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特許7637132円形測距光コヒーレンストモグラフィーにおける絶対深度の解像
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】円形測距光コヒーレンストモグラフィーにおける絶対深度の解像
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20250219BHJP
【FI】
G01N21/17 620
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022525226
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 US2020058320
(87)【国際公開番号】W WO2021087333
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】62/929,390
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ヴァコック ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】リポック ノーマン
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-154728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0159990(US,A1)
【文献】特表2019-512086(JP,A)
【文献】特開2001-227911(JP,A)
【文献】Norman Lippok, Brett E. Bouma, Benjamin J. Vakoc,Highly-stable,multi-megahertz circular-ranging optical coherence tomography at 1.3 μm,米国,2019年10月04日
【文献】チャープした光コムのスペクトル干渉による瞬時3次元断層計測,第64回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,日本,2017年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路深度に位置するサンプルを照射するための放射線を生成する電磁放射線源であって、前記サンプル内の前記光路深度の決定を容易にするために前記サンプルに前記放射線を提供するよう構成された電磁放射線源と、
干渉計と、データ収集及び処理システムと、を備えた装置であって
前記電磁放射線源は、周波数コム光源を備え、
前記周波数コム光源は、第1の自由スペクトル範囲を有する第1の周波数コム、および前記第1の自由スペクトル範囲とは異なる第2の自由スペクトル範囲を有する第2の周波数コムを生成し、
記干渉計は、
前記放射線の第1の部分が送られるリファレンスアームと、
前記放射線の第2の部分が送られるサンプルアームと、
前記サンプルアームに送られた前記放射線を用いて前記サンプルを調べるため及び前記サンプルからの後方散乱放射線を収集するために前記サンプルアームに結合された第1の光学サブシステムと、
収集された前記後方散乱放射線と前記リファレンスアームに送られた前記放射線との間の干渉縞を生成するために前記リファレンスアームと前記第1の光学サブシステムとに結合された第2の光学サブシステムと、を備え、
前記データ収集及び処理システムは、
前記干渉計と通信し、受信した前記干渉縞から前記サンプルの前記光路深度を計算し、
前記第1の周波数コムを使用して第1の干渉データセットを取得し、
前記第2の周波数コムを使用して第2の干渉データセットを取得し、
前記第1の干渉データセットと前記第2の干渉データセットとの間の位相シフトを決定し、前記位相シフトに基づいて前記サンプルの前記光路深度を決定するように構成されている、装置。
【請求項2】
光路深度に位置するサンプルを照射するための放射線を生成する電磁放射線源であって、前記サンプル内の前記光路深度の決定を容易にするために前記サンプルに前記放射線を提供するよう構成された電磁放射線源と、
干渉計と、データ収集及び処理システムと、を備えた装置であって、
前記電磁放射線源は、縮退周波数コム光源を備え、
前記縮退周波数コム光源は、チャープ周波数コム光源を備え、
前記干渉計は、
前記放射線の第1の部分が送られるリファレンスアームと、
前記放射線の第2の部分が送られるサンプルアームと、
前記サンプルアームに送られた前記放射線を用いて前記サンプルを調べるため及び前記サンプルからの後方散乱放射線を収集するために前記サンプルアームに結合された第1の光学サブシステムと、
収集された前記後方散乱放射線と前記リファレンスアームに送られた前記放射線との間の干渉縞を生成するために前記リファレンスアームと前記第1の光学サブシステムとに結合された第2の光学サブシステムと、を備え、
前記データ収集及び処理システムは、
前記干渉計と通信し、受信した前記干渉縞から前記サンプルの前記光路深度を計算し、
前記データ収集及び処理システムは、前記干渉縞を分析して、第1の点広がり関数と第2の点広がり関数とを生成し、
前記第1の点広がり関数と前記第2の点広がり関数との間のシフトを計算し、
前記シフトに基づいて前記サンプル内の前記光路深度を決定するように構成されている、装置。
【請求項3】
光路深度に位置するサンプルを照射するための放射線を生成する電磁放射線源であって、前記サンプル内の前記光路深度の決定を容易にするために前記サンプルに前記放射線を提供するよう構成された電磁放射線源と、
干渉計と、データ収集及び処理システムと、を備えた装置であって、
前記電磁放射線源は、周波数コム光源を備え、
前記周波数コム光源は、自由スペクトル範囲を有するステップ周波数コムを備え、
前記ステップ周波数コムが複数の周波数コム線を備え、
前記周波数コム線が、周波数を変化させるために特定の量だけ変調され、
前記干渉計は、
前記放射線の第1の部分が送られるリファレンスアームと、
前記放射線の第2の部分が送られるサンプルアームと、
前記サンプルアームに送られた前記放射線を用いて前記サンプルを調べるため及び前記サンプルからの後方散乱放射線を収集するために前記サンプルアームに結合された第1の光学サブシステムと、
収集された前記後方散乱放射線と前記リファレンスアームに送られた前記放射線との間の干渉縞を生成するために前記リファレンスアームと前記第1の光学サブシステムとに結合された第2の光学サブシステムと、を備え、
前記データ収集及び処理システムは、
前記干渉計と通信し、受信した前記干渉縞から前記サンプルの前記光路深度を計算し、
前記データ収集及び処理システムは、前記周波数コム線を変調せずに第1の干渉データセットを取得し、
前記周波数コム線を変調して第2の干渉データセットを取得し、
前記第1の干渉データセットと前記周波数コム線を変調することでもたらされる前記第2の干渉データセットとの間の位相シフトを決定し、
前記位相シフトに基づいて前記サンプルの前記光路深度を決定するように構成されている、装置。
【請求項4】
光路深度に位置するサンプルを照射するための放射線を生成する電磁放射線源であって、前記サンプル内の前記光路深度の決定を容易にするために前記サンプルに前記放射線を提供するよう構成された電磁放射線源と、
干渉計と、データ収集及び処理システムと、を備えた装置であって、
前記電磁放射線源は、周波数コム光源を備え、
前記干渉計は、
前記放射線の第1の部分が送られるリファレンスアームと、
前記放射線の第2の部分が送られるサンプルアームと、
前記サンプルアームに送られた前記放射線を用いて前記サンプルを調べるため及び前記サンプルからの後方散乱放射線を収集するために前記サンプルアームに結合された第1の光学サブシステムと、
収集された前記後方散乱放射線と前記リファレンスアームに送られた前記放射線との間の干渉縞を生成するために前記リファレンスアームと前記第1の光学サブシステムとに結合された第2の光学サブシステムと、を備え、
前記データ収集及び処理システムは、
前記干渉計と通信し、受信した前記干渉縞から前記サンプルの前記光路深度を計算し、
前記電磁放射線源が、連続掃引光源をさらに備え、前記データ収集及び処理システムは、前記周波数コム光源を用いて第1の干渉データセットを取得し、
前記連続掃引光源を用いて第2の干渉データセットを取得し、
前記第2の干渉データセットに基づいて前記サンプル内の掃引光源光路深度を決定し、
前記掃引光源光路深度を前記第1の干渉データセットに照らし合わせることに基づいて前記サンプルの前記光路深度を決定するように構成されている、装置。
【請求項5】
前記電磁放射線源が、引き延ばしパルスアクティブモードロックレーザを備える、請求項1~4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記電磁放射線源が、分散型ファブリペローエタロンフィルタを備える、請求項1~4の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記分散型ファブリペローエタロンフィルタが、シリコンウェハーを備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の光学サブシステムが、前記放射線を前記サンプルに送り、前記サンプルからの前記後方散乱放射線を光導波路に送る光サーキュレータ回路を備える、請求項1~4の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記リファレンスアームが、前記干渉縞の複素復調を実行するためのアクティブ型位相変調器を備える、請求項1~4の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記データ収集及び処理システムは、前記サンプルの前記光路深度を計算するときに、前記サンプル内の複数の光路深度に対応する前記サンプルの複数の光路遅延を計算するようにさらに構成されている、請求項1~4の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
電磁放射線源によって、光路深度に位置するサンプルを照射するための放射線を生成する工程と、
ここで、前記電磁放射線源は、前記サンプル内の前記光路深度の決定を容易にするために前記放射線を前記サンプルに提供するよう構成され、
前記電磁放射線源を用いて、干渉計のリファレンスアームに前記放射線の第1の部分を送る工程と、
前記電磁放射線源を用いて、前記干渉計のサンプルアームに前記放射線の第2の部分を送る工程と、
前記サンプルアームに結合された第1の光学サブシステムによって、後方散乱放射線を生成するために前記サンプルアームに送られた放射線を用いて前記サンプルを調べる工程と、
前記第1の光学サブシステムによって、前記サンプルからの前記後方散乱放射線を収集し、前記リファレンスアームと前記第1の光学サブシステムとに結合された第2の光学サブシステムによって、収集された前記後方散乱放射線と前記リファレンスアームに送られた前記放射線との間の干渉縞を生成する工程と、
前記干渉計と通信するデータ収集及び処理システムによって、受信した前記干渉縞から前記サンプルの前記光路深度を計算する工程と、を有する方法であって、
前記電磁放射線源は、周波数コム光源を備え、
前記方法は、
前記周波数コム光源によって、第1の自由スペクトル範囲を有する第1の周波数コム、および前記第1の自由スペクトル範囲とは異なる第2の自由スペクトル範囲を有する第2の周波数コムを生成する工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記第1の周波数コムを用いて第1の干渉データセットを取得する工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記第2の周波数コムを用いて第2の干渉データセットを取得する工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記第1の干渉データセットと前記第2の干渉データセットとの間の位相シフトを決定する工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記位相シフトに基づいて前記サンプルの光路深度を決定する工程と、をさらに有する、方法。
【請求項12】
電磁放射線源によって、光路深度に位置するサンプルを照射するための放射線を生成する工程と、
ここで、前記電磁放射線源は、前記サンプル内の前記光路深度の決定を容易にするために前記放射線を前記サンプルに提供するよう構成され、
前記電磁放射線源を用いて、干渉計のリファレンスアームに前記放射線の第1の部分を送る工程と、
前記電磁放射線源を用いて、前記干渉計のサンプルアームに前記放射線の第2の部分を送る工程と、
前記サンプルアームに結合された第1の光学サブシステムによって、後方散乱放射線を生成するために前記サンプルアームに送られた放射線を用いて前記サンプルを調べる工程と、
前記第1の光学サブシステムによって、前記サンプルからの前記後方散乱放射線を収集し、前記リファレンスアームと前記第1の光学サブシステムとに結合された第2の光学サブシステムによって、収集された前記後方散乱放射線と前記リファレンスアームに送られた前記放射線との間の干渉縞を生成する工程と、
前記干渉計と通信するデータ収集及び処理システムによって、受信した前記干渉縞から前記サンプルの前記光路深度を計算する工程と、を有する方法であって、
前記電磁放射線源は周波数コム光源を備え、
前記周波数コム光源は縮退周波数コム光源を備え、
前記縮退周波数コム光源がチャープ周波数コム光源を備え、
前記方法は、
前記データ収集及び処理システムによって前記干渉縞を分析して、第1の点広がり関数と第2の点広がり関数とを生成する工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記第1の点広がり関数と前記第2の点広がり関数との間のシフトを計算する工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記シフトに基づいて前記サンプル内の前記光路深度を決定する工程と、をさらに備える、方法。
【請求項13】
電磁放射線源によって、光路深度に位置するサンプルを照射するための放射線を生成する工程と、
ここで、前記電磁放射線源は、前記サンプル内の前記光路深度の決定を容易にするために前記放射線を前記サンプルに提供するよう構成され、
前記電磁放射線源を用いて、干渉計のリファレンスアームに前記放射線の第1の部分を送る工程と、
前記電磁放射線源を用いて、前記干渉計のサンプルアームに前記放射線の第2の部分を送る工程と、
前記サンプルアームに結合された第1の光学サブシステムによって、後方散乱放射線を生成するために前記サンプルアームに送られた放射線を用いて前記サンプルを調べる工程と、
前記第1の光学サブシステムによって、前記サンプルからの前記後方散乱放射線を収集し、前記リファレンスアームと前記第1の光学サブシステムとに結合された第2の光学サブシステムによって、収集された前記後方散乱放射線と前記リファレンスアームに送られた前記放射線との間の干渉縞を生成する工程と、
前記干渉計と通信するデータ収集及び処理システムによって、受信した前記干渉縞から前記サンプルの前記光路深度を計算する工程と、を有する方法であって、
前記電磁放射線源は周波数コム光源を備え、
前記周波数コム光源は自由スペクトル範囲を有するステップ周波数コムを備え、
前記ステップ周波数コムが複数の周波数コム線を備え、
前記方法は、
前記周波数コム線を特定の量だけ変調して周波数を変化させる工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記周波数コム線を変調せずに第1の干渉データセットを取得する工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記周波数コム線を変調して第2の干渉データセットを取得する工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記第1の干渉データセットと前記周波数コム線を変調することでもたらされる前記第2の干渉データセットとの間の位相シフトを決定する工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記位相シフトに基づいて前記サンプルの前記光路深度を決定する工程と、をさらに有する、方法。
【請求項14】
電磁放射線源によって、光路深度に位置するサンプルを照射するための放射線を生成する工程と、
ここで、前記電磁放射線源は、前記サンプル内の前記光路深度の決定を容易にするために前記放射線を前記サンプルに提供するよう構成され、
前記電磁放射線源を用いて、干渉計のリファレンスアームに前記放射線の第1の部分を送る工程と、
前記電磁放射線源を用いて、前記干渉計のサンプルアームに前記放射線の第2の部分を送る工程と、
前記サンプルアームに結合された第1の光学サブシステムによって、後方散乱放射線を生成するために前記サンプルアームに送られた放射線を用いて前記サンプルを調べる工程と、
前記第1の光学サブシステムによって、前記サンプルからの前記後方散乱放射線を収集し、前記リファレンスアームと前記第1の光学サブシステムとに結合された第2の光学サブシステムによって、収集された前記後方散乱放射線と前記リファレンスアームに送られた前記放射線との間の干渉縞を生成する工程と、
前記干渉計と通信するデータ収集及び処理システムによって、受信した前記干渉縞から前記サンプルの前記光路深度を計算する工程と、を有する方法であって、
前記電磁放射線源は周波数コム光源を備え、
前記電磁放射線源が、連続掃引光源をさらに備え、
前記方法が、
前記データ収集及び処理システムによって、前記周波数コム光源を用いて第1の干渉データセットを取得する工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記連続掃引光源を用いて第2の干渉データセットを取得する工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記第2の干渉データセットに基づいて前記サンプル内の掃引光源光路深度を決定する工程と、
前記データ収集及び処理システムによって、前記掃引光源光路深度を前記第1の干渉データセットに照らし合わせることに基づいて前記サンプルの前記光路深度を決定する工程をさらに有する、方法。
【請求項15】
前記電磁放射線源は、引き延ばしパルスアクティブモードロックレーザを備える、請求項11~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記電磁放射線源は、分散型ファブリペローエタロンフィルタを備える、請求項11~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記分散型ファブリペローエタロンフィルタが、シリコンウェハーを備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の光学サブシステムが、前記放射線を前記サンプルに送り、前記サンプルからの前記後方散乱放射線を光導波路に送る光サーキュレータ回路を備える、請求項11~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記リファレンスアームが、前記干渉縞の複素復調を実行するためのアクティブ型位相変調器を備える、請求項11~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記サンプルの前記光路深度を計算する工程が、前記サンプル内の複数の光路深度に対応する前記サンプルの複数の光路遅延を計算する工程をさらに有する、前記請求項11~14の何れか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2019年11月1日に出願された米国仮特許出願第62/929,390号に基づくものであり、その優先権を主張するものであり、当該仮出願の全開示は引用により本明細書に組み込まれているものとする。
【0002】
<連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載>
本発明は、米国国立衛生研究所により付与された助成番号P41EB015903の下で政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
サブサンプリングOCTは、高速度かつ長距離で動作することができるイメージング技術である。サブサンプリングOCTは、光サブサンプリングの使用を通して生成された干渉信号の光ドメイン圧縮を行うことにより、これを達成する。典型的に、これは、単一周波数コム光源、即ち、光周波数において等間隔の個々のスペクトル線を備える光源を使用することによって達成されている。しかしながら、これらの技術は絶対深度を決定することができず、これが特定の応用において制約となり得る。
【発明の概要】
【0004】
したがって、円形測距光コヒーレンストモグラフィーにおいて絶対深度を解像(resolving)するための新しいシステム、方法及び媒体が望まれる。
【0005】
一実施形態では、本発明の装置は、光路深度に位置するサンプルを照射するための放射線を生成する電磁放射線源であって、サンプル内の光路深度の決定を容易にするために放射線をサンプルに提供するよう構成された電磁放射線源と、放射線の第1の部分が送られるリファレンスアームと、放射線の第2の部分が送られるサンプルアームと、サンプルアームに結合され、サンプルアームに送られた放射線でサンプルを調べて、サンプルからの後方散乱放射線を収集する第1の光学サブシステムと、収集された後方散乱放射線とリファレンスアームに送られた放射線との間の干渉縞を生成するために、リファレンスアームと第1の光学サブシステムとに結合された第2の光学サブシステムと、を備える干渉計と、受信した干渉縞からサンプルの光路深度を計算するように構成されたデータ収集及び処理システムと、を備える装置を提供する。
【0006】
上記装置のいくつかの実施形態では、電磁放射線源は周波数コム光源を含んでもよい。上記装置のさまざまな実施形態では、周波数コム光源は、第1の自由スペクトル範囲(FSR)を有する第1の周波数コムと、第1のFSRとは異なる第2のFSRを有する第2の周波数コムとを生成することができる。上記装置のいくつかの実施形態では、データ収集及び処理システムは、第1の周波数コムを使用して第1の干渉データセットを取得し、第2の周波数コムを使用して第2の干渉データセットを取得し、第1の干渉データセットと第2の干渉データセットとの間の位相シフトを決定し、位相シフトに基づいてサンプルの光路深度を決定するように構成されてもよい。
【0007】
上記装置の特定の実施形態では、周波数コム光源は縮退周波数コム光源を備えてもよい。上記装置のいくつかの実施形態では、縮退周波数コム光源はチャープ周波数コム光源を含んでもよい。上記装置の種々の実施形態では、データ収集及び処理システムは、干渉縞を分析して第1の点広がり関数(PSF)及び第2のPSFを生成し、第1のPSFと第2のPSFとの間のシフトを計算し、当該シフトに基づいてサンプル内の光路深度を決定するように構成されてもよい。上記装置のいくつかの実施形態では、周波数コム光源は自由スペクトル範囲を有するステップ周波数コムを含んでもよく、周波数コムは複数の周波数コム線を含んでもよく、周波数コム線は周波数を変化させるために特定の量だけ変調されてもよい。上記装置のいくつかの実施形態では、データ収集及び処理システムは、周波数コム線を変調せずに第1の干渉データセットを取得し、周波数コム線を変調して第2の干渉データセットを取得し、第1の干渉データセットと周波数コム線を変調することでもたらされる第2の干渉データセットとの間の位相シフトを決定し、位相シフトに基づいてサンプルの光路深度を決定するように構成されてもよい。
【0008】
上記装置のいくつかの実施形態では、電磁放射線源は連続掃引光源をさらに含んでもよく、データ収集及び処理システムは、周波数コム光源を用いて第1の干渉データセットを取得し、連続掃引光源を用いて第2の干渉データセットを取得し、第2の干渉データセットに基づいてサンプル内の掃引光源光路深度を決定し、第1の干渉データセットに掃引光源光路深度を照らし合わせることに基づいてサンプルの光路深度を決定するように構成されてもよい。
【0009】
上記装置のいくつかの実施形態では、電磁放射線源は、引き延ばしパルスアクティブモードロックレーザを含んでもよい。上記装置のさまざまな実施形態では、電磁放射線源は分散型ファブリペローエタロンフィルタを含んでもよい。上記装置のいくつかの実施形態では、ファブリペローエタロンフィルタは、シリコンウェハー(Si-wafer)を含んでもよい。上記装置のいくつかの実施形態では、第1の光学サブシステムは、放射線をサンプルに送り、サンプルからの後方散乱放射線を光導波路に送るための光サーキュレータ回路を含んでもよい。上記装置のさまざまな実施形態では、リファレンスアームは、干渉縞の複素復調を行うためのアクティブ型位相変調器を含んでもよい。上記装置の特定の実施形態では、データ収集及び処理システムは、サンプルの光路深度を計算するときに、サンプル内の複数の光路深度に対応するサンプルの複数の光路遅延を計算するようにさらに構成されてもよい。
【0010】
本方法のいくつかの実施形態では、電磁放射線源は周波数コム光源を含んでもよい。上記方法の種々の実施形態は、周波数コム光源によって、第1の自由スペクトル範囲(FSR)を有する第1の周波数コムと、第1のFSRとは異なる第2のFSRを有する第2の周波数コムとを生成する工程をさらに含んでもよい。上記方法の特定の実施形態は、データ収集及び処理システムによって、第1の周波数コムを使用する第1の干渉データセットを取得する工程と、データ収集及び処理システムによって、第2の周波数コムを用いて第2の干渉データセットを取得する工程と、データ収集及び処理システムによって、第1の干渉データセットと第2の干渉データセットとの間の位相シフトを決定する工程と、データ収集及び処理システムによって、位相シフトに基づいてサンプルの光路深度を決定する工程とをさらに含んでもよい。
【0011】
上記方法のいくつかの実施形態では、周波数コム光源は縮退周波数コム光源を含んでもよい。上記方法のさまざまな実施形態では、縮退周波数コム光源はチャープ周波数コム光源を含んでもよい。上記方法の特定の実施形態は、データ収集及び処理システムによって干渉縞を分析して、第1の点広がり関数(PSF)及び第2のPSFを生成する工程と、データ収集及び処理システムによって、第1のPSFと第2のPSFとの間のシフトを計算する工程と、データ収集及び処理システムによって、当該シフトに基づいてサンプル内の光路深度を決定する工程と、を含んでもよい。
【0012】
上記方法のいくつかの実施形態では、周波数コム光源は自由スペクトル範囲を有するステップ周波数コムを含んでもよく、周波数コムは複数の周波数コム線を含んでもよく、本方法は、周波数を変化させるために周波数コム線を特定の量だけ変調することをさらに含んでもよい。上記方法の特定の実施形態はさらに、データ収集及び処理システムによって、周波数コム線を変調せずに第1の干渉データセットを取得する工程と、データ収集及び処理システムによって、周波数コム線を変調して第2の干渉データセットを取得する工程と、データ収集及び処理システムによって、第1の干渉データセットと周波数コム線を変調することでもたらされる第2の干渉データセットとの間の位相シフトを決定する工程と、データ収集及び処理システムによって、当該位相シフトに基づいてサンプルの光路深度を決定する工程と、を含んでもよい。
【0013】
上記方法の特定の実施形態では、電磁放射線源は連続掃引光源をさらに備えてもよく、本方法は、データ収集及び処理システムによって、周波数コム光源を用いて第1の干渉データセットを取得する工程と、前記データ収集及び処理システムによって、連続掃引光源を用いて第2の干渉データセットを取得する工程と、データ収集及び処理システムによって、第2の干渉データセットに基づいてサンプル内の掃引光源光路深度を決定する工程と、データ収集及び処理システムによって、掃引光源光路深度を第1の干渉データセットに照らし合わせることに基づいてサンプルの光路深度を決定する工程と、をさらに含むことができる。
【0014】
上記方法のさまざまな実施形態では、電磁放射線源は、引き延ばしパルスアクティブモードロックレーザを含んでもよい。上記方法のいくつかの実施形態では、電磁放射線源は、分散型ファブリペローエタロンフィルタを含んでもよい。上記方法のいくつかの実施形態では、ファブリペローエタロンフィルタは、シリコンウェハーを含んでもよい。上記方法の特定の実施形態では、第1の光学サブシステムは、放射線をサンプルに送り、サンプルからの後方散乱放射線を光導波路に送るための光サーキュレータ回路を含んでもよい。上記方法のいくつかの実施形態では、リファレンスアームは、干渉縞の複素復調を行うためのアクティブ型位相変調器を含んでもよい。上記方法のさまざまな実施形態では、サンプルの光路深度を計算する工程は、サンプル内の複数の光路深度に対応するサンプルの複数の光路遅延を計算する工程をさらに含んでもよい。
【0015】
別の実施形態では、本発明の方法は、サンプル内の光路深度の決定を容易にするために放射線をサンプルに提供する電磁放射線源によって、光路深度に位置するサンプルを照射するための放射線を生成する工程と、電磁放射線源によって、放射線の第1の部分を干渉計のリファレンスアームに送る工程と、前記電磁放射線源によって、放射線の第2の部分を干渉計のサンプルアームに送る工程と、サンプルアームに結合された第1の光学サブシステムによって、サンプルアームに送られた放射線を用いてサンプルを調べて、後方散乱放射線を生成する工程と、第1の光学サブシステムによって、サンプルからの後方散乱放射線を収集する工程と、リファレンスアームと第1の光学サブシステムとに結合された第2の光学サブシステムによって、収集された後方散乱放射線とリファレンスアームに送られた放射線との間の干渉縞を生成する工程と、干渉計と通信するデータ収集及び処理システムによって、受信した干渉縞からサンプルの光路深度を計算する工程と、を有する。
【0016】
開示された主題のさまざまな目的、特徴及び利点は、同様の参照符号が同様の要素に付された以下の図面と関連して考慮して開示された主題の以下の詳細な記載を参照することで、より十分に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1A及び図1Bは、非縮退周波数コム光源を使用した場合(図1A)と縮退(チャープ)周波数コム光源を使用した場合(図1B)とで物理的測定CR-OCTのマッピングを比較した図である。(ZPL=ゼロパス長)。
図2A】縮退周波数コム出力を有するSPMLレーザを示す実験的CR-OCTセットアップを示す。シリコンエタロンのフレネル反射はエタロン当たり2.1のフィネスをもたらし、4つのエタロン後に5.1の合計フィネスをもたらす。LDはレーザモジュールドライバ、DDGはデジタル遅延ジェネレータ、PGはパターンジェネレータ、Aは増幅器、EOMは電気光モジュレータ、PCは分極コントローラ、CFBGは連続ファイバーブラッググレーティング、SOAは半導体光増幅器、FPはファブリペローエタロンスペクトルフィルタ、OSAは光スペクトルアナライザ、ISOは光アイソレータ、PGは信号ジェネレータである。WaferProからの許可を受けてシリコンウェハーの写真を含む。
図2B】直列のシリコンウェハーの1(緑のライン)、2(赤のライン)及び4(青のライン)について232.5THzにおける測定されたエタロン透過率を示す図である。
図2C】スペクトルにわたるエタロンFSRを示す。赤い点は実験データを示し、青い線は理論曲線を示す。
図2D】SPML出力における縮退周波数コムスペクトルを示す。
図2E】SPML出力における3つのコム線の拡大プロットを示す。
図3】(A)~(D)は縮退周波数コム及び分散型シリコンエタロンを用いたCR深度信号の数値シミュレーションを示す。(A)は100nmのバンド幅を有する1290nmを中心とする縮退周波数コムスペクトルについての種々のセット次数についてシミュレートされたミラー信号を示す。(B)は青(S、中心は1265nm)と赤(中心は1315nm、S)からの重ね合わせミラー信号をセット次数の関数として示す。(C)は9次セット次数での青及び赤のバンド点広がり関数(PSF)及びウォークオフを示すCRのAラインを示す。(D)は回収された次数パラメータ及びD=0.54×10-3psを用いて縮退周波数コムチャープを補正する前後の抽出PSF幅を示す。
図4A図4A図4Dは縮退周波数コムを使用した絶対遅延測距の実験的実装を示す。図4Aは、全スペクトルから計算されたPSFを示す。
図4B】青及び赤のサブバンドからの重ね合わせPSFを示す。
図4C図4AのようなPSFであって、計算された次数パラメータ及びD=0.54×10-3psを用いたデチャーピング後のPSFを示す。
図4D】デチャーピングの前(赤、正方形)及び後(黒、円)のPSF幅の測定値をセット次数の関数として示す。
図5A図5A図5Cは提案されたCR-OCTシステムを使用する、米1セント硬貨のスタックの絶対高さトポグラフィカルイメージングを示す。図5Aは写真(図5Aの上部)及び強度深度投影(図5Aの下部)を示す。
図5B図5Aの下部に対応する円形深度マップを示す。
図5C図5Aの下部に対応する再構成された絶対深度を示す。
図6】提案されたCR-OCTシステムを用いる手術器具の絶対位置の解像を描いた画像を示す。手術鉗子が組織(ニワトリの皮膚)サンプルの上に置かれている。画像は、en-face強度投影図(上段)、円形深度マップ(中段)、回収された絶対深度マップ(下段)を描いており、ここでカラー/陰影スケールは深度を描いている(中段と下段の右側のスケールを参照)。
図7】周波数コムが変調、チューニング及び/又はシフトされた線源についての干渉縞及び周波数コムトレースを示す。
図8】ステップレーザ及び掃引レーザを備える光源を用いた深度の決定を示す。
図9】本明細書に開示された種々の実施形態と共に使用され得る干渉計システムの図である。
図10】開示された主題のいくつかの実施形態によるCR-OCTにおいて絶対深度を解像するためのシステムの例を示す。
図11】開示された主題のいくつかの実施形態によるコンピューティングデバイス及びサーバを実装するために使用することができるハードウェアの例を示す。
図12】開示された主題のいくつかの実施形態によるCR-OCTにおいて絶対深度を解像するためのプロセスの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
開示された主題のいくつかの実施形態にしたがって、円形測距光コヒーレンストモグラフィーにおいて絶対深度を解像するためのメカニズム(システム、方法及び媒体を含み得る)が提供される。
【0019】
サブサンプリングOCTは、高速度を提供し、長距離にわたって動作することができるイメージング技術である。サブサンプリングOCTは、光サブサンプリングの使用を通して生成された干渉信号の光ドメイン圧縮を行うことにより、これを達成する。典型的に、これは、周波数コム光源、即ち、光周波数において等間隔の個々のスペクトル線を備える光源を使用することによって達成されている。
【0020】
サブサンプリングOCTの考え得る欠点の1つは、サンプルの絶対遅延(したがって位置)が測定されないことである。代わりに、サンプルの特徴の相対位置が測定される。本発明では、圧縮及び絶対遅延/位置感知の両方を提供する方法及び装置が提示される。特定の実施形態では、これは、不完全(又は縮退)周波数コム、即ち、光周波数において等間隔のグリッド上に意図的に配置されていないスペクトル線を伴うものを使用することに基づくことができる。このアプローチは、サンプルの絶対位置を知ることに付加的な価値があるサブサンプリングOCTの任意の応用を含む多くの異なる応用において使用され得る。これは、例えば、手術器具と組織サンプルとの間の距離を測定するために、又はサンプルのトポグラフィーを測定するために使用することができる。後者は、例えば動的オートフォーカシングを行うような多様な分野で使用することができる。
【0021】
フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィーでは、イメージング範囲、イメージング速度、軸方向分解能の逆数の3つのパラメータの積に比例するRFバンド幅にまたがる干渉信号が生成される。円形測距(CR)OCTアーキテクチャは、信号RFバンド幅からのイメージング範囲をデカップリングすることにより長距離イメージングを容易にするために導入された。結果として、現在のCR-OCTシステムは、散乱の絶対深度ではなく相対深度の位置を解像する。本明細書において導入されるのはCR-OCTの改良実装であり、これは、特定の実施形態では、先に記載したRFバンド幅圧縮に関するCRの利点に最小限の影響しか与えずに絶対深度情報の回収を可能にする縮退周波数コム光源を使用する。この縮退周波数コムが励起周波数コム光源設計に対する比較的簡単な修正で作成できることが示され、そして、イメージング研究とシミュレーションを通して絶対測距能力が提示される。
【0022】
フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィーでは、有限電子バンド幅を有する取得システムを用いて、生成された光信号が取り込まれる。大部分のサンプルにOCTの1~2mmのイメージング深度と比べて長い深度範囲を必要とするアプリケーションでは、取得された信号バンド幅の大部分は、サンプル表面の前に、又は最も深いイメージング可能深度を過ぎて位置する無信号領域(signal-void regions)の測定専用である。CR-OCTは、等間隔の深度ポイントを単一の測定深度に重ね合わせることにより、これらの信号をより高いデータ効率で取り込む。これは、光ドメインで行われ、これにより、電子取得は、低減されたバンド幅でかつより少ないノイズで動作することができる。そのようにして、CR-OCTはイメージング範囲と取得バンド幅をデカップルし、同時高速及び長距離イメージングをより実用的なものにする。
【0023】
図1AにCR-OCT技術が示されており、物理的遅延座標(z軸)の、測定された円形遅延座標(xy平面)への円形マッピングが示されている。各測定された遅延は等間隔の物理的遅延のセットの重ね合わせであることに留意すべきである。この間隔を円形遅延範囲と称する。重要なことは、この図から、円形遅延範囲よりも小さい遅延範囲のみにまたがる反射信号の分布が、重なるアーチファクトなしに、測定された/円形遅延空間において解像することができるということが理解できるということである。干渉縞の複素(同相及び直交)検出と組み合わされた周波数コム光源により円形測距が得られ、円形遅延範囲は周波数コム光源の自由スペクトル範囲(FSR)の逆数に比例し、即ちΔτ=1/(2fsr)となる。便宜上、円形遅延範囲と画像形成される材料中の光の速度との積である対応する円形深度範囲を定義することができる。本明細書において遅延との用語は、常にリファレンスアーム遅延との関係で定義されていることに注意されたい。
【0024】
図1Aに示す円形マッピングがもたらす1つの結果は、サンプルの絶対遅延が測定されないことである。本明細書では、CR-OCTにおいて絶対遅延を解像するための方法を提示する。絶対測距は、縮退周波数コム、即ち不等間隔光周波数線を有する周波数コムを採用することによって達成される。チャープ周波数縮退コム光源により、高圧縮ファクタ(CR-OCTの基礎となるコアモチベーション)を維持しながら絶対位置の測定ができることが具体的に示された。さらに、既存のCR-OCT源を修正して縮退コム出力を生成することは簡単であることが示された。
【0025】
出発点として、「デュアルFSR」アプローチを用いてCR-OCTシステムにおいて絶対遅延を解像する簡単なアプローチを考えることが指導的である。ここで、与えられたFSR、即ちfsrを有する第1の周波数コム光源を用いる第1の測定を考える。そして、所定の信号を、対応する円形遅延範囲[Δτ=1/(2fsr)]のサイクルの未知の整数部分(次数と称される)が課せられた遅延に局在化させることができる。同一サンプルの第2の測定が別のFSR、即ちfsrで取得される場合、信号は、その絶対位置に応じて異なる円形遅延にて現れる可能性がある。このように、fsrとfsrの各々を用いて測定された円形遅延間の関係を測定することによって、各測定における整数次数パラメータを取り出すことができ、それによって絶対遅延を取り出すことができる。これは、秒針はあるが分を示す針はないストップウォッチを使用する事象の経過時間の測定と類比することができる。1つのストップウォッチでは、例えば、17秒と1分17秒の経過時間を区別することはできない。元のストップウォッチよりも既知の量だけ速く動作する第2のストップウォッチを追加することで、2つのストップウォッチの秒針の測定値の差分を使って分(即ち、次数)を計算できるようになる。
【0026】
理解するのは簡単であるが、デュアルFSR法は、少なくともある種の応用には欠点がある場合がある。第1に、異なるFSRを有する2つの周波数コムを生成することは可能であるが、全体の光源が複雑になる可能性があり、例えば、これは、2つの周波数コム光源を用いてサンプルを同時に又は連続的に照射するか、あるいは、画像間又はAライン間で自由スペクトル範囲を調節(変更)できる単一周波数コム光源を用いることによって、行うことができる。第2に、絶対深度測定を追加するために2つのAラインの収集が必要であり、これは測定数を倍増させ、CRアプローチの効率/圧縮の利点を減少させる。それにもかかわらず、特定の用途では、より複雑な光源及び若干遅い収集速度と絶対深度情報との引き換えのこのトレードオフが容認されるかもしれない。
【0027】
本研究は、同様の原理に基づくが光源の実装がよりシンプルで圧縮ペナルティが最小限に抑えられる実装を示す。2つの別個のFSRを使用するのではなく、連続的にチャープされたFSR有する周波数コム、即ち縮退周波数コム(DFC)が使用される。このアプローチの原理は上述したデュアルFSRの原理と類似しており、即ち、光周波数にわたるFSRの変化が、絶対遅延の解読に使用できる変化する速度を有する時計を提供する。但し、情報はこの場合1つの深度測定(Aライン)内に含まれる。さらに、チャープされたFSRはレーザ光源内の分散型ファブリペローエタロンを単に用いて作成でき、fsr(ω)=c/(2n(ω)l)であり、ここでωは角光学周波数、nはエタロンの群屈折率、lはエタロン厚、cは光の速度である。図1A及び図1Bは、従来の単一FSR CR-OCTアプローチ(図1A)に対する提案されたアプローチ(図1B)の絶対対測定遅延マッピングを比較する。縮退周波数コムを使用することによって、物理的遅延の測定遅延へのスパイラルマッピングが光周波数に依存するようになり、したがって、図1Bに示す3つの離散的な光周波数及び3つの遅延についてのチャープが生じる。スペクトル的に解像された円形遅延(この場合は光周波数に依存)における分散を用いて、絶対遅延が計算される。そして、散乱信号の絶対遅延を知ることにより、測定された干渉縞をデチャープして、絶対遅延にわたって解像された、フーリエ変換限界軸方向分解能(transform-limited axial resolution)を有する画像が生成できるようになる。
【0028】
種々の実施形態では、CR-OCTシステムは、引き延ばしパルスアクティブモードロック(SPML)レーザアーキテクチャ内に分散型ファブリペローエタロンを1.29μmに配置することによって(図2A)、縮退周波数コムを使用して実施されてもよい。DFC-SPMLは、掃引速度が194THz/μsで、繰り返し率が76%デューティサイクルで7.6MHzであった。1.3μmで約1750ps/kmの群速度分散を提供するシリコン(Si)ウェハーをエタロンとして用いた。厚さ280μmのウェハーは中心光周波数で146.7GHzのFSRを提供し、空気中で約1mmの円形深度範囲を提供した。単一パス透過率及び周波数依存FSRを図2B及び図2Cに示す。DFC-SPML出力におけるスペクトル及び3つのコム線の拡大プロットを図2D及び図2Eに示す。光源のコヒーレンス長は約2cmと測定された(ゼロパス長周辺の両側FWHM)。シンプルな干渉計及び取得システムと組み合わせたこの光源により測定干渉縞信号が得られた。干渉縞信号の複素復調をリファレンスアームのアクティブ型(LiNbO)位相モジュレータを用いて行った。
【0029】
CR-OCT干渉縞信号の数値順モデルを、前述のシステムから、即ち同じ光源特性及び干渉計設計を用いて生成した。このモデルを用いて、ミラー干渉縞信号から絶対深度情報を抽出するために処理パイプラインを構築し検証した。出発点として、図3(A)は、従来のCR-OCTアプローチを用いて縮退周波数コム信号を処理することによって生成されたミラー信号のためのシミュレートされた点広がり関数(PSF)を提示する。ミラーは同じ円形深度(0mm)に配置されたが、円形深度範囲は異なる次数であった(円形深度範囲はDFCの平均FSRで定義される)。ここで、縮退周波数コムの使用によるPSFの予想されるチャープ(ぼけ)を見ることができる。次に、それぞれ1265nm(237.2THz)及び1315nm(228.1THz)を中心とする、本明細書では「青」スペクトルバンド及び「赤」スペクトルバンドと称する別々のバンドにおいて検出された干渉縞を別々に分析するデュアルバンド処理アプローチを用いた。各バンド内の平均FSRの差分は、約Δ=1.3GHzであり、fsr>fsr(Δτ<Δτ)であった。同じミラー位置についてシミュレートされたPSFが、図3(B)にプロットされている。ここで、図3(A)の全体的なチャープを互いにウォークオフする2つのPSFに分解することができる。青バンドPSFと赤バンドPSF(図3(C))の間の測定深度シフトΔLを用いて、次数パラメータkは以下のように計算される。
【0030】
【数1】
【0031】
式中、fsrb,rは、それぞれ、青バンドと赤バンドにおける平均FSRである。
【0032】
次に、縮退周波数コム(図3(A)参照)の使用によって生じるチャープ(軸方向ぼけ)を除去する技術を開発した。補正干渉縞信号s’(ω)は、測定複素干渉縞s(ω)と、exp[iDk(ω-ω]で与えられる補正ベクトルを乗算することによって計算され、ここでkは整数深度次数パラメータである(図3(D))。パラメータDは、縮退周波数コムの特性によって次のように与えられる。
【0033】
【数2】
【0034】
次に、この処理パイプラインを実験データに適用した。図4A図4Dは、図3(A)~図3(D)のシミュレートされたデータと類似的に取得された±10の範囲の次数パラメータについての、縮退周波数コムを用いた約250μmの円形深度でのPSF測定を示す。図4A及び図4Bは、フルバンドを用いた場合及び赤スペクトルバンド/青スペクトルバンドを用いた場合のそれぞれのPSFを示す。PSFウォークオフはAライン相互相関により抽出した。実際には、円形深度範囲の縁部でのPSFラッピングを考慮しなければならないことに注意する。これらの境界では、真のPSFシフトは、測定シフトΔL’及び青バンド円形深度範囲によって与えられ(何故なら、fsr>fsrであるため)、ΔL=ΔL’±cΔτである。図4Bの測定PSFシフトから計算された次数が、各測定のセット次数(-10~10のセット次数)と一致することが確認された。この解かれた次数パラメータを使用して、フルスペクトルデータのチャープ(広がり)が式(1)に記述するように補正されて、デチャープPSF(図4C)が生成された。補正前後の回収されたPSF幅が図4Dに示されている。PSF非対称性のため、根平均二乗
【数3】
が適用され、式中、dは深度、dはPSF中心深度、Sは信号の大きさである。
【0035】
サンプルからの絶対深度情報の再構成をテストするために、9個の米1セント硬貨のスタックをイメージングした(図5A)。円形ラップ画像及び絶対トポグラフィック画像が、それぞれ、図5B及び図5Cに示されている。絶対画像は、はるかに大きな深度範囲にわたるが、従来の円形ラップ画像深度範囲と同じ高さ分解能(軸方向分解能で与えられる)を保持することに注意すべきである。測定された高さの誤差は、低い測定SNRに由来すると考えられ、絶対遅延解像CR-OCTにおけるSNR要件とノイズ軽減戦略の研究は進行中であり本研究の範囲を超える。
【0036】
第2の実験では、この技術を用いて、組織表面に対する手術器具の絶対位置決めに関するフィードバックを行った(図6)。図6は、提案されたCR-OCTシステムを用いた手術器具の絶対位置の解像を描いた画像を示す。手術鉗子が組織(ニワトリの皮膚)サンプルの上に置かれた。画像は、EN-FACE強度投影図(上段)、円形深度マップ(中段)、回収された絶対深度マップ(下段)を描いており、ここでカラー/陰影スケールは深度を描いている(中段と下段の右側のスケールを参照)。円形ラップされた従来のCRトポグラフィック画像(中段)ではない、絶対トポグラフィック画像(下段)によって、器具の組織への近接性を測定することができる。この絶対深度マッピング技術は高い深度認知を伴う外科ガイダンスなどの応用を可能にし、処置中に外科領域内の複雑な器官を可視化することに関しリアルタイム立体視から利益が得られるであろう。
【0037】
最後に、絶対測距を実行するために必要なエタロン分散の大きさに関する簡単なコメントを述べる。再び、単純化した例としてのデュアルFSR技法に戻ると、式(1)のk=1についてΔL=δZを設定することによって(ここで、δZは各測定のフーリエ変換限界軸方向分解能である)、検出可能なシフトを生成するのに必要な最小FSR差分、Δminが推定でき、次のように得られる。
【0038】
【数4】
【0039】
式中、
【数5】
は測定値間の平均FSRを示す。これを本研究の中で提示した縮退周波数コム技法に適用すると、
【数6】
が設定でき、bzは各サブバンドのフーリエ変換限界軸方向分解能に等しい。最大差分FSR、即ちΔmaxを推定するために、あるシステムが正確に測定をするよう設計された最大次数kmaxに位置するサンプルによって引き起こされるシフトΔLは、円形遅延範囲(CΔτ/2)の半分を超えてはならないことに留意すると、次式となる。
【0040】
【数7】
【0041】
式中、kmax=l/(2ΔLk=l)であり、lはコヒーレンス長であり、ΔLk=lはk=1についてのΔL、即ち円形深度範囲の差分である。縮退周波数コム技法においてこの限界は、スペクトル窓を中心周波数に近づけるようにシフトさせ、それによって測定間の差分FSRを減少させることにより克服できることに留意されたい。
【0042】
本研究において、分散型ファブリペローエタロンから構築した縮退周波数コムを用いて、測定圧縮に大きく影響することなく絶対遅延位置を回収することができることを、数値的にも実験的にも説明し検証した。現在の研究は原理と1次実装に焦点を当てており、そのためにいくつかの制約がある。第1に、非被覆Siエタロン(Siウェハー)が使用されており、結果として得られる低フィネスのために、複数エタロンがカスケード接続されている。より高いフィネス値を提供するカスタム設計の被覆シリコン(又は他の分散材料)エタロンにより、コヒーレンス長及び測定SN比を含むシステム性能が向上するであろう。処理アプローチは、相互相関に基づくシンプルな赤/青サブバンド分析とPSFシフト測定を用いている。このことは、スペクトルバンドを通して起こる連続的なチャーピングをよりよく利用するために増強できる可能性が高い。これに関連して、従来のCR-OCTと比べて課される処理ペナルティが最小限となる絶対遅延解像アルゴリズムの構築は極めて重要であり、進行中の研究の主題である。
【0043】
種々の実施形態において、上記手順はいくつかの異なる種類の電磁放射線源を用いて実行することができるが、いくつかの例にでは使用される線源の種類に応じて手順を修正することができる。
【0044】
<デュアルFSR>
いくつかの実施形態では、線源は、上で開示された「デュアルFSR」アプローチにおけるように、2つの異なるFSRを有する周波数コムを生成するように修正されてもよい。このアプローチでは、各データポイントについて2つのAラインが収集され、2つの異なるFSRのそれぞれについて1つのAラインが収集され、2つのFSRに対応するAラインデータを統合して絶対深度が決定される。
【0045】
<縮退周波数コム>
本明細書に開示されるような実施形態では、縮退周波数コムを生成する線源を用いて絶対深度を決定することができる。分散型エタロンを用いて縮退(チャープ)源を作成する上記の実施形態に加えて、他の実施形態では、プリズム又はプログラム可能レーザを用いて縮退周波数コムを作成することができる。種々の実施形態では、SPMLレーザを使用して縮退周波数コムを生成する上記の技術は、PCML、FDML又は典型的な外部共振器レーザのような他のタイプのレーザ光源を使用して達成することもできる。さらに、特定の技術の何れかで作成された縮退周波数コムが連続的である必要はない。
【0046】
<周波数コム線の変調/チューニング/シフト>
いくつかの実施形態では、既知のFSRを有するステップ周波数コムを生成する線源を使用することができ、その線源では、周波数コム線が、周波数シフタ、位相変調器、エタロン角度調節手段又は他の適切な手段を使用して、スペクトルドメインにおいて、既知の量(Δf)だけシフトされ、チューニングされ及び/又は変調される。例えば、いくつかの実施形態では、周波数シフタ又は位相変調器を干渉計の前のレーザ出力に配置することができる。他の実施形態では、周波数コムを生成するスペクトルフィルタ自体を角度調節すること(又は屈折率を変化させること又は他の手段)により、レーザキャビティの内部でエタロン角度調節を行ってもよい。上述のデュアルFSRアプローチと同様に、2つのAライン(深度信号)が検出され、これらはコム線シフト/チューニング/変調を有して及び有さずに得られる。
【0047】
スペクトルドメインにおけるコム線シフトにより、測定された干渉縞信号(深度信号)間の光遅延(τ)依存位相シフトΔφが得られる。図7は、時間及び光周波数ドメインにおける、2つの異なる遅延τ1及びτ2を有する連続掃引干渉縞の例を示し、周波数ドメイントレースは2つの遅延の間の周波数コムのシフトを示す。測定された位相シフトΔφは、図7のステップ干渉縞(stepped fringe)で見ることができ、絶対深度について解くために使用される。ベースバンド縁部での位相差は次式で与えらる。
【0048】
【数8】
【0049】
絶対深度は以下のように決定される。
【0050】
【数9】
【0051】
一般に、周波数シフトΔfは、最大ターゲット深度での測定位相シフトのπ位相曖昧さを避けるのに十分小さくなければならず、
【数10】
である。
【0052】
式中、Nはコヒーレンス長内の次数の数である。
【0053】
<ステップレーザ、プラス、掃引レーザ>
いくつかの実施形態では、ステップレーザ光源(stepped laser source)と掃引レーザ光源との組み合わせを使用して、サンプルからの絶対深度情報を得ることができる。既知のFSRを有するステップレーザ(レーザ1、図8)を使用して、サンプルからのAライン(深度信号)を検出してもよい。上述のように、これにより、レーザ1を用いて収集されたAラインにおける円形範囲(Δτ=1/FSR,LB=c/FSR/2)についての深度の曖昧さが生成される。このデータを補足するために、狭い線幅(長いコヒーレンス長)の連続掃引レーザ(レーザ2、図8)を用いて、同じサンプル(例えば、図8に示すような角膜及び/又は水晶体、右上)の第2のAライン(深度信号)を得ることができる。得られた深度信号の相対深度(次数)を、ステップレーザ(レーザ1)対掃引レーザ(レーザ2)で得られた絶対深度に照らし合わせることで、レーザ1の周波数コムを用いて得られたデータの絶対深度を決定することができる。
【0054】
一般に、レーザ2の軸方向分解能は、レーザ1の円形範囲(LB)の半分か又はそれより良くあるべきである。また、レーザ2の掃引速度を最大にするためには、レーザ2の光バンド幅を最小に保つ必要があり、理想的には、レーザ1とレーザ2のAラインレートは同じか、又は非常に類似していることが望ましい。最後に、レーザ2のコヒーレンス長はレーザ1のコヒーレンス長と同じか、それ以上であるべきである。
【0055】
図9は、本発明の種々の実施形態とともに使用され得る干渉計システムを示す図である。図9は、自由空間光学系(図9、パネルA)又はファイバ構成(図9、パネルB)を用いて与えられ得るマッハ・ツェンダー干渉計を例示する。他のタイプの干渉計(例えば、マイケルソン干渉計)も適用できる。図9のパネルA又はパネルBの何れかにおける光源LSは、図2のような縮退周波数コムを有するSPMLレーザ又は他のタイプのレーザ(例えば、PCML、FDML又は従来の外部キャビティレーザ)であってもよく、ステップ周波数コムの線がシフト、チューニング又は変調される光源であってもよく、デュアルFSR光源であってもよく、あるいはステップ周波数コムを掃引レーザと組み合わせた光源であってもよい。
【0056】
LSから放射されるビームB9は干渉計入力に向けられ、ここでビームはビームスプリッタ(BS3)を用いてほぼ等しい長さの2つの経路に分割される。B10はサンプルSに向けられる。そして、関心対象からの後方散乱光が干渉計出力(B11)に向けられる。リファレンスアームにおいて、ビームB12は位相モジュレータ(PM)に向けられる。PMの後のビーム(即ち、ビームB13)は、干渉計出力に向けられて、BS4によってビームB11と結合された後にビームB11と干渉する。次いで、出力ビームB14は、検出器D(例えば、フォトダイオード)によって検出される。あるいは、図2Bに示すファイバベースの干渉計によって、出力ビームB14及びB15の間のπの位相シフトによるバランスの取れた検出がすぐに可能となる。検出信号は、データ収集及び処理システム(データ収集ボード又はリアルタイムオシロスコープ(DAQ)を備えてもよい)を用いて、サンプリングレートfsでデジタル化される。2次元又は3次元画像を形成するために、複数の波長掃引(A1,A2,・・,An)を取得してもよい。
【0057】
図10を参照すると、CR-OCTにおける絶対深度を解像するためのシステム(例えば、データ収集及び処理システム)の例1000が、開示された主題のいくつかの実施形態にしたがって示される。図10に示すように、コンピューティングデバイス1010は、光干渉計システム1000から干渉データを受信することができる。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス1010は、光干渉計システム1000から受信された干渉データに基づいて絶対深度を決定するために、絶対深度を解像するためのシステム1004の少なくとも一部を実行することができる。追加的に又は代替として、いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス1010は、光干渉計システム1000から受信した干渉データに関する情報を通信ネットワーク1006を介してサーバ1020に伝達することができ、通信ネットワーク1006は、干渉データに基づいて絶対深度を決定するために、絶対深度を解像するためのシステム1004の少なくとも一部を実行することができる。いくつかのこのような実施形態では、サーバ1020は、絶対深度情報などの絶対深度を解像するためのシステム1004の出力を示す情報をコンピューティングデバイス1010(及び/又は他の任意の適切なコンピューティングデバイス)に返すことができる。この情報は、ユーザ(例えば、研究者、オペレータ、臨床医等)に送信され及び/又は提示され、及び/又は(例えば、リサーチデータベース又は対象に関連する医療記録の一部として)保存されてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス1010及び/又はサーバ1020は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、サーバコンピュータ、物理コンピューティングデバイスによって実行される仮想マシンなど、任意の適切なコンピューティングデバイス又は装置の組み合わせとすることができる。本明細書に記載されるように、絶対深度を解像するためのシステム1004は、干渉データに関する情報及び/又は絶対深度情報をユーザ(例えば、研究者及び/又は医師)に提示することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、光干渉計システム1000は、CR-OCTなどの光干渉法に適した任意の線源であり得る電磁放射線源1002を含んでもよい。他の実施形態では、電磁放射線源1002は、コンピューティングデバイス1010の近くに配置することができる。例えば、電磁放射線源1002はコンピューティングデバイス1010と組み合わされてもよい(例えば、コンピューティングデバイス1010は、光干渉情報の取り込み及び/又は保存をするための装置の一部として構成することができる)。他の実施形態として、電磁放射線源1002は、ケーブルや直接ワイヤレスリンクなどによってコンピューティングデバイス1010に接続されてもよい。追加的に又は代替として、いくつかの実施形態では、電磁放射線源1002は、コンピューティングデバイス1010の近くに及び/又はコンピューティングデバイス1010から離れて位置することができ、通信ネットワーク(例えば、通信ネットワーク1006)を介してコンピューティングデバイス1010(及び/又はサーバ1020)に情報を伝達することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、通信ネットワーク1006は、任意の適切な通信ネットワークであるか、又は通信ネットワークの組み合せであってもよい。例えば、通信ネットワーク1006は、Wi-Fi(登録商標)ネットワーク(1つ以上の無線ルータ、1つ以上のスイッチなどを含むことができる)、ピアツーピアネットワーク(例えば、ブルートゥース(登録商標)ネットワーク)、セルラーネットワーク(例えば、CDMA、GSM、LTE、LTE ADVANCED、WiMAXなどの任意の適切な標準に準拠する3Gネットワーク、4Gネットワークなど)、有線ネットワークなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、通信ネットワーク1006は、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、パブリックネットワーク(例えば、インターネット)、プライベート又はセミプライベートネットワーク(例えば、企業又は大学のイントラネット)、その他の任意の適切なタイプのネットワーク、又は任意の適切なネットワークの組み合わせであってもよい。図10に示す通信リンクは、それぞれ、有線リンク、光ファイバリンク、Wi-Fi(登録商標)リンク、ブルートゥース(登録商標)リンク、セルラーリンクなどの任意の適切な通信リンク又は通信リンクの組合せであってもよい。
【0061】
図11は、開示された主題のいくつかの実施形態に係る、コンピューティングデバイス1010及びサーバ1020を実現するために使用することができるハードウェアの例1100を示す。図11に示すように、いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス1010は、プロセッサ1102、ディスプレイ1104、1つ以上の入力1106、1つ以上の通信システム1108、及び/又はメモリ1110を備えることができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ1102は、例えば中央処理ユニット、グラフィック処理ユニットなどの任意の適切なハードウェアプロセッサ又はプロセッサの組合せとすることができる。いくつかの実施形態では、ディスプレイ1104は、例えばコンピュータモニタ、タッチスクリーン、テレビなどの任意の適切なディスプレイデバイスを備えることができる。いくつかの実施形態では、入力1106は、例えばキーボード、マウス、タッチスクリーン、マイクロホンなどの、利用者の入力を受信するために使用できる任意の適切な入力デバイス及び/又はセンサを備えることができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、通信システム1108は、通信ネットワーク1006及び/又は任意の他の適切な通信ネットワーク上で情報を通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを備えることができる。例えば、通信システム1108は、1つ以上の送受信器、1つ以上の通信チップ及び/又はチップセットなどを備えることができる。より特定の例では、通信システム1108は、Wi-Fi(登録商標)接続、ブルートゥース(登録商標)接続、セルラー接続、イーサネット(登録商標)接続などを確立するために使用できるハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを備えることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、メモリ1110は、例えば、プロセッサ1102がディスプレイ1104を介してコンテンツを提示するためや(複数の)通信システム1108などを介してサーバ1020と通信するためなどに使用できる命令や値などを保存するために使用することができる任意の適切なストレージデバイスを1つ又は複数備えることができる。メモリ1110は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ストレージ又はこれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ1110は、RAM、ROM、EEPROM、1つ以上のフラッシュドライブ、1つ以上のハードディスク、1つ以上のソリッドステートドライブ、1つ以上の光学ドライブなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、メモリ1110において、コンピューティングデバイス1010の動作を制御するためのコンピュータプログラムが符号化されていてもよい。このような実施形態では、プロセッサ1102は、コンピュータプログラムの少なくとも一部を実行して、コンテンツ(例えば、画像、ユーザインタフェース、グラフィックス、テーブルなど)の提示、サーバ1020からのコンテンツの受信、サーバ1020への情報の送信などを行うことができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、サーバ1020は、プロセッサ1112、ディスプレイ1114、1つ以上の入力1116、1つ以上の通信システム1118及び/又はメモリ1120を備えることができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ1112は、例えば中央処理ユニット、グラフィック処理ユニットなどの任意の適切なハードウェアプロセッサ又はプロセッサの組合せとすることができる。いくつかの実施形態では、ディスプレイ1114は、例えばコンピュータモニタ、タッチスクリーン、テレビなどの任意の適切なディスプレイデバイスを備えることができる。いくつかの実施形態では、入力1116は、例えばキーボード、マウス、タッチスクリーン、マイクロホンなどの、利用者の入力を受信するために使用できる任意の適切な入力デバイス及び/又はセンサを備えることができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、通信システム1118は、通信ネットワーク1006及び/又は任意の他の適切な通信ネットワーク上で情報を通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを備えることができる。例えば、通信システム1118は、1つ以上の送受信器、1つ以上の通信チップ及び/又はチップセットなどを備えることができる。より特定の例では、通信システム1118は、Wi-Fi(登録商標)接続、ブルートゥース(登録商標)接続、セルラー接続、イーサネット(登録商標)接続などを確立するために使用できるハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを備えることができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、メモリ1120は、例えば、プロセッサ1112がディスプレイ1114を介してコンテンツを提示するためや1つ以上のコンピューティングデバイス1010と通信するためなど使用することができる命令や値などを保存するために使用できる任意の適切なストレージデバイスを1つ又は複数備えることができる。メモリ1120は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ストレージ又はこれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ1120は、RAM、ROM、EEPROM、1つ以上のフラッシュドライブ、1つ以上のハードディスク、1つ以上のソリッドステートドライブ、1つ以上の光学ドライブなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、メモリ1120において、サーバ1020の動作を制御するためのサーバプログラムが符号化されていてもよい。そのような実施形態では、プロセッサ1112は、サーバプログラムの少なくとも一部を実行して、情報及び/又はコンテンツ(例えば、組織の識別及び/又は分類の結果や、ユーザインタフェースなど)を1つ又は複数のコンピューティングデバイス1010に送信すること、1つ又は複数のコンピューティングデバイス1010から情報及び/又はコンテンツを受信すること、1つ又は複数のデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ノートパソコン、タブレットコンピュータ、スマートフォンなど)から命令を受信することなどを、行うことができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、任意の適切なコンピュータ可読媒体を使用して、本明細書に記載される機能及び/又はプロセスを実行するための命令を保存することができる。例えば、いくつかの実施形態では、コンピュータ可読媒体は、一時的又は非一時的なものであってもよい。例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体は、磁気媒体(ハードディスク、フロッピーディスクなど)、光学媒体(コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、ブルーレイディスク(登録商標)など)、半導体媒体(RAM、フラッシュ記憶、電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に処理可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)など)、送信中に一時的でない若しくは永続性の類似性を欠いていない任意の適切な媒体及び/又は任意の適切な有形媒体などの媒体を含むことができる。別の例として、一時的なコンピュータ可読媒体は、ネットワーク上の、ワイヤ内の、導体内の、光ファイバ内の、回路内の若しくは送信中の永続性の類似性を欠く一時的な任意の適切な媒体内の信号を含むことができ、及び/又は任意の適切な無形媒体を含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、光信号はフォトダイオードによって検出される。この検出機能を実行するために、光検出器、フォトダイオード、ライン走査及び二次元カメラ並びにフォトダイオードアレイを含む、しかしこれらに限定されない、任意のオプションの電子変換デバイスを使用できることは認識されるべきである。
【0069】
本明細書において使用される「メカニズム」との用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の適切な組合せを包含することができることに留意すべきである。
【0070】
図12は、開示された主題のいくつかの実施形態による、CR-OCTにおける絶対深度を解像するためのプロセスの例1200を示す。図12に示されるように、1202において、プロセス1200は、光路深度に位置するサンプルを照射するための放射線を生成することができ、電磁放射線源は、サンプル内の光路深度を決定するのを容易にするために、放射線をサンプルに提供することができる。1204において、プロセス1200は、放射線の第1の部分を干渉計のリファレンスアームに送ることができる。1206において、プロセス1200は、放射線の第2の部分を干渉計のサンプルアームに送ることができる。1208において、プロセス1200は、サンプルアームに送られた放射線でサンプルを調べて(interrogate)、後方散乱放射線を生成させることができる。1210において、プロセス1200は、サンプルからの後方散乱放射線を収集することができる。1212において、プロセス1200は、収集された後方散乱放射線とリファレンスアームに送られた放射線との間の干渉縞を生成することができる。最後に、1214において、プロセス1200は、受信した干渉縞からサンプルの光路深度を計算することができる。
【0071】
図12のプロセスの上記の工程は、図示の順番及びシーケンスに限定されない任意の順番又はシーケンスで実行又は遂行することができる。また、図12のプロセスの上記工程のいくつかは、待ち時間及び処理時間を短縮するために、必要に応じて実質的に同時に又は並行して実行又は遂行することができる。
【0072】
したがって、本発明について特定の実施形態及び例に関連して記載したが、本発明は必ずしもこれらに限定されず、多くの他の実施形態、例、使用、改良物並びに実施形態、例、使用からの改良物の発展形態が特許請求の範囲に含まれることを意図している。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12