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特許7637060AKT経路を標的とする神経保護遺伝子療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】AKT経路を標的とする神経保護遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20250219BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20250219BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250219BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250219BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20250219BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20250219BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61P27/02
A61K48/00
C12N15/54 ZNA
C12N15/63 100Z
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2021552552
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 US2020020832
(87)【国際公開番号】W WO2020180886
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】62/821,705
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/813,587
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベネット,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】マクドゥーガルド,デビン
(72)【発明者】
【氏名】スン,ジュンウェイ
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-539781(JP,A)
【文献】特表2019-502378(JP,A)
【文献】国際公開第2018/232149(WO,A1)
【文献】特表2018-515622(JP,A)
【文献】特表2019-505239(JP,A)
【文献】特表2002-535964(JP,A)
【文献】Molecular Therapy,2018年,Vol.26, No.5 S1,p.133, 283
【文献】Gene Therapy,2019年,Vol.17,p.1162-1174
【文献】Molecular Therapy,2018年,Vol.26, No.5 S1,p.133, 283.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
A61K 35/76
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、AAV逆方向末端反復(ITR)配列と、ヒトタンパク質キナーゼB(AKT)3コード配列と、宿主細胞におけるAKTの発現を指示する発現制御配列とを含むベクターゲノムがAAVカプシドの中に封入されたAAVカプシドを含み、
前記AKT3コード配列が、配列番号8のアミノ酸配列をコードする、配列番号13と少なくとも80%同一のヌクレオチド配列、を含む、
AAVベクター。
【請求項2】
前記AKT3コード配列が、配列番号13を含む、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項3】
前記発現制御配列が、CMVエンハンサーを有するニワトリベータアクチンプロモーターを含む、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項4】
前記CMVエンハンサー配列を有するニワトリベータアクチンプロモーターが、配列番号1のヌクレオチド1443~3104または配列番号5のヌクレオチド1493~2075である、請求項3に記載のAAVベクター。
【請求項5】
前記発現制御配列が、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)シグナル配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項6】
前記発現制御配列が、GRK1プロモーターを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項7】
前記GRK1プロモーターが、配列番号3のヌクレオチド1427~1790を含む、請求項6に記載のAAVベクター。
【請求項8】
前記発現制御配列が、CMV/CBAプロモーターまたはhCARプロモーターを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項9】
前記発現制御配列が、眼細胞特異的プロモーターを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項10】
前記発現制御配列が、ヒトEF1αプロモーター、代謝型グルタミン酸受容体6(mGluR6)プロモーター、ロドプシンプロモーター、錐体オプシンプロモーター、および転写因子プロモーターから選択されるプロモーターを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項11】
前記発現制御配列が、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、および組織特異的プロモーターから選択されるプロモーターを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項12】
前記プロモーターが、ラパマイシン/ラパログ(rapalog)プロモーター、エクジソンプロモーター、エストロゲン応答性プロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター、およびヘテロ二量体リプレッサースイッチから選択される誘導性プロモーターである、請求項11に記載のAAVベクター。
【請求項13】
前記発現制御配列が、イントロン、Kozak配列、ポリA配列、および転写後調節エレメントのうちの1つ以上をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項14】
前記AAVカプシドが、AAV2、AAV5、AAV8、AAV9、AAV8bp若しくはAAV7m8またはそれらのバリアントである、請求項1~13のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項15】
前記カプシドが、AAV7m8カプシドである、請求項1~14のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項16】
前記ITR配列が、AAV2由来である、請求項1~15のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項17】
薬学的に許容される担体と、請求項1~16のいずれか一項に記載のAAVベクターとを含む、医薬組成物。
【請求項18】
それを必要とする対象における網膜変性を治療するための、請求項1~16のいずれか一項に記載のAAVベクターまたは請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記AAVベクターまたは医薬組成物が、網膜下または硝子体内に投与される、請求項18に記載のAAVベクターまたは医薬組成物。
【請求項20】
前記対象が、哺乳動物である、請求項18または19に記載のAAVベクターまたは医薬組成物。
【請求項21】
前記対象が、ヒトである、請求項20に記載のAAVベクターまたは医薬組成物。
【請求項22】
前記AAVベクターが、別の療法と組み合わせて投与される、請求項18~21のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項23】
前記AAVベクターが、107~1013のベクターゲノム(VG)の投薬量で投与される、請求項18~22のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項24】
前記AAVベクターが、100μL~500μLの容量で投与される、請求項18~23のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項25】
前記AAVベクターが、1回より多く投与される、請求項18~24のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項26】
AAVベクターを製造するためのプラスミドであって、配列番号8のアミノ酸配列をコードする、配列番号13と少なくとも80%同一のヌクレオチド配列、を含むAKT3コード配列を含む、プラスミド。
【請求項27】
AAVベクターを産生するためのプラスミドであって、配列番号3のヌクレオチド1253~3868を含む、プラスミド。
【請求項28】
組換えAAV(rAAV)ウイルスを生成する方法であって、感染性AAVエンベロープまたはカプシドへの遺伝子発現カセットのパッケージングを可能にするのに十分なウイルス配列の存在下、請求項26または27に記載のプラスミドを保有するパッケージング細胞を培養することを含む、方法。
【請求項29】
網膜変性を治療するための方法で使用するための組成物であって、請求項1~16のいずれか一項に記載のAAVベクターまたは請求項17に記載の医薬組成物を含む、組成物。
【請求項30】
色覚異常の治療のための医薬品の製造における、請求項1~16のいずれか一項に記載のAAVベクターの使用。
【請求項31】
網膜変性を治療するための方法で使用するための組成物であって、請求項1~16のいずれか一項に記載のAAVベクターを含む、組成物。
【請求項32】
網膜変性の治療のための医薬品の製造における、請求項1~16のいずれか一項に記載のAAVベクターの使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
網膜色素変性症(RP)は、世界中で推定3000~7000人のうち1人の個人が罹患する遺伝性網膜ジストロフィーの集合体である。臨床的発症は、桿体光受容体の機能不全およびその後の死と同時に起こる暗所(夜間)視力の障害を特徴とする。このプロセスは、拡大するにつれて、周辺視野を破壊し、中心網膜の錐体光受容体の変性に起因して、全盲に達する。多くの場合、この表現型は、桿体光伝達、構造または恒常性に不可欠な遺伝子内のヌル変異から生じ、この光受容体サブタイプの喪失についての直接的な説明を提供する。しかしながら、これらの変異は、典型的には、後期疾患における錐体の徐々に起こる悪化を説明しない。
【0002】
必要とされるのは、それを必要とする対象におけるRPおよび他の眼障害関連網膜変性の治療である。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、AKTの発現のためのベクターの送達が、光受容体の数、構造、および視覚機能の劇的な保存を促進することを示す以下の例によって例示される。
【0004】
一態様では、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、AAV逆方向末端反復(ITR)配列と、ヒトタンパク質キナーゼB(AKT)コード配列と、宿主細胞におけるAKTの発現を指示する発現制御配列とを含むベクターゲノムがAAVカプシドの中に封入されたAAVカプシドを含む、AAVベクター。一実施形態では、AKTコード配列は、AKT1、AKT2、またはAKT3コード配列を含む。一実施形態では、コード配列は、配列番号9である。
【0005】
別の態様では、薬学的に許容される担体と、少なくとも本明細書に記載されるAKT配列を含むAAVベクターとを含む、医薬組成物が提供される。
【0006】
別の態様では、網膜変性を治療するための方法が提供される。本方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載されるAAVベクターを投与することを含む。一実施形態では、AAVベクターは、網膜下または硝子体内に投与される。
【0007】
別の態様では、AAVベクターを産生するためのプラスミドが提供される。特定の実施形態では、配列番号1のnt1253~5070もしくは配列番号3のnt1253~3868、またはそれらと少なくとも80%の同一性を共有する配列を含む、プラスミド。
【0008】
さらに別の態様では、組換えAAV(rAAV)を生成する方法が提供される。本方法は、感染性AAVエンベロープまたはカプシドへの遺伝子発現カセットウイルスゲノムのパッケージングを可能にするのに十分なウイルス配列の存在下、配列番号1のnt1253~5070または配列番号3のnt1253~3868を含むパッケージング細胞を培養することを含む。
【0009】
別の態様では、配列番号1のnt1253~5070または配列番号3のnt1253~3868を含むベクターゲノムを含む、ウイルスベクターが提供される。
【0010】
別の態様では、ウイルスベクターは、5’ITR、CMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター、Kozak配列、AKTコーディング、bGHポリA、および3’ITRを含むベクターゲノムを含む。
【0011】
別の態様では、ウイルスベクターは、5’ITR、GRK1プロモーター、SV40イントロン、Kozak配列、AKTコード配列、bGHポリA、および3’ITRを含むベクターゲノムを含む。
【0012】
別の態様では、組成物は、網膜変性を治療するための方法で使用するために提供され、本組成物は、本明細書で提供されるAAVベクターを含んでいた。
【0013】
本発明のさらに他の態様および利点は、以下の本発明の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A-1H】AAV7m8ベクターの設計および特徴付けを示す。(図1A)ベクター発現カセットの概要。(図1B)未治療の対照と比較した、84-31細胞の形質導入後のRheb mRNAの定量化および(図1C)AKT3 mRNA発現の定量化。データは、平均±SD(N=3)として表される。****P<0.0001。(図1D)AAV7m8.eGFP(2×10vg)の網膜下送達後のマウス網膜の代表的な眼底画像。(図1E)網膜下注射後のAAV7m8の網膜トロピズム。(図1F)未治療、ならびに(図1G図1H)AAV.AKT3(1×10vg)およびAAV.eGFP(1×10vg)とともに注射された、AKTに対して指向する抗体で染色されたPN45rd10網膜フラットマウント。
図2A-2G】caRheb増強が、光受容体変性を軽減することができないことを示す。(図2A)PN13-14でのAAV.eGFPまたはAAV.caRheb(加えてAAV.eGFP)を網膜下注射した後のPN45でのPde6brd10網膜断面。(図2B)AAV.eGFP、AAV.caRheb/AAV.eGFPで治療されたか、または未治療のPde6brd10網膜の総ONL厚さの定量化。(図2C)AAV.eGFP単独(2×10vg)で治療されたか、またはAAV.eGFP(1×10vg)およびAAV.caRheb(1×10vg)を同時注射された眼からの200μm当たりのGFP+ONL細胞の定量化。(図2D)視力を評価するための視運動反射(OKR)の右/左比。異なる治療についての(図2E)混合桿体-錐体A波振幅、(図2F)混合桿体-錐体B波振幅、および(図2G)錐体B707波振幅の網膜電位図(ERG)測定。データを、平均値±SEMで表す。指数は、データバー内に数値として示された。
図3A-3H】AKT3遺伝子導入が、光受容体の生存および構造保存を促進することを示す。(図3A)PN30での未治療Rd10マウス網膜および(図3B)ロドプシン(RHO)に対して指向される抗体で染色されたAAV.AKT3/AAV.eGFPで治療されたものの代表的な画像。(図3C)eGFPとの共局在化。(図3D)PN30での未治療Rd10マウス網膜および(図3E)錐体アレスチン(CAR)に対して指向される抗体で染色されたAAV.AKT3/AAV.eGFPで治療されたものの代表的な画像。(図3F)eGFPとの共局在化。(図3G)PN45での網膜および網膜下ブレブの未治療部分の間の移行領域の代表的な画像。(図3H)PN30およびPN45での治療群間のONL厚さの定量化。データを、平均値±SEMで表した。**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001、n.s.(有意ではない)。
図4A-4D】AKT3遺伝子導入が、Pde6brd10網膜における網膜および視覚機能に及ぼす効果を示す。(図4A)未治療、AAV.eGFP治療した網膜、およびAAV.AKT3治療した網膜の間の混合桿体-錐体a波振幅の評価。(図4B)治療間の混合桿体錐体b波振幅の評価。(図4C)治療群間の明所(錐体)b波振幅。(図4D)視運動性反応(OKR)によって試験される、視力の右眼/左眼比。右眼を、AAV7m8.eGFP単独(2×10vg)で、またはAAV.AKT3と組み合わせて治療し、一方、左眼は未治療であった。データを、平均値±SEMで表す。P<0.05、***P<0.001。指数は、バー内に数値によって示された。
図5A-5H】AKT3誘導性神経保護が、mTOR活性化に関連していることを示す。(図5A)AAV.AKT3/AAV.eGFPで治療され、mTORC2活性化マーカーであるホスホ-AKTSerに対して指向される抗体で染色されたRd10網膜の代表的な画像。(図5B)網膜下送達領域をマーキングするeGFPとの共局在化。(図5C)mTORC2マーカーで染色された、より高倍率のAAV.AKT3/AAV.eGFP形質導入切片。(図5D)AAV.eGFP単独で治療され、mTORC2マーカーで染色された、Pde6brd10網膜。(図5E)AAV.AKT3/AAV.eGFPで治療され、カノニカルmTORC1活性化マーカーであるホスホ-S6Ser240/244について染色された、Pde6brd10網膜の代表的な画像。(図5F)eGFPとの共局在化。(図5G)mTORC1マーカーで染色された、より高倍率のAAV.AKT3/AAV.eGFP形質導入切片。(図5H)AAV.eGFP単独で治療され、mTORC1マーカーで染色された、Pde6brd10網膜。
図6A-6I】AKT3過剰発現が、光受容体の静止を破らないが、ミュラー細胞を活性化することを示す。(図6A図6C)未治療、(図6D図6F)AAV7m8.eGFP単独(2×10vg)で治療された、または(図6G図6I)AAV7m8.AKT3(1×10vg)およびAAV7m8.eGFP(1×10vg)を共注射された、Pde6brd10網膜断片の代表的な画像。切片を、GFAP(ミュラー細胞マーカー)およびKi67(細胞増殖マーカー)に対して指向される抗体で染色する。
図7A-7K】長期間のAKT3遺伝子導入が、野生型網膜における慢性ミュラー細胞グリオーシスを刺激することを示す。(図7A図7C)未治療、(図7D図7F)AAV7m8.eGFP(2×10vg)で治療された、ならびに(図7G図7I)PN125でAAV7m8.AKT3(1×10vg)およびAAV7m8.eGFP(1×10vg)を共注射された、野生型網膜の代表的な画像。切片を、Ki67およびGFAPに対して指向される抗体で染色した。(図7J)未治療網膜切片とAAV.eGFP治療された網膜切片との間の移行帯。(図7K)未治療領域とAAV.AKT3/AAV.eGFP治療領域との間の移行帯。
図8A-8F】AKT3の光受容体特異的発現が、Pde6brd10網膜における神経保護を媒介することを示す。(図8A)ベクター発現カセットの描写。AKT3導入遺伝子は、光受容体特異的GRK1プロモーターによって調節される。治療群間の(図8B)混合a波、(図8C)混合b波、および(図8D)錐体b波のERG応答の定量化。(図8E)AAV7m8.GRK1.AKT3(1×10vg)で治療されたPN45 Pde6brd10の代表的な断面。AKT抗体で標識したAKT3の光受容体特異的発現。(図8F)治療群間のPN45でのONL厚さの定量化。データを、平均値±SEMで表した。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
図9A-9H】AAV.GRK1.AKT3が、Pde6brd10網膜における反応性グリオーシスを刺激しないことを示す。(図9A図9C)ミュラー細胞のためのカノニカルマーカー(GFAP)および細胞増殖のためのカノニカルマーカー(Ki67)で染色された、PN45での未治療マウス網膜の代表的な画像。(図9D図9F)AAV7m8.GRK1.AKT3(1×10vg)およびAAV7m8.eGFP(1×10vg)で共治療されたPN45 Pde6brd10網膜の代表的な顕微鏡写真。(図9G)Pde6brd10網膜の未治療部分と注射部分との間の移行領域、および(図9H)eGFPトレーサーとの共局在化。
図10A-10B】AAV.caRhebが、インビトロでmTORC1を刺激するが、光受容体においては刺激しないことを示す。(図10A)未治療の84-31細胞またはAAV.eGFPもしくはAAV.caRhebで治療されたものからのpS6Ser240/244、S6、およびGAPDH(ローディング対照)の発現を評価するウエスタンブロット。数値は、各治療条件についての生物学的複製を示す。(図10B)AAV7m8.eGFP単独(2×10vg)を注射され(上側パネル)、またはAAV7m8.caRheb(1×10vg)およびAAV7m8.eGFP(1×10vg)を共注射され(下側パネル)、pS6Ser240/244に対して指向される抗体で染色された網膜切片の代表的な顕微鏡写真。
図11A-11D】長期間のAKT3遺伝子導入が、野生型動物における網膜組織の乱れにつながることを示す。C57Bl/6(野生型)マウスは、PN13で網膜下注射を受けた。(図11A図11B)PN125での網膜組織学は、AAV7m8.eGFP単独(2×10vg)で治療された動物における正常な光受容体構造を明らかにする。(図11C図11D)AAV7m8.AKT3(1×10vg)と組み合わせてAAV7m8.eGFP(1×10vg)を共注射された動物は、網膜層の広範囲にわたる組織の乱れと、光受容体の数および構造の喪失を示す。
図12】pAAV.CAG.Myr.HA.hAKT3(p1116)(配列番号1)のベクターマップを示す。
図13】pAAV.GRK1.Myr.HA.hAKT3(p1294)(配列番号3)のベクターマップを示す。
図14】p618.Hopt.AKT3(配列番号5)のベクターマップを示す。
図15A-15C】図15Aおよび図15BはhAKT3天然(配列番号7)およびhAKTopt(配列番号13)配列の整列を示し、図15Cは、整列のためのパーセント同一性マトリックスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
AAVカプシドを有する組換え複製欠損アデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、およびヒトタンパク質キナーゼB(AKT)をコードする核酸配列の送達のためにそれらを含む組成物が、本明細書に記載される。眼障害の治療のためのこれらの組成物の使用も提供される。
【0016】
以下に記載されるように、従来の遺伝子増強戦略を使用したmTORシグナル伝達経路の刺激は、遺伝性視力喪失の前臨床モデルにおいて光受容体の死を遅らせ、視覚機能を保持する。プロテインキナーゼBは、AKT1またはRAC-αセリン/スレオニン-タンパク質キナーゼとも呼ばれ、p53、FoxO/FH転写因子、およびCREBを含む多様なタンパク質標的のリン酸化を介した細胞生存および生合成応答を担う。AKTは、代謝、増殖、生存、成長、および血管新生を含む多くの細胞プロセスを調節するAKTキナーゼと呼ばれる3つの密接に関連するセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ(AKT1、AKT2、およびAKT3)で構成される。
【0017】
本明細書で使用される場合、「AKT」という用語は、AKT1、AKT2、またはAKT3を指す。「hAKT」という用語は、ヒトAKTのコード配列を指す。特定の実施形態では、AKTは、AKT1を指す。特定の実施形態では、AKTは、AKT2を指す。特定の実施形態では、AKTは、AKT3を指す。さらに、AKTという用語は、タンパク質またはタンパク質をコードする核酸を指すために本明細書で使用される。hAKT1核酸配列は、配列番号9に見出すことができる。hAKT1のアミノ酸配列は、配列番号10に見出すことができる。hAKT2核酸配列は、配列番号11に見出すことができる。hAKT2のアミノ酸配列は、配列番号12に見出すことができる。hAKT3核酸配列は、配列番号7に見出すことができる。hAKT3のアミノ酸配列は、配列番号8に見出すことができる。特定の実施形態では、hAKTコード配列は、配列番号13に見出されるhAKT3コード配列(「hAKTopt」と称されることもある)などの操作された配列である。
【0018】
hAKTをコードする核酸配列が、本明細書に提供される。一実施形態では、配列番号
10に見出されるhAKT1アミノ酸配列をコードする核酸が提供される。別の実施形態では、配列番号12に見出されるアミノ酸配列をコードする核酸が提供される。さらに別の実施形態では、配列番号8に見出されるhAKT3アミノ酸配列をコードする核酸配列が提供される。AKTの他のアイソフォームは、当該技術分野において既知であり、本明細書において有用である。
【0019】
眼障害、およびそれに関連する網膜変性の治療のために哺乳動物対象にヒトタンパク質キナーゼB(AKT)をコードする核酸を送達するための組成物および方法が本明細書に記載される。特定の実施形態では、そのような組成物は、配列番号13に提供されるもの等の操作されたAKTコード配列を含む。導入遺伝子カセットのこの最適化は、天然配列を使用して生成され得るレベルと比較して、実験タンパク質の産生レベルを最大化することが予想される。しかしながら、本明細書には、それぞれ、配列番号9、配列番号11、および配列番号7に提供される、天然のAKT1、AKT2、またはAKT3コード配列を含む組成物も包含される。AKT1、AKT2、およびAKT3のいずれかについて実施形態が記載される場合、同様の実施形態が他のものについて列挙されることを意図されることを理解されたい。
【0020】
本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって、および本明細書で使用されている多数の用語に対して当業者に一般的な手引きを提供する公開された文書を参照することによって、一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に含まれる定義は、本明細書の成分および組成物を説明する際の明確さのために提供され、特許請求される発明を限定することを意図するものではない。
【0021】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される「対象」という用語は、哺乳動物を意味し、ヒト、獣医学用動物または農業用動物、家庭用動物または愛玩動物、ならびに臨床研究に通常使用される動物が含まれる。一実施形態では、これらの方法および組成物の対象は、ヒトである。さらに他の好適な対象としては、限定されないが、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、非ヒト霊長類等が挙げられる。本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、「患者」と互換的に使用される。
【0022】
一実施形態では、対象は、子供、すなわち、18歳未満である。別の実施形態では、対象は、幼児、すなわち、8歳以下である。別の実施形態では、対象は、よちよち歩きの幼児、すなわち、3歳以下である。さらに別の実施形態では、対象は、乳児、すなわち、1歳以下である。さらに別の実施形態では、対象は、新生児(newbornまたはneonate)、すなわち、生後1ヶ月以下である。別の実施形態では、対象は、成人、すなわち、年齢またはそれ以上である。さらに別の実施形態では、対象は、より高齢の成人、すなわち、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85歳、またはそれ以上である。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、対象は、「眼障害」を有し、本発明の成分、組成物、および方法が、それを治療するように設計される。特定の実施形態では、対象は、網膜変性を有するか、または網膜変性のリスクがあり、これが眼障害と関連していてもよく、または関連していなくてもよい。本明細書で使用される場合、「眼障害」は、錐体桿体ジストロフィーおよび網膜疾患を含み、限定されないが、シュタルガルト病(常染色体優性または常染色体劣性)、網膜色素変性症、およびパターンジストロフィーを含む。一実施形態では、対象は、網膜色素変性症を有する。一実施形態では、対象は、色覚異常を有する。別の実施形態では、対象は、コロイデレミアまたはX連鎖遺伝性網膜変性を有する。別の実施形態では、対象は、眼障害に関連する網膜変性を有する。別の実施形態では、対象は、眼障害に関連しない網膜変性を有する。そのような眼疾患の臨床徴候としては、限定されないが、周辺視野の低下、中心(読み取り)視力の低下、夜間視力の低下、色覚の喪失
、視力の低下、光受容体機能の低下、色素の変化、および最終的に失明が挙げられる。
【0024】
網膜変性は、その細胞の進行性の死によって引き起こされる網膜の劣化からなる網膜症である。網膜変性には、動脈または静脈の閉塞、糖尿病性網膜症、R.L.F./R.O.P.(後水晶体線維形成症/未熟児網膜症)、または疾患(通常は遺伝性)を含むいくつかの理由がある。網膜変性の徴候および症状には、限定されないが、視力障害、夜盲症、網膜剥離、光過敏症、視野狭窄、および周辺視野の喪失から全視力喪失までが含まれる。網膜変性およびリモデリングは、網膜色素変性症(RP)などの遺伝性網膜疾患、加齢黄斑変性(AMD)などの遺伝性の環境疾患、ならびに外傷および網膜剥離を含む眼/網膜に対する他の侵襲によって開始される、分子レベル、細胞レベル、および組織レベルでの一群の病理を包含する。これらの網膜変化および見かけの可塑性は、遺伝子発現における変化、デノボ神経発生、および新規シナプスの形成を含む神経の再編およびリプログラミング事象を引き起こし、樹状突起の変化および過剰な軸索成長を介して双極細胞内に破損回路を生成する。加えて、神経細胞移動は、変化した代謝シグナルを示すミュラー細胞の支柱に沿って網膜の垂直軸全体で起こり、網膜色素上皮(RPE)が網膜に侵入し、RP疾患の古典的な臨床観察であった骨小体様色素沈着を形成する(例えば、Retinal Degeneration,Remodeling and Plasticity
by Bryan William Jones,Robert E.Marc and Rebecca L.Pfeifferを参照されたい)。
【0025】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、対象に利益を与えるために使用される任意の方法を指し、すなわち、眼疾患、障害、または状態のうちの1つ以上の症状または態様を緩和し、発症を遅らせ、重症度もしくは発症率を下げることができるか、または予防をもたらすことができる。本発明の目的のために、治療は、症状の発症前、発症中、および/または発症後に投与することができる。特定の実施形態では、治療は、対象が従来の療法を受けた後に行われる。本明細書で使用される場合、「治療すること」という用語は、状態の進行を無効化すること、実質的に阻害すること、遅らせること、または逆転させること、状態の臨床的もしくは美的症状を実質的に改善すること、または状態の臨床的もしくは美的症状の出現を実質的に予防すること、あるいは眼疾患、障害、もしくは状態から生じる1つ以上の症状の重症度および/または頻度を減らすことを含む。
【0026】
核酸またはアミノ酸配列またはタンパク質に言及する場合に本明細書で使用される「外因性」という用語は、その核酸またはアミノ酸配列またはタンパク質が、染色体または宿主細胞に存在する位置では天然に存在しないことを意味する。外因性核酸配列はまた、同じ宿主細胞または対象に由来し、それらに挿入されるが、非天然状態(例えば、異なるコピー数、または異なる調節エレメントの制御下)で存在する配列を指す。
【0027】
核酸配列またはタンパク質を説明するために使用される場合、「異種」という用語は、核酸またはタンパク質が、それが発現される宿主細胞または対象とは異なる生物または同じ生物の異なる種に由来したことを意味する。プラスミド、発現カセット、もしくはベクターのタンパク質もしくは核酸を参照して使用される場合、「異種」という用語は、そのタンパク質または核酸が、問題のタンパク質または核酸が天然には同じ関係で見出されないタンパク質または核酸とは別の配列もしくはサブ配列とともに存在することを示す。
【0028】
核酸配列の文脈で「配列同一性」、「パーセント配列同一性」、または「パーセント同一」という用語は、最大限対応するように整列させたときに同じである2つの配列中の残基を指す。配列同一性の比較の長さは、AKTコード配列の全長、または少なくとも約100~150ヌクレオチドの断片、または望ましいものであり得る。しかしながら、例えば、少なくとも約9個のヌクレオチド、通常は少なくとも約20~24個のヌクレオチド、少なくとも約28~32個のヌクレオチド、少なくとも約36個以上のヌクレオチドの
、より小さい断片間の同一性も望まれ得る。多重配列整列プログラムもまた、核酸配列に対して利用可能である。かかるプログラムの例としては、インターネット上のウェブサーバを通してアクセス可能な「Clustal W」、「CAP Sequence Assembly」、「BLAST」、「MAP」、および「MEME」が挙げられる。かかるプログラムの他のソースは、当業者に既知である。あるいは、Vector NTIユーティリティもまた使用される。また、当該技術分野で既知のいくつかのアルゴリズムが存在し、上に記載のプログラムに含まれるものを含め、ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用することができる。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCGバージョン6.1のプログラムであるFasta(商標)を用いて比較することができる。一般的に利用可能な配列解析ソフトウェア、より具体的には、公開データベースによって提供されるBLASTまたは解析ツールも使用され得る。同様に、「パーセント配列同一性」などは、タンパク質の全長にわたるアミノ酸配列またはその断片について容易に決定することができる。好適には、断片は、少なくとも約8アミノ酸長であり、最大で約450アミノ酸長であり得る。
【0029】
「単離された」という用語は、物質がその元の環境(例えば、それが天然に存在する場合、天然環境)から除去されることを意味する。例えば、生きている動物中に存在する天然のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、その後、天然系の同時に存在する物質の一部またはすべてから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、天然系にその後に再導入されたとしても、単離されている。そのようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であり得、および/またはそのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、組成物の一部であり得、このようなベクターまたは組成物がその天然環境の一部ではないという点で、依然として単離されている。
【0030】
「操作された」とは、組み立てられ、任意の適切な遺伝子エレメント(例えば、裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなど)に配置される、本明細書に記載のAKTタンパク質をコードする核酸配列を意味し、例えば、非ウイルス送達系(例えば、RNAベースの系、裸のDNAなど)を生成するために、またはパッケージング宿主細胞内でウイルスベクターを生成するために、および/または対象において宿主細胞に送達するために、それらに含まれるAKT配列を宿主細胞に導入する。一実施形態では、遺伝子エレメントは、プラスミドである。かかる操作された構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作における当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、および合成技術を含む。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。
【0031】
本明細書で使用される「導入遺伝子」という用語は、本明細書に記載の発現カセット、rAAVゲノム、組換えプラスミドまたは産生プラスミド、ベクター、または宿主細胞におけるプロモーターまたは発現制御配列の制御下にある、外因性または操作されたタンパク質コード核酸配列を指す。特定の実施形態では、導入遺伝子は、機能的Aktタンパク質をコードするヒトタンパク質キナーゼB(Akt)配列である。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、配列番号8に示されるAKTアミノ酸配列をコードする核酸である。特定の実施形態では、導入遺伝子は、配列番号7に記載の配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、配列番号10に示されるAKTアミノ酸配列をコードする核酸である。特定の実施形態では、導入遺伝子は、配列番号9に記載の配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、配列番号12に示されるAKTアミノ酸配列をコードする核酸である。特定の実施形態では、導入遺伝子は、配列番号11に記載の配列によってコードされる。特定の実施形態では、導入遺伝子は、配列番号13に記載の配列によってコードされる。特定の実施形態では、導入遺伝子は、配列番
号7、9、11、または13と少なくとも70%の同一性を共有する配列である、操作されたAKTコード配列である。例えば、配列番号13は、配列番号7と約75%の同一性を共有する(図15A図15Cに提供されるアラインメントおよびパーセント同一性マトリックスを参照されたい)。天然配列のさらなる修飾は、本明細書に記載されるように、本発明によって企図される。
【0032】
一実施形態では、AKTをコードする核酸配列は、それに共有結合したタグポリペプチドをコードする核酸をさらに含む。タグポリペプチドは、限定されないが、mycタグポリペプチド、グルタチオン-S-トランスフェラーゼタグポリペプチド、緑色蛍光タンパク質タグポリペプチド、Myc-ピルビン酸キナーゼタグポリペプチド、His6タグポリペプチド、インフルエンザウイルスヘマグルチニンタグポリペプチド、フラグタグポリペプチド、myr(ミリストイル化)ポリペプチド、およびマルトース結合タンパク質タグポリペプチドを含む既知の「エピトープタグ」から選択され得る。一実施形態では、核酸配列は、配列番号1または配列番号3に見出されるMYRタグを含む。
【0033】
本明細書で使用される「ベクター」は、その中に外因性もしくは異種もしくは操作された核酸導入遺伝子が挿入されていてもよく、次いで、適切な宿主細胞に導入され得る核酸分子である。ベクターは、好ましくは、1つ以上の複製起点と、組換えDNAが挿入され得る1つ以上の部位とを有する。ベクターは、しばしば、ベクターを有する細胞が、ベクターを有しない細胞から選択され得る簡便な手段を有し、例えば、それらが薬物耐性遺伝子をコードする。一般的なベクターは、プラスミド、ウイルスゲノム、および(主に酵母および細菌における)「人工染色体」を含む。特定のプラスミドは、本明細書に記載されている。
【0034】
「ウイルスベクター」は、外因性または異種AKT核酸導入遺伝子を含む複製欠損ウイルスとして定義される。一実施形態では、本明細書に記載の発現カセットは、宿主細胞への送達および/またはウイルスベクターの産生のために使用されるプラスミド上で操作され得る。好適なウイルスベクターは、好ましくは複製欠損であり、眼細胞を標的とするものの中から選択される。ウイルスベクターは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、パルボウイルスなどを含むが、これらに限定されない、遺伝子療法に好適な任意のウイルスを含み得る。しかしながら、理解しやすいように、アデノ随伴ウイルスが、本明細書において、例示的なウイルスベクターとして言及される。
【0035】
「複製欠損ウイルス」または「ウイルスベクター」は、目的の遺伝子を含有する発現カセットがウイルスカプシドまたはエンベロープにパッケージングされ、そのウイルスカプシドまたはエンベロープにパッケージングされた任意のウイルスゲノム配列が複製欠損である(すなわち、後代ビリオンを生成することはできないが、標的細胞を感染させる能力は保持している)、合成または組換えウイルス粒子を指す。一実施形態では、ウイルスベクターのゲノムは、複製に必要とされる酵素をコードする遺伝子を含まないが(ゲノムは、人工ゲノムの増幅およびパッケージングに必要なシグナルに隣接する目的の導入遺伝子のみを含む「ガットレス(gutless)」であるように操作され得る)、これらの遺伝子は、産生中に供給され得る。したがって、それは、後代ビリオンによる複製および感染が、複製に必要とされるウイルス酵素の存在下以外で生じることができないために、遺伝子療法における使用のために安全であると考えられる。
【0036】
さらに別の実施形態では、発現カセット(本明細書に記載されるもののいずれかを含む)が使用され、組換えAAVゲノムを生成する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、組換えAAVが産生プラスミドから産生されるパッケージング細胞株を指し得る。代替的に、「宿主細胞」という用語
は、導入遺伝子の発現が望まれる任意の標的細胞を指し得る。したがって、「宿主細胞」は、任意の手段(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染、トランスフェクション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合)によって細胞に導入された外因性DNAまたは異種DNAを含む原核細胞または真核細胞を指す。本明細書の特定の実施形態では、「宿主細胞」という用語は、本明細書に記載される組成物のインビトロ評価のための様々な哺乳動物種の眼細胞の培養物を指す。さらに他の実施形態では、「宿主細胞」という用語は、眼疾患のためにインビボで治療される対象の眼細胞を指すことが意図される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「眼細胞」という用語は、眼内の任意の細胞、または眼の機能に関連する任意の細胞を指す。この用語は、桿体光受容体、錐体光受容体および感光性神経節細胞、網膜色素上皮(RPE)細胞、ミュラー細胞、脈絡叢細胞、双極細胞、水平細胞、および無軸索細胞を含む、光受容体細胞のいずれか1つを指し得る。一実施形態では、眼細胞は、光受容体細胞である。別の実施形態では、眼細胞は、RPE細胞である。
【0039】
「プラスミド」は、一般に、当業者によく知られている標準的な命名規則に従って、小文字のpの前および/または後の大文字および/または数字によって、本明細書で命名される。本発明に従って使用することができる多くのプラスミド、および他のクローニングおよび発現ベクターは、当業者に周知であり、容易に入手可能である。さらに、当業者は、本発明における使用に好適な任意の数の他のプラスミドを容易に構築し得る。本発明におけるかかるプラスミド、ならびに他のベクターの特性、構造、および使用は、本開示の当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0040】
本明細書で使用される場合、「転写制御配列」または「発現制御配列」という用語は、イニシエーター配列、エンハンサー配列、およびプロモーター配列などのDNA配列を指し、それらが作動可能に連結しているタンパク質をコードする核酸配列の転写を誘導するか、抑制するか、またはその他の方法で制御する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結される」または「作動可能に会合する」という用語は、転写およびその発現を制御するためにトランスで、もしくは所定距離でAKTをコードする核酸配列および/または発現制御配列に連続している両方の発現制御配列を指す。
【0042】
本明細書で使用される「AAV」または「AAV血清型」という用語は、数十種の天然に存在し、かつ利用可能なアデノ随伴ウイルス、ならびに人工AAVを指す。ヒトまたは非ヒト霊長類(NHP)から単離され、または操作され、十分に特徴付けられたAAVのうち、ヒトAAV2が、遺伝子導入ベクターとして開発された最初のAAVであり、それは、異なる標的組織および動物モデルにおいて、効率的な遺伝子導入実験に広く使用されている。別途指定されない限り、本明細書に記載のAAVカプシド、ITR、および他の選択されるAAV成分は、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV8bp、AAV7M8およびAAVAnc80、既知のもしくは言及されたAAVのうちのいずれかのバリアント、または未だ発見されていないAAVもしくはそのバリアント、またはそれらの混合物を含む任意のAAVから容易に選択され得る。例えば、WO2005/033321を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。別の実施形態では、AAVカプシドは、双極細胞を優先的に標的とする、AAV8bpカプシドである。例えば、WO2014/024282を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。特定の実施形態では、AAVカプシドは、外側網膜への優先的な送達を示したAAV7m8カプシドである。D
alkara et al,In Vivo-Directed Evolution of a New Adeno-Associated Virus for Therapeutic Outer Retinal Gene Delivery from
the Vitreous,Sci Transl Med 5,189ra76(2013)を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。一実施形態では、AAVカプシドは、AAV8カプシドである。別の実施形態では、AAVカプシド AAV9カプシド。別の実施形態では、AAVカプシド AAV5カプシド。別の実施形態では、AAVカプシド AAV2カプシド。
【0043】
本明細書で使用される場合、AAVに関して言及する場合、「バリアント」という用語は、アミノ酸配列または核酸配列にわたって少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、またはさらに大きな配列同一性を共有するものを含め、既知のAAV配列に由来する任意のAAV配列を意味する。別の実施形態では、AAVカプシドは、任意の記載または既知のAAVカプシド配列から最大約10%のバリエーションを含み得るバリアントを含む。すなわち、AAVカプシドは、本明細書に提供され、かつ/または当該技術分野で既知のAAVカプシドと、約90%の同一性~約99.9%の同一性、約95%~約99%の同一性、または約97%~約98%の同一性を共有する。一実施形態では、AAVカプシドは、AAVカプシドと少なくとも95%の同一性を共有する。AAVカプシドのパーセント同一性を決定する場合、比較は、可変タンパク質(例えば、vp1、vp2、またはvp3)のうちのいずれかにわたって行われ得る。一実施形態では、AAVカプシドは、AAV8 vp3と少なくとも95%の同一性を共有する。別の実施形態では、AAVカプシドは、AAV2カプシドと少なくとも95%の同一性を共有する。別の実施形態では、自己相補的AAVが使用される。
【0044】
ITRまたは他のAAV成分は、当業者に利用可能な技術を使用して、AAVから容易に単離または操作され得る。かかるAAVは、学術的、商業的、または公的資源(例えば、American Type Culture Collection、Manassas,VA)から単離、操作、または入手することができる。あるいは、AAV配列は、文献またはデータベース(例えば、GenBank、PubMedなど)で利用可能であるような公開された配列を参照することによって、合成または他の好適な手段を通して操作され得る。AAVウイルスは、従来の分子生物学的な技術によって操作することができ、これらの粒子を、核酸配列の細胞特異的送達のため、免疫原性を最小限に抑えるため、安定性および粒子寿命を調整するため、効率的な分解のため、核への正確な送達のためなどに最適化することが可能になる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「人工AAV」は、限定されないが、天然に存在しないカプシドタンパク質を有するAAVを意味する。かかる人工カプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質の断片)を使用して、異種配列(異なる選択されたAAV、同じAAVの非連続部分、非AAVウイルス源、または非ウイルス源から得ることができる)と組み合わせて、任意の好適な技術によって生成され得る。人工AAVは、擬似型AAVカプシド、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、または「ヒト化」AAVカプシドであり得るが、これらに限定されない。1つのAAVのカプシドタンパク質が異種カプシドタンパク質に置き換えられている擬似型ベクターは、本発明に有用である。一実施形態では、AAV2/5およびAAV2/7m8は、例示的な擬似型ベクターである。
【0046】
「自己相補的AAV」は、組換えAAV核酸配列によって担持されるコード領域が、分子内二本鎖DNA鋳型を形成するように設計されている発現カセットを有するプラスミドまたはベクターを指す。感染時には、第2の鎖の細胞介在合成を待つのではなく、scA
AVの2つの相補的片割れが会合して、即時の複製および転写に備えのある1つの二本鎖DNA(dsDNA)ユニットを形成する。例えば、D M McCarty et al,「Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV)vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis」,(August 2001),Vol 8,Number
16,Pages 1248-1254を参照されたい。自己相補的AAVは、例えば、米国特許第6,596,535号、同第7,125,717号、および同第7,456,683号に記載されており、その各々は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0047】
「投与」または「投与経路」は、選択された組成物の送達に好適であり、眼疾患を特徴とする選択された標的細胞に有効量を送達することができる任意の既知の投与経路を含む。本発明の方法で有用な投与経路には、経口、非経口、静脈内、鼻腔内、舌下、眼内注射、網膜下注射、硝子体内注射、デポー製剤またはデバイス経由、点眼剤経由、吸入によるものの1つ以上が含まれる。特定の実施形態では、本方法は、網膜下注射によって組成物をRPE、光受容体細胞、および/または他の眼細胞に送達することを伴う。特定の実施形態では、眼細胞への硝子体内注射を用いる。さらに他の実施形態では、眼細胞への眼瞼静脈を介した注射が用いられる。さらに他の投与方法は、本開示を考慮して、所与の当業者によって選択され得る。投与経路は、所望される場合、組み合わされてもよい。いくつかの実施形態では、投与は、周期的に繰り返される。本明細書に記載の医薬組成物は、任意の好適な経路または異なる経路の組み合わせによって、それを必要とする対象に送達されるように設計される。本明細書に記載の核酸分子および/またはベクターは、単一の組成物または複数の組成物で送達されてもよい。任意選択で、2つ以上の異なるAAVが送達されるか、または複数のウイルスが送達されてもよい[例えば、WO20 2011/126808およびWO2013/049493を参照されたい]。別の実施形態では、複数のウイルスは、単独で、またはタンパク質と組み合わせて、異なる複製欠損ウイルス(例えば、AAVおよびアデノウイルス)を含有し得る。
【0048】
本明細書に記載の特定の組成物は、ヒトAKTをコードする配列を提供する、単離された、または合成もしくは組換え操作された核酸配列である。一実施形態では、ヒトAKTをコードする単離または操作された核酸配列が提供される。特定の実施形態では、配列は、エピトープタグなどのマーカーの追加を可能にする1つ以上の追加の制限部位を含む。天然核酸配列と整列させた場合、AKTをコードする操作された配列は、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%(それらの範囲のいずれかの間の任意の整数を含む)のパーセント同一性を有し得る。一実施形態では、AKTをコードする操作された配列は、少なくとも51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の天然配列とのパーセント同一性を有する。
【0049】
AKTタンパク質の発現のために配列番号7を使用する様々な発現カセットが提供される。一実施形態では、そのような発現カセットを含有するプラスミドの一例を、配列番号1に示す。一実施形態では、そのような発現カセットを含有するプラスミドの一例を、配列番号3に示す。別の実施形態では、発現カセットは、Myrタグを含まない。AKTタンパク質の発現に配列番号13を用いた発現カセットを配列番号5に示す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」は、AKTタンパク質についてのコード配列、プロモーターを含む核酸分子を指し、それらのための他の調節配列を含んでいても
よく、カセットは、遺伝子エレメントまたはプラスミド内で操作されてもよく、および/またはウイルスベクターのカプシド(例えば、ウイルス粒子)内にパッケージングされてもよい。一実施形態では、発現カセットは、AKTをコードする操作された核酸配列を含む。一実施形態では、発現カセットは、宿主細胞におけるAKTコード配列および/または遺伝子産物の発現を指示する発現制御配列と作動可能に連結されたAKTコード配列を含む。
【0051】
「組換えAAV」または「rAAV」は、2つの要素、AAVカプシド、およびAAVカプシド内にパッケージされた少なくとも非AAVコード配列を含むベクターゲノムを含むDNAse耐性ウイルス粒子である。特に明記しない限り、この用語は「rAAVベクター」という句と互換的に使用され得る。rAAVは、任意の機能的AAV rep遺伝子または機能的AAV cap遺伝子を欠き、子孫を生成することができないため、「複製欠損ウイルス」または「複製欠損ウイルスベクター」である。特定の実施形態では、唯一のAAV配列は、AAV逆方向末端反復配列(ITR)であり、ITR間に位置する遺伝子および調節配列がAAVカプシド内にパッケージされることを可能にするために、典型的にはベクターゲノムの5’および3’最末端に位置する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「ベクターゲノム」は、ウイルス粒子を形成するrAAVカプシドの内側にパッケージされる核酸配列を指す。かかる核酸配列は、AAV逆方向末端反復配列(ITR)を含む。本明細書の実施例では、ベクターゲノムは、少なくとも5’から3’に、AAV 5’ITR、コード配列、およびAAV 3’ITRを含む。AAV2からのITR、カプシドとは異なる供給源AAV、または完全長ITR以外が選択され得る。特定の実施形態では、ITRは、産生中のrep機能またはトランス相補AAVを提供するAAVと同じAAV供給源由来である。さらに、他のITRが使用され得る。さらに、ベクターゲノムは、遺伝子産物の発現を指示する制御配列を含む。
【0053】
様々なプラスミドは、rAAVベクターを産生するために使用するための当該技術分野において既知であり、本明細書に記載される組成物および方法に有用である。産生プラスミドは、AAV capおよび/またはrepタンパク質を発現する宿主細胞内で培養される。宿主細胞では、各rAAVゲノムがレスキューされ、カプシドタンパク質またはエンベロープタンパク質内にパッケージングされ、感染性ウイルス粒子を形成する。一実施形態では、産生プラスミドは、本明細書に記載されているもの、またはWO2012/158757(参照により本明細書に援用される)に記載されている通りである。
【0054】
産生プラスミドの1つの種類は、配列番号1および図12に示されるものであり、pAAV.CAG.myr.hAKT3と称される。別の産生プラスミドを、配列番号2および図13に示す。さらに別の産生プラスミドを、配列番号3および図14に示す。かかるプラスミドは、5’AAV ITR配列と、選択されたプロモーターと、ポリA配列と、3’ITRとを含有するものである。AKTをコードする核酸配列は、選択されたプロモーターとポリA配列との間に挿入される。特定の実施形態では、産生プラスミドは、ベクタープラスミド産生効率を最適化するように修飾される。かかる修飾は、本明細書において企図される。他の実施形態では、ターミネーターおよび他の配列は、プラスミドに含まれる。
【0055】
なおさらなる実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、本明細書に記載のAKT構築物および配列の送達のために提供される。AAVベクターは、AAVカプシドと、AAV逆方向末端反復(ITR)配列を含む核酸配列と、ヒトタンパク質キナーゼB(AKT)をコードする核酸配列と、宿主細胞におけるAKTの発現を指示する発現制御配列とを含む。アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターは、AAVタンパク質カプシドを有するAAV DNase耐性粒子であり、その中に、標的細胞に送
達するための核酸配列がパッケージングされている。AAVカプシドは、60個のカプシド(cap)タンパク質サブユニットVP1、VP2、およびVP3からなり、選択されるAAVに応じて、およそ1:1:10~1:1:20の比で二十面体対称に配置される。上に特定されたAAVウイルスベクターのカプシドの供給源として、AAVが選択されてもよい。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターで使用するためのAAVカプシドは、前述のAAVカプシドまたはそのコード核酸のうちの1つの突然変異誘発(すなわち、挿入、欠失、または置換による)によって生成され得る。いくつかの実施形態では、AAVカプシドは、前述のAAVカプシドタンパク質のうちの2つまたは3つまたは4つまたはさらに多くのドメインを含むキメラである。いくつかの実施形態では、AAVカプシドは、2つまたは3つの異なるAAVまたは組換えAAV由来のvpl、vp2、およびvp3モノマーのモザイクである。いくつかの実施形態では、rAAV組成物は、前述のカプシドタンパク質のうちの1つより多くを含む。
【0056】
発現カセットまたはrAAVゲノムまたは産生プラスミドをビリオン内にパッケージングするために、ITRは、導入遺伝子と同じ構築物中でシスに必要とされる唯一のAAV成分である。一実施形態では、複製(rep)および/またはカプシド(cap)のコード配列は、AAVゲノムから除去され、トランスで供給されるか、またはAAVベクターを生成するためにパッケージング細胞株によって供給される。例えば、上述のように、擬似型AAVは、AAVカプシドの供給源とは異なる供給源からのITRを含有し得る。これに加えて、または代替的に、キメラAAVカプシドが利用される。さらに他のAAV成分が選択され得る。かかるAAV配列の供給源は、本明細書に記載されており、単離または操作されてもよく、学術的、商業的、または公的な供給源(例えば、American
Type Culture Collection、Manassas,VA)から入手されてもよい。あるいは、AAV配列は、文献またはデータベース(例えば、GenBank(登録商標)、PubMed(登録商標)など)で利用可能であるような公開された配列を参照することによって、合成または他の好適な手段を通して入手されてもよい。
【0057】
対象に送達するのに適したAAVウイルスベクターを生成し、単離するための方法は、当該技術分野において既知である。例えば、米国特許第7790449号、米国特許第7282199号、WO 2003/042397、WO 2005/033321、WO
2006/110689、およびUS7588772B2を参照されたい。1つの系では、プロデューサー細胞株は、ITRに隣接する導入遺伝子をコードする構築物と、repおよびcapをコードする構築物によって一過性にトランスフェクトされる。第2の系では、repおよびcapを安定的に供給するパッケージング細胞株は、ITRに隣接する導入遺伝子をコードする構築物によって一過性にトランスフェクトされる。これらの系の各々において、AAVビリオンは、ヘルパーアデノウイルスまたはヘルペスウイルスの感染に応答して産生され、rAAVを汚染ウイルスから分離することを必要とする。より最近では、AAVを回収するためにヘルパーウイルスによる感染を必要としない系が開発されており、必要なヘルパー機能(すなわち、アデノウイルスE1、E2a、VA、およびE4、またはヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52、およびUL29、ならびにヘルペスウイルスポリメラーゼ)も、トランスで系によって供給される。これらのより新しい系では、ヘルパー機能は、必要とされるヘルパー機能をコードする構築物で細胞を一過性にトランスフェクションすることによって供給することができ、またはヘルパー機能をコードする遺伝子を安定に含むように細胞を操作することができ、その発現が、転写レベルまたは転写後レベルで制御することができる。
【0058】
さらに別の系では、ITRに隣接する導入遺伝子およびrep/cap遺伝子は、バキュロウイルス由来のベクターによる感染によって、昆虫細胞に導入される。これらの産生系に関する概説については、一般的に、例えば、Zhang et al.,2009,“Adenovirus-adeno-associated virus hybri
d for large-scale recombinant adeno-associated virus production,”Human Gene Therapy 20:922-929(その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照されたい。これらおよび他のAAV生産系の製造方法および使用方法は、以下の米国特許にも記載され、それらの内容は参照によりその全体が本明細書に援用される:5,139,941、5,741,683、6,057,152、6,204,059、6,268,213、6,491,907、6,660,514、6,951,753、7,094,604、7,172,893、7,201,898、7,229,823、および7,439,065。一般に、例えば、Grieger&Samulski,2005,“Adeno-associated virus as a gene therapy vector:Vector development,production
and clinical applications,”Adv.Biochem.Engin/Biotechnol.99:119-145、Buning et al.,2008,“Recent developments in adeno-associated virus vector technology,”J.Gene Med.10:717-733、および以下に引用される参考文献を参照されたい(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される)。
【0059】
本発明の任意の実施形態を構築するために使用される方法は、核酸操作における当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、および合成技術を含む。例えば、Green and Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。同様に、rAAVビリオンを生成する方法は周知であり、好適な方法の選択は、本発明を限定しない。例えば、K.Fisher et al,(1993)J.Virol.,70:520-532および米国特許第5,478,745号を参照されたい。
【0060】
本明細書に提供されるrAAVベクターは、AAVカプシドと、上述のようなAKTをコードする配列を有するAAV発現カセットとを含む。特定の実施形態では、rAAV発現カセットは、AAV逆方向末端反復配列と、AKTをコードする核酸配列と、宿主細胞におけるコードされたタンパク質の発現を指示する発現制御配列とを含む。rAAV発現カセットは、他の実施形態では、イントロン、Kozak配列、ポリA、および転写後調節エレメントのうちの1つ以上をさらに含む。眼への送達のための医薬組成物で使用するためのそのようなrAAVベクターは、本明細書に記載されるものを含む多くの既知のAAVのうちのいずれかに由来するカプシドを用いてもよい。
【0061】
本明細書に提供される発現カセットおよびベクターの他の従来の成分は、特定の種に対して、例えば、本明細書に記載されるようなコドン最適化を含む当該技術分野で既知の技術を使用して最適化することができる。本明細書に記載されるカセット、ベクター、プラスミド、ウイルス、または他の組成物の成分は、発現制御配列の一部としてプロモーター配列を含む。別の実施形態では、プロモーターは、細胞特異的である。「細胞特異的」という用語は、組換えベクターに対して選択される特定のプロモーターが、特定の眼細胞の1種類以上においてAKT導入遺伝子の発現を指示することができることを意味する。一実施形態では、プロモーターは、光受容体細胞における導入遺伝子の発現に特異的である。別の実施形態では、プロモーターは、桿体および錐体における発現に特異的である。別の実施形態では、プロモーターは、桿体における発現に特異的である。別の実施形態では、プロモーターは、錐体における発現に特異的である。一実施形態では、光受容体特異的プロモーターは、ヒトロドプシンキナーゼプロモーターである。ロドプシンキナーゼプロモーターは、桿体および錐体の両方で活性であることが示されている。例えば、Sun et al,Gene Therapy with a Promoter Targe
ting Both Rods and Cones Rescues Retinal
Degeneration Caused by AIPL1 Mutations,Gene Ther.2010 January;17(1):117-131を参照されたい(参照によりその全体が本明細書に援用される)。一実施形態では、プロモーターは、クローニングを容易にするために、1つ以上の制限部位を添加するように修飾される。
【0062】
さらに他の実施形態では、プロモーターは、ヒトロドプシンプロモーターである。一実施形態では、プロモーターは、クローニングのために末端に制限を含むように修飾される。例えば、Nathans and Hogness,Isolation and nucleotide sequence of the gene encoding human rhodopsin,PNAS,81:4851-5(August 1984)を参照されたい(参照によりその全体が本明細書に援用される)。別の実施形態では、プロモーターは、ヒトロドプシンプロモーターの一部または断片である。別の実施形態では、プロモーターは、ヒトロドプシンプロモーターのバリアントである。
【0063】
他の例示的なプロモーターとしては、ヒトGタンパク質共役受容体プロテインキナーゼ1(GRK1)プロモーター(Genbank受入番号AY327580)が挙げられる。別の実施形態では、プロモーターは、GRK1プロモーターの292nt断片(1793~2087位)である(参照によりその全体が本明細書に援用されるBeltran et al,Gene Therapy 2010 17:1162-74を参照されたい)。一実施形態では、プロモーターは、配列番号3のnt1427~1790のGRK1プロモーターである。別の好ましい実施形態では、プロモーターは、ヒト光受容体間レチノイド結合タンパク質近位(IRBP)プロモーターである。一実施形態では、プロモーターは、hIRBPプロモーターの235nt断片である。一実施形態では、プロモーターは、RPGR近位プロモーターである(Shu et al,IOVS,May 2102、その全体が参照により援用される)。本発明において有用な他のプロモーターとしては、限定されないが、桿体オプシンプロモーター、赤緑オプシンプロモーター、青オプシンプロモーター、cGMP-β-ホスホジエステラーゼプロモーター(Qgueta
et al,IOVS,Invest Ophthalmol Vis Sci.2000 Dec;41(13):4059-63)、マウスオプシンプロモーター(上に引用されたBeltran et al 2010)、ロドプシンプロモーター(Mussolino et al,Gene Ther,July 2011,18(7):637-45)、錐体トランスデューシンのアルファ-サブユニット(Morrissey et al,BMC Dev,Biol,Jan 2011,11:3)、ベータホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーター(Nicord et al,J.Gene Med,Dec 2007,9(12):1015-23)、NXNL2/NXNL1プロモーター(Lambard et al,PLoS One,Oct.2010,5(10):e13025)、RPE65プロモーター、網膜変性遅型/ペリフェリン2(Rds/perph2)プロモーター(Cai et al,Exp Eye Res.2010 Aug;91(2):186-94)、およびVMD2プロモーター(Kachi et al,Human Gene Therapy,2009(20:31-9))が挙げられる。これらの文書の各々は、参照によりその全体が本明細書に援用される。別の実施形態では、プロモーターは、ヒトヒトEF1αプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼ、光受容体間結合タンパク質(IRBP)、錐体オプシンプロモーター(赤緑、青)、赤緑錐体遺伝子座制御領域を含む錐体オプシン上流配列、錐体トランスデューシング、ならびに転写因子プロモーター(神経網膜ロイシンジッパー(Nrl)および光受容体特異的核内受容体Nr2e3、bZIP)から選択される。
【0064】
他の実施形態では、プロモーターは、偏在性または構成的プロモーターである。好適なプロモーターの例は、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメントを有するハイブリッドニワトリβアクチン(CBA)プロモーターである。別の実施形態では、CMVエンハンサー配列を有するニワトリベータアクチンプロモーターは、配列番号1のnt1443~3104である。さらに別の実施形態では、CMVエンハンサー配列を有するニワトリベータアクチンプロモーターは、配列番号5のnt1493~2075である。別の実施形態では、プロモーターは、CB7プロモーターである。他の好適なプロモーターとしては、ヒトβ-アクチンプロモーター、ヒト伸長因子-1αプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス40プロモーター、および単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。例えば、Damdindorj et al,(August 2014)A Comparative Analysis of Constitutive Promoters Located in Adeno-Associated Viral Vectors.PLoS
ONE 9(8):e106472を参照されたい。さらに他の好適なプロモーターとしては、ウイルスプロモーター、構成的プロモーター、調節可能なプロモーターが挙げられる(例えば、WO2011/126808およびWO2013/04943を参照されたい)。あるいは、生理学的手がかりに応答するプロモーターが、本明細書に記載される発現カセット、rAAVゲノム、ベクター、プラスミド、およびウイルスに利用され得る。一実施形態では、プロモーターは、AAVベクターのサイズ制限に起因して、1000bp未満の小さなサイズのプロモーターである。別の実施形態では、プロモーターは、400bp未満である。他のプロモーターは、当業者により選択され得る。一実施形態では、AKT構築物は、CMVエンハンサーエレメントを有するCBAプロモーターを含む。別の実施形態では、AKT構築物は、GRK1プロモーターを含む。一実施形態では、GRK1プロモーターは、配列番号3のnt1427~1790に示されるものである。
【0065】
特定の実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。誘導性プロモーターは、ラパマイシン/ラパログ(rapalog)プロモーター、エクジソンプロモーター、エストロゲン応答性プロモーター、およびテトラサイクリン応答性プロモーター、またはヘテロ二量体リプレッサースイッチを含む既知のプロモーターから選択され得る。例えば、Sochor et al,An Autogenously Regulated Expression System for Gene Therapeutic
Ocular Applications.Scientific Reports,2015 Nov 24;5:17105およびDaber R,Lewis M.,A
novel molecular switch.J Mol Biol.2009 Aug 28;391(4):661-70,Epub 2009 Jun 21を参照されたい(両方とも、それらの全体が参照により本明細書に援用される)。
【0066】
他の実施形態では、本明細書に記載のカセット、ベクター、プラスミド、およびウイルス構築物は、他の好適な転写開始配列、終結配列、エンハンサー配列、スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル、TATA配列、細胞質mRNAを安定化させる配列、翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列)、イントロン、タンパク質の安定性を増強させる配列を含み、所望な場合、コードされた産物の分泌を増強させる配列を含み得る。発現カセットまたはベクターは、本明細書に記載されるエレメントを含まなくてもよく、いずれか1つ以上を含んでいてもよい。好適なポリA配列の例には、例えば、SV40、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリA、およびTKポリAが含まれる。好適なエンハンサーの例には、例えば、特に、CMVエンハンサー、RSVエンハンサー、アルファフェトタンパク質エンハンサー、TTR最小プロモーター/エンハンサー、LSP(TH結合グロブリンプロモーター/アルファ1-マイクログロブリン/ビクニンエンハンサー)が含まれる。一実施形態では、正しい開始コドンからの翻訳を増強するために、導入遺伝子コード配列の上流にK
ozak配列が含まれる。別の実施形態では、CBAエクソン1およびイントロンは、発現カセットに含まれる。一実施形態では、導入遺伝子は、ハイブリッドニワトリβアクチン(CBA)プロモーターの制御下に置かれる。このプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期エンハンサー、近位ニワトリβアクチンプロモーター、およびイントロン1配列に隣接するCBAエクソン1からなる。
【0067】
特定の実施形態では、Kozak配列は、GCCGCCACC(配列番号1、nt3121~3129)である。
【0068】
特定の実施形態では、発現カセットは、5’ITRと、CBAプロモーターと、CMVエンハンサーと、ヒトAKT3コード配列(配列番号7)と、bGHポリAと、3’ITRとを含む。
【0069】
特定の実施形態では、発現カセットは、5’ITRと、hGRK1プロモーターと、ヒトAKT3配列(配列番号7)と、bGHポリAと、3’ITRとを含む。
【0070】
特定の実施形態では、発現カセットは、5’ITRと、CBAプロモーターと、CMVエンハンサーと、操作されたヒトAKT3配列(配列番号13)と、bGHポリAと、3’ITRとを含む。
【0071】
特定の実施形態では、発現カセットは、5’ITRと、hGRK1プロモーターと、操作されたヒトAKT3配列(配列番号13)と、bGHポリAと、3’ITRとを含む。
【0072】
特定の実施形態では、これらの核酸配列、ベクター、発現カセット、またはrAAVウイルスベクターは、本明細書に記載されており、医薬組成物において有用であり、薬学的に許容される担体、緩衝液、希釈剤、および/またはアジュバントなども含む。かかる医薬組成物は、例えば、組換え操作されたAAVまたは人工AAVによる送達を通じて、眼細胞においてAKTを発現させるために使用される。
【0073】
核酸配列、ベクター、発現カセットおよびrAAVウイルスベクターを含有するこれらの医薬組成物を調製するために、配列またはベクターまたはウイルスベクターを、好ましくは、従来の方法による汚染について評価し、次いで、眼への投与に好適な医薬組成物に製剤化する。そのような製剤は、適切な生理学的レベルでpHを維持するために、薬学的および/または生理学的に許容されるビヒクルまたは担体、特に、緩衝生理食塩水または他の緩衝液、例えば、HEPESなどの眼への投与に好適なビヒクルまたは担体、ならびに任意選択で、他の医薬薬剤、薬剤、安定化剤、緩衝液、担体、アジュバント、希釈剤などの使用を伴う。注射に関して、担体は、典型的には液体である。例示的な生理学的に許容される担体としては、滅菌された発熱性物質除去水および滅菌され、発熱性物質除去され、リン酸緩衝化された生理食塩水が挙げられる。様々なかかる既知の担体が、参照により本明細書に援用される米国特許公開第7,629,322号に提供される。一実施形態では、担体は、等張性塩化ナトリウム溶液である。別の実施形態では、担体は、平衡塩溶液である。一実施形態では、担体は、tweenを含む。ウイルスを長期間保存する場合は、グリセロールまたはTween20の存在下で凍結させ得る。
【0074】
1つの例示的な特定の実施形態では、担体または賦形剤の組成物は、0.0001%~0.01%のPluronic F68(PF68)を含む180mM NaCl、10mM NaPi、pH7.3を含有する。緩衝液の生理食塩水成分の正確な組成は、160mM~180mMのNaClの範囲である。任意選択で、具体的に記載される緩衝液の代わりに、異なるpH緩衝液(潜在的には、HEPES、重炭酸ナトリウム、TRIS)を使用する。さらに代替的に、0.9%NaClを含有する緩衝液が有用である。
【0075】
任意選択で、本発明の組成物は、rAAVおよび/またはバリアントおよび担体に加えて、防腐剤または化学的安定剤などの他の従来の医薬成分を含有する。好適な例示的な防腐剤としては、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、およびパラクロロフェノールが挙げられる。好適な化学安定剤としては、ゼラチンおよびアルブミンが挙げられる。
【0076】
AAVウイルスベクターの場合、ゲノムコピー(「GC」)、ベクターゲノム(「VG」)、またはウイルス粒子の定量化は、製剤または懸濁液に含まれる用量の尺度として使用され得る。当該技術分野で既知の任意の方法を使用して、本発明の複製欠損ウイルス組成物のゲノムコピー(GC)数を決定することができる。AAVのGC数滴定を行うための1つの方法は、以下の通りである。精製されたAAVベクター試料は、まずDNaseで処理され、非カプシド化AAVゲノムDNAまたは産生プロセスからの汚染プラスミドDNAを排除する。次いで、DNase耐性粒子を熱処理して、カプシドからゲノムを放出させる。次に、ウイルスゲノムの特定の領域(通常はポリAシグナル)を標的とするプライマー/プローブセットを使用したリアルタイムPCRによって、放出されたゲノムを定量化する。別の方法では、AKT導入遺伝子をコードする核酸配列を保有する組換えアデノ随伴ウイルスの有効用量は、S.K.McLaughlin et al,1988
J.Virol.,62:1963(参照によりその全体が援用される)に記載されるように測定される。
【0077】
本明細書で使用される場合、「投薬量」という用語は、治療の過程で対象に送達される総投薬量、あるいは単一の単位(または複数の単位もしくは分割投薬量)投与で送達される量を指し得る。医薬ウイルス組成物は、約1.0×10GC~約1.0×1015GCの範囲内(その範囲内のすべての整数または分数量を含む)である、本明細書に記載されるAKTをコードする核酸配列を保有する複製欠損ウイルスの量を含むように投薬量単位で製剤化され得る。一実施形態では、組成物は、範囲内のすべての整数または分数量を含む、用量当たり少なくとも1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、または9×10GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内のすべての整数または分数量を含む、用量当たり少なくとも1x1010、2x1010、3x1010、4x1010、5x1010、6x1010、7x1010、8x1010、または9x1010GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内のすべての整数または分数を含む、用量当たり少なくとも1x1011、2x1011、3x1011、4x1011、5x1011、6x1011、7x1011、8x1011、または9x1011GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内のすべての整数または分数量を含む、用量当たり少なくとも1x1012、2x1012、3x1012、4x1012、5x1012、6x1012、7x1012、8x1012、または9x1012GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内のすべての整数または分数量を含む、用量当たり少なくとも1x1013、2x1013、3x1013、4x1013、5x1013、6x1013、7x1013、8x1013、または9x1013GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内のすべての整数または分数量を含む、用量当たり少なくとも1x1014、2x1014、3x1014、4x1014、5x1014、6x1014、7x1014、8x1014、または9x1014GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内のすべての整数または分数量を含む、用量当たり少なくとも1x1015、2x1015、3x1015、4x1015、5x1015、6x1015、7x1015、8x1015、または9x1015GCを含むように製剤化される。一実施形態では、ヒト適用のために、用量は、範囲内のすべての整数または分数量を含む、用量当たり1×1010
約1×1012GCの範囲であり得る。すべての投薬量は、例えば、M.Lock et
al,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131(それらは参照により本明細書に援用される)に記載されるように、qPCRまたはデジタル液滴PCR(ddPCR)によって測定されるものを含む、任意の既知の方法によって測定されてもよい。
【0078】
これらの上述の用量は、治療される領域の大きさ、使用されるウイルス力価、投与経路、および方法の所望の効果に応じて、約25~約1000マイクロリットルの範囲の(範囲内のすべての数を含む)様々な容量の担体、賦形剤、もしくは緩衝液製剤で投与され得る。一実施形態では、担体、賦形剤、または緩衝液の容量は、少なくとも約25μLである。一実施形態では、容量は、約50μLである。別の実施形態では、容量は、約75μLである。別の実施形態では、容量は、約100μLである。別の実施形態では、容量は、約125μLである。別の実施形態では、容量は、約150μLである。別の実施形態では、容量は、約175μLである。さらに別の実施形態では、容量は、約200μLである。別の実施形態では、容量は、約225μLである。さらに別の実施形態では、容量は、約250μLである。さらに別の実施形態では、容量は、約275μLである。さらに別の実施形態では、容量は、約300μLである。さらに別の実施形態では、容量は、約325μLである。別の実施形態では、容量は、約350μLである。別の実施形態では、容量は、約375μLである。別の実施形態では、容量は、約400μLである。別の実施形態では、容量は、約450μLである。別の実施形態では、容量は、約500μLである。別の実施形態では、容量は、約550μLである。別の実施形態では、容量は、約600μLである。別の実施形態では、容量は、約650μLである。別の実施形態では、容量は、約700μLである。別の実施形態では、容量は、約700~1000μLである。
【0079】
特定の実施形態では、ウイルス構築物は、マウスなどの小動物対象について、約1μL~約3μLの容量で、約1×10~約1×1011GCの用量で送達される。ヒトの眼とほぼ同じサイズの眼を有する、より大きな獣医学的対象の場合、上述のより大きなヒト投薬量および容量が有用である。種々の獣医学的動物への物質の投与に関する良好な慣行の議論については、例えば、Diehl et al,J.Applied Toxicology,21:15-23(2001)を参照されたい。本文書は、参照により本明細書に援用される。
【0080】
ウイルスまたは他の送達ビヒクルの最低有効濃度を、毒性、網膜異形成、および剥離などの望ましくない影響のリスクを減らすために利用することが望ましい。これらの範囲におけるさらに他の投薬量は、治療される対象(好ましくはヒト)の身体状態、対象の年齢、特定の眼障害、および進行性である場合、障害が発症した程度を考慮して、主治医によって選択され得る。
【0081】
特定の態様では、眼障害を有するか、または眼障害を発症するリスクがある哺乳動物対象における失明を治療し、失明の進行を遅らせ、または停止させるための方法が本明細書に記載される。一実施形態では、対象は、網膜変性を有する。特定の実施形態では、好ましくは生理学的に適合する担体、希釈剤、賦形剤および/またはアジュバントに懸濁されたAKT配列を保有するrAAVは、所望の対象(例えば、ヒト対象)に投与される。本方法は、それを必要とする対象に、核酸配列、発現カセット、rAAVゲノム、プラスミド、ベクター、もしくはrAAVベクター、またはこれらを含有する組成物のいずれかを投与することを含む。特定の実施形態では、組成物は、網膜下に送達される。別の実施形態では、組成物は、硝子体内に送達される。さらに別の実施形態では、組成物は、眼疾患の処置に好適な投与経路の組み合わせを使用して送達され、これには、眼底静脈を介した
投与、または他の静脈内投与もしくは従来の投与経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
これらの方法での使用のために、各投薬量の容量およびウイルス力価は、本明細書にさらに記載されるように、個々に決定され、同じ眼または反対側の眼で実施される他の治療と同じであってもよく、または異なっていてもよい。投薬量、投与、およびレジメンは、本明細書の教示を考慮して、主治医によって決定され得る。特定の実施形態では、組成物は、上に列挙されるものから選択される単回用量で投与され、単一の罹患した眼に投与される。他の実施形態では、組成物は、上に列挙されるものから選択される単一の用量として、両方の罹患した眼に、同時に、または逐次投与される。逐次投与は、数分間、数時間、数日間、数週間、または数ヶ月間の間隔からの時間ギャップの片方の眼から別の眼への投与を意味し得る。他の実施形態では、本方法は、組成物を2つ以上の投薬量(例えば、分割投薬量)で眼に投与することを伴う。別の実施形態では、複数回の注射は、同じ眼の異なる部分で行われる。別の実施形態では、選択された発現カセット(例えば、AKT含有カセット)を含むrAAVの第2の投与は、後の時間点で実行される。そのような時間点は、第1の投与の数週間後、数ヶ月後、または数年後であり得る。かかる第2の投与は、一実施形態では、第1の投与からのrAAVとは異なるカプシドを有するrAAVで実施される。別の実施形態では、第1および第2の投与のためのrAAVは、同じカプシドを有する。
【0083】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、単一の組成物または複数の組成物で送達される。任意選択で、2つ以上の異なるAAVが送達されるか、または複数のウイルスが送達される[例えば、WO2011/126808およびWO2013/049493を参照されたい]。別の実施形態では、複数のウイルスは、異なる複製欠損ウイルス(例えば、AAVおよびアデノウイルス)を含有する。
【0084】
特定の実施形態では、治療の標的となる眼の領域(例えば、桿体および錐体光受容体)を特定するために、非侵襲的網膜撮像および機能的研究を行うことが望ましい。これらの実施形態では、臨床診断試験を用いて、1つ以上の網膜下注射の正確な位置を決定する。これらの試験には、治療される対象の種、身体状態、および投薬量に応じて、例えば、網膜電図写真(ERG)、網膜の層の周辺のトポグラフィックマッピング、ならびに共焦点レーザー走査眼底検査(cSLO)および光干渉断層撮影(OCT)によるその層の厚さの測定、補償光学(AO)による錐体密度のトポグラフィックマッピング、機能的眼検査などが含まれる。実施される撮像および機能的研究を鑑みると、特定の実施形態では、罹患した眼の異なる領域を標的とするために、1つ以上の注射が同じ眼で実施される。各注射の容量およびウイルス力価は、本明細書にさらに記載されるように、個々に決定され、同じ眼または反対側の眼で実施される他の注射と同じであってもよく、または異なっていてもよい。別の実施形態では、単一の、より大きな容量の注射は、眼全体を治療するために行われる。一実施形態では、rAAV組成物の容量および濃度は、損傷を受けた眼細胞の領域のみに影響を与えるように選択される。別の実施形態では、rAAV組成物の容量および/または濃度は、損傷を受けていない光受容体を含め、眼のより大きな部分に到達するように、より多くの量である。
【0085】
本明細書に記載される方法の特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物の単回の眼内送達、例えば、AKT発現カセットのAAV送達は、眼障害または網膜変性を発症するリスクがある対象における視力喪失および失明の予防に有用である。
【0086】
特定の実施形態では、組成物は、疾患発症の前に投与される。他の実施形態では、組成物は、視力障害または視力喪失の開始前に投与される。他の実施形態では、組成物は、視力障害または喪失の開始後に投与される。さらに他の実施形態では、組成物は、疾患のな
い眼(例えば、反対側の眼)と比較して、桿体および/または錐体または光受容体の90%未満が機能しているか、または残っているときに投与される。
【0087】
特定の実施形態では、本方法は、追加の研究、例えば、機能的研究および撮像研究を実施して、治療の有効性を決定することを含む。動物の場合、そのような試験には、桿体および錐体光受容体機能を見る網膜電位図(ERG)による網膜および視覚機能の評価、視覚運動性眼振、瞳孔測定、水迷路試験、明暗嗜好、光干渉断層撮影(網膜の様々な層の厚さを測定するため)、組織学(網膜の厚さ、外側核層の核の列、導入遺伝子発現を記録するための免疫蛍光、錐体光受容体カウント、錐体光受容体の鞘部分を特定するピーナッツアグルチニンによる網膜切片の染色)が含まれる。
【0088】
具体的には、ヒト対象について、本明細書に記載の組成物の投薬量の投与後、対象は、網膜電位図(ERG)を使用して治療の有効性について試験され、桿体および錐体光受容体機能、瞳孔測定による視力評価、コントラスト感度色覚試験、視野試験(ハンフリー視野/ゴールドマン視野)、視野移動試験(障害物コース)、および/または読み取り速度試験を行う。本明細書に記載の医薬組成物による治療後に対象が受ける他の有用な治療後有効性試験としては、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、全視野光過敏性試験、光干渉断層撮影を含む網膜構造試験、眼底撮影、眼底自発蛍光(FAF)、補償光学レーザー操作眼底検査、移動性試験、読み取り速度および精度の試験、マイクロペリメトリーおよび/または眼底検査が挙げられる。これらおよび他の有効性試験は、米国特許第8,147,823号および同時係属中の国際特許出願公開WO2014/011210またはWO2014/124282に記載されており、参照により本明細書に援用される)。
【0089】
さらに他の実施形態では、上述の方法のいずれかは、別の療法、または二次療法と組み合わせて実施される。さらに他の実施形態では、これらの眼疾患の治療方法は、抗生物質治療、疼痛に対する緩和治療などの別の治療と組み合わせて、本明細書に詳細に記載される組成物で対象を治療することを伴う。追加の療法は、これらの変異もしくは欠陥、またはそれらの関連する影響のいずれかを予防し、阻止し、または改善するのに役立つ任意の既知の療法、または未だ知られていない療法であり得る。二次療法は、上に記載の組成物の投与の前、投与と同時、または投与の後に投与することができる。特定の実施形態では、二次療法は、神経栄養因子、抗酸化剤、抗アポトーシス剤の投与など、網膜細胞の健康を維持するための非特異的アプローチを含む。非特異的アプローチは、タンパク質、組換えDNA、組換えウイルスベクター、幹細胞、胎児組織、または遺伝子組換え細胞の注射によって達成される。後者は、カプセル化された遺伝子組換え細胞を含むことができる。
【0090】
特定の実施形態では、組換えrAAVを生成する方法は、上述のAAV発現カセットを含むプラスミドを得ることと、AAVウイルスゲノムを感染性AAVエンベロープまたはカプシド内にパッケージングすることを可能にするのに十分なウイルス配列の存在下で、プラスミドを保有するパッケージング細胞を培養することとを含む。rAAVベクター生成の特定の方法は、上に記載されており、上記および以下の実施例で記載される発現カセットまたはベクターゲノムを送達することができるrAAVベクターを生成する際に使用される。
【0091】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載の発現カセットのいずれかを含むベクターが提供される。上述のように、そのようなベクターは、様々な起源のプラスミドであってもよく、本明細書にさらに記載されるような組換え複製欠損ウイルスの生成のために特定の実施形態で有用である。
【0092】
「a」または「an」という用語は、1つ以上を指すことに留意されたい。したがって、「a」(または「an」)、「1つ以上(one or more)」、および「少な
くとも1つ(at least one)」という用語は、本明細書では互換的に使用される。「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含んでいる(comprising)」という用語は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。「なる(consist)」、「なっている(consisting)」という用語、およびその変形は、包括的ではなく排他的に解釈されるべきである。本明細書の様々な実施形態は、「含む(comprising)」という言葉を用いて示されているが、他の状況では、関連する実施形態は、「からなる(consisting of)」または「本質的にからなる(consisting essentially of)」という言葉を用いて解釈および記載されるべきことも意図される。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別途指定されない限り、与えられた参照から10%の変動性を意味する。本明細書で使用される「調節」またはその変形形態という用語は、生物学的経路の1つ以上の成分を阻害する組成物の能力を指す。
【0093】
本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、当業者によって、および本明細書で使用されている多数の用語に対して当業者に一般的な手引きを提供する公開された文書を参照することによって、一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0094】
以下の実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0095】
250を超える既知の遺伝子内の変異は、遺伝性網膜変性に関連する。RPE65変異に起因する先天性失明の遺伝子置換療法後の臨床的成功は、他の形態の遺伝性眼疾患を標的とする下流治療の開発のためのプラットフォームを確立する。残念ながら、複雑な疾患病理学に関連するいくつかの課題および現在の遺伝子導入技術の制限は、遺伝性網膜変性の各特定の形態に関する関連戦略の開発を妨げる。ここでは、光受容体の生存および構造維持に必要な嫌気性代謝の特徴を刺激することにより、網膜変性を遅らせる遺伝子増強戦略について説明する。本願発明者らは、網膜色素変性症のマウスモデルにおけるAAV媒介性遺伝子増強を伴うカノニカルインスリン/AKT/mTOR経路における2つの重要な調節点を標的とした。セリン/スレオニンキナーゼであるAKT3を発現するAAVベクターは、光受容体の数、構造、および部分的な視覚機能の劇的な保存を促進する。この保護効果は、細胞成長および生存に関連する経路に対する光受容体代謝のリプログラミングの成功と関連していた。まとめると、これらの所見は、光受容体の生存および維持における嫌気性代謝に関連するAKT活性および下流経路の重要性を強く主張する。
【0096】
実施例1:材料および方法:
動物
C57Bl/6およびPde6brd10マウスをJackson Laboratoryから入手し、12時間の明暗サイクルで育てた。動物は、実験動物のケアおよび使用に関するARVOガイドライン、ならびに施設および連邦規制に準拠して、ペンシルベニア大学に収容された。
【0097】
AAVベクター
N末端ミリストイル化(MYR)およびHAタグを含有するヒトAKT3 cDNA配列をコードするプラスミドは、William Sellersによって親切にも提供された(addgeneプラスミド番号9017)。MYR-HA-hAKT3配列を増幅し、In-Fusion HDクローニングシステム(Clonetech)を使用してAAVプロウイルス発現プラスミドにクローニングした。ヒトRheb cDNAクローンは、Origeneから入手した。逆PCR突然変異誘発を用いて、以下のプライマー
配列を有するS16H変異を作成した。5’[ホスホ]CACGTGGGGAAATCCTCATTGAC 3’(S16H Forward)(配列番号14)および5’ CCGGTAGCCCAGGAT 3’(配列番号15)。次いで、S16H変異を含有するヒトRheb cDNAを、In-Fusion HDクローニングシステムを使用してAAVプロウイルス発現プラスミドにクローニングした。ウイルスベクターの産生のために、AAV7m8 Capを発現するヘルパープラスミドは、John Flannery and David Schafferによって親切にも提供された(addgeneプラスミド番号64839)。AAV7m8-AKT3およびAAV7m8-eGFPベクターを、前述の方法46を使用して生成し、Center for Advanced Retinal and Ocular Therapeutics(CAROT)リサーチベクターコア(ペンシルベニア大学、PA,USA)によって、CsCl勾配超遠心分離を用いて精製した。
【0098】
細胞培養およびAAV形質導入
84-31細胞は、James Wilson博士(ペンシルベニア大学)によって親切にも提供され、10%FBSおよび1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したDMEM-GlutaMax中で培養した。AAV形質導入に関して、84-31細胞を、6ウェル皿に2.5×10細胞/ウェルの密度で播種した。その後、細胞を、1×10の多重感染(MOI)で即座にAAV7m8ベクターで形質導入した。細胞を、5%CO2、37℃で維持した。
【0099】
RNA単離および遺伝子発現分析
RNAを、Macherey-Nagel Nucleospin RNAキットを使用して単離した。製造業者のプロトコルに従って、SuperScript IIIファーストストランド合成システムを用いて、500ngの全RNAを用いて、ファーストストランドcDNA合成を行った。Power SYBR green PCR master mix(Invitrogen)を使用して、Applied Biosystems 7500 Fastシステムを用いてリアルタイムPCRを実施した。以下のプライマー配列を使用した。5’
CCACTCCTCCACCTTTGAC 3’(ヒトGAPDH Forward、配列番号16)、5’
ACCCTGTTGCTGTAGCCA 3’(ヒトGAPDH Reverse、配列番号17)、5’
ACTCCTACGATCCAACCATAGA 3’(ヒトRheb Forward、配列番号18)、5’
TGGAGTATGTCTGAGGAAAGATAGA 3’(ヒトRheb Reverse、配列番号19)、5’
AGGATGGTATGGACTGCATGG 3’(ヒトAKT3 Forward、配列番号20)、および5’
GTCCACTTGCAGAGTAGGAAAA 3’(ヒトAKT3 Reverse、配列番号21)。相対遺伝子発現をΔΔCT法で定量化し、GAPDHに対して正規化した。
【0100】
網膜下注射
網膜下注射を、前述のように実施した。各網膜に、1uLのベクター調製物を与えた。AAV.eGFPベクターを単独で与えた眼に、2×10個のベクターゲノムを投与した。AAV.eGFPとAAV.AKT3またはAAV.caRhebの組み合わせを受けた眼に、ベクター当たり1×10個のベクターゲノム(2×10個の総ベクターゲノム)を投与した。
【0101】
網膜電位図
マウスに麻酔をかけ、前述のように維持した。瞳孔を1%トロピカミド(Alcon Laboratories、Fort Worth,TX)で拡張させた。白金線が埋め込まれた透明なプラスチック製コンタクトレンズを使用して光応答を記録し、白金線ループを動物の口に入れて参照電極として機能させた。ERGをEspion E2システム(Diagnosys、Lowell,MA)で記録した。3つのERG応答を、以下のパラメータで記録した。暗所応答(暗順応、0.01scot cd s m-2刺激)、最大混合桿体-錐体応答(暗順応、500scot cd s m-2刺激)、最大錐体応答。
【0102】
視運動性反応
視力は、前述のように、OptoMotryソフトウェアおよび装置(Cerebral Mechanics,Inc、メディシン・ハット、AB,Canada)を使用して、視運動性反応(OKR)を測定することによって評価した。記録は、実験的治療に対してマスキングされた治験責任医師によって行われた。
【0103】
免疫組織化学
眼を除去し、取り出し、前述のように凍結切片として調製した(Dooley SJ,et al.(2018).Spliceosome-mediated pre-mRNA trans-splicing can repair CEP290 mRNA.Mol Ther Nucleic Acids 12:294-308)。切片を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、10%正常ヤギ血清(CST)、および2%TritonX-100を含有するブロック緩衝液中で、室温で1時間インキュベートした。その後、切片を、前述の成分および以下の抗体の組み合わせを含有する加湿チャンバー中、一次抗体溶液中で一晩インキュベートした。ウサギ抗錐体アレスチン(1:400、Millipore番号ab15282)、ウサギ抗ホスホ-S6-Ser240/244(1:100、CST番号5364)、ウサギ抗ホスホ-AKT-Ser273(1:100、CST番号4060)、マウス抗ロドプシン(1:400、Abcam番号ab5417)、ウサギ抗HA(1:100、CST番号3724)、ウサギ抗Ki67(1:400、Abcam番号ab15580)、マウス抗PCNA(1:400、Abcam番号ab29)、ニワトリ抗GFAP(1:400、Abcam番号ab4674)、ウサギ抗AKT(1:100、CST番号4691)。一次抗体インキュベーション後、切片をPBSで3回洗浄し、PBS、10%正常ヤギ血清、2%TritonX-100、および以下の二次抗体の組み合わせを含有する加湿チャンバー中、室温で2時間、二次抗体溶液中でインキュベートした。alexa fluor-594ヤギ抗ニワトリ(1:500、Abcam番号ab150176)、alexa fluor-594ヤギ抗マウス(1:500、番号ab150116)、alexa fluor-594ヤギ抗ウサギ(1:500、Abcam番号ab150080)、Cy5コンジュゲートヤギ抗ウサギ(1:500、KPL番号072-02-15-16)。切片を二次抗体インキュベーションから除去し、PBSで3回洗浄した。リン酸化抗原の存在について染色した切片をインキュベートし、PBSの代わりにTris緩衝生理食塩水(TBS)を含有する溶液中で洗浄した。
【0104】
ONL測定
網膜切片全体を、EVOS FL Auto 2細胞撮像システムを使用して、40倍の対物レンズを使用してタイリングした。各画像において、ONL厚さは、75~100μm間隔の3つの等距離の点で測定された。これらの測定値は、切片の平均ONL厚さを表すために、すべての画像間で平均化された。試料当たり3つの網膜切片を平均化した。ベクターで形質導入された網膜の特定の領域からのONL数を、200μmの領域当たりのGFP+ONL細胞の数をカウントすることによって定量化した。再び、試料当たり3
つの網膜切片を平均化して、これらの測定値を取得した。
【0105】
ウェスタンブロッティング
タンパク質試料を、NuPage電気泳動システム(Thermo Fisher)で分離した。試料を70℃で加熱し、4~12%のBis-Trisタンパク質ゲル(Thermo Fisher)にロードした。次いで、分離されたタンパク質を、XCell
IIブロットモジュール(Thermo Fisher)を用い、PVDF膜に35ボルトで1.5時間かけて移した。タンパク質移動後、膜を、0.1%(v/v)のTween 20(BioRad)(TBST)および5%(w/v)のウシ血清アルブミン(BSA;Sigma-Aldrich)を含有するトリス緩衝生理食塩水中で、室温で1時間インキュベートした。その後、ブロットを、以下の一次抗体:ウサギ抗498ホスホ-S6-Ser240/244(1:1000、CST番号5364)、ウサギ抗S6(1:1000、CST番号2217)、ウサギ抗GAPDH(1:1000、CST番号5174)を含有する前述の溶液中でインキュベートした。一次抗体のインキュベーションを、4℃で一晩行った。一次抗体溶液からブロットを除去し、TBST中で各々5分間、3回洗浄した。その後、TBST、5%BSA、およびHRPコンジュゲート抗ウサギECL(1:10,000、GE Healthcare)からなる二次抗体溶液中に、室温で1時間置いた。TBSTで膜を3回洗浄し、その後、製造業者の指示に従って、ECL2(Thermo Fisher)で5分間インキュベーションした。最後に、化学発光設定を有するAmersham Imager 600(GE Healthcare)を使用して、膜を撮像した。
【0106】
統計
すべてのデータは、別段の指示がない限り、平均値±SEMとして表される。2つの治療群間の差を、対応のないスチューデントのt検定を使用して比較した。3つ以上の実験群間の差を、一元配置ANOVA、その後のテューキーの正直な有意差検定を使用して比較した。統計的有意性の計算は、GraphPad Prism 7.0を使用して決定した。差は、P<0.05で統計的に有意であるとみなされた。
【0107】
実施例2:眼疾患の治療のためのAKT3遺伝子療法
網膜色素変性症のPde6brd10(rd10)マウスモデルにおけるAKT3またはcaRhebの過剰発現の影響
rd10マウスモデルにおける疾患は、桿体ホスホジエステラーゼ(PDE)のβ-サブユニットをコードする遺伝子中の点変異から生じ、これにより、PDE複合体が非機能性になり、桿体光伝達カスケードにおける遮断が生成する。さらに、PDEは、cGMPからGMPへのリサイクルにおいて重要な役割を果たし、それによって、電位依存性イオンチャネルの閉鎖を促進する。PDE複合体活性の喪失は、Na+およびCa2+イオンの構成的流入、ならびに細胞死カスケードの活性化を促進する。Rd10マウスは、出生後18日目(PN18)付近から始まる光受容体外核層(ONL)の漸進的な薄化を示す。PN30までに、網膜の中心領域および周辺領域に著しい光受容体の損失があり、典型的には、異常な錐体細胞体の1つの層が、PN45で中心網膜に残っている。以下に記載される研究では、視覚機能、構造形態、および光受容体の保存に関するAKT3またはRheb送達の神経保護電位を評価した。本願発明者らは、mTOR活性化を示すマーカーの発現を調べることによって、神経保護効果の潜在的なメカニズムをさらに調査した。加えて、本願発明者らは、AKT3またはRhebの過剰発現が網膜神経の発がん性増殖に及ぼす可能性に関して、長期的な安全性を検討した。
【0108】
AAV7m8ベクターの設計および特徴付け
AAVに由来する遺伝子導入ベクターは、神経組織を標的化するための最適な遺伝子送達プラットフォームとして出現してきた。AAV7m8は、インビボ選択を通じて生成さ
れたAAV2のバリアントであり、強化された網膜および細胞形質導入特性を示す。本願発明者らは、過剰活性態様のヒトAKT3(AAV.AKT3)、構成的に活性なRheb変異体(AAV.caRheb)、および対照としての増強緑色蛍光タンパク質レポーター(AAV.eGFP)をコードするAAV7m8ベクターを生成した(図1A)。AKT3導入遺伝子は、N末端ミリストイル化(MYR)配列を含有し、それによって、膜標的化および局在化を増強する。caRheb導入遺伝子は、TSC媒介GTPase活性化タンパク質(GAP)活性への耐性を付与するカノニカルS16H変異を含む。AAV.caRhebまたはAAV.AKT3ベクターで形質導入された84-31細胞は、未治療対照と比較して、標的遺伝子mRNAの強固な発現を示す(図1B図1C)。AAV7m8の網膜下送達によって、光受容体の強固なラベリング、網膜色素上皮(RPE)、およびマウス網膜におけるミュラー細胞が生じる(図1D図1E)。実験ベクターとレポーターベクターとの共注射によって、網膜下送達領域への特異的な導入遺伝子発現の局在化が生じ(図1G図1H)、治療された網膜領域の十分な特定が可能になる。
【0109】
caRheb遺伝子導入は、Pde6brd10マウスにおける網膜変性を軽減することができない
本願発明者らは、Pde6brd10網膜におけるcaRheb遺伝子増強の影響を検討した。動物は、桿体の死の発生前の時間点であるPN13~14に、eGFP(網膜の注射部分を特定することができるように)を含有するAAVとともに、実験導入遺伝子を保有するAAVの片側網膜下注射を受けた。対照には、eGFP含有AAVの単独注射、またはAAVの注射を行わないものが含まれていた。注射後、視覚機能を、網膜電位図(ERG)および視運動性反応(OKR)で測定した。網膜組織学をPN45で調べ、光受容体生存に対するAAV.caRhebの影響を決定した(図2A図2C)。網膜当たりの総ONL厚さの定量化は、実験的治療対対照治療(未治療、またはAAV.eGFP単独で注射されたもの)における残存光受容体細胞体の数に有意差を示さなかった(図2B)。総ONL厚さに加えて、本願発明者らは、AAV.eGFP単独で形質導入されたか、またはAAV.caRhebで共形質導入された網膜内の領域の200μm切片当たりのGFP+ONL細胞の数を測定した。ここでも再び、本願発明者らは、これらの群間のONL細胞数の統計的に有意な変化を観察しなかった(図2C)。さらに、AAV.caRhebは、ERG(図2D図2F)およびOKR(図2G)でそれぞれ測定された場合、対照と比較して、網膜または視覚機能を保持しなかった。まとめると、これらのデータは、caRheb遺伝子導入が、Pde6brd10マウス網膜において光受容体神経保護を促進しないことを示唆している。
【0110】
AKT3遺伝子増強は、Pde6brd10網膜における光受容体生存および構造保存を促進する
本願発明者らは、AKT3遺伝子増強が、Pde6brd10網膜における光受容体生存および構造完全性に及ぼす影響を検討した。PN13~14にAAV.AKT3を注射した後のPN30およびPN45での網膜構造の組織学的分析は、eGFPと共標識された網膜領域において特異的な光受容体に対する強力な神経保護効果(治療群間の免疫染色およびONL測定によって反映されるような)を明らかにした(図3C)。いずれの時間点においても、未治療の眼と比較して、AAV.GFP注射された眼において組織学的レスキューの証拠はなかった。維持された特定の種類の光受容体をプローブするための免疫染色は、AAV.AKT3ベクターで形質導入された網膜領域において、錐体光受容体の保存(錐体アレスチンについての染色によって評価される)を明らかにした(図3D図3F)。同様に、ロドプシンの免疫染色は、(網膜の非曝露領域、またはAAV.eGFPもしくは未治療の対照網膜ではなく)AAV.AKT3形質導入領域における桿体光受容体の保存を明らかにした。
【0111】
顕著なことに、ロドプシンの免疫染色はまた、対照と比較して、PN30の収集点で桿
体外側セグメントの保存の増強を明らかにし、このことは、桿体光受容体の超構造の製造および維持を媒介する際のこの経路の重要性を示唆している(図3A図3C)。
【0112】
AKT3遺伝子導入が、Pde6brd10網膜における網膜および視覚機能に及ぼす効果
本願発明者らは、それぞれ網膜電位図(ERG)および視運動性反応(OKR)測定により、PN30およびPN45時間点での網膜および視覚機能を評価した。
AAV.AKT3で治療された眼からの混合桿体-錐体応答の分析は、PN30での未治療対照およびAAV.eGFP治療対照の両方と比較して、改善されたa波振幅を明らかにした(図4A)。加えて、AAV.AKT3で治療された眼の刺激によっても、AAV.eGFP治療された眼と比較して、混合b波応答の増加を誘発した(図4B)だけではなく、この時間点で未治療の眼と比較して、保存の増加の傾向があった。しかしながら、PN45での治療群間のこれらの転帰尺度に有意差はなかった(図4A図4B)。本願発明者らはまた、錐体特異的なb波応答を測定したが、試験した任意の時間点で、治療群間で統計的な有意差は観察されなかった(図4C)。本願発明者らは、視運動性反応(OKR)を測定することにより、遺伝子導入に応答した視力を検討した。データは、未治療の左眼が動物内対照として機能し、一方、右眼をAAV.eGFP単独またはAAV.AKT3と組み合わせて治療した、これらの記録の右/左眼比を表す。AAV.AKT3/AAV.eGFPによる治療は、任意の時間点で、AAV.eGFP対照と比較して視力を維持しなかった(図4D)。まとめると、このデータは、AKT3遺伝子導入が、初期から中期の疾患の間、細胞生存およびいくつかの機能を延長するが、長期間の維持には不十分である可能性があることを示している。
【0113】
AKT3遺伝子増強は、生合成および細胞生存経路を刺激する
本願発明者らは、AKT3誘導性神経保護応答が、同化および細胞生存に関連する経路を活性化するという仮説を立てた。この可能性を評価するために、本願発明者らは、mTOR活性化を示すカノニカル下流マーカーに対して指向される抗体を用い、網膜切片を免疫染色した(図5A図5H)。AAV.AKT3で特異的に形質導入された網膜の領域は、非曝露網膜または未治療網膜と比較して、リン酸化リボソームタンパク質S6(pS6)の発現の増強を示す(図5E図5H)。興味深いことに、本願発明者らはまた、AAV.AKT3に特異的に曝露された領域内でmTORC2マーカー(pAKTS473)の発現の増加を観察し、このことは、細胞生存およびストレス耐性に関連する追加の機能の刺激を示唆している(図5A図5D)。未治療対照群およびAAV.GFP対照群から得られた網膜切片は、これらのマーカーの発現の増強を示さず、このことは、AKT3誘導性神経保護が、少なくとも、mTORC1およびmTORC2経路の両方によって部分的に引き起こされることを暗示している(図5Dおよび図5H)。
【0114】
AKT3過剰発現は、光受容体の静止を破らないが、ミュラー細胞活性化を刺激する
調節不全AKTシグナル伝達は、多くのヒトのがんに共通の特徴である。細胞増殖のカノニカルマーカーを用いた免疫染色により、網膜静止に対するAKT3遺伝子導入の効果を検討した。Ki67の発現は、未治療およびAAV.eGFP治療されたPde6brd10網膜において神経節細胞層を占有する細胞に限定された。
【0115】
GFAPに対して指向される抗体との共染色は、このKi67+細胞集合体をミュラーグリアとして特定した。恒常性条件下では、これらの細胞は、神経栄養因子放出の媒介、細胞外イオンバランスの調節、および細胞片除去を通じて、他の網膜細胞型に対する構造的および代謝的な補助を提供する。重要なことに、ONLを占有する細胞は、Ki67マーカーに対して陽性の免疫反応性を示さず、このことは、AKT3誘発性保護応答が、光受容体静止のエスケープの副産物ではないことを示唆していた(図6Hおよび図6I)。興味深いことに、AAV.AKT3で特異的に形質導入された網膜の領域内のミュラー細
胞は、GFAP発現の上方制御および異なる網膜層全体にわたる神経プロセスの延長などのアストログリオーシスに代表される形態学的変化を示す。(図6G図6I)。同様に、本願発明者らは、本願発明者らのベクターパネルを注射した野生型動物におけるこれらのマーカーの発現を検討した。野生型動物は、PN13で網膜下注射を受け、PN125で組織学的分析のためにフォローアップされた。本願発明者らは、レポーターベクター単独の長期的な過剰発現を有する動物において、構造的または細胞的変化を観察しなかった(図11A図11B)。逆に、遍在性AAV.AKT3ベクターで治療された動物は、広範囲にわたる網膜組織の乱れおよび光受容体構造マーカーの喪失を示す(図11図11D)。さらに、AAV.AKT3ベクターで特異的に形質導入された領域は、未治療網膜およびAAV.eGFP治療網膜と比較して、ミュラー細胞の慢性的な活性化も示す(図7A図7K)。
【0116】
AKT3の光受容体によって制限される発現が、Pde6brd10網膜における神経保護効果を媒介する
本願発明者らは、前述のGRK1プロモーターによって引き起こされるAAVベクターを生成することによって、光受容体内で特異的なAKT3媒介性神経保護の効果を検討した(図8A)。Pde6brd10網膜内でのこれらのベクターの適用は、遍在性CAGプロモーターによって引き起こされる前述のベクターと同様の網膜機能への効果を発揮した(図8B図8D)。具体的には、AAV.GRK1.AKT3による治療は、PN30で混合a波およびb波振幅を保存したが、PN45での進行期の変性では保存されなかった。以前の所見と同様に、これらのベクターは、対照治療と比較して、錐体特異的b波振幅の保存を媒介しなかった。組織学のレベルでは、これらのベクターは、光受容体内で特異的導入遺伝子発現を示す(図8E)。さらに、AAV.GRK1.AKT3はまた、未治療対照眼およびAAV.eGFP治療対照眼と比較して、光受容体生存が向上した(図8F)。
【0117】
光受容体特異的プロモーターによって調節されるAKT3ベクターは、Pde6brd10網膜における反応性グリオーシスを刺激しない
本願発明者らは、GRK1によって引き起こされるベクターを用い、光受容体層にAKT3導入遺伝子発現を制限することは、偏在性CAGプロモーターによって調節されるAKT3ベクターを用いて以前に観察された慢性ミュラー細胞活性化を減少させるという仮説を立てた。再び、本願発明者らは、AAV.GRK1.AKT3と、GFAPおよびKi67に対して指向される抗体を有するトレーサーベクターを共注射したPN45のPde6brd10マウス由来の網膜切片を免疫染色した(図9A図9H)。AAV.GRK1.AKT3による治療は、未治療試料と比較して、Pde6brd10におけるミュラー細胞の異常な活性化および移動を明らかにしなかった(図9A図9F)。
【0118】
さらに、未治療の網膜領域と網膜下注射部位との間の移行領域は、同様の組織学的所見を明らかにし、このことはさらに、光受容体によって制限されたAKT3遺伝子導入が、偏在性ベクター系を用いて以前に観察されたミュラー細胞の慢性活性化を軽減することを示唆している(図9Gおよび図9H)。これらの結果は、神経保護遺伝子導入戦略に関連する潜在的に有害なオフターゲット効果を回避するための細胞および組織特異的なプロモーターの重要性を強調する。
【0119】
実施例3:AAV媒介遺伝子導入によるmTOR経路の刺激
上の実施例2に記載される研究は、AAV媒介遺伝子導入によるmTOR経路の刺激後のRP動物モデルにおける細胞代謝のリプログラミングの治療的可能性を実証する。神経変性疾患の文脈におけるmTORシグナル伝達の実際の役割は、依然として議論の対象である。カノニカルmTOR阻害剤であるラパマイシンによる治療を介したmTOR活性の下方制御は、パーキンソン病、ハンチントン病、およびアルツハイマー病を含むいくつか
の神経変性モデルにおける病理学的メカニズムを軽減することができる。逆に、他の検討では、インスリン/AKT/mTOR軸の刺激が、関連する神経変性疾患モデルにおいて有益な転帰を媒介することができることが示唆されている。上述の研究において、2つの別個の調節点でmTOR経路を標的化することは、光受容体の生存、構造的完全性、および網膜機能に対する異なった効果をもたらした。
【0120】
いくつかの以前の研究は、神経変性疾患モデルの文脈で治療転帰を改善するために、Rheb活性化を標的化する保護の可能性を強調した。しかしながら、caRheb遺伝子導入による調節のこの下流点におけるmTOR経路の刺激は、Pde6brd10網膜における保護効果を媒介しなかった。興味深いことに、AAV.caRhebベクターは、インビトロでmTORC1活性の強力な刺激を示し、このことは、カノニカルmTORC1活性化マーカーpS6の発現の増強を示している。この活性は、caRheb導入遺伝子を過剰発現する網膜切片中のpS6についての陰性免疫染色によって示される場合、インビボで応用されなかった。このことは、光受容体内でmTORC1を刺激するcaRhebの能力を阻害する固有のメカニズムの存在を示唆している(図10Aおよび図10B)。これらの観察は、caRheb遺伝子導入が種々の神経集合体内でmTORC1活性を刺激し、パーキンソン病、ハンチントン病、および視神経外傷のモデルにおいてストレス耐性を与えた以前の研究において報告されたものとは異なっている。他の系統の証拠は、Rhebが、異なる形態の細胞ストレスに応答して、細胞死シグナル伝達プログラムを促進する際に競合する役割を果たす可能性があることを示唆している。UVまたはTNFαによって誘発される細胞ストレスを、Rheb過剰発現と組み合わせると、インビトロでのアポトーシスシグナル伝達を増強したが、一方、ラパマイシンによるRhebノックダウンまたは治療は、これらの細胞傷害性薬剤からの部分的な保護を提供した。網膜変性の文脈では、網膜神経節細胞(RGC)の光によって誘発される損傷は、変性前のアポトーシスのマーカーの増加と関連するRheb発現の上方制御を引き起こした。まとめると、Rhebの保護機能またはアポトーシス促進機能は、問題となる特定の病理を通じて誘発されるメカニズムによって決定される可能性が高い。さらに、遺伝子導入によるRheb活性の増幅は、特定の疾患の文脈に依存して、細胞生物学に対する多様な効果を調節する可能性が高い。
【0121】
さらに、AAV媒介性AKT3遺伝子導入は、光受容体の生存および形態保存に対する強力な神経保存効果を刺激した。この保護効果は、AAV.AKT3ベクターで特異的に形質導入された網膜の領域におけるmTORC1およびmTORC2の刺激と関連があった。本願発明者らの所見は、光受容体の神経保護に関連するmTORC2シグナル伝達活性の上方制御を最初に報告したものである。このデータは、mTORC2活性が、Ptenのトランスジェニックアブレーション後に低下し、Pde6brd1マウス網膜において錐体生存が増強したというVenkatesh et al.(2015)による以前の観察から逸脱したものである。
【0122】
AKT3遺伝子導入によって媒介される劇的な細胞保護にもかかわらず、本願発明者らは、網膜電位図およびOKRによる評価後に機能保護の際の異なる効果を観察した。本願発明者らは、PN30測定でCAGもしくはGRK1プロモーターによって引き起こされるAKT3ベクターで治療された眼において混合桿体-錐体a波、および場合によってはb波応答の統計的に有意な保存を観察したが、より後期の変性中には観察されなかった。AKT3導入遺伝子発現による錐体構造の形態学的保存にもかかわらず、本願発明者らは、試験したいずれの時間点での対照と比較しても、錐体特異的光応答の改善は観察されなかった。この所見は、同様の疾患モデルにおける錐体光受容体の神経保護の戦略を検討した以前の検討から逸脱したものである。これらの違いは、導入遺伝子カセットだけではなく、ベクター用量、注射経路、モデル系に関連する変性の動態、およびベクター送達のタイミングに関する研究設計の変動によって説明され得る。本研究では、ベクターを、光受
容体の死の発症の直前の時間点で注射したが、一方、以前の検討では、出生直後、および網膜成熟前、および疾患メカニズムの発症前に、実験的介入を行った。実験設計におけるこれらの違いは、網膜の被覆率、ベクター動員の動態、および神経変性メカニズムの発症に関連する発現、ならびに最終的には治療の転帰尺度に関連する重要な下流の推測を有する可能性が高い。
【0123】
細胞代謝をリプログラミングするための戦略に基づく遺伝子療法の進歩は、臨床への応用の前に、非常に厳格な安全基準を満たさなければならない。本願発明者らは、腫瘍形成の証拠を観察しなかったが、野生型動物における偏在性プロモーターによって調節されたAKT3の長期的な過剰発現は、広範囲にわたる網膜組織の乱れを引き起こし、最終的には光受容体の喪失を引き起こした。この表現型は、野生型動物およびPde6brd10動物において観察された偏在性ベクターによって特異的に形質導入された網膜領域におけるミュラー細胞の慢性的な活性化に対応していた。反応性グリオーシスは、典型的には組織損傷に関連する応答であり、これらの細胞が活性化し、増殖して、組織リモデリング、神経栄養因子放出、細胞片の除去を含む様々な機能を媒介する。この応答は、さらなる網膜損傷を抑制することを意図しているが、慢性的な活性化は、隣接細胞にとって有害であり、網膜の恒常性を破壊する可能性がある。例えば、活性化されたミュラー細胞は、腫瘍壊死因子(TNF)および単球走化性タンパク質(MCP-1)を含む様々な炎症促進性分子の発現および分泌を上方制御することが観察されている。
【0124】
さらに、それらの細胞は、隣接細胞に損傷を与え得る遊離ラジカルを生成する過剰量の一酸化窒素(NO)を分泌することが知られている41。この所見は、細胞が、それらの正確な生理学的要求に対応するためにこれらの代謝成分において絶妙なバランスを必要とし、このような経路の過剰な刺激が、細胞生存能に対して有害な影響を示す可能性が高いため、驚くべきことではなかった。遺伝子増強またはサイレンシング戦略でこのバランスを決定し、達成することは、これらのアプローチを臨床に応用する際の大きな課題となるであろう。
【0125】
追加の調節エレメント、例えば、細胞特異的プロモーター(ここで示したように)、ストレス応答性プロモーターまたは誘導性系は、強力な代謝経路を刺激する神経保護性の遺伝子導入戦略の臨床開発において重要な役割を果たす可能性が高い。
【0126】
まとめると、この検討は、遺伝性網膜変性のモデルにおける遺伝子増強後の光受容体の生存能および構造に対する広範な保護効果を実証する。これらの所見は、光受容体の生存および維持における嫌気性代謝に関連するAKT活性および下流経路の重要性を強く主張する。さらに、この結果は、細胞代謝のリプログラミングの複雑で繊細な性質、ならびに複雑な神経変性疾患の進行を「一般的な」遺伝子療法戦略で阻止する際の重要な安全性の懸念を強調する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0127】
本明細書に引用されるすべての文書は、参照により本明細書に援用される。2019年3月4日に出願された米国仮特許出願第62/813,587号、2019年3月21日に出願された米国仮特許出願第62/821,705号は、それらの配列表とともに、それらの全体が参照により本明細書に援用される。「18-8380PCT_ST25.txt」という名称で本明細書とともに提出された配列表、ならびに参照により援用される。本発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく修正を行うことができることが理解されよう。かかる修正は、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まることが意図される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J
図7K
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
【配列表】
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