(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】脚部継手、配管構造、及び建築物
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20250219BHJP
【FI】
E03C1/12 E
(21)【出願番号】P 2023179819
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2019049672の分割
【原出願日】2019-03-18
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】八幡 道
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-057994(JP,A)
【文献】特開2015-086613(JP,A)
【文献】特開2013-238011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/122
F16L 5/00
F16L 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブの貫通孔に設置される集合継手又は立管が接続される受口を備え
、前記床スラブの下方に位置する立管接続部と、
樹脂製の横管が接続される横管接続部と、
前記立管接続部と前記横管接続部とを接続する曲管部と、
前記曲管部と前記横管接続部とを接続する横管部と、
を有する樹脂製の脚部継手であって、
前記横管部は、前記床スラブの下面に連結された第1支持部により支持され、
前記脚部継手は、ポリ塩化ビニル重合体に衝撃性改良樹脂を混合した樹脂、又は、ポリ塩化ビニル重合体と衝撃性改良樹脂をグラフト共重合した樹脂製である脚部継手。
【請求項2】
前記曲管部と前記立管接続部とを接続する立管部を備え、
前記横管部は前記立管部よりも長い、
請求項1に記載の脚部継手。
【請求項3】
請求項1に記載の脚部継手と、
前記脚部継手の前記立管接続部に接続された集合継手と、
を備える配管構造。
【請求項4】
床スラブと、
集合継手又は立管と、
前記集合継手又は前記立管と接続された請求項1に記載の脚部継手と、
前記脚部継手と接続された横管と、
を備える建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管構造及び配管構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脚部継手と、脚部継手を床スラブに連結した支持部(第1支持部)と、を備える配管構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。脚部継手は、立管が接続される立管部と、横管が接続される横管部と、立管部と横管部とを接続する曲管部と、を有している。
支持部は、横管と床スラブとを連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、配管構造内を流れる排水等を効率的に下流側に流すために、脚部継手の横管部には、下流側に向かうに従って下方に向かう排水勾配が形成されている。
しかしながら、特許文献1に開示された配管構造では、横管部による排水勾配を安定して確保できない。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、脚部継手の横管部による排水勾配を安定して確保できる配管構造及び配管構造の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の配管構造は、立管が接続される立管部と、横管が接続される横管部と、前記立管部と前記横管部とを接続する曲管部と、を有する脚部継手と、床スラブよりも下方に配置された前記横管部と前記床スラブとを連結する第1支持部と、を備えることを特徴としている。
この発明によれば、脚部継手が立管部を起点として揺動すると、横管部の位置や姿勢が安定しない。立管部の上記揺動は、横管部に作用する重力の影響を受けやすい。第1支持部により横管部と床スラブとを連結することにより、脚部継手が立管部を起点として揺動するのを効率的に抑え、脚部継手の横管部による排水勾配を安定して確保することができる。
【0007】
また、上記の配管構造において、前記横管部は前記立管部よりも長くてもよい。
この発明によれば、横管部が立管部よりも長いと、横管部が立管部よりも短い場合に比べて、脚部継手が立管部を起点として揺動したときに、横管部の先端部が上下方向に大きく変位する。この場合であっても、第1支持部により横管部と床スラブとが連結されているため、横管部の先端部が上下方向に変位するのを抑え、脚部継手を、横管部の上方に配置された床スラブの下方の空間内に収容しやすくすることができる。
【0008】
また、上記の配管構造において、前記立管部及び前記曲管部の少なくとも一方と前記床スラブとを連結する第2支持部を備えてもよい。
この発明によれば、第1支持部及び第2支持部という2つの支持部により、床スラブに脚部継手をより確実に連結させることができる。
【0009】
また、上記の配管構造において、前記立管部、前記横管部、及び前記曲管部のいずれか1つの側壁には、前記側壁を径方向に貫通する開口部が形成され、前記開口部に配置された熱膨張材と、前記熱膨張材の径方向の外側を覆うとともに、前記側壁のうち前記開口部の周縁部に取付けられ、前記熱膨張材の径方向の外側への膨張を規制する規制部と、を備えてもよい。
この発明によれば、熱膨張材が加熱されると熱膨張材が膨張するが、熱膨張材の径方向の外側は規制部により覆われ、この規制部が側壁のうち開口部の周縁部に取付けられている。このため、熱膨張材が径方向の内側等に向かって膨張し、立管部、横管部、及び曲管部のいずれか1つの内部空間を狭くすることができる。例えば、開口部に配置する熱膨張材の量を調節することにより、前記内部空間を閉塞することができる。
【0010】
また、本発明の配管構造の施工方法は、上記のいずれかに記載の配管構造を、前記床スラブを備える建築物に施工する配管構造の施工方法であって、前記脚部継手を前記床スラブよりも下方に設置する設置工程と、前記脚部継手の前記横管部と前記床スラブとを前記第1支持部により連結する連結工程と、前記脚部継手の前記立管部に前記立管を接続する接続工程と、前記脚部継手の前記立管部に接続される前記立管と前記床スラブとの間に充填材を充填する充填工程と、を行うことを特徴としている。
この発明によれば、脚部継手が立管部を起点として揺動すると、横管部の位置や姿勢が安定しない。立管部の上記揺動は、横管部に作用する重力の影響を受けやすい。第1支持部により横管部と床スラブとを連結することにより、脚部継手が立管部を起点として揺動するのを効率的に抑え、脚部継手の横管部による排水勾配を安定して確保することができる。さらに、立管と床スラブとの間に充填材を充填することで、立管が接続される立管部が揺動するのを、より確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配管構造及び配管構造の施工方法によれば、脚部継手の横管部による排水勾配を安定して確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態の排水構造が用いられる多層階建築物の要部の縦断面図である。
【
図2】同排水構造における脚部継手及び第2支持部の正面図である。
【
図3】同排水構造における第1支持部の正面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における排水構造の施工方法を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第1実施形態の第1変形例における排水構造の第1支持部の正面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の第2変形例における排水構造の側面図である。
【
図7】同排水構造における脚部継手及び第2支持部の正面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態の第3変形例における排水構造の側面図である。
【
図9】同排水構造における脚部継手及び第2支持部の正面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態の排水構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る配管構造の第1実施形態が用いられる多層階建築物(建築物)を、配管構造が排水構造である場合を例にとって、
図1から
図9を参照しながら説明する。
図1に示すように、多層階建築物1では、上下方向に重ねられてた複数の層5が、多層階建築物1が備える床スラブ6により仕切られている。床スラブ6には、上下方向に貫通する貫通孔6aが形成されている。
【0014】
排水構造11は、多層階建築物1に用いられている。排水構造11は、脚部継手12と、集合継手26と、立管36,37と、横管39,40と、第1支持部46と、第2支持部51と、を備えている。
図1及び
図2に示すように、脚部継手12は、立管部13と、横管部14と、曲管部15と、を備えている。なお、
図1では、横管部14と曲管部15との境界を二点鎖線で示している。
図2では、第1支持部46を二点鎖線で示している。
【0015】
立管部13は、直管状に形成され、立管部13の軸線O1が上下方向に沿うように(すなわち、立管部13の軸線O1は立管37の管軸と平行になるように)配置されている。立管部13は、床スラブ6よりも下方に配置されている。なお、立管部13の配置はこれに限定されず、立管部13は、軸線O1が上下方向に対して傾斜するように配置されてもよい。立管部13には、受口である立管接続部18が形成されている。なお、立管接続部18の接続形式は受口に限定されず、差口やフランジ等でもよい。立管接続部18の接続形式が受口の場合には、立管接続部18の内部には止水のためのゴムパッキンを備えていてもよく、立管37が樹脂製である場合には、立管接続部18は立管37と接着剤で接続してもよい。後述する横管接続部19、横管接続部31等についても同様である。
【0016】
横管部14は、直管状に形成され、横管部14の軸線O2がほぼ水平面に沿うように配置されている。より詳しくは、横管部14は、軸線O2が下流側に向かうに従って下方に向かい、横管部14に排水勾配が形成されるように配置されている。
横管部14における下流側の端部には、フランジである横管接続部19が形成されている。
この例では、横管部14の軸線O2に沿う長さL2は、立管部13の軸線O1に沿う長さL1よりも長い。例えば、横管部において軸線O2に沿った部分が無かったり、軸線O2に沿う部分が短かったりした場合、及び、横管部において第1支持部46により支持する部分が曲がっている場合には、横管部を第1支持部46により支持し難くなる。これに対して、本実施形態のように横管部14を直管状に形成することで、横管部14を第1支持部46により支持しやすくなる。
【0017】
曲管部15は、湾曲した管状に形成されている。曲管部15は、立管部13と横管部14とを接続している。曲管部15の下部には、ボス20が形成されている。ボス20は、曲管部15の下部の外周面から下方に向かって突出している。
この例では、立管部13、横管部14、及び曲管部15を備える脚部継手12全体が、床スラブ6よりも下方に配置されている。
脚部継手12は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂により形成されていてもよい。脚部継手12は、特に、耐衝撃性に優れた樹脂により形成されていることが好ましい。
【0018】
耐衝撃性に優れた樹脂は、例えば、塩化ビニル樹脂としては、(1)ポリ塩化ビニル重合体に衝撃性改良樹脂を混合した樹脂、(2)ポリ塩化ビニル重合体と衝撃性改良樹脂をグラフト共重合した樹脂、(3)塩化ビニルモノマーと、この塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、(4)塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。これら(1)~(4)は単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化してもよい。
【0019】
上記の(1)においてポリ塩化ビニル重合体に混合する衝撃性改良樹脂や、上記の(2)においてポリ塩化ビニル重合体とグラフト共重合する衝撃性改良樹脂としては、ゴム特性を有する樹脂が挙げられる。具体的には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタクリルレート-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
脚部継手12を金属で形成してもよい。金属としては特に鋳鉄が挙げられ、樹脂製よりも重い鋳鉄製の場合には樹脂製よりも排水勾配を確保するのが難しく、本発明により得られる効果が高い。
【0021】
集合継手26の構成は、特に限定されない。この例では、集合継手26は、上部接続管27及び下部接続管28の2つの部材で構成されている。なお、集合継手は1つの部材により一体に構成されてもよいし、3つ以上の部材により構成されてもよい。
上部接続管27は、管本体30と、管本体30の外周面に固定された横管接続部31と、管本体30の上端部に固定された立管接続部32と、を備えている。
管本体30は、軸線が上下方向に沿うように、脚部継手12の上方に配置されている。この例では、横管接続部31は、管本体30の外周面に複数固定されている。なお、管本体30に固定される横管接続部31の数は特に限定されず、1つでもよいし、2つ以上でもよい。
集合継手26はポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂により形成されていてもよく、鋳鉄等の金属により形成されていてもよい。
【0022】
下部接続管28は、下方に向かうに従い外径及び内径がそれぞれ小さくなる管状に形成されている。なお、下部接続管28は、管本体30と略同じ外径及び内径のままであってもよいが、少なくとも立管36の外径及び内径と同じかそれ以上とされる。下部接続管28の下端部は、差口である。下部接続管28は、上部接続管27の管本体30の下端部に固定されている。なお、下部接続管28の下端部は、受口やフランジ等であってもよい。下部接続管28が立管37を介して脚部継手12の立管接続部18に接続されず、集合継手26の下部接続間28と脚部継手12の立管接続部18とが直接接続されていてもよい。
【0023】
このように構成された集合継手26は、横管接続部31及び立管接続部32が床スラブ6よりも上方に配置され、かつ、下部接続管28の少なくとも一部が床スラブ6の貫通孔6a内に配置されるように配置されている。
床スラブ6における貫通孔6aの開口周縁部と、下部接続管28との間には、モルタル等の充填材7が充填されている。充填材7は、貫通孔6aを塞ぐために配置される。
なお、充填材7はグラスウール(GW)や、ロックウール(RW)等でもよい。ただし、充填材7をモルタルとすることで、充填材7により床スラブ6に対する下部接続管28及び立管37の位置が固定される。グラスウール及びロックウールは繊維で構成されるため、床スラブ6に対する下部接続管28等の位置を固定できない。従って、立管37に接続された脚部継手12の重量バランスが悪くても、脚部継手12の横管部14に設定した排水勾配の向きを保持することができる。
【0024】
立管36の下端部は、集合継手26の立管接続部32に接続されている。立管36は、集合継手26の上部接続管27が配置された層5(以下、層5Aとも言う)よりも上方の層5に配置された図示しない便器、化粧台、流し台等の衛生機器(排水設備)から排出される排水を、集合継手26に導く。
立管37の上端部は、集合継手26の下部接続管28の下端部に接続されている。立管37の下端部は、脚部継手12の立管部13の立管接続部18に接続されている。
【0025】
横管39は、集合継手26の横管接続部31に接続されている。横管39は、層5Aに配置された図示しない衛生機器から排出される排水を、集合継手26に導く。
横管40は、脚部継手12の横管部14の横管接続部19に接続されている。横管40は、集合継手26に導かれた排水を、脚部継手12を介して多層階建築物1の外部の排水処理設備(不図示)等に導く。
【0026】
図1及び
図3に示すように、第1支持部46は、いわゆる1本吊りタイプの支持部である。第1支持部46は、脚部継手12の横管部14と床スラブ6とを連結している。第1支持部46は、支持金具47と、ロッド48と、アンカー49と、を備えている。
支持金具47は、例えば図示はしないが、金属製の帯状部材と、帯状部材の両端部を互いに接続する開閉機構と、を備えている。開閉機構は、帯状部材の両端部を互いに接続した接続状態と、この両端部の接続を解除した解除状態とに、切り替えることができる。 開閉機構を解除状態にしたときに、U字状にした帯状部材の外部から帯状部材内に、脚部継手12の横管部14を挿入したり、帯状部材内から帯状部材の外部に横管部14を取り出したりすることができる。
一方で、開閉機構を接続状態にしたときに、帯状部材内の横管部14が帯状部材に固定される。
【0027】
ロッド48の外周面には、雄ネジがロッド48の全長にわたって形成されている。ロッド48は、いわゆる全ネジのボルトである。ロッド48は、上下方向に沿うように配置されている。ロッド48の下端部は、支持金具47の帯状部材に固定されている。
アンカー49は、床スラブ6の下端部に埋め込まれている。アンカー49に形成された雌ネジは、床スラブ6の下面から床スラブ6の外部に露出している。アンカー49の雌ネジに、ロッド48の上端部の雄ネジが嵌め合っている。
なお、第1支持部46の構成は、これに限定されない。
【0028】
図1及び
図2に示すように、第2支持部51は、脚部継手12の曲管部15と床スラブ6とを連結している。第2支持部51は、支持部材52と、ロッド53と、ナット54と、アンカー55と、を備えている。
支持部材52は、長手方向に直交する断面がL字状に形成されている。支持部材52は、水平面に沿う方向であって、横管部14の軸線O2に直交する直交方向に延びるように配置されている。支持部材52は、脚部継手12よりも直交方向の両側にそれぞれ突出している。支持部材52の直交方向の両端部には、上下方向に貫通する貫通孔(不図示)がそれぞれ形成されている。
支持部材52は、脚部継手12のボス20をボス20の下方から支持している。
【0029】
ロッド53は、ロッド48と同様に構成され、第2支持部51に一対備えられている。ロッド53は、上下方向に沿うように配置されている。ロッド53の下端部は、支持部材52の貫通孔に挿入され、ナット54により支持部材52に固定されている。
アンカー55は、床スラブ6の下端部に埋め込まれている。アンカー55に形成された雌ネジは、床スラブ6の下面から床スラブ6の外部に露出している。アンカー55の雌ネジに、ロッド53の上端部の雄ネジが嵌め合っている。
なお、第2支持部51は曲管部15と床スラブ6とを連結しているとしたが、第2支持部が脚部継手12の立管部13と床スラブ6とを連結しているとしてもよいし、第2支持部が脚部継手12の立管部13及び曲管部15と床スラブ6とを連結しているとしてもよい。
【0030】
なお、第1支持部46及び第2支持部51のそれぞれは、防振性を有するゴムを備えてもよい。このゴムは、例えば第1支持部46における帯状部材と横管部14との間に配置される。
第1支持部46及び第2支持部51を、金属でなく樹脂で形成してもよい。
【0031】
ここで、
図1に示すように、立管部13を通り、軸線O1及び軸線O2にそれぞれ直交する軸線を、O3とする。
また、第2支持部51が脚部継手12を支持する部分を通り、軸線O1及び軸線O2にそれぞれ直交する軸線を、O4とする。排水構造11が第1支持部46を備えず、脚部継手12に立管37及び横管40が接続されていないと、脚部継手12は軸線O4周りに揺動する。充填材7により床スラブ6に固定された立管37に脚部継手12が接続されていることで、脚部継手12が軸線O4周りに揺動するのを抑えることができる。
【0032】
次に、以上のように構成された排水構造11を多層階建築物1に施工する、本実施形態の排水構造11の施工方法について説明する。
図4は、本発明の一実施形態における排水構造の施工方法Sを示すフローチャートである。
まず、設置工程(
図4におけるステップS1)において、脚部継手12を床スラブ6よりも下方の所定の位置に設置する。設置工程S1が終了すると、ステップS2に移行する。
次に、連結工程S2において、脚部継手12の横管部14と床スラブ6とを第1支持部46により連結する。連結工程S2が終了すると、ステップS3に移行する。
【0033】
次に、接続工程S3において、脚部継手12の立管部13の立管接続部18に立管37を接続する。接続工程S3ではさらに、立管37を集合継手26の下部接続管28に接続する。集合継手26の立管接続部32に立管36を接続し、集合継手26の横管接続部31に横管39を接続する。脚部継手12の横管部14の横管接続部19に横管40を接続する。
接続工程S3が終了すると、ステップS4に移行する。
【0034】
次に、充填工程S4において、脚部継手12の立管部13に接続される立管37と床スラブ6における貫通孔6aの開口周縁部との間に充填材7を充填する。充填材7は、床スラブ6における貫通孔6aの開口周縁部と集合継手26の下部接続管28との間にも充填される。
充填工程S4が終了すると、排水構造の施工方法Sの全ての工程が終了し、多層階建築物1に排水構造11が施工される。
【0035】
なお、連結工程S2、接続工程S3、及び充填工程S4を行う順序は特に限定されず、例えば、設置工程S1の後で、充填工程、接続工程、及び連結工程をこの順序で行ってもよい。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の排水構造11によれば、脚部継手12が立管部13を起点として軸線O3周りに揺動すると、横管部14の位置や姿勢が安定しない。立管部13の上記揺動は、横管部14に作用する重力の影響を受けやすい。第1支持部46により横管部14と床スラブ6とを連結することにより、脚部継手12が立管部13を起点として軸線O3周りに揺動するのを効率的に抑え、脚部継手12の横管部14による排水勾配を安定して確保することができる。
第1支持部46で横管部14を支持することにより、排水構造11を施工する際の自由度を高めることができる。
【0037】
横管部14は、立管部13よりも長い。この場合、横管部14が立管部13よりも短い場合に比べて、脚部継手12が立管部13を起点として軸線O3周りに揺動したときに、横管部14の先端部(横管接続部19が設けられた端部)が上下方向に大きく変位する。この場合であっても、第1支持部46により横管部14と床スラブ6とが連結されているため、横管部14の先端部が上下方向に変位するのを抑え、脚部継手12を、横管部14のすぐ上方に配置された床スラブ6の下方の空間内に収容しやすくする(脚部継手12の納まりを良くする)ことができる。
排水構造11が、第2支持部51を備えている。従って、第1支持部46及び第2支持部51という2つの支持部により、床スラブ6に脚部継手12をより確実に連結させることができる。振動及び衝撃に対する排水構造11の強度等を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態の排水構造の施工方法Sによれば、立管37と床スラブ6との間に充填材7を充填することで、立管37が接続される立管部13が揺動するのを、より確実に抑えることができる。
【0039】
本実施形態の排水構造11は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
図5に示す第1変形例の排水構造11Aのように、第1支持部61として、いわゆる2本吊りタイプの支持部を用いてもよい。第1支持部61は、支持片62,63と、ロッド48と、アンカー49と、を備えている。
支持片62は、本体62aと、突出部62b,62cと、を備えている。本体62aは、例えば金属製の帯状部材でC字状に形成されている。本体62aの内径及び脚部継手12の横管部14の外径は、互いに同程度である。突出部62bは、本体62aにおける周方向の第1端部から、本体62aの径方向外側に突出している。突出部62cは、本体62aにおける周方向の第2端部から、本体62aの径方向外側に突出している。突出部62b,62cには、上下方向に貫通する貫通孔(不図示)がそれぞれ形成されている。
【0040】
支持片63は、支持片62と同一の構成である。すなわち、支持片63は、本体62a、突出部62b,62cと同一に構成された本体63a、突出部63b,63cを備えている。
支持片62,63は、脚部継手12の横管部14を上下方向に挟んでいる。
ロッド48は、第1支持部61に一対備えられている。一方のロッド48の下端部は、突出部62b,63bの貫通孔にそれぞれ挿入され、ナット54により突出部62b,63bに固定されている。他方のロッド48の下端部は、突出部62c,63cの貫通孔にそれぞれ挿入され、ナット54により突出部62c,63cに固定されている。
アンカー49は、第1支持部61に一対備えられている。各アンカー49の雌ネジに、ロッド48の上端部の雄ネジがそれぞれ嵌め合っている。
以上のように構成された第1支持部61によっても、脚部継手12の横管部14と床スラブ6とを連結することができる。
【0041】
図6及び
図7に示す第2変形例の排水構造11Bのように、本実施形態の排水構造11Aの脚部継手12、立管37、横管39、及び第2支持部51に代えて、第2支持部66及び第3支持部71を備えてもよい。この変形例では、立管部13には、フランジである立管接続部18Aが形成されている。
この変形例では、横管部14の外径、内径は、立管部13の外径、内径よりもそれぞれ大きい。曲管部15では、立管部13側から横管部14側に向かうに従い漸次、外径及び内径がそれぞれ大きくなる。
【0042】
第2支持部66は、脚部継手12の立管部13と床スラブ6とを連結している。第2支持部66は、支持片67,68と、ロッド53と、ナット54と、アンカー55と、を備えている。
支持片67,68は、支持片62,63と同様に構成され、脚部継手12の立管部13を立管部13の径方向に挟んでいる。
ロッド53は、第2支持部66に一対備えられている。各ロッド53の下端部は、支持片67,68に固定されている。各ロッド53の上端部の雄ネジは、各アンカー55の雌ネジにそれぞれ嵌め合っている。
【0043】
この変形例では、立管部13の立管接続部18Aに立管36の下端部が接続されている。
第3支持部71は、いわゆる1本吊りタイプの支持部であり、第1支持部46と同様に構成されている。第3支持部71は、横管40と床スラブ6とを連結している。
【0044】
このように構成された排水構造11Bでは、横管部14の外径、内径は立管部13の外径、内径よりもそれぞれ大きく、脚部継手12の重心が横管部14側に偏っているため、横管部14に設定された排水勾配を確保しにくい。さらに、立管部13の軸線O1が上下方向に対して傾斜するように配置されている(すなわち、立管部13の軸線O1は立管36の管軸と平行でない)場合、脚部継手12が横管部14側に傾きやすくなり、さらに横管部14の排水勾配を確保しにくい。
【0045】
図8及び
図9に示す第3変形例の排水構造11Cのように、変形例の排水構造11Bの第2支持部66に代えて、第2支持部76を備えてもよい。なお、立管部13と曲管部15との境界を二点鎖線で示している。
この変形例では、立管部13の下端部は床スラブ6の貫通孔6a内に配置され、立管部13の上端部は床スラブ6よりも上方に突出している。
第2支持部76は、床スラブ6の上方において脚部継手12の立管部13と床スラブ6とを連結している。第2支持部76は、支持金具77と、ロッド53と、アンカー55と、を備えている。
支持金具77は、公知の構成により立管部13の上端部に着脱可能である。支持金具77は、立管部13よりも前記直交方向の両側にそれぞれ突出している。
ロッド53は、第2支持部76に一対備えられている。各ロッド53における上下方向の中間部は、支持金具77に固定されている。
アンカー55は、床スラブ6の上端部に埋め込まれている。アンカー55に形成された雌ネジは、床スラブ6の上面から床スラブ6の外部に露出している。アンカー55の雌ネジに、ロッド53の下端部の雄ネジが嵌め合っている。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図10から
図12を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図10及び
図11に示すように、本実施形態の排水構造81は、第1実施形態の第2変形例の排水構造11Bの各構成に加えて、一対の蓋体85を備えている。なお、
図11中には、排水構造81の上部等も示している。
曲管部15の側壁15aには、側壁15aを径方向に貫通する開口部15bが形成されている。開口部15bは、曲管部15の中心軸線を挟んで一対形成されている。
側壁15aのうち開口部15bの周縁部には、径方向の外側に向かって突出するフランジ82が取付けられている。フランジ82は、この周縁部の全周にわたって配置されている。フランジ82には、図示しないボルト孔が複数形成されている。
本実施形態では、横管40の耐火性が不要なので、横管40はポリ塩化ビニル等の樹脂で形成されている。
【0047】
図12に示すように、蓋体85は、外蓋(規制部)86と、内蓋87と、熱膨張材88と、を備えている。
外蓋86は、有底円筒状に形成された外蓋本体90と、外蓋本体90の周壁部に設けられたフランジ91と、を備えている。フランジ91は、外蓋本体90の周壁部の外側に向かって突出し、周壁部の全周にわたって設けられている。フランジ91には、曲管部15のボルト孔に対応する位置に複数の貫通孔(不図示)が形成されている。
外蓋86を構成する外蓋本体90及びフランジ91は、鋳鉄等の金属で一体に形成されている。
【0048】
内蓋87は、有底円筒状に形成された内蓋本体93と、内蓋本体93の周壁部に設けられたフランジ94と、を備えている。
内蓋本体93は、外蓋86の外蓋本体90と略同一の大きさに形成され、かつ、曲管部15のフランジ82内に配置できる大きさに形成されている(
図11参照)。内蓋本体93の底壁部は、曲管部15の側壁15aに対応した形状に湾曲している。
フランジ94は、内蓋本体93の周壁部の外側に向かって突出し、周壁部の全周にわたって設けられている。フランジ94には、曲管部15のボルト孔に対応する位置に複数の貫通孔(不図示)が形成されている。
内蓋87を構成する内蓋本体93及びフランジ94は、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂で一体に形成されている。
内蓋87は、内蓋本体93の内部空間が、外蓋86の外蓋本体90の内部空間に連通するように配置されている。
【0049】
熱膨張材88は、熱膨張黒鉛を含有するゴム系材料又は樹脂製材料等からなる。熱膨張材88には、例えば温度が200度以上になったときに熱膨張して、体積が5倍から40倍に膨張する材料が使用されている。例えば、熱膨張材88として、CRK株式会社製の熱膨張性耐火材が用いられる。
熱膨張材88は、円柱状に形成され、外蓋86と内蓋87との間に配置されている。熱膨張材88は、曲管部15の開口部15bに配置されている。
図11に示すように、蓋体85は、ボルト96を、外蓋86の貫通孔及び内蓋87の貫通孔に通し、曲管部15のボルト孔に嵌め合わせることで、曲管部15に取付けられている。外蓋86及び内蓋87は、側壁15aのうち開口部15bの周縁部に取付けられている。蓋体85は、前記周縁部に着脱可能である。開口部15bは、曲管部15の内部を掃除するための掃除口としても機能する。
【0050】
外蓋86は、熱膨張材88に対する曲管部15の径方向の外側を覆っている。外蓋86は、熱膨張材88における曲管部15の径方向の外側への膨張を規制している。
【0051】
以上のように構成された本実施形態の排水構造81では、火災等により熱膨張材88が加熱されると熱膨張材88が膨張するが、熱膨張材88の径方向の外側は外蓋86により覆われ、この外蓋86が側壁15aのうち開口部15bの周縁部に取付けられている。このため、熱膨張材88が径方向の内側等に向かって膨張し、曲管部15の内部空間を狭くすることができる。そして、開口部15bに配置する熱膨張材88の量を調節することにより、曲管部15の内部空間を閉塞することができる。
なお、火災時には、横管40は消失する。
【0052】
一対の開口部15b間の距離が、横管部14の幅よりも広く、第2支持部66が開口部15bに干渉しないように、第2支持部66は曲管部15ではなく立管部13を支持するのが良い。
また、火災時の熱が速やかに開口部15bに伝わって熱膨張材88を熱膨張させるためにも、第2支持部66は曲管部15ではなく立管部13を支持するのが良い。
特に、
図10に示すように、立管部13の軸線O1が上下方向に対して傾斜するように脚部継手12を配置した場合、蓋体85の質量の分、脚部継手12の重心がさらに横管40側に偏るので、第1支持部46の存在が重要になる。
【0053】
すなわち、第1支持部46が無い場合、火災時に横管40が焼失して脚部継手12が傾くと、立管36と脚部継手12との接続部に隙間が生じて、排水構造81の耐火性が低下する恐れがある。
これに対して、排水構造81が第1支持部46を備えることで、耐火性を向上させることができる。
なお、本実施形態では、曲管部15に蓋体85が取付けられていたが、蓋体85は、立管部13や横管部14に取付けられてもよい。蓋体85は、内蓋87を備えなくてもよい。
【0054】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記第1実施形態及び第2実施形態では、横管部14は、立管部13と同じ長さでもよいし、立管部13よりも短くてもよい。
排水構造は、第2支持部及び第3支持部71を備えなくてもよい。
配管構造が排水構造であるとしたが、配管構造はこれに限定されず給水構造等であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 多層階建築物(建築物)
6 床スラブ
7 充填材
11,11A,11B,11C,81 排水構造(配管構造)
12 脚部継手
13 立管部
14 横管部
15 曲管部
15a 側壁
15b 開口部
36,37 立管
39,40 横管
46,61 第1支持部
51,66,76 第2支持部
86 外蓋(規制部)
88 熱膨張材
S 配管構造の施工方法
S1 設置工程
S2 連結工程
S3 接続工程
S4 充填工程