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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】オキサジアゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 271/06 20060101AFI20250219BHJP
   C07D 271/10 20060101ALI20250219BHJP
   C07D 413/04 20060101ALI20250219BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20250219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
C07D271/06 CSP
C07D271/10
C07D413/04
A61K31/4245
A61K45/00
A61P21/02
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/08
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/28
A61P43/00 121
A61P43/00 105
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022508381
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010628
(87)【国際公開番号】W WO2021187486
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2020046138
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】磯部 義明
(72)【発明者】
【氏名】田中 知行
(72)【発明者】
【氏名】宮地 裕貴
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/161014(WO,A1)
【文献】特表2014-525444(JP,A)
【文献】特開2014-224108(JP,A)
【文献】国際公開第2013/062027(WO,A1)
【文献】特表2018-507886(JP,A)
【文献】国際公開第2010/017132(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/072957(WO,A1)
【文献】特開2012-001537(JP,A)
【文献】特開2013-221025(JP,A)
【文献】国際公開第2010/055911(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/145669(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/066103(WO,A1)
【文献】特表2011-529022(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第1227978(GB,A)
【文献】STN International,CAS Registry No. 2372839-85-3,File REGISTRY [online],Entered STN,2019年09月03日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2391021-52-4,File REGISTRY [online],Entered STN,2019年12月15日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2463745-70-0,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月27日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2372841-01-3,File REGISTRY [online],Entered STN,2019年09月03日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2393258-12-1,File REGISTRY [online],Entered STN,2019年12月18日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2395139-54-3,File REGISTRY [online],Entered STN,2019年12月20日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2395140-09-5,File REGISTRY [online],Entered STN,2019年12月20日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2398023-07-7,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年01月01日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2399808-57-0,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年01月05日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2429734-82-5,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年06月19日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2429736-73-0,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年06月19日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2433152-21-5,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年06月24日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2433544-91-1,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年06月24日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2463706-64-9,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月27日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2434477-84-4,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年06月26日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2454150-20-8,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月06日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2456305-65-8,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月12日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2459729-04-3,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月19日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2459865-29-1,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月20日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2461806-70-0,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月26日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2461981-80-4,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月27日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2462268-37-5,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月27日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2463630-55-7,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月27日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2463903-64-0,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月27日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2464072-27-1,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月27日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2464618-52-6,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月28日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2464868-57-1,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月27日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2465199-54-4,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月27日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2465276-05-3,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月27日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2465699-93-6,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月28日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2465711-86-6,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月28日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2465992-77-0,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月28日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2466368-39-6,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月28日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2466822-24-0,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月28日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2467263-41-6,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月28日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2467934-22-9,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年08月28日
【文献】STN International,CAS Registry No. 2470141-73-0,File REGISTRY [online],Entered STN,2020年09月02日
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2019年,29,138-142,DOI:10.1016/j.bmcl.2018.12.014
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物、又はその製薬学的に許容される
【化1】
[式中、
はハロゲンを表し、
は水素、ハロゲン、シアノ、C1-3アルキル(該アルキルはハロゲン、水酸基、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)又はC1-3アルコキシ(該アルコキシはハロゲン、水酸基、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
X、Y及びZは、同一又は異なって、窒素原子又は酸素原子を表し、ただし、X、Y及びZを含む環は、X、Y及びZのうちの2つが窒素原子であり、残りの1つが酸素原子であるヘテロアリールであり、
は以下の(2)~(4)のいずれかを表し、
【化2】
及びRは、同一又は異なって、C1-6アルキル(該アルキルはハロゲン、水酸基、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又はC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表すか、あるいは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基を表し、
及びRは、同一又は異なって、水素、ハロゲン、水酸基、C1-6アルキル(該アルキルはハロゲン、水酸基、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又はC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表すか、あるいは、R及びRが同一の炭素原子上又は隣接する炭素原子上に存在する場合、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)又は窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基を形成してもよく、nは、0~2の整数を表す。]
但し、以下の化合物を除く;
2-[3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド、
2-[3-(2,4-ジクロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド、
1-[3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]シクロブタン-1-カルボキサミド、
1-[3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]シクロブタン-1-カルボキサミド、
6-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピペリジン-2-オン、
6-[3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピペリジン-2-オン、及び
2-[3-(2-ブロモ-4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド。
【請求項2】
及びRが、同一又は異なって、C1-3アルキル(該アルキルはフッ素、水酸基及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表すか、あるいは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基、又は窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基である、
請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項3】
及びRが、同一又は異なって、C1-3アルキル(該アルキルはフッ素で置換されていてもよい)を表すか、あるいは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素で置換されていてもよい)を構成した基、又は窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はフッ素で置換されていてもよい)を構成した基である、
請求項2に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項4】
及びRが、同一又は異なって、水素、フッ素、水酸基、C1-3アルキル(該アルキルはフッ素、水酸基、及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又はC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表すか、あるいは、R及びRが同一の炭素原子上又は隣接する炭素原子上に存在する場合、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基、又は窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基を形成してもよい、
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項5】
及びRが、同一又は異なって、水素、フッ素、水酸基、C1-3アルキル(該アルキルはフッ素で置換されていてもよい)、又はC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素で置換されていてもよい)を表すか、あるいは、R及びRが同一の炭素原子上又は隣接する炭素原子上に存在する場合、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素及びC1-3アルキルからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基を形成してもよい、
請求項4に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項6】
がフッ素、塩素又は臭素であり、
が水素、フッ素、塩素、臭素、シアノ、C1-3アルキル(該アルキルはフッ素で置換されていてもよい)又はC1-3アルコキシ(該アルコキシはフッ素で置換されていてもよい)である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項7】
X、Y及びZを含む環が、以下の(5a)、(5b)、又は(5c)である、
【化3】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項8】
X、Y及びZを含む環が、以下の(5a)又は(5b)である、
【化4】
請求項7に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項9】
が、以下の(4)である、
【化5】
請求項1、又は4~8のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項10】
以下の化合物から選択される、請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
2-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド、
2-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド、
2-[3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド、
1-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]シクロプロパン-1-カルボキサミド、
1-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]シクロプロパン-1-カルボキサミド、
1-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-3-フルオロシクロブタン-1-カルボキサミド、
1-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-3,3-ジフルオロシクロブタン-1-カルボキサミド、
1-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]シクロブタン-1-カルボキサミド、
1-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]シクロペンタン-1-カルボキサミド、
4-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]テトラヒドロ-2H-ピラン-4-カルボキサミド、
2-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-エチルブタンアミド、
2-[5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-2-メチルプロパンアミド、
2-[5-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-2-メチルプロパンアミド、
2-[5-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-2-メチルプロパンアミド、
2-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-2-メチルプロパンアミド、
2-[5-(4-ブロモフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-2-メチルプロパンアミド、
2-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]プロパン-2-スルホンアミド、
2-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]プロパン-2-スルホンアミド、
2-[3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]プロパン-2-スルホンアミド、
2-[5-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]プロパン-2-スルホンアミド、
2-[5-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]プロパン-2-スルホンアミド、
2-[5-(4-フルオロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]プロパン-2-スルホンアミド、
2-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]プロパン-2-スルホンアミド、
2-[5-(4-ブロモフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]プロパン-2-スルホンアミド、
5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン、
5-[3-(2,4-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン、
5-[3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン、
5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1,5-ジメチルピロリジン-2-オン、
5-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン、
5-[3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン、
(S)-5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン、及び
(R)-5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン。
【請求項11】
以下の化合物から選択される、請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
2-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド、
2-[3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド、
2-[5-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-2-メチルプロパンアミド、
2-[5-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]プロパン-2-スルホンアミド、
5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン、
5-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン、
(S)-5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン、及び
(R)-5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用なオキサジアゾール誘導体及びその製薬学的に許容される塩、並びにそれらを有効成分として含有する医薬組成物又はてんかん及び/又は抑うつ症候群等の疾患の治療剤及び/又は予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
てんかんは、大脳の神経細胞の過剰興奮によって、普通とは異なる身体症状や運動、意識、感覚の変化が突然に反復的に起こる慢性疾患である。てんかん発作型は、国際抗てんかん連盟(ILAE)により全般発作、焦点発作、分類不明の発作に分類され、全般発作はさらに強直発作、間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作等に分類されている(非特許文献1)。疾患背景となる病因については、素因性(genetic)、構造的/代謝性(structural/metabolic)、並びに原因不明なものに大別される。また、てんかんは脳波・臨床症状や発症年齢、病因等の特徴に基づいて様々な病型・症候群に分類されている。例えば乳児期に発症するウエスト症候群やドラベ症候群、小児期に発症するレノックス-ガストー症候群や常染色体性優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)、明確な特定症状群としての海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかんやラスムッセン症候群ほか、多数が含まれる(非特許文献2)。1990年代以降、特にてんかんの分子病態解析の国際共同研究が進展し、現在に至るまで多数の原因遺伝子が特定されている。これら遺伝子にはNa、K、Ca、Cl、GABA-A、ACh等のイオンチャネルが含まれ、てんかんがイオンホメオスタシスの異常を一つの原因として発症することが類推される。
【0003】
てんかんは生命予後にも影響するような重度の疾患であり、全世界の人口の約1%が罹患することが知られている。これらてんかん発作の治療は薬物治療が中心であり、古くから種々の抗てんかん薬が処方されているにも拘らず、てんかんの3例に1例が既存薬による多剤併用治療に抵抗性を示す難治性てんかんである。また既存薬は、過剰な眠気、ふらつき、認知障害、精神症状などの用量依存性の神経系への副作用や、スティーブンス・ジョンソン症候群など稀ではあるが特異体質性の重篤な副作用、催奇形性等のリスクがあり、薬物相互作用による薬効消失や副作用増強の問題が生じるリスクもある。加えて、てんかん患者はうつ、不安、認知障害などの精神症状の併発リスクが高い(非特許文献3)。しかしながら既存薬はこれら併発する精神症状への治療効果は持たない。以上より、難治性てんかんに対する高い有効性、薬物動態面や安全性面における優れたプロファイル、さらにはてんかんならびに併発する精神症状双方への有効性、といった特徴を持った新しい抗てんかん薬の開発が強く求められている。
てんかんは、脳神経細胞の過剰興奮が原因で発作を呈するが、興奮性神経が強く働く、または抑制性神経の力が弱まる、つまり興奮(E)と抑制(I)のバランス(E/Iバランス)の異常が原因であると考えられている。てんかん以外にも、E/Iバランス異常による疾患が知られている。抑制性神経を賦活化するGABA神経系賦活薬は、不安症、強迫性障害、パーキンソン病・レビー小体型認知症に伴うレム睡眠障害に対する治療効果が示されている。また、E/Iバランス異常は、神経障害性疼痛、発達障害、自閉症、双極性障害、統合失調症、アルツハイマー病やその他認知症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病などにも関与することが知られている。事実、E/Iバランス異常を改善する抗てんかん薬の一部は、これら他疾患に広く適用されてきた。しかし、これらてんかん以外の疾患における薬効強度も限定的であり、副作用、薬物動態面の課題も残されている。したがって、新たな薬効・副作用プロファイルを持った抗てんかん薬は、これら多くの精神・神経系疾患にも適用できる可能性があり、開発の意義は大きい。
【0004】
特許文献1には、甘味修飾効果を有するオキサジアゾール類が記載されているが、後述の式(1)で表される化合物と化学構造が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2006/138512号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Robert S. Fisher et al. Epilepsia, (2017), 58(4), 522-530
【文献】Anne T. Berg et al. Epilepsia, (2010) 51(4), 676-85
【文献】Schmitz B. Epilepsia, (2005) 46 (Suppl. 4), 45-49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、抗てんかん薬として有用な化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、下記式(1)で表される化合物が強い抗痙攣作用を示す、すなわち抗てんかん作用を示すとともに、GABA-A受容体賦活化作用を有することを明らかにし、本発明を完成した。本発明によれば、下記式(1)で表されるオキサジアゾール誘導体(以下、「本発明の化合物」と称することもある。)が提供される。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0010】
[項1]式(1)で表される化合物、又はその製薬学的に許容される塩。
【化1】
[式中、
はハロゲンを表し、
は水素、ハロゲン、シアノ、C1-3アルキル(該アルキルはハロゲン、水酸基、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)又はC1-3アルコキシ(該アルコキシはハロゲン、水酸基、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
X、Y及びZは、同一又は異なって、窒素原子又は酸素原子を表し、ただし、X、Y及びZを含む環は、X、Y及びZのうちの2つが窒素原子であり、残りの1つが酸素原子であるヘテロアリールであり、
は以下の(2)~(4)のいずれかを表し、
【化2】
及びRは、同一又は異なって、C1-6アルキル(該アルキルはハロゲン、水酸基、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又はC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表すか、あるいは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又は窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基を表し、
及びRは、同一又は異なって、水素、ハロゲン、水酸基、C1-6アルキル(該アルキルはハロゲン、水酸基、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又はC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表すか、あるいは、R及びRが同一の炭素原子上又は隣接する炭素原子上に存在する場合、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)又は窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基を形成してもよく、
nは、0~2の整数を表す。]
【0011】
[項2]R及びRが、同一又は異なって、C1-3アルキル(該アルキルはフッ素、水酸基及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表すか、あるいは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基、又は窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基である、
項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0012】
[項3]R及びRが、同一又は異なって、C1-3アルキル(該アルキルはフッ素で置換されていてもよい)を表すか、あるいは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素で置換されていてもよい)を構成した基、又は窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はフッ素で置換されていてもよい)を構成した基である、
項2に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0013】
[項4]R及びRが、同一又は異なって、水素、フッ素、水酸基、C1-3アルキル(該アルキルはフッ素、水酸基、及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、又はC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を表すか、あるいは、R及びRが同一の炭素原子上又は隣接する炭素原子上に存在する場合、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基、又は窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基を形成してもよい、
項1~3のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0014】
[項5]R及びRが、同一又は異なって、水素、フッ素、水酸基、C1-3アルキル(該アルキルはフッ素で置換されていてもよい)、又はC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素で置換されていてもよい)を表すか、あるいは、R及びRが同一の炭素原子上又は隣接する炭素原子上に存在する場合、それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素及びC1-3アルキルからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基を形成してもよい、
項4に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0015】
[項6]Qがフッ素、塩素又は臭素であり、
が水素、フッ素、塩素、臭素、シアノ、C1-3アルキル(該アルキルはフッ素で置換されていてもよい)又はC1-3アルコキシ(該アルコキシはフッ素で置換されていてもよい)である、
項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0016】
[項7]X、Y及びZを含む環が、以下の(5a)、(5b)、又は(5c)である、
【化3】
項1~6のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0017】
[項8]X、Y及びZを含む環が、以下の(5a)又は(5b)である、
【化4】
項7に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0018】
[項9]Rが、以下の(2)または(3)である、
【化5】
項1~3、又は6~8のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0019】
[項10]Rが、以下の(4)である、
【化6】
項1、又は4~8のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0020】
[項11]以下の化合物から選択される、項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
2-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド(実施例1)、
2-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド(実施例2)、
2-[3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド(実施例3)、
1-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]シクロプロパン-1-カルボキサミド(実施例4)、
1-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]シクロプロパン-1-カルボキサミド(実施例5)、
1-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-3-フルオロシクロブタン-1-カルボキサミド(実施例6)、
1-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-3,3-ジフルオロシクロブタン-1-カルボキサミド(実施例7)、
1-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]シクロブタン-1-カルボキサミド(実施例8)、
1-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]シクロペンタン-1-カルボキサミド(実施例9)、
4-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]テトラヒドロ-2H-ピラン-4-カルボキサミド(実施例10)、
2-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-エチルブタンアミド(実施例11)、
2-[5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-2-メチルプロパンアミド(実施例12)、
2-[5-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-2-メチルプロパンアミド(実施例13)、
2-[5-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-2-メチルプロパンアミド(実施例14)、
2-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-2-メチルプロパンアミド(実施例15)、
2-[5-(4-ブロモフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-2-メチルプロパンアミド(実施例16)、
2-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]プロパン-2-スルホンアミド(実施例17)、
2-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]プロパン-2-スルホンアミド(実施例18)、
2-[3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]プロパン-2-スルホンアミド(実施例19)、
2-[5-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]プロパン-2-スルホンアミド(実施例20)、
2-[5-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]プロパン-2-スルホンアミド(実施例21)、
2-[5-(4-フルオロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]プロパン-2-スルホンアミド(実施例22)、
2-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]プロパン-2-スルホンアミド(実施例23)、
2-[5-(4-ブロモフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]プロパン-2-スルホンアミド(実施例24)、
5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン(実施例25)、
5-[3-(2,4-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン(実施例26)、
5-[3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン(実施例27)、
5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1,5-ジメチルピロリジン-2-オン(実施例28)、
5-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン(実施例29)、
5-[3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン(実施例30)、
(S)-5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン(実施例31)、及び
(R)-5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン(実施例32)。
【0021】
[項12]以下の化合物から選択される、項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
2-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド(実施例2)、
2-[3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド(実施例3)、
2-[5-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-2-メチルプロパンアミド(実施例13)、
2-[5-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]プロパン-2-スルホンアミド(実施例20)、
5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン(実施例25)、
5-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン(実施例29)、
(S)-5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン(実施例31)、及び
(R)-5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン(実施例32)。
【0022】
[項13]項1~12のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【0023】
[項14]項1~12のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、神経系疾患又は精神疾患の治療剤及び/又は予防剤。
【0024】
[項15]項1~12のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、E/Iバランスにおける興奮(E)が亢進している及び/又は抑制(I)が低下している疾患の治療剤及び/又は予防剤。
【0025】
[項16]項1~12のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、GABA神経系機能低下が関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤。
【0026】
[項17]GABA神経系機能低下が関与する疾患が、神経系疾患又は精神疾患である、項16に記載の治療剤及び/又は予防剤。
【0027】
[項18]神経系疾患または精神疾患が、てんかん発作(強直発作、間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作を含む全般発作、焦点発作、分類不明の発作)、てんかん重積、ウエスト症候群、ドラベ症候群、レノックス-ガストー症候群、常染色体性優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)、明確な特定症状群としての海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん、ラスムッセン症候群、てんかんに併発する又はしないうつ症状、不安症、強迫性障害、パーキンソン病・レビー小体型認知症に伴うレム睡眠障害、神経障害性疼痛、発達障害、自閉症、双極性障害、統合失調症、アルツハイマー病やその他認知症、筋萎縮性側索硬化症、またはパーキンソン病である、項14または17に記載の治療剤及び/又は予防剤。
【0028】
[項19]神経系疾患または精神疾患が、てんかん、神経障害性疼痛、神経発達障害群、双極性障害および関連障害群、統合失調症スペクトラム障害、アルツハイマー病やその他神経認知障害群、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、抑うつ症候群、不安症群、強迫性障害、心的外傷およびストレス因関連障害、睡眠-覚醒障害群、及び/又はパーキンソン病・レビー小体型認知症に伴うレム睡眠障害である、項14または17に記載の治療剤及び/又は予防剤。
【0029】
[項20]治療が必要な患者に、治療上の有効量の項1~12のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を投与することを含む、GABA神経系機能低下が関与する疾患の治療及び/又は予防するための方法。
【0030】
[項21]GABA神経系機能低下が関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤を製造するための、項1~12のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0031】
[項22]GABA神経系機能低下が関与する疾患の治療及び/又は予防に使用するための、項1~12のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩。
【0032】
[項23]項1~12のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、てんかんの治療剤及び/又は予防剤。
【0033】
[項24]てんかんが、てんかん発作(強直発作、間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作を含む全般発作、焦点発作、分類不明の発作)、てんかん重積、ウエスト症候群、ドラベ症候群、レノックス-ガストー症候群、常染色体性優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)、明確な特定症状群としての海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん、またはラスムッセン症候群である、項23に記載の治療剤及び/又は予防剤。
【0034】
[項25]治療が必要な患者に、治療上の有効量の項1~12のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を投与することを含む、てんかんの治療及び/又は予防するための方法。
【0035】
[項26]てんかんの治療剤及び/又は予防剤を製造するための、項1~12のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0036】
[項27]てんかんの治療及び/又は予防に使用するための、項1~12のいずれか一項に記載の化合物、又はその製薬学的に許容される塩。
【0037】
[項28]項1~12のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬と、抗てんかん薬、抗うつ薬、又は抗精神病薬に分類される薬剤から選択される少なくとも1種以上の薬剤とを組み合わせてなる医薬。
【0038】
[項29]抗てんかん薬、抗うつ薬、又は抗精神病薬に分類される薬剤から選択される少なくとも1種以上の薬剤と併用することを特徴とする、GABA神経系機能低下が関与する疾患を治療するための、項1~12のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬。
【0039】
[項30]下式:
【化7】
に示す化合物(IIc1)と化合物(IIc2)を反応させて化合物(IIc’)を得る工程と、化合物(IIc’)をメチル化する工程を含む、化合物(Ic)の製造方法(式中の記号は前記と同じ意味を有する)。
【0040】
[項31]下式:
【化8】
に示す化合物(IIc1’)と化合物(IIc2’)を反応させる工程を含む、化合物(Ic’)の製造方法(式中の記号は前記と同じ意味を有する)。
【発明の効果】
【0041】
本発明の化合物は、GABAシグナル低下が原因で起こる複数の痙攣モデル動物(試験例1の皮下注射ペンテトラゾールモデル、試験例3のドラベモデルマウス熱性痙攣)において、強力な抗痙攣活性を示した。試験例1の皮下注射ペンテトラゾールモデルは、全般性の欠神発作やミオクロニー発作の表現系であり、既存の抗てんかん薬の寛解率が低い発作型を呈するモデルである。試験例3のドラベモデルマウス熱性痙攣は、治療抵抗性痙攣を呈するドラベ症候群と同じ遺伝的背景を有する動物モデルであり、当該モデルへの既存の抗てんかん薬の効果は非常に限定的である。したがって本発明の化合物は、てんかん(例えば、てんかん発作(強直発作、間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作を含む全般発作、焦点発作、分類不明の発作)、てんかん重積、ウエスト(West)症候群、ドラベ(Dravet)症候群、レノックス-ガストー(Lennox-Gastaut)症候群、常染色体性優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)、明確な特定症状群としての海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん、ラスムッセン(Rasmussen)症候群など)に対する予防薬及び/又は治療薬として有用である。なお、ウエスト症候群、ドラベ症候群、レノックス-ガストー症候群は治療抵抗性痙攣を呈し、発達遅延等を伴う重篤な疾患であり、これらを含む難治性てんかんに対する予防薬及び/又は治療薬を提供することは大きな意義がある。本発明の化合物のGABA-A受容体賦活化活性は、既存のGABA神経系賦活薬の一つであるベンゾジアゼピンとは異なる作用様式で発揮されており、ベンゾジアゼピンで効果を示さなかったラット強制水泳モデルのうつ症状に対して効果を発揮したことから(試験例5)、てんかんに併発する又はしないうつ症状に対する効果があり、既存の抗てんかん薬にはない有用性がある。本発明の化合物は、GABA-A受容体賦活化活性を有することから、既存のGABA神経系賦活薬による治療効果が認められている不安症、強迫性障害、パーキンソン病・レビー小体型認知症に伴うレム睡眠障害に対する予防薬及び/又は治療薬としても有用である。また、GABA神経系の異常を背景にもつ神経障害性疼痛、発達障害、自閉症、双極性障害、統合失調症、アルツハイマー病やその他認知症、筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病に対する病態改善効果を発揮すると考えられる。さらに、本明細書に記載されるその他の疾患についての予防薬及び/又は治療薬としても有用である。
また、本発明の化合物は、興奮(E)と抑制(I)のバランス(E/Iバランス)における抑制(I)を強める作用を有することから、神経系疾患又は精神疾患の治療剤及び/又は予防剤、特に、E/Iバランスにおける興奮(E)が亢進している及び/又は抑制(I)が低下している疾患の治療剤及び/又は予防剤となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書における用語について以下に説明する。
【0043】
本明細書において、特に指示した場合を除き、各々の基の説明はその基が他の基の一部分又は置換基である場合にも該当する。
【0044】
「ハロゲン」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられる。好ましくはフッ素、塩素、又は臭素である。より好ましくはフッ素、又は塩素であり、さらに好ましくは、フッ素である。
【0045】
「C1-6アルキル」とは、炭素原子数が1~6の直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味し、「Cアルキル」とは、炭素原子数が6のアルキルを意味する。他の数字の場合も同様である。「C1-6アルキル」として、好ましくは「C1-3アルキル」が挙げられ、より好ましくは「C1-2アルキル」が挙げられる。「C1-3アルキル」として、好ましくは「C1-2アルキル」が挙げられ、より好ましくはメチルが挙げられる。「C1-2アルキル」の具体例としては、例えば、メチル、エチル等が挙げられる。「C1-3アルキル」の具体例としては、例えば、前記「C1-2アルキル」の具体例として挙げたものに加え、プロピル、1-メチルエチル等が挙げられる。「C1-6アルキル」の具体例としては、例えば、前記「C1-3アルキル」の具体例として挙げたものに加え、ブチル、1、1-ジメチルエチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0046】
「C3-6シクロアルキル」とは、炭素原子数が3~6の環状アルキルを意味し、一部架橋された構造のものも含まれる。「C3-6シクロアルキル」として、好ましくは「C3-5シクロアルキル」が挙げられる。「C3-5シクロアルキル」の具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル等が挙げられる。「C3-6シクロアルキル」の具体例としては、例えば、前記「「C3-5シクロアルキル」の具体例として挙げたものに加え、シクロへキシル等が挙げられる。
【0047】
「C1-3アルコキシ」とは、前記「C1-3アルキル」によって置換されたオキシ基を意味する。「C1-3アルコキシ基」として、好ましくは「C1-2アルコキシ」が挙げられ、より好ましくは「メトキシ」が挙げられる。「C1-2アルコキシ」の具体例としては、例えば、メトキシ、エトキシ等が挙げられる。「C1-3アルコキシ」の具体例としては、例えば、前記「C1-2アルコキシ」の具体例として挙げたものに加え、プロポキシ、1-メチルエトキシ等が挙げられる。
【0048】
「C4-6飽和複素環」とは、窒素、酸素、および硫黄からなる群から独立して選択される同一または異なるヘテロ原子を1つ以上含む4~6員の飽和環を意味し、一部架橋された構造のものも含まれる。好ましくは、窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環である。「C4-6飽和複素環」として、好ましくは「C4-5飽和複素環」が挙げられる。「C4-5飽和複素環」の具体例としては、例えば、オキセタン、アゼチジン、テトラヒドロフラン、ピロリジン等が挙げられる。「C4-6飽和複素環」の具体例としては、例えば、前記「「C4-5飽和複素環」の具体例として挙げたものに加え、テトラヒドロピラン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン等が挙げられる。
【0049】
、R、R、R、R、X、Y、Z、Q、Q及びnで、好ましいものは以下のとおりであるが、本発明の技術的範囲は下記に挙げる化合物の範囲に限定されるものではない。
【0050】
の態様としては、以下の(2)~(4)が挙げられる。
【化9】
の別の態様としては、以下の(2)または(3)が挙げられる。
【化10】
の別の態様としては、以下の(4)が挙げられる。
【化11】
【0051】
及びRの好ましい態様としては、R及びRが同一又は異なって、
(1)C1-3アルキル(該アルキルはフッ素、水酸基、及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、であるか、あるいは、
(2)R及びRが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基、または
(3)R及びRが結合する炭素原子と一緒になって、窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基
が挙げられる。
【0052】
及びRのより好ましい態様としては、R及びRが同一又は異なって、
(1)C1-3アルキル(該アルキルはフッ素で置換されていてもよい)であるか、あるいは、
(2)それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素で置換されていてもよい)を構成した基、または
(3)窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はフッ素で置換されていてもよい)を構成した基
が挙げられる。
【0053】
及びRが結合する炭素原子と一緒になって構成したC3-6シクロアルキルとしては、例えば以下の基が挙げられる。
【化12】
【0054】
及びRが結合する炭素原子と一緒になって構成したC4-6飽和複素環としては、窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含む4~6員の飽和環が挙げられ、例えば以下の基が挙げられる。
【化13】
【0055】
及びRの好ましい態様としては、R及びRが同一又は異なって、
(1)水素、
(2)フッ素、
(3)水酸基、
(4)C1-3アルキル(該アルキルはフッ素、水酸基、及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、
(5)C3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)であるか、あるいは、
及びRが結合する炭素原子上または隣接する炭素原子上に存在する場合、
(6)それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基、または
(7)それらが結合する炭素原子と一緒になってC4-6飽和複素環(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基を形成してもよい場合
が挙げられる。なお、ここで「隣接する炭素原子」とは、RとRがそれぞれ結合している環構成炭素同志が隣り合って結合している状態をいう。
【0056】
及びRのより好ましい態様としては、R及びRが同一又は異なって、
(1)水素、
(2)フッ素、
(3)水酸基、
(4)C1-3アルキル(該アルキルはフッ素で置換されていてもよい)、
(5)C3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素で置換されていてもよい)であるか、あるいは、
及びRが同一の炭素原子上又は隣接する炭素原子上に存在する場合、
(6)それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素及びC1-3アルキルからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基を形成してもよい場合
が挙げられる。
【0057】
及びRが同一の炭素原子上または隣接する炭素原子上に存在する場合、それらが結合する炭素原子と一緒になって構成したC3-6シクロアルキルとしては、例えば以下の基等が挙げられる。
【化14】
【0058】
及びRが同一の炭素原子上または隣接する炭素原子上に存在する場合、それらが結合する炭素原子と一緒になって構成したC4-6飽和複素環としては、例えば以下の基等が挙げられる。
【化15】
【化16】
【化17】
【0059】
X、Y、Zの好ましい態様としては、同一又は異なって、窒素原子又は酸素原子を表し、ただし、X、Y及びZを含む環は、X、Y及びZのうちの2つが窒素原子であり、残りの1つが酸素原子である、以下のオキサジアゾールが挙げられる。
【化18】
図(5a)~(5c)において、左側の結合手はベンゼン環と結合し、右側の結合手はRと結合する。
【0060】
X、Y、Zのより好ましい態様としては、以下のオキサジアゾールが挙げられる。
【化19】
【0061】
nの態様としては0、1、または2の整数が挙げられ、好ましい態様としては、0または1が挙げられる。
【0062】
の好ましい様態としては、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられ、より好ましくは、フッ素、塩素、又は臭素が挙げられる。
【0063】
の好ましい様態としては、
(1)水素、
(2)フッ素、
(3)塩素、
(4)臭素、
(5)シアノ、
(6)C1-3アルキル(該アルキルはフッ素で置換されていてもよい)、または
(7)C1-3アルコキシ(該アルコキシはフッ素で置換されていてもよい)
が挙げられる。
【0064】
のより好ましい様態としては、
(1)水素、
(2)フッ素、
(3)塩素、または
(4)シアノ
が挙げられる。
【0065】
式(1)で表される化合物のうちで、好ましい化合物としては、以下のような化合物又はその製薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0066】
式(1)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(A)が挙げられる。
(A)
が以下のいずれかであり、
【化20】
及びRが、同一又は異なって、
(1)C1-3アルキル(該アルキルはフッ素、水酸基、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、
(2)C3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)であるか、あるいは、
(3)R及びRが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基、または
(4)R及びRが結合する炭素原子と一緒になって窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基
であり、
X、Y、Zを含むヘテロアリールが、以下の(5a)~(5c)のいずれかであり、
【化21】
が、フッ素、塩素、又は臭素であり、
が、水素、フッ素、塩素、シアノ、C1-3アルキル(該アルキルはフッ素、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、またはC1-3アルコキシ(該アルコキシはフッ素、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)
である、化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0067】
式(1)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(B)が挙げられる。
(B)
が以下の(4)であり、
【化22】
及びRが、同一又は異なって、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)水酸基、
(4)C1-3アルキル(該アルキルはハロゲン、水酸基、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、
(5)C3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)であるか、あるいは、
及びRが結合する炭素原子上または隣接する炭素原子上に存在する場合、
(6)それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基、または
(7)それらが結合する炭素原子と一緒になって窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該シクロアルキルはハロゲン、水酸基、C1-3アルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基を形成してもよく、
X、Y、Zを含むヘテロアリールが、以下の(5a)~(5c)のいずれかであり、
【化23】
が、フッ素、塩素、又は臭素であり、
が、水素、フッ素、塩素、シアノ、C1-3アルキル(該アルキルはフッ素、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)、C1-3アルコキシ(該アルコキシはフッ素、C3-6シクロアルキル及びC1-3アルコキシからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)であり、
nの好ましい態様としては0、1、2の整数
である、化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0068】
式(1)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(C)が挙げられる。
(C)
が以下のいずれかであり、
【化24】
及びRが、同一又は異なって、
(1)C1-3アルキル(該アルキルはフッ素で置換されていてもよい)であるか、あるいは、
(2)それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素で置換されていてもよい)を構成した基、または
(3)窒素原子及び酸素原子からなる群から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むC4-6飽和複素環(該飽和複素環はフッ素で置換されていてもよい)を構成した基
であり、
X、Y、Zを含むヘテロアリールが、以下の(5a)または(5b)であり、
【化25】
が、フッ素、塩素、または臭素であり、
が、水素、フッ素、塩素、シアノである化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0069】
式(1)で表される化合物の1つの態様としては、以下の(D)が挙げられる。
(D)
が以下の(4)であり、
【化26】
及びRが、同一又は異なって、
(1)水素、
(2)フッ素、
(3)水酸基、
(4)C1-3アルキル(該アルキルはフッ素で置換されていてもよい)、
(5)C3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素で置換されていてもよい)であるか、あるいは、
及びRが同一の炭素原子上又は隣接する炭素原子上に存在する場合、
(6)それらが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキル(該シクロアルキルはフッ素及びC1-3アルキルからなる群から独立して選択される1~3個の置換基で置換されていてもよい)を構成した基を形成してもよく、
X、Y、Zを含むヘテロアリールが、以下の(5a)または(5b)であり、
【化27】
が、フッ素、塩素、または臭素であり、
が、水素、フッ素、塩素、シアノである化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0070】
「製薬学的に許容される塩」としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。例えば、酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、又はクエン酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、para-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。また、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基塩、又はトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジベンジルエチルアミン、の有機塩基塩等が挙げられる。さらに、「製薬学的に許容される塩」としては、アルギニン、リジン、オルニチン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸等の塩基性アミノ酸又は酸性アミノ酸とのアミノ酸塩も挙げられる。
【0071】
原料化合物及び中間体の好適な塩及び医薬品原料として許容しうる塩は、慣用の無毒性塩であり、それらとしては、有機酸塩(例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ギ酸塩又はpara-トルエンスルホン酸塩等)及び無機酸塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩又はリン酸塩等)のような酸付加塩、アミノ酸(例えばアルギニン、アスパラギン酸又はグルタミン酸等)との塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩又はカリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩又はマグネシウム塩等)等の金属塩、アンモニウム塩、又は有機塩基塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩又はN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩等)等の他、当業者が適宜選択することができる。
【0072】
本発明の化合物の塩を取得したいとき、本発明の化合物が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解若しくは懸濁させ、酸又は塩基を加えて通常の方法により塩を形成させればよい。
【0073】
本発明において、式(1)で表される化合物のいずれか1つ又は2つ以上のHをH(D)に変換した重水素変換体も、式(1)で表される化合物に包含される。
本発明には、式(1)で表される化合物、又はその製薬学的に許容される塩が含まれる。また、本発明の化合物は、水和物及び/又は各種溶媒との溶媒和物(エタノール和物等)の形で存在することもあるので、これらの水和物及び/又は溶媒和物も本発明の化合物に含まれる。さらに、本発明には、本発明の化合物(1)のあらゆる互変異性体、存在するあらゆる立体異性体、及びあらゆる様態の結晶形のもの、さらにこれらの混合物も含まれる。
【0074】
本発明の化合物(1)の中には、光学活性中心に基づく光学異性体、分子内回転の束縛により生じた軸性又は面性キラリティーに基づくアトロプ異性体、その他の立体異性体、互変異性体、及び幾何異性体等が存在し得るものがあるが、これらを含め、全ての可能な異性体及びそれらの混合物は本発明の範囲に包含される。
【0075】
特に光学異性体やアトロプ異性体は、ラセミ体として、又は光学活性の出発原料や中間体が用いられた場合には光学活性体として、それぞれ得ることができる。必要であれば、下記製造法の適切な段階で、対応する原料、中間体又は最終品のラセミ体を、光学活性カラムを用いた方法、分別結晶化法等の公知の分離方法によって、物理的に又は化学的にそれらの光学対掌体に分割することができる。具体的には、例えばジアステレオマー法では、光学活性分割剤を用いる反応によってラセミ体から2種のジアステレオマーを形成する。この異なるジアステレオマーは一般に物理的性質が異なるため、分別結晶化等の公知の方法によって分割することができる。
【0076】
本発明の化合物の製造方法について以下に述べるが、本発明の化合物の製造法はこれらに限定されるものではない。
【0077】
製造法1
式(I)の化合物のうち、下記式(Ia)の化合物は、下記製造法により製造することができる。
【化28】
(式中、R、R、Q、Q、X、Y及びZは項1の定義に同じである。)
【0078】
化合物(Ia)は、(IIa)とアンモニアとのアミド化反応により得られる。化合物(IIa)のアミド化反応は、常法に従って行うことができる。例えば、この反応は化合物(IIa)を反応性誘導体(例えば、低級アルキルエステル、活性エステル、酸無水物、酸ハライド等)に変換し、アンモニアと反応させることによって達成される。活性エステルの具体例としては、p-ニトロフェニルエステル、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル等が挙げられる。酸無水物の具体例としては、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸イソブチル、イソ吉草酸、ピバリン酸等との混合酸無水物が挙げられる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばTHF、ジオキサン、DME、アセトニトリル、DMF、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。反応温度は、特に限定されないが、通常-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲から選択され、好ましくは、0℃~30℃である。反応時間は、通常30分~24時間である。
【0079】
また、化合物(Ia)は、化合物(IIa)と(NHCO等のアンモニウム塩とを縮合剤の存在下で反応させることによっても製造される。縮合剤の具体例としては、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・1塩酸塩、N,N’-カルボニルジイミダゾール、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム-ヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。これらの縮合剤は単独で、又は、これら縮合剤と、N-ヒドロキシコハク酸イミド、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール等のペプチド合成試薬とを組み合わせて用いることができる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばTHF、ジオキサン、DME、アセトニトリル、DMF、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。反応温度は、特に限定されないが、通常-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲から選択され、好ましくは、0℃~30℃である。反応時間は、通常30分~24時間である。
【0080】
製造法2
式(I)の化合物のうち、下記式(1b)の化合物は、下記製造法により製造することができる。
【化29】
(式中、R、R、Q、Q、X、Y及びZは項1の定義に同じである。Pは、2,4-ジメトキシベンジル基、p-メトキシベンジル基等の、酸性条件で除去することのできる窒素原子の保護基であり、Pは、水素、または2,4-ジメトキシベンジル基、p-メトキシベンジル基等の、酸性条件で除去することのできる窒素原子の保護基である。)
【0081】
化合物(Ib)は、化合物(IIb)を脱保護することにより得られる。化合物(IIb)の脱保護は、常法に従って行うことができる。例えば、この反応は化合物(IIb)とトリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機強酸、あるいは塩酸、硫酸、硝酸等の無機強酸と反応させることによって達成される。
【0082】
化合物(IIb)の脱保護は、溶媒中又は無溶媒下に行われる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、アセトニトリル、DMF、DMSO等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。なお、化合物(IIb)における窒素原子の保護基として、2,4-ジメトキシベンジル基以外でも、t-ブトキシカルボニル基、t-ブチル基、p-メトキシベンジル基等の、酸性条件で開裂する保護基を用いることができ、保護基の種類により、保護基の数は1つであってもよい。反応温度は、用いられる原料化合物の種類等により異なるが、通常、約-30℃~約150℃、好ましくは約-10℃~約70℃である。反応時間は、通常30分~24時間である。
【0083】
製造法3
式(I)の化合物のうち、下記式(1c)の化合物は、下記製造法により製造することができる。
【化30】
(式中、R、R、Q、Q、X、Y、Z及びnは項1の定義に同じである。)
【0084】
化合物(Ic)は、化合物(IIc)をメチル化することにより得られる。化合物(IIc)のメチル化は、常法に従って行うことができる。例えば、この反応は適当な溶媒中、塩基存在下で化合物(IIc)とヨウ化メチル、臭化メチル、ジメチル硫酸等のメチル化剤と反応させることによって達成される。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、アセトニトリル、DMF、NMP等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。使用される塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属、水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属ヒドリド、t-ブトキシカリウム、ナトリウムメトキシド等のアルコキシアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸アルカリ金属が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常、約-30℃~約150℃、好ましくは約-10℃~約70℃である。反応時間は、通常30分~24時間である。
【0085】
上記製造法1、2及び3で製造される式(Ia)、(Ib)及び(Ic)の化合物は、クロマトグラフィー、再結晶等通常の方法により単離・精製することができる。
【0086】
上記製造法1、2及び3で用いられる原料化合物は下記の方法により製造することができる。
【0087】
製造法4
また、式(I)の化合物のうち、下記式(1c’)の化合物は、下記製造法によっても製造することができる。
【化31】
(式中、R、R、Q、Q、及びnは項1の定義に同じである。)
【0088】
化合物(Ic’)は、化合物(IIc1’)と化合物(IIc2’)とを縮合剤の存在下で反応させることによって製造される。縮合剤の具体例としては、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・1塩酸塩、N,N’-カルボニルジイミダゾール、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム-ヘキサフルオロホスファート、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシド-ヘキサフルオロホスファート、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウム-ヘキサフルオロホスファート、1-(クロロ-1-ピロリジニルメチレン)ピロリジニウム-ヘキサフルオロホスファート、ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウム-ヘキサフルオロホスファート、プロピルホスホン酸無水物等が挙げられる。これらの縮合剤は単独で、又は、これら縮合剤と、N-ヒドロキシコハク酸イミド、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール等のペプチド合成試薬とを組み合わせて用いることができる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばTHF、ジオキサン、DME、アセトニトリル、DMF、トルエン、ピリジン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常-100~200℃、好ましくは-30~150℃である。反応時間は、通常30分~24時間である。
【0089】
製造法5
前記製造法1で用いられる化合物(IIa)は、下記反応式で示される方法に従って製造される。
【化32】
(式中、R、R、Q、Q、X、Y及びZは項1の定義に同じであり、RはC1-6アルキルである。)
【0090】
(工程1)
化合物(IIIa)は、化合物(IVa)をアルキル化することにより得られる。工程1のアルキル化反応は、常法に従って行うことができる。例えば、この反応は適当な溶媒中、塩基存在下で化合物(IVa)と、RXまたはRXで表されるアルキルハライドまたはシクロアルキルハライドと反応させる事により行われる。また、RおよびRが結合する炭素原子と一緒になってC3-6シクロアルキルまたは4-6員の飽和複素環を形成した化合物については、上記反応条件において化合物(IVa)と、対応するジハロゲン化物(例えば、X-(CH-X(nは3~6の整数を表し、Xはハロゲンを表す))を反応させることにより行われる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばTHF、ジオキサン、DME、アセトニトリル、DMF、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。使用される塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属、水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属ヒドリド、t-ブトキシカリウム、ナトリウムメトキシド等のアルコキシアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸アルカリ金属が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0~200℃、好ましくは20~150℃である。反応時間は、通常30分~24時間である。
【0091】
(工程2)
化合物(IIa)は、化合物(IIIa)を加水分解することにより得られる。工程2の加水分解反応は、常法に従って行うことができる。例えば、この反応は適当な溶媒中で酸性又は塩基性条件下に化合物(IIIa)と水とを接触させることにより行われる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばTHF、ジオキサン、DME、アセトン、アセトニトリル、DMF、DMSO、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。使用される酸の具体例としては、塩酸、硫酸等の鉱酸が挙げられる。また、使用される塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属、t-ブトキシカリウム等のアルコキシアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸アルカリ金属が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0~150℃、好ましくは20~100℃である。反応時間は、通常30分~24時間である。
【0092】
製造法6
前記製造法5で用いられる化合物(IIIa)のうち、(IIIa’)は、化合物(IIIa1)と化合物(IIIa2)との縮合脱水環化反応により製造される。
【化33】
(式中、R、R、Q及びQは項1の定義に同じであり、RはC1-6アルキルである。)
【0093】
化合物(IIIa1)と化合物(IIIa2)の縮合脱水環化反応は、常法に従って行うことができる。例えば、この反応は化合物(IIIa2)を反応性誘導体(例えば、低級アルキルエステル、活性エステル、酸無水物、酸ハライド等)に変換し、化合物(IIIa1)と反応させることによって達成される。活性エステルの具体例としては、p-ニトロフェニルエステル、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル等が挙げられる。酸無水物の具体例としては、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸イソブチル、イソ吉草酸、ピバリン酸等との混合酸無水物が挙げられる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばTHF、ジオキサン、DME、アセトニトリル、DMF、トルエン、ピリジン又は酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常-100~200℃、好ましくは-30~150℃である。反応時間は、通常30分~24時間である。
【0094】
また、化合物(IIIa’)は、化合物(IIIa1)と化合物(IIIa2)とを縮合剤の存在下で反応させることによっても製造される。縮合剤の具体例としては、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・1塩酸塩、N,N’-カルボニルジイミダゾール、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム-ヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。これらの縮合剤は単独で、又は、これら縮合剤と、N-ヒドロキシコハク酸イミド、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール等のペプチド合成試薬とを組み合わせて用いることができる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばTHF、ジオキサン、DME、アセトニトリル、DMF、トルエン、ピリジン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常-100~200℃、好ましくは-30~150℃である。反応時間は、通常30分~24時間である。
【0095】
製造法7
前記製造法5で用いられる化合物(IVa)のうち、(IVa’)は、化合物(IVa1)と化合物(IVa2)との縮合脱水環化反応により製造される。
【化34】
(式中、Q及びQは項1の定義に同じであり、RはC1-6アルキルである。)
【0096】
化合物(IVa’)は、化合物(IVa1)および化合物(IVa2)を用いて、製造法6に記載の方法に準じて製造される。
【0097】
製造法8
前記製造法5で用いられる化合物(IVa)のうち、(IVa’’)は、化合物(IVa3)と化合物(IVa4)との縮合脱水環化反応により製造される。
【化35】
(式中、Q及びQは項1の定義に同じであり、RはC1-6アルキルである。)
【0098】
化合物(IVa’’)は、化合物(IVa3)および化合物(IVa4)を用いて、製造法6に記載の方法に準じて製造される。
【0099】
製造法9
前記製造法5で用いられる化合物(IVa)のうち、(IVa’’’)は、化合物(IVa5)と化合物(IVa6)との縮合脱水環化反応により製造される。
【化36】
(式中、Q及びQは項1の定義に同じであり、RはC1-6アルキルである。)
【0100】
化合物(IVa’’’)は、化合物(IVa5)および化合物(IVa6)を用いて、製造法6に記載の方法に準じて製造される。なお、脱水環化反応によって1,3,4-オキサジアゾール環を製造する際は、添加剤として、オキシ塩化リンやバージェス試薬等の脱水剤を共存させることにより製造される。
【0101】
製造法10
前記製造法2で用いられる化合物(IIb)は、下記反応式で示される方法に従って製造される。
【化37】
(式中、R、R、Q、Q、X、Y及びZは項1の定義に同じである。Pは、2,4-ジメトキシベンジル基、p-メトキシベンジル基等の、酸性条件で除去することのできる窒素原子の保護基であり、Pは、水素、または2,4-ジメトキシベンジル基、p-メトキシベンジル基等の、酸性条件で除去することのできる窒素原子の保護基である。)
【0102】
(工程1)
化合物(IVb)は、化合物(Vb)と亜硫酸ナトリウムとを反応させることにより得られる。工程1の置換反応は、常法に従って行うことができる。例えば、この反応は適当な溶媒中で亜硫酸ナトリウムを接触させることにより行われる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばEtO、THF、ジオキサン、DME等のエーテル類やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、トルエン等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常-100℃~200℃、好ましくは0℃~150℃である。反応時間は、通常30分~24時間である。
【0103】
(工程2)
化合物(IIIb)は、化合物(IVb)をスルホンアミド化することにより得られる。工程2のスルホンアミド化は、常法に従って行うことができる。例えば、この反応は化合物(IVb)をスルホニルクロリドに変換後、アミンと反応させることによって達成される。スルホニルクロリドへの変換は溶媒中又は無溶媒中でオキシ塩化リンを作用させることにより行われる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばEtO、THF、ジオキサン、DME、トルエン等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常-100℃~200℃、好ましくは0℃~150℃である。反応時間は、通常30分~24時間である。
【0104】
工程2の中間体であるスルホニルクロリドのスルホンアミドへの変換は、溶媒中塩基存在下又は非存在下で、酸性条件で除去することのできる保護基によってモノまたはジ置換されたアミンNHPを作用させることにより行われる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばEtO、THF、ジオキサン、DME、DMF、アセトニトリル、トルエン等が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として使用することができる。また、使用される塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属、t-ブトキシカリウム等のアルコキシアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸アルカリ金属、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2,6-ルチジン、2,4,6-コリジン、4-ジメチルアミノピリジン等の有機塩基が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常-100℃~200℃、好ましくは0℃~150℃である。反応時間は、通常30分~24時間である。
【0105】
(工程3)
化合物(IIb)は、化合物(IIIb)をアルキル化することにより得られる。化合物(IIb)は、化合物(IIIb)を用いて、製造法5工程1に記載の方法に準じて製造される。
【0106】
製造法11
前記製造法10で用いられる化合物(Vb)のうち、(Vb’)は化合物(Vb1)と化合物(Vb2)との縮合脱水環化反応により製造される。
【化38】
(式中、Q及びQは項1の定義に同じである。)
【0107】
化合物(Vb’)は、化合物(Vb1)および化合物(Vb2)を用いて、製造法6に記載の方法に準じて製造される。
【0108】
製造法12
前記製造法10で用いられる化合物(Vb)のうち、(Vb’’)は、化合物(Vb3)と化合物(Vb4)との縮合脱水環化反応により製造される。
【化39】
(式中、Q及びQは項1の定義に同じである。)
【0109】
化合物(Vb’’)は、化合物(Vb3)および化合物(Vab)を用いて、製造法6に記載の方法に準じて製造される。
【0110】
製造法13
前記製造法10で用いられる化合物(Vb)のうち、(Vb’’’)は、化合物(Vb5)と化合物(Vb6)との縮合脱水環化反応により製造される。
【化40】
(式中、Q及びQは項1の定義に同じである。)
【0111】
化合物(Vb’’’)は、化合物(Vb5)および化合物(Vb6)を用いて、製造法9に記載の方法に準じて製造される。
【0112】
製造法14
前記製造法3で用いられる化合物(IIc)のうち、(IIc’)は、化合物(IIc1)と化合物(IIc2)との縮合脱水環化反応により製造される。
【化41】
(式中、R、R、Q、Q、及びnは項1の定義に同じである。)
【0113】
化合物(IIc’)は、化合物(IIc1)及び化合物(IIc2)を用いて、製造法6に記載の方法に準じて製造される。
【0114】
製造法15
前記製造法3で用いられる化合物(IIc)のうち、(IIc’’)は、化合物(IIc3)と化合物(IIc4)との縮合脱水環化反応により製造される。
【化42】
(式中、R、R、Q、Q、及びnは項1の定義に同じである。)
【0115】
化合物(IIc’’)は、化合物(IIc3)及び化合物(IIc4)を用いて、製造法6に記載の方法に準じて製造される。
【0116】
製造法16
前記製造法3で用いられる化合物(IIc)のうち、(IIc’’’)は、化合物(IIc5)と化合物(IIc6)との縮合脱水環化反応により製造される。
【化43】
(式中、R、R、Q、Q、及びnは項1の定義に同じである。)
【0117】
化合物(IIc’’’)は、化合物(IIc5)及び化合物(IIc6)を用いて、製造法9に記載の方法に準じて製造される。
【0118】
式(1)で表される本発明の化合物又はその中間体は、当業者に公知の方法で分離、精製することができる。例えば、抽出、分配、再沈殿、カラムクロマトグラフィー(例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー若しくは分取液体クロマトグラフィー)又は再結晶等が挙げられる。
再結晶溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール若しくは2-プロパノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、ベンゼン若しくはトルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒、ジクロロメタン若しくはクロロホルム等のハロゲン系溶媒、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド若しくはアセトニトリル等の非プロトン系溶媒、水、又はこれらの混合溶媒等を用いることができる。その他の精製方法としては、実験化学講座(日本化学会編、丸善)1巻等に記載された方法等を用いることができる。また、本発明の化合物の分子構造の決定は、それぞれの原料化合物に由来する構造を参照して、核磁気共鳴法、赤外吸収法、円二色性スペクトル分析法等の分光学的手法、及び質量分析法により容易に行える。
【0119】
また、上記製造方法における中間体又は最終生成物は、その官能基を適宜変換すること、また特に、アミノ、水酸基、カルボニル、ハロゲン等から種々の側鎖を伸張すること、及び、その際に必要に応じて上記の保護、脱保護を行うことによって、本発明に含まれる別の化合物へ導く事もできる。官能基の変換及び側鎖の伸張は、通常行われる一般的方法(例えば、Comprehensive Organic Transformations, R. C. Larock, John Wiley & Sons Inc.(1999)等を参照)によって行うことができる。
【0120】
式(1)で表される本発明の化合物又はその製薬学的に許容される塩には、不斉が生じる場合又は不斉炭素を有する置換基を有する場合があり、そのような化合物にあっては光学異性体が存在する。本発明の化合物にはこれらの各異性体の混合物や単離されたものも含まれ、通常の方法に従って製造することができる。製造方法としては例えば、不斉点を有する原料を用いる方法か、又は途中の段階で不斉を導入する方法が挙げられる。例えば、光学異性体の場合、光学活性な原料を用いるか、製造工程の適当な段階で光学分割等を行うことで、光学異性体を得ることができる。光学分割法としては例えば、式(1)で表される化合物又はその中間体が、塩基性官能基を有する場合には、不活性溶媒中(例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエン等の炭化水素系溶媒、アセトニトリル等の非プロトン系溶媒、又は上記溶媒から選択される2種以上の混合溶媒)、光学活性な酸(例えば、マンデル酸、N-ベンジルオキシアラニン、乳酸等のモノカルボン酸、酒石酸、o-ジイソプロピリデン酒石酸、リンゴ酸等のジカルボン酸、カンファースルホン酸、ブロモカンファースルホン酸等のスルホン酸)を用いて塩を形成させるジアステレオマー法が挙げられる。式(1)で表される本発明の化合物又はその中間体が、カルボキシル基等の酸性官能基を有する場合には、光学活性なアミン(例えば1-フェニルエチルアミン、キニン、キニジン、シンコニジン、シンコニン、ストリキニーネ等の有機アミン)を用いて、塩を形成させることにより、光学分割を行うこともできる。
【0121】
塩を形成させる温度としては、-50℃から溶媒の沸点までの範囲、好ましくは0℃から沸点までの範囲、より好ましくは室温から溶媒の沸点までの範囲から選択される。光学純度を向上させるためには、一旦、溶媒の沸点付近まで温度を上げることが望ましい。析出した塩を濾取する際、必要に応じて冷却し、収率を向上させることができる。光学活性な酸又はアミンの使用量は、基質に対し約0.5~約2.0当量の範囲、好ましくは1当量前後の範囲が適当である。必要に応じ結晶を不活性溶媒中(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;トルエン等の炭化水素系溶媒;アセトニトリル等の非プロトン系溶媒;又は上記溶媒から選択される2種以上の混合溶媒)で再結晶し、高純度の光学活性な塩を得ることもできる。また、必要に応じて光学分割した塩を通常の方法で酸又は塩基で処理し、フリー体として得ることもできる。
【0122】
以上説明した各々の製造法における原料、中間体のうち、特にあらためてその製造法を記載しなかったものについては、市販化合物であるか、又は市販化合物から当業者に公知の方法、若しくはそれに準じた方法によって合成することができる。
【0123】
本発明の新規オキサジアゾール誘導体は、抗痙攣活性及びGABA-A受容体賦活化作用(GABA神経系賦活化作用)を有することから、GABA神経系機能低下が関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤となり得る。また、本発明の新規オキサジアゾール誘導体は、GABA-A受容体賦活化作用、及び/又は興奮(E)と抑制(I)のバランス(E/Iバランス)における抑制(I)を強める作用を有することから、神経系疾患又は精神疾患の治療剤及び/又は予防剤となり得る。神経系疾患又は精神疾患としては、てんかん(例えば、てんかん発作(強直発作、間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作を含む全般発作、焦点発作、分類不明の発作)、てんかん重積、ウエスト症候群、ドラベ症候群、レノックス-ガストー症候群、常染色体性優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)、明確な特定症状群としての海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん、ラスムッセン症候群など)、神経障害性疼痛、発達障害、自閉症、双極性障害、統合失調症、アルツハイマー病やその他認知症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、てんかんに併発する又はしないうつ症状、不安症、強迫性障害、パーキンソン病・レビー小体型認知症に伴うレム睡眠障害が挙げられる。本発明の新規オキサジアゾール誘導体は、好ましくはてんかん(てんかん発作(強直発作、間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作を含む全般発作、焦点発作、分類不明の発作)、てんかん重積、ウエスト症候群、ドラベ症候群、レノックス-ガストー症候群、常染色体性優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)、明確な特定症状群としての海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん、ラスムッセン症候群など)の治療剤及び/又は予防剤となり得る。
なお、本発明において、「予防」とは、疾患を発症していない健常人に対して本発明の有効成分を投与する行為であり、例えば、疾患の発症を防止することを目的とするものである。「治療」とは、医師により疾患を発症していると診断をされた人(患者)に対して本発明の有効成分を投与する行為である。かかる疾患に罹患している患者が、かかる疾患に関連する発作を抑えるために服用する行為も、ここでの「予防」または「治療」に該当する。
【0124】
本発明の新規オキサジアゾール誘導体は、GABA-A受容体賦活化作用、及び/又は興奮(E)と抑制(I)のバランス(E/Iバランス)における抑制(I)を強める作用を有することから、神経系疾患又は精神疾患の治療剤及び/又は予防剤となり得る。
また、本発明の新規オキサジアゾール誘導体は、E/Iバランスにおける興奮(E)が亢進している及び/又は抑制(I)が低下している疾患の治療剤及び/又は予防剤となり得る。
神経系疾患又は精神疾患としては、てんかん、神経障害性疼痛、神経発達障害群 、双極性障害および関連障害群、統合失調症スペクトラム障害、アルツハイマー病やその他神経認知障害群、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、抑うつ症候群、不安症群、強迫性障害、心的外傷およびストレス因関連障害、睡眠-覚醒障害群、及び/又はパーキンソン病・レビー小体型認知症に伴うレム睡眠障害が挙げられる。
【0125】
本発明の新規オキサジアゾール誘導体は、抗痙攣活性及びGABA-A受容体賦活化作用、(GABA神経系賦活化作用)を有することから、GABA神経系機能低下が関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤となり得る。
GABA神経系機能低下が関与する疾患としては、てんかん、神経障害性疼痛、神経発達障害群、双極性障害および関連障害群、統合失調症スペクトラム障害、アルツハイマー病やその他神経認知障害群、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、抑うつ症候群、不安症群、強迫性障害、心的外傷およびストレス因関連障害、睡眠-覚醒障害群、及び/又はパーキンソン病・レビー小体型認知症に伴うレム睡眠障害が挙げられる。
【0126】
前記てんかんとしては、例えば、てんかん発作(強直発作、間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作を含む全般発作、焦点発作、分類不明の発作)、てんかん重積、ウエスト症候群、ドラベ症候群、レノックス-ガストー症候群、常染色体性優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)、アンジェルマン症候群、結節性硬化症、 明確な特定症状群としての海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん、及び/又はラスムッセン症候群などが挙げられる。特にドラベ症候群、レノックス-ガストー症候群及び/又は、アンジェルマン症候群に好ましく用いることができる。
【0127】
前記抑うつ症候群としては、例えば、不安性の苦痛を伴う抑うつ障害群、混合性の特徴を伴う抑うつ障害群、メランコリアの特徴を伴う抑うつ障害群、非定型の特徴を伴う抑うつ障害群、気分に一致する精神病性の特徴を伴う抑うつ障害群、気分に一致しない精神病性の特徴を伴う抑うつ障害群、緊張病を伴う抑うつ障害群、周産期発症、季節型抑うつ障害群、重篤気分調整症、うつ病/大うつ病性障害、持続性抑うつ障害、月経前不快気分障害、物質・医薬品誘発性抑うつ障害、他の医学的疾患による抑うつ障害、他の特定される抑うつ障害、及び/又は特定不能の抑うつ障害などが挙げられる。特にうつ病/大うつ病性障害に好ましく用いることができる。
【0128】
前記不安症群としては、例えば、分離不安症、選択性緘黙、限局性恐怖症、社交不安症、パニック障害、パニック発作、広場恐怖症、全般不安症、物質・医薬品誘発性不安症、他の医学的疾患による不安症、他の特定される不安症、及び/又は特定不能の不安症などが挙げられる。
【0129】
前記双極性障害および関連障害群としては、例えば、双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害、物質・医薬品誘発性双極性障害および関連障害、他の医学的疾患による双極性障害および関連障害、他の特定される双極性障害および関連障害、及び/又は特定不能の双極性障害および関連障害などが挙げられる。これらはさらに、前記双極性障害および関連障害群に伴ううつ症状、うつ状態又は不安症状を含む。
【0130】
なお、本発明において、「予防」とは、疾患を発症していない健常人に対して本発明の有効成分を投与する行為であり、例えば、疾患の発症を防止することを目的とするものである。「治療」とは、医師により疾患を発症していると診断をされた人(患者)に対して本発明の有効成分を投与する行為である。かかる疾患に罹患している患者が、かかる疾患に関連する発作を抑えるために服用する行為も、ここでの「予防」または「治療」に該当する。
【0131】
本発明の化合物の投与経路としては、経口投与、非経口投与又は直腸内投与のいずれでもよく、その一日投与量は、化合物の種類、投与方法、患者の症状・年齢等により異なる。例えば、経口投与の場合は、通常、ヒト又は哺乳動物1kg体重当たり約0.01~1000mg、さらに好ましくは約0.1~500mgを1~数回に分けて投与することができる。静注等の非経口投与の場合は、通常、例えば、ヒト又は哺乳動物1kg体重当たり約0.01mg~300mg、さらに好ましくは約1mg~100mgを投与することができる。
【0132】
本発明の化合物は、経口投与又は非経口投与により、直接又は適当な剤形を用いて製剤にし、投与することができる。剤形は、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、注射剤、貼付剤、パップ剤等が挙げられるがこれに限らない。製剤は、薬学的に許容される添加剤を用いて、公知の方法で製造される。
添加剤は、目的に応じて、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、コーティング剤、溶解剤、溶解補助剤、増粘剤、分散剤、安定化剤、甘味剤、香料等を用いることができる。具体的には、例えば、乳糖、マンニトール、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、部分α化デンプン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、酸化チタン、タルク等が挙げられる。
【0133】
本発明の化合物は、抗てんかん薬、抗うつ薬、又は抗精神病薬に分類される少なくとも1種以上の薬剤と併用することができる。なお、ここで併用とは、本発明の化合物とは別に調製された製剤として投与される形態であり、投与対象に対し、本発明の化合物を含有する製剤と同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。抗てんかん薬に分類される薬剤としては、例えば、ナトリウムチャネルを阻害するフェニトイン、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギン、トピラマート等、カルシウムチャネルを阻害するエトスクシミド、ゾニサミド等、AMPA受容体を阻害するペランパネル、GABA神経系の働きを高めるベンゾジアゼピン系の薬剤(ジアゼパム、クロナゼパム、クロバザム等)、バルビタール系の薬剤(フェノバルビタール等)、ガバペンチン、ビガバトリン等が挙げられる。抗うつ薬に分類される薬剤としては、例えば、SSRIと呼ばれるフルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム等、SNRIと呼ばれるデュロキセチン、ミルナシプラン等、三環系抗うつ薬と呼ばれるイミプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミン、アモキサピン等が挙げられる。抗精神病薬に分類される薬剤としては、例えば、定型抗精神病薬と呼ばれるハロペリドール、スピペロン、クロルプロマジン等、SDAと呼ばれるリスペリドン、クエチアピン、オランザピン、クロザピン、ペロスピロン、アリピプラゾール等が挙げられる。
【実施例
【0134】
以下に本発明を、参考例、実施例及び試験例により、さらに具体的に説明するが、本発明はもとよりこれに限定されるものではない。尚、以下の参考例及び実施例において示された化合物名は、必ずしもIUPAC命名法に従うものではない。
【0135】
明細書の記載を簡略化するために参考例、実施例及び実施例中の表において以下に示すような略号を用いることもある。置換基として用いられる略号としては、Meはメチル、Phはフェニルを意味する。THFはテトラヒドロフラン、DMFはN,N-ジメチルホルムアミド、DMEは1,2-ジメトキシエタン、DMSOはジメチルスホキシド、TFAはトリフルオロ酢酸、MeCNはアセトニトリルを意味する。n-はnormal-、t-はtert-を意味する。NMRに用いられる記号としては、sは一重線、dは二重線、ddは二重線の二重線、tは三重線、tdは三重線の二重線、qは四重線、mは多重線、brは幅広い、brsは幅広い一重線、brmは幅広い多重線、及びJは結合定数を意味する。
【0136】
高速液体クロマト質量分析計;LCMSの測定条件は、以下の通りであり、観察された質量分析の値[MS(m/z)]をMHで、保持時間をRt(分)で示す。
【0137】
測定機器:Waters ACQUITYTM UltraPerformance LC
カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm 2.1 × 30 mm column
溶媒:A液:0.05% HCOOH/HO、B液:CHCN
グラジエント条件:
0.0-1.3分;A/B=90/10~5/95(linear gradient)
1.3-1.5分;A/B=90/10
流速:0.80mL/min
UV:220nm、254nm
カラム温度:40℃
【0138】
参考例1:1-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]シクロブタン-1-カルボン酸 エチル
【化44】
シクロブタン-1,1-ジカルボン酸モノエチルエステル(100mg)にチオニルクロリド(93μl)を加え、5時間加熱還流した。減圧濃縮後、トルエンで共沸して1-(クロロカルボニル)シクロブタン-1-カルボン酸エチルを油状物として得た。これをアセトン(2.64ml)に溶解し、4-クロロベンズアミドオキシム(90mg)と炭酸カリウム(109mg)を加え、50度加熱下で1時間撹拌した。固体をろ過により除去し濾液を濃縮後、残渣をトルエン(2.64ml)に溶解し6時間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル;6:1)で精製し、参考例1の化合物(138mg)を固体として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.25 (t, 3H), 2.08-2.23 (m, 2H), 2.76-2.84 (m, 2H), 2.86-2.94 (m, 2H), 4.24 (q, 2H), 7.45-7.48 (m, 2H), 8.04-8.07 (m, 2H).
【0139】
参考例2~11
対応する原料化合物を用い、参考例1に記載の方法と同様に反応・処理して表1に示す化合物を得た。
【表1】
【0140】
参考例12:2-[5-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]酢酸エチル
【化45】
3-(ヒドロキシアミノ)-3-イミノプロパン酸エチル(4.00g)のピリジン(40ml)溶液に4-クロロ安息香酸クロリド(3.48ml)を加え、室温で2時間撹拌した。さらに90度加温下で20時間撹拌後、反応溶液を減圧濃縮し残渣を酢酸エチルに溶解した。10%クエン酸水溶液、飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル;2:1)で精製し、参考例12の化合物(4.60g)を固体として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.28 (t, 3H), 3.86 (s, 2H), 4.23 (q, 2H), 7.49 (d, 2H), 8.05 (d, 2H).
【0141】
参考例13~14
対応する原料化合物を用い、参考例12に記載の方法と同様に反応・処理して表2に示す化合物を得た。
【表2】
【0142】
参考例15:2-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]酢酸エチル
【化46】
4-クロロベンズヒドラジド(500mg)とエチルマロニルクロリド(0.37ml)のTHF(10ml)懸濁液にトリエチルアミン(0.86ml)を加え室温で2時間撹拌後、減圧濃縮した。得られた残渣をクロロホルム(10ml)に溶解しバージェス試薬(1.54g)を加え6時間加熱還流後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル;2:1)で精製し、参考例15の化合物(598mg)を固体として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.28 (t, 3H), 4.01 (s, 2H), 4.23 (q, 2H), 7.45-7.50 (m, 2H), 7.96-7.99 (m, 2H).
【0143】
参考例16
対応する原料化合物を用い、参考例15に記載の方法と同様に反応・処理して参考例16の化合物を得た。
【化47】
【0144】
参考例17:2-[5-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-2-メチルプロパン酸エチル
【化48】
参考例12の化合物(1.60g)のDMF(16ml)溶液に炭酸セシウム(7.82g)とヨードメタン(1.12ml)を加え、室温で終夜撹拌した。反応溶液に水を加え酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル;9:1)で精製し、参考例17の化合物(1.11g)を固体として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.21 (t, 3H), 1.67 (s, 6H), 4.17 (q, 2H), 7.47-7.50 (m, 2H), 8.04-8.07 (m, 2H).
【0145】
参考例18~21
対応する原料化合物を用い、参考例17に記載の方法と同様に反応・処理して表3に示す化合物を得た。
【表3】
【0146】
参考例22:2-[3-(4-クロロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパン酸
【化49】
参考例3の化合物(3.10g)のメタノール(20ml)溶液に5mоl/L水酸化ナトリウム水溶液(7.3ml)を加え、6時間加熱還流した。室温まで冷却後10%クエン酸水溶液を加えpH4に調整し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、参考例22の化合物(2.89g)を固体として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.78 (s, 6H), 7.42-7.46 (m, 2H), 8.00-8.03 (m, 2H).
【0147】
参考例23~37
対応する原料化合物を用い、参考例22に記載の方法と同様に反応・処理して表4に示す化合物を得た。
【表4】
【0148】
参考例38:[3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]メタンスルホン酸ナトリウム
【化50】
3-(4-ブロモフェニル)-5-(クロロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール(1.35g)のエタノール(5ml)溶液に亜硫酸ナトリウム(0.62g)の水溶液(5ml)を加え、4時間加熱還流した。溶媒を減圧留去し、参考例38の化合物(2.04g)を固体として得た。
MS (m/z) 317 (MNa-), Rt = 0.52 min.
【0149】
参考例39~45
対応する原料化合物を用い、参考例38に記載の方法と同様に反応・処理して表5に示す化合物を得た。
【表5】
【0150】
参考例46:1-[3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-N,N-ビス(2,4-ジメトキシベンジル)メタンスルホンアミド
【化51】
参考例38の化合物(1.68g)にオキシ塩化リン(22.5ml)を加え、5時間加熱還流後、減圧濃縮した。残渣をTHF(20ml)に加え、これをビス(2,4-ジメトキシベンジル)アミン(1.56g)、トリエチルアミン(2.75ml)、4-ジメチルアミノピリジン(0.06g)のTHF(20ml)溶液に滴下後、室温で終夜撹拌した。反応溶液を10%クエン酸水溶液で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル;2:1)で精製し、参考例46の化合物(1.32g)をアモルファスとして得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 3.78 (s, 12H), 4.38 (s, 2H), 4.38 (s, 4H), 6.43-6.46 (m, 4H), 7.20 (d, 2H), 7.58-7.61 (m, 2H),7.89-7.93 (m, 2H).
【0151】
参考例47~53
対応する原料化合物を用い、参考例46に記載の方法と同様に反応・処理して表6に示す化合物を得た。
【表6】
【0152】
参考例54:2-[3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサゾール-5-イル]-N,N-ビス(2,4-ジメトキシベンジル)プロパン-2-スルホンアミド
【化52】
参考例46の化合物(250mg)のDMF(5ml)溶液に炭酸セシウム(527mg)とヨードメタン(0.075ml)を加え、室温で終夜撹拌した。反応溶液に水を加え酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル;1:1)で精製し、参考例54の化合物(241mg)をアモルファスとして得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.93 (s, 6H), 3.57 (s, 6H), 3.71 (s, 6H), 4.27 (br s, 4H), 5.43 (br s, 1H), 6.77 (br s, 1H), 7.14-7.19 (m, 2H), 8.05-8.10 (m, 2H).
【0153】
参考例55~61
対応する原料化合物を用い、参考例54に記載の方法と同様に反応・処理して表7に示す化合物を得た。
【表7】
【0154】
参考例62:5-[3(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]ピロリジン-2-オン
【化53】
4-フルオロベンズアミドキシム(1.90g)、2-ピロリドン-5-カルボン酸(1.59g)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(5.16g)のDME(50ml)溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.3ml)を加え、室温で2時間、80℃加温下で2時間撹拌した。反応溶液に水を加え酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄後無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル;1:4)で精製し、参考例62の化合物(2.30g)を固体として得た。
1H-NMR (d6-DMSO) δ: 2.21-2.40 (m, 3H), 2.51-2.62 (m, 1H), 5.09-5.12 (m, 1H), 7.38-7.44 (m, 2H), 8.04-8.09 (m, 2H), 8.37 (br s, 1H).
【0155】
参考例63~68
対応する原料化合物を用い、参考例62に記載の方法と同様に反応・処理して表8に示す化合物を得た。
【表8】
【0156】
実施例1:2-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-2-メチルプロパンアミド
【化54】
参考例23で得られた化合物(280mg)と塩化オキサリル(0.384ml)を脱水クロロホルム(10ml)に溶解しDMFを2滴加えた後に、室温で1時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮後、残渣を脱水THF(5ml)に溶解し、28%アンモニア水溶液(1ml)を加え室温で終夜撹拌した。反応溶液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル;1:1)で精製し、実施例1の化合物(206mg)を固体として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.75 (s, 6H), 5.43 (br s, 1H),6.77 (br s, 1H), 7.14-7.19 (m, 2H), 8.05-8.10 (m, 2H).
MS (m/z) 250 (MH+), Rt = 0.69 min.
【0157】
実施例2-16
対応する原料化合物を用いて実施例1と同様に反応・処理し、表9に示す化合物を得た。
【表9】


【0158】
実施例17:2-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]プロパン-2-スルホンアミド
【化55】
参考例55で得られた化合物のトルエン(20ml)溶液に、トリフルオロ酢酸(10ml)を加え、室温で15時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル;1:1)で精製し、実施例17の化合物(103mg)を固体として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.98 (s, 6H), 4.95 (br s, 2H), 7.14-7.19 (m, 2H), 8.03-8.08 (m, 2H).
MS (m/z) 286 (MH+), Rt = 0.71 min.
【0159】
実施例18-24
対応する原料化合物を用いて実施例18と同様に反応・処理し、表10に示す化合物を得た。
【表10】
【0160】
実施例25:5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン
【化56】
参考例62で得られた化合物(500mg)とヨウ化メチル(0.19ml)のDMF(4ml)溶液に、炭酸セシウム(0.988mg)を加え、室温で2.5時間撹拌した。反応溶液に10%クエン酸水溶液を加え酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル;1:3)で精製し、実施例25の化合物(483mg)を固体として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 2.27-2.33 (m, 1H), 2.40-2.67 (m, 3H), 2.85 (s,3H), 4.84-4.87 (m, 1H), 7.09-7.15 (m, 2H), 7.99-8.04 (m, 2H).
MS (m/z) 262 (MH+), Rt = 0.71 min.
【0161】
実施例26-31
対応する原料化合物を用いて実施例25と同様に反応・処理し、表11に示す化合物を得た。
【表11】
【0162】
実施例31及び32:(S)-5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン及び(R)-5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン
【化57】
実施例25の化合物をダイセル社製カラム(CHIRALPAKTM AD-H(移動相:100% MeCN))で分取し、前ピーク(エナンチオマーA)及び後ピーク(エナンチオマーB)を得た。なお、エナンチオマーA及びBの絶対配置は、S体の原料化合物を用いた参考例68から製造した化合物(=実施例31)との比較により、エナンチオマーAがS体、エナンチオマーBがR体であると決定した。
実施例31(エナンチオマーA):保持時間 4.78分 Chiral HPLC (ChiralpakTM AD-H, 0.46 cm I.D. x 25 cm L, 移動相:100% MeCN、流量:1.0 ml/min、温度:40℃、波長:237 nm)
実施例32(エナンチオマーB):保持時間 5.99分 Chiral HPLC (ChiralpakTM AD-H, 0.46 cm I.D. x 25 cm L, 移動相:100% MeCN、流量:1.0 ml/min、温度:40℃、波長:237 nm)
【0163】
実施例33:(S)-5-[3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1-メチルピロリジン-2-オン
【化58】
実施例31の化合物は以下の方法によっても製造することができる。
4-フルオロベンズアミドキシム(840g)、(S)-2-ピロリドン-5-カルボン酸(1.08kg)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.56L)と酢酸エチル(7.3L)の混合物に、プロパンホスホン酸無水物の50%酢酸エチル溶液(4.48kg)を加え、室温で1.5時間、続いて75℃加温下で2.5時間撹拌した。放冷後、反応溶液に0.1mol/L塩酸(3.36L)を加えて分液し、水層を酢酸エチル(1.86L)で2回抽出した。有機層を合一し、5%リン酸水素二カリウム水溶液(3.36kg)、水(1.68L)で順次洗浄したのち、有機層を3.36kgまで減圧濃縮し、攪拌しつつ0℃まで冷却した。生じたスラリーにn-ヘプタン(3.02kg)を滴下し、結晶を濾過で集め、40%酢酸エチル/ヘプタン混合溶媒(1.68kg)で洗浄、40℃で真空乾燥することにより、粗結晶(1.14g)を淡褐色固体として得た。この粗結晶(1.00kg)を2-プロパノール/水(50%、1.6kg)に溶解後、活性炭60gを加えて25℃で攪拌し、活性炭を濾過で除いた。濾液を2-プロパノール/水(50%)で3.0kgになるよう希釈し、0℃の水(6.0L)に攪拌しながら滴下した。結晶を濾過で集め、2-プロパノール/水混合溶媒(12.5%、2.0kg)で洗浄後、40℃で真空乾燥することにより、実施例33の化合物(944g)を白色固体として得た。NMRとHPLCの確認により、この化合物が実施例31の化合物と同一であることを確認した。
【0164】
以下に、本発明の代表的化合物の薬理試験結果を示し、該化合物についての薬理作用を説明するが、本発明はこれらの試験例に限定されるものではない。
【0165】
試験例1:皮下注射ペンテトラゾールモデル(最小痙攣モデル、scPTZ)評価
抗てんかん薬の評価には、臨床予測性の高い皮下注射ペンテトラゾールモデル(最小痙攣モデル、scPTZ)評価が用いられる。このモデルにおいて抗痙攣作用を示す化合物は、臨床において抗てんかん薬として期待される。この試験では、全般性の欠神発作やミオクロニー発作の表現系である動物モデルを用いた。Slc:ddY系雄性マウス(日本エス エル シー株式会社より入手、一群5匹、体重20~30g)に被験化合物を経口投与し、1時間後にペンテトラゾール85mg/kgを皮下投与した。その後、30分間における間代性痙攣の発現の有無を観察した。なお、コントロールは被験化合物として0.5%メチルセルロース液を投与して、同様の試験を行った。結果を以下の表12に示した。5匹中、痙攣の発現抑制を示した匹数で表した。コントロールは、5匹中4匹痙攣を発現した場合に試験成立とした。
【表12】
【0166】
表12に示すように、本発明の化合物は経口投与で皮下注射ペンテトラゾールモデル(最小痙攣モデル、scPTZ)評価において抗痙攣作用を示した。実施例11、16、25、28、30及び31の化合物は、25mg/kg経口投与においても半数例以上で抗痙攣作用を示した。
【0167】
試験例2:ローターロッド評価
本試験は、薬物の協調運動能抑制作用を評価する試験である。ローターロッドとは、直径4cmの円柱棒を回転させる装置で、回転した棒の上でマウスを歩行させ、その歩行の可否を指標に協調運動能を評価する。Slc:ddy系雄性マウス(日本エス エル シー株式会社より入手、体重20~30g)を、試験3時間前に12回転/分で回転したローターロッド装置上を5分間落下しないで歩行できるように訓練し、歩行可能なマウスのみを試験に使用する。一群5匹に被験化合物を経口投与し、1時間後に15回/分で回転したローターロッド装置に乗せ、180秒間歩行状態を観察し歩行時間を計測した。なお、コントロールは被験化合物として0.5%メチルセルロース液を投与して、同様の試験を行った。協調運動能は、5匹の歩行時間(秒)の平均値で表した。結果を表13に示した。コントロールは180秒間歩行可能であった。
【表13】
【0168】
表13に示すようにいずれの実施例においても25mg/kg以上の経口投与で180秒間ローターロッド装置から落下することなく歩行を継続可能で、協調運動能に影響を与えなかった。したがって、試験例1において皮下注射ペンテトラゾールモデル(最小痙攣モデル、scPTZ)評価を行った実施例化合物では、上記のとおり抗痙攣作用を示したが、その効果が得られた用量では、協調運動能にほとんど影響を与えないことが確認された。
【0169】
試験例3:ドラベモデルマウス熱性痙攣評価
本試験は、薬物のドラベモデルマウス熱性痙攣に対する抗痙攣作用を評価する試験である。この試験では、BALB/c-Scn1a<+/->マウス(カタログ番号:RBRC06422;文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクトを介して、国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンターから提供を受けることができる。)を用いた。本モデルマウスは、ドラベ症候群患者の原因遺伝子であるScn1Aに変異を持ち、ドラベ症候群患者の症状である体温上昇による熱性痙攣と類似した病態を呈する表現型であり、自然発症ドラベ症候群のモデル動物として使用することができる(参考:てんかん治療研究振興財団 研究年報 2015:26:69-76)。ドラベモデル雄性マウス(一群5~8匹、体重20~30g)に被験化合物を経口投与し、50分後に湯浴につけたチャンバー内に入れ体温上昇を惹起し、熱性痙攣の発現を観察した。熱性痙攣の発現後素早く直腸内体温を測定し、痙攣閾値体温とした。なお、コントロールは被験化合物として0.5%メチルセルロース液を投与して、同様の試験を行った。抗痙攣活性は、コントロール群に比して痙攣閾値体温を有意に上昇させる薬物用量と、コントロール群との痙攣閾値体温の差として表した。結果を表14に示した。
【表14】
【0170】
表14に示すように、本発明の化合物はドラベ熱性痙攣のけいれん閾値体温上昇作用を示し、ドラベモデルに対する抗けいれん作用を有することが示された。いずれの実施例の化合物においても試験例2のローターロッド評価で協調運動能に影響を与えない用量で、ドラベモデルに対する抗けいれん作用を示した。
【0171】
試験例4:GABA-A受容体賦活化作用評価
本試験は、安定型細胞株作成のガイドライン(ロンザジャパンのウェブサイト;非特許文献4)に記載の方法で取得できるGABA-A受容体発現細胞を用い、GABAにより惹起される電流を指標に薬物のGABA-A受容体賦活化作用を評価する試験である。GABA-A受容体発現細胞を電気生理学実験に供し、2 μMのGABA溶液、引き続き2 μMのGABAと被験化合物の混合液を添加した時に見られる電流を測定した。GABA賦活化活性は、2 μMのGABAと被験化合物の混合液を添加したときに見られる電流の、GABAのみで見られる電流に対する増加率で示し、電流を20%増加させる被験化合物の濃度をEC20で表した。また同様に、2 μMのGABAと被験化合物に10 μMのフルマゼニル混合液を添加した時に見られる電流を測定し、フルマゼニル非存在下での電流増加に対するフルマゼニルによる阻害率を算出した。結果を表15に示した。
【表15】
【0172】
表15に示すように、本発明の化合物はGABA-A受容体賦活化活性を示した。ベンゾジアゼピン類に分類されるクロバザムやジアゼパムは、ベンゾジアゼピンアンタゴニストであるフルマゼニルによりそのGABA-A受容体賦活化活性が強く阻害されるが、それと異なり、本発明の化合物のGABA-A受容体賦活化活性は、フルマゼニルによる電流増加に対する阻害は弱く、本発明の化合物のGABA-A受容体賦活化活性がベンゾジアゼピン類とは異なる機序で生じていることが示された。
【0173】
試験例5:ラット強制水泳モデル評価
本試験は、薬物の抗うつ効果を評価する試験である。ラットを逃避不可能な水槽に投入して水泳させると、逃避行動の後に無動が認められる。翌日に再度水槽内にラットを入れると、初回より早期に無動が出現する。この無動時間の持続時間をうつ様行動として、被験化合物の抗うつ効果を評価する方法である。Wister系雄性ラット(日本チャールス・リバー株式会社より入手、体重260~300g)を、試験前日に15分間水槽内で水泳させた。試験当日、被験化合物を経口投与し(一群10~12匹)、1時間後に再度水槽内で5分水泳させ無動時間を計測した。なお、コントロール群は被験化合物として0.5%メチルセルロース液を投与して、同様の試験を行った。抗うつ活性は、コントロール群に対する無動時間の減少率の平均値で表した。結果を表16に示した。
【表16】
【0174】
表16に示すように、実施例29及び32は、ラット強制水泳モデルの無動時間を有意に減少させ、抗うつ効果を有することが示された。一方、ジアゼパムは実験例4で示したように本発明の化合物と同様GABA-A受容体賦活化作用を有するが、ラット強制水泳モデルにおいて抗うつ効果を示さなかった。ジアゼパムは抗痙攣薬としても使用されるベンゾジアゼピン類の一つである。本発明の化合物がベンゾジアゼピン類で効果を示さないうつモデルに対して効果を示したことは、実験例4で示したように、本発明の化合物のGABA-A受容体賦活化作用機序がベンゾジアゼピン類と異なっており、本発明の化合物の持つなんらかの未知な作用機序によって、ベンゾジアゼピン類にはない抗うつ効果を示したと考えられる。このことから、本発明の化合物は、てんかん発作だけでなく、てんかん患者が高率に併発するうつ症状に対しても併せて治療/予防効果を持つことが示唆された。
【0175】
以上で説明したように、本発明の化合物は皮下注射ペンテトラゾールモデル(最小痙攣モデル、scPTZ)評価において強い抗痙攣作用を示した。また、難治性全般てんかんの一つとして知られ原因変異遺伝子が特定されているドラベ症候群のモデルマウスにおいても、協調運動能に影響を与えない投与用量で熱性痙攣の痙攣発現閾値体温を上昇させた。したがって、本発明の化合物は抗てんかん薬(強直発作、間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作を含む全般発作、焦点発作、分類不明の発作、未だ薬物治療が奏功しない難治性てんかんに分類されるドラベ症候群、ウエスト症候群及びレノックス-ガストー症候群等の全般発作に対する治療薬及び/又は予防薬)として有用である。本発明の化合物は、GABA-A受容体賦活化活性も有することから、既存のGABA神経系賦活薬による治療効果が認められている不安症群、強迫性障害、パーキンソン病・レビー小体型認知症に伴うレム睡眠障害に対する治療薬及び/又は予防薬としても有用である。本発明の化合物のGABA-A受容体賦活化活性は、既存のGABA神経系賦活薬の一つであるベンゾジアゼピンとは異なる作用様式で発揮されており、ベンゾジアゼピンで効果を示さなかったラット強制水泳モデルのうつ症状に対して効果を発揮したことから、てんかんに併発する又はしないうつ症状に対する効果があり、抑うつ症候群等に対する治療薬及び/又は予防薬として有用であるとともに、既存の抗てんかん薬にはない有用性がある。また、GABA神経系の異常を背景にもつ発達障害、自閉症、双極性障害および関連障害群、統合失調症スペクトラム障害、アルツハイマー病やその他神経認知障害群、筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病に対する病態改善効果を発揮すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の化合物は、強い抗痙攣作用を有すこと、また、GABA-A受容体賦活化作用も有することから、GABA神経系機能低下が関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤として有用である。また、本発明の化合物は、興奮(E)と抑制(I)のバランス(E/Iバランス)における抑制(I)を強める作用を有することから、E/IバランスにおけるEが亢進している及び/又はIが低下している疾患の治療剤及び/又は予防剤として有用である。