10及び26/10からなる群から選択されるHCVR及びLCVR(HCVR/LCVR)アミノ酸配列対を含む、抗CD28/抗CD22二重特異性分子も提供する。
【0017】
本発明はまた、CD28に特異的に結合する第一抗原結合ドメインが、配列番号32のアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それと実質的に類似した配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン;及び配列番号16のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似した配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメインを含む、抗CD28/抗CD22二重特異性分子も提供する。
【0018】
ある特定の実施形態において、CD28と特異的に結合する第一抗原結合ドメインは、配列番号32/16のHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。
【0019】
本発明はまた、CD28に特異的に結合する第一抗原結合ドメインが、配列番号28のアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的に類似した配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン;配列番号30のアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的に類似した配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン;配列番号12のアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的に類似した配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン;及び配列番号14のアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的に類似した配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)ドメインを含む、抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子も提供する。
【0020】
本発明の抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子のある特定の非限定例としては、それぞれ:配列番号28-30-32-12-14-16のアミノ酸配列を有する、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含むCD28に特異的に結合する第一抗原結合ドメインが挙げられる。
【0021】
本発明はまた、CD22と特異的に結合する第二抗原結合ドメインが、配列番号2及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的に類似した配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、抗CD28/抗CD22二重特異性分子も提供する。
【0022】
本発明はまた、CD22と特異的に結合する第二抗原結合ドメインが、配列番号10から選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的に類似した配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、抗CD28/抗CD22二重特異性分子も提供する。
【0023】
本発明はまた、CD22と特異的に結合する第二抗原結合ドメインが、配列番号2/10及び18/10からなる群から選択されるHCVR及びLCVR(HCVR/LCVR)アミノ酸配列対を含む、抗CD28/抗CD22二重特異性分子も提供する。
【0024】
本発明はまた、CD22と特異的に結合する第二抗原結合ドメインが、配列番号8及び24からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらと実質的に類似した配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン;及び配列番号16から選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的に類似した配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメインを含む、抗CD28/抗CD22二重特異性分子も提供する。
【0025】
ある特定の実施形態において、CD22と特異的に結合する第二抗原結合ドメインは、配列番号8/16及び24/16からなる群から選択されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。
【0026】
本発明はまた、CD22と特異的に結合する第二抗原結合ドメインが、配列番号4及び20からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的に類似した配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン;配列番号6及び22からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的に類似した配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン;配列番号12のアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的に類似した配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン;及び配列番号14のアミノ酸配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それらの実質的に類似した配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)ドメインを含む、抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子も提供する。
【0027】
本発明の抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子のある特定の非限定例としては、それぞれ:配列番号4-6-8-12-14-16及び20-22-24-12-14-16からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む、CD22と特異的に結合する第二抗原結合ドメインが挙げられる。
【0028】
関連する実施形態において、本発明は、CD22と特異的に結合する第二抗原結合ドメインが、配列番号2/10及び18/10からなる群から選択される重及び軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)配列内に含まれる重及び軽鎖CDRドメインを含む、抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子を含む。
【0029】
別の態様において、本発明は、本明細書中の表7で記載するようなポリヌクレオチド配列を含む核酸分子、並びに表7で記載するようなポリヌクレオチド配列の二つ以上を、その任意の機能的組み合わせ又は配置で含む核酸分子を含む、本明細書中で開示する抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子のHCVR、LCVR又はCDR配列のいずれかをコード化する核酸分子を提供する。本発明の核酸を有する組換え発現ベクター、及びそのようなベクターが導入された宿主細胞もまた、抗体の産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養し、そして産生された抗体を回収することによって抗体を産生する方法と同様に、本発明に含まれる。
【0030】
本発明は、CD28と特異的に結合する前記抗原結合ドメインのいずれかが、CD22と特異的に結合して、前記抗原結合ドメインのいずれかと、組み合わされるか、接続されるか、又は他の方法で結合されてCD28及びCD22と結合する二重特異性抗原結合分子を形成する、抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子を含む。
【0031】
本発明は、修飾されたグリコシル化パターンを有する抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子を含む。いくつかの用途において、望ましくないグリコシル化部位、又はオリゴ糖鎖上に存在するフコース部分が欠失した抗体を除去して、例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)機能を増加させる修飾が有用であり得る,(Shield et al. (2002) JBC 277:26733を参照)。他の用途では、補体依存性細胞傷害(CDC)を修飾するためにガラクトシル化の修飾を行うことができる。
【0032】
別の態様において、本発明は、本明細書中で開示する抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子と、薬剤的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。関連する態様において、本発明は、抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子と第二の治療薬との組み合わせである組成物を特徴とする。一実施形態において、第二の治療薬は、有利には、抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子と組み合わせられる任意の薬剤である。抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子と有利に組み合わせられる薬剤の例は、本明細書中の他の箇所で詳細に議論する。
【0033】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子を使用するCD22を発現するがん細胞の標的化/殺滅のための治療法であって、治療上有効な量の、本発明の抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む治療法を提供する。
【0034】
本発明はまた、CD22発現に関連するか又はCD22発現によって引き起こされる疾患又は障害の治療用薬剤の製造における本発明の抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子の使用も含む。
【0035】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子を使用した、CD22を発現するがん細胞の標的化/殺滅のための治療法であって、抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子が、CD3と結合する他の抗腫瘍二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/抗CD20抗体と組み合わせられた抗CD28/抗CD22)と組み合わせられる治療法を提供する。
【0036】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子を使用して、CD22を発現するがん細胞を標的化/殺滅するための治療法を提供し、ここで、抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子は、PD-1、PD-L1又はCTLA-4を標的とするチェックポイント阻害剤と組み合わされている(例えば、抗PD-1抗体と組み合わせた抗CD28/抗CD-22)。例えば、ある特定の実施形態において、本発明の抗CD28/抗CD22抗体を、PD-1を標的とする薬剤、例えば、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、又はセミプリマブ(Libtayo(登録商標))と組み合わせることができる。ある特定の実施形態において、本発明の抗CD28/抗CD22抗体は、PD-L1を標的とする薬剤、例えば、Atezolizumab(Tecentriq(登録商標))Avelumab(Bavencio(登録商標))、又はDurvalumab(Imfinzi(登録商標))と組み合わせることができる。ある特定の実施形態において、本発明の抗CD28/抗CD22抗体は、CTLA-4を標的とする薬剤、例えば、Ipilimumab(Yervoy(登録商標))と組み合わせることができる。
【0037】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子を使用して、CD22を発現するがん細胞を標的化/殺滅するための治療法を提供し、ここで、抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子は、CD3と結合する他の抗腫瘍二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/抗CD20二重特異性抗体、例えば、REGN1979(抗CD20アームが配列番号1242/1258のHCVR/LCVRアミノ酸対を含み、抗CD3アームが配列番号1250/1258のアミノ酸対を含む、米国特許第9,657,102号を参照)と組み合わされた抗CD28/抗CD22)及び/又はPD-1、PD-L1又はCTLA-4(例えば、抗PD-1抗体と組み合わせられた抗CD28/抗CD22)を標的とするチェックポイント阻害剤と組み合わされている。例えば、ある特定の実施形態において、本発明の抗CD28/抗CD22抗体は、PD-1を標的とする薬剤、例えば、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、又はセミプリマブ(Libtayo(登録商標)、例えば、セミプリマブが配列番号162/170)のHCVR/LCVRアミノ酸対を含む、米国特許第9,987,500号を参照)と組み合わせることができる。ある特定の実施形態において、本発明の抗CD28/抗CD22抗体は、PD-L1を標的とする薬剤、例えば、Atezolizumab(Tecentriq(登録商標))、Avelumab (Bavencio(登録商標))、又はDurvalumab(Imfinzi(登録商標))と組み合わせることができる。ある特定の実施形態において、本発明の抗CD28/抗CD22抗体は、CTLAを標的とする薬剤、例えば、Ipilimumab(Yervoy(登録商標))と組み合わせることができる。
【0038】
他の実施形態は、以下の詳細な説明の再検討から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、抗CD28/抗CD22二重特異性抗体の、ヒトCD4+CD28を発現するT細胞及び細胞表面上でヒトCD22を発現する標的細胞との結合を表す1組のグラフである。
図2図2A及び2Bは、抗CD28/抗CD22二重特異性抗体が、一次T細胞刺激及びCD22標的発現の存在下でルシフェラーゼ産生の増加を示すことを表す一組のグラフである。図2Aは、ルシフェラーゼ産生によって評価される、一定の200pM REGN1945(hIgG4アイソタイプ陰性対照)に加えてHEK293/hCD20、HEK293/hCD20/hCD22、又はRaji/CD80及びCD86陰性細胞とともに同時インキュベートした操作されたレポータT細胞の活性化を表す一組のグラフである。図2Bは、ルシフェラーゼ産生によって評価される、一定の200pM REGN2281(抗CD20x抗CD3)に加えてHEK293/hCD20、HEK293/hCD20/hCD22、又はRaji/CD80及びCD86陰性細胞とともに同時インキュベートした操作されたレポータT細胞の活性化を表す一組のグラフである。
図3図3A及び3Bは、抗CD28/抗CD22二重特異性抗体が、一次T細胞刺激及びCD22標的発現の存在下でIL-2産生を増大させることを表す一組のグラフである。さらに具体的には、図3Aは、IL-2産生によって評価される、一定の2nM REGN1945(hIgG4アイソタイプ対照)の存在下でのHEK293/hCD20、HEK293/hCD20/hCD22、又はRaji/CD80及びCD86陰性細胞とともに同時インキュベートしたCD4T細胞の活性化を表す一組のグラフである。図3Bは、IL-2産生によって評価される、一定の2nM REGN2281(抗CD20x抗CD3)の存在下でHEK293/hCD20、HEK293/hCD20/hCD22、又はRaji/CD80 及び CD86陰性細胞とともに同時インキュベートされたCD4T細胞の活性化を表す一組のグラフである。
図4図4は、REGN5837とセミプリマブとの組み合わせが、PD-L1を発現するように操作された細胞において、REGN5837治療単独を上回ってIL-2放出を増強することを示す一組のグラフである。
図5A図5Aは、REGN5837とセミプリマブとの組み合わせが、PD-L1を発現するように操作されたNALM6細胞の存在下でIL-2放出を増強することを示す一組のグラフである。
図5B図5Bは、REGN5837とセミプリマブとの組み合わせが、PD-L1を発現するように操作されたRAJI細胞において、REGN5837治療単独を上回ってIL-2放出を増強することを示す一組のグラフである。
図6図6は、REGN1979(抗CD20x抗CD3)の存在下でREGN5837を用いたNALM-6-Luc腫瘍を有するNSGマウスの治療が、有意な腫瘍抑制と関連することを示すグラフである。簡単に説明すると、NSGマウス(1群あたりn=6~9)にヒトPBMCをグラフトし、次いでNALM-6-lucB細胞白血病細胞をグラフト後12日(第0日)に移植した。マウスに4mg/kgのREGN5837+0.04mg/kgのREGN1979(ハッチング付き円)、0.4mg/kgのREGN5837+0.04mg/kgのREGN1979(閉じた上向きの三角)、0.04mg/kgのREGN5837+0.04mg/kgのREGN1979(菱形)、4mg/kgの非TAAxCD28+0.04mg/kgのREGN1979(正方形)、4mg/kgのREGN5837+0.4mg/kgの非TAAxCD3(白丸)、又は4mg/kgの非TAAxCD28+0.4mg/kgの非TAAxCD3(黒の逆三角形)を移植後8日、15日、及び22日(矢印)で投与した。腫瘍成長を、移植後6、10、14、17、20、及び23日の腫瘍体積の生物発画像化によりモニタリングした。総合データを群平均±SEMとして表す。統計的有意性は、二元配置ANOVAとTukeyの事後試験を用いて決定した。以下の記号を使用して、非TAAxCD28+非TAAxCD3対照に対する統計的有意性を示した:*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。
図7図7A~7Cは、REGN1979がヒトT細胞を活性化して用量に依存してNalm6細胞を殺滅させたことを示すグラフである。さらに具体的には、図7Aは、表示した抗体の存在下でのNalm6細胞の%生存を表すグラフである。図7Bは、表示した抗体の存在下でのCD25を発現する(CD25+)CD8+細胞のパーセントを表すグラフである。図7Cは、表示した抗体の存在下でのCellTraceバイオレット希釈によって評価したCD25+CD8+細胞の増殖を表すグラフである。
図8図8A、8B及び8Cは、REGN1979が、ヒトT細胞を活性化し、WSU-DLCL2細胞を用量に依存して殺滅されることを示すグラフである。さらに具体的には、図8Aは、表示した抗体の存在下でのWSU-DLCL2細胞の%生存を表すグラフである。図8Bは、表示した抗体の存在下でCD25を発現する(CD25+)CD8+細胞のパーセントを表すグラフである。図8Cは、%分裂率で表した、表示した抗体の存在下でのCD8+細胞の増殖を表すグラフである。
図9図9は、ヒトPBMC及びWSU-DLCL2細胞を用いたアッセイにおいて、REGN1979が、ヒトサイトカイン、IL-2、IL-4、IL-6、及びIL-10の放出を誘導したことを示すグラフである。REGN1979で観察されるサイトカイン放出は、REGN1979単独によって誘導されたサイトカイン放出と比較して、固定濃度のCD22XCD28の存在下で増強された。
図10図10A~10Eは、REGN1979がヒトT細胞を活性化し、用量依存的にNHLを枯渇させたことを示すグラフである。固定濃度のCD22xCD28二重特異性抗体をREGN1979に添加することで、REGN1979の細胞傷害効力(EC50)が、1アームCD28対照抗体又は無共刺激対照を伴うREGN1979と比較した場合に2.3及び3.5倍増強した。REGN1979によって媒介される、観察された標的細胞溶解は、それぞれ、CD8+及びCD4+細胞又はCellTraceバイオレット希釈によって測定して、T細胞活性化及び増殖に関するCD25上方調節と関連していた。さらに具体的には、図10Aは、表示した抗体の存在下で患者骨髄からのNHL細胞の%生存を表すグラフである。図10Bは、表示した抗体の存在下でCD25を発現する(CD25+)CD8+細胞のパーセントを表すグラフである。図10Cは、表示した抗体の存在下でCellTraceバイオレット希釈によって評価したCD8+細胞の増殖を表すグラフである。図10Dは、表示した抗体の存在下でCD25(CD25+)CD4+細胞のパーセントを表すグラフである。図10Eは、表示した抗体の存在下でCellTraceバイオレット希釈によって評価したCD4+細胞の増殖を表すグラフである。
図11図11A~11Eは、REGN5837が、REGN1979媒介性細胞傷害、CD25の細胞表面発現、及びT細胞増殖の可能性を濃度に依存して増強することを示すグラフである。簡単に説明すると、WSU-DLCL2細胞を、標的細胞対PBMC比1:5のリンパ球を多く含むヒトPBMCとともに、そして単剤として(すなわち、REGN5837無し)又は固定濃度のREGN5837(0.01~15μg/mLの範囲)の存在下、濃度(4.8fM~10nM)の範囲の抗CD20xCD3(REGN1979)とともに、72時間37℃にてインキュベートした。REGN1979を欠いた条件は、表示された濃度のREGN5837のみを含み、0.04pMとしてプロットする。生存細胞は、生/死細胞染色を用いてフローサイトメトリによって検出された(11A)。Violet Cell Tracker色素並びにCD2、CD4、CD8、及びCD25に対するフルオロフォア標識抗体のフェノタイピングカクテルを使用して、T細胞活性化(CD25発現として測定される;11B、11D)を、そしてフローサイトメトリによってCD4及びCD8T細胞増殖(11C、11E)を検出した。 さらに具体的には、図11Aは、死細胞のパーセントと表示された濃度のREGN5837を表すグラフである。図11Bは、CD25+CD4+細胞のパーセントと表示された濃度のREGN5837を表すグラフである。図11Cは、表示された濃度のREGN5837を用いたCellTraceバイオレット希釈によって評価されたCD4+細胞の増殖を表すグラフである。図11Dは、CD25+CD8+細胞のパーセントを表すグラフである。図11Eは、表示された濃度のREGN5837を用いたCellTraceバイオレット希釈によって評価されたCD8+細胞の増殖を表すグラフである。
図12図12A~12Gは、REGN5837が、WSU-DLCL2B細胞リンパ腫細胞の存在下で、濃度に依存して、ヒトT細胞からのREGN1979媒介性サイトカイン放出の可能性及び最大レベルを増強することを示すグラフである。簡単に説明すると、WSU-DLCL2細胞を標的細胞対PBMC比1:5でリンパ球を多く含むヒトPBMCと、単剤として(すなわち、REGN5837無し)又は固定濃度のREGN5837の存在下(0.01~15μg/mLの範囲)濃度範囲(4.8fM~10nM)の抗CD20xCD3(REGN1979)と、72時間37℃にてインキュベートした。REGN1979を欠いた状態はREGN5837のみを表示された濃度で含み、0.04pMとしてプロットする。上清を、(12A)IL-2、(12B)IL-4、(12C)IL-6、(12D)IL-10、(12E)TNF-α、(12F)IFN-γ、及び(12G)IL-17αのサイトカイン放出について、BDサイトメトリックビーズアレイヒトTh1/Th2/Th17サイトカインキットを使用して評価した。 さらに具体的には、図12Aは、WSU-DLCL2細胞と表示された濃度のREGN5837の存在下でヒトT細胞から放出されたIL-2のレベルを表すグラフである。図12Bは、WSU-DLCL2細胞WSU-DLCL2細胞と表示された濃度のREGN5837の存在下でヒトT細胞から放出されたIL-4のレベルを表すグラフである。図12Cは、WSU-DLCL2細胞WSU-DLCL2細胞と表示された濃度のREGN5837の存在下でヒトT細胞から放出されたIL-6のレベルを表すグラフである。図12Dは、WSU-DLCL2細胞WSU-DLCL2細胞と表示された濃度のREGN5837の存在下でヒトT細胞から放出されたIL-10のレベルを表すグラフである。図12Eは、WSU-DLCL2細胞WSU-DLCL2細胞と表示された濃度のREGN5837の存在下でヒトT細胞から放出されたTNF-αのレベルを表すグラフである。図12Fは、WSU-DLCL2細胞WSU-DLCL2細胞と表示された濃度のREGN5837の存在下でヒトT細胞から放出されたIFN-γのレベルを表すグラフである。図12Gは、WSU-DLCL2細胞WSU-DLCL2細胞と表示された濃度のREGN5837の存在下でヒトT細胞から放出されたIL-17αのレベルを表すグラフである。
図13図13A及び13Bは、0.4又は4mg/kgのREGN1979の存在下でREGN5837を用いたWSU-DLCL2腫瘍を有するNSGマウスの治療は、有意な腫瘍抑制と関連することを示すグラフである。簡単に説明すると、メスのNSGマウス(群あたりn=6~7)にWSU-DLCL2B細胞リンパ腫細胞及びヒトPBMCの1:1混合物を移植した(第0日)。移植後1、8、及び15日(矢印)に、1mg/kgのREGN5837及び0.4mg/kg(13A)又は4mg/kg(13B)のREGN1979(又は非架橋対照)の組み合わせをマウスに投与した。腫瘍成長は、移植後7、10、14、16、28、31、35、38、43、46、49、53、57、及び63日に、キャリパー測定によってモニタリングした。総合データは群平均±SEMとして表す。統計的有意性は、二元配置ANOVAとTukeyの事後試験を用いて決定した。以下の記号を使用して群間の統計的有意性を示した:*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001。星印は、REGN1979単剤療法とアイソタイプ対照との間の統計的有意性を示し、ハッシュマークは、REGN5837とREGN1979の組み合わせと、アイソタイプ対照との間の有意性を示し、カレットは、REGN1979単剤療法と、REGN5837とREGN1979の組み合わせとの間の有意差を示す。 さらに具体的には、図13Aは、1mg/kgのREGN5837及び0.4mg/kgのREGN1979(又は非架橋対照、非TAAxCD3)を投与したマウスにおける腫瘍成長を表すグラフである。図13Bは、1mg/kg REGN5837及び4mg/kg(又は非架橋対照、非TAAxCD3)を投与したマウスにおける腫瘍成長を表すグラフである。
図14図14は、WSU-DLCL2腫瘍を有するNSGマウスの有効量以下の量(sub-efficacious dose)のREGN1979の存在下、REGN5837での治療は、REGN5837又はREGN1979単剤療法よりも有意に高い生存率と関連することを示すグラフである。簡単に説明すると、メスのNSGマウス(群あたりn=6~7)にWSU-DLCL2B細胞リンパ腫細胞及びヒトPBMCの1:1混合物(第0日)を移植した。マウスにREGN5837及びREGN1979の組み合わせ又は対照を移植後1、8、及び15日(矢印)を投与した。統計的有意性はMantel-Cox試験を使用して決定した。群間の統計的有意性を示すために以下の記号を使用した:*、p<0.05;***、p<0.001。カレットはアイソタイプ対照と比較した統計的有意性を示し、星印は0.4mg/kgのREGN1979単剤療法と比較した有意性を示し、ハッシュマークは4mg/kgのREGN1979単剤療法と比較した有意性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を説明する前に、記載された特定の方法及び実験条件は変わり得るので、本発明は、そのような方法及び条件に限定されないと理解すべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書中で使用する専門用語は特定の実施形態を説明するためだけであり、限定的ではないことも理解すべきである。
【0041】
別段の定めのない限り、本明細書中で使用するすべての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書中で使用する場合、「約」という語は、特定の記載された数値に関して使用される場合、値が記載された値から1%以下で変わり得ることを意味する。例えば、本明細書中で使用する場合、「約100」という表現は、99及び101と、その間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0042】
本明細書中に記載するものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験で使用することができるが、好ましい方法及び材料をここで記載する。本明細書で言及するすべての特許、出願及び非特許刊行物は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0043】
定義
「CD28」という表現は、本明細書中で使用する場合、共刺激受容体としてT細胞上に発現される抗原を指す。ヒトCD28は、配列番号74に記載されているアミノ酸配列を含み、及び/又はNCBI受入番号NP_006130.1に記載されるようなアミノ酸配列を有する。本明細書におけるタンパク質、ポリペプチド及びタンパク質フラグメントについてのすべての言及は、非ヒト種由来であると明示的に指定されていない限り、各タンパク質、ポリペプチド又はタンパク質フラグメントのヒトバージョンを指すことが意図される。したがって、「CD28」という表現は、例えば、「マウスCD28」、「サルCD28」など、非ヒト種由来であると特定されていない限り、ヒトCD28を意味する。
【0044】
本明細書中で使用する場合、「CD28と結合する抗体」又は「抗CD28抗体」には、CD28を特異的に認識する抗体及びその抗原結合フラグメント、並びに二量体CD28を特異的に認識する抗体及びその抗原結合フラグメントが含まれる。本発明の抗体及び抗原結合フラグメントは、可溶性CD28及び/又は細胞表面発現CD28と結合し得る。可溶性CD28としては、天然のCD28タンパク質並びに組換えCD28タンパク質変異体、例えば、単量体及び二量体CD28構築物などが挙げられ、これらは膜貫通ドメインが欠けているか、さもなければ細胞膜と結合していない。
【0045】
本明細書中で使用する場合、「細胞表面発現CD28」という表現は、CD28タンパク質の少なくとも一部が細胞膜の細胞外側に露出し、抗体の抗原結合部分にアクセス可能であるように、インビトロ又はインビボで細胞の表面上に発現されている一つ以上のCD28タンパク質を意味する。「細胞表面発現CD28」には、細胞の膜における機能的T細胞共刺激受容体の文脈に含まれるCD28タンパク質が含まれる。「細胞表面発現CD28」という表現には、細胞の表面上でホモ二量体の一部として発現されたCD28タンパク質が含まれる。「細胞表面発現CD28」は、通常、CD28タンパク質を発現する細胞の表面上で発現されたCD28タンパク質を含み得るか、又はこれらからなり得る。あるいは、「細胞表面発現CD28」は、通常、その表面上でヒトCD28を発現しないが、その表面上でCD28を発現するように人工的に操作された、細胞の表面上で発現されたCD28タンパク質を含み得るか、又はこれらからなり得る。
【0046】
本明細書中で使用する場合、「抗CD28抗体」という表現は、単一特異性を有する一価抗体、並びにCD28に結合する第一アームと第二(標的)抗原に結合する第二アームとを含む二重特異性抗体の両方を含み、ここで、抗CD28アームは、本明細書中の表1に記載したHCVR/LCVR又はCDR配列のいずれかを含む。抗CD28二重特異性抗体の例は本明細書中の別の箇所で記載する。「抗原結合分子」という語は、例えば、二重特異性抗体を含む、抗体及び抗体の抗原結合フラグメントを含む。
【0047】
「CD22」という語は、本明細書中で使用する場合、非ヒト種由来(例えば、「マウスCD22」、「サルCD22」など)であると特定されていない限り、ヒトCD22タンパク質を指す。ヒトCD22タンパク質は、受入番号CAA42006で記載されるアミノ酸配列を有する。myc mycヘキサヒスチジンタグ(配列番号60として開示される「ヘキサヒスチジン」)を有する組換えヒトCD22ecto(D20-R687)の配列は、受入番号NP_001762.2で、また配列番号50として示される。hCD22ectoドメイン(D20-R687).hFcは、R&D Systems、Catalog#1968-SL-050から購入することもできる。
【0048】
本明細書中で使用する場合、「CD22と結合する抗体」又は「抗CD22抗体」は、可溶性CD22及び/又は細胞表面発現CD22と結合し得る抗体及びその抗原結合フラグメントを含む。可溶性CD22は、天然CD22タンパク質並びに組換えCD22タンパク質変異体、例えば、膜貫通ドメインを欠いているか又は細胞膜と結合していないCD22構築物を含む。
【0049】
本明細書中で使用する場合、「抗CD22抗体」という表現は、単一特異性を有する一価抗体、並びにCD22に結合する第一アームと第二(標的)抗原に結合する第二アームとを含む二重特異性抗体の両方を含み、ここで、抗CD22アームは、本明細書中の表1に記載したHCVR/LCVR又はCDR配列のいずれかを含む。抗CD22二重特異性抗体の例は本明細書中の別の箇所で記載する。「抗原結合分子」という語は、例えば、二重特異性抗体を含む、抗体及び抗体の抗原結合フラグメントを含む。
【0050】
「抗原結合分子」という語は、例えば、二重特異性抗体を含む、抗体及び抗体の抗原結合フラグメントも含む。
【0051】
「抗体」という語は、本明細書中で使用する場合、特定の抗原(例えば、CD28)と特異的に結合するか、又は相互作用する少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)を含む、任意の抗原結合分子又は分子複合体を意味する。「抗体」という語は、ジスルフィド結合によって相互接続した二つの重(H)鎖及び二つの軽(L)鎖である四つのポリペプチド鎖を含むイムノグロブリン分子、並びにその多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中ではHCVR又はVHと略記する)と、重鎖定常領域とを含む。重鎖定常領域は、C1、C2及びC3の三つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中ではLCVR又はVLと略記する)と軽鎖定常領域とを含む。軽鎖定常領域は一つのドメイン(C1)を含む。V及びV領域は、さらに保存された、フレームワーク領域(FR)という名称の領域が組み込まれている、相補性決定領域(CDR)という名称の超可変性領域にさらに細分することができる。各V及びVは、アミノ末端からカルボキシ末端へ向かって:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配列された、三つのCDRと四つのFRとから構成される。本発明の異なる実施形態において、抗CD28抗体及び/又は抗CD22抗体(又はそれらの抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよいし、又は自然に若しくは人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、二つ以上のCDRのサイドバイサイド分析に基づいて定義することができる。
【0052】
「抗体」という語は、本明細書中で使用する場合、完全抗体分子の抗原結合フラグメントも含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などの語は、本明細書中で使用する場合、任意の天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成の、又は遺伝子操作されたポリペプチド又は糖タンパク質であって、抗原と特異的に結合して複合体を形成するものを含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば完全抗体分子から、任意の好適な標準的技術、例えば、抗体可変及び任意選択的に定常ドメインをコード化するDNAの操作及び発現を含むタンパク質消化又は遺伝子組換え操作技術を用いて、誘導することができる。そのようなDNAは公知である、及び/又は、例えば、商業的供給源、DNAライブラリ(例えば、ファージ-抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能である、又は合成することができる。DNAは、配列させ、化学的に若しくは分子生物学技術を用いることによって操作して、例えば、一つ以上の可変及び/又は定常ドメインを好適な立体配置に配置するか、又はコドンを導入するか、システイン残基を創出するか、アミノ酸を修飾、添加若しくは欠失させるなどが可能である。
【0053】
抗原結合フラグメントの非限定例としては:(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;及び(vii)抗体(例えば、単離された相補性決定領域(CDR)、例えばCDR3ペプチド)、又は拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチドの超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が挙げられる。他の操作された分子、例えばドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トライアオボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール免疫医薬(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメインも、本明細書中で使用する「抗原結合フラグメント」という表現に包含される。
【0054】
抗体の抗原結合は、典型的には、少なくとも一つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズアミノ酸組成のものであってよく、概して、一つ以上のフレームワーク配列に隣接するか、又はフレーム内にある少なくとも一つのCDRを含む。Vドメインと結合したVドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、V及びVドメインは、任意の好適な配置で互いに相対的に配置することができる。例えば、可変領域は、二量体であってよく、V-V、V-V又はV-V二量体を含んでもよい。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体V又はVドメインを含み得る。
【0055】
ある特定の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも一つ定常ドメインと共有結合した少なくとも一つの可変ドメインを含み得る。本発明の抗体の抗原結合フラグメント内で見いだされ得る可変ドメイン及び定常ドメインの非限定的例示的立体配置としては:(i)V-C1;(ii)V-C2;(iii)V-C3;(iv)V-C1-C2;(v)V-C1-C2-C3;(vi)V-C2-C3;(vii)V-C;(viii)V-C1;(ix)V-C2;(x)V-C3;(xi)V-C1-C2;(xii)V-C1-C2-C3;(xiii)V-C2-C3;及び(xiv)V-Cが挙げられる。前記例示的立体配置のいずれかを含む可変ドメイン及び定常ドメインの任意の立体配置において、可変ドメイン及び定常ドメインは、互いに直接連結することができるか、又は完全若しくは部分的ヒンジ若しくはリンカー領域によって連結することができる。ヒンジ領域は、少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60又はそれ以上)のアミノ酸からなっていてもよく、これにより単一のポリペプチド分子中の隣接する可変及び/又は定常ドメイン間の柔軟性又は半柔軟性リンケージが得られる。さらに、抗原結合フラグメントは、互いに、及び/又は一つ以上の単量体V若しくはVドメインと(例えば、ジスルフィド結合(複数可)により)非共有結合した、前記の可変及び定常ドメイン立体配置のいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を含み得る。
【0056】
完全抗体分子と同様に、抗原結合フラグメントは、単一特異性又は多特異性(例えば、二重特異性)であってよい。抗体の多特異性抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも二つの異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは、別個の抗原と、又は同じ抗原上の異なるエピトープと、特異的に結合することができる。本明細書中で開示する例示的二重特異性抗体フォーマットをはじめとする任意の多特異性抗体フォーマットを、当該技術分野で利用可能なルーチン技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合フラグメントの関連での使用に適応させることができる。
【0057】
本発明の抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)により機能し得る。「補体依存性細胞傷害」(CDC)は、補体の存在下で本発明の抗体による抗原発現細胞の溶解を指す。「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」(ADCC)は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異性細胞傷害性(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞上の結合抗体を認識し、それによって標的細胞の溶解に至る細胞媒介性反応を指す。CDC及びADCCは、周知であり、当該技術分野で利用可能なアッセイを使用して測定することができる。(例えば、米国特許第5,500,362号及び同第5,821,337号、並びにClynes et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656を参照)。抗体の定常領域は、抗体が補体を固定する能力において重要であり、細胞依存性細胞傷害を媒介する。したがって、抗体のアイソタイプは、抗体にとって細胞傷害性を媒介することが望ましいか否かに基づいて選択することができる。
【0058】
本発明のある特定の実施形態によると、本発明の抗CD28抗体及び/又は抗CD22抗体(単一特異性又は二重特異性)はヒト抗体である。「ヒト抗体」という語は、本明細書中で使用する場合、ヒト生殖系列イムノグロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR及び特定のCDR3において、ヒト生殖系列イムノグロブリン配列によってコード化されないアミノ酸残基(例えば、インビトロのランダム若しくは部位特異的変異誘発によって、又はインビボの体細胞突然変異によって、導入された突然変異)を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という語は、本明細書中で使用する場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフトされた抗体を含むことを意図しない。
【0059】
本発明の抗体は、いくつかの実施形態では、組換えヒト抗体であってよい。「組換えヒト抗体」という語は、本明細書中で使用する場合、宿主細胞にされた組換え発現トランスフェクトベクターを用いて発現された抗体(さらに後述する)、組換え型コンナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体(さらに後述する)、ヒトイムノグロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照)又はヒトイムノグロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製、発現、創出又は単離された抗体などの組換え手段によって、調製、発現、創出又は単離されたすべてのヒト抗体を含むことが意図される。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列イムノグロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体をインビトロ変異誘発(又は、ヒトIg配列についてトランスジェニックである動物を使用する場合は、インビボ体細胞変異誘発)に供し、したがって、組換え体抗体のV及びV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列V及びV配列に由来し関連する一方で、天然では、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に存在しない場合がある配列である。
【0060】
ヒト抗体は、ヒンジ不均一性と関連する二つの形態で存在し得る。一形態では、イムノグロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって結合している、約150~160kDaの安定な四本鎖構築物を含む。第二の形態では、二量体は、鎖間ジスルフィド結合によって連結されず、共有結合した軽及び重鎖(半抗体)から構成された、約75~80kDaの分子が形成される。これらの形態は、親和性精製後でさえも、分離するのが非常に困難であった。
【0061】
様々なインタクトIgGアイソタイプにおける第二の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプと関連する構造差によるが、これに限定されるものではない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、第二の形態の出現(Angal et al.(1993)Molecular Immunology 30:105)を、ヒトIgG1ヒンジを用いて典型的に観察されるレベルまで有意に減少させることができる。本発明は、ヒンジ、CH2又はCH3領域に一つ以上の突然変異を有する抗体を含み、これは、例えば、産生において、所望の抗体形態の収率を改善するために望ましい場合がある。
【0062】
本発明の抗体は単離された抗体であり得る。「単離された抗体」は、本明細書中で使用する場合、その自然環境の少なくとも一つの成分から同定及び分離、並びに/又は回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも一つの成分から、又は抗体が天然に存在するか若しくは自然に産生される組織若しくは細胞から、分離若しくは除去された抗体が、本発明に関する「単離された抗体」である。単離された抗体はまた、組換え細胞内にインサイチュで抗体を含む。単離された抗体は、少なくとも一つの精製または単離ステップに供された抗体である。ある特定の実施形態によると、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0063】
本発明はまた、CD28及び/又はCD22と結合する1アーム(one-arm)抗体も含む。本明細書中で使用する場合、「1アーム抗体」は、単一抗体重鎖及び単一抗体軽鎖を含む抗原結合分子を意味する。本発明の1アーム抗体は、表1に記載するようなHCVR/LCVR又はCDRアミノ酸配列のいずれかを含み得る。
【0064】
本明細書における抗CD28抗体及び/又は抗CD22抗体、又はその抗原結合ドメインは、抗原結合タンパク質又は抗原結合ドメインが由来する対応する生殖系列配列と比較して、重及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域中に一つ以上のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含み得る。そのような突然変異は、本明細書中で開示するアミノ酸配列を、例えば、公開抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に核にすることができる。本発明は、本明細書中で開示するアミノ酸配列のいずれかに由来する、抗体、及びその抗原結合ドメインを含み、ここで、一つ以上のフレームワーク及び/又はCDR領域内の一つ以上のアミノ酸を変異させて、抗体が由来する生殖系列配列の対応する残基(複数可)と、又は別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)と、又は対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換(そのような配列変化は、本明細書中で「生殖系列突然変異」として総称される)と、変異させる。当業者は、本明細書中で開示する重及び軽鎖可変領域配列から始めて、一つ以上の個々の生殖系列突然変異又はその組み合わせを含む、多くの抗体及び抗原結合フラグメントを容易に産生することができる。ある特定の実施形態において、V及び/又はVドメイン内のフレームワーク及び/又はCDR残基をすべて、抗体が誘導された元の生殖系列配列で見いだされる残基に変異させる。他の実施形態において、ある特定の残基のみを、例えばFR1の最初の8個のアミノ酸内で、又はFR4の最後の8個のアミノ酸内で、又はCDR1、CDR2若しくはCDR3内で見いだされる変異した残基のみを、元の生殖系列配列に変異させる。他の実施形態において、フレームワーク及び/又はCDR残基(複数可)の一つ以上を、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体がもともと誘導された生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)に変異させる。さらに、本発明の抗体、又はその抗原結合ドメインは、フレームワーク及び/又はCDR領域内の二つ以上の生殖系列突然変異の任意の組み合わせを含み得、例えば、ここで、ある特定の個々の残基を特定の生殖系列配列の対応する残基と変異させ、その一方で、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基を、異なる生殖系列配列の対応する残基と変異させる。一旦得られたら、一つ以上の生殖系列突然変異を含む、抗体、又はその抗原結合フラグメントは、例えば、改善された結合特異性、増大した結合親和性、改善若しくは増強されたアンタゴニスト若しくはアゴニスト生物学的特性(場合によっては)、低下した免疫原性などの、一つ以上の望ましい特性について容易に試験することができる。この一般的な方法で得られた抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明に含まれる。
【0065】
本発明はまた、抗CD28抗体及び/又は抗CD22抗体、並びに本明細書中で開示するHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗原結合分子も含む。本発明のこの態様に含まれる例示的変異体は、一つ以上の保存的置換を有する、本明細書中で開示するHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書中で表6に記載されているHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、10以下、8以下、6以下、4以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列を有する抗CD28抗体及び抗原結合分子を含む。
【0066】
「エピトープ」という語は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域中の特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一抗原が複数のエピトープを有する場合がある。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域に結合する可能性があり、異なる生物学的効果を有する可能性がある。エピトープは、立体構造的又は線形のいずれかであり得る。立体構造的エピトープは、線形ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。線形エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。ある特定の状況において、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0067】
「実質的同一性」または「実質的に同一」という語は、核酸またはそのフラグメントについて言及する場合、別の核酸(またはその相補鎖)と適切なヌクレオチド挿入または欠失を伴って最適に整列される場合、以下で議論するようなFASTA、BLASTまたはGapなどの任意の周知の配列同一性アルゴリズムによって測定した場合、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、97%、98%または99%でヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。参考核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、場合によっては、参考核酸分子によってコード化されるポリペプチドと同一または実質的に類似したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコード化し得る。
【0068】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的類似性」又は「実質的に類似した」という語は、二つのペプチド配列が、デフォルトのギャップウェイトを使用した例えばプログラムGAP又はBESTFITによるなど、最適にアラインされた場合、少なくとも95%の配列同一性、なお一層好ましくは、少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似した化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置換されているものである。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変更しない。二つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、%配列同一性又は類似度は、置換の保存的性質について修正するために上方調節することができる。この調節を行うための手段は、当業者には周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.BioI.24:307-331を参照。類似した化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸基の例としては(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アルパルテート及びグルタメート、並びに(7)硫黄含有側鎖はシステイン及びメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタメート-アルパルテート、及びアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換は、Gonnet et al(1992)Science 256:1443-1445で開示されているPAM250対数尤度行列において正の値を有する任意の変化である。「やや保存的な」置換は、PAM250対数尤度行列において非負値を有する任意の変化である。
【0069】
ポリペプチドの配列類似性は、配列同一性とも呼ばれ、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換をはじめとする、さまざまな置換、欠失、およびその他の修飾に割り当てられる類似性の尺度を使用して、類似の配列を照合する。たとえば、GCGソフトウェアは、GapやBestfitなどのプログラムを含み、これらは、デフォルトパラメーターと使用して、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間、または野生型タンパク質とそのムテイン間の配列相同性または配列同一性を決定できる。例えば、GCG Version 6.1を参照。ポリペプチド配列はまた、GCGバージョン6.1のプログラムであるデフォルトまたは推奨パラメータを使用したFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリ配列と検索配列との間の最良のオーバーラップ領域のアラインメントおよび%配列同一性を提供する(上記のピアソン(2000))。本発明の配列を、異なる生物からの多数の配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメーターを使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.BioI.215:403-410 and Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照。
【0070】
「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という語は、抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子または本発明の方法を用いた治療から利益を得るであろうある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。これには、問題の障害に哺乳動物がかかりやすくなるようにさせる病的状態を含む慢性および急性障害が含まれる。一実施形態において、細胞増殖性障害はがんであり、これは、典型的には無秩序な細胞成長/増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態である。
【0071】
「腫瘍」は、本明細書中で使用する場合、悪性であろうと良性であろうと、すべての腫瘍性細胞成長および増殖、ならびにすべての前がん性およびがん性細胞および組織を指す。「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」および「腫瘍」という語は、本明細書で言及される場合、相互に排他的ではない。
【0072】
「B細胞増殖性障害」としては、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、侵攻性NHL、再発性侵攻性NHL、低悪性度/濾胞性NHL、小リンパ球型(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変NHL、再発性無痛性NHL及びリツキシマブ-難治性無痛性NHLをはじめとする無痛性NHL;難治性NHL、難治性無痛性NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症、リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(LPHD)、小リンパ球型リンパ腫(SLL)、慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、毛様細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病を含む白血病;及び他の血液学的悪性腫瘍が挙げられる。
【0073】
「非ホジキンリンパ腫」又は「NHL」という語は、本明細書中で使用する場合、ホジキンリンパ腫以外のリンパ系のがんを指す。ホジキンリンパ腫は、概して、ホジキンリンパ腫ではReed-Sternberg細胞が存在すること及び非ホジキンリンパ腫では前記細胞が存在しないことによって、非ホジキンリンパ腫から区別することができる。本明細書で使用される用語に含まれる非ホジキンリンパ腫の例には、Color Atlas of Clinical Hematology(3rd edition),A.Victor Hoffbrand and John E.Pettit(eds.)(Harcourt Publishers Ltd.,2000)に記載されているようなRevised European-American Lymphoma(REAL)スキームなどの、当業者(例えば、腫瘍学者または病理学者)によって、当該技術分野で知られている分類スキームに従ってそのように特定される任意のものが含まれる。特に、図11.57、11.58及び11.59のリストを参照。より具体的な例には、限定されるものではないが、再発性又は難治性NHL、最前線の低悪性度NHL、ステージIII/IVのNHL、化学療法抵抗性NHL、前駆Bリンパ芽球性白血病及び/又はリンパ腫、小リンパ球型リンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病及び/又は前リンパ球性白血病及び/又は小リンパ球型リンパ腫、B細胞前リンパ球性リンパ腫、免疫細胞腫及び/又はリンパ形質細胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、節外性辺縁帯-MALTリンパ腫、節性辺縁帯リンパ腫、毛様細胞白血病、形質細胞腫及び/又は形質細胞骨髄腫、低悪性度/濾胞性リンパ腫、中悪性度/濾胞性NHL、マントル細胞リンパ腫、濾胞中心リンパ腫(濾胞性)、中悪性度びまん性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、侵攻性NHL(侵攻性最前線NHL及び侵攻性再発性NHLを含む)、自己幹細胞移植後に再発するか又は自己幹細胞移植が無効なNHL、縦隔原発B細胞性大細胞型リンパ腫、原発性体液性リンパ腫、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変NHL、バーキットリンパ腫、前駆(末梢)大顆粒リンパ球性白血病、菌状息肉腫及び/又はセザリー症候群、皮膚(cutaneous)リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫が含まれる。
二重特異性抗原結合分子
【0074】
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、又は多特異性であり得る。多特異性抗体は、一つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であり得るか、又は複数の標的ポリペプチドに対して特異的な抗原結合ドメインを含み得る。例えば、Tutt et al.,1991,J.Immunol.147:60-69;Kufer et al.,2004,Trends Biotechnol.22:238-244を参照。本発明の抗CD28抗体及び/又は抗CD22抗体を、別の機能的分子、例えば別のペプチドもしくはタンパク質と連結させるか、又は同時発現することができる。例えば、抗体又はそのフラグメントを、(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性会合又は他の方法により)一つ以上の他の分子実体、例えば別の抗体又は抗体フラグメントと機能的に連結させて、第二結合特異性を有する二重特異性又は多特異性抗体を産生することができる。
【0075】
本明細書中での「抗CD28抗体」及び/又は「抗CD-22抗体」という表現の使用は、単一特異性抗CD28抗体及び/又は単一特異性抗CD22抗体、並びにCD28結合アーム又はCD22結合アームと、標的抗原と結合するアームとを含む二重特異性抗体の両方を含むことが意図される。したがって、本発明は、イムノグロブリンの一方のアームがヒトCD28又はCD22と結合し、イムノグロブリンの多方のアームが標的抗原に対して特異的である二重特異性抗体を含む。CD28又はCD22二重特異性抗体の他のアームが結合する標的抗原は、標的化免疫応答が望まれる細胞、組織、臓器、微生物又はウイルス上又はその近辺で発現される任意の抗原であり得る。CD28結合アームは、本明細書中の表1に記載されているHCVR/LCVR又はCDRアミノ酸配列のいずれかを含み得る。CD22結合アームは、本明細書中の表1に記載されているHCVR/LCVR又はCDRアミノ酸配列のいずれかを含み得る。ある特定の実施形態において、CD28結合アームはヒトCD28と結合し、ヒトT細胞増殖を誘導する。
【0076】
抗体の一本のアームがCD28と結合し、他のアームが標的抗原と結合する本発明の二重特異性抗体の関連で、標的抗原は腫瘍関連抗原、例えばCD22であり得る。
【0077】
ある例示的実施形態によると、本発明は、CD28及びCD22と特異的に結合する二重特異性抗原結合分子を含む。そのような分子は、本明細書中では、例えば、「抗CD28/抗CD22」、又は「抗CD28xCD22」、又は「CD28xCD22」もしくは「抗CD22/抗CD28」、又は「抗CD22xCD28」、又は「CD22xCD28」二重特異性分子、又は「αCD22xαCD28」、又は「αCD28xαCD22」、又は他の類似した名称で称される場合がある。
【0078】
ある例示的実施形態によると、二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)は、エフェクタアームと標的化アームとを有し得る。エフェクタアームは、エフェクタ細胞(例えば、T細胞)上の抗原に結合する第一抗原結合ドメイン(例えば、抗CD28抗体)であり得る。標的化アームは、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)上の抗原に結合する第二抗原結合ドメイン(例えば、抗CD22抗体)であり得る。ある例示的実施形態によると、エフェクタアームはCD28に結合し、標的化アームはCD22に結合する。二重特異性抗CD28/CD22は、エフェクタ細胞(例えば、T細胞)に対して共刺激シグナルを提供し得る。エフェクタアームは、クラスタ化なしのT細胞の刺激に効果はない。エフェクタアーム単独では、標的化アームと組み合わせない限り、T細胞の刺激にほとんど効果はない。腫瘍標的化アームは、不完全な腫瘍特異性を有し得る。標的化アームの標的である抗原(例えば、CD22)は腫瘍細胞のフラクション上で発現することができる。腫瘍標的化アームの特異性は、抗CD3二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/CD20二重特異性抗体)との組み合わせとオーバーラップさせることによって増加させることができる。
【0079】
本明細書中で使用する場合、「抗原結合分子」という表現は、単独、又は一つ以上のさらなるCDR及び/若しくはフレームワーク領域(FR)との組み合わせで、特定の抗原と特異的に結合する少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)を含むか、又はこれらからなる、タンパク質、ポリペプチド又は分子複合体を意味する。ある特定の実施形態において、抗原結合分子は、これらの用語が本明細書中の他の場所で定義されるように、抗体又は抗体のフラグメントである。
【0080】
本明細書中で使用する場合、「二重特異性抗原結合分子」という表現は、少なくとも第一抗原結合ドメインと第二抗原結合ドメインとを含む、タンパク質、ポリペプチド又は分子複合体を意味する。二重特異性抗原結合分子内の各抗原結合ドメインは、単独又は一つ以上のさらなるCDR及び/若しくはFRとの組み合わせで、特定の抗原と特異的に結合する少なくとも一つのCDRを含む。本発明の関連で、第一抗原結合ドメインは第一抗原(例えば、CD28)と特異的に結合し、第二抗原結合ドメイン第二の別の抗原(例えば、CD22)と特異的に結合する。
【0081】
本発明のある特定の例示的実施形態において、二重特異性抗原結合分子は二重特異性抗体である。二重特異性抗体の各抗原結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(HCVR)と軽鎖可変ドメイン(LCVR)とを含む。第一及び第二抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)の関連で、第一抗原結合ドメインのCDRを接頭辞「D1」で指定する場合があり、また第二抗原結合ドメインのCDRを接頭辞「D2」で指定する場合がある。したがって、第一抗原結合ドメインのCDRを、本明細書中では、D1-HCDR1、D1-HCDR2、及びD1-HCDR3と称する場合があり;第二抗原結合ドメインのCDRを、本明細書中では、D2-HCDR1、D2-HCDR2、及びD2-HCDR3と称する場合がある。
【0082】
第一抗原結合ドメイン及び第二抗原結合ドメインを直接的又は間接的に互いに接続して、本発明の二重特異性抗原結合分子を形成することができる。あるいは、第一抗原結合ドメイン及び第二抗原結合ドメインをそれぞれ別の多量体化ドメインと結合させることができる。一つの多量体化ドメインと別の多量体化ドメインとの結合によって、二つの抗原結合ドメイン間の結合が促進され、それによって二重特異性抗原結合分子が形成される。本明細書中で使用する場合、「多量体化ドメイン」は、同じかまたは類似した構造又は構成の第二の多量体化ドメインと結合する能力を有する任意の巨大分子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、又はアミノ酸である。例えば、多量体化ドメインは、イムノグロブリンC3ドメインを含むポリペプチドであり得る。多量体化成分の非限定例は、イムノグロブリンのFc部分(C2-C3ドメインを含む)、例えば、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択されるIgGのFcドメイン、並びに各アイソタイプ群内の任意のアロタイプである。
【0083】
本発明の二重特異性抗原結合分子は、典型的には、二つの多量体化ドメイン、例えば各々独立した抗体重鎖の一部である二つのFcドメインを含む。第一及び第二多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG1、IgG2/IgG2、IgG4/IgG4などの同じIgGアイソタイプのものであってよい。あるいは、第一及び第二多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG2、IgG1/IgG4、IgG2/IgG4などの異なるIgGアイソタイプのものであってもよい。
【0084】
ある特定の実施形態において、多量体化ドメインは、Fcフラグメント又は少なくとも一つのシステイン残基を含む1~約200アミノ酸長のアミノ酸配列である。他の実施形態において、多量体化ドメインはシステイン残基、又は短いシステイン含有ペプチドである。他の多量体化ドメインには、ロイシンジッパー、ヘリックス-ループモチーフ、又はコイルドコイルモチーフを含むか又はこれらからなるペプチド又はポリペプチドが含まれる。
【0085】
任意の二重特異性抗体フォーマット又は技術を使用して本発明の二重特異性抗原結合分子を作製することができる。例えば、第一抗原結合特異性を有する抗体又はそのフラグメントは、(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性会合又は他の方法により)一つ以上の他の分子実体、例えば第二抗原結合特異性を有する別の抗体又は抗体フラグメントに対して機能的に連結させて、二重特異性抗原結合分子を産生することができる。本発明の関連で使用することができる二重特異性フォーマットの具体例としては、限定されるものではないが、例えば、scFvベース又はダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合物、二重可変ドメイン(OVO)-Ig、Quadroma、ノブ・イントゥ・ホール、共通の軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールを有する共通の軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEEO)ボディ、ロイシンジッパー、Ouobody、IgG1/IgG2、二重作用性Fab(OAF)-IgG、及びMab二重特異性フォーマットが挙げられる(前記フォーマットの総説については、例えば、Klein et al.2012,mAbs 4:6,1-11、及びその中で言及されている参考文献を参照)。
【0086】
本発明の二重特異性抗原結合分子の関連で、多量体化ドメイン、例えば、Fcドメインは、Fcドメインの野生型、天然に存在するバージョンと比較して、一つ以上のアミノ酸変化(例えば、挿入、欠失又は置換)を含み得る。例えば、本発明は、FcとFcRnとの間で修飾された結合相互作用(例えば、増強又は減少)を有する修飾されたFcドメインをもたらす、Fcドメインにおける一つ以上の修飾を含む二重特異性抗原結合分子を含む。一実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、酸性環境中(例えば、pHが約5.5から約6.0の範囲であるエンドソーム中)でFcRnに対するFcドメインの親和性を増大させる修飾をC2又はC3領域中に含む。そのようなFc修飾の非限定例には、例えば、位置250(例えば、E若しくはQ);250及び428(例えば、L若しくはF);252(例えば、LN/FIW若しくはT)、254(例えば、S若しくはT)、及び256(例えば、S/R/Q/EID若しくはT)での修飾;又は位置428及び/又は433(例えば、UR/S/P/Q若しくはK)及び/又は434(例えば、H/F若しくはV)での修飾;又は位置250及び/又は428での修飾;又は位置307若しくは308(例えば、308F、V308F)、及び434での修飾が含まれる。一実施形態において、修飾は、428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)修飾;428L、2591(例えば、V2591)、及び308F(例えば、V308F)修飾;433K(例えば、H433K)及び434(例えば、434Y)修飾;252,254、及び256(例えば、252Y、254T、及び256E)修飾;250Q及び428L修飾(例えば、T250Q及びM428L);並びに307及び/又は308修飾(例えば、308F又は308P)を含む。
【0087】
本発明はまた、第一C3ドメインと第二Ig C3ドメインとを含む二重特異性抗原結合分子を含み、第一及び第二Ig C3ドメインは、少なくとも一つのアミノ酸で互いに異なり、少なくとも一つのアミノ酸の違いにより、そのアミノ酸の違いを欠いた二重特異性抗体と比較して、タンパク質Aに対する二重特異性抗体の結合が減少する。一実施形態において、第一Ig C3ドメインはタンパク質Aと結合し、第二Ig C3ドメインは、例えば、H95R修飾(IMGTエクソンナンバリングによる;EUナンバリングによるとH435R)などの、タンパク質A結合を低減又は無効にする突然変異を含む。第二のC3は、Y96F修飾(IMGTによる;EUによるとY436F)をさらに含み得る。第二のCH3内で見出すことができるさらなる修飾には:IgG1抗体の場合は、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、及びV821(IMGTによる;EUによるとD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及びV4221);IgG2抗体の場合は、N44S、K52N、及びV821(IMGT;EUによるとN384S、K392N、及びV4221);並びにIgG4抗体の場合は、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、及びV821(IMGTによる;EUによるとQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、及びV4221)が含まれる。
【0088】
ある特定の実施形態において、Fcドメインは、複数のイムノグロブリンアイソタイプに由来するFc配列を組み合わせたキメラであり得る。例えば、キメラFcドメインは、ヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4 C2領域由来のC2配列の一部又は全部と、ヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4由来のC3配列の一部又は全部とを含み得る。キメラFcドメインはまた、キメラヒンジ領域も含み得る。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4ヒンジ領域由来の「下部ヒンジ」配列と組み合わせられたヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4ヒンジ領域由来の「上部ヒンジ」配列を含み得る。本明細書中に記載の抗原結合分子のいずれかに含まれ得るキメラFcドメインの特定の例は、N末端からC末端へ向かって:[IgG4C1]-[IgG4上部ヒンジ]-[IgG2下部ヒンジ]-[IgG4CH2]-[IgG4C3]を含む。本明細書中に記載する抗原結合分子のいずれかに含まれ得るキメラFcドメインの別の例は、N末端からC末端へ向かって:[IgG1C1]-[IgG1上部ヒンジ]-[IgG2下部ヒンジ]-[IgG4C2]-[IgG1C3]を含む。本発明の抗原結合分子のいずれかに含まれ得るキメラFcドメインのこれらや他の例は、国際公開第2014/022540A1号に記載されており、その全内容は参照により本明細書中に組み込まれる。これらの一般的構造配置、及びその変異体を有するキメラFcドメインは、Fc受容体結合を変化させる可能性があり、これは次にFcエフェクタ機能に影響を及ぼす。
配列変異体
【0089】
本発明の抗体及び二重特異性抗原結合分子は、個々の抗原結合ドメインが由来する対応する生殖系列配列と比較して、重及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域において一つ以上のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含み得る。そのような突然変異は、本明細書中で開示するアミノ酸配列を、例えば、公開抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明の抗原結合分子は、本明細書中で開示する例示的アミノ酸配列のいずれかに由来する抗原結合フラグメントを含み得、一つ以上のフレームワーク及び/又はCDR領域内の一つ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)に、又は別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)に、又は対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換(そのような配列変化は、まとめて「生殖系列突然変異」と称される)に、変異される。当業者は、本明細書中で開示する重及び軽鎖可変領域配列から始めて、一つ以上の個々の生殖系列突然変異又はその組み合わせを含む多くの抗体及び抗原結合フラグメントを容易に産生することができる。ある特定の実施形態において、V及び/又はVドメイン内のフレームワーク及び/又はCDR残基はすべて、抗原結合ドメインがもともと由来した元の生殖系列配列で見いだされる残基に変異される。他の実施形態では、ある特定の残基のみが、例えば、FR1の最初の8個のアミノ酸内で見いだされる変異残基のみ又はFR4の最後の8個のアミノ酸内で見いだされる変異残基のみ、又はCDR1、CDR2若しくはCDR3内で見いだされる変異残基のみが、元の生殖系列配列に変異して戻される。他の実施形態では、フレームワーク及び/又はCDR残基(複数可)の一つ以上が、異なる生殖系列配列(すなわち、抗原結合ドメインがもともと由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)に変異される。さらに、抗原結合ドメインは、フレームワーク及び/又はCDR領域内の二つ以上の生殖系列突然変異の任意の組み合わせを含み得、例えば、ある特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基に変異され、その一方で、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は維持されるか又は異なる生殖系列配列の対応する残基に変異される。一旦得られたら、一つ以上の生殖系列突然変異を含む抗原結合ドメインは、一つ以上の所望の特性、例えば、改善された結合特異性、増大した結合親和性、改善若しくは増強されたアンタゴニスト若しくはアゴニスト生物学的特性(場合によっては)、低下した免疫原性などについて容易に試験することができる。この一般的な方法で得られた一つ以上の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子は本発明に含まれる。
【0090】
本発明はまた、抗原結合ドメインの一方又は両方が、本明細書中で開示する、一つ以上の保存的置換を有するHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む、抗原結合分子も含む。例えば、本発明は、本明細書中で開示するHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば10以下、8以下、6以下、4以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列を有する抗原結合ドメインを含む抗原結合分子を含む。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似した化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置換されているものである。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変更しない。類似した化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸基の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;(2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アルパルテート及びグルタメートが含まれ、(7)硫黄含有側鎖は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタメート-アルパルテート、及びアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換は、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445で開示されているPAM250対数尤度行列において正の値を有する任意の変化である。「やや保存的な」置換は、PAM250対数尤度行列において非負値を有する任意の変化である。
【0091】
本発明はまた、本明細書中で開示するHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかと実質的に同一であるHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列を有する抗原結合ドメインを含む抗原結合分子を含む。「実質的同一性」又は「実質的に同一の」という語は、アミノ酸配列について言及する場合、二つのアミノ酸配列が、例えばデフォルトのギャップウェイトを使用するプログラムGAP又はBESTFITなどによって最適に整列させた場合に、少なくとも95%の配列同一性、なお一層好ましくは、少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。二つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、%配列同一性又は類似度は、置換の保存的性質について補正するように上方に調節することができる。この調節を行うための手段は、当業者には周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.BioI.24:307-331を参照。
【0092】
ポリペプチドの配列類似性は、配列同一性とも呼ばれ、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換をはじめとする、さまざまな置換、欠失、およびその他の修飾に割り当てられる類似性の尺度を使用して、類似の配列を照合する。たとえば、GCGソフトウェアは、GapやBestfitなどのプログラムを含み、これらはデフォルトパラメーターと使用して、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間、または野生型タンパク質とそのムテイン間の配列相同性または配列同一性を決定できる。例えば、GCG Version 6.1を参照。ポリペプチド配列はまた、GCGバージョン6.1のプログラムであるデフォルトまたは推奨パラメータを使用したFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、クエリ配列と検索配列との間の最良のオーバーラップ領域のアラインメント及び%配列同一性を提供する(上記のPearson (2000))。本発明の配列を、異なる生物からの多数の配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメーターを使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.BioI.215:403-410 and Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照。
pH依存性結合
【0093】
本発明は、pH依存性結合特性を有する抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子を含む。例えば、本発明の抗CD28抗体は、中性pHと比較して、酸性pHでCD28に対する結合の低下を示し得る。あるいは、本発明の抗CD22抗体は、中性pHと比較して、酸性pHでCD22に対する結合の増強を示し得る。「酸性pH」という表現は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0以下のpH値を含む。本明細書中で使用する場合、「中性pH」という表現は、約7.0~約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表現は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、及び7.4のpH値を含む。
【0094】
場合によっては、「中性pHと比較して酸性pHでの...の結合の低下」は、酸性pHでのその抗原に対する抗体結合のK値の、中性pHでのその抗原に対する抗体結合のK値に対する比(又はその逆)で表される。例えば、抗体又はその抗原結合フラグメントが約3.0以上の酸性/中性K比を示すならば、本発明に関して、抗体又はその抗原結合フラグメントは、「中性pHと比較して酸性pHでCD28に対して結合の低下」を示すとみなすことができる。ある特定の例示的実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントの酸性/中性K比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0.25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0又はそれ以上であり得る。
【0095】
pH依存性結合特性を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して、酸性pHで特定の抗原に対する結合の低下(又は増強)について抗体の集団をスクリーニングすることによって得ることができる。さらに、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの修飾により、pH依存特性を有する抗体が得られる可能性がある。例えば、(例えば、CDR内の)抗原結合ドメインの一つ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することによって、中性pHと比較して酸性pHで抗原結合が低下した抗体が得られる可能性がある。
Fc変異体を含む抗体
【0096】
本発明のある特定の実施形態によると、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、FcRn受容体に対する抗体結合を増強または低下させる一つ以上の突然変異を含むFcドメインを含む抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子が提供される。例えば、本発明は、突然変異(複数可)が酸性環境中(例えば、pHが約5.5から約6.0の範囲であるエンドソーム中)でFcRnに対するFcドメインの親和性を増大させる突然変異を、FcドメインのC2又はC3領域において含む抗体及び抗原結合分子を含む。そのような突然変異は、動物に投与されると抗体の血清半減期の増加をもたらす可能性がある。そのようなFc修飾の非限定例には、例えば、位置250での修飾(例えば、E若しくはQ);250及び428(例えば、L若しくはF);252(例えば、L/Y/F/W若しくはT)、254(例えば、S若しくはT)、並びに256(例えば、S/R/Q/E/D若しくはT);又は位置428及び/又は433での修飾(例えば、H/L/R/S/P/Q若しくはK)及び/又は434(例えば、H/F若しくはY);又は位置250及び/又は428での修飾;又は位置307若しくは308での修飾(例えば、308F、V308F)、並びに434が含まれる。一実施形態において、修飾は、428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)修飾;428L、259I(例えば、V259I)、及び308F(例えば、V308F)修飾;433K(例えば、H433K)及び434(例えば、434Y)修飾;252、254、及び256(例えば、252Y、254T、及び256E)修飾;250Q及び428L修飾(例えば、T250Q及びM428L);並びに307及び/又は308修飾(例えば、308F又は308P)を含む。
【0097】
例えば、本発明は、250Q及び248L(例えば、T250Q及びM248L);252Y、254T及び256E(例えば、M252Y、S254T及びT256E);428L及び434S(例えば、M428L及びN434S);並びに433K及び434F(例えば、H433K及びN434F)からなる群から選択される突然変異の一つ以上の対又は群を含むFcドメインを含む抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子を含む。前記Fcドメイン突然変異、及び本明細書中で開示する抗体可変ドメイン内の他の突然変異のあらゆる可能な組み合わせが、本発明の範囲内で企図される。
【0098】
抗体及び抗原結合分子の生物学的特性
本発明は、ヒトCD28及び/又はCD22に高親和性で結合する抗体及びその抗原結合フラグメントを含む。本発明はまた、治療状況及び望ましい特定の標的化特性に応じて中又は低親和性でヒトCD28及び/又はCD22に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントも含む。例えば、一つのアームがCD28に結合し、別のアームが標的抗原(例えば、CD22)に結合する二重特異性抗原結合分子の状況では、標的抗原結合アームが標的抗原と高親和性で結合し、その一方で、抗CD28アームがCD28と中又は低親和性でしか結合しないのが望ましい場合がある。このようにして、標的抗原を発現する細胞に対する抗原結合分子の選択的標的化は、全体的/非標的化CD28結合及びこれに関連する結果としての有害な副作用を回避しつつ達成することができる。
【0099】
ある特定の実施形態によると、本発明は、ヒトCD22(例えば、25℃で)と、表面プラズモン共鳴によって、例えば本明細書中の実施例5で定義するようなアッセイフォーマットを使用して測定して、約15nM未満のKで結合する抗体及び抗体の抗原結合フラグメントを含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒトCD22と、表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書中の実施例5で定義するようなアッセイフォーマット、又は実質的に類似したアッセイを使用して測定して、約15nM未満、約14nM未満、約13nM未満、約12nM未満、約11nM未満、約10nM未満、約9nM未満、約8nM未満、約7nM未満、約6nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、又は約1nM未満のKで結合する。
【0100】
ある特定の実施形態によると、本発明は、サルCD22(例えば、25℃で)と、表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書中の実施例5で定義するようなアッセイフォーマットを使用して測定して、約60μM未満のKで結合する抗体及び抗体の抗原結合フラグメントを含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、サルCD22と、表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書中の実施例5で定義するようなアッセイフォーマット、又は実質的に類似したアッセイを使用して測定して、約60μM未満、約59μM未満、約58μM未満、約57μM未満、約56μM未満、約55μM未満、約54μM未満、約53μM未満、約52μM未満、約51μM未満、約50μM未満、約49μM未満、約48μM未満、約47μM未満、約46μM未満、約45μM未満、約44μM未満、約43μM未満、約42μM未満、約41μM未満、約40μM未満、約39μM未満、約38μM未満、約37μM未満、約36μM未満、約35μM未満、約34μM未満、約33μM未満、約32μM未満、約31μM未満、約30μM未満、約25μM未満、約20μM未満、約15μM、又は約10μM未満のKで結合する。
【0101】
ある特定の実施形態によると、本発明は、ヒトCD28(例えば、25℃)と、例えば、本明細書中の実施例5で定義するようなアッセイフォーマットを使用する表面プラズモン共鳴によって測定して約45μM未満のKを有する抗体及び抗体の抗原結合フラグメントを含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書中の実施例5で定義するようなアッセイフォーマット、又は実質的に類似したアッセイを使用して測定して、ヒトCD28と、約45μM未満、約44μM未満、約43μM未満、約42μM未満、約41μM未満、約40μM未満、約39μM未満、約38μM未満、約37μM未満、約36μM未満、約35μM未満、約34μM未満、約33μM未満、約32μM未満、約31μM未満、約30μM未満、約25μM未満、約20μM未満、約15μM未満、約10μM未満のKで結合する。
【0102】
本発明はまた、ヒトCD22と、25℃にて表面プラズモン共鳴により、例えば、本明細書中の実施例5で定義するようなアッセイフォーマットを使用して、又は実質的に類似したアッセイにより測定して、約7.5分超の解離半減期(t1/2)で結合する抗体及びその抗原結合フラグメントも含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒトCD22と、25℃にて表面プラズモン共鳴により、例えば、本明細書中の実施例5で定義するようなアッセイフォーマットを使用して、又は実質的に類似したアッセイにより測定して、約7分超、約10分超、約15分超、約20分超、約25分超、約30分超、約35分超、約40分超、約45分超、約50分超、約55分超、約60分超、約65分超、約70分超、約75分超、又は約100分超のt1/2で結合する。
【0103】
本発明はまた、サルCD22と、37℃にて表面プラズモン共鳴により、例えば、本明細書中の実施例で定義するようなアッセイフォーマットを使用して、又は実質的に類似したアッセイにより測定して、約4.3分超の解離半減期(t1/2)で結合する抗体及びその抗原結合フラグメントも含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、CD28と、25℃にて表面プラズモン共鳴により、例えば、本明細書中の実施例5で定義するようなアッセイフォーマットを使用して、又は実質的に類似したアッセイにより測定して、約4分超、約5分超、約6分超、約7分超、約8分超、約9分超、約10分超、約15分超、約20分超、約25分超、約30分超、約35分超、約40分超、約45分、又は約50分超のt1/2で結合する。
【0104】
本発明はまた、ヒトCD28と、25℃にて表面プラズモン共鳴により、例えば、本明細書中の実施例5で定義するようなアッセイフォーマットを使用して、又は実質的に類似したアッセイにより測定して、約2.3分超の解離半減期(t1/2)で結合する抗体及びその抗原結合フラグメントも含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、CD28と、25℃又は37℃にて表面プラズモン共鳴により、例えば、本明細書中の実施例で定義するようなアッセイフォーマットを使用して、又は実質的に類似したアッセイにより測定して、約2分超、約5分超、約10分超、約20分超、約30分超、約40分超、約50分超、約60分超、約70分超、約80分超、約90分超、約100分超、約200分超、約300分超、約400分超、約500分超、約600分超、約700分超、約800分超、約900分超、約1000分超、又は約1200分超のt1/2で結合する。
【0105】
本発明はまた、ヒトCD28並びにヒト及びサルCD22に対して結合することができる二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)も含む。ある特定の実施形態によると、本発明の二重特異性抗原結合分子は、CD28および/またはCD22を発現する細胞と特異的に相互作用する。二重特異性抗原結合分子がCD28および/またはCD22を発現する細胞に結合する程度は、本明細書中の実施例6に示されるように、蛍光活性化細胞分類(FACS)によって評価することができる。例えば、本発明は、CD28を発現するが、CD22を発現しないヒト細胞株又はカニクイザル細胞(例えば、T細胞)、及びCD22を発現するが、CD28を発現しないヒト細胞株又はカニクイザル細胞(例えば、B細胞又はNalm6細胞)と特異的に結合する二重特異性抗原結合分子を含む。本発明は、前記細胞及び細胞株のいずれかと、実施例6で記載するようなFACSアッセイ又は実質的に類似したアッセイを用いて測定して、約1.3×10-6~約2.3×10-8M、又はそれ以下のEC50値で結合する二重特異性抗原結合分子を含む。
【0106】
本発明は、ヒトCD28及び/又はヒトCD22と結合することができる二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)を含む。ある特定の実施形態によると、本発明の二重特異性抗原結合分子は、CD28及び/又はCD22を発現する細胞と特異的に相互作用する。二重特異性抗原結合分子がCD28および/またはCD22を発現する細胞に結合する程度は、本明細書中の実施例7に示されるように、フローサイトメトリによって評価することができる。例えば、本発明は、CD28を発現するが、CD22を発現しないヒト細胞(例えば、T細胞)、及びCD22を発現するが、CD28を発現しないヒト細胞株(例えば、CD80及びCD86を欠失する様に遺伝子改変されたヒトCD22及びRaji B細胞で形質導入されたHEK293細胞)と特異的に結合する二重特異性抗原結合分子を含む。本発明は、前記細胞及び細胞株のいずれかと、実施例7に記載するフローサイトメトリ又は実質的に類似したアッセイによって測定して、約1.14×10-8~約9.76×10-9M、又はそれ以下のEC50値で結合する二重特異性抗原結合分子を含む。
【0107】
本発明はまた、腫瘍細胞のCD20xCD3T細胞媒介性殺滅の効力を誘導又は増強する抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子も提供する。例えば、本発明は、インビトロT細胞媒介性腫瘍細胞殺滅アッセイで、例えば、本明細書中の実施例8で定義されるようなアッセイフォーマット(例えば、抗CD20xCD3及び抗CD28xCD22抗体の存在下でのヒトPBMCによるRaji細胞殺滅の程度を評価する)、又は実質的に類似したアッセイを使用して測定して、約1.48×10-10M未満のEC50での腫瘍細胞のCD20xCD3T細胞媒介性殺滅の効力を誘導または増大させる抗CD28xCD22抗体を含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、T細胞媒介性腫瘍細胞殺滅(例えば、Raji細胞のPBMC媒介性殺滅)を、インビトロT細胞媒介性腫瘍細胞殺滅アッセイにより、例えば、本明細書中の実施例8で定義されるようなアッセイフォーマット、又は実質的に類似したアッセイを使用して測定して、約150pM未満、約100pM未満、約75pM未満、約50pM未満、約25pM未満、約10pM未満、約5.0pM未満、約4.0pM未満、約3.0pM未満、約2.5pM未満、約2.0pM未満、又は約1.5pM未満のEC50値で誘導する。
【0108】
本発明はまた、T細胞の活性化、IL-2放出の誘導、ヒトPBMCにおけるCD25+上方調節の誘導;及びCD22発現細胞株に関するヒトT細胞媒介性細胞傷害の増大からなる群から選択される一つ以上を示す抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子も含む(例えば、本明細書中の実施例9を参照)。本発明はまた、CD20及びCD3、例えば、限定されるものではないが、REGN1979などと結合する二重特異性抗体と組み合わせた場合、CD22を発現する腫瘍細胞の殺滅を増強する抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子も含む。本発明はまた、PD-1、例えば、限定されるものではないが、セミプリマブと結合する抗体と組み合わせた場合、CD22を発現する腫瘍細胞の殺滅を増強する抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子も含む(実施例10~15を参照)。
【0109】
エピトープマッピング及び関連技術
本発明の抗原結合分子が結合するCD28又はCD22上のエピトープは、CD28タンパク質又はCD22タンパク質の3以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上)のアミノ酸の単一の連続した配列からなり得る。あるいは、エピトープは、CD28又はCD22の複数の非隣接アミノ酸(又はアミノ酸配列)からなり得る。本発明の抗体は、CD28単量体内に含まれるアミノ酸と相互作用し得るか、又はCD28二量体の二本の異なるCD28鎖上のアミノ酸と相互作用し得る。「エピトープ」という語は、本明細書中で使用する場合、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域中の特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一抗原が複数のエピトープを有する場合がある。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域に結合する可能性があり、異なる生物学的効果を有する可能性がある。エピトープは、立体構造的又は線形のいずれかであり得る。立体構造的エピトープは、線形ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。線形エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。ある特定の状況において、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0110】
当業者に公知の様々な技術を使用して、抗体の抗原結合ドメインがポリペプチド又はタンパク質内の「一つ以上のアミノ酸と相互作用する」か否かを判定することができる。特定の抗体又は抗原結合ドメインのエピトープ又は結合ドメインを決定するために使用できる例示的技術としては、例えば、ルーチンのクロスブロッキングアッセイ、例えば、Antibodies,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harb.,NY)で記載されているもの、点変異誘発(例えば、アラニンスキャニング変異誘発、アルギニンスキャニング変異誘発など)、ペプチドブロット分析(Reineke,2004,Methods Mol Biol 248:443-463)、プロテアーゼ保護、及びペプチド切断分析が挙げられる。加えて、エピトープ切除、エピトープ抽出及び抗原の化学的修飾などの方法を採用することができる(Tomer,2000,Protein Science 9:487-496)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を特定するために使用できる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。概して、水素/重水素交換法では、関心対象のタンパク質を重水素標識した後、抗体を重水素標識タンパク質に結合させる。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移して、抗体によって保護された残基(重水素標識されたまま)を除くすべての残基で水素-重水素交換が起こるようにする。抗体の解離後、標的タンパク質はプロテアーゼ切断および質量分析に供され、それにより、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識残基が明らかになる。例えば、Ehring(1999) Analytical Biochemistry 267(2):252-259;Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aを参照。X線結晶構造分析を使用して、抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を特定することもできる。
【0111】
本発明はさらに、本明細書に記載の特定の例示的抗体のいずれかと同じエピトープに結合する抗CD28および抗CD22抗体(例えば、本明細書の表6に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)を含む。
【0112】
ある特定の実施形態によると、本発明は、実施例3及び4に記載されるような質量分析によって検出される水素/重水素交換によって決定される、配列番号34、配列番号35、及び/又は配列番号36の一つ以上のアミノ酸を含むヒトCD22上のエピトープと結合する抗体の抗体及び抗原結合フラグメントを提供する。
【0113】
同様に、本発明はまた、CD28及び/又はCD22に対する結合について本明細書中に記載の特定の例示的抗体のいずれかと競合する抗CD28および/または抗CD22抗体(例えば、本明細書中の表6に記載のアミノ酸配列を含む抗体)も含む。
【0114】
本発明はまた、ヒトCD28と特異的に結合する第一抗原結合ドメインと、ヒトCD22と特異的に結合する第二抗原結合フラグメントとを含む二重特異性抗原結合分子も含み、ここで、第一抗原結合ドメインは、本明細書中で記載する特定の例示的CD28特異的抗原結合ドメインのいずれかと同じ、CD28上のエピトープと結合する、及び/又は第二抗原結合ドメインは、本明細書中に記載する特定の例示的CD22特異的抗原結合ドメインのいずれかと同じ、CD22上のエピトープと結合する。
【0115】
同様に、本発明はまた、ヒトCD28と特異的に結合する第一抗原結合ドメインと、ヒトCD22と特異的に結合する第二抗原結合フラグメントとを含む二重特異性抗原結合分子も含み、ここで、第一抗原結合ドメインは、本明細書中で記載する特定の例示的CD28特異的抗原結合ドメインのいずれかとCD28に対する結合について競合し、及び/又は第二抗原結合ドメインは、本明細書中に記載する特定の例示的CD22特異的抗原結合ドメインのいずれかとCD22に対する結合について競合する。
【0116】
特定の抗原結合分子(例えば、抗体)又はその抗原結合ドメインが、当該技術分野で公知のルーチン法を使用することによって、本発明の参考抗原結合分子と、同じエピトープと結合するか、又は結合について競合するか否かを容易に判定することができる。例えば、試験抗体が、本発明の参考二重特異性抗原結合分子と同じ、CD28(又はCD22)上のエピトープと結合するか否かを判定するために、参考二重特異性分子をまず、CD28タンパク質(又はCD22タンパク質)と結合させる。次に、試験抗体がCD28(又はCD22)分子と結合する能力を評価する。参考二重特異性抗原結合分子との飽和結合後に試験抗体がCD28(又はCD22)と結合できる場合、試験抗体は参考二重特異性抗原結合分子とは異なるCD28(又はCD22)のエピトープと結合すると結論づけることができる。一方、試験抗体が参考二重特異性抗原結合分子との飽和結合後にCD28(又はCD22)分子と結合できないならば、試験抗体は、本発明の参考二重特異性抗原結合分子によって結合されるエピトープと同じCD28(又はCD22)のエピトープと結合することができる。次に、追加のルーチン実験(例えば、ペプチド突然変異及び結合分析)を実施して、観察された試験抗体の結合の欠如が実際に参考二重特異性抗原結合分子と同じエピトープに対する結合によるものか否か、又は立体遮蔽(若しくは別の現象)が観察される結合の欠如の原因であるか否かを確認することができる。この種類の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリ又は当該技術分野で利用可能な任意の他の定量的若しくは定性的抗体結合アッセイを使用して実施することができる。本発明のある特定の実施形態によると、例えば、競合的結合アッセイで測定して、1倍、5倍、10倍、20倍又は100倍過剰の一つの抗原結合タンパク質が他の結合を少なくとも50%、好ましくは75%、90%又はさらには99%阻害する場合、二つの抗原結合タンパク質は同じ(又はオーバーラップする)エピトープと結合する(例えば、Junghans et aI.,Cancer Res.1990:50:1495-1502を参照)。あるいは、一方の抗原結合タンパク質の結合を低減又は排除する抗原における本質的にすべてのアミノ酸突然変異が他方の結合を低減又は排除するならば、二つの抗原結合タンパク質は同じエピトープとみなされる。一方の抗原結合タンパク質の結合を低減又は排除するアミノ酸突然変異のサブセットのみが他方の結合を低減又は排除するならば、二つの抗原結合タンパク質は「オーバーラップするエピトープ」を有するとみなされる。
【0117】
抗体又はその抗原結合ドメインが参考抗原結合分子と結合について競合するか否かを判定するために、前記結合法を二つの方向で実施する:第一の方向では、参考抗原結合分子を飽和条件下でCD28タンパク質(又はCD22タンパク質)と結合させ、続いてCD28(又はCD22)分子に対する試験抗体の結合を評価する。第二の方向では、試験抗体を飽和条件下でCD28(又はCD22)分子と結合させ、続いてCD28(又はCD22)分子に対する参考抗原結合分子の結合を評価する。両方の方向で、第一(飽和)抗原結合分子のみがCD28(又はCD22)分子と結合できるならば、試験抗体及び参考抗原結合分子はCD28(又はCD22)に対する結合について競合すると結論づけられる。当業者には理解されるように、参考抗原結合分子と結合について競合する抗体は、必ずしも参考抗体と同じエピトープと結合する必要はないが、オーバーラップ又は隣接エピトープと結合することによって、参考抗体の結合を立体的に遮蔽することができる。
【0118】
抗原結合ドメインの調製及び二重特異性分子の構築
特定の抗原に対して特異的な抗原結合ドメインは、当技術分野で公知の任意の抗体生成技術によって調製できる。一旦得られたら、二つの異なる抗原(例えば、CD28及びCD22)について特異的な、二つの異なる抗原結合ドメインを、互いに対して適切に配置させて、ルーチン方法を用いて本発明の二重特異性抗原結合分子を産生することができる。(本発明の二重特異性抗原結合分子を構築するために使用できる例示的二重特異性抗体フォーマットについては本明細書中の他の箇所で考察する)。ある特定の実施形態において、本発明の多特異性抗原結合分子の一つ以上の個々の成分(例えば、重及び軽鎖)は、キメラ、ヒト化又は完全ヒト抗体由来である。そのような抗体を作製する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、本発明の二重特異性抗原結合分子の一つ以上の重及び/又は軽鎖は、VELOCIMMUNE(商標)技術を用いて調製することができる。VELOCIMMUNE(商標)技術(又は任意の他のヒト抗体生成技術)を使用して、ヒト可変領域とマウス定常領域とを有する、特定の抗原(例えば、CD28又はCD22)に対する高親和性キメラ抗体がまず単離される。抗体を、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特性について特徴づけ、選択する。マウス定常領域を望ましいヒト定常領域で置換して、本発明の二重特異性抗原結合分子中に組み入れることができる完全ヒト重及び/又は軽鎖を生成する。
【0119】
遺伝子組換え動物を使用してヒト二重特異性抗原結合分子を作製することができる。例えば、内在性マウスイムノグロブリン軽鎖可変配列を再配列して発現することができない遺伝子改変マウスを使用することができ、このマウスは、内在性マウスκ座におけるマウスκ定常遺伝子と機能的に連結されたヒトイムノグロブリン配列によってコード化される一つ又は二つのヒト軽鎖可変ドメインのみを発現する。そのような遺伝子改変マウスを使用して、二つの異なるヒト軽鎖可変領域遺伝子セグメントの一方に由来する可変ドメインを含む同一の軽鎖と結合する二本の異なる重鎖を含む完全ヒト二重特異性抗原結合分子を産生することができる。(例えば、そのような組換えマウス及び二重特異性抗原結合分子を産生するためのその使用の詳細な考察については、その全内容が参照により本明細書中に組み込まれる、米国出願第2011/0195454号を参照)。
【0120】
生物学的に同等
本発明は、記載された抗体のものとは異なるが、CD28及び/又はCD22と結合する能力を保持するアミノ酸配列を有する抗原結合分子を包含する。そのような変異体分子は、親配列と比較した場合、アミノ酸の一つ以上の付加、欠失、または置換を含むが、記載された抗原結合分子の生物学的活性と本質的に同等である生物学的活性を示す。同様に、本発明の抗原結合分子コード化DNA配列は、開示された配列と比較した場合、ヌクレオチドの1つ以上の付加、欠失、または置換を含むが、本発明の記載された抗原結合分子ものと本質的に生物学的に同等である抗原結合分子をコード化する配列を包含する。そのような変異体アミノ酸およびDNA配列の例は上で議論されている。
【0121】
本発明は、本明細書に記載の例示的抗原結合分子のいずれかと生物学的に同等である抗原結合分子を含む。二つの抗原結合タンパク質、または抗体は、たとえば、それらが薬剤的同等物又は薬剤的代替物であって、類似した実験条件下、同じモル用量で、単回投与(single does)又は複数回投与のいずれかで投与した場合に、その吸収速度及び吸収程度が有意差を示さないならば、生物学的に同等と見なされる。一部の抗体は、吸収の程度は同等であるが吸収速度は同等ではないならば、同等または薬剤的代替物とみなされるが、それでも、吸収速度のそのような違いは意図的であり、標識に反映され、例えば、慢性的使用などで有効な体内薬物濃度を達成するために必須ではなく、調査される特定の医薬品にとって医学的に重要でないため、生物学的に同等であると見なされ得る。
【0122】
一実施形態において、二つの抗原結合タンパク質は、それらの安全性、純度、および効力において臨床的有意差がない場合、生物学的に同等である。
【0123】
一実施形態において、二つの抗原結合タンパク質は、患者が参照製品と生物学的製品との間で1回以上切り替えることができ、そのような切り替えなしの継続的な治療と比較した場合に、免疫原性の臨床的に有意な変化、または有効性の減少を含む、副作用のリスクの予想される増加がないならば、生物学的に同等である。
【0124】
一実施形態では、二つの抗原結合タンパク質は、そのようなメカニズムが知られている範囲で、それらが両方とも共通のメカニズムまたは使用条件に対する作用メカニズムによって作用する場合、生物学的に同等である。
【0125】
生物学的同等性は、インビボ法及びインビトロ法によって実証することができる。生物学的同等性の測定としては、例えば、(a)抗体又はその代謝物の濃度を血液、血漿、血清、又は他の生体液における時間の関数として測定する、ヒト又は他の哺乳動物におけるインビボ試験;(b)ヒトインビボバイオアベイラビリティデータと相関し、合理的に予想するインビトロ試験;(c)抗体(又はその標的)の適切な急性薬理学的効果を時間の関数として測定する、ヒト又は他の哺乳動物におけるインビボ試験;並びに(d)抗体の安全性、有効性、又はバイオアベイラビリティ若しくは生物学的同等性を確立する、充分に管理された臨床試験が挙げられる。
【0126】
本明細書中に記載する例示的二重特異性抗原結合分子の生物学的に同等な変異体は、例えば、残基若しくは配列の様々な置換を行うことによって、又は生物学的活性に必要のない末端若しくは内部残基若しくは配列を除去することによって、構築することができる。例えば、生物学的活性に必須ではないシステイン残基を除去するか又は他のアミノ酸と置換して、再生時に不必要または誤った分子内ジスルフィド架橋が形成されるのを防止することができる。他の文脈では、生物学的に同等な抗体は、抗体のグリコシル化特性を修飾するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を排除又は除去する突然変異を含む、本明細書中に記載する例示的二重特異性抗原結合分子を含み得る。
【0127】
種の選択性と種の交差反応性
本発明は、ある特定の実施形態によると、ヒトCD28と結合するが、他の種からのCD28とは結合しない抗原結合分子を提供する。本発明はまた、ヒトCD22と結合するが、他の種からのCD22とは結合しない抗原結合分子も提供する。本発明はまた、ヒトCD28及び一つ以上の非ヒト種からのCD28と結合する抗原結合分子;並びに/又はヒトCD22及び一つ以上の非ヒト種からのCD22と結合する抗原結合分子も含む。
【0128】
本発明のある特定の例示的実施形態によると、ヒトCD28及び/又はヒトCD22と結合し、場合によっては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、アレチネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル(cynomologous)、マーモセット、アカゲザル又はチンパンジーCD28及び又はCD22の一つ以上と結合する可能性があるか又は結合しない可能性がある、抗原結合分子が提供される。例えば、本発明の特定の例示的実施形態において、ヒトCD28及びカニクイザル(cynomolgous)CD28と結合する第一抗原結合ドメインと、ヒトCD22と特異的に結合する第二抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗原結合分子が提供される。
【0129】
免疫複合体
本発明は、例えば、サイトトキシン、化学療法薬、免疫抑制剤又は放射性同位体などの治療部分と複合体化した抗原結合分子(「免疫複合体」)を包含する。細胞毒性薬には、細胞にとって有害な薬剤が含まれる。免疫複合体の形成に好適な細胞毒性薬及び化学療法剤の例は当該技術分野で公知である(例えば、その全内容は参照により本明細書中に組み込まれる国際公開第05/103081号を参照)。
【0130】
治療製剤及び投与
本発明は、本発明の抗原結合分子を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、好適な担体、賦形剤、及び改善された移動、送達、寛容性などを提供する多の薬剤と用いて処方される。多数の適切な処方は、すべての薬剤師に公知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAで見出すことができる。これらの処方としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、脂質(カチオン性又はアニオン性)含有ベシクル(例えば、LlPOFECTIN(商標)、Life Technologies、Carlsbad、CA)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油及び油中水エマルション、エマルションカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、及びカーボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。Powell et al.”Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照。
【0131】
患者に投与される抗原結合分子の用量は、患者の年齢及び体格、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変化し得る。好ましい用量は、典型的には、体重又は体表面積にしたがって算出される。本発明の二重特異性抗原結合分子を成人患者において治療目的で使用する場合、本発明の二重特異性抗原結合分子を、通常、約0.01~約20mg/kg体重、さらに好ましくは約0.02~約7mg/kg体重、約0.03~約5mg/kg体重、又は約0.05~約3mg/kg体重の単回用量で静脈内投与するのが有利であり得る。状態の重篤度に応じて、治療の頻度及び期間を調節することができる。二重特異性抗原結合分子を投与するための有効投与量及びスケジュールは経験的に決定することができる;例えば、患者の進行は定期評価によってモニタリングすることができ、それに応じて用量を調節することができる。さらに、投与量の種間スケーリングは、当該技術分野で周知の方法を用いて実施することができる(例えば、Mordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0132】
例えば、リポソーム中への封入、微小粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現できる組換え細胞、受容体依存性エンドサイトーシスなど、様々な送達系が公知であり、本発明の医薬組成物を投与するために使用できる(例えば、Wu et aI.,1987,J.BioI.Chem.262:4429-4432を参照)。導入の方法としては、限定されるものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、及び経口経路が挙げられる。組成物は、任意の便利な経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収によって投与でき、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与できる。組成物は、任意の便利な経路によって、例えば、注入又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜裏層(lining)(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)からの吸収によって投与することができ、他の生物学的活性剤と共に投与してもよい。投与は全身的又は局所的であってよい。
【0133】
本発明の医薬組成物は、標準的注射針及び注射器を用いて皮下的又は静脈内的に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達器具は、本発明の医薬組成物の送達に容易に適用される。そのようなペン型送達器具は、再使用可能又は使い捨てであり得る。再使用可能なペン型送達器具は、概して、医薬組成物を含む交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物が全部投与され、カートリッジが空になったら、空のカートリッジを容易に廃棄することができ、そして医薬組成物を含む新しいカートリッジと交換することができる。ペン型送達器具は再使用することができる。使い捨てペン型送達器具には交換可能なカートリッジがない。むしろ、使い捨てペン型送達器具は、器具内のリザーバーに保持された医薬組成物があらかじめ充填されている。リザーバーの医薬組成物が空になったら、器具全体を廃棄する。
【0134】
多数の再使用可能なペン及び自己注射器送達装置が、本発明の医薬組成物の日か送達に適用される。例としては、ほんの数例として、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)pen、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、II及びIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、及びOPTICLlK(商標)(Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される使い捨てペン型送達器具の例としては、ほんの数例として、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、及びKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLlCK(商標)Autoinjector(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart, Germany)、EPIPEN(Dey、L.P.)、及びHUMIRA(商標)Pen(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
ある特定の状況では、医薬組成物は、制御放出系で送達することができる。一実施形態において、ポンプを使用することができる(Langer、前出;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用できる;Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise (eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照。さらに別の実施形態においては、制御放出系を組成物の標的付近に配置することができ、したがって、全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115-138を参照)。他の制御放出系は、Langer,1990,Science 249:1527-1533の総説で議論されている。
【0136】
注射可能な製剤には、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射、点滴用の投薬形態が含まれ得る。これらの注射可能な製剤は、公知の方法によって調製することができる。例えば、注射可能な製剤は、例えば、注射に従来使用されている無菌水性媒体又は油性媒体中に上記抗体又はその塩を、溶解、懸濁、又は乳化させることによって調製することができる。したがって、注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の補助剤を含む等張液などがあり、これらは、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコールグリコール、ポリエチレングリコール)、ノニオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、水素化ヒマシ油のHCO-50(ポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用することができる。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油等が用いられ、これらは、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用することができる。このように調製された注射剤は、好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0137】
有利には、上述の経口又は非経口的に使用するための医薬組成物は、一回分の活性成分に適した単位用量で投薬形態に調製される。単位用量のそのような投薬形態としては、例えば、錠剤、ピル、カプセル、注射(アンプル)、坐剤などが挙げられる。含まれる前記抗体の量は、概して、単位用量で投薬形態あたり約5~約500mgであり;特に、注射の形態では、前記抗体が約5~約100mgで含まれ、他の投薬形態については約10~約250mgで含まれることが好ましい。
【0138】
抗原結合分子の治療上の使用
本発明は、それを必要とする対象に、抗CD28抗体、又はCD28と標的抗原(例えば、CD22)とに特異的に結合する二重特異性抗原結合分子を含む治療用組成物を投与することを含む方法を含む。治療用組成物は、本明細書中で開示する抗体又は二重特異性抗原結合分子のいずれかと薬剤的に許容される担体又は希釈剤とを含み得る。本明細書中で使用する場合、「それを必要とする対象」という表現は、がんの一つ以上の症状又は兆候を示すヒト若しくは非ヒト動物(例えば、腫瘍を発現するか、若しくは以下に記載するがんのいずれかに罹っている対象)、あるいはCD22活性の阻害若しくは低下又はCD22+細胞の枯渇から恩恵を受けるヒト若しくは非ヒト動物を意味する。
【0139】
本発明の抗体及び二重特異性抗原結合分子(並びにこれを含む治療用組成物)は、とりわけ、免疫応答の刺激、活性化及び/又は標的化が有益である任意の疾患又は障害を治療するために有用である。特に、本発明の抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子は、CD22発現若しくは活性又はCD22+細胞の増殖と関連するかはこれらによって媒介される任意の疾患若しくは障害の治療、予防及び/又は改善のために使用することができる。本発明の治療法が達成される作用メカニズムには、エフェクタ細胞、例えば、T細胞の存在下でCD22を発現する細胞の殺滅が含まれる。本発明の二重特異性抗原結合分子を用いて阻害又は殺滅することができる、CD22を発現する細胞には、例えば、がん性B細胞が含まれる。
【0140】
本発明の抗原結合分子は、例えば、血液、骨髄、リンパ節(例えば、胸腺、脾臓)、結腸、肝臓、肺、乳房、直腸がん、中枢神経系、及び膀胱がんで生じる原発性及び/又は転移性腫瘍を治療するために使用することができる。ある例示的実施形態によると、本発明の二重特異性抗原結合分子は、B細胞増殖性障害を治療するために使用される。
【0141】
本発明はまた、対象における残存がんを治療するための方法も包含する。本明細書中で使用する場合、「残存がん」という語は、抗がん療法での治療後の対象における一つ以上のがん性細胞の存在又は持続を意味する。
【0142】
ある特定の態様によると、本発明は、CD22発現と関連する疾患又は障害(例えば、B細胞増殖性障害)を治療する方法であって、対象が他の種類の抗がん療法に対して非反応性であることが示された後に、本明細書中の他の箇所で記載する二重特異性抗原結合分子の一つ以上を当該対象に投与することを含む方法を提供する。例えば、本発明は、B細胞増殖性障害を治療する方法であって、がん、例えば、対象がB細胞増殖性障害に罹っている患者に対する標準治療を受けた後、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週又は4週、2ヵ月、4ヵ月、6ヵ月、8ヵ月、1年、又はそれ以上で、抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子を当該患者に投与することを含む方法を包含する。他の態様では、IgG4 Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子(抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子)をまず、(例えば、前立腺がん細胞の堅固な初期枯渇を提供するために)一つ以上の時点で対象に投与し、続いて、異なるIgGドメイン、例えばIgG1 Fcドメインを含む同等の二重特異性抗原結合分子を、その後の時点で投与する。本発明の抗CD28/抗CD22抗体を他の二重特異性抗原結合分子と、例えば、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせて使用し得ることが想定される。本発明の二重特異性抗体は、チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1及びCTLA-4、並びに他の標的を標的とするものと組み合わせて使用されることも想定される。同じ腫瘍抗原(例えば、CD22)を標的とするが、二重特異性抗体の一方はT細胞上のCD3を標的とし、他方の二重特異性抗体が共刺激分子様CD28を標的とする、二つの二重特異性抗体を組み合わせることが有利であり得る。この組み合わせは、腫瘍細胞殺滅を増強するために単独で使用してもよいし、又はチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用してもよい。
【0143】
併用療法及び処方
本発明は、本明細書中に記載する例示的抗体及び二重特異性抗原結合分子のいずれかを、一つ以上の追加の治療活性成分と組み合わせて含む組成物及び治療製剤、並びにそれを必要とする対象にそのような組み合わせを投与することを含む治療方法を包含する。
【0144】
本発明の抗原結合分子と併用又は組み合わせて投与することができる例示的な追加の治療薬としては、例えば、化学療法、放射線療法、PD-1を標的とするチェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、又はセミプリマブ、米国特許第9,987,500号を参照、配列番号162/170のHCVR/LCVR)、CTLA-4、LAG3、TIM3など、GITR、OX40、4-1BBなどの分子を標的とする共刺激アゴニスト二価抗体、CD3x二重特異性抗体(例えば、米国特許第9,657,102号(REGN1979)、国際公開第2017/053856A1号、国際公開第2014/047231A1号、国際公開第2018/067331A1号及び国際公開第2018/058001A1号を参照)、CD22XCD3、CD22XCD28を標的とするか、又はCD20XCD3を標的とする他の抗体及び他の共刺激CD28x二重特異性抗体が挙げられる。
【0145】
本発明の抗体と組み合わせて有益に投与し得る他の薬剤としては、例えば、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤、及び小分子サイトカイン阻害剤を含むサイトカイン阻害剤並びにサイトカイン、例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18、又はそれらの各受容体に結合する抗体が挙げられる。本発明の医薬組成物(例えば、本明細書中で開示する抗CD28/抗CD22二重特異性抗原結合分子を含む医薬組成物)はまた、「ICE」:イホスファミド(例えば、Ifex(登録商標))、カルボプラチン(例えば、Paraplatin(登録商標))、エトポシド(例えば、Etopophos(登録商標)、Toposar(登録商標)、VePesid(登録商標)、VP-16);「DHAP」:デキサメタゾン(例えば、Decadron(登録商標))、シタラビン(例えば、Cytosar-U(登録商標)、シトシンアラビノシド、ara-C)、シスプラチン(例えば、Platinol(登録商標)-AQ);及び「ESHAP」:エトポシド(例えば、Etopophos(登録商標)、Toposar(登録商標)、VePesid(登録商標)、VP-16)、メチルプレドニゾロン(例えば、Medrol(登録商標))、高用量シタラビン、シスプラチン(例えば、Platinol(登録商標)-AQ)から選択される一つ以上の治療薬組み合わせを含む治療レジメンの一部として投与することもできる。
【0146】
本発明はまた、本明細書中に記載の抗原結合分子のいずれかと、VEGF、Ang2、DLL4、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EGFRvlll、cMet、IGF1 R、B-raf、PDGFR-o、PDGFR-I3、FOLH1、PRLR、STEAP1、STEAP2、TMPRSS2、MSLN、CA9、ウロプラキン、又は前記サイトカインのいずれかの一つ以上の阻害剤とを含む治療組み合わせも包含し、ここで、阻害剤は、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、ペプチボディ、ナノボディ若しくは抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント;F(ab’)フラグメント;Fdフラグメント;Fvフラグメント;scFv;dAbフラグメント;又は他の操作された分子、例えば、ダイアボディ、トライアオボディ、テトラボディ、ミニボディ及び 最小認識単位)である。本発明の抗原結合分子はまた、組み合わせ with 抗ウイルス剤、抗生物質、鎮痛剤、コルチコステロイド及び/又はNSAIDと組み合わせて投与及び/又は同時処方することもできる。本発明の抗原結合分子はまた、放射線治療及び/又は従来型化学療法、又はチェックポイント阻害剤又は他の二重特異性抗体を含む生物学的製剤を用いた治療も含む治療レジメンの一部として投与することもできる。
【0147】
本発明は、本明細書中に記載する抗原結合分子のいずれかを一つ以上の化学療法剤と組み合わせて含む組成物及び治療製剤を包含する。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド(Cytoxan(商標));アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、及びウレドパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamine);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア(nitrosureas)、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトロルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えば、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート(trimetrexate);プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗アドレクタル、例えば、アミノグルテチミド、マイトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダラキセート;デフォファミン;デメコルシン(demecolcine);ジアジクオン;エルフオルニチン;エリプチニウムアセタート;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン(triaziquone);2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えば、パクリタキセル(Taxol(商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)及びドセタキセル(Taxotere(商標);Aventis Antony、France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えば、シスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;及び前記のいずれかの薬剤的に許容される塩、酸又は誘導体が挙げられる。この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調整又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェンを含む抗エストロゲン、4(5)-イミダゾールを阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(Fareston);並びに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド、及びゴセレリン;並びに前記のいずれかの薬剤的に許容される塩、酸又は誘導体も含まれる。
【0148】
追加の治療活性成分は、本発明の抗原結合分子の投与直前に、投与と同時に、又は投与直後に、投与することができる;(本開示に関して、そのような投与レジメンは、追加の治療活性成分「と組み合わせた」抗原結合分子の投与とみなされる)。
【0149】
本発明は、本発明の抗原結合分子を、本明細書中の他の箇所で記載する追加の治療活性成分(複数可)の一つ以上と同時処方される医薬組成物を包含する。
投与レジメン
【0150】
本発明のある特定の実施形態によると、抗原結合分子(例えば、抗CD28抗体又はCD22及びCD28と特異的に結合する二重特異性抗原結合分子)の複数用量を対象に対して所定の期間にわたって投与することができる。本発明のこの態様にかかる方法は、対象に対して本発明の抗原結合分子の複数用量を連続して投与することを含む。本明細書中で使用する場合、「連続して投与する」とは、抗原結合分子の各用量を対象に対して異なる時点で、例えば、あらかじめ決められた間隔(例えば、数時間、数日、数週、または数カ月)をあけた異なる日に投与することを意味する。本発明は、抗原結合分子の単一の初回用量、続いて抗原結合分子の一つ以上の第二用量、続いて任意選択的に抗原結合分子の一つ以上の第三用量を、連続して投与することを含む方法を包含する。
【0151】
「初回用量」、「第二用量」、及び「第三用量」という語は、本発明の抗原結合分子の投与の時間的順序を指す。したがって、「初回用量」は、治療レジメンの開始時に投与される用量である(「ベースライン用量」とも呼ばれる);「第二用量」は、初回用量の後に投与される用量である;そして「第三用量」は第二用量の後に投与される用量である。初回用量、第二用量、及び第三用量は、すべて同じ量の抗原結合分子を含んでいてもよいが、概して、投与の頻度に関して互いに異なっていてもよい。しかしながら、ある特定の実施形態において、初回用量、第二用量及び/又は第三用量に含まれる抗原結合分子の量は、治療の過程で互いに変わる(例えば、必要に応じて上方又は下方調節される)。ある特定の実施形態では、2以上(例えば、2、3、4、又は5)の用量を治療レジメンの開始時に「負荷用量」として投与し、続いてより低頻度で投与される後続の用量(例えば、「維持用量」)を投与する。
【0152】
本発明の例示的一実施形態では、第二及び/又は第三用量の各々は、直前の投薬後1~26(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、方はそれ以上)週で投与される。「直前の投薬」という表現は、本明細書中で使用する場合、一連の複数回投与において、介在する投薬がなく配列中の次の用量を投与する前に患者に投与される抗原結合分子の用量を意味する。
【0153】
本発明のこの態様にかかる方法は、患者に対して、抗原結合分子(例えば、抗CD28抗体又はCD22及びCD28と特異的に結合する二重特異性抗原結合分子)の任意の数の第二及び/又は第三用量を投与することを含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、単一の第二用量のみを患者に投与する。他の実施形態では、2以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上の)第二用量を患者に投与する。同様に、ある特定の実施形態において、単一の第三用量のみを患者に投与する。他の実施形態において、2以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上の)第三用量を患者に投与する。
【0154】
複数の第二用量を含む実施形態では、各第二用量を他の第二用量と同じ頻度で投与してもよい。例えば、各第二用量は、直前の投薬の1~2週間後に患者に投与してもよい。同様に、複数の第三用量を含む実施形態では、各第三用量を他の第三用量と同じ頻度で投与してもよい。例えば、各第三用量は、直前の投薬の2~4週間後に患者に投与してもよい。あるいは、第二および/または第三用量を患者に投与する頻度は、治療レジメンの過程にわたって変化し得る。投与の頻度は、臨床検査の後、個々の患者のニーズに応じて医師が治療の過程で調節することもできる。
【0155】
一実施形態において、抗原結合分子(例えば、CD22及びCD28と特異的に結合する二重特異性抗原結合分子)を対象に対して重量基準の用量として投与する。「重量基準の用量」(例えば、mg/kgで表した用量)は、抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は対象の体重に応じて変化するであろう二重特異性抗原結合分子の用量である。
【0156】
別の実施形態では、抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は二重特異性抗原結合分子は対象に固定用量として投与される。「固定用量」(例えば、mg単位の用量)とは、抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は二重特異性抗原結合分子の一回量が、任意の特定の対象関連因子、例えば重量に関係なくすべての対象に使用されることを意味する。特定の一実施形態において、本発明の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は二重特異性抗原結合分子の固定用量は、所定の体重又は年齢に基づく。
【0157】
概して、本発明の抗原結合分子の好適な用量は、レシピエントの体重1キログラムあたり約0.001~約200.0ミリグラムの範囲内であり、概して、体重1キログラムあたり約1~50mgの範囲内であり得る。例えば、抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は二重特異性抗原結合分子は、単回用量につき約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kgで投与することができる。また、記載されている値の中間の値や範囲も本発明の一部であることが意図される。
【0158】
いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合分子は、約25mg~約2500mgの固定用量で投与される。いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合分子は、約25mg、約30mg、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、約500mg、約525mg、約550mg、約575mg、約600mg、約625mg、約650mg、約675mg、約700mg、約725mg、約750mg、約775mg、約800mg、約825mg、約850mg、約875mg、約900mg、約925mg、約950mg、約975mg、約1000mg、約1500mg、約2000mg、又は約2500mgの固定用量として投与される。また、記載されている値の中間の値や範囲も本発明の一部であることが意図される。
【0159】
抗体の診断用途
本発明の二重特異性抗体はまた、例えば、診断目的で、サンプル中のCD28若しくはCD22、又はCD28発現細胞若しくはCD22発現細胞を検出及び/又は測定するために使用できる。例えば、抗-抗CD28x抗CD22抗体、又はそのフラグメントを使用して、CD28又はCD22の異常な発現(例えば、過剰発現、過小発現、発現不足など)によって特徴づけられる状態又は疾患を診断することができる。CD28又はCD22の例示的診断アッセイは、例えば、患者から得られたサンプルを、本発明の抗体と接触させることを含み得、ここで、抗体は、検出可能な標識又はレポータ分子で標識されている。あるいは、標識されていない抗体を、それ自体が検出可能に標識された二次抗体と組み合わせて、診断用途において使用することができる。検出可能な標識またはレポータ分子は、放射性同位体、例えば、H、14C、32P、35S、若しくは125I;蛍光又は化学発光部分、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、若しくはローダミン;又は酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、又はルシフェラーゼであり得る。サンプル中のCD28又はCD22を検出又は測定するために使用できる特定の例示的アッセイとしては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。本発明によるCD28又はCD22診断アッセイにおいて使用できるサンプルには、正常又は病的状態で、検出可能な量のCD28若しくはCD22タンパク質、又はそのフラグメントを含む、患者から得ることができる任意の組織又は流体サンプルが含まれる。概して、健常な患者(例えば、異常なCD28又はCD22レベル又は活性と関連する疾患又は状態に罹患していない患者)から得られる特定のサンプル中のCD28又はCD22のレベルを測定して、CD28又はCD22のベースライン又は標準レベルをまず確立する。CD28又はCD22のこのベースラインレベルを次に、CD28又はCD22関連疾患又は状態に罹っている疑いのある個体から得られたサンプルにおいて測定されたCD28又はCD22のレベルと比較することができる。
【実施例
【0160】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物をどのように作成し使用するかの完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示され、本発明者らが自身の発明の想定する範囲を限定することを意図するものではない。使用した数値(例えば、量、温度など)に関する精度を確保する努力をしたが、多少の実験誤差及び偏差を考慮する必要がある。別段の指示のない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0161】
実施例1 抗CD22xCD28抗体の構築
抗CD28抗体の生成
VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒトイムノグロブリン重及びκ軽鎖可変領域をコード化するDNAを含む遺伝子操作マウス)を、マウスIgG2aのFc部分に融合させたヒトCD28タンパク質、又はCD28を発現する細胞若しくはCD28をコード化するDNAで免疫かすることによって、抗CD28抗体を得た。抗体免疫応答をCD28特異的イムノアッセイによってモニタリングした。所望の免疫応答が達成されたら、脾臓細胞を収集し、マウス骨髄腫細胞と融合して、それらの生存能力を保存し、ハイブリドーマ細胞株を形成した。ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、選択して、CD28特異的抗体を産生する細胞株を特定した。この技術を使用して、いくつかの抗CD28キメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメイン及びマウス定常ドメインを有する抗体)を得た。加えて、米国出願第2007/0280945A1号で記載されているように、いくつかの完全ヒト抗CD28抗体を、骨髄腫細胞への融合なしに、抗原陽性B細胞から直接単離した。
【0162】
本実施例の方法に従って生成した例示的抗CD28抗体のある特定の生物学的特性を以下に記載する実施例で詳細に記載する。
【0163】
抗CD22抗体の生成
遺伝子改変マウス(VELOCIMMUNE(登録商標)マウス、前記参照)をヒトCD22抗原(例えば、hCD22 ecto(D20-R687)を参照。hFc、R&D Systems、Catalog#1968-SL-050;Accession# CAA42006(図3も参照)で免疫化することによるか、又はヒトイムノグロブリン重及びκ軽鎖可変領域をコード化するDNAを含む遺伝子操作マウスをヒトCD22抗原で免疫化することによって、抗CD22抗体を得た。
【0164】
免疫化後、脾臓細胞を各マウスから収集し、(1)マウス骨髄腫細胞を融合させてそれらの生存能力を保存し、ハイブリドーマ細胞を形成し、そしてCD22特異性についてスクリーニングするか、又は(2)反応性抗体(抗原陽性B細胞)と結合し特定するソーティング試薬としてヒトCD22フラグメントを使用して、B細胞をソーティングした(米国出願第2007/0280945A1号に記載のとおり)。
【0165】
ヒト可変領域及びマウス定常領域を有するCD22に対するキメラ抗体をまず単離した。抗体を特徴づけし、親和性、選択性などをはじめとする所望の特性について選択した。必要ならば、マウス定常領域を所望のヒト定常領域、例えば、野生型又は修飾IgG1若しくはIgG4定常領域と置換して、完全ヒト抗CD22抗体を生成した。選択された定常領域は特定用途に応じて変わり得るが、高親和性抗原結合及び標的特異性特性は可変領域にある。
【0166】
CD28及びCD22と結合する二重特異性抗体の生成
抗CD22特異的結合ドメインと抗CD28特異的結合ドメインとを含む二重特異性抗体は、標準的方法を使用して構築し、ここで、抗CD22抗原結合ドメイン及び抗CD28抗原結合ドメインは、各々、共通のLCVRと対になった、異なる別個のHCVRを含む。場合によっては、抗CD28抗体からの重鎖、抗CD22抗体からの重鎖及び共通の軽鎖を利用して二重特異性抗体を構築した(表1を参照)。
【0167】
本実施例にしたがって創出された二重特異性抗体は、二つの独立した抗原結合ドメイン(すなわち、結合アーム)を含む。第一抗原結合ドメインは、抗CD28抗体由来の重鎖可変領域(「CD28-VH」)を含み、第二抗原結合ドメインは、抗CD22抗体由来の重鎖可変領域(「CD22-VH」)を含む。抗CD22及び抗CD28の両方は共通の軽鎖を共有する。CD28-VH/CD22-VH対合によって、T細胞上のCD28及び腫瘍細胞上のCD22を特異的に認識する抗原結合ドメインを創出する。
【0168】
実施例2 重及び軽鎖可変領域アミノ酸及び核酸配列
表1は、本発明の選択された抗CD22抗体の重及び軽鎖可変領域並びにCDRのアミノ酸配列識別子を記載する。対応する核酸配列識別子を表2に記載する。
表1:CD22抗体のアミノ酸配列識別子
【表1】
表2:CD22抗体の核酸配列識別子
【表2】
【0169】
表3は、本発明の選択された抗CD28抗体の重及び軽鎖可変領域(HCVR及びLCVR)、CDRのアミノ酸配列識別子を記載する。対応する核酸配列識別子を表4に記載する。
表3:CD28抗体のアミノ酸配列識別子
【表3】
表4:CD28抗体の核酸配列識別子
【表4】
【0170】
構築された様々な抗CD22x抗CD28二重特異性抗体の成分部分のまとめを表5に記載する。表6及び7は、二重特異性抗体のHCVR、LCVR、CDR及び重鎖及び軽鎖配列識別子を記載する。
表5:抗CD22x抗CD28二重特異性抗体の成分部分のまとめ
【表5】
【0171】
表6は、本明細書中で励磁される二重特異性抗CD22x抗CD28抗体のアミノ酸配列識別子を示す。対応する核酸配列識別子を表7に記載する。
表6:抗CD22x抗CD28二重特異性抗体のアミノ酸配列
【表6】
表7:抗CD22x抗CD28二重特異性抗体の核酸配列
【表7】
実施例3:水素重水素交換によるCD22に対するREGN5837結合のエピトープマッピング
【0172】
質量分析を伴うH/D交換エピトープマッピング(HDX-MS)を実施して、H4sH33037P2と相互作用するCD22のアミノ酸残基(組換えヒトCD22、配列番号50)を決定した(表1、配列番号2/10のHCVR/LCVR対参照)(抗hCD22モノクローナル抗体;REGN5837の親抗hCD22抗体)。H/D交換法の概要は、例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259;及びEngen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aに記載されている。
【0173】
HDX-MS実験は、重水素標識及びクエンチング用のLeaptec HDX PALシステムと、サンプル消化及びローディング用のWaters Acquity M-Class(Auxiliary solvent manager)と、解析的勾配用のWaters Acquity M-Class(μBinary solvent manager)と、ペプチド質量測定用のThermo Q Exactive HF質量分析計とから構成された統合HDX/MSプラットフォームで実施した。
【0174】
標識溶液は、pD7.0(10mMリン酸塩緩衝液、140mM NaCl、及び3mM KCl、25℃でpH7.4に相当)にてDO中PBS緩衝液として調製した。重水素標識については、11μlのCD22.mmH(REGN5140(配列番号50)、56.7μM)又は1:0.6モル比でH4sH33037P2(上記参照)とプレミックスしたCD22.mmH(Ag-Ab複合体)を20℃にて44μlのDO標識溶液とともに様々な時点で、二連でインキュベートした(例えば、非重水素化対照=0秒;5分及び10分間重水素標識)。55μlの予め冷却したクエンチ緩衝液(0.5M TCEP-HCl、8M尿素及び1%ギ酸)を各サンプルに添加することによって重水素化反応をクエンチして、20℃で5分間インキュベートした。次に、クエンチしたサンプルをWaters HDX Managerに注入し、オンラインペプシン/プロテアーゼ XIII消化を行った。消化したペプチドは、10%-32%B(移動相A:0.5%水中ギ酸、移動相B:0.1%アセトニトリル中ギ酸)の13分勾配を用いたC8カラム(1.0mm×50mm、NovaBioassays)によりにより分離した。溶出したペプチドは、LC-MS/MS又はLC-MSモードでQ Exactive HF質量分析によって分析した。
【0175】
Byonic検索エンジン(Protein Metrics)を使用して、CD22及びそのランダム化配列を含むデータベースについて非重水素化CD22サンプルのLC-MS/MSデータを検索した。検索パラメータ(単位はELN)は、非特異的酵素消化をデフォルトとして、ヒトグリコシル化を共通の変数修飾として使用して設定した。次に、同定されたペプチドのリストをHDX Workbenchソフトウェア(第3.3版)にインポートして、全ての重水素化サンプルからLC-MSによって検出された各ペプチドの重水素取り込みを計算した。所与のペプチドについて、各時点での重心質量(強度加重平均質量)を使用して、重水素取り込み(D)及び重水素取り込みのパーセンテージ(%D)を計算した(下記参照)。
【数1】
【0176】
hCD22.mmH(配列番号50)からの合計427のペプチドが、hCD22.mmH単独及びH4sH33037P2との複合体中のhCD22.mmH(配列番号2/10のHCVR/LCVR対)サンプルの両方から同定され、hCD22の92.0%配列カバレージであった。5%を上回るD取り込みパーセント差を示すペプチドは有意に保護されたと定義された表8)。hCD22.mmHについて、アミノ酸481~505(NVQYAPRDVRVRKIKPLSEIHSGNS;配列番号57)及び523~537(FWEKNGRLLGKESQLNF;配列番号58)に相当するペプチドはH4sH33037P2により有意に保護された。
表8:H4sH33037P2に対する結合により有意に保護された、選択されたCD22.mmHペプチド
【表8-1】
【表8-2】
実施例4:CD22に対して結合するH4sH33041P2の水素重水素交換によるエピトープマッピング
【0177】
質量分析を伴うH/D交換エピトープマッピング(HDX-MS)を実施して、H4sH33041P2と相互作用するCD22のアミノ酸残基(組換えヒトCD22、配列番号50)を決定した(配列番号18/10のHCVR/LCVR対を有する抗hCD22モノクローナル抗体)、REGN5838の親抗hCD22)。H/D交換法の概要は、例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259;及びEngen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aに記載されている。
【0178】
HDX-MS実験は、重水素標識及びクエンチング用のLeaptec HDX PALシステムと、サンプル消化及びローディング用のWaters Acquity M-Class(Auxiliary solvent manager)と、解析的勾配用のWaters Acquity M-Class(μBinary solvent manager)と、ペプチド質量測定用のThermo Q Exactive HF質量分析計とから構成された統合HDX/MSプラットフォームで実施した。
【0179】
標識溶液は、pD7.0(10mMリン酸塩緩衝液、140mM NaCl、及び3mM KCl、25℃でpH7.4に相当)にてDO中PBS緩衝液として調製した。重水素標識については、11μlのCD22.mmH(REGN5140(配列番号50)、56.7μM)又は1:0.6モル比でH4sH33041P2とプレミックスしたCD22.mmH(Ag-Ab複合体)を、20℃にて44μlのDO標識溶液と共に様々な時点で、二連でインキュベートした(例えば、非重水素化対照=0秒;5分及び10分間重水素標識)。55μlの予め冷却したクエンチ緩衝液(0.5M TCEP-HCl、8M尿素及び1%ギ酸)を各サンプルに添加することによって重水素化反応をクエンチして、20℃で5分間インキュベートした。次に、クエンチしたサンプルをWaters HDX Managerに注入し、オンラインペプシン/プロテアーゼ XIII消化を行った。消化したペプチドは、10%-32%B(移動相A:0.5%水中ギ酸、移動相B:0.1%アセトニトリル中ギ酸)の13分勾配を用いたC8カラム(1.0mm×50mm、NovaBioassays)によりにより分離した。溶出したペプチドは、LC-MS/MS又はLC-MSモードでQ Exactive HF質量分析によって分析した。
【0180】
Byonic検索エンジン(Protein Metrics)を使用して、CD22及びそのランダム化配列を含むデータベースについて非重水素化CD22サンプルのLC-MS/MSデータを検索した。検索パラメータ(単位はELN)は、非特異的酵素消化をデフォルトとして、ヒトグリコシル化を共通の変数修飾として使用して設定した。次に、同定されたペプチドのリストをHDX Workbenchソフトウェア(第3.3版)にインポートして、全ての重水素化サンプルからLC-MSによって検出された各ペプチドの重水素取り込みを計算した。所与のペプチドについて、各時点での重心質量(強度加重平均質量)を使用して、重水素取り込み(D)及び重水素取り込みのパーセンテージ(%D)を後述するように計算した。
【数2】
【0181】
hCD22.mmH(配列番号50)から合計454のペプチドが、hCD22.mmH単独及びH4sH33041P2サンプルとの複合体中hCD22.mmHの両方から同定され、hCD22の90.5%配列カバレージであった。5%を上回るD取り込み値パーセント差を示すペプチドは、有意に保護されたと定義された。hCD22.mmHについて、アミノ酸246~277(CEVSSSNPEYTTVSWLKDGTSLKKQNTFTLNL;配列番号59)に相当するペプチドは、H4sH33041P2により有意に保護された。表9は、H4sH33041P2に対する結合により有意に保護された、選択されたペプチドからの結果を提示する。
表9:H4sH33041P2に対する結合に際して著しい保護を伴う選択されたCD22.mmHペプチド
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
実施例5:表面プラズモン共鳴によって誘導されたCD22xCD28二重特異性抗体の結合親和性及び速度定数
【0182】
精製された抗CD22xCD28二重特異性mAb又は抗CD22二価親mAbと結合するhCD22.mmH(配列番号50)及びmfCD22.mmH(配列番号51)の平衡解離定数(K値)(表1参照、mAB33037P2;HCVR/LCVR:配列番号2/10)及びmAb33041P2;HCVR/LCVR:配列番号18/10)は、Biacore T-200又はBiacore 4000装置を用いたリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサを用いて決定した。CM5 Biacoreセンサ表面を、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(REGN2567:HCVR/LCVR:配列番号33/34)とのアミンカップリングにより誘導体化して、精製された抗CD22xCD28二重特異又は抗CD22親mAbを捕捉した(mAb33037P2及びmAb33041P2について表1及び2を参照)。このBiacore結合試験は、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05%v/vSurfactant P20(HBS-EPランニング緩衝液)から構成される緩衝液中で実施した。HBS-EPランニング緩衝液中で調製されたC末端myc.mycヘキサヒスチジンタグ(配列番号60として開示される「ヘキサヒスチジン」)を有する、異なる濃度のhCD22(配列番号50)及びmfCD22(配列番号51)(90nM~3.33又は0.37nMの範囲、3倍希釈)をmAb捕捉表面上に30μl/分の流量で注入した。CD22.mmH(配列番号50)の捕捉したモノクローナル抗体に対する結合を5分間モニタリングし、HBS-EPランニング緩衝液中のCD22.mmHの解離を10分間モニタリングした。結合反応速度実験のすべてを25℃で実施した。速度論的結合(Kinetic association)(k)及び解離(k)速度定数は、リアルタイムセンサグラムを、Scrubber 2.0c曲線のフィッティングソフトウェアを使用した1:1結合モデルに適合させることによって決定した。結合解離平衡定数(K)及び解離半減期(t1/2)は、運動速度定数から以下のようにして計算した:
(M)=k/k、及びt1/2(min)=0.693/k/60
【0183】
25℃での精製mAbと結合するヒト及びcynoCD22の結合反応速度パラメータを表10~12で後述する。
【0184】
hCD28.mmH(配列番号54)精製抗CD22xCD28二重特異性mAb又は抗CD28二価親mAb(mAb14226P2については表3及び4を参照)の平衡解離定数(K値)は、Biacore T-200装置を用いるリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサを使用して決定した。CM4 Biacoreセンサ表面を、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(REGN2567;HCVR/LCVR 配列番号33/34)とのアミンカップリングにより誘導体化して、精製抗CD22xCD28二重特異性又は抗CD28親mAbを捕捉した(上記参照)。このBiacore結合試験は、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05%v/v Surfactant P20(HBS-EPランニング緩衝液)から構成される緩衝液中で実施した。HBS-EPランニング緩衝液中で調製されたC末端myc.mycヘキサヒスチジンタグ(配列番号60として開示される「ヘキサヒスチジン」)を有する、異なる濃度のhCD28(600nM~2.47nMの範囲、3倍希釈)をmAb捕捉表面上に50μl/の流量で注入した。CD28.mmH(配列番号54)の捕捉したモノクローナル抗体に対する結合を5分間モニタリングし、HBS-EPランニング緩衝液中のCD28.mmHの解離を10分間モニタリングした。結合反応速度実験のすべてを25℃で実施した。速度論的結合(ka)及び解離(kd)速度定数は、リアルタイムセンサグラムを、Scrubber 2.0c曲線のフィッティングソフトウェアを使用した1:1結合モデルに適合させることによって決定した。結合解離平衡定数(K)及び解離半減期(t1/2)は、運動速度定数から以下のようにして計算した:
(M)=k/k、及びt1/2(min)=0.693/k/60
【0185】
25℃での精製mAbに結合するヒトCD28の結合反応速度パラメータを表13で後述する。
【表10】
表10:25℃での抗CD22xCD28二重特異性mAbに対するヒトCD22.mmH結合反応速度
表11:25℃での抗CD22xCD28二重特異性mAbに対するサルCD22.mmH(XP_005588899.1)結合反応速度
【表11】
表12:25℃での抗CD22xCD28二重特異性mAbに対するサルCD22.mmH(EHH59463.1)結合反応速度
【表12-1】
【表12-2】
表13:25℃での抗CD22xCD28二重特異性mAbに対するヒトCD28.mmH結合反応速度
【表13】
実施例6 フローサイトメトリを使用した、標的細胞株(Nalm6)、エフェクタ細胞株(Jurkat)、並びにカニクイザルT及びB細胞に対する抗CD28及び抗CD22xCD28二重特異性抗体の結合特異性
【0186】
フローサイトメトリ分析を利用して、CD22xCD28二重特異性抗体の、ヒトCD22発現Nalm6細胞及びヒトCD28発現JurkaT細胞並びにカニクイザルT(CD28+)及びB(CD22+)細胞に対する結合を決定した。簡単に説明すると、1×10細胞/ウェルを30分間4℃にて、CD22xCD28二重特異性抗体又はH4sH15260P(ヒト又はカニクイザルCD28又はCD22に対する交差反応性がなくヒト抗原と結合するアイソタイプ対照ヒトIgG4抗体)の、Jurkat及びNalm6細胞について133nMから61pMの範囲の段階希釈とインキュベートした。カニクイザルPBMCを単一の67nM濃度の抗体とインキュベートした。インキュベーション後、細胞を、1%ろ過FBSを含む冷PBSで2回洗浄し、PEコンジュゲート抗ヒト二次抗体を細胞に添加し、さらに30分間インキュベートした。カニクイザルPBCMを含むウェルにさらなるフェノタイピング抗体カクテル(抗CD2、抗CD20、抗CD16、抗CD14)を添加した。抗体を含まないか又は二次抗体のみを含むウェルを対照として使用した。
【0187】
二次抗体とインキュベートした後、細胞を洗浄し、1%ろ過FBSを含む200μlの冷PBS中に再懸濁させ、BD LSR_Fortessaでフローサイトメトリにより分析した。カニクイザルT細胞はCD2+/CD16-と同定され、B細胞はCD20+と同定された。FACS結合のEC50値は、Prismソフトウェアの4パラメータ非線形回帰分析を使用して計算した。
【0188】
表14は、フローサイトメトリによって決定される、CD22を発現する細胞株の表面に対するCD22xCD28二重特異性抗体の結合データを提示する。表14はまた、フローサイトメトリによって決定される、ヒトCD28を発現する細胞株の表面に対するCD22xCD28二重特異性抗体の結合データも提示する。
【0189】
REGN5837はNalm6細胞と結合した EC50値1.3E-08M。REGN5838はNalm6細胞と結合した EC50値1.8E-08M。アイソタイプ対照抗体はCD22を発現する細胞株に対する結合を示さなかった。
【0190】
REGN5837はJurkaT細胞と結合した EC50値2.1E-08M。REGN5838はJurkaT細胞と結合した EC50値2.3E-08M。アイソタイプ対照抗体はCD28を発現する細胞株に対する結合を示さなかった。
【0191】
表15は、フローサイトメトリによって決定される、カニクイザル(Cambodian起源)T及びB細胞の表面に対するCD22xCD28二重特異性抗体の結合データを提示する。
【0192】
REGN5837は、試験した12匹のカニクイザルのうち12匹のB細胞と、12匹のうち11匹のT細胞と結合した。CD20+B細胞に対する結合は、二次細胞の12.6~30.3倍の範囲であり、メジアンは15.7倍であった。CD2+/CD16-T細胞に対する結合は二次細胞の1.2~5.2倍であり、メジアンは3.5倍であった。正の結合は二次細胞の1.2倍超として定義された。REGN5838は、試験した12匹のカニクイザルのうち12匹のB細胞と、12匹のうち11匹のT細胞と結合した。CD20+B細胞に対する結合は、二次細胞の6.5~13.5倍の範囲であり、メジアンは9.3倍であった。CD2+/CD16-T細胞に対する結合は二次細胞の1.2~4.7倍であり、メジアンは3.8倍であった。正の結合は二次細胞の1.2倍超として定義された。アイソタイプ対照抗体はカニクイザルT又はB細胞に対して結合を示さなかった。
表14:組換え標的及びエフェクタ細胞に対するフローサイトメトリ実験の結合及び結合倍数結果
【表14】
表15:カニクイザル(Cambodian起源)T及びB細胞に対するフローサイトメトリ実験の結合倍数結果。
【表15-1】
【表15-2】
【0193】
実施例7 フローサイトメトリを使用した、ヒトCD4+T細胞及び組換え標的細胞に対する抗CD28及び抗CD22xCD28二重特異性抗体の結合特異性
フローサイトメトリ分析を使用して、CD22xCD28二重特異性(REGN5837;REGN5838)及び対照抗体のヒトCD28を発現するエフェクタ細胞(ヒトCD4T細胞)及びヒトCD22を発現する標的細胞(HEK293/hCD20/hCD22及びRaji/CD80及びCD86陰性B-細胞)に対する結合を調査した。HEK293/hCD20細胞は、CD28及びCD22の陰性細胞株として含まれていた。
【0194】
ヒトCD4T細胞は、健常ドナー白血球パックから得られたヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単離された。PBMC単離は、50mLのSepMate(商標)チューブを製造業者の推奨するプロトコルにしたがって使用する密度勾配遠心分離法により実施した。簡単に説明すると、15mLのFicoll-Paque PLUSを50mLのSepMateチューブに積層し、続いてD-PBS+2%のFBSで1:2に希釈した30mLの白血球を添加した。その後のステップは、SepMate製造業者のプロトコルにしたがって実施した。CD4T細胞を続いて、製造業者の指示に従ってMiltenyi BiotecのヒトCD4 Microbeadキットを使用してPBMCから単離した。単離されたCD4T細胞を、バイアルあたり5×10細胞の濃度で10%DMSOを含むFBS中で凍結させた。
【0195】
HEK293細胞株及びヒトRaji B細胞を含む標的細胞は以下のようにして調製した。
【0196】
ヒトCD20(受入番号NP_068769.2のアミノ酸M1~P297)を発現する安定なHEK293細胞株(ATCC、#CRL-1573)にヒトCD22(受入番号NP_001762.2のアミノ酸M1~A847)を形質導入した。ヒトCD22陽性細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)により単離し、単一クローン化した。結果として得られるクローン細胞株(HEK293/hCD20/hCD22クローンE4)を、500g/mLのG418を追加したDMEM+10%+P/S/G+NEAA中で維持した。
【0197】
細胞表面上にCD20、CD22、Fcγ受容体(FcγR)、CD80及びCD86を内因的に発現するヒトRaji B細胞(ATCC#CCL-86)は、CRIPSR技術を使用してCD80及びCD86を欠失させることによって遺伝子組み換えた。CD80及びCD86はCD28の公知リガンドである。操作されたRaji/CD80及びCD86陰性細胞を、HEPES及びピルビン酸ナトリウムを追加したRPMI+10%FBS+ペニシリン+ストレプトマイシン+グルタミン中で維持した。
【0198】
細胞を以下のようにして染色した。
【0199】
簡単に説明すると、ヒトCD4+T細胞、HEK293/hCD20、HEK293/hCD20/hCD22及びRaji/CD80及びCD86陰性細胞を、D-PBS+2%FBSを含む染色緩衝液中に再懸濁させた。Raji細胞をマウスIgG(最終625mg/mL)とインキュベートして、内在性FcΓ受容体をブロックした)。簡単に説明すると、96ウェルプレート中、2×10細胞/ウェルを、30~60分間4℃にて6.1pM~100nMの範囲の抗体の段階希釈でインキュベートした。抗体を含まない陰性対照サンプルが含まれていた。細胞を冷染色緩衝液で一回洗浄し、Allophycocyanin(APC)標識抗ヒト二次抗体と30~45分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を、FBSを含まない冷D-PBS緩衝液で一回洗浄し、LIVE/DEAD Fixable Green Dead Cell Stain(Invitrogen)と製造業者の指示に従ってインキュベートして、生細胞と死細胞とを区別した。次に、細胞をBD Cytofix Buffer中で製造業者の指示に従って固定し、洗浄し、染色緩衝液中に再懸濁させ、iQue Screenerフローサイトメータでフローサイトメトリによって分析した。EC50決定のために、幾何平均蛍光強度(MFI)値は、GraphPad Prismを使用して9ポイント応答曲線上で4パラメータロジスティック方程式を使用して分析した。以下の式を使用して結合倍数を算出した:
結合倍数=試験した用量範囲内の最大幾何MFI値
バックグラウンドの幾何MFI値[0nM]
【0200】
CD22xCD28二重特異性抗体がヒトCD22及びCD28と結合する能力をCD22(HEK293/hCD20/hCD22)を又は内因的に(Raji/CD80及びCD86陰性)を過剰発現する一次ヒトCD4T細胞及び操作細胞に関してフローサイトメトリにより評価した。陰性細胞株が対照として含まれていた(HEK293/hCD20)。
【0201】
EC50/倍数結合値を図1及び表16にまとめる。
表16:ヒトCD4T細胞及び操作標的細胞に関するフローサイトメトリ実験のEC50及び倍数結合結果:
【表16】
略号:NC=計算可能でない(結合が飽和に達しなかった曲線について表示);ND=測定せず
表16 ヒトCD4T細胞及び操作細胞株、例えば、HEK293/hCD20、HEK293/hCD20/hCD22又はRaji/CD80及びCD86陰性B細胞に対する抗体のEC50及び倍数結合値の表。
【0202】
予想通り、CD28抗体、親(REGN5705;HCVR/LCVR配列番号35/36)又はその二重特異性フォーマット(REGN5837、REGN5838及び1アームCD28対照(配列番号48)のいずれも陰性HEK293/hCD20細胞に結合しなかった。非特異的結合のためにアイソタイプ対照抗体で最高濃度にて約1.8xの弱い結合が検出された(図1及び表16)。
【0203】
抗CD22x抗CD28抗体の結合は、HEK293/hCD20/hCD22、(REGN5837については16.44x、REGN5838については34.9x、EC50は約11.4nM)並びにRaji/CD80及びCD86陰性細胞(REGN5837については38.35x、EC50約9.76nM、REGN5838については81.74x、EC50約14.9nM)で観察された。1アームCD28及びアイソタイプ対照では有意な結合は検出されなかった(図1及び表16)。
【0204】
ヒトCD28を標的とする抗体の結合が一次ヒトCD4T細胞で検出された。親CD28抗体であるREGN5705はバックグラウンドを越えて約4.13nMのEC50で37.48xと結合し、一方、二重特異性抗体であるREGN5837、REGN5838及び1アーム対照は、それぞれ、9.25x、10.63x及び10.97xの結合を示した。予想通り、アイソタイプ対照は細胞と結合しなかった(図1及び表16)。
実施例8 抗CD22xCD28二重特異性抗体共刺激は、抗CD20xCD3二重特異性抗体による標的化細胞傷害性、T細胞活性化、及びサイトカイン放出を増強する
【0205】
CD20xCD3標的化殺滅のCD22xCD28増強を、CD80及びCD86の発現が欠失するように操作されたRaji細胞(Raji-80/86DKO)を標的とする96時間細胞傷害性アッセイで評価した。簡単に説明すると、ヒトPBMCを補充RPMI培地中に1×10細胞/mLで蒔き、37℃で一晩インキュベートして、付着したマクロファージ、樹状細胞、及び一部の単球を除去することによって、リンパ球について濃縮した。翌日、Raji-80/86DKO細胞を1uMの蛍光追跡色素CFDA-SEで標識し、付着細胞枯渇ナイーブPBMCを1uMの蛍光追跡色素CellTrace Violetで標識した。標識した標的細胞及びPBMC(エフェクタ/標的細胞10:1比)を、配列番号42から構成される一方の重鎖アームと、配列番号43から構成される他方の重鎖アームと、配列番号44の軽鎖とを有する、CD20xCD3二重特異性抗体、REGN1979の段階希釈(濃度範囲:5nM~0.64pM)及び固定濃度のCD22xCD28共刺激分子REGN5837又はREGN5838、1アーム対照CD28二重特異性(REGN5678)、又は2.5ug/ml(16.7nM)のIgG4sアイソタイプ対照(H4sH10154P3、配列番号37/38のHCVR/LCVR対を有するアイソタイプ対照)と、96時間37℃で同時インキュベートした。細胞をプレートから収集し、FACS BD LSRFortessa-X20でのFACSによって分析した。FACS分析のために、細胞をFixable Live/Dead Far Red反応性(Invitrogen)色素で染色した。20,000個のカウンティングビーズをFACS分析の直前に各ウェルに添加し、サンプルごとに10,000個のビーズを集めた。殺滅の特異性を評価するために、細胞を生CFDA-SE標識集団で細胞をゲートした。生集団のパーセントを記録し、生存率の計算に使用した。
【0206】
T細胞活性化は、CD2、CD4、CD8、及びCD25と直接コンジュゲートした抗体と細胞をインキュベートすることによって評価した。CD25を発現するCD8+細胞のパーセンテージをT細胞活性化の尺度として報告した。さらに、T細胞が増殖するにつれて、CellTraceVioletが希釈され、FACSによって測定されるMFIが低下する。したがって、T細胞増殖は、CD8+T細胞上でのCellTraceVioletのMFIにおける減少として報告された。CD80及びCD86発現及び結合を欠いた標的Raji細胞のEC50値は、Prismソフトウェアの4パラメータ非線形回帰分析を用いて計算した。
【0207】
このアッセイからの上清をサイトカインレベルの分析のために集めた。IL17a、IFNγ、TNFα、IL-10、IL-6、IL-4、及びIL-2の濃度は、Cytometric Bead Array(CBA)キットを製造業者の指示にしたがって使用して分析した。サイトカインレベルは、キット標準によって作成した曲線から内挿し、pg/mLとして報告した。最大サイトカインレベルは、Prismソフトウェアの4パラメータ非線形回帰分析を使用して計算した。
【0208】
抗CD20xCD3二重特異性抗体REGN1979(上記参照)が非刺激ヒトT細胞に、共刺激CD22xCD28抗体又は1アームCD28又はアイソタイプ対照抗体と組み合わせてヒトCD20及びCD22を発現する標的細胞を殺滅させる能力を評価するアッセイの結果を試験した。
【0209】
REGN1979は、ヒトT細胞を活性化して、CD80及びCD86発現を欠いたRaji細胞を用量依存的に枯渇させた。固定濃度のCD22xCD28二重特異性抗体をREGN1979に添加することで、1アームCD28又はアイソタイプ対照抗体を伴うREGN1979と比較した場合、REGN1979の細胞傷害効力(EC50)が3.5~6.4倍増強された(表17).
【0210】
観察される、REGN1979により媒介される標的細胞溶解は、それぞれ、CD8+細胞に関するCD25上方調節又はCellTraceバイオレット希釈によって測定されるように、T細胞活性化及び増殖と関連していた。固定濃度のCD22xCD28二重特異性抗体をREGN1979に添加することで、REGN1979誘導性T細胞活性化及び増殖の可能性が、1アームCD28又はアイソタイプ対照抗体を伴うREGN1979と比較した場合に、それぞれ2.1~2.6倍及び7.4~8.4倍増強された(表17)。
【0211】
REGN1979はヒトサイトカインの放出を誘導した。CD22xCD28二重特異性抗体とREGN1979で観察される、放出されたサイトカインは、固定濃度の1アームCD28又はアイソタイプ対照抗体を伴う固定濃度のCD22xCD28共刺激分子との存在下で増強された(表18)。
【0212】
まとめると、共刺激により、対照抗体と組み合わせたCD20xCD3で観察されたものと比較して、標的化細胞傷害性、T細胞活性化、及びサイトカイン放出の可能性が増大した。
表17:細胞傷害性及びT細胞活性化のEC50値(3回の実験の平均)
【表17-1】
【表17-2】
表18:サイトカイン放出(pg/mL)
【表18】
【0213】
実施例9:CD22二重特異性抗体のバイオアッセイ
T細胞活性化は、抗原提示細胞(APC)上で腫瘍組織適合複合体クラスI又はII(MHCI又はMHCII)タンパク質によって提示される特定のペプチドを認識するT細胞受容体(TCR)を刺激することによって達成される(Goldrath et al.1999)。活性化されたTCRは、次に、シグナリング事象のカスケードを開始し、これは、様々な転写因子、例えば、アクチベータ-タンパク質1(AP-1)、活性化T細胞の核因子(NFAT)又は活性化B細胞の核因子κ-軽鎖エンハンサ(NFκB)によってモニタリングすることができる。T細胞応答はその後、T細胞上で構成的又は誘導的に発現される共受容体、例えば、CD28、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球タンパク質4)、PD-1(プログラムされた細胞死タンパク質1)、LAG-3(リンパ球-活性化遺伝子3)又は他の分子の関与によりさらに精緻化される(Sharpe et al. 2002)。共刺激分子であるCD28は、その内在性リガンドである、APC上に発現されたCD80又はCD86によって活性化される。CD28は、TCR活性化後にNFκB転写因子によって制御される経路などの細胞シグナルを増強する。CD28共シグナルは、T細胞分化、増殖、サイトカイン放出及び細胞死などの有効なT細胞活性化に重要である(Smeets et al.2012)。
【0214】
抗CD22xCD28二重特異性抗体を、ルシフェラーゼベースのレポータバイオアッセイ及び一次ヒトCD4T細胞を用いたIL-2機能的アッセイで特徴づけた。
【0215】
ルシフェラーゼベースのレポータアッセイ
T細胞/APC(抗原提示細胞)ルシフェラーゼベースのレポータアッセイは、抗CD28x抗CD22二重特異性抗体の関与によるNFκB活性に対するCD28活性化の効果を評価するために開発された。
【0216】
レポータT細胞の操作:
クローナルレポータT細胞株は、不死ヒトJurkatT細胞(ATCC#TIB-152)にNFκB-ルシフェラーゼ(NFκB-Luc)レンチウイルスレポータ(Qiagen製)を製造業者の指示どおりに形質導入することによって操作した。クローナルレポータ株(Jurkat/NFκB-Lucクローン1C11)を、1μg/mLのピューロマイシンを追加したRPMI+10%FBS+ペニシリン+ストレプトマイシン+グルタミン中で維持した。
【0217】
APCの操作:
ヒトCD20(受入番号NP_068769.2のアミノ酸M1~P297)を発現する安定なHEK293細胞株(ATCC、#CRL-1573)にヒトCD22(受入番号NP_001762.2のアミノ酸M1~A847)を形質導入した。ヒトCD22陽性細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)により単離し、単一クローン化した。結果として得られるクローン細胞株(HEK293/hCD20/hCD22クローンE4)を、500μg/mLのG418を追加したDMEM+10%+P/S/G+NEAA中で維持した。
【0218】
細胞表面上にCD20、CD22、Fcγ受容体(FcγR)、CD80及びCD86を内因的に発現するヒトRaji B細胞(ATCC#CCL-86)は、CRIPSR技術を使用してCD80及びCD86を欠失させることによって遺伝子組み換えた。CD80及びCD86はCD28の公知リガンドである。操作されたRaji/CD80及びCD86陰性細胞を、HEPES及びピルビン酸ナトリウムを追加したRPMI+10%FBS+ペニシリン+ストレプトマイシン+グルタミン中で維持した。
【0219】
T細胞/APC刺激:
この実験では、操作されたレポータT細胞を二つの二重特異性抗体によって刺激した。第一刺激は、二重特異性抗体REGN2281である、配列番号39で構成される一本の重鎖アームと、配列番号40で構成される一本の重鎖アームと、配列番号41の軽鎖アームとを有する抗CD20x抗CD3抗体)を活性化するT細胞によって送達され、操作されたレポータT細胞上のCD3分子と、HEK293上又はRaji/CD80及びCD86陰性B細胞上のCD20とを標的とする。第一刺激は、MHC分子上に提示された特異的ペプチドであるそれらのリガンドによりTCRの活性化の必要性を回避する。第二刺激は、CD28二重特異性抗体(すなわち、抗CD28x抗CD22二重特異性抗体)によって駆動される。この抗体は、APC上で発現されるそのリガンドであるCD80/CD86によるT細胞のCD28活性化を模倣する。これは、T細胞上のCD28及びHEK293細胞上又はRaji/CD80上及びCD86陰性B-細胞上のCD22と相互作用し、操作されたレポータT細胞上のCD28の活性化を駆動する。TCR及びCD28同時活性化は、NFκBの転写活性の増強に至り、これによりレポータ遺伝子、ルシフェラーゼの産生が増大する。
【0220】
ルシフェラーゼアッセイのセットアップ:
10%FBS及びP/S/Gを追加したRPMI1640をアッセイ培地として使用して、抗CD22x抗CD28二重特異性抗体のスクリーニング用の細胞懸濁液及び抗体希釈液を調製した。
【0221】
スクリーニングの一日前に、操作されたレポータT細胞を細胞培養培地中で0.5×10細胞/mLに培養した。1:3に段階希釈された抗CD28x抗CD22二重特異性抗体及び対照を一定の200pMのREGN2281(抗CD20x抗CD3、上記参照)又はREGN1945(配列番号45/46のHCVR/LCVR対を有するhIgG4アイソタイプ対照)の存在下で試験した。10点希釈は15pM~100nMの範囲であり、最終希釈液はCD28抗体を含まない。
【0222】
試薬を以下の順序で添加した:1)固定濃度の最終200pMのREGN2281(抗CD20x抗CD3、上記参照)又はREGN1945(hIgG4アイソタイプ対照、上記参照)を96ウェル白色平底プレートの各ウェルに添加した;2)4×10細胞/mL(最終細胞濃度1×10細胞/ウェル)に再懸濁させたHEK293細胞又はRaji/CD80及び2×10細胞/mL(最終細胞濃度5×10細胞/ウェル)に再懸濁させたCD86陰性B細胞を対応するプレートに添加した;3)段階希釈された抗体を対応するウェルに添加した;4)一晩培養したレポータT細胞を2×10/mLに再懸濁させ、最終濃度5×10細胞/ウェルでプレートに添加した。プレートを4~6時間37℃/5%COにてインキュベートした後、100μLのONE-Glo(商標)(Promega)試薬を添加して、細胞を溶解させ、ルシフェラーゼ活性を検出した。放射された光をマルチラベルプレートリーダーEnvision(PerkinElmer)で、相対光単位(RLU)で捕捉した。すべての段階希釈は二連で試験した。
テストされた。
【0223】
抗体のEC50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して10点用量応答曲線上で4パラメータロジスティック方程式にデータを適合させることによって決定した。誘導倍数は次式を用いて算出した:
【数3】
【0224】
一次ヒトCD4 T細胞を用いたIL-2機能的アッセイ
一次CD4T細胞/APC機能的アッセイは、抗CD22x抗CD28二重特異性抗体との関与によるIL-2産生に対するCD28活性化の効果を評価するために開発された。
【0225】
ヒト一次CD4+T細胞単離:
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は健常ドナー白血球パックから単離した。PBMC単離は、製造業者推奨のプロトコルに従って50mLのSepMate(商標)チューブを使用した密度勾配遠心分離法により達成された。簡単に説明すると、15mLのFicollPaque PLUSを50mLのSepMateチューブに積層し、続いてD-PBS+2%のFBSで1:2に希釈した30mLの白血球を添加した。その後のステップは、SepMate製造業者のプロトコルにしたがって実施した。CD4T細胞を続いて、製造業者の指示に従ってMiltenyi BiotecのヒトCD4 Microbeadキットを使用してPBMCから単離した。単離されたCD4T細胞を、バイアルあたり5×10細胞の濃度で10%DMSOを含むFBS中で凍結させた。
【0226】
CD28抗体で処理した一次CD4 T細胞からのIL-2放出:
このアッセイにおいて、一次CD4T細胞は、ヒトCD20を発現するように操作されたHEK293細胞又は内在性CD20を発現するRaji細胞のいずれかと組み合わせた抗CD20x抗CD3二重特異性抗体(REGN2281、上記参照)を使用して、それらの表面上のCD3の架橋により活性化され、ここで、CD80及びCD86はCRISPR技術を用いてサイレンシングされている(Raji/CD80及びCD86陰性細胞)。REGN2281のCD20アームをCD20発現細胞に結合させることで、CD3受容体のクラスタ化が駆動され、T細胞刺激に必要な第一シグナルが提供される。重要なことに、場合によっては、一次白血球を遺伝的に異なる細胞と同時培養することで、同種異系の決定因子が不適合となり、結果としてT細胞が活性化される可能性がある。これにより、抗CD20x抗CD3二重特異性抗体を外因的に添加することなく充分な一次刺激を提供することができる。一次刺激にかかわらず、定量可能なIL-2放出を検出するために、CD28分子を架橋することによって提供できる共刺激が必要である。ここで、二重特異性CD28抗体(すなわち、抗CD28x抗CD22二重特異性抗体)はCD4T細胞上のCD28並びにHEK293/hCD20又はRAJI/CD80及びCD86陰性細胞上のCD22と相互作用し、CD28のクラスタ化-活性化を駆動する。組み合わせたTCR及びCD28の関与により、IL-2産生が増強され、細胞培養培地中に放出される。IL-2は、PerkinElmer製の均質な無洗AlphaLisaキットを用いて細胞上清から検出し定量される。
【0227】
事前に単離され凍結されたヒトCD4T細胞を刺激培地(10%FBS、HEPES、NaPyr、NEAA、及び50U/mlのベンゾナーゼヌクレアーゼを含む0.01mM BMEを追加したX-VIVO15細胞培養培地)中でアッセイ当日に解凍した。細胞を1200rpmで10分間遠心分離し、刺激培地中に再懸濁させ、96ウェル丸底プレート中に1×10細胞/ウェルの濃度で蒔いた。ヒトCD20を単独又はヒトCD22と組み合わせて発現するように操作されたHEK293細胞を一次刺激培地中10×10細胞/mLの濃度にて15μg/mLのマイトマイシンCで処理した。Raji/CD80及びCD86陰性細胞を一次刺激培地中10×10細胞/mLの濃度にて20μg/mLのマイトマイシンCで処理した。37℃、5%COで1時間インキュベートした後、HEK293及びRaji細胞を、2%FBSを含むD-PBSで3回洗浄し、CD4T細胞を含むウェルに1×10細胞/ウェルのHEK293細胞又はRaji/CD80及びCD86陰性細胞については5×10細胞/ウェルの最終濃度で添加した。その後、15pM~100nMの範囲の1:3に段階希釈された抗CD28x抗CD22二重特異性又は対照抗体を2nM REGN2281(抗CD20x抗CD3)又はREGN1945(陰性hIgG4アイソタイプ対照、上記参照)の存在下でウェルに添加した。最終時点の10点希釈液はCD28抗体を含んでいなかった。プレートを72時間37℃、5%COにてインキュベートした後、遠心分離して、細胞をペレット化し、40μLの培地上清を集めた。これから、5μLをヒトIL-2AlphaLISAアッセイにおいて製造業者のプロトコルにしたがって試験した。測定は、マルチラベルプレートリーダーEnvisionで取得し、生RFU(相対蛍光単位)値をプロットした。すべての段階希釈は二連で試験した。
【0228】
抗体のEC50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して10点用量応答曲線上で4パラメータロジスティック方程式にデータを適合させることによって決定した。誘導倍数は次式を用いて算出した:
【数4】
結果のまとめと結論:
ルシフェラーゼベースのレポータアッセイ:
【0229】
CD22標的発現の非存在下又は存在下でT細胞上のCD28を介して共刺激を提供する抗CD22x抗CD28二重特異性抗体の能力は、ルシフェラーゼ活性を読み出しとして使用するレポータ細胞ベースのバイオアッセイで評価した。
【0230】
一定の200pM REGN1945(hIgG4アイソタイプ対照)又はREGN2281(抗CD20x抗CD3)に加えてHEK293/hCD20又はHEK293/hCD20/hCD22細胞と同時インキュベートした操作されたレポータT細胞について、活性化曲線を図2(A及びB)に示し、EC50及び誘導倍数値を表19及び20にまとめる。
【0231】
レポータT細胞及びHEK293由来APCを200pMのREGN1945で処理した場合、アッセイで使用したHEK293株に関係なく、CD28二重特異性抗体のいずれもTCR刺激の非存在下でルシフェラーゼ活性において増加を示さなかった。ルシフェラーゼ活性化の増加は、親CD28抗体(REGN5705)とHEK293/hCD20細胞(2.18x)及びHEK293/hCD20/hCD22細胞(2.05x)でのみ観察された。1アームCD28及びアイソタイプ対照抗体はこの設定でルシフェラーゼ応答を起こさなかった(表19及び図2)。
【0232】
レポータT細胞及びHEK293由来APCを200pMのREGN2281で処理した場合、両方の抗CD22x抗CD28二重特異性抗体(REGN5837及びREGN5838)は、EC50及び誘導倍数値の増加で示される、CD22発現HEK293細胞での強いルシフェラーゼ活性を誘導した。1アームCD28対照抗体及び親CD28抗体(REGN5705;HCVR/LCVR配列番号35/36を参照)は、両HEK293株に対して類似した活性を示した。アイソタイプ対照抗体はこの設定でルシフェラーゼ応答を起こさなかった(表20及び図2)。
【0233】
レポータT細胞及びRaji/CD80及びCD86陰性を200pMのREGN1945で処理した場合、両方の抗CD22x抗CD28二重特異性抗体(REGN5837及びREGN5838)並びに親CD28抗体はルシフェラーゼ活性を誘導し、その一方で、1アームCD28対照抗体及びアイソタイプ対照は活性を示さなかった(表19及び図2)。
【0234】
レポータT細胞及びRaji/CD80及びCD86陰性を200pMのREGN2281で処理した場合、親CD28抗体を含むすべてのCD28二重特異性抗体(REGN5837及びREGN5838)並びに1アームCD28対照抗体はルシフェラーゼ活性を誘導した。抗CD22x抗CD28及び親CD28抗体についてのみEC50値を決定することができ、飽和レベルに達しなかったため、1アームCD28対照については決定できなかった。アイソタイプ対照で活性化は検出されなかった(表20及び図2)。
一次ヒトCD4 T細胞を用いたIL-2機能的アッセイ:
【0235】
抗CD22x抗CD28二重特異性抗体が、CD22標的発現の非存在下又は存在下でT細胞上のCD28を介して共刺激を提供する能力を、IL-2サイトカイン産生を測定する機能的一次CD4T細胞アッセイで評価した。
【0236】
活性化曲線を図3(A及びB)に示し、EC50及び誘導倍数値は、HEK293/hCD20、HEK293/hCD20/hCD22、又はRaji/CD80 及びCD86陰性細胞と、一定の2nM REGN1945(hIgG4アイソタイプ対照)又はREGN2281(抗CD20x抗CD3)いずれかの存在下で同時インキュベートしたCD4T細胞について表21にまとめる。
【0237】
HEK293/hCD20又はHEK293/hCD20/CD22細胞と一定量のREGN1945を含むウェルでは、充分な同種異系の一次T細胞刺激が存在しないため、測定可能なIL-2放出は観察されなかった(図3)。しかしながら、Raji/CD80及びCD86陰性細胞と一定量のREGN1945を含むウェルでは、抗体媒介性CD3クラスタ化がない場合でも、充分な一次刺激を提供する有意な同種異形応答のために、IL-2放出が検出された(図3及び表21)。
【0238】
一定の2nM濃度のREGN2281及び親CD28mab(REGN5705、上記参照)を添加した場合、HEK293/hCD20又はHEK293/hCD20/CD22細胞を含むサンプルにおいて、測定可能なIL-2レベルが検出された。二価CD28mAbとは対照的に、HEK293/hCD20細胞及びREGN2281を含むウェルに抗CD22x抗CD28二重特異性mAbを添加した場合、IL2放出は劇的に増強されなかった。HEK293/hCD20/CD22細胞及びREGN2281の存在下でのみ、抗CD22x抗CD28二重特異性mAbはIL-2放出を有意に増強した(図3及び表22)。
【0239】
表19~22を以下に記載する。
【0240】
表19は、HEK293/hCD20、HEK293/hCD20/hCD22又はRAJI/CD80及びCD86陰性細胞並びに一定の200pM REGN1945(アイソタイプ対照)と同時インキュベートした操作されたT細胞におけるルシフェラーゼ活性のEC50値、最大値及び誘導倍数値の表を提示する。
【0241】
表20は、HEK293/hCD20、HEK293/hCD20/hCD22又はRaji/CD80及びCD86陰性細胞並びに一定の200pM REGN2281(抗CD20x抗CD3)と同時インキュベートした、操作されたT細胞におけるルシフェラーゼ活性のEC50値、最大値及び誘導倍数値の表を提示する。
【0242】
表21は、HEK293/hCD20、HEK293/hCD20/hCD22、又はRAJI/CD80及びCD86陰性細胞並びに一定の2nM REGN1945(アイソタイプ対照)と同時インキュベートしたCD4T細胞からのIL-2放出のEC50値、最大値及び誘導倍数値の表を提示する。
【0243】
表22 HEK293/hCD20、HEK293/hCD20/hCD22、Raji/CD80及びCD86陰性細胞並びに一定の2nM REGN2281(抗CD20x抗CD3)と同時インキュベートしたCD4T細胞からのIL-2放出のEC50値、最大値及び誘導倍数値の表を提示する。
表19:200pM REGN1945(アイソタイプ対照)でのTCR刺激の非存在下での操作されたレポータT細胞におけるルシフェラーゼ活性のEC50値、最大値及び誘導倍数値:
【表19】
略号:ND=測定せず
表20:200pM REGN2281(αCD20xαCD3)でのTCR刺激の存在下での操作されたレポータT細胞におけるルシフェラーゼ活性のEC50値、最大値及び誘導倍数値:
【表20】
略号:NC=計算可能でない(応答が飽和に到達しなかった曲線について表示);ND=測定せず。
表21:2nM REGN1945(アイソタイプ対照)の存在下での一次ヒトCD4細胞からのIL-2放出のEC50値、最大値及び誘導倍数値
【表21】
略号:NC=計算可能でない(応答が飽和に到達しなかった曲線について表示);ND=測定せず。
表22:2nM REGN2281(αCD20xαCD3)の存在下での一次ヒトCD4T細胞からのIL-2放出のEC50値、最大値及び誘導倍数値
【表22】
略号:NC=計算可能でない(応答が飽和に到達しなかった曲線について表示);ND=測定せず。
実施例10:PD-L1を発現するように操作された細胞からのIL-2放出に対する抗CD22X抗CD28抗体+セミプリマブの組み合わせの効果
【0244】
材料及び方法
APCの操作:
RAJI細胞
RAJIは、(ATCC(登録商標)CCL-86(商標))の11歳の男性から単離されたBリンパ球細胞株である。RAJIをRPMI+10%FBS+P/S/G+NaPyr+HEPES中で維持する。
【0245】
RAJI CD80及びCD86陰性
RAJI細胞におけるCD80及びCD86の発現は、CRISPR/Cas9システムを用いて排除した。
【0246】
NALM6クローンG5
NALM6クローンは、[NALM6クローンG5(ATCC、#CRL-3273)]の19歳の男性から単離された急性リンパ芽球性白血病(ALL)細胞株である。NALM6細胞をRPMI+10% FBS+P/S/G中で維持する。
【0247】
WSU-DLCL2
WSU-DLCL2は、41歳の白色人種男性の胸水から単離されたヒトDLBCL細胞株である(Leibnitz Institute-DSMZ、Cat.#ACC575)。
【0248】
PD-L1操作細胞株
NALM-6、RAJI CD80及びCD86陰性(RAJI/CD80-CD86-)、並びにWSU-DLCL2細胞株は、ヒトPD-L1(受入番号NP_054862.1のアミノ酸M1-T290)を安定して発現するように遺伝子操作した。得られた細胞株NALM6/PD-L1、RAJI/CD80-CD86-/PD-L1、及びWSU-DLCL2/PD-L1は、RAJI/CD80-CD86-については0.5μg/mLのピューロマイシン、NALM-6/PD-L1及びWSU-DLCL2/PD-L1細胞については1μg/mLのピューロマイシンを追加したそれらの各培地中で維持した。
【0249】
T細胞増殖及びIL-2放出についてのT細胞活性化アッセイ
ヒト一次T細胞及び同種異系のヒトB細胞リンパ腫細胞株[NALM-6、NALM-6/PD-L1、RAJI/CD80-CD86-、RAJI/CD80-CD86-/PD-L1、WSU-DLCL2、WSU-DLCL2/PD-L1])を使用し、固定濃度のセミプリマブの存在下で、IL-2放出に対するREGN5837の効果を評価した。一次白血球を遺伝的に異なる細胞と同時培養することで、同種異系の決定因子が不適合となり、結果としてT細胞が活性化される可能性がある。NALM-6及びRAJI/CD80-CD86-(+/-PD-L1)細胞を用いたアッセイについては、T細胞活性化アッセイは3人のドナーからの濃縮ヒト一次T細胞を用いて実施し、WSU-DLCL2(+/-PD-L1)細胞を利用するアッセイは、1人のドナーからのT細胞を使用した。
【0250】
REGN5837+REGN2810の併用治療を試験するためにT細胞活性化アッセイで使用するT細胞の単離。
NALM-6及びRAJI/CD80-CD86-細胞を利用する実験のために、CD3+T細胞を3人のドナーのPBMC(555109、555130、及び555131)から単離し、WSU-DLCL2細胞を用いたアッセイについては1人のドナー(555175)からのPBMCを使用した。ドナー555109に関しては、密度勾配遠心分離法を使用して末梢血からPBMCを単離した。簡単に説明すると、15mlのFicoll-Paque PLUSを50mlのコニカルチューブに添加し、続いて、2%FBSを含むPBSで1:1に希釈した30mlの血液をその上に重ねる。ブレーキをかけずに400xgで30分間遠心分離した後、単核細胞層を新しいチューブに移し、2%FBSを含むPBSで5xに希釈し、300xgで8分間遠心分離する。ドナー555130、555131、及び555175については、PBMCは、健常なドナーの末梢血からStem Cell Technologies製のEasySep Direct Human PBMC Isolation Kitを用いて製造業者のプロトコルにしたがって単離した。単離したPBMCを、10%DMSOを含むFBS中で凍結させた。CD3+T細胞単離については、PBMCの凍結バイアルを37℃の水浴中で解凍し、50U/mlのベンゾナーゼヌクレアーゼを含む刺激培地(10%FBS、HEPES、NaPyr、NEAA、及び0.01mM BMEを追加したX-VIVO15細胞培養培地)中で希釈した。細胞を1200rpmで10分間遠心分離し、EasySep緩衝液中に再懸濁させ、StemCell Technologies EasySep T Cell Isolationキットを使用し、製造業者のプロトコルにしたがって単離した。
【0251】
CD28抗体で処理した一次CD3 T細胞からのIL-2放出:
ヒトOVCAR-3、PEO1、NALM-6、RAJI/CD80-CD86-、及びWSU-DLCL2細胞(+/-PD-L1)を用いたT細胞活性化アッセイ
刺激培地(10% FBS、HEPES、NaPyr、NEAA、及び0.01mM BMEを追加したX-VIVO15細胞培養培地)中に再懸濁させたCD3+T細胞を96ウェル丸底プレートに1×10細胞/ウェルの濃度で蒔いた。PD-L1を含むか又は含まない(+/-PD-L1)、NALM-6、RAJI/CD80-CD86-、WSU-DLCL2細胞を、20μg/mL(RAJI)又は15μg/mL(NALM-6及びWSU-DLCL2)、マイトマイシンCで処理して、増殖を停止させた。37℃、5%CO2で1時間インキュベートした後、マイトマイシンCで処理した細胞は、2%FBSを含むD-PBSで3回洗浄した後、刺激培地中に再懸濁させた。NALM-6、RAJI/CD80-CD86-、及びWSU-DLCL2細胞(+/-PD-L1)細胞を、RAJI及びWSU-DLCL2細胞については2.5×10細胞/ウェル、NALM-6細胞については5×10細胞/ウェルの最終濃度でCD3+T細胞を含むウェルに添加した。一定濃度のセミプリマブ又は非結合性IgG4対照(20nM)をウェルに添加した。WSU-DLCL2(+/-PD-L1)細胞を使用するアッセイでは、一定濃度のベラタセプト(hCTLA4.hIgG1)又は非結合性IgG1対照(50nM)をウェルに添加した。その後、REGN5837又は非TAAxCD28対照抗体を、NALM-6(+/-PD-L1)細胞については1:4希釈シリーズで3.1pMから200nMまで、WSU-DLCL2及びRAJI/CD80-CD86-(+/-PD-L1)細胞については1:6希釈シリーズで0.6pMから1000nMまで滴定し、ウェルに添加した。10点濃度曲線の最終点には、REGN5837又は非TAAxCD28対照抗体は含まれていなかった。プレートを72時間(WSU-DLCL2(+/-PD-L1))又は96時間(NALM-6及びRAJI/CD80-CD86-(+/-PD-L1))37℃、5%CO2にてインキュベートした後、50μLの培地上清を集めて、IL-2放出を測定した。
【0252】
IL-2放出については、5μLの上清を、ヒトIL-2AlphaLISAキットを製造業者のプロトコルにしたがって使用して試験した。IL-2測定値は、Perkin ElmerのマルチラベルプレートリーダーEnvisionで取得した。既知IL-2濃度の標準曲線が含まれ、pg/ml値を誘導するために使用した。
【0253】
全ての段階希釈をIL-2放出について三連で試験した。抗体のEC50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して10点用量応答曲線上で4パラメータロジスティック方程式から求めた。IL-2放出の最大レベルは、試験した用量範囲内で検出される平均最大応答として与えられる。さらに、WSU-DLCL2細胞を使用するアッセイについて報告されるデータには、非TAAxCD28抗体の濃度を増加させると観察されるIL-2の減少をとらえるために、1000nMの滴定抗体の非存在下又は存在下で生成したIL-2が含まれる。
【0254】
結果のまとめと結論
一次ヒトCD3+T細胞を使用するIL-2機能的アッセイ:
内因的にCD22を発現するB細胞リンパ球細胞株の存在下でT細胞上のCD28を介して共刺激を提供する抗CD22x抗CD28二重特異性抗体の能力を、IL-2サイトカイン産生を測定する機能的一次CD3+T細胞アッセイで評価した。
【0255】
NALM-6(+/-PD-L1)(図5A)又はRAJI/CD80-CD86-(+/-PD-L1)(図5B)とインキュベートしたT細胞の活性化曲線を図5A及び5Bに示す。
EC50及びMax IL-2値は、一定の20nM hIgG4アイソタイプ対照又はセミプリマブのいずれかの存在下で、NALM-6(+/-PD-L1)細胞とインキュベートしたCD3+T細胞については表23Aに、RAJI/CD80-CD86-(+/-PD-L1)とインキュベートしたCD3+T細胞については表23Bにまとめる。WSU-DLCL2(+/-PD-L1)細胞とインキュベートしたCD3+T細胞について、活性化曲線を図4に示す。一定の20nM hIgG4アイソタイプ対照又はセミプリマブのいずれかの存在下、及び一定の50nM hIgG1アイソタイプ対照又はCTLA-4受容体、ベラタセプトのいずれかの存在下、WSU-DLCL2 (+/-PD-L1)細胞とインキュベートしたT細胞については、EC50及びIL-2値(0nM又は1000nMのREGN5837又は非TAAxCD28について報告)を表24にまとめる。
【0256】
ヒト一次T細胞並びに同種異系のB細胞リンパ球細胞株RAJI/CD80-CD86-及びNALM-6の存在下で、REGN5837はIL-2放出を濃度依存的に増加させた。非TAAxCD28対照抗体は高い抗体濃度でIL-2をわずかに増加させる。RAJI/CD80-CD86-又はNALM-6細胞上にPD-L1が存在しない場合、20nMセミプリマブの添加は、IL-2放出に対して影響を及ぼさない。PD-L1を発現するRAJI/CD80-CD86-又はNALM-6細胞が存在する場合、REGN5837単独での治療に応答して放出される最大IL-2は、非PD-L1発現細胞とインキュベートしたT細胞と比較して減少する。セミプリマブの添加は、NALM-6/PD-L1細胞を伴う条件では、REGN5837媒介性IL-2放出をわずかに増強するが、RAJI/CD80-CD86-/PD-L1細胞の存在下では、PD-L1が欠失した、RAJI/CD80-CD86-細胞を伴う条件で観察されるレベルまで、IL-2放出を有意に増強させる。
【0257】
ヒト一次T細胞及び同種異系のB細胞リンパ球細胞株WSU-DLCL2の存在下で、IL-2放出の濃度に依存した増加は見られなかった。反対に、非TAAxCD28対照抗体は、IL-2放出を濃度に依存して減少させることが観察された。CD28リガンドをほとんど又は全く発現しないNALM-6及びRAJI/CD80-CD86-細胞とは異なり、WSU-DLCL2細胞株はCD28リガンドを発現することが知られている。REGN5837のCD28結合アーム、したがって非TAAxCD28抗体のCD28アームは、CD28に対する結合に関してCD28リガンドと競合することが知られているので、非TAAxCD28対照抗体は、WSU-DLCL2細胞上に発現されたCD28リガンドによるCD28活性化をブロックし、IL-2放出を減少させる。非TAAxCD28対照とは異なり、WSU-DLCL2細胞にそのCD22結合アームを介して固定して、CD28リガンドと同様に挙動させ、本質的にそれらを置換する能力のために、IL-2はREGN5837によって減少しない。WSU-DLCL2/PD-L1細胞の存在下で、基礎的IL-2放出は、PD-L1を発現しないWSU-DLCL2細胞と比べて減少する。REGN5837をセミプリマブの非存在下で添加することで、IL-2放出が若干増強される。20nMセミプリマブを添加すると、基礎活性が増強され、REGN5837の用量漸増でさらにわずかに増強することができ、max IL-2放出が、REGN5837及びセミプリマブの組み合わせについて、いずれかの治療単独よりも高くなる。WSU-DLCL2細胞で観察されるように、非TAAxCD28の存在下でのWSU-DLCL2/PD-L1細胞のインキュベーションにより、セミプリマブ又はhIgG4アイソタイプ対照が存在するか否かにかかわらず、IL-2レベルが低下する。REGN5837の影響のマスキングに対するCD28リガンド発現の影響をさらに調査するために、可溶性CTLA-4受容体ベラタセプト、又はhIgG1適合アイソタイプ対照を50nMで添加した。ベラタセプトは高親和性でCD28リガンド、CD80及びCD86と結合し、それらの相互作用を、したがってCD28の活性化をブロックする。50nM ベラタセプトの存在下で、CD28リガンドがCD28と結合して共刺激シグナリングを提供することができないために、基礎IL-2放出は劇的に減少する。このような条件下でも、IL-2放出の用量依存性増強によって認められるように、REGN5837はCD28と結合して共刺激を提供することができる。20nMセミプリマブ単独の添加は、ベラタセプトの存在下でIL-2放出を増強しないが、セミプリマブを、用量を増加させたREGN5837と組み合わせると、PD-L1を過剰発現するように操作された細胞の存在下で、REGN5837単独と比べてmax IL-2放出が増加する。
表23A:REGN5837のセミプリマブとの組み合わせは、PD-L1を発現するように操作されたNALM-6細胞において、REGN5837治療単独を上回ってIL-2放出を増強する。
【表23A-1】
【表23A-2】
ND:濃度依存性応答が観察されなかったので測定しなかった。
表23B:REGN5837のセミプリマブとの組み合わせは、PD-L1を発現するように操作されたRAJI/CD80CD86細胞において、REGN5837治療単独を上回ってIL-2放出を増強する。
【表23B-1】
【表23B-2】
NC:データが4パラメータロジスティック方程式と適合しなかったので計算しなかった。
表24:REGN5837のセミプリマブとの組み合わせは、PD-L1を発現するように操作されたWSU-DLCL2細胞において、REGN5837治療単独を上回ってIL-2放出を増強する。
【表24】
ND:濃度依存性応答が観察されなかったので測定しなかった。
NC:データが4パラメータロジスティック方程式と適合しなかったので計算しなかった。
【0258】
実施例11 REGN1979の存在下及び非存在下でのREGN5837投与の抗腫瘍有効性
導入
REGN5837は、CD22B細胞とCD28T細胞を架橋することによって、B細胞NHL(例えば、DLBCL)を標的とするように設計されたヒトIgG4ベースの二重特異性抗体(bsAb)である。「シグナル1」を提供する(,例えば、TCR又はCD3クラスタ化を介して一次T細胞刺激によりシグナルを送達する)他の薬剤、例えば、CD20xCD3二重特異性抗体(bsAb)REGN1979と組み合わせてREGN5837によって提供される「シグナル2」は、増幅されたT細胞活性化及びT細胞に媒介されたB細胞NHLの殺滅を提供し、CD20xCD3に対する応答を深めることができる。さらに、REGN5837は、CD20xCD3単剤療法に反応しない患者において有効性を増大させる可能性がある。
【0259】
後述する研究では、8日目の確立されたB細胞白血病腫瘍を有する免疫不全NSGマウスに対して投与された、有効量以下の量のCD20xCD3 bsAb(REGN1979)の存在下又は非存在下でのCD22xCD28bsAb REGN5837の抗腫瘍有効性を評価した。
【0260】
簡単に説明すると、マウス(群あたりn=6~9)にヒト末梢血単核細胞(PBMC)を腹腔内(IP)でグラフトし、生物発光画像化(NALM-6-luc)を可能にするためにルシフェラーゼを発現するように操作されたヒトNALM-6 B細胞白血病細胞を12日後に静脈内(IV)移植した。0.04mg/kg固定用量のREGN1979と組み合わせた、0.04、0.4、及び4mg/kgのREGN5837の抗腫瘍有効性を、REGN5837及びREGN1979単剤療法並びに非架橋IgG4P-PVA対照bsAbと比較した。NALM-6-luc細胞の移植後8、15、及び22日に、マウスに抗体を腹腔内(IP)注射により投与した。実験期間中、腫瘍量を週に二回評価した。
【0261】
材料及び方法
ヒト由来の細胞株
NALM-6-luc:NALM-6細胞株は、19歳男性患者(DSMZ、cat#ACC128)から単離された急性リンパ芽球性白血病細胞株であり;この株をEF1a-ルシフェラーゼ-2A-GFP-Puroレンチウイルス(GenTarget)で修飾して、インビボの腫瘍細胞成長の画像化を容易にした。
【0262】
PBMC:ヒトPBMCはReachBio,Cat.#0500-401、ドナー#0180905(腫瘍成長実験)及び0180621(血清抗体実験)から入手した。
【0263】
実験設計
試験システム
メスNSGマウス(8~9週令)をすべての実験で使用した。すべてのマウスにヒトPBMCをIP生着させ、次に生着後12日にNALM-6-luc B細胞白血病細胞をIV移植した。実験設計は表25で詳述する。研究期間にわたって週に二回、生物発光画像化により腫瘍成長をモニタリングした。全ての実験について、マウスをRegeneron動物施設中に標準的条件下で収容した。すべての実験は、Regeneron動物管理使用委員会のガイドラインにしたがって実施した。
【0264】
NSGマウスの生着
メスの免疫不全NSGマウスに4×10ヒトPBMCをIP生着させた。血液の後眼窩収集及びフローサイトメトリによる全血中のすべての生細胞におけるヒトCD45細胞のパーセントの評価後11日にT細胞レベルをチェックした;生着レベルは0.16~16%hCD45細胞の範囲であった。PBMC生着NSGマウスに続いてNALM-6-luc細胞を移植した。
【0265】
NALM-6-Luc培養条件及び腫瘍移植
NALM-6細胞株をEF1a-ルシフェラーゼ-2A-GFP-Puroレンチウイルス(GenTarget)で修飾して、インビボでの腫瘍細胞成長の画像化を促進した。細胞株は、PSG(ペニシリン、ストレプトマイシン、及びグルタミン)を追加した10%FBS中、ピューロマイシン選択下で、RPMI中に維持した。
【0266】
NALM-6-luc細胞を遠心分離によって集め、PBS中に2.5×10細胞/mLで再懸濁させた。NSGマウスに、PBMCの生着後12日で200μl(5×10細胞)のNALM-6-luc細胞をIV注射した。
【0267】
腫瘍測定のための抗体投与
被験物質又は対照を投与する前に、マウスを腫瘍量及びT細胞生着レベルにしたがって階層化した群に割り当てた。被験物質または対照物質を投与する前に、マウスを、腫瘍の大きさとT細胞の生着レベルに応じて層別した群に割り当てた。抗体(REGN5837、REGN1979、REGN5671[非TAAxCD28非架橋対照bsAb]、又はH4sH17664D[非TAAxCD3非架橋対照bsAb])を単剤療法として、又は組み合わせで、IP注射により、移植後8、15、及び22日(インビボ有効性について)に、表に記載する用量で投与した。
表25:腫瘍成長を評価するための実験設計
【表25】
この群の一匹のマウスが実験中早期に死亡し、除外した。この死は、腫瘍量(tumor burdon)によるものではなく、対照群において一匹のマウスが死亡したので、被験物質の投薬に関連する可能性は低かった。
【0268】
腫瘍測定及び指定されたエンドポイント
NALM-6-luc腫瘍を移植したマウスは、IVIS Spectrum装置を用いて週に2回撮影し、Living Imageソフトウェアを用いてデータを解析した。画像化に先立って、マウスにルシフェリン基質をIP注射した。10分後、マウスをイソフルランで麻酔し、生物発光(全光束、光子/秒[p/s]で表す)を定量した。IACUC基準に従い、移植片対宿主病(GVHD)(20%以上の体重減少として評価)の兆候をマウスが示し始めた時点で実験を終了した。
【0269】
腫瘍成長の統計的分析
腫瘍体積の経時的結果を、二元配置分散分析(ANOVA)を使用して解析し、続いてTukeyの事後試験を行って、多重比較を行った。p<0.05の場合、差は統計的に有意であるとみなした。GraphPad Prismソフトウェア(第8版)を使用して統計的解析を実施した。
結果
REGN1979の存在下及び非存在下でのREGN5837投与の抗腫瘍有効性
NALM-6-luc腫瘍を有する免疫不全NSGマウスに上記のような抗体又は非架橋対照をIP注射した。
【0270】
担癌マウスにおいて、0.04mg/kgのREGN1979の存在下での0.04、0.4、及び4mg/kgのREGN5837を用いた治療の結果、移植後23日に、非架橋対照bsAb(非TAAxCD28及び非TAAxCD3bsAb)と比較して、腫瘍成長の統計的に有意な抑制がもたらされた(それぞれ、p<0.05、p<0.01、及びp<0.001)(図6)。移植後20日に、0.4及び4mg/kg群について腫瘍成長の有意な抑制が観察された(両群についてp<0.05)。REGN5837(4mg/kg)単剤療法もREGN1979(0.04mg/kg)単剤療法いずれも非架橋対照bsAbと比較して腫瘍成長を有意に低下させなかった。REGN5837+REGN1979の併用療法といずれかのbsAb単剤療法との間に差はなく、統計的有意性に達した。投薬期間全体にわたって非架橋対照bsAbを投与すると急速な腫瘍成長が観察され、すべてのマウスを第23日に安楽死させた。全ての群において、実験終了時に少なくとも一匹のマウスでGVHDが観察された(20%以上の体重減少として評価)。
【0271】
異なるマウスのセットを使用した独立した実験において、以下の時点で血液を採取し、血清抗体濃度を測定した:第7日の投薬後1及び4時間、第14日及び第21日の投薬前1時間と投薬後4時間、第29日に1回。投薬期間中、血清中の抗体のトラフ濃度を第14日及び第21日の投薬前1時間に測定した。投与期間中の血清中の抗体のトラフ濃度は、14日目および21日目の投与の1時間前に測定した。0.04mg/kgのREGN1979の存在下での0.04、0.4、及び4mg/kgのREGN5837用量の投与は、それぞれ定量限界以下(BLQ)から0.1、1.6~2.3、及び16.5~21.1μg/mLまでの範囲のREGN5837のトラフ濃度と関連していた。
血清中のREGN1979のトラフ濃度はすべての場合でBLQであった(データは不掲載)。
【0272】
結論
0.04mg/kgのREGN1979存在下での0.04、0.4、及び4mg/kgのREGN5837の用量は、マウスにおいてNALM-6 B細胞白血病腫瘍成長の抑制に有効であった。4mg/kgのREGN5837又は0.04mg/kgのREGN1979単剤療法のいずれかで、対照と比べて有意な腫瘍抑制は観察されなかった。
【0273】
実施例12:CD22細胞+ヒトPBMC+/-CD22xCD28共刺激二重特異性抗体(固定CD22xCD28、滴定CD20xCD3)に対するFACSベースの細胞傷害性
材料及び方法
CD20xCD3標的化殺滅のCD22xCD28増強を、96時間細胞傷害性アッセイ標的化Nalm6又はWSU-DLCL2細胞で評価した。簡単に説明すると、ヒトPBMCを補充RPMI培地中に1×10細胞/mLで蒔き、37℃で一晩インキュベートして、付着したマクロファージ、樹状細胞、及び一部の単球を除去することによって、リンパ球について濃縮した。翌日、Nalm6又はWSU-DLCL2細胞を1uMの蛍光追跡色素CFDA-SEで標識し、付着細胞枯渇ナイーブPBMCを1uMの蛍光追跡色素CellTrace Violetで標識した。標識された標的細胞及びPBMC(Nalm6についてはエフェクタ/標的細胞4:1比、WSU-DLCL2については5:1)をCD20xCD3二重特異性抗体REGN1979(濃度範囲:5nM~0.64pM)の段階希釈液を、2.5ug/ml(16.7nM)の固定濃度のCD22xCD28REGN5837と共に、又はなしで同時インキュベートした。Nalm6細胞を標的とするアッセイにおいて、一定量のCD22xCD28REGN5838、2.5ug/ml(16.7nM)の1アーム対照CD28二重特異性(REGN5678)又はIgG4sアイソタイプ対照(H4sH10154P3)を添加した。37℃で96時間インキュベートした後、細胞をプレートから収集し、FACS BD LSRFortessa-X20でのFACSによって分析した。FACS分析のために、細胞をFixable Live/Dead Far Red reactive(Invitrogen)色素で染色した。20,000個のカウンティングビーズをFACS分析の直前に各ウェルに添加し、サンプルごとに10,000個のビーズを集めた。殺滅の特異性を評価するために、細胞を生CFDA-SE標識集団で細胞をゲートした。生標的細胞のパーセント又は数を記録し、生存率の計算に使用した。
【0274】
T細胞活性化は、CD2、CD4、CD8、及びCD25と直接コンジュゲートした抗体と細胞をインキュベートすることによって評価した。CD25を発現するCD8+細胞のパーセンテージをT細胞活性化の尺度として報告した。さらに、T細胞が増殖するにつて、CellTraceVioletが希釈され、FACSによって測定されるMFIが低下する。T細胞増殖は、したがって、CD8+T細胞におけるCellTraceVioletのMFIの減少として、又はCellTraceViolet MFIを減少させたCD8+細胞のパーセンテージとして報告された。
【0275】
このアッセイからの上清をサイトカインレベルの分析のために集めた。IL17a、IFNγ、TNFα、IL-10、IL-6、IL-4、及びIL-2の濃度は、Cytometric Bead Array(CBA)キットを製造業者の指示にしたがって使用して分析した。サイトカインレベルは、キット標準によって作成した曲線から内挿し、pg/mLとして報告した。標的細胞殺滅、T細胞活性化、増殖、及びサイトカインレベルのEC50値、並びに最大サイトカインレベルは、Prismソフトウェアの4パラメータ非線形回帰分析を使用して計算した。
【0276】
結果、まとめ、及び結論:
ナイーブヒトT細胞に、共刺激CD22xCD28抗体又は1アームCD28若しくはアイソタイプ対照抗体と組み合わせてヒトCD20及びCD22を発現する標的細胞を殺滅させるその能力について、抗CD20xCD3二重特異性抗体REGN1979を試験した。
【0277】
REGN1979を活性化し、ヒトT細胞に、Nalm6(図7)又はWSU-DLCL2(図8)細胞を用量依存的に殺滅させた。固定濃度のCD22xCD28二重特異性抗体をREGN1979に添加することで、REGN1979の細胞傷害効力(EC50)を、REGN1979と1アームCD28若しくはアイソタイプ対照抗体と比較した場合、Nalm6細胞に対して4.7~5.2倍(表26)又はREGN1979単独と比較した場合、WSU-DLCL2細胞に対して17.5倍(表27)増強した。
【0278】
観察される、REGN1979によって媒介される標的細胞溶解は、それぞれ、CD8+細胞に関するCD25上方調節又はCellTraceバイオレット希釈によって測定されるように、T細胞活性化及び増殖と関連していた(図7図8)。固定濃度のCD22xCD28二重特異性抗体をREGN1979に添加することで、REGN1979誘導性T細胞活性化及び増殖の可能性を、REGN1979と1アームCD28若しくはアイソタイプ対照抗体と比べた場合、Nalm6細胞の存在下で、それぞれ2.3~2.6倍及び5.4~7.1倍(表26)、又はREGN1979単独と比較した場合、WSU-DLCL2細胞の存在下で、8.2及び16.1倍(表27)増強した。
【0279】
ヒトPBMC及びWSU-DLCL2細胞を用いたアッセイにおいて、REGN1979はヒトサイトカインの放出を誘導した。REGN1979で観察される、放出したサイトカインは、REGN1979単独で誘導されるサイトカイン放出と比較して、固定濃度のCD22xCD28の存在下で増強された(表28、図9)。
【0280】
まとめると、共刺激により、対照抗体と組み合わせるか又は単独のCD20xCD3で観察されたものと比較して、標的化細胞傷害性、T細胞活性化、及びサイトカイン放出の可能性が増大した。
データのまとめの表:
表26:Nalm6標的での細胞傷害性及びT細胞活性化のEC50値(1回の実験)
【表26】
表27:WSU-DLCL2標的での細胞傷害性及びT細胞活性化のEC50値(2回の実験の平均)
【表27-1】
【表27-2】
表28:WSU-DLCL2細胞傷害性細胞傷害性アッセイからのサイトカイン放出(2回の実験の平均)
【表28】
【0281】
実施例13:NHL+ヒトPBMC+/-CD22xCD28刺激(固定CD22xCD28、CD20xCD3)に対するFACSベースの細胞傷害性
実験手順
CD20xCD3標的化殺滅のCD22xCD28増強を、ヒト間質細胞(HS-5)の存在下で自己PBMCを含む初代NHL患者生検から単離されたNHL細胞を標的とする96時間細胞傷害性アッセイで評価した。簡単に説明すると、HS-5細胞を5000細胞/ウェルで平底96ウェルプレート中に蒔き、一晩インキュベートした。翌日、NHL患者からのPBMCを1uMの蛍光追跡色素CellTrace Violetで標識した。骨髄及び標識されたPBMC(エフェクタ/標的細胞10:1比)を、間質細胞を含むウェルに蒔き、CD20xCD3二重特異性抗体REGN1979の段階希釈(濃度範囲:6.7nM~10.7pM)及び固定濃度のCD22xCD28共刺激分子REGN5837又は1アーム対照CD28二重特異性(REGN5678)と2.5ug/ml(16.7nM)で96時間37℃にて同時インキュベートした。細胞をプレートから収集し、FACS BD LSRFortessa-X20でのFACSによって分析した。FACS分析のために、細胞を抗体カクテル(CD45、CD19、CD4、CD8、CD25)及びFixable Live/Dead近IR反応性色素(Invitrogen)で染色した。20,000個のカウンティングビーズをFACS分析の直前に各ウェルに添加し、サンプルごとに10,000個のビーズを集めた。殺滅の特異性を評価するために、標的細胞を生CD45+バイオレット陰性CD19+集団でゲートした。生存率は、未処理ウェル中の標的細胞数に対して正規化された処理ウェル中の標的細胞数に基づいて計算した。
【0282】
T細胞は、生CD45+バイオレットで標識されたCD4+又はCD8+集団としてゲートされた。CD25を発現するCD8+及びCD4+細胞のパーセンテージをT細胞活性化の尺度として報告した。さらに、T細胞が増殖するにつれ、CellTraceVioletが希釈され、FACSによって測定されるMFIが低下する。T細胞増殖は、したがって、CD8+及びCD4+T細胞上でのCellTraceVioletのMFIにおける減少として報告された。
【0283】
標的殺滅並びにT細胞活性化及び増殖のEC50値は、Prismソフトウェアの4パラメータ非線形回帰分析を使用して計算した。
【0284】
結果、まとめ、及び結論:
ナイーブ自己T細胞に、共刺激CD22xCD28抗体又は1アームCD28対照抗体と組み合わせて患者骨髄からのNHL細胞を殺滅させるその能力について、抗CD20xCD3二重特異性抗体REGN1979を試験した。
【0285】
REGN1979は、ヒトT細胞を活性化して、NHLを用量依存的に枯渇させた。固定濃度のCD22xCD28二重特異性抗体をREGN1979に添加することで、REGN1979の細胞傷害効力(EC50)が、REGN1979と1アームCD28対照抗体又は共刺激なしの対照と比較した場合、2.3及び3.5倍増強された(表29)。
【0286】
観察される、REGN1979により媒介される標的細胞溶解は、それぞれ、CD8+及びCD4+細胞に関するCD25上方調節又はCellTraceバイオレット希釈によって測定されるように、T細胞活性化及び増殖と関連していた。固定濃度のCD22xCD28二重特異性抗体をREGN1979に添加することで、REGN1979誘導性T細胞活性化及び増殖の可能性が、1アームCD28又はアイソタイプ対照抗体を伴うREGN1979と比較した場合に、それぞれ2.8~4.8倍及び2.8~4.2倍増強された(表29及び図10)。
【0287】
まとめると、共刺激により、対照抗体と組み合わせたCD20xCD3で観察されたものと比較して、標的化細胞傷害性及びT細胞活性化の可能性が増大した。
データのまとめの表:
表29:細胞傷害性及びT細胞活性化のEC50値
【表29-1】
【表29-2】
実施例14 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のモデルにおける、REGN5837単独またはREGN1979との組み合わせの抗腫瘍有効性のインビトロ特性評価及びインビボ評価
材料及び方法-研究の紹介及び結果のまとめ
インビトロ及びインビボ研究を行って評価した:
【0288】
(1)CD28T細胞をCD22標的細胞と架橋することによって一次T細胞の活性化を増強するREGN5837の能力。T細胞活性化は、読み出しとして、標的細胞に対する細胞傷害性、T細胞活性化の細胞-表面マーカーの発現、T細胞増殖、及びサイトカイン放出のレベルを使用して評価した。REGN1979、T細胞上のCD3分子及びCD20標的細胞を架橋してT細胞活性化をもたらすCD20xCD3bsAbの存在下又は非存在下で実験を実施した。
【0289】
(2)DLBCL腫瘍を有する免疫不全NSGマウスに投与された、0.4又は4mg/kgのREGN1979の存在下でのCD22xCD28bsAbREGN5837の抗腫瘍有効性。
【0290】
REGN5837及びREGN1979を、様々な濃度で組み合わせて試験して、ヒトDLBCL細胞株に対するREGN1979媒介性T細胞傷害性(WSU-DLCL2)、後期T細胞活性化のマーカー(CD25)の上方調節、T細胞増殖、及び一次ヒトT細胞からのサイトカイン放出に対するREGN5837の効果を評価した。REGN5837は、T細胞傷害性、CD4及びCD8T細胞上のCD25細胞-表面発現、並びにCD4及びCD8T細胞の増殖を媒介するREGN1979の可能性を濃度に依存して増強した。同様に、REGN5837は、REGN1979がサイトカイン放出を媒介する可能性を濃度に依存して増強した。77.2pM~100nMの範囲の濃度で、REGN5837は標的細胞に対するREGN1979媒介性T細胞傷害性の可能性を増大させた;77.2pM~2.78nMの範囲の濃度で、REGN5837は、REGN1979媒介性T細胞活性化及び増殖の可能性を増大させたが、さらに高濃度のREGN5837はREGN1979の可能性をさらに増大させなかった(表30)。REGN5837の添加により、REGN1979媒介性標的細胞殺滅及びT細胞増殖の最大量は、実質的に増加しなかったが、REGN5837は、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-α、IFN-γ、及びIL-17αのREGN1979媒介性放出の最大レベルを濃度に依存して増強した。
【0291】
免疫不全NSGマウス(群あたりn=6~7)に1:1比のWSU-DLCL2細胞及びヒトPBMCを皮下(SC)移植した。0.4又は4mg/kg用量のREGN1979と組み合わせた、1mg/kgでのREGN5837の抗腫瘍有効性を、REGN5837及びREGN1979単剤療法と、並びに非架橋IgG4P-PVA対照bsAbと比較した。WSU-DLCL2細胞の移植後1、8、及び15日に、マウスに抗体を腹腔内(IP)注射により投与した。0.4又は4mg/kgのREGN1979の存在下で1mg/kgのREGN5837を用いた治療の結果、移植後28日までに、REGN5837又はREGN1979単剤療法及び非架橋対照bsAbと比較して、WSU-DLCL2腫瘍成長が統計的に有意に抑制された。REGN1979単剤療法の結果、腫瘍成長がわずかに抑制されたが、REGN5837単剤療法は非架橋対照と比べて効果がなかった。
【0292】
まとめると、REGN5837及びREGN1979をインビトロで様々な濃度で組み合わせて試験した場合、REGN5837はCD22WSU-DLCL2細胞の存在下でヒトT細胞活性化を媒介するREGN1979の可能性を増強した。細胞傷害性、T細胞活性化、又は増殖ではなく、REGN1979媒介性サイトカイン放出の最大レベルが、REGN5837の存在下で増大した。インビボで、0.4又は4mg/kgのREGN1979いずれかの存在下での1mg/kgのREGN5837は、REGN5837又はREGN1979単剤療法単独と比べて、マウスにおいてWSU-DLCL2 B細胞リンパ腫腫瘍成長の抑制に有効であった。
表30:ヒトPBMCを用いたREGN1979媒介性T細胞活性化(標的細胞、CD25発現、及びT細胞増殖に対する細胞傷害性により測定)に対するREGN5837の効果のまとめ
【表30-1】
【表30-2】
REGN1979は4.8fM~10nMの濃度範囲で試験した。
EC50の倍数変化はEC50(REGN5837無し)/EC50([M]REGN5837)として算出した。
【0293】
実施例15:REGN1979媒介性ヒトT細胞活性化に対するREGN5837の効果の評価並びにWSU-DLCL2細胞の存在下、様々な濃度で組み合わせたREGN5837及びREGN1979の試験
ヒトPBMC及びWSU-DLCL2細胞を移植したあとのNSGマウスにおいて、以下のパラメータを測定することにより、インビトロ及びインビボ研究の両方を実施して、有効量以下の量のヒトCD20xCD3 bsAb(REGN1979)の存在下又は非存在下でのヒトCD22xCD28bsAb REGN5837の抗腫瘍有効性を評価した
a)CD22標的細胞に対するT細胞傷害性;
b)CD4及びCD8T細胞の細胞表面上のCD25、T細胞活性化のマーカーの上方調節;
c)T細胞増殖;
d)サイトカイン放出(IL-4、IL-2、IL-6、IL-10、TNF-α、IFN-γ、及びIL-17Α)。
【0294】
材料及び方法
細胞株
WSU-DLCL2:WSU-DLCL2は、41歳の白色人種男性の胸水から単離されたヒトDLBCL細胞株である(Leibnitz Institute-DSMZ、Cat.#ACC575)。
【0295】
ヒトPBMC
細胞傷害性、T細胞活性化、T細胞増殖、及びサイトカイン放出アッセイのために、ヒトドナーからのleukopakをNew York Blood Centerから入手した(ドナー#1500A)。
【0296】
インビボマウス実験のために、ヒトPBMCをReachBioから入手した(Cat.#0500-401)。
【0297】
実験設計
REGN5837及びREGN1979を、様々な濃度で組み合わせて試験して、WSU-DLCL2細胞に対するREGN1979媒介性T細胞傷害性、T細胞増殖、後期T細胞活性化のマーカー(CD25)の細胞-表面発現、及びヒトT細胞からのサイトカイン放出に対するREGN5837の効果を評価した。標的細胞殺滅のパーセンテージ、T細胞活性化、及びT細胞増殖を本明細書中で記載するように測定した。
【0298】
WSU-DLCL2細胞及びPBMCを使用したDLBCLのモデルにおけるREGN5837単独及びREGN1979との組み合わせの抗腫瘍有効性を本明細書中で記載したように評価した。表31を参照。
【0299】
REGN1979のT細胞活性化を媒介する可能性に対するREGN5837の効果のインビトロ評価
ヒト一次T細胞単離
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、50mLのSepMate(商標)チューブを製造業者推奨のプロトコルにしたがって使用して、密度勾配遠心分離法により健常ドナー白血球パックから単離した。簡単に説明すると、15mLのFicollPaque PLUSを50mLのSepMateチューブに積層し、続いてD-PBSで1:2に希釈した30mLの全血を添加した。チューブを室温で1200xgにて10分間、ブレーキを外して遠心分離した。血漿及びPBMCを含む最上層を、新しいチューブにデカンテーションした。その後のステップは、SepMate製造業者のプロトコルにしたがって実施した。単離したPBMCを、5mLのクリオバイアル中、250×10細胞/mLの濃度で、10%DMSOを含むFBS中で凍結させた。PBMCを37℃の水浴中で解凍し、10mL/100ミリオンPBMCで50U/mLのベンゾナーゼヌクレアーゼを含む、刺激培地(10%FBS、HEPES、NaPyr、NEAA、及び0.01mM BMEを追加したX-VIVO15細胞培養培地)で再懸濁させ、300xgで10分間遠心分離した。CD3T細胞は、StemCell Technologies製のEasySep(商標)ヒトCD3T細胞単離キットを製造業者の推奨する指示に従ってペレット化されたPBMCから単離した。
PBMCを用いたPBMCフローサイトメトリベースのT細胞活性化アッセイ
【0300】
同種異系の一次刺激、又はREGN1979によって提供される「シグナル1」によって媒介されるT細胞活性化を増強するREGN5837の能力は、WSU-DLCL2標的細胞及びヒトPBMCをエフェクタ細胞として使用して評価した。PBMCを本明細書中で記載されるようにリンパ球について濃縮した。標的及びエフェクタ細胞を本明細書中で記載されているように、被験物質及び対照抗体とインキュベートした。フローサイトメトリを実施して、本明細書中で記載されているように、T細胞傷害性、増殖、及びT細胞活性化のマーカーの上方調節を評価した。さらに、REGN1979媒介性サイトカイン放出に対するREGN5837の効果を本明細書中で記載するようにして評価した。非TAAxCD28 bsAb(REGN5837と同じCD28結合アーム、及び非結合アームを含む)をREGN5837の非架橋対照として試験した。
【0301】
PBMCのリンパ球濃縮
ヒトPBMCを完全培地(10%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミンを追加したRPMI細胞培養培地)中に1×10細胞/mLで蒔き、37℃で一晩インキュベートして、付着細胞、例えば、マクロファージ、樹状細胞、及び一部の単球を除去することにより、リンパ球について濃縮した。
【0302】
PBMC及び標的細胞の被験物質とのインキュベーション
リンパ球を多く含むPBMCを収集し、1μMのViolet Cell Tracker蛍光追跡色素で標識した。WSU-DLCL2標的細胞を1μMの蛍光色素Vybrant CFDA-SEで標識した。
【0303】
その後、色素で標識されたPBMCを、5:1の比にて色素で標識された標的細胞(5×10標的細胞/ウェルのWSU-DLCL2)を含む96ウェル丸底プレート中に蒔いた。
【0304】
蒔かれたPBMC及び標的細胞を72時間、37℃にて12.9pM~100nM(REGN5837又は非TAAxCD28)及び4.8fM~10nM(REGN1979又は非TAAxCD3)の範囲の最終濃度の被験物質又はそれらの各対照とインキュベートした。
【0305】
フローサイトメトリ分析
被験物質及び対照と共にインキュベートした後、色素で標識された細胞を、LIVE/DEAD染色並びにフルオロフォア標識CD2、CD4、CD8、及びCD25に対する抗体のカクテルで染色した。カウンティングビーズ(20μl/ウェル)をBD Celestaフローサイトメータでのサンプル分析の直前に添加した。フローサイトメトリデータを使用して、標的細胞生存、T細胞増殖、及びT細胞活性化のマーカーの上方調節を測定した。EC50値は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して9点用量応答曲線上で4パラメータロジスティック方程式から求めた。細胞傷害性、T細胞活性化(CD25上方調節)、及び増殖についての最大応答はPrism曲線の当嵌によって得られるPrism曲線の当嵌n最大応答プラトーとして求められた。対照と比較したEC50の相対的変化waをEC50No REGN5837/EC50[M] REGN5837anとして算出し、d the 最大サイトカイン放出の相対的変化をMax[M] REGN5837/MaxNo REGN5837として算出した。
【0306】
標的細胞生存
各実験条件における生存標的細胞のパーセンテージを収集したビーズの数/ウェルに対して正規化した、CFDA-SEで標識された生標的細胞の数/ウェルとして算出した。標的細胞生存率のパーセンテージは、任意の実験条件における生存標的細胞数と、無抗体対照条件における生存標的細胞数(PBMCのみの存在下での標的細胞)との比として求めた。
【0307】
このように報告された各実験条件における標的細胞に対する細胞傷害性のパーセンテージは、100から生存率パーセント(上述のようにして算出)を差し引いたものとして求められた。
【0308】
CD4及びCD8T細胞上のCD25発現
CD25(後期活性化T細胞のマーカー)の上方調節は、生の、CD2、及びCD4又はCD8細胞上でゲートすることによって評価した。CD4又はCD8のいずれかを発現する全T細胞のうち、CD25を発現する活性化T細胞のパーセンテージを報告した。
【0309】
CD4及びCD8T細胞の増殖
一次CD4及びCD8T細胞増殖は、全CD4及びCD8T細胞のうち分裂した細胞のパーセンテージを算出することにより、フローサイトメトリを用いて評価した。各細胞の蛍光強度は分裂ごとに2倍減少するので、Violet Cell Trackerで染色された細胞の蛍光強度を細胞分裂の読み出しとして使用した。
【0310】
サイトカイン放出分析
細胞培養上清中のサイトカイン(IL-4、IL-2、IL-6、IL-10、TNF-α、IFN-γ、及びIL-17Α)のレベルは、BD Cytometric Bead ArrayヒトTh1/Th2/Th17サイトカインキットを製造業者の指示にしたがって使用して定量した。
【0311】
WSU-DLCL2 Cell Xenograftsを使用したDLBCLのインビボモデル
メスNSGマウスをすべての実験で使用した。すべてのマウスにWSU-DLCL2 B細胞リンパ腫細胞をSC移植し、抗体をIP投与した。試験期間中、週に数回キャリパーを使用して腫瘍成長を測定した。すべての実験について、マウスをRegeneron標準的条件下で動物施設中に収容した。すべての実験は、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)のガイドラインに従い、Regeneronで実施した。
【0312】
WSU-DLCL2細胞培養条件及び腫瘍移植
WSU-DLCL2細胞株はLeibnitz Institute-DSMZから入手し、ペニシリン、ストレプトマイシン、グルタミン、及び1mMのHEPESを追加した10%FBSを含むRPMI-1640培地中に維持した。
【0313】
WSU-DLCL2細胞(3×10細胞s)を収集し、5×10PBMCと混合し、PBS及びGFR Matrigelの1:1混合物中に再懸濁させた。メスのNSGマウスの右脇腹に100μlの細胞混合物をSC注射した。
【0314】
腫瘍測定のための抗体投与
被験物質又は対照を投与する前に、マウスを腫瘍量にしたがって階層化した群に割り当てた。
【0315】
抗体(REGN5837、REGN1979、REGN5671[非TAAxCD28非架橋対照bsAb]、又はH4sH17664D[非TAAxCD3非架橋対照bsAb])を単剤療法として、又は組み合わせで、IP注射により、移植後1、8、及び15日に、表31に記載する用量で投与した。
表31:腫瘍成長及び生存を評価するための実験設計
【表31-1】
【表31-2】
一匹のマウスが実験の間に死亡し、除外した。
【0316】
腫瘍測定及び指定されたエンドポイント
腫瘍成長は、腫瘍のキャリパー測定値X及び直径Y(長さの垂直方向の測定値及び幅)を用いて経時的にモニタリングした。腫瘍体積を算出した(X*Y*[X/2]、式中、Xは短径である)。腫瘍が指定の腫瘍エンドポイント(腫瘍直径>20mm又は腫瘍潰瘍)に達した時にマウスを安楽死させた。このエンドポイントはIACUC基準に従うものであった。
【0317】
腫瘍成長及び生存の統計的分析
腫瘍体積の経時的結果を、二元配置分散分析(ANOVA)を使用して解析し、続いてTukeyの事後試験を行って、多重比較を行った。経時的な生存率の結果を、全ての群でMantel-Cox試験を用いて分析し、さらに各群ごとにMantel-Cox試験を実施して比較した。p<0.05の場合、差は統計的に有意であるとみなした。GraphPad Prism 8ソフトウェアを使用して統計的解析を実施した。
【0318】
結果
WSU-DLCL2標的細胞に対するT細胞傷害性及びヒトPBMCからのサイトカイン放出を媒介するREGN1979の能力に対するREGN5837の効果
REGN5837及びREGN1979を様々な濃度で組み合わせて試験して、すでに記載したように、WSU-DLCL2細胞に対するREGN1979媒介性細胞傷害、T細胞活性化、T細胞増殖、及びヒトPBMC由来のT細胞からのサイトカイン放出に対するREGN5837の効果を評価した。表30は、WSU-DLCL2細胞に対するREGN1979媒介性細胞傷害、T細胞活性化、及びT細胞増殖に対するREGN5837の効果を示す。サイトカイン放出に対するREGN5837の効果を示す2人のヒトドナーからの数値結果を表32にまとめる。
【0319】
REGN1979媒介性細胞傷害及びヒトT細胞増殖に対するREGN5837の効果
WSU-DLCL2標的細胞に対するREGN1979媒介性細胞傷害、REGN1979媒介性T細胞活性化、並びにヒトPBMC由来のヒトCD4及びCD8T細胞のREGN1979媒介性増殖を評価することによって、REGN1979の効力(EC50)及び有効性(最大応答)に対するREGN5837の濃度増加の効果を評価した。REGN5837は、WSU-DLCL2細胞に対する細胞傷害性、T細胞活性化(CD4及びCD8T細胞上のCD25発現として測定)、並びにCD4及びCD8T細胞増殖を媒介するREGN1979の可能性を濃度に依存して増強した。77.2pM~100nMの範囲の濃度で、REGN5837は標的細胞に対するREGN1979媒介性T細胞傷害性の可能性を増大させた;77.2pM~2.78nMの範囲の濃度で、REGN5837は、REGN1979媒介性T細胞活性化及び増殖の可能性を増大させたが、さらに高濃度のREGN5837はREGN1979の可能性をさらに増大させなかった。これらのデータを図11のグラフ及び表30に提示する。
【0320】
REGN5837の存在下でのヒトPBMCからのREGN1979媒介性サイトカイン放出
ヒトPBMCからのREGN1979媒介性サイトカイン放出の可能性及び最大応答に対するREGN5837の濃度増大の効果を評価した。ヒトPBMC及びWSU-DLCL2細胞の存在下で、REGN5837の濃度を増大させることで、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-α、IFN-γ、及びIL-17AのREGN1979媒介性放出の最大レベルが濃度に依存して増強された(図12)。さらに、REGN5837の濃度を増大させることで、REGN1979がサイトカイン放出を媒介する可能性を増強する傾向が示された。REGN1979によって媒介される、EC50値、最大サイトカインレベル、及びバックグラウンドサイトカインレベルを上回る相対的増加(REGN5837無し)を図12及び表32にまとめる。
表32
【表32-1】
【表32-2】
有効量以下の量のREGN1979の存在下及び非存在下でのREGN5837投与の抗腫瘍有効性
【0321】
WSU-DLCL2腫瘍を有する免疫不全NSGマウスに、本明細書中で既に記載した抗体又は非架橋対照をIP注射した。
【0322】
担癌マウスにおいて、0.4又は4mg/kgのREGN1979の何れかの存在下で1mg/kgのREGN5837を用いた治療の結果、第28日(最終抗体投与後6日までに、非架橋対照bsAb(非TAAxCD28及び非TAAxCD3 bsAb)と比較して、腫瘍成長の統計的に有意な抑制がもたらされた(図13A及び13B)。1mg/kgのREGN5837及び0.4mg/kgのREGN1979の組み合わせの結果、第46日までにREGN1979単剤療法と比べて腫瘍体積が有意に減少した。
【0323】
0.4及び4mg/kgのREGN1979単剤療法はどちらも、第28日までに非架橋対照と比べて低度の腫瘍抑制をもたらしたが、REGN5837単剤療法は効果がなかった。投薬期間全体にわたって非架橋対照bsAbを投与すると急速な腫瘍成長が観察され、すべてのマウスを第125日に安楽死させた。
【0324】
Mantel-Cox試験により、すべての群にわたって生存において統計的有意差が検出された(p=0.0001)、追加のMantel-Cox試験を群ごとの比較のために実施した。非架橋対照抗体を投与されたマウス(生存無)と比較して、0.4又は4mg/kgのREGN1979の何れかと組み合わせて1mg/kgのREGN5837を投与されたマウスについて、生存において有意な増加が観察された(それぞれ、85%及び70%生存)(図14)。
【0325】
さらに、REGN5837又はREGN1979いずれかの単剤療法を投与したマウスと比較して、1mg/kgのREGN5837を0.4又は4mg/kgのREGN1979のいずれかと組み合わせて施したマウスで、生存における有意な増加が観察された。
【0326】
本発明は本明細書中に記載する特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書中に記載されるものに加えて、本発明の様々な修飾は、前述の記載事項と添付の図面とから当業者には明らかになるであろう。そのような修飾は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
a)ヒトCD28と結合する第一抗原結合ドメイン(D1)と、
b)標的腫瘍細胞上のヒトCD22と特異的に結合する第二抗原結合ドメイン(D2)と
を含む、単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目2)
前記第二抗原結合ドメイン(D2)が、配列番号57、配列番号58、及び/又は配列番号59の一つ以上のアミノ酸を含むヒトCD22上のエピトープと結合する、項目1に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目3)
前記二重特異性抗原結合分子が、25℃にて表面プラズモン共鳴によって測定して約15nM未満のKでヒトCD22と結合する、項目1又は2に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目4)
前記二重特異性抗原結合分子が、25℃にて表面プラズモン共鳴によって測定して約60μM未満のKでMacaca fascicularis CD22と結合する、項目1~3のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目5)
前記二重特異性抗原結合分子が、25℃にて表面プラズモン共鳴によって測定して約45μM未満のKでヒトCD28と結合する、項目1~4のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目6)
前記二重特異性抗原結合分子が、インビトロFACS結合アッセイによって測定して、約1×10-8M未満のEC50でヒトCD28を発現する細胞の前記表面と結合する、項目1~5のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目7)
前記二重特異性抗原結合分子が、インビトロFACS結合アッセイによって測定して、約1×10-8M未満のEC50でヒトCD22を発現する細胞の前記表面と結合する、項目1~6のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目8)
前記二重特異性抗原結合分子が、抗CD20xCD3二重特異性抗体と併用した場合に共刺激効果を示す、項目1~7のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目9)
前記共刺激効果が:(T細胞を活性化すること、IL-2放出を誘導すること、ヒトPBMCにおいてCD25+上方調節を誘導すること;及びCD22発現細胞株にするヒトT細胞媒介性細胞傷害を増大させること、の一つ以上である、項目8に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目10)
前記第一抗原結合ドメイン(D1)が:
a)配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)内に含まれる三つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)と、
b)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)内に含まれる三つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)と、
を含む、項目1~9のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目11)
a)配列番号28のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR2、及び配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR3
を含む、項目10に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目12)
a)配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、項目12に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目13)
前記第一抗原結合ドメインが:
a)HCVR CDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3)であって、配列番号28、30、及び32の前記アミノ酸配列を含むセットと、LCVR CDRのセット(LCDR1、LCDR2、LCDR3)であって、配列番号12、14、及び16の前記アミノ酸配列を含むセットと、
を含む、項目10に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目14)
前記第一抗原結合ドメインが、配列番号26/10の前記アミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を含む、項目10に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目15)
前記第二抗原結合ドメインが:
a)配列番号2及び18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCVR内に含まれる三つのHCDRと、
b)配列番号10のアミノ酸配列を含むLCVR内に含まれる三つのLCDRと、
を含む、項目1~14のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目16)
前記第二抗原結合ドメインが:
a)配列番号4及び20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR1と、
b)配列番号6及び22からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR2と、
c)配列番号8及び24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むHCDR3と、を含む、項目15に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目17)
前記第二抗原結合ドメインが:
a)配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、項目16に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目18)
前記第二抗原結合ドメインが:
a)HCVR CDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3)であって、配列番号4、6、8;及び20、22、24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むセットと、LCVR CDRのセット(LCDR1、LCDR2、LCDR3)であって、配列番号12、14、16のアミノ酸配列を含むセットと、
を含む、項目17に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目19)
a)配列番号28、30、32のアミノ酸配列を含むHCVR CDRと、配列番号12、14、16のアミノ酸配列を含むLCVR CDRと、を含む第一抗原結合ドメインと、
b)配列番号4、6、8のアミノ酸配列を含むHCVR CDRと、配列番号12、14、16のアミノ酸配列を含むLCVR CDRと、を含む第二抗原結合ドメインと、
を含む、項目1~18のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目20)
a)配列番号28、30、32のアミノ酸配列を含むHCDRと、配列番号12、14、16のアミノ酸配列を含むLCDRとを含む第一抗原結合ドメインと、
b)配列番号20、22、24のアミノ酸配列を含むHCDRと、配列番号12、14、16のアミノ酸配列を含むLCDRと、を含む第二抗原結合ドメインと、
を含む、項目1~18のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目21)
a)配列番号26/10のアミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を含む第一抗原結合ドメインと、
b)配列番号2/10のアミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を含む第二抗原結合ドメインと、
を含む、項目1~18のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目22)
a)前記第一抗原結合ドメインが、配列番号26/10のアミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を含み;
b)前記第二抗原結合ドメインが、配列番号18/10のアミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を含む、項目1~18のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目23)
CD22に対する結合について競合するか、又は参考抗体と同じ、CD22上のエピトープに結合する単離された二重特異性抗原結合分子であって、前記参考抗体が、前記配列番号26/10のアミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を有する第一抗原結合ドメインと、配列番号2/10の又は18/10のアミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を有する第二抗原結合ドメインと、を含む、単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目24)
ヒトCD28に対する結合について競合するか、又は参考抗体と同じ、ヒトCD28上のエピトープに結合する単離された二重特異性抗原結合分子であって、前記参考抗体が、配列番号26/10のアミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を有する第一抗原結合ドメインと、配列番号2/10又は18/10のアミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を有する第二抗原結合ドメインと、を含む、単離された二重特異性抗原結合分子。
(項目25)
項目1~24のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子と、薬剤的に許容される担体又は希釈剤と、を含む、医薬組成物。
(項目26)
項目1~24のいずれか一項に記載の二重特異性抗体をコード化するヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
(項目27)
項目26に記載の核酸を含む発現ベクター。
(項目28)
項目27に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
(項目29)
対象におけるB細胞増殖障害を阻害する方法であって、項目1~24のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗体又は項目25に記載の医薬組成物を前記対象に投与し、それによって前記対象における前記B細胞リンパ腫の成長を阻害することを含む、方法。(項目30)
第二の治療薬を前記対象に投与することをさらに含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記第二の治療薬が、抗腫瘍剤、放射線治療、抗体薬物コンジュゲート、抗腫瘍剤とコンジュゲートした二重特異性抗体、チェックポイント阻害剤、又はその組み合わせを含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
B細胞増殖性障害、又は別のCD22発現細胞悪性腫瘍に罹っている患者を治療する方法であって、項目1~24のいずれか一項に記載の単離された二重特異性抗体又は項目25に記載の医薬組成物を前記対象に投与し、それによってB細胞リンパ腫又は別のCD-22発現細胞悪性腫瘍に罹っている前記患者を治療することを含む、方法。
(項目33)
第二の治療薬を前記対象に投与することをさらに含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記第二の治療薬が、抗腫瘍剤、放射線治療、抗体薬物コンジュゲート、抗腫瘍剤とコンジュゲートした二重特異性抗体、チェックポイント阻害剤、又はその組み合わせを含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記第二の治療薬が、前記同じ腫瘍標的抗原と結合する第一抗原結合ドメインと、T細胞上のCD3と結合する第二抗原結合ドメインとを含む、異なる二重特異性抗体である、項目31又は34のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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【配列表】
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