IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヨータイの特許一覧

特許7637206クロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法及びクロミア含有キャスタブル耐火物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】クロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法及びクロミア含有キャスタブル耐火物
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/66 20060101AFI20250219BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
C04B35/66
F27D1/00 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023177639
(22)【出願日】2023-10-13
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000138772
【氏名又は名称】株式会社ヨータイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】小柳 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】茂田 純一
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-180630(JP,A)
【文献】特開2016-199449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ及び/又はムライトを主成分とする耐火性原料とクロミア原料を、シリカゾルを用いて混練し、
前記クロミア原料の含有量を30~90質量%とし、
粒径が0.09mm以下の前記クロミア原料(微粒クロミア原料)の含有量を20~28質量%とし、
前記シリカゾルのSiO固形分濃度を30~40質量%とすること、
を特徴とするクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法。
【請求項2】
前記微粒クロミア原料の含有量が20質量%以上25質量%以下の場合は、前記シリカゾルのSiO固形分濃度を35質量%超40質量%以下とし、
前記微粒クロミア原料の含有量が25質量%超30質量%以下の場合は、前記シリカゾルのSiO固形分濃度を30質量%以上35質量%以下とすること、
を特徴とする請求項1に記載のクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法。
【請求項3】
前記シリカゾルの前記SiO固形分濃度によって振動フロー値を調整すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理炉の内張り用耐火物等として使用することができるキャスタブル耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロミア(Cr)を含有する耐火物は、CaO-SiO系のスラグに対する耐食性に優れていることから、鉄鋼用、非鉄金属用及びセメント焼成用等の耐火材として広範囲に使用されている。特に、灰、汚泥及びごみ等を溶融する廃棄物処理炉ではスラグによる浸食を受けることから、クロミア系のキャスタブルが使用される傾向にある。
【0003】
しかしながら、クロミアを比較的多く含む緻密質キャスタブル耐火物は、耐食性に優れる一方で、耐スポーリング性や耐爆裂性に劣るという問題を有している。これに対して、例えば、特許文献1(特開平6-293570号公報)において、「粒度調整を施したアルミナ質原料またはアルミナ質原料とジルコン質原料との混合物30~85重量%、粒子径が1mm~1μmのクロミア粗角7~50重量%、粒子径が45μm以下の耐火性微粉末3~20重量%、粒子径が100~1μmのアルミナセメント0.5~10重量%、および適宜量の分散剤からなり、トータルSiO含量を6重量%以下としたことを特徴とするアルミナ・クロミア質キャスタブル耐火物」が提案されている。
【0004】
上記特許文献1に記載のアルミナ・クロミア質キャスタブル耐火物においては、粒子径が1mm~1μmのクロミア粗角を使用することで、クロミアの添加量を比較的低く抑えても耐食性向上作用が効果的に得られ、しかも耐熱衝撃性や施工性が低下することのないアルミナ・クロミア質キャスタブル耐火物が得られる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-293570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のアルミナ・クロミア質キャスタブル耐火物においては耐熱衝撃性や施工性を損なうことなく耐食性が向上しているものの、近年では省エネルギーや炉の操業時間延長に対する要求が高くなっており、より優れた耐爆裂性及び耐スポーリング性が切望されている。
【0007】
加えて、クロミアを含有するキャスタブルは優れた耐食性を有する一方で、粘性が高く、実炉で使用するためには施工性を担保する必要がある。具体的には、施工性の指標となる振動フロー値に関して、高い値を付与する必要がある。
【0008】
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、優れた耐爆裂性、耐スポーリング及び耐食性を有することに加えて、良好な施工性を有するクロミア含有キャスタブル耐火物及びその簡便かつ効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、クロミアを含むキャスタブル耐火物の組成及び混練方法等について鋭意研究を重ねた結果、シリカゾルを用いて原料を混練する場合、粒径が0.09mm以下の微粒クロミア原料を適正量添加することでクロミア含有キャスタブル耐火物の耐食性、耐スポーリング性及び施工性が向上すること等を見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明は、
アルミナ及び/又はムライトを主成分とする耐火性原料とクロミア原料を、シリカゾルを用いて混練し、
前記クロミア原料の含有量を30~90質量%とし、
粒径が0.09mm以下の前記クロミア原料(微粒クロミア原料)の含有量を20~30質量%とし、
前記シリカゾルのSiO固形分濃度を30~40質量%とすること、
を特徴とするクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法、を提供する。
【0011】
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法においては、30~90質量%のクロミア(Cr)を含有させることで、クロミア含有キャスタブル耐火物に優れた耐食性を付与している。ここで、30~90質量%の範囲において、耐食性を重視する場合はクロミアの含有量を増加させ、施工性(振動フロー値)を向上させたい場合は含有量を低減させればよい。クロミアの含有量が30質量%未満の場合は十分な耐食性を発現させることができず、クロミアの含有量が90質量%を超える場合は耐熱スポーリング性や耐爆裂性が低下する。
【0012】
また、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法においては、キャスタブル耐火物の各原料をSiO固形分が30~40質量%であるシリカゾルで混練することで、乾燥後に得られる組織内に微細な連続した網目状の気孔を形成させることができる。当該気孔の形成によって、極めて効果的にクロミア含有キャスタブル耐火物の耐爆裂性が改善し、耐スポーリング性が向上する。シリカゾルのSiO固形分を30質量%以上とすることでこれらの効果を発現させることができ、40質量%以下とすることでキャスタブルの流動性の低下を抑制できる。
【0013】
加えて、SiO固形分が30~40質量%であるシリカゾルの添加に起因する連続した網目状気孔の形成により、クロミア含有キャスタブル耐火物の乾燥時間が短縮され、当該乾燥に必要なエネルギー消費量を低減することができる。
【0014】
また、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法においては、粒径が0.09mm以下のクロミア原料(微粒クロミア原料)を20~30質量%添加することで、クロミア含有キャスタブル耐火物の流動性を向上させ、実用的な施工性を付与することができる。加えて、微粒クロミア原料を添加することによって、シリカゾルの添加によって低下したクロミア含有キャスタブル耐火物の耐食性を向上させることもできる。微粒クロミア原料の添加量を20質量%未満とすると、これらの効果を十分に発現させることができず、30質量%を超えて微粒クロミア原料を添加すると、凝集が進行してクロミア含有キャスタブル耐火物の粘度が高くなり、実施工に用いることができない。
【0015】
また、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法においては、前記微粒クロミア原料の含有量が20質量%以上25質量%以下の場合は、前記シリカゾルのSiO固形分濃度を35質量%超40質量%以下とし、前記微粒クロミア原料の含有量が25質量%超30質量%以下の場合は、前記シリカゾルのSiO固形分濃度を30質量%以上35質量%以下とすること、が好ましい。
【0016】
シリカゾルを用いることで、クロミア含有キャスタブル耐火物の耐爆裂性が改善し、耐スポーリング性が向上する。一方で、シリカゾルの添加はクロミア含有キャスタブル耐火物の施工性(流動性)を低下させると共に、クロミア含有キャスタブル耐火物の融点の低下に起因して耐食性が損なわれる。これに対して、微細クロミアの添加はクロミア含有キャスタブル耐火物の流動性及び耐食性を向上させる。当該関係に基づいて、本発明者らがクロミア含有キャスタブル耐火物に添加するシリカゾルSiO固形分濃度と微細クロミアの添加量について鋭意検討した結果、微粒クロミア原料の含有量が20質量%以上25質量%以下の場合は、シリカゾルのSiO固形分濃度を35質量%超40質量%以下とし、微粒クロミア原料の含有量が25質量%超30質量%以下の場合は、シリカゾルのSiO固形分濃度を30質量%以上35質量%以下とすることで、クロミア含有キャスタブル耐火物の流動性と耐食性を維持しつつ、良好な耐爆裂性及び耐スポーリング性を高いレベルで両立できることが明らかとなった。
【0017】
更に、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法においては、前記シリカゾルの前記SiO固形分濃度によって振動フロー値を調整すること、が好ましい。クロミア含有キャスタブル耐火物の振動フロー値(施工性)はシリカゾルのSiO固形分濃度にも影響されるところ、シリカゾルのSiO固形分濃度によって振動フロー値を調整することができる。ここで、クロミア含有キャスタブル耐火物の振動フロー値は200mm以上とすることが好ましく、215mm以上とすることがより好ましく、230mm以上とすることが最も好ましい。ここで、シリカゾルの添加量はクロミア含有キャスタブル耐火物の組成等に応じて適宜調整すればよいが、全体の7.0~8.5質量%とすることが好ましい。7.0質量%以上のシリカゾルを添加することでクロミア含有キャスタブル耐火物に十分な流動性を付与することができ、良好な施工性を担保することができる。一方で、シリカゾルの添加量を8.5質量%以下とすることで、微粉末と粗粒の分離に起因する強度不足を抑制することができる。
【0018】
また、本発明は、
アルミナ及び/又はムライトを主成分とする耐火性原料とクロミア原料を含有し、
前記クロミア原料の含有量が30~90質量%であり、
粒径が0.09mm以下の前記クロミア原料(微粒クロミア原料)の含有量が20~30質量%であり、
SiO固形分が30~40質量%であるシリカゾルで混練されていること、
を特徴とするクロミア含有キャスタブル耐火物、も提供する。
【0019】
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物においては、30~90質量%のクロミア(Cr)を含有させることで、クロミア含有キャスタブル耐火物に優れた耐食性が付与されている。ここで、30~90質量%の範囲において、耐食性を重視する場合はクロミアの含有量を増加させ、施工性(振動フロー値)を向上させたい場合は含有量を低減させればよい。クロミアの含有量が30質量%未満の場合は十分な耐食性を発現させることができず、クロミアの含有量が90質量%を超える場合は耐熱スポーリング性や耐爆裂性が低下する。
【0020】
また、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物においては、粒径が0.09mm以下のクロミア原料(微粒クロミア原料)を20~30質量%含有することで、クロミア含有キャスタブル耐火物の流動性が向上しており、実用的な施工性を付与することができる。加えて、微粒クロミア原料の添加によって、シリカゾルの含有によって低下した耐食性が向上している。微粒クロミア原料の含有量が20質量%未満の場合はこれらの効果を十分に発現させることができず、30質量%を超えて微粒クロミア原料を含有すると、凝集が進行してクロミア含有キャスタブル耐火物の粘度が高くなり、実施工に用いることができない。
【0021】
また、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物においては、SiO固形分が30~40質量%であるシリカゾルでキャスタブル耐火物の各原料が混練されている。その結果、クロミア含有キャスタブル耐火物の耐爆裂性が改善されており、耐スポーリング性も向上している。
【0022】
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物においては、前記微粒クロミア原料の含有量が20質量%以上25質量%以下であり、SiO固形分が35質量%超40質量%以下である前記シリカゾルで混練されていること、が好ましい。
【0023】
また、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物においては、前記微粒クロミア原料の含有量が25質量%超30質量%以下であり、SiO固形分が30質量%以上35質量%以下である前記シリカゾルで混練されていること、が好ましい。
【0024】
微粒クロミア原料の含有量が20質量%以上25質量%以下の場合は、シリカゾルのSiO固形分濃度を35質量%超40質量%以下とし、微粒クロミア原料の含有量が25質量%超30質量%以下の場合は、シリカゾルのSiO固形分濃度を30質量%以上35質量%以下とすることで、クロミア含有キャスタブル耐火物の流動性と耐食性を維持しつつ、良好な耐爆裂性及び耐スポーリング性を高いレベルで両立できる。
【0025】
更に、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物においては、110℃で24時間乾燥後の状態において、組織内に直径が10~100nmの気孔が連続してなる網目状構造が形成されること、が好ましい。
【0026】
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物においては、SiO固形分が30~40質量%であるシリカゾルでキャスタブル耐火物の各原料が混練されていることから、乾燥後に得られる組織内に微細な連続した網目状の気孔が形成する。当該気孔の直径を10~100nmとすることによって、極めて効果的にクロミア含有キャスタブル耐火物の耐爆裂性が改善し、耐スポーリング性が向上する。シリカゾルのSiO固形分を30質量%以上とすることでこれらの効果を発現させることができ、40質量%以下とすることで過剰な気孔の形成による強度低下等を抑制することができる。
【0027】
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物は実炉に適用可能な施工性を有しているが、振動フロー値を200mm以上とすることが好ましく、215mm以上とすることがより好ましく、230mm以上とすることが最も好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、優れた耐爆裂性、耐スポーリング及び耐食性を有することに加えて、良好な施工性を有するクロミア含有キャスタブル耐火物及びその簡便かつ効率的な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物及びその製造方法の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0030】
1.クロミア含有キャスタブル耐火物
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物は、アルミナ及び/又はムライトを主成分とする耐火性原料とクロミア原料がシリカゾルで混練されているものである。以下、主成分と各添加成分及びキャスタブル耐火物の特性について詳細に説明する。
【0031】
(1)主成分(耐火性骨材)
主成分はアルミナ及び/又はムライトであり、どちらか一方のみを使用してもよく、両方を使用してもよい。主成分の含有量は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、キャスタブル耐火物に求められる特性に応じて適宜調整すればよいが、10~70質量%とすることが好ましい。
【0032】
(1-1)アルミナ
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物の主成分として、適当に粒度調整を施したアルミナ原料を用いることができる。アルミナ原料の種類は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々のアルミナ原料を用いることができる。
【0033】
アルミナ原料には、例えば、電融アルミナ、電融ムライト、焼結アルミナ、合成ムライト、ボーキサイト、シリマナイト、バン土頁岩等の高アルミナ質原料を用いることができる。
【0034】
(1-2)ムライト
また、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物の主成分としては、適当に粒度調整を施したムライト原料を用いることもできる。ムライト原料の種類は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々のムライト原料を用いることができる。
【0035】
ムライト原料には、例えば、電融ムライトや焼結ムライトを用いることができる。ここで、ムライト原料の粒径は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されないが、200μm以下の微粉とすることで焼結が促進され、熱膨張が抑制されることで耐熱衝撃性の改善効果を高めることができる。
【0036】
(2)必須の添加成分
(2-1)クロミア(Cr):30~90質量%
30~90質量%のクロミアを含有することで、キャスタブル耐火物にCaO-SiO系のスラグに対する優れた耐食性を付与することができる。クロミアの含有量を30質量%以上とすることで、当該効果を明確に発現させることができ、クロミアの含有量を90質量%以下とすることで、シリカゾルを用いて混練する場合であっても、容易に良好な混合状態を得ることができる。ここで、クロミア含有量の増加に伴って耐食性が向上し、クロミア含有量が少ない場合はアルミナ含有量が増加することから耐熱スポーリング性が向上する。従って、キャスタブル耐火物の使用箇所や炉に要求される耐食性と耐熱スポーリング性のバランスを考慮して、30~90質量%の範囲においてクロミアの添加量を調整すればよい。
【0037】
また、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物においては、粒径が0.09mm以下のクロミア原料(微粒クロミア原料)の含有量が20~30質量%となっていることが大きな特徴となっている。粒径が0.09mm以下のクロミア原料(微粒クロミア原料)を20~30質量%含有することで、クロミア含有キャスタブル耐火物の流動性が向上しており、実用的な施工性を付与することができる。加えて、微粒クロミア原料の添加によって、シリカゾルの含有によって低下した耐食性が向上している。微粒クロミア原料の含有量が20質量%未満の場合はこれらの効果を十分に発現させることができず、30質量%を超えて微粒クロミア原料を含有すると、凝集が進行してクロミア含有キャスタブル耐火物の粘度が高くなり、実施工に用いることができない。
【0038】
クロミアの原料としては、酸化クロム、電融クロミア、焼成クロミア、クロミアを含む電融原料、クロミアを含む焼成原料及びクロム鉱のうちの少なくとも一つを使用すること、が好ましい。これらの原料を使用することで、簡便かつ効率的にキャスタブル耐火物に所望の量のクロミアを添加することができる。
【0039】
(2-2)SiO固形分
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物においては、各原料を混練するためにSiO固形分が30~40質量%のシリカゾルを用いるため、最終的に得られるクロミア含有キャスタブル耐火物には当該シリカゾルに起因する微量のSiO固形分が含まれる。SiO固形分の含有量はシリカゾルのSiO固形分濃度やシリカゾルの添加量に依存するが、2~5質量%となることが好ましい。なお、シリカゾルのSiO固形分濃度を40質量%、シリカゾルの添加量を7質量%とすると、キャスタブル耐火物に含まれるSiO固形分の含有量は約2.8質量%となる。
【0040】
キャスタブル耐火物に含まれるSiO固形分は混練に用いるシリカゾルのSiO固形分濃度及び使用量に依存するが、キャスタブル耐火物の各原料をSiO固形分が30~40質量%であるシリカゾルで混練することで、乾燥後に得られる組織内に微細な連続した網目状の気孔が形成される。
【0041】
従って、クロミアを含有するキャスタブル耐火物において、このような特徴を有する網目状の気孔を観察することによって、キャスタブル耐火物の各原料をSiO固形分が30~40質量%であるシリカゾルで混練したと見做すこともできる。当該気孔を確認する方法は特に限定されず、光学顕微鏡や走査電子顕微鏡等を用いて観察すればよい。
【0042】
また、微粒クロミア原料の含有量が20質量%以上25質量%以下の場合は、シリカゾルのSiO固形分濃度を35質量%超40質量%以下とし、微粒クロミア原料の含有量が25質量%超30質量%以下の場合は、シリカゾルのSiO固形分濃度を30質量%以上35質量%以下とすることが好ましい。微粒クロミア原料の含有量が20質量%以上25質量%以下の場合は、シリカゾルのSiO固形分濃度を35質量%超40質量%以下とし、微粒クロミア原料の含有量が25質量%超30質量%以下の場合は、シリカゾルのSiO固形分濃度を30質量%以上35質量%以下とすることで、クロミア含有キャスタブル耐火物の流動性と耐食性を維持しつつ、良好な耐爆裂性及び耐スポーリング性を高いレベルで両立することができる。
【0043】
(3)任意の添加成分
(3-1)セメント原料
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物には、結合剤として、アルミナセメントを添加することができる。アルミナセメントとしては、一般に市販されているものが使用でき、添加量は1~5質量%とすることが好ましい。セメントの含有量が1質量%未満ではクロミア含有キャスタブル耐火物の強度を向上させる効果に乏しく、5質量%以上の場合はCaO成分過多により、耐食性低下の原因となる。セメント含有量の上限値は2質量%以下とすることがより好ましい。セメントの含有量を2質量%以下とすることで、クロミア含有キャスタブル耐火物の耐熱性を改善させることができ、耐食性も向上させることができる。
【0044】
(3-2)ジルコニア(ZrO)微粉末
クロミア含有キャスタブル耐火物にZrOを添加することで、クロミア含有キャスタブル耐火物の耐熱衝撃性を向上させることができる。ZrO微粉末には粒径1mm以下のジルコニア原料を用いることが好ましく、含有量は1~10質量%とすることが好ましい。
【0045】
(3-3)耐火性超微粉末
クロミア含有キャスタブル耐火物には、シリカフラワーや粘度等の超微粉原料を添加してもよい。粒径が10μm以下の超微粉原料を使用することで流動性が向上し、緻密な施工体を得ることができる。耐火性超微粉末の含有量は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、クロミア含有キャスタブル耐火物に求められる流動性等に応じて適宜調整すればよい。
【0046】
(4)クロミア含有キャスタブル耐火物の特性
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物には30~90質量%のクロミアが含有しており、クロミア含有キャスタブル耐火物に優れた耐食性が付与されている。ここで、30~90質量%の範囲において、耐食性を重視する場合はクロミアの含有量を増加させ、施工性(振動フロー値)を向上させたい場合は含有量を低減させればよい。クロミアの含有量が30質量%未満の場合は十分な耐食性を発現させることができず、クロミアの含有量が90質量%を超える場合は耐熱スポーリング性や耐爆裂性が低下する。
【0047】
また、粒径が0.09mm以下のクロミア原料(微粒クロミア原料)を20~30質量%含有することで、クロミア含有キャスタブル耐火物の流動性が向上しており、実用的な施工性を付与することができる。加えて、微粒クロミア原料の添加によって、シリカゾルの含有によって低下した耐食性が向上している。微粒クロミア原料の含有量が20質量%未満の場合はこれらの効果を十分に発現させることができず、30質量%を超えて微粒クロミア原料を含有すると、凝集が進行してクロミア含有キャスタブル耐火物の粘度が高くなり、実施工に用いることができない。
【0048】
また、SiO固形分が30~40質量%であるシリカゾルでキャスタブル耐火物の各原料が混練されていることから、乾燥後に得られるクロミア含有キャスタブル耐火物の組織内には微細な連続した網目状の気孔が形成される。当該気孔の形成によって、極めて効果的にクロミア含有キャスタブル耐火物の耐爆裂性が改善しており、耐スポーリング性も向上している。
【0049】
例えば、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物においては、110℃で24時間乾燥後の状態において、組織内に直径が10~100nmの気孔が連続してなる網目状構造が形成される。連続した網目状構造を構成する気孔の直径が10nm以上となっていることで、クロミア含有キャスタブル耐火物の耐爆裂性及び耐スポーリング性の改善効果が十分に発現されている。一方で、当該気孔の直径を100nm以下となっており、クロミア含有キャスタブル耐火物の強度低下が抑制されている。
【0050】
加えて、SiO固形分が30~40質量%であるシリカゾルに起因する連続した網目状気孔の形成により、クロミア含有キャスタブル耐火物の乾燥時間が短縮され、当該乾燥に必要なエネルギー消費量を低減することができる。
【0051】
また、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物はSiO固形分が30~40質量%であるシリカゾルで混練されていることから、クロミア含有キャスタブル耐火物中に分散したSiO固形分によって、Crから六価クロムを生成させるアルカリ及びアルカリ土類がトラップされる。その結果、極めて効果的に六価クロムの生成が抑制される。
【0052】
例えば、試験温度を1500℃、試験時間を10時間とする回転侵食試験後のキャスタブル耐火物を粉砕し、篩にかけて粒度を4mm以下としたものを評価試料とし、20gの前記評価試料を200mlの蒸留水に浸漬させ、1時間ごとに撹拌しながら24時間経過した溶液から25mlの評価溶液を採取し、前記評価溶液を遠心分離機で分離し、上澄み液に対してICP測定した場合、得られる六価クロム溶出量は5mg/l以下となることが好ましい。
【0053】
更に、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物は実炉に適用可能な施工性を有している。より具体的には、振動フロー値が200mm以上であることが好ましく、215mm以上であることがより好ましく、230mm以上であることが最も好ましい。振動フロー値とは、クロミア含有キャスタブル耐火物の流動性を示す指標であり、値が大きい場合、流動性が良好であることを意味している。
【0054】
ここで、本発明では、以下の測定で得られる値を振動フロー値としている。振動テーブル上に、JIS R 5201:92に規定されたフローコーンをコーンの先端部が上を向くように載置し、当該フローコーン内に適宜振動を与えつつクロミア含有キャスタブル耐火物を充填する。次に、充填されたクロミア含有キャスタブル耐火物の形状を崩さないようにゆっくりとコーンを除去し30秒間静止後、60Hzの振動を5秒間与える。振動終了後、崩れて広がったクロミア含有キャスタブル耐火物の底面における直径の最大値と、当該最大値部分に垂直方向の部分の直径との2箇所を測定し、2箇所の平均値を振動フロー値(mm)とする。
【0055】
2.クロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法は、アルミナ及び/又はムライトを主成分とする耐火性原料とクロミア原料を、シリカゾルを用いて混練し、クロミア原料の含有量を30~90質量%とし、粒径が0.09mm以下のクロミア原料(微粒クロミア原料)の含有量を20~30質量%とし、シリカゾルのSiO固形分濃度を30~40質量%とすること、を特徴とするものである。
【0056】
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法に用いるアルミナ及び/又はムライトを主成分とする耐火性原料、クロミア原料、シリカゾル及び任意の添加成分の詳細は上記の「1.クロミア含有キャスタブル耐火物」に記載の通りであり、以下、製造方法に関する特徴的な内容について説明する。
【0057】
本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法においては、キャスタブル耐火物の各原料をSiO固形分が30~40質量%であるシリカゾルで混練することで、乾燥後に得られる組織内に微細な連続した網目状の気孔を形成させることができる。当該気孔の形成によって、極めて効果的にクロミア含有キャスタブル耐火物の耐爆裂性が改善し、耐スポーリング性が向上する。シリカゾルのSiO固形分を30質量%以上とすることでこれらの効果を発現させることができ、40質量%以下とすることでキャスタブルの流動性の低下を抑制できる。
【0058】
加えて、SiO固形分が30~40質量%であるシリカゾルの添加に起因する連続した網目状気孔の形成により、クロミア含有キャスタブル耐火物の乾燥時間が短縮され、当該乾燥に必要なエネルギー消費量を低減することができる。シリカゾルの添加量は本願発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、クロミア含有キャスタブル耐火物の組成や所望の乾燥時間や振動フロー値等に応じて適宜調整すればよい。
【0059】
また、粒径が0.09mm以下のクロミア原料(微粒クロミア原料)を20~30質量%添加することで、クロミア含有キャスタブル耐火物の流動性を向上させ、実用的な施工性を付与することができる。加えて、微粒クロミア原料を添加することによって、シリカゾルの添加によって低下したクロミア含有キャスタブル耐火物の耐食性を向上させることもできる。微粒クロミア原料の添加量を20質量%未満とすると、これらの効果を十分に発現させることができず、30質量%を超えて微粒クロミア原料を添加すると、凝集が進行してクロミア含有キャスタブル耐火物の粘度が高くなり、実施工に用いることができない。
【0060】
また、微粒クロミア原料の含有量が20質量%以上25質量%以下の場合は、シリカゾルのSiO固形分濃度を35質量%超40質量%以下とし、微粒クロミア原料の含有量が25質量%超30質量%以下の場合は、シリカゾルのSiO固形分濃度を30質量%以上35質量%以下とすることが好ましい。
【0061】
シリカゾルを用いることで、クロミア含有キャスタブル耐火物の耐爆裂性が改善し、耐スポーリング性が向上する。一方で、シリカゾルの添加はクロミア含有キャスタブル耐火物の施工性(流動性)を低下させると共に、クロミア含有キャスタブル耐火物の融点の低下に起因して耐食性が損なわれる。これに対して、微細クロミアの添加はクロミア含有キャスタブル耐火物の流動性及び耐食性を向上させる。当該関係に基づいて、本発明者らがクロミア含有キャスタブル耐火物に添加するシリカゾルSiO固形分濃度と微細クロミアの添加量について鋭意検討した結果、微粒クロミア原料の含有量が20質量%以上25質量%以下の場合は、シリカゾルのSiO固形分濃度を35質量%超40質量%以下とし、微粒クロミア原料の含有量が25質量%超30質量%以下の場合は、シリカゾルのSiO固形分濃度を30質量%以上35質量%以下とすることで、クロミア含有キャスタブル耐火物の流動性と耐食性を維持しつつ、良好な耐爆裂性及び耐スポーリング性を高いレベルで両立することができる。
【0062】
更に、シリカゾルのSiO固形分濃度やシリカゾルの添加量によってクロミア含有キャスタブル耐火物の振動フロー値を調整し、当該振動フロー値を200mm以上とすることが好ましく、215mm以上とすることがより好ましく、230mm以上とすることが最も好ましい。クロミア含有キャスタブル耐火物に高い振動フロー値を付与することで、現場施工を円滑に実施することができる。
【0063】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0064】
≪実施例≫
表1に実施例1~実施例10として示す割合で原料を調製し、全体の7質量%となるようにシリカゾルを添加してダルトンミキサーで3分間混練し、40mm×40mm×160mmの金枠に流し込み成形した。24時間自然養生し、金枠から脱枠し、110℃の電気炉で24時間乾燥し、本発明の実施例であるキャスタブル耐火物を得た。
【0065】
また、表1には原料の特徴として、クロミア(Cr)の含有量(質量%)、粒径が0.09mm以下のクロミア原料(微粒クロミア原料)の含有量(質量%)、及びシリカゾル濃度(質量%)を示している。
【0066】
【表1】
【0067】
[評価]
得られた各クロミア含有キャスタブル耐火物について、振動フロー値、耐爆裂性、耐スポーリング性及び耐食性を評価した。
【0068】
(1)振動フロー値
振動テーブル上に、JIS R 5201:92に規定されたフローコーンをコーンの先端部が上を向くように載置し、当該フローコーン内に適宜振動を与えつつクロミア含有キャスタブル耐火物を充填した。次に、充填されたクロミア含有キャスタブル耐火物の形状を崩さないようにゆっくりとコーンを除去し30秒間静止後、60Hzの振動を5秒間与えた。振動終了後、崩れて広がったクロミア含有キャスタブル耐火物の底面における直径の最大値と、当該最大値部分に垂直方向の部分の直径との2箇所を測定し、2箇所の平均値を振動フロー値(mm)とした。振動フロー値が200mm以上の場合を〇、200mm未満の場合は×として、得られた振動フロー値及び評価結果を表1に示す。
【0069】
(2)耐爆裂性
シリカゾルを添加して混練したクロミア含有キャスタブル耐火物を紙コップに流し込み、24時間自然養生した。養生後のサンプルを紙コップから取り出し、任意の温度に保温した電気炉に入れ、15分間加熱し、爆裂の有無を確認した。ここで、1300℃においても爆裂が認められなかった場合、「爆裂なし」とした。得られた結果(爆裂が認められた場合はその温度)を表1に示す。
【0070】
(3)耐熱スポーリング性
耐熱スポーリング性の評価はJIS R2657に基づく水冷法によって行った。温度条件は1500℃とし、最大10回の加熱冷却を行った。試験片の加熱面(114×65mm)の面積の1/2以上が剥落した場合は×、10回以内に剥落は見られたものの加熱面の1/2以上が剥落しなかった場合は△、最後まで剥落しなかった場合は〇として、得られた結果を表1に示す。
【0071】
(4)耐食性
耐食性は回転ドラム侵食試験によって評価した。試験方法は次の通りである。試験片をドラム内部に内張りし、酸素-プロパンバーナーを使用して1500℃で行った。侵食剤は、溶融スラグ(スラグの塩基度はCaO/SiO=1.19)を投入した。1時間毎にスラグを交換しながら8時間保持した後に自然降温し、翌日に再度昇温して同様の操作を行った。当該操作を合計5日間実施(8時間×5日間加熱)した後、試料を稼働面に垂直な方向に切断し、損耗量を8点測定して平均損耗量を出した。平均損耗量は実施例1の侵食量を100とする指数で表示した。得られた結果を表1に示す。指数が小さいほど耐食性に優れることを示している。
【0072】
≪比較例≫
表1に比較例1~比較例8として示す割合で原料を調整したこと以外は実施例と同様にして、クロミア含有キャスタブル耐火物を得た。また、実施例と同様にして、各クロミア含有キャスタブル耐火物の振動フロー値、耐爆裂性、耐スポーリング性及び耐食性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0073】
表1の結果より、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物の振動フロー値は全て200mm以上となっており、良好な流動性を有していることが分かる。これに対して、粒径が0.09mm以下のクロミア原料(微粒クロミア原料)を含有していない比較例1、微粒クロミア原料の添加量が20質量%未満である比較例2、微粒クロミア原料の添加量が30質量%を超えている比較例3、シリカゾル濃度が40質量%を超えている比較例5においては、振動フロー値が200mm未満となり、十分な流動性が得られていない。
【0074】
また、表1の結果より、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物は全て良好な耐爆裂性を示している。実施例1~3及び7では1300℃においても爆裂が認められず、その他の実施例では1300℃までは爆裂が認められなかった。これに対して、シリカゾル濃度が30質量%未満である比較例4においては微細な連続した網目状の気孔が十分に形成されず、1200℃で爆裂が発生した。また、クロミアの含有量が多過ぎる比較例7では1200℃、水(シリカゾル濃度が0質量%)を用いて混練した比較例8では1000℃で爆裂が発生しており、十分な耐爆裂性が得られていない。
【0075】
また、表1の結果より、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物は全て良好な耐熱スポーリング性を示している。これに対して、シリカゾル濃度が30質量%未満である比較例4においては耐熱スポーリング性の評価が△となり、クロミアの含有量が多過ぎる比較例7及び水(シリカゾル濃度が0質量%)を用いて混練した比較例8では耐熱スポーリング性の評価が×となっている。
【0076】
更に、表1の結果より、本発明のクロミア含有キャスタブル耐火物の耐食性は、実施例1を基準として、全ての場合でそれ以上の良好な耐食性を有している。これに対し、微粒クロミア原料を含有していない比較例1、微粒クロミア原料の含有量が少な過ぎる比較例2、クロミア含有量が30質量%に満たない比較例6では実施例1と比較して侵食量が多くなっており、耐食性の低下が認められる。また、シリカゾル濃度が30質量%未満の比較例4、シリカゾル濃度が40質量%を超えている比較例5においても、実施例1と比較して耐食性が低下していることが分かる。
【0077】
また、実施例同士で評価試験結果を比較すると、微粒クロミア原料の含有量が20~25質量%である実施例1~7において、シリカゾル濃度が35~40質量%となっている実施例1~3及び7で特に良好な耐爆裂性が発現していることが分かる。
【0078】
SiO固形分による六価クロム生成の抑制効果を確認するために、実施例5及び比較例8で得られたクロミア含有キャスタブル耐火物の六価クロム溶出量を測定した。具体的には、試験温度を1500℃、試験時間を10時間とする回転侵食試験後のキャスタブル耐火物を粉砕し、篩にかけて粒度を4mm以下としたものを評価試料とし、20gの前記評価試料を200mlの蒸留水に浸漬させ、1時間ごとに撹拌しながら24時間経過した溶液から25mlの評価溶液を採取し、前記評価溶液を遠心分離機で分離し、上澄み液に対してICP測定した結果、実施例5のクロミア含有キャスタブル耐火物からの六価クロム溶出量は2.91mg/l、比較例8のクロミア含有キャスタブル耐火物からの六価クロム溶出量は9.73mg/lであった。
【0079】
シリカゾルを添加した実施例5においては、40質量%のクロミアを含有しているにもかかわらず、六価クロムの溶出量が5mg/l以下に抑制されている。一方で、比較例8のクロミア含有量は実施例5よりも少ない30質量%であるが、六価クロムの溶出量は9.73mg/lと大きな値になっている。
【0080】
以上の結果より、優れた耐爆裂性、耐スポーリング及び耐食性を有することに加えて、良好な施工性を有するクロミア含有キャスタブル耐火物を得るためには、クロミア原料の含有量を30~90質量%とし、粒径が0.09mm以下のクロミア原料(微粒クロミア原料)の含有量を20~30質量%とし、シリカゾルのSiO固形分濃度を30~40質量%とすることが極めて重要であることが分かる。
【要約】
【課題】優れた耐爆裂性、耐スポーリング及び耐食性を有することに加えて、良好な施工性を有するクロミア含有キャスタブル耐火物及びその簡便かつ効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】アルミナ及び/又はムライトを主成分とする耐火性原料とクロミア原料を、シリカゾルを用いて混練し、クロミア原料の含有量を30~90質量%とし、粒径が0.09mm以下の前記クロミア原料(微粒クロミア原料)の含有量を20~30質量%とし、シリカゾルのSiO固形分濃度を30~40質量%とすること、を特徴とするクロミア含有キャスタブル耐火物の製造方法。
【選択図】なし