(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】防眩性積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 7/022 20190101AFI20250219BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20250219BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20250219BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20250219BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20250219BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B27/30 A
B32B27/36 102
G02B1/04
G02B1/14
G02B5/02 C
(21)【出願番号】P 2022509963
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010482
(87)【国際公開番号】W WO2021193215
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2020056141
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小澤 帰心
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-180248(JP,A)
【文献】特開2019-155621(JP,A)
【文献】国際公開第2016/030738(WO,A1)
【文献】特開2018-177632(JP,A)
【文献】特開2016-053568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/022
B32B 27/30
B32B 27/36
G02B 1/14
G02B 5/02
G02B 1/04
C08L 25/08
C08L 33/06
C08L 69/00
G02F 1/1333
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層と、高硬度樹脂を含む高硬度樹脂層と、ハードコート層とがこの順に配置された防眩性積層体であって、
前記高硬度樹脂の鉛筆硬度がHB以上であり、
前記ハードコート層の算術平均粗さ(Ra)
(単位:μm)、最大山高さ(Rp)
(単位:μm)、最大谷深さ(Rv)
(単位:μm)、およびスキューネス(Rsk)が、下記式(1)~(3):
【数1】
を満たし、
前記ハードコート層の接触子として触覚接触子を使用し、荷重50g、走査速度10mm/秒、走査距離90mmで測定された動摩擦係数(μk)が、下記式(4):
【数2】
を満たす、防眩性積層体。
【請求項2】
前記ハードコート層の波長550nmにおける正反射光を含む反射率(SCI
550)および正反射光を除いた反射率(SCE
550)が、下記式(5):
【数3】
を満たす、請求項1に記載の防眩性積層体。
【請求項3】
前記防眩性積層体が、温度85℃で相対湿度85%の環境下に120時間保持した後の反りの変化量が350μm以下である、請求項1または2に記載の防眩性積層体。
【請求項4】
前記高硬度樹脂層の厚みが、10~250μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の防眩性積層体。
【請求項5】
前記基材層および前記高硬度樹脂層の合計厚みが、100~3,000μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の防眩性積層体。
【請求項6】
高硬度樹脂(B)が、
下記一般式(1):
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数1~18のアルキル基である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2):
【化2】
(式中、R
3は水素原子またはメチル基であり、R
4は炭素数1~4の炭化水素機を有してもよいシクロヘキシル基である。)
で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含む共重合樹脂であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合が前記共重合樹脂の全構成単位の90~100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が前記共重合樹脂の全構成単位の65~80モル%である、樹脂(B1)、
前記樹脂(B1)を35~65質量%、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)を35~65質量%含み、前記スチレン-不飽和ジカルボン酸共重合体(C)が、スチレン系構成単位(c1)を65~90質量%、不飽和ジカルボン酸無水物構成単位(c2)を10~35質量%で含む、樹脂(B2)、
ビニル系単量体を含有する樹脂(D)を55~10質量%、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)を45~90質量%含み、前記スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)が、スチレン系構成単位(e1)を50~80質量%、不飽和ジカルボン酸構成単位(e2)を10~30質量%、ビニル系構成単位(e3)を5~30質量%で含む、樹脂(B3)、
スチレン構成単位を5~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を70~90質量%、N-置換型マレイミド構成単位を5~20質量%含む樹脂共重合体(G)、または樹脂共重合体(G)とスチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)とのアロイである、樹脂(B4)、
下記一般式(3):
【化3】
で表される構成単位(H)を含む、樹脂(B5)、および
ビニル系単量体を含有する樹脂(D)を35~65質量%、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)を35~65質量%含み、前記スチレン-不飽和ジカルボン酸共重合体(C)が、スチレン系構成単位(c1)を65~90質量%、不飽和ジカルボン酸無水物構成単位(c2)を10~35質量%で含む、樹脂(B6)からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~5のいずれかの1項に記載の防眩性積層体。
【請求項7】
前記樹脂(B5)が、下記一般式(4):
【化4】
で表される構成単位(J)をさらに含む共重合体である、請求項6に記載の防眩性積層体。
【請求項8】
前記ハードコート層が、有機粒子および無機粒子を含まない、請求項1~7のいずれかの1項に記載の防眩性積層体。
【請求項9】
ポリカーボネート樹脂(a1)が、下記一般式(5):
【化5】
(式中、R
5は、炭素数8~36のアルキル基、または炭素数8~36のアルケニル基を表し、R
6はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、または置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基若しくは炭素数6~12のアリール基を表し、nは0~4の整数であり、ここで、前記置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基である。)
で表される1価フェノール由来の成分を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の防眩性積層体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の防眩性積層体を含む、車載用表示装置。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の防眩性積層体を含む、タッチパネル前面保護板。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の防眩性積層体を含む、OA機器用、携帯電子機器用、またはテレビ用の前面板。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の防眩性積層体の製造方法であって、
前記ハードコート層の表面が、柄目付きPETフィルムを圧着して凹凸形状を転写する工程を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性積層体に関する。より詳細には、本発明は、車載用表示装置や携帯電話端末、パソコン、タブレットPCなどのタッチパネル前面保護板、OA機器用、携帯電子機器用、テレビ用の前面板等として用いられる防眩性積層体に関する。
【0002】
液晶パネルなどの保護を目的として、液晶表示装置には保護板または前面板が設けられている。従来の液晶表示装置の保護板または前面板には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に代表される(メタ)アクリル樹脂が用いられている。
【0003】
このような保護板または前面板は、一般に光の散乱や干渉によって、像の映り込みを抑制したり反射率を低減したりできるような防眩処理が施されることがある。また、保護板または前面板は、指で操作することから手が触れたときの触り心地に優れることも重要視される。
【0004】
例えば、特許文献1には、操作者側の表面に凹凸を有するタッチパネルに係る発明が記載されている。この際、前記凹凸は、静摩擦係数および算術平均粗さ(Ra2.5)が所定の条件を満たす。これにより、特許文献1には、屋外防眩性を有し、かつ、タッチパネルの操作性に優れることが記載されている。なお、特許文献1には、より具体的には、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、アクリル系モノマー、有機粒子、および無機粒子を含む凹凸層塗布液を塗布し、得られた塗膜を紫外線照射することで凹凸層を形成した積層体等が記載されている。
【0005】
また、自動車室内のような40℃を超える温湿度環境下で使用される前面板として用いられる場合など、高温高湿環境下での形状安定性が優れていることが望まれている。例えば、温度85℃湿度85%環境に暴露される前と暴露された後の反りの変化量が小さいことが好ましい。
【0006】
ところで、近年、高い耐衝撃性、耐熱性、2次加工性、軽量性および透明性などを有する点から、保護板または前面板としてポリカーボネート樹脂が広く用いられつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリカーボネート樹脂を用いた場合において、防眩性および触り心地に優れる防眩性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するべく、鋭意検討を行った。その結果、ポリカーボネート樹脂を含む基材層、高硬度樹脂層、およびハードコート層を含む所定の積層構造とし、かつ、前記ハードコート層の表面を制御することで上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
<1>少なくともポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層と、高硬度樹脂を含む高硬度樹脂層と、ハードコート層とがこの順に配置された防眩性積層体であって、
前記ハードコート層の算術平均粗さ(Ra)、最大山高さ(Rp)、最大谷深さ(Rv)、およびスキューネス(Rsk)が下記式(1)~(3):
【0011】
【0012】
を満たし、
前記ハードコート層の接触子として触覚接触子を使用し、荷重50g、走査速度10mm/秒、走査距離90mmで測定された動摩擦係数(μk)が下記式(4):
【0013】
【0014】
を満たす、防眩性積層体。
<2>前記ハードコート層の波長550nmにおける正反射光を含む反射率(SCI550)および正反射光を除いた反射率(SCE550)が、下記式(5):
【0015】
【数3】
を満たす、上記<1>に記載の防眩性積層体。
【0016】
<3>前記防眩性積層体が、温度85℃で相対湿度85%の環境下に120時間保持した後の反りの変化量が350μm以下である、<1>または<2>に記載の防眩性積層体。
<4>前記高硬度樹脂層の厚みが、10~250μmである、上記<1>~<3>のいずれかに記載の防眩性積層体。
<5>前記基材層および前記高硬度樹脂層の合計厚みが、100~3,000μmである、上記<1>~<4>のいずれかに記載の防眩性積層体。
<6>高硬度樹脂(B)が、
下記一般式(1):
【0017】
【0018】
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1~18のアルキル基である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2):
【0019】
【0020】
(式中、R3は水素原子またはメチル基であり、R4は炭素数1~4の炭化水素機を有してもよいシクロヘキシル基である。)
で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含む共重合樹脂であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合が前記共重合樹脂の全構成単位の90~100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が前記共重合樹脂の全構成単位の65~80モル%である、樹脂(B1)、
前記樹脂(B1)を35~65質量%、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)を35~65質量%含み、前記スチレン-不飽和ジカルボン酸共重合体(C)が、スチレン系構成単位(c1)を65~90質量%、不飽和ジカルボン酸無水物構成単位(c2)を10~35質量%で含む、樹脂(B2)、
ビニル系単量体を含有する樹脂(D)を55~10質量%、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)を45~90質量%含み、前記スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)が、スチレン系構成単位(e1)を50~80質量%、不飽和ジカルボン酸構成単位(e2)を10~30質量%、ビニル系構成単位(e3)を5~30質量%で含む、樹脂(B3)、
スチレン構成単位を5~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を70~90質量%、N-置換型マレイミド構成単位を5~20質量%含む樹脂共重合体(G)、または樹脂共重合体(G)とスチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)とのアロイである、樹脂(B4)、
下記一般式(3):
【0021】
【0022】
で表される構成単位(H)を含む、樹脂(B5)、および
ビニル系単量体を含有する樹脂(D)を35~65質量%、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)を35~65質量%含み、前記スチレン-不飽和ジカルボン酸共重合体(C)が、スチレン系構成単位(c1)を65~90質量%、不飽和ジカルボン酸無水物構成単位(c2)を10~35質量%で含む、樹脂(B6)からなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記<1>~<5>のいずれかの1項に記載の防眩性積層体。
<7>前記樹脂(B5)が、下記一般式(4):
【0023】
【0024】
で表される構成単位(J)をさらに含む共重合体である、上記<6>に記載の防眩性積層体。
<8>前記ハードコート層が、有機粒子および無機粒子を含まない、上記<1>~<7>のいずれかの1項に記載の防眩性積層体。
<9>ポリカーボネート樹脂(a1)が、下記一般式(5):
【0025】
【0026】
(式中、R5は、炭素数8~36のアルキル基、または炭素数8~36のアルケニル基を表し、R6はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、または置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基若しくは炭素数6~12のアリール基を表し、nは0~4の整数であり、ここで、前記置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基である。)
で表される1価フェノール由来の成分を含む、上記<1>~<8>のいずれかに記載の防眩性積層体。
<10>上記<1>~<9>のいずれかに記載の防眩性積層体を含む、車載用表示装置。
<11>上記<1>~<9>のいずれかに記載の防眩性積層体を含む、タッチパネル前面保護板。
<12>上記<1>~<9>のいずれかに記載の防眩性積層体を含む、OA機器用、携帯電子機器用、またはテレビ用の前面板。
<13>上記<1>~<9>のいずれかに記載の防眩性積層体の製造方法であって、
前記ハードコート層の表面が、柄目付きPETフィルムを圧着して凹凸形状を転写する工程を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂を用いた場合において、防眩性および触り心地に優れる防眩性積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について製造例や実施例等を例示して詳細に説明するが、本発明は例示される製造例や実施例等に限定されるものではなく、本発明の内容を大きく逸脱しない範囲であれば任意の方法に変更して行うこともできる。
【0029】
本形態に係る防眩性積層体は、少なくともポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層と、高硬度樹脂を含む高硬度樹脂層と、ハードコート層とがこの順に配置される。
【0030】
防眩性積層体の積層の順番としては、基材層-高硬度樹脂層-ハードコート層であることが好ましい。基材層の他方の面は特に指定はない。一実施形態において、基材層の他方の面に高硬度樹脂層を設けることができる。この場合、防眩性積層体は、高硬度樹脂層-基材層-高硬度樹脂層-ハードコート層の構成を有する。また、一実施形態において、基材層の他方の面に高硬度樹脂層およびハードコート層を設けることができる。この場合、防眩性積層体は、ハードコート層-高硬度樹脂層-基材層-高硬度樹脂層-ハードコート層の構成を有する。
【0031】
高硬度樹層を基材層の両面に設ける場合には、両面で同一の高硬度樹層を用いることが形状安定性のためにもより望ましい。また、ハードコート層を基材の両面に設ける場合には、両面で同様のハードコート層を設けることが、形状安定性が良くなることからより望ましい。なお、基材層および高硬度樹脂層、高硬度樹脂層およびハードコート層は直接積層されていてもよいし、他の層を介して積層されていてもよいが、直接積層されることが好ましい。
【0032】
一実施形態において、防眩性積層体は、例えば、車載用表示装置としてカーナビゲーション、センターインフォメーションディスプレイ(CID)、リアシートエンターテインメント(RSE)、クラスターなど、タッチパネル全面保護板、およびOA機器用、携帯電子機器用、テレビ用の前面板等に用いることができる。また、例えば前面板は、単独で液晶表示装置の前面板として使用できるが、例えばタッチセンサーなどの別の基板とラミネートするなど、複合して前面板として使用してもよい。
【0033】
以下に、本発明による防眩性積層体の各構成部材について説明する。
【0034】
<基材層>
基材層は、ポリカーボネート樹脂(a1)を含む。基材層は、添加剤等をさらに含んでいてもよい。
【0035】
[ポリカーボネート樹脂(a1)]
ポリカーボネート樹脂(al)としては、分子主鎖中に炭酸エステル結合、即ち、-[O-R-OCO]-単位(Rが脂肪族基、芳香族基、または脂肪族基と芳香族基の双方を含んでいてもよく、直鎖構造あるいは分岐構造を有するものであってもよい)を含むものであれば特に限定されるものではないが、特に下記式(4)の構造単位を含むポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。このようなポリカーボネート樹脂を使用することで、耐衝撃性に優れた樹脂積層体を得ることができる。
【0036】
【0037】
具体的には、ポリカーボネート樹脂(a1)として、芳香族ポリカーボネート樹脂(例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロンS-2000、ユーピロンS-1000、ユーピロンE-2000)等が使用可能であるが、これに限定されない。
【0038】
また、近年、前面板にも曲げ加工を行うような要望が増えていることから、ポリカーボネート樹脂(al)として、下記一般式(5)で表わされる1価フェノールを末端停止剤とすることが好ましい。
【0039】
【0040】
式中、R5は、炭素数8~36のアルキル基、炭素数8~36のアルケニル基を表し、R6はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基を表し、nは0~4の整数であり、ここで、前記置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基である。なお、本明細書において、「アルキル基」および「アルケニル基」は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、置換基を有していてもよい。
【0041】
より好ましくは、一般式(5)で表わされる1価フェノールは、下記一般式(6)で表される。
【0042】
【0043】
式中、R5は、炭素数8~36のアルキル基または炭素数8~36のアルケニル基を表す。
【0044】
一般式(5)または一般式(6)におけるR5の炭素数は、特定の数値範囲内であることがより好ましい。具体的には、R5の炭素数の上限値として36が好ましく、22がより好ましく、18が特に好ましい。また、R5の炭素数の下限値として、8が好ましく、12がより好ましい。
【0045】
一般式(5)または一般式(6)におけるR5の炭素数の上限値が適当であると、1価フェノール(末端停止剤)の有機溶剤溶解性が高くなる傾向があり、ポリカーボネート樹脂製造時の生産性が高くなることから好ましい。
【0046】
一例として、R5の炭素数が36以下であれば、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性が高く、経済性も良い。R5の炭素数が22以下であれば、1価フェノールは、特に有機溶剤溶解性に優れており、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性を非常に高くすることができ、経済性も向上する。
【0047】
一般式(5)または一般式(6)におけるR5の炭素数の下限値が適当であると、ポリカーボネート樹脂のガラス転移点が高すぎるということにならず、好適な熱成形性を有することから好ましい。
【0048】
例えば一般式(6)においてR5として、炭素数16のアルキル基である1価フェノール(末端停止剤)を使用した場合、ガラス転移温度、溶融流動性、成形性、耐ドローダウン性、ポリカーボネート樹脂製造時の1価フェノールの溶剤溶解性が優れており、本発明におけるポリカーボネート樹脂に使用する末端停止剤として、特に好ましい。
【0049】
一般式(5)または一般式(6)で示される1価フェノール(末端停止剤)の中でも、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、パラヒドロキシ安息香酸2-ヘキシルデシルエステルのいずれかもしくは両方を末端停止剤として使用することが特に好ましい。
【0050】
ポリカーボネート樹脂(a1)の重量平均分子量は、15,000~75,000であることが好ましく、20,000~70,000であることがより好ましく、20,000~65,000であることがさらに好ましい。ポリカーボネート樹脂(a1)の重量平均分子量が15,000以上であると、耐衝撃性が高くなりうることから好ましい。一方、重量平均分子量が75,000以下であると、基材層を少ない熱源で形成できる、成形条件が高温になった場合でも熱安定性が維持できることから好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0051】
基材層に含まれるポリカーボネート樹脂(a1)は、1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0052】
基材層中のポリカーボネート樹脂(a1)の含有量は、基材層の全質量に対して、75質量%以上であることが好ましく、耐衝撃性が向上する観点から、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
[添加剤]
基材層は、添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0054】
添加剤としては、防眩性積層体において通常使用されるものを使用することができる。添加剤としては、例えば、抗酸化剤、抗着色剤、抗帯電剤、離型剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、樹脂改質剤、相溶化剤、有機粒子や無機粒子のような強化材などが挙げられる。
【0055】
添加剤の量は、基材層の全質量に対して、0~10質量%であることが好ましく、0~7質量%であることがより好ましく、0~5質量%であることが特に好ましい。
【0056】
添加剤と樹脂とを混合する方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法などを用いることができる。
【0057】
[基材層の構成]
基材層の厚みは、0.3~10mmであることが好ましく、0.3~5mmであることがより好ましく、0.3~3.5mmであることが特に好ましい。
【0058】
<高硬度樹脂層>
高硬度樹脂層は、高硬度樹脂を含む。その他、高硬度樹脂層は必要に応じて添加剤等がさらに含まれていてもよい。高硬度樹脂層は、基材層とハードコート層との間に設けられることにより、形状安定性が高い防眩性積層体を得ることができる。また、高硬度樹脂層は、防眩性積層体の硬度を高くする等の機能を有しうる。なお、本明細書において、高硬度樹脂とは、基材となるポリカーボネート樹脂よりも硬度の高い樹脂であり、鉛筆硬度がHB以上、好ましくはHB~3H、より好ましくはH~3H、さらに好ましくは2H~3Hの樹脂を意味する。なお、高硬度樹脂層の鉛筆硬度は、JIS K 5600-5-4:1999に準拠した鉛筆ひっかき硬度試験にて評価した結果である。具体的には、ハードコート層の表面に対して角度45度、荷重750gで次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、きず跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価する。
【0059】
[高硬度樹脂]
高硬度樹脂としては、特に制限されないが、樹脂(B1)~樹脂(B6)からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。なお、樹脂(B1)~樹脂(B6)は、複数種の樹脂を含む樹脂組成物の場合であっても、樹脂(B1)~樹脂(B6)と称することがある。
【0060】
(樹脂(B1))
樹脂(B1)は、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含む共重合樹脂である。この際、前記樹脂(B1)(共重合樹脂)は、他の構成単位をさらに有していてもよい。なお、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合が前記共重合樹脂の全構成単位の90~100モル%であり、好ましくは95~100モル%であり、より好ましくは98~100モル%である。また、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が前記共重合樹脂の全構成単位の65~80モル%である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、メタクリルおよび/またはアクリルを示す。
【0061】
【0062】
式中、R1は水素原子またはメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0063】
またR2は炭素数1~18のアルキル基であり、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基などが挙げられる。これらのうち、R2は、メチル基、エチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0064】
なお、R2がメチル基、エチル基である場合、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)は(メタ)アクリル酸エステル構成単位となり、R1がメチル基かつR2がメチル基である場合、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)はメタクリル酸メチル構成単位となる。
【0065】
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)は、樹脂(B1)中に1種のみが含まれていても、2種以上含まれていてもよい。
【0066】
【0067】
式中、R3は水素原子またはメチル基であり、水素原子であることが好ましい。
【0068】
R4は炭素数1~4の炭化水素基で置換されていてもよいシクロヘキシル基であり、置換基を有さないシクロヘキシル基であることが好ましい。なお、本明細書中において、「炭化水素基」は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、置換基を有していてもよい。
【0069】
R3が水素原子であり、R4がシクロヘキシル基である場合、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)はビニルシクロヘキサン構成単位となる。
【0070】
一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)は、樹脂(B1)中に1種のみが含まれていても、2種以上含まれていてもよい。
【0071】
前記他の構成単位としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合した後に該芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化して樹脂(B1)を製造する過程において生じる、水素化されていない芳香族二重結合を含む芳香族ビニルモノマー由来の構成単位などが挙げられる。具体的な他の構成単位としては、スチレン構成単位が挙げられる。
【0072】
他の構成単位は、樹脂(B1)中に1種のみが含まれていても、2種以上含まれていてもよい。
【0073】
前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合は、前記樹脂(B1)(共重合樹脂)の全構成単位の合計に対して90~100モル%であり、好ましくは95~100モル%であり、より好ましくは98~100モル%である。
【0074】
また、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の含有量は、前記樹脂(B1)(共重合樹脂)の全構成単位に対して、65~80モル%であり、好ましくは70~80モル%である。(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の含有量が65モル%以上であると、基材層との密着性や表面硬度に優れた樹脂層を得ることができる。一方、(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の含有量が80モル%以下であると、防眩性積層体の吸水による反りが発生しづらいことから好ましい。
【0075】
また、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)の含有量は、樹脂(B1)(共重合樹脂)の全構成単位に対して、好ましくは20~35モル%であり、より好ましくは20~30モル%である。脂肪族ビニル構成単位(b)の含有量が20モル%以上であると、高温高湿下でのそりを防ぐことができることから好ましい。一方、脂肪族ビニル構成単位(b)の含有量が35モル%以下であると、基材との界面での剥離を防ぐことができることから好ましい。
【0076】
前記他の構成単位の含有量は、樹脂(B1)(共重合体)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0077】
なお、本明細書において、「共重合体」は、ランダム、ブロック、および交互共重合体のいずれの構造であってもよい。
【0078】
樹脂(B1)の重量平均分子量は、特に制限はないが、強度および成型性の観点から、50,000~400,000であることが好ましく、70,000~300,000であることがより好ましい。
【0079】
樹脂(B1)のガラス転移温度は、110~140℃であることが好ましく、110~135℃であることがより好ましく、110~130℃であることが特に好ましい。ガラス転移点が110℃以上であると、樹脂シートが熱環境あるいは湿熱環境において変形や割れを生じることが少ないことから好ましい。一方、140℃以下であると、鏡面ロールや賦形ロールによる連続式熱賦形、あるいは鏡面金型や賦形金型によるバッチ式熱賦形によって成形する場合に加工性に優れることから好ましい。なお、本発明におけるガラス転移温度とは、示差走査熱量測定装置を用い、試料10mg、昇温速度10℃/分で測定し中点法で算出したときの温度である。
【0080】
具体的な樹脂(B1)として、例えば、オプティマス7500、6000(三菱ガス化学製)が挙げられる。なお上述した樹脂(B1)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
樹脂組成物(B1)の製造方法は、特に限定されないが、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと少なくとも1種の芳香族ビニルモノマーとを重合した後、該芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化して得られたものが好適である。
【0082】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、特に制限されないが、スチレン、α-メチルスチレン、p-ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレン、クロロスチレン、およびそれらの誘導体などが挙げられる。これらのうち、芳香族ビニルモノマーはスチレンであることが好ましい。
【0083】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーの重合には、既知の方法を用いることができる。例えば、塊状重合法や溶液重合法などにより製造することができる。
【0084】
塊状重合法は、上記モノマー、重合開始剤を含むモノマー組成物を完全混合槽に連続的に供給し、100~180℃で連続重合する方法などにより行われる。上記モノマー組成物は、必要に応じて連鎖移動剤を含んでもよい。
【0085】
前記重合開始剤としては、特に限定されないが、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、過酸化ベンゾイル、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t-ヘキシルプロポキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
前記連鎖移動剤としては、特に限定されないが、α-メチルスチレンダイマーが挙げられる。
【0087】
溶液重合法に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸エチル、イソ酪酸メチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;メタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーを重合した後の水素化反応に用いられる溶媒は、前記の重合溶媒と同じであっても異なっていてもよい。例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル、イソ酪酸メチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。
【0089】
上記のようにして(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合した後、該芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化することにより、樹脂(B1)が得られる。
【0090】
水素化の方法は特に限定されず、既知の方法を用いることができる。例えば、水素圧力3~30MPa、反応温度60~250℃でバッチ式あるいは連続流通式で行うことができる。温度を60℃以上であると、反応時間がかかり過ぎることがないことから好ましい。一方、反応温度が250℃以下であると、分子鎖の切断やエステル部位の水素化等の副反応が起こらないまたはほとんど起こらないことから好ましい。
【0091】
水素化反応に用いられる触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、コバル卜、ルテニウム、ロジウムなどの金属、またはそれら金属の酸化物もしくは塩もしくは錯体化合物を、カーボン、アルミナ、シリカ、シリカ.アルミナ、珪藻土などの多孔性担体に担持した固体触媒などが挙げられる。
【0092】
水素化反応により、芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合は、70%以上が水素化されることが好ましい。即ち、芳香族ビニルモノマー由来の構成単位中に含まれる芳香族二重結合の未水素化率は、30%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましく、5%未満であることがさらに好ましい。未水素化率が30%未満であると、透明性に優れた樹脂を得ることができることから好ましい。なお、未水素化部分の構成単位は、樹脂(B1)における他の構成単位となりうる。
【0093】
前記樹脂(B1)は、透明性を損なわない範囲で、他の樹脂をブレンドすることができる。すなわち、樹脂(B1)は、上述の共重合体および他の樹脂を含む樹脂組成物である。前記他の樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチル-スチレン共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、シクロオレフイン(コ)ポリマー樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合樹脂、各種エラストマーなどが挙げられる。
【0094】
(樹脂(B2))
樹脂(B2)は、前記樹脂(B1)を35~65質量%、好ましくは40~60質量%、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)を35~65質量%、好ましくは40~60質量%含む。また、前記スチレン-不飽和ジカルボン酸共重合体(C)が、スチレン系構成単位(c1)を65~90質量%、不飽和ジカルボン酸無水物構成単位(c2)を10~35質量%で含む。すなわち、樹脂(B2)は2種以上の樹脂を含む樹脂組成物である。なお、前記樹脂(B1)の含有量およびスチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)の含有量は、樹脂(B2)の全質量に対する含有量である。
【0095】
・樹脂(B1)
前記樹脂(B1)としては、上述のものが用いられる。この際、樹脂(B1)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
・スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)
スチレン-不飽和ジカルボン酸共重合体(C)は、スチレン系構成単位(c1)および不飽和ジカルボン酸無水物構成単位(c2)を含む。
【0097】
スチレン系構成単位(c1)
スチレン系単量体としては、特に限定されず、任意の既知のスチレン系単量体を用いることができる。スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、a-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、相溶性の観点からスチレンが特に好ましい。これらのスチレン系単量体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
スチレン系構成単位(c1)の含有量は、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)の全質量に対して、65~90質量%であり、好ましくは70~85質量%である。
【0099】
不飽和ジカルボン酸無水物構成単位(c2)
不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、特に制限されないが、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の酸無水物が挙げられる。これらのうち、スチレン系単量体との相溶性の観点から無水マレイン酸が好ましい。これらの不飽和ジカルボン酸無水物単量体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
不飽和ジカルボン酸無水物構成単位(c2)の含有量は、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)の全質量に対して、10~35質量%であり、好ましくは15~30質量%である。
【0101】
スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)の具体例としては、XIBOND140、XIBOND160、XIRAN SO23110、XIRAN SO26080(Polyscope社製)が挙げられる。これらのスチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
(樹脂(B3))
樹脂(B3)は、ビニル系単量体を含有する樹脂(D)を55~10質量%、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)を45~90質量%含む。また、前記スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)は、スチレン系構成単位(e1)を50~80質量%、不飽和ジカルボン酸構成単位(e2)を10~30質量%、ビニル系構成単位(e3)を5~30質量%で含む。すなわち、樹脂(B3)は2種以上の樹脂を含む樹脂組成物である。なお、前記ビニル系単量体を含有する樹脂(D)の含有量およびスチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)の含有量は、樹脂(B3)の全質量に対する含有量である。
【0103】
・ビニル系単量体を含有する樹脂(D)
ビニル系単量体を含有する樹脂(D)としては、特に制限されないが、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のビニル系単量体を単独重合したものが挙げられる。これらのうち、ビニル系単量体を含有する樹脂(D)としては、構成単位として、メタクリル酸メチルを含むことが好ましい。ビニル系単量体を含有する樹脂(D)は、前記構成単位を1種用いた重合体であってもよいし、2種以上を組み合わせて用いた共重合体であってもよい。
【0104】
ビニル系単量体を含有する樹脂(D)の重量平均分子量は、10,000~500,000であることが好ましく、50,000~300,000であることがより好ましい。
【0105】
上述のビニル系単量体を含有する樹脂(D)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
・スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)
スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)は、スチレン系構成単位(e1)、不飽和ジカルボン酸無水物構成単位(e2)、およびビニル系構成単位(e3)を含む。
【0107】
スチレン系構成単位(e1)
スチレン系単量体としては、特に限定されず、任意の既知のスチレン系単量体を用いることができる。スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、a-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、相溶性の観点からスチレンが特に好ましい。これらのスチレン系単量体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
スチレン系構成単位(e1)の含有量は、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)の全質量に対して、50~80質量%であり、好ましくは50~75質量%である。
【0109】
不飽和ジカルボン酸無水物構成単位(e2)
不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、特に制限されないが、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の酸無水物が挙げられる。これらのうち、ビニル系単量体との相溶性の観点から無水マレイン酸が好ましい。これらの不飽和ジカルボン酸無水物単量体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
不飽和ジカルボン酸無水物構成単位(e2)の含有量は、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)の全質量に対して、10~30質量%であり、好ましくは10~25質量%である。
【0111】
ビニル系構成単位(e3)
ビニル系単量体としては、特に制限されないが、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のビニル系単量体が挙げられる。これらのうち、ビニル系単量体を含有する樹脂(D)との相溶性の観点からメタクリル酸メチル(MMA)が好ましい。これらのビニル系単量体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
ビニル系構成単位(e3)の含有量は、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)の全質量に対して、5~30質量%であり、好ましくは7~27質量%である。
【0113】
スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)の重量平均分子量は、50,000~200,000であることが好ましく、80,000~200,000であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、ビニル系単量体を含有する樹脂(D)との相溶性が良好であり、耐熱性の向上効果に優れることから好ましい。
【0114】
スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)として、具体的には、レジスファイ R100、R200、R310(電気化学工業製)、デルペット980N(旭化成製)などが挙げられるが、これらに限定されない。上述のスチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
(樹脂(B4))
樹脂(B4)とは、スチレン構成単位を5~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を70~90質量%、N-置換型マレイミド構成単位を5~20質量%含む樹脂共重合体(G)、または樹脂共重合体(G)とスチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)とのアロイである。
【0116】
・樹脂共重合体(G)
樹脂共重合体(G)は、スチレン構成単位、(メタ)アクリル酸エステル構成単位、N-置換型マレイミド構成単位を含む。
【0117】
スチレン構成単位
スチレン系単量体としては、特に限定されず、任意の既知のスチレン系単量体を用いることができる。スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、a-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、相溶性の観点からスチレンが特に好ましい。これらのスチレン系単量体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
スチレン構成単位の含有量は、樹脂(B4)(樹脂共重合体(G))の全質量に対して、5~20質量%であり、好ましくは5~15質量%であり、より好ましくは5~10質量%である。
【0119】
(メタ)アクリル酸エステル構成単位
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されず、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
(メタ)アクリル酸エステル構成単位の含有量は、樹脂(B4)(樹脂共重合体(G))の全質量に対して、60~90質量%であり、好ましくは70~90質量%であり、より好ましくは80~90質量%である。
【0121】
N-置換型マレイミド構成単位
N-置換型マレイミド単量体としては、特に制限されないが、N―フェニルマレイミド、N―クロロフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-ニトロフェニルマレイミド、N-トリブロモフェニルマレイミドなどのN-アリールマレイミド等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸構成単位との相溶性の観点からN-フェニルマレイミドが好ましい。なお、これらのN-置換型マレイミド単量体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0122】
N-置換型マレイミド構成単位の含有量は、樹脂(B4)(樹脂共重合体(G))の全質量に対して、5~20質量%であり、5~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。
【0123】
樹脂共重合体(G)の重量平均分子量は、50,000~250,000であることが好ましく、100,000~200,000がより好ましい。
【0124】
樹脂共重合体(G)の具体例としては、デルペットPM120N(旭化成ケミカル社製)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
樹脂共重合体(G)の製造方法は、特に限定されないが、溶液重合、塊状重合などによって製造することができる。
【0126】
・アロイ
前記アロイは、前記樹脂共重合体(G)と前記スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)とのアロイである。
【0127】
この際、樹脂共重合体(G)とスチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)とは、ガラス転移温度が高いものどうしのアロイとすることが好ましい。
【0128】
アロイの製造方法としては、特に制限されないが、スクリュー径26mmの2軸押出機を用い、シリンダー温度240℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化する方法等が挙げられる。
【0129】
(樹脂(B5))
樹脂(B5)は、一般式(3)で表される構成単位(H)を含む。樹脂(B5)は、一般式(4)で表される構成単位(J)をさらに含む共重合体であることが好ましい。また、前記重合体は、他の構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0130】
【0131】
一般式(3)で表される構成単位(H)の含有量は、樹脂(B5)の全構成単位に対して、50~100モル%であることが好ましく、60~100モル%であることがより好ましく、70~100モル%であることがさらに好ましい。
【0132】
【0133】
一般式(4)で表される構成単位(J)の含有量は、樹脂(B5)の全構成単位に対して、0~50モル%であることが好ましく、0~40モル%であることがより好ましく、0~30モル%であることがさらに好ましい。
【0134】
他の構成単位の含有量は、樹脂(B5)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0135】
構成単位(H)と構成単位(J)の合計含有量は、樹脂(B5)の全構成単位に対して、90~100モル%であることが好ましく、95~100モル%であることがより好ましく、98~100モル%であることがさらに好ましい。
【0136】
樹脂(B5)の重量平均分子量は、15,000~75,000が好ましく、20,000~70,000がより好ましく、25,000~65,000が特に好ましい。
【0137】
樹脂(B5)の具体例としては、ユーピロン KH3410UR、KH3520UR、KS3410UR(三菱エンジニアリングプラスチック社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。上述の樹脂(B5)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
樹脂組成物(B5)の製造方法は、特に限定されないが、モノマーとしてビスフェノールCを使用することを除いて上述したポリカーボネート樹脂(a1)の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0139】
(樹脂(B6))
樹脂(B6)は、ビニル系単量体を含有する樹脂(D)を35~65質量%、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)を35~65質量%含む。また、前記スチレン-不飽和ジカルボン酸共重合体(C)が、スチレン系構成単位(c1)を65~90質量%、不飽和ジカルボン酸無水物構成単位(c2)を10~35質量%で含む。すなわち、樹脂(B6)は2種以上の樹脂を含む樹脂組成物である。なお、前記ビニル系単量体を含有する樹脂(D)の含有量およびスチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)の含有量は、樹脂(B6)の全質量に対する含有量である。
【0140】
・ビニル系単量体を含有する樹脂(D)
ビニル系単量体を含有する樹脂(D)としては、上記樹脂(B3)に記載のものと同様のものが用いられる。当該ビニル系単量体を含有する樹脂(D)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0141】
・スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)
スチレン-不飽和ジカルボン酸共重合体(C)としては、上記樹脂(B2)に記載のものと同様のものが用いられる。当該スチレン-不飽和ジカルボン酸共重合体(C)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0142】
高硬度樹脂として、上述の樹脂(B1)~樹脂(B6)からなる群から選択される少なくとも1つを含むことで高温高湿下での形状安定性により優れる防眩性積層体が得られうることから好ましい。
【0143】
[添加剤]
高硬度樹脂層は、添加剤を含んでいてもよい。
【0144】
前記添加剤としては、特に制限されず、防眩性積層体において通常使用されるものを使用することができる。具体例としては、抗酸化剤、抗着色剤、抗帯電剤、離型剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、樹脂改質剤、相溶化剤、有機粒子や無機粒子のような強化材などが挙げられる。
【0145】
添加剤の量は、高硬度樹脂層の全質量に対して、0~10質量%であることが好ましく、0~7質量%であることがより好ましく、0~5質量%であることが特に好ましい。
【0146】
添加剤と樹脂を混合する方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法などを用いることができる。
【0147】
[高硬度樹脂層の構成]
高硬度樹脂層の厚さは、好ましくは10~250μmであり、より好ましくは30~200μmであり、特に好ましくは60~150μmである。高硬度樹脂層の厚さが10μm以上であると、表面硬度が高くなることから好ましい。一方、高硬度樹脂層の厚さが250μm以下であると耐衝撃性が高くなることから好ましい。
【0148】
[高硬度樹脂層の基材層への積層]
上述したとおり、基材層と高硬度樹脂層の間にはさらなる層が存在していてもよいが、ここでは、基材層上に高硬度樹脂層を積層する場合について説明する。
【0149】
基材層と高硬度樹脂層の合計厚みは、好ましくは100~3500μm、より好ましくは100~3000μm、さらに好ましくは500~3000μm、特に好ましくは1200~3000μmである。合計厚みが100μm以上であると、シートの剛性を保つことができることから好ましい。一方、合計厚みが3500μm以下であると、シートの下にタッチパネルを設置する場合等にタッチセンサーの感度が悪くなるのを防ぐことができることから好ましい。
【0150】
基材層および高硬度樹脂層の合計厚みに占める基材層の厚みの割合は、好ましくは75%~99%であり、より好ましくは80~99%であり、特に好ましくは85~99%である。上記範囲とすることにより、硬度と耐衝撃性を両立できる。
【0151】
高硬度樹脂層を基材層に積層する方法としては、特に限定されず、個別に形成した基材層と高硬度樹脂層とを重ね合わせて、両者を加熱圧着する方法;個別に形成した基材層と高硬度樹脂層とを重ね合わせて、両者を接着剤によって接着する方法;基材層と高硬度樹脂層とを共押出成形する方法;予め形成しておいた高硬度樹脂層に、基材層をインモールド成形して一体化する方法等が挙げられる。これらのうち、製造コストや生産性の観点から、共押出成形する方法が好ましい。
【0152】
共押出の方法は特に限定されない。例えば、フィードブロック方式では、フィードブロックで基材層の片面上に高硬度樹脂層を配置し、Tダイでシート状に押し出した後、成形ロールを通過させながら冷却して所望の積層体を形成する。また、マルチマニホールド方式では、マルチマニホールドダイ内で基材層の片面上に高硬度樹脂層を配置し、シート状に押し出した後、成形ロールを通過させながら冷却して所望の積層体を形成する。
【0153】
<ハードコート層>
ハードコート層としては、特に制限されないが、アクリル系ハードコートであることが好ましい。なお、本明細書において、「アクリル系ハードコート」とは、重合基として(メタ)アクリロイル基を含有するモノマーまたはオリゴマーまたはプレポリマーを重合して架橋構造を形成した塗膜を意味する。なお、ハードコート層はUV吸収剤をさらに含んでいてもよい。
【0154】
前記ハードコート層は、有機粒子および無機粒子を含まないことが好ましい。有機粒子および無機粒子を含まないことにより、耐擦傷性が向上しうる。なお、後述する通り、ハードコート層の防眩処理を、型を用いた転写により行うことで、有機粒子および無機粒子を含まずに凹凸形状を有するハードコート層を形成することができる。
【0155】
(メタ)アクリル系モノマーの含有量としては、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、および表面改質剤の総質量に対して、2~98質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。
【0156】
また、(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量としては、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、および表面改質剤の総質量に対して、2~98質量%であることが好ましく、50~95質量%であることがより好ましく、60~80質量%であることがさらに好ましい。
【0157】
さらに、表面改質剤の含有量としては、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、および表面改質剤の総質量に対して、0~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、2~5質量%であることがさらに好ましい。
【0158】
また、光重合剤を含む場合には、前記光重合剤の含有量は、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、および表面改質剤の総和100質量部に対して、0.001~7質量部であることが好ましく、0.01~5質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、光重合開始剤とは光ラジカル発生剤を指す。
【0159】
[(メタ)アクリル系モノマー]
(メタ)アクリル系モノマーとしては、分子内に(メタ)アクリロイル基が官能基として存在するものであれば使用できる。具体的には、1官能モノマー、2官能モノマー、または3官能以上のモノマーが挙げられる。
【0160】
1官能モノマーとしては(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが例示できる。
【0161】
また、2官能および/または3官能以上の(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリルプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物トリアクリレート、グリセリンプロピレンオキシド付加物トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が例示できる。
【0162】
ハードコート層は、(メタ)アクリル系モノマーを1種類または2種類以上含んでいてよい。
【0163】
[(メタ)アクリル系オリゴマー]
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、2官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、「多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」とも称する)、2官能以上の多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、「多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー」とも称する)、2官能以上の多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、「多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー」とも称する)等が挙げられる。
【0164】
前記多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物;ポリオール類をポリイソシアネートと反応させて得られるイソシアネート化合物と1分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応生成物等が挙げられる。
【0165】
ウレタン化反応に用いられる1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0166】
ウレタン化反応に用いられるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのうち芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート(例えば水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネートなどのジまたはトリのポリイソシアネート、あるいはジイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネートが挙げられる。
【0167】
ウレタン化反応に用いられるポリオール類としては、一般的に芳香族、脂肪族および脂環式のポリオールのほか、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が使用される。
【0168】
通常、脂肪族および脂環式のポリオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブチリオン酸、グリセリン、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0169】
ポリエステルポリオールとしては、上述したポリオール類とポリカルボン酸との脱水縮合反応により得られるものが挙げられる。ポリカルボン酸の具体的な化合物としては、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、トリメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。これらのポリカルボン酸は、無水物であってもよい。
【0170】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリアルキレングリコールのほか、上述したポリオール類またはフェノール類とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリオキシアルキレン変性ポリオールが挙げられる。
【0171】
前記多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル酸、ポリカルボン酸およびポリオールを使用した脱水縮合反応により得られる。脱水縮合反応に用いられるポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。これらのポリカルボン酸は、無水物であってもよい。また、脱水縮合反応に用いられるポリオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブチリオン酸、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0172】
前記多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる。ポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0173】
ハードコート層は、(メタ)アクリル系オリゴマーを1種類または2種類以上含んでいてよい。
【0174】
[表面改質剤]
表面改質剤とは、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水撥油剤、無機粒子、有機粒子などのハードコート層の表面性能を変えるものである。
【0175】
前記レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリアルキルシロキサン、アルキル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、変性ポリエーテル、シリコン変性アクリルなどが挙げられる。
【0176】
前記帯電防止剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステルモノグリセライド、グリセリン脂肪酸エステル有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0177】
前記界面活性剤および前記撥水撥油剤としては、例えば、含フッ素基・親油性基含有オリゴマー、含フッ素基・親水性基・親油性基・UV反応性基含有オリゴマーなどのフッ素を含有した界面活性剤および撥水撥油剤が挙げられる。
【0178】
前記無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、シリコン粒子銀粒子、ガラス粒子などが挙げられる。
【0179】
前記有機粒子としては、例えば、アクリル粒子、シリコン粒子などが挙げられる。
【0180】
ハードコート層は、表面改質剤を1種類または2種類以上含んでいてよい。
【0181】
[光重合開始剤]
光重合開始剤としては、単官能光重合開始剤が挙げられる。具体的には、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン[ダロキュアー2959:メルク社製];α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン[ダロキュアー1173:メルク社製];メトキシアセトフェノン、2,2'-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン[イルガキュア-651]、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトンなどのアセトフェノン系開始剤;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系開始剤;その他、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナートなどを例示することができる。これらの光重合開始剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0182】
[UV吸収剤]
UV吸収剤としては、例えばヒドロキシフェニルトリアジン系やベンゾトリアゾール系、ベンゴフェノン系が挙げられる。UV吸収剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0183】
[ハードコート層の構成]
ハードコート層の膜厚としては、1~40μmであることが好ましく、2~10μmであることがより好ましい。ハードコート層の膜厚が1μm以上であると、十分な硬度を得ることができることから好ましい。一方、ハードコート層の膜厚が40μm以下であると、曲げ加工時のクラックの発生を抑制することができることから好ましい。なお、ハードコート層の膜厚は、断面を顕微鏡等で観察し、塗膜界面から表面までを実測することにより測定可能である。
【0184】
ハードコート層表面の鉛筆硬度は、HB以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、2H~3Hであることが特に好ましい。なお、ハードコート層の鉛筆硬度は、JIS K 5600-5-4:1999に準拠した鉛筆ひっかき硬度試験にて評価した結果である。具体的には、ハードコート層の表面に対して角度45度、荷重750gで次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、きず跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価した。
【0185】
ハードコート層は凹凸形状を有することにより、防眩性および触り心地に優れる防眩性積層体を得ることができる。具体的には、ハードコート層は、算術平均粗さ(Ra)、最大山高さ(Rp)、最大谷深さ(Rv)、およびスキューネス(Rsk)が、下記式(1)~(3)を満たす。なお、本明細書において、算術平均粗さ(Ra)、最大山高さ(Rp)、最大谷深さ(Rv)、およびスキューネス(Rsk)は、JIS B0601 1994 カットオフ0.8によって測定される。
【0186】
【0187】
前記式(1)に関し、算術平均粗さ(Ra)は防眩性の指標となる。Raが0.03以下であると、光散乱が不足して防眩性が不十分となる。一方、Raが0.10以上であると、光散乱が過度になることで白色化し、質感も悪くなる。式(1)は0.035<Ra<0.095を満たすことがより好ましく、0.040<Ra<0.92を満たすことがさらに好ましい。
【0188】
前記式(2)に関し、Rp/Rvは、ハードコート層の凹凸形状が、山の高さよりも谷が深いことを示し、防眩性と指滑り性のバランスを保つ指標となる。Rp/Rvが0.15であると、防眩性が低下する。他方、Rp/Rvが0.30以上であると、指滑り性が悪化する。式(2)は0.16<Rp/Rv<0.29を満たすことがより好ましく、0.17<Rp/Rv<0.28を満たすことがさらに好ましい。
【0189】
前記式(3)に関し、スキューネス(Rsk)は、山部分と谷部分の対称性を表す指標である。なお、スキューネス(Rsk)がマイナスの値になる場合、谷部分が多いことを示す。スキューネス(Rsk)が式(3)の範囲にあることにより、凹凸形状が山部分より谷部分が多くなり、防眩性と指滑り性のバランスを保つことができる。式(3)は―4.8<Rsk<-2.5を満たすことがより好ましい。
【0190】
また、ハードコート層は、接触子として触覚接触子を使用し、荷重50g、走査速度10mm/秒、走査距離90mmで測定された動摩擦係数(μk)が下記式(4)を満たす。なお、通常使用されるフェルトや針状の接触子とは異なり、本測定方法で使用する触覚接触子は人の指を模した接触子であるため、指滑り性を定量的に評価することができる。なお、前記動摩擦係数(μK)は、具体的には実施例に記載の方法で測定する。
【0191】
【0192】
前記式(4)に関し、動摩擦係数(μk)は指滑り性の指標である。動摩擦係数(μk)が式(4)の範囲にあることにより、適度な指滑り性を得ることができる。
【0193】
ハードコート層が上記式(1)~(3)を満たすことにより、主に防眩性に優れた凹凸形状とすることができる。また、ハードコート層が上記式(4)を満たすことにより主に優れた指滑り性とすることができる。その結果、防眩性および触り心地に優れる防眩性積層体を得ることができる。
【0194】
一実施形態において、ハードコート層の波長550nmにおける正反射光を含む反射率(SCI550)および正反射光を除いた反射率(SCE550)が下記式(5)を満たすことが好ましい。なお、本明細書において、正反射光を含む反射率(SCI550)および正反射光を除いた反射率(SCE550)は分光色彩計SD7000(日本電色製)を用いて測定される。なお、裏面を黒スプレーにて黒色処理することにより、裏面反射を抑制することができ、表面の反射のみを測定することが可能になる。
【0195】
【0196】
前記式(5)に関し、SCE550/SCI550は映り込み防止性能の指標である。SCE550/SCI550が0.25超であると、好適に光を散乱させることができ防眩性が高くなることから好ましい。一方、SCE550/SCI550が0.60未満であると、光散乱が過度にならず白色化が防止でき、好適な質感が得られることから好ましい。
【0197】
[ハードコート層の形成方法]
ハードコート層の形成方法は特に限定されないが、例えば、ハードコート層の下に位置する層(例えば高硬度樹脂層)上にハードコート液を塗布した後、光重合させることにより形成することができる。
【0198】
ハードコート液(重合性組成物、反応組成物)を塗布する方法は特に限定されず、既知の方法を用いることができる。例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビートコート法、捌け法などが挙げられる。
【0199】
光重合における光照射に用いられるランプとしては、光波長420nm以下に発光分布を有するものが用いられる。その例としては低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが挙げられる。この中でも、高圧水銀灯またはメタルハライドランプは開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光し、得られる高分子の粘弾性的性質を架橋により低下させるような短波長の光や、反応組成物を加熱蒸発させるような長波長の光を多く発光しないために好ましい。
【0200】
上記ランプの照射強度は、得られるポリマーの重合度を左右する因子であり、目的製品の性能毎に適宜制御される。通常のアセトフェノン基を有する開裂型の開始剤を配合した場合、照度は0.1~300mW/cm2の範囲が好ましい。特に、メタルハライドランプを用いて、照度を10~40mW/cm2とすることが好ましい。
【0201】
光重合反応は、空気中の酸素または反応性組成物中に溶解する酸素により阻害される。そのため、光照射は酸素による反応阻害を消去し得る手法を用いて実施することが望ましい。そのような手法の1つとして、反応性組成物をポリエチレンテレフタレートやテフロン製のフィルムによって覆って酸素との接触を断ち、フィルムを通して光を反応性組成物へ照射する方法がある。また、窒素ガスや炭酸ガスのような不活性ガスにより酸素を置換したイナート雰囲気下で、光透過性の窓を通して組成物に光を照射してもよい。
【0202】
光照射をイナート雰囲気下で行う場合、その雰囲気酸素濃度を低レベルに保つために、常に一定量の不活性ガスが導入される。この不活性ガスの導入により、反応性組成物表面に気流が発生し、モノマー蒸発が起こる。モノマー蒸発のレベルを抑制するためには、不活性ガスの気流速度は、不活性ガス雰囲気下を移動するハードコート液が塗布された積層体に対する相対速度として1m/sec以下であることが好ましく、0.1m/sec以下であることがより好ましい。気流速度を上記範囲にすることにより、気流によるモノマー蒸発は実質的に抑えられる。
【0203】
ハードコート層の密着性を向上させる目的で、塗布面に前処理を行うことがある。処理例として、サンドブラスト法、溶剤処理法、コロナ放電処理法、クロム酸処理法、火炎処理法、熱風処理法、オゾン処理法、紫外線処理法、樹脂組成物によるプライマー処理法などの既知の方法が挙げられる。
【0204】
ハードコート層への凹凸の形成方法(防眩処理)としては、特に制限されないが、型を用いる方法が好ましい。例えば、まず高硬度樹脂層と、反応性組成物を塗布して得られた塗膜と、型とをこの順に積層させる。次いで、反応性組成物を光重合し、型を脱型する方法が挙げられる。反応性組成物の光重合体(ハードコート層)は、型との接触面において、型の粗面が反映された形状を有することとなる。すなわち、ハードコート層の防眩処理を、型を用いた転写により行うという方法である。
【0205】
前記型は、UV光を透過するものであれば特に制限はなく、ガラス、透明樹脂等が用いられる。一実施形態において、前記型は、透明フィルムと、粗面を有する透明樹脂とが積層された型が挙げられる。前記透明フィルムとしては、PETフィルムが挙げられる。前記粗面を有する透明樹脂としては、アクリル樹脂等が挙げられる。この際、前記透明樹脂の粗面は、特に制限されず、透明樹脂中に粒子(有機粒子、無機粒子等)を添加して形成されたものであってもよいし、透明樹脂をエッチングして形成したものであってもよいし、透明樹脂を印刷し硬化して形成したものであってもよい。粗面の形状は特に制限されないが、液晶パネル等の用途に用いる観点から、柄目であることが好ましい。使用する型の種類(材料、表面のヘーズ、厚さ、形状等)、添加する粒子の添加量等を制御することで、ハードコート層の表面(凹凸形状)を制御することができる。これにより、上述の式(1)~(4)を満たすハードコート層を形成することができる。また、好ましくはさらに上述の式(5)を満たすハードコート層を形成することができる。
【0206】
上述のハードコート層の形成方法のうち、柄目付きPETフィルムを圧着して凹凸形状を転写することが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態によれば、防眩性積層体の製造方法が提供される。この際、前記製造方法は、ハードコート層の表面が、柄目付きPETフィルムを圧着して凹凸形状を転写する工程を含む。なお、柄目付きPETフィルムとしては、例えば、ユニチカ製エンブレットのPTHやPTHAやPTHZ、ダイセル製低ギラツキAGフィルムのPF11やPF23などを用いることができる。
【0207】
<防眩性積層体の物性>
一実施形態において、防眩性積層体は、形状安定性が高いことが好ましい。具体的には、温度85℃で相対湿度85%の環境下に120時間保持した後の反りの変化量が350μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましく、175μm以下であることがさらに好ましく、75μm以下であることが特に好ましい。反りの変化量が350μm以下であると、高温高湿環境下であっても好適に使用できることから好ましい。なお、高い形状安定性は、高硬度樹脂層を用いることによって得ることができる。基材層およびハードコート層の間に高硬度樹脂層が介在することで、高温高湿環境であっても防眩性積層体の形状が安定する。なお、基材層およびハードコート層の材料、基材層および高硬度樹脂層間のガラス転移温度(Tg)の差、硬度の差、高硬度樹脂層およびハードコート層間のガラス転移温度(Tg)の差、硬度の差等を適宜変更することによっても形状安定性を制御することができる。
【0208】
<用途>
上述防眩性積層体は、防眩性および触り心地に優れることから、上述の通り液晶面の保護板または前面板等に使用される。一実施形態おいて、防眩性積層体を含む、車載用表示装置が提供される。また、別の井実施形態において、防眩性積層体を含む、タッチパネル前面保護板が提供される。さらに、別の一実施形態において、OA機器用、携帯電子機器用、またはテレビ用の前面板が提供される。
【実施例】
【0209】
以下の本発明の実施例を示すが、本発明は実施例の様態に制限されるものではない。
【0210】
<表面粗さ測定>
株式会社東京精密製の表面粗さ測定機「SURFCOM 480A」を用いて、凹凸面を有するハードコート層の表面をJIS B0601 1994に準拠して、算術平均粗さ(Ra)、最大山高さ(Rp)、最大谷深さ(Rv)、スキューネス(Rsk)を以下の条件で測定した。
【0211】
[表面粗さ測定条件]
カットオフ値:0.8mm
評価長さ:カットオフ値の5倍長さ
触針の送り速さ:0.3mm/s
予備長さ:カットオフ値の2倍
【0212】
<動摩擦係数測定>
トリニティラボ製静動摩擦測定機「TL201Tt」を用いて、ハードコート層表面の動摩擦係数(μk)を以下の条件で測定した。
【0213】
[動摩擦係数測定条件]
接触子:触覚接触子
荷重:50g
走査速度:10mm/s
走査距離:90mm
【0214】
<反射率測定>
日本電色製分光色彩計「SD7000」を用いて、ハードコート層の正反射光を含む反射率(SCI)と正反射光を除いた反射率(SCE)を以下の条件で測定した。それぞれ波長550nmの反射率をSCI550、SCE550とした。裏面は、裏面の反射を抑制するために黒色カラースプレーで黒色処理を実施した。
【0215】
[反射率測定条件]
光源・視野:D65/2°
測定径:φ8mm(MAV)
照明、受光条件:di 8°(SCI)、de 8°(SCE)
【0216】
<SW硬度>
防眩性積層体の凹凸形状を有するハードコート層に対し、日本スチールウール製のスチールウール♯0000を使用して、100g/cm2荷重で15往復した際の傷つき具合を目視観察で10段階評価した。RANK1~RANK10で記載した。なお、測定は2度行い、異なる結果となる場合にはその範囲を測定結果とした。
【0217】
RANK1:傷なし(無機ガラスと同等)
RANK2:傷1~5本
RANK3:傷6~10本
RANK4:傷11~15本
RANK5:傷16~20本
RANK6:傷21~25本
RANK7:傷26~30本
RANK8:傷31~40本
RANK9:傷41本以上(ポリメタクリル酸と同等)
RANK10:傷41本以上(ポリカーボネートと同等)
【0218】
<形状安定性>
試験片(防眩性積層体)を100mm×60mmに切り出した。切り出した試験片を2点支持型のホルダーにセットして温度23%、相対湿度50%に設定した環境試験機に24時間以上投入して状態調整した後、反りを測定した(処理前)。次に試験片をホルダーにセットして温度85℃、相対湿度85%に設定した環境試験機の中に投入し、その状態で120時間保持した。更に温度23%、相対湿度50%に設定した環境試験機の中にホルダーごと移動し、その状態で4時間保持後に再度反りを測定した(処理後)。反りの測定は、電動ステージ具備の3次元形状測定機(KEYENCE製KS-1000)を使用し、取り出した試験片を上に凸の状態で水平に設置し、1ミリ間隔でスキャンし中央部の盛り上がりをそりとして計測した。処理前後の反り量の差の絶対値、すなわち
|(処理後の反り量)-(処理前の反り量)|
を形状安定性として評価した。
【0219】
[実施例1]
<積層体>
軸径35mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、全押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結されたTダイとを有する多層押出装置を用いて合成樹脂積層体を成形した。軸径35mmの単軸押出機に高硬度樹脂(B1)として三菱ガス化学製Optimas7500を連続的に導入し、シリンダー温度240℃、吐出速度2.6kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロンS-1000)を連続的に導入し、シリンダー温度280℃、吐出速度50.0kg/hで押し出した。全押出機に連結されたフィードブロックは2種2層の分配ピンを備え、温度270℃として高硬度樹脂(B1)とポリカーボネート樹脂を導入し積層した。その先に連結された温度270℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から温度120℃、130℃、190℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却し、高硬度樹脂(B1)層(高硬度樹脂層)とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体を得た。得られた積層体の厚みは1.0mm、高硬度樹脂(B1)層の厚みは中央付近で60μmであった。
【0220】
なお、高硬度樹脂(B1)として用いた三菱ガス化学製Optimas7500は、前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、前記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含む共重合樹脂である。この際、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合が前記共重合樹脂の全構成単位の99モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が前記共重合樹脂の全構成単位の75モル%である。
【0221】
<光硬化性樹脂組成物(Y-1)>
U6HA(6官能ウレタンアクリレートオリゴマー、新中村化学工業(株)製)60質量%、#260(1,9-ノナンジオールジアクリレート、大阪有機化学工業(株)製)35質量%、フッ素系レべリング剤5質量%の混合物を100質量部として、光開始剤I-184(BASF(株)製〔化合物名:1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン〕)を3質量部添加して、光硬化性樹脂組成物(Y-1)を得た。
【0222】
<柄目付きPETフィルム(Z-1)>
MEK35質量部に対し、アクリル系紫外線硬化型樹脂(固形分100% 商品名:ライトアクリレートDPE-6A、共栄社化学株式会社製)40質量部、シリカ分散液(固形分18%、Z-AGD-6、平均粒子径2μm、アイカ工業社製)25質量部、および光開始剤(商品名Omnirad184、IGM Resins製)を外添で3質量部混合し攪拌することでコーティング液(i)を作製した。次に、コーティング液(i)をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムにドライ膜厚2.5μmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥後、光源距離12cm、出力80W/cmの高圧水銀灯を備えたコンベアでラインスピード1.5m/分の条件で紫外線を照射し硬化させることで柄目付きPETフィルム(Z-1)を作製した。
【0223】
高硬度樹脂(B1)層(高硬度樹脂層)とポリカーボネート樹脂層(基材層)との積層体の高硬度樹脂(B1)層上に、光硬化樹脂組成物(Y-1)を硬化後の塗膜厚さが5~10μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、柄目付きPETフィルム(Z-1)の柄面が塗布液と接触するように覆って圧着した。その後、光源距離12cm、メタルハライドランプ(20mW/cm)を30秒間照射し硬化させて、柄目付きPETフィルムを剥離し、高硬度樹脂層(B1)上に凹凸のあるハードコート層を備えた防眩性積層体を得た。
【0224】
[実施例2]
高硬度樹脂(B1)に代えて、以下の高硬度樹脂(B2)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で防眩性積層体を製造した。
【0225】
高硬度樹脂(B2)は以下のように調製した。すなわち、高硬度樹脂(B1)を40質量%およびスチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)としてXIBOND140を60質量%仕込み、ブレンダーで30分混合した。次いで、スクリュー径26mmの押出機(東芝機械製、TEM-26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度230℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化することで、樹脂組成物(B2)を得た。ペレット化は安定して行われた。
【0226】
[実施例3]
高硬度樹脂(B1)に代えて、以下の高硬度樹脂(B3)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で防眩性積層体を製造した。
【0227】
高硬度樹脂(B3)は以下のように調製した。すなわち、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)としてR-100を75質量%およびビニル系単量体を含有する樹脂(D)としてメチルメタクリレート樹脂 パラペットHR-L25質量%を仕込み、ブレンダーで30分混合した。次いで、スクリュー径26mmの押出機(東芝機械製、TEM-26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度230℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化することで、高硬度樹脂(B3)を得た。ペレット化は安定して行われた。
【0228】
[実施例4]
高硬度樹脂(B1)に代えて、以下の高硬度樹脂(B4)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で防眩性積層体を製造した。
【0229】
高硬度樹脂(B4)は以下のように調製した。すなわち、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)として、メタクリル酸メチル構成単位21質量%、スチレン構成単位64質量%、および無水マレイン酸構成単位15質量%の共重合体(レジスファイR100(デンカ製))75質量%、並びに樹脂共重合体(G)として、スチレン構成単位7質量%、メタクリル酸メチル構成単位86質量%、およびN-フェニルマレイミド構成単位7質量%の共重合体デルペットPM-120N(旭化成製)25質量%とを仕込みブレンダーで30分間混合した。次いで、スクリュー径26mmの押出機(東芝機械製、TEM-26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度230℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化することで、樹脂共重合体(G)とスチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(E)のアロイである高硬度樹脂(B4)を得た。ペレット化は安定して行われた。
【0230】
[実施例5]
高硬度樹脂(B1)に代えて、高硬度樹脂(B5)であるユーピロンKH3410UR(ビスフェノールCのポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアプラスチックス製)を用い、高硬度樹脂(B5)を導入する軸径35mmの単軸押出機のシリンダー温度を240℃から270℃に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で防眩性積層体を製造した。
【0231】
[実施例6]
高硬度樹脂(B1)に代えて、以下の高硬度樹脂(B6)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で防眩性積層体を製造した。
【0232】
高硬度樹脂(B6)は以下のように調製した。すなわち、スチレン-不飽和ジカルボン酸系共重合体(C)としてXIBOND160を50質量%およびビニル系単量体を含有する樹脂(D)としてメチルメタクリレート樹脂 パラペットHR-L50質量%を仕込み、ブレンダーで30分混合した。次いで、スクリュー径26mmの押出機(東芝機械製、TEM-26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度230℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化し、高硬度樹脂(B6)を得た。ペレット化は安定して行われた。
【0233】
[実施例7]
柄目付きPETフィルム(Z-1)に代えて、以下の柄目付きPETフィルム(Z-2)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で防眩性積層体を製造した。
【0234】
<柄目付きPETフィルム(Z-2)>
コーティング液(i)に代えて、以下のコーティング液(ii)を用いて柄目付きPETフィルム(Z-2)を作製した。
【0235】
前記コーティング液(ii)は、MEK10質量部に対し、アクリル系紫外線硬化型樹脂(固形分100% 商品名:ライトアクリレートDPE-6A共栄社化学株式会社製)40質量部、シリカ分散液(固形分18%、Z-AGD-6、平均粒子径2μm、アイカ工業社製)50質量部、および光開始剤(商品名Omnirad184、IGM Resins製)を外添で3質量部を混合し撹拌して作製した。
【0236】
[実施例8]
柄目付きPETフィルム(Z-1)に代えて、以下の柄目付きPETフィルム(Z-3)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で防眩性積層体を製造した。
【0237】
<柄目付きPETフィルム(Z-3)>
コーティング液(i)に代えて、以下のコーティング液(iii)を用いて柄目付きPETフィルム(Z-2)を作製した。
【0238】
前記コーティング液(ii)は、アクリル系紫外線硬化型樹脂(固形分100% 商品名:ライトアクリレートDPE-6A共栄社化学株式会社製)40質量部、シリカ分散液(固形分18%、Z-AGD-6、平均粒子径2μm、アイカ工業社製)60質量部、および光開始剤(商品名Omnirad184、IGM Resins製)を外添で3質量部を混合し撹拌して作製した。
【0239】
[実施例9]
高硬度樹脂(B1)に代えて、高硬度樹脂であるメチルメタクリレート樹脂 パラペットHR-L(クラレ製、重量平均分子量:90,000、鉛筆硬度:2H)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で防眩性積層体を製造した。
【0240】
[比較例1]
柄目付きPETフィルム(Z-1)に代えて、コスモシャイン(登録商標)A-4100(PETフィルム、厚さ:100μm、ヘイズ:0.9%、東洋紡製)(Z-4)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で防眩性積層体を製造した。
【0241】
[比較例2]
柄目付きPETフィルム(Z-1)に代えて、PS-27(PETフィルム、厚さ:100μm、ヘイズ34%、ダイセル製)(Z-5)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で防眩性積層体を製造した。
【0242】
[比較例3]
ハードコート層を以下のように形成したことを除いては、実施例1と同様の方法で防眩性積層体を製造した。
【0243】
すなわち、MEK50質量部に対し、アクリル系紫外線硬化型樹脂50質量部(固形分100%商品:ライトアクリレートDPE-6A 共栄社化学社製)、シリカ微粒子(オクチルシラン処理ヒュームドシリカ、平均一次粒子径1.9μm、商品名:SE6050-SYB アドマテックス株式会社製)、および光開始剤3質量部(商品名 イルガキュア184 豊通ケミプラス社製)を混合し撹拌することで光硬化性組成物(Y-2)を作製した。
【0244】
積層体(X-1)の高硬度層上に光硬化性組成物(Y-2)を硬化後の塗膜厚さが2.5μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃で2分間乾燥した。窒素パージをしながら光源距離12cm、メタルハライドランプ(20mW/cm)を30秒間照射し硬化させることで、防眩性積層体を得た。
【0245】
実施例1~9、比較例1~3で得られた防眩性積層体を下記表1に示す。
【0246】
【0247】
また、実施例1~9、比較例1~3において、算術平均粗さ(Ra)、最大山高さ(Rp)、最大谷深さ(Rv)、Rp/Rv、スキューネス(Rsk)、動摩擦係数(μk)、SCI500、SCE500、SCE550/SCI500、SW硬度、および形状安定性を評価した。得られた結果を下記表2に示す。
【0248】
【0249】
表2の結果からも明らかなように、実施例1~9はRa、Rp/Rv、およびRskが式(1)~(3)を満たし、かつ、μKが式(4)を満たすことから、防眩性および触り心地に優れることが分かる。また、実施例1~9は、SCE500/SCI500が式(5)を満たすことから、防眩性に優れることが確認される。なお、高硬度樹脂(B1)~(B6)を用いた実施例1~8は形状安定性にも優れることが確認された。
【0250】
他方、比較例1は、Rp/RvおよびRskが式(2)および(3)を満たさず、μKが式(4)を満たさないことから、防眩性および触り心地が不十分であった。反射率の観点からも、SCE500/SCI500が式(5)を満たさず防眩性が不十分であったことが確認された。
【0251】
また、比較例2は、RaおよびRp/Rvが式(1)および(2)を満たさず、μKが式(4)を満たさないことから、防眩性および触り心地が不十分であった。反射率の観点からも、SCE500/SCI500が式(5)を満たさず防眩性が不十分であったことが確認された。
【0252】
さらに比較例3は、Ra、Rp/Rv、およびRskが式(1)~(3)を満たさず、μKが式(4)を満たさないことから、防眩性および触り心地が不十分であった。SCE500/SCI500は式(5)を満たしたものの、ハードコート層にシリカ微粒子が含まれていることからSW硬度が不十分であることが確認された。